特許第6498438号(P6498438)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6498438受電制御回路、ワイヤレス受電装置の制御方法、電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498438
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】受電制御回路、ワイヤレス受電装置の制御方法、電子機器
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/80 20160101AFI20190401BHJP
【FI】
   H02J50/80
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-265336(P2014-265336)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-127661(P2016-127661A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】賀 迅
(72)【発明者】
【氏名】内本 大介
(72)【発明者】
【氏名】野澤 毅
【審査官】 阿部 陽
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−504902(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/092339(WO,A1)
【文献】 特表2015−500622(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/105776(WO,A1)
【文献】 特開2011−199545(JP,A)
【文献】 特開2014−082864(JP,A)
【文献】 特開2009−271861(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0210406(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00−50/90
H02J 7/00
H04B 5/00−5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信コイルを有するワイヤレス受電装置の制御回路であって
定のスタートタイミングから所定第1時間の経過後から所定第2時間の経過前の検出期間において、前記受信コイルが受信する信号の周波数を判定する周波数検出部と、
前記受信コイルが受信する信号がFSK(Frequency Shift Keying)されているか否かを判定する変調検出部と、
前記周波数検出部が検出した周波数と、FSKの有無に応じて、ワイヤレス送電装置が準拠する規格を判定する規格判定部と、
を備えることを特徴とする制御回路。
【請求項2】
前記規格判定部は、(i)検出された周波数が、230kHz〜250kHzの間に定められた第1周波数より高いとき、PMA(Power Matters Alliance)−1規格と判定し、
(ii)検出された周波数が、190kHz〜220kHzの間に定められた第2周波数より高く、前記第1周波数より低く、かつFSKが検出されたとき、PMA−3規格と判定することを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項3】
前記規格判定部は、
(iii)検出された周波数が、前記第2周波数より低く、かつFSKが検出されたとき、PMA−4規格と判定し、
(iv)検出された周波数が、前記第2周波数より低く、かつFSKが検出されないとき、Qi規格と判定することを特徴とする請求項2に記載の制御回路。
【請求項4】
前記規格判定部は、
(v)検出された周波数が、前記第2周波数より高く前記第1周波数より低く、FSKが検出されないとき、未知のワイヤレス送電装置と判定することを特徴とする請求項2または3に記載の制御回路。
【請求項5】
前記規格判定部は、
(i)検出された周波数が、230kHz〜250kHzの間に定められた第1周波数より高いとき、PMA(Power Matters Alliance)−1規格と判定し、
(ii)検出された周波数が、190kHz〜220kHzの間に定められた第2周波数より高く、前記第1周波数より低く、かつFSKが検出されたとき、PMA−3規格と判定し、
(iii)検出された周波数が、前記第2周波数より低く、かつFSKが検出されたとき、PMA−4規格と判定し、
(iv)検出された周波数が、前記第2周波数より低く、かつFSKが検出されないとき、Qi規格と判定し、
(v)検出された周波数が、前記第2周波数より高く前記第1周波数より低く、FSKが検出されないとき、未知のワイヤレス送電装置と判定する、
とした判定基準(i)〜(v)のうち、少なくとも2つを備えることを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項6】
前記第1周波数は240kHzであることを特徴とする請求項2からのいずれかに記載の制御回路。
【請求項7】
前記第2周波数は200kHzであることを特徴とする請求項2からのいずれかに記載の制御回路。
【請求項8】
前記規格判定部は、
(i)検出された周波数が、250kHzまたはそれより低く定められた第3周波数より高いとき、PMA(Power Matters Alliance)−1規格と判定し、
(ii)検出された周波数が、230kHzまたはそれより高く定められた第4周波数より低く、220Hzまたはそれより低く定められた第5周波数より高く、かつFSKが検出されたとき、PMA−3規格と判定することを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項9】
前記規格判定部は、
(iii)検出された周波数が、190kHzまたはそれより高く定められた第6周波数より低く、かつFSKが検出されたとき、PMA−4規格と判定し、
(iv)検出された周波数が、前記第6周波数より低く、かつFSKが検出されないとき、Qi規格と判定することを特徴とする請求項に記載の制御回路。
【請求項10】
前記スタートタイミングは、リセット解除であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の制御回路。
【請求項11】
ひとつの半導体基板に一体集積化されたことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の制御回路。
【請求項12】
受信コイルと、
前記受信コイルの電流を整流する整流回路と、
前記整流回路の出力と接続された平滑コンデンサと、
請求項1から11のいずれかに記載の制御回路と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項13】
ワイヤレス送電装置が準拠する規格を、ワイヤレス受電装置において判別する方法であって、
所定のスタートタイミングから所定第1時間の経過後から所定第2時間の経過前の検出期間において、受信コイルが受信する信号の周波数を判定するステップと、
前記受信コイルが受信する信号が、FSK(Frequency Shift Keying)されているか否かを判定するステップと、
検出した周波数と、FSKの有無に応じて、前記ワイヤレス送電装置が準拠する規格を判定するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記判定するステップは、
(i)検出された周波数が、230kH〜250kHzの間に定められた第1周波数より高いとき、PMA(Power Matters Alliance)−1規格と判定するステップと、
(ii)検出された周波数が、190kHz〜220kHzの間に定められた第2周波数より高く、前記第1周波数より低く、かつFSKが検出されたとき、PMA−3規格と判定するステップと、
を含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記判定するステップは、
(iii)検出された周波数が、前記第2周波数より低く、かつFSKが検出されたとき、PMA−4規格と判定するステップと、
(iv)検出された周波数が、前記第2周波数より低く、かつFSKが検出されないとき、Qi規格と判定するステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス給電技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器への給電方式として、ワイヤレス給電が普及の兆しを見せている。ワイヤレス給電には、電磁誘導(MI:Magnetic Induction)方式と磁気共鳴(MR:Magnetic Resonance)方式の2つの方式が存在するが、MI方式では、現在、(1)WPC(Wireless Power Consortium)が策定した規格「Qi」と、(2)PMA(Power Matters Alliance)が策定した規格(以下、PMA)が主流となっている。
【0003】
図1は、PMA規格に準拠したワイヤレス給電システム100Rの構成を示す図である。給電システム100Rは、送電装置200R(TX、Power Transmitter)と受電装置300R(RX、Power Receiver)と、を備える。受電装置300Rは、携帯電話端末、スマートホン、オーディオプレイヤ、ゲーム機器、タブレット端末などの電子機器に搭載される。
【0004】
送電装置200Rは、送信コイル(1次コイル)202、ドライバ204、コントローラ206、復調器208を備える。ドライバ204は、Hブリッジ回路(フルブリッジ回路)あるいはハーフブリッジ回路を含み、送信コイル202に駆動信号S1、具体的にはパルス信号を印加し、送信コイル202に流れる駆動電流により、送信コイル202に電磁界の電力信号S2を発生させる。コントローラ206は、送電装置200R全体を統括的に制御するものであり、具体的には、ドライバ204のスイッチング周波数、あるいはスイッチングのデューティ比を制御することにより、送信電力を変化させる。
【0005】
受電装置300Rは、受信コイル302、整流回路304、平滑コンデンサ306、変調器308、負荷310、コントローラ312、電源回路314を備える。受信コイル302は、送信コイル202からの電力信号S2を受信するとともに、制御信号S3を送信コイル202に対して送信する。整流回路304および平滑コンデンサ306は、電力信号S2に応じて受信コイル302に誘起される電流IRXを整流・平滑化し、直流電圧VRECTに変換する。
【0006】
電源回路314は、送電装置200から供給された電力を利用して図示しない二次電池を充電し、あるいは直流電圧VRECTを昇圧あるいは降圧し、コントローラ312やその他の負荷310に供給する。
【0007】
PMA規格あるいはQi規格では、送電装置200Rと受電装置300Rの間で通信プロトコルが定められており、受電装置300Rから送電装置200Rに対して、制御信号S3による情報の伝達が可能となっている。この制御信号S3は、後方散乱変調(Backscatter modulation)を利用して、FSK(Frequency Shift Keying)あるいはASK(Amplitude Shift Keying)された形で、受信コイル302(2次コイル)から送信コイル202に送信される。
【0008】
この制御信号S3には、たとえば、受電装置300Rに対する電力供給量を指示する電力制御データ(パケットともいう)、受電装置300Rの固有の情報を示すデータなどが含まれる。復調器208は、送信コイル202の電流あるいは電圧に含まれる制御信号S3を復調する。コントローラ206は、復調された制御信号S3に含まれる電力制御データにもとづいて、ドライバ204を制御する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
PMA規格(親規格)の中には、PMA−1、PMA−3、PMA−4という3つの子規格が存在する。本発明者らは、PMA−1、PMA−3、PMA−4規格およびQi規格をサポートする受電装置300Rの設計について検討した。
【0010】
PMA−1、PMA−3、PMA−4規格およびQi規格では、使用される周波数が異なっているため、規格(プロトコル)を判定する前に、送電装置200Rと受電装置300Rの間の通信は不可能である。したがって受電装置300Rには、送電装置200Rの充電台に載置された直後に、通信等の手段によらずに、自動で、送電装置200Rが準拠する規格を判別する機能が要求される。
【0011】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、送電装置が準拠する規格を自動判定可能な受電装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある態様は、ワイヤレス受電装置の制御回路に関する。ワイヤレス受電装置は、受信コイルと、受信コイルの電流を整流する整流回路と、整流回路の出力と接続された平滑コンデンサと、を備える。制御回路は、所定のスタートタイミングから所定第1時間の経過後から所定第2時間の経過前の検出期間において、受信コイルが受信する信号の周波数を判定する周波数検出部と、受信コイルが受信する信号がFSK(Frequency Shift Keying)されているか否かを判定する変調検出部と、周波数検出部が検出した周波数と、FSKの有無に応じて、ワイヤレス送電装置が準拠する規格を判定する規格判定部と、を備える。
【0013】
ワイヤレス給電システムでは、アナログpingフェーズ、デジタルpingフェーズを経て、パワートランスファーフェーズに移行し、送電装置から受電装置への給電が開示される。ここでデジタルpingフェーズの開始後の送電装置が発生する信号の周波数は、規格ごとに異なった周波数、あるいは波形で変化する。そこでワイヤレス受電装置において、あるスタートタイミングを定めておき、スタートタイミングの後の、ある決められた期間における周波数を測定し、必要に応じてFSKの有無を検出することで、送電装置が準拠する規格を自動判定できる。
【0014】
規格判定部は、(i)検出された周波数が、230kH〜250kHzの間に定められた第1周波数より高いとき、PMA(Power Matters Alliance)−1規格と判定し、(ii)検出された周波数が、190kHz〜220kHzの間に定められた第2周波数より高く、第1周波数より低く、かつFSKが検出されたとき、PMA−3規格と判定してもよい。
さらに規格判定部は、(iii)検出された周波数が、第2周波数より低く、かつFSKが検出されたとき、PMA−4規格と判定し、(iv)検出された周波数が、第2周波数より低く、かつFSKが検出されないとき、Qi規格と判定してもよい。
【0015】
規格判定部は、(v)検出された周波数が、第2周波数より高く第1周波数より低く、FSKが検出されないとき、未知のワイヤレス送電装置と判定してもよい。
【0016】
あるいは規格判定部は、上述の判定基準(i)〜(v)のうち、少なくとも2つを備えてもよい。
【0017】
スタートタイミングは、リセット解除であってもよい。デジタルpingフェーズの開始とともに、受電装置においてリセット解除が発生する。したがってリセット解除のタイミングを基準として、周波数の検出期間を設定することで、規格ごとに設定される周波数を正確に検出できる。
【0018】
第1周波数は240kHzであってもよい。第2周波数は200kHzであってもよい。
規格ごとの周波数レンジの実質的に中心に、しきい値の周波数を設定することで、周波数測定誤差や周波数ばらつきが存在する場合にも、規格の誤判定を防止できる。
【0019】
規格判定部は、(a)検出された周波数が、250kHzまたはそれより低く定められた第3周波数より高いとき、PMA(Power Matters Alliance)−1規格と判定し、(b)検出された周波数が、230kHzまたはそれより高く定められた第4周波数より低く、220Hzまたはそれより低く定められた第5周波数より高く、かつFSKが検出されたとき、PMA−3規格と判定してもよい。
【0020】
規格判定部は、(c)検出された周波数が、190kHzまたはそれより高く定められた第6周波数より低く、かつFSKが検出されたとき、PMA−4規格と判定し、(d)検出された周波数が、第6周波数より低く、かつFSKが検出されないとき、Qi規格と判定してもよい。
【0021】
規格判定部は、(e)検出された周波数が、第5周波数より高く第4周波数より低く、FSKが検出されないとき、未知のワイヤレス送電装置と判定してもよい。
【0022】
あるいは規格判定部は、上述の判定基準(a)〜(e)のうち、少なくとも2つを備えてもよい。
【0023】
あるいは規格判定部は、上述の判定基準(i)〜(v)、(a)〜(e)の任意の組み合わせを含んでもよい。
【0024】
制御回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。
「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。
回路を1つのICとして集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0025】
本発明の別の態様は、ワイヤレス受電装置もしくは電子機器に関する。ワイヤレス受電装置もしくは電子機器は、受信コイルと、受信コイルの電流を整流する整流回路と、整流回路の出力と接続された平滑コンデンサと、上述のいずれかの制御回路と、を備えてもよい。
【0026】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0027】
本発明のある態様によれば、送電装置が準拠する規格を自動判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】PMA規格に準拠したワイヤレス給電システムの構成を示す図である。
図2】実施の形態に係る受電装置を備える電子機器のブロック図である。
図3図3(a)〜(d)は、PMA−1,PMA−3,PMA−4,Qi規格におけるデジタルpingフェーズの周波数の遷移を示す図である。
図4】検出期間TDETにおける周波数およびFSKの有無と、規格との対応関係を示す図である。
図5】規格判定のフローチャートである。
図6】実施の形態に係る受電装置を備える電子機器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0030】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0031】
図2は、実施の形態に係る受電装置300を備える電子機器500のブロック図である。受電装置300は、図示しない送電装置からの電力信号S2を受信し、そのエネルギーを平滑コンデンサ306に蓄え、負荷502に供給する。
【0032】
受電装置300は、受信コイル302、整流回路304、平滑コンデンサ306、および制御回路400を備える。図2の受電装置300は、PMA規格およびQi規格に準拠しており、図1の給電システム100Rに使用可能である。
【0033】
受信コイル302は、送信コイル202からの電力信号S2を受信するとともに、制御信号S3を送信コイル202に対して送信する。受信コイル302には、電力信号S2により誘起される電流IRXが流れる。整流回路304の入力側は受信コイル302と接続され、電流IRXを全波もしくは半波整流する。整流回路304はダイオードブリッジ回路であってもよいし、Hブリッジ回路であってもよい。平滑コンデンサ306は、整流回路102の出力と接続され、整流回路102の出力電圧を平滑化する。平滑コンデンサ306に発生する直流電圧(整流電圧という)VRECTが、後段の負荷502に供給される。
【0034】
負荷502は、電源回路504、二次電池506、各種プロセッサ508を含む。
整流電圧VRECTを用いてプロセッサ508などの電子回路を直接駆動することは困難であるため、電源回路504が設けられる。電源回路504は、リニアレギュレータおよび/またはスイッチングレギュレータ(DC/DCコンバータ)を含み、整流電圧VRECTを適切な電圧レベルにレギュレートし、プロセッサ508に供給する。また電源回路504は、送電装置200から供給された電力を利用して二次電池506を充電する充電回路を含んでもよい。
【0035】
続いて実施の形態に係る制御回路400について説明する。制御回路400は、電圧測定部402、電力制御部406、変調器408、周波数検出部420、変調検出部422、規格判定部424を備え、ひとつの半導体基板に一体集積化された機能IC(Integrated Circuit)である。なお、整流回路304の一部が制御回路400に集積化されてもよい。図2には、かならずしも制御回路400のすべての構成が示されるわけではなく、理解の容易化、説明の簡潔化のため、本発明と関係のないブロックは省略されている。
【0036】
電圧測定部402は、平滑コンデンサ306に生ずる整流電圧VRECTあるいはそれに応じた電圧を測定する。電圧測定部402は、測定された整流電圧VRECTを示すデジタル値DRECTを生成するA/Dコンバータであってもよい。
【0037】
電力制御部406は、整流電圧VRECTにもとづいて、送電装置からの送信電力を指示する電力制御データDPCを生成する。たとえばQi規格においては、電力制御部406は、整流電圧VRECTとその目標値(DP:Desired Point)の誤差を量子化し、電力制御データDPCを生成する。
【0038】
PMA規格においては、整流電圧VRECTの目標レベルの近傍に、上限電圧V、下限電圧Vが設定される。電力制御部406は、整流電圧VRECTを上限電圧V、下限電圧Vそれぞれと比較し、比較結果にもとづいて電力制御データDPCを生成する。具体的には電力制御部406は、整流電圧VRECTが上限電圧Vを超えると電力制御データDPCを第1方向に変化させ、整流電圧VRECTが下限電圧Vを下回ると電力制御データDPCを第2方向に変化させる。本実施の形態では、第1方向は減少方向、第2方向は増加方向であり、電力制御部406は、整流電圧VRECTが上限電圧Vを超えると電力制御データDPCを1ステップ、減少させ、整流電圧VRECTが下限電圧Vを下回ると電力制御データDPCを複数ステップ、増加させる。
【0039】
変調器408は、電力制御データDPCを変調(FSKもしくはASK)した信号を生成し、受信コイル302に流れる電流IRXに変調信号を重畳して、制御信号S3をワイヤレス送電装置に送信する。
【0040】
制御回路400は、送電装置200が、PMA−1、PMA−3、PMA−4、Qi規格のいずれに準拠しているかを自動判定する機能を備える。この自動判定機能に関して制御回路400は、周波数検出部420、変調検出部422、規格判定部424を備える。
【0041】
周波数検出部420は、所定のスタートタイミングから所定第1時間τの経過後から所定第2時間τの経過前の検出期間TDETにおいて、受信コイル302が受信する信号S2の周波数を検出し、検出された周波数fDETを示す周波数データD11を生成する。周波数の測定方法は特に限定されず、周波数カウンタなど公知の技術を用いればよい。
【0042】
変調検出部422は、検出期間TDETにおいて、受信コイル302が受信する信号がFSK(Frequency Shift Keying)されているか否かを判定し、FSKの有無を示すFSK判定データD12を生成する。変調検出部422は、周波数検出部420が検出する周波数f(もしくは周波数データD11)の時間変化を監視し、周波数変動が測定された場合、FSKされているものと判定し、周波数が一定である場合、FSKされていないものと判定してもよい。
【0043】
規格判定部424は、周波数データD11およびFSK判定データD12を受け、周波数検出部420が検出した周波数fと、周波数検出部420により判定されたFSKの有無と、に応じて、ワイヤレス送電装置200が準拠する規格を判定する。
【0044】
以下、規格判定部424による判定処理を説明する。本発明者らは、デジタルpingフェーズの開始直後において送電装置200が発生する信号S2の周波数の時間変化に着目した。
【0045】
図3(a)〜(d)は、PMA−1,PMA−3,PMA−4,Qi規格におけるデジタルpingフェーズの周波数の遷移を示す図である。
図3(a)のPMA−1規格では、デジタルPingフェーズの開始後、周波数は480kHzから徐々に低下していき(周波数スイープ)、その後、ある期間(M_period)にわたり、周波数は250kHz〜260kHzをとる。
【0046】
図3(b)のPMA−3規格では、デジタルPingフェーズの開始後、周波数が315kHzから徐々に低下し、その後、期間M_periodにわたり、周波数は220kHz〜230kHzをとる。図3(c)のPMA−4規格では、デジタルPingフェーズの開始から周波数が低下し、期間M_periodにわたり、周波数は150kHzをとる。図3(d)では、周波数は110kHz〜190kHzを取り得る。
【0047】
図3(a)〜(c)、および(d)に着目すると、いずれの規格においても、期間M_periodに含まれるように、ある共通の検出期間TDET(t1〜t2)を設定すると、その時間ウィンドウ内では、信号S2は、それぞれの規格に対応したある周波数または周波数レンジを有している。つまり検出期間TDETを適切に設定し、その検出期間TDET内での周波数を測定することで、規格を判定することができる。
【0048】
またPMA−3,PMA−4規格においては、期間M_periodにおいて信号S2はFSKされている。したがって検出期間TDETにおいて、FSKの有無を判定することで、規格を判定できる。
【0049】
時刻t=0は、デジタルpingフェーズの開始時刻である。受電装置300においては、デジタルpingフェーズの開始に際して、リセット解除が発生する。したがってスタートタイミングをリセット解除にとるとき、第1時間τ=t1、第2時間τ=t2に設定すればよいことがわかる。そこで周波数検出部420は、リセット解除を契機として時間測定を開始し、第1時間τ経過後の時刻t1〜第2時間τ経過後の時刻t2の間を、周波数およびFSKの検出期間(ウィンドウ)TDETに設定する。
【0050】
検出期間TDETとしては、たとえばt1=4ms、t2=7msが好適である。t1=3〜5msの範囲で定めてもよく、t2=6〜8msの範囲で定めてもよい。
【0051】
図4は、検出期間TDETにおける周波数およびFSKの有無と、規格との対応関係を示す図である。
【0052】
規格判定部424は、(i)検出期間TDETにおいて検出された周波数fDETが、230kHz〜250kHzの間に定められた第1周波数fより高いとき、PMA(Power Matters Alliance)−1規格と判定する。たとえば第1周波数fは、230kHz〜250kHzのセンターの240kHz(またはその近傍)に設定される。
【0053】
また(ii)検出された周波数fDETが、190kHz〜220kHzの間に定められた第2周波数fより高く、第1周波数fより低く、かつFSKが検出されたとき、PMA−3規格と判定する。たとえば第2周波数fは、190kHz〜220kHzのセンター付近の200kHz(あるいは205kHz)に設定される。
【0054】
規格判定部424は、(iii)検出された周波数fDETが、第2周波数fより低く、かつFSKが検出されたとき、PMA−4規格と判定し、(iv)検出された周波数fDETが、第2周波数fより低く、かつFSKが検出されないとき、Qi規格と判定する。
また規格判定部424は、(v)検出された周波数fDETが、第2周波数fより高く第1周波数fより低く、FSKが検出されないとき、未知(unknown)のワイヤレス送電装置と判定する。

【0055】
図5は、規格判定のフローチャートである。リセット解除が発生すると(S200)、時間測定が開始され、τ経過後の時刻t1から、τ2経過後の時刻tまでの間が検出期間TDETに設定される(S202)、検出期間TDETにおいて周波数fDETが測定される(S204)。そして周波数fDETにもとづく分岐処理が行われ(S206)、第1周波数fより高い場合(fDET=240kHz〜300kHz)には(S208)、PMA−1規格と判定する(SS10)。
【0056】
周波数fDETが、第2周波数fより高く、第1周波数fより低い(fDET=200kHz〜239kHz)場合(S212)、FKSの有無が判定される(S214)。そしてFSKが検出された場合(S214のY)には、PMA−3規格と判定される(S216)。FSKが検出されない場合(S214のN)には、未知(unknown)の規格と判定される(S218)。
【0057】
周波数fDETが、第2周波数fより低い(fDET=100kHz〜199kHz)場合(S220)にも、FKSの有無が判定される(S222)。そしてFSKが検出された場合(S222のY)には、PMA−4規格と判定される(S226)。FSKが検出されない場合(S222のN)には、Qi規格と判定される(S228)。
【0058】
この制御により、PMA−1,PMA−3,PMA−4およびQi規格を自動判定することができる。
【0059】
(用途)
最後に、実施の形態に係るワイヤレス受電装置300を用いた電子機器の例を説明する。図6は、実施の形態に係る受電装置300を備える電子機器500を示す図である。図6の電子機器500は、スマートホン、タブレットPCや携帯型ゲーム機、携帯型オーディオプレイヤであり、筐体501の内部には、電源回路504、二次電池506、プロセッサ508、ディスプレイ装置510および上述の受電装置300が内蔵される。プロセッサ508は、無線(RF)部、ベースバンドプロセッサ、アプリケーションプロセッサ、オーディオプロセッサ等を含んでもよい。
【0060】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0061】
(変形例1)
規格判定部424による判定アルゴリズムは、実施の形態で説明した判定基準(i)〜(v)の組み合わせには限定されない。たとえば、判定基準(i)〜(v)のうち、2個、3個、あるいは4個、すなわち少なくとも2個を採用し、残りの規格については、別の基準を採用してもよい。
【0062】
(変形例2)
実施の形態では、しきい値となる2つの周波数f,fを設定し、規格を判定したが本発明はそれには限定されない。変形例2では、図4の上部に示すように、第3周波数f〜第6周波数fの4つのしきい値が設定される。第3周波数fは、250kHzまたはそれより低く定められ、第4周波数fは、230kHzまたはそれより高く定められ、第5周波数fは、220Hzまたはそれより低く定められ、第6周波数fは、190kHzまたはそれより高く定められる。
【0063】
そして、(a)fDET>fのとき、PMA(Power Matters Alliance)−1規格と判定する。f<fDET<fの場合、(b)FSKが検出されたとき、PMA−3規格と判定し、(e)FSKが検出されないとき、未知の規格と判定する。(c)fDET<fの場合、FSKが検出されるとPMA−4規格と判定し、(d)FSKが検出されないとき、Qi規格と判定する。この変形例によれば、実施の形態にくらべて厳格に規格を判定できる。
【0064】
あるいは規格判定部424は、判定基準(a)〜(e)のうち、2個、3個、あるいは4個、すなわち少なくとも2個を採用し、残りの規格については、別の基準を採用してもよい。
【0065】
あるいは規格判定部424は、判定基準(i)〜(v)と、判定基準(a)〜(e)を組み合わせて、複数の規格を判定してもよい。
【0066】
このように、規格の判定方法にはさまざまなバリエーションが存在し、これらのバリエーションも本発明の範囲に含まれる。
【0067】
(変形例3)
実施の形態では、検出期間TDETの設定の基準となるスタートタイミングを、リセット解除としたが本発明はそれには限定されず、リセット解除以外のイベントを基準として、検出期間TDETを設定してもよい。検出期間TDETは、周波数が安定する期間M_periodに含まれるよう定めればよく、スタートタイミングとなるイベントに応じて、第1時間τ、第2時間τを適切に設定すればよい。
【0068】
(変形例4)
実施の形態では、整流電圧VRECTをデジタル値DRECTに変換し、電力制御部406がデジタル信号処理により、電力制御データDPCを制御したが本発明はそれには限定されない。すなわち、電力制御データDPCの制御の一部あるいは全部を、アナログ信号処理によって行ってもよい。たとえば電圧比較に関して、電圧コンパレータを用いて行ってもよい。
【0069】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0070】
S1…駆動信号、S2…電力信号、S3…制御信号、100…給電システム、200…送電装置、202…送信コイル、204…ドライバ、206…コントローラ、208…復調器、300…受電装置、302…受信コイル、304…整流回路、306…平滑コンデンサ、308…変調器、400…制御回路、402…電圧測定部、406…電力制御部、408…変調器、420…周波数検出部、422…変調検出部、424…規格判定部、500…電子機器、501…筐体、502…負荷、504…電源回路、506…二次電池、508…プロセッサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6