特許第6498439号(P6498439)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6498439インフルエンザウイルスワクチン及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498439
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】インフルエンザウイルスワクチン及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20190408BHJP
   A61K 39/145 20060101ALI20190408BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20190408BHJP
   C12N 15/44 20060101ALN20190408BHJP
   C07K 14/11 20060101ALN20190408BHJP
【FI】
   C12N7/01
   A61K39/145
   A61P31/16
   !C12N15/44ZNA
   !C07K14/11
【請求項の数】40
【全頁数】329
(21)【出願番号】特願2014-531931(P2014-531931)
(86)(22)【出願日】2012年9月19日
(65)【公表番号】特表2014-530003(P2014-530003A)
(43)【公表日】2014年11月17日
(86)【国際出願番号】US2012056122
(87)【国際公開番号】WO2013043729
(87)【国際公開日】20130328
【審査請求日】2015年9月17日
(31)【優先権主張番号】61/536,924
(32)【優先日】2011年9月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/607,526
(32)【優先日】2012年3月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/565,899
(32)【優先日】2011年12月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/670,108
(32)【優先日】2012年7月10日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/648,525
(32)【優先日】2012年5月17日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/684,481
(32)【優先日】2012年8月17日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511235962
【氏名又は名称】アイカーン スクール オブ メディシン アット マウント サイナイ
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】アドルフォ ガルシア‐サストレ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター パレセ
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン クラムメル
(72)【発明者】
【氏名】ナタリー ピカ
(72)【発明者】
【氏名】ダーク エギンク
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル エー.メディーナ‐シルバ
(72)【発明者】
【氏名】ロング ハイ
【審査官】 鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/148511(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/111966(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/087092(WO,A1)
【文献】 特開2011−057653(JP,A)
【文献】 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2009, Vol.106, No.43, pp.18137-18142
【文献】 J. Immunol., 2011.07(online), Vol.187, pp.1884-1894
【文献】 J. Virol., 1993, Vol.67, No.6, pp.3048-3060
【文献】 Plos Pathogens, 2010, Vol.6, No.11, e1001211
【文献】 Virology, 2008, Vol.376, pp.323-329
【文献】 Plos One, 2011.07, Vol.6, No.7, e22844
【文献】 J. Virol., 2003, Vol.77, No.14, pp.8031-8038
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C07K 14/00−14/825
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性キメラインフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする核酸を発現するように改変されたゲノムを含むウイルスであって、該キメラインフルエンザウイルスHAポリペプチドが、HAステムドメイン及びHA球状ヘッドドメインを含み、該HA球状ヘッドドメインが、該HAステムドメインのインフルエンザウイルス株又は亜型とは異なるインフルエンザウイルス株又は亜型由来のものであり、ここで、
(a) 該HAステムドメインが、(i) HA1のN末端ステムセグメントであって、HA1N-termからApのアミノ酸残基からなる該HA1のN末端ステムセグメント;(ii) HA1のC末端ステムセグメントであって、AqからHA1C-termのアミノ酸残基からなる該HA1のC末端ステムセグメント;及び(iii) HA2ステムドメインを含み;かつ
(b) 該HA球状ヘッドドメインが、HA1ドメインのApとAqの間のアミノ酸残基を含み、
ここで、HA1N-termが、シグナルペプチドが除去されている成熟したHA0タンパク質のN末端アミノ酸であり;HA1C-termが、HA1ドメインのC末端アミノ酸であり;かつApが、H3付番を用いてHA1ドメインのアミノ酸位置52に対応するCysであり;Aqが、H3付番を用いてHA1ドメインのアミノ酸位置277に対応するCysである、前記ウイルス。
【請求項2】
可溶性キメラインフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むウイルスであって、該キメラインフルエンザウイルスHAポリペプチドが、HAステムドメイン及びHA球状ヘッドドメインを含み、該HA球状ヘッドドメインが、該HAステムドメインのインフルエンザウイルス株又は亜型とは異なるインフルエンザウイルス株又は亜型由来のものであり、ここで、
(a) 該HAステムドメインが、(i) HA1のN末端ステムセグメントであって、HA1N-termからApのアミノ酸残基からなる該HA1のN末端ステムセグメント;(ii) HA1のC末端ステムセグメントであって、AqからHA1C-termのアミノ酸残基からなる該HA1のC末端ステムセグメント;及び(iii) HA2ステムドメインを含み;かつ
(b) 該HA球状ヘッドドメインが、HA1ドメインのApとAqの間のアミノ酸残基を含み、
ここで、HA1N-termが、シグナルペプチドが除去されている成熟したHA0タンパク質のN末端アミノ酸であり;HA1C-termが、HA1ドメインのC末端アミノ酸であり;かつApが、H3付番を用いてHA1ドメインのアミノ酸位置52に対応するCysであり;Aqが、H3付番を用いてHA1ドメインのアミノ酸位置277に対応するCysである、前記ウイルス。
【請求項3】
前記HA球状ヘッドドメインが、該HAステムドメインのインフルエンザウイルス亜型とは異なるインフルエンザウイルス亜型由来のものである、請求項1又は2記載のウイルス。
【請求項4】
前記HA球状ヘッドドメインが、該HAステムドメインのインフルエンザウイルス株とは異なるインフルエンザウイルス株由来のものである、請求項1又は2記載のウイルス。
【請求項5】
前記HAステムドメインが、季節性インフルエンザウイルス株由来である、請求項1〜4のいずれか一項記載のウイルス。
【請求項6】
前記HAステムドメインが、亜型H1のインフルエンザウイルスのHAステムドメインである、請求項1〜4のいずれか一項記載のウイルス。
【請求項7】
前記HAステムドメインが、亜型H3のインフルエンザウイルスのHAステムドメインである、請求項1〜4のいずれか一項記載のウイルス。
【請求項8】
前記H1亜型が、A/カリフォルニア/04/09である、請求項6記載のウイルス。
【請求項9】
前記H3亜型が、A/パース/16/2009である、請求項7記載のウイルス。
【請求項10】
前記HA球状ヘッドドメインが、亜型H5のインフルエンザウイルスのHA球状ヘッドドメインである、請求項1〜9のいずれか一項記載のウイルス。
【請求項11】
前記HA球状ヘッドドメインが、亜型H2、H6、H8、H9、H11、H12、H13、又はH16のインフルエンザウイルスのHA球状ヘッドドメインである、請求項6又は8記載のウイルス。
【請求項12】
前記HA球状ヘッドドメインが、亜型H8、H11、又はH12のインフルエンザウイルスのHA球状ヘッドドメインである、請求項6又は8記載のウイルス。
【請求項13】
前記HA球状ヘッドドメインが、亜型H4、H7、H10、H14、又はH15のインフルエンザウイルスのHA球状ヘッドドメインである、請求項7又は9記載のウイルス。
【請求項14】
前記HA球状ヘッドドメインが、A/ベトナム/1203/04(H5)のHA球状ヘッドドメインである、請求項9記載のウイルス。
【請求項15】
前記HA球状ヘッドドメインが、A/アルバータ/24/01(H7)のHA球状ヘッドドメインである、請求項9記載のウイルス。
【請求項16】
(a)前記HAステムドメインが、少なくとも1つの修飾されたグリコシル化部位を含み、該修飾されたグリコシル化部位が、アミノ酸配列Asn-Xaa-Ser/Thr/Cysを有する天然のグリコシル化部位の修飾を含み、該修飾が、該修飾されたグリコシル化部位に結合するグリカンの能力を破壊し、ここで、Xaaが任意のアミノ酸である;及び/又は
(b)前記HA球状ヘッドドメインが、アミノ酸配列Asn-Xaa-Ser/Thr/Cysを有する1以上の非天然のグリコシル化部位を含み、ここで、Xaaが任意のアミノ酸である、
請求項1〜15のいずれか一項記載のウイルス。
【請求項17】
(a)前記修飾されたグリコシル化部位が、H3付番体系に従って、アミノ酸位置20-22、21-23、33-35、46-48、289-291、290-292、296-298、及び481-483からなる群から選択されるアミノ酸位置に位置しており、前記HAステムドメインが、亜型H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、及びH16のインフルエンザウイルス由来のHAステムドメインであるか;
(b)前記修飾されたグリコシル化部位が、H3付番体系に従って、アミノ酸位置8-10、22-24、38-40、46-48、296-298、410-412、及び481-483からなる群から選択されるアミノ酸位置に位置しており、前記HAステムドメインが、亜型H3、H4、H7、H10、H14、又はH15のインフルエンザウイルス由来のHAステムドメインであるか;又は
(c)前記修飾が、前記天然のグリコシル化部位の1以上のアミノ酸置換を含む、
請求項16記載のウイルス。
【請求項18】
(a)前記HA球状ヘッドドメインが、インフルエンザウイルスH1亜型のHA球状ヘッドドメインであり、かつ前記非天然のグリコシル化部位が、Sa、Sb、Ca、もしくはCb抗原性部位に位置しているか;
(b)前記HA球状ヘッドドメインが、インフルエンザウイルスH3亜型であり、かつ前記非天然のグリコシル化部位が、A、B、C、もしくはD抗原性部位に位置しているか;又は
(c)前記非天然のグリコシル化部位が、H3付番に従って、血球凝集素アミノ酸位置59-61、129-131、158-160、又は165-167にある、
請求項16記載のウイルス。
【請求項19】
前記HAステムドメインが、HA1とHA2との間の接合部でのプロテアーゼ切断に対して抵抗性である、請求項1〜18のいずれか一項記載のウイルス。
【請求項20】
前記HAステムドメインが、HA2内腔ドメイン、HA2膜貫通ドメイン、及びHA2細胞質ドメインを更に含む、請求項1〜19のいずれか一項記載のウイルス。
【請求項21】
前記HAステムドメインが、HA2内腔ドメインを欠いており、HA2膜貫通ドメインを欠いており、かつHA2細胞質ドメインを欠いている、請求項1〜20のいずれか一項記載のウイルス。
【請求項22】
前記キメラインフルエンザウイルスHAポリペプチドが、フォルドンドメイン又は三量体化ドメインを含む、請求項1〜21のいずれか一項記載のウイルス。
【請求項23】
インフルエンザウイルスである、請求項1〜22のいずれか一項記載のウイルス。
【請求項24】
前記インフルエンザウイルスが、A型インフルエンザウイルスである、請求項23記載のウイルス。
【請求項25】
前記ウイルスが、不活化されているか、又は分割されている、請求項1〜24のいずれか一項記載のウイルス。
【請求項26】
前記ウイルスが、弱毒化されている、請求項1〜24のいずれか一項記載のウイルス。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか一項記載のウイルスを含む、免疫原性組成物。
【請求項28】
前記免疫原性組成物が、アジュバントを更に含む、請求項27記載の免疫原性組成物。
【請求項29】
前記アジュバントが、アルミニウム塩、3デ-O-アシル化モノホスホリル脂質A(MPL)、MF59、AS03、AS04、ポリソルベート80、イミダゾピリジン化合物、イミダゾキノキサリン化合物、サポニン、フロイントアジュバント、水中油エマルジョン、又はCpGである、請求項28記載の免疫原性組成物。
【請求項30】
前記免疫原性組成物が、筋肉内又は鼻腔内投与用に製剤化される、請求項2729のいずれか一項記載の免疫原性組成物。
【請求項31】
インフルエンザウイルス感染又はインフルエンザウイルス疾患に対して対象を免疫化するための、又は対象においてインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに対する免疫応答を誘発するための、請求項2730のいずれか一項記載の免疫原性組成物。
【請求項32】
対象においてインフルエンザウイルス疾患を予防するための、請求項2730のいずれか一項記載の免疫原性組成物。
【請求項33】
対象においてインフルエンザウイルス疾患又はインフルエンザウイルス感染を治療するための、請求項2730のいずれか一項記載の免疫原性組成物。
【請求項34】
インフルエンザウイルス感染又はインフルエンザウイルス疾患に対して対象を免疫化するための、又は対象においてインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに対する免疫応答を誘発するための、請求項2730のいずれか一項記載の免疫原性組成物であって、該免疫原性組成物が、第2のキメラインフルエンザウイルスHAポリペプチド又は第2のキメラインフルエンザウイルスHAポリペプチドを含む第2のウイルスを含む第2の免疫原性組成物と組み合わせて該対象に投与されるように使用され、該第2のキメラインフルエンザウイルスHAポリペプチドが、第2のHA球状ヘッドドメイン及び第2のHAステムドメインを含み、該第2のHA球状ヘッドドメインが、該第2のHAステムドメインのインフルエンザウイルス株又は亜型とは異なるインフルエンザウイルス株又は亜型由来のものであり、かつ該第2のキメラインフルエンザウイルスHAポリペプチドが、前記キメラインフルエンザウイルスHAポリペプチドと同じHAステムドメインを含む、前記免疫原性組成物。
【請求項35】
前記第2のHA球状ヘッドドメインが、前記第2のHAステムドメインのインフルエンザウイルス株とは異なるインフルエンザウイルス株由来のものである、請求項34記載の免疫原性組成物。
【請求項36】
前記第2のHA球状ヘッドドメインが、前記第2のHAステムドメインのインフルエンザウイルス亜型とは異なるインフルエンザウイルス亜型由来のものである、請求項34記載の免疫原性組成物。
【請求項37】
インフルエンザウイルス感染又はインフルエンザウイルス疾患に対して対象を免疫化するための、請求項2730のいずれか一項記載の免疫原性組成物であって、該免疫原性組成物が、インフルエンザウイルスである第2のウイルスと組み合わせて該対象に投与されるように使用され、前記キメラインフルエンザウイルスHAポリペプチドが、該第2のウイルスのHAポリペプチドと同じHAステムドメインを含む、前記免疫原性組成物。
【請求項38】
前記第2のウイルスのHAポリペプチドのHA球状ヘッドドメインと前記キメラインフルエンザウイルスHAポリペプチドは異種である、請求項37記載の免疫原性組成物。
【請求項39】
前記対象が、ヒトである、請求項3138のいずれか一項記載の免疫原性組成物。
【請求項40】
(a) 発育卵又は細胞又は細胞株で請求項1〜24又は26のいずれか一項記載のウイルスを増殖させること、及び(b) 該ウイルスを該発育卵又は細胞又は細胞株から単離することを含む、請求項1〜24又は26のいずれか一項記載のウイルスを産生するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が引用により本明細書中に組み込まれている、2011年9月20日に出願された米国仮出願第61/536,924号、2011年12月1日に出願された米国仮出願第61/565,899号、2012年3月6日に出願された米国仮出願第61/607,526号、2012年5月17日に出願された米国仮出願第61/648,525号、2012年7月10日に出願された米国仮出願第61/670,108号、及び2012年8月17日に出願された米国仮出願第61/684,481号の優先権の恩典を主張する。
【0002】
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって授与された助成番号AI070469、AI086061、及びHHSN266200700010Cの下で米国政府による支援を受けて行なわれた。米国政府は、本発明における一定の権利を有する。
【0003】
(1.序論)
本明細書に提供されるのは、flu血球凝集素ポリペプチド、例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド、それを含む組成物、それを含むワクチン、及びそれらの使用方法である。
【背景技術】
【0004】
(2.背景)
インフルエンザウイルスは、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)のファミリーに属するエンベロープ型のRNAウイルスである(Palese及びShawの文献(2007, オルトミクソウイルス科:ウイルス及びその複製(Orthomyxoviridae: The Viruses and Their Replication), 第5版.フィールズのウイルス学(Fields' Virology), B.N. Fields, D. M. Knipe、及びP.M. Howley編. Wolters Kluwer Health/Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, USA, p1647-1689))。A型インフルエンザウイルスの自然宿主は主に鳥類であるが、A型インフルエンザウイルス(鳥類起源のものを含む)は、ヒト及び他の動物宿主(コウモリ、イヌ、ブタ、ウマ、海洋哺乳動物、及びイタチ類)に感染し、疾病を引き起こすこともできる。例えば、アジアで広がっているH5N1 A型鳥インフルエンザウイルスは、中国及びインドネシアのブタで発見されており、その宿主範囲を広げて、A型インフルエンザに感染しやすいと一般に考えられていなかったネコ、ヒョウ、及びトラを含むようになってもいる(CIDRAP-鳥インフルエンザ:農業及び野生生物での注意事項(Avian Influenza: Agricultural and Wildlife Considerations))。動物におけるインフルエンザウイルス感染の出現は、ヒトパンデミックインフルエンザ株を発生させる可能性がある。
【0005】
A型及びB型インフルエンザウイルスは、主要なヒト病原体であり、不顕性感染から死をもたらすこともある原発性ウイルス肺炎まで重症度が異なる呼吸器疾患を引き起こす。感染の臨床的効果は、インフルエンザ株の病原性、並びに宿主の曝露、病歴、年齢、及び免疫状態によって様々である。季節性インフルエンザに起因する累積罹患率及び死亡率は、比較的高い発病率のためにかなり高い。通常の季節では、インフルエンザは、全世界で300万〜500万症例の重症疾患及び最大500,000人の死亡を引き起こすことができる(世界保健機構(2003)インフルエンザ:概説(Influenza: Overview);2003年3月)。米国では、インフルエンザウイルスは、人口のおよそ10〜15%に感染し(Glezen及びCouch RBの文献(1978)1974〜76年のヒューストン地区のパンデミック間期インフルエンザ(Interpandemic influenza in the Houston area, 1974-76.)(N Engl J Med 298:587-592);Foxらの文献(1982) 1975〜1979年のシアトルの家族におけるインフルエンザウイルス感染。II.病気に侵された家庭における感染パターン、並びに年齢及び事前抗体と感染及び関連疾病の発生との関係(Influenza virus infections in Seattle families, 1975-1979. II. Pattern of infection in invaded households and relation of age and prior antibody to occurrence of infection and related illness.)(Am J Epidemiol 116:228-242)、毎年約30,000人の死亡と関連する(Thompson WWらの文献(2003)米国におけるインフルエンザ及び呼吸器合胞体ウイルスと関連する死亡(Mortality Associated with Influenza and Respiratory Syncytial Virus in the United States.)(JAMA 289:179-186);Belshe(2007)ワクチンに関するトランスレーショナルリサーチ:インフルエンザを一例として(Translational research on vaccines: influenza as an example.)(Clin Pharmacol Ther 82:745-749)。
【0006】
毎年の流行に加え、インフルエンザウイルスは、たまに起こるパンデミックの原因である。例えば、A型インフルエンザウイルスは、1918年、1957年、1968年、及び2009年に発生したようなパンデミックを引き起こすことができる。主要なウイルス抗原である血球凝集素(HA)に対する予め形成された免疫がないために、パンデミックインフルエンザは、単年で人口の50%よりも多くに影響を及ぼすことができ、しばしば流行性インフルエンザよりも重い疾患を引き起こす。明確な例は、およそ5000万人〜1億人が死亡した、1918年のパンデミックである(Johnson及びMuellerの文献(2002)説明の更新:1918〜1920年の「スペイン風邪(Spanish)」による全世界の死亡者数(Updating the Accounts: Global Mortality of the 1918-1920 "Spanish")(Influenza Pandemic Bulletin of the History of Medicine 76:105-115)。1990年代後半の高病原性鳥H5N1インフルエンザウイルス(Claasらの文献(1998)高病原性鳥インフルエンザウイルスと関連するヒトA型インフルエンザH5N1ウイルス(Human influenza A H5N1 virus related to a highly pathogenic avian influenza virus.)(Lancet 351:472-7)の出現以降、それが次のパンデミックウイルスとなるかも知れないという懸念がある。さらに、H7及びH9株は、これらの株が時折ヒトに感染するので、新たなパンデミックの候補である。
【0007】
インフルエンザウイルス感染を防御する有効な方法は、ワクチン接種によるものである;しかしながら、現在のワクチン接種手法は、循環している株とワクチン製剤に含まれる分離株との間で良好な一致が得られることを当てにしている。そのような一致は、因子の組合せのために得るのが困難であることが多い。第1に、インフルエンザウイルスは絶えず変化を遂げている:3〜5年ごとに、A型インフルエンザウイルスの優勢株は、既存の抗体応答を避けるのに十分な抗原連続変異(antigenic drift)を経た変異体に取って代わられる。そのため、ワクチン製剤に含まれるべき分離株は、世界保健機関(WHO)の共同研究センターの集中的な監視努力に基づいて、毎年選択されなければならない。第2に、ワクチンの製造及び流通に十分な時間を与えるために、株は、インフルエンザシーズンの開始の約6カ月前に選択されなければならない。ワクチン株選択委員会の予測が不正確で、ワクチン接種の有効性が大幅に低下することもある。
【0008】
A型インフルエンザウイルスの新規亜型がヒト集団に侵入する可能性も、現在のワクチン接種戦略にとって大きな課題となっている。インフルエンザウイルスのどの亜型及び株が次のパンデミックをもたらすかを予測することは不可能なので、現在の株特異的手法を用いて、パンデミックインフルエンザワクチンを調製することはできない。
【発明の概要】
【0009】
(3.概要)
本明細書に提供されるのは、インフルエンザウイルスの保存されたHAステムドメイン(本明細書で「ストーク」ドメインと呼ばれることもある)に対する交差防御免疫応答を誘導するflu血球凝集素(HA)ポリペプチドである。一態様において、本発明は、安定なHAストークを有するキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド(すなわち、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)の設計及び構築に関するものであり、該安定なHAストークは、該ストークと異種の球状HAヘッドを提示する。ワクチン接種用に設計されるHA免疫原はHAストーク領域を共有するが、その球状ヘッドが極めて異なっている。そのような構築物は、保存されたHAストークに対する極めて強力でかつ広域中和性の抗体を誘発する、生インフルエンザウイルス、死滅インフルエンザウイルス、ウイルス/ウイルス様粒子(「VLP」)、サブユニットワクチン、スプリットワクチンなどのワクチン製剤へと改変される。そのような「普遍的な」ワクチンを用いて、インフルエンザウイルス亜型にわたる交差防御免疫応答を誘導し及び/又は増進させることができる。
【0010】
背景として、インフルエンザウイルスに対する中和抗体は、HA糖タンパク質を標的とし、ウイルス侵入に関与する結合段階又は融合段階のいずれかを妨げる。2つの基本的サブセットの中和抗体:株特異的球状ヘッド(インフルエンザウイルスの様々な株及び亜型にわたって保存されてないドメイン)に対する抗体、及びHA糖タンパク質の高度に保存されたステムに対する抗体は、インフルエンザウイルスへの曝露によって誘発される。保存されていないHA球状ヘッドは、免疫優性エピトープを担持する。理論に束縛されるものではないが、株特異的抗球状ヘッド抗体は、抗ステム抗体よりも強力であり、したがって、現在のワクチンの感染によって付与される主として株特異的な免疫を説明するものであると考えられる。
【0011】
本発明は、HAステムに対する極めて強力でかつ広域中和性の抗体を誘発するインフルエンザウイルスワクチンに対する本発明者らの合理的設計戦略に一部基づいている。これに関して、キメラHA免疫原は、過去の曝露/ワクチン接種からの比較的よく保存されたストークドメインを共有するが、異種HA球状ヘッド-好ましくは、意図されるワクチン被接種者(vaccinate)が感作されていないものを含むように設計される。この構築物への曝露は、主に、保存されたHAステムに対する抗体を増加させるはずである。保存されたHAステムによる免疫の繰返し及び球状ヘッドの変更は、HAの共通のステム領域に対する強力な交差中和抗体を誘導するはずである。
【0012】
キメラHA構築物を設計する場合、得られるタンパク質の安定性を維持するように注意を払うべきである。これに関して、図1でAp及びAqとして特定されているシステイン残基を維持することが推奨されるが、それは、それらが、下記の第5.1節でより詳細に論じられているようにHAストークの安定性に寄与するからである。最良の安定性を得るために、HA球状ドメインを全体として(図1に示すように、Apシステイン残基とAqシステイン残基の間で)「交換する」ことが好ましいが、それは、得られる立体構造が、天然の構造に最も近いからである。言い換えると、第5.1.2節で言及される「リンカー」は、異種HAの球状ヘッドドメイン全体であることができる。
【0013】
HAストークの天然の球状ヘッドを「完全に交換する」代わりに、HA球状ヘッドエピトープに寄与するループを改変することにより、該球状ヘッドを保存されたストークと異種のものにすることができる。この手法は、とりわけ、集団が曝露されているHAを使用するときには、改変される球状ヘッドを天然の球状HAヘッドと大きく異なるように設計しない限り、保存されたストークに対する所望の免疫応答を生じさせるのに同様には有効でない場合がある。それにもかかわらず、そのような改変は、例えば、HA球状ヘッドエピトープに寄与する5つのループの大部分を改変することによって達成することができる。1つの有用な手法において、5つ全てのループを改変することができる。或いは、又はさらに、5つのループ中のエピトープを、グリコシル化部位を球状ヘッドドメインに導入することによってマスクすることができる。
【0014】
ワクチン接種に使用される構築物を、ワクチン接種されるべき特定の対象/集団用に有利に設計することができる。現在生きているヒトが曝露されている3つのインフルエンザ亜型:亜型H1、H2、及びH3が存在する。H2亜型のインフルエンザウイルスは、1968年に該集団から消失したが、H1及びH3亜型のインフルエンザウイルスは、今日まで該集団内に存続している。結果として、1968年以前に生まれた現在生きている成人は、H1、H2、及びH3亜型の各々に曝露されている可能性が高い。対照的に、1968年以後に生まれた現在生きている成人は、H1及びH3亜型にしか曝露されていない可能性が高い。
【0015】
したがって、成人のワクチン接種のための好ましい実施態様において、キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、亜型H1、H2、又はH3のインフルエンザウイルスのHA由来の球状ヘッドドメインを保持するのではなく、これら3つの亜型のうちの1つのHA由来のステムドメインを保有する。異種球状ヘッドは、任意の非H1、非H2、又は非H3亜型のHAから選択することができる。また、一方ではH1/H2ステム、他方ではH3ステムを用いて作製される別々のキメラ構築物をワクチン接種プログラムで有益に使用することができ--H1及びH2亜型は、保存されたストークドメインを共有するグループ1 HA亜型であり;一方、H3は、グループ1のストークとは構造的に異なるストークドメインを有するグループ2亜型である。H1及びH3構築物の使用は、各々のステムドメインに対する免疫応答の生成/増進を保証する。そのようなキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドによる成人対象の免疫は、該対象の記憶免疫応答を増進させ、該対象におけるインフルエンザウイルスに対する長期持続性免疫をもたらす交差反応性、広域中和性の抗ステムドメイン抗体の大規模産生をもたらす。
【0016】
曝露されたことがない乳児は、当然ながら、全てのインフルエンザウイルス亜型に感作されていない。結果として、多種多様なHAステム/球状ヘッド組合せを乳児用のワクチンで使用するために構築することができる。好ましい実施態様において、未感作の乳児に、グループ1(H1もしくはH2)又はグループ2(H3)株のHAストーク、並びに異種株;すなわち、非H1、非H2、及び/又は非H3株由来の球状ヘッドを用いて作製される構築物をワクチン接種することができる。各々のHAストークについての3つの異なるキメラHA構築物を3回の順次ワクチン接種で有利に用いて、交差防御応答を誘導することができる。
【0017】
ワクチン接種に使用されるキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを有利に設計して、これらのポリペプチドへのグリコシル化部位の付加又は修飾により、対象においてHAステムドメインに対する極めて強力でかつ広域中和性の抗体を効果的に誘発することもできる。HA球状ヘッド及びステムドメインのグリコシル化は、抗原性部位をマスクすることができ、それにより、インフルエンザウイルスが対象内の免疫応答を回避することを可能にすると考えられる。しかしながら、インフルエンザウイルスHAポリペプチドとの関連において、キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメイン内でのグリコシル化は、グリコシル化によって遮蔽されるこのドメイン内の抗原性領域に対する所望の免疫応答を妨害又は防止することがある。したがって、ある好ましい実施態様において、キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、ステムドメインへのグリカンの結合を破壊し、それにより、該ステムドメインに免疫応答をより誘発させる、1以上の修飾されたグリコシル化部位を含む。ステムドメインの免疫原性をさらに増大させるために、構築物は、グリコシル化されたときに、球状ヘッドドメイン中に見出される免疫優性抗原性領域を免疫応答の誘発から保護する球状ヘッドドメイン中の非天然のグリコシル化部位をさらに含むことができる。非天然のグリコシル化部位の1つの例は、ある亜型のインフルエンザウイルスHAの球状ヘッドドメインへのグリコシル化部位の付加であり、ここで、該グリコシル化部位は、別の亜型のインフルエンザウイルスHA球状ヘッドドメイン中に天然に見出される。非天然のグリコシル化部位の別の例は、ある株由来のインフルエンザウイルスHAの球状ヘッドドメインへのグリコシル化部位の付加であり、ここで、該グリコシル化部位は、インフルエンザウイルスの別の株由来のHAの球状ヘッド中に天然に見出される。非天然のグリコシル化部位のまた別の例は、ある株由来のHAの球状ヘッドへのグリコシル化部位の付加であり、ここで、該グリコシル化部位は、インフルエンザウイルスの別の亜型又は株由来のHAの球状ヘッド中に天然には見出されない。任意の特定の動作理論に束縛されるものではないが、球状ヘッドドメインにおけるさらなるグリコシル化は、保存されたステムドメインに対する免疫応答を増大させる一方で、球状ヘッドドメインに対する免疫応答を低下させると考えられる。
【0018】
本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの使用は有利であることが理解されるべきである。なぜなら、(i)該ポリペプチドは、(無傷の球状ヘッドドメインを保有するために)極めて安定であり、及び(ii)該ポリペプチドが投与される対象の免疫系は、過去にキメラインフルエンザ血球凝集素の球状ヘッドドメインに曝露されたことはないが、キメラインフルエンザ血球凝集素のステムドメインの保存されたエピトープに曝露されたことがあるからである。
【0019】
別の態様において、本明細書に提供されるのは、ステムドメインへのグリカンの結合を破壊する1以上の修飾されたグリコシル化部位を含むステムドメインを含むflu HAポリペプチド(例えば、インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド及び非キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)である。
【0020】
別の態様において、本明細書に提供されるのは、1以上の非天然のグリコシル化部位を含む球状ヘッドドメインを含むflu HAポリペプチド(例えば、インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド及び非キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)である。
【0021】
また別の態様において、本明細書に提供されるのは、(1)ステムドメインへのグリカンの結合を破壊する1以上の修飾されたグリコシル化部位を含むステムドメイン;及び(2)1以上の非天然のグリコシル化部位を含む球状ヘッドドメインを含むflu HAポリペプチド(例えば、インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド及び非キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)である。
【0022】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、HAステムドメイン及びHA球状ヘッドドメインを含むキメラインフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ポリペプチドであり、ここで:(1)該HA球状ヘッドドメインは、該HAステムドメインと異種であり;及び(2)該HAステムドメインは、1以上の修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該ステムドメイン中のグリコシル化部位へのグリカンの結合を破壊/妨害するグリコシル化部位に対する修飾を含む。具体的な実施態様において、該修飾されたグリコシル化部位は、アミノ酸配列Asn-Xaa-Ser/Thr/Cysを有する天然のグリコシル化部位の修飾を含み、ここで、Xaaは任意のアミノ酸である。ある実施態様において、該HA球状ヘッドドメインは、アミノ酸配列Asn-Xaa-Ser/Thr/Cysを有する1以上の非天然のグリコシル化部位をさらに含み、ここで、Xaaは任意のアミノ酸である。
【0023】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、HAステムドメイン及びHA球状ヘッドドメインを含む非キメラインフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ポリペプチドであり、ここで:(1)該HA球状ヘッドドメインは、該HAステムドメインと同種であり、及び(2)該HAステムドメインは、1以上の修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該ステムドメイン中のグリコシル化部位へのグリカンの結合を破壊/妨害するグリコシル化部位に対する修飾を含む。具体的な実施態様において、該修飾されたグリコシル化部位は、アミノ酸配列Asn-Xaa-Ser/Thr/Cysを有する天然のグリコシル化部位の修飾を含み、ここで、該修飾は、該修飾されたグリコシル化部位に結合するグリカンの能力を破壊し、ここで、Xaaは任意のアミノ酸である。
【0024】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、インフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ステムドメインポリペプチドであって:HA1のN末端ステムセグメントが1〜50の異種残基のリンカーに共有結合し、それがさらにHA1のC末端の短いステムセグメントに共有結合したものを含むインフルエンザ血球凝集素HA1ドメインを含み;該HA1ドメインが、インフルエンザ血球凝集素HA2ドメインと三次結合又は四次結合しており、ここで、該インフルエンザウイルスHAステムドメインポリペプチドドメインが、1以上の修飾されたグリコシル化部位をさらに含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位が、該ステムドメイン中のグリコシル化部位へのグリカンの結合を破壊/妨害するグリコシル化部位に対する修飾を含む、ポリペプチドである。具体的な実施態様において、該修飾されたグリコシル化部位は、アミノ酸配列Asn-Xaa-Ser/Thr/Cysを有する天然のグリコシル化部位の修飾を含み、ここで、該修飾は、該修飾されたグリコシル化部位に結合するグリカンの能力を破壊し、ここで、Xaaは任意のアミノ酸である。
【0025】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、インフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ステムドメインポリペプチドであって:HA1のN末端の長いステムセグメントが1〜50の異種残基のリンカーに共有結合し、それがさらにHA1のC末端の長いステムセグメントに共有結合したものを含むインフルエンザ血球凝集素HA1ドメインを含み;該HA1ドメインが、インフルエンザ血球凝集素HA2ドメインと三次結合又は四次結合しており、ここで、該インフルエンザウイルスHAステムドメインポリペプチドドメインが、1以上の修飾されたグリコシル化部位をさらに含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位が、該ステムドメイン中のグリコシル化部位へのグリカンの結合を破壊/妨害するグリコシル化部位に対する修飾を含む、ポリペプチドである。具体的な実施態様において、該修飾されたグリコシル化部位は、アミノ酸配列Asn-Xaa-Ser/Thr/Cysを有する天然のグリコシル化部位の修飾を含み、ここで、該修飾は、該修飾されたグリコシル化部位に結合するグリカンの能力を破壊し、ここで、Xaaは任意のアミノ酸である。
【0026】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、インフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ステムドメインポリペプチドであって:HA1のN末端ステムセグメントが1〜50の異種残基のリンカーに共有結合し、それがさらにHA1のC末端ステムセグメントに共有結合したものを含むインフルエンザ血球凝集素HA1ドメインを含み;該HA1ドメインが、インフルエンザ血球凝集素HA2ドメインと三次結合又は四次結合しており、ここで、該インフルエンザウイルスHAステムドメインポリペプチドドメインが、1以上の修飾されたグリコシル化部位をさらに含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位が、該ステムドメイン中のグリコシル化部位へのグリカンの結合を破壊/妨害するグリコシル化部位に対する修飾を含む、ポリペプチドである。具体的な実施態様において、該修飾されたグリコシル化部位は、アミノ酸配列Asn-Xaa-Ser/Thr/Cysを有する天然のグリコシル化部位の修飾を含み、ここで、該修飾は、該修飾されたグリコシル化部位に結合するグリカンの能力を破壊し、ここで、Xaaは任意のアミノ酸である。
【0027】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、インフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ステムドメインポリペプチドであって:以下の順序で連結された:HA1のN末端ステムセグメント、1〜50の異種残基の第1のリンカー、HA1の中間ステムセグメント、1〜50の異種残基の第2のリンカー、及びHA1のC末端ステムセグメントを含むインフルエンザ血球凝集素HA1ドメインを含み;該HA1ドメインが、インフルエンザ血球凝集素HA2ドメインと三次結合又は四次結合しており、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ステムドメインポリペプチドドメインが、1以上の修飾されたグリコシル化部位をさらに含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位が、該ステムドメイン中のグリコシル化部位へのグリカンの結合を破壊/妨害するグリコシル化部位に対する修飾を含む、ポリペプチドである。具体的な実施態様において、該修飾されたグリコシル化部位は、アミノ酸配列Asn-Xaa-Ser/Thr/Cysを有する天然のグリコシル化部位の修飾を含み、ここで、該修飾は、該修飾されたグリコシル化部位に結合するグリカンの能力を破壊し、ここで、Xaaは任意のアミノ酸である。
【0028】
本発明は、とりわけ、HAステムを含み、かつ異種HAヘッドを提示するキメラインフルエンザHAポリペプチドの構築、及びステムドメインとヘッドドメインの両方に対する抗体と交差反応するこのポリペプチドからの安定なキメラHAタンパク質の産生を示す作業実施例(例えば、第6節、実施例)によって示される。該作業実施例は、インフルエンザウイルスの多数の異なる株及び亜型に対する対象の防御的免疫応答の生成におけるそのような構築物の使用も示し、すなわち、該実施例は、本明細書に記載のキメラインフルエンザHAポリペプチドを普遍的なインフルエンザワクチンとして使用することができることを示す。さらに、該作業実施例(例えば、第6.11節、実施例11)は、1以上の修飾されたグリコシル化部位を有するHAステムドメイン及び/又は1以上の非天然のグリコシル化部位を有するHA球状ヘッドドメインを含むflu HAポリペプチドの構築を示し、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、グリコシル化部位に結合するグリカンの能力を破壊する1以上の天然のグリコシル化部位に対する修飾である。該作業実施例(第6.11節、実施例11参照)は、インフルエンザウイルスの保存されたストークドメインに対する増大した免疫応答を誘発するこれらのインフルエンザHAポリペプチドの能力も示す。
【0029】
(3.1 用語)
アミノ酸位置に関して使用されるときの、「約(about)」又は「約(approximately)」という用語は、配列中の特定のアミノ酸位置、又はそのアミノ酸位置からN末端方向もしくはC末端方向に、5、4、3、2、もしくは1残基以内にある任意のアミノ酸を指す。
【0030】
本明細書で使用されるように、数字と一緒に使用される場合、「約(about)」又は「約(approximately)」という用語は、言及された数字の1、5、又は10%以内の任意の数字を指す。ある実施態様において、「約(about)」という用語は、記載された正確な数を包含する。
【0031】
「アミノ酸配列同一性」という用語は、1対の整列されたアミノ酸配列間の、通常パーセンテージとして表される同一性又は類似性の程度を指す。同一性パーセントは、配列を整列させ、かつ最大の配列相同性パーセントを達成するために、必要に応じてギャップを導入した後の、ペプチド中の対応するアミノ酸残基と同一である(すなわち、アラインメント中の所与の位置のアミノ酸残基が同じ残基である)か、又は類似する(すなわち、アラインメント中の所与の位置のアミノ酸置換が、以下で論じるような、保存的な置換である)候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージである。配列の同一性及び類似性のパーセンテージを含む配列相同性は、周知の配列アラインメント技術、好ましくは、この目的のために設計されたコンピュータアルゴリズムを用いて、該コンピュータアルゴリズムのデフォルトパラメータ、又はそれを含むソフトウェアパッケージを用いて決定することができる。コンピュータアルゴリズム及びそのようなアルゴリズムを組み込んでいるソフトウェアパッケージの非限定的な例としては、以下のものが挙げられる。BLASTファミリーのプログラムは、2つの配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの特定の非限定的な例を例示する(例えば、Karlin及びAltschulの文献(1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268)(Karlin及びAltschulの文献(1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877)のように修正されている)、Altschulらの文献(1990, J. Mol. Biol. 215:403-410)(NBLAST及びXBLASTを記載している)、Altschulらの文献(1997, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402)(Gapped BLAST及びPSI-Blastを記載している)。別の特定の例は、Myers及びMillerの文献(1988 CABIOS 4:11-17)のアルゴリズムであり、これは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれ、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部として入手可能である。また、Wisconsin Sequence Analysis Packageの一部として入手可能な、FASTAプログラム(Pearson W.R.及びLipman D.J.の文献(Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 85:2444-2448, 1988))も特別である。さらなる例としては、以下のものが挙げられる。BESTFIT、これは、Smith及びWatermanの文献(Advances in Applied Mathematics, 2:482-489, 1981)の「局所相同性」アルゴリズムを用いて、2つの配列間で最良の単一の類似性領域を見出すものであり、比較されている2つの配列の長さが異なる場合に好ましい;並びにGAP、これは、Neddleman及びWunschの文献(J. Mol. Biol. 48:443-354, 1970)のアルゴリズムに従って「最大類似性」を見出すことによって2つの配列を整列させるものであり、2つの配列がおよそ同じ長さであり、アラインメントが全長にわたって予想される場合に好ましい。
【0032】
「保存的置換」は、あるクラスのアミノ酸の同じクラスの別のアミノ酸との交換を指す。特定の実施態様において、保存的置換は、ポリペプチドの構造もしくは機能、又は両方を変化させない。保存的置換の目的のためのアミノ酸のクラスには、疎水性のもの(Met、Ala、Val、Leu、Ile)、中性で親水性のもの(Cys、Ser、Thr)、酸性のもの(Asp、Glu)、塩基性のもの(Asn、Gln、His、Lys、Arg)、立体構造を破壊するもの(conformation disrupters)(Gly、Pro)、及び芳香族のもの(Trp、Tyr、Phe)が含まれる。
【0033】
本明細書で使用されるように、核酸配列との関連における「断片」という用語は、親配列由来の連続するヌクレオチドの一部を含むヌクレオチド配列を指す。具体的な実施態様において、該用語は、親配列由来の5〜15、5〜25、10〜30、15〜30、10〜60、25〜100、150〜300個、又はそれより多くの連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列を指す。別の実施態様において、該用語は、親配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、125、150、175、200、250、275、300、325、350、375、400、425、450、又は475個の連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列を指す。
【0034】
本明細書で使用されるように、アミノ酸配列との関連における「断片」という用語は、親配列由来の連続するアミノ酸残基の一部を含むアミノ酸配列を指す。具体的な実施態様において、該用語は、親配列由来の2〜30、5〜30、10〜60、25〜100、150〜300個、又はそれより多くの連続するアミノ酸残基のアミノ酸配列を指す。別の実施態様において、該用語は、親配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、125、150、175、又は200個の連続するアミノ酸残基のアミノ酸配列を指す。
【0035】
本明細書で使用されるように、「疾患」及び「障害」という用語は、互換的に使用され、対象の状態を指す。いくつかの実施態様において、状態はウイルス感染である。具体的な実施態様において、「疾患」という用語は、細胞もしくは対象におけるウイルスの存在に起因するか、又はウイルスによる細胞もしくは対象への侵入による病理学的状態を指す。ある実施態様において、状態は対象での疾患であり、その重症度は、免疫原性組成物の投与によって対象の免疫応答を誘導することによって低減される。
【0036】
本明細書で使用されるように、対象への療法の投与との関連における「有効量」という用語は、予防及び/又は治療効果(複数可)を有する療法の量を指す。ある実施態様において、対象への療法の投与との関連における「有効量」は、以下の効果のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれより多くを達成するのに十分である療法の量を指す:(i)インフルエンザウイルス感染、それと関連する疾患もしくは症状の重症度を軽減もしくは改善する;ii)インフルエンザウイルス感染、それと関連する疾患もしくは症状の持続期間を短縮する;(iii)インフルエンザウイルス感染、それと関連する疾患もしくは症状の進行を予防する;(iv)インフルエンザウイルス感染、それと関連する疾患もしくは症状の退行をもたらす;(v)インフルエンザウイルス感染、それと関連する疾患もしくは症状の発症もしくは開始を予防する;(vi)インフルエンザウイルス感染、それと関連する疾患もしくは症状の再発を予防する;(vii)1つの細胞から別の細胞、1つの組織から別の組織、もしくは1つの器官から別の器官へのインフルエンザウイルスの伝播を低減もしくは予防する;(ix)1つの対象から別の対象へのインフルエンザウイルスの伝播を予防もしくは低減する;(x)インフルエンザウイルス感染と関連する器官不全を低減する;(xi)対象の入院を減少させる;(xii)入院期間を短縮する;(xiii)インフルエンザウイルス感染もしくはそれと関連する疾患を有する対象の生存を増加させる;(xiv)インフルエンザウイルス感染もしくはそれと関連する疾患を消失させる;(xv)インフルエンザウイルスの複製を阻害もしくは低減する;(xvi)宿主細胞(複数可)へのインフルエンザウイルスの侵入を阻害もしくは低減する;(xviii)インフルエンザウイルスゲノムの複製を阻害もしくは低減する;(xix)インフルエンザウイルスタンパク質の合成を阻害もしくは低減する;(xx)インフルエンザウイルス粒子の会合を阻害もしくは低減する;(xxi)宿主細胞(複数可)からのインフルエンザウイルス粒子の放出を阻害もしくは低減する;(xxii)インフルエンザウイルス力価を低下させる;及び/又は(xxiii)別の療法の予防もしくは治療効果(複数可)を増強もしくは改善する。
【0037】
ある実施態様において、有効量はインフルエンザウイルス疾患からの完全な防御をもたらすのではなく、未処置の対象と比較してより低い力価又は少ない数のインフルエンザウイルスをもたらす。ある実施態様において、有効量は、未処置の対象と比べて、0.5倍、1倍、2倍、4倍、6倍、8倍、10倍、15倍、20倍、25倍、50倍、75倍、100倍、125倍、150倍、175倍、200倍、300倍、400倍、500倍、750倍、もしくは1,000倍、又はそれより大きいインフルエンザウイルスの力価の低下をもたらす。いくつかの実施態様において、有効量は、未処置の対象と比べて、約1log以上、約2log以上、約3log以上、約4log以上、約5log以上、約6log以上、約7log以上、約8log以上、約9log以上、約10log以上、1〜3log、1〜5log、1〜8log、1〜9log、2〜10log、2〜5log、2〜7log、2〜8log、2〜9log、2〜10log、3〜5log、3〜7log、3〜8log、3〜9log、4〜6log、4〜8log、4〜9log、5〜6log、5〜7log、5〜8log、5〜9log、6〜7log、6〜8log、6〜9log、7〜8log、7〜9log、又は8〜9logのインフルエンザウイルスの力価の低下をもたらす。インフルエンザウイルスの力価、数、又は総負荷量の低下の利点としては、重症度がより低い感染症状、より少ない感染症状、及び感染と関連する疾患の長さの短縮が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用されるように、「flu血球凝集素ポリペプチド」及び「flu HAポリペプチド」という用語は、(i)本明細書に開示されるキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド;並びに(ii)インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメイン及び/もしくはインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメイン又はこれらの断片を含む本明細書に開示されるポリペプチドのいずれかを指し、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインは、1以上の修飾されたグリコシル化部位を含むか;該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインは、1以上の非天然のグリコシル化部位を含むか;又は両方であるかのいずれかである。flu HAポリペプチドとしては、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド、非キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド、及びインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。具体的な実施態様において、flu HAポリペプチドは、ステムドメインへのグリカン結合を破壊するインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメイン中の1以上の修飾されたグリコシル化部位;1以上の非天然のグリコシル化部位を含むインフルエンザウイルス血球凝集素球状ヘッドドメイン;又は両方のいずれかを含むキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドである。別の実施態様において、flu HAポリペプチドは、ステムドメインへのグリカン結合を破壊するインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメイン中の1以上の修飾されたグリコシル化部位、1以上の非天然のグリコシル化部位を含むインフルエンザウイルス血球凝集素球状ヘッドドメイン;又は両方を含むインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(任意の株、亜型、もしくは型のインフルエンザウイルスのもの又はそれらに由来するもの)である。例えば、そのようなfluポリペプチドについては、下記の実施例11を参照されたい。
【0039】
「血球凝集素」及び「HA」は、当業者に公知の任意の血球凝集素を指す。ある実施態様において、血球凝集素は、インフルエンザ血球凝集素、例えば、A型インフルエンザ血球凝集素、B型インフルエンザ血球凝集素、又はC型インフルエンザ血球凝集素である。典型的な血球凝集素は、シグナルペプチド(本明細書では任意)、ステムドメイン、球状ヘッドドメイン、内腔ドメイン(本明細書では任意)、膜貫通ドメイン(本明細書では任意)、及び細胞質ドメイン(本明細書では任意)を含む、当業者に公知のドメインを含む。ある実施態様において、血球凝集素は、単一のポリペプチド鎖、例えば、HA0からなる。ある実施態様において、血球凝集素は、四次結合した2以上のポリペプチド鎖、例えば、HA1及びHA2からなる。当業者は、未成熟なHA0が切断されてシグナルペプチド(約20アミノ酸)を放出し、成熟した血球凝集素HA0を生じさせることができることを認識しているであろう。血球凝集素HA0は、別の部位で切断されて、HA1ポリペプチド(約320アミノ酸、球状ヘッドドメインとステムドメインの一部とを含む)及びHA2ポリペプチド(約220アミノ酸、ステムドメインの残り、内腔ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞質ドメインを含む)を生じさせることができる。ある実施態様において、血球凝集素は、シグナルペプチド、膜貫通ドメイン、及び細胞質ドメインを含む。ある実施態様において、血球凝集素は、シグナルペプチドを欠く、すなわち、血球凝集素は成熟した血球凝集素である。ある実施態様において、血球凝集素は、膜貫通ドメインもしくは細胞質ドメイン、又は両方を欠く。本明細書で使用されるように、「血球凝集素」及び「HA」という用語は、翻訳後プロセシング、例えば、シグナルペプチド切断、ジスルフィド結合形成、グリコシル化(例えば、N結合型グリコシル化)、プロテアーゼ切断、及び脂質修飾(例えば、S-パルミトイル化)によって修飾される血球凝集素ポリペプチドを包含する。
【0040】
本明細書で使用されるように、「キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド」、「キメラインフルエンザウイルスHAポリペプチド」、「キメラ血球凝集素ポリペプチド」、及び「キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド」という用語は、インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメイン及びインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインを含むインフルエンザ血球凝集素を指し、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインと異種である。ある実施態様において、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインは、インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインとは異なる株又は亜型のインフルエンザウイルス由来のものである。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドとの関連において、異種インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインは、相同ヘッド(すなわち、通常、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのステムドメインと関連しているヘッドドメイン)と少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも5〜10%、少なくとも10〜15%、少なくとも10〜20%、少なくとも15〜20%、又は少なくとも20〜25%異なるインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドを指す。当業者は、そのような相違を、当技術分野で公知及び本明細書に記載の手法を用いて、例えば、ヘッドドメインの配列同一性又は配列相同性を比較して測定することができることを認識しているであろう。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドとの関連において、異種インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインは、血球凝集素阻害アッセイにおいて、相同ヘッド(すなわち、通常、該キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのステムドメインと関連しているヘッドドメイン)に対して惹起される抗血清の血球凝集素阻害力価と比べて、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、又は少なくとも6倍小さい血球凝集素阻害力価を有する抗血清を生じさせるインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドを指す。当業者は、そのような相違を、当技術分野で公知及び本明細書に記載の手法を用いて測定することができることを認識しているであろう(例えば、下記の第5.14節参照)。
【0041】
「HA1のN末端ステムセグメント」は、インフルエンザ血球凝集素HA1ポリペプチドのステムドメインのアミノ末端部分に対応するポリペプチドセグメントを指す。ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、HA1ドメインのアミノ酸HA1N-termからApまでにほぼ対応するアミノ酸残基からなる。HA1N-termは、当業者によって認識されているようなHA1のN末端アミノ酸である。Apは、HA1のC末端ステムセグメント中のシステイン残基とジスルフィド結合を形成するか、又はそれを形成することができる、HA1のN末端ステムセグメント中のシステイン残基である。残基Apは、図1のA型インフルエンザ血球凝集素ポリペプチド中で特定されている。例示的なHA1のN末端ステムセグメントが本明細書に記載されている。ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、H3血球凝集素由来のHA1のアミノ酸1〜52にほぼ対応するアミノ酸残基からなる。この付番体系では、1は、シグナルペプチドが除去されている成熟したHA0タンパク質のN末端アミノ酸を指すことに留意されたい。当業者は、他のインフルエンザHAポリペプチドのHA1のN末端ステムセグメントに対応するアミノ酸残基、例えば、H1血球凝集素由来のHA1のHA1のN末端ステムセグメントに対応するアミノ酸残基を容易に認識することができるであろう(例えば、図1参照)。
【0042】
「HA1のC末端ステムセグメント」は、インフルエンザ血球凝集素HA1ポリペプチドのステムドメインのカルボキシ末端部分に対応するポリペプチドセグメントを指す。ある実施態様において、HA1のC末端ステムセグメントは、HA1ドメインのアミノ酸AqからHA1C-termまでにほぼ対応するアミノ酸残基からなる。HA1C-termは、当業者によって認識されているようなHA1ドメインのC末端アミノ酸である。残基Aqは、図1のA型インフルエンザ血球凝集素ポリペプチド中で特定されている。例示的なHA1のC末端ステムセグメントが本明細書に記載されている。ある実施態様において、HA1のC末端ステムセグメントは、H3血球凝集素由来のHA1のアミノ酸277〜329にほぼ対応するアミノ酸残基からなる。この付番体系では、1は、シグナルペプチドが除去されている成熟したHA0タンパク質のN末端アミノ酸を指すことに留意されたい。当業者は、他のインフルエンザHAポリペプチドのHA1のC末端ステムセグメントに対応するアミノ酸残基、例えば、H1血球凝集素由来のHA1のHA1のC末端ステムセグメントに対応するアミノ酸残基を容易に認識することができるであろう(例えば、図1参照)。
【0043】
「HA1のC末端の短いステムセグメント」は、インフルエンザ血球凝集素HA1ポリペプチドのステムドメインのカルボキシル末端部分に対応するポリペプチドセグメントを指す。ある実施態様において、HA1のC末端の短いステムセグメントは、HA1ドメインのアミノ酸BqからHA1C-termまでにほぼ対応するアミノ酸残基からなる。残基Bqは、図1のA型インフルエンザ血球凝集素ポリペプチド中で特定されている。例示的なHA1のC末端の短いステムセグメントが本明細書に記載されている。ある実施態様において、HA1のC末端の短いステムセグメントは、H3血球凝集素由来のHA1のアミノ酸305〜329にほぼ対応するアミノ酸残基からなる。この付番体系では、1は、シグナルペプチドが除去されている成熟したHA0タンパク質のN末端アミノ酸を指すことに留意されたい。
【0044】
「HA1のN末端の長いステムセグメント」は、インフルエンザ血球凝集素HA1ポリペプチドのステムドメインのアミノ末端部分に対応するポリペプチドセグメントを指す。ある実施態様において、HA1のN末端の長いステムセグメントは、HA1ドメインのアミノ酸HA1N-termからCpまでにほぼ対応するアミノ酸残基からなる。Cpは、HA1のC末端の長いステムセグメント中のアラニン残基に連結しているか、又はそれに連結することができるHA1のN末端の長いステムセグメント中のシステイン残基である。残基Cpは、図1のA型インフルエンザ血球凝集素ポリペプチド中で特定されている。例示的なHA1のN末端の長いステムセグメントが本明細書に記載されている。ある実施態様において、HA1のN末端の長いステムセグメントは、H3血球凝集素由来のHA1のアミノ酸1〜97にほぼ対応するアミノ酸残基からなる。この付番体系では、1は、シグナルペプチドが除去されている成熟したHA0タンパク質のN末端アミノ酸を指すことに留意されたい。
【0045】
「HA1のC末端の長いステムセグメント」は、インフルエンザ血球凝集素HA1ポリペプチドのステムドメインのカルボキシル末端部分に対応するポリペプチドセグメントを指す。ある実施態様において、HA1のC末端の長いステムセグメントは、HA1ドメインのアミノ酸CqからHA1C-termまでにほぼ対応するアミノ酸残基からなる。Cqは、HA1のN末端の長いステムセグメント中のシステイン残基に連結しているか、又はそれに連結することができるHA1のC末端の長いステムセグメント中のアラニン残基である。残基Cqは、図1のA型インフルエンザ血球凝集素ポリペプチド中で特定されている。例示的なHA1のC末端の長いステムセグメントが本明細書に記載されている。ある実施態様において、HA1のC末端の長いステムセグメントは、H3血球凝集素由来のHA1のアミノ酸253〜329にほぼ対応するアミノ酸残基からなる。この付番体系では、1は、シグナルペプチドが除去されている成熟したHA0タンパク質のN末端アミノ酸を指すことに留意されたい。
【0046】
「HA2」は、当業者に公知のインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのHA2ドメインに対応するポリペプチドドメインを指す。ある実施態様において、HA2は、ステムドメイン、内腔ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞質ドメインからなる(例えば、Scheiffleらの文献(2007, EMBO J. 16(18):5501-5508)を参照されたく、その内容は、引用によりその全体が組み込まれる)。ある実施態様において、HA2は、ステムドメイン、内腔ドメイン、及び膜貫通ドメインからなる。ある実施態様において、HA2は、ステムドメイン及び内腔ドメインからなり;そのような実施態様において、HA2は可溶性であることができる。ある実施態様において、HA2はステムドメインからなり;そのような実施態様において、HA2は可溶性であることができる。
【0047】
本明細書で使用されるように、ポリペプチド、核酸、又はウイルスとの関連における「異種」という用語は、通常天然で見られないか、又は通常天然で関心対象のポリペプチド、核酸、もしくはウイルスと関連していないポリペプチド、核酸、又はウイルスをそれぞれ指す。例えば、「異種ポリペプチド」は、異なるウイルス、例えば、異なるインフルエンザ株もしくは亜型、又は無関係なウイルスもしくは異なる種に由来するポリペプチドを指すことができる。具体的な実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素の球状ヘッドドメインとの関連において使用される場合、異種という用語は、それが、通常、関連しているのが見られない(例えば、HAのヘッド及びステムドメインが、天然では、一緒に見られない)インフルエンザHAステムドメインと関連しているインフルエンザHA球状ヘッドドメインを指す。上記のように、ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素の異種インフルエンザHA球状ヘッドドメインは、血球凝集素の相同ヘッド(すなわち、通常、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのステムドメインと関連しているヘッドドメイン)と少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも5〜10%、少なくとも10〜15%、少なくとも10〜20%、少なくとも15〜20%、又は少なくとも20〜25%異なる。
【0048】
本明細書で使用されるように、対象への2以上の療法の投与との関連における「併用」という用語は、2以上の療法(例えば、2以上の予防剤及び/又は治療剤)の使用を指す。「併用」という用語の使用は、療法が対象に投与される順序を制限しない。例えば、第1の療法(例えば、第1の予防剤又は治療剤)は、対象への第2の療法の投与の前に(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、もしくは12週間前に)、それと同時に、又はその後に(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、もしくは12週間後に)投与することができる。
【0049】
本明細書で使用されるように、「感染」という用語は、細胞又は対象におけるウイルスの侵入、その増殖、及び/又は存在を意味する。一実施態様において、感染は、「活動性」感染、すなわち、ウイルスが細胞又は対象で複製している感染である。そのような感染は、ウイルスが最初に感染した細胞、組織、及び/又は器官から、他の細胞、組織、及び/又は器官へのウイルスの伝播を特徴とする。感染はまた、潜伏性の感染、すなわち、ウイルスが複製していない感染であってもよい。ある実施態様において、感染は、細胞もしくは対象におけるウイルスの存在に起因するか、又は細胞もしくは対象へのウイルスの侵入による病理学的状態を指す。
【0050】
本明細書で使用されるように、「インフルエンザウイルス疾患」という用語は、細胞又は対象におけるインフルエンザ(例えば、A型もしくはB型インフルエンザウイルス)ウイルスの存在、又は細胞もしくは対象へのインフルエンザウイルスの侵入に起因する病理学的状態を指す。具体的な実施態様において、この用語は、インフルエンザウイルスによって引き起こされる呼吸器疾患を指す。
【0051】
本明細書で使用されるように、「IFN欠損システム」又は「IFN欠損基体」という語句は、IFNを産生しないか、又は低レベルのIFNを産生する(すなわち、同じ条件下のIFNコンピテントなシステムと比較して、5〜10%、10〜20%、20〜30%、30〜40%、40〜50%、50〜60%、60〜70%、70〜80%、80〜90%、もしくはそれより大きいIFN発現の低下)か、IFNに応答しないか、もしくはそれにあまり効率的には応答せず、及び/又はIFNによって誘導される1以上の抗ウイルス遺伝子の活性が欠損している、システム、例えば、細胞、細胞株、及び動物、例えば、ブタ、マウス、ニワトリ、七面鳥、ウサギ、ラットなどを指す。
【0052】
本明細書で使用されるように、「log」という数値用語は、log10を指す。
【0053】
本明細書で使用されるように、「修飾されたグリコシル化部位」という用語は、1以上のアミノ酸の付加、置換、又は欠失によって修飾されているインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド中の天然のグリコシル化部位を指す。ある実施態様において、修飾されたグリコシル化部位は、グリカンに結合することができない。ある実施態様において、修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊又は妨害する。ある実施態様において、修飾されたグリコシル化部位は、本明細書に記載のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルスHAポリペプチド)の適切なフォールディングを妨害しない。ある実施態様において、修飾されたグリコシル化部位は、アミノ酸モチーフAsn-Xaa-Ser/Thr/Cysを有する天然のグリコシル化部位の修飾を含み、ここで、Xaaは任意のアミノ酸である。特定の実施態様において、修飾されたグリコシル化部位は、アミノ酸モチーフAsn-Xaa-Ser/Thr/Cysを有する天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含み、ここで、Xaaは任意のアミノ酸である。
【0054】
本明細書で使用されるように、「感染多重度」又は「MOI」という語句は、感染細胞当たりの感染性ウイルス粒子の平均数である。MOIは、添加した感染性ウイルス粒子の数(添加したml×PFU/ml)を、添加した細胞の数(添加したml×細胞/ml)で割ることによって決定される。
【0055】
本明細書で使用されるように、「非キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド」という用語は、同じ亜型又は株由来のHAステムドメイン及びHAヘッドドメインを含むインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを指し、ここで、該ポリペプチドは、下記の第5.4.2節で論じられているような1以上の非天然のグリコシル化部位、及び/又は下記の第5.4.1節で論じられているような1以上の修飾されたグリコシル化部位を含む。ある実施態様において、非キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、同じインフルエンザウイルス亜型由来のHAステムドメイン及びHA球状ヘッドドメインを含む。具体的な実施態様において、該インフルエンザウイルス亜型は、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、又はH17亜型である。ある実施態様において、非キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、同じインフルエンザウイルス株由来のHAステムドメイン及びHA球状ヘッドドメインを含む。ある実施態様において、該インフルエンザウイルス株は、A/ネーデルラント/602/2009である。
【0056】
本明細書で使用されるように、「非天然のグリコシル化部位」という用語は、天然のグリコシル化部位が特定のHA亜型又は株に関して見られない特定の球状ヘッドドメイン内の任意のアミノ酸位置にあるグリコシル化部位を指す。非天然のグリコシル化部位の1つの例は、ある亜型のインフルエンザウイルス血球凝集素の球状ヘッドドメインへのグリコシル化部位の付加であり、ここで、該グリコシル化は、別の亜型のインフルエンザウイルス由来の血球凝集素の球状ヘッドドメイン中に天然に見出される。非天然のグリコシル化の別の例は、ある株由来のインフルエンザウイルス血球凝集素の球状ヘッドドメインへのグリコシル化部位の付加であり、ここで、該グリコシル化部位は、別のインフルエンザウイルス株由来の血球凝集素の球状ヘッド中に天然に見出される。非天然のグリコシル化部位のまた別の例は、ある株由来のインフルエンザウイルス血球凝集素の球状ヘッドドメインへのグリコシル化部位の付加であり、ここで、該グリコシル化部位は、インフルエンザウイルスの別の亜型又は株由来の血球凝集素の球状ヘッド中に天然には見出されない。好ましい実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、アミノ酸モチーフAsn-Xaa-Ser/Thr/Cysを有し、ここで、Xaaは任意のアミノ酸であり、又はある実施態様において、XaaはProを除く任意のアミノ酸である。
【0057】
本明細書で使用されるように、「核酸」という用語は、DNA分子(例えば、cDNA又はゲノムDNA)及びRNA分子(例えば、mRNA)及びヌクレオチド類似体を用いて作製されたDNA又はRNAの類似体を含むことが意図される。核酸は、一本鎖又は二本鎖であることができる。
【0058】
当業者に公知であるように、「ポリペプチド」は、アミド結合によって連結されたアミノ酸のポリマーを指す。本明細書で使用されるように、この用語は、共有アミド結合で連結された単一のポリペプチド鎖を指すことができる。この用語は、非共有結合的相互作用、例えば、イオン接触、水素結合、ファンデルワールス接触、及び疎水性接触によって会合する複数のポリペプチド鎖を指すこともできる。当業者は、この用語が、例えば、翻訳後プロセシング、例えば、シグナルペプチド切断、ジスルフィド結合形成、グリコシル化(例えば、N結合型グリコシル化)、プロテアーゼ切断、及び脂質修飾(例えば、S-パルミトイル化)によって修飾されているポリペプチドを含むことを認識しているであろう。
【0059】
本明細書で使用されるように、インフルエンザウイルス疾患を予防するための対象への療法(複数可)の投与との関連における「予防する」、「予防すること」、及び「予防」という用語は、療法又は療法の組合せの投与から得られる予防的な/有益な効果のうちの1つ又は複数を指す。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス疾患を予防するための対象への療法(複数可)の投与との関連における「予防する」、「予防すること」、及び「予防」という用語は、療法又は療法の組合せの投与から得られる以下の効果のうちの1つ又は複数を指す:(i)インフルエンザウイルス疾患又はその症状の発症又は開始の阻害;(ii)インフルエンザウイルス疾患又はそれと関連する症状の再発の阻害;並びに(iii)インフルエンザウイルスの感染及び/又は複製の低減又は阻害。
【0060】
本明細書で使用されるように、天然源、例えば、細胞から得られるポリペプチド(抗体を含む)との関連で使用される場合の「精製された」及び「単離された」という用語は、天然源由来の夾雑物質、例えば、土壌粒子、鉱物、環境由来の化学物質、並びに/又は天然源由来の細胞性物質、例えば、限定されないが、細胞破片、細胞壁物質、膜、オルガネラ、細胞内に存在する核酸、炭水化物、タンパク質、及び/もしくは脂質の大部分を実質的に含まないポリペプチドを指す。したがって、単離されたポリペプチドには、細胞性物質及び/又は夾雑物質の(乾燥重量で)約30%、20%、10%、5%、2%又は1%未満を有するポリペプチド調製物が含まれる。本明細書で使用されるように、化学合成されるポリペプチド(抗体を含む)との関連で使用される場合の「精製された」及び「単離された」という用語は、ポリペプチドの合成に関与する化学的前駆体又は他の化学物質を実質的に含まないポリペプチドを指す。具体的な実施態様において、flu HAポリペプチド(例えば、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチド、インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド、キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド、及び/又は非キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)は、化学合成される。別の具体的な実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチド、インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド、及び/又はキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、単離される。
【0061】
本明細書で使用されるように、ウイルスとの関連における「複製」、「ウイルスの複製」、及び「ウイルス複製」という用語は、ウイルスの増殖をもたらすウイルスの生活環の段階のうちの1つもしくは複数、又は全てを指す。ウイルスの生活環の段階には、宿主細胞表面へのウイルス付着、宿主細胞への貫入又は侵入(例えば、受容体介在性エンドサイトーシス又は膜融合によるもの)、脱外被(ウイルスカプシドがウイルス酵素又は宿主酵素によって除去及び分解され、それにより、ウイルスゲノム核酸が放出される過程)、ゲノム複製、ウイルスメッセンジャーRNA(mRNA)の合成、ウイルスタンパク質合成、並びにゲノム複製のためのウイルスリボ核タンパク複合体の会合、ウイルス粒子の会合、ウイルスタンパク質の翻訳後修飾、及び溶解又は出芽による宿主細胞からの遊離、及び埋め込まれたウイルス糖タンパク質を含むリン脂質エンベロープの獲得が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様において、「複製」、「ウイルスの複製」、及び「ウイルス複製」という用語は、ウイルスゲノムの複製を指す。他の実施態様において、「複製」、「ウイルスの複製」、及び「ウイルス複製」という用語は、ウイルスタンパク質の合成を指す。
【0062】
本明細書で使用されるように、「ステムドメインポリペプチド」及び「インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド」という用語は、血球凝集素のステムドメインを構成する1以上のポリペプチド鎖を含む血球凝集素ポリペプチドの誘導体、例えば、改変された誘導体を指す。ステムドメインポリペプチドは、単一のポリペプチド鎖、2つのポリペプチド鎖、又はより多くのポリペプチド鎖であり得る。通常、ステムドメインポリペプチドは、単一のポリペプチド鎖(すなわち、血球凝集素HA0ポリペプチドのステムドメインに対応する)又は2つのポリペプチド鎖(すなわち、血球凝集素HA2ポリペプチドと関連している血球凝集素HA1ポリペプチドのステムドメインに対応する)である。ある実施態様において、ステムドメインポリペプチドは、インフルエンザ血球凝集素に由来する。具体的な実施態様において、ステムドメインポリペプチドは、H1又はH3インフルエンザウイルス血球凝集素に由来する。改変されたステムドメインポリペプチドは、下記のような1以上のリンカーを含むことができる。
【0063】
本明細書で使用されるように、「インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド」、「インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメイン」、「HA球状ヘッドドメイン」、及び「HAヘッドドメイン」という用語は、インフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインを指す。インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド又はインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインは、既知の(例えば、野生型の)インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインを含むことができる、もしくはそれからなることができるか、又は既知の(例えば、野生型)インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインの派生物、例えば、改変された派生物を含むことができる、もしくはそれからなることができる。
【0064】
本明細書で使用されるように、「対象」又は「患者」という用語は、互換的に使用され、動物(例えば、鳥、爬虫類、及び哺乳動物)を指す。具体的な実施態様において、対象は鳥である。別の実施態様において、対象は、非霊長類(例えば、ラクダ、ロバ、シマウマ、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ラット、及びマウス)並びに霊長類(例えば、サル、チンパンジー、及びヒト)を含む哺乳動物である。ある実施態様において、対象は非ヒト動物である。いくつかの実施態様において、対象は家畜又はペットである。別の実施態様において、対象はヒトである。別の実施態様において、対象はヒト乳児である。別の実施態様において、対象はヒト小児である。別の実施態様において、対象はヒト成人である。別の実施態様において、対象はヒト高齢者である。別の実施態様において、対象はヒト早産児である。
【0065】
本明細書で使用されるように、「ヒト早産児」という用語は、妊娠37週未満で生まれるヒト乳児を指す。
【0066】
本明細書で使用されるように、「ヒト乳児」という用語は、新生児から1歳までのヒトを指す。
【0067】
本明細書で使用されるように、「ヒト小児」という用語は、1歳から18歳までのヒトを指す。
【0068】
本明細書で使用されるように、「ヒト成人」という用語は、18歳以上のヒトを指す。
【0069】
本明細書で使用されるように、「ヒト高齢者」という用語は、65歳以上のヒトを指す。
【0070】
「三次構造」及び「四次構造」という用語は、当業者によって理解される意味を有する。三次構造は、単一のポリペプチド鎖の三次元構造を指す。四次構造は、複数のポリペプチド鎖を有するポリペプチドの三次元構造を指す。
【0071】
本明細書で使用されるように、「季節性インフルエンザウイルス株」という用語は、対象集団が季節ごとに曝露されるインフルエンザウイルスの株を指す。具体的な実施態様において、季節性インフルエンザウイルス株という用語は、A型インフルエンザウイルスの株を指す。具体的な実施態様において、季節性インフルエンザウイルス株という用語は、H1又はH3亜型、すなわち、現在、ヒト対象集団内に存続している2つの亜型に属するインフルエンザウイルスの株を指す。他の実施態様において、季節性インフルエンザウイルス株という用語は、B型インフルエンザウイルスの株を指す。
【0072】
本明細書で使用されるように、「療法(複数)」及び「療法」という用語は、ウイルス感染又はそれと関連する疾患もしくは症状の予防又は治療において使用することができる任意のプロトコル(複数可)、方法(複数可)、化合物(複数可)、組成物(複数可)、製剤(複数可)、及び/又は薬剤(複数可)を指すことができる。ある実施態様において、「療法(複数)」及び「療法」という用語は、当業者に公知のウイルス感染又はそれと関連する疾患もしくは症状の予防又は治療において有用な生物学的療法、支持療法、及び/又は他の療法を指す。いくつかの実施態様において、「療法」という用語は、(i)flu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)をコードする核酸、(ii)flu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)、又は(iii)flu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)をコードする核酸を含むかもしくはflu HAポリペプチドを含むベクターもしくは組成物を指す。いくつかの実施態様において、「療法」という用語は、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに特異的に結合する抗体を指す。
【0073】
本明細書で使用されるように、「治療する」、「治療」、及び「治療すること」という用語は、対象への療法(複数可)の投与との関連において、療法又は療法の組合せの有益な又は治療的な効果を得るためにインフルエンザウイルス疾患又は感染を治療することを指す。具体的な実施態様において、そのような用語は、療法又は療法の組合せの投与から得られる以下の効果のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれより多くを指す:(i)インフルエンザウイルス感染、又はそれと関連する疾患もしくは症状の重症度の軽減又は改善;(ii)インフルエンザウイルス感染、又はそれと関連する疾患もしくは症状の持続時間の短縮;(iii)インフルエンザウイルス感染又はそれと関連する疾患もしくは症状の退行;(iv)インフルエンザウイルスの力価の低減;(v)インフルエンザウイルス感染又はそれと関連する疾患と関連する器官不全の低減;(vi)対象の入院の減少;(vii)入院期間の短縮;(viii)対象の生存の増加;(ix)インフルエンザウイルス感染、又はそれと関連する疾患もしくは症状の消失;(x)インフルエンザウイルス感染又はそれと関連する疾患もしくは症状の進行の阻害;(xi)細胞、組織、器官、又は対象から別の細胞、組織、器官、又は対象へのインフルエンザウイルスの伝播の予防;(xii)宿主細胞(複数可)へのインフルエンザウイルスの侵入の阻害又は低減;(xiii)インフルエンザウイルスゲノムの複製の阻害又は低減;(xiv)インフルエンザウイルスタンパク質の合成の阻害又は低減;(xv)宿主細胞(複数可)からのインフルエンザウイルス粒子の放出の阻害又は低減;並びに/或いは(xvi)別の療法の治療効果の増強又は改善。
【0074】
本明細書で使用されるように、いくつかの実施態様において、ウイルスとの関連における「野生型」という語句は、一般的であり、自然に循環しており、かつ疾患の典型的な発生をもたらすウイルスの型を指す。他の実施態様において、ウイルスとの関連における「野生型」という用語は、親ウイルスを指す。
【図面の簡単な説明】
【0075】
(4.図面の簡単な説明)
図1】A型インフルエンザウイルス血球凝集素の16の亜型の代表的な配列(それぞれ、配列番号1〜16)のCLUSTALWによる配列アラインメントを示す。Apと表記された残基は、Aqと表記された残基(HA1のC末端ステムセグメント中のシステイン残基)とジスルフィド結合を形成するか、又はそれを形成することができるHA1のN末端ステムセグメント中のシステイン残基である。Bqと表記された残基は、本明細書に記載のHA1のC末端の短いステムセグメントのおおよそのN末端アミノ酸を表す。Cqと表記された残基は、本明細書に記載のHA1のC末端の長いステムセグメントのおおよそのN末端アミノ酸を表す。Cpと表記された残基は、本明細書に記載のHA1のN末端の長いステムセグメントのおおよそのC末端アミノ酸を表す。
【0076】
図2】A型インフルエンザHK68-H3N2血球凝集素(配列番号3)及びPR8-H1N1血球凝集素(配列番号1)と整列させたB型インフルエンザウイルス血球凝集素(配列番号558)の代表的な配列のCLUSTALWによる配列アラインメントを示す。
【0077】
図3】本明細書に記載の様々なN末端及びC末端ステムセグメント並びに中間ステムセグメントの境界を成すアミノ酸を記載した、B型インフルエンザウイルス血球凝集素(配列番号17)の配列表を示す。
【0078】
図4】HK68-H3N2血球凝集素タンパク質に基づくA型インフルエンザHAステムドメインポリペプチドの推定上の構造を提供する。図4Aは、HK68-H3N2血球凝集素タンパク質、HA1のN末端ステムセグメント配列番号36、及びC末端ステムセグメント配列番号52に基づくA型インフルエンザHAステムドメインポリペプチドの推定上の構造を提供する。図4Bは、HK68-H3N2血球凝集素タンパク質、HA1のN末端ステムセグメント配列番号36、及びC末端の短いステムセグメント配列番号352に基づくA型インフルエンザHAの短いステムドメインポリペプチドの推定上の構造を提供する。図4Cは、HK68-H3N2血球凝集素タンパク質、HA1のN末端の長いステムセグメント配列番号417、及びC末端の長いステムセグメント配列番号433に基づくA型インフルエンザHAの長いステムドメインポリペプチドの推定上の構造を提供する。
【0079】
図5】PR8-H1N1血球凝集素タンパク質に基づくA型インフルエンザHAステムドメインポリペプチドの推定上の構造を提供する。図5Aは、PR8-H1N1血球凝集素タンパク質、HA1のN末端ステムセグメント配列番号18、及びC末端ステムセグメント配列番号34に基づくA型インフルエンザHAステムドメインポリペプチドの推定上の構造を提供する。図5Bは、A型インフルエンザHAの短いステムドメインポリペプチド、HA1のN末端ステムセグメント配列番号18、及びC末端の短いステムセグメント配列番号350の推定上の構造を提供する。図5Cは、PR8-H1N1血球凝集素タンパク質、HA1のN末端の長いステムセグメント配列番号414、及びC末端の長いステムセグメント配列番号430に基づくA型インフルエンザHAの長いステムドメインポリペプチドの推定上の構造を提供する。
【0080】
図6】B型インフルエンザHAステムドメインポリペプチドの推定上の構造を提供する。図6Aは、B/香港/8/73血球凝集素タンパク質に基づく部分的にヘッドのないHA分子を提供する。この分子中では、HAのHA1ドメインの最初の94アミノ酸が保持されており(配列番号550)、かつCys94が、リンカー架橋によって、HA1ドメインのCys143に直連結されている(配列番号553)。図6Bは、B/香港/8/73血球凝集素タンパク質に基づく部分的にヘッドのないHA分子を示す。この分子中では、HAのHA1ドメインの最初の178アミノ酸が保持されており(配列番号551)、かつCys178が、リンカー架橋によって、HA1ドメインのCys272に直連結されている(配列番号554)。図6Cは、B/香港/8/73血球凝集素タンパク質に基づくヘッドのないHA分子を示す。この分子中では、HAのHA1ドメインの最初の94アミノ酸が保持されており(配列番号555)、かつCys94が、リンカー架橋によって、HA1ドメインのCys143に直連結されている。HA1ドメインのアミノ酸143〜178がさらに保持されており(配列番号556)、かつCys178が、リンカー架橋によって、HA1ドメインのCys272に直連結されている(配列番号557)。図6Dは、B/香港/8/73血球凝集素タンパク質に基づくヘッドのないHA分子を示す。この分子中では、HAのHA1ドメインの最初の54アミノ酸が保持されており(配列番号552)、かつCys54が、リンカー架橋によって、HA1ドメインのCys272に直連結されている(配列番号554)。
【0081】
図7】保存されたH1ストークドメイン及び異なる亜型HA由来の様々な球状ヘッドドメインを有するキメラHAの概略図を示す。
【0082】
図8】抗体及び反応性血清を誘導し、解析するための新規のインフルエンザワクチン及び診断ツールプラットフォームを示す。A)キメラHAの発現。A/PR8/34 HAのストークドメイン及びA/カリフォルニア/4/09の球状ヘッドドメインからなるキメラHA(キメラHA)並びに野生型HA(PR8-HA及びCAL09-HA)並びにGFP対照を293T細胞で発現させた。上のウェスタンブロットはPR8特異的抗体(PY102)でプロービングしたのに対し、下側のブロットはCal09に特異的な抗体(39C2)でプロービングした。B)Aで発現されたHA構築物の模式図。キメラHAは、A/PR/8/34 HAストークドメイン及び2009 A/カリフォルニア/04/09球状ヘッドドメインから構成される。
【0083】
図9】キメラHAの概略図を示す。A)キメラHAの基本構造。球状ヘッドは、ジスルフィド結合Cys 52-Cys 277で好都合に交換することができる。B)完全に保存されたストークドメイン及び様々な球状ヘッドドメインからなるキメラHAの順次投与による初回免疫-追加免疫体制。
【0084】
図10】H1 HAのストーク及びH3 HAの球状ヘッドを有するキメラHAの作製を記載している。A/PR8/34 HAのストークドメイン及びHK/68の球状ヘッドドメインからなるキメラHA(キメラH3)並びに野生型HA(PR8-HA及びHK68 HA)を293T細胞で発現させた。上のウェスタンブロットはPR8特異的抗体でプロービングしたのに対し、下側のブロットはH3に特異的な抗体でプロービングした。
【0085】
図11】A/香港/1/1968(H3)、A/パース/16/2009(H3)、A/PR/8/34(H1)、A/Cal/4/09(H1)、A/ベトナム/1203/04(H5)、及びA/マガモ/アルバータ/24/01(H7)の血球凝集素タンパク質配列の配列比較を示す。Cys52及びCys277アミノ酸残基が(H3付番に基づいて)指定されている。黒の陰影部は、保存されたアミノ酸を示す。黒の波線は、HAの球状ヘッド領域を表す。HA1及びHA2の始点が示されている。
【0086】
図12】キメラ血球凝集素の概略図を示す。(A)キメラPR8-cH1 HAの構築図。キメラHAを、A/PR/8/34(H1) HAのCys52とCys277の間に位置する球状ヘッドドメインと、A/カリフォルニア/4/09(H1) HAの球状ヘッドドメインとを交換することにより構築した。得られたキメラHAは、A/PR8/34(H1) HAのストーク領域をA/カリフォルニア/4/09(H1) HAの球状ヘッドドメインとともに有しており、PR8-cH1と表記されている。(B)様々な野生型HA及びキメラHA、例えば、(左から右に)野生型PR8 HA、キメラPR8-cH1 HA、キメラPR8-cH5 HA、野生型パースHA、及びキメラパース-cH7 HAのフォールディングされた構造の概略図。全長HA構造は、タンパク質データベース(PDB)からダウンロードした: PR8 HA(PDB ID 1RU7)及びパースHA(HK68 HA、PDB ID 1MQNで表される)。最終的な画像は、PyMol(Delano Scientific)で作成した。
【0087】
図13】キメラHA構築物の表面発現及び機能解析を示す。(A)キメラHA構築物の表面発現を一過性にトランスフェクトした細胞で評価した。トランスフェクションの24時間後、293T細胞をトリプシン処理し、キメラHAタンパク質の細胞表面発現をフローサイトメトリーで解析した。上のパネルで、模擬トランスフェクトした細胞(左の陰影領域)が、PR8 HAをトランスフェクトした細胞(右)又はPR8-cH1をトランスフェクトした細胞(右)又はPR8-cH5をトランスフェクトした細胞(右)と比較されている。下のパネルで、模擬トランスフェクトした細胞(左の陰影領域)が、パースをトランスフェクトした細胞及びパース-cH7構築物(右)をトランスフェクトした細胞と比較されている。(B)キメラHAを発現するルシフェラーゼコード偽粒子を用いて、MDCK細胞を感染させた。ルシフェラーゼアッセイで生成された相対光単位(RLU)は、キメラHAを発現する偽粒子が細胞に侵入することができたことを示す。
【0088】
図14】キメラ血球凝集素を有する組換えウイルスの作製を記載している。(A)組換えウイルスのウェスタンブロット解析。模擬感染させた又は表示されたウイルス(16hpi)を2のMOIで感染させたMDCK細胞由来の抽出物を調製し、抗体:抗A/PR8/HA(H1)(PY102)、抗A/Cal/09/HA(H1)(29C1)、抗A/VN/HA(H5)(M08)、抗H3/HA(12D1)、抗H7(NR-3125)、抗A/NP(HT103)、及び内部ローディング対照としての抗GAPDHでプロービングした。(B)抗体:抗A/NP(HT103)、抗A/H1 HA(6F12)、抗A/PR8/HA(PY102)、抗A/Cal/09/HA(29C1)、抗A/VN/HA(M08)、抗H3/HA(12D1)、及び抗A/H7ウイルス(NR-3152)を用いた、組換えウイルスに感染させたMDCK細胞の免疫蛍光解析。
【0089】
図15】組換えウイルスの成長動態及びプラーク表現型を記載している。(A)10日齢の発育鶏卵を、卵1個当たり100pfuの野生型ウイルス又は組換えウイルスに感染させ、ウイルス成長を感染後72時間モニタリングした。(B)組換えウイルスのプラーク表現型をプラークアッセイにより評価した。MDCK細胞を、野生型ウイルス又は組換えウイルスのいずれかに感染させ、感染48時間後に免疫染色して、A/NP(HT103)に対する抗体を用いてプラーク表現型を明らかにした。
【0090】
図16図16A〜16Fは、キメラH6血球凝集素をトランスフェクトした細胞の免疫蛍光解析を示す。293T細胞に、キメラH6血球凝集素を発現する1μgのpCAGGSプラスミドをトランスフェクトした。DNA(図16A)、Cal/09感染(図16B)、DNA及びCal/09感染(図16C)、又はCal/09スプリットワクチン(図16D)を受容した動物由来の血清をトランスフェクト細胞に添加し、Alexa Fluor 594コンジュゲート抗マウスIgGとともにインキュベートした後、蛍光顕微鏡法で可視化した。対照として、交差反応性H1ステム抗体C179(図16E)、又はPR8の球状ヘッドに対する抗体であるPY102(図16F)をトランスフェクト細胞に添加し、Alexa Fluor 594コンジュゲート抗マウスIgGとともにインキュベートした後、蛍光顕微鏡法で可視化した。
【0091】
図17】DNA初回免疫及びキメラウイルス追加免疫が、致死的インフルエンザウイルス感染により感染させた動物に防御を付与することを示す。動物を、DNAのみ、キメラH9ウイルスのみ、DNA初回免疫及びキメラH9ウイルス追加免疫、又は不活化PR8ウイルスのいずれかで処理した。その後、マウスを、鼻腔内に注入される5×104PFUのPR8ウイルスに感染させ、動物の重量を14日間モニタリングした。
【0092】
図18】ELISAにより決定したときのcH6タンパク質に対するストーク特異的抗体の反応性を示す。
【0093】
図19】ステムドメイン及び球状ヘッドドメインを有するA/PR/8/34 H1血球凝集素三量体の構造を示す。血球凝集素三量体は、グリカンなしで(A)、グリカン構造を伴って、野生型形態で(B)、及びグリカン構造がストークドメインから除去され、球状ヘッドドメインに付加されている突然変異体形態(C)で示されている。
【0094】
図20】A/PR/8/34(PR8)及びA/HK/1/68(HK68)血球凝集素(HA)の配列を示す。ステムドメインを形成するアミノ酸が囲まれている。ストークドメインと球状ヘッドドメインの境界を形成するシステイン(「C」)は、ステムドメインを形成するアミノ酸の第1の囲みの後ろ及びステムドメインを形成するアミノ酸の第2の囲みの前に示されているシステインである。残りのアミノ酸(ステムドメインを形成するアミノ酸の第1の囲みの後ろ及びステムドメインを形成するアミノ酸の第2の囲みの前に存在するシステインを含まない、囲まれていないアミノ酸)は、球状ヘッドドメインを形成するアミノ酸である。天然のグリコシル化部位は、球状ヘッドドメインに対応するアミノ酸の部分に濃い(darkened)文字で示されている。膜貫通及び細胞外ドメインは、各々の配列の末端の強調された一連のアミノ酸で表されている。ステムドメインへのグリカンの結合を破壊するために突然変異させることができるグリコシル化部位が示されており;これらは、以下の配列:(HA PR8中の)NNST、NVT、NSS、NGT、及び(HA HK68中の)NST、NGT、NAT、NGS、NGTを含む。
【0095】
図21】インフルエンザ血球凝集素(H1)の単量体の球状ヘッドドメイン上の免疫優性抗原性部位の模式図を示す(A)。非天然のグリコシル化部位をA/Pr/8/34 H1血球凝集素の抗原性部位に導入する例示的な突然変異(B)。これらの非天然のグリコシル化部位は、アミノ酸モチーフN-Xaa-S/T(ここで、Xaaは、任意のアミノ酸であることができる)で示されている。
【0096】
図22】ヒトH1亜型(2009 H1N1ウイルスまで(2009 H1N1ウイルスも含む)、及び他の2009インフルエンザウイルス)のHAにおけるグリコシル化部位の経時的な獲得を示す。1918年以降及び2009 H1N1パンデミックウイルスの出現以前にヒトで循環していた季節性H1N1株のHA1中の抗原性部位のアミノ酸アラインメント(A)。簡単にするために、アラインメントは、インフルエンザ研究データベース(Influenza Research Database)及びインフルエンザウイルス資源データベース(Influenza Virus Resource Database)から入手した原型的参照株及びワクチン株を用いて行なった(受託番号は方法に記載されている)。年が表示されていないのは、その年の分離株配列がないことか、又は配列がわずかしか入手できないために原型配列が不明であることかのいずれかに対応する。陰影領域は、上部に記載されている既知の抗原性部位を示す。1、2、及び3と表記された領域中の囲まれた文字は、保存されたグリコシル化を表し;4、5、6、及び7と表記された領域中の囲まれた文字は、時間が経つと現われるグリコシル化を表す。時間ストークは、HAタンパク質の球状ヘッドにおけるグリコシル化の獲得の年を示す(B)。数字は、下部に示す特定の年に出現するグリコシル化部位のアミノ酸位置を示す。矢印は、時間経過に伴うグリコシル化部位の持続を示し、丸は、特定のグリコシル化部位の消失を表す。不連続線は、H1N1がヒトで循環しなかった期間を示す。1918年から2009 pH1N1ウイルスの出現まで経時的に出現するのと同じ各々のグリコシル化の特定の位置の構造的表示(C)。HAは、HA三量体分子を形成するリボンとして表されている。位置は、H1命名体系を指す(71、142、144、172、及び177は、それぞれ、H3付番の58、128、130、158、及び163に対応する)。
【0097】
図23】HAグリコシル化突然変異体2009 pH1N1ウイルスの表現型特徴を示す。MDCK細胞におけるレスキューされたA/ネーデルラント/602/2009 HAグリコシル化突然変異体ウイルスのプラークサイズ表現型(A)。5のMOIで12時間感染させたMDCK細胞から得られた全細胞ライセートのウェスタンブロット解析(B)。ライセートを非還元条件下で泳動し、ブロットを、H1を欠くPR8ウイルスに対して惹起されたウサギポリクローナル抗体3851で検出した。該H1は、酸及びDTT処理で除去されていた。0.001のMOIで感染させた分化したヒト気管気管支(tracheobrochial)上皮細胞におけるレスキューされたウイルスの成長動態(C)。ウイルス力価測定を、示された各々の時点について、MDCK細胞での標準的なプラークアッセイにより実施した。
【0098】
図24】HA中に追加のグリコシル化を有する2009 pH1N1ウイルスがマウス及びフェレットで弱毒化されることを示す。(A〜E)Neth/09グリコシル化突然変異体ウイルスによる9週齢C57B/6雌マウスの感染。組換えウイルス当たりn=5匹のマウスの群に、表示されたウイルス用量で鼻腔内(i.n.)感染させた。体重は、各群の平均値を表し、エラーバーは、各時点での標準偏差(s.d.)を示す。(F)1×103pfuの各々の突然変異体ウイルスに感染させたマウス由来の肺の力価を、示したように感染後(p.i.)2日目(丸)、3日目(四角)、及び7日目(三角)に得た。黒棒は、rNeth/09 WTウイルスと比較したときの、各時点での群当たり2匹(矢印)又は3匹のマウスについての平均ウイルス力価を表す。(G)表示されたウイルスに感染させたフェレット(群当たりn=3)の体重変化。重量は平均値として示され、エラーバーは、各時点のs.d.を示す。(H)(G)に示すフェレットから1日おきに得られた鼻洗浄液中のウイルス力価。(I)表示されたウイルスによる感染後(p.i.)3日でのフェレット(n=3)由来の組織中のウイルス量。値は、(F)と同様に表されている。フェレットの体重の統計的有意差をウィルコクソンの順位和検定で推定した(G)。
【0099】
図25】Tx/91のHA中にグリコシル化欠失を含むウイルスがマウスで増大した病原性を示し、2009 pH1N1株に対して交差防御することを示す。野生型HA又はグリコシル化欠失突然変異体A/テキサス/36/1991 HAのいずれか及びPR8由来の残りの7つの遺伝子を担持する組換えA型インフルエンザウイルスの表現型特徴(ウイルスは、rPR8 7:1 Tx/91 HAである)。(A)それぞれのグリコシル化欠失突然変異体ウイルスに5のMOIで12時間感染させたMDCK細胞から得られたライセートのウェスタンブロット解析。ライセートを還元条件下で泳動し、ブロットをポリクローナル3951抗体で検出した。(B)示された1×104pfuの各ウイルスに感染させた8週齢C57B/6雌マウス。群当たりn=5匹のマウスの平均体重。エラーバーは、各時点についてのs.d.を示す。(C)(B)の感染させたマウスを27日間血清転換させておき、27日の時点で、これらのマウスを100 LD50のNeth/09に感染させた。体重は、各群の平均値をそれぞれのs.d.とともに表す。(D)生存率は、(C)のマウスについて示されている。スチューデントt-検定を用いて、体重減少の有意性を決定し、ログランク検定を用いて、生存転帰の有意性(*P<0.05)を評価した。
【0100】
図26】キメラHA(cHA)タンパク質(A)及びMDCK細胞でのcHA発現(B)の模式的表示を示す。キメラHA(cHA)タンパク質及び組換えキメラウイルス。(A)cHAの模式的表示。球状ヘッドドメインは、残基C52とC277(H3付番)の間の介在アミノ酸配列として定義される。このジスルフィド結合をヘッドとストークの境界として用いて、外来のHAヘッドを異種ストークの上に導入した。ストークドメインは、HA1及びHA2サブユニットの残りの部分として定義される。CT、細胞質尾部;SP、シグナルペプチド;TM、膜貫通ドメイン。全長HA構造は、タンパク質データベース(PDB)からダウンロードした:PR8(H1) HA(PDB ID 1RU7)及びA/ホロホロチョウ/香港/WF10/99 HA[A/ブタ/香港/9/98(H9; PDB ID 1JSD)で表される]。最終的な画像は、PyMol(Delano Scientific)で作成した。H6 HAの構造は公開されていないので、PR8 HAのヘッドフォールディングの画像がcH6/1構築物のために使用されている。(B)cHAの発現を確認するための免疫蛍光。MDCK細胞を、WT PR8ウイルスもしくはcH9/1 N3ウイルスのいずれかに感染させるか、又は模擬感染させた。PR8ウイルスのヘッド及びストークに特異的な抗体並びにH9反応性を有する抗体を用いて、cHA発現を確認した。(倍率バー:40×)。
【0101】
図27】パンデミックH1N1ウイルスに感染した成人患者がHAストークに反応する高力価の中和抗体を有することを示す。pH1N1感染成人(n=9)、pH1N1に感染していない小児(n=5)、及びpH1N1ウイルスに感染していない成人(n=11)の血清と、cH6/1タンパク質(A)、cH9/1タンパク質;(B)HA2タンパク質のLAH(抗LAH抗体を陽性対照として使用した);(C)H5 HAタンパク質(H5 HAに対して惹起されたマウスポリクローナル血清を陽性対照として使用し、汎H3抗体12D1を陰性対照として使用した);(D)(13)又はH3 HAタンパク質(12D1を陽性対照として使用し、H5 HAに対して惹起されたマウスポリクローナル血清を陰性対照として使用した);(E)全てELISAにより評価した;データ点は、プール試料のSE付き平均力価又は反応性を表す。
【0102】
図28】パンデミックH1N1ウイルスに感染した成人患者がHAストークに特異的である高力価の中和抗体を有することを示す(A及びB)。pH1N1感染者(n=14)及びpH1N1に感染していない成人(n=5)由来の血清を別々にプールし、両方のプール由来の全IgGを精製した。ストーク抗体の中和能力を、cH9/1 N3ウイルスを用いたプラーク減少アッセイにより評価した。データ点は、2回の実験の平均及びSEを表す。プラークを抗H9抗体G1-26で免疫染色した。(B)は、上部に沿って示した血清の4つの希釈液のプラーク減少を示す。(C)シュードタイプ粒子中和アッセイは、ヒト精製IgG調製物(pH1N1感染成人及びpH1N1に感染していない成人由来の血清)の中和抗体活性を測定する。全IgG濃度は、50、10、及び2μg/mLであった。陽性対照として、ストーク特異的モノクローナル抗体6F12を使用した。
【0103】
図29】cH6/1及びcH9/1タンパク質の発現及び機能を示す。A)2μgのcH6/1及びcH9/1タンパク質のクマシーゲル。M、マーカータンパク質。(B)バキュロウイルス発現cHAタンパク質のウェスタンブロット解析。レーン1、cH6/1タンパク質;レーン2、cH9/1タンパク質;レーン3、WT PR8 HA;レーン4、WT H3 HA。ブロットを、PR8ウイルスのストークと反応することが知られている抗体(ウサギポリクローナル抗HA2)又はH3ウイルスのストークと反応することが知られている抗体(マウスmAb 12D1)及びH6の球状ヘッドと反応することが知られている抗体(ヤギポリクローナル抗H6)又はH9ウイルスの球状ヘッドと反応することが知られている抗体(マウスmAb G1-26)でプロービングして、バキュロウイルス発現cHAのアイデンティティを確認した。mAb 12D1は、HA0とHA2の両方と反応する(H3タンパク質調製物は切断されて、2つの異なるバンドを生じる)。(C)cH9/1 N3再集合体ウイルスのプラークアッセイ。再集合体cH9/1 N3ウイルスのプラーク表現型は、WT PR8ウイルスによって作られるプラークと同様である。プラークをPY102及び抗H9抗体G1-26で免疫染色した。
【0104】
図30】インフルエンザウイルスHAのストークに対するモノクローナル抗体がcHAに結合し、それを中和することを示す。(A)ストーク抗体C179を用いて、cH6/1バキュロウイルス発現タンパク質に対する反応性をELISAにより試験した。C179はcH9/1と用量依存的な形で反応した。(B)ストーク抗体C179を用いて、cH9/1バキュロウイルス発現タンパク質に対する反応性をELISAにより試験した。C179はcH9/1と用量依存的な形で反応した(C及びD)。抗体6F12は、cH9/1 N3ウイルス複製を中和する。6F12を用いて、cH9/1 N3ウイルスを中和するストーク特異的モノクローナル抗体の能力をプラーク減少アッセイにより評価した。Dは、mAb 6F12の5つの希釈液(100、20、4、0.8、及び0.16μg/mL)を用いたcH9/1 N3ウイルスのプラーク減少を示す。プラークを抗H9抗体G1-26で免疫染色した。
【0105】
図31】キメラ血球凝集素の概略図を示す。図31Aは、野生型及びcH1/1ウイルスの図を示す。キメラHAを、PR8(H1) HAのCys52とCys277の間に位置する球状ヘッドドメインと、A/カリフォルニア/4/09(H1) HAの球状ヘッドドメインとを交換することにより構築した。得られるキメラHAは、A/PR8/34(H1) HAのストーク領域をA/カリフォルニア/4/09(H1) HAの球状ヘッドドメインとともに有しており、cH1/1と表記されている。図31Bは、様々な野生型及びキメラHAのフォールディングされた構造の理論的概略図を示す。左から右に:野生型PR8 HA、キメラcH1/1 HA、キメラcH5/1 HA、野生型パースHA、キメラcH7/3 HA、及びキメラcH5/3 HA。
【0106】
図32】本研究で使用されるH1 HAとH3 HAとH5 HAとH7 HAのアミノ酸同一性を比較した表を示す。アミノ酸同一性パーセントは、ClustalWを用いて計算した(シグナルペプチドを除く)。アミノ酸同一性パーセントは、全長HA、並びに球状ヘッドドメイン及びストークドメインについて比較されている。灰色の棒は、100%同一性を示す。
【0107】
図33】キメラHA構築物の表面発現を示す。キメラHA構築物の表面発現を一過性にトランスフェクトした又は一過性に感染させた細胞で評価した。トランスフェクションの48時間後、293T細胞をトリプシン処理し、キメラHAタンパク質の細胞表面発現をフローサイトメトリーで解析した。上のパネルでは、模擬トランスフェクトした細胞(灰色)が、PR8 HAをトランスフェクトした細胞(黒線)又はcH1/1をトランスフェクトした細胞(黒線)又はcH5/1をトランスフェクトした細胞(黒線)と比較されている。真ん中のパネルでは、模擬トランスフェクトした細胞(灰色)が、パース/09をトランスフェクトした細胞、cH7/3をトランスフェクトした細胞(黒線)、及びcH5/3構築物をトランスフェクトした細胞(黒線)と比較されている。下のパネルでは、MDCK細胞を、パース/09、cH7/3、及びcH5/3を発現する組換えウイルスに感染させた。感染の12時間後、様々なHAの細胞表面発現を、フローサイトメトリーを用いて解析した。
【0108】
図34】MDCK細胞に侵入するキメラHAの能力を示す。キメラHAを発現するルシフェラーゼコード偽粒子を用いて、MDCK細胞に形質導入した。ルシフェラーゼアッセイで生成される相対光単位(RLU)は、キメラHAを発現する偽粒子が細胞に侵入することができることを示す。
【0109】
図35】組換えcHA発現ウイルスに感染させた細胞のウェスタンブロット解析を示す。模擬感染させた又は表示されたウイルスを2のMOIで感染させたMDCK細胞由来の抽出物を調製し、16hpiで、抗体:抗A/PR8/HA(H1)(PY102)、抗A/Cal/09/HA(H1)(29E3)、抗A/VN/HA(H5)(mAb #8)、抗H3/HA(12D1)、抗H7(NR-3152)、抗A/NP(HT103)、及びローディング対照としての抗GAPDHでプロービングした。
【0110】
図36】抗体:抗A/NP(HT103)、抗A/H1 HA(6F12)、抗A/PR8/HA(PY102)、抗A/Cal/09/HA(29E3)、抗A/VN/HA(mAb #8)、抗H3/HA(12D1)、及び抗A/H7ウイルス(NR-3152)を用いた、組換えウイルスに感染させたMDCK細胞の免疫蛍光解析を示す。
【0111】
図37】野生型ウイルス及び組換えウイルスの成長動態及びプラーク表現型を示す。(A)10日齢の発育鶏卵を、卵1個当たり100pfuの野生型ウイルス又は組換えウイルスに感染させ、ウイルス成長を感染後72時間モニタリングした。データ点は、実験複製の平均値及び標準偏差を表す。(B)組換えウイルスのプラーク表現型をプラークアッセイにより評価した。MDCK細胞を野生型ウイルス又は組換えウイルスのいずれかに感染させた。感染48時間後、細胞を固定し、免疫染色し、A/NP(HT103)に対する抗体を用いてプラーク表現型を明らかにした。
【0112】
図38図38A〜38Bは、ストーク特異的モノクローナル抗体がcHA発現ウイルス及びシュードタイプ粒子を中和することを示す。cHA発現ウイルス又はシュードタイプ粒子を中和するmAb(KB2)の能力をプラーク減少アッセイ又はシュードタイプ粒子阻害アッセイにより評価した。MDCK細胞を、表示された量(ug/mL)のmAbの存在下で、又は抗体なしで、cHA発現ウイルスもしくはシュードタイプ粒子に感染させるか、又はこれらで形質導入した。プラーク形成又はルシフェラーゼ活性を読出しとして用いて、mAbによる阻害の程度を決定した。(図38A)該mAbは、cH1/1(黒い四角)及びcH5/1(黒い三角)ウイルス複製を用量依存的な形で中和し、100ug/mLを超える濃度で100%阻害する。データ点は、実験複製の平均値及び標準偏差を表す。(図38B)該mAbは、cH1/1(黒い四角)シュードタイプ粒子の侵入も用量依存的な形で阻害し、4ug/mL超で完全に阻害する。データ点は、実験複製の平均値及び標準偏差を表す。シュードタイプ阻害アッセイは独立に処理された。
【0113】
図39】NJ/76ワクチンレシピエントが、Cal/09ワクチン接種前に、高い抗HAストーク抗体を有していたことを示す。NJ/76ワクチン被接種者(n=20)又は年齢を一致させた対照対象(n=15)由来の血清の連続希釈液を、A)cH6/1 HA又はB)NC/99 HAに対するその反応性についてELISAにより試験し、IgG終点力価を計算した。入手可能な血清の量が限られているため、Cal/09ワクチン接種前IgG終点力価も、C)cH6/1及びD)NC/99に対して、プールされたNJ/76ワクチン被接種者(N=5)及び対照対象(n=7)について決定した。各々のプールは、Cal/09ワクチン接種前の試料とCal/09ワクチン接種後の試料が入手可能である各々の群由来の全個体からなっていた。対応のないスチューデントT検定を実施し、<0.05の両側p値を統計的有意とみなした。N.D.=検出されず。N.S=有意でない。*統計的に有意である。
【0114】
図40】NJ/76ワクチンレシピエントが、Cal/09ワクチン接種前に、Cal/09に対する高いHAI力価を有していたことを示す。A)HAI力価を、NJ/76ワクチン被接種者(n=5)及び対照対象(n=7)由来のCal/09ワクチン接種前のプール血清試料について、Cal/09及びフランス/76に対して、cRBCを用いて決定した。B)プールされた結果が全体として群を代表するものであることを保証するために、各々のプール内からの個々の対象に対応する血清試料を用いて、Cal/09に対するHAIアッセイも実施した。対応のないスチューデントT検定を実施し、<0.05の両側p値を統計的有意とみなした。N.D.=検出されず。N.S=有意でない。*統計的に有意である。
【0115】
図41】NJ/76及びCal/09ワクチンが広域中和抗体を増加させたことを示す。マイクロ中和アッセイを、MDCKで、A)cH5/1 N3及びB)Cal/09ウイルスに対して、Cal/09ワクチン接種の前及び後にNJ/76ワクチン被接種者(n=5)及び対照対象(n=7)から回収したTPCK-トリプシン処理したプール血清試料を用いて実施した。感染後、細胞を抗NP抗体及びHRPコンジュゲート二次抗体で染色した。中和力価を、特定のシグナルの少なくとも50%の低下をもたらす最小血清希釈と定義した。
【0116】
図42】cHA構築物の順次ワクチン接種がHAストーク特異的抗体を誘発し、致死的感染からの防御をもたらすことを示す。マウスを、アジュバントとともに鼻腔内及び腹腔内投与される20μgのcH9/1タンパク質で初回免疫した。3週間後、マウスを、アジュバントとともに鼻腔内及び腹腔内投与される20μgのcH6/1タンパク質で追加免疫した。対照として、マウスを、BSAを用いて同様の様式で初回免疫及び追加免疫するか、又はマウスに不活化FM1ウイルスを筋肉内投与した。動物から採血し、最後のワクチン接種の3週間後に、5LD50のA/フォートモンマス/1/1947(FM1)ウイルスに感染させた。(A)ワクチン接種によって誘発されるストーク反応性の程度を評価するために、ELISAプレートにcH5/1 N1ウイルスをコーティングした。(B)感染からの防御を評価するために、マウスを14日間毎日計量した。(C)感染後の生存率を示すカプランマイヤー曲線。cH9/1+cH6/1ワクチン接種マウスは、BSA対照と比べて統計的により高い生存率を有していた(p=.0003)。
【0117】
図43】cH6/1のワクチン接種がcH9/1 N1ウイルス感染からの防御を媒介するストーク特異的免疫を誘発することを示す。インフルエンザウイルスの感染又はインフルエンザウイルスのワクチン接種の前に刺激するために、動物にYAM-HAウイルスを接種した。3週間後、動物に、cH6/1又はBSAのワクチンを、アジュバントとともに、鼻腔内及び腹腔内接種した。対照動物に野生型B/山形/16/1988を接種し、同様の様式でBSAワクチン接種するか、又は不活化cH9/1 N1ウイルスを筋肉内投与した。動物から採血し、ワクチン接種の3週間後に、250LD50のcH9/1 N1ウイルスに感染させた。(A)感染からの防御を評価するために、マウスを8日間毎日計量した。3〜5日目に、YAM-HA+cH6/1動物は、YAM-HA+BSAコホートと比べて統計的により小さい重量減少を示した(p<.05)。(B)生存を示すカプランマイヤー曲線。YAM-HA+BSAコホート(p=.038)、並びに未感作動物及びWT YAM+BSA動物(p<.0001)と比べて統計的に異なる生存率がYAM-HA+cH6/1群で見られた。YAM-HA+BSAコホートの生存率は、WT-YAM+BSAコホートの生存率と統計的に異なってはいなかった(p=0.058)。(C)ワクチン接種によって誘発されるストーク反応性の程度を評価するために、ELISAプレートにcH5/1 N1ウイルスをコーティングした。(D)cH5/1ウイルスを用いたプラーク減少アッセイの結果が示されている。(E)動物にワクチンを接種し、採血し、全IgGをH5に基づく偽粒子侵入阻害アッセイのために回収した。阻害パーセントを、対照と比べたルシフェラーゼ発現の減少として評価した。
【0118】
図44】cH6/1のワクチン接種がマウスを致死的H5インフルエンザウイルス感染から防御することを示す。インフルエンザウイルスの感染又はインフルエンザウイルスのワクチン接種の前に刺激するために、動物にYAM-HAウイルスを接種した。3週間後、動物に、cH6/1又はBSAのワクチンを、アジュバントとともに、鼻腔内及び腹腔内接種した。対照動物に野生型B/山形/16/1988を接種し、同様の様式でBSAをワクチン接種するか、又は不活化cH9/1 N1ウイルスを筋肉内投与した。動物から採血し、PR8バックグラウンドで10LD50の2:6 H5再集合体に感染させた(例えば、Steelらの文献(2009, J Virol 83:1742-1753)参照)。(A)生存を示すカプランマイヤー曲線。YAM-HA+cH6/1群をYAM-HA+BSAコホートと比較したとき、生存率の差が統計的有意性に達した(p=.06)。(B)生存の長さは、平均して、BSAをワクチン接種した動物(p=0.037)、並びに未感作対照及びWT YAM/BSA対照(p<0.001)よりもYAM-HAを接種した動物及びcH6/1をワクチン接種した動物で長かった。(C)ワクチン接種によって誘発されるストーク反応性の程度を評価するために、ELISAプレートにcH5/1 N1ウイルスをコーティングした。1:50血清希釈を%最大重量減少に対してプロットした。1つの値は外れ値であることが明らかになり、解析から除外された。線形回帰については、R2=0.56及びp=.02であった。
【0119】
図45】cHAのワクチン接種がH1N1ウイルス感染からの防御を媒介するストーク特異的免疫を誘発することを示す。(A〜F)動物を、cH9/1をコードするDNAで初回免疫し、その後、cH6/1をワクチン接種し、cH5/1可溶性タンパク質(n=10)又はBSA(n=5)で追加免疫し、一方、陽性対照マウスは、不活化ウイルスを筋肉内に受容した(n=5)。(A)動物をワクチン接種し、FM1ウイルスに感染させ;マウスを毎日計量した。経時的な重量減少が初期重量のパーセンテージの変化として示されている。(B)(A)の感染マウスの生存を示すグラフ。(C)動物をワクチン接種し、pH1N1ウイルスに感染させ;マウスを毎日計量した。経時的な重量減少が初期重量のパーセンテージの変化として示されている。(D)(C)の感染マウスの生存を示すグラフ。(E)動物をワクチン接種し、PR8ウイルスに感染させ;マウスを毎日計量した。経時的な重量減少が初期重量のパーセンテージの変化として示されている。(F)(E)の感染マウスの生存を示すグラフ。(G)上でA〜Fに及び下でH〜Iに記載したようにワクチン接種し、5 LD50のA/FM/1/1947(A、B)、10 LD50のA/ネーデルラント/602/2009(C、D)、又は5 LD50のA/PR/8/1934(E、F、H、I)に感染させた動物由来の血清のH1 HAに対する反応性。(H)動物は、上でA〜Fに記載したようにワクチン接種を受け(四角、n=4)、又は動物は未感作であったが(三角、n=3)、陽性対照マウスは、不活化PR8ウイルスを筋肉内に受容した(X印、n=5)。PR8ウイルスの感染前に、CD8 T細胞を除去した。マウスを毎日計量した。経時的な重量減少が初期重量のパーセンテージの変化として示されている。(I)(H)の感染マウスの生存を示すグラフ。(J)動物に、A〜Fについて記載したようにワクチンを接種した。全IgGを、H2に基づく偽粒子侵入阻害アッセイで使用するために精製した。阻害パーセントを、対照と比べたルシフェラーゼ発現の減少として評価した。Fab断片CR6261を陽性対照として使用した。
【0120】
図46】血球凝集素ストーク抗体が複製感染後に産生されることを示す。動物を、104PFUのA/カリフォルニア/04/09(Cal09)、A/ニューカレドニア/20/99(NC99)、又はA/ソロモン諸島/3/06(SI06)ウイルスに感染させた。感染4週間後に、血清をマウスから回収し、血球凝集素ストーク特異的抗体を、cH6/1タンパク質を用いたELISAによりアッセイした。
【0121】
図47】血球凝集素ストーク抗体が2回目のインフルエンザウイルスへの曝露の後に増加することを示す。動物を104PFUのNC99に感染させ、次いで4週間後、105もしくは106PFUのSI06ウイルス又は103もしくは104PFUのCal09ウイルスで追加免疫した。血清を、2回目の感染の4週間後にマウスから回収し、血球凝集素ストーク特異的抗体を、cH6/1タンパク質を用いたELISAによりアッセイした。比較としての役割を果たすために、1回のNC99ウイルスの接種しか受けていない動物について図46に示された値を含めた。
【0122】
図48】順次感染させたマウス由来の血清が未感染動物を致死的H5ウイルス感染から防御することを示す。動物を104PFUのNC99に感染させ、次いで4週間後、106PFUのSI06又は104PFUのCal09ウイルスで追加免疫した。これらの動物から回収された血清を未感作動物の腹腔内に移し、該未感作動物を致死用量の組換えH5ウイルスに感染させた。1回のNC99感染しか経験していない動物由来の血清を受容した動物は感染から防御されず、対照と同様の動態で死亡した。NC99及びSI06ウイルスに曝露された動物由来の血清は感染動物の60%を防御し、一方、NC99及びCal09ウイルスに感染させた動物由来の血清は感染マウスの80%を死から防御した。NC99-SI06群とNC99-Cal09群の生存率は同様であったのに対し(p=0.575)、NC99のみの群と比べた生存率の差は統計的に有意であった(NC99-SI06対NC99 p=0.018、NC99-Cal09対NC99 p=0.0023)。
【0123】
図49】インフルエンザウイルスグリコシル化突然変異体が発現され、適切にグリコシル化されることを示す。293 T細胞に、野生型A/PR/8/34 HAウイルス(PR8)、又はグリコシル化部位がPR8ヘッドドメインに導入されている及び/もしくはグリコシル化部位が突然変異によってPR8ストークドメインから除去されているPR8構築物をトランスフェクトした。ウェスタンブロット解析を、NR-4539抗A型インフルエンザウイルスHA2抗体を用いて実施し、抗マウス西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート二次抗体で可視化した。グリコシル化部位が導入された突然変異体ウイルスタンパク質は、野生型PR8よりも高い分子量に移動し;グリコシル化部位が除去されたものは、野生型PR8よりも低い分子量に移動した。突然変異体ウイルスタンパク質は全て予想された分子量に移動し、グリカンが関連グリコシル化部位においてインビトロで首尾よく付加又は除去されていたことを示している。導入されたグリコシル化部位の部位が、突然変異体42-1、42-4、及び42-5について示されている。
【0124】
図50】PR8におけるグリコシル化部位の付加及びグリコシル化部位の除去が、ウイルスタンパク質の発現にも、適切な立体構造にフォールディングするその能力にも影響がないことを示す。293 T細胞に、野生型PR8又はPR8のグリコシル化突然変異体又はcH5/1の血球凝集素をトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を固定し、適当な抗ヘッドドメイン(PY102)又は抗ストークドメイン(KB2、C179、及び6F12)抗体で染色し、蛍光ロバ抗マウス抗体とともにインキュベートした。蛍光反応性を、倒立蛍光顕微鏡を用いて可視化した。(A)PR8のヘッドドメインへのグリコシル化部位の導入は、ウイルスタンパク質発現にも、ストーク抗体(6F12)結合にも影響を及ぼさなかった。(B)グリコシル化部位がヘッドドメインに導入されているウイルスタンパク質の免疫蛍光染色は、抗ヘッド抗体結合を低下させ、ヘッドドメインの過剰グリコシル化が抗体結合部位をマスクしたことを示している。ストークドメインの立体構造エピトープに結合する抗ストークドメイン抗体の結合には変化がなく、ウイルス突然変異体が適切にフォールディングされたことを示している。(C)抗ヘッド及び抗ストーク特異的抗体を用いた、グリコシル化部位がヘッドドメインに導入されているPR8ウイルス突然変異体及びグリコシル化部位がストークドメインから除去されているPR8ウイルス突然変異体の免疫蛍光は、該タンパク質が発現され、適切にフォールディングされることを示した。野生型PR8と比べて、グリコシル化部位がヘッドドメインに導入されている突然変異体構築物(42-1、42-4、及び42-5)並びにグリコシル化部位がストークドメインから除去されている突然変異体構築物(Δ33/289)のストークドメインに結合する抗ストーク抗体の能力に差がないことが観察された。
【0125】
図51】シアリル化受容体に結合することができるウイルスグリコシル化突然変異体及びレスキューされた生存可能な突然変異体ウイルスを示す。トランスフェクト細胞をノイラミニダーゼ(シアリダーゼ)とともに37℃で1時間、その後、2%のニワトリ赤血球懸濁液とともにインキュベートした。付着した赤血球を溶解させ、ライセートの吸光度を540nmで測定した。A型インフルエンザ突然変異体ウイルスをレスキューするために、293T細胞に、1μgの8つのpDZ PR8レスキュープラスミドをコトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、ウイルスを含む上清を8日齢の発育鶏卵中に接種した。37℃で2日間のインキュベーションの後、尿膜腔液を回収し、ニワトリ赤血球の血球凝集により、及びMDCK細胞でのプラーク形成により、ウイルスの存在についてアッセイした。A型インフルエンザストークウイルス突然変異体Δ289、Δ483、及びΔ33/289は、ニワトリ赤血球に結合し、レスキューされることができた。
【0126】
図52】野生型HA及び発現構築物の概略図。(A)未切断の全長インフルエンザウイルス血球凝集素。シグナルペプチドは左端の成分であり、HA細胞外ドメインは真ん中の成分であり、膜貫通及び細胞内ドメインは右端の成分である。(B)三量体化ドメインを有する発現構築物。膜貫通及び細胞内ドメインを、位置V503(H3付番)で、トロンビン切断部位(左から3番目の成分)、T4三量体化ドメイン(左から4番目の成分)、及びヘキサヒスチジンタグ(6×hisタグ、左から5番目の成分)と交換した。(C)三量体化ドメインを有さない発現構築物。膜貫通及び細胞内ドメインを、それぞれ、アミノ酸位置509(H1、H2、及びH5)又は508(H3)(H3付番)で、ヘキサヒスチジンタグ(6×hisタグ、右端の成分)と交換した。
【0127】
図53】三量体化ドメインの導入は、組換えHAにおけるオリゴマーの安定性及び形成に影響を及ぼす。(A)還元性、変性SDS-PAGEによる三量体化ドメインを有する又は三量体化ドメインを有さない組換えHAの解析。三量体化ドメインあり(+)で発現された組換えHAは、なし(-)で発現されたHAよりも高い安定性を示す。未切断のHA(HA0)及び切断産物(HA1/分解産物;HA2)が矢印で示されている。(B)架橋されたHAの還元性、変性SDS-PAGE解析。様々なHA種がブロット中に示されている。高分子多量体はHで示され、三量体はTで示され、二量体はDで示され、単量体はMで示されている。(C)左パネル(囲み1〜4):抗ヘキサヒスチジンタグ抗体でプロービングされたB由来の還元され、変性し、かつ架橋されたグループ1 HAのウェスタンブロット解析。右パネル(右端の囲み):SDS-PAGEで解析されたBS3を有する架橋対照(IgG)。様々な種(完全抗体、重鎖、軽鎖)が矢印で示されている。マーカーバンドの分子量が各々のパネルの左側に示されている。
【0128】
図54】組換えPR8(H1)及びCal09(H1) HAに対するストーク反応性抗体の結合。(A)三量体化ドメインを有さない(T4三量体ドメインなし、黒線)又は三量体化ドメインを有する(T4三量体ドメインあり、赤線)組換え可溶性PR8 HAに対するストーク反応性抗体C179、CR6261、及び6F12並びにヘッド反応性抗体PY102及びPR8抗血清の結合。(B)三量体化ドメインを有さない(T4三量体ドメインなし、黒線)又は三量体化ドメインを有する(T4三量体ドメインあり、赤線)組換え可溶性Cal09 HAに対するストーク反応性抗体C179、CR6261、及び6F12並びにヘッド反応性抗体7B2及びCal09抗血清の結合。
【0129】
図55】組換えJAP57(H2)及びVN04(H5) HAに対するストーク反応性抗体の結合。(A)三量体化ドメインを有さない(T4三量体ドメインなし、黒線)又は三量体化ドメインを有する(T4三量体ドメインあり、赤線)組換え可溶性JAP57 HAに対するストーク反応性抗体C179及びCR6261並びにヘッド反応性抗体8F8及びH2抗血清の結合。(B)三量体化ドメインを有さない(T4三量体ドメインなし、黒線)又は三量体化ドメインを有する(T4三量体ドメインあり、赤線)組換え可溶性VN04 HAに対するストーク反応性抗体C179及びCR6261並びにヘッド反応性抗体mAb#8及びH5抗血清の結合。
【0130】
図56】グループ2 HAに対するストーク反応性抗体の結合。(A)三量体化ドメインを有さない(T4三量体ドメインなし、黒線)又は三量体化ドメインを有する(T4三量体ドメインあり、赤線)組換え可溶性HK68 HAに対するストーク反応性抗体12D1及びCR8020並びにヘッド反応性抗体XY102及びH3抗血清の結合。(B)三量体化ドメインを有さない(T4三量体ドメインなし、黒線)又は三量体化ドメインを有する(T4三量体ドメインあり、赤線)組換え可溶性Wisc05 HAに対するストーク反応性抗体12D1及びCR8020並びにH3抗血清の結合。
【発明を実施するための形態】
【0131】
(5.詳細な説明)
本発明は、インフルエンザウイルスの保存されたHAステムドメイン(本明細書で「ストーク」ドメインと呼ばれることもある)に対する交差防御免疫応答を誘導するインフルエンザ血球凝集素(HA)ウイルス免疫原(すなわち、flu HAポリペプチド)に関する。
【0132】
一態様において、本明細書に提供されるのは、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ポリペプチドである。そのようなキメラインフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ポリペプチドは、ステムドメインと異種の球状HAヘッドドメインを提示するHAステムドメインを含む。ワクチン接種用に設計されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、HAの同じステムドメインを共有するが、その球状ヘッドが極めて異なっている。そのような構築物は、保存されたHAステムに対する極めて強力でかつ広域中和性の抗体を誘発する、生インフルエンザウイルス、死滅インフルエンザウイルス、ウイルス/ウイルス様粒子(「VLP」)、サブユニットワクチン、スプリットワクチンなどのワクチン製剤へと改変される。そのような「普遍的な」ワクチンを用いて、インフルエンザウイルス亜型にわたる交差防御免疫応答を誘導し及び/又は増進させることができる。
【0133】
背景として、インフルエンザウイルスに対する中和抗体は、HA糖タンパク質を標的とし、ウイルス侵入に関与する結合段階又は融合段階のいずれかを妨げる。2つの基本的サブセットの中和抗体:株特異的球状ヘッド(インフルエンザウイルスの様々な株及び亜型にわたって保存されてないドメイン)に対する抗体、及びHA糖タンパク質の高度に保存されたステムに対する抗体は、インフルエンザウイルスへの曝露によって誘発される。保存されていないHA球状ヘッドは、免疫優性エピトープを担持し-株特異的抗球状ヘッド抗体は、抗ステム抗体特異性よりも強力であると考えられ、したがって、現在のワクチンの感染によって付与される主として株特異的な免疫を説明するものである。
【0134】
本明細書に開示されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ポリペプチドは、HAステムに対する極めて強力でかつ広域中和性の抗体を誘発するインフルエンザウイルスワクチンに対する本発明者らの合理的設計戦略に一部基づいている。これに関して、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ポリペプチドは、過去の曝露/ワクチン接種からの比較的よく保存されたストークドメインを共有するが、異種HA球状ヘッドドメイン-好ましくは、意図されるワクチン被接種者(vaccinate)が感作されていないものを含むように設計される。この構築物への曝露は、主に、保存されたHAステムに対する抗体を増加させるはずである。保存されたHAステムによる免疫の繰返し及び球状ヘッドの変更は、HAの共通のステム領域に対する強力な交差中和抗体を誘導するはずである。
【0135】
キメラインフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ポリペプチドを設計する場合、得られるタンパク質の安定性を維持するように注意を払うべきである。これに関して、図1でAp及びAqとして特定されているシステイン残基を維持することが推奨されるが、それは、それらが、下記の第5.1節でより詳細に論じられているようにHAストークの安定性に寄与するからである。最良の安定性を得るために、HA球状ドメインを全体として(図1に示すように、Apシステイン残基とAqシステイン残基の間で)「交換する」ことが好ましいが、それは、得られる立体構造が、天然の構造に最も近いからである。言い換えると、第5.1.2節で言及される「リンカー」は、異種HAの球状ヘッドドメイン全体であることができる。
【0136】
HAストークの天然の球状ヘッドを「完全に交換する」代わりに、HA球状ヘッドエピトープに寄与するループを改変することにより、該球状ヘッドを保存されたストークと異種のものにすることができる。この手法は、とりわけ、集団が曝露されているHAを使用するときには、改変される球状ヘッドを天然の球状HAヘッドと大きく異なるように設計しない限り、保存されたストークに対する所望の免疫応答を生じさせるのに同様には有効でない場合がある。それにもかかわらず、そのような改変は、例えば、HA球状ヘッドエピトープに寄与する5つのループの大部分を改変することによって達成することができる。1つの有用な手法において、5つ全てのループを改変することができる。
【0137】
ワクチン接種に使用される構築物を、ワクチン接種されるべき特定の対象/集団用に有利に設計することができる。現在生きているヒトが曝露されている3つのインフルエンザ亜型:亜型H1、H2、及びH3が存在する。H2亜型のインフルエンザウイルスは、1968年に該集団から消失したが、H1及びH3亜型のインフルエンザウイルスは、今日まで該集団内に存続している。結果として、1968年以前に生まれた現在生きている成人は、H1、H2、及びH3亜型の各々に曝露されている可能性が高い。対照的に、1968年以後に生まれた現在生きている成人は、H1及びH3亜型にしか曝露されていない可能性が高い。
【0138】
したがって、成人のワクチン接種のための好ましい実施態様において、キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、亜型H1、H2、又はH3のインフルエンザウイルスのHA由来の球状ヘッドドメインを保持するのではなく、これら3つの亜型のうちの1つのHA由来のステムドメインを保有する。異種球状ヘッドは、任意の非H1、非H2、又は非H3亜型のHAから選択することができる。また、一方ではH1/H2ステム、他方ではH3ステムを用いて作製される別々のキメラ構築物をワクチン接種プログラムで有益に使用することができ--H1及びH2亜型は、保存されたストークドメインを共有するグループ1 HA亜型であり;一方、H3は、グループ1のストークとは構造的に異なるストークドメインを有するグループ2亜型である。H1及びH3構築物の使用は、各々のステムドメインに対する免疫応答の生成/増進を保証する。そのようなキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドによる成人対象の免疫は、該対象の記憶免疫応答を増進させ、該対象におけるインフルエンザウイルスに対する長期持続性免疫をもたらす交差反応性、広域中和性の抗ステムドメイン抗体の大規模産生をもたらす。
【0139】
曝露されたことがない乳児は、当然ながら、全てのインフルエンザウイルス亜型に感作されていない。結果として、多種多様なHAステム/球状ヘッド組合せを乳児用のワクチンで使用するために構築することができる。好ましい実施態様において、未感作の乳児に、グループ1(H1もしくはH2)又はグループ2(H3)株のHAストーク、並びに異種株;すなわち、非H1、非H2、及び/又は非H3株由来の球状ヘッドを用いて作製される構築物をワクチン接種することができる。各々のHAストークについての3つの異なるキメラHA構築物を3回の順次ワクチン接種で有利に用いて、交差防御応答を誘導することができる。
【0140】
本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの使用は有利であることが理解されるべきである。なぜなら、(i)該ポリペプチドは、(無傷の球状ヘッドドメインを保有するために)極めて安定であり、及び(ii)該ポリペプチドが投与される対象の免疫系は、過去にキメラインフルエンザ血球凝集素の球状ヘッドドメインに曝露されたことはないが、キメラインフルエンザ血球凝集素のステムドメインの保存されたエピトープに曝露されたことがあるからである。
【0141】
キメラインフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ポリペプチドは、HAステムを含み、かつ異種HAヘッドを提示するキメラインフルエンザHAポリペプチドの構築、及びステムドメインとヘッドドメインの両方に対する抗体と交差反応するこのポリペプチドからの安定なキメラHAタンパク質の産生を示す作業実施例(例えば、第6.2節)によって示される。
【0142】
一態様において、本明細書に提供されるのは、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド及びインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドを含むキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である(例えば、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド及び該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、異なるインフルエンザウイルス血球凝集素亜型に由来する)。本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド(第5.2節参照)とインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド(第5.3節)とを組み合わせることによって作製することができる。すなわち、本発明の原理を用いて、本明細書に記載のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド(下記の第5.1.1節参照)及び本明細書に記載のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド(下記の5.1.2節参照)を混合し、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを作製するように適合させることができる。
【0143】
別の態様において、本明細書に提供されるのは、1以上の修飾されたグリコシル化部位及び/又は1以上の非天然のグリコシル化部位を含むflu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ポリペプチド、インフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ステムドメインポリペプチド)である。図19Bに示すように、野生型血球凝集素のグリコシル化は、球状ヘッドドメインとステムドメインの両方で生じる。これらのドメインで内のグリコシル化は抗原性領域をマスクし、それにより、インフルエンザウイルスが宿主免疫系応答を回避するのを可能にすることができると考えられる。例えば、季節性インフルエンザウイルス株(例えば、H1N1及びH3N2)は、時間とともに球状ヘッドドメインの免疫優性抗原性領域中にさらなるグリコシル化部位を獲得することが知られている。しかしながら、本明細書に記載のインフルエンザウイルスHAポリペプチドとの関連において、ポリペプチドのステムドメイン内でのグリコシル化は、このドメインに見出される保存された抗原性領域に対する所望の免疫応答を妨害又は防止することができる。図19Cを参照されたい。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、少なくとも1つの修飾されたグリコシル化部位を有するステムドメインを含むflu HAポリペプチドであり、ここで、該修飾されたグリコシル化部位、ここで、該修飾は、該修飾されたグリコシル化部位に結合するグリカンの能力を破壊する。別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA球状ヘッドドメインを含むflu HAポリペプチドであり、ここで、該HA球状ヘッドドメインは、アミノ酸配列Asn-Xaa-Ser/Thr/Cysを有する少なくとも1つの非天然のグリコシル化部位を含み、ここで、Xaaは任意のアミノ酸である。別の実施態様において、該flu HAポリペプチドは、(1)1以上の修飾されたグリコシル化部位を含むステムドメイン(ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、天然のグリコシル化部位の修飾を含み、該修飾は、該修飾されたグリコシル化部位に結合するグリカンの能力を破壊する);及び(2)アミノ酸配列Asn-Xaa-Ser/Thr/Cysを有する1以上の非天然のグリコシル化部位を含むHA球状ヘッドドメイン(ここで、Xaaは任意のアミノ酸である)を含む。具体的な実施態様において、該flu HAポリペプチドのステムドメイン中の修飾されたグリコシル化部位は、アミノ酸配列Asn-Xaa-Ser/Thr/Cysを有する天然のグリコシル化部位の修飾を含み、ここで、Xaaは任意のアミノ酸である。
【0144】
任意の特定の動作理論に束縛されるものではないが、本明細書に提供されるインフルエンザウイルスHAポリペプチドのステムドメイン内の保存された抗原性領域に対する免疫応答は、ステムドメイン内の1以上のグリコシル化部位を、該部位でのグリコシル化(すなわち、グリカンの結合)を破壊する形で修飾することによって増大させることができると考えられる。さらに、これらの免疫優性領域への1以上の非天然のグリコシル化部位の付加によるHA球状ヘッドドメインの免疫優性抗原性領域のマスキングもまた、ステムドメイン内の保存された亜免疫優性抗原性領域の免疫原性を増大させることができると考えられる。
【0145】
別の態様において、本明細書に提供されるのは、対象のインフルエンザウイルス疾患及び/もしくは感染の予防及び/もしくは治療、並びに/又は該疾患及び/もしくは感染に対する免疫において本明細書に記載のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)を使用する方法であり、すなわち、該flu HAポリペプチドを用いて、対象にインフルエンザウイルス疾患もしくは感染に対するワクチンを接種するか、又はインフルエンザウイルス疾患もしくは感染に罹患している対象を治療することができる。一実施態様において、該flu HAポリペプチドを使用する方法は、対象にflu HAポリペプチドの有効量を投与することを含む、対象のインフルエンザウイルス疾患の予防のためのものである。別の実施態様において、flu HAポリペプチドを使用する方法は、対象にflu HAポリペプチドの有効量を投与することを含む、対象のインフルエンザウイルス疾患の治療のためのものである。また別の実施態様において、flu HAポリペプチドを使用する方法は、対象のインフルエンザウイルス疾患及び/又は感染に対する免疫のためのものである。
【0146】
一実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)のうちの1つ又複数を発現するように改変されたインフルエンザウイルスである。そのようなウイルスを、インフルエンザウイルスに対するワクチンとして利用することができ、例えば、本明細書におけるflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ポリペプチド)のうちの1つ又は複数を発現する本明細書に提供されるインフルエンザウイルスを、サブユニットワクチン、スプリットワクチン、不活化ワクチン、及び/又は弱毒化された生ウイルスワクチンとして利用することができる。
【0147】
ある実施態様において、本明細書に記載のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ポリペプチド)のうちの1つ又複数を発現するように改変されたインフルエンザウイルスは、flu HAポリペプチドのインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドが由来する源と同じ源(例えば、インフルエンザウイルス株又は亜型)に由来するノイラミニダーゼ(NA)、又はその断片を含む。ある実施態様において、flu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ポリペプチド)のうちの1つ又複数を発現するように改変されたインフルエンザウイルスは、flu HAポリペプチドの球状ヘッドドメイン及び/又はステムドメインとは異なる株のインフルエンザウイルス由来のノイラミニダーゼを含む。ある実施態様において、flu HAポリペプチドのうちの1つ又複数を発現するように改変されたインフルエンザウイルスは、flu HAポリペプチドのうちの1つ又複数を発現するように改変されたインフルエンザウイルスによってコードされる他のタンパク質と比べて異なるインフルエンザウイルス由来のノイラミニダーゼを含む。
【0148】
一実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)をコードする核酸である(例えば、下記の第5.5節参照)。
【0149】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のflu HAポリペプチドをコードする核酸を含む、ベクター、例えば、発現ベクターである(例えば、下記の第5.6節参照)。具体的な実施態様において、該ベクターは、プラスミドベクターである。別の具体的な実施態様において、該ベクターは、ウイルスベクター(例えば、下記の第5.7節及び第5.8節参照)であり、例えば、本明細書の記載のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ポリペプチド)がビリオンに組み込まれているインフルエンザウイルスベクター、又はキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを発現するように改変されたゲノムを含むインフルエンザウイルスベクターである。別の具体的な実施態様において、該ベクターは、細菌ベクターである(例えば、下記の第5.10節参照)。別の具体的な実施態様において、該ベクターは、バキュロウイルスである。本明細書に提供されるベクターを、原核細胞(例えば、細菌)又は真核細胞(例えば、昆虫細胞、酵母細胞、植物細胞、藻類、及び哺乳動物細胞)を用いたキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの発現のために設計することができる。したがって、同じく本明細書に提供されるのは、本明細書に提供されるベクターを含み、かつ本明細書に記載の1以上のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)を産生することができる細胞(すなわち、原核及び真核細胞)である。
【0150】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)が組み込まれているウイルス様粒子(VLP)及びウイロソームである(下記の第5.9節参照)。
【0151】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)のうちの1つもしくは複数、及び/又は本明細書に記載の核酸、ベクター、VLP、細菌、もしくはウイロソームのうちの1つもしくは複数を含む組成物である(例えば、第5.14節参照)。具体的な実施態様において、本明細書に提供される組成物は、本明細書に記載のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)を含む。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供される組成物は、本明細書に記載のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)をコードする核酸を含む。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供される組成物は、本明細書に記載のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)をコードする核酸を含む発現ベクターを含む。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供される組成物は、本明細書に記載のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)を発現するように改変されたゲノムを有するインフルエンザウイルス又は非インフルエンザウイルスを含む。
【0152】
ある実施態様において、本明細書に記載の1以上のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド、下記の第5.1節参照)もしくはその組成物、及び/又は本明細書に記載の核酸、ベクター、VLP、もしくはウイロソームのうちの1つ又複数を対象に投与して、該対象をインフルエンザウイルスの多数の株又は亜型に対して免疫する。具体的な実施態様において、該投与は、いずれか1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、又は17種の公知のA型インフルエンザ血球凝集素亜型又は後に同定されるA型インフルエンザ血球凝集素亜型に対する該個体の宿主免疫応答を生じさせるのに十分である。別の具体的な実施態様において、該投与は、現在公知の又は後に同定されるいずれかのB型インフルエンザ血球凝集素亜型に対する該個体の宿主免疫応答を生じさせるのに十分である。
【0153】
ある実施態様において、本明細書に記載の1以上のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド、下記の第5.1節参照)もしくはその組成物及び/又は本明細書に記載の核酸、ベクター、VLP、もしくはウイロソームのうちの1つ又複数を単一用量として一度に対象に投与する。具体的な実施態様において、対象はヒト小児である。別の具体的な実施態様において、対象はヒト成人である。別の具体的な実施態様において、対象はヒト高齢者である。ある実施態様において、本明細書に記載の第1のflu HAポリペプチド、又は本明細書に記載の組成核酸、ベクター、VLP、もしくはウイロソームを単一用量として対象に投与し、次いで3〜6週間後に、本明細書に記載の第2のflu HAポリペプチド、又は本明細書に記載の組成核酸、ベクター、VLP、もしくはウイロソームを投与する。
【0154】
ある実施態様において、本明細書に記載の1以上のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)もしくはその組成物及び/又は本明細書に記載の核酸、ベクター、VLP、もしくはウイロソームのうちの1つ又複数を単一用量として対象に投与し、次いで3〜6週間後に、第2の用量を投与し、ここで、第1の用量で使用されるflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインは、第2の用量で使用されるflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)とは異なるインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメイン株又は亜型由来のものである。ある実施態様において、追加免疫接種は、2回目の接種の後6〜12カ月の間隔で対象に投与することができる。ある実施態様において、追加免疫で使用されるflu HAポリペプチドのインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインは、第1及び第2の用量で使用されるflu HAポリペプチドのインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインとは異なる株又は亜型由来のものである。具体的な実施態様において、対象はヒト小児である。別の具体的な実施態様において、対象はヒト成人である。別の具体的な実施態様において、対象はヒト高齢者である。
【0155】
具体的な実施態様において、ヒト乳児への投与のために、2用量の本明細書に記載のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド、下記の第5.1節参照)もしくはその組成物、及び/又は本明細書に記載の核酸、ベクター、VLP、もしくはウイロソームのうちの1つ又複数を乳児に投与し、ここで、第1の用量で使用されるflu HAポリペプチドのインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインは、第2の用量で使用されるflu HAポリペプチドのインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインとは異なる株又は亜型由来のものである。
【0156】
具体的な実施態様において、ヒト乳児への投与のために、3用量のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド、下記の第5.1節参照)もしくはその組成物、及び/又は本明細書に記載の核酸、ベクター、VLP、もしくはウイロソームのうちの1つ又複数を乳児に投与し、ここで、第1、第2、及び第3の用量で使用されるflu HAポリペプチドのインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインは、異なるインフルエンザウイルスの株又は亜型由来のものである。
【0157】
別の態様において、本明細書に提供されるのは、対象をインフルエンザウイルス疾患又は感染に対して免疫する方法であって、該対象を、該対象が感作されていないインフルエンザウイルスの血球凝集素に曝露させることを含む、方法であり、すなわち、該対象は、過去に該インフルエンザウイルス及び/又はインフルエンザウイルスの血球凝集素に曝露されたことがない。具体的な実施態様において、該血球凝集素は、本明細書に記載のflu HAポリペプチドである。具体的な実施態様において、該血球凝集素は、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ポリペプチドである。
【0158】
一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象をインフルエンザウイルス疾患又は感染に対して免疫する方法であって、該対象に1以上のインフルエンザウイルスを投与することを含む、方法であり、ここで、該1以上のインフルエンザウイルスの各々は、該対象が感作されていない血球凝集素ポリペプチドを含み、すなわち、該対象は、過去に該1以上のインフルエンザウイルスに曝露されたことがない。具体的な実施態様において、該1以上のインフルエンザウイルスは、亜型H2、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、及び/又はH17のインフルエンザウイルスである。別の具体的な実施態様において、該方法は、(i)亜型H2、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、又はH17のインフルエンザウイルスの第1の投与、及び(ii)亜型H2、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、又はH17のインフルエンザウイルスの第2の投与を含み、ここで、第1の投与のインフルエンザウイルスは、第2の投与のインフルエンザウイルスとは異なる亜型のものである。別の具体的な実施態様において、該方法は、(i)亜型H2、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、又はH17のインフルエンザウイルスの第1の投与;(ii)亜型H2、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、又はH17のインフルエンザウイルスの第2の投与;及び(iii)亜型H2、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、又はH17のインフルエンザウイルスの第3の投与を含み、ここで、第1、第2、及び第3の投与のインフルエンザウイルスは異なる亜型のものである。
【0159】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象をインフルエンザウイルス疾患又は感染に対して免疫する方法であって、該対象に、該対象が感作されていない1以上のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを投与することを含み、すなわち、該対象は、過去に該1以上のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに曝露されたことがない。ある実施態様において、該対象が感作されていない該1以上のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、組成物(例えば、ワクチンを含む組成物)中にある。ある実施態様において、該対象が感作されていない1以上のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、ベクター、例えば、インフルエンザウイルスベクター中にある。ある実施態様において、該対象が感作されていない1以上のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、VLP中にある。ある実施態様において、該対象が感作されていない1以上のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、ウイロソーム中にある。具体的な実施態様において、該1以上のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、亜型H2、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、及び/又はH17のインフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドである。別の具体的な実施態様において、該方法は、(i)亜型H2、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、又はH17のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの第1の投与、及び(ii)亜型H2、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、又はH17のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの第2の投与を含み、ここで、第1の投与のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、第2の投与のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドとは異なる亜型のものである。別の具体的な実施態様において、該方法は、(i)亜型H2、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、又はH17のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの第1の投与;(ii)亜型H2、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、又はH17のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの第2の投与;及び(iii)亜型H2、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、又はH17のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの第3の投与を含み、ここで、第1、第2、及び第3の投与のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、異なるインフルエンザウイルス亜型由来のものである。
【0160】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象をインフルエンザウイルス疾患又は感染に対して免疫する方法であって、(i)該対象に、インフルエンザ亜型(例えば、H1血球凝集素)由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド(又は該血球凝集素ポリペプチドをコードする核酸、該血球凝集素ポリペプチドを発現するウイルス、該血球凝集素ポリペプチドを発現するVLPなど)を投与することによって、該対象を初回免疫すること、及びある期間の後、(ii)該対象を、本明細書に記載のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)(又は該flu HAポリペプチドをコードする核酸、該flu HAポリペプチドを発現するウイルス、該flu HAポリペプチドを発現するVLPなど)で追加免疫することを含む、方法である。具体的な実施態様において、該flu HAポリペプチドは、対象が感作されていないインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド(又はその部分)、及び工程(i)の初回免疫で使用される血球凝集素ポリペプチド中のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと同じ又は同様である(例えば、同じインフルエンザウイルス株又は亜型由来である)インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド(又はその部分)を含むキメラインフルエンザウイルス血球凝集素HAポリペプチドである。ある実施態様において、対象に、同じ又は異なる本明細書に記載のflu HAポリペプチド(又は該flu HAポリペプチドをコードする核酸、該flu HAポリペプチドを発現するウイルス、該flu HAポリペプチドを発現するVLPなど)の第2の投与を含む、2回目の追加免疫を投与することができる。ある実施態様において、対象に、同じ又は異なる本明細書に記載のflu HAポリペプチド(又は該flu HAポリペプチドをコードする核酸、該flu HAポリペプチドを発現するウイルス、該flu HAポリペプチドを発現するVLPなど)の第3の投与を含む、3回目の追加免疫を投与することができる。ある実施態様において、該対象の初回免疫と追加免疫の間の期間、又は2回以上の追加免疫を投与する場合、追加免疫と追加免疫の間の期間は、例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、1カ月、2カ月、3カ月、又はそれより長い期間であることができる。ある実施態様において、該対象の初回免疫と追加免疫の間の(又は1回目の追加免疫と2回目の追加免疫の間の)期間は、例えば、3〜5日、7〜10日、7〜14日、14〜21日、14〜28日、21〜28日、21日〜1カ月、1カ月〜2カ月、1カ月〜3カ月、2カ月〜3カ月、2カ月〜4カ月、又は4カ月〜6カ月の範囲であることができる。
【0161】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象をインフルエンザウイルス疾患又は感染に対して免疫する方法であって、(i)該対象に、ヘッドのないインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド(すなわち、インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド、又は該血球凝集素ポリペプチドをコードする核酸、該血球凝集素ポリペプチドを発現するウイルス、該血球凝集素ポリペプチドを発現するVLPなど)、例えば、インフルエンザ亜型(例えば、H1血球凝集素)由来の本明細書に記載されているものを投与することによって、該対象を初回免疫すること、及びある期間の後に、(ii)該対象を、本明細書に記載のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)(又は該flu HAポリペプチドをコードする核酸、該flu HAポリペプチドを発現するウイルス、該flu HAポリペプチドを発現するVLPなど)で追加免疫することを含む、方法である。具体的な実施態様において、該flu HAポリペプチドは、該対象が感作されていないインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド(又はその部分)、及び工程(i)の初回免疫で使用されるヘッドのない血球凝集素ポリペプチド中のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド(すなわち、インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド)と同じ又は同様である(例えば、同じインフルエンザウイルス株又は亜型由来である)インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド(又はその部分)を含むキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドである。ある実施態様において、対象に、同じ又は異なる本明細書に記載のflu HAポリペプチド(又は該flu HAポリペプチドをコードする核酸、該flu HAポリペプチドを発現するウイルス、該flu HAポリペプチドを発現するVLPなど)の第2の投与を含む、2回目の追加免疫を投与することができる。ある実施態様において、対象に、同じ又は異なる本明細書に記載のflu HAポリペプチド(又は該flu HAポリペプチドをコードする核酸、該flu HAポリペプチドを発現するウイルス、該flu HAポリペプチドを発現するVLPなど)の第3の投与を含む、3回目の追加免疫を投与することができる。具体的な実施態様において、2回目及び/又は3回目の追加免疫で使用されるflu HAポリペプチド(これは、具体的な実施態様において、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドである)は、ヘッドのないHAのインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと同じであるか、又は該ポリペプチドと同様であるインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドを含み、異なるヘッドを含んでいても、含んでいなくてもよい。ある実施態様において、該対象の初回免疫と追加免疫の間の期間、又は2回以上の追加免疫を投与する場合、追加免疫と追加免疫の間の期間は、例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、1カ月、2カ月、3カ月、又はそれより長い期間であることができる。ある実施態様において、該対象の初回免疫と追加免疫の間の(又は1回目の追加免疫と2回目の追加免疫の間の)期間は、例えば、3〜5日、7〜10日、7〜14日、14〜21日、14〜28日、21〜28日、21日〜1カ月、1カ月〜2カ月、1カ月〜3カ月、2カ月〜3カ月、2カ月〜4カ月、又は4カ月〜6カ月の範囲であることができる。
【0162】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象をインフルエンザウイルス疾患又は感染に対して免疫する方法であって、(i)該対象に、本明細書に記載の第1のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)(又は該flu HAポリペプチドをコードする核酸、該flu HAポリペプチドを発現するウイルス、該flu HAポリペプチドを発現するVLPなど)を投与することによって、該対象を初回免疫すること、及びある期間の後に、(ii)該対象を、本明細書に記載の第2のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)(又は該flu HAポリペプチドをコードする核酸、該flu HAポリペプチドを発現するウイルス、該flu HAポリペプチドを発現するVLPなど)で追加免疫することを含む、方法である。具体的な実施態様において、該第2のflu HAポリペプチドは、該対象が感作されていないインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド(又はその部分)、及び工程(i)の初回免疫で使用される第1のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと同じ又は同様である(例えば、同じインフルエンザウイルス株又は亜型由来である)インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド(又はその部分)を含むキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドである。ある実施態様において、対象に、第1もしくは第2のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)、又は異なる本明細書に記載のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)(もしくは該flu HAポリペプチドをコードする核酸、該flu HAポリペプチドを発現するウイルス、該flu HAポリペプチドを発現するVLPなど)の第2の投与を含む、2回目の追加免疫を投与することができる。ある実施態様において、対象に、過去に投与された同じflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)又は異なる本明細書に記載のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)(もしくは該flu HAポリペプチドをコードする核酸、該flu HAポリペプチドを発現するウイルス、該flu HAポリペプチドを発現するVLPなど)のうちの1つの投与を含む、3回目の追加免疫を投与することができる。具体的な実施態様において、2回目及び/又は3回目の追加免疫で使用されるflu HAポリペプチドは、第1のflu HAポリペプチド(これは、具体的な実施態様において、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドである)のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと同じであるか、又は該ポリペプチドと同様であるインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドを含むキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドであり、異なるヘッドを含んでいても、含んでいなくてもよい。ある実施態様において、該対象の初回免疫と追加免疫の間の期間、又は2回以上の追加免疫を投与する場合、追加免疫と追加免疫の間の期間は、例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、1カ月、2カ月、3カ月、又はそれより長い期間であることができる。ある実施態様において、該対象の初回免疫と追加免疫の間の(又は1回目の追加免疫と2回目の追加免疫の間の)期間は、例えば、3〜5日、7〜10日、7〜14日、14〜21日、14〜28日、21〜28日、21日〜1カ月、1カ月〜2カ月、1カ月〜3カ月、2カ月〜3カ月、2カ月〜4カ月、又は4カ月〜6カ月の範囲であることができる。
【0163】
(5.1 キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)
本明細書に提供されるのは、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド及びインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドを含むか、又はこれらのポリペプチドからなるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である(例えば、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド及び該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、異なるインフルエンザウイルス血球凝集素亜型に由来する)。インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、下記の第5.2節に記載されている。安定な、ヘッドのないステムドメインを形成することができるインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、下記の第5.3節に記載されている。
【0164】
全長インフルエンザ血球凝集素は、通常、HA1ドメイン及びHA2ドメインを含む。ステムドメインは、HA1ドメインの2つのセグメント及びHA2ドメインの大部分又は全てによって形成される。該HA1ドメインの2つのセグメントは、一次配列中で、球状ヘッドドメイン(例えば、図1でAp及びAqとして表記されている残基間のアミノ酸残基参照)によって隔てられている。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、そのような構造を維持している。すなわち、ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、HA1ドメイン及びHA2ドメインから構成される安定なステム構造、並びに(一次配列中で)HA1ドメインの2つのセグメントを隔てる球状ヘッドドメインを含み、ここで、該球状ヘッドドメインは、HA1ドメイン及びHA2ドメインの他のセグメントによって形成されるステムドメインと異種である。
【0165】
ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、(i)本明細書に記載のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド(例えば、下記の第5.1.2節参照)もしくは任意の既知の株もしくは亜型のインフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド(例えば、任意の野生型インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド、例えば、下記の第5.4節に記載のインフルエンザウイルスの血球凝集素のステムドメイン)、及び(ii)本明細書に記載のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド(例えば、下記の第5.2節及び第5.4.2節参照)もしくは任意の既知の株もしくは亜型のインフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド(例えば、任意の野生型インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド)を含むか、又はこれらのポリペプチドからなり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種であり、及びここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、A型インフルエンザウイルス亜型H1のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドでも、A型インフルエンザウイルス亜型H3のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドでもない。
【0166】
ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、(i)本明細書に記載のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド(例えば、下記の第5.3節及び第5.4.1節参照)もしくは任意の既知の株もしくは亜型のインフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド(例えば、任意の野生型インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド)、及び(ii)本明細書に記載のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド(例えば、下記の第5.2節及び第5.4.2節参照)もしくは任意の既知の株もしくは亜型のインフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド(例えば、任意の野生型インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド)を含むか、又はこれらのポリペプチドからなり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種であり、及びここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、A型インフルエンザウイルス亜型H2のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドではない。
【0167】
ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、(i)本明細書に記載のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド(例えば、下記の第5.3節及び第5.4.1節参照)もしくは任意の既知の株もしくは亜型のインフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド(例えば、任意の野生型インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド)、及び(ii)本明細書に記載のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド(例えば、下記の第5.2節及び第5.4.2節参照)もしくは任意の既知の株もしくは亜型のインフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド(例えば、任意の野生型インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド)を含むか、又はこれらのポリペプチドからなり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種であり、及びここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、A型インフルエンザウイルス亜型H5のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドではない。
【0168】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)本明細書に記載のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド(例えば、下記の第5.3節及び第5.4.1節参照)もしくは任意の既知の株もしくは亜型のインフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド(例えば、任意の野生型インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド)、及び(ii)A型インフルエンザウイルス亜型H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、もしくはH17由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドを含むか、又はこれらのポリペプチドからなるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である。
【0169】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)本明細書に記載のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド(例えば、下記の第5.3節及び第5.4.1節参照)もしくは任意の既知の株もしくは亜型のインフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド(例えば、任意の野生型インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド)、及び(ii)A型インフルエンザウイルス亜型H4、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、もしくはH17由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドを含むか、又はこれらのポリペプチドからなるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である。
【0170】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)本明細書に記載のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド(例えば、下記の第5.3節及び第5.4.1節参照)もしくは任意の既知の株もしくは亜型のインフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド(例えば、任意の野生型インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド)、及び(ii)鳥インフルエンザウイルス亜型H1、H2、もしくはH3由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドを含むか、又はこれらのポリペプチドからなるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である。
【0171】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)本明細書に記載のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド(例えば、下記の第5.3節及び第5.4.1節参照)もしくは任意の既知の株もしくは亜型のインフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド(例えば、任意の野生型インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド)、及び(ii)ウマインフルエンザウイルス亜型H3由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドを含むか、又はこれらのポリペプチドからなるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である。
【0172】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)亜型H1のA型インフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド、及び(ii)亜型H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、もしくはH17のA型インフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドを含むか、又はこれらのポリペプチドからなるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、H16、又はH17のA型インフルエンザウイルス由来のものである。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H1のA型インフルエンザウイルス由来のものでも、亜型H2のA型インフルエンザウイルス由来のものでも、亜型H3のA型インフルエンザウイルス由来のものでもない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H5のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。
【0173】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)亜型H3のA型インフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド、及び(ii)亜型H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、もしくはH17のA型インフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドを含むか、又はこれらのポリペプチドからなるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H4、H7、H10、H14、又はH15のA型インフルエンザウイルス由来のものである。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H1のA型インフルエンザウイルス由来のものでも、亜型H2のA型インフルエンザウイルス由来のものでも、亜型H3のA型インフルエンザウイルス由来のものでもない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H5のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。
【0174】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)亜型H2のA型インフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド、及び(ii)亜型H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、もしくはH17のA型インフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドを含むか、又はこれらのポリペプチドからなるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H1のA型インフルエンザウイルス由来のものでも、亜型H2のA型インフルエンザウイルス由来のものでも、亜型H3のA型インフルエンザウイルス由来のものでもない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H5のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。
【0175】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)亜型H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、もしくはH17のA型インフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド、及び(ii)B型インフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドを含むか、又はこれらのポリペプチドからなるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である。
【0176】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)B型インフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド、及び(ii)亜型H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、もしくはH17のA型インフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドを含むか、又はこれらのポリペプチドからなるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、又はH17のA型インフルエンザウイルス由来のものである。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H1のA型インフルエンザウイルス由来のものでも、亜型H2のA型インフルエンザウイルス由来のものでも、亜型H3のA型インフルエンザウイルス由来のものでもない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H5のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。
【0177】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)B型インフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド、及び(ii)B型インフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドを含むか、又はこれらのポリペプチドからなるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である。
【0178】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)A型インフルエンザウイルスA/カリフォルニア/7/2009(H1)由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド、及び(ii)亜型H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、もしくはH17のA型インフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドを含むか、又はこれらのポリペプチドからなるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、又はH16のA型インフルエンザウイルス由来のものである。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H1のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H2のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H3のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H5のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。
【0179】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)A型インフルエンザウイルスA/カリフォルニア/7/2009(H1)由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド、及び(ii)亜型H2、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、もしくはH17のA型インフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドを含むか、又はこれらのポリペプチドからなるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドである。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H4のA型インフルエンザウイルス由来のものである。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H5のA型インフルエンザウイルス由来のものである。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H6のA型インフルエンザウイルス由来のものである。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H7のA型インフルエンザウイルス由来のものである。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H8のA型インフルエンザウイルス由来のものである。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H9のA型インフルエンザウイルス由来のものである。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H10のA型インフルエンザウイルス由来のものである。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H11のA型インフルエンザウイルス由来のものである。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H12のA型インフルエンザウイルス由来のものである。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H13のA型インフルエンザウイルス由来のものである。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H14のA型インフルエンザウイルス由来のものである。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H15のA型インフルエンザウイルス由来のものである。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H16のA型インフルエンザウイルス由来のものである。
【0180】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)A型インフルエンザウイルスA/ブリスベン/59/2007様(H1)由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド、及び(ii)亜型H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、もしくはH17のA型インフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドを含むか、又はこれらのポリペプチドからなるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、又はH16のA型インフルエンザウイルス由来のものである。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H1のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H2のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H3のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H5のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。
【0181】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)A型インフルエンザウイルスA/サウスカロライナ/1918(H1)由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド、及び(ii)亜型H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、もしくはH17のA型インフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドを含むか、又はこれらのポリペプチドからなるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、又はH16のA型インフルエンザウイルス由来のものである。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H1のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H2のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H3のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H5のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。
【0182】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)A型インフルエンザウイルスA/USSR/92/1977(H1)由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド、及び(ii)亜型H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、もしくはH17のA型インフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドを含むか、又はこれらのポリペプチドからなるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、又はH16のA型インフルエンザウイルス由来のものである。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H1のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H2のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H3のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H5のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。
【0183】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)A型インフルエンザウイルスA/カリフォルニア/04/2009(H1)由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド、及び(ii)亜型H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、もしくはH17のA型インフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドを含むか、又はこれらのポリペプチドからなるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、又はH16のA型インフルエンザウイルス由来のものである。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H1のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H2のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H3のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H5のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。
【0184】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)A型インフルエンザウイルスA/パース/16/2009(H3)由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド、及び(ii)亜型H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、もしくはH17のA型インフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドを含むか、又はこれらのポリペプチドからなるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H4、H7、H10、H14、又はH15のA型インフルエンザウイルス由来のものである。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H5のA型インフルエンザウイルス由来のものである。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、A/ベトナム/1203/04(H5)由来のものである。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H7のA型インフルエンザウイルス由来のものである。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、A/アルバータ/24/01(H7)由来のものである。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H1のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H2のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H3のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H5のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。
【0185】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)A型インフルエンザウイルスA/ブリスベン/10/2007様(H3)由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド、及び(ii)亜型H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、もしくはH17のA型インフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドを含むか、又はこれらのポリペプチドからなるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H4、H7、H10、H14、又はH15のA型インフルエンザウイルス由来のものである。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H1のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H2のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H3のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H5のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。
【0186】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)A型インフルエンザウイルスA/香港/1/1968(H3)由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド、及び(ii)亜型H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、もしくはH17のA型インフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドを含むか、又はこれらのポリペプチドからなるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H4、H7、H10、H14、又はH15のA型インフルエンザウイルス由来のものである。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H1のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H2のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H3のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H5のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。
【0187】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)A型インフルエンザウイルスA/カリフォルニア/1/1988(H3)由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド、及び(ii)亜型H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、もしくはH17のA型インフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドを含むか、又はこれらのポリペプチドからなるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H4、H7、H10、H14、又はH15のA型インフルエンザウイルス由来のものである。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H1のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H2のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H3のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H5のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。
【0188】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)A型インフルエンザウイルスA/アンアーバー/6/60(H2)由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド、及び(ii)亜型H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、もしくはH17のA型インフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドを含むか、又はこれらのポリペプチドからなるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H4、H7、H10、H14、又はH15のA型インフルエンザウイルス由来のものである。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H1のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H2のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H3のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H5のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。
【0189】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)A型インフルエンザウイルスA/プエルトリコ/8/1934(H1)由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド、及び(ii)亜型H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、もしくはH17のA型インフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドを含むか、又はこれらのポリペプチドからなるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H1、H2、H4、H5、H6、H7、H9、H10、H14、又はH15のA型インフルエンザウイルス由来のものである。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H1、H2、H5、H6、又はH9のA型インフルエンザウイルス由来のものである。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H1のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H2のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H3のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H5のA型インフルエンザウイルス由来のものではない。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H5のA型インフルエンザウイルス由来のものである。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、A/ベトナム/1203/04(H5)由来のものである。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H6のA型インフルエンザウイルス由来のものである。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、A/マガモ/スウェーデン/81/02(H6)由来のものである。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、亜型H9のA型インフルエンザウイルス由来のものである。別の具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、A/ホロホロチョウ/香港/WF10/99(H9)由来のものである。
【0190】
ある実施態様において、本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチド及びインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドを含み、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種であり、及びここで、該キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、以下の順序で:HA1のN末端ステムセグメント、インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド、HA1のC末端ステムセグメント、及びHA2の一次構造を有する。本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの一次配列は、単一のポリペプチドによって形成されることができ、又はそれは、多数のポリペプチドによって形成されることができる。通常、単一のポリペプチドは、当業者によって好適であると考えられる任意の技術によって発現される。
【0191】
ある実施態様において、本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは単量体である。ある実施態様において、本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは多量体である。ある実施態様において、本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは三量体である。
【0192】
ある実施態様において、本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、シグナルペプチドを含む。通常、シグナルペプチドは、ポリペプチド発現及び翻訳の間又はその後に切断されて、成熟キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを生じる。ある実施態様において、同じく本明細書に提供されるのは、シグナルペプチドを欠く成熟キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドである。本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドがシグナルペプチドを含む実施態様において、シグナルペプチドは、当業者に公知の任意のインフルエンザウイルスシグナルペプチドに基づくことができる。ある実施態様において、シグナルペプチドは、A型インフルエンザシグナルペプチドに基づく。ある実施態様において、シグナルペプチドは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、及びH17からなる群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素のシグナルペプチドに基づく。ある実施態様において、シグナルペプチドは、当業者に有用であると考えられる任意のシグナルペプチドであることができる。ある実施態様において、シグナルペプチドは、配列番号18〜33から選択される。
【0193】
ある実施態様において、本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、内腔ドメインを含む。本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドが内腔ドメインを含む実施態様において、内腔ドメインは、当業者に公知の任意のインフルエンザ内腔ドメインに基づくことができる。ある実施態様において、内腔ドメインは、A型インフルエンザ内腔ドメインに基づく。ある実施態様において、内腔ドメインは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、及びH17からなる群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素の内腔ドメインに基づく。ある実施態様において、内腔ドメインは、当業者に有用であると考えられる任意の内腔ドメインであることができる。ある実施態様において、内腔ドメインは、配列番号98〜113から選択される。ある実施態様において、内腔ドメインは、ステムドメインと同じ血球凝集素由来のものである。ある実施態様において、内腔ドメインは、ステムドメインHA2サブユニットのようなインフルエンザウイルス株又は亜型由来のものである。
【0194】
ある実施態様において、本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、膜貫通ドメインを含む。本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドが膜貫通ドメインを含む実施態様において、膜貫通ドメインは、当業者に公知の任意のインフルエンザ膜貫通ドメインに基づくことができる。ある実施態様において、膜貫通ドメインは、A型インフルエンザ膜貫通ドメインに基づく。ある実施態様において、膜貫通ドメインは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、及びH17からなる群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素の膜貫通ドメインに基づく。ある実施態様において、膜貫通ドメインは、当業者に有用であると考えられる任意の膜貫通ドメインであることができる。ある実施態様において、膜貫通ドメインは、配列番号114〜129から選択される。ある実施態様において、膜貫通ドメインは、ステムドメインと同じ血球凝集素由来のものである。ある実施態様において、膜貫通ドメインは、ステムドメインHA2サブユニットのようなインフルエンザウイルス株又は亜型由来のものである。
【0195】
ある実施態様において、本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、細胞質ドメインを含む。本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドが細胞質ドメインを含む実施態様において、細胞質ドメインは、当業者に公知の任意のインフルエンザ細胞質ドメインに基づくことができる。ある実施態様において、細胞質ドメインは、A型インフルエンザ細胞質ドメインに基づく。ある実施態様において、細胞質ドメインは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、及びH17からなる群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素の細胞質ドメインに基づく。ある実施態様において、細胞質ドメインは、当業者に有用であると考えられる任意の細胞質ドメインであることができる。ある実施態様において、細胞質ドメインは、配列番号130〜145から選択される。ある実施態様において、細胞質ドメインは、ステムドメインと同じ血球凝集素由来のものである。ある実施態様において、細胞質ドメインは、ステムドメインHA2サブユニットのようなインフルエンザウイルス株又は亜型由来のものである。
【0196】
ある実施態様において、本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド中のグリコシル化部位のうちの1つ又は複数を(例えば、アミノ酸の付加、欠失、又は置換によって)修飾する。具体的な実施態様において、1以上のグリコシル化部位を、これらの部位でのグリコシル化がポリペプチドのプロセシング及び成熟の間に生じないように修飾する。当業者は、インフルエンザHAが、通常、1以上のグリコシル化部位(例えば、Asn-Xaa-Ser/Thr/Cys、ここで、Xaaは、任意のアミノ酸もしくはAsn-Xaa-Ser/Thr/Cysであり、又はある実施態様において、XaaはPro以外の任意のアミノ酸である)を含むことを認識しているであろう。ある実施態様において、修飾されたグリコシル化部位は、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのステムドメイン中に位置する。ある実施態様において、グリコシル化部位中の1以上のアミノ酸残基を、グリコシル化部位を分断するアミノ酸残基と保存的に置換する。ある実施態様において、グリコシル化部位中の1以上のアミノ酸残基を、グリコシル化部位を分断する任意のアミノ酸残基と置換する。ある実施態様において、グリコシル化部位中の1以上のアスパラギン残基をアラニンと置換する。特定の実施態様において、H3血球凝集素の位置38のアスパラギン位置をアラニンに変化させる。ある実施態様において、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、その球状ヘッドドメイン中に1以上の非天然のグリコシル化部位を含む。ある実施態様において、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、下記の第5.4節に論じられているような1以上の修飾されたグリコシル化部位及び/又は非天然のグリコシル化部位を含む。
【0197】
ある実施態様において、本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、天然のインフルエンザ血球凝集素の三次元構造と類似している三次元構造を形成することができる。構造類似性は、当業者によって好適であると考えられる任意の技術に基づいて評価することができる。例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドと、天然のインフルエンザ血球凝集素を認識する中和抗体又は抗血清との、例えば、非変性条件下での反応は、構造類似性を示すことができる。有用な中和抗体又は抗血清は、例えば、Suiらの文献(2009, Nat. Struct. Mol. Biol. 16(3):265-273)、Ekiertらの文献(February 26, 2009, Science [DOI: 10.1126/science.1171491])、及びKashyapらの文献(2008, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105(16):5986-5991)に記載されており、これらの内容は、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている。ある実施態様において、抗体又は抗血清は、血球凝集素の三次構造又は四次構造によって形成される非隣接(すなわち、一次配列で隣接していない)エピトープと反応する抗体又は抗血清である。
【0198】
ある実施態様において、本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、1以上のポリペプチドドメインをさらに含む。有用なポリペプチドドメインは、ポリペプチドの部分の精製、フォールディング、及び切断を容易にするドメインを含む。例えば、Hisタグ
【化1】
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、FLAGエピトープ、又は他の精製タグは、本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの精製を容易にすることができる。いくつかの実施態様において、Hisタグは、配列(His)nを有し、ここで、nは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又はそれより大きい。バクテリオファージT4フィブリチン由来のフォルドンドメイン、又は三量体化ドメインは、本明細書に提供されるポリペプチドの三量体化を容易にすることができる。いくつかの実施態様において、三量体化ドメインは、三量体又は四量体コイルドコイルの形成を可能にする野生型GCN4pII三量体化ヘプタッド反復又は修飾されたGCN4pII三量体化ヘプタッド反復を含む。例えば、Weldonらの文献(2010, PLoSONE 5(9): e12466)を参照されたい。フォルドンドメインは、当業者に公知の任意のフォルドン配列を有することができる(例えば、Papanikolopoulouらの文献(2004, J. Biol. Chem. 279(10):8991-8998)を参照されたく、その内容は、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれる)。例としては、
【化2】
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が挙げられる。フォルドンドメインは、本明細書に提供される可溶性ポリペプチドの三量体化を容易にするのに有用であることができる。切断部位を用いて、ポリペプチドの一部の切断、例えば、精製タグもしくはフォルドンドメイン又は両方の切断を容易にすることができる。有用な切断部位としては、トロンビン切断部位、例えば、配列
【化3】
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を有するものが挙げられる。ある実施態様において、切断部位は、タバコエッチ病ウイルス(TEV)プロテアーゼによって認識される切断部位(例えば、アミノ酸配列Glu-Asn-Leu-Tyr-Phe-Gln-(Gly/Ser))である。
【0199】
ある実施態様において、キメラインフルエンザ血球凝集素血球凝集素ポリペプチドは、可溶性ポリペプチド、例えば、下記の実施例6及び9に記載されているものである。
【0200】
ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、図1でAp及びAqとしてインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド中で特定されているシステイン残基を維持している、すなわち、図1でAp及びAqとしてインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド中で特定されているシステイン残基は、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド中で維持されている。したがって、ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの一次配列中:(i)インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドのN末端セグメントは、図1でApとして特定されているシステイン残基で終わり、(ii)インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドのC末端セグメントは、図1でAqとして特定されているシステイン残基から始まり;及び(iii)インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド(これは、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である)は、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドのN末端セグメントとC末端セグメントの間にある。インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、下記の第5.1.2節で詳細に記載されている。
【0201】
ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1のN末端ステムセグメントは、Ap(例えば、H3血球凝集素由来のHA1サブユニットのCys52)で正確に終わるのではなく、配列上及び構造上Apに近い残基で終わる。例えば、ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1のN末端ステムセグメントは、Ap-1、Ap-2、Ap-3、Ap-4、Ap-5、Ap-6、Ap-7、Ap-8、Ap-9、Ap-10、Ap-11、Ap-12、Ap-13、Ap-14、Ap-15、Ap-16、Ap-17、Ap-18、Ap-19、Ap-20、Ap-21、Ap-22、Ap-23、Ap-23、Ap-24、Ap-25、Ap-26、Ap-27、Ap-28、Ap-29、Ap-30で終わる。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1のN末端ステムセグメントは、Ap-1〜Ap-3、Ap-3〜Ap-5、Ap-5〜Ap-8、Ap-8〜Ap-10、Ap-10〜Ap-15、Ap-15〜Ap-20、Ap-20〜Ap-30、Ap-30〜Ap-40の範囲で終わる。例えば、Ap-10で終わるHA1のN末端ステムセグメントは、H3血球凝集素のLeu42で終わる。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1のN末端ステムセグメントは、Ap+1、Ap+2、Ap+3、Ap+4、Ap+5、Ap+6、Ap+7、Ap+8、Ap+9、Ap+10、Ap+11、Ap+12、Ap+13、Ap+14、Ap+15、Ap+16、Ap+17、Ap+18、Ap+19、Ap+20、Ap+21、Ap+22、Ap+23、Ap+24、Ap+25、Ap+26、Ap+27、Ap+28、Ap+29、Ap+30、Ap+31、Ap+32、Ap+33、Ap+34、Ap+35、Ap+36、Ap+37、Ap+38、Ap+39、Ap+40で終わる。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1のN末端ステムセグメントは、Ap+1〜Ap+5、Ap+5〜Ap+10、Ap+10〜Ap+15、Ap+15〜Ap+20、Ap+20〜Ap+25、Ap+25〜Ap+30、Ap+30〜Ap+35、Ap+35〜Ap+40、又はAp+40〜Ap+50の範囲で終わる。例えば、Ap+38で終わるHA1のN末端ステムセグメントは、H3血球凝集素のArg90で終わる。HA1のN末端ステムセグメントの終点は、得られるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドが、野生型インフルエンザ血球凝集素と類似した三次元構造を形成することができるように、HA1のC末端ステムセグメント及びインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドの終点との関連で選択されるべきである。そのような実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド(これは、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である)は、一次配列中、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドのN末端セグメントとC末端セグメントの間に位置する。
【0202】
ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1のC末端ステムセグメントは、Aq(例えば、H3血球凝集素由来のHA1サブユニットのCys277)から始まるのではなく、配列上及び構造上Aqに近い残基から始まる。例えば、ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1のC末端ステムセグメントは、Aq-1、Aq-2、Aq-3、Aq-4、Aq-5、Aq-6、Aq-7、Aq-8、Aq-9、Aq-10、Aq-11、Aq-12、Aq-13、Aq-14、Aq-15、Aq-20、Aq-25、Aq-30、Aq-35、Aq-40、Aq-45、Aq-50、Aq-55、Aq-60、Aq-65、Aq-70、Aq-75、又はAq-80周辺から始まる。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1のC末端ステムセグメントは、Aq-1〜Aq-5、Aq-5〜Aq-10、Aq-10〜Aq-15、Aq-15〜Aq-20、Aq-20〜Aq-25、Aq-25〜Aq-30、Aq-30〜Aq-35、Aq-35〜Aq-40、Aq-40〜Aq-45、Aq-45〜Aq-50、Aq-50〜Aq-55、Aq-55〜Aq-60、Aq-60〜Aq-65、Aq-65〜Aq-70、Aq-75〜Aq-80の範囲から始まる。例えば、Aq-77で終わるHA1のC末端ステムセグメントは、H3血球凝集素のGly200から始まり;Aq-10で終わるHA1のC末端ステムセグメントは、H3血球凝集素のイソロイシン267から始まる。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1のC末端ステムセグメントは、Aq+1、Aq+2、Aq+3、Aq+4、Aq+5、Aq+6、Aq+7、Aq+8、Aq+9、Aq+10、Aq+11、Aq+12、Aq+13、Aq+14、Aq+15、Aq+16、Aq+17、Aq+18、Aq+19、Aq+20、Aq+21、Aq+22、Aq+23、Aq+24、Aq+25、Aq+26、Aq+27、Aq+28、Aq+29、Aq+30から始まる。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1のC末端ステムセグメントは、Aq+1〜Aq+3、Aq+3〜Aq+5、Aq+5〜Aq+8、Aq+8〜Aq+10、Aq+10〜Aq+15、又はAq+15〜Aq+20の範囲から始まる。HA1のN末端ステムセグメントの終点は、得られるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドが、野生型インフルエンザ血球凝集素と類似した三次元構造を形成することができるように、HA1のC末端ステムセグメント及びインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドの始点との関連で選択されるべきである。そのような実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド(これは、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である)は、一次配列中、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドのN末端セグメントとC末端セグメントの間に位置する。
【0203】
一例において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1のN末端ステムセグメントは、血球凝集素アミノ酸位置45-48(H3付番を使用)のうちのいずれか1つで終わることができ、該キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1のC末端ステムセグメントは、血球凝集素アミノ酸位置285-290(H3付番を使用)うちのいずれか1つから始まることができ;及び異種ヘッドドメインは、アミノ酸位置46-49のうちのいずれか1つから始まり、かつアミノ酸位置284-289(H3付番を使用)のうちのいずれか1つで終わることができる。別の例において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1のN末端ステムセグメントは、血球凝集素アミノ酸位置90(H3付番を使用)で終わり、該キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1のC末端ステムセグメントは、血球凝集素アミノ酸位置200(H3付番を使用)から始まり;及び異種ヘッドドメインは、アミノ酸位置91から始まり、かつアミノ酸位置199(H3付番を使用)で終わる。
【0204】
ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのN末端ステムセグメントの終点はAp-1であり、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのC末端ステムセグメントの始点はAq-1である。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのN末端ステムセグメントの終点はAp-2であり、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのC末端ステムセグメントの始点はAq-2である。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのN末端ステムセグメントの終点はAp-3であり、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのC末端ステムセグメントの始点はAq-3である。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのN末端ステムセグメントの終点はAp-4であり、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのC末端ステムセグメントの始点はAq-4である。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのN末端ステムセグメントの終点はAp-5であり、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのC末端ステムセグメントの始点はAq-5である。そのような実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド(これは、該インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である)は、一次配列中、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドのN末端セグメントとC末端セグメントの間に位置する。
【0205】
ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのN末端ステムセグメントの終点はAp+1であり、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのC末端ステムセグメントの始点はAq+1である。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのN末端ステムセグメントの終点はAp+2であり、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのC末端ステムセグメントの始点はAq+2である。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのN末端ステムセグメントの終点はAp+3であり、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのC末端ステムセグメントの始点はAq+3である。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのN末端ステムセグメントの終点はAp+4であり、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのC末端ステムセグメントの始点はAq+4である。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのN末端ステムセグメントの終点はAp+5であり、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのC末端ステムセグメントの始点はAq+5である。そのような実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド(これは、該インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である)は、一次配列中、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドのN末端セグメントとC末端セグメントの間に位置する。
【0206】
ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのN末端ステムセグメントの終点はAp-1であり、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのC末端ステムセグメントの始点はAq+1である。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのN末端ステムセグメントの終点はAp-2であり、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのC末端ステムセグメントの始点はAq+2である。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのN末端ステムセグメントの終点はAp-3であり、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのC末端ステムセグメントの始点はAq+3である。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのN末端ステムセグメントの終点はAp-4であり、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのC末端ステムセグメントの始点はAq+4である。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのN末端ステムセグメントの終点はAp-5であり、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのC末端ステムセグメントの始点はAq+5である。そのような実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド(これは、該インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である)は、一次配列中、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドのN末端セグメントとC末端セグメントの間に位置する。
【0207】
ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのN末端ステムセグメントの終点はAp+1であり、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのC末端ステムセグメントの始点はAq-1である。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのN末端ステムセグメントの終点はAp+2であり、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのC末端ステムセグメントの始点はAq-2である。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのN末端ステムセグメントの終点はAp+3であり、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのC末端ステムセグメントの始点はAq-3である。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのN末端ステムセグメントの終点はAp+4であり、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのC末端ステムセグメントの始点はAq-4である。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのN末端ステムセグメントの終点はAp+5であり、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのC末端ステムセグメントの始点はAq-5である。そのような実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド(これは、該インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である)は、一次配列中、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドのN末端セグメントとC末端セグメントの間に位置する。
【0208】
同じく本明細書に提供されるのは、HA2サブユニット及びキメラHA1サブユニットを含むキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドである。ある実施態様において、キメラHA1サブユニットは、第1のインフルエンザウイルス株又は亜型のHA1サブユニットの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、60、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、75、75、76、77、78、79、又は80個のアミノ酸を含み、キメラHA1サブユニットのアミノ酸の残りの部分は、第2のインフルエンザウイルス株又は亜型由来のものである。ある実施態様において、キメラHA1サブユニットは、第1のインフルエンザウイルス株又は亜型のHA1サブユニットの1〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、又は90〜100個のアミノ酸を含み、キメラHA1サブユニットのアミノ酸の残りの部分は、第2のインフルエンザウイルス株又は亜型由来のものである。ある実施態様において、第1のインフルエンザウイルス株又は亜型由来のアミノ酸は連続的であることができ、又はキメラHA1ドメインのN末端及び/もしくはC末端の部分を表すことができる。具体的な実施態様において、キメラHA1サブユニットは、2以上の異なる亜型又は株のインフルエンザウイルスのアミノ酸を含むインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドを含む。具体的な実施態様において、キメラHA1サブユニットは、2以上の異なる亜型又は株のインフルエンザウイルスのアミノ酸を有する球状ヘッドを含む。
【0209】
本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、本明細書に記載の技術を含む、当業者により知られる及び当業者に好適と考えられる任意の技術に従って調製することができることが当業者によって理解されるであろう。ある実施態様において、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは単離される。
【0210】
(5.2 インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド)
本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを含む、flu HAポリペプチドの作製において使用するためのインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドである。
【0211】
一般に、本明細書に提供されるインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、インフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインを含むか、又はそれから本質的になるポリペプチドである。インフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのヘッドドメインは、当業者によって一般に認識されるヘッドドメインである。
【0212】
ある実施態様において、本明細書に提供されるインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、当業者に公知のインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインとの少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、98%、又は99%のアミノ酸配列同一性を有するインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインを含む。
【0213】
同じく本明細書に提供されるのは、2以上の株又は亜型のインフルエンザウイルス由来のアミノ酸を含むインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドである。ある実施態様において、キメラHA1サブユニットは、第1のインフルエンザウイルス株又は亜型のHA1サブユニットの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、60、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、75、75、76、77、78、79、又は80個のアミノ酸を含み、キメラHA1サブユニットのアミノ酸の残りの部分は、第2のインフルエンザウイルス株又は亜型由来のものである。ある実施態様において、キメラHA1サブユニットは、第1のインフルエンザウイルス株又は亜型のHA1サブユニットの1〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、又は90〜100個のアミノ酸を含み、キメラHA1サブユニットのアミノ酸の残りの部分は、第2のインフルエンザウイルス株又は亜型由来のものである。ある実施態様において、第1のインフルエンザウイルス株又は亜型由来のアミノ酸は連続的であることができ、及び/又はキメラHA1ドメインのN末端及び/もしくはC末端の部分を表すことができる。
【0214】
同じく本明細書に提供されるのは、欠失型の公知のインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインを含むインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドであり、ここで、最大約150、145、140、135、130、125、120、115、110、105、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個のアミノ酸残基がヘッドドメインから欠失している。同じく本明細書に提供されるのは、欠失型の公知のインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインを含むインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドであり、ここで、約1〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、90〜100、100〜110、110〜120、120〜130、130〜140、又は140〜150個のアミノ酸残基がヘッドドメインから欠失している。さらに本明細書に提供されるのは、改変型の公知のインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインを含むインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドであり、ここで、該ヘッドドメインの最大約80、75、70 65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個のアミノ酸残基が他のアミノ酸と置換されている(例えば、保存的に置換されている)。同じく本明細書に提供されるのは、改変型の公知のインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインを含むインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドであり、ここで、該ヘッドドメインの最大約1〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、又は90〜100個のアミノ酸残基が他のアミノ酸と置換されている(例えば、保存的に置換されている)。ある実施態様において、最大50個、60個、又はそれより多くのアミノ酸が、インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインのN末端(一次アミノ酸配列から見た場合)から欠失しており、最大70個、80個、又はそれより多くのアミノ酸が、インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインのC末端(一次アミノ酸配列から見た場合)から欠失している。
【0215】
同じく本明細書に提供されるのは、インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメイン(例えば、抗原性部位A、B、C、及びD(ここで、該ヘッドドメインは亜型H3由来のものである)又は抗原性部位Sa、Sb、Ca、及びCb(ここで、該ヘッドドメインは亜型H1由来のものである)と関連する抗原性領域(例えば、エピトープを含む又はエピトープからなることが知られているヘッドドメインの領域)のうちの1つ又は複数の欠失を含むインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドである。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、1つの抗原性領域(例えば、エピトープを含む又はエピトープからなることが知られているヘッドドメインの領域)の欠失を含むインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、2つの抗原性領域(例えば、エピトープを含む又はエピトープからなることが知られているヘッドドメインの2つの領域)の欠失を含むインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、3つの抗原性領域(例えば、エピトープを含む又はエピトープからなることが知られているヘッドドメインの3つの領域)の欠失を含むインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、4つの抗原性領域(例えば、エピトープを含む又はエピトープからなることが知られているヘッドドメインの4つの領域)の欠失を含むインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、5つの抗原性領域(例えば、エピトープを含む又はエピトープからなることが知られているヘッドドメインの5つの領域)の欠失を含むインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドである。当業者は、当技術分野で公知であるか、又は当業者に公知でありかつ本明細書に記載されている技術を用いて後に同定されるインフルエンザヘッドドメインの抗原性領域(例えば、エピトープ)を容易に決定することができる。
【0216】
ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、(i)ステムドメインと相同である(すなわち、同じインフルエンザウイルス株又は亜型に由来する)インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド由来の1つ、2つ、3つ、又はそれより多くの抗原性領域、及び(ii)ステムドメインと異種である(すなわち、異なるインフルエンザウイルス株又は亜型に由来する)インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド由来の1つ、2つ、3つ、又はそれより多くの抗原性領域を含む。具体的な実施態様において、該ヘッドドメインのC抗原性部位/領域は、ステムドメインと相同である(すなわち、同じインフルエンザウイルス株又は亜型に由来する)。別の具体的な実施態様において、該ヘッドドメインのD抗原性部位/領域は、ステムドメインと相同である(すなわち、同じインフルエンザウイルス株又は亜型に由来する)。別の具体的な実施態様において、該ヘッドドメインのC及びD抗原性部位/領域は、ステムドメインと相同である(すなわち、同じインフルエンザウイルス株又は亜型に由来する)。また別の具体的な実施態様において、該ヘッドドメインのCa及び/又はCb抗原性部位/領域は、ステムドメインと相同である(すなわち、同じインフルエンザウイルス株又は亜型に由来する)。
【0217】
同じく本明細書に提供されるのは、インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインと関連する抗原性領域(例えば、エピトープを含む又はエピトープからなることが知られているヘッドドメインの領域)のうちの1つ又複数と、非抗原性ポリペプチド配列(例えば、免疫応答を誘導しないことが知られているか、又はインフルエンザに特異的ではない免疫応答を生じさせることが知られているポリペプチド配列)との置換を含むインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドである。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、1つの抗原性領域(例えば、エピトープを含む又はエピトープからなることが知られているヘッドドメインの領域)と、非抗原性ポリペプチド配列(例えば、免疫応答を誘導しないことが知られているか、又はインフルエンザに特異的ではない免疫応答を生じさせることが知られているポリペプチド配列)との置換を含むインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、2つの抗原性領域(例えば、エピトープを含む又はエピトープからなることが知られているヘッドドメインの2つの領域)と、非抗原性ポリペプチド配列(例えば、免疫応答を誘導しないことが知られているか又はインフルエンザに特異的ではない免疫応答を生じさせることが知られているポリペプチド配列)との置換を含むインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、3つの抗原性領域(エピトープを含む又はエピトープからなることが知られているヘッドドメインの3つの領域)と、非抗原性ポリペプチド配列(例えば、免疫応答を誘導しないことが知られているか又はインフルエンザに特異的ではない免疫応答を生じさせることが知られているポリペプチド配列)との置換を含むインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、4つの抗原性領域(エピトープを含む又はエピトープからなることが知られているヘッドドメインの4つの領域)と、非抗原性ポリペプチド配列(例えば、免疫応答を誘導しないことが知られているか又はインフルエンザに特異的ではない免疫応答を生じさせることが知られているポリペプチド配列)との置換を含むインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、5つの抗原性領域(エピトープを含む又はエピトープからなることが知られているヘッドドメインの5つの領域)と、非抗原性ポリペプチド配列(例えば、免疫応答を誘導しないことが知られているか又はインフルエンザに特異的ではない免疫応答を生じさせることが知られているポリペプチド配列)との置換を含むインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドである。当業者は、当技術分野で公知であるか、又は当業者に公知でありかつ本明細書に記載されている技術を用いて後に同定されるインフルエンザヘッドドメインの抗原性領域(例えば、エピトープ)を容易に決定することができる。
【0218】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、1つ、2つ、3つ、又はそれより多くの異種抗原性領域、すなわち、異なるインフルエンザウイルス株又は亜型(例えば、集団の全体又は一部が感作されていないインフルエンザウイルス株又は亜型)の血球凝集素由来の1つ、2つ、3つ、又はそれより多くの抗原性領域を含むインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドである。別の具体的な実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドの異種抗原性領域は、下記の第5.4.2節に論じられているような1以上の非天然のグリコシル化部位を含む。任意の特定の動作理論に束縛されるものではないが、ステムドメイン内の保存された亜免疫優性抗原性領域の免疫原性は、インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメイン中のこれらの免疫優性領域への1以上の非天然のグリコシル化部位の付加によって増大させることができると考えられる。具体的な実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、1つ、2つ、3つ、又はそれより多くの異種抗原性領域を含み、ここで、該異種抗原性領域は、1以上の非天然のグリコシル化部位を含む。
【0219】
本明細書に提供されるインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、当業者に公知の又は後に発見される任意のインフルエンザ血球凝集素のヘッドドメインに基づくことができる(すなわち、該ヘッドドメインとの配列同一性を有することができる)。ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、A型インフルエンザ血球凝集素のヘッドドメイン(例えば、下記の第5.4節に記載のA型インフルエンザウイルスの血球凝集素のヘッドドメイン)に基づく。ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、及びH17からなる群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素のヘッドドメインに基づく。ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、B型インフルエンザ血球凝集素のヘッドドメイン(例えば、下記の第5.4節に記載のB型インフルエンザウイルスの血球凝集素のヘッドドメイン)に基づく。いくつかの実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、B/アザラシ/ネーデルラント/1/99のヘッドドメインに基づく。具体的な実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、H5、H6、及び/又はH9群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素のヘッドドメインに基づく。別の具体的な実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、H5、H7、及び/又はH9群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素のヘッドドメインに基づく。
【0220】
(5.3 インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチド)
本明細書に提供されるのは、flu血球凝集素ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)の作製において使用するためのインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。任意の特定の動作理論に束縛されることを意図するものではないが、本明細書に提供されるflu血球凝集素ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)との関連において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、複数のインフルエンザ株と交差反応が可能である免疫応答を生じさせるために、宿主免疫系に1以上の比較的保存された抗原性領域を提示するのに有用であると考えられている。該1以上の抗原性領域はインフルエンザ血球凝集素亜型にわたってよく保存されているので、そのような免疫応答は、全長インフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのいくつかの亜型と交差反応することができる。
【0221】
一般に、本明細書に提供されるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、インフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインを含むか又はそれから本質的になるポリペプチドである。インフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、当業者によって一般に認識されるステムドメインである。
【0222】
ある実施態様において、本明細書に提供されるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、インフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインをほとんど又は全く含まない。ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、当業者によって好適であると考えられる任意の技術によってその球状ヘッドドメインが欠失させられているインフルエンザ血球凝集素である。
【0223】
ある実施態様において、本明細書に記載のインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、図1でAp及びAqとしてインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド中で特定されているシステイン残基を維持している。ある実施態様において、本明細書に記載のインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、野生型インフルエンザウイルスの血球凝集素よりも低いpH(例えば、5.2未満、5.1未満、5.0未満、又は4.9未満、例えば、4.8、4.7、4.6、4.5、4.4.、4.3、4.2、4.1、4.0、3.9、3.8などのpH)でより高い安定性を有する。特定の実施態様において、本明細書に記載のインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、野生型インフルエンザウイルスの血球凝集素よりも低いpHで、融合前立体構造から融合立体構造への立体構造変化を経る。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、低いpH(例えば、4.9〜5.2、4.5〜3.5、3.5〜2.5、2.5〜1.5、1.5〜0.5のpH)でポリペプチドの安定性を増大させる1以上のアミノ酸置換、例えば、HA1 H17Y(H3付番)を含む。インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドの安定性は、例えば、Thoennesらの文献(2008, Virology 370: 403-414)に記載されているような、トリプシン消化に対する血球凝集素分子の感受性などの、当技術分野で公知の技術を用いて評価することができる。
【0224】
インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、下記の技術を含む、当業者に好適であると考えられる任意の技術に従って調製することができる。ある実施態様において、ステムドメインポリペプチドは単離される。
【0225】
いくつかの実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドの一次構造は、以下の順序で:HA1のN末端ステムセグメント、リンカー、HA1のC末端ステムセグメント、及びHA2を含む。いくつかの実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドの一次構造は、以下の順序で:HA1のN末端ステムセグメント、リンカー、HA1のC末端の短いステムセグメント、及びHA2を含む。いくつかの実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドの一次構造は、以下の順序で:HA1のN末端の長いステムセグメント、リンカー、HA1のC末端の長いステムセグメント、及びHA2を含む。いくつかの実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、以下の順序で:HA1のN末端ステムセグメント、リンカー、HA1の中間ステムセグメント、第2のリンカー、HA1のC末端ステムセグメント、及びHA2を含む。
【0226】
一次配列は、単一のポリペプチドによって形成されることができるか、又はそれは、複数のポリペプチドによって形成されることができる。通常、単一のポリペプチドは、当業者によって好適であると考えられる任意の技術によって発現される。単一のポリペプチドの実施態様において、HA1セグメントとHA2は三次結合している。当業者に公知であるように、単一のHAポリペプチドは、例えば、プロテアーゼによって、適当な発現条件下で切断され、四次結合した2つのポリペプチドを生じさせることができる。切断は、通常、HA1のC末端ステムセグメントとHA2の間である。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、複数のポリペプチド、例えば、2つのポリペプチドのインフルエンザ血球凝集素ステムドメインである。複数のポリペプチドの実施態様において、HA1セグメントとHA2は四次結合している。
【0227】
ある実施態様において、本明細書に提供されるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは単量体である。ある実施態様において、本明細書に提供されるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは多量体である。ある実施態様において、本明細書に提供されるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは三量体である。当業者は、天然のインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドがインビボで三量体化することができること、及び本明細書に提供される特定のインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドが三量体化することができることを認識しているであろう。下記の特定の実施態様において、本明細書に提供されるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、三量体化を容易にする三量体化ドメインを含む。
【0228】
ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、シグナルペプチドを含む。通常、シグナルペプチドは、ポリペプチドの発現及び翻訳時又はその後に切断され、成熟したインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドを生じさせる。シグナルペプチドは、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドの発現に有利であることができる。ある実施態様において、また本明細書に提供される、シグナルペプチドを欠く成熟インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。
【0229】
インフルエンザ血球凝集素HA2は、通常、ステムドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞質ドメインを含む。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA2ステムドメイン、HA2内腔ドメイン、HA2膜貫通ドメイン、及びHA2細胞質ドメインを含むインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。そのようなインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、膜結合型抗原として発現されることができる。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA2ステムドメイン、HA2内腔ドメイン、及びHA2膜貫通ドメインを含むが、典型的な細胞質ドメインの一部又は全てを欠くインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。そのようなインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、膜結合型抗原として発現されることができる。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA2ステムドメイン及びHA2内腔ドメインを含むが、HA2膜貫通ドメインとHA2細胞質ドメインの両方を欠くインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。そのようなインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、可溶性ポリペプチドとして有利に発現されることができる。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA2ステムドメインを含むが、HA2内腔ドメイン、HA2膜貫通ドメイン、及びHA2細胞質ドメインを欠くインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。そのようなインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、可溶性ポリペプチドとして有利に発現されることができる。ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、当業者に公知のインフルエンザHA2ステムドメインとの少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%のアミノ酸配列同一性を有するHA2ステムドメインを含む。公知のA型インフルエンザ及びB型インフルエンザ血球凝集素由来の例示的な公知のHA2ステムドメインは、下の表に提供されている。
【0230】
同じく本明細書に提供されるのは、最大100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個のアミノ酸残基がHA2ステムドメインの一方又は両方の末端から欠失している欠失型のHA2ステムドメインを含むインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。さらに本明細書に提供されるのは、最大100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個のアミノ酸残基が他のアミノ酸と保存的に置換されている改変型のHA2ステムドメインを含むインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。さらに提供されるのは、欠失した及び改変されたHA2ステムドメインを含むインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、1以上の修飾されたグリコシル化部位を含むHA2ステムドメインを含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、下記の第5.4.1節に記載されているような、該修飾されたグリコシル化部位に結合するグリカンの能力を破壊する天然のグリコシル化部位の修飾を含む。任意の特定の動作理論に束縛されるものではないが、ステムドメイン内の免疫原性及び接近可能性抗原性領域は、該部位でのグリコシル化(すなわち、グリカンの結合)を破壊する形でステムドメイン内の1以上のグリコシル化部位を修飾することによって増加させることができると考えられる。
【0231】
いくつかの実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドの一次構造は、以下の順序で:HA1のN末端ステムセグメント、リンカー、HA1のC末端ステムセグメント、及びHA2を含む。HA1のN末端ステムセグメントは、本明細書に提供される定義に基づいて当業者により認識される任意のHA1のN末端ステムセグメントであることができる。通常、HA1のN末端ステムセグメントは、成熟したHA1(すなわち、シグナルペプチドを欠くHA1)のN末端アミノ酸からHA1の約52番目の残基の配列に位置するシステイン残基までからなるポリペプチドに対応する。本明細書でApと称される、このシステイン残基は、通常、HA1のC末端ステムセグメント中のシステイン残基とジスルフィド架橋を形成することができる。16個の代表的なA型インフルエンザ血球凝集素の配列が図1に示されており、残基Apが各々で特定されている。
【0232】
ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、Ap(例えば、H3血球凝集素由来のHA1サブユニットのCys52)で正確に終わるのではなく、配列上及び構造上Apに近い残基で終わる。例えば、ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、Ap-1、Ap-2、Ap-3、Ap-4、Ap-5、Ap-6、Ap-7、Ap-8、Ap-9、Ap-10、Ap-11、Ap-12、Ap-13、Ap-14、Ap-15、Ap-16、Ap-17、Ap-18、Ap-19、Ap-20、Ap-21、Ap-22、Ap-23、Ap-23、Ap-24、Ap-25、Ap-26、Ap-27、Ap-28、Ap-29、Ap-30で終わる。ある実施態様において、本明細書に記載のflu血球凝集素ポリペプチドのHA1のN末端ステムセグメントは、Ap-1〜Ap-3、Ap-3〜Ap-5、Ap-5〜Ap-8、Ap-8〜Ap-10、Ap-10〜Ap-15、Ap-15〜Ap-20、Ap-20〜Ap-30、Ap-30〜Ap-40の範囲で終わる。他の実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、Ap+1、Ap+2、Ap+3、Ap+4、Ap+5、Ap+6、Ap+7、Ap+8、Ap+9、Ap+10、Ap+11、Ap+12、Ap+13、Ap+14、Ap+15、Ap+16、Ap+17、Ap+18、Ap+19、Ap+20、Ap+21、Ap+22、Ap+23、Ap+24、Ap+25、Ap+26、Ap+27、Ap+28、Ap+29、Ap+30、Ap+31、Ap+32、Ap+33、Ap+34、Ap+35、Ap+36、Ap+37、Ap+38、Ap+39、Ap+40で終わる。ある実施態様において、本明細書に記載のflu血球凝集素ポリペプチドのHA1のN末端ステムセグメントは、Ap+1〜Ap+5、Ap+5〜Ap+10、Ap+10〜Ap+15、Ap+15〜Ap+20、Ap+20〜Ap+25、Ap+25〜Ap+30、Ap+30〜Ap+35、Ap+35〜Ap+40、又はAp+40〜Ap+50の範囲で終わる。HA1のN末端ステムセグメントの終点は、得られる連結されたHA1ステムドメインが、下記のように、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインと類似した三次元構造を形成することができるように、HA1のC末端ステムセグメント及びリンカーの終点との関連で選択されるべきである。
【0233】
ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、当業者に公知のインフルエンザHA1のN末端ステムセグメントとの少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%のアミノ酸配列同一性を有するHA1のN末端ステムセグメントを含む。例示的な公知のHA1のN末端ステムセグメントは、下の表に提供されている。
【0234】
同じく本明細書に提供されるのは、最大100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個のアミノ酸残基がHA1のN末端ステムセグメントの一方又は両方の末端から欠失している欠失型のHA1のN末端ステムセグメントを含むインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。同じく本明細書に提供されるのは、約1〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、90〜100個のアミノ酸残基が該ステムドメインから欠失している欠失型の公知のインフルエンザ血球凝集素ステムドメインを含むインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、ある実施態様において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、又はそれより多くの残基が、HA1のN末端ステムセグメントのC末端に付加されており;これらの付加された残基が、HA1のN末端ステムセグメントに隣接する球状ヘッドドメインのアミノ酸配列に由来し得る、伸張型のHA1のN末端ステムセグメントを含むインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。さらに本明細書に提供されるのは、最大80、75、70 65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個のアミノ酸残基が他のアミノ酸と保存的に置換されている改変型のHA1のN末端ステムセグメントを含むインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。同じく本明細書に提供されるのは、ステムドメインの最大約1〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、又は90〜100個のアミノ酸残基が他のアミノ酸と置換されている(例えば、保存的に置換されている)改変型の公知のインフルエンザ血球凝集素ステムドメインを含むインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。さらに提供されるのは、欠失した及び改変されたHA1のN末端ステムセグメントを含むインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、最大50個、60個、又はそれより多くのアミノ酸が、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインのN末端(一次アミノ酸配列から見た場合)から欠失しており、最大70個、80個、又はそれより多くのアミノ酸が、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインのC末端(一次アミノ酸配列から見た場合)から欠失している。
【0235】
HA1のC末端ステムセグメントは、本明細書に提供される定義に基づいて当業者により認識される任意のHA1のC末端ステムセグメントであり得る。通常、HA1のC末端ステムセグメントは、HA1の約277番目の残基(H3付番を使用)の配列に位置するシステイン残基からHA1のC末端アミノ酸までからなるポリペプチドに対応する。本明細書でAqと称される、このシステイン残基は、通常、HA1のN末端ステムセグメント中のシステイン残基Apとジスルフィド架橋を形成することができる。17個の代表的なA型インフルエンザ血球凝集素の配列が図1に示されており、残基Aqが各々で特定されている。
【0236】
ある実施態様において、ある実施態様において、HA1のC末端ステムセグメントは、Aq(例えば、H3血球凝集素由来のHA1サブユニットのCys277)から始まるのではなく、配列上及び構造上Aqに近い残基から始まる。例えば、ある実施態様において、HA1のC末端ステムセグメントは、Aq-1、Aq-2、Aq-3、Aq-4、Aq-5、Aq-6、Aq-7、Aq-8、Aq-9、Aq-10、Aq-11、Aq-12、Aq-13、Aq-14、Aq-15、Aq-20、Aq-25、Aq-30、Aq-35、Aq-40、Aq-45、Aq-50、Aq-55、Aq-60、Aq-65、Aq-70、Aq-75、又はAq-80周辺から始まる。ある実施態様において、HA1のC末端ステムセグメントは、Aq-1〜Aq-5、Aq-5〜Aq-10、Aq-10〜Aq-15、Aq-15〜Aq-20、Aq-20〜Aq-25、Aq-25〜Aq-30、Aq-30〜Aq-35、Aq-35〜Aq-40、Aq-40〜Aq-45、Aq-45〜Aq-50、Aq-50〜Aq-55、Aq-55〜Aq-60、Aq-60〜Aq-65、Aq-65〜Aq-70、Aq-75〜Aq-80から始まる。他の実施態様において、HA1のC末端ステムセグメントは、Aq+1、Aq+2、Aq+3、Aq+4、Aq+5、Aq+6、Aq+7、Aq+8、Aq+9、又はAq+10から始まる。ある実施態様において、本明細書に記載のflu血球凝集素ポリペプチドのHA1のC末端ステムセグメントは、Aq+1〜Aq+3、Aq+3〜Aq+5、Aq+5〜Aq+8、Aq+8〜Aq+10、Aq+10〜Aq+15、又はAq+15〜Aq+20の範囲から始まる。HA1のN末端ステムセグメントの終点は、得られるHA1ステムドメインが、下記のように、インフルエンザ血球凝集素と類似した三次元構造を形成することができるように、HA1のC末端ステムセグメント及びリンカーの始点との関連で選択されるべきである。
【0237】
ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、当業者に公知のインフルエンザHA1のC末端ステムセグメントとの少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%のアミノ酸配列同一性を有するHA1のC末端ステムセグメントを含む。例示的な公知のHA1のC末端ステムセグメントは、下の表に提供されている。
【0238】
ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp-1であり、C末端ステムセグメントの始点はAq-1である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp-2であり、C末端ステムセグメントの始点はAq-2である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp-3であり、C末端ステムセグメントの始点はAq-3である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp-4であり、C末端ステムセグメントの始点はAq-4である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp-5であり、C末端ステムセグメントの始点はAq-5である。
【0239】
ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp+1であり、C末端ステムセグメントの始点はAq+1である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp+2であり、C末端ステムセグメントの始点はAq+2である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp+3であり、C末端ステムセグメントの始点はAq+3である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp+4であり、C末端ステムセグメントの始点はAq+4である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp+5であり、C末端ステムセグメントの始点はAq+5である。
【0240】
ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp-1であり、C末端ステムセグメントの始点はAq+1である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp-2であり、C末端ステムセグメントの始点はAq+2である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp-3であり、C末端ステムセグメントの始点はAq+3である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp-4であり、C末端ステムセグメントの始点はAq+4である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp-5であり、C末端ステムセグメントの始点はAq+5である。
【0241】
ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp+1であり、C末端ステムセグメントの始点はAq-1である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp+2であり、C末端ステムセグメントの始点はAq-2である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp+3であり、C末端ステムセグメントの始点はAq-3である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp+4であり、C末端ステムセグメントの始点はAq-4である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp+5であり、C末端ステムセグメントの始点はAq-5である。
【0242】
同じく本明細書に提供されるのは、最大100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個のアミノ酸残基がHA1のC末端ステムセグメントの一方又は両方の末端から欠失している欠失型のHA1のC末端ステムセグメントを含むインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。同じく本明細書に提供されるのは、約1〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、又は90〜100個のアミノ酸残基がステムドメインから欠失している欠失型の公知のインフルエンザ血球凝集素ステムドメインを含むインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、又はそれより多くの残基が、HA1のC末端ステムセグメントのN末端に付加されており;これらの付加された残基が、HA1のC末端ステムセグメントに隣接する球状ヘッドドメインのアミノ酸配列に由来し得る、伸張型のHA1のC末端ステムセグメントを含むインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。特定の実施態様において、1つの残基がC末端ステムセグメントに付加される場合、1つの残基がN末端ステムセグメントに付加され;2つの残基がC末端ステムセグメントに付加される場合、2つの残基がN末端ステムセグメントに付加され;3つの残基がC末端ステムセグメントに付加される場合、3つの残基がN末端ステムセグメントに付加される。さらに本明細書に提供されるのは、最大約80、75、70 65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個のアミノ酸残基が他のアミノ酸と保存的に置換されている改変型のHA1のC末端ステムセグメントを含むインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。同じく本明細書に提供されるのは、HA1のC末端ステムセグメントの最大約1〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、又は90〜100個のアミノ酸残基が他のアミノ酸と置換されている(例えば、保存的に置換されている)改変型のHA1のC末端ステムセグメントを含むインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。さらに提供されるのは、欠失した及び改変されたHA1のC末端ステムセグメントを含むインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、該C末端ステムセグメントは、1以上の修飾されたグリコシル化部位を含む。ある実施態様において、該N末端ステムセグメントは、1以上の修飾されたグリコシル化部位を含む。他の実施態様において、該C末端ステムセグメント及びN末端ステムセグメントは、1以上の修飾されたグリコシル化部位を含む。
【0243】
ある実施態様において、本明細書に提供されるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、HA1サブユニットのステムドメインのキメラ/ハイブリッドを含む。HA1サブユニットのステムドメインのキメラは、第1のインフルエンザウイルス株又は亜型のHA1サブユニットのステムドメインの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、60、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、75、75、76、77、78、79、又は80個のアミノ酸を含むことができ、HA1サブユニットのステムドメインのキメラのアミノ酸の残りの部分は、第2のインフルエンザウイルス株又は亜型由来のものであることができる。ある実施態様において、HA1サブユニットのステムドメインのキメラは、第1のインフルエンザウイルス株又は亜型のHA1サブユニットのステムドメイン1〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、又は90〜100個のアミノ酸を含み、HA1サブユニットのステムドメインのキメラのアミノ酸の残りの部分は、第2のインフルエンザウイルス株又は亜型由来のものである。ある実施態様において、本明細書に提供されるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、HA2サブユニットとHA1サブユニットのステムドメインのキメラとを含む。ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、HA1サブユニットのステムドメインのキメラ/ハイブリッドを含み、ここで、1以上の天然のグリコシル化部位は、修飾が、下記の第5.4.1節に記載されているように、修飾されたグリコシル化部位に結合するグリカンの能力を破壊するように修飾されている。任意の特定の動作理論に束縛されるものではないが、ステムドメイン内の免疫原性及び接近可能性抗原性領域は、該部位でのグリコシル化(すなわち、グリカンの結合)を破壊する形でステムドメイン内の1以上のグリコシル化部位を修飾することによって増加させることができると考えられる。
【0244】
インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、当業者に公知であるか又は後に発見される任意のインフルエンザ血球凝集素に基づくことができる(すなわち、上記のように、配列同一性を有することができる)。ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、A型インフルエンザ血球凝集素に基づく。ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、及びH17からなる群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素に基づく。ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、以下で詳細に記載されるように、B型インフルエンザ血球凝集素に基づく。
【0245】
HA1のN末端ステムセグメントは、当業者に公知であるか又は後に発見される任意のHA1のN末端ステムセグメントに基づくことができる(すなわち、上記のように、配列同一性を有することができる)。ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、A型インフルエンザHA1のN末端ステムセグメントに基づく。ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、及びH17からなる群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素に基づく。ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、配列番号34〜49から選択される。ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、各々1つのアミノ酸がそのC末端から欠失している、配列番号34〜49から選択される。ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、各々2つのアミノ酸がそのC末端から欠失している、配列番号34〜49から選択される。ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、各々3つのアミノ酸がそのC末端から欠失している、配列番号34〜49から選択される。ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、各々4つのアミノ酸がそのC末端から欠失している、配列番号34〜49から選択される。ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、各々5つのアミノ酸がそのC末端から欠失している、配列番号34〜49から選択される。ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、配列番号177〜224から選択される。ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、アンアーバー/6/60、A/プエルトリコ/8/34、もしくはA/パース/16/2009インフルエンザウイルスのHA-1のN末端ステムセグメントであるか又はこれらに基づく。
【0246】
HA1のC末端ステムセグメントは、当業者に公知であるか又は後に発見される任意のHA1のC末端ステムセグメントに基づくことができる(すなわち、上記のように、配列同一性を有することができる)。ある実施態様において、HA1のC末端ステムセグメントは、A型インフルエンザHA1のC末端ステムセグメントに基づく。ある実施態様において、HA1のC末端ステムセグメントは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、及びH17からなる群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素に基づく。ある実施態様において、HA1のC末端ステムセグメントは、配列番号50〜65から選択される。ある実施態様において、HA1のC末端ステムセグメントは、各々1つのアミノ酸がそのN末端から欠失している、配列番号50〜65から選択される。ある実施態様において、HA1のC末端ステムセグメントは、各々2つのアミノ酸がそのN末端から欠失している、配列番号50〜65から選択される。ある実施態様において、HA1のC末端ステムセグメントは、各々3つのアミノ酸がそのN末端から欠失している、配列番号50〜65から選択される。ある実施態様において、HA1のC末端ステムセグメントは、各々4つのアミノ酸がそのN末端から欠失している、配列番号50〜65から選択される。ある実施態様において、HA1のC末端ステムセグメントは、各々5つのアミノ酸がそのN末端から欠失している、配列番号50〜65から選択される。ある実施態様において、HA1のC末端ステムセグメントは、配列番号226〜273から選択される。ある実施態様において、HA1のC末端ステムセグメントは、アンアーバー/6/60、A/プエルトリコ/8/34、又はA/パース/16/2009インフルエンザウイルスのHA-1のN末端ステムセグメントであるか又はこれらに基づく。
【0247】
HA2ステムドメインは、当業者に公知であるか又は後に発見される任意のHA2ステムドメインに基づくことができる(すなわち、上記のように、配列同一性を有することができる)。ある実施態様において、HA2ステムドメインは、A型インフルエンザHA2ステムドメインに基づく。ある実施態様において、HA2ステムドメインは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、及びH17からなる群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素に基づく。ある実施態様において、HA2ステムドメインは、A/アンアーバー/6/60様、A/プエルトリコ/8/1934様、A/パース/16/2009様、A/カリフォルニア/07/2009様、A/ブリスベン/59/07様、A/ニューカレドニア/20/1999様、又はA/ビクトリア/361/201様インフルエンザウイルスのHA2ステムドメインであるか又はこれらに基づく。ある実施態様において、HA2ステムドメインは、後に発見されるHA2ステムドメインであるか又はこれに基づく。
【0248】
ある実施態様において、HA2ステムドメインは、HA1サブユニットのステムドメインと同じインフルエンザウイルス株又は亜型由来のものである。
【0249】
シグナルペプチドを含む実施態様において、シグナルペプチドは、当業者に公知の任意のインフルエンザウイルスシグナルペプチドに基づくことができる。ある実施態様において、シグナルペプチドは、A型インフルエンザシグナルペプチドに基づく。ある実施態様において、シグナルペプチドは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、及びH16からなる群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素に基づく。ある実施態様において、シグナルペプチドは、当業者に有用であると考えられる任意のシグナルペプチドであることができる。ある実施態様において、シグナルペプチドは、配列番号18〜33から選択される。
【0250】
内腔ドメインを含む実施態様において、内腔ドメインは当業者に公知の任意のインフルエンザ内腔ドメインに基づくことができる。ある実施態様において、内腔ドメインは、A型インフルエンザ内腔ドメインに基づく。ある実施態様において、HA2内腔ドメインは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、及びH17からなる群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素に基づく。ある実施態様において、内腔ドメインは、当業者に有用であると考えられる任意の内腔ドメインであることができる。ある実施態様において、内腔ドメインは、配列番号98〜113から選択される。ある実施態様において、内腔ドメインは、HA1サブユニットのステムドメインと同じインフルエンザウイルス株又は亜型由来のものである。
【0251】
ある実施態様において、細胞質ドメイン、膜貫通ドメイン、及び内腔ドメインは、HA2サブユニットのステムドメインと同じインフルエンザウイルス株又は亜型由来のものである。他の実施態様において、細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインは、HA2サブユニットのステムドメインと同じインフルエンザウイルス株又は亜型由来のものである。ある実施態様において、細胞質ドメイン及び内腔ドメインは、HA2サブユニットのステムドメインと同じインフルエンザウイルス株又は亜型由来のものである。
【0252】
膜貫通ドメインを含む実施態様において、膜貫通ドメインは当業者に公知の任意のインフルエンザ膜貫通ドメインに基づくことができる。ある実施態様において、膜貫通ドメインは、A型インフルエンザ膜貫通ドメインに基づく。ある実施態様において、HA2膜貫通ドメインは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、及びH17からなる群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素に基づく。ある実施態様において、膜貫通ドメインは、当業者に有用であると考えられる任意の膜貫通ドメインであることができる。ある実施態様において、膜貫通ドメインは、配列番号114〜129から選択される。ある実施態様において、膜貫通ドメインは、HA2サブユニットのステムドメインと同じインフルエンザウイルス株又は亜型由来のものである。
【0253】
細胞質ドメインを含む実施態様において、細胞質ドメインは当業者に公知の任意のインフルエンザ細胞質ドメインに基づくことができる。ある実施態様において、細胞質ドメインは、A型インフルエンザ細胞質ドメインに基づく。ある実施態様において、HA2細胞質ドメインは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、及びH17からなる群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素に基づく。ある実施態様において、細胞質ドメインは、当業者に有用であると考えられる任意の細胞質ドメインであることができる。ある実施態様において、細胞質ドメインは、配列番号130〜145から選択される。ある実施態様において、細胞質ドメインは、HA2サブユニットのステムドメインと同じインフルエンザウイルス株又は亜型由来のものである。
【0254】
ある実施態様において、血球凝集素ステムドメイン中のグリコシル化部位の1つ又は複数を、これらの部位でのグリコシル化がポリペプチドのプロセシング及び成熟の間に生じないように(例えば、アミノ酸の付加、欠失、又は置換によって)修飾する。当業者は、インフルエンザHAが、通常、1以上のグリコシル化部位(例えば、Asn-Xaa-Ser/Thr/Cys、ここで、Xaaは任意のアミノ酸であり、又はある実施態様において、XaaはPro以外の任意のアミノ酸である)を含むことを認識しているであろう。ある実施態様において、グリコシル化部位中の1以上のアミノ酸残基を、グリコシル化部位を分断するアミノ酸残基と保存的に置換する。ある実施態様において、グリコシル化配列中の1以上のアミノ酸残基を、グリコシル化部位を分断する任意のアミノ酸残基と置換する。ある実施態様において、グリコシル化部位中の1以上のアスパラギン残基をアラニンと置換する。特定の実施態様において、H3血球凝集素の位置38のアスパラギンをアラニンに変化させる。ある実施態様において、血球凝集素ステムドメインは、下記の第5.4.1節で論じられているような1以上の修飾されたグリコシル化部位を含む。
【0255】
下の表1は、A型インフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのシグナルペプチド、HA1のN末端ステムセグメント、HA1のC末端ステムセグメント、及びHA2ドメインを特定している。これらのシグナルペプチド、ステムセグメント、及びドメインは、本明細書に記載のポリペプチド及び方法において有用である。
表1.例示的なA型インフルエンザ血球凝集素配列
【表1】
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【0256】
下の表1Aは、本明細書に記載のポリペプチド及び方法のための有用なHA1のN末端ステムセグメント及びHA1のC末端ステムセグメントを特定している。
表1A.例示的なA型インフルエンザ血球凝集素配列
【表2】
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【0257】
下の表2は、HA2ポリペプチドの推定上のステムドメイン、内腔ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞質ドメインを特定している。
表2.例示的なA型インフルエンザ血球凝集素配列
【表3】
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【0258】
ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、インフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの三次構造又は四次構造中に1以上の免疫原性エピトープを含む。
【0259】
ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、アミノ酸配列
【化4】
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を含み、ここで、
A17は、Y又はHであり;
A18は、H、L、又はQであり;
(Xaa)nは、18〜20アミノ酸残基の配列を表し;かつ
A38は、H、S、Q、T、又はNである。
【0260】
ある実施態様において、HA1のC末端ステムセグメントは、アミノ酸配列
【化5】
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を含み、ここで、
A291は、T、S、N、D、P、又はKであり;かつ
A292は、L、M、K、又はRである。
【0261】
ある実施態様において、HA2ドメインは、アミノ酸配列
【化6】
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を含み、ここで、
A18は、V又はIであり;
A19は、D、N、又はAであり;
A20は、Gであり、かつ
A21は、Wである。
【0262】
ある実施態様において、HA2ドメインは、アミノ酸配列
【化7】
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を含み、ここで、
A38は、K、Q、R、L、又はYであり;
A39は、任意のアミノ酸残基であり;
A40は、任意のアミノ酸残基であり;
A41は、Tであり;
A42は、Qであり;
A43は、任意のアミノ酸残基であり;
A44は、Aであり;
A45は、Iであり;
A46は、Dであり;
A47は、任意のアミノ酸残基であり;
A48は、I、V、又はMであり;
A49は、T、Q、又はNであり;
A50は、任意のアミノ酸残基であり;
A51は、Kであり;
A52は、V又はLであり;
A53は、Nであり;
A54は、任意のアミノ酸残基であり;
A55は、V、I、又はLであり;かつ
A56は、V又はIである。
【0263】
ある実施態様において、インフルエンザステムドメインポリペプチドは、配列番号146〜149から選択される2つのアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、インフルエンザステムドメインポリペプチドは、配列番号146〜149から選択される3つのアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、インフルエンザステムドメインポリペプチドは、配列番号146〜149から選択される4つのアミノ酸配列を含む。
【0264】
ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、B型インフルエンザ血球凝集素に基づく。ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、下の表3に示す配列番号154〜157から選択される。
【0265】
ある実施態様において、HA1のC末端ステムセグメントは、B型インフルエンザ血球凝集素に基づく。ある実施態様において、HA1のC末端ステムセグメントは、下の表3に示す配列番号158〜159及び553〜554から選択される。
【0266】
ある実施態様において、HA2ステムドメインは、B型インフルエンザ血球凝集素に基づく。B型インフルエンザ血球凝集素のN末端ステムセグメントの終点及びC末端ステムセグメントの終点の例示的な残基を図2に示す。ある実施態様において、HA2ステムドメインは、下の表3及び4に示す配列番号160によるものである。
【0267】
特定の実施態様において、B型インフルエンザウイルスHA1のN末端ステムセグメントとB型インフルエンザウイルスHA1のC末端セグメントの境界は、6対のアミノ酸残基:Arg50及びSer277;Ala66及びTrp271;Lys80及びSer277;Cys94及びCys143;Cys178及びCys272、並びにCys54及びCys272に関して定義される。これら6対の残基の位置は図3でも強調されている。残基番号は、タンパク質データバンク受託番号3BT6に記載のB型インフルエンザウイルス由来のB-HAの付番に基づく。タンパク質データバンク受託番号3BT6のB-HAタンパク質のX線結晶構造に対応するアミノ酸配列を代表的なH1及びH3アミノ酸配列と整列させ、それを図2に示す。
【0268】
ある実施態様において、B型インフルエンザウイルスHA1のN末端ステムセグメントは、残基1(PDBファイル3BT6と同様に、B型インフルエンザウイルスHA1サブユニットの付番に基づく)から始まり、Arg50で終わる。ある実施態様において、B型インフルエンザウイルスHA1のN末端ステムセグメントは、残基1から始まり、Ala66で終わる。いくつかの実施態様において、B型インフルエンザウイルスHA1のN末端ステムセグメントは、残基1から始まり、Lys80で終わる。いくつかの実施態様において、B型インフルエンザウイルスN末端ステムセグメントは、残基1から始まり、Arg80で終わる。いくつかの実施態様において、B型インフルエンザウイルスN末端ステムセグメントは、残基1から始まり、Cys54で終わる。いくつかの実施態様において、B型インフルエンザウイルスN末端ステムセグメントは、残基1から始まり、Cys94で終わる。いくつかの実施態様において、B型インフルエンザウイルスN末端ステムセグメントは、残基1から始まり、Cys178で終わる。
【0269】
いくつかの実施態様において、B型インフルエンザウイルスHA1のN末端ステムセグメントは、表3に示すような、配列番号154〜157及び550〜552のいずれか1つによるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施態様において、B型インフルエンザウイルスHA1のN末端ステムセグメントは、配列番号154〜157又は550〜552のいずれか1つのアミノ酸配列のいずれか1つと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0270】
いくつかの実施態様において、B型インフルエンザウイルスHA1のN末端ステムセグメントは、B型インフルエンザウイルスHA1の残基1〜50に対応するアミノ酸配列配列番号154と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0271】
いくつかの実施態様において、B型インフルエンザウイルスHA1のN末端ステムセグメントは、B型インフルエンザウイルスHA1の残基1〜66に対応するアミノ酸配列配列番号155と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0272】
いくつかの実施態様において、B型インフルエンザウイルスHA1のN末端ステムセグメントは、B型インフルエンザウイルスHA1の残基1〜80に対応するアミノ酸配列配列番号156と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0273】
いくつかの実施態様において、B型インフルエンザウイルスHA1のN末端ステムセグメントは、位置80のリジンがアルギニンに置き換えられているB型インフルエンザウイルスHA1の残基1〜80に対応するアミノ酸配列配列番号157と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0274】
いくつかの実施態様において、B型インフルエンザウイルスHA1のN末端ステムセグメントは、B型インフルエンザウイルスHA1の残基1〜94に対応するアミノ酸配列配列番号550と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0275】
いくつかの実施態様において、B型インフルエンザウイルスHA1のN末端ステムセグメントは、B型インフルエンザウイルスHA1の残基1〜178に対応するアミノ酸配列配列番号551と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0276】
いくつかの実施態様において、B型インフルエンザウイルスHA1のN末端ステムセグメントは、B型インフルエンザウイルスHA1の残基1〜54に対応するアミノ酸配列配列番号552と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0277】
いくつかの実施態様において、B型インフルエンザウイルスHA1のC末端ステムセグメントは、Ser277、Trp271、Cys143、Cys272、又は他のB型インフルエンザウイルスHA亜型の対応する残基から始まるアミノ酸配列を有する。
【0278】
いくつかの実施態様において、B型インフルエンザウイルスHA1のC末端ステムセグメントは、表3に示すような、配列番号158〜159又は553〜554のいずれか1つによるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施態様において、B型インフルエンザウイルスHA1のC末端ステムセグメントは、B型インフルエンザウイルスHA1の残基277〜344に対応する配列番号158と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施態様において、B型インフルエンザウイルスHA1のC末端ステムセグメントは、B型インフルエンザウイルスHA1の残基271〜344に対応する配列番号159と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施態様において、B型インフルエンザウイルスHA1のC末端ステムセグメントは、B型インフルエンザウイルスHA1の残基137〜344に対応する配列番号553と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施態様において、B型インフルエンザウイルスHA1のC末端ステムセグメントは、B型インフルエンザウイルスHA1の残基272〜344に対応する配列番号554と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0279】
いくつかの実施態様において、B型インフルエンザウイルスHA1のC末端ステムセグメントは、残基276、残基275、残基274、残基273、又は残基272から始まる。他の実施態様において、B型インフルエンザウイルスHA1のC末端ステムセグメントは、残基278、残基279、残基280、残基281、又は残基282から始まる。
【0280】
ある実施態様において、B型インフルエンザウイルスHA2ドメインは、B型インフルエンザウイルスHA1のN末端セグメント、B型インフルエンザウイルスHA1のC末端セグメント、又は両方を通して、B型インフルエンザウイルスHA1ドメインと三次結合又は四次結合している。
【0281】
いくつかの実施態様において、B型インフルエンザウイルスHA1のC末端セグメントとB型インフルエンザウイルスHA2サブユニットは、共有結合している。例えば、そのC末端で(例えば、第2の配列の末端残基で)、B型インフルエンザウイルスHA1のC末端セグメントは、そのような実施態様のB型インフルエンザウイルスHA2ドメインに共有結合している。いくつかの実施態様において、B型インフルエンザウイルスHA1のC末端セグメントとB型インフルエンザウイルスHA2ドメインは、連続ポリペプチド鎖を形成する。
【0282】
いくつかの実施態様において、B型インフルエンザウイルスHA2ドメインは、表3又は4に示すような、配列番号160又は161のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施態様において、HA2ドメインのアミノ酸配列は、配列番号160〜161のいずれか1つと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%同一である。
【0283】
ある実施態様において、B型インフルエンザステムドメインポリペプチドは、シグナルペプチドを含む。シグナルペプチドは、本明細書に記載の任意のシグナルペプチドを含む、当業者に好適であると考えられる任意のシグナルペプチドであることができる。ある実施態様において、シグナルペプチドは、配列番号150〜153のいずれかと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%同一である。ある実施態様において、シグナルペプチドは、配列番号150〜153のいずれかによるものである。
【0284】
ある実施態様において、B型インフルエンザステムドメインポリペプチドは、内腔ドメインを含む。内腔ドメインは、本明細書に記載の任意の内腔ドメインを含む、当業者に好適であると考えられる任意の内腔ドメインであることができる。ある実施態様において、内腔は、配列番号162と少なくとも60%又は80%同一である。ある実施態様において、内腔ドメインは、配列番号162によるものである。
【0285】
ある実施態様において、B型インフルエンザステムドメインポリペプチドは、膜貫通ドメインを含む。膜貫通ドメインは、本明細書に記載の任意の膜貫通ドメインを含む、当業者に好適であると考えられる任意の膜貫通ドメインであることができる。ある実施態様において、膜貫通ドメインは、配列番号163と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%同一である。ある実施態様において、膜貫通ドメインは、配列番号163によるものである。
【0286】
ある実施態様において、B型インフルエンザステムドメインポリペプチドは、細胞質ドメインを含む。細胞質ドメインは、本明細書に記載の任意の細胞質ドメインを含む、当業者に好適であると考えられる任意の細胞質ドメインであることができる。ある実施態様において、細胞質ドメインは、配列番号164と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%同一である。ある実施態様において、細胞質ドメインは、配列番号164によるものである。
表3:例示的なB型インフルエンザ血球凝集素配列
【表4】
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【0287】
表4は、B型インフルエンザ由来のHAの推定上のステムドメイン、内腔ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞質ドメインを提供する。
表4:例示的なB型インフルエンザ血球凝集素配列
【表5】
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【0288】
図1及び2に示すように、HA1のN末端ステムセグメントは、A型インフルエンザとB型インフルエンザの間で、さらにA型インフルエンザ亜型にわたって配列同一性を共有する。同様に、HA1のC末端ステムセグメントも、A型インフルエンザとB型インフルエンザの間で、さらにA型インフルエンザ亜型にわたって配列同一性を共有する。さらに、HA2ドメインも、A型インフルエンザとB型インフルエンザの間で、さらにA型インフルエンザ亜型にわたって配列同一性を共有する。
【0289】
いくつかの実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、以下の順序で:HA1のN末端ステムセグメント、リンカー、HA1の中間ステムセグメント、第2のリンカー、HA1のC末端ステムセグメント、及びHA2を含む。いくつかの実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、表5に示すような、配列番号555と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%同一であるアミノ酸配列を有する。配列番号555は、B型インフルエンザウイルスHA1の残基1〜94に対応する。いくつかの実施態様において、HA1のC末端ステムセグメントは、表5に示すような、配列番号557と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%同一であるアミノ酸配列を有する。配列番号557は、B型インフルエンザウイルスHA1の残基272〜344に対応する。いくつかの実施態様において、HA1の中間セグメントは、表5に示すような、配列番号556と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%同一であるアミノ酸配列を有する。配列番号556は、B型インフルエンザウイルスHA1の残基143〜178に対応する。いくつかの実施態様において、HA2ドメインは、本明細書に記載されるような、配列番号160と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施態様において、第1及び第2のリンカーは、本明細書に記載のリンカーを含むが、これに限定されない、当業者に公知の任意のリンカーであることができる。
表5.例示的なB型インフルエンザ血球凝集素配列
【表6】
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【0290】
いくつかの実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、複数のインフルエンザ株又は亜型由来のセグメント及び/又はドメインを含むか又はそれらから本質的になるハイブリッドポリペプチドである。例えば、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、異なるA型インフルエンザウイルスHA亜型由来のHA1のN末端ステムセグメント及びHA1のC末端ステムセグメントを含むことができる。いくつかの実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、A型インフルエンザウイルス由来のものであるが、HA1のC末端ステムセグメントは、B型インフルエンザウイルス由来のものである。同様に、HA2は、A型インフルエンザウイルス由来のものでもあり得るが、HA1のN末端ステムセグメント及び/又はC末端ステムセグメントは、B型インフルエンザウイルス由来のものである。
【0291】
表1〜4に記載の配列エレメント又はその変異体の任意の組合せを用いて、本発明の血球凝集素HAステムドメインポリペプチドを形成させることができることが理解されるであろう。
【0292】
本明細書に提供されるインフルエンザステムドメインポリペプチドにおいて、リンカーは、HA1のN末端ステムセグメントをHA1のC末端ステムセグメントに共有結合で連結させる。ある実施態様において、リンカーは直接結合である。ある実施態様において、リンカーは、インフルエンザステムドメインと異種のインフルエンザウイルス由来の球状ヘッド、又はその断片である。ある実施態様において、リンカーは、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素のHA2サブユニットのステムドメインと異種のインフルエンザウイルス由来の球状ヘッド、又はその断片である。ある実施態様において、リンカーは、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素のHA1及び/又はHA2サブユニットのステムドメインと異種のインフルエンザウイルス由来の球状ヘッド、又はその断片である。ある実施態様において、リンカーは、抗体Fab領域又はその断片である。他の実施態様において、リンカーは、非インフルエンザウイルス糖タンパク質又はその断片である。ある実施態様において、リンカーは、1つのアミノ酸残基、2以下のアミノ酸残基、3以下のアミノ酸残基、4以下のアミノ酸残基、5以下のアミノ酸残基、10以下のアミノ酸残基、15以下のアミノ酸残基、20以下のアミノ酸残基、30以下のアミノ酸残基、40以下のアミノ酸残基、又は50以下のアミノ酸残基を含むペプチドである。ある実施態様において、リンカーペプチドは、50以上のアミノ酸残基を含む。ある実施態様において、リンカーは、球状ヘッドドメインを実質的に欠く。つまり、リンカーは、インフルエンザ球状ヘッドドメインのアミノ酸配列由来の、10、9、8、7、6、5、又は4以下の隣接する連続したアミノ酸残基を含む。ある実施態様において、リンカーは、
【化8】
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以外である。ある実施態様において、リンカーは、
【化9】
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以外である。ある実施態様において、リンカーは、
【化10】
[この文献は図面を表示できません]
以外である。
【0293】
ある実施態様において、リンカーは、一方の末端で、HA1のN末端ステムセグメントのC末端に共有結合で連結されている。リンカーペプチドはまた、もう一方の末端で、HA1のC末端ステムセグメントのN末端に共有結合で連結されている。ある実施態様において、共有結合のうちの1つはアミド結合である。ある実施態様において、両方の共有結合がアミド結合である。
【0294】
リンカーは、当業者によって好適であると考えられる任意のリンカーであることができる。ある実施態様において、リンカーは、HA1のN末端ステムセグメント及びHA1のC末端ステムセグメントに基づいて選択される。これらの実施態様において、リンカーは、両方ともAccelrys製のInsightII及びQuantaなどの分子モデリングプログラムを用いて選択され得る。ある実施態様において、リンカーは、当業者によって認識される血球凝集素ステムドメインの構造と一致する、HA1のN末端ステムセグメント及びHA1のC末端ステムセグメントの構造アラインメントを可能にする構造モチーフである。ある実施態様において、リンカーは、候補リンカーのライブラリーから選択される。ある実施態様において、ライブラリーは、欧州分子生物学研究所(European Molecular Biology Laboratory)(EMBL)又は欧州バイオインフォマティクス研究所(European Bioinformatics Institute)(EBI)のタンパク質データバンク(PDB)又は巨大分子構造データベースなどの公開データベース中の三次元ポリペプチド構造を含む。ある実施態様において、ライブラリーは、両方ともAccelrys製のInsightII及びQuantaなどの市販プログラムに付随する独占所有権のある三次元ポリペプチド構造を含む。さらに、タンパク質構造又は構造エレメントの任意のデータベース又はコレクションを用いて、リンカーを選択することができる。タンパク質構造エレメントの例示的なデータベース又はコレクションとしては、タンパク質の構造分類(Structural Classification of Proteins)(SCOP、Cambridge Universityによって維持され、提供される);タンパク質ファミリーのデータベース(database of protein families)(Pfam、Wellcome Trust Sanger Instituteによって維持され、提供される);汎用タンパク質資源(Universal Protein Resource)(UniProt、UniProt Consortiumによって維持され、提供される);タンパク質ファミリーの総合資源(Integrated resource for protein families)(InterPro;EMBL-EBIによって維持され、提供される);クラス構造トポロジー相同スーパーファミリー(Class Architecture Topology Homologous superfamily)(CATH、University College LondonのInstitute of Structural and Molecular Biologyによって維持され、提供される);及び構造的に類似したタンパク質のファミリー(families of structurally similar proteins)(FSSP、EBIによって維持され、提供される)が挙げられるが、これらに限定されない。限定するものではないが、SCOP、CATH、及びFSSPによって使用されるものを含む、当業者によって好適であると考えられる任意のアルゴリズムを用いて、リンカーを選択することができる。有用な例としては、Pymol(Delano Scientific LLC)、InsightII及びQuanta(両方ともAccelrys製)、MIDAS(University of California, San Francisco)、SwissPDB viewer(Swiss Institute of Bioinformatics)、TOPOFIT(Northeastern University)、CBSU LOOPP(Cornell University)、並びにSuperPose(University of Alberta, Edmonton)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0295】
ある実施態様において、リンカーは直接結合である。ある実施態様において、リンカーは、Gly、Gly-Gly、Gly-Gly-Gly、Gly-Gly-Gly-Gly、及びGly-Gly-Gly-Gly-Glyからなる群から選択される。ある実施態様において、リンカーは、Gly-Pro及びPro-Glyからなる群から選択される。ある実施態様において、リンカーは、例えば、配列
【化11】
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を有する281ターンループである。
【0296】
ある実施態様において、リンカーは、グリコシル化配列を含む。ある実施態様において、リンカーは、Asn-Xaa-Ser/Thr/Cysによるアミノ酸配列を含み、ここで、Xaaは任意のアミノ酸であり、又はある実施態様において、Xaaはプロリン以外の任意のアミノ酸であり、Ser/Thr/Cysはセリン、トレオニン、又はシステインである。ある実施態様において、リンカーは、アミノ酸配列Asn-Ala-Serを含む。ある実施態様において、リンカーは、グリコシル化配列である。ある実施態様において、リンカーは、Asn-Xaa-Ser/Thr/Cysによるアミノ酸配列であり、ここで、Xaaは任意のアミノ酸であり、又はある実施態様において、Xaaはプロリン以外の任意のアミノ酸であり、Ser/Thr/Cysはセリン、トレオニン、又はシステインである。ある実施態様において、リンカーは、アミノ酸配列Asn-Ala-Serである。
【0297】
ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、天然のインフルエンザ血球凝集素のステムドメインの三次元構造と類似している三次元構造を形成することができる。構造類似性は、当業者によって好適であると考えられる任意の技術に基づいて評価することができる。例えば、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドと、天然のインフルエンザ血球凝集素を認識する中和抗体又は抗血清との、例えば、非変性条件下での反応は、構造類似性を示すことができる。有用な中和抗体又は抗血清は、例えば、Suiらの文献(2009, Nat. Struct. Mol. Biol. 16(3):265-273)、Ekiertらの文献(2009年2月26日、Science[DOI: 10.1126/science. 1171491])、及びKashyapらの文献(2008, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105(16):5986-5991)に記載されており、その内容は、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれる。ある実施態様において、抗体又は抗血清は、血球凝集素の三次構造又は四次構造によって形成される非隣接(すなわち、一次配列で隣接していない)エピトープと反応する抗体又は抗血清である。
【0298】
ある実施態様において、構造類似性は、分光技術、例えば、円二色性、ラマン分光法、NMR、3D NMR、及びX線結晶学によって評価することができる。X線結晶学で決定された公知のインフルエンザ血球凝集素構造は、限定されないが、1HGJ(HA H3N2株)及び1RUZ(HA H1N1株)を含む、タンパク質データバンクファイルの構造座標に記載されている。
【0299】
ある実施態様において、構造類似性は、2つの構造の対応する重畳部分間のRMS偏差によって評価される。意味のある重畳を生じさせるために、ある実施態様において、少なくとも20個の対応する原子、25個の対応する原子、30個の対応する原子、40個の対応する原子、50個の対応する原子、60個の対応する原子、70個の対応する原子、80個の対応する原子、90個の対応する原子、100個の対応する原子、120個の対応する原子、150個の対応する原子、200個の対応する原子、又は250個の対応する原子の座標を用いて、RMS偏差を計算する。
【0300】
ある実施態様において、アミノ酸骨格中の全ての対応する原子の座標を用いて、RMS偏差を計算する。ある実施態様において、アミノ酸骨格中の全ての対応するアルファ炭素原子の座標を用いて、RMS偏差を計算する。ある実施態様において、側鎖を含む全ての対応する同一残基の座標を用いて、RMS偏差を計算する。
【0301】
ある実施態様において、HA1のN末端セグメント中の対応する原子の全て又は一部の座標を用いて、RMS偏差を計算する。ある実施態様において、HA1のC末端セグメント中の対応する原子の全て又は一部の座標を用いて、RMS偏差を計算する。ある実施態様において、HA1のN末端セグメントとC末端セグメントの両方における対応する原子の全て又は一部の座標を用いて、RMS偏差を計算する。ある実施態様において、HA2ドメイン中の対応する原子の全て又は一部の座標を用いて、RMS偏差を計算する。
【0302】
ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドと公知のA型インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメイン(例えば、1HGJ又は1RUZ由来)の対応する部分の構造間のRMS偏差は、5Å以下、4Å以下、3Å以下、2.5Å以下、2Å以下、1.5Å以下、1Å以下、0.75Å以下、0.5Å以下、0.3Å以下、0.2Å以下、又は0.1Å以下である。市販又はオープンソースのソフトウェアを用いて、構造的重畳及び/又はRMS偏差の計算を実施してもよい。有用な例としては、Pymol(Delano Scientific LLC)、InsightII及びQuanta(両方ともAccelrys製)、MIDAS(University of California, San Francisco)、SwissPDB viewer(Swiss Institute of Bioinformatics)、TOPOFIT(Northeastern University)、CBSU LOOPP(Cornell University)、及びSuperPose(University of Alberta, Edmonton)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0303】
ある実施態様において、本明細書に提供される任意のインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、当業者に好適であると考えられる1以上のポリペプチドドメインをさらに含むことができる。有用なポリペプチドドメインとしては、ポリペプチドの部分の精製、フォールディング、及び切断を容易にするドメインが挙げられる。例えば、Hisタグ
【化12】
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FLAGエピトープ、又は他の精製タグは、本明細書に提供されるポリペプチドの精製を容易にすることができる。いくつかの実施態様において、Hisタグは、配列(His)nを有し、ここで、nは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又はそれより大きい。バクテリオファージT4フィブリチン由来のフォルドンドメイン、又は三量体化ドメインは、本明細書に提供されるポリペプチドの三量体化を容易にすることができる。いくつかの実施態様において、三量体化ドメインは、三量体又は四量体コイルドコイルの形成を可能にする野生型GCN4pII三量体化ヘプタッド反復又は修飾されたGCN4pII三量体化ヘプタッド反復を含む。例えば、Weldonらの文献(2010, PLoSONE 5(9): e12466)を参照されたい。フォルドンドメインは、当業者に公知の任意のフォルドン配列を有することができる(例えば、Papanikolopoulouらの文献(2004, J. Biol. Chem. 279(10):8991-8998)を参照されたく、その内容は引用によりその全体が本明細書中に組み込まれる)。例としては、
【化13】
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が挙げられる。フォルドンドメインは、本明細書に提供される可溶性ポリペプチドの三量体化を容易にするのに有用であることができる。切断部位を用いて、ポリペプチドの一部の切断、例えば、精製タグもしくはフォルドンドメイン又は両方の切断を容易にすることができる。有用な切断部位としては、トロンビン切断部位、例えば、配列
【化14】
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を有するものが挙げられる。ある実施態様において、切断部位は、タバコエッチ病ウイルス(TEV)プロテアーゼによって認識される切断部位(例えば、アミノ酸配列Glu-Asn-Leu-Tyr-Phe-Gln-(Gly/Ser))である。
【0304】
ある実施態様において、提供されるのは、エラスターゼ切断部位を含むインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。当業者は、血球凝集素配列中のHA1-HA2切断部位のアルギニン又はリジンの代わりにバリンを使用することによって、HA1とHA2の連結部のトリプシン切断部位をエラスターゼ切断部位に突然変異させることができることを認識しているであろう(例えば、Stechらの文献(2005, Nature Med. 11(6):683-689)を参照されたい)。したがって、本明細書に提供されるのは、C末端ステムセグメントのC末端(すなわち、HA1ドメインのC末端)にバリン置換を有するインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。特定の実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号50〜65又は158〜159のいずれかを含むインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドであり、ここで、配列番号50〜65又は158〜159のC末端アミノ酸残基、例えば、アルギニン又はリジンは、バリン残基と置換されている。
【0305】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1とHA2の接合部でのプロテアーゼ切断に対して抵抗性があると予測されるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。当業者は、HA1とHA2にまたがるArg-Gly配列がトリプシンの認識部位であり、かつ通常、血球凝集素活性化のために切断されることを認識すべきである。本明細書に記載のステムドメインポリペプチドは活性化される必要がないので、本明細書に提供されるのは、プロテアーゼ切断に対して抵抗性があると予測されるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1とHA2にまたがるプロテアーゼ部位をプロテアーゼ切断に対して抵抗性がある配列に突然変異させている、本明細書に記載の任意のインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、提供されるのは、HA1のC末端ステムセグメントのC末端残基がLys又はArg以外の任意の残基である、本明細書に記載の任意のインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、提供されるのは、HA2ドメインのN末端残基がプロリンである、本明細書に記載の任意のインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、提供されるのは、HA1のC末端ステムセグメントのC末端残基がAlaであり、HA2ドメインのN末端残基もAlaである、本明細書に記載の任意のインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。
【0306】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端ステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA2ステムドメインと結合関係にあるHA1のC末端ステムセグメントに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端ステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端ステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、シグナルペプチドがHA1のN末端ステムセグメントに共有結合し、リンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端ステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。
【0307】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端ステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA2ステムドメインと結合関係にあるHA1のC末端ステムセグメントに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端ステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端ステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、シグナルペプチドがHA1のN末端ステムセグメントに共有結合し、リンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端ステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。
【0308】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端ステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA2ステムドメインと結合関係にあるHA1のC末端ステムセグメントに共有結合し、それがプロテアーゼ切断部位、三量体化ドメイン、及び精製タグに順に共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端ステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端ステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それが切断部位、三量体化ドメイン、及び精製タグに順に共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、シグナルペプチドがHA1のN末端ステムセグメントに共有結合し、リンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端ステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それがプロテアーゼ切断部位、三量体化ドメイン、及び精製タグに順に共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、プロテアーゼ切断部位は、トロンビン切断部位である。ある実施態様において、切断部位は、アミノ酸配列
【化15】
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を有する。ある実施態様において、切断部位は、タバコエッチ病ウイルス(TEV)プロテアーゼによって認識される切断部位(例えば、アミノ酸配列Glu-Asn-Leu-Tyr-Phe-Gln-(Gly/Ser))である。ある実施態様において、三量体化ドメインは、フォルドンドメインである。いくつかの実施態様において、三量体化ドメインは、三量体又は四量体コイルドコイルの形成を可能にする野生型GCN4pII三量体化ヘプタッド反復又は修飾されたGCN4pII三量体化ヘプタッド反復を含む。例えば、Weldonらの文献(2010, PLoSONE 5(9): e12466)を参照されたい。いくつかの実施態様において、精製タグは、配列(His)nを有するHisタグであり、ここで、nは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又はそれより大きい。
【0309】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端ステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA2ステムドメインと結合関係にあるHA1のC末端ステムセグメントに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それが切断部位、三量体化ドメイン、及び精製タグに順に共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端ステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端ステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それが切断部位、三量体化ドメイン、及び精製タグに順に共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、シグナルペプチドがHA1のN末端ステムセグメントに共有結合し、リンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端ステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それが切断部位、三量体化ドメイン、及び精製タグに順に共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、プロテアーゼ切断部位は、トロンビン切断部位である。ある実施態様において、切断部位は、アミノ酸配列
【化16】
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を有する。ある実施態様において、切断部位は、タバコエッチ病ウイルス(TEV)プロテアーゼによって認識される切断部位(例えば、アミノ酸配列Glu-Asn-Leu-Tyr-Phe-Gln-(Gly/Ser))である。ある実施態様において、三量体化ドメインは、フォルドンドメインである。いくつかの実施態様において、三量体化ドメインは、三量体又は四量体コイルドコイルの形成を可能にする野生型GCN4pII三量体化ヘプタッド反復又は修飾されたGCN4pII三量体化ヘプタッド反復を含む。例えば、Weldonらの文献(2010, PLoSONE 5(9): e12466)を参照されたい。いくつかの実施態様において、精製タグは、配列(His)nを有するHisタグであり、ここで、nは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又はそれより大きい。
【0310】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端ステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA2ステムドメインと結合関係にあるHA1のC末端ステムセグメントに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それがさらにHA2膜貫通ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端ステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端ステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それがさらにHA2膜貫通ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、シグナルペプチドがHA1のN末端ステムセグメントに共有結合し、リンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端ステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それがさらにHA2膜貫通ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。
【0311】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端ステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA2ステムドメインと結合関係にあるHA1のC末端ステムセグメントに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それがさらにHA2膜貫通ドメインに共有結合し、それがさらにHA2細胞質ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端ステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端ステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それがさらにHA2膜貫通ドメインに共有結合し、それがさらにHA2細胞質ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、シグナルペプチドがHA1のN末端ステムセグメントに共有結合し、リンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端ステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それがさらにHA2膜貫通ドメインに共有結合し、それがさらにHA2細胞質ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。
【0312】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、以下のもの:
(配列番号34)-LL-(配列番号50)-(配列番号66)、
(配列番号35)-LL-(配列番号51)-(配列番号67)、
(配列番号36)-LL-(配列番号52)-(配列番号68)、
(配列番号37)-LL-(配列番号53)-(配列番号69)、
(配列番号38)-LL-(配列番号54)-(配列番号70)、
(配列番号39)-LL-(配列番号55)-(配列番号71)、
(配列番号40)-LL-(配列番号56)-(配列番号72)、
(配列番号41)-LL-(配列番号57)-(配列番号73)、
(配列番号42)-LL-(配列番号58)-(配列番号74)、
(配列番号43)-LL-(配列番号59)-(配列番号75)、
(配列番号44)-LL-(配列番号60)-(配列番号76)、
(配列番号45)-LL-(配列番号61)-(配列番号77)、
(配列番号46)-LL-(配列番号62)-(配列番号78)、
(配列番号47)-LL-(配列番号63)-(配列番号79)、
(配列番号48)-LL-(配列番号64)-(配列番号80)、及び
(配列番号49)-LL-(配列番号65)-(配列番号81)
からなる群から選択される配列を有するインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、上の各配列は、本明細書に記載の隣接配列に連結されており、かつここで、LLは本明細書に記載のリンカーである。特に、HA1のC末端セグメントは、HA2ドメインに共有結合又は非共有結合で連結されることができる。ある実施態様において、LLは、直接結合、Gly、Gly-Gly、Gly-Gly-Gly、Gly-Gly-Gly-Gly、(Gly)n(ここで、nは、ペプチドリンカーに柔軟性がある限り、任意の数のグリシン残基を示し;ある実施態様において、nは、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つのグリシン残基である)、Gly-Pro、
【化17】
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からなる群から選択される。
【0313】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、以下のもの:
(配列番号34)-LL-(配列番号50)-(配列番号82)、
(配列番号35)-LL-(配列番号51)-(配列番号83)、
(配列番号36)-LL-(配列番号52)-(配列番号84)、
(配列番号37)-LL-(配列番号53)-(配列番号85)、
(配列番号38)-LL-(配列番号54)-(配列番号86)、
(配列番号39)-LL-(配列番号55)-(配列番号87)、
(配列番号40)-LL-(配列番号56)-(配列番号88)、
(配列番号41)-LL-(配列番号57)-(配列番号89)、
(配列番号42)-LL-(配列番号58)-(配列番号90)、
(配列番号43)-LL-(配列番号59)-(配列番号91)、
(配列番号44)-LL-(配列番号60)-(配列番号92)、
(配列番号45)-LL-(配列番号61)-(配列番号93)、
(配列番号46)-LL-(配列番号62)-(配列番号94)、
(配列番号47)-LL-(配列番号63)-(配列番号95)、
(配列番号48)-LL-(配列番号64)-(配列番号96)、及び
(配列番号49)-LL-(配列番号65)-(配列番号97)
からなる群から選択される配列を有するインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、上の各配列は、本明細書に記載の隣接配列に連結されており、かつここで、LLは本明細書に記載のリンカーである。特に、HA1のC末端セグメントは、HA2ドメインに共有結合又は非共有結合で連結されることができる。ある実施態様において、LLは、直接結合、
【化18】
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からなる群から選択される。
【0314】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、以下のもの:
(配列番号34)-LL-(配列番号50)-(配列番号82)-(配列番号98)、
(配列番号35)-LL-(配列番号51)-(配列番号83)-(配列番号99)、
(配列番号36)-LL-(配列番号52)-(配列番号84)-(配列番号100)、
(配列番号37)-LL-(配列番号53)-(配列番号85)-(配列番号101)、
(配列番号38)-LL-(配列番号54)-(配列番号86)-(配列番号102)、
(配列番号39)-LL-(配列番号55)-(配列番号87)-(配列番号103)、
(配列番号40)-LL-(配列番号56)-(配列番号88)-(配列番号104)、
(配列番号41)-LL-(配列番号57)-(配列番号89)-(配列番号105)、
(配列番号42)-LL-(配列番号58)-(配列番号90)-(配列番号106)、
(配列番号43)-LL-(配列番号59)-(配列番号91)-(配列番号107)、
(配列番号44)-LL-(配列番号60)-(配列番号92)-(配列番号108)、
(配列番号45)-LL-(配列番号61)-(配列番号93)-(配列番号109)、
(配列番号46)-LL-(配列番号62)-(配列番号94)-(配列番号110)、
(配列番号47)-LL-(配列番号63)-(配列番号95)-(配列番号111)、
(配列番号48)-LL-(配列番号64)-(配列番号96)-(配列番号112)、及び
(配列番号49)-LL-(配列番号65)-(配列番号97)-(配列番号113)
からなる群から選択される配列を有するインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、上の各配列は、本明細書に記載の隣接配列に連結されており、かつここで、LLは本明細書に記載のリンカーである。特に、HA1のC末端セグメントは、HA2ドメインに共有結合又は非共有結合で連結されることができる。ある実施態様において、LLは、直接結合、
【化19】
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からなる群から選択される。
【0315】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、以下のもの:
(配列番号34)-LL-(配列番号50)-(配列番号82)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号35)-LL-(配列番号51)-(配列番号83)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号36)-LL-(配列番号52)-(配列番号84)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号37)-LL-(配列番号53)-(配列番号85)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号38)-LL-(配列番号54)-(配列番号86)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号39)-LL-(配列番号55)-(配列番号87)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号40)-LL-(配列番号56)-(配列番号88)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号41)-LL-(配列番号57)-(配列番号89)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号42)-LL-(配列番号58)-(配列番号90)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号43)-LL-(配列番号59)-(配列番号91)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号44)-LL-(配列番号60)-(配列番号92)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号45)-LL-(配列番号61)-(配列番号93)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号46)-LL-(配列番号62)-(配列番号94)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号47)-LL-(配列番号63)-(配列番号95)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号48)-LL-(配列番号64)-(配列番号96)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、及び
(配列番号49)-LL-(配列番号65)-(配列番号97)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)
からなる群から選択される配列を有するインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、上の各配列は、本明細書に記載の隣接配列に連結されており、かつここで、LLは本明細書に記載のリンカーである。特に、HA1のC末端セグメントは、HA2ドメインに共有結合又は非共有結合で連結されることができる。ある実施態様において、LLは、直接結合、
【化20】
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からなる群から選択される。
【0316】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、以下のもの:
(配列番号34)-LL-(配列番号50)-(配列番号82)-(配列番号98)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号35)-LL-(配列番号51)-(配列番号83)-(配列番号99)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号36)-LL-(配列番号52)-(配列番号84)-(配列番号100)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号37)-LL-(配列番号53)-(配列番号85)-(配列番号101)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号38)-LL-(配列番号54)-(配列番号86)-(配列番号102)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号39)-LL-(配列番号55)-(配列番号87)-(配列番号103)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号40)-LL-(配列番号56)-(配列番号88)-(配列番号104)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号41)-LL-(配列番号57)-(配列番号89)-(配列番号105)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号42)-LL-(配列番号58)-(配列番号90)-(配列番号106)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号43)-LL-(配列番号59)-(配列番号91)-(配列番号107)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号44)-LL-(配列番号60)-(配列番号92)-(配列番号108)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号45)-LL-(配列番号61)-(配列番号93)-(配列番号109)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号46)-LL-(配列番号62)-(配列番号94)-(配列番号110)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号47)-LL-(配列番号63)-(配列番号95)-(配列番号111)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号48)-LL-(配列番号64)-(配列番号96)-(配列番号112)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、及び
(配列番号49)-LL-(配列番号65)-(配列番号97)-(配列番号113)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)
からなる群から選択される配列を有するインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、上の各配列は、本明細書に記載の隣接配列に連結されており、かつここで、LLは本明細書に記載のリンカーである。特に、HA1のC末端セグメントは、HA2ドメインに共有結合又は非共有結合で連結されることができる。ある実施態様において、LLは、直接結合、
【化21】
[この文献は図面を表示できません]
からなる群から選択される。
【0317】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、以下のもの:
(配列番号177)-LL-(配列番号226)-(配列番号66)、
(配列番号178)-LL-(配列番号227)-(配列番号66)、
(配列番号179)-LL-(配列番号228)-(配列番号66)、
(配列番号180)-LL-(配列番号229)-(配列番号67)、
(配列番号181)-LL-(配列番号230)-(配列番号67)、
(配列番号182)-LL-(配列番号231)-(配列番号67)、
(配列番号183)-LL-(配列番号232)-(配列番号68)、
(配列番号184)-LL-(配列番号233)-(配列番号68)、
(配列番号185)-LL-(配列番号234)-(配列番号68)、
(配列番号186)-LL-(配列番号235)-(配列番号69)、
(配列番号187)-LL-(配列番号236)-(配列番号69)、
(配列番号188)-LL-(配列番号237)-(配列番号69)、
(配列番号189)-LL-(配列番号238)-(配列番号70)、
(配列番号190)-LL-(配列番号239)-(配列番号70)、
(配列番号191)-LL-(配列番号240)-(配列番号70)、
(配列番号192)-LL-(配列番号241)-(配列番号71)、
(配列番号193)-LL-(配列番号242)-(配列番号71)、
(配列番号194)-LL-(配列番号243)-(配列番号71)、
(配列番号195)-LL-(配列番号244)-(配列番号72)、
(配列番号196)-LL-(配列番号245)-(配列番号72)、
(配列番号197)-LL-(配列番号246)-(配列番号72)、
(配列番号198)-LL-(配列番号247)-(配列番号73)、
(配列番号199)-LL-(配列番号248)-(配列番号73)、
(配列番号200)-LL-(配列番号249)-(配列番号73)、
(配列番号201)-LL-(配列番号250)-(配列番号74)、
(配列番号202)-LL-(配列番号251)-(配列番号74)、
(配列番号203)-LL-(配列番号252)-(配列番号74)、
(配列番号204)-LL-(配列番号253)-(配列番号75)、
(配列番号205)-LL-(配列番号254)-(配列番号75)、
(配列番号206)-LL-(配列番号255)-(配列番号75)、
(配列番号207)-LL-(配列番号256)-(配列番号76)、
(配列番号208)-LL-(配列番号257)-(配列番号76)、
(配列番号209)-LL-(配列番号258)-(配列番号76)、
(配列番号210)-LL-(配列番号259)-(配列番号77)、
(配列番号211)-LL-(配列番号260)-(配列番号77)、
(配列番号212)-LL-(配列番号261)-(配列番号77)、
(配列番号213)-LL-(配列番号262)-(配列番号78)、
(配列番号214)-LL-(配列番号263)-(配列番号78)、
(配列番号215)-LL-(配列番号264)-(配列番号78)、
(配列番号216)-LL-(配列番号265)-(配列番号79)、
(配列番号217)-LL-(配列番号266)-(配列番号79)、
(配列番号218)-LL-(配列番号267)-(配列番号79)、
(配列番号219)-LL-(配列番号268)-(配列番号80)、
(配列番号220)-LL-(配列番号269)-(配列番号80)、
(配列番号221)-LL-(配列番号270)-(配列番号80)、
(配列番号222)-LL-(配列番号271)-(配列番号81)、
(配列番号223)-LL-(配列番号272)-(配列番号81)、
(配列番号224)-LL-(配列番号273)-(配列番号81)、
(配列番号312)-LL-(配列番号313)-(配列番号66)、
(配列番号34)-LL-(配列番号314)-(配列番号66)、
(配列番号315)-LL-(配列番号316)-(配列番号66)、
(配列番号308)-LL-(配列番号52)-(配列番号68)、
(配列番号36)-LL-(配列番号309)-(配列番号68)、及び
(配列番号310)-LL-(配列番号311)-(配列番号68)
からなる群から選択される配列を有するインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、上の各配列は、本明細書に記載の隣接配列に連結されており、かつここで、LLは本明細書に記載のリンカーである。特に、HA1のC末端セグメントは、HA2ドメインに共有結合又は非共有結合で連結されることができる。ある実施態様において、LLは、直接結合、
【化22】
[この文献は図面を表示できません]
からなる群から選択される。
【0318】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、以下のもの:
(配列番号154)-LL-(配列番号158)-(配列番号160)、
(配列番号155)-LL-(配列番号159)-(配列番号160)、
(配列番号156)-LL-(配列番号158)-(配列番号160)、
(配列番号157)-LL-(配列番号158)-(配列番号160)、
(配列番号550)-LL-(配列番号553)-(配列番号160)、
(配列番号551)-LL-(配列番号554)-(配列番号160)、及び
(配列番号552)-LL-(配列番号555)-(配列番号160)
からなる群から選択される配列を有するインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、上の各配列は、本明細書に記載の隣接配列に連結されており、かつここで、LLは本明細書に記載のリンカーである。特に、HA1のC末端セグメントは、HA2ドメインに共有結合又は非共有結合で連結されることができる。ある実施態様において、LLは、直接結合、
【化23】
[この文献は図面を表示できません]
からなる群から選択される。
【0319】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、以下のもの:
(配列番号154)-LL-(配列番号158)-(配列番号161)、
(配列番号155)-LL-(配列番号159)-(配列番号161)、
(配列番号156)-LL-(配列番号158)-(配列番号161)、
(配列番号157)-LL-(配列番号158)-(配列番号161)、
(配列番号550)-LL-(配列番号553)-(配列番号161)、
(配列番号551)-LL-(配列番号554)-(配列番号161)、
(配列番号552)-LL-(配列番号555)-(配列番号161)、及び
(配列番号555)-LL-(配列番号556)-LL-(配列番号557)-(配列番号161)
からなる群から選択される配列を有するインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、上の各配列は、本明細書に記載の隣接配列に連結されており、かつここで、LLは本明細書に記載のリンカーである。特に、HA1のC末端セグメントは、HA2ドメインに共有結合又は非共有結合で連結されることができる。ある実施態様において、LLは、直接結合、
【化24】
[この文献は図面を表示できません]
からなる群から選択される。
【0320】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、以下のもの:
(配列番号154)-LL-(配列番号158)-(配列番号161)-(配列番号162)、
(配列番号155)-LL-(配列番号159)-(配列番号161)-(配列番号162)、
(配列番号156)-LL-(配列番号158)-(配列番号161)-(配列番号162)、
(配列番号157)-LL-(配列番号158)-(配列番号161)-(配列番号162)、
(配列番号550)-LL-(配列番号553)-(配列番号161)-(配列番号162)、
(配列番号551)-LL-(配列番号554)-(配列番号161)-(配列番号162)、
(配列番号552)-LL-(配列番号555)-(配列番号161)-(配列番号162)、及び
(配列番号555)-LL-(配列番号556)-LL-(配列番号557)-(配列番号161)-(配列番号162)
からなる群から選択される配列を有するインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、上の各配列は、本明細書に記載の隣接配列に連結されており、かつここで、LLは本明細書に記載のリンカーである。特に、HA1のC末端セグメントは、HA2ドメインに共有結合又は非共有結合で連結されることができる。ある実施態様において、LLは、直接結合、
【化25】
[この文献は図面を表示できません]
からなる群から選択される。
【0321】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、以下のもの:
(配列番号154)-LL-(配列番号158)-(配列番号161)-(配列番号168)-(配列番号167)-配列番号166)、
(配列番号155)-LL-(配列番号159)-(配列番号161)-(配列番号168)-(配列番号167)-配列番号166)、
(配列番号156)-LL-(配列番号158)-(配列番号161)-(配列番号168)-(配列番号167)-配列番号166)、
(配列番号157)-LL-(配列番号159)-(配列番号161)-(配列番号168)-(配列番号167)-配列番号166)、
(配列番号550)-LL-(配列番号553)- )-(配列番号161)-(配列番号168)-(配列番号167)-配列番号166)、
(配列番号551)-LL-(配列番号554)-(配列番号161)-(配列番号168)-(配列番号167)-配列番号166)、
(配列番号552)-LL-(配列番号555)-(配列番号161)-(配列番号168)-(配列番号167)-配列番号166)、及び
(配列番号555)-LL-(配列番号556)-LL-(配列番号557)-(配列番号161)-(配列番号168)-(配列番号167)-配列番号166)
からなる群から選択される配列を有するインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、上の各配列は、本明細書に記載の隣接配列に連結されており、かつここで、LLは本明細書に記載のリンカーである。特に、HA1のC末端セグメントは、HA2ドメインに共有結合又は非共有結合で連結されることができる。ある実施態様において、LLは、直接結合、
【化26】
[この文献は図面を表示できません]
からなる群から選択される。
【0322】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、以下のもの:
(配列番号154)-LL-(配列番号158)-(配列番号161)-(配列番号162)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号155)-LL-(配列番号159)-(配列番号161)-(配列番号162)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号156)-LL-(配列番号158)-(配列番号161)-(配列番号162)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、及び
(配列番号157)-LL-(配列番号159)-(配列番号161)-(配列番号162)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号550)-LL-(配列番号553)-(配列番号161)-(配列番号162)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号551)-LL-(配列番号554)-(配列番号161)-(配列番号162)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号552)-LL-(配列番号555)-(配列番号161)-(配列番号162)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、及び
(配列番号555)-LL-(配列番号556)-LL-(配列番号557)-(配列番号161)-(配列番号162)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)
からなる群から選択される配列を有するインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、上の各配列は、本明細書に記載の隣接配列に連結されており、かつここで、LLは本明細書に記載のリンカーである。特に、HA1のC末端セグメントは、HA2ドメインに共有結合又は非共有結合で連結されることができる。ある実施態様において、LLは、直接結合、
【化27】
[この文献は図面を表示できません]
からなる群から選択される。
【0323】
ある実施態様において、本明細書に記載のインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、
【化28】
[この文献は図面を表示できません]
のいずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチドを含まない。ある実施態様において、本明細書に記載のインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、
【化29】
[この文献は図面を表示できません]
のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含まない。ある実施態様において、本明細書に記載のインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、
【化30】
[この文献は図面を表示できません]
のいずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチドを含まない。ある実施態様において、本明細書に記載のインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、
【化31】
[この文献は図面を表示できません]
のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含まない。ある実施態様において、本明細書に記載のインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、
【化32】
[この文献は図面を表示できません]
のいずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチドを含まない。ある実施態様において、本明細書に記載のインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、
【化33】
[この文献は図面を表示できません]
のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含まない。
【0324】
ある実施態様において、本明細書に記載のインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、抗体CR6261、CR6325、CR6329、CR6307、CR6323、2A、D7、D8、F10、G17、H40、A66、D80、E88、E90、H98、C179(ハイブリドーマFERM BP-4517により産生される;Takara Bio社(Otsu, Shiga, Japan)により販売されているクローン)、AI3C(FERM BP-4516)、Ekiert DCらの文献(2009)、高度に保存されたインフルエンザウイルスエピトープの抗体認識(Antibody Recognition of a Highly Conserved Influenza Virus Epitope.) Science(2009年2月26日のScience Expressで発表された); Kashyapらの文献(2008)に記載の任意の他の抗体、又は任意の他の同様の抗体によって認識されない。
【0325】
(5.3.1 インフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチド)
ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、インフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。本明細書に提供されるインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドの典型的な一次構造は、以下の順序で:HA1のN末端ステムセグメント、リンカー、HA1のC末端の短いステムセグメント、及びHA2を含む。一次配列は、単一のポリペプチドによって形成されることができるか、又はそれは、複数のポリペプチドによって形成されることができる。通常、単一のポリペプチドは、当業者に好適であると考えられる任意の技術によって発現される。単一のポリペプチドの実施態様において、HA1セグメントとHA2は三次結合している。当業者に公知であるように、単一のHAポリペプチドは、例えば、プロテアーゼによって、適当な発現条件下で切断され、四次結合した2つのポリペプチドを生じさせることができる。切断は、通常、HA1のC末端の短いステムセグメントとHA2の間である。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、複数のポリペプチドである。複数のポリペプチドの実施態様において、HA1セグメントとHA2は四次結合している。
【0326】
ある実施態様において、本明細書に提供されるインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドは単量体である。ある実施態様において、本明細書に提供されるインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドは多量体である。ある実施態様において、本明細書に提供されるインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドは三量体である。当業者は、天然のインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドがインビボで三量体化することができること、及び本明細書に提供される特定のインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドが三量体化することができることを認識しているであろう。下記の特定の実施態様において、本明細書に提供されるインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドは、三量体化を容易にする三量体化ドメインを含む。
【0327】
ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドは、シグナルペプチドを含む。通常、シグナルペプチドは、ポリペプチド発現及び翻訳時又はその後に切断され、成熟したインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドを生じさせる。シグナルペプチドは、インフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドの発現に有利であることができる。ある実施態様において、同じく本明細書に提供されるのは、シグナルペプチドを欠く成熟したインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。
【0328】
インフルエンザ血球凝集素HA2は、通常、ステムドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞質ドメインを含む。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA2ステムドメイン、HA2内腔ドメイン、HA2膜貫通ドメイン、及びHA2細胞質ドメインを含むインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA2ステムドメイン、HA2内腔ドメイン、及びHA2膜貫通ドメインを含むが、典型的な細胞質ドメインの一部又は全てを欠くインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA2ステムドメイン及びHA2内腔ドメインを含むが、HA2膜貫通ドメインとHA2細胞質ドメインの両方を欠くインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA2ステムドメインを含むが、HA2内腔ドメイン、HA2膜貫通ドメイン、及びHA2細胞質ドメインを欠くインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドは、当業者に公知のインフルエンザHA2ステムドメインとの少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%のアミノ酸配列同一性を有するHA2ステムドメインを含む。公知のA型インフルエンザ及びB型インフルエンザ血球凝集素由来の例示的な公知のHA2ステムドメインは、上の表に提供されている。
【0329】
同じく本明細書に提供されるのは、最大100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個のアミノ酸残基がHA2ステムドメインの一方又は両方の末端から欠失している欠失型のHA2ステムドメインを含むインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。さらに本明細書に提供されるのは、最大100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個のアミノ酸残基が他のアミノ酸と保存的に置換されている改変型のHA2ステムドメインを含むインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。さらに提供されるのは、欠失した及び改変されたHA2ステムドメインを含むインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。
【0330】
HA1のN末端ステムセグメントは、本明細書に提供される任意のHA1のN末端ステムであることができる。例示的な公知のHA1のN末端ステムセグメントは、下の表に提供されている。
【0331】
HA1のC末端の短いステムセグメントは、本明細書に提供される定義に基づいて当業者により認識される任意のHA1のC末端の短いステムセグメントであることができる。通常、HA1のC末端の短いステムセグメントは、HA1の約305番目の残基(H3付番を使用)の配列に位置するシステイン残基からHA1のC末端アミノ酸までからなるポリペプチドに対応する。本明細書でBqと称される、このシステイン残基は、HA1のN末端ステムセグメント中のシステイン残基Apに連結されることができる。17個の代表的なA型インフルエンザ血球凝集素の配列が図1に示されており、残基Bqが各々で特定されている。
【0332】
ある実施態様において、HA1のC末端の短いステムセグメントは、Bq(例えば、H3血球凝集素由来のHA1サブユニットのCys305)から始まるのではなく、配列上及び構造上Bqに近い残基から始まる。例えば、ある実施態様において、HA1のC末端の短いステムセグメントは、Bq-1、Bq-2、Bq-3、Bq-4、Bq-5、Bq-6、Bq-7、Bq-8、Bq-9、Bq-10、Bq-11、Bq-12、Bq-13、Bq-14、Bq-15、Bq-20、Bq-25、Bq-30、Bq-35、Bq-40、Bq-45、Bq-50、Bq-55、Bq-60、Bq-65、Bq-70、Bq-75、又はBq-80から始まる。他の実施態様において、HA1のC末端の短いステムセグメントは、Bq+1、Bq+2、Bq+3、Bq+4、Bq+5、Bq+6、Bq+7、Bq+8、Bq+9、又はBq+10から始まる。HA1のN末端ステムセグメントの終点は、得られるHA1ステムドメインが、下記のように、インフルエンザ血球凝集素と類似した三次元構造を形成することができるように、HA1のC末端の短いステムセグメント及びリンカーの始点との関連で選択されるべきである。
【0333】
ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドは、当業者に公知のインフルエンザHA1のC末端の短いステムセグメントとの少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%のアミノ酸配列同一性を有するHA1のC末端の短いステムセグメントを含む。例示的な公知のHA1のC末端の短いステムセグメントは、下の表に提供されている。
【0334】
ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp-1であり、C末端の短いステムセグメントの始点はBq-1である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp-2であり、C末端の短いステムセグメントの始点はBq-2である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp-3であり、C末端の短いステムセグメントの始点はBq-3である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp-4であり、C末端の短いステムセグメントの始点はBq-4である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp-5であり、C末端の短いステムセグメントの始点はBq-5である。
【0335】
ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp+1であり、C末端の短いステムセグメントの始点はBq+1である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp+2であり、C末端の短いステムセグメントの始点はBq+2である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp+3であり、C末端の短いステムセグメントの始点はBq+3である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp+4であり、C末端の短いステムセグメントの始点はBq+4である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp+5であり、C末端の短いステムセグメントの始点はBq+5である。
【0336】
ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp-1であり、C末端の短いステムセグメントの始点はBq+1である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp-2であり、C末端の短いステムセグメントの始点はBq+2である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp-3であり、C末端の短いステムセグメントの始点はBq+3である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp-4であり、C末端の短いステムセグメントの始点はBq+4である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp-5であり、C末端の短いステムセグメントの始点はBq+5である。
【0337】
ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はApであり(すなわち、N末端ステムセグメントの終点はシステインであり)、C末端ステムセグメントの始点はAqである(すなわち、C末端ステムセグメントの始点はシステインである)。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp+1であり、C末端の短いステムセグメントの始点はBq-1である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp+2であり、C末端の短いステムセグメントの始点はBq-2である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp+3であり、C末端の短いステムセグメントの始点はBq-3である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp+4であり、C末端の短いステムセグメントの始点はBq-4である。ある実施態様において、N末端ステムセグメントの終点はAp+5であり、C末端の短いステムセグメントの始点はBq-5である。
【0338】
同じく本明細書に提供されるのは、最大100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個のアミノ酸残基がHA1のC末端の短いステムセグメントの一方又は両方の末端から欠失している欠失型のHA1のC末端の短いステムセグメントを含むインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、又はそれより多くの残基が、HA1のC末端の短いステムセグメントのN末端に付加されている伸張型のHA1のC末端の短いステムセグメントを含むインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。特定の実施態様において、1つの残基がC末端の短いステムセグメントに付加される場合、1つの残基がN末端ステムセグメントに付加され;2つの残基がC末端の短いステムセグメントに付加される場合、2つの残基がN末端ステムセグメントに付加され;3つの残基がC末端の短いステムセグメントに付加される場合、3つの残基がN末端ステムセグメントに付加される。さらに本明細書に提供されるのは、最大100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個のアミノ酸残基が他のアミノ酸と保存的に置換されている改変型のHA1のC末端の短いステムセグメントを含むインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。さらに提供されるのは、欠失した及び改変されたHA1のC末端の短いステムセグメントを含むインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。
【0339】
インフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドは、当業者に公知であるか又は後に発見される任意のインフルエンザ血球凝集素に基づくことができる(すなわち、上記のように、配列同一性を有することができる)。ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドは、A型インフルエンザ血球凝集素に基づく。ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、及びH17からなる群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素に基づく。ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドは、以下で詳細に記載するように、B型インフルエンザ血球凝集素に基づく。
【0340】
HA1のN末端ステムセグメントは、当業者に公知であるか又は後に発見される任意のHA1のN末端ステムセグメントに基づくことができる(すなわち、上記のように、配列同一性を有することができる)。ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、A型インフルエンザHA1のN末端ステムセグメントに基づく。ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、及びH17からなる群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素に基づく。ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、配列番号34〜49から選択される。ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、各々1つのアミノ酸がそのC末端から欠失している、配列番号34〜49から選択される。ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、各々2つのアミノ酸がそのC末端から欠失している、配列番号34〜49から選択される。ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、各々3つのアミノ酸がそのC末端から欠失している、配列番号34〜49から選択される。ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、各々4つのアミノ酸がそのC末端から欠失している、配列番号34〜49から選択される。ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、各々5つのアミノ酸がそのC末端から欠失している、配列番号34〜49から選択される。ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、配列番号177〜224から選択される。
【0341】
HA1のC末端の短いステムセグメントは、当業者に公知であるか又は後に発見される任意のHA1のC末端の短いステムセグメントに基づくことができる(すなわち、上記のように、配列同一性を有することができる)。ある実施態様において、HA1のC末端の短いステムセグメントは、A型インフルエンザHA1のC末端の短いステムセグメントに基づく。ある実施態様において、HA1のC末端の短いステムセグメントは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、及びH17からなる群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素に基づく。ある実施態様において、HA1のC末端の短いステムセグメントは、配列番号350〜365から選択される。ある実施態様において、HA1のC末端の短いステムセグメントは、各々1つのアミノ酸がそのN末端から欠失している、配列番号350〜365から選択される。ある実施態様において、HA1のC末端の短いステムセグメントは、各々2つのアミノ酸がそのN末端から欠失している、配列番号350〜365から選択される。ある実施態様において、HA1のC末端の短いステムセグメントは、各々3つのアミノ酸がそのN末端から欠失している、配列番号350〜365から選択される。ある実施態様において、HA1のC末端の短いステムセグメントは、各々4つのアミノ酸がそのN末端から欠失している、配列番号350〜365から選択される。ある実施態様において、HA1のC末端の短いステムセグメントは、各々5つのアミノ酸がそのN末端から欠失している、配列番号350〜365から選択される。ある実施態様において、HA1のC末端の短いステムセグメントは、配列番号366〜413から選択される。
【0342】
HA2ステムドメインは、当業者に公知であるか、後に発見されるか、又は本明細書に記載されている任意のHA2ステムドメインに基づくことができる(すなわち、上記のように、配列同一性を有することができる)。ある実施態様において、HA2ステムドメインは、A型インフルエンザHA2ステムドメインに基づく。ある実施態様において、HA2ステムドメインは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、及びH17からなる群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素に基づく。ある実施態様において、HA2ステムドメインは、配列番号66〜97から選択される。
【0343】
シグナルペプチドを含む実施態様において、シグナルペプチドは、当業者に公知であるか又は本明細書に記載されている任意のインフルエンザシグナルペプチドに基づくことができる。ある実施態様において、シグナルペプチドは、A型インフルエンザシグナルペプチドに基づく。
【0344】
内腔ドメインを含む実施態様において、内腔ドメインは、当業者に公知であるか又は本明細書に記載されている任意のインフルエンザ内腔ドメインに基づくことができる。
【0345】
膜貫通ドメインを含む実施態様において、膜貫通ドメインは、当業者に公知であるか又は本明細書に記載されている任意のインフルエンザ膜貫通ドメインに基づくことができる。
【0346】
細胞質ドメインを含む実施態様において、細胞質ドメインは、当業者に公知であるか又は本明細書に記載されている任意のインフルエンザ細胞質ドメインに基づくことができる。
【0347】
ある実施態様において、血球凝集素の短いステムドメイン中のグリコシル化部位の1つ又は複数を、これらの部位でのグリコシル化がポリペプチドのプロセシング及び成熟の間に生じないように(例えば、アミノ酸の付加、欠失、又は置換によって)修飾する。当業者は、インフルエンザHAが、通常、1以上のグリコシル化部位(例えば、Ser/Thr/Cys、ここで、Xaaは任意のアミノ酸であり、又はある実施態様において、XaaはProではない)を含むことを認識しているであろう。ある実施態様において、グリコシル化配列中の1以上のアミノ酸残基を、グリコシル化部位を分断するアミノ酸残基と保存的に置換する。ある実施態様において、グリコシル化配列中の1以上のアミノ酸残基を、グリコシル化部位を分断する任意のアミノ酸残基と置換する。ある実施態様において、グリコシル化配列中の1以上のアスパラギン残基をアラニンと置換する。特定の実施態様において、H3血球凝集素の位置38のアスパラギンをアラニンに変化させる。ある実施態様において、血球凝集素の短いステムドメインは、下記の第5.4.1節で論じられているような1以上の修飾されたグリコシル化部位を含む。
【0348】
下の表6は、A型インフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのシグナルペプチド、HA1の末端ステムセグメント、HA1のC末端の短いステムセグメント、及びHA2ドメインを特定している。これらのシグナルペプチド、ステムセグメント、及びドメインは、本明細書に記載のポリペプチド及び方法において有用である。
表6.例示的なA型インフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインペプチド配列
【表7】
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【0349】
下の表6Aは、本明細書に記載のポリペプチド及び方法のための有用なHA1のN末端ステムセグメント及びHA1のC末端の短いステムセグメントを特定している。
表6A.例示的なA型インフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインペプチド配列
【表8】
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【0350】
ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドは、インフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの三次構造又は四次構造中に1以上の免疫原性エピトープを含む。
【0351】
ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、アミノ酸配列
【化34】
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を含み、ここで、
A17は、Y又はHであり;
A18は、H、L、又はQであり;
(Xaa)nは、18〜20アミノ酸残基の配列を表し;かつ
A38は、H、S、Q、T、又はNである。
【0352】
ある実施態様において、HA2ドメインは、アミノ酸配列
【化35】
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を含み、ここで、
A18は、V又はIであり;
A19は、D、N、又はAであり;
A20は、Gであり、かつ
A21は、Wである。
【0353】
ある実施態様において、HA2ドメインは、アミノ酸配列
【化36】
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を含み、ここで、
A38は、K、Q、R、L、又はYであり;
A39は、任意のアミノ酸残基であり;
A40は、任意のアミノ酸残基であり;
A41は、Tであり;
A42は、Qであり;
A43は、任意のアミノ酸残基であり;
A44は、Aであり;
A45は、Iであり;
A46は、Dであり;
A47は、任意のアミノ酸残基であり;
A48は、I、V、又はMであり;
A49は、T、Q、又はNであり;
A50は、任意のアミノ酸残基であり;
A51は、Kであり;
A52は、V又はLであり;
A53は、Nであり;
A54は、任意のアミノ酸残基であり;
A55は、V、I、又はLであり;かつ
A56は、V又はIである。
【0354】
図1及び2に示すように、HA1のN末端ステムセグメントは、A型インフルエンザとB型インフルエンザの間で、さらにA型インフルエンザ亜型にわたって配列同一性を共有する。同様に、HA1のC末端の短いステムセグメントも、A型インフルエンザとB型インフルエンザの間で、さらにA型インフルエンザ亜型にわたって配列同一性を共有する。さらに、HA2ドメインも、A型インフルエンザとB型インフルエンザの間で、さらにA型インフルエンザ亜型にわたって配列同一性を共有する。
【0355】
いくつかの実施態様において、インフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドは、複数のインフルエンザ株又は亜型由来のセグメント及び/もしくはドメインを含むか又はそれらから本質的になるハイブリッドポリペプチドである。例えば、インフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドは、異なるA型インフルエンザウイルスHA亜型由来のHA1のN末端ステムセグメント及びHA1のC末端の短いステムセグメントを含むことができる。いくつかの実施態様において、HA1のN末端ステムセグメントは、B型インフルエンザウイルス由来のものであるが、HA1のC末端の短いステムセグメントは、A型インフルエンザウイルス由来のものである。同様に、HA2及びHA1のC末端の短いステムセグメントは、A型インフルエンザウイルス由来のものでもあり得るが、HA1のN末端は、B型インフルエンザウイルス由来のものである。
【0356】
表2、4、5に記載の配列エレメント、並びに表3の「シグナルペプチド」、「HA1のN末端ステムセグメント」、及び「HA2ドメイン」の欄に記載の配列又はそれらの変異体の任意の組合せを用いて、本発明の血球凝集素HAステムドメインポリペプチドを形成させることができることが理解されるであろう。
【0357】
本明細書に提供されるインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドにおいて、リンカーは、HA1のN末端ステムセグメントをHA1のC末端の短いステムセグメントと共有結合で連結させる。リンカーは、本明細書に記載のリンカーを含むが、これに限定されない、当業者によって好適であると考えられる任意のリンカーであることができる。ある実施態様において、リンカーは、インフルエンザステムドメインと異種のインフルエンザウイルス由来の球状ヘッド、又はその断片である。
【0358】
ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドは、天然のインフルエンザ血球凝集素のステムドメインの三次元構造と類似している三次元構造を形成することができる。構造類似性は、本明細書に記載の技術を含むが、これに限定されない、当業者によって好適であると考えられる任意の技術に基づいて評価することができる。
【0359】
ある実施態様において、本明細書に提供される任意のインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドは、当業者に好適であると考えられる1以上のポリペプチドドメインをさらに含むことができる。有用なポリペプチドドメインとしては、ポリペプチドの部分の精製、フォールディング、及び切断を容易にするドメインが挙げられる。例えば、Hisタグ
【化37】
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、FLAGエピトープ、又は他の精製タグは、本明細書に提供されるポリペプチドの精製を容易にすることができる。いくつかの実施態様において、精製タグは、配列(His)nを有するHisタグであり、ここで、nは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又はそれより大きい。
バクテリオファージT4フィブリチン由来のフォルドンを含む、任意の三量体化ドメインは、本明細書に提供されるポリペプチドの三量体化を容易にすることができる。いくつかの実施態様において、三量体化ドメインは、三量体又は四量体コイルドコイルの形成を可能にする野生型GCN4pII三量体化ヘプタッド反復又は修飾されたGCN4pII三量体化ヘプタッド反復を含む。例えば、Weldonらの文献(2010, PLoSONE 5(9): e12466)を参照されたい。フォルドンドメインは、当業者に公知の任意のフォルドン配列を有することができる(例えば、Papanikolopoulouらの文献(2004, J. Biol. Chem. 279(10):8991-8998)を参照されたく、その内容は、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれる)。例としては、
【化38】
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が挙げられる。フォルドンドメインは、本明細書に提供される可溶性ポリペプチドの三量体化を容易にするのに有用であることができる。切断部位を用いて、ポリペプチドの一部の切断、例えば、精製タグもしくはフォルドンドメイン又は両方の切断を容易にすることができる。有用な切断部位としては、トロンビン切断部位、例えば、配列
【化39】
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を有するものが挙げられる。ある実施態様において、切断部位は、タバコエッチ病ウイルス(TEV)プロテアーゼによって認識される切断部位(例えば、アミノ酸配列Glu-Asn-Leu-Tyr-Phe-Gln-(Gly/Ser))である。
【0360】
ある実施態様において、提供されるのは、本明細書に記載のエラスターゼ切断部位を含むインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。特定の実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号350〜365のいずれかを含むインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドであり、ここで、配列番号350〜365のC末端アミノ酸残基、例えば、アルギニン又はリジンは、バリン残基と置換されている。
【0361】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1とHA2の接合部でのプロテアーゼ切断に対して抵抗性があると予測されるインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、提供されるのは、HA1とHA2にまたがるプロテアーゼ部位を、プロテアーゼ切断に対して抵抗性がある配列に突然変異させている、本明細書に記載の任意のインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、提供されるのは、HA1のC末端の短いステムセグメントのC末端残基が、Lys又はArg以外の任意の残基である、本明細書に記載の任意のインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、提供されるのは、HA2ドメインのN末端残基がプロリンである、本明細書に記載の任意のインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、提供されるのは、HA1のC末端の短いステムセグメントのC末端残基がAlaであり、かつHA2ドメインのN末端残基もAlaである、本明細書に記載の任意のインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。
【0362】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端ステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA2ステムドメインと結合関係にあるHA1のC末端の短いステムセグメントに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端ステムセグメントリンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端の短いステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、シグナルペプチドがHA1のN末端ステムセグメントに共有結合し、リンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端の短いステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。
【0363】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端ステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA2ステムドメインと結合関係にあるHA1のC末端の短いステムセグメントに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端ステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端の短いステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、シグナルペプチドがHA1のN末端ステムセグメントに共有結合し、リンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端の短いステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。
【0364】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端ステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA2ステムドメインと結合関係にあるHA1のC末端の短いステムセグメントに共有結合し、それが切断部位、三量体化ドメイン、及び精製タグに順に共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端ステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端の短いステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それが切断部位、三量体化ドメイン、及び精製タグに順に共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、シグナルペプチドがHA1のN末端ステムセグメントに共有結合し、リンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端の短いステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それが切断部位、三量体化ドメイン、及び精製タグに順に共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、プロテアーゼ切断部位は、トロンビン切断部位である。ある実施態様において、切断部位は、アミノ酸配列
【化40】
[この文献は図面を表示できません]
を有する。ある実施態様において、切断部位は、タバコエッチ病ウイルス(TEV)プロテアーゼによって認識される切断部位(例えば、アミノ酸配列Glu-Asn-Leu-Tyr-Phe-Gln-(Gly/Ser))である。ある実施態様において、三量体化ドメインは、フォルドンドメインである。いくつかの実施態様において、三量体化ドメインは、三量体又は四量体コイルドコイルの形成を可能にする野生型GCN4pII三量体化ヘプタッド反復又は修飾されたGCN4pII三量体化ヘプタッド反復を含む。例えば、Weldonらの文献(2010, PLoSONE 5(9): e12466)を参照されたい。いくつかの実施態様において、精製タグは、配列(His)nを有するHisタグであり、ここで、nは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又はそれより大きい。
【0365】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端ステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA2ステムドメインと結合関係にあるHA1のC末端の短いステムセグメントに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それが切断部位、三量体化ドメイン、及び精製タグに順に共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端ステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端の短いステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それが切断部位、三量体化ドメイン、及び精製タグに順に共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、シグナルペプチドがHA1のN末端ステムセグメントに共有結合し、リンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端の短いステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それが切断部位、三量体化ドメイン、及び精製タグに順に共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、プロテアーゼ切断部位は、トロンビン切断部位である。ある実施態様において、切断部位は、アミノ酸配列
【化41】
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を有する。ある実施態様において、切断部位は、タバコエッチ病ウイルス(TEV)プロテアーゼによって認識される切断部位(例えば、アミノ酸配列Glu-Asn-Leu-Tyr-Phe-Gln-(Gly/Ser))である。ある実施態様において、三量体化ドメインは、フォルドンドメインである。いくつかの実施態様において、三量体化ドメインは、三量体又は四量体コイルドコイルの形成を可能にする野生型GCN4pII三量体化ヘプタッド反復又は修飾されたGCN4pII三量体化ヘプタッド反復を含む。例えば、Weldonらの文献(2010, PLoSONE 5(9): e12466)を参照されたい。いくつかの実施態様において、精製タグは、配列(His)nを有するHisタグであり、ここで、nは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又はそれより大きい。
【0366】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端ステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA2ステムドメインと結合関係にあるHA1のC末端の短いステムセグメントに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それがさらにHA2膜貫通ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端ステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端の短いステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それがさらにHA2膜貫通ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、シグナルペプチドがHA1のN末端ステムセグメントに共有結合し、リンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端の短いステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それがさらにHA2膜貫通ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。
【0367】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端ステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA2ステムドメインと結合関係にあるHA1のC末端の短いステムセグメントに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それがさらにHA2膜貫通ドメインに共有結合し、それがさらにHA2細胞質ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端ステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端の短いステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それがさらにHA2膜貫通ドメインに共有結合し、それがさらにHA2細胞質ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、シグナルペプチドがHA1のN末端ステムセグメントに共有結合し、リンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端の短いステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それがさらにHA2膜貫通ドメインに共有結合し、それがさらにHA2細胞質ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の短いステムドメインポリペプチドである。
【0368】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、以下のもの:
(配列番号34)-LL-(配列番号350)-(配列番号66)、
(配列番号35)-LL-(配列番号351)-(配列番号67)、
(配列番号36)-LL-(配列番号352)-(配列番号68)、
(配列番号37)-LL-(配列番号353)-(配列番号69)、
(配列番号38)-LL-(配列番号354)-(配列番号70)、
(配列番号39)-LL-(配列番号355)-(配列番号71)、
(配列番号40)-LL-(配列番号356)-(配列番号72)、
(配列番号41)-LL-(配列番号357)-(配列番号73)、
(配列番号42)-LL-(配列番号358)-(配列番号74)、
(配列番号43)-LL-(配列番号359)-(配列番号75)、
(配列番号44)-LL-(配列番号360)-(配列番号76)、
(配列番号45)-LL-(配列番号361)-(配列番号77)、
(配列番号46)-LL-(配列番号362)-(配列番号78)、
(配列番号47)-LL-(配列番号363)-(配列番号79)、
(配列番号48)-LL-(配列番号364)-(配列番号80)、及び
(配列番号49)-LL-(配列番号365)-(配列番号81)
からなる群から選択される配列を有するインフルエンザ血球凝集素の短いステムポリペプチドであり、ここで、上の各配列は、本明細書に記載の隣接配列に連結されており、かつここで、LLは本明細書に記載のリンカーである。特に、HA1のC末端セグメントは、HA2ドメインに共有結合又は非共有結合で連結されることができる。ある実施態様において、LLは、直接結合、Gly、Gly-Gly、Gly-Gly-Gly、Gly-Gly-Gly-Gly、(Gly)n(ここで、nは、ペプチドリンカーに柔軟性がある限り、任意の数のグリシン残基であり;ある実施態様において、nは、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つのグリシン残基である)、
【化42】
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からなる群から選択される。
【0369】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、以下のもの:
(配列番号34)-LL-(配列番号350)-(配列番号82)、
(配列番号35)-LL-(配列番号351)-(配列番号83)、
(配列番号36)-LL-(配列番号352)-(配列番号84)、
(配列番号37)-LL-(配列番号353)-(配列番号85)、
(配列番号38)-LL-(配列番号354)-(配列番号86)、
(配列番号39)-LL-(配列番号355)-(配列番号87)、
(配列番号40)-LL-(配列番号356)-(配列番号88)、
(配列番号41)-LL-(配列番号357)-(配列番号89)、
(配列番号42)-LL-(配列番号358)-(配列番号90)、
(配列番号43)-LL-(配列番号359)-(配列番号91)、
(配列番号44)-LL-(配列番号360)-(配列番号92)、
(配列番号45)-LL-(配列番号361)-(配列番号93)、
(配列番号46)-LL-(配列番号362)-(配列番号94)、
(配列番号47)-LL-(配列番号363)-(配列番号95)、
(配列番号48)-LL-(配列番号364)-(配列番号96)、及び
(配列番号49)-LL-(配列番号365)-(配列番号97)
からなる群から選択される配列を有するインフルエンザ血球凝集素の短いステムポリペプチドであり、ここで、上の各配列は、本明細書に記載の隣接配列に連結されており、かつここで、LLは本明細書に記載のリンカーである。特に、HA1のC末端セグメントは、HA2ドメインに共有結合又は非共有結合で連結されることができる。ある実施態様において、LLは、直接結合、
【化43】
[この文献は図面を表示できません]
からなる群から選択される。
【0370】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、以下のもの:
(配列番号34)-LL-(配列番号350)-(配列番号82)-(配列番号98)、
(配列番号35)-LL-(配列番号351)-(配列番号83)-(配列番号99)、
(配列番号36)-LL-(配列番号352)-(配列番号84)-(配列番号100)、
(配列番号37)-LL-(配列番号353)-(配列番号85)-(配列番号101)、
(配列番号38)-LL-(配列番号354)-(配列番号86)-(配列番号102)、
(配列番号39)-LL-(配列番号355)-(配列番号87)-(配列番号103)、
(配列番号40)-LL-(配列番号356)-(配列番号88)-(配列番号104)、
(配列番号41)-LL-(配列番号357)-(配列番号89)-(配列番号105)、
(配列番号42)-LL-(配列番号358)-(配列番号90)-(配列番号106)、
(配列番号43)-LL-(配列番号359)-(配列番号91)-(配列番号107)、
(配列番号44)-LL-(配列番号360)-(配列番号92)-(配列番号108)、
(配列番号45)-LL-(配列番号361)-(配列番号93)-(配列番号109)、
(配列番号46)-LL-(配列番号362)-(配列番号94)-(配列番号110)、
(配列番号47)-LL-(配列番号363)-(配列番号95)-(配列番号111)、
(配列番号48)-LL-(配列番号364)-(配列番号96)-(配列番号112)、及び
(配列番号49)-LL-(配列番号365)-(配列番号97)-(配列番号113)
からなる群から選択される配列を有するインフルエンザ血球凝集素の短いステムポリペプチドであり、ここで、上の各配列は、本明細書に記載の隣接配列に連結されており、かつここで、LLは本明細書に記載のリンカーである。特に、HA1のC末端の短いステムセグメントは、HA2ドメインに共有結合又は非共有結合で連結されることができる。ある実施態様において、LLは、直接結合、
【化44】
[この文献は図面を表示できません]
からなる群から選択される。
【0371】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、以下のもの:
(配列番号34)-LL-(配列番号350)-(配列番号82)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号35)-LL-(配列番号351)-(配列番号83)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号36)-LL-(配列番号352)-(配列番号84)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号37)-LL-(配列番号353)-(配列番号85)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号38)-LL-(配列番号354)-(配列番号86)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号39)-LL-(配列番号355)-(配列番号87)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号40)-LL-(配列番号356)-(配列番号88)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号41)-LL-(配列番号357)-(配列番号89)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号42)-LL-(配列番号358)-(配列番号90)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号43)-LL-(配列番号359)-(配列番号91)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号44)-LL-(配列番号360)-(配列番号92)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号45)-LL-(配列番号361)-(配列番号93)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号46)-LL-(配列番号362)-(配列番号94)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号47)-LL-(配列番号363)-(配列番号95)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号48)-LL-(配列番号364)-(配列番号96)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、及び
(配列番号49)-LL-(配列番号365)-(配列番号97)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)
からなる群から選択される配列を有するインフルエンザ血球凝集素の短いステムポリペプチドであり、ここで、上の各配列は、本明細書に記載の隣接配列に連結されており、かつここで、LLは本明細書に記載のリンカーである。特に、HA1のC末端の短いステムセグメントは、HA2ドメインに共有結合又は非共有結合で連結されることができる。ある実施態様において、LLは、直接結合、
【化45】
[この文献は図面を表示できません]
からなる群から選択される。
【0372】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、以下のもの:
(配列番号34)-LL-(配列番号350)-(配列番号82)-(配列番号98)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号35)-LL-(配列番号351)-(配列番号83)-(配列番号99)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号36)-LL-(配列番号352)-(配列番号84)-(配列番号100)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号37)-LL-(配列番号353)-(配列番号85)-(配列番号101)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号38)-LL-(配列番号354)-(配列番号86)-(配列番号102)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号39)-LL-(配列番号355)-(配列番号87)-(配列番号103)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号40)-LL-(配列番号356)-(配列番号88)-(配列番号104)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号41)-LL-(配列番号357)-(配列番号89)-(配列番号105)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号42)-LL-(配列番号358)-(配列番号90)-(配列番号106)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号43)-LL-(配列番号359)-(配列番号91)-(配列番号107)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号44)-LL-(配列番号360)-(配列番号92)-(配列番号108)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号45)-LL-(配列番号361)-(配列番号93)-(配列番号109)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号46)-LL-(配列番号362)-(配列番号94)-(配列番号110)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号47)-LL-(配列番号363)-(配列番号95)-(配列番号111)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号48)-LL-(配列番号364)-(配列番号96)-(配列番号112)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、及び
(配列番号49)-LL-(配列番号365)-(配列番号97)-(配列番号113)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)
からなる群から選択される配列を有するインフルエンザ血球凝集素の短いステムポリペプチドであり、ここで、上の各配列は、本明細書に記載の隣接配列に連結されており、かつここで、LLは本明細書に記載のリンカーである。特に、HA1のC末端の短いステムセグメントは、HA2ドメインに共有結合又は非共有結合で連結されることができる。ある実施態様において、LLは、直接結合、
【化46】
[この文献は図面を表示できません]
からなる群から選択される。
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、以下のもの:
(配列番号177)-LL-(配列番号366)-(配列番号66)、
(配列番号178)-LL-(配列番号367)-(配列番号66)、
(配列番号179)-LL-(配列番号368)-(配列番号66)、
(配列番号180)-LL-(配列番号369)-(配列番号67)、
(配列番号181)-LL-(配列番号370)-(配列番号67)、
(配列番号182)-LL-(配列番号371)-(配列番号67)、
(配列番号183)-LL-(配列番号372)-(配列番号68)、
(配列番号184)-LL-(配列番号373)-(配列番号68)、
(配列番号185)-LL-(配列番号374)-(配列番号68)、
(配列番号186)-LL-(配列番号375)-(配列番号69)、
(配列番号187)-LL-(配列番号376)-(配列番号69)、
(配列番号188)-LL-(配列番号377)-(配列番号69)、
(配列番号189)-LL-(配列番号378)-(配列番号70)、
(配列番号190)-LL-(配列番号379)-(配列番号70)、
(配列番号191)-LL-(配列番号380)-(配列番号70)、
(配列番号192)-LL-(配列番号381)-(配列番号71)、
(配列番号193)-LL-(配列番号382)-(配列番号71)、
(配列番号194)-LL-(配列番号383)-(配列番号71)、
(配列番号195)-LL-(配列番号384)-(配列番号72)、
(配列番号196)-LL-(配列番号385)-(配列番号72)、
(配列番号197)-LL-(配列番号386)-(配列番号72)、
(配列番号198)-LL-(配列番号387)-(配列番号73)、
(配列番号199)-LL-(配列番号388)-(配列番号73)、
(配列番号200)-LL-(配列番号389)-(配列番号73)、
(配列番号201)-LL-(配列番号390)-(配列番号74)、
(配列番号202)-LL-(配列番号391)-(配列番号74)、
(配列番号203)-LL-(配列番号392)-(配列番号74)、
(配列番号204)-LL-(配列番号393)-(配列番号75)、
(配列番号205)-LL-(配列番号394)-(配列番号75)、
(配列番号206)-LL-(配列番号395)-(配列番号75)、
(配列番号207)-LL-(配列番号396)-(配列番号76)、
(配列番号208)-LL-(配列番号397)-(配列番号76)、
(配列番号209)-LL-(配列番号398)-(配列番号76)、
(配列番号210)-LL-(配列番号399)-(配列番号77)、
(配列番号211)-LL-(配列番号400)-(配列番号77)、
(配列番号212)-LL-(配列番号401)-(配列番号77)、
(配列番号213)-LL-(配列番号402)-(配列番号78)、
(配列番号214)-LL-(配列番号403)-(配列番号78)、
(配列番号215)-LL-(配列番号404)-(配列番号78)、
(配列番号216)-LL-(配列番号405)-(配列番号79)、
(配列番号217)-LL-(配列番号406)-(配列番号79)、
(配列番号218)-LL-(配列番号407)-(配列番号79)、
(配列番号219)-LL-(配列番号408)-(配列番号80)、
(配列番号220)-LL-(配列番号409)-(配列番号80)、
(配列番号221)-LL-(配列番号410)-(配列番号80)、
(配列番号222)-LL-(配列番号411)-(配列番号81)
(配列番号223)-LL-(配列番号412)-(配列番号81)、及び
(配列番号224)-LL-(配列番号413)-(配列番号81)
からなる群から選択される配列を有するインフルエンザ血球凝集素の短いステムポリペプチドであり、ここで、上の各配列は、本明細書に記載の隣接配列に連結されており、かつここで、LLは本明細書に記載のリンカーである。特に、HA1のC末端の短いステムセグメントは、HA2ドメインに共有結合又は非共有結合で連結されることができる。ある実施態様において、LLは、直接結合、
【化47】
[この文献は図面を表示できません]
からなる群から選択される。
【0373】
(5.3.2 インフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチド)
ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、インフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。本明細書に提供されるインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドの典型的な一次構造は、以下の順序で:HA1のN末端の長いステムセグメント、リンカー、HA1のC末端の長いステムセグメント、及びHA2を含む。一次配列は、単一のポリペプチドによって形成されることができるか、又はそれは、複数のポリペプチドによって形成されることができる。通常、単一のポリペプチドは、当業者に好適であると考えられる任意の技術によって発現される。単一のポリペプチドの実施態様において、HA1セグメントとHA2は三次結合している。当業者に公知であるように、単一のHAポリペプチドは、例えば、プロテアーゼによって、適当な発現条件下で切断され、四次結合した2つのポリペプチドを生じさせることができる。切断は、通常、HA1のC末端の短いステムセグメントとHA2の間である。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、複数のポリペプチドである。複数のポリペプチドの実施態様において、HA1セグメントとHA2は四次結合している。
【0374】
ある実施態様において、本明細書に提供されるインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドは単量体である。ある実施態様において、本明細書に提供されるインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドは多量体である。ある実施態様において、本明細書に提供されるインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドは三量体である。当業者は、天然のインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドがインビボで三量体化することができること、及び本明細書に提供される特定のインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドが三量体化することができることを認識しているであろう。下記の特定の実施態様において、本明細書に提供されるインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドは、三量体化を容易にする三量体化ドメインを含む。
【0375】
ある実施態様において、同じく本明細書に提供されるのは、インフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドは、シグナルペプチドを含む。ある実施態様において、シグナルペプチドを欠く成熟したインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。
【0376】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA2ステムドメイン、HA2内腔ドメイン、HA2膜貫通ドメイン、及びHA2細胞質ドメインを含むインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA2ステムドメイン、HA2内腔ドメイン、及びHA2膜貫通ドメインを含むが、典型的な細胞質ドメインの一部又は全てを欠くインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA2ステムドメイン及びHA2内腔ドメインを含むが、HA2膜貫通ドメインとHA2細胞質ドメインの両方を欠くインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA2ステムドメインを含むが、HA2内腔ドメイン、HA2膜貫通ドメイン、及びHA2細胞質ドメインを欠くインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドは、当業者に公知のインフルエンザHA2ステムドメインとの少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%のアミノ酸配列同一性を有するHA2ステムドメインを含む。公知のA型インフルエンザ血球凝集素由来の例示的な公知のHA2ステムドメインは、下の表に提供されている。
【0377】
同じく本明細書に提供されるのは、最大100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個のアミノ酸残基がHA2ステムドメインの一方又は両方の末端から欠失している欠失型のHA2ステムドメインを含むインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。さらに本明細書に提供されるのは、最大100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個のアミノ酸残基が他のアミノ酸と保存的に置換されている改変型のHA2ステムドメインを含むインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。さらに提供されるのは、欠失した及び改変されたHA2ステムドメインを含むインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。
【0378】
HA1のN末端の長いステムセグメントは、本明細書に提供される定義に基づいて当業者により認識される任意のHA1のN末端の長いステムセグメントであることができる。通常、HA1のN末端の長いステムセグメントは、成熟したHA1のN末端アミノ酸(すなわち、シグナルペプチドを欠くHA1)からHA1の約97番目の残基(H3付番を使用)の配列に位置するシステイン残基までからなるポリペプチドに対応する。本明細書でCpと称される、このシステイン残基は、通常、HA1のC末端の長いステムセグメント中のシステイン残基Cqに連結されることができる。17個の代表的なA型インフルエンザ血球凝集素の配列が図1に示されており、残基Cpが各々で特定されている。
【0379】
ある実施態様において、HA1のN末端の長いステムセグメントは、Cp(例えば、H3血球凝集素由来のHA1サブユニットのCys97)で正確に終わるのではなく、配列上及び構造上Cpに近い残基で終わる。例えば、ある実施態様において、HA1のN末端の長いステムセグメントは、Cp-1、Cp-2、Cp-3、又はCp-4で終わる。他の実施態様において、HA1のN末端の長いステムセグメントは、Cp+1、Cp+2、Cp+3、Cp+4、又はCp+5で終わる。HA1のN末端の長いステムセグメントの終点は、得られる連結されたHA1ステムドメインが、下記のように、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインと類似した三次元構造を形成することができるように、HA1のC末端の長いステムセグメント及びリンカーの終点との関連で選択されるべきである。
【0380】
ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドは、当業者に公知のインフルエンザHA1のN末端の長いステムセグメントとの少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%のアミノ酸配列同一性を有するHA1のN末端の長いステムセグメントを含む。例示的な公知のHA1のN末端の長いステムセグメントは、下の表に提供されている。
【0381】
同じく本明細書に提供されるのは、最大100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個のアミノ酸残基がHA1のN末端の長いステムセグメントの一方又は両方の末端から欠失している欠失型のHA1のN末端の長いステムセグメントを含むインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、1つ、2つ、又は3つの残基が、HA1のN末端の長いステムセグメントのC末端に付加されており;これらの付加された残基が、HA1のN末端の長いステムセグメントに隣接する球状ヘッドドメインのアミノ酸配列に由来することができる、伸張型のHA1のN末端の長いステムセグメントを含むインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。さらに本明細書に提供されるのは、最大100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個のアミノ酸残基が他のアミノ酸と保存的に置換されている改変型のHA1のN末端の長いステムセグメントを含むインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。さらに提供されるのは、欠失した及び改変されたHA1のN末端の長いステムセグメントを含むインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。
【0382】
HA1のC末端の長いステムセグメントは、本明細書に提供される定義に基づいて当業者により認識される任意のHA1のC末端の長いステムセグメントであることができる。通常、HA1のC末端の長いステムセグメントは、HA1の約253番目の残基(H3付番を使用)の配列に位置するアラニン残基からHA1のC末端アミノ酸までからなるポリペプチドに対応する。本明細書でCqと称される、このアラニン残基は、通常、HA1のN末端の長いステムセグメント中のシステイン残基Cpに連結されることができる。16個の代表的なA型インフルエンザ血球凝集素の配列が図1に示されており、残基Cqが各々で特定されている。
【0383】
ある実施態様において、HA1のC末端の長いステムセグメントは、Cq(例えば、H3血球凝集素由来のHA1サブユニットのAla253)から始まるのではなく、配列上及び構造上Cqに近い残基から始まる。例えば、ある実施態様において、HA1のC末端の長いステムセグメントは、Cq-1、Cq-2、Cq-3、又はCq-4から始まる。他の実施態様において、HA1のC末端の長いステムセグメントは、Cq+1、Cq+2、Cq+3、Cq+4、又はCq+5から始まる。HA1のN末端の長いステムセグメントの終点は、得られるHA1ステムドメインが、下記のように、インフルエンザ血球凝集素と類似した三次元構造を形成することができるように、HA1のC末端の長いステムセグメント及びリンカーの始点との関連で選択されるべきである。
【0384】
ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドは、当業者に公知のインフルエンザHA1のC末端の長いステムセグメントとの少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、又は98%のアミノ酸配列同一性を有するHA1のC末端の長いステムセグメントを含む。例示的な公知のHA1のC末端の長いステムセグメントは、下の表に提供されている。
【0385】
ある実施態様において、N末端の長いステムセグメントの終点はCp-1であり、C末端の長いステムセグメントの始点はCq-1である。ある実施態様において、N末端の長いステムセグメントの終点はAp-2であり、C末端の長いステムセグメントの始点はCq-2である。ある実施態様において、N末端の長いステムセグメントの終点はCp-3であり、C末端の長いステムセグメントの始点はCq-3である。ある実施態様において、N末端の長いステムセグメントの終点はCp-4であり、C末端の長いステムセグメントの始点はCq-4である。ある実施態様において、N末端の長いステムセグメントの終点はCp-5であり、C末端の長いステムセグメントの始点はCq-5である。
【0386】
ある実施態様において、N末端の長いステムセグメントの終点はCp+1であり、C末端の長いステムセグメントの始点はCq+1である。ある実施態様において、N末端の長いステムセグメントの終点はCp+2であり、C末端の長いステムセグメントの始点はCq+2である。ある実施態様において、N末端の長いステムセグメントの終点はCp+3であり、C末端の長いステムセグメントの始点はCq+3である。ある実施態様において、N末端の長いステムセグメントの終点はCp+4であり、C末端の長いステムセグメントの始点はCq+4である。ある実施態様において、N末端の長いステムセグメントの終点はCp+5であり、C末端の長いステムセグメントの始点はCq+5である。
【0387】
ある実施態様において、N末端の長いステムセグメントの終点はCp-1であり、C末端の長いステムセグメントの始点はCq+1である。ある実施態様において、N末端の長いステムセグメントの終点はCp-2であり、C末端の長いステムセグメントの始点はCq+2である。ある実施態様において、N末端の長いステムセグメントの終点はCp-3であり、C末端の長いステムセグメントの始点はCq+3である。ある実施態様において、N末端の長いステムセグメントの終点はCp-4であり、C末端の長いステムセグメントの始点はCq+4である。ある実施態様において、N末端の長いステムセグメントの終点はCp-5であり、C末端の長いステムセグメントの始点はCq+5である。
【0388】
ある実施態様において、N末端の長いステムセグメントの終点はCp+1であり、C末端の長いステムセグメントの始点はCq-1である。ある実施態様において、N末端の長いステムセグメントの終点はCp+2であり、C末端の長いステムセグメントの始点はCq-2である。ある実施態様において、N末端の長いステムセグメントの終点はCp+3であり、C末端の長いステムセグメントの始点はCq-3である。ある実施態様において、N末端の長いステムセグメントの終点はCp+4であり、C末端の長いステムセグメントの始点はCq-4である。ある実施態様において、N末端の長いステムセグメントの終点はCp+5であり、C末端の長いステムセグメントの始点はCq-5である。
【0389】
同じく本明細書に提供されるのは、最大100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個のアミノ酸残基がHA1のC末端の長いステムセグメントの一方又は両方の末端から欠失している欠失型のHA1のC末端の長いステムセグメントを含むインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、1つ、2つ、又は3つの残基が、HA1のC末端の長いステムセグメントのN末端に付加されており;これらの付加された残基が、HA1のC末端の長いステムセグメントに隣接する球状ヘッドドメインのアミノ酸配列に由来することができる、伸張型のHA1のC末端の長いステムセグメントを含むインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。特定の実施態様において、1つの残基がC末端の長いステムセグメントに付加される場合、1つの残基がN末端の長いステムセグメントに付加され;2つの残基がC末端の長いステムセグメントに付加される場合、2つの残基がN末端の長いステムセグメントに付加され;3つの残基がC末端の長いステムセグメントに付加される場合、3つの残基がN末端の長いステムセグメントに付加される。さらに本明細書に提供されるのは、最大100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個のアミノ酸残基が他のアミノ酸と保存的に置換されている改変型のHA1のC末端の長いステムセグメントを含むインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。さらに提供されるのは、欠失した及び改変されたHA1のC末端の長いステムセグメントを含むインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。
【0390】
インフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドは、当業者に公知であるか又は後に発見される任意のインフルエンザ血球凝集素に基づくことができる(すなわち、上記のように、配列同一性を有することができる)。ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドは、A型インフルエンザ血球凝集素に基づく。ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、及びH17からなる群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素に基づく。ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドは、以下で詳細に記載するように、B型インフルエンザ血球凝集素に基づく。
【0391】
HA1のN末端の長いステムセグメントは、当業者に公知であるか又は後に発見される任意のHA1のN末端の長いステムセグメントに基づくことができる(すなわち、上記のように、配列同一性を有することができる)。ある実施態様において、HA1のN末端の長いステムセグメントは、A型インフルエンザHA1のN末端の長いステムセグメントに基づく。ある実施態様において、HA1のN末端の長いステムセグメントは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、及びH17からなる群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素に基づく。ある実施態様において、HA1のN末端の長いステムセグメントは、配列番号414〜429から選択される。ある実施態様において、HA1のN末端の長いステムセグメントは、各々1つのアミノ酸がそのC末端から欠失している、配列番号414〜429から選択される。ある実施態様において、HA1のN末端の長いステムセグメントは、各々2つのアミノ酸がそのC末端から欠失している、配列番号414〜429から選択される。ある実施態様において、HA1のN末端の長いステムセグメントは、各々3つのアミノ酸がそのC末端から欠失している、配列番号414〜429から選択される。ある実施態様において、HA1のN末端の長いステムセグメントは、各々4つのアミノ酸がそのC末端から欠失している、配列番号414〜429から選択される。ある実施態様において、HA1のN末端の長いステムセグメントは、各々5つのアミノ酸がそのC末端から欠失している、配列番号414〜429から選択される。ある実施態様において、HA1のN末端の長いステムセグメントは、配列番号446〜493から選択される。
【0392】
HA1のC末端の長いステムセグメントは、当業者に公知であるか又は後に発見される任意のHA1のC末端の長いステムセグメントに基づくことができる(すなわち、上記のように、配列同一性を有することができる)。ある実施態様において、HA1のC末端の長いステムセグメントは、A型インフルエンザHA1のC末端の長いステムセグメントに基づく。ある実施態様において、HA1のC末端の長いステムセグメントは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、及びH17からなる群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素に基づく。ある実施態様において、HA1のC末端の長いステムセグメントは、配列番号430〜445から選択される。ある実施態様において、HA1のC末端の長いステムセグメントは、各々1つのアミノ酸がそのN末端から欠失している、配列番号430〜445から選択される。ある実施態様において、HA1のC末端の長いステムセグメントは、各々2つのアミノ酸がそのN末端から欠失している、配列番号430〜445から選択される。ある実施態様において、HA1のC末端の長いステムセグメントは、各々3つのアミノ酸がそのN末端から欠失している、配列番号430〜445から選択される。ある実施態様において、HA1のC末端の長いステムセグメントは、各々4つのアミノ酸がそのN末端から欠失している、配列番号430〜445から選択される。ある実施態様において、HA1のC末端の長いステムセグメントは、各々5つのアミノ酸がそのN末端から欠失している、配列番号430〜445から選択される。ある実施態様において、HA1のC末端の長いステムセグメントは、配列番号494〜541から選択される。
【0393】
HA2ステムドメインは、当業者に公知であるか、後に発見されるか、又は本明細書に記載されている任意のHA2ステムドメインに基づくことができる(すなわち、上記のように、配列同一性を有することができる)。ある実施態様において、HA2ステムドメインは、A型インフルエンザHA2ステムドメインに基づく。ある実施態様において、HA2ステムドメインは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、及びH17からなる群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素に基づく。ある実施態様において、HA2ステムドメインは、配列番号66〜97から選択される。
【0394】
シグナルペプチドを含む実施態様において、シグナルペプチドは、当業者に公知であるか又は本明細書に記載されている任意のインフルエンザシグナルペプチドに基づくことができる。ある実施態様において、シグナルペプチドは、配列番号18〜33から選択される。
【0395】
内腔ドメインを含む実施態様において、内腔ドメインは、当業者に公知であるか又は本明細書に記載されている任意のインフルエンザ内腔ドメインに基づくことができる。ある実施態様において、内腔ドメインは、配列番号98〜113から選択される。
【0396】
膜貫通ドメインを含む実施態様において、膜貫通ドメインは、当業者に公知であるか又は本明細書に記載されている任意のインフルエンザ膜貫通ドメインに基づくことができる。ある実施態様において、膜貫通ドメインは、配列番号114〜129から選択される。
【0397】
細胞質ドメインを含む実施態様において、細胞質ドメインは、当業者に公知であるか又は本明細書に記載されている任意のインフルエンザ細胞質ドメインに基づくことができる。ある実施態様において、細胞質ドメインは、配列番号130〜145から選択される。
【0398】
ある実施態様において、血球凝集素ステムドメイン中のグリコシル化部位の1つ又は複数を、これらの部位でのグリコシル化がポリペプチドのプロセシング及び成熟の間に生じないように(例えば、アミノ酸の付加、欠失、又は置換によって)修飾する。当業者は、インフルエンザHAが、通常、1以上のグリコシル化部位(例えば、Asn-Xaa-Ser/Thr/Cys、ここで、Xaaは任意の他のアミノ酸であり、又はある実施態様において、XaaはPro以外の任意のアミノ酸である)を含むことを認識しているであろう。ある実施態様において、グリコシル化配列中の1以上のアミノ酸残基を、グリコシル化部位を分断するアミノ酸残基と保存的に置換する。ある実施態様において、グリコシル化配列中の1以上のアミノ酸残基を、グリコシル化部位を分断する任意のアミノ酸残基と置換する。ある実施態様において、グリコシル化配列中の1以上のアスパラギン残基をアラニンと置換する。特定の実施態様において、H3血球凝集素の位置38のアスパラギンをアラニンに変化させる。ある実施態様において、血球凝集素ステムドメインは、下記の第5.4.1節で論じられているような1以上の修飾されたグリコシル化部位を含む。
【0399】
下の表7は、A型インフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのシグナルペプチド、HA1のN末端の長いステムセグメント、HA1のC末端の長いステムセグメント、及びHA2ドメインを特定している。これらのシグナルペプチド、ステムセグメント、及びドメインは、本明細書に記載のポリペプチド及び方法において有用である。
表7.例示的なA型インフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインペプチド配列
【表9】
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【0400】
下の表7Aは、本明細書に記載のポリペプチド及び方法のための有用なHA1のN末端の長いステムセグメント及びHA1のC末端の長いステムセグメントを特定している。
表7A.例示的なA型インフルエンザ血球凝集素の長いステムドメイン配列
【表10】
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【0401】
ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドは、インフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドの三次構造又は四次構造中に1以上の免疫原性エピトープを含む。
【0402】
ある実施態様において、HA1のN末端の長いステムセグメントは、アミノ酸配列
【化48】
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を含み、ここで、
A17は、Y又はHであり;
A18は、H、L、又はQであり;
(Xaa)nは、18〜20アミノ酸残基の配列を表し;かつ
A38は、H、S、Q、T、又はNである。
【0403】
ある実施態様において、HA1のC末端の長いステムセグメントは、アミノ酸配列
【化49】
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を含み、ここで、
A291は、T、S、N、D、P、又はKであり;かつ
A292は、L、M、K、又はRである。
【0404】
ある実施態様において、HA2ドメインは、アミノ酸配列
【化50】
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を含み、ここで、
A18は、V又はIであり;
A19は、D、N、又はAであり;
A20は、Gであり、かつ
A21は、Wである。
【0405】
ある実施態様において、HA2ドメインは、アミノ酸配列
【化51】
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を含み、ここで、
A38は、K、Q、R、L、又はYであり;
A39は、任意のアミノ酸残基であり;
A40は、任意のアミノ酸残基であり;
A41は、Tであり;
A42は、Qであり;
A43は、任意のアミノ酸残基であり;
A44は、Aであり;
A45は、Iであり;
A46は、Dであり;
A47は、任意のアミノ酸残基であり;
A48は、I、V、又はMであり;
A49は、T、Q、又はNであり;
A50は、任意のアミノ酸残基であり;
A51は、Kであり;
A52は、V又はLであり;
A53は、Nであり;
A54は、任意のアミノ酸残基であり;
A55は、V、I、又はLであり;かつ
A56は、V又はIである。
【0406】
ある実施態様において、インフルエンザステムドメインポリペプチドは、配列番号146〜149から選択される2つのアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、インフルエンザステムドメインポリペプチドは、配列番号146〜149から選択される3つのアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、インフルエンザステムドメインポリペプチドは、配列番号146〜149から選択される4つのアミノ酸配列を含む。
【0407】
図1及び2に示すように、HA1のN末端の長いステムセグメントは、A型インフルエンザとB型インフルエンザの間で、さらにA型インフルエンザ亜型にわたって配列同一性を共有する。同様に、HA1のC末端の長いステムセグメントも、A型インフルエンザとB型インフルエンザの間で、さらにA型インフルエンザ亜型にわたって配列同一性を共有する。さらに、HA2ドメインも、A型インフルエンザとB型インフルエンザの間で、さらにA型インフルエンザ亜型にわたって配列同一性を共有する。
【0408】
いくつかの実施態様において、インフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドは、複数のインフルエンザ株又は亜型由来のセグメント及び/もしくはドメインを含むか又はそれらから本質的になるハイブリッドポリペプチドである。例えば、インフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドは、異なるA型インフルエンザウイルスHA亜型由来のHA1のN末端の長いステムセグメント及びHA1のC末端の長いステムセグメントを含むことができる。いくつかの実施態様において、HA1のN末端の長いステムセグメントは、A型インフルエンザウイルス由来のものであるが、HA1のC末端の長いステムセグメントは、B型インフルエンザウイルス由来のものである。同様に、HA2は、A型インフルエンザウイルス由来のものでもあり得るが、HA1のN末端の長いステムセグメント及び/又はC末端の長いステムセグメントは、B型インフルエンザウイルス由来のものである。
【0409】
表2〜4、6、6aに記載の配列エレメント、又はその変異体の任意の組合せを用いて、本発明の血球凝集素HAの長いステムドメインポリペプチドを形成させることができることが理解されるであろう。
【0410】
本明細書に提供されるインフルエンザステムドメインポリペプチドにおいて、リンカーは、HA1のN末端の長いステムセグメントをHA1のC末端の長いステムセグメントに共有結合で連結させる。リンカーは、本明細書に記載のリンカーを含むが、これに限定されない、当業者によって好適であると考えられる任意のリンカーであることができる。
【0411】
ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドは、天然のインフルエンザ血球凝集素のステムドメインの三次元構造と類似している三次元構造を形成することができる。構造類似性は、本明細書に記載の技術を含むが、これに限定されない、当業者によって好適であると考えられる任意の技術に基づいて評価することができる。
【0412】
ある実施態様において、本明細書に提供される任意のインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドは、当業者に好適であると考えられる1以上のポリペプチドドメインをさらに含むことができる。有用なポリペプチドドメインとしては、ポリペプチドの部分の精製、フォールディング、及び切断を容易にするドメインが挙げられる。例えば、Hisタグ
【化52】
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FLAGエピトープ、又は他の精製タグは、本明細書に提供されるポリペプチドの精製を容易にすることができる。いくつかの実施態様において、精製タグは、配列(His)nを有するHisタグであり、ここで、nは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又はそれより大きい。
バクテリオファージT4フィブリチン由来のフォルドンを含む、任意の三量体化ドメインは、本明細書に提供されるポリペプチドの三量体化を容易にすることができる。いくつかの実施態様において、三量体化ドメインは、三量体又は四量体コイルドコイルの形成を可能にする野生型GCN4pII三量体化ヘプタッド反復又は修飾されたGCN4pII三量体化ヘプタッド反復を含む。例えば、Weldonらの文献(2010, PLoSONE 5(9): e12466)を参照されたい。フォルドンドメインは、当業者に公知の任意のフォルドン配列を有することができる(例えば、Papanikolopoulouらの文献(2004, J. Biol. Chem. 279(10):8991-8998)を参照されたく、その内容は、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれる)。例としては、
【化53】
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が挙げられる。フォルドンドメインは、本明細書に提供される可溶性ポリペプチドの三量体化を容易にするのに有用であることができる。切断部位を用いて、ポリペプチドの一部の切断、例えば、精製タグもしくはフォルドンドメイン又は両方の切断を容易にすることができる。有用な切断部位としては、トロンビン切断部位、例えば、配列
【化54】
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を有するものが挙げられる。ある実施態様において、切断部位は、タバコエッチ病ウイルス(TEV)プロテアーゼによって認識される切断部位(例えば、アミノ酸配列Glu-Asn-Leu-Tyr-Phe-Gln-(Gly/Ser))である。
【0413】
ある実施態様において、提供されるのは、本明細書に記載のエラスターゼ切断部位を含むインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。特定の実施態様において、本明細書で提供されるのは、配列番号430〜445のいずれかを含むインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドであり、ここで、配列番号430〜445のC末端アミノ酸残基、例えば、アルギニン又はリジンは、バリン残基と置換されている。
【0414】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1とHA2の接合部でのプロテアーゼ切断に対して抵抗性があると予測されるインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。当業者は、HA1とHA2にまたがるArg-Gly配列がトリプシンの認識部位であり、通常、血球凝集素活性化のために切断されることを認識すべきである。本明細書に記載のステムドメインポリペプチドは活性化される必要がないので、本明細書に提供されるのは、プロテアーゼ切断に抵抗性があると予測されるインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、提供されるのは、HA1とHA2にまたがるプロテアーゼ部位を、プロテアーゼ切断に対して抵抗性がある配列に突然変異させている、本明細書に記載の任意のインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、HA1のC末端の長いステムセグメントのC末端残基が、Lys又はArg以外の任意の残基である、本明細書に記載の任意のインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドが提供される。ある実施態様において、提供されるのは、HA2ドメインのN末端残基がプロリンである、本明細書に記載の任意のインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、提供されるのは、HA1のC末端の長いステムセグメントのC末端残基がAlaであり、かつHA2ドメインのN末端残基もAlaである、本明細書に記載の任意のインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、提供されるのは、HA2ドメインのN末端残基がグリシン以外の任意の残基である、本明細書に記載の任意のインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。
【0415】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端の長いステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA2ステムドメインと結合関係にあるHA1のC末端の長いステムセグメントに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端の長いステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端の長いステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、シグナルペプチドがHA1のN末端の長いステムセグメントに共有結合し、リンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端の長いステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、リンカーは、インフルエンザステムドメインと異種のインフルエンザウイルス由来の球状ヘッド、又はその断片である。ある実施態様において、リンカーは、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA2サブユニットのステムドメインと異種のインフルエンザウイルス由来の球状ヘッド、又はその断片である。ある実施態様において、リンカーは、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素のHA1及び/又はHA2サブユニットのステムドメインと異種のインフルエンザウイルス由来の球状ヘッド、又はその断片である。
【0416】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端の長いステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA2ステムドメインと結合関係にあるHA1のC末端の長いステムセグメントに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端の長いステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端の長いステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、シグナルペプチドがHA1のN末端の長いステムセグメントに共有結合し、リンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端の長いステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、リンカーは、インフルエンザステムドメインと異種のインフルエンザウイルス由来の球状ヘッド、又はその断片である。ある実施態様において、リンカーは、血球凝集素のHA2サブユニットのステムドメインと異種のインフルエンザウイルス由来の球状ヘッド、又はその断片である。ある実施態様において、リンカーは、血球凝集素のHA1及び/又はHA2サブユニットのステムドメインと異種のインフルエンザウイルス由来の球状ヘッド、又はその断片である。
【0417】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端の長いステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA2ステムドメインと結合関係にあるHA1のC末端の長いステムセグメントに共有結合し、それが切断部位、三量体化ドメイン、及び精製タグに順に共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端の長いステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端の長いステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それが切断部位、三量体化ドメイン、及び精製タグに順に共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、シグナルペプチドがHA1のN末端の長いステムセグメントに共有結合し、リンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端の長いステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それが切断部位、三量体化ドメイン、及び精製タグに順に共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、プロテアーゼ切断部位は、トロンビン切断部位である。ある実施態様において、切断部位は、アミノ酸配列
【化55】
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を有する。ある実施態様において、切断部位は、タバコエッチ病ウイルス(TEV)プロテアーゼによって認識される切断部位(例えば、アミノ酸配列Glu-Asn-Leu-Tyr-Phe-Gln-(Gly/Ser))である。ある実施態様において、三量体化ドメインは、フォルドンドメインである。いくつかの実施態様において、三量体化ドメインは、三量体又は四量体コイルドコイルの形成を可能にする野生型GCN4pII三量体化ヘプタッド反復又は修飾されたGCN4pII三量体化ヘプタッド反復を含む。例えば、Weldonらの文献(2010, PLoSONE 5(9): e12466)を参照されたい。いくつかの実施態様において、精製タグは、配列(His)nを有するHisタグであり、ここで、nは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又はそれより大きい。
【0418】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端の長いステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA2ステムドメインと結合関係にあるHA1のC末端の長いステムセグメントに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それが切断部位、三量体化ドメイン、及び精製タグに順に共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端の長いステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端の長いステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それが切断部位、三量体化ドメイン、及び精製タグに順に共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、シグナルペプチドがHA1のN末端の長いステムセグメントに共有結合し、リンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端の長いステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それが切断部位、三量体化ドメイン、及び精製タグに順に共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、プロテアーゼ切断部位は、トロンビン切断部位である。ある実施態様において、切断部位は、アミノ酸配列
【化56】
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を有する。ある実施態様において、切断部位は、タバコエッチ病ウイルス(TEV)プロテアーゼによって認識される切断部位(例えば、アミノ酸配列Glu-Asn-Leu-Tyr-Phe-Gln-(Gly/Ser))である。ある実施態様において、三量体化ドメインは、フォルドンドメインである。いくつかの実施態様において、三量体化ドメインは、三量体又は四量体コイルドコイルの形成を可能にする野生型GCN4pII三量体化ヘプタッド反復又は修飾されたGCN4pII三量体化ヘプタッド反復を含む。例えば、Weldonらの文献(2010, PLoSONE 5(9): e12466)を参照されたい。いくつかの実施態様において、精製タグは、配列(His)nを有するHisタグであり、ここで、nは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又はそれより大きい。
【0419】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端の長いステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA2ステムドメインと結合関係にあるHA1のC末端の長いステムセグメントに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それがさらにHA2膜貫通ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端の長いステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端の長いステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それがさらにHA2膜貫通ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、シグナルペプチドがHA1のN末端の長いステムセグメントに共有結合し、リンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端の長いステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それがさらにHA2膜貫通ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。
【0420】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端の長いステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA2ステムドメインと結合関係にあるHA1のC末端の長いステムセグメントに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それがさらにHA2膜貫通ドメインに共有結合し、それがさらにHA2細胞質ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、HA1のN末端の長いステムセグメントがリンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端の長いステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それがさらにHA2膜貫通ドメインに共有結合し、それがさらにHA2細胞質ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、シグナルペプチドがHA1のN末端の長いステムセグメントに共有結合し、リンカーに共有結合し、さらにHA1のC末端の長いステムセグメントに共有結合し、さらにHA2ステムドメインに共有結合し、それがHA2内腔ドメインに共有結合し、それがさらにHA2膜貫通ドメインに共有結合し、それがさらにHA2細胞質ドメインに共有結合したものからなるインフルエンザ血球凝集素の長いステムドメインポリペプチドである。
【0421】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、以下のもの:
(配列番号414)-LL-(配列番号430)-(配列番号66)、
(配列番号415)-LL-(配列番号431)-(配列番号67)、
(配列番号416)-LL-(配列番号432)-(配列番号68)、
(配列番号417)-LL-(配列番号433)-(配列番号69)、
(配列番号418)-LL-(配列番号434)-(配列番号70)、
(配列番号419)-LL-(配列番号435)-(配列番号71)、
(配列番号420)-LL-(配列番号436)-(配列番号72)、
(配列番号421)-LL-(配列番号437)-(配列番号73)、
(配列番号422)-LL-(配列番号438)-(配列番号74)、
(配列番号423)-LL-(配列番号439)-(配列番号75)、
(配列番号424)-LL-(配列番号440)-(配列番号76)、
(配列番号425)-LL-(配列番号441)-(配列番号77)、
(配列番号426)-LL-(配列番号442)-(配列番号78)、
(配列番号427)-LL-(配列番号443)-(配列番号79)、
(配列番号428)-LL-(配列番号444)-(配列番号80)、及び
(配列番号429)-LL-(配列番号445)-(配列番号81)
からなる群から選択される配列を有するインフルエンザ血球凝集素の長いステムポリペプチドであり、ここで、上の各配列は、本明細書に記載の隣接配列に連結されており、かつここで、LLは本明細書に記載のリンカーである。特に、HA1のC末端の長いステムセグメントは、HA2ドメインに共有結合又は非共有結合で連結されることができる。ある実施態様において、LLは、直接結合、Gly、Gly-Gly、Gly-Gly-Gly、Gly-Gly-Gly-Gly、(Gly)n(ここで、nは、ペプチドリンカーに柔軟性がある限り、任意の数のグリシン残基であり;ある実施態様において、nは、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つのグリシン残基である)、
【化57】
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からなる群から選択される。
【0422】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、以下のもの:
(配列番号414)-LL-(配列番号430)-(配列番号82)、
(配列番号415)-LL-(配列番号431)-(配列番号83)、
(配列番号416)-LL-(配列番号432)-(配列番号84)、
(配列番号417)-LL-(配列番号433)-(配列番号85)、
(配列番号418)-LL-(配列番号434)-(配列番号86)、
(配列番号419)-LL-(配列番号435)-(配列番号87)、
(配列番号420)-LL-(配列番号436)-(配列番号88)、
(配列番号421)-LL-(配列番号437)-(配列番号89)、
(配列番号422)-LL-(配列番号438)-(配列番号90)、
(配列番号423)-LL-(配列番号439)-(配列番号91)、
(配列番号424)-LL-(配列番号440)-(配列番号92)、
(配列番号425)-LL-(配列番号441)-(配列番号93)、
(配列番号426)-LL-(配列番号442)-(配列番号94)、
(配列番号427)-LL-(配列番号443)-(配列番号95)、
(配列番号428)-LL-(配列番号444)-(配列番号96)、及び
(配列番号429)-LL-(配列番号445)-(配列番号97)
からなる群から選択される配列を有するインフルエンザ血球凝集素の長いステムポリペプチドであり、ここで、上の各配列は、本明細書に記載の隣接配列に連結されており、かつここで、LLは本明細書に記載のリンカーである。特に、HA1のC末端の長いステムセグメントは、HA2ドメインに共有結合又は非共有結合で連結されることができる。ある実施態様において、LLは、直接結合、
【化58】
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からなる群から選択される。
【0423】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、以下のもの:
(配列番号414)-LL-(配列番号430)-(配列番号82)-(配列番号98)、
(配列番号415)-LL-(配列番号431)-(配列番号83)-(配列番号99)、
(配列番号416)-LL-(配列番号432)-(配列番号84)-(配列番号100)、
(配列番号417)-LL-(配列番号433)-(配列番号85)-(配列番号101)、
(配列番号418)-LL-(配列番号434)-(配列番号86)-(配列番号102)、
(配列番号419)-LL-(配列番号435)-(配列番号87)-(配列番号103)、
(配列番号420)-LL-(配列番号436)-(配列番号88)-(配列番号104)、
(配列番号421)-LL-(配列番号437)-(配列番号89)-(配列番号105)、
(配列番号422)-LL-(配列番号438)-(配列番号90)-(配列番号106)、
(配列番号423)-LL-(配列番号439)-(配列番号91)-(配列番号107)、
(配列番号424)-LL-(配列番号440)-(配列番号92)-(配列番号108)、
(配列番号425)-LL-(配列番号441)-(配列番号93)-(配列番号109)、
(配列番号426)-LL-(配列番号442)-(配列番号94)-(配列番号110)、
(配列番号427)-LL-(配列番号443)-(配列番号95)-(配列番号111)、
(配列番号428)-LL-(配列番号444)-(配列番号96)-(配列番号112)、及び
(配列番号429)-LL-(配列番号445)-(配列番号97)-(配列番号113)
からなる群から選択される配列を有するインフルエンザ血球凝集素の長いステムポリペプチドであり、ここで、上の各配列は、本明細書に記載の隣接配列に連結されており、かつここで、LLは本明細書に記載のリンカーである。特に、HA1のC末端の長いステムセグメントは、HA2ドメインに共有結合又は非共有結合で連結されることができる。ある実施態様において、LLは、直接結合、
【化59】
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からなる群から選択される。
【0424】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、以下のもの:
(配列番号414)-LL-(配列番号430)-(配列番号82)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号415)-LL-(配列番号431)-(配列番号83)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号416)-LL-(配列番号432)-(配列番号84)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号417)-LL-(配列番号433)-(配列番号85)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号418)-LL-(配列番号434)-(配列番号86)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号419)-LL-(配列番号435)-(配列番号87)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号420)-LL-(配列番号436)-(配列番号88)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号421)-LL-(配列番号437)-(配列番号89)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号422)-LL-(配列番号438)-(配列番号90)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号423)-LL-(配列番号439)-(配列番号91)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号424)-LL-(配列番号440)-(配列番号92)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号425)-LL-(配列番号441)-(配列番号93)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号426)-LL-(配列番号442)-(配列番号94)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号427)-LL-(配列番号443)-(配列番号95)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号428)-LL-(配列番号444)-(配列番号96)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、及び
(配列番号429)-LL-(配列番号445)-(配列番号97)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)
からなる群から選択される配列を有するインフルエンザ血球凝集素の長いステムポリペプチドであり、ここで、上の各配列は、本明細書に記載の隣接配列に連結されており、かつここで、LLは本明細書に記載のリンカーである。特に、HA1のC末端の長いステムセグメントは、HA2ドメインに共有結合又は非共有結合で連結されることができる。ある実施態様において、LLは、直接結合、
【化60】
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からなる群から選択される。
【0425】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、以下のもの:
(配列番号414)-LL-(配列番号430)-(配列番号82)-(配列番号98)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号415)-LL-(配列番号431)-(配列番号83)-(配列番号99)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号416)-LL-(配列番号432)-(配列番号84)-(配列番号100)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号417)-LL-(配列番号433)-(配列番号85)-(配列番号101)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号418)-LL-(配列番号434)-(配列番号86)-(配列番号102)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号419)-LL-(配列番号435)-(配列番号87)-(配列番号103)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号420)-LL-(配列番号436)-(配列番号88)-(配列番号104)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号421)-LL-(配列番号437)-(配列番号89)-(配列番号105)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号422)-LL-(配列番号438)-(配列番号90)-(配列番号106)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号423)-LL-(配列番号439)-(配列番号91)-(配列番号107)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号424)-LL-(配列番号440)-(配列番号92)-(配列番号108)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号425)-LL-(配列番号441)-(配列番号93)-(配列番号109)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号426)-LL-(配列番号442)-(配列番号94)-(配列番号110)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号427)-LL-(配列番号443)-(配列番号95)-(配列番号111)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、
(配列番号428)-LL-(配列番号444)-(配列番号96)-(配列番号112)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)、及び
(配列番号429)-LL-(配列番号445)-(配列番号97)-(配列番号113)-(配列番号168)-(配列番号167)-(配列番号166)
からなる群から選択される配列を有するインフルエンザ血球凝集素の長いステムポリペプチドであり、ここで、上の各配列は、本明細書に記載の隣接配列に連結されており、かつここで、LLは本明細書に記載のリンカーである。特に、HA1のC末端の長いステムセグメントは、HA2ドメインに共有結合又は非共有結合で連結されることができる。ある実施態様において、LLは、直接結合、
【化61】
[この文献は図面を表示できません]
からなる群から選択される。
【0426】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、以下のもの:
(配列番号446)-LL-(配列番号494)-(配列番号66)、
(配列番号447)-LL-(配列番号495)-(配列番号66)、
(配列番号448)-LL-(配列番号496)-(配列番号66)、
(配列番号449)-LL-(配列番号497)-(配列番号67)、
(配列番号450)-LL-(配列番号498)-(配列番号67)、
(配列番号451)-LL-(配列番号499)-(配列番号67)、
(配列番号452)-LL-(配列番号500)-(配列番号68)、
(配列番号453)-LL-(配列番号501)-(配列番号68)、
(配列番号454)-LL-(配列番号502)-(配列番号68)、
(配列番号455)-LL-(配列番号503)-(配列番号69)、
(配列番号456)-LL-(配列番号504)-(配列番号69)、
(配列番号457)-LL-(配列番号505)-(配列番号69)、
(配列番号458)-LL-(配列番号506)-(配列番号70)、
(配列番号459)-LL-(配列番号507)-(配列番号70)、
(配列番号460)-LL-(配列番号508)-(配列番号70)、
(配列番号461)-LL-(配列番号509)-(配列番号71)、
(配列番号462)-LL-(配列番号510)-(配列番号71)、
(配列番号463)-LL-(配列番号511)-(配列番号71)、
(配列番号464)-LL-(配列番号512)-(配列番号72)、
(配列番号465)-LL-(配列番号513)-(配列番号72)、
(配列番号466)-LL-(配列番号514)-(配列番号72)、
(配列番号467)-LL-(配列番号515)-(配列番号73)、
(配列番号468)-LL-(配列番号516)-(配列番号73)、
(配列番号469)-LL-(配列番号517)-(配列番号73)、
(配列番号470)-LL-(配列番号518)-(配列番号74)、
(配列番号471)-LL-(配列番号519)-(配列番号74)、
(配列番号472)-LL-(配列番号520)-(配列番号74)、
(配列番号473)-LL-(配列番号521)-(配列番号75)、
(配列番号474)-LL-(配列番号522)-(配列番号75)、
(配列番号475)-LL-(配列番号523)-(配列番号75)、
(配列番号476)-LL-(配列番号524)-(配列番号76)、
(配列番号477)-LL-(配列番号525)-(配列番号76)、
(配列番号478)-LL-(配列番号526)-(配列番号76)、
(配列番号479)-LL-(配列番号527)-(配列番号77)、
(配列番号480)-LL-(配列番号528)-(配列番号77)、
(配列番号481)-LL-(配列番号529)-(配列番号77)、
(配列番号482)-LL-(配列番号530)-(配列番号78)、
(配列番号483)-LL-(配列番号531)-(配列番号78)、
(配列番号484)-LL-(配列番号532)-(配列番号78)、
(配列番号485)-LL-(配列番号533)-(配列番号79)、
(配列番号486)-LL-(配列番号534)-(配列番号79)、
(配列番号487)-LL-(配列番号535)-(配列番号79)、
(配列番号488)-LL-(配列番号536)-(配列番号80)、
(配列番号489)-LL-(配列番号537)-(配列番号80)、
(配列番号490)-LL-(配列番号538)-(配列番号80)、
(配列番号491)-LL-(配列番号539)-(配列番号81)、
(配列番号492)-LL-(配列番号540)-(配列番号81)、及び
(配列番号493)-LL-(配列番号541)-(配列番号81)
からなる群から選択される配列を有するインフルエンザ血球凝集素の長いステムポリペプチドであり、ここで、上の各配列は、本明細書に記載の隣接配列に連結されており、かつここで、LLは本明細書に記載のリンカーである。特に、HA1のC末端の長いステムセグメントは、HA2ドメインに共有結合又は非共有結合で連結されることができる。ある実施態様において、LLは、直接結合、
【化62】
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からなる群から選択される。
【0427】
(5.4 グリコシル化変異体)
別の態様において、本明細書に提供されるのは、1以上の修飾されたグリコシル化部位及び/又は1以上の非天然のグリコシル化部位を含むflu血球凝集素(HA)ポリペプチドである。具体的な実施態様において、flu HAポリペプチドは、1以上の修飾されたグリコシル化部位及び/又は1以上の非天然のグリコシル化部位を含むキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドである。図19C及びBに示すように、野生型血球凝集素のグリコシル化は、球状ヘッドとステムドメインの両方で生じる。これらのドメイン内でのグリコシル化は、抗原性領域をマスクし、それにより、インフルエンザウイルスが宿主免疫系応答を回避するのを可能にすることができると考えられる。例えば、季節性インフルエンザウイルス株(例えば、H1N1及びH3N2)は、時間とともに球状ヘッドドメインの免疫優性抗原性領域中にさらなるグリコシル化部位を獲得することが知られている。しかしながら、本明細書に記載のインフルエンザウイルスHAポリペプチドとの関連において、該ポリペプチドのステムドメイン内でのグリコシル化は、このドメインに見出される保存された抗原性領域に対する所望の免疫応答を妨害又は防止することができる。
【0428】
任意の特定の動作理論に束縛されるものではないが、本明細書に提供されるインフルエンザウイルスHAポリペプチドのステムドメイン内の保存された抗原性領域に対する免疫応答は、該部位でのグリコシル化(すなわち、グリカンの結合)を破壊する形でステムドメイン内での1以上のグリコシル化部位を修飾することにより増大させることができると考えられる。さらに、これらの免疫優性領域における1以上の非天然のグリコシル化部位の付加によるHA球状ヘッドドメインの免疫優性抗原性領域のマスキングも、ステムドメイン内の保存された亜免疫優性抗原性領域の免疫原性を増大させることができると考えられる。図19Cを参照されたい。
【0429】
1以上の修飾されたグリコシル化部位及び/又は1以上の非天然のグリコシル化部位を含むflu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、本明細書に記載のワクチン接種の方法に従って使用することができ、すなわち、そのような突然変異体HAポリペプチドは、対象においてインフルエンザウイルスストーク/ステムドメイン特異的抗体を誘発するように、対象に投与することができる。そのようなストークに対する抗体を誘発する突然変異体HAポリペプチドの能力を評価するために、対象(例えば、マウス)を、本明細書に記載の突然変異体HAポリペプチド、又は本明細書に記載の突然変異体HAポリペプチドを発現するウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)で免疫し、ステム/ストークドメイン特異的抗体の産生を誘発するそのような突然変異体HAポリペプチド又はそのような突然変異体HAポリペプチドを発現するウイルスの能力を評価し、対象においてステム/ストークドメイン特異的抗体の産生を誘発する対応物の野生型HA又は野生型ウイルスの能力と比較することができる。例えば、ストークに対する抗体を誘発する突然変異体HAポリペプチドの能力を評価するために、マウスを、野生型インフルエンザウイルスの株又は亜型、グリコシル化部位がヘッドドメインに付加されているHA突然変異体を発現するインフルエンザウイルス、及びグリコシル化部位がストークドメインから除去されているHA突然変異体を発現するインフルエンザウイルス、並びにこれらの組合せで免疫することができる。その後、そのようなマウスを、インフルエンザウイルスDNAで初回免疫するか、又はウイルスタンパク質を接種することができる。3週間後、そのようなマウスをウイルスタンパク質で追加免疫することができる。ウイルスタンパク質で追加免疫してから3週間後、マウスを様々なインフルエンザウイルス株に感染させて、重量減少及び生存についてモニタリングすることができる。感染マウスの抗ヘッド抗体及び抗ストーク抗体の血清力価を下記のようにELISAにより評価することができる。
【0430】
(5.4.1 ステムドメイン中の修飾されたグリコシル化部位)
一実施態様において、本明細書に提供されるflu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、少なくとも1つの修飾されたグリコシル化部位を含むHAステムドメインを含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位に結合するグリカンの能力を破壊する天然のグリコシル化部位の修飾を含む。任意の特定の動作理論に束縛されるものではないが、flu HAポリペプチドのステムドメイン内の保存された抗原性領域は、これらの抗原性領域に結合するグリカンにより、対象の免疫系(例えば、抗体応答)から遮断されると考えられる。したがって、ステムドメイン内の免疫原性及び接近可能性抗原性領域は、該部位でのグリコシル化(すなわち、グリカンの結合)を破壊する形でステムドメイン内の1以上のグリコシル化部位を修飾することによって増大させることができると考えられる。
【0431】
天然のグリコシル化部位が修飾されたグリコシル化部位に結合するグリカンの能力を破壊する形で修飾される修飾されたグリコシル化部位は、当業者に明らかな任意の技術によって作製されることができ、該技術には、例えば、下記の実施例5に論じられている部位特異的突然変異生成技術を含む、本明細書に記載の方法が含まれる。
【0432】
ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、もしくは20、又はそれより多くの修飾されたグリコシル化部位を含むHAステムドメインを含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位に結合するグリカンの能力を破壊する天然のグリコシル化部位の修飾を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのHAステムドメインは、1〜3、4〜6、7〜9、10〜12、13〜15、16〜18、19〜21の修飾されたグリコシル化部位を含む。他の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのHAステムドメインは、1〜5、6〜10、11〜15、16〜20、21〜25の修飾されたグリコシル化部位を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのHAステムドメインは、1つの修飾されたグリコシル化部位を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのHAステムドメインは、2つの修飾されたグリコシル化部位を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのHAステムドメインは、3つの修飾されたグリコシル化部位を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのHAステムドメインは、4つの修飾されたグリコシル化部位を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのHAステムドメインは、5つの修飾されたグリコシル化部位を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのHAステムドメインは、6つの修飾されたグリコシル化部位を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのHAステムドメインは、7つの修飾されたグリコシル化部位を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのHAステムドメインは、8つの修飾されたグリコシル化部位を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのHAステムドメインは、9つの修飾されたグリコシル化部位を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのHAステムドメインは、10の修飾されたグリコシル化部位を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのHAステムドメインは、11の修飾されたグリコシル化部位を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのHAステムドメインは、12の修飾されたグリコシル化部位を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのHAステムドメインは、13の修飾されたグリコシル化部位を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのHAステムドメインは、14の修飾されたグリコシル化部位を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのHAステムドメインは、15の修飾されたグリコシル化部位を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのHAステムドメインは、16の修飾されたグリコシル化部位を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのHAステムドメインは、17の修飾されたグリコシル化部位を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのHAステムドメインは、18の修飾されたグリコシル化部位を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのHAステムドメインは、19の修飾されたグリコシル化部位を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのHAステムドメインは、20又はそれより多くの修飾されたグリコシル化部位を含む。
【0433】
修飾されたグリコシル化部位としては、N結合型及びO結合型グリコシル化部位が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施態様において、修飾されたグリコシル化部位は、N結合型グリコシル化部位である。他の実施態様において、修飾されたグリコシル化部位は、O結合型グリコシル化部位である。いくつかの実施態様において、修飾されたグリコシル化部位は、アミノ酸モチーフAsn-Xaa-Ser/Thr/Cysを有する修飾されたN結合型グリコシル化部位であり、ここで、Xaaは任意のアミノ酸であり、又はある実施態様において、XaaはPro以外の任意のアミノ酸である。
【0434】
修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位に結合するグリカンの能力を破壊することができる任意の修飾を含むことができる。好ましい実施態様において、該修飾は、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドの適切なフォールディング及び/又は対象の免疫応答を誘発するflu血球凝集素(HA)ポリペプチドの能力を妨害しない。ある実施態様において、該修飾は、天然のグリコシル化部位における1以上のアミノ酸残基の欠失を含む。他の実施態様において、該修飾は、天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。
【0435】
ある実施態様において、修飾されたグリコシル化部位は、アミノ酸配列Asn-Xaa-Ser/Thr/Cysを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含み、ここで、Xaaは任意のアミノ酸であり、又はある実施態様において、XaaはPro以外の任意のアミノ酸であり、及びここで、該修飾は、該修飾されたグリコシル化部位に結合するグリカンの能力を破壊する。該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位に結合するグリカンの能力を破壊することができる当業者に公知の任意のアミノ酸置換を含むことができる。好ましい実施態様において、該1以上のアミノ酸置換は、適切にフォールディングするか、又は対象の免疫応答を誘発するflu血球凝集素(HA)ポリペプチドの能力を妨害しない。ある実施態様において、天然のグリコシル化部位の1以上のアミノ酸を、Asn(N)、Ser(S)、Thr(T)、又はAsp(D)アミノ酸残基について置換される。例示的なアミノ酸置換としては、Asn(N)のLys(K)アミノ酸残基への置換;Ser(S)のAsn(N)残基への置換;及びThr(T)のAsp(D)残基への置換が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な実施態様において、修飾されたグリコシル化部位は、天然のグリコシル化部位のAsn(N)残基のLys(K)残基への置換を含む。他の実施態様において、修飾されたグリコシル化部位は、天然のグリコシル化部位のSer(S)残基のAsn(N)アミノ酸残基への置換を含む。また他の実施態様において、修飾されたグリコシル化部位は、天然のグリコシル化部位のThr(T)残基のAsp(D)アミノ酸残基への置換を含む。
【0436】
ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Ala-Serを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Asp-Serを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Arg-Serを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。他の実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Asn-Serを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Cys-Serを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Glu-Serを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。他の実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Gln-Serを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Gly-Serを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-His-Serを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。他の実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Ile-Serを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Lys-Serを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Leu-Serを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。他の実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Met-Serを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。他の実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Phe-Serを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Pro-Serを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Ser-Serを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Thr-Serを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。他の実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Trp-Serを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Tyr-Serを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Val-Serを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。
【0437】
ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Ala-Thrを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Asp-Thrを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Arg-Thrを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。他の実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Asn-Thrを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Cys-Thrを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Glu-Thrを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。他の実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Gln-Thrを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Gly-Thrを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-His-Thrを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。他の実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Ile-Thrを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Lys-Thrを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Leu-Thrを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。他の実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Met-Thrを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。他の実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Phe-Thrを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Pro-Thrを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Ser-Thrを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Thr-Thrを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。他の実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Trp-Thrを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Tyr-Thrを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Val-Thrを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。
【0438】
ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Ala-Cysを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Asp-Cysを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Arg-Cysを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。他の実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Asn-Cysを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Cys-Cysを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Glu-Cysを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。他の実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Gln-Cysを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Gly-Cysを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-His-Cysを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。他の実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Ile-Cysを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Lys-Cysを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Leu-Cysを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。他の実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Met-Cysを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。他の実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Phe-Cysを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Pro-Cysを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Ser-Cysを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Thr-Cysを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。他の実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Trp-Cysを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Tyr-Cysを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、修飾は、アミノ酸配列Asn-Val-Cysを含む天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含む。
【0439】
HAステムドメイン中の保存された天然のグリコシル化部位としては、図20に示されているものが挙げられる。グループ1血球凝集素(H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、及びH16)中の例示的な天然のN-グリコシル化部位は、限定されないが、アミノ酸位置20-22(H9中で欠落)、21-23、33-35(H8、H9、H12、H13、H16中で欠落)、46-48(H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12中で欠落)、289-291(H6、H11、H13、H16中で欠落)、290-292(H1、H2、H5、H8、H9、H12中で欠落)、296-298(H1、H2、H5、H11、H13、H16中で欠落)、及び481-483に見出すことができ、ここで、該アミノ酸位置はH3付番によるものである。ある実施態様において、血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置20-22に修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置21-23に修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置33-35に修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置46-48に修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置289-291に修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置290-292に修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置296-298に修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置481-483に修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。
【0440】
ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置20-22、21-23、33-35、46-48、289-291、290-292、296-298、及び481-483からなる群から選択されるアミノ酸位置に2つの修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、各々の修飾されたグリコシル化部位は、修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。他の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置20-22、21-23、33-35、46-48、289-291、290-292、296-298、及び481-483からなる群から選択されるアミノ酸位置に3つの修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、各々の修飾されたグリコシル化部位は、修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置20-22、21-23、33-35、46-48、289-291、290-292、296-298、及び481-483からなる群から選択されるアミノ酸位置に4つの修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、各々の修飾されたグリコシル化部位は、修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。いくつかの実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置20-22、21-23、33-35、46-48、289-291、290-292、296-298、及び481-483からなる群から選択されるアミノ酸位置に5つの修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、各々の修飾されたグリコシル化部位は、修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置20-22、21-23、33-35、46-48、289-291、290-292、296-298、及び481-483からなる群から選択されるアミノ酸位置に6つの修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、各々の修飾されたグリコシル化部位は、修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。他の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置20-22、21-23、33-35、46-48、289-291、290-292、296-298、及び481-483からなる群から選択されるアミノ酸位置に7つの修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、各々の修飾されたグリコシル化部位は、修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。また他の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置20-22、21-23、33-35、46-48、289-291、290-292、296-298、及び481-483に修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、各々の修飾されたグリコシル化部位は、修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。
【0441】
グループ2血球凝集素(H3、H4、H7、H10、H14、H15)中の例示的な保存されたN-グリコシル化部位は、限定されないが、アミノ酸位置8-10、22-24、38-40(H4、H14中で欠落)、46-48(H3、H4、H7、H10、H14中で欠落) 285-287(H4、H7、H10、H14、H15中で欠落)、296-298(H3、H7、H15中で欠落)、410-412(H3、H4、H14中で欠落)、及び481-483に見出すことができ、こで、該アミノ酸位置は、H3付番によるものである。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置8-10に修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置22-24に修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置38-40に修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置46-48に修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置285-287に修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置296-298に修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置410-412に修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置481-483に修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。
【0442】
ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置8-10、22-24、38-40、46-48、285-287、296-298、410-412、及び481-483からなる群から選択されるアミノ酸位置に2つの修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位の各々は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置8-10、22-24、38-40、46-48、285-287、296-298、410-412、及び481-483からなる群から選択されるアミノ酸位置に3つの修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位の各々は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置8-10、22-24、38-40、46-48、285-287、296-298、410-412、及び481-483からなる群から選択されるアミノ酸位置に4つの修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位の各々は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置8-10、22-24、38-40、46-48、285-287、296-298、410-412、及び481-483からなる群から選択されるアミノ酸位置に5つの修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位の各々は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置8-10、22-24、38-40、46-48、285-287、296-298、410-412、及び481-483からなる群から選択されるアミノ酸位置に6つの修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位の各々は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置8-10、22-24、38-40、46-48、285-287、296-298、410-412、及び481-483からなる群から選択されるアミノ酸位置に7つの修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位の各々は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸位置8-10、22-24、38-40、46-48、285-287、296-298、410-412、及び481-483における修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位の各々は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。
【0443】
ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸残基20-23、33-35、289-291、及び483-485に1つ、2つ、又は3つの修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。他の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、アミノ酸残基33-35及び289-291に2つの修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。
【0444】
少なくとも1つの修飾されたグリコシル化部位を含むHAステムドメインを含むflu血球凝集素ポリペプチドは、限定されないが、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド、非キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド(すなわち、同じ亜型又は株由来のHAステムドメイン及びHAヘッドドメインを含むインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)、及びインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドを含む、本明細書に記載のHAステムドメインを含む任意のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドであることができる。
【0445】
ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドである。具体的な実施態様において、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ポリペプチドは、HAステムドメイン及びHA球状ヘッドドメインを含み、ここで、該HA球状ヘッドドメインは、該HAステムドメインと異種であり、及びここで、該HAステムドメインは、少なくとも1つの修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位に結合するグリカンの能力を破壊する天然のグリコシル化部位の修飾を含む。具体的な実施態様において、該修飾は、アミノ酸配列Asn-Xaa-Ser/Thr/Cysを有する天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含み、ここで、Xaaは任意のアミノ酸であり、又はある実施態様において、XaaはPro以外の任意のアミノ酸である。
【0446】
ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、非キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドである。具体的な実施態様において、非キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、HAステムドメイン及びHA球状ヘッドドメインを含み、ここで、該HA球状ヘッドドメインは、該HAステムドメインと相同であり(すなわち、該球状ヘッドドメイン及びステムドメインは、同じインフルエンザウイルス株又は亜型由来のものであり)、及びここで、該HAステムドメインは、少なくとも1つの修飾されたグリコシル化部位を含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位に結合するグリカンの能力を破壊する天然のグリコシル化部位の修飾を含む。具体的な実施態様において、該修飾は、アミノ酸配列Asn-Xaa-Ser/Thr/Cysを有する天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含み、ここで、Xaaは任意のアミノ酸であり、又はある実施態様において、XaaはPro以外の任意のアミノ酸である。ある実施態様において、非キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、同じインフルエンザウイルス亜型由来のHAステムドメイン及びHA球状ヘッドドメインを含む。具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス亜型は、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、又はH17亜型である。具体的な実施態様において、非キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、同じインフルエンザウイルス株由来のHAステムドメイン及びHA球状ヘッドドメインを含む。ある実施態様において、インフルエンザウイルス株は、A/ネーデルラント/602/2009である。
【0447】
ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドである。例示的なインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、上記の第5.2節に開示されている。
【0448】
具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドは:(a)HA1のN末端ステムセグメントが1〜50の異種残基のリンカーに共有結合し、それがさらにHA1のC末端の短いステムセグメントに共有結合したものを含むインフルエンザ血球凝集素HA1ドメインを含み;該HA1ドメインは(b)インフルエンザ血球凝集素HA2ドメインと三次結合又は四次結合しており、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、少なくとも1つの修飾されたグリコシル化部位をさらに含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位に結合するグリカンの能力を破壊する天然のグリコシル化部位の修飾を含む。具体的な実施態様において、該修飾は、アミノ酸配列Asn-Xaa-Ser/Thr/Cysを有する天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含み、ここで、Xaaは任意のアミノ酸であり、又はある実施態様において、XaaはPro以外の任意のアミノ酸である。別の実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドは:(a)HA1のN末端の長いステムセグメントが1〜50の異種残基のリンカーに共有結合し、それがさらにHA1のC末端の長いステムセグメントに共有結合したものを含むインフルエンザ血球凝集素HA1ドメインを含み;該HA1ドメインは(b)インフルエンザ血球凝集素HA2ドメインと三次結合又は四次結合しており、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、少なくとも1つの修飾されたグリコシル化部位をさらに含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位に結合するグリカンの能力を破壊する天然のグリコシル化部位の修飾を含む。別の実施態様において、該修飾は、アミノ酸配列Asn-Xaa-Ser/Thr/Cysを有する天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含み、ここで、Xaaは任意のアミノ酸であり、又はある実施態様において、XaaはPro以外の任意のアミノ酸である。別の実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドは:(a)HA1のN末端ステムセグメントが1〜50の異種残基のリンカーに共有結合し、それがさらにHA1のC末端ステムセグメントに共有結合したものを含むインフルエンザ血球凝集素HA1ドメインを含み;該HA1ドメインは(b)インフルエンザ血球凝集素HA2ドメインと三次結合又は四次結合しており、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、少なくとも1つの修飾されたグリコシル化部位をさらに含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位に結合するグリカンの能力を破壊する天然のグリコシル化部位の修飾を含む。具体的な実施態様において、該修飾は、アミノ酸配列Asn-Xaa-Ser/Thr/Cysを有する天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含み、ここで、Xaaは任意のアミノ酸であり、又はある実施態様において、XaaはPro以外の任意のアミノ酸である。別の実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドは:(a)以下の順序で連結された:HA1のN末端ステムセグメント、1〜50の異種残基の第1のリンカー、HA1の中間ステムセグメント、1〜50の異種残基の第2のリンカー、及びHA1のC末端ステムセグメントを含むインフルエンザ血球凝集素HA1ドメインを含み;該HA1ドメインは(b)インフルエンザ血球凝集素HA2ドメインと三次結合又は四次結合しており、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、少なくとも1つの修飾されたグリコシル化部位をさらに含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位に結合するグリカンの能力を破壊する天然のグリコシル化部位の修飾を含む。具体的な実施態様において、該修飾は、アミノ酸配列Asn-Xaa-Ser/Thr/Cysを有する天然のグリコシル化部位に1以上のアミノ酸置換を含み、ここで、Xaaは任意のアミノ酸であり、又はある実施態様において、XaaはPro以外の任意のアミノ酸である。
【0449】
(5.4.2 球状ヘッドドメイン中の非天然のグリコシル化部位)
別の実施態様において、本明細書に提供されるflu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、少なくとも1つの非天然のグリコシル化部位を含むHA球状ヘッドドメインを含む。任意の特定の動作理論に束縛されるものではないが、これらの免疫優性領域における1以上の非天然のグリコシル化部位の付加による該HA球状ヘッドドメインの免疫優性抗原性領域のマスキングは、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのステムドメイン中の保存された亜免疫優性抗原性領域に対する免疫原性を増大させることもできると考えられる。
【0450】
非天然のグリコシル化部位は、例えば、下記の実施例5に記載の部位特異的突然変異生成技術を含む、当業者に知られている任意の公知の技術を用いて、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドのHA球状ヘッドドメインに付加することができる。好ましい/具体的な実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドの適切なフォールディングを妨害せず、及び/又は対象の免疫応答(例えば、抗体応答)を誘発するflu血球凝集素(HA)ポリペプチドのステムドメインの能力を妨害しない。
【0451】
ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位を、A型インフルエンザ血球凝集素のヘッドドメインに基づくHA球状ヘッドドメインに付加することができる。ある実施態様において、HA球状ヘッドドメインは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、及びH17からなる群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素のヘッドドメインに基づく。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位を、B型インフルエンザ血球凝集素のヘッドドメインに基づくHA球状ヘッドドメインに付加することができる。いくつかの実施態様において、HA球状ヘッドドメインは、B/アザラシ/ネーデルラント/1/99のヘッドドメインに基づく。
【0452】
ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、アミノ酸配列Asn-Xaa-Ser/Thr/Cysを含み、ここで、Xaaは任意のアミノ酸であり、又はある実施態様において、XaaはPro以外の任意のアミノ酸である。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、アミノ酸配列Asn-Ala-Serを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Asp-Serを含む。いくつかの実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Arg-Serを含む。他の実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Asn-Serを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Cys-Serを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Glu-Serを含む。他の実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Gln-Serを含む。いくつかの実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Gly-Serを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-His-Serを含む。他の実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Ile-Serを含む。いくつかの実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Lys-Serを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Leu-Serを含む。他の実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Met-Serを含む。他の実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Phe-Serを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Pro-Serを含む。いくつかの実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Ser-Serを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Thr-Serを含む。他の実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Trp-Serを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Tyr-Serを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Val-Serを含む。
【0453】
ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、アミノ酸配列Asn-Ala-Thrを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Asp-Thrを含む。いくつかの実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Arg-Thrを含む。他の実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Asn-Thrを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Cys-Thrを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Glu-Thrを含む。他の実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Gln-Thrを含む。いくつかの実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Gly-Thrを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-His-Thrを含む。他の実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Ile-Thrを含む。いくつかの実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Lys-Thrを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Leu-Thrを含む。他の実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Met-Thrを含む。他の実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Phe-Thrを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Pro-Thrを含む。いくつかの実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Ser-Thrを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Thr-Thrを含む。他の実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Trp-Thrを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Tyr-Thrを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Val-Thrを含む。
【0454】
ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、アミノ酸配列Asn-Ala-Cysを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Asp-Cysを含む。いくつかの実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Arg-Cysを含む。他の実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Asn-Cysを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Cys-Cysを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Glu-Cysを含む。他の実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Gln-Cysを含む。いくつかの実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Gly-Cysを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-His-Cysを含む。他の実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Ile-Cysを含む。いくつかの実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Lys-Cysを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Leu-Cysを含む。他の実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Met-Cysを含む。他の実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Phe-Cysを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Pro-Cysを含む。いくつかの実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Ser-Cysを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Thr-Cysを含む。他の実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Trp-Cysを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Tyr-Cysを含む。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、Asn-Val-Cysを含む。
【0455】
flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20、又はそれより多くの非天然のグリコシル化部位を有するHA球状ヘッドドメインを含むことができる。いくつかの実施態様において、flu HAポリペプチドは、2〜5、4〜6、5〜10、又は10〜15の非天然のグリコシル化部位を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、1つの非天然のグリコシル化部位を有するHA球状ヘッドドメインを含む。他の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、2つの非天然のグリコシル化部位を有するHA球状ヘッドドメインを含む。具体的な実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、3つの非天然のグリコシル化部位を有するHA球状ヘッドドメインを含む。他の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、4つの非天然のグリコシル化部位を有するHA球状ヘッドドメインを含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、5つの非天然のグリコシル化部位を有するHA球状ヘッドドメインを含む。他の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、6つの非天然のグリコシル化部位を有するHA球状ヘッドドメインを含む。他の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、7つの非天然のグリコシル化部位を有するHA球状ヘッドドメインを含む。他の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、8つの非天然のグリコシル化部位を有するHA球状ヘッドドメインを含む。他の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、9つの非天然のグリコシル化部位を有するHA球状ヘッドドメインを含む。他の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、10の非天然のグリコシル化部位を有するHA球状ヘッドドメインを含む。他の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、11の非天然のグリコシル化部位を有するHA球状ヘッドドメインを含む。他の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、12の非天然のグリコシル化部位を有するHA球状ヘッドドメインを含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、13の非天然のグリコシル化部位を有するHA球状ヘッドドメインを含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、14の非天然のグリコシル化部位を有するHA球状ヘッドドメインを含む。他の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、15の非天然のグリコシル化部位を有するHA球状ヘッドドメインを含む。他の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、16の非天然のグリコシル化部位を有するHA球状ヘッドドメインを含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、17の非天然のグリコシル化部位を有するHA球状ヘッドドメインを含む。他の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、18の非天然のグリコシル化部位を有するHA球状ヘッドドメインを含む。他の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、19の非天然のグリコシル化部位を有するHA球状ヘッドドメインを含む。他の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、20又はそれより多くの非天然のグリコシル化部位を有するHA球状ヘッドドメインを含む。
【0456】
1以上の非天然のグリコシル化部位は、天然のグリコシル化部位が特定のインフルエンザウイルス亜型又は株に関して見られない球状ヘッドドメイン内の任意のアミノ酸位置に位置することができる。非天然のグリコシル化部位を球状ヘッドドメインに導入する例示的な突然変異を図21Bに示す。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、H3付番体系に従って、アミノ酸位置59-61、128-130、130-132、158-160、及び/又は163-165にある。ある実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、H3付番体系に従って、アミノ酸位置59-61、81-83、129-131、143-145、158-160、165-167、170-172、187-189、193-195、197-199、及び/又は208-210にある。いくつかの実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、H3付番に従って、アミノ酸位置59-61にある。他の実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、H3付番に従って、アミノ酸位置129-131にある。他の実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、H3付番に従って、アミノ酸位置129-131及び158-160にある。いくつかの実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、H3付番に従って、アミノ酸位置59-61、129-131及び165-167にある。いくつかの実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、H3付番に従って、アミノ酸位置59-61、129-131、158-160、及び165-167にある。いくつかの実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、H3付番に従って、アミノ酸位置81-83、129-131、158-160、165-167、170-172、187-189、及び208-210にある。他の実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、H3付番に従って、アミノ酸位置81-83、129-131、158-160、170-172、187-189、及び208-210にある。さらに他の実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、H3付番に従って、アミノ酸位置129-131、158-160、165-167、170-172、187-189、及び208-210にある。
【0457】
好ましい実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、球状ヘッドドメイン中の抗原性領域に位置し、それにより、抗原性領域が免疫応答を誘発するのを遮断する。球状ドメイン中の例示的な抗原性領域としては、H1亜型のSa、Sb、Ca、及びCb抗原性部位(図21A)、並びにH3亜型のA、B、C、D抗原性領域が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H1亜型球状ヘッドドメインのSa抗原性領域中に位置する非天然のグリコシル化部位を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H1亜型球状ヘッドドメインのSb抗原性領域中に位置する非天然のグリコシル化部位を含む。他の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H1亜型球状ヘッドドメインのCa抗原性領域中に位置する非天然のグリコシル化部位を含む。また他の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H1亜型球状ヘッドドメインのCb抗原性領域中に位置する非天然のグリコシル化部位を含む。別の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H1亜型球状ヘッドドメインのSa及びSb抗原性領域中に位置する非天然のグリコシル化部位を含む。別の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H1亜型球状ヘッドドメインのSa及びCa抗原性領域中に位置する非天然のグリコシル化部位を含む。別の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H1亜型球状ヘッドドメインのSa及びCb抗原性領域中に位置する非天然のグリコシル化部位を含む。別の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H1亜型球状ヘッドドメインのSb及びCa抗原性領域中に位置する非天然のグリコシル化部位を含む。別の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H1亜型球状ヘッドドメインのSb及びCb抗原性領域中に位置する非天然のグリコシル化部位を含む。別の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H1亜型球状ヘッドドメインのCa及びCb抗原性領域中に位置する非天然のグリコシル化部位を含む。別の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H1亜型球状ヘッドドメインのSa、Sb、及びCa抗原性領域中に位置する非天然のグリコシル化部位を含む。別の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H1亜型球状ヘッドドメインのSb、Ca、及びCb抗原性領域中に位置する非天然のグリコシル化部位を含む。別の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H1亜型球状ヘッドドメインのSa、Sb、Ca、及びCb抗原性領域中に位置する非天然のグリコシル化部位を含む。
【0458】
いくつかの実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、H3亜型球状ヘッドドメインのA抗原性領域中にある。いくつかの実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、H3亜型球状ヘッドドメインのB抗原性領域中にある。いくつかの実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、H3亜型球状ヘッドドメインのC抗原性領域中にある。いくつかの実施態様において、非天然のグリコシル化部位は、H3亜型球状ヘッドドメインのD抗原性領域中にある。別の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3亜型球状ヘッドドメインのA及びB抗原性領域中に位置する非天然のグリコシル化部位を含む。別の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3亜型球状ヘッドドメインのA及びC抗原性領域中に位置する非天然のグリコシル化部位を含む。別の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3亜型球状ヘッドドメインのA及びD抗原性領域中に位置する非天然のグリコシル化部位を含む。別の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3亜型球状ヘッドドメインのB及びC抗原性領域中に位置する非天然のグリコシル化部位を含む。別の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3亜型球状ヘッドドメインのB及びD抗原性領域中に位置する非天然のグリコシル化部位を含む。別の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3亜型球状ヘッドドメインのC及びD抗原性領域中に位置する非天然のグリコシル化部位を含む。別の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3亜型球状ヘッドドメインのA、B、及びC抗原性領域中に位置する非天然のグリコシル化部位を含む。別の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3亜型球状ヘッドドメインのB、C、及びD抗原性領域中に位置する非天然のグリコシル化部位を含む。別の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3亜型球状ヘッドドメインのA、B、C、及びD抗原性領域中に位置する非天然のグリコシル化部位を含む。
【0459】
他の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、又はH17球状ヘッドドメインの1以上の抗原性領域に1以上の非天然のグリコシル化部位を含む。
【0460】
ある実施態様において、1以上の非天然のグリコシル化部位を有するHA球状ヘッドドメインを含むflu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドである。ある実施態様において、1以上の非天然のグリコシル化部位を有するHA球状ヘッドドメインを含むflu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、非キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドである。
【0461】
(5.4.3 球状ヘッドドメイン中の非天然のグリコシル化部位及びステムドメイン中の修飾されたグリコシル化部位)
別の実施態様において、本明細書に提供されるflu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、1つ、2つ、又はそれより多くの修飾されたグリコシル化部位を有するHAステムドメイン、及び1つ、2つ、又はそれより多くの非天然のグリコシル化部位を有するHA球状ヘッドを含み、ここで、該修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位に結合するグリカンの能力を破壊する天然のグリコシル化部位の修飾を含む。修飾されたグリコシル化部位及び非天然のグリコシル化部位は、当技術分野で公知であり及び/又は本明細書に記載されている技術を用いて生じさせることができる。具体的な実施態様において、修飾されたグリコシル化部位(複数可)及び非天然のグリコシル化部位(複数可)は、flu HAポリペプチドの適切なフォールディングを妨害せず、及び/又は対象の免疫応答(例えば、抗体応答)を誘発するflu HAポリペプチドのステムドメインの能力を妨害しない。修飾されたグリコシル化部位及び非天然のグリコシル化部位の説明については、上記の第5.4.1節及び第5.4.2節を参照されたい。上記の第5.4.1節及び第5.4.2節に記載の修飾されたグリコシル化部位と非天然のグリコシル化部位は両方とも、flu HAポリペプチドに組み込むことができる。
【0462】
ある実施態様において、本明細書に提供されるflu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、H3付番に従って、位置33-35及び289-291に修飾されたグリコシル化部位を有するHAステムドメイン;及びH3付番に従って、以下の位置:129-131、158-160、165-167、170-172、187-189、及び208-210のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つに非天然のグリコシル化部位を含むHA球状ヘッドドメインを含む。
【0463】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、球状ヘッドドメイン中の1以上の非天然のグリコシル化部位及びステムドメイン中の1以上の修飾されたグリコシル化部位を含むキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該ステムドメイン中の修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含む。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、球状ヘッドドメイン中の1以上の非天然のグリコシル化部位及びステムドメイン中の1以上の修飾されたグリコシル化部位を含むキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該ステムドメイン中の修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含み、及びここで、(i)該非天然のグリコシル化部位は、H3付番に従って、アミノ酸位置81-83、129-131、158-160、165-167、170-172、187-189、及び208-210のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又はそれより多くにあり、並びに(ii)該修飾されたグリコシル化部位は、H3付番に従って、アミノ酸位置20-23、33-35、271-273、289-291、及び/又は483-485のうちの1つ、2つ、3つ、又はそれより多くにある。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、球状ヘッドドメイン中の1以上の非天然のグリコシル化部位を含み、かつステムドメイン中の1以上の修飾されたグリコシル化部位を含むキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該ステムドメイン中の修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含み、及びここで、(i)該非天然のグリコシル化部位は、H3付番に従って、アミノ酸位置81-83、129-131、158-160、170-172、187-189、及び208-210にあり、及び(ii)該修飾されたグリコシル化部位は、H3付番に従って、アミノ酸位置33-35及び289-291にある。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、ステムドメイン中の1以上の修飾されたグリコシル化部位を含む球状ヘッドドメイン中の1以上の非天然のグリコシル化部位を含むキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含み、ここで、該ステムドメイン中の修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含み、及びここで、(i)該非天然のグリコシル化部位は、H3付番に従って、アミノ酸位置81-83、129-131、158-160、165-167、170-172、187-189、及び208-210にあり、及び(ii)該修飾されたグリコシル化部位は、H3付番に従って、アミノ酸位置33-35及び289-291にある。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、ステムドメイン中の1以上の修飾されたグリコシル化部位を含む球状ヘッドドメイン中の1以上の非天然のグリコシル化部位を含むキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含み、ここで、該ステムドメイン中の修飾されたグリコシル化部位は、該修飾されたグリコシル化部位でのグリコシル化を破壊する修飾を含み、及びここで、(i)該非天然のグリコシル化部位は、H3付番に従って、アミノ酸位置129-131、158-160、165-167、170-172、187-189、及び208-210にあり、及び(ii)該修飾されたグリコシル化部位は、H3付番に従って、アミノ酸位置33-35及び289-291にある。修飾されたグリコシル化部位を含む例示的なキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、第6.11節(実施例11)に記載されている。
【0464】
(5.5 flu血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする核酸)
本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)をコードする核酸である。遺伝暗号の縮重のために、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする任意の核酸が本明細書に包含される。ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメント、HA1のC末端ステムセグメント、HA2ドメイン、内腔ドメイン、膜貫通ドメイン、及び/又は細胞質ドメインをコードする天然のインフルエンザウイルス核酸に対応する核酸を用いて、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)を産生する。
【0465】
同じく本明細書に提供されるのは、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)をコードする核酸にハイブリダイスすることができる核酸である。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)をコードする核酸の断片にハイブリダイスすることができる核酸である。他の実施態様において、本明細書に提供されるのは、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)をコードする核酸の全長にハイブリダイスすることができる核酸である。核酸のハイブリダイゼーション条件の一般的なパラメータは、Sambrookらの文献、分子クローニング-実験マニュアル(Molecular Cloning - A Laboratory Manual)(第2版, 1〜3巻, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York(1989))、及びAusubelらの文献、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)(2巻, Current Protocols Publishing, New York(1994))に記載されている。ハイブリダイゼーションは、高いストリンジェンシー条件、中間のストリンジェンシー条件、又は低いストリンジェンシー条件の下で実施することができる。当業者は、低いストリンジェンシー条件、中間のストリンジェンシー条件、及び高いストリンジェンシー条件は、その全てが相互作用する複数の因子に左右され、また、当該核酸によっても決まることを理解するであろう。例えば、高いストリンジェンシー条件は、核酸(複数可)の融点の5℃以内の温度、低い塩濃度(例えば、250mM未満)、及び高い共溶媒濃度(例えば、1〜20%の共溶媒、例えば、DMSO)を含むことができる。他方、低いストリンジェンシー条件は、核酸(複数可)の融点より10℃を超えて低い温度、高い塩濃度(例えば、1000mM超)、及び共溶媒の欠如を含むことができる。
【0466】
いくつかの実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)をコードする核酸が単離される。ある実施態様において、「単離された」核酸は、核酸の天然供給源に存在する他の核酸分子から分離されている核酸分子を指す。つまり、単離された核酸は、天然ではそれに関連していない異種核酸を含むことができる。他の実施態様において、「単離された」核酸、例えば、cDNA分子は、組換え技術によって産生されたとき、他の細胞物質もしくは培養培地を実質的に含まないものであるか、又は化学合成されたとき、化学物質前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まないものであることができる。「細胞物質を実質的に含まない」という用語には、それが単離されるか又は組換えで産生される細胞の細胞成分から核酸が分離されている核酸調製物が含まれる。したがって、細胞物質を実質的に含まない核酸には、(乾燥重量で)約30%、20%、10%、又は5%未満の他の核酸を有する核酸調製物が含まれる。「培養培地を実質的に含まない」という用語には、培養培地が調製物の容量の約50%、20%、10%、又は5%未満である核酸調製物が含まれる。「化学物質前駆体又は他の化学物質を実質的に含まない」という用語には、核酸の合成に関与する化学物質前駆体又は他の化学物質から核酸が分離されている調製物が含まれる。具体的な実施態様において、そのような核酸調製物は、(乾燥重量で)約50%、30%、20%、10%、5%未満の化学物質前駆体又は関心対象の核酸以外の化合物を有する。
【0467】
さらに、本明細書に提供されるのは、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドの個々の成分をコードする核酸である。具体的な実施態様において、HA1のN末端ステムセグメント、HA1のC末端ステムセグメント、及び/又はHA2ドメインをコードする核酸が提供される。インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドの成分をコードする核酸は、当業者に公知の標準的な分子生物学の技術を用いてアセンブルすることができる。
【0468】
(5.6 flu血球凝集素(HA)ポリペプチドの発現)
本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)をコードする核酸を含む、発現ベクターを含む、ベクターである。具体的な実施態様において、該ベクターは、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)をコードする核酸の発現を導くことができる発現ベクターである。発現ベクターの非限定的な例としては、プラスミド及びウイルスベクター、例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、及びバキュロウイルスが挙げられるが、これら限定されない。発現ベクターとしては、限定されないが、トランスジェニック動物及び非哺乳動物細胞/生物体、例えば、哺乳動物のN結合型グリコシル化を行なうように改変されている哺乳動物細胞/生物体を挙げることもできる。
【0469】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、ステムドメイン及びヘッドドメイン、又はどちらかのドメインの部分)の成分をコードする発現ベクターである。そのようなベクターを用いて、1以上の宿主細胞で該成分を発現させることができ、該成分を、当業者に公知の技術を用いて、単離し、リンカーとコンジュゲートさせることができる。
【0470】
発現ベクターは、宿主細胞内での核酸の発現に好適な形態の本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする核酸を含む。具体的な実施態様において、発現ベクターは、発現に使用される宿主細胞に基づいて選択される、発現させる核酸に機能的に連結された1以上の調節配列を含む。発現ベクターにおいて、「機能的に連結された」とは、関心対象の核酸が、(例えば、インビトロ転写/翻訳系での、又はベクターが宿主細胞に導入される場合は宿主細胞での)核酸の発現を可能にする様式で調節配列(複数可)に連結されていることを意味するものとする。調節配列には、プロモーター、エンハンサー、及び他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)が含まれる。調節配列には、多くのタイプの宿主細胞で核酸の構成的発現を導くもの、特定の宿主細胞でのみ核酸の発現を導くもの(例えば、組織特異的調節配列)、及び特定の薬剤による刺激によって核酸の発現を導くもの(例えば、誘導可能な調節配列)が含まれる。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、タンパク質の所望の発現レベルのような因子によって決まり得ることが当業者には理解されるであろう。「宿主細胞」という用語は、核酸で形質転換又はトランスフェクトされる特定の対象細胞、及びそのような細胞の子孫又は可能性のある子孫を含むものとする。そのような細胞の子孫は、後続の世代で起こり得る突然変異もしくは環境の影響又は宿主細胞ゲノムへの核酸の組込みのために、核酸で形質転換又はトランスフェクトされる親細胞と同一でなくてもよい。
【0471】
発現ベクターは、原核生物細胞(例えば、大腸菌(E. coli))又は真核生物細胞(例えば、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを使用、例えば、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている、Treanorらの文献(2007, JAMA, 297(14):1577-1582)参照)、酵母細胞、植物細胞、藻類、もしくは哺乳動物細胞)を用いて、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドの発現のために設計することができる。酵母宿主細胞の例としては、分裂酵母(S. pombe)及び出芽酵母(S. cerevisiae)並びに下記の実施例が挙げられるが、これらに限定されない。哺乳動物宿主細胞の例としては、Crucell Per.C6細胞、Vero細胞、CHO細胞、VERY細胞、BHK細胞、HeLa細胞、COS細胞、MDCK細胞、293細胞、3T3細胞、又はWI38細胞が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施態様において、宿主細胞は、骨髄腫細胞、例えば、NS0細胞、45.6 TG1.7細胞、AF-2クローン9B5細胞、AF-2クローン9B5細胞、J558L細胞、MOPC 315細胞、MPC-11細胞、NCI-H929細胞、NP細胞、NS0/1細胞、P3 NS1 Ag4細胞、P3/NS1/1-Ag4-1細胞、P3U1細胞、P3X63Ag8細胞、P3X63Ag8.653細胞、P3X63Ag8U.1細胞、RPMI 8226細胞、Sp20-Ag14細胞、U266B1細胞、X63AG8.653細胞、Y3.Ag.1.2.3細胞、及びYO細胞である。昆虫細胞の非限定的な例としては、Sf9、Sf21、キンウワバ(Trichoplusia ni)、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)、及びカイコガ(Bombyx mori)が挙げられる。特定の実施態様において、哺乳動物細胞培養系(例えば、チャイニーズハムスター卵巣又はベビーハムスター腎臓細胞)が、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドの発現に使用される。別の実施態様において、植物細胞培養系が、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドの発現に使用される。植物細胞培養系を利用するタンパク質の産生のための植物細胞及び方法については、例えば、米国特許第7,504,560号;第6,770,799号;第6,551,820号;第6,136,320号;第6,034,298号;第5,914,935号;第5,612,487号;及び第5,484,719号、並びに米国特許出願公開第2009/0208477号、第2009/0082548号、第2009/0053762号、第2008/0038232号、第2007/0275014号、及び第2006/0204487号を参照されたい。具体的な実施態様において、植物細胞培養系は、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドの発現に使用されない。本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)をコードする核酸を含む宿主細胞を単離することができ、すなわち、細胞は、対象の体外にある。ある実施態様において、該細胞は、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)をコードする核酸を発現するように改変される。
【0472】
発現ベクターは、従来の形質転換又はトランスフェクション技術によって宿主細胞に導入することができる。そのような技術としては、リン酸カルシウム又は塩化カルシウム共沈、DEAE-デキストランによるトランスフェクション、リポフェクション、及びエレクトロポレーションが挙げられるが、これらに限定されない。宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトするための好適な方法は、Sambrookらの文献(1989, 分子クローニング-実験マニュアル(Molecular Cloning - A Laboratory Manual), 第2版, Cold Spring Harbor Press, New York)、及び他の実験マニュアルに見出すことができる。ある実施態様において、宿主細胞は、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターで一過性にトランスフェクトされる。他の実施態様において、宿主細胞は、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターで安定にトランスフェクトされる。
【0473】
哺乳動物細胞の安定なトランスフェクションについて、使用される発現ベクター及びトランスフェクション技術によっては、細胞のごく一部だけが外来性DNAをそのゲノムに組み込むことができることが知られている。これらの組込み体を同定及び選択するために、(例えば、抗生物質耐性のための)選択マーカーをコードする核酸が、通常、関心対象の核酸と一緒に宿主細胞に導入される。選択マーカーの例としては、薬剤、例えば、G418、ハイグロマイシン、及びメトトレキセートに対する耐性を付与するものが挙げられる。導入された核酸で安定にトランスフェクトされた細胞は、薬剤選択によって同定することができる(例えば、選択マーカー遺伝子を組み込んだ細胞は生存するが、他の細胞は死滅する)。
【0474】
宿主細胞を用いたflu血球凝集素(HA)ポリペプチドの組換え発現の代替法として、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターを、例えば、T7プロモーター調節配列及びT7ポリメラーゼを用いて、インビトロで転写及び翻訳することができる。具体的な実施態様において、共役転写/翻訳系、例えば、Promega TNT(登録商標)、又は転写及び翻訳に必要な成分を含む細胞溶解物もしくは細胞抽出物を用いて、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを産生することができる。
【0475】
flu血球凝集素(HA)ポリペプチドが産生されると、それは、タンパク質の単離又は精製のための当技術分野で公知の任意の方法、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、特に、特定の抗原に対する親和性、プロテインAによるもの、及びサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差溶解性、又はタンパク質の単離もしくは精製のための任意の他の標準的な技術によって単離又は精製することができる。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、熱ショックタンパク質(例えば、Hsp10、Hsp20、Hsp30、Hsp40、Hsp60、Hsp70、Hsp90、又はHsp100)とともに又はそれなしで、異種タンパク質、例えば、主要組織適合性複合体(MHC)とコンジュゲートさせることができる。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、免疫調節分子、例えば、免疫細胞、例えば、B細胞(例えば、C3d)又はT細胞にflu血球凝集素(HA)ポリペプチドをターゲッティングするタンパク質とコンジュゲートさせることができる。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、自然免疫系を刺激するタンパク質、例えば、インターフェロン1型、アルファ、ベータ、もしくはガンマインターフェロン、コロニー刺激因子、例えば、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン(IL)-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、IL-23、腫瘍壊死因子(TNF)-β、TNFα、B7.1、B7.2、4-1BB、CD40リガンド(CD40L)、及び薬剤誘導性CD40(iCD40)とコンジュゲートさせることができる。
【0476】
したがって、本明細書に提供されるのは、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ポリペプチド)を産生する方法である。一実施態様において、本方法は、ポリペプチドが産生されるように、ポリペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞を好適な培地中で培養することを含む。いくつかの実施態様において、本方法は、ポリペプチドを培地又は宿主細胞から単離することをさらに含む。
【0477】
(5.7 インフルエンザウイルスベクター)
一態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ポリペプチド)を含むインフルエンザウイルスである。具体的な実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドをインフルエンザウイルスのビリオンに組み込む。インフルエンザウイルスを、免疫細胞などの特定の細胞型にウイルスをターゲッティングする部分にコンジュゲートさせもよい。いくつかの実施態様において、インフルエンザウイルスのビリオンは、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドに加えて、異種ポリペプチドをそれらに組み込んでいるか、又はそれを発現する。異種ポリペプチドは、免疫増強活性を有するか、又は特定の細胞型にインフルエンザウイルスをターゲッティングするポリペプチド、例えば、特定の細胞型の表面の抗原に結合する抗体、又は特定の細胞型の表面の特異的受容体に結合するリガンドであってもよい。
【0478】
flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むインフルエンザウイルスは、当業者に公知の技術、例えば、リバースジェネティクス及びヘルパーフリープラスミドレスキューを用いて、ビリオンの産生の間にトランスでflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを供給することによって産生することができる。或いは、血球凝集素機能がトランスで提供されているウイルスに感染しやすい細胞でflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するように改変されたゲノムを含む親インフルエンザウイルスの複製は、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む子孫インフルエンザウイルスを産生する。
【0479】
別の態様において、本明細書に提供されるのは、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するように改変されたゲノムを含むインフルエンザウイルスである。具体的な実施態様において、親インフルエンザウイルスのゲノムは、子孫インフルエンザウイルスによって発現されるflu血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードするように改変される。別の具体的な実施態様において、親インフルエンザウイルスのゲノムは、発現されて、子孫インフルエンザウイルスのビリオンに組み込まれるflu血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードするように改変される。したがって、親インフルエンザウイルスの複製によって生じる子孫インフルエンザウイルスは、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む。親インフルエンザウイルスのビリオンは、同じ又は異なる型、亜型、又は株のインフルエンザウイルスに由来するステム又はヘッドドメインを含むflu血球凝集素(HA)ポリペプチドをそれらに組み込んでいてもよい。或いは、親インフルエンザウイルスのビリオンは、機能的に、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの活性(例えば、インフルエンザウイルス血球凝集素の受容体結合及び/又は融合活性)のうちの1つ又は複数を置換することができる部分をそれらに組み込んでいてもよい。ある実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの活性のうちの1つ又は複数は、(i)インフルエンザウイルスと異種のポリペプチドの細胞外ドメインが(ii)インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの膜貫通ドメイン、又は膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインに融合したものを含む融合タンパク質によって提供される。具体的な実施態様において、親インフルエンザウイルスのビリオンは、(i)インフルエンザウイルス以外の感染性病原体の受容体結合性/融合原性ポリペプチドの細胞外ドメインが(ii)インフルエンザウイルス血球凝集素の膜貫通ドメイン、又は膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインに融合したものを含む融合タンパク質をそれらに組み込んでいてもよい。インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの1以上の活性を提供する融合タンパク質、及びそのような融合タンパク質を発現するように改変されたインフルエンザウイルスの産生方法の説明については、例えば、2007年6月7日に公開された国際特許出願公開WO 2007/064802号及び2006年12月1日に出願された米国特許出願第11/633,130号を参照されたく;これらは各々、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている。
【0480】
ある実施態様において、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドのうちの1つ又複数を発現するように改変されたインフルエンザウイルスは、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドの球状ヘッドが由来する源と同じ源(例えば、インフルエンザウイルス株又は亜型)に由来するものである、ノイラミニダーゼ(NA)、又はその断片を含む。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのうちの1つ又複数を発現するように改変されたインフルエンザウイルスは、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドが由来する源と同じ源(例えば、インフルエンザウイルス株又は亜型)に由来するものである、ノイラミニダーゼ(NA)、又はその断片を含み、ここで、該球状ヘッドは、該キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1及び/又はHA2サブユニットのステムドメインと異種である。
【0481】
いくつかの実施態様において、親インフルエンザウイルスのビリオンは、異種ポリペプチドをそれらに組み込んでいる。ある実施態様において、親インフルエンザウイルスのゲノムは、子孫インフルエンザウイルスによって発現される異種ポリペプチド及びflu血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードするように改変される。具体的な実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド、異種ポリペプチド、又は両方は、子孫インフルエンザウイルスのビリオンに組み込まれる。
【0482】
異種ポリペプチドは、特定の細胞型にインフルエンザウイルスをターゲッティングするポリペプチド、例えば、特定の細胞型の表面の抗原を認識する抗体、又は特定の細胞型の表面の特異的受容体に結合するリガンドであってもよい。いくつかの実施態様において、ターゲッティングポリペプチドは、ウイルスの標的細胞認識機能を代替する。具体的な実施態様において、異種ポリペプチドは、インフルエンザウイルスが天然で感染するのと同じ細胞型にインフルエンザウイルスをターゲッティングする。他の具体的な実施態様において、異種ポリペプチドは、免疫細胞、例えば、B細胞、T細胞、マクロファージ、又は樹状細胞に子孫インフルエンザウイルスをターゲッティングする。いくつかの実施態様において、異種ポリペプチドは、抗原提示細胞、例えば、樹状細胞の細胞特異的マーカー(例えば、CD44など)を認識して、それに結合する。一実施態様において、異種ポリペプチドは、樹状細胞にウイルスをターゲッティングするDC-SIGNである。別の実施態様において、異種ポリペプチドは、免疫細胞にウイルスをターゲッティングする抗体(例えば、単鎖抗体)であり、この抗体は、それがインフルエンザウイルスビリオンに組み込まれるように、別のポリペプチド由来の膜貫通ドメインと融合されていてもよい。いくつかの実施態様において、抗体は、CD20抗体、CD34抗体、又はDEC-205に対する抗体である。ターゲッティング機能のあるポリペプチドを発現するようにウイルスを改変する技術は当技術分野で公知である。例えば、Yangらの文献(2006, PNAS103:11479-11484)及び2008年1月24日に公開された米国特許出願公開第20080019998号及び2007年1月25日に公開された第20070020238号を参照されたく、その各々の内容は、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれる。
【0483】
別の実施態様において、異種ポリペプチドは、ウイルス付着タンパク質である。その付着タンパク質(複数可)をこの態様で使用することができるウイルスの非限定的な例は、以下の群から選択されるウイルスである:ラッサ熱ウイルス、B型肝炎ウイルス、狂犬病ウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、レトロウイルス、例えば、ヒト免疫不全ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、ポリオウイルス、アルファウイルス、例えば、セムリキ森林ウイルス、ロスリバーウイルス、及びアウラウイルス(E1、E2、及びE3などの表面糖タンパク質を含む)、ボルナ病ウイルス、ハンターンウイルス、フォーミーウイルス、並びにSARS-CoVウイルス。
【0484】
一実施態様において、フラビウイルス表面糖タンパク質、例えば、デングウイルス(DV)Eタンパク質を使用することができる。いくつかの実施態様において、アルファウイルスファミリー由来のシンドビスウイルス糖タンパク質が使用される(K. S. Wang, R. J. Kuhn, E. G. Strauss, S. Ou, J. H. Straussの文献(J. Virol. 66, 4992(1992))。ある実施態様において、異種ポリペプチドは、NDV HNもしくはFタンパク質;ヒト免疫不全ウイルス(HIV)gp160(又はその産物、例えば、gp41もしくはgp120);B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg);ヘルペスウイルスの糖タンパク質(例えば、gD、gE);或いはポリオウイルスのVP1に由来する。
【0485】
別の実施態様において、異種ポリペプチドは、当技術分野で公知の任意の非ウイルスターゲッティング系に由来する。ある実施態様において、非ウイルス病原体、例えば、細胞内細菌又は細胞内原虫のタンパク質が使用される。いくつかの実施態様において、細菌ポリペプチドは、例えば、クラミジア(Chlamydia)、リケッチア(Rikettsia)、コクセリア(Coxelia)、リステリア(Listeria)、ブルセラ(Brucella)、又はレジオネラ(Legionella)によって提供される。いくつかの実施態様において、原虫のポリペプチドは、例えば、マラリア原虫(Plasmodia)種、リューシマニア属(Leishmania)種、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、又はクルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)によって提供される。他の例示的なターゲッティング系は、その全体が本明細書中に組み込まれている、Waehlerらの文献(2007、「遺伝子治療のための標的ウイルスベクターの改変(Engineering targeted viral vectors for gene therapy)」, Nature Reviews Genetics 8:573-587)に記載されている。
【0486】
ある実施態様において、インフルエンザウイルスによって発現される異種ポリペプチドは、免疫増強(免疫賦活)活性を有する。免疫増強ポリペプチドの非限定的な例としては、刺激分子、サイトカイン、ケモカイン、抗体、及び他の作用物質、例えば、Flt-3リガンドが挙げられるが、これらに限定されない。免疫増強活性のあるポリペプチドの具体的な例としては、以下が挙げられる:インターフェロン1型、アルファ、ベータ、もしくはガンマインターフェロン、コロニー刺激因子、例えば、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン(IL)-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、IL-23、腫瘍壊死因子(TNF)-β、TNFα、B7.1、B7.2、4-1BB、CD40リガンド(CD40L)及び薬剤誘導性CD40(iCD40)(例えば、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている、Hanks, B. A.らの文献(2005. Nat Med 11:130-137)を参照されたい)。
【0487】
A型及びB型インフルエンザウイルスのゲノムは8本(8)の一本鎖のマイナスセンスセグメントからなる(C型インフルエンザウイルスは7本(7)の一本鎖のマイナスセンスセグメントからなる)ので、親インフルエンザウイルスのゲノムは、組換えセグメント、並びに当業者に公知の技術、例えば、リバースジェネティクス及びヘルパーフリープラスミドレスキューを用いて、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド(及び任意の他のポリペプチド、例えば、異種ポリペプチド)を発現するように改変することができる。一実施態様において、組換えセグメントは、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド、並びにvRNAの適切な複製、転写、及びパッケージングに必要とされる3'及び5'組込みシグナルをコードする核酸を含む(Fujiiらの文献(2003, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:2002-2007);Zhengらの文献(1996, Virology 217:242-251)、これらは両方とも、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれる)。具体的な実施態様において、組換えセグメントは、親インフルエンザウイルスと異なる又は同じ型、亜型、又は株に由来するインフルエンザウイルスのセグメントの3'及び5'非コード及び/又は非翻訳配列を使用する。いくつかの実施態様において、組換えセグメントは、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの3'非コード領域、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの非翻訳領域、及びインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの5'非コード領域を含む。具体的な実施態様において、組換えセグメントは、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのHA1のN末端ステムセグメント、HA1のC末端ステムセグメント、球状ヘッドドメイン、及び/又はHA2として、インフルエンザウイルス型と同じ型、亜型、又は株であるインフルエンザウイルスのHAセグメントの3'及び5'非コード並びに/又は非翻訳配列を含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする組換えセグメントは、親インフルエンザウイルスのHAセグメントを代替することができる。いくつかの実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする組換えセグメントは、親インフルエンザウイルスのNS1遺伝子を代替することができる。いくつかの実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする組換えセグメントは、親インフルエンザウイルスのNA遺伝子を代替することができる。flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現させるために使用することができる例示的なインフルエンザウイルス株としては、アンアーバー/1/50、A/アンアーバー/6/60、A/プエルトリコ/8/34、A/サウスダコタ/6/2007、A/ウルグアイ/716/2007、A/カリフォルニア/07/2009、A/パース/16/2009、A/ブリスベン/59/2007、A/ブリスベン/10/2007、及びB/ブリスベン/60/2008が挙げられる。
【0488】
いくつかの実施態様において、flu血球凝集素遺伝子セグメントは、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする。具体的な実施態様において、flu血球凝集素(HA)遺伝子セグメント及び少なくとも1つの他のインフルエンザウイルス遺伝子セグメントは、該flu血球凝集素(HA)遺伝子セグメント及び該少なくとも1つの他の遺伝子セグメントを組換えインフルエンザウイルスの複製時に一緒に分離することを可能にするパッケージングシグナルを含む(Gao及びPaleseの文献(2009, PNAS 106:15891-15896);及び国際出願公開WO11/014645号参照)。
【0489】
いくつかの実施態様において、親インフルエンザウイルスのゲノムは、二シストロン性である組換えセグメントを用いて、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するように改変することができる。二シストロン性技術は、内部リボソーム侵入部位(IRES)配列の使用により、複数のタンパク質のコード配列の単一mRNAへの改変を可能にする。IRES配列は、RNA分子へのリボソームの内部動員を導き、キャップ非依存的に下流の翻訳を可能にする。簡潔に述べると、1つのタンパク質のコード領域が、第2のタンパク質のオープンリーディングフレーム(ORF)に挿入される。挿入は、IRES並びに適切な発現及び/又は機能に必要な任意の非翻訳シグナル配列に連なる。挿入は、第2のタンパク質のORF、ポリアデニル化、又は転写プロモーターを妨害してはならない(例えば、Garcia-Sastreらの文献(1994, J. Virol. 68:6254-6261)及びGarcia-Sastreらの文献(1994 Dev. Biol. Stand. 82:237-246)を参照されたく、その各々は、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている)。例えば、米国特許第6,887,699号、米国特許第6,001,634号、米国特許第5,854,037号、及び米国特許第5,820,871号も参照されたく、その各々は、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれる。当技術分野で公知又は本明細書に記載の任意のIRESを本発明に従って使用することができる(例えば、BiP遺伝子のIRES、GenBankデータベースエントリーHUMGRP78のヌクレオチド372〜592;又は脳心筋炎ウイルス(EMCV)のIRES、GenBankデータベースエントリーCQ867238のヌクレオチド1430-2115)。したがって、ある実施態様において、親インフルエンザウイルスは、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドと、別のポリペプチド、例えば、親インフルエンザウイルスによって発現される遺伝子とを発現する二シストロン性RNAセグメントを含むように改変される。いくつかの実施態様において、親インフルエンザウイルス遺伝子は、HA遺伝子である。いくつかの実施態様において、親インフルエンザウイルス遺伝子は、NA遺伝子である。いくつかの実施態様において、親インフルエンザウイルス遺伝子は、NS1遺伝子である。
【0490】
当業者に公知の技術を用いて、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むインフルエンザウイルス、及びflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するように改変されたゲノムを含むインフルエンザウイルスを産生することができる。例えば、リバースジェネティクス技術を用いて、そのようなインフルエンザウイルスを産生することができる。簡潔に述べると、リバースジェネティクス技術は、一般に、ウイルスポリメラーゼによる認識及び成熟ビリオンの生成に必要なパッケージングシグナルに必須である、マイナス鎖ウイルスRNAの非コード領域を含む合成組換えウイルスRNAの調製を含む。組換えRNAは、組換えDNA鋳型から合成され、精製されたウイルスポリメラーゼ複合体によってインビトロで再構成されて、細胞をトランスフェクトするために使用することができる組換えリボ核タンパク質(RNP)を形成する。インビトロ又はインビボでの合成RNAの転写の間にウイルスポリメラーゼタンパク質が存在する場合、より効率的なトランスフェクションが達成される。合成組換えRNPは、感染性ウイルス粒子中にレスキューすることができる。前述の技術は、1992年11月24日に出願された米国特許第5,166,057号;1998年12月29日に出願された米国特許第5,854,037号;1996年2月20日に公開された欧州特許公開EP 0702085A1号;米国特許出願第09/152,845号;1997年4月3日に公開された国際特許公開PCT WO 97/12032号;1996年11月7日に公開されたWO 96/34625号;欧州特許公開EP A780475号;1999年1月21日に公開されたWO 99/02657号;1998年11月26日に公開されたWO 98/53078号;1998年1月22日に公開されたWO 98/02530号;1999年4月1日に公開されたWO 99/15672号;1998年4月2日に公開されたWO 98/13501号;1997年2月20日に公開されたWO 97/06270号;及び1997年6月25日に公開されたEPO 780 475A1号に記載されており、その各々は、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれる。
【0491】
或いは、ヘルパーフリープラスミド技術を用いて、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むインフルエンザウイルス、及びflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するように改変されたゲノムを含むインフルエンザウイルスを産生することができる。簡潔に述べると、プラスミドベクターへのPCR産物の挿入を可能にする独特の制限部位を含むプライマーによるPCRを用いて、ウイルスセグメントの全長cDNAを増幅させる(Flandorferらの文献(2003, J. Virol. 77:9116-9123;Nakayaらの文献(2001, J. Virol. 75:11868-11873;これらは両方とも、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている)。プラスミドベクターは、正確なマイナスの(vRNAセンス)転写物が発現されるように設計される。例えば、正確なマイナスの(vRNAセンス)転写物がポリメラーゼIプロモーターから産生されるように、プラスミドベクターは、切断されたヒトRNAポリメラーゼIプロモーターとデルタ型肝炎ウイルスリボザイム配列の間にPCR産物を配置するように設計することができる。各ウイルスセグメントを含む別個のプラスミドベクター並びに必要なウイルスタンパク質を含む発現ベクターを細胞にトランスフェクトして、組換えウイルス粒子の産生をもたらすことができる。別の実施例では、必要なウイルスタンパク質をコードするウイルスのゲノムRNAとmRNAの両方が発現されるプラスミドベクターを使用することができる。ヘルパーフリープラスミド技術の詳細な説明については、例えば、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている、国際公開WO 01/04333号;米国特許第6,951,754号、第7,384,774号、第6,649,372号、及び第7,312,064号;Fodorらの文献(1999, J. Virol. 73:9679-9682);Quinlivanらの文献(2005, J. Virol. 79:8431-8439);Hoffmannらの文献(2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:6108-6113);並びにNeumannらの文献(1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:9345-9350)を参照されたい。
【0492】
本明細書に記載のインフルエンザウイルスは、本明細書に記載の方法に従うその使用を可能にする力価までウイルスを成長させる任意の基体中で増殖させることができる。一実施態様において、基体は、対応する野生株ウイルスについて測定される力価と同等の力価までウイルスを成長させる。ある実施態様において、基体は、インフルエンザウイルスにとって、又はHA機能が由来するウイルスにとって生物学的に適するものである。具体的な実施態様において、例えば、NS1遺伝子中の突然変異による弱毒化インフルエンザウイルスは、IFN欠損基体中で増殖させることができる。例えば、好適なIFN欠損基体は、インターフェロンを産生するか、もしくはそれに応答するその能力に欠陥がある基体であってもよく、又はIFN欠損基体をインターフェロン欠損成長環境を必要とし得る任意の数のウイルスの成長のために使用することができる基体である。例えば、2003年6月3日に出願された米国特許第6,573,079号、2005年2月8日に出願された第6,852,522号、及び2009年2月24日に出願された第7,494,808号を参照されたく、これらの文献の各々の内容全体は、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれる。具体的な実施態様において、ウイルスを発育卵(例えば、鶏卵)中で増殖させる。具体的な実施態様において、ウイルスを8日齢、9日齢、8〜10日齢、10日齢、11日齢、10〜12日齢、又は12日齢の発育卵(例えば、鶏卵)中で増殖させる。ある実施態様において、ウイルスをMDCK細胞、Vero細胞、293T細胞、又は当技術分野で公知の他の細胞株で増殖させる。ある実施態様において、ウイルスを発育卵に由来する細胞で増殖させる。
【0493】
本明細書に記載のインフルエンザウイルスは、当業者に公知の任意の方法によって単離及び精製することができる。一実施態様において、ウイルスは、一般に、周知の清澄化手順、例えば、密度勾配遠心分離及びカラムクロマトグラフィーによって細胞培養物から取り出され、細胞成分から分離され、望ましい場合、当業者に周知の手順、例えば、プラークアッセイを用いて、さらに精製することができる。
【0494】
ある実施態様において、本明細書に記載されているように使用されるインフルエンザウイルス、又はインフルエンザウイルスポリペプチド、遺伝子、もしくはゲノムセグメントは、A型インフルエンザウイルスから得られるか、又はそれに由来する。ある実施態様において、本明細書に記載されているように使用されるインフルエンザウイルス、又はインフルエンザウイルスポリペプチド、遺伝子、もしくはゲノムセグメントは、単一のA型インフルエンザウイルスの亜型もしくは株から得られるか、又はそれらに由来する。他の実施態様において、本明細書に記載されているように使用されるインフルエンザウイルス、又はインフルエンザウイルスポリペプチド、遺伝子、もしくはゲノムセグメントは、2以上のA型インフルエンザウイルスの亜型もしくは株から得られるか、又はそれらに由来する。ある実施態様において、本明細書に記載されているように使用されるインフルエンザウイルスは、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド及びノイラミニダーゼ(NA)、又はそれらの断片を含み、ここで、該NAは、該キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドが由来する源と同じ源(例えば、インフルエンザウイルス株又は亜型)由来のものである。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのうちの1つ又は複数を発現するように改変されたインフルエンザウイルスは、該キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドが由来する源と同じ源(例えば、インフルエンザウイルス株又は亜型)由来のものである、ノイラミニダーゼ(NA)、又はその断片を含み、ここで、該球状ヘッドは、該キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1及び/又はHA2サブユニットのステムドメインと異種である。
【0495】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載されているように使用されるインフルエンザウイルス、又はインフルエンザウイルスポリペプチド、遺伝子、もしくはゲノムセグメントは、B型インフルエンザウイルスから得られるか、又はそれに由来する。ある実施態様において、本明細書に記載されているように使用されるインフルエンザウイルス、又はインフルエンザウイルスポリペプチド、遺伝子、もしくはゲノムセグメントは、単一のB型インフルエンザウイルスの亜型もしくは株から得られるか、又はそれらに由来する。他の実施態様において、本明細書に記載されているように使用されるインフルエンザウイルス、又はインフルエンザウイルスポリペプチド、遺伝子、もしくはゲノムセグメントは、2以上のB型インフルエンザウイルスの亜型もしくは株から得られるか、又はそれらに由来する。他の実施態様において、本明細書に記載されているように使用されるインフルエンザウイルス、又はインフルエンザウイルスポリペプチド、遺伝子、もしくはゲノムセグメントは、A型インフルエンザウイルスの亜型又は株とB型インフルエンザウイルスの亜型又は株の組合せから得られるか、又はそれに由来する。
【0496】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載されているように使用されるインフルエンザウイルス、又はインフルエンザウイルスポリペプチド、遺伝子、もしくはゲノムセグメントは、C型インフルエンザウイルスから得られるか、又はそれに由来する。ある実施態様において、本明細書に記載されているように使用されるインフルエンザウイルス、又はインフルエンザウイルスポリペプチド、遺伝子、もしくはゲノムセグメントは、単一のC型インフルエンザウイルスの亜型もしくは株から得られるか、又はそれらに由来する。他の実施態様において、本明細書に記載されているように使用されるインフルエンザウイルス、又はインフルエンザウイルスポリペプチド、遺伝子、もしくはゲノムセグメントは、2以上のC型インフルエンザウイルスの亜型もしくは株から得られるか、又はそれらに由来する。他の実施態様において、本明細書に記載されているように使用されるインフルエンザウイルス、又はインフルエンザウイルスポリペプチド、遺伝子、もしくはゲノムセグメントは、C型インフルエンザウイルスの亜型又は株とA型インフルエンザウイルスの亜型もしくは株及び/又はB型インフルエンザウイルスの亜型もしくは株の組合せから得られるか、或いはそれらに由来する。
【0497】
A型インフルエンザウイルスの非限定的な例としては、亜型H10N4、亜型H10N5、亜型H10N7、亜型H10N8、亜型H10N9、亜型H11N1、亜型H11N13、亜型H11N2、亜型H11N4、亜型H11N6、亜型H11N8、亜型H11N9、亜型H12N1、亜型H12N4、亜型H12N5、亜型H12N8、亜型H13N2、亜型H13N3、亜型H13N6、亜型H13N7、亜型H14N5、亜型H14N6、亜型H15N8、亜型H15N9、亜型H16N3、亜型H1N1、亜型H1N2、亜型H1N3、亜型H1N6、亜型H1N9、亜型H2N1、亜型H2N2、亜型H2N3、亜型H2N5、亜型H2N7、亜型H2N8、亜型H2N9、亜型H3N1、亜型H3N2、亜型H3N3、亜型H3N4、亜型H3N5、亜型H3N6、亜型H3N8、亜型H3N9、亜型H4N1、亜型H4N2、亜型H4N3、亜型H4N4、亜型H4N5、亜型H4N6、亜型H4N8、亜型H4N9、亜型H5N1、亜型H5N2、亜型H5N3、亜型H5N4、亜型H5N6、亜型H5N7、亜型H5N8、亜型H5N9、亜型H6N1、亜型H6N2、亜型H6N3、亜型H6N4、亜型H6N5、亜型H6N6、亜型H6N7、亜型H6N8、亜型H6N9、亜型H7N1、亜型H7N2、亜型H7N3、亜型H7N4、亜型H7N5、亜型H7N7、亜型H7N8、亜型H7N9、亜型H8N4、亜型H8N5、亜型H9N1、亜型H9N2、亜型H9N3、亜型H9N5、亜型H9N6、亜型H9N7、亜型H9N8、及び亜型H9N9が挙げられる。
【0498】
A型インフルエンザウイルスの株の具体的な例としては、A/ビクトリア/361/2011(H3N2);A/カリフォルニア/4/2009(H1N1);A/カリフォルニア/7/2009(H1N1);A/パース/16/2009(H3N2);A/ブリスベン/59/2007(H1N1);A/ブリスベン/10/2007((H3N2);A/sw/アイオワ/15/30(H1N1);A/WSN/33(H1N1);A/eq/プラハ/1/56(H7N7);A/PR/8/34;A/マガモ/ポツダム/178-4/83(H2N2);A/セグロカモメ/DE/712/88(H16N3);A/sw/香港/168/1993(H1N1);A/マガモ/アルバータ/211/98(H1N1);A/水鳥/デラウェア/168/06(H16N3);A/sw/ネーデルラント/25/80(H1N1);A/sw/ドイツ/2/81(H1N1);A/sw/ハノーバー/1/81(H1N1);A/sw/ポツダム/1/81(H1N1);A/sw/ポツダム/15/81(H1N1);A/sw/ポツダム/268/81(H1N1);A/sw/フィニステール/2899/82(H1N1);A/sw/ポツダム/35/82(H3N2);A/sw/コートダルモール/3633/84(H3N2);A/sw/ヘント/1/84(H3N2);A/sw/ネーデルラント/12/85(H1N1);A/sw/カレンツァイ(Karrenzien)/2/87(H3N2);A/sw/シュウェリン/103/89(H1N1);A/七面鳥/ドイツ/3/91(H1N1);A/sw/ドイツ/8533/91(H1N1);A/sw/ベルギー/220/92(H3N2);A/sw/ヘント/V230/92(H1N1);A/sw/ライプチヒ/145/92(H3N2);A/sw/Re220/92hp(H3N2);A/sw/バークム/909/93(H3N2);A/sw/シュレースヴィヒ−ホルシュタイン/1/93(H1N1);A/sw/スコットランド/419440/94(H1N2);A/sw/バークム/5/95(H1N1);A/sw/ベスト(Best)/5C/96(H1N1);A/sw/イングランド/17394/96(H1N2);A/sw/イエナ/5/96(H3N2);A/sw/ウーデンローデ/7C/96(H3N2);A/sw/ローネ/1/97(H3N2);A/sw/コートダルモール/790/97(H1N2);A/sw/バークム/1362/98(H3N2);A/sw/イタリア/1521/98(H1N2);A/sw/イタリア/1553-2/98(H3N2);A/sw/イタリア/1566/98(H1N1);A/sw/イタリア/1589/98(H1N1);A/sw/バークム/8602/99(H3N2);A/sw/コートダルモール/604/99(H1N2);A/sw/コートダルモール/1482/99(H1N1);A/sw/ヘント/7625/99(H1N2);A/香港/1774/99(H3N2);A/sw/香港/5190/99(H3N2);A/sw/香港/5200/99(H3N2);A/sw/香港/5212/99(H3N2);A/sw/イル・エ・ヴィレーヌ/1455/99(H1N1);A/sw/イタリア/1654-1/99(H1N2);A/sw/イタリア/2034/99(H1N1);A/sw/イタリア/2064/99(H1N2);A/sw/ベルリン/1578/00(H3N2);A/sw/バークム/1832/00(H1N2);A/sw/バークム/1833/00(H1N2);A/sw/コートダルモール/800/00(H1N2);A/sw/香港/7982/00(H3N2);A/sw/イタリア/1081/00(H1N2);A/sw/ベルチヒ/2/01(H1N1);A/sw/ベルチヒ/54/01(H3N2);A/sw/香港/9296/01(H3N2);A/sw/香港/9745/01(H3N2);A/sw/スペイン/33601/01(H3N2);A/sw/香港/1144/02(H3N2);A/sw/香港/1197/02(H3N2);A/sw/スペイン/39139/02(H3N2);A/sw/スペイン/42386/02(H3N2);A/スイス/8808/2002(H1N1);A/sw/バークム/1769/03(H3N2);A/sw/ビッセンドルフ/IDT1864/03(H3N2);A/sw/エーレン(Ehren)/IDT2570/03(H1N2);A/sw/ゲッシャー/IDT2702/03(H1N2);A/sw/ハーゼリュンネ/2617/03hp(H1N1);A/sw/レーニンゲン/IDT2530/03(H1N2);A/sw/IVD/IDT2674/03(H1N2);A/sw/ノルドキルヒェン/IDT1993/03(H3N2);A/sw/ノルドヴァルデ/IDT2197/03(H1N2);A/sw/ノルデン/IDT2308/03(H1N2);A/sw/スペイン/50047/03(H1N1);A/sw/スペイン/51915/03(H1N1);A/sw/フェヒタ/2623/03(H1N1);A/sw/ヴィズベク/IDT2869/03(H1N2);A/sw/ヴァルタースドルフ/IDT2527/03(H1N2);A/sw/ダム(Damme)/IDT2890/04(H3N2);A/sw/ゲルダーン/IDT2888/04(H1N1);A/sw/グランステット(Granstedt)/IDT3475/04(H1N2);A/sw/グレーフェン/IDT2889/04(H1N1);A/sw/グーテンスベルク/IDT2930/04(H1N2);A/sw/グーテンスベルク/IDT2931/04(H1N2);A/sw/ローネ/IDT3357/04(H3N2);A/sw/ノルトルップ/IDT3685/04(H1N2);A/sw/ゼーセン/IDT3055/04(H3N2);A/sw/スペイン/53207/04(H1N1);A/sw/スペイン/54008/04(H3N2);A/sw/シュトルツェナウ/IDT3296/04(H1N2);A/sw/ヴェーデル/IDT2965/04(H1N1);A/sw/バートグリースバッハ/IDT4191/05(H3N2);A/sw/クロッペンブルク/IDT4777/05(H1N2);A/sw/デートリンゲン/IDT3780/05(H1N2);A/sw/デートリンゲン/IDT4735/05(H1N2);A/sw/エックルハム/IDT5250/05(H3N2);A/sw/ハーケンブレック(Harkenblek)/IDT4097/05(H3N2);A/sw/ヘルツェン(Hertzen)/IDT4317/05(H3N2);A/sw/クローゲル(Krogel)/IDT4192/05(H1N1);A/sw/ラエル/IDT3893/05(H1N1);A/sw/ラエル/IDT4126/05(H3N2);A/sw/メルツェン/IDT4114/05(H3N2);A/sw/ミュスラリンゲン(Muesleringen)-S./IDT4263/05(H3N2);A/sw/オスターホーフェン/IDT4004/05(H3N2);A/sw/シュプレンゲ(Sprenge)/IDT3805/05(H1N2);A/sw/シュタットローン/IDT3853/05(H1N2);A/sw/フォーグラルン(Voglarn)/IDT4096/05(H1N1);A/sw/ヴォーラーシュト(Wohlerst)/IDT4093/05(H1N1);A/sw/バートグリースバッハ/IDT5604/06(H1N1);A/sw/ヘルツラケ/IDT5335/06(H3N2);A/sw/ヘルツラケ/IDT5336/06(H3N2);A/sw/ヘルツラケ/IDT5337/06(H3N2);及びA/イノシシ/ドイツ/R169/2006(H3N2)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0499】
A型インフルエンザウイルスの株の他の具体的な例としては、A/トロント/3141/2009(H1N1);A/レーゲンスブルク/D6/2009(H1N1);A/バイエルン/62/2009(H1N1);A/バイエルン/62/2009(H1N1);A/ブランデンブルク/19/2009(H1N1);A/ブランデンブルク/20/2009(H1N1);A/連邦直轄区(Distrito Federal)/2611/2009(H1N1);A/マトグロッソ/2329/2009(H1N1);A/サンパウロ/1454/2009(H1N1);A/サンパウロ/2233/2009(H1N1);A/ストックホルム/37/2009(H1N1);A/ストックホルム/41/2009(H1N1);A/ストックホルム/45/2009(H1N1);A/ブタ/アルバータ/OTH-33-1/2009(H1N1);A/ブタ/アルバータ/OTH-33-14/2009(H1N1);A/ブタ/アルバータ/OTH-33-2/2009(H1N1);A/ブタ/アルバータ/OTH-33-21/2009(H1N1);A/ブタ/アルバータ/OTH-33-22/2009(H1N1);A/ブタ/アルバータ/OTH-33-23/2009(H1N1);A/ブタ/アルバータ/OTH-33-24/2009(H1N1);A/ブタ/アルバータ/OTH-33-25/2009(H1N1);A/ブタ/アルバータ/OTH-33-3/2009(H1N1);A/ブタ/アルバータ/OTH-33-7/2009(H1N1);A/北京/502/2009(H1N1);A/フィレンツェ/10/2009(H1N1);A/香港/2369/2009(H1N1);A/イタリア/85/2009(H1N1);A/サントドミンゴ/572N/2009(H1N1);A/カタロニア/385/2009(H1N1);A/カタロニア/386/2009(H1N1);A/カタロニア/387/2009(H1N1);A/カタロニア/390/2009(H1N1);A/カタロニア/394/2009(H1N1);A/カタロニア/397/2009(H1N1);A/カタロニア/398/2009(H1N1);A/カタロニア/399/2009(H1N1);A/サンパウロ/2303/2009(H1N1);A/秋田/1/2009(H1N1);A/カストロ/JXP/2009(H1N1);A/福島/1/2009(H1N1);A/イスラエル/276/2009(H1N1);A/イスラエル/277/2009(H1N1);A/イスラエル/70/2009(H1N1);A/岩手/1/2009(H1N1);A/岩手/2/2009(H1N1);A/鹿児島/1/2009(H1N1);A/大阪/180/2009(H1N1);A/プエルトモント/Bio87/2009(H1N1);A/サンパウロ/2303/2009(H1N1);A/札幌/1/2009(H1N1);A/ストックホルム/30/2009(H1N1);A/ストックホルム/31/2009(H1N1);A/ストックホルム/32/2009(H1N1);A/ストックホルム/33/2009(H1N1);A/ストックホルム/34/2009(H1N1);A/ストックホルム/35/2009(H1N1);A/ストックホルム/36/2009(H1N1);A/ストックホルム/38/2009(H1N1);A/ストックホルム/39/2009(H1N1);A/ストックホルム/40/2009(H1N1;)A/ストックホルム/42/2009(H1N1);A/ストックホルム/43/2009(H1N1);A/ストックホルム/44/2009(H1N1);A/宇都宮/2/2009(H1N1);A/WRAIR/0573N/2009(H1N1);及びA/浙江/DTID-ZJU01/2009(H1N1)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0500】
B型インフルエンザウイルスの非限定的な例としては、愛知/5/88株、B/ブリスベン/60/2008株;秋田/27/2001、秋田/5/2001株、アラスカ/16/2000株、アラスカ/1777/2005株、アルゼンチン/69/2001株、アリゾナ/146/2005株、アリゾナ/148/2005株、バンコク/163/90株、バンコク/34/99株、バンコク/460/03株、バンコク/54/99株、バルセロナ/215/03株、北京/15/84株、北京/184/93株、北京/243/97株、北京/43/75株、北京/5/76株、北京/76/98株、ベルギー/WV106/2002株、ベルギー/WV107/2002株、ベルギー/WV109/2002株、ベルギー/WV114/2002株、ベルギー/WV122/2002株、ボン/43株、ブラジル/952/2001株、ブカレスト/795/03株、ブエノスアイレス/161/00株)、ブエノスアイレス/9/95株、ブエノスアイレス/SW16/97株、ブエノスアイレス/VL518/99株、カナダ/464/2001株、カナダ/464/2002株、チャコ/366/00株、チャコ/R113/00株、済州/303/03株、千葉/447/98株、重慶/3/2000株、SA1タイ/2002臨床分離株、SA10タイ/2002臨床分離株、SA100フィリピン/2002臨床分離株、SA101フィリピン/2002臨床分離株、SA110フィリピン/2002臨床分離株)、SA112フィリピン/2002臨床分離株、SA113フィリピン/2002臨床分離株、SA114フィリピン/2002臨床分離株、SA2タイ/2002臨床分離株、SA20タイ/2002臨床分離株、SA38フィリピン/2002臨床分離株、SA39タイ/2002臨床分離株、SA99フィリピン/2002臨床分離株、CNIC/27/2001株、コロラド/2597/2004株、コルドバ/VA418/99株、チェコスロバキア/16/89株、チェコスロバキア/69/90株、ダエク/10/97株、ダエク/45/97株、ダエク/47/97株、ダエク/9/97株、B/Du/4/78株、B/ダーバン/39/98株、ダーバン/43/98株、ダーバン/44/98株、B/ダーバン/52/98株、ダーバン/55/98株、ダーバン/56/98株、イングランド/1716/2005株、イングランド/2054/2005株)、イングランド/23/04株、フィンランド/154/2002株、フィンランド/159/2002株、フィンランド/160/2002株、フィンランド/161/2002株、フィンランド/162/03株、フィンランド/162/2002株、フィンランド/162/91株、フィンランド/164/2003株、フィンランド/172/91株、フィンランド/173/2003株、フィンランド/176/2003株、フィンランド/184/91株、フィンランド/188/2003株、フィンランド/190/2003株、フィンランド/220/2003株、フィンランド/WV5/2002株、福建/36/82株、ジュネーブ/5079/03株、ジェノバ/11/02株、ジェノバ/2/02株、ジェノバ/21/02株、ジェノバ/54/02株、ジェノバ/55/02株、広東/05/94株、広東/08/93株、広東/5/94株、広東/55/89株、広東/8/93株、広州/7/97株、広州/86/92株、広州/87/92株、京幾/592/2005株、ハノーバー/2/90株、ハルビン/07/94株、ハワイ/10/2001株、ハワイ/1990/2004株、ハワイ/38/2001株、ハワイ/9/2001株、河北/19/94株、河北/3/94株)、河南/22/97株、広島/23/2001株、香港/110/99株、香港/1115/2002株、香港/112/2001株、香港/123/2001株、香港/1351/2002株、香港/1434/2002株、香港/147/99株、香港/156/99株、香港/157/99株、香港/22/2001株、香港/22/89株、香港/336/2001株、香港/666/2001株、香港/9/89株、ヒューストン/1/91株、ヒューストン/1/96株、ヒューストン/2/96株、湖南/4/72株、茨城/2/85株、仁川(ncheon)/297/2005株、インド/3/89株、インド/77276/2001株、イスラエル/95/03株、イスラエル/WV187/2002株、日本/1224/2005株、江蘇/10/03株、ヨハネスブルク/1/99株、ヨハネスブルク/96/01株、門真/1076/99株、門真/122/99株、鹿児島/15/94株、カンザス/22992/99株、ハズコフ(Khazkov)/224/91株、神戸/1/2002株、高知/193/99株、ラツィオ/1/02株、リー/40株、レニングラード/129/91株、リスボン/2/90株)、ロサンゼルス/1/02株、ルサカ/270/99株、リヨン/1271/96株、マレーシア/83077/2001株、マプト/1/99株、マルデルプラタ/595/99株、メリーランド/1/01株、メンフィス/1/01株、メンフィス/12/97-MA株、ミシガン/22572/99株、三重/1/93株、ミラノ/1/01株、ミンスク/318/90株、モスクワ/3/03株、名古屋/20/99株、南昌/1/00株、ナッシュビル/107/93株、ナッシュビル/45/91株、ネブラスカ/2/01株、ネーデルラント/801/90株、ネーデルラント/429/98株、ニューヨーク/1/2002株、NIB/48/90株、寧夏/45/83株、ノルウェー/1/84株、オマーン/16299/2001株、大阪/1059/97株、大阪/983/97-V2株、オスロ/1329/2002株、オスロ/1846/2002株、パナマ/45/90株、パリ/329/90株、パルマ/23/02株、パース/211/2001株、ペルー/1364/2004株、フィリピン/5072/2001株、釜山/270/99株、ケベック/173/98株、ケベック/465/98株、ケベック/7/01株、ローマ/1/03株、佐賀/S172/99株、ソウル/13/95株、ソウル/37/91株、山東/7/97株、上海/361/2002株)、滋賀/T30/98株、四川/379/99株、シンガポール/222/79株、スペイン/WV27/2002株、ストックホルム/10/90株、スイス/5441/90株、台湾/0409/00株、台湾/0722/02株、台湾/97271/2001株、テヘラン/80/02株、東京/6/98株、トリエステ/28/02株、ウランウデ/4/02株、イギリス/34304/99株、USSR/100/83株、ビクトリア/103/89株、ウィーン/1/99株、武漢/356/2000株、WV194/2002株、玄武/23/82株、山形/1311/2003株、山形/K500/2001株、アラスカ/12/96株、GA/86株、長崎/1/87株、東京/942/96株、B/ウィスコンシン/1/2010株;及びロチェスター/02/2001株が挙げられる。
【0501】
C型インフルエンザウイルスの非限定的な例としては、愛知/1/81株、アンアーバー/1/50株、青森/74株、カリフォルニア/78株、イングランド/83株、ギリシア/79株、広島/246/2000株、広島/252/2000株、兵庫/1/83株、ヨハネスブルク/66株、神奈川/1/76株、京都/1/79株、ミシシッピー/80株、宮城/1/97株、宮城/5/2000株、宮城/9/96株、奈良/2/85株、ニュージャージー/76株、ブタ/北京/115/81株、埼玉/3/2000株)、静岡/79株、山形/2/98株、山形/6/2000株、山形/9/96株、ベルリン/1/85株、イングランド/892/8株、五大湖/1167/54株、JJ/50株、ブタ/北京/10/81株、ブタ/北京/439/82)株、テーラー(TAYLOR)/1233/47株、及びC/山形/10/81株が挙げられる。
【0502】
ある実施態様において、本明細書に提供されるインフルエンザウイルスは、弱毒化表現型を有する。具体的な実施態様において、弱毒化インフルエンザウイルスは、A型インフルエンザウイルスに基づく。他の実施態様において、弱毒化インフルエンザウイルスは、B型インフルエンザウイルスに基づく。さらに他の実施態様において、弱毒化インフルエンザウイルスは、C型インフルエンザウイルスに基づく。他の実施態様において、弱毒化インフルエンザウイルスは、A型インフルエンザ、B型インフルエンザ及び/又はC型インフルエンザウイルスの1以上の株又は亜型由来の遺伝子又はゲノムセグメントを含むことができる。いくつかの実施態様において、弱毒化骨格ウイルスは、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルス由来の遺伝子を含む。
【0503】
具体的な実施態様において、ウイルスが少なくとも部分的に感染性を保持し、インビボで複製することができるが、非病原性である不顕性レベルの感染をもたらす低い力価を生じさせることしかできないような、インフルエンザウイルスの弱毒化が望ましい。そのような弱毒化ウイルスは、ウイルス又はその免疫原性組成物が免疫応答を誘発するために対象に投与される、本明細書に記載の実施態様に特に好適である。インフルエンザウイルスの弱毒化は、例えば、化学的突然変異誘発によって作製されるウイルス突然変異体を選択すること、遺伝子操作によるゲノムの突然変異、弱毒化された機能を有するセグメントを含む再集合体ウイルスを選択すること、又は条件的ウイルス突然変異体(例えば、低温適応ウイルス)の選択などの、当技術分野で公知の任意の方法によって達成することができる。或いは、天然に存在する弱毒化インフルエンザウイルスを、インフルエンザウイルスベクターのためのインフルエンザウイルス骨格として使用することができる。
【0504】
一実施態様において、インフルエンザウイルスは、親インフルエンザウイルスのHA遺伝子を本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドと置換することによって、少なくとも部分的に弱毒化することができる。いくつかの実施態様において、インフルエンザウイルスは、細胞のインターフェロン(IFN)応答に拮抗するウイルスの能力を損なわせる突然変異したNS1遺伝子を発現するようにインフルエンザウイルスを改変することによって、少なくとも部分的に弱毒化することができる。インフルエンザウイルスNS1遺伝子に導入することができる突然変異の種類の例としては、欠失、置換、挿入、及びそれらの組合せが挙げられる。NS1遺伝子全体のどこにでも(例えば、N末端、C末端、もしくはその間のどこか)、及び/又はNS1遺伝子の調節エレメントに、1以上の突然変異を導入することができる。一実施態様において、弱毒化インフルエンザウイルスは、NS1のC末端から5個、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、75、80、85、90、95、99、100、105、110、115、120、125、126、130、135、140、145、150、155、160、165、170、もしくは175個のアミノ酸残基からなる欠失、又はC末端から5〜170、25〜170、50〜170、100〜170、100〜160、もしくは105〜160個のアミノ酸残基の欠失をもたらすインフルエンザウイルスNS1遺伝子の突然変異を有するゲノムを含む。別の実施態様において、弱毒化インフルエンザウイルスは、それがアミノ酸残基1〜130、アミノ酸残基1〜126、アミノ酸残基1〜120、アミノ酸残基1〜115、アミノ酸残基1〜110、アミノ酸残基1〜100、アミノ酸残基1〜99、アミノ酸残基1〜95、アミノ酸残基1〜85、アミノ酸残基1〜83、アミノ酸残基1〜80、アミノ酸残基1〜75、アミノ酸残基1〜73、アミノ酸残基1〜70、アミノ酸残基1〜65、又はアミノ酸残基1〜60のNS1タンパク質をコードするように、インフルエンザウイルスNS1遺伝子の突然変異を有するゲノムを含み、ここで、N末端アミノ酸は、1番である。NS1突然変異及び突然変異したNS1を含むインフルエンザウイルスの例については、例えば、米国特許第6,468,544号及び第6,669,943号;並びにLiらの文献(1999, J. Infect. Dis. 179:1132-1138)を参照されたく、その各々は、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれる。
【0505】
(5.8 非インフルエンザウイルスベクター)
一態様において、本明細書に提供されるのは、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素(emagglutinin)(HA)ポリペプチド)を含む非インフルエンザウイルスである。具体的な実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、非インフルエンザウイルスのビリオンに組み込まれる。具体的な実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)は、精製された(例えば、プラーク精製された)又は単離されたウイルスに含まれる/該ウイルスによって発現される。非インフルエンザウイルスを、特定の細胞型、例えば、免疫細胞にウイルスをターゲッティングする部分に結合させもよい。いくつかの実施態様において、インフルエンザウイルスのビリオンは、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドに加えて、異種ポリペプチドをそれらに組み込んでいるか、又はそれを発現する。異種ポリペプチドは、免疫増強活性を有するか、又は特定の細胞型に非インフルエンザウイルスをターゲッティングするポリペプチド、例えば、特定の細胞型の表面の抗原に結合する抗体、もしくは特定の細胞型の表面の特異的受容体に結合するリガンドであってもよい。そのような異種ポリペプチドの例については、上の第5.4節を参照されたい。
【0506】
flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む/発現する非インフルエンザウイルスは、当業者に公知の技術を用いて産生することができる。flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む非インフルエンザウイルスは、ビリオンの産生の間にトランスでflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを供給することによって産生することができる。或いは、血球凝集素機能がトランスで提供されているウイルスに感染しやすい細胞でflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するように改変されたゲノムを含む親の非インフルエンザウイルスの複製は、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む子孫ウイルスを産生する。
【0507】
限定するものではないが、天然に存在する株、変異体、もしくは突然変異体、突然変異させたウイルス、再集合体、及び/又は遺伝子改変ウイルスを含む、任意のウイルス型、亜型、又は株を、非インフルエンザウイルスベクターとして使用することができる。具体的な実施態様において、親の非インフルエンザウイルスは、天然に存在するウイルスではない。別の具体的な実施態様において、親の非インフルエンザウイルスは、遺伝子改変ウイルスである。ある実施態様において、エンベロープ型ウイルスが、本明細書に記載の膜結合型flu血球凝集素(HA)ポリペプチドの発現に好ましい。
【0508】
例示的な実施態様において、非インフルエンザウイルスベクターは、ニューカッスル病ウイルス(NDV)である。別の実施態様において、非インフルエンザウイルスベクターは、ワクシニアウイルスである。他の例示的で、非限定的な実施態様において、非インフルエンザウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、B型肝炎ウイルス、レトロウイルス(例えば、ガンマレトロウイルス、例えば、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)ゲノムもしくはマウス白血病ウイルス(MLV)、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス、腫瘍レトロウイルス、もしくはレンチウイルス)、アルファウイルス(例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス)、ラブドウイルス、例えば、水疱性口内炎ウイルスもしくはパピローマウイルス、ポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、MVA-T7ベクター、もしくは鶏痘)、メタニューモウイルス、麻疹ウイルス、ヘルペスウイルス、例えば、単純ヘルペスウイルス、又はフォーミーウイルスである。例えば、Lawrie及びTuminの文献(1993, Cur. Opin. Genet. Develop. 3, 102-109)(レトロウイルスベクター);Bettらの文献(1993, J. Virol. 67, 5911)(アデノウイルスベクター);Zhouらの文献(1994, J. Exp. Med. 179, 1867)(アデノ随伴ウイルスベクター);Dubenskyらの文献(1996, J. Virol. 70, 508-519)(ワクシニアウイルス及び鶏痘ウイルスを含むポックスファミリー由来のウイルスベクター並びにアルファウイルス属由来のウイルスベクター、例えば、シンドビスウイルス及びセムリキ森林ウイルスに由来するもの);米国特許第5,643,576号(ベネズエラウマ脳炎ウイルス);WO 96/34625号(VSV);Oheらの文献(1995, Human Gene Therapy 6, 325-333);Wooらの文献(WO 94/12629号);Xiao及びBrandsmaの文献(1996, Nucleic Acids. Res. 24、2630-2622)(パピローマウイルス);並びにBukreyev及びCollinsの文献(2008, Curr Opin Mol Ther. 10:46-55)(NDV)を参照されたく、その各々は、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれる。
【0509】
具体的な実施態様において、非インフルエンザウイルスベクターは、NDVである。任意のNDV型、亜型、又は株は、限定されないが、天然に存在する株、変異体、もしくは突然変異体、突然変異させたウイルス、再集合体及び/又は遺伝子改変ウイルスを含む、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するように改変される骨格の役割を果たすことができる。具体的な実施態様において、遺伝子操作のための骨格の役割を果たすNDVは、天然に存在する株である。ある実施態様において、遺伝子操作のための骨格の役割を果たすNDVは、溶解性株である。他の実施態様において、遺伝子操作のための骨格の役割を果たすNDVは、非溶解性株である。ある実施態様において、遺伝子操作のための骨格の役割を果たすNDVは、長潜伏期性株である。いくつかの実施態様において、遺伝子操作のための骨格の役割を果たすNDVは、亜病原性株である。他の実施態様において、遺伝子操作のための骨格の役割を果たすNDVは、短潜伏期性株である。NDV株の具体的な例としては、73-T株、アルスター株、MTH-68株、イタリアン(Italien)株、ヒックマン(Hickman)株、PV701株、ヒッチナー(Hitchner)B1株、ラソタ(La Sota)株、YG97株、MET95株、及びF48E9株が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な実施態様において、遺伝子操作のための骨格の役割を果たすNDVは、ヒッチナーB1株である。別の具体的な実施態様において、遺伝子操作のための骨格の役割を果たすNDVは、ラソタ株である。
【0510】
一実施態様において、非インフルエンザウイルスベクターのための骨格として使用されるNDVは、修飾Fタンパク質を発現するように改変されており、この修飾Fタンパク質中では、該Fタンパク質の切断部位が1つ又は2つの追加のアルギニン残基を含む部位に置き換えられ、この突然変異切断部位がフリンファミリーのユビキタスに発現されるプロテアーゼによって活性化されるようになる。そのような修飾Fタンパク質を発現するNDVの具体的な例としては、rNDV/F2aa及びrNDV/F3aaが挙げられるが、これらに限定されない。突然変異した切断部位を有する修飾Fタンパク質を産生するためにNDVのFタンパク質に導入される突然変異の説明については、例えば、Parkらの文献(2006、「二重特異性を有する改変されたウイルスワクチン構築物:鳥インフルエンザ及びニューカッスル病(Engineered viral vaccine constructs with dual specificity: Avian influenza and Newcastle disease)」PNAS USA 103:8203-2808))を参照されたい。
【0511】
一実施態様において、非インフルエンザウイルスベクターは、ポックスウイルスである。ポックスウイルスベクターは、ワクチンベクターに好適な配列を提供するポックスウイルス科の任意のメンバー、特に、ワクシニアウイルス又はアビポックスウイルス(例えば、カナリア痘ウイルス、鶏痘など)に基づくことができる。具体的な実施態様において、ポックスウイルスベクターは、ワクシニアウイルスベクターである。好適なワクシニアウイルスとしては、コペンハーゲン(VC-2)株(Goebelらの文献(Virol 179:247-266, 1990);Johnsonらの文献(Virol. 196:381-401、1993)、改変コペンハーゲン株(NYVAC)(米国特許第6,265,189号)、WYETH株、及び改変アンカラ(MVA)株(Antoineらの文献(Virol. 244:365-396、1998))が挙げられるが、これらに限定されない。他の好適なポックスウイルスとしては、望ましい特性を提供し、高度に弱毒化されているALVAC及びTROVACベクターなどの鶏痘株が挙げられる(例えば、米国特許第6,265,189号;AIDS研究レビュー(AIDS Research Reviews)中のTartagliaらの文献(Koffら編, 3巻, Marcel Dekker, N. Y., 1993);及びTartagliaらの文献(1990, Reviews in Immunology 10:13-30、1990)を参照されたい)。
【0512】
flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現させるために非インフルエンザウイルスを改変する方法は、そのようなウイルスを弱毒化させ、増殖させ、かつ単離及び精製する方法と同様に当技術分野で周知である。NDVベクターに関するそのような技術については、国際公開WO 01/04333号;米国特許第7,442,379号、第6,146,642号、第6,649,372号、第6,544,785号、及び第7,384,774号;Swayneらの文献(2003)(Avian Dis. 47:1047-1050);及びSwayne文献(2001)(J. Virol. 11868-11873)を参照されたく、その各々は、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれる。ポックスウイルスに関するそのような技術については、例えば、Picciniらの文献(Methods of Enzymology 153:545-563, 1987);国際公開WO 96/11279号;米国特許第4,769,330号;米国特許第4,722,848号;米国特許第4,769,330号;米国特許第4,603,112号;米国特許第5,110,587号;米国特許第5,174,993号;EP 83 286号;EP 206 920号;Mayrらの文献(Infection 3:6-14, 1975);並びにSutter及びMossの文献(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10847-10851, 1992)を参照されたい。ある実施態様において、非インフルエンザウイルスは弱毒化されている。
【0513】
特に、対象への投与のための組成物中で使用するための、非インフルエンザウイルスベクターの選択のための例示的な検討事項は、安全性、低毒性、安定性、細胞型特異性、及び免疫原性、特に、非インフルエンザウイルスベクターによって発現されるflu血球凝集素(HA)ポリペプチドの抗原性である。
【0514】
(5.9 ウイルス様粒子及びウイロソーム)
本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)は、ウイルス様粒子(VLP)ベクター、例えば、精製された/単離されたVLPに組み込むことができる。VLPは、通常、ウイルスの構造タンパク質(複数可)に一般的に由来するウイルスポリペプチド(複数可)を含む。いくつかの実施態様において、VLPは複製することができない。ある実施態様において、VLPはウイルスの完全なゲノムを欠いていてもよく、又はウイルスのゲノムの一部を含んでいてもよい。いくつかの実施態様において、VLPは細胞に感染することができない。いくつかの実施態様において、VLPは、当業者に公知であるか又は本明細書に記載されている1以上のウイルス性標的部分(例えば、ウイルス表面糖タンパク質)又は非ウイルス性標的部分(例えば、抗体もしくはタンパク質)をその表面に発現する。いくつかの実施態様において、VLPは、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド及びウイルス構造タンパク質、例えば、HIV gagを含む。具体的な実施態様において、VLPは、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド及びHIV gagポリペプチドを含む。
【0515】
組換えで産生されるVLPを産生して特徴付けるための方法は、インフルエンザウイルス(Brightらの文献(2007, Vaccine. 25:3871))、ヒトパピローマウイルス1型(Hagneseeらの文献(1991, J. Virol. 67:315))、ヒトパピローマウイルス16型(Kirnbauerらの文献(Proc. Natl. Acad. Sci.(1992)89:12180))、HIV-1(Hafferらの文献(1990, J. Virol. 64:2653))、及びA型肝炎(Winokurの文献(1991, 65:5029))を含む、いくつかのウイルスに基づいて記載されており、その各々は、その全体が本明細書中に組み込まれている。NDVタンパク質を含むVLPを発現させる方法は、Pantuaらの文献(2006, J. Virol. 80:11062-11073)、及び2009年3月12日に公開された米国特許出願公開第20090068221号で提供されており、その各々は、その全体が本明細書中に組み込まれている。具体的な実施態様において、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むVLPを、下の実施例の節に記載されているように、バキュロウイルスを用いて生成させる。他の実施態様において、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むVLPを、下の実施例の節に記載されているように、293T細胞を用いて生成させる。
【0516】
具体的な実施態様において、VLP、例えば、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むVLPを、細胞(例えば、293T細胞)で発現させる。ある実施態様において、VLPを、シアル酸を含む表面糖タンパク質を発現する細胞で発現させる。そのような実施態様に従って、細胞をノイラミニダーゼ(例えば、ウイルス又は細菌のノイラミニダーゼ)の存在下で培養する。ある実施態様において、VLP、例えば、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むVLPを、シアル酸を含む表面糖タンパク質を発現しない細胞で発現させる。
【0517】
具体的な実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、ウイロソームに組み込むことができる。flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むウイロソームは、当業者に公知の技術を用いて産生することができる。例えば、ウイロソームは、精製されたウイルスを破壊し、ゲノムを抽出し、ウイルスタンパク質(例えば、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド)及び脂質で粒子を再び組み立てて、ウイルスタンパク質を含む脂質粒子を形成させることによって産生することができる。
【0518】
(5.10 細菌ベクター)
具体的な実施態様において、細菌は、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)を発現するように改変することができる。flu血球凝集素(HA)ポリペプチドの発現のために好適な細菌としては、リステリア、サルモネラ(Salmonella)、赤痢菌(Shigella)種、ヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、大腸菌、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、ウシ流産菌(Brucella abortus)、マルタ熱菌(Brucella melitensis)、ライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)、乳酸菌(Lactobacillus)、カンピロバクター(Campylobacter)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ビフィズス菌(Bifidobacterium)、及び野兎病菌(Francisella tularensis)が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するように改変された細菌は、弱毒化されている。異種ポリペプチドを発現するように改変された細菌の産生技術は当技術分野で公知であり、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドの発現に適用することができる。例えば、2008年10月9日に公開された米国特許出願公開第20080248066号及び2007年9月6日に公開された米国特許出願公開第20070207171号を参照されたく、その各々は、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれる。ある実施態様において、本明細書で使用される細菌ベクターは、N結合型グリコシル化を行なう能力を保有し、例えば、そのような細菌は、N-グリコシル化機構を天然に保有するか(例えば、カンピロバクター)、又はN-グリコシル化機構を保有するように遺伝子改変されている。
【0519】
(5.11 植物及び藻類ベクター)
ある実施態様において、植物(例えば、タバコ属の植物)を、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するように改変することができる。具体的な実施態様において、当技術分野で公知の方法を用いたアグロインフィルトレーションによって、植物を本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)を発現するように改変することができる。例えば、関心対象の遺伝子、例えば、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする遺伝子をコードする核酸を、アグロバクテリウムの株に導入する。その後、この株を液体培地中で増殖させ、得られる細菌を洗浄し、緩衝溶液に懸濁する。その後、アグロバクテリウムが関心対象の遺伝子を植物細胞の一部に形質転換するように、植物を(例えば、注射又は浸漬によって)本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする核酸を含むアグロバクテリウムに曝露させる。その後、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを該植物によって一過性に発現させ、当技術分野で公知かつ本明細書に記載の方法を用いて単離することができる(具体的な例については、Shojiらの文献(2008, Vaccine, 26(23):2930-2934);及びD’Aoustらの文献(2008, J. Plant Biotechnology, 6(9):930-940))を参照されたい。具体的な実施態様において、植物は、タバコ植物(すなわち、タバコ(Nicotiana tabacum))である。別の具体的な実施態様において、植物は、タバコ植物の近縁種(例えば、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana))である。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを大豆種で発現させる。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドをトウモロコシ種で発現させる。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドをコメ種で発現させる。
【0520】
他の実施態様において、藻類(例えば、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii))を改変して、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現させることができる(例えば、Rasalaらの文献(2010, Plant Biotechnology Journal)(2010年3月7日にオンラインで発表され、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている)を参照されたい)。
【0521】
ある実施態様において、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現させるために使用される植物は、N-グリコシル化系(例えば、細菌又は哺乳動物N-グリコシル化系)の成分を発現するように改変されている、すなわち、該植物は、N-グリコシル化を行なうことができる。
【0522】
flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現させるために使用することができる植物細胞、及び植物細胞培養系を利用するタンパク質の産生方法は、例えば、米国特許第5,929,304号;第7,504,560号;第6,770,799号;第6,551,820号;第6,136,320号;第6,034,298号;第5,914,935号;第5,612,487号;及び第5,484,719号、米国特許出願公開第2009/0208477号、第2009/0082548号、第2009/0053762号、第2008/0038232号、第2007/0275014号、及び第2006/0204487号、並びにShojiらの文献(2008, Vaccine, 26(23):2930-2934)、及びD’Aoustらの文献(2008, J. Plant Biotechnology, 6(9):930-940)に記載されている(これらは、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている)。
【0523】
(5.12 flu血球凝集素(HA)ポリペプチドに対する抗体の作製)
本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、又はそのような核酸もしくはポリペプチドを含むベクターを用いて、インフルエンザに対する、例えば、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのストーク領域に対する中和抗体を誘発することができる。具体的な実施態様において、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、又はそのような核酸もしくはポリペプチドを含むベクターを非ヒト対象(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモットなど)に投与して、抗体の産生を含む免疫応答を誘導することができ、この抗体は、当業者に公知の技術(例えば、免疫親和性クロマトグラフィー、遠心分離、沈殿など)を用いて単離することができる。
【0524】
或いは、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを用いて、抗体ライブラリーから抗体をスクリーニングすることができる。例えば、単離されたflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを固体支持体(例えば、シリカゲル、樹脂、誘導体化プラスチックフィルム、ガラスビーズ、綿、プラスチックビーズ、ポリスチレンビーズ、アルミナゲル、又は多糖、磁気ビーズ)に固定し、抗体への結合についてスクリーニングすることができる。代替法として、抗体を固体支持体に固定し、単離されたflu血球凝集素(HA)ポリペプチドへの結合についてスクリーニングすることができる。任意のスクリーニングアッセイ、例えば、パニングアッセイ、ELISA、表面プラズモン共鳴、又は当技術分野で公知の他の抗体スクリーニングアッセイを用いて、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドに結合する抗体についてスクリーニングすることができる。スクリーニングされる抗体ライブラリーは、市販の抗体ライブラリー、インビトロで作製されたライブラリー、又はインフルエンザに感染した個体から抗体を同定及びクローニング又は単離することによって得られたライブラリーであることができる。特定の実施態様において、抗体ライブラリーは、インフルエンザウイルス大発生の生存者から作製される。抗体ライブラリーは、当技術分野で公知の方法に従って作製することができる。特定の実施態様において、抗体ライブラリーは、抗体をクローニングし、それをファージディスプレイライブラリー又はファージミドディスプレイライブラリーで用いることによって作製される。
【0525】
本明細書に記載の方法で同定される抗体は、当技術分野で公知又は本明細書に記載の生物学的アッセイを用いて、中和活性及び自己反応性の欠如について試験することができる。一実施態様において、非ヒト動物又は抗体ライブラリーから単離された抗体は、2以上のインフルエンザ亜型由来の血球凝集素ポリペプチドを中和する。いくつかの実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、又はそのような核酸もしくはポリペプチドをコードするベクターを用いて誘発又は同定される抗体は、インフルエンザH3ウイルスを中和する。いくつかの実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、又はそのような核酸もしくはポリペプチドを含むベクターを用いて誘発又は同定される抗体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、もしくは16種、又はそれより多くのインフルエンザウイルスの亜型又は株を中和する。一実施態様において、中和抗体は1以上のA型インフルエンザウイルス及び1以上のB型インフルエンザウイルスを中和する。特定の実施態様において、中和抗体は、CR6261、CR6325、CR6329、CR6307、CR6323、2A、D7、D8、F10、G17、H40、A66、D80、E88、E90、H98、C179(ハイブリドーマFERM BP-4517により産生される;Takara Bio社により販売されているクローン(Otsu, Shiga, Japan))、及び/又はAI3C(FERM BP-4516);もしくはEkiert DCらの文献(2009)高度に保存されたインフルエンザウイルスエピトープの抗体認識(Antibody Recognition of a Highly Conserved Influenza Virus Epitope)(Science(2009年2月26日にScience Expressで発表された)); Kashyapらの文献(2008)トルコH5N1鳥インフルエンザ大発生の生存者由来のコンビナトリアル抗体ライブラリーは、ウイルス中和戦略を明らかにする(Combinatorial antibody libraries from survivors of the Turkish H5N1 avian influenza outbreak revealウイルス neutralization strategies.)(Proc Natl Acad Sci U S A 105: 5986-5991);Suiらの文献(2009)鳥及びヒトA型インフルエンザウイルスの広域スペクトル中和のための構造及び機能的基礎(Structural and functional bases for broad-spectrum neutralization of avian and human influenza A virus.)(Nat Struct Mol Biol 16: 265-273);米国特許第5,589,174号、第5,631,350号、第6,337,070号、及び第6,720,409号;国際公開WO 2007/134237として公開された国際出願PCT/US2007/068983号;国際公開WO 2009/036157号として公開された国際出願PCT/US2008/075998号;国際公開WO 2008/028946号として公開された国際出願PCT/EP2007/059356号;及び国際公開WO 2009/079259号として公開された国際出願PCT/US2008/085876号に記載されている任意の他の抗体ではないか、又はそれらと同じエピトープに結合しない。他の実施態様において、中和抗体は、Wangらの文献(2010)「異なる血球凝集素による連続免疫後のH3インフルエンザウイルスに対する広域防御性モノクローナル抗体(Broadly Protective Monoclonal Antibodies against H3 Influenza Viruses following Sequential Immunization with Different Hemagglutinins)」(PLOS Pathogens 6(2):1-9)に記載されている抗体ではない。特定の実施態様において、中和抗体は、Ig VH1-69セグメントを使用していない。いくつかの実施態様において、中和抗体と抗原との相互作用は、重鎖によってのみ仲介されるものではない。
【0526】
flu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、又はそのような核酸もしくはポリペプチドを含むベクターを用いて同定又は誘発される抗体には、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫活性部分、すなわち、血球凝集素ポリペプチドに特異的に結合する抗原結合部位を含む分子が含まれる。免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又はサブクラスであることができる。抗体には、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、Fab断片、F(ab')断片、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書に記載の方法を用いて誘発又は同定される抗体に対する抗Id抗体を含む)、並びに上記のいずれかのエピトープ結合性断片が含まれるが、これらに限定されない。
【0527】
flu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、又はそのような核酸もしくはポリペプチドを含むベクターを用いて誘発又は同定される抗体は、診断的イムノアッセイ、受動免疫療法、及び抗イディオタイプ抗体の作製で使用することができる。受動免疫療法で使用される前の抗体を修飾することができ、例えば、抗体をキメラ化又はヒト化することができる。キメラ抗体及びヒト化抗体の作製に関する概説については、例えば、米国特許第4,444,887号及び第4,716,111号;並びに国際公開WO 98/46645号、WO 98/50433号、WO 98/24893号、WO 98/16654号、WO 96/34096号、WO 96/33735号、及びWO 91/10741号を参照されたく、その各々は、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれる。さらに、血球凝集素ポリペプチドを中和する抗体の能力及び該ポリペプチドに対する抗体の特異性を、受動免疫療法で抗体を使用する前に試験することができる。インフルエンザウイルス感染に起因する疾患の予防又は治療のための中和抗体の使用に関する議論については、下記の第5.11節を参照されたい。
【0528】
flu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、又はそのような核酸もしくはポリペプチドを含むベクターを用いて誘発又は同定される抗体を用いて、療法の効果及び/又は疾患の進行をモニタリングすることができる。この目的のために、限定されないが、少し例を挙げれば、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射線測定法、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイ、及び免疫電気泳動アッセイなどの技術を用いた、競合的及び非競合的アッセイ系を含む、当技術分野で公知の任意のイムノアッセイ系を使用することができる。
【0529】
flu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、又はそのような核酸もしくはポリペプチドを含むベクターを用いて誘発又は同定される抗体は、抗イディオタイプ抗体の作製で使用することができる。その後、今度は、この抗イディオタイプ抗体を、インフルエンザの特定の抗原、例えば、血球凝集素ポリペプチドの中和エピトープに結合する抗体の亜集団を産生するために、免疫に使用することができる(引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている、Jerneの文献(1974, Ann. Immunol.(Paris)125c:373);Jerneらの文献(1982, EMBO J. 1:234))。
【0530】
(5.13 flu血球凝集素(HA)ポリペプチドによる細胞の刺激)
別の態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)によってエクスビボで細胞を刺激する方法である。そのような細胞、例えば、樹状細胞を、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドに対する抗体を作製するためにインビトロで使用することができるか、又はそれ自体を、例えば、当技術分野で公知の養子移入技術によって対象に投与することができる。養子移入技術の説明については、例えば、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている、2008年1月24日に公開された米国特許出願公開第20080019998号を参照されたい。ある実施態様において、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドによってエクスビボで刺激された細胞を対象に投与する場合、該細胞は、哺乳動物細胞(例えば、CB-1細胞)ではない。
【0531】
1つの非限定的な例では、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するように改変されたベクター、例えば、インフルエンザウイルスベクターを用いて、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現させ、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに対する免疫刺激特性を提示する樹状細胞(DC)を作製することができる。そのようなDCは、メモリーT細胞を拡大するために使用されることができ、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドに特異的な細胞傷害性Tリンパ球クローンを含む、T細胞の強力なスティミュレーターである。引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている、Strobelらの文献(2000, Human Gene Therapy 11:2207-2218)を参照されたい。
【0532】
本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、該ポリペプチドを標的細胞、例えば、DCと接触させ、該ポリペプチドを標的細胞に送達する任意の方法で標的細胞に送達することができる。ある実施態様において、本明細書に記載されているように、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを対象に送達する。いくつかのそのような実施態様において、ポリペプチドと接触させた細胞を単離し、増殖させることができる。
【0533】
ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドをインビトロで標的細胞に送達する。当業者に公知の技術を用いて、標的細胞にポリペプチドを送達することができる。例えば、標的細胞を、組織培養プレート、チューブ、又は他の容器中のポリペプチドと接触させることができる。ポリペプチドを培地に懸濁し、培養プレートのウェル、チューブ、又は他の容器に添加することができる。ポリペプチドを含む培地を、細胞のプレーティングの前に、又は細胞をプレーティングした後に添加することができる。標的細胞は、ポリペプチドを細胞と接触させるのに十分な量の時間、ポリペプチドとともにインキュベートすることが好ましい。ある実施態様において、細胞を、ポリペプチドとともに、約1時間以上、約5時間以上、約10時間以上、約12時間以上、約16時間以上、約24時間以上、約48時間以上、約1時間〜約12時間、約3時間〜約6時間、約6時間〜約12時間、約12時間〜約24時間、又は約24時間〜約48時間インキュベートする。flu血球凝集素(HA)ポリペプチドがウイルス中にある、ある実施態様において、標的細胞を接触させることは、細胞をウイルスに感染させることを含む。
【0534】
標的細胞は、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、及びモルモットを含む、任意の種由来のものであることができる。いくつかの実施態様において、標的細胞は、健康な対象又は治療を必要とする対象から得られるDCである。ある実施態様において、標的細胞は、ポリペプチドに対する免疫応答を刺激することが望ましい対象から得られるDCである。対象から細胞を得る方法は、当技術分野で周知である。
【0535】
(5.14 組成物)
本明細書に記載の核酸、ベクター、ポリペプチド、細菌、抗体、又は細胞(本明細書では「活性化合物」と呼ばれることもある)を組成物に組み込むことができる。具体的な実施態様において、組成物は、医薬組成物、例えば、免疫原性組成物(例えば、ワクチン製剤)である。本明細書に提供される医薬組成物は、組成物を対象に投与することができる任意の形態であることができる。具体的な実施態様において、医薬組成物は、獣医学的投与及び/又はヒトへの投与に好適である。組成物は、インフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法で使用することができる。
【0536】
一実施態様において、医薬組成物は、医薬として許容し得る担体との混合物中に、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)を含む。別の実施態様において、医薬組成物は、医薬として許容し得る担体との混合物中に、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする核酸を含む。別の実施態様において、医薬組成物は、医薬として許容し得る担体との混合物中に、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターを含む。別の実施態様において、医薬組成物は、医薬として許容し得る担体との混合物中に、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むインフルエンザウイルス又は非インフルエンザウイルスを含む。別の実施態様において、医薬組成物は、医薬として許容し得る担体との混合物中に、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するように改変されたゲノムを有するインフルエンザウイルス又は非インフルエンザウイルスを含む。別の実施態様において、医薬組成物は、医薬として許容し得る担体との混合物中に、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むウイルス様粒子又はウイロソームを含む。別の実施態様において、医薬組成物は、医薬として許容し得る担体との混合物中に、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するか、又はそれを発現するように改変された細菌を含む。別の実施態様において、医薬組成物は、医薬として許容し得る担体との混合物中に、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドで刺激された細胞を含む。
【0537】
いくつかの実施態様において、医薬組成物は、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを利用する療法に加えて1以上の他の療法を含むことができる。
【0538】
本明細書で使用されるように、「医薬として許容し得る」という用語は、動物、より具体的にはヒトでの使用について、連邦政府もしくは州政府の規制当局に承認されているか、又は米国薬局方もしくは他の一般に認められた薬局方に記載されていることを意味する。「担体」という用語は、医薬組成物がそれとともに投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、又は媒体を指す。食塩水溶液及び水性デキストロース溶液及びグリセロール溶液を、特に注射用溶液のための液体担体として利用することもできる。好適な賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。好適な医薬担体の例は、E. W. Martin著「レミントンの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」に記載されている。製剤は、投与様式に適するべきである。
【0539】
具体的な実施態様において、医薬組成物は、対象への意図された投与経路に好適であるように製剤化される。例えば、医薬組成物は、非経口、経口、皮内、経皮、結腸直腸、腹腔内、及び直腸投与に適するように製剤化することができる。具体的な実施態様において、医薬組成物は、静脈内、経口、腹腔内、鼻腔内、気管内、皮下、筋肉内、局所、皮内、経皮、又は肺投与用に製剤化することができる。
【0540】
ある実施態様において、生体分解性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリエチレングリコール(PEG化)、ポリメタクリル酸メチルポリマー、ポリラクチド、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸を担体として使用することができる。いくつかの実施態様において、活性化合物は、インプラント及びマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤のように、身体からの速やかな消失からの化合物の保護を増大させる担体を用いて調製される。そのような製剤の調製方法は当業者には明らかであろう。リポソーム又はミセルを医薬として許容し得る担体として使用することもできる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているような、当業者に公知の方法によって調製することができる。ある実施態様において、医薬組成物は、1以上のアジュバントを含む。
【0541】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の免疫原性組成物は、一価製剤である。他の実施態様において、本明細書に記載の免疫原性組成物は、多価製剤である。一例において、多価製剤は、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現する2以上のベクターを含む。ある実施態様において、多価製剤は、単一のベクターを用いて発現される1以上の異なるflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むことができる。
【0542】
ある実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、防腐剤、例えば、水銀誘導体のチメロサールをさらに含む。具体的な実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、0.001%〜0.01%のチメロサールを含む。他の実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、防腐剤を含まない。具体的な実施態様において、チメロサールは、本明細書に記載の医薬組成物の製造時に使用され、チメロサールは、医薬組成物の生産後の精製工程を通して除去される、すなわち、医薬組成物は、微量のチメロサールを含む(精製後に、1用量当たり<0.3μgの水銀;そのような医薬組成物は、チメロサール不含製品とみなされる)。
【0543】
ある実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、卵タンパク質(例えば、オボアルブミン又は他の卵タンパク質)をさらに含む。本明細書に記載の医薬組成物中の卵タンパク質の量は、1mlの医薬組成物に対して、約0.0005〜約1.2μgの卵タンパク質であることができる。他の実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、卵タンパク質を含まない。
【0544】
ある実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、限定されないが、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ポリミキシン(例えば、ポリミキシンB)及びカナマイシン、ストレプトマイシンを含む、1以上の抗微生物剤(例えば、抗生物質)をさらに含む。他の実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、いかなる抗生物質も含まない。
【0545】
ある実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、ウイルスを不活化するために使用される1以上の成分、例えば、ホルマリンもしくはホルムアルデヒド、又は界面活性剤、例えば、デオキシコール酸ナトリウム、オクトキシノール9(TritonX-100)、及びオクトキシノール10をさらに含む。他の実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、ウイルスを不活化するために使用されるいかなる成分も含まない。
【0546】
ある実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、ゼラチンをさらに含む。他の実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、ゼラチンを含まない。
【0547】
ある実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、1以上の緩衝剤、例えば、リン酸緩衝剤及びスクロースホスフェートグルタメート緩衝剤をさらに含む。他の実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、緩衝剤を含まない。
【0548】
ある実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、1以上の塩、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、グルタミン酸一ナトリウム、及びアルミニウム塩(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、ミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム)、又はそのようなアルミニウム塩の混合物)をさらに含む。他の実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、塩を含まない。
【0549】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、低添加剤インフルエンザウイルスワクチンである、すなわち、該医薬組成物は、インフルエンザウイルスワクチン中に一般に見られる1以上の添加剤を含まない。低添加剤インフルエンザワクチンは記載されている(例えば、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている、国際公開WO 09/001217号として公開された国際出願PCT/IB2008/002238号を参照されたい)。
【0550】
本明細書に記載の医薬組成物は、投与のための説明書と一緒に、容器、パック、又はディスペンサーに含めることができる。
【0551】
本明細書に記載の医薬組成物は、使用前に保存することができ、例えば、該医薬組成物は、冷凍して(例えば、約-20℃もしくは約-70℃で)保存するか;冷蔵条件で(例えば、約4℃で)保存するか;又は室温で保存することができる(インフルエンザワクチンを含む組成物を冷蔵しないで保存する方法については、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている、国際公開WO 07/110776号として公開された国際出願PCT/IB2007/001149号を参照されたい)。
【0552】
ある実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物中の活性化合物が、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するように改変された細胞である場合、該医薬組成物中の細胞は、哺乳動物細胞(例えば、CB-1細胞)ではない。
【0553】
(5.14.1 サブユニットワクチン)
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)を含むサブユニットワクチンである。いくつかの実施態様において、サブユニットワクチンは、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド、及び1以上の表面糖タンパク質(例えば、インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ)、他のターゲッティング部分、又はアジュバントを含む。具体的な実施態様において、サブユニットワクチンは、単一のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む。他の実施態様において、サブユニットワクチンは、2つ、3つ、4つ、又はそれより多くのflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む。具体的な実施態様において、サブユニットワクチンで使用されるflu血球凝集素(HA)ポリペプチド(複数可)は、膜結合型でない、すなわち、それは可溶性である。
【0554】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、1用量当たり、約10μg〜約60μgの本明細書に記載の1以上のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、約0.001%〜0.01%のチメロサール、約0.1μg〜約1.0μgの鶏卵タンパク質、約1.0μg〜約5.0μgのポリミキシン、約1.0μg〜約5.0μgのネオマイシン、約0.1μg〜約0.5μgのベータプロピオラクトン、及び約0.001〜約0.05w/v%のノニルフェノールエトキシレートを含むサブユニットワクチンである。
【0555】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるサブユニットワクチンは、45μgの本明細書に提供されるflu血球凝集素(HA)ポリペプチド(複数可)、1.0μg以下の水銀(チメロサール由来)、1.0μg以下の鶏卵タンパク質(すなわち、オボアルブミン)、3.75μg以下のポリミキシン、及び2.5μg以下のネオマイシンを含む0.5ml用量を含むか又はそれからなる。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるサブユニットワクチンは、1用量当たり、0.5μg以下のベータプロピオラクトン及び0.015w/v%以下のノニルフェノールエトキシレートをさらに含むか、又はそれらからなる。いくつかの実施態様において、0.5ml用量のサブユニットワクチンは、充填済み注射器にパックされる。
【0556】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるサブユニットワクチンは、45μgの本明細書に提供されるflu血球凝集素(HA)ポリペプチド(複数可)、25.0μgの水銀(チメロサール由来)、1.0μg以下の鶏卵タンパク質(すなわち、オボアルブミン)、3.75μg以下のポリミキシン、及び2.5μg以下のネオマイシンを含む5.0mlの多用量バイアル(1用量当たり、0.5ml)からなる。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるサブユニットワクチンは、1用量当たり、0.5μg以下のベータプロピオラクトン及び0.015w/v%以下のノニルフェノールエトキシレートをさらに含むか、又はそれらからなる。
【0557】
具体的な実施態様において、サブユニットワクチンは、発育鶏卵で増殖させたインフルエンザウイルスを用いて調製される(すなわち、サブユニットワクチンの成分(例えば、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド)は、発育鶏卵で増殖させたウイルスから単離される)。別の具体的な実施態様において、サブユニットワクチンは、発育鶏卵で増殖させなかったインフルエンザウイルスを用いて調製される(すなわち、サブユニットワクチンの成分(例えば、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド)は、発育鶏卵で増殖させなかったウイルスから単離される)。別の具体的な実施態様において、サブユニットワクチンは、哺乳動物細胞、例えば、不死化ヒト細胞(例えば、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている、国際公開WO 07/045674号として公開された国際出願PCT/EP2006/067566号を参照されたい)、又はイヌ腎臓細胞、例えば、MDCK細胞(例えば、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている、国際公開WO 08/032219号として公開された国際出願PCT/IB2007/003536号を参照されたい)で増殖させたインフルエンザウイルスを用いて調製される(すなわち、サブユニットワクチンの成分(例えば、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド)は、哺乳動物細胞で増殖させたウイルスから単離される)。別の具体的な実施態様において、サブユニットワクチン中の血球凝集素ステムドメインポリペプチド(複数可)は、発現ベクター、例えば、ウイルスベクター、植物ベクター、又は細菌ベクターを用いて調製される(すなわち、サブユニットワクチン中のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド(複数可)は、発現ベクターから得られる/単離される)。
【0558】
(5.14.2 生ウイルスワクチン)
一実施態様において、本明細書に提供されるのは、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)を含む生ウイルスを含む免疫原性組成物(例えば、ワクチン)である。別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、組成物を投与される対象で産生される子孫ウイルスによって発現されるflu血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードするように改変されている生ウイルスを含む免疫原性組成物(例えば、ワクチン)である。具体的な実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、膜結合型である。他の具体的な実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは膜結合型ではない、すなわち、可溶性である。特定の実施態様において、生ウイルスは、上の第5.7節に記載されているような、インフルエンザウイルスである。他の実施態様において、生ウイルスは、上の第5.8節に記載されているような、非インフルエンザウイルスである。いくつかの実施態様において、生ウイルスは弱毒化されている。いくつかの実施態様において、免疫原性組成物は、2つ、3つ、4つ、もしくはそれより多くの異なるflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むか、又はそれらを発現するように改変されている、2つ、3つ、4つ、又はそれより多くの生ウイルスを含む。
【0559】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、1用量当たり、本明細書に記載の1以上のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む約105〜約1010蛍光焦点単位(FFU)の弱毒化生インフルエンザウイルス、約0.1〜約0.5mgのグルタミン酸一ナトリウム、約1.0〜約5.0mgの加水分解ブタ(procine)ゼラチン、約1.0〜約5.0mgのアルギニン、約10〜約15mgのスクロース、約1.0〜約5.0mgの二塩基性リン酸カリウム、約0.5〜約2.0mgのリン酸二水素カリウム、及び約0.001〜約0.05μg/mlの硫酸ゲンタマイシンを含む免疫原性組成物(例えば、ワクチン)である。いくつかの実施態様において、免疫原性組成物(例えば、ワクチン)は、単一の0.2ml用量を含む充填済み噴霧器としてパックされる。
【0560】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、1用量当たり、本明細書に記載の1以上のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む106.5〜107.5FFUの弱毒化生インフルエンザウイルス、0.188mgのグルタミン酸一ナトリウム、2.0mgの加水分解ブタゼラチン、2.42mgのアルギニン、13.68mgのスクロース、2.26mgの二塩基性リン酸カリウム、0.96mgのリン酸二水素カリウム、及び0.015μg/ml未満の硫酸ゲンタマイシンを含む免疫原性組成物(例えば、ワクチン)である。いくつかの実施態様において、免疫原性組成物(例えば、ワクチン)は、単一の0.2ml用量を含む充填済み噴霧器としてパックされる。
【0561】
具体的な実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む生ウイルスを、本明細書に記載の免疫原性組成物中でのその使用の前に、発育鶏卵で増殖させる。別の具体的な実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む生ウイルスを、本明細書に記載の免疫原性組成物中でのその使用の前に、発育鶏卵で増殖させない。別の具体的な実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む生ウイルスを、本明細書に記載の免疫原性組成物中でのその使用の前に、哺乳動物細胞、例えば、不死化ヒト細胞(例えば、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている、国際公開WO 07/045674号として公開された国際出願PCT/EP2006/067566号を参照されたい)、又はイヌ腎臓細胞、例えば、MDCK細胞(例えば、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている、国際公開WO 08/032219号として公開された国際出願PCT/IB2007/003536号を参照されたい)で増殖させる。
【0562】
対象でのウイルスの増殖は、自然感染で起こるものと同様の種類及び程度の長期刺激をもたらし、そのため、かなりの長期持続性免疫を付与することができるので、対象への投与用の生ウイルスを含む免疫原性組成物が好ましい場合がある。
【0563】
(5.14.3 不活化ウイルスワクチン)
一実施態様において、本明細書に提供されるのは、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)を含む不活化ウイルスを含む免疫原性組成物(例えば、ワクチン)である。具体的な実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは膜結合型である。特定の実施態様において、不活化ウイルスは、上の第5.7節に記載されているような、インフルエンザウイルスである。他の実施態様において、不活化ウイルスは、上の第5.8節に記載されているような、非インフルエンザウイルスである。いくつかの実施態様において、免疫原性組成物は、2つ、3つ、4つ、又はそれより多くの異なるflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む、2つ、3つ、4つ、又はそれより多くの不活化ウイルスを含む。ある実施態様において、不活化ウイルス免疫原性組成物は、1以上のアジュバントを含む。
【0564】
当業者に公知の技術を用いて、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むウイルスを不活化することができる。一般的な方法は、不活化のためにホルマリン、熱、又は界面活性剤を使用する。例えば、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている、米国特許第6,635,246号を参照されたい。他の方法としては、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている、米国特許第5,891,705号;第5,106,619号及び第4,693,981号に記載されているものが挙げられる。
【0565】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、免疫原性組成物の各用量が、約15〜約60μgの本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、約1.0〜約5.0mgの塩化ナトリウム、約20〜約100μgの一塩基リン酸ナトリウム、約100〜約500μgのリン酸水素ナトリウム、約5〜約30μgのリン酸二水素カリウム、約5〜約30μgの塩化カリウム、及び約0.5〜約3.0μgの塩化カルシウムを含むような、不活化インフルエンザウイルスを含む免疫原性組成物(例えば、ワクチン)である。いくつかの実施態様において、免疫原性組成物(例えば、ワクチン)は、単一の0.25ml又は単一の0.5mlの用量としてパックされる。他の実施態様において、免疫原性組成物(例えば、ワクチン)は、多用量製剤としてパックされる。
【0566】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、免疫原性組成物の各用量が、1用量当たり、約15〜約60μgの本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、約0.001%〜0.01%のチメロサール、約1.0〜約5.0mgの塩化ナトリウム、約20〜約100μgの一塩基リン酸ナトリウム、約100〜約500μgのリン酸水素ナトリウム、約5〜約30μgのリン酸二水素カリウム、約5〜約30μgの塩化カリウム、及び約0.5〜約3.0μgの塩化カルシウムを含むような、不活化インフルエンザウイルスを含む免疫原性組成物(例えば、ワクチン)である。いくつかの実施態様において、免疫原性組成物(例えば、ワクチン)は、単一の0.25ml又は単一の0.5mlの用量としてパックされる。他の実施態様において、免疫原性組成物(例えば、ワクチン)は、多用量製剤としてパックされる。
【0567】
具体的な実施態様において、本明細書に提供される免疫原性組成物(例えば、ワクチン)は、単一の0.25ml用量としてパックされ、1用量当たり、22.5μgの本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、2.05mgの塩化ナトリウム、40μgの一塩基リン酸ナトリウム、150μgのリン酸水素ナトリウム、10μgのリン酸二水素カリウム、10μgの塩化カリウム、及び0.75μgの塩化カルシウムを含む。
【0568】
具体的な実施態様において、本明細書に提供される免疫原性組成物(例えば、ワクチン)は、単一の0.5ml用量としてパックされ、1用量当たり、45μgの本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、4.1mgの塩化ナトリウム、80μgの一塩基リン酸ナトリウム、300μgのリン酸水素ナトリウム、20μgのリン酸二水素カリウム、20μgの塩化カリウム、及び1.5μgの塩化カルシウムを含む。
【0569】
具体的な実施態様において、免疫原性組成物(例えば、ワクチン)は、5.0mlのワクチン(1用量当たり、0.5ml)を含むか又はそれからなる多用量製剤としてパックされ、1用量当たり、24.5μgの水銀(チメロサール由来)、45μgの本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、4.1mgの塩化ナトリウム、80μgの一塩基リン酸ナトリウム、300μgのリン酸水素ナトリウム、20μgのリン酸二水素カリウム、20μgの塩化カリウム、及び1.5μgの塩化カルシウムを含む。
【0570】
具体的な実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む不活化ウイルスを、その不活化及びその後の本明細書に記載の免疫原性組成物中での使用の前に、発育鶏卵で増殖させた。別の具体的な実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む不活化ウイルスを、その不活化及びその後の本明細書に記載の免疫原性組成物中での使用の前に、発育鶏卵で増殖させなかった。別の具体的な実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む不活化ウイルスを、その不活化及びその後の本明細書に記載の免疫原性組成物中での使用の前に、哺乳動物細胞、例えば、不死化ヒト細胞(例えば、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている、国際公開WO 07/045674号として公開された国際出願PCT/EP2006/067566号を参照されたい)、又はイヌ腎臓細胞、例えば、MDCK細胞(例えば、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている、国際公開WO 08/032219号として公開された国際出願PCT/IB2007/003536号を参照されたい)で増殖させた。
【0571】
(5.14.4 スプリットウイルスワクチン)
一実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)を含む免疫原性組成物は、スプリットウイルスワクチンである。いくつかの実施態様において、スプリットウイルスワクチンは、2つ、3つ、4つ、又はそれより多くの異なるflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、膜結合型である/あった。ある実施態様において、スプリットウイルスワクチンは、1以上のアジュバントを含む。
【0572】
スプリットウイルスワクチンの産生技術は当業者に公知である。非限定的な例として、インフルエンザウイルススプリットワクチンは、界面活性剤で破壊された不活化粒子を用いて調製することができる。本明細書に記載の方法による使用に適合させることができるスプリットウイルスワクチンの一例は、筋肉内使用のためのfluzone(登録商標)インフルエンザウイルスワクチン(ゾーン精製、サブビリオン)であり、それを、発育鶏卵で増殖させたインフルエンザウイルスから調製される滅菌懸濁剤として製剤化する。ウイルス含有液を回収し、ホルムアルデヒドで不活化する。インフルエンザウイルスを、連続フロー遠心分離機を用いて、線形ショ糖密度勾配溶液中で濃縮し、精製する。次に、ウイルスを、非イオン性界面活性剤、オクトキシノール-9(Triton(登録商標)X-100-Union Carbide社の登録商標)を用いて化学的に破壊し、「スプリットウイルス」を生じさせる。次に、このスプリットウイルスを、化学手段によってさらに精製し、リン酸ナトリウム緩衝生理食塩液に懸濁する。
【0573】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、約10μg〜約60μgの本明細書に記載の1以上のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、約0.01〜約1.0mgのオクトキシノール-10(TRITON X-100(登録商標))、約0.5〜0.5mgのα-トコフェリルハイドロジェンスクシネート、約0.1〜1.0mgのポリソルベート80(Tween 80)、約0.001〜約0.003μgのヒドロコルチゾン、約0.05〜約0.3μgの硫酸ゲンタマイシン(gentamcin)、約0.5〜約2.0μgの鶏卵タンパク質(オボアルブミン)、約25〜75μgのホルムアルデヒド、及び約25〜75μgのデオキシコール酸ナトリウムを含むスプリットウイルスワクチンである。
【0574】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるスプリットウイルスワクチンは、45μgの本明細書に提供されるflu血球凝集素(HA)ポリペプチド(複数可)、0.085mg以下のオクトキシノール-10(TRITON X-100(登録商標))、0.1mg以下のα-トコフェリルハイドロジェンスクシネート、0.415mg以下のポリソルベート80(Tween 80)、0.0016μg以下のヒドロコルチゾン、0.15μg以下の硫酸ゲンタマイシン、1.0以下の鶏卵タンパク質(オボアルブミン)、50μg以下のホルムアルデヒド、及び50μg以下のデオキシコール酸ナトリウムを含む0.5ml用量を含むか又はそれからなる。いくつかの実施態様において、0.5ml用量のサブユニットワクチンは、充填済み注射器にパックされる。
【0575】
具体的な実施態様において、スプリットウイルスワクチンは、発育鶏卵で増殖させたインフルエンザウイルスを用いて調製される。別の具体的な実施態様において、スプリットウイルスワクチンは、発育鶏卵で増殖させなかったインフルエンザウイルスを用いて調製される。別の具体的な実施態様において、スプリットウイルスワクチンは、哺乳動物細胞、例えば、不死化ヒト細胞(例えば、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている、WO 07/045674号として公開された国際出願PCT/EP2006/067566号を参照されたい)、又はイヌ腎臓細胞、例えば、MDCK細胞(例えば、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている、WO 08/032219号として公開された国際出願PCT/IB2007/003536号を参照されたい)で増殖させたインフルエンザウイルスを用いて調製される。
【0576】
(5.14.5 アジュバント)
ある実施態様において、本明細書に記載の組成物は、アジュバントを含むか、又はそれと併用投与される。本明細書に記載の組成物との併用投与のためのアジュバントは、該組成物の投与前、それと同時、又はその後に投与されてもよい。いくつかの実施態様において、「アジュバント」という用語は、本明細書に記載の組成物とともに又はその一部として投与した場合、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)に対する免疫応答を強化し、増強し、及び/又は増進させるが、その化合物を単独で投与した場合、ポリペプチドに対する免疫応答を生じさせない化合物を指す。いくつかの実施態様において、アジュバントは、ポリペプチドに対する免疫応答を生じさせ、アレルギー又は他の有害反応を生じさせない。アジュバントは、例えば、リンパ球動員、B及び/又はT細胞の刺激、並びにマクロファージの刺激を含むいくつかの機構によって、免疫応答を増強することができる。
【0577】
ある実施態様において、アジュバントは、応答の定性的形態に影響を及ぼすポリペプチドの立体構造変化を引き起こすことなく、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドに対する固有の応答を強化する。アジュバントの具体的な例としては、アルミニウム塩(ミョウバン)(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、及び硫酸アルミニウム)、3デ-O-アシル化モノホスホリル脂質A(MPL)(GB 2220211号参照)、MF59(Novartis)、AS03(GlaxoSmithKline)、AS04(GlaxoSmithKline)、ポリソルベート80(Tween 80;ICL Americas社)、イミダゾピリジン化合物(国際公開WO 2007/109812号として公開された国際出願PCT/US2007/064857号参照)、イミダゾキノキサリン化合物(国際公開WO 2007/109813号として公開された国際出願PCT/US2007/064858号参照)、及びサポニン、例えば、QS21(Kensilらの文献、ワクチンの設計:サブユニット及びアジュバント手法(Vaccine Design: The Subunit and Adjuvant Approach)(Powell及びNewman編, Plenum Press, NY, 1995);米国特許第5,057,540号参照)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様において、アジュバントは、フロイントアジュバント(完全又は不完全)である。他のアジュバントは、任意に免疫賦活剤、例えば、モノホスホリル脂質Aと組み合わせた、水中油エマルジョン(例えば、スクアレン又は落花生油)である(Stouteらの文献(N. Engl. J. Med. 336, 86-91(1997))参照)。別のアジュバントは、CpGである(Bioworld Today, 1998年11月15日)。そのようなアジュバントは、他の特異的免疫刺激剤、例えば、MPLもしくは3-DMP、QS21、重合体もしくは単量体のアミノ酸、例えば、ポリグルタミン酸もしくはポリリジン、又は上の第5.4節に記載されている他の免疫増強剤とともに、又はそれらなしで使用することができる。flu血球凝集素(HA)ポリペプチドの異なる製剤が、異なるアジュバントを含み得るか、又は同じアジュバントを含み得ることを理解すべきである。
【0578】
(5.15 予防的及び治療的使用)
一態様において、本明細書に提供されるのは、活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は本明細書に記載の組成物を利用して、対象の免疫応答を誘導する方法である。具体的な実施態様において、対象のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに対する免疫応答を誘導する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド又はその免疫原性組成物の有効量を投与することを含む。別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに対する免疫応答を誘導する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする核酸又はその免疫原性組成物の有効量を投与することを含む。別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに対する免疫応答を誘導する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むかもしくは発現するウイルスベクター、又はその免疫原性組成物の有効量を投与することを含む。さらに別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに対する免疫応答を誘導する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド又はその医薬組成物の有効量で刺激された細胞を投与することを含む。ある実施態様において、本方法で使用される本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、哺乳動物細胞、植物細胞、又は昆虫細胞に由来する本明細書に記載の精製されたflu血球凝集素(HA)ポリペプチドである。
【0579】
具体的な実施態様において、対象のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに対する免疫応答を誘導する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のサブユニットワクチンを投与することを含む。別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに対する免疫応答を誘導する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載の生ウイルスワクチンを投与することを含む。特定の実施態様において、生ウイルスワクチンは、弱毒化ウイルスを含む。別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに対する免疫応答を誘導する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載の不活化ウイルスワクチンを投与することを含む。別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに対する免疫応答を誘導する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のスプリットウイルスワクチンを投与することを含む。別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに対する免疫応答を誘導する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のウイルス様粒子ワクチンを投与することを含む。別の実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ポリペプチドに対する免疫応答を誘導する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のウイロソームを投与することを含む。別の実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ポリペプチドに対する免疫応答を誘導する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するかもしくは発現するように改変された細菌又はその組成物を投与することを含む。ある実施態様において、本方法で使用される本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、哺乳動物細胞、植物細胞、又は昆虫細胞に由来する本明細書に記載の精製されたflu血球凝集素(HA)ポリペプチドである。
【0580】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物によって誘導される免疫応答は、インフルエンザウイルスの任意の亜型又は株によって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効である。ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物によって誘導される免疫応答は、一方のHAグループ(例えば、H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、及びH16を含むグループ1)に属し、もう一方のHAグループ(例えば、H3、H4、H7、H10、H14、及びH15を含むグループ2)に属さないインフルエンザウイルスの亜型によって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効である。例えば、誘導される免疫応答は、H11、H13、H16、H9、H8、H12、H6、H1、H5、及びH2からなるHAグループに属するインフルエンザウイルスによって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効であり得る。或いは、誘導される免疫応答は、H3、H4、H14、H10、H15、及びH7からなるHAグループに属するインフルエンザウイルスによって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効であり得る。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物によって誘導される免疫応答は、インフルエンザウイルスの1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの亜型によって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効である。ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物によって誘導される免疫応答は、インフルエンザウイルスの6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、又は15の亜型によって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物によって誘導される免疫応答は、インフルエンザウイルスの同じ亜型内の1以上の変異体によって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効である。
【0581】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物によって誘導される免疫応答は、H1N1とH2N2の両方の亜型によって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効である。他の実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物によって誘導される免疫応答は、H1N1とH2N2の両方の亜型によって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効でない。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物によって誘導される免疫応答は、H1N1、H2N2、及びH3N2の亜型によって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物によって誘導される免疫応答は、H3N2亜型によって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効である。他の実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物によって誘導される免疫応答は、H3N2亜型によって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効でない。
【0582】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物によって誘導される免疫応答は、インフルエンザウイルスの任意の亜型又は株によって引き起こされるインフルエンザウイルス疾患を予防及び/又は治療するのに有効である。ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物によって誘導される免疫応答は、一方のHAグループに属し、もう一方のHAグループに属さないインフルエンザウイルスの亜型によって引き起こされるインフルエンザウイルス疾患を予防及び/又は治療するのに有効である。例えば、誘導される免疫応答は、H11、H13、H16、H9、H8、H12、H6、H1、H5、及びH2からなるHAグループに属するインフルエンザウイルスによって引き起こされるインフルエンザウイルス疾患を予防及び/又は治療するのに有効であり得る。或いは、誘導される免疫応答は、H3、H4、H14、H10、H15、及びH7からなるHAグループに属するインフルエンザウイルスによって引き起こされるインフルエンザウイルス疾患を予防及び/又は治療するのに有効であり得る。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物によって誘導される免疫応答は、インフルエンザウイルスの1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの亜型のいずれかによって引き起こされるインフルエンザウイルス疾患を予防及び/又は治療するのに有効である。ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物によって誘導される免疫応答は、インフルエンザウイルスの6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、又は15の亜型のいずれかによって引き起こされるインフルエンザウイルス疾患を予防及び/又は治療するのに有効である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物によって誘導される免疫応答は、インフルエンザウイルスの同じ亜型内の1以上の変異体によって引き起こされるインフルエンザウイルス疾患を予防及び/又は治療するのに有効である。
【0583】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物によって誘導される免疫応答は、インフルエンザウイルス疾患/感染に起因する症状を軽減するのに有効である。インフルエンザウイルス疾患/感染の症状としては、体の痛み(特に、関節及び咽喉)、発熱、吐き気、頭痛、ひりひり痛む目、疲労、咽喉炎、赤くなった目又は皮膚、並びに腹痛が挙げられるが、これらに限定されない。
【0584】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物によって誘導される免疫応答は、インフルエンザウイルス疾患/感染に罹患している対象の入院を減少させるのに有効である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物によって誘導される免疫応答は、インフルエンザウイルス疾患/感染に罹患している対象の入院期間を短縮するのに有効である。
【0585】
別の態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物を利用して、対象のインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療する方法である。一実施態様において、対象のインフルエンザウイルス感染を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター、又は上記のいずれか1つの組成物を投与することを含む。具体的な実施態様において、対象のインフルエンザウイルス感染を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、サブユニットワクチン、生ウイルスワクチン、不活化ウイルスワクチン、スプリットウイルスワクチン、又はウイルス様粒子ワクチンを投与することを含む。
【0586】
別の態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター、又はそのようなポリペプチドで刺激された細胞を利用して、対象のインフルエンザウイルス疾患を予防及び/又は治療する方法である。具体的な実施態様において、対象のインフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド又はその免疫原性組成物の有効量を投与することを含む。別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする核酸又はその免疫原性組成物の有効量を投与することを含む。別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むかもしくは発現するウイルスベクター、又はその免疫原性組成物の有効量を投与することを含む。さらに別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドで刺激された細胞又はその医薬組成物の有効量を投与することを含む。
【0587】
具体的な実施態様において、対象のインフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載されるサブユニットワクチンを投与することを含む。別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載の生ウイルスワクチンを投与することを含む。特定の実施態様において、生ウイルスワクチンは、弱毒化ウイルスを含む。別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載の不活化ウイルスワクチンを投与することを含む。別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のスプリットウイルスワクチンを投与することを含む。別の実施態様において、インフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のウイルス様粒子ワクチンを投与することを含む。別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のウイロソームを投与することを含む。別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するかもしくは発現するように改変された細菌又はその組成物を投与することを含む。
【0588】
別の態様において、本明細書に提供されるのは、対象をインフルエンザウイルス疾患又は感染に対して免疫する方法であって、該対象が感作されていないインフルエンザウイルスの血球凝集素を曝露させることを含む、方法であり、すなわち、該対象は、過去にインフルエンザウイルス及び/又はインフルエンザウイルスの血球凝集素に曝露されたことがない。
【0589】
一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象をインフルエンザウイルス疾患又は感染に対して免疫する方法であって、該対象に1以上のインフルエンザウイルスを投与することを含む、方法であり、ここで、該1以上のインフルエンザウイルスの各々は、該対象が感作されていない血球凝集素ポリペプチドを含み、すなわち、該対象は、過去に該1以上のインフルエンザウイルスに曝露されたことがない。具体的な実施態様において、該1以上のインフルエンザウイルスは、亜型H2、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、及び/又はH17のインフルエンザウイルスである。別の具体的な実施態様において、該方法は、(i)亜型H2、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、又はH17のインフルエンザウイルスの第1の投与、及び(ii)亜型H2、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、又はH17のインフルエンザウイルスの第2の投与を含み、ここで、第1の投与のインフルエンザウイルスは、第2の投与のインフルエンザウイルスとは異なる亜型のものである。該第1及び第2の投与は、少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2カ月、75日、3カ月、又は少なくとも6カ月隔てることができる。別の具体的な実施態様において、該方法は、(i)亜型H2、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、又はH17のインフルエンザウイルスの第1の投与;(ii)亜型H2、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、又はH17インフルエンザウイルスの第2の投与;及び(iii)亜型H2、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、又はH17のインフルエンザウイルスの第3の投与を含み、ここで、該第1、第2、及び第3の投与のインフルエンザウイルスは、異なる亜型のものである。該第1、第2、及び第3の投与は、少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2カ月、75日、3カ月、又は少なくとも6カ月隔てることができる。
【0590】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象をインフルエンザウイルス疾患又は感染に対して免疫する方法であって、該対象に該対象が感作されていない1以上のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを投与することを含む、方法であり、すなわち、該対象は、過去に該1以上のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに曝露されたことがない。ある実施態様において、該対象が感作されていない1以上のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、組成物(例えば、ワクチンを含む組成物)中にある。ある実施態様において、該対象が感作されていない1以上のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、ベクター、例えば、インフルエンザウイルスベクター中にある。ある実施態様において、該対象が感作されていない1以上のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、VLP中にある。ある実施態様において、該対象が感作されていない1以上のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、ウイロソーム中にある。具体的な実施態様において、該1以上のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、亜型H2、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、及び/又はH17のインフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドである。別の具体的な実施態様において、該方法は、(i)亜型H2、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、又はH17のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの第1の投与及び(ii)亜型H2、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、又はH17のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの第2の投与を含み、ここで、第1の投与のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、第2の投与のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドとは異なる亜型のものである。該第1及び第2の投与は、少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2カ月、75日、3カ月、又は少なくとも6カ月隔てることができる。別の具体的な実施態様において、該方法は、(i)亜型H2、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、又はH17のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの第1の投与;(ii)亜型H2、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、又はH17のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの第2の投与;及び(iii)亜型H2、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、又はH17のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの第3の投与を含み、ここで、該第1、第2、及び第3の投与のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、異なるインフルエンザウイルス亜型由来のものである。該第1、第2、及び第3の投与は、少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2カ月、75日、3カ月、又は少なくとも6カ月隔てることができる。
【0591】
別の実施態様において、該方法は、(i)本明細書に記載の第1のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むか又は発現するベクターの第1の投与;及び(ii)本明細書に記載の第2のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)の第2の投与を含み、ここで、該第1及び第2のflu HAポリペプチドは、同じステムドメインを有する。ある実施態様において、該第1及び第2のflu HAポリペプチドの球状ヘッドドメインは異なる。ある実施態様において、該第1及び第2のflu HAポリペプチドの球状ヘッドドメインは同じ株由来のものである。該第1及び第2の投与は、少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2カ月、75日、3カ月、又は少なくとも6カ月隔てることができる。ある実施態様において、追加免疫接種を対象に6〜12カ月の間隔で投与し、次いで、2回目の接種を行なうことができる。
【0592】
別の実施態様において、該方法は、(i)インフルエンザウイルスの第1の投与;及び(ii)本明細書に記載のflu HAポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)の第2の投与を含み、ここで、該インフルエンザウイルス及び該flu HAポリペプチドは、同じステムドメインを有する。ある実施態様において、該インフルエンザウイルス及び該flu HAポリペプチドの球状ヘッドドメインは異なる。該第1及び第2の投与は、少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2カ月、75日、3カ月、又は少なくとも6カ月隔てることができる。ある実施態様において、追加免疫接種を対象に6〜12カ月の間隔で投与し、次いで、2回目の接種を行なうことができる。
【0593】
別の態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の中和抗体を投与することによって、対象でインフルエンザウイルス疾患を予防及び/又は治療する方法である。具体的な実施態様において、対象でインフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載の中和抗体、又はその医薬組成物の有効量を投与することを含む。特定の実施態様において、中和抗体はモノクローナル抗体である。ある実施態様において、中和抗体は、CR6261、CR6325、CR6329、CR6307、CR6323、2A、D7、D8、F10、G17、H40、A66、D80、E88、E90、H98、C179(FERM BP-4517)、AI3C(FERM BP-4516)、又はEkiert DCらの文献(2009)高度に保存されたインフルエンザウイルスエピトープの抗体認識(Antibody Recognition of a Highly Conserved Influenza Virus Epitope)(Science(2009年2月26日にScience Expressで発表された); Kashyapらの文献(2008)トルコH5N1鳥インフルエンザ大発生の生存者由来のコンビナトリアル抗体ライブラリーは、ウイルス中和戦略を明らかにする(Combinatorial antibody libraries from survivors of the Turkish H5N1 avian influenza outbreak reveal virus neutralization strategies.)(Proc Natl Acad Sci U S A 105: 5986-5991);Suiらの文献(2009)鳥及びヒトA型インフルエンザウイルスの広域スペクトル中和のための構造及び機能的基礎(Structural and functional bases for broad-spectrum neutralization of avian and human influenza A virus.)(Nat Struct Mol Biol 16: 265-273);米国特許第5,589,174号、第5,631,350号、第6,337,070号、及び第6,720,409号;国際公開WO 2007/134237として公開された国際出願PCT/US2007/068983号;国際公開WO 2009/036157号として公開された国際出願PCT/US2008/075998号;国際公開WO 2008/028946号として公開された国際出願PCT/EP2007/059356号;及び国際公開WO 2009/079259号として公開された国際出願PCT/US2008/085876号に記載されている任意の他の抗体ではない。他の実施態様において、中和抗体は、Wangらの文献(2010)「異なる血球凝集素による連続免疫後のH3インフルエンザウイルスに対する広域防御性モノクローナル抗体(Broadly Protective Monoclonal Antibodies against H3 Influenza Viruses following Sequential Immunization with Different Hemagglutinins)」(PLOS Pathogens 6(2):1-9)に記載されている抗体ではない。
【0594】
ある実施態様において、本明細書に提供される、対象(例えば、ヒト又は非ヒト動物)のインフルエンザウイルス疾患又は感染を予防又は治療する方法は、当業者に公知及び本明細書に記載のインビボ及びインビトロアッセイにより測定したとき、対象でのインフルエンザウイルスの複製の低減をもたらす。いくつかの実施態様において、インフルエンザウイルスの複製は、約1log以上、約2log以上、約3log以上、約4log以上、約5log以上、約6log以上、約7log以上、約8log以上、約9log以上、約10log以上、1〜3log、1〜5log、1〜8log、1〜9log、2〜10log、2〜5log、2〜7log、2log〜8log、2〜9log、2〜10log、3〜5log、3〜7log、3〜8log、3〜9log、4〜6log、4〜8log、4〜9log、5〜6log、5〜7log、5〜8log、5〜9log、6〜7log、6〜8log、6〜9log、7〜8log、7〜9log、又は8〜9log低減される。
【0595】
下の実施例9は、キメラインフルエンザウイルスHAポリペプチドを用いて、どのようにして対象にインフルエンザウイルス感染に対するワクチンを接種することができるかということを示している。
【0596】
(5.15.1 併用療法)
様々な態様において、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞、又は中和抗体は、1以上の他の療法(例えば、抗ウイルス療法、抗細菌療法、もしくは免疫調節療法)との併用で対象に投与することができる。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物(例えば、免疫原性組成物)は、1以上の療法との併用で対象に投与することができる。1以上の他の療法は、インフルエンザウイルス疾患の治療もしくは予防に有益であることができるか、又はインフルエンザウイルス疾患と関連する症状もしくは状態を改善することができる。いくつかの実施態様において、1以上の他の療法は、鎮痛剤、解熱薬、又は呼吸を楽にするかもしくは助ける療法である。ある実施態様において、療法は、5分未満の間隔、30分未満の間隔、1時間の間隔、約1時間の間隔、約1〜約2時間の間隔、約2時間〜約3時間の間隔、約3時間〜約4時間の間隔、約4時間〜約5時間の間隔、約5時間〜約6時間の間隔、約6時間〜約7時間の間隔、約7時間〜約8時間の間隔、約8時間〜約9時間の間隔、約9時間〜約10時間の間隔、約10時間〜約11時間の間隔、約11時間〜約12時間の間隔、約12時間〜18時間の間隔、18時間〜24時間の間隔、24時間〜36時間の間隔、36時間〜48時間の間隔、48時間〜52時間の間隔、52時間〜60時間の間隔、60時間〜72時間の間隔、72時間〜84時間の間隔、84時間〜96時間の間隔、又は96時間〜120時間の間隔で投与される。具体的な実施態様において、2種以上の療法が、同じ患者(patent)診察時に投与される。
【0597】
当業者に周知の任意の抗ウイルス剤を、本明細書に記載の活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は医薬組成物と併用することができる。抗ウイルス剤の非限定的な例としては、その受容体へのウイルスの付着、細胞内へのウイルスの内在化、ウイルスの複製、又は細胞からのウイルスの放出を阻害及び/又は低減する、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、融合タンパク質抗体、核酸分子、有機分子、無機分子、及び小分子が挙げられる。特に、抗ウイルス剤としては、ヌクレオシド類似体(例えば、ジドブジン、アシクロビル、ガンシクロビル、ビダラビン、イドクスウリジン、トリフルリジン、及びリバビリン)、フォスカーネット、アマンタジン、ペラミビル、リマンタジン、サキナビル、インジナビル、リトナビル、α-インターフェロン及び他のインターフェロン、AZT、ザナミビル(Relenza(登録商標))、並びにオセルタミビル(Tamiflu(登録商標))が挙げられるが、これらに限定されない。他の抗ウイルス剤としては、インフルエンザウイルスワクチン、例えば、Fluarix(登録商標)(GlaxoSmithKline)、FluMist(登録商標)(MedImmune Vaccines)、Fluvirin(登録商標)(Chiron社)、Flulaval(登録商標)(GlaxoSmithKline)、Afluria(登録商標)(CSL Biotherapies社)、Agriflu(登録商標)(Novartis)、又はFluzone(登録商標)(Aventis Pasteur)が挙げられる。
【0598】
具体的な実施態様において、抗ウイルス剤は、ウイルス抗原に特異的である免疫調節剤である。特定の実施態様において、ウイルス抗原は、血球凝集素ポリペプチド以外のインフルエンザウイルスポリペプチドである。他の実施態様において、ウイルス抗原は、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドである。
【0599】
当業者に公知の任意の抗細菌剤を、本明細書に記載の活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は医薬組成物と併用することができる。抗細菌剤の非限定的な例としては、アミカシン、アモキシシリン、アモキシシリン-クラブラン酸、アンホテリシンB、アンピシリン、アンピシリン(Ampicllin)-スルバクタム、アプラマイシン、アジスロマイシン、アズトレオナム、バシトラシン、ベンジルペニシリン、カスポファンギン、セファクロル、セファドロキシル、セファレキシン、セファロチン、セファゾリン、セフジニル、セフェピム、セフィキシム、セフメノキシム、セフォペラゾン、セフォペラゾン-スルバクタム、セフォタキシム、セフォキシチン、セフピロム、セフポドキシム、セフポドキシム-クラブラン酸、セフポドキシム-スルバクタム、セフプロジル、セフキノム、セフタジジム、セフチブテン(Ceftibutin)、セフチオフル、セフトビプロール、セフトリアキソン、セフロキシム、クロラムフェニコール、フロルフェニコール、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、クリナフロキサシン、クリンダマイシン、クロキサシリン、コリスチン、コトリモキサゾール(トリムトプリム/スルファメトキサゾール)、ダルババンシン、ダルフォプリスチン/キノプリスチン、ダプトマイシン、ジベカシン、ジクロキサシリン、ドリペネム、ドキシサイクリン、エンロフロキサシン、エルタペネム、エリスロマイシン、フルクロキサシリン、フルコナゾール、フルシトシン、ホスホマイシン、フシジン酸、ガレノキサシン、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、ゲンタマイシン、イミペネム、イトラコナゾール、カナマイシン、ケトコナゾール、レボフロキサシン、リンコマイシン、リネゾリド、ロラカルベフ、メシルナム(アムジノシリン)、メロペネム、メトロニダゾール、メジオシリン、メズロシリン-スルバクタム、ミノサイクリン、モキシフロキサシン、ムピロシン、ナリジキシン酸、ネオマイシン、ネチルマイシン、ニトロフラントイン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、オキサシリン、ペフロキサシン、ペニシリンV、ピペラシリン、ピペラシリン-スルバクタム、ピペラシリン-タゾバクタム、リファンピシン、ロキシスロマイシン、スパルフロキサシン、スペクチノマイシン、スピラマイシン、ストレプトマイシン、スルバクタム、スルファメトキサゾール、テイコプラニン、テラバンシン、テリスロマイシン、テモシリン、テトラサイクリン、チカルシリン、チカルシリン-クラブラン酸、チゲサイクリン、トブラマイシン、トリメトプリム、トロバフロキサシン、タイロシン、バンコマイシン、バージニアマイシン及びボリコナゾールが挙げられる。
【0600】
いくつかの実施態様において、併用療法は、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、又は第5.2〜5.7節に記載の1以上のベクターによる能動免疫、及び第5.9節に記載の1以上の中和抗体による受動免疫を含む。いくつかの実施態様において、併用療法は、第5.2〜5.7節に記載の1以上のベクターによる免疫、及び第5.9節に記載の細胞の投与(例えば、養子移入による)を含む。
【0601】
いくつかの実施態様において、併用療法は、第5.2〜5.7節に記載の2以上の異なるベクターの投与を含む。
【0602】
いくつかの実施態様において、併用療法は、もう一方のHAグループ(例えば、グループ2)の1つ、2つ、3つ、又はそれより多くのHA亜型に対する免疫応答を誘導する活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)と併用した、一方のHAグループ(例えば、グループ1)の1つ、2つ、3つ、又はそれより多くのHA亜型に対する免疫応答を誘導する活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)による能動免疫を含む。
【0603】
いくつかの実施態様において、併用療法は、本明細書に記載の2以上のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドによる能動免疫を含む。
【0604】
(5.15.2 患者集団)
ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物は、未感作の対象、すなわち、インフルエンザウイルス感染に起因する疾患を有していないか、又はインフルエンザウイルス感染症に感染したことがなく、かつ現在それに感染していない対象に投与することができる。一実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物は、インフルエンザウイルス感染を獲得する危険のある未感作の対象に投与される。一実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物は、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドが免疫応答を誘導する、特定のインフルエンザウイルスによって引き起こされる疾患を有していないか、又は特定のインフルエンザウイルスに感染したことがなく、かつそれに感染していない対象に投与される。本明細書に記載の活性化合物又は組成物は、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドが免疫応答を誘導する、インフルエンザウイルス、又はインフルエンザウイルスの別の型、亜型、もしくは株に感染している対象、及び/或いはそれらに感染したことがある対象に投与することができる。
【0605】
ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物は、インフルエンザウイルス感染と診断された患者に投与される。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物は、症状が現われるか又は症状が重くなる前に(例えば、患者が入院を必要とする前に)、インフルエンザウイルス感染患者に投与される。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物は、その活性化合物又は組成物のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドのヘッドドメインが由来したインフルエンザウイルスの型と異なる型のインフルエンザウイルスに感染しているか、又はそう診断された患者に投与される。
【0606】
ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物は、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのヘッドドメインのHAグループと同じHAグループに属するインフルエンザウイルスに感染している可能性があるか、又はそれに感染している患者に投与される。ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物は、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのヘッドドメインの亜型と同じ亜型のインフルエンザウイルスに感染している可能性があるか、又はそれに感染している患者に投与される。
【0607】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物が投与されるべき対象は、動物である。ある実施態様において、動物は鳥である。ある実施態様において、動物はイヌである。ある実施態様において、動物はネコである。ある実施態様において、動物はウマである。ある実施態様において、動物はウシである。ある実施態様において、動物は哺乳動物、例えば、ウマ、ブタ、マウス、又は霊長類、好ましくはヒトである。
【0608】
ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物が投与されるべき対象は、ヒト成人である。ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物が投与されるべき対象は、50歳を超えるヒト成人である。ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物が投与されるべき対象は、高齢のヒト対象である。
【0609】
ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物が投与されるべき対象は、ヒト小児である。ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物が投与されるべき対象は、ヒト乳児である。ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物が投与される対象は、月齢6カ月未満の乳児ではない。具体的な実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物が投与されるべき対象は、2歳以下である。
【0610】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物が投与されるべき対象は、月齢6カ月を超える任意の乳児又は小児、及び50歳を超える任意の成人である。他の実施態様において、対象は妊娠個体である。別の実施態様において、対象は、インフルエンザシーズン(例えば、11月から4月)中に妊娠の可能性又はその予定がある個体である。具体的な実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物が投与されるべき対象は、1、2、3、4、5、6、7、又は8週間前に出産した女性である。
【0611】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物が投与されるべきヒト対象は、インフルエンザウイルス感染又はインフルエンザウイルス感染に起因する疾患の危険が高い任意の個体(例えば、免疫障害又は免疫不全個体)である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物が投与されるべきヒト対象は、インフルエンザウイルス感染又はインフルエンザウイルス感染に起因する疾患の危険が高い個体(例えば、免疫障害又は免疫抑制個体)と密接に接触する任意の個体である。
【0612】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物が投与されるべきヒト対象は、インフルエンザウイルス感染又はインフルエンザウイルス感染に起因する合併症もしくは疾患に対する感受性を高める任意の病気に罹患した個体である。他の実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物は、インフルエンザウイルス感染によって、個体が罹患するか、又は個体が危険に曝される別の病気の合併症が増加する可能性を有する対象に投与される。特定の実施態様において、インフルエンザウイルス合併症に対する感受性を高める病気、又はインフルエンザウイルスによってその病気と関連する合併症が増加する病気は、例えば、肺を侵す病気、例えば、嚢胞性線維症、気腫、喘息、又は細菌感染症(例えば、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、及びトラコーマ病原体(Chlamydia trachomatus)によって引き起こされる感染症);心血管疾患(例えば、先天性心臓疾患、鬱血性心不全、及び冠動脈疾患);内分泌障害(例えば、糖尿病)、神経学的障害及びニューロン発達障害(例えば、脳、脊髄、末梢神経、及び筋肉の障害(例えば、脳性麻痺、癲癇(発作性疾患)、脳卒中、知的障害(例えば、精神遅滞)、筋ジストロフィー、及び脊髄損傷))である。
【0613】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物が投与されるべきヒト対象は、グループホーム、例えば、老人ホームに在住する個体である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物が投与されるべきヒト対象は、グループホーム、例えば、老人ホームで勤務するか、又はそこでかなりの時間を過ごす。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物が投与されるべきヒト対象は、医療従事者(例えば、医師又は看護士)である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物が投与されるべきヒト対象は、喫煙者である。具体的な実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物が投与されるべきヒト対象は、免疫障害又は免疫抑制を起こしている。
【0614】
さらに、本明細書に記載の活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物を投与することができる、インフルエンザの合併症を発症する危険が高い対象には、以下の者が含まれる:合併症の危険が高い者にインフルエンザウイルスを伝染させることができる個体、例えば、6カ月未満の乳児を含むことになる家族を含む、高リスク個体がいる家族の構成員、6カ月未満の乳児と接触する個体、又は老人ホームもしくは他の長期介護施設に住む個体と接触する個体;長期にわたる肺、心臓、又は循環障害を有する個体;代謝性疾患(例えば、糖尿病)を有する個体;腎臓障害を有する個体;血液障害(貧血又は鎌状赤血球症を含む)を有する個体;弱くなった免疫系(医薬品、悪性腫瘍、例えば、癌、臓器移植、又はHIV感染に起因する免疫抑制を含む)を有する個体;長期アスピリン療法を受けている(そのため、インフルエンザに感染した場合、ライ症候群を起こす可能性が高い)小児。
【0615】
他の実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物の投与の対象には、以下の、生後6カ月以上の健康な個体が含まれる:4月から9月にかけて、例えば、熱帯地方及び南半球などの、インフルエンザの大発生が起こり得る外国及び地域に旅行する予定のある者;インフルエンザウイルスが循環している世界の地域から来た者を含む可能性がある大きな組織的観光団の一員として旅行する者;学校もしくは大学に通い、寄宿舎に住むか、もしくは施設環境に住む者;又は自分がインフルエンザで病気になる危険を減らしたい者。
【0616】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物の投与が禁忌である対象には、インフルエンザワクチン接種が禁忌である以下の任意の個体が含まれる:生後6カ月未満の乳児;及び免疫原性製剤の生産で使用される卵、卵製品、又は他の成分に対してアナフィラキシー反応(ショックが続発することが多い呼吸困難を引き起こすアレルギー反応)を経験したことがある個体。ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物の投与が、免疫原性製剤の生産で使用される1以上の成分のために(例えば、卵又は卵製品の存在のために)禁忌である場合、該活性化合物又は組成物を、活性化合物又は組成物の投与を禁忌にする成分を含まない方法で生産することができる(例えば、該活性化合物又は組成物を、卵又は卵製品を使用しないで生産することができる)。
【0617】
いくつかの実施態様において、以下の患者集団の1つ又は複数に生ウイルスワクチンを投与しないことが望ましい場合がある:高齢者;生後6カ月未満の乳児;妊娠個体;1歳未満の乳児;2歳未満の小児;3歳未満の小児;4歳未満の小児;5歳未満の小児;20歳未満の成人;25歳未満の成人;30歳未満の成人;35歳未満の成人;40歳未満の成人;45歳未満の成人;50歳未満の成人;70歳を超える高齢者;75歳を超える高齢者;80歳を超える高齢者;85歳を超える高齢者;90歳を超える高齢者;95歳を超える高齢者;その年齢層でのアスピリン及び野生型インフルエンザウイルス感染と関連する合併症が理由で、アスピリンもしくはアスピリン含有医薬品を服用している小児及び若者(2〜17歳);喘息又は他の反応性気道疾患の病歴がある個体;重度のインフルエンザ感染の素因となり得る慢性の医学的基礎疾患を有する個体;ギランバレー症候群の病歴がある個体;発熱を伴う急性の重篤な疾患を有する個体;又は中程度もしくは重度の病気である個体。そのような個体については、本明細書に記載の不活化ウイルスワクチン、スプリットウイルスワクチン、サブユニットワクチン、ウイロソーム、ウイルス様粒子、又は非ウイルスベクターの投与が好ましい場合がある。ある実施態様において、生ウイルスワクチンを投与することが好ましい対象には、2〜17歳の健康な小児及び若者、並びに18〜49歳の健康な成人が含まれ得る。
【0618】
ある実施態様において、生ウイルスベクターを含む免疫原性製剤は、他の生ウイルスワクチンと同時に投与されない。
【0619】
(5.16 投与様式)
(5.16.1 送達経路)
本明細書に記載の活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物は、種々の経路によって対象に送達することができる。これらには、鼻腔内、気管内、経口、皮内、筋肉内、腹腔内、経皮、静脈内、結膜内、及び皮下経路が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様において、組成物は、局所投与用に、例えば、皮膚への塗布用に製剤化される。具体的な実施態様において、投与経路は、例えば、鼻スプレーの一部として、鼻腔内へのものである。ある実施態様において、組成物は、筋肉内投与用に製剤化される。いくつかの実施態様において、組成物は、皮下投与用に製剤化される。ある実施態様において、組成物は、注射による投与用には製剤化されない。生ウイルスワクチンのための具体的な実施態様において、ワクチンは、注射以外の経路による投与用に製剤化される。
【0620】
例えば、抗原がウイルスベクター、ウイルス様粒子ベクター、又は細菌ベクターである場合、ベクターが由来する骨格ウイルス又は細菌の天然の感染経路から免疫原性組成物を導入することが好ましいと考えられる。或いは、ポリペプチドが由来するインフルエンザウイルスの天然の感染経路からflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを導入することが好ましい場合がある。激しい分泌性及び細胞性免疫応答を誘導する抗原、特に、ウイルスベクターの能力を有利に使用することができる。例えば、ウイルスベクターによる気道の感染は、インフルエンザウイルスからの防御を同時に伴って、例えば、泌尿器系での強い分泌性免疫応答を誘導することができる。さらに、好ましい実施態様において、任意の好適な経路によって医薬組成物を肺に導入することが望ましい場合がある。肺投与は、例えば、吸入器又はネブライザー、及び噴霧剤として使用するためのエアゾール化剤を含む製剤の使用によって利用することもできる。
【0621】
具体的な実施態様において、サブユニットワクチンは、筋肉内投与される。別の実施態様において、生インフルエンザウイルスワクチンは、鼻腔内投与される。別の実施態様において、不活化インフルエンザウイルスワクチン、又はスプリットインフルエンザウイルスワクチンは、筋肉内投与される。別の実施態様において、ウイルス様粒子又はその組成物は、筋肉内投与される。
【0622】
いくつかの実施態様において、インビトロで本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドで刺激された細胞は、当業者に公知の技術を用いて対象に導入(又は再導入)することができる。いくつかの実施態様において、該細胞は、真皮内に、真皮下に、又は末梢血流中に導入することができる。いくつかの実施態様において、対象に導入される細胞は、有害な免疫応答を回避するために、その対象に由来する細胞であることが好ましい。他の実施態様において、同様の免疫バックグラウンドを有するドナー宿主に由来する細胞を使用することもできる。有害な免疫原性応答を回避するように設計されたものを含む、他の細胞を使用することもできる。
【0623】
(5.16.2 投薬量及び投与頻度)
インフルエンザウイルス感染又はインフルエンザウイルス疾患の治療及び/又は予防で有効である活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物の量は疾患の性質によって決まり、標準的な臨床技術で決定することができる。
【0624】
製剤で使用すべき正確な用量は、投与経路、及び感染又はそれに起因する疾患の重篤度によっても決まり、臨床医の判断及び各対象の状況に従って決定されるべきである。例えば、有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理的状態(年齢、体重、健康を含む)、患者がヒトであるか動物であるかということ、投与される他の医薬品、及び治療が予防的であるか治療的であるかということによって異なってもよい。通常、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含む非ヒト哺乳動物を治療することもできる。治療投薬量は、安全性及び有効性を最適化するために最適に調節される。
【0625】
ある実施態様において、最適な投薬量範囲の特定を助けるために、インビトロアッセイが使用される。有効用量は、インビトロ又は動物モデル試験系から得られる、用量応答曲線から推定することができる。
【0626】
flu血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする核酸の例示的な用量の範囲は、患者1人当たり、約10ng〜1g、100ng〜100mg、1μg〜10mg、又は30〜300μgの核酸、例えば、DNAである。
【0627】
ある実施態様において、(例えば、スプリットウイルスワクチン及びサブユニットワクチン中に提供される)flu血球凝集素(HA)ポリペプチドの例示的な用量の範囲は、患者1キログラム当たり、約5μg〜約100mg、15μg〜50mg、15μg〜25mg、15μg〜10mg、15μg〜5mg、15μg〜1mg、15μg〜100μg、15μg〜75μg、5μg〜50μg、10μg〜50μg、15μg〜45μg、20μg〜40μg、又は25〜35μgである。他の実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドの例示的な用量の範囲は、1用量当たり、約1μg〜約50mg、約5μg〜約50mg、約1μg〜約100mg、約5μg〜約100mg、約15μg〜約50mg、約15μg〜約25mg、約15μg〜約10mg、約15μg〜約5mg、約15μg〜約1mg、約15μg〜約100μg、約15μg〜約75μg、約5μg〜約50μg、約10μg〜約50μg、約15μg〜約45μg、約20μg〜約40μg、約又は25〜約35μgのflu血球凝集素(HA)ポリペプチドであり、必要とされるだけの間隔で、1回、2回、3回、又はそれより多くの回数、対象に投与することができる。
【0628】
感染性ウイルスベクターの用量は、1用量当たり、ビリオン数が10〜100個、又はそれより多くまで様々であることができる。いくつかの実施態様において、ウイルスベクターの好適な投薬量は、102、5×102、103、5×103、104、5×104、105、5×105、106、5×106、107、5×107、108、5×108、1×109、5×109、1×1010、5×1010、1×1011、5×1011、又は1012pfuであり、必要とされるだけの間隔で、1回、2回、3回、又はそれより多くの回数、対象に投与することができる。
【0629】
ある実施態様において、VLPの例示的な用量の範囲は、患者1kg当たり、約0.01μg〜約100mg、約0.1μg〜約100mg、約5μg〜約100mg、約15μg〜約50mg、約15μg〜約25mg、約15μg〜約10mg、約15μg〜約5mg、約15μg〜約1mg、約15μg〜約100μg、約15μg〜約75μg、約5μg〜約50μg、約10μg〜約50μg、約15μg〜約45μg、約20μg〜約40μg、又は約25〜約35μgである。
【0630】
一実施態様において、不活化ワクチンは、それが約5μg〜約50μg、約10μg〜約50μg、約15μg〜約100μg、約15μg〜約75μg、約15μg〜約50μg、約15μg〜約30μg、約20μg〜約50μg、約25μg〜約40μg、約25μg〜約35μgのflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むように製剤化される。
【0631】
ある実施態様において、活性化合物、すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞、又は組成物は、単一用量として1回、対象に投与される。
【0632】
ある実施態様において、活性化合物又は組成物は、単一用量として、次いで3〜6週間後に第2の用量として、対象に投与される。ある実施態様において、活性化合物又は組成物は、単一用量として、次いで3〜6週間後に第2の用量として、対象に投与され、次いで3〜6週間後に、第3の用量が投与される。ある実施態様において、第2及び/又は第3の投与は、異なる活性化合物又は組成物を利用することができる。これらの実施態様に従って、2回目の接種の後に6〜12カ月間隔で、追加免疫接種を対象に投与することができる。ある実施態様において、追加免疫接種は、異なる活性化合物又は組成物を利用することができる。ある実施態様において、第1の(初回免疫)投与は、全長血球凝集素もしくはその断片(又はそれらをコードする核酸)を含み、第2の(追加免疫)投与は、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド(又はそれをコードする核酸、それを含むVLP、もしくはそれを発現するウイルスもしくは細菌)の投与を含む。いくつかの実施態様において、同じ活性化合物又は組成物の投与を繰り返すことができ、投与は、少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2カ月、75日、3カ月、又は少なくとも6カ月の間隔を空けることができる。ある実施態様において、活性化合物又は組成物は、単一用量として1年に1回、対象に投与される。
【0633】
小児への投与のための具体的な実施態様において、少なくとも1カ月間隔で与えられる、活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物の2用量が小児に投与される。成人への投与のための具体的な実施態様において、単一用量が与えられる。別の実施態様において、少なくとも1カ月間隔で与えられる、活性化合物又は組成物の2用量が成人に投与される。別の実施態様において、若年小児(6カ月〜9歳)には、1カ月間隔で与えられる2用量の活性化合物又は組成物を初めて投与することができる。特定の実施態様において、その最初のワクチン接種の年に1用量だけ投与された小児には、その翌年に2用量が投与されるべきである。いくつかの実施態様において、インフルエンザワクチン、例えば、本明細書に記載の免疫原性製剤を初めて投与される2〜8歳の小児には、4週間の間隔で投与される2用量が好ましい。ある実施態様において、3歳を超える対象に好ましい可能性がある0.5mlとは対照的に、生後6〜35カ月の小児には、半用量(0.25ml)が好ましい場合がある。
【0634】
具体的な実施態様において、ヒト乳児への投与のために、2用量の本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド(下記の第5.1節参照)もしくはその組成物、及び/又は本明細書に記載の核酸、ベクター、VLP、もしくはウイロソームのうちの1つもしくは複数を乳児に投与し、ここで、第1の用量で使用されるflu血球凝集素(HA)ポリペプチドのインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインは、第2の用量で使用されるflu血球凝集素(HA)ポリペプチドのインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインとは異なる株又は亜型由来のものである。第1及び第2の投与は、少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2カ月、75日、3カ月、又は少なくとも6カ月隔てることができる。
【0635】
具体的な実施態様において、ヒト乳児への投与のために、第3の用量の本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド(下記の第5.1節参照)もしくはその組成物、及び/又は本明細書に記載の核酸、ベクター、VLP、もしくはウイロソームのうちの1つもしくは複数を乳児に投与し、ここで、第1、第2、及び第3の用量で使用されるflu血球凝集素(HA)ポリペプチドのインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインは、異なるインフルエンザウイルスの株又は亜型由来のものである。第1、第2、及び第3の投与は、少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2カ月、75日、3カ月、又は少なくとも6カ月隔てることができる。
【0636】
特定の実施態様において、活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含むかもしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物は、秋又は冬に、すなわち、各半球のインフルエンザシーズンの前又はその期間中に、対象に投与される。一実施態様において、第2の用量をインフルエンザシーズンのピークの前に与えることができるように、小児には、該シーズンの初め、例えば、北半球で9月下旬又は10月初旬に第1の用量が投与される。
【0637】
抗体による受動免疫について、投薬量の範囲は、患者の体重1kg当たり、約0.0001〜100mg、より一般的には0.01〜5mgである。例えば、投薬量は、体重1kg当たり、1mgもしくは10mg、又は1〜10mgの範囲、つまり、70kgの患者の場合、それぞれ、70mgもしくは700mg、又は70〜700mgの範囲であることができる。例示的な治療レジメンは、1年もしくは数年の間、又は数年間隔で、2週間毎に1回、又は月に1回、又は3〜6カ月毎に1回の投与を必要とする。いくつかの方法では、異なる結合特異性を有する2種以上のモノクローナル抗体が同時に投与され、その場合、投与される各抗体の投薬量は示された範囲に含まれる。抗体は、通常、複数の機会に投与される。単一の投薬の間隔は、毎週、毎月、又は毎年であることができる。間隔は、患者でflu血球凝集素(HA)ポリペプチドに対する抗体の血液レベルを測定することにより示されるように、不規則であることができる。
【0638】
(5.17 生物学的アッセイ)
(5.17.1 キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの活性を試験するためのアッセイ)
本明細書に開示されるベクターでflu血球凝集素(HA)ポリペプチドの発現を試験するためのアッセイは、当技術分野で公知の任意のアッセイを用いて実施することができる。例えば、ウイルスベクターへの組込みについてのアッセイは、この節又は第5.4節もしくは第5.5節に記載されているように、ウイルスを成長させること、ショ糖クッションに通す遠心分離によってウイルス粒子を精製すること、及び当技術分野で周知の方法を用いたイムノアッセイ、例えば、ウェスタンブロットによるflu血球凝集素(HA)ポリペプチド発現についてのその後の解析を含む。血球凝集素ポリペプチドがキメラであるかどうかを判定する方法は、当業者に公知であり、かつ本明細書に記載されている(例えば、下の実施例3及び4参照)。
【0639】
一実施態様において、本明細書に開示されるflu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、当技術分野で公知の抗体抗原相互作用についての任意のアッセイを用いて、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド、例えば、該ポリペプチドのストーク領域に対する中和抗体に特異的に結合するその能力を試験することにより、適切なフォールディング及び機能性についてアッセイされる。そのようなアッセイで使用される中和抗体には、例えば、Ekiertらの文献(2009, Science Express, 2009年2月26日);Kashyapらの文献(2008, Proc Natl Acad Sci USA 105: 5986-5991);Suiらの文献(2009, Nature Structural and Molecular Biology, 16:265-273);Wangらの文献(2010, PLOS Pathogens 6(2): 1-9);米国特許第5,589,174号、第5,631,350号、第6,337,070号、及び第6,720,409号;国際公開WO 2007/134237号として公開された国際出願PCT/US2007/068983号;国際公開WO 2009/036157号として公開された国際出願PCT/US2008/075998号;国際公開WO 2008/028946号として公開された国際出願PCT/EP2007/059356号;及び国際公開WO 2009/079259号として公開された国際出願PCT/US2008/085876号に記載されている中和抗体が含まれる。これらの抗体には、とりわけ、CR6261、CR6325、CR6329、CR6307、CR6323、2A、D7、D8、F10、G17、H40、A66、D80、E88、E90、H98、C179(FERM BP-4517)、AI3C(FERM BP-4516)が含まれる。
【0640】
別の実施態様において、本明細書に開示されるflu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、例えば、NMR、X線結晶学的方法、又は二次構造予測法、例えば、円二色性などの、当技術分野で公知の任意の方法を用いたflu血球凝集素(HA)ポリペプチドの構造又は立体構造の決定により、適切なフォールディングについてアッセイされる。
【0641】
(5.17.2 キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを用いて作製された抗体の活性を試験するためのアッセイ)
本明細書に記載の抗体は、当業者に公知の種々の方法(例えば、ELISA、表面プラズモン共鳴ディスプレイ(BIAcore)、ウェスタンブロット、免疫蛍光、免疫染色、及び/又は微量中和アッセイ)で特徴付けることができる。いくつかの実施態様において、抗体は、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド、又は該ポリペプチドを含むベクターに特異的に結合する能力についてアッセイされる。そのようなアッセイは、溶液中で(例えば、Houghtenの文献(1992, Bio/Techniques 13:412 421))、ビーズ表面で(Lamの文献(1991, Nature 354:82 84))、チップ表面で(Fodorの文献(1993, Nature 364:555 556))、細菌を用いて(米国特許第5,223,409号)、胞子を用いて(米国特許第5,571,698号;第5,403,484号;及び第5,223,409号)、プラスミドを用いて(Cullらの文献(1992, Proc Natl. Acad. Sci. USA 89:1865 1869))、又はファージを用いて(Scott及びSmithの文献(1990, Science 249:386 390);Cwirlaらの文献(1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6378 6382);及びFeliciの文献(1991, J. Mol. Biol. 222:301 310))実施することができる(その各々は、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている)。
【0642】
flu血球凝集素(HA)ポリペプチドに対する抗体の特異的結合及び他の抗原との交差反応性は、当技術分野で公知の任意の方法により評価することができる。特異的結合及び交差反応性を解析するために使用することができるイムノアッセイには、少し例を挙げれば、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射線測定法、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイなどの技術を用いた、競合的及び非競合的アッセイ系が含まれるが、これらに限定されない。そのようなアッセイはルーチンであり、かつ当技術分野で周知である(例えば、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている、Ausubelら編の文献(1994,分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology), 1巻, John Wiley & Sons社, New York)を参照されたい)。
【0643】
flu血球凝集素(HA)ポリペプチドに対する抗体の結合親和性及び抗体抗原相互作用の解離速度は、競合的結合アッセイによって測定することができる。競合的結合アッセイの一例は、漸増する量の非標識抗原の存在下での標識抗原(例えば、3H又は125I)と関心対象の抗体とのインキュベーション、及び標識抗原に結合した抗体の検出を含むラジオイムノアッセイである。flu血球凝集素(HA)ポリペプチドに対する抗体の親和性及び結合解離速度は、スキャッチャードプロット解析によるデータから測定することができる。二次抗体との競合もラジオイムノアッセイを用いて測定することができる。この場合、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、漸増する量の非標識二次抗体の存在下で、標識化合物(例えば、3H又は125I)と結合させた試験抗体とともにインキュベートされる。
【0644】
ある実施態様において、抗体結合親和性及び速度定数は、KinExA 3000システム(Sapidyne Instruments、Boise、ID)を用いて測定される。いくつかの実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに対する抗体の結合及び解離速度を測定するために、表面プラズモン共鳴(例えば、BIAcore動態)解析を使用する。BIAcore動態解析は、その表面にflu血球凝集素(HA)ポリペプチドに対する抗体が固定されたチップからのflu血球凝集素(HA)ポリペプチドの結合及び解離を解析することを含む。典型的なBIAcore動態試験は、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドが固定されているセンサーチップ表面への、0.005%のTween20を含むHBS緩衝液中の様々な濃度の250μLの抗体試薬(mAb、Fab)の注入を含む。流速は、75μL/分で一定に保たれる。解離データは、必要に応じて15分間又はそれより長く回収される。各注入/解離サイクルの後、結合抗体は、希酸、通常、10〜100mM HClの短い1分間の投入を用いて、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド表面から除去されるが、状況が許せば、他の再生剤を使用する。より具体的には、結合速度kon及び解離速度koffの測定のために、ポリペプチドを、標準的なアミンカップリング化学、すなわち、EDC/NHS法(EDC=N-ジエチルアミノプロピル)-カルボジイミド)を用いて、センサーチップ表面に直接固定する。簡潔に述べると、pH4又はpH5の10mM NaOAc中のポリペプチドの5〜100nM溶液を調製し、約30〜50RU相当のポリペプチドが固定されるまで、EDC/NHS活性化表面に流す。この後、1MのEt-NH2を注入して、未反応の活性エステルの「キャップ」を外す。参照目的のために、同一の固定条件下で、ポリペプチドを含まないブランク表面を調製する。適当な表面が調製されたら、抗体試薬のそれぞれの好適な希釈系列をHBS/Tween-20中に調製し、直列につながれたポリペプチドセル表面と参照セル表面の両方に流す。調製される抗体濃度の範囲は、平衡結合定数KDの推定値によって異なる。上記のように、結合した抗体は、適当な再生剤を用いて、各注入/解離サイクル後に除去される。
【0645】
抗体の中和活性は、当業者に公知の任意のアッセイを用いて決定することができる。本明細書に記載の抗体は、当業者に公知の技術を用いて、その宿主細胞受容体(すなわち、シアル酸)へのインフルエンザウイルス、又はflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む任意の他の組成物(例えば、VLP、リポソーム、もしくは洗剤抽出物)の結合を阻害するその能力についてアッセイすることができる。例えば、インフルエンザウイルス受容体を発現する細胞は、抗体の存在下又は非存在下でflu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む組成物と接触させることができ、抗原の結合を阻害する抗体の能力は、例えば、フローサイトメトリー又はシンチレーションアッセイにより測定することができる。flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む組成物、又は抗体は、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む組成物と細胞受容体との間の相互作用の検出を可能にするために、検出可能な化合物、例えば、放射性標識(例えば、32P、35S、及び125I)又は蛍光標識(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルデヒド、及びフルオレサミン)で標識することができる。或いは、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドがその受容体に結合するのを阻害する抗体の能力は、無細胞アッセイで決定することができる。例えば、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを含む組成物を抗体と接触させることができ、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む組成物が細胞受容体に結合するのを阻害する抗体の能力を決定することができる。具体的な実施態様において、抗体を固体支持体上に固定し、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを含む組成物を検出可能な化合物で標識する。或いは、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む組成物を固体支持体上に固定し、抗体を検出可能な化合物で標識する。ある実施態様において、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドが細胞受容体に結合するのを阻害する抗体の能力は、対照(例えば、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドが細胞受容体に結合するのを阻害することが知られている抗体)と比べた、抗体の結合阻害率を評価することによって決定される。
【0646】
他の実施態様において、本明細書に記載の方法で使用するのに好適な抗体は、インフルエンザウイルスの受容体結合を阻害しないが、それでもなお本明細書に記載のアッセイで中和することが分かっている。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法に従って使用するのに好適な抗体は、当技術分野で公知又は本明細書に記載のアッセイでウイルスと宿主膜との融合を低減又は阻害する。
【0647】
一実施態様において、ウイルスと宿主膜との融合は、レポーターを含むインフルエンザウイルスと、ウイルスに感染することができる宿主細胞とを用いたインビトロアッセイでアッセイされる。レポーター活性が、陰性対照(例えば、対照抗体の存在下又は抗体の非存在下でのレポーター活性)と比較して阻害されるか又は低減する場合、抗体は融合を阻害する。
【0648】
一実施態様において、ウイルスと宿主膜との融合は、細胞融合のモデル系を用いて検出される。例示的な細胞融合アッセイでは、細胞(例えば、HeLa細胞)を、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードするプラスミドでトランスフェクトし、抗体の存在下でflu血球凝集素(HA)ポリペプチド融合機能を可能にする緩衝液(例えば、pH5.0緩衝液)に接触及び曝露させる。抗体は、それが陰性対照(例えば、対照抗体の存在下又は抗体の非存在下でのシンシチウム形成)と比較してシンシチウム形成を低減又は阻害する場合、中和性である。
【0649】
他の実施態様において、ウイルスと宿主膜との融合は、インビトロでのリポソームに基づくアッセイを用いてアッセイされる。例示的なアッセイでは、宿主細胞受容体は、レポーターの半分を含むリポソームへと再構築される。flu血球凝集素(HA)ポリペプチドは、レポーターのもう半分を含む別の組のリポソームへと再構築される。2つのリポソーム集団を一緒に混合すると、融合は、レポーターの再構築、例えば、比色定量的に検出することができる酵素反応によって検出される。レポーター活性が、抗体の非存在下又は対照抗体の存在下で行われるアッセイでのレポーター活性と比較して低減するか又は阻害される場合、抗体は融合を阻害する。ある実施態様において、融合を阻害する抗体の能力は、対照の存在下での融合率と比べた、抗体の存在下での融合率を評価することによって決定される。
【0650】
(5.17.3 刺激された細胞の活性を試験するためのアッセイ)
本明細書に記載の方法に従って刺激された細胞は、例えば、関心対象のポリヌクレオチド又は遺伝子(複数可)の組込み、転写、及び/又は発現、組み込まれた遺伝子のコピー数、並びに組込みの位置について解析することができる。そのような解析は、いつでも実施することができ、かつ当技術分野で公知の任意の方法によって実施することができる。他の実施態様において、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチドによる標的細胞の良好な刺激は、当技術分野で公知又は本明細書に記載の方法を用いて、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドに対する中和抗体の産生を検出することにより決定される。
【0651】
ある実施態様において、刺激された細胞、例えば、DCが投与される対象を、細胞の位置、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする、ベクターによって送達されるポリヌクレオチドもしくは遺伝子の発現、免疫応答の刺激(例えば、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドに対する中和抗体の産生)について解析し、及び/又は当技術分野で公知もしくは本明細書に記載の任意の方法によって、インフルエンザウイルス感染もしくはそれと関連する疾患と関連する症状についてモニタリングすることができる。
【0652】
レポーターアッセイを用いて、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドのターゲッティングの特異性を決定することができる。例えば、骨髄細胞の混合集団を対象から得て、インビトロで培養することができる。flu血球凝集素(HA)ポリペプチドを骨髄細胞の混合集団に投与することができ、flu血球凝集素(HA)ポリペプチドと関連するレポーター遺伝子の発現を培養細胞でアッセイすることができる。いくつかの実施態様において、混合細胞集団中の刺激された細胞の少なくとも約50%、より好ましくは、少なくとも約60%、70%、80%、又は90%、さらにより好ましくは、少なくとも約95%は、樹状細胞である。
【0653】
(5.17.4 抗ウイルス活性アッセイ)
本明細書に記載の抗体又はその組成物は、抗ウイルス活性についてインビトロで評価することができる。一実施態様において、抗体又はその組成物は、インフルエンザウイルスの増殖に対するその効果についてインビトロで試験される。インフルエンザウイルスの増殖は、当技術分野で公知又は本明細書に記載の任意の方法により(例えば、細胞培養で)評価することができる。具体的な実施態様において、細胞は、0.0005及び0.001、0.001及び0.01、0.01及び0.1、0.1及び1、もしくは1及び10のMOI、又は0.0005、0.001、0.005、0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、もしくは10のMOIで感染させられ、補充された無血清培地とともにインキュベートされる。ウイルス力価は、血球凝集素プラーク又は本明細書に記載の任意の他のウイルスアッセイにより上清中で測定される。ウイルス力価を評価することができる細胞としては、EFK-2細胞、Vero細胞、MDCK細胞、初代ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)、H292ヒト上皮細胞株、及びHeLa細胞が挙げられるが、これらに限定されない。インビトロアッセイには、当技術分野で周知又は本明細書に記載の方法を用いて、インビトロで、培養細胞におけるウイルス複製の変化(例えば、プラーク形成により測定される)、或いはウイルスタンパク質の産生(例えば、ウェスタンブロット解析により測定される)又はウイルスRNAの産生(例えば、RT-PCRもしくはノーザンブロット解析により測定される)を測定するものが含まれる。
【0654】
非限定的な例では、標的哺乳動物細胞株の単層を様々な量(例えば、3プラーク形成単位(pfu)又は5pfuの多重度)のウイルス(例えば、インフルエンザ)に感染させ、その後、様々な希釈の抗体(例えば、0.1μg/ml、1μg/ml、5μg/ml、又は10μg/ml)の存在下又は非存在下で培養する。感染した培養物を感染から48時間後又は72時間後に回収し、適当な標的細胞株(例えば、Vero細胞)に対する当技術分野で公知の標準的なプラークアッセイにより力価を測定する。
【0655】
血球凝集アッセイの非限定的な例では、細胞を抗体と接触させ、同時に又はその後(例えば、1のMOIで)ウイルスに感染させ、ウイルス複製を可能にする条件下で(例えば、20〜24時間)ウイルスをインキュベートする。抗体は、感染の全過程で存在することが好ましい。次に、ウイルスの複製及びウイルス粒子の放出を、0.5%のニワトリ赤血球を用いた血球凝集アッセイにより決定する。例えば、Kashyapらの文献(PNAS USA 105:5986-5991)を参照されたい。いくつかの実施態様において、化合物は、それが、ウイルス力価の約75%低下に相当する少なくとも2ウェルのHAだけウイルスの複製を低減させる場合、ウイルス複製の阻害剤とみなされる。具体的な実施態様において、阻害剤は、このアッセイで、ウイルス力価を50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上低下させる。他の具体的な実施態様において、阻害剤は、対象において、インフルエンザウイルス力価の約1log以上、約2log以上、約3log以上、約4log以上、約5log以上、約6log以上、約7log以上、約8log以上、約9log以上、約10log以上、1〜3log、1〜5log、1〜8log、1〜9log、2〜10log、2〜5log、2〜7log、2log〜8log、2〜9log、2〜10log、3〜5log、3〜7log、3〜8log、3〜9log、4〜6log、4〜8log、4〜9log、5〜6log、5〜7log、5〜8log、5〜9log、6〜7log、6〜8log、6〜9log、7〜8log、7〜9log、又は8〜9logの低下をもたらす。インフルエンザウイルス力価のlog低下は、陰性対照と比較したもの、別の治療と比較したもの、又は抗体投与前の患者における力価と比較したものであることができる。
【0656】
(5.17.5 細胞傷害性アッセイ)
当技術分野で周知の多くのアッセイを用いて、活性化合物又はその組成物への曝露後の細胞(感染もしくは未感染)又は細胞株の生存率を評価し、それにより、該化合物又は組成物の細胞傷害性を決定することができる。例えば、細胞増殖は、ブロモデオキシウリジン(BrdU)の取込み(例えば、Hoshinoらの文献(1986, Int. J. Cancer 38, 369);Campanaらの文献(1988, J. Immunol. Meth. 107:79)を参照されたい)、(3H)チミジンの取込み(例えば、Chen, J.の文献(1996, Oncogene 13:1395-403);Jeoung, J.の文献(1995, J. Biol. Chem. 270:18367 73)を参照されたい)を測定することによるか、直接的な細胞カウントによるか、又は既知の遺伝子、例えば、癌原遺伝子(例えば、fos、myc)もしくは細胞周期マーカー(Rb、cdc2、サイクリンA、D1、D2、D3、Eなど)の転写、翻訳、もしくは活性の変化を検出することによりアッセイすることができる。そのようなタンパク質及びmRNA及び活性のレベルは、当技術分野で公知の任意の方法で測定することができる。例えば、市販の抗体を含む抗体を用いた公知の免疫診断方法、例えば、ELISA、ウェスタンブロッティング、又は免疫沈降により、タンパク質を定量することができる。当技術分野で周知かつルーチンの方法を用いて、例えば、ノーザン解析、RNアーゼ保護、又は逆転写と関連したポリメラーゼ連鎖反応を用いて、mRNAを定量することができる。細胞生存率は、トリパンブルー染色又は当技術分野で公知の他の細胞生死マーカーを用いて評価することができる。具体的な実施態様において、細胞のATPレベルを測定して、細胞生存率を決定する。
【0657】
具体的な実施態様において、細胞生存率は、細胞内ATPレベルを測定する、当技術分野で標準的なアッセイ、例えば、CellTiter-Gloアッセイキット(Promega)を用いて、3日及び7日の期間で測定される。細胞ATPの低下は細胞傷害効果を示す。別の具体的な実施態様において、細胞生存率は、ニュートラルレッド取込みアッセイで測定することができる。他の実施態様において、形態変化の目視観察には、肥大、粒状度、ギザギザの縁を有する細胞、薄膜状の外観、円形化、ウェル表面からの剥離、又は他の変化が含まれ得る。こうした変化には、観察された細胞傷害性の程度に従って、T(100%毒性)、PVH(部分的毒性-非常に強い-80%)、PH(部分的毒性-強い-60%)、P(部分的毒性-40%)、Ps(部分的毒性-わずか-20%)、又は0(毒性なし-0%)という呼称が与えられる。50%細胞阻害(細胞傷害)濃度(IC50)は、これらのデータの回帰分析により決定される。
【0658】
具体的な実施態様において、細胞傷害性アッセイで使用される細胞は、初代細胞及び細胞株を含む動物細胞である。いくつかの実施態様において、細胞はヒト細胞である。ある実施態様において、細胞傷害性は、以下の細胞株のうちの1つ又は複数で評価される:U937、ヒト単球細胞株;初代末梢血単核細胞(PBMC);Huh7、ヒト肝芽細胞腫細胞株;293T、ヒト胚性腎細胞株;及びTHP-1、単球細胞。ある実施態様において、細胞傷害性は、以下の細胞株のうちの1つ又は複数で評価される:MDCK、MEF、Huh 7.5、Detroit、又はヒト気管気管支上皮(HTBE)細胞。
【0659】
活性化合物又はその組成物は、動物モデルでインビボ毒性について試験することができる。例えば、活性化合物の活性を試験するために使用される、本明細書に記載の動物モデル及び/又は当技術分野で公知の他のものを用いて、これらの化合物のインビボ毒性を測定することもできる。例えば、動物に様々な濃度の活性化合物を投与する。その後、この動物を、致死率、体重減少もしくは体重増加失敗、及び/又は組織損傷を示し得る血清マーカーのレベル(例えば、全般的な組織障害の指標としてのクレアチンホスホキナーゼレベル、肝障害の可能性の指標としてのグルタミン酸シュウ酸トランスアミナーゼ又はピルビン酸トランスアミナーゼのレベル)について経時的にモニタリングする。これらのインビボアッセイは、投薬量の他に、様々な投与様式及び/又はレジメンの毒性を試験するように適合させることができる。
【0660】
活性化合物の毒性及び/又は効力は、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)及びED50(集団の50%で治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養又は実験動物における標準的な薬学的手順により決定することができる。毒性効果と治療効果の間の用量比が治療指数であり、それは、比LD50/ED50と表すことができる。大きい治療指数を示す活性化合物が好ましい。毒性のある副作用を示す活性化合物を使用してもよいが、感染していない細胞に対する潜在的な障害を最小限に抑え、それにより、副作用を低下させるために、そのような薬剤を罹患組織の部位にターゲッティングする送達系を設計するよう、注意を払うべきである。
【0661】
細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータは、ヒトで使用するための活性化合物の投薬量の範囲を定める際に使用することができる。そのような薬剤の投薬量は、循環濃度の範囲内にあることが好ましく、この範囲には、ほとんど又は全く毒性のないED50が含まれる。投薬量は、利用される剤形及び利用される投与経路によって、この範囲内で異なり得る。本明細書に記載の方法で使用されるどの活性化合物についても、有効用量は、最初に細胞培養アッセイから推定することができる。用量を動物モデルで定めて、循環血漿濃度範囲を得ることができ、この循環血漿濃度範囲には、細胞培養で測定されるIC50(すなわち、症状の半最大阻害を達成する試験化合物の濃度)が含まれる。そのような情報を用いて、ヒトでの有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーで測定することができる。投薬量の決定に関するさらなる情報が本明細書に提供される。
【0662】
さらに、当業者に公知の任意のアッセイを用いて、例えば、ウイルス感染又はそれと関連する状態もしくは症状を測定することにより、本明細書に記載の活性化合物及び組成物の予防的及び/又は治療的有用性を評価することができる。
【0663】
(5.17.6 インビボでの抗ウイルス活性)
活性化合物及びその組成物は、ヒトで使用する前に所望の治療的又は予防的活性についてインビボでアッセイすることが好ましい。例えば、インビボアッセイを用いて、活性化合物又はその組成物及び/又は別の療法を投与することが好ましいかどうかを決定することができる。例えば、インフルエンザウイルス疾患を予防するための活性化合物又はその組成物の使用を評価するために、動物をインフルエンザウイルスに感染させる前に組成物を投与することができる。或いは、又はさらに、動物をインフルエンザウイルスに感染させるのと同時に、活性化合物又はその組成物を動物に投与することができる。インフルエンザウイルス感染又はそれと関連する疾患を治療するための活性化合物又はその組成物の使用を評価するために、動物をインフルエンザウイルスに感染させた後に化合物又は組成物を投与することができる。具体的な実施態様において、活性化合物又はその組成物は、動物に2回以上投与される。
【0664】
活性化合物及びその組成物は、限定されないが、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ブタ、フェレット、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ウサギ、モルモットなどを含む動物モデル系で、抗ウイルス活性について試験することができる。具体的な実施態様において、活性化合物及びその組成物は、マウスモデル系で試験される。そのようなモデル系は広く使用されており、かつ当業者に周知である。具体的な実施態様において、活性化合物及びその組成物は、マウスモデル系で試験される。インフルエンザウイルスのための動物モデルの非限定的な例がこの節で提供される。
【0665】
一般に、動物をインフルエンザウイルスに感染させ、同時に又はその後に、活性化合物もしくはその組成物、又はプラセボで処置する。或いは、動物を、活性化合物もしくはその組成物、又はプラセボで処置し、その後、インフルエンザウイルスに感染させる。これらの動物から得られる試料(例えば、血清、尿、痰、精液、唾液、血漿、又は組織試料)は、当技術分野で周知の方法、例えば、ウイルス力価の変化(例えば、プラーク形成により測定される)、ウイルスタンパク質の産生(例えば、ウェスタンブロット、ELISA、もしくはフローサイトメトリー解析により測定される)、又はウイルス核酸の産生(例えば、RT-PCRもしくはノーザンブロット解析により測定される)を測定する方法により、ウイルス複製について試験することができる。組織試料中のウイルスの定量のために、組織試料を、リン酸緩衝食塩水(PBS)中でホモジナイズし、透明になったホモジネートの希釈物を、細胞(例えば、Vero、CEF、又はMDCK細胞)の単層上へ37℃で1時間吸着させる。他のアッセイでは、組織病理学的評価、好ましくは、ウイルスが感染の標的にすることが知られている器官(複数可)の評価を感染後に実施する。ウイルス特異的モノクローナル抗体を用いて、ウイルス免疫組織化学検査を実施することができる。
【0666】
活性化合物もしくはその組成物が投与される感染対象におけるウイルスの力価、活性化合物もしくはその組成物が投与される感染対象の生存期間、活性化合物もしくはその組成物が投与される感染対象における免疫応答、活性化合物もしくはその組成物が投与される感染対象における症状の数、持続時間、及び/もしくは重症度、並びに/又は活性化合物もしくはその組成物が投与される感染対象における1以上の症状の開始までの時間が評価されるインビボアッセイを用いて、ウイルスの病原性に対する活性化合物又はその組成物の効果を決定することもできる。当業者に公知の技術を用いて、そのような効果を測定することができる。ある実施態様において、活性化合物又はその組成物は、未処置の対象と比べて、0.5倍、1倍、2倍、4倍、6倍、8倍、10倍、15倍、20倍、25倍、50倍、75倍、100倍、125倍、150倍、175倍、200倍、300倍、400倍、500倍、750倍、もしくは1,000倍、又はそれより大きいインフルエンザウイルスの力価の低下をもたらす。いくつかの実施態様において、活性化合物又はその組成物は、未処置の対象と比べて、約1log以上、約2log以上、約3log以上、約4log以上、約5log以上、約6log以上、約7log以上、約8log以上、約9log以上、約10log以上、1〜3log、1〜5log、1〜8log、1〜9log、2〜10log、2〜5log、2〜7log、2log〜8log、2〜9log、2〜10log、3〜5log、3〜7log、3〜8log、3〜9log、4〜6log、4〜8log、4〜9log、5〜6log、5〜7log、5〜8log、5〜9log、6〜7log、6〜8log、6〜9log、7〜8log、7〜9log、又は8〜9logのインフルエンザウイルスの力価の低下をもたらす。
【0667】
インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス剤の試験用に開発された、インフルエンザウイルス動物モデル、例えば、フェレット、マウス、モルモット、リスザル、マカク、及びニワトリが記載されている。例えば、Sidwellらの文献(Antiviral Res., 2000, 48:1-16);Lowen A.C.らの文献(PNAS., 2006, 103:9988-92);及びMcCauleyらの文献(Antiviral Res., 1995, 27:179-186)及びRimmelzwannらの文献(Avian Diseases, 2003, 47:931-933)を参照されたい。インフルエンザのマウスモデルについて、インフルエンザ感染マウスに投与される活性化合物の抗ウイルス活性をアッセイするために使用することができるパラメータの非限定的な例としては、肺炎関連死、血清α1酸糖タンパク増加、動物体重、血球凝集素によりアッセイされる肺ウイルス、プラークアッセイによりアッセイされる肺ウイルス、及び肺の組織病理学的変化が挙げられる。統計解析を実施して、有意性(例えば、0.05以下のP値)を計算する。
【0668】
他のアッセイでは、動物モデル対象の感染後に、組織病理学的評価を行なう。鼻甲介及び気管を、上皮変化及び上皮下炎症について調べることができる。肺を、細気管支上皮の変化、及び大、中、小、又は末端細気管支における細気管支周囲炎症について調べることができる。肺胞を、炎症性変化についても評価する。中細気管支は、以下のように、0〜3+のスコアで等級付けられる:0(正常:繊毛性頂端境界及び基底偽重層核を有する中位から高い円柱状の上皮細胞により裏打ちされている;最小限の炎症);1+(輪郭が円柱状かつ均一で増殖がわずかに増加した上皮層;繊毛がなおも多くの細胞に見られる);2+(減弱から顕著な増殖までの範囲の上皮層における顕著な変化;破壊された細胞及び管腔境界での不規則な層輪郭);3+(著しく破壊され、無秩序になった上皮層、内腔には壊死細胞が見られる;減弱した細気管支もあれば、反応性増殖が顕著な細気管支もある)。
【0669】
気管は、以下のように、0〜2.5+のスコアで等級付けられる:0(正常:繊毛性頂端境界、基底偽重層核を有する中位から高い円柱状の上皮細胞により裏打ちされている。頂端境界と核との間に明らかな細胞質。時折見られる扁平上皮細胞の小さな増殖巣);1+(上皮層の限局的扁平上皮化生);2+(上皮層の大部分の広範囲の扁平上皮化生、繊毛は限局的に明白な場合がある);2.5+(明白な繊毛が極めて少ない広範囲の扁平上皮化生)。
【0670】
ウイルス免疫組織化学は、ウイルス特異的モノクローナル抗体(例えば、NP-、N-、又はHN-特異的モノクローナル抗体)を用いて行なわれる。染色は、以下のように、0〜3+に等級付けられる:0(感染細胞なし);0.5+(ほとんど感染細胞なし);1+(ほとんど感染細胞なし、広く離れた個々の細胞として);1.5+(ほとんど感染細胞なし、広く離れた単体として、及び小クラスターで);2+(通常、上皮層が裏打ちする細気管支の一部の、又は肺胞内の小さな小葉下病巣(sublobular foci)の、隣接細胞のクラスターを侵す、適度な数の感染細胞);3+(細気管支の上皮層の大部分を侵すか、又は肺胞内の大きな小葉下病巣に広がる、多数の感染細胞)。
【0671】
一例では、ウイルス感染の動物モデルで肺病変を誘導し、感染を引き起こす能力を、野生株ウイルス及び模擬ウイルスを用いて比較する。肺病変は、目視検査で健康である肺葉の割合として評価することができる。ペントバルビタールの静脈内投与により感染5日後に動物を安楽死させ、その肺全体を取り出す。肉眼的病変に侵された各肺葉の表面の割合を目視で見積もる。割合を平均化して、各動物の7つの肺葉についての平均値を得る。他のアッセイでは、鼻スワブを検査して、ウイルス負荷量又は力価を測定することができる。検死時に鼻スワブを採取して、感染後のウイルス負荷量を測定することができる。
【0672】
一実施態様において、ウイルスを組織試料中で定量する。例えば、組織試料をリン酸緩衝食塩水(PBS)中でホモジナイズし、透明になったホモジネートの希釈物を、細胞(例えば、MDCK細胞)の単層上へ37℃で1時間吸着させる。次に、感染させた単層に、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)、0.01%DEAE-デキストラン、0.1%NaHCO3、及び1%寒天を含む最小必須培地の溶液を重層する。プラークを可視化することができるまで、プレートを2〜3日インキュベートする。PR8感染試料由来のウイルスの力価を測定する(titrate)ための組織培養感染量(TCID)アッセイを以下のように実施する。96ウェルプレート中の細胞(例えば、MDCK細胞)のコンフルエントな単層を、培地中の透明になった組織ホモジネートの対数希釈物とともにインキュベートする。接種の2〜3日後に、血球凝集アッセイ(HAアッセイ)で、各ウェルからの0.05mlのアリコートをウイルス増殖について評価する。
【0673】
(5.17.6.1.1 ヒトでのアッセイ)
一実施態様において、インフルエンザウイルスの複製を調節する活性化合物又はその組成物を感染ヒト対象で評価する。この実施態様に従って、活性化合物又はその組成物をヒト対象に投与し、ウイルスの複製に対する活性化合物又は組成物の効果を、例えば、生物学的試料(例えば、血清又は血漿)中のウイルス又はウイルス核酸のレベルを解析することにより決定する。ウイルス複製を変化させる活性化合物又はその組成物は、対照で処置した対象又は対象群におけるウイルス複製のレベルを、活性化合物又はその組成物で処置した対象又は対象群におけるウイルス複製のレベルと比較することにより同定することができる。或いは、ウイルスの複製の変化は、活性化合物又はその組成物の投与の前後で対象又は対象群におけるウイルス複製のレベルを比較することにより同定することができる。当業者に公知の技術を用いて、生物学的試料を得て、mRNA又はタンパク質の発現を解析することができる。
【0674】
別の実施態様において、インフルエンザウイルス感染/疾患と関連する1以上の症状の重症度に対する活性化合物又はその組成物の効果を感染対象で評価する。この実施態様に従って、活性化合物もしくはその組成物又は対照をインフルエンザウイルス感染に罹患しているヒト対象に投与し、ウイルス感染の1以上の症状に対する活性化合物又は組成物の効果を決定する。1以上の症状を軽減する活性化合物又はその組成物は、対照で処置した対象を活性化合物又は組成物で処置した対象と比較することにより同定することができる。具体的な実施態様において、活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド)又はその組成物の投与は、インフルエンザウイルス疾患又は感染に起因するヒト又はヒト集団の入院期間の短縮をもたらす。別の具体的な実施態様において、活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド)又はその組成物の投与は、インフルエンザウイルス疾患又は感染を有するヒト又はヒト集団における呼吸(respiratory)/呼吸(breathing)補助の必要性を低下させる。別の具体的な実施態様において、活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド)又はその組成物の投与は、インフルエンザウイルス疾患又は感染を有するヒト又はヒト集団の罹患期間の低減をもたらす。別の具体的な実施態様において、活性化合物(すなわち、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド)又はその組成物の投与は、例えば、全身又は肺プレチスモグラフィーにより評価される肺容量の改善(例えば、増加)をもたらす。別の実施態様において、活性化合物又はその組成物を健康なヒト対象に投与し、ワクチンとしての効力についてモニタリングする(例えば、対象を、インフルエンザウイルス感染の症状の開始;対象に感染するインフルエンザウイルスの能力;並びに/又はインフルエンザウイルス感染と関連する1以上の症状の軽減/不在についてモニタリングする)。感染性疾患を熟知している医師に公知の技術を用いて、活性化合物又はその組成物がインフルエンザウイルス疾患と関連する1以上の症状を軽減するかどうか決定することができる。
【0675】
(5.18 対象における抗体の評価)
別の態様において、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)、又は本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)を発現するウイルスを用いて、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド(例えば、flu HAポリペプチド、例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)に対する対象(例えば、未感作の対象もしくは免疫/ワクチン接種された対象)又は対象集団の抗体応答を評価することができる(例えば、下の実施例8参照)。具体的な実施態様において、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド又はキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを発現するウイルスを用いて、対象又は対象集団におけるステム特異的抗体の存在を評価することができる。具体的な実施態様において、キメラインフルエンザウイルスHAポリペプチドは、HAステムドメイン中の1以上の修飾されたグリコシル化部位及び/又は球状ヘッドドメイン中の1以上の非天然のグリコシル化部位を含む
【0676】
具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド(例えば、本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド(複数可)、例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド、又は本明細書に記載のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド、例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを発現するウイルス)で免疫/ワクチン接種されたことがある対象又は対象集団の抗体応答を評価して、対象又は対象集団におけるストーク特異的抗体の種類を同定する。そのような評価は、本明細書に記載のインフルエンザウイルスHAポリペプチドポリペプチド(複数可)(例えば、flu HAポリペプチド、例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)、又は本明細書に記載のインフルエンザウイルスHAポリペプチドポリペプチド(複数可)(例えば、flu HAポリペプチド、例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)を発現するウイルスの投与に対する臨床応答を決定する際に重要な代用マーカー/エンドポイントの同定を可能にすることができる。そのような手法において、対象又は対象集団由来の生体試料、例えば、血液を単離し、抗体の存在について直接試験することができるか、又は(例えば、血清を得るために)処理し、その後、抗体の存在について試験することができる
【0677】
別の具体的な実施態様において、未感作の対象(すなわち、インフルエンザウイルスHAポリペプチドポリペプチド(複数可)(例えば、flu HAポリペプチド、例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)、もしくはインフルエンザウイルスHAポリペプチドポリペプチド(複数可)(例えば、flu HAポリペプチド、例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)を発現するウイルスで免疫/ワクチン接種されたことがない対象)、又は未感作の対象集団の抗体プロファイルを評価して、該対象又は対象集団が、様々なインフルエンザウイルス株又は亜型に対する球状ヘッド特異的及び/又はステム特異的抗体を保有するかどうかを決定する。そのような評価は、該対象又は対象集団への投与に好適である、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)又はflu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)を発現するウイルス、例えば、該対象又は対象集団が感作されていない(それに対する抗体を有さない)ヘッドドメインを含む、flu血球凝集素(HA)ポリペプチド、例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの作製を可能にすることができる。そのような評価は、患者のための免疫戦略を決定することができる。
【0678】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、特定のインフルエンザウイルス株又は亜型のステムドメインに特異的である対象中の抗体の存在を評価/検出する方法であって、該対象由来の生体試料(例えば、血液、血清)を、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドとインビトロで接触させることを含み、ここで、該キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドが関心対象の株又は亜型由来のステムドメインを含む、方法である。特定のインフルエンザウイルス株又は亜型のステムドメインに特異的な抗体の存在を評価/検出する方法については、下記の実施例6〜8を参照されたい。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、特定のインフルエンザウイルス株又は亜型のステムドメインに特異的である対象中の抗体の存在を評価/検出する方法であって、該対象由来の生体試料(例えば、血液、血清)を、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを発現する/含むウイルスとインビトロで接触させることを含み、ここで、該キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドが関心対象の株又は亜型由来のステムドメインを含む、方法である。
【0679】
(5.19 キット)
本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の医薬/免疫原性組成物の1以上の成分、例えば、本明細書に提供される1以上の活性化合物を充填した1以上の容器を含む医薬パック又はキットである。医薬又は生物学的製品の製造、使用、又は販売を規制する行政機関により規定された形式での通知を、そのような容器(複数可)に任意で関連付けることができ、その通知は、この機関による、ヒト投与のための製造、使用、又は販売の承認を示している。
【0680】
本明細書に包含されるキットは、本明細書に記載の方法に従って使用することができる。一実施態様において、キットは、1以上の容器中に、本明細書に記載の活性化合物、好ましくは1以上のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、1以上のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)を含む。ある実施態様において、キットは、本明細書に記載のワクチン、例えば、スプリットウイルスワクチン、サブユニットワクチン、不活化インフルエンザウイルスワクチン、又はインフルエンザ生ウイルスワクチンを含み、ここで、該ワクチンは、本明細書に記載の1以上のflu血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、1以上のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)を含む。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド及び該キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを用いて対象中に存在する抗体を評価するための説明書を含むキットである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、試料中のHAステムドメイン特異的抗体の存在をアッセイする方法で使用するための本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを含むキットである。
【実施例】
【0681】
(6.実施例)
(6.1 実施例1:インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチド)
表8.構築物のまとめ
【表11】
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本実施例は、本明細書に記載の方法に従って調製することができる表8の有用なポリペプチドを提供する。
【0682】
(6.2 実施例2:キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)
この実施例は、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド、及び該キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの投与を含む、対象において高レベルの交差中和性HAストーク抗体を誘導する方法を記載するものである。この実施例に記載されているように、インフルエンザウイルスによって、及びキメラインフルエンザウイルス血球凝集素を発現するように改変された細胞によってうまく発現されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素を作製した。キメラインフルエンザウイルス血球凝集素のステムドメインとヘッドドメインの両方の抗体認識から明らかなように、該キメラインフルエンザウイルス血球凝集素を、その適切な立体構造で回収することに成功した。
【0683】
図7は、インフルエンザウイルスのH1亜型のステム/ストークドメイン及び他のインフルエンザウイルス亜型(H2、H3、及びH5)の異種球状ヘッドドメインを含む、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素(HA)を示す。図7の戦略概要に従って、H1N1(PR8-H1N1)インフルエンザウイルスに由来するステムドメイン及び2009パンデミックH1 HA(Cal/09)の球状ヘッドドメインから構成されるキメラHAを含むインフルエンザウイルスを作製した。2つのウイルスのHAの球状ヘッドドメインが非常に異なっているのに対し(〜70%アミノ酸同一性)、ステムドメインは極めて保存されているが、それでも異なっている(〜89%アミノ酸同一性)。図8に示すように、同じステムドメインを有するが、同じ亜型内の非常に異なるHAヘッドを有するキメラHAを発現させた。
【0684】
さらに、A/PR8/34 HAのストークドメイン及びHK/68の球状ヘッドドメインからなるキメラHA(キメラH3)、並びに野生型HA(PR8-HA及びHK68 HA)を293T細胞で発現させた。図10は、(H1亜型HAに由来する)同じステムドメインを有し、かつ異なる亜型(H3)由来の球状ヘッドを有する安定なキメラHAを発現させることも可能であることを示す。
【0685】
このように、HAステムドメインを完全に共有するが、その球状ヘッドが極めて異なっているHA免疫原を設計した。これらの構築物による免疫の繰返しは、HAの共通のステムドメインに対する高レベルの交差中和抗体を生じさせるはずである。したがって、改善されたワクチン戦略は、不変のステム/ストークドメイン及び変化する球状ヘッドを有するキメラHAを用いて、強力な交差中和性抗ステムドメイン抗体を誘導する。例えば、A/PR/8/34由来のH1 HAの不変のステムドメインを異なるグループ1 HA(H1、H2、H5、H9)由来の球状ヘッドと一緒に用いて、組換え不活化ウイルス、組換え弱毒化ウイルス、又は組換えHAのいずれかのパネルを作製することができる(図9)。例えば、X31ウイルスのH3 HAのステムドメインに基づくグループ2 HAについての同様のパネルは、H3、H4、及びH7球状ヘッドと組み合わせて、グループ2 HAの普遍的なワクチンの基礎を提供することができる。組換えウイルスを、PR/8又は低温適応インフルエンザウイルスなどの、インフルエンザウイルスワクチン骨格上にレスキューし、標準的な技術により成長させ、不活化又は弱毒化ワクチンとして使用することができる。組換えHAを、哺乳動物様のグリコシル化を行なうことができる昆虫細胞(MIMIC Sf9)において、又は例えば、293 TもしくはVero細胞の一過性トランスフェクションにより発現させることができ、その後、C末端hisタグを援用したNi-キレートクロマトグラフィーにより精製することができる。他の戦略としては、キメラHAを発現するDNAワクチン、又はキメラHAを発現する他のベクター、例えば、アデノウイルスベクターの使用を挙げることができる。
【0686】
(6.3 実施例3:キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを発現するウイルス)
この実施例は、異なる血球凝集素亜型由来の種々の球状ヘッド及びストーク組合せを包含するいくつかの機能的キメラインフルエンザウイルス血球凝集素、並びにこれらのキメラ血球凝集素を発現し、野生型インフルエンザウイルスの成長特性と同様の成長特性を有していた組換えインフルエンザウイルスを記載するものである。
【0687】
(6.3.1 材料及び方法)
(6.3.1.1 細胞及びウイルス)
293T及びMDCK細胞をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクチョン(American Type Culture Collection)(ATCC, Manassas, VA)から入手し、10%胎仔ウシ血清(HyClone; Thermo Scientific)及びペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco, Invitrogen)を補充したダルベッコの最小必須培地(DMEM)中又はMEM(Gibco, Invitrogen)中で維持した。
【0688】
全てのA/PR/8/34組換えウイルスを、10日齢の発育鶏卵中、37℃で2日間成長させた。
【0689】
(6.3.1.2 プラスミドの構築)
異なるキメラ血球凝集素をコードするプラスミドを、以前に記載されているような組換えウイルスを作製するためのリバースジェネティックスプラスミドの構築を基に改変した同様の戦略により構築した(例えば、Fodorらの文献(1999, J Virol 73:9679-9682);及びHaiらの文献(2008, J Virol 82:10580-10590)参照)。簡潔に述べると、キメラHAの様々なセグメントを、SapI部位を含むプライマーでPCRにより増幅させ、SapIで消化し、ヒトRNAポリメラーゼIプロモーター及びマウスRNAポリメラーゼIターミネーターを含むpDZベクター(例えば、Quinlivanらの文献(2005, J Virol 79:8431-8439)参照)のSapI部位に、多重セグメントライゲーションによりクローニングした。
【0690】
(6.3.1.3 フローサイトメーター解析)
細胞表面における血球凝集素タンパク質のレベルを評価するために、293T細胞に、製造業者の指示に従ってLipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて、1μgの適当なプラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞をトリプシン処理し、2%FBSを含むPBSに懸濁させた後、それらを、1/1000希釈のH1 HAに対するモノクローナル抗体(mAb) 6F12、又は1/400希釈のH3 HAに対するmAb 12D1(Wangらの文献(2010, PLoS Pathog 6:e1000796)参照)で染色した。染色された細胞をBeckman Coulter Cytomics FC 500フローサイトメーターで計数し、結果を、FlowJoソフトウェアを用いて解析した。
【0691】
(6.3.1.4 偽粒子生成及び侵入アッセイ)
偽粒子産生のための手順を以前の研究を基に改変した(例えば、Evansらの文献(2007, Nature 446:801-805);及びSuiらの文献(2011, Clin Infect Dis 52:1003-1009)参照)。簡潔に述べると、293-T細胞に、(i)所望のレポーターを含むプロウイルス(V1-GLuc)、(ii)HIV Gag-Pol、(iii)異なるキメラ血球凝集素タンパク質、及び(iv)A型インフルエンザPR8ノイラミニダーゼ(NA)をコードする4つのプラスミドをコトランスフェクトした。トランスフェクションの72時間後、上清を回収し、その後、濾過した(0.45μm孔径)。偽粒子を用いた形質導入及び感染アッセイは全て、1μg/mlのポリブレン(Sigma, St. Louis, MO)の存在下で実施した(Suiらの文献(2011, Clin Infect Dis 52:1003-1009)参照)。
【0692】
侵入アッセイは、MDCK細胞を、異なるキメラ血球凝集素を有し、G-Lucレポーターを含む偽粒子に感染させることにより実施した。感染の24時間後、細胞を新鮮な培地で3回洗浄して、偽粒子接種材料中に存在するG-Lucタンパク質を除去した。感染の48時間後、ルシフェラーゼアッセイを実施した(Evansらの文献(2007, Nature 446:801-805)参照)。
【0693】
(6.3.1.5 組換えキメラA型インフルエンザウイルスのレスキュー)
プラスミドDNAからのA型インフルエンザウイルスのレスキューを、以前に記載されている通りに実施した(例えば、Fodorらの文献(1999, J Virol 73:9679-9682);及びHaiらの文献(2008, J Virol 82:10580-10590)参照)。組換え野生型(rWT)PR8ウイルスを作製するために、293T細胞に、Lipofectamine 2000(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて、1μgの8つのpDZ PR8レスキュープラスミドの各々をコトランスフェクトした。異なるキメラHAを発現するウイルスを同じ方法で作製したが、HAプラスミドを対応するキメラプラスミドに置き換えて、対応するキメラウイルスを回収した。感染の6時間後、培地を、0.3%ウシ血清アルブミン(BSA)、10mM HEPES、及び1.5μg/ml TPCK(L-1-トシルアミド-2-フェニルエチルクロロメチルケトン)処理トリプシンを含むDMEMと交換した。トランスフェクションの24時間後、ウイルス含有上清を8日齢の発育鶏卵中に接種した。37℃で2日間のインキュベーションの後、尿膜腔液を回収し、ウイルスの存在について、ニワトリ赤血球の血球凝集により、及びMDCK細胞におけるプラーク形成によりアッセイした。
【0694】
(6.3.1.6 ウイルス成長動態アッセイ)
組換えウイルスの複製特徴を解析するために、10日齢の発育鶏卵に100pfuの各々それぞれのウイルスを接種した。尿膜腔液を回収し、その後、0、9、24、48、及び72感染後時間(hpi)でのウイルス成長についてアッセイした。尿膜腔液中に存在するウイルスの力価をMDCK細胞でのプラークアッセイにより決定した。
【0695】
(6.3.1.7 プラークの免疫染色)
プラークを、A型インフルエンザNPタンパク質に対するmAb(HT103)による免疫染色により可視化した。
【0696】
(6.3.1.8 ウェスタンブロット及び間接免疫蛍光解析)
12ウェルディッシュのうちの1つのウェルのコンフルエントなMDCK細胞を、37℃で1時間、表示された組換えインフルエンザウイルスに感染させるか(2の感染多重度[MOI])、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に模擬感染させた。12感染後時間(hpi)で、細胞を、以前に記載されている通りに1×タンパク質ローディングバッファー中で溶解させた(例えば、Haiらの文献(2008, J Virol 82:10580-10590)参照)。還元された細胞ライセートを、A/NPに対するmAb(HT103)、A/PR8/HAに対するmAb(PY102)、A/Cal/09/HAに対するmAb(29C1)、A/VN/HAに対するmAb(M08)(20)、A/H3/HAに対するmAb(12D1)を使用することによって、ウェスタンブロット解析により解析した。パース-cH7の検出は、BEI Resourcesから入手されるA/FPV/オランダ/27(H7)ウイルスに対するヤギポリクローナル血清、NR-3152を使用した。mAb抗 グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)ローディング対照抗体はAbcam製であった。関心対象のタンパク質は全て、増強化学発光タンパク質検出系(PerkinElmer Life Sciences, Boston, MA)を用いて可視化した。
【0697】
免疫蛍光解析のために、15-mmカバースリップ上のコンフルエントなMDCK細胞の単層に、組換えウイルスを2のMOIで感染させた。15hpiで、細胞を固定し、-20℃で20分間、メタノール-アセトン(比率、1:1)で透過処理した。0.1%Tween 20を含むPBS中の1%ウシ血清アルブミンでブロッキングした後、細胞を、上記のように、A/NPに対する抗体(HT103)、A/H1/HAに対する抗体(6F12)、A/PR8/HAに対する抗体(PY102)、A/Cal/09/HAに対する抗体(29C1)、A/VN/HAに対する抗体(M08)(20)、A/H3/HAに対する抗体(12D1)、及びA/H7ウイルスに対する抗体(NR-3152)とともに1時間インキュベートした。0.1%Tween 20を含むPBSで3回洗浄した後、細胞を、Alexa Fluor 594コンジュゲート抗マウス免疫グロブリンG(IgG; Invitrogen, Carlsbad, CA)又はAlexa Fluor 594コンジュゲート抗ヤギ免疫グロブリンG(IgG, Invitrogen, Carlsbad, CA)とともに1時間インキュベートした。最後に3回洗浄した後、感染細胞を、Olympus IX70顕微鏡を用いた蛍光顕微鏡法により解析した。
【0698】
(6.3.2 結果)
(6.3.2.1 キメラ血球凝集素の作製)
Cys52-Cys277ジスルフィド結合を形成するシステイン残基の保存に関する情報を得るために、H1、H3、H5、及びH7亜型のA型インフルエンザウイルスHA配列のアラインメントを作成した(図11参照)。免疫優性抗原性部位が球状ヘッドドメイン上に存在することが主な原因で、HA1サブユニットの配列は、HA2サブユニットの配列よりも保存されていない。より保存されたHA2鎖は、HA分子をウイルスエンベロープに固定するストーク領域を含む。このアラインメントは、Cys52及びCys277並びに両方の末端に向かうアミノ酸が選択された亜型にわたって保存されていることを示している。これ以降、Cys52に対してN末端及びCys277に対してC末端の血球凝集素配列をストークドメインと定義する(図11)。介在配列は、この実施例において、ヘッドドメインであるとみなされる。
【0699】
パンデミックH1 Cal/09 HA球状ヘッドドメインをPR8(H1) HA由来のストーク領域とともに含むキメラ血球凝集素構築物(PR8-cH1)を最初に作製した(図12A)。VN1203(H5) HA由来の球状ヘッドをPR8(H1) HA由来のストークとともに含むキメラHA(PR8-cH5)も作製した(図12B)。インフルエンザHAの全16種の亜型は2つの系統発生学的なグループ(グループ1及び2)に分類され(例えば、Suiらの文献(2009, Nat Struct Mol Biol 16:265-273)参照)、H1 HAとH5 HAは両方ともグループ1に属するので、A/アルバータ/24/01(H7)ヘッドドメインをA/パース/16/2009(H3) HA(パース-cH7)由来のストーク領域とともに有するキメラHAを作製するための同様の戦略(図12B)を適用した。H7とH3は両方とも、グループ2の系統発生学的グループ由来のメンバーである(例えば、Suiらの文献(2009, Nat Struct Mol Biol 16:265-273)参照)。
【0700】
次に、様々なキメラHA構築物が発現されて細胞表面に輸送されているかどうかを検討した。それぞれ、PR8及びH3ストークドメイン特異的抗体で表面染色した後、一過性にトランスフェクトした293T細胞の蛍光活性化セルソーター(FACS)解析を実施した(図13A)。図13Aに示すように、3つ全てのキメラ構築物の発現を検出した。この検出により、ゴルジ複合体から細胞表面へのキメラHAの輸送が分断されないことが示される。
【0701】
次に、様々なキメラHAの侵入特徴を、MDCK細胞を、キメラHA、野生型A型インフルエンザPR8 NA、及びHIVベースのルシフェラーゼを含むレトロウイルスHAシュードタイプ化粒子に感染させることにより調べた。キメラHAタンパク質によって媒介される侵入効率は、ルシフェラーゼの読出しにより検出した。同程度のレベルのシュードタイプ化粒子媒介性ルシフェラーゼ送達が、PR8-cH5及びパース-cH7キメラHA及び対応する野生型タンパク質について観察された(図13B)。PR8-cH1 HAは、他のHA構築物と比べてより低いルシフェラーゼレベルを示した。
【0702】
(6.3.3 キメラ血球凝集素を有するインフルエンザウイルスの作製)
上の結果を考慮して、キメラHAが、ウイルス粒子全体との関連でかつ最終的に機能的であるかどうかということが、キメラHAのみを発現する組換えA型インフルエンザウイルスのレスキューを可能にすることを確かめた。以前に発表されたプロトコル(例えば、Fodorらの文献(1999, J Virol 73:9679-9682);及びHaiらの文献(2008, J Virol 82:10580-10590))を用いて、異なるキメラHAの全てを含むウイルスを作製するのに成功した。得られたウイルスをプラーク精製し、10日齢の胚性卵中で増幅させ、キメラセグメントをRT-PCRにより解析し、シークエンシングした。全ての場合において、ウイルスは、予想されたキメラHAセグメントを有し、他のHAセグメントを有さないことが分かった。
【0703】
キメラウイルスのアイデンティティを感染細胞のウェスタンブロッティング及び間接免疫蛍光によりさらに示した(図14A及び14B)。MDCK細胞を、rWT A/PR8、野生型A/パース、PR8-cH1、PR8-cH5、及びパース-cH7ウイルスに感染させた(図14A及び14B)。PR8-cH1及びPR8-cH5キメラHAタンパク質を、ぞれぞれ、Cal/09 HAに対する抗体(29C1)又はVN/04 HAに対する抗体(M08)のいずれかを用いて、対応する試料中で検出した(Steelらの文献(2009, J Virol 83:1742-1753)参照)(図14A)。汎H3ストークmAbである12D1(Wangらの文献(2010, PLoS Pathog 6:e1000796)参照)を用いて、パースcH7-HAと野生型パースHAの間での同程度の発現レベルが観察された。抗H7抗体(NR-3152)を使用したとき、陽性バンドは、パース-cH7感染試料でしか検出されなかった。
【0704】
免疫蛍光研究について、感染条件は、ウェスタン解析の感染条件と同様であった。感染細胞を、図14Bに示すように、対応する抗体で染色した。感染細胞は全て、予想されたHA発現及び予想されたA/NPタンパク質発現を示した(図14B)。
【0705】
(6.3.4 組換えウイルスの複製特徴)
ウイルスの成長特性を、10日齢の発育鶏卵中、37℃で評価した(図15A)。キメラHAを発現する組換えウイルスの成長動態との比較のために、rWT PR8ウイルスを含めた。PR8-cH5ウイルスに関して、PR8ウイルスと比べて同様の複製パターンが観察された。パース-cH7ウイルスに関して、rWT PR8ウイルスと比べて、9hpiでウイルス力価が2倍低下した。それにもかかわらず、それは、48hpiで、野生型ウイルスと同様のピーク力価(1×109 PFU/ml)に達した。全ての時点を通した力価の低下によって示されるように、rWT PR8ウイルスと比べると、PR8-cH1ウイルスは弱毒化されていた。それにもかかわらず、このキメラウイルスですら、約108 PFU/mlというかなりのピーク力価に達した。キメラウイルスの各々のプラーク表現型もMDCK細胞で評価した。図15Bに示すように、全てのウイルスが同程度のサイズのプラークを形成した。これらの結果から、キメラHA構築物がインビボで正しくフォールディングし、生物学的に機能的であることが確認される。
【0706】
(6.3.5 結論)
ヘッドドメインとストークドメインの境界を定める保存されたジスルフィド結合Cys52-Cys277を利用することにより、異なるHA球状ヘッドドメインを有するキメラHAタンパク質を有するインフルエンザウイルスを作製するための新しい戦略を開発した。したがって、もとのヘッドドメインを別のHAのヘッドドメインと置換することにより、同じストークを有するが、異なる球状ヘッドを有するキメラHAのパネルを作製した。この設計を、PR8ストークドメインをCal/09及びVN H5球状ヘッドとともに含む、多数の亜型にわたって検討した。さらに、H7球状ヘッドをH3ストークドメイン上に配置した。これらの構築物は、両方の系統発生学的グループのインフルエンザHAタンパク質を網羅する。各々の構築物は細胞表面に発現し、図12に示すように融合活性を保持した。キメラHAを有する組換えウイルスの作製は、HAが正しくフォールディングし、生物学的機能を保持することをさらに立証した。
【0707】
(6.4 実施例4:キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの診断的適用及びキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドによるマウスのワクチン接種)
この実施例は、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを診断目的で利用することができること、及びキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを発現するウイルスをワクチンで利用することができることを示す。
【0708】
(6.4.1 材料及び方法)
(6.4.1.1 細胞及びプラスミド)
293T細胞及びMDCK細胞をATCCから入手し、それぞれ、各々10%胎仔ウシ血清(HyClone)、及び100ユニット/mlのペニシリン-100μg/mlのストレプトマイシン(Pen/Strep, Gibco)を補充したダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)及び最小必須培地(両方ともGibco製)中で維持した。10%胎仔ウシ血清を補充したTNM-FH(Sigma-Aldrich)とHyclone SFX昆虫培地(ThermoScientific)とを、Sf9及びBTI-TN5B1-4(High Five)細胞培養に使用した。
【0709】
A/マガモ/スウェーデン/81/02(「cH6」)ウイルス又はA/ホロホロチョウ/香港/WF10/99(「cH9」)ウイルスのいずれかに由来する球状ヘッドドメインを含むA/プエルトリコ/8/1934(PR8)のストークを有するキメラ血球凝集素構築物を同様の技術を用いて作製した。キメラH6構築物については、様々な成分をPCRにより増幅させ、以前に記載されたクローニング戦略を用いてpDZプラスミドにクローニングした(例えば、Fodorらの文献(1999, J Virol 73:9679-82);及びHaiらの文献(2008, Journal of Virology 82:10580-90)参照)。簡潔に述べると、キメラ血球凝集素(cHA)の様々な成分を、Sap I部位を含むプライマーでPCRにより増幅させ、Sap Iで消化し、pDZプラスミドのSap I部位にクローニングした。バキュロ転移プラスミドの作製のために、cH6をPCRにより増幅させ、BamHI及びNotIで切断し、C末端T4ファージフォルドン及び6-hisタグを有する修飾されたpBacPAK8(Gentech)バキュロ転移ベクターにインフレームでクローニングした(Meierらの文献(2004, J Mol Biol 344:1051-69)参照)。全てのプラスミドの配列をサンガーシークエンシングにより確認した。
【0710】
(6.4.1.2 組換えcH9ウイルスのレスキュー)
組換えワクチンウイルスをレスキューするために、PR8由来の7つの野生型ウイルスセグメントのvRNA及びmRNAをコードする8つのリバースジェネティックスプラスミドと、cH9とを、以前に記載されている通りに使用した(Fodorらの文献(1999, J Virol 73:9679-82);及びPleschkaらの文献(1996, J Virol 70:4188-92))。簡潔に述べると、293T細胞に、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて、1μgの8つのプラスミドの各々をトランスフェクトした。トランスフェクションの12時間後、培地を、0.3%ウシ血清アルブミン、10mM HEPES、及び1.5μgのTPCK(l-1-トシルアミド-2-フェニルエチルクロロメチルケトン)処理トリプシン/mLを含むDMEMと交換した。トランスフェクションの2日後、ウイルス含有上清を10日齢の発育鶏卵中に接種した。37℃で2日間のインキュベーションの後、尿膜腔液を回収し、ニワトリ赤血球の血球凝集により、ウイルスの存在についてアッセイした。その後、レスキューされたcH9ウイルスを10日齢の卵中で増殖させ、次いで、37℃で48時間インキュベートした。ウイルスストックの力価を、以前に記載されている通りにプラークアッセイにより測定した(例えば、Steelらの文献(2009, Journal of Virology 83:1742-53)参照)。cH9の配列を逆転写PCR産物のシークエンシングにより確認した。
【0711】
(6.4.1.3 組換えバキュロウイルス作製、タンパク質発現、及び精製)
cH6を担持する組換えバキュロウイルス(rBV)を作製するために、プラスミド及びBaculogold DNA(BDBioschiences)を、製造業者の指示に従ってCellfectin II(Invitrogen)を用いて、Sf9細胞にコトランスフェクトした。組換えバキュロウイルスを、TNM-FH培地(Gemini Bioproducts, West Sacramento, CA)中で成長させたSf9細胞で増幅させ、力価を、以前に記載されている通りにプラークアッセイにより決定した(例えば、Steelらの文献(2009, Journal of Virology 83:1742-53)参照)。
【0712】
HyClone SFX昆虫細胞培地(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)中で成長させたHigh Five細胞(Krammerらの文献(2010, Mol Biotechnol 45:226-34)参照)を、500mlの振盪フラスコ中、10の感染多重度(MOI)及び1×106細胞/mlの細胞密度で、cH6を発現するrBVに感染させた。感染96時間後、細胞を回収し、室温で2000×gで10分間の低速遠心分離により、上清から分離した。cH6タンパク質の精製のために、上清を回収し、Ni-NTA樹脂(Qiagen)とともに4℃で2時間インキュベートした。スラリーをカラムに充填し、洗浄バッファー(50mM Na2HCO3、300mM NaCl, 20mMイミダゾール、pH 8)で3回洗浄した。タンパク質を溶出バッファー(50mM Na2HCO3、300mM NaCl、250mMイミダゾール、pH 8)で0.5mlずつ溶出させ、ブラッドフォード試薬でタンパク質含量について試験し、タンパク質を含む画分をプールした。タンパク質の純度及びアイデンティティを、SDS-PAGE、クマシー染色、及びウェスタンブロットにより試験した。タンパク質濃度をブラッドフォード試薬で決定した。
【0713】
(6.4.1.4 マウス実験)
全ての処置のために、マウスを0.1mLのケタミン/キシラジン混合物(1.5mgケタミン及び0.3mgキシラジン)の腹腔内注射で麻酔した。
【0714】
マウス50%致死用量(LD50)を、4匹のマウスの群をインフルエンザウイルスの10倍連続希釈液に感染させることにより、BALB/cマウス(Charles River Laboratories)で決定した。体重を2週間にわたってモニタリングした。その体重の25%超を失ったマウスを実験的エンドポイントに達したものとみなし、安楽死させた。LD50値をReed及びMeunchの方法により計算した(Reed及びMeunchの文献(1938, Am. J. Hyg. 27:493-497)参照)。
【0715】
A/カリフォルニア/04/09(Cal/09)ウイルス感染後に産生されるステム抗体を評価する実験のために、以前に記載されているような電気刺激の適用(TriGrid送達系、Ichor Medical Systems)(例えば、Luxembourgらの文献(2007, Expert Opinion on Biological Therapy 7:1647-64)参照)に加えて、雌の8〜10週齢BALB/cマウスをPR8ウイルス由来の全長HAをコードする80μgの発現プラスミドの筋肉内投与で最初に初回免疫した。3週間後、マウスを、50μl容量中の致死未満用量の104PFU Cal/09で鼻腔内に追加免疫した。対照動物は、DNAのみ又はCal/09ウイルスのみ又は2009-2010ワクチン(Cal/09スプリットワクチン)の筋肉内注射のいずれかを受容した。追加免疫の3週間後、又は対照動物について同等の時点で、マウスから採血し、血清を回収して、cH6に対する反応性を下記のような免疫蛍光により試験した。
【0716】
ワクチン構築物としてのcH9ウイルスの効力を試験する実験のために、PR8全長DNAを上記の通りに投与した。初回免疫の3週間後、マウスに、鼻腔内に注入される103PFUのcH9ウイルスを接種した。対照動物は、DNAのみ又はCal/09ウイルスのみ又は精製不活化PR8ウイルスのいずれかを筋肉内に受容した。追加免疫の3週間後、又は対照動物について同等の時点で、マウスを5×104 LD50のPR8ウイルスの鼻腔内接種で感染させた。マウスを、感染後14日間計量した。その初期体重の27.5%超を失ったマウスを安楽死させ、死亡と記録した。
【0717】
(6.4.1.5 キメラ血球凝集素の発現を確認するための免疫蛍光)
293T細胞のコンフルエントな単層に、1μgのpDZ cH6プラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞を固定し、0.1%Tween 20を含むPBS中の1%ウシ血清アルブミンでブロッキングした。その後、細胞を、上記の4つの実験群(PR8 DNAのみ、Cal/09のみ、PR8 DNA及びCal/09感染、又はCal/09スプリットワクチンのみ)の各々の動物からプールされた血清とともにインキュベートした。0.1%Tween 20を含むPBSで3回洗浄した後、細胞をAlexa Fluor 488コンジュゲート抗マウスIgG(Invitrogen)とともに1時間インキュベートした。感染細胞を、Olympus IX70顕微鏡を用いた蛍光顕微鏡法により解析した。
【0718】
(6.4.1.6 ELISA)
96ウェルELISAプレート(Nunc, MaxiSorp)に、50mlのバキュロウイルス発現cH6をコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを3%ミルク/PBSでブロッキングし、その後、PBS/0.1%Tween(PBST)で洗浄した。ワクチン接種マウス由来の血清をPBSに連続希釈し、プレートに添加し、次いで、37℃で1時間インキュベートした。その後、プレートをPBSTで洗浄し、1:2500希釈の西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG(GE Healthcare)とともにインキュベートした。PBSTでさらに洗浄した後、SigmafastOPD基質(Sigma)を添加した。反応を3M H2SO4で停止させ、光学密度測定を490nmで行なった。
【0719】
(6.4.2 結果)
(6.4.2.1 キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、診断的適用に使用することができる)
免疫マウスによるH6ステムドメインに対する抗体の産生をアッセイする解析ツールとしての役割を果たすH6インフルエンザウイルス亜型の血球凝集素由来の球状ヘッドドメイン及びPR8ウイルスの血球凝集素由来のステム/ストークドメインを含むキメラ血球凝集素構築物を作製した。免疫マウスはH1ウイルスの球状ヘッドにのみ曝露されたので、実験動物で生成される抗体は、それらがそのH1ステムに対するものであった場合、キメラH6血球凝集素(cH6)に対してのみ反応することとなった。
【0720】
図16A及び16Dに示すように、DNAのみ又はパンデミックスプリットワクチンによる処置は、ワクチン接種マウスにおいてステム反応性抗体を誘発しなかった。逆に、Cal/09のみの感染は、ステム反応性抗体を生成させたが(図16B)、DNAエレクトロポレーション及び感染によって誘発されるほどではなかった(図16C)。交差反応性H1ステム抗体であるC179をトランスフェクションの対照として使用した(図16E)。予想された通り、PR8の球状ヘッドに対する抗体であるPY102は、トランスフェクトされたcH6 HAに反応しなかった(図16F)。
【0721】
図18に示すように、ステム抗体結合を検出するツールとしてのcH6キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの有用性をELISAにより確認した。
【0722】
(6.4.2.2 キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、ワクチンで使用することができる)
図17に示すように、不活化PR8ウイルスをワクチン接種した動物は致死感染から防御されたが、DNAのみを受容した動物は、感染後5日までに、感染のために完全に死亡した。cH9ウイルスのみを受容した動物も感染から防御されず、生存率はわずか25%であった。対照的に、最初にDNAで初回免疫し、その後、cH9ウイルスで追加免疫した動物は、感染から防御され、生存率は、不活化ウイルス調製物をワクチン接種した動物と統計的に同じであった。
【0723】
(6.5 実施例5:インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメイン中のグリコシル化は、インフルエンザウイルスの病原性及び抗原性特性を調節する)
この実施例は、インフルエンザウイルスの病原性及び抗原性交差反応性に対するインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインのグリコシル化の効果を示す。
【0724】
(6.5.1 材料及び方法)
(6.5.1.1 H1N1 HAウイルス配列及びアラインメント)
インフルエンザ研究データベース(Influenza Research Database)(www.fludb.org)から入手可能な全てのH1N1ヒトウイルス由来のHA配列をダウンロードし、ClustalWを用いて整列させ、BioEdit Sequence Alignment Editorソフトウェアを用いて手作業で編集した。1年につき少なくとも2つのもとの分離株に基づく代表的なグリコシル化パターンを含むHA1配列をさらなる解析のために選択した。図22Aに示されたHAのGenBank受託番号は、以下の通りである:
【化63】
[この文献は図面を表示できません]
これらのグリコシル化部位は、モチーフN-X-S/Tにより予測された。
【0725】
(6.5.1.2 細胞株及びウイルス)
ヒト胎児腎臓(293T)細胞を、10%FBS及び1000U/mlペニシリン/ストレプトマイシンを補充したDMEM中で維持した。Madin-Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞を、10%FBS及びペニシリン/ストレプトマイシンを補充したMEM中で維持した。細胞培養用の試薬をGibco Life Technologiesから購入した。ウイルス株A/テキサス/36/1991 H1N1(テキサス/91)、A/ブリスベン/59/2007 H1N1(Bris/59)、及びA/ブリスベン/10/2007 H3N2(Bris/10)を10日齢の発育鶏卵中で成長させた。A/カリフォルニア/04/2009(Cal/09)及びA/ネーデルラント/602/2009(Neth/09)分離株、並びに全ての組換えウイルスストックをMDCK細胞で成長させた。
【0726】
(6.5.1.3 組換えウイルスの作製)
(6.5.1.3.1 A/ネーデルラント/602/2009分離株レスキュープラスミド)
配列解析から、PB2、PB1、M、及びNSタンパク質をコードするセグメントが、A/カリフォルニア/04/2009分離株とA/ネーデルラント/602/2009分離株の間で同一であることが示された。したがって、以前に記載されたA/カリフォルニア/04/2009株(Haiらの文献(2010, Journal of Virology 84: 4442-4450); Quinlivanらの文献(2005, Journal of Virology 79, 8431-8439))のプラスミドpDZ-PB1、pDZ-PB2、pDZ-M、及びpDZ-NSを使用した。QIAampウイルスRNAミニキット(Qiagen, Hilden, Germany)を用いて、A/ネーデルラント/602/2009ウイルス分離株に感染したMDCK細胞から得られた上清からウイルスRNAを単離することにより、残りのセグメントをクローニングし、SapI制限部位を含むセグメント特異的プライマーを用いて、NP、HA、及びNAを、以前に記載されている通りにpPolIプラスミドにクローニングした(Quinlivanらの文献(2005, Journal of Virology 79, 8431-8439))。PAについては、A/カリフォルニア/04/2009 pPolI-PAプラスミドを鋳型として用いて部位特異的突然変異生成を実施し、3ntを突然変異させて、WT Neth/09 PA遺伝子を得た。次に、セグメントPA及びNPを、SapI制限部位を用いて、ベクターpPolIから二方向性ベクターpDZにサブクローニングした。グリコシル化突然変異体をコードする構築物を、Quick Change部位特異的突然変異生成キット(Stratagene, La Jolla, CA)を用いたWT Neth/09 pPol-HAの部位特異的突然変異生成により作製した。グリコシル化部位を付加するために各々の場合に行なわれるアミノ酸変化は、以下の通りである:部位71の場合、K71N及びN73S、部位142の場合、D144T、部位144の場合、D144N及びN146T、部位172の場合、G172S、及び部位177の場合、K177N。
【0727】
(6.5.1.3.2 WT A/ネーデルラント/602/2009及びそれぞれのグリコシル化突然変異体ウイルスのレスキュー)
Neth/09に基づく組換えA型インフルエンザウイルスを、製造業者の指示に従ってLipofectamine 2000(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて、293T細胞に0.5μgの10種のプラスミドの各々をトランスフェクトすることにより作製した。プラスミド混合物は、PB2、PB1、PA、NP、M、及びNS遺伝子をコードする6つのpDZベクター、並びにHA及びNA遺伝子をコードする2つのpPolIベクターを含んでいた。レスキュー効率を高めるために、A/WSN/33発現プラスミドpCAGGS-HA及びpCAGGS-NAを含めた。トランスフェクションの16〜20時間後、MDCK細胞を293T細胞に添加し、培地を、ペニシリン/ストレプトマイシン、0.3%ウシアルブミン、及び1ug/ml TPCK処理トリプシン(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を含むDMEMに交換した。MDCK細胞を添加してから24〜36時間後、上清を回収した。レスキューされたウイルスをプラーク精製し、MDCK細胞で48時間再成長させて、継代数1のストックを作製し、これを、示される全ての実験に使用した。ウイルスストックの力価を、MDCK細胞でのプラークアッセイにより、3つ1組で決定した。各々の組換えウイルスの正確な配列を、ゲノム全体をシークエンシングすることにより確認した。
【0728】
(6.5.1.3.3 A/PR8/34 7:1 Tx/91 HAグリコシル化欠失ウイルスの作製及びレスキュー)
融合PCRを行なって、Tx/91 HAのグリコシル化突然変異体を含むpDZ-HAプラスミドを作製し、この現代の季節性H1N1 HAの球状ヘッド中にある1つ、2つ、又は3つのグリコシル化部位を欠失させた。以下のアミノ酸変化:部位71を欠失させるN71K及びS73N、部位142を欠失させるT144D、並びに部位177を欠失させるN177Kを行なって、各々のグリコシル化部位を欠失させ、Neth/09分離株中に見られる残基と一致させた。A/PR8/34(PR/34)の残りの7つの遺伝子をpDZプラスミドにクローニングして、上記の通りに、PR/34 7:1 TX/91 HA野生型及び突然変異体組換えウイルスをレスキューした。
【0729】
(6.5.1.4 プラーク表現型及びインビトロウイルス成長解析)
MDCK細胞を、〜100pfuの示されたような各々の組換えウイルスに感染させた後、プラークアッセイを実施することにより、プラークサイズ表現型を評価した。感染の48時間後、細胞を4%ホルムアルデヒドで固定し、プラークを、M1タンパク質とM2タンパク質に共通であるアミノ末端ペプチドを認識するマウスモノクローナル抗体E10で免疫染色することにより可視化した。成長曲線を分化した初代ヒト気管気管支上皮(HTBE)細胞(Lonza, MD)で実施した。約1×105個のHTBE細胞を、12ウェルプレート(Corning. MA)中のコラーゲンコーティングした12-mm透過膜トランスウェルインサート(0.4μm)に播種した。細胞を、コンフルエンスに達するまで、BEGM気管支上皮細胞成長培地(Lonza, MD)中に4日間浸漬させて成長させ、その後、培地を頂端表面から除去し、さらに細胞をこの大気-液体界面で4週間培養することにより、分化を確立させた。この間に、基底外側の培地を2日毎に交換した。ウイルス感染の前に、細胞単層をPBSで徹底的に洗浄して、細胞の頂端側に蓄積した粘液を除去した。3連のウェルに、示された各々のウイルスを0.001pfu/細胞の感染多重度(MOI)で接種した。100μlのPBSを各々のウェルに37℃で30分間添加することにより、ウイルスを表示された時点で回収した。ウイルス力価を、MDCK細胞を用いた標準的なプラークアッセイにより実施した。
【0730】
(6.5.1.5 ウェスタンブロットアッセイ)
表示されたウイルスに5のMOIで12時間感染させたMDCK細胞を、コンプリートミニプロテアーゼ阻害剤(Roche, IN)を含むNP-40溶解バッファー(50nM Tris、150nM NaCl、5mM EDTA、30mM NaF、40mM β-グリセロホスフェート、10%グリセロール、及び0.25%NP-40)中で溶解させた。清澄化したライセートを5分間煮沸し、タンパク質を、NuPAGE 4-12%Bis-Tris勾配ゲル(Invitrogen, CA)上で、WT及び突然変異体Neth/09ウイルスについては非還元条件下で、又はTx/91 WT及びそれぞれのグリコシル化欠失突然変異体ウイルスについては還元条件下で分離した。ウェスタンブロットを実施して、H1を欠くPR8ウイルスに対して惹起されたウサギポリクローナル抗体3951とともにインキュベートすることにより、PVDF膜に転写されたタンパク質を検出した。該H1は、酸及びDTT処理(Steelらの文献(2010, mBio 1))により除去されていた。
【0731】
(6.5.1.6 マウス実験)
(6.5.1.6.1 感染、体重減少、及び生存)
マウス実験は全て、施設内動物管理使用委員会(institutional Animal Care and Use Committee)(IACUC)ガイドラインに準拠して実施され、マウントサイナイ医科大学(Mount Sinai School of Medicine)のIACUCによって承認された。7〜9週齢のC57BL/6雌マウス(Jackson Laboratories, ME)を、ケタミン-キシラキシンの腹腔内注射により麻酔し、表示されたウイルスを50μlのPBSに希釈した1×102、1×103、1×104、1×105、1×106pfuのウイルスの用量で腹腔内感染させた。体重及び生存を14日間毎日モニタリングした。25%超の体重減少を示すマウスを実験的エンドポイントに達したものとみなし、人道的に安楽死させた。
【0732】
(6.5.1.6.2 肺ウイルス力価)
感染マウスの肺を、表示された感染後日数で無菌的に切除し、さらに処理するまで-80℃で保存した。力価測定のために、組織を、機械的ホモジナイザー(MP Biochemicals, OH)を用いて1mlのPBS中でホモジナイズした。清澄化した上清ホモジネート中のウイルス力価をMDCK細胞での標準的なプラークアッセイにより定量した。
【0733】
(6.5.1.6.3 Neth/09感染)
8週齢のマウスを、表示されたrTx/91ウイルスに感染させた。マウスを27日間血清転換させ、27日の時点で、それらを、50%致死用量(LD50%)の100倍のA/ネーデルラント/602/2009に感染させた。生存及び体重減少を感染後13日間モニタリングした。
【0734】
(6.5.1.7 フェレット実験)
動物研究を、国際実験動物管理公認協会(Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care International)公認施設の国立疾病管理予防センター施設内動物管理使用委員会(Centers for Disease Control and Prevention's Institutional Animal Care and Use Committee)のガイドラインの下で実施した。
【0735】
(6.5.1.7.1 感染、体重減少、及び鼻洗浄液力価)
現在循環している季節性H3N2、過去に循環していた季節性H1N1、及びパンデミック2009 H1N1 A型インフルエンザウイルスの血球凝集素阻害により血清学的に陰性である8〜12カ月齢の雄のFitchフェレット(Triple F Farms, PA)を用いて、表示されたウイルスの病原性を評価した。1群当たり3匹のフェレットを、塩酸ケタミン(24mg/kg)-キシラジン(2mg/kg)-アトロピン(0.05mg/kg)カクテルの筋肉内注射で麻酔し、WT Neth/09 HA又はHA 144-172グリコシル化突然変異体ウイルスのいずれかを、500μlの最終容量のPBS中、106pfuで鼻腔内感染させた。体重を12日間毎日測定した。これは、初期重量と比べたパーセント重量として表されている。フェレットの鼻腔を、1日目から7日目まで1日おきに、1mlのPBSで洗浄した。鼻洗浄液中のウイルス力価をMDCK細胞での標準的なプラークアッセイにより決定した。
【0736】
(6.5.1.7.2 組織ウイルス力価)
表示された1群当たり3匹のフェレットを、106pfuの上記のような各々のウイルスに感染させた。感染後3日目に、フェレットを安楽死させ、肺、気管、鼻甲介、及び嗅球を無菌的に回収した。組織標本をドライアイス上で即時凍結させ、それらを処理するまで-70℃で保存した。凍結組織標本を解凍し、計量し、その後、使い捨ての滅菌済み組織粉砕機(Kendall, MA)を用いて、冷PBS中でホモジナイズした。組織ホモジネートを清澄化し、透明な上清中のウイルス力価をMDCK細胞での標準的なプラークアッセイにより決定した。
【0737】
(6.5.1.8 ヒト標本)
ヒト血清標本の使用を伴う研究は、セントルイス医科大学(Saint Louis University School of Medicine)とマウントサイナイ医科大学(Mount Sinai School of Medicine)の両方の施設内審査委員会により審査され、承認された。臨床試験に登録されている18歳以上(成人)である対象及び1〜17歳(小児)の個体から得られたワクチン接種前及びワクチン接種後の血清試料を用いて、セントルイス大学の国立アレルギー感染症研究所ワクチン治療評価部門(National Institute of Allergy and Infectious Disease Vaccine and Treatment Evaluation Unit at Saint Louis University)で行なわれる不活化2009 H1N1インフルエンザワクチン株の安全性及び免疫原性を試験した。季節性H3N2、H1N1、2009 H1N1、及びグリコシル化突然変異体HAに対するこれらのヒト血清の反応性を評価するために行なわれる実験は盲検で実施された。
【0738】
(6.5.1.9 マウス及びヒト血清の血球凝集素阻害(HAI)アッセイ)
マウス血清を、感染後28日目に、表示されたウイルスに感染した動物から得た。マウス血清を用いて実施される実験を、相同ウイルスに対する少なくとも160HI単位を含むように選択されたウイルス当たり3匹の感染動物からプールされた血清を用いて実施した。HAIアッセイを本質的に以前に記載されている通りに行なった(Manicassamyらの文献(2010, PLoS Pathog 6, e1000745);Medinaらの文献(2010, Nat Commun 1, doi: 10.1038))。簡潔に述べると、トリプシン-熱-過ヨウ素酸処理を用いて、0.1Mリン酸バッファー、pH 8.2中の半容量のトリプシン8mg/ml(Sigma-Aldrich)を1容量の血清と混合することにより、マウス、フェレット、及びヒト血清を不活化し、試料を56℃で30分間インキュベートした。試料をRTに冷却し、3容量の0.11Mメタ過ヨウ素酸カリウムと混合し、RTで15分間、さらにインキュベートした。その後、試料を3容量の1%グリセロール生理食塩水と混合し、RTで15分間インキュベートした。最後に、試料を混合し、2.5容量の85%生理食塩水とともにインキュベートして、試料を1:10の濃度に希釈した。血清のHAIアッセイを標準的なプロトコルに従って実施した(Yuらの文献(2008, Nature 455, 532-536))。簡潔に述べると、マウス又はヒト血清の2倍希釈液を混合し、96ウェルプレート中で、1ウェル当たり8HA単位のウイルスとともに4℃で30分間プレインキュベートした。七面鳥(Bris/10及びNeth/09の場合)又はニワトリ(Bris/59の場合)の赤血球を0.25%の最終濃度で添加し、プレートを4℃で30分間インキュベートした。HAI力価を血球凝集活性を示す最大希釈として決定した。
【0739】
(6.5.1.10 統計解析)
マウス研究のために、体重減少の統計的有意差(P<0.05)を、両側の対応のないスチューデントt検定を用いて評価し、生存曲線についての統計的な差を確定するために、本発明者らは、ログランク検定を利用した。フェレット実験のために、経時的な体重減少の統計的有意性(P<0.05)を、ウィルコクソンの順位和検定を用いて時間の関数としての動物群(n=3)の全体的体重減少として解釈される面積下曲線(AUC)の解析により実施した。
【0740】
(6.5.2 序論)
A型インフルエンザウイルス感染は、公衆衛生に大きな負担をもたらす主要な関心事であり続けている(Molinariらの文献(2007, Vaccine 25, 5086-5096))。2009パンデミックH1N1(pH1N1)ウイルスの出現は、ヒト集団の大部分がこの新しい株の血球凝集素(HA)に感作されていないことが原因で、過去に循環していた亜型が、十分な時間が与えられれば、新規のパンデミックを引き起こし得るという最初の直接的な証拠を提供した(Medina & Garcia-Sastre(2011, Nature Reviews 9, 590-603))。したがって、交差防御HA抗体のレベル及び質は、新規のA型インフルエンザウイルス株のパンデミック能力を決定する際に重要な役割を果たす。
【0741】
2009 pH1N1株のHAは、1918ウイルス(Kashらの文献(2010, Influenza and other respiratory viruses 4, 121-127); Manicassamyらの文献(2010, PLoS Pathog 6, e1000745); Skountzouらの文献(2010))、具体的には、抗原性部位Saの周辺(Krauseらの文献(2010, J Virol 84, 3127-3130); Manicassamyらの文献(2010, PLoS Pathog 6, e1000745); Xuらの文献(2010))に対する大きな相同性を含め、1950年以前に循環していたヒトH1N1ウイルスのHAに対する抗原性類似性を共有することが以前に示された。対照的に、現代の季節性H1N1株のワクチン接種(Manicassamyらの文献(2010, PLoS Pathog 6, e1000745))又は感染(Kashらの文献(2010, Influenza and other respiratory virus 4, 121-127))は、2009 pH1N1ウイルスに対する交差反応性をほとんど又は全く誘導しなかった(Manicassamyらの文献(2010, PLoS Pathog 6, e1000745))。このことは、HAの球状ヘッド中に位置する既知の抗原性部位又はその付近に見られる、アミノ酸レベルでのより大きな相違と相互に関連がある。
【0742】
ヒトに循環していた過去の季節性H1N1及びH3N2インフルエンザウイルスは、免疫選択圧による抗原連続変異(HA抗原性部位又はその周辺におけるアミノ酸変化の経時的な段階的蓄積)を受けたことが示されている。これらの残基変化の一部は、HAにおけるグリコシル化部位の獲得をもたらし、その中には維持されるものもあるが、時間が経つと置換されるもの又は消失するものもあり、HAグリコシル化がヒトA型インフルエンザウイルスにおいて重要な進化的役割を果たすことを示唆している(Dasらの文献(2010, PLoS Pathog 6, e1001211); Igarashiらの文献(2008, Virology 376, 323-329); Sunらの文献(2011, PloS one 6, e22844))。最近の研究により、HAグリコシル化が、このウイルスタンパク質の抗原性特性及び受容体結合特性(Wangらの文献(2009, Proc Natl Acad Sci U S A 106, 18137-18142))、並びにインフルエンザウイルスの病原性に影響を及ぼすことが示されている(Tateらの文献(2011a, J Immunol 187, 1884-1894); Tateらの文献(2011b, Virology 413, 84-92))。興味深いことに、HAの球状ヘッド上のいくつかのグリコシル化部位は、時間的には1918年〜2009年に、季節性H1N1ウイルスによって獲得されており、これらの大半は、抗原性部位Sa又はその周辺にある(Dasらの文献、2010,(Dasらの文献(2010, PLoS Pathog 6, e1001211); Igarashiらの文献(2008, Virology 376, 323-329); Sunらの文献(2011, PloS one 6, e22844))。対照的に、2009 pH1N1ウイルスは、これらの追加のグリコシル化を欠き、かつ1918 H1N1パンデミックウイルスと同じグリコシル化状態を共有している。
【0743】
H1グリコシル化部位の各々が2009 pH1N1の病原性及び抗原性特性において有する具体的な役割には焦点が当てられていない。
【0744】
2009 pH1N1株は、北米でのそのもとの発生以来、世界中に広まり、それは、現在、北半球及び南半球で季節的に循環しており、過去のH1N1ウイルスに取って代わっている。その結果、pH1N1ウイルスが、免疫選択圧によって引き起こされる抗原性連続変異を受け始めている可能性が高い。グリコシル化の獲得は、H1N1連続変異変異体の出現の一因となり得る。この実施例では、H1N1ウイルスの病原性及び抗原性特性に対するH1N1 HAの球状ヘッドにおけるグリコシル化の獲得の具体的な効果を調べた。結果は、HAグリコシル化が発病と既存の免疫からの回避の両方において、並びに交差反応性ポリクローナル抗体応答の誘導において重要な役割を果たすことを示している。
【0745】
(6.5.3 結果)
(6.5.3.1 H1N1ヒトウイルスは、HAタンパク質の球状ヘッド中でグリコシル化部位を経時的に獲得した)
1918及び2009 H1N1パンデミックウイルスのアミノ酸配列の全体的解析から、これらのウイルスのHA1が同じ部位でグリコシル化されることが明らかになった。パンデミックの直前に循環している季節性H1N1ウイルス株と比べて、2009 H1N1 HAタンパク質の異なる抗原性特性の原因となり得る相違をより良く理解するために、既知の抗原性部位の周辺のアミノ酸配列に特に注意を払った。配列アラインメントから、1918年のヒトへのH1N1ウイルスの導入以来、モチーフN-X-S/Tによって予測されるいくつかのグリコシル化部位が、HA球状ヘッド中に経時的に獲得されていることが明らかになった(図22A及び22B)。興味深いことに、これらのグリコシル化部位は、主に、抗原性部位Sa又はその近くに現われた(図22A)。1918年〜1933年のヒトインフルエンザウイルスの配列は入手可能でなく、初期のH1N1ウイルス由来の配列の大半は、卵中で広く継代されている株由来のものであるという注意付きではあるが、1935年〜1957年の間に、3つの異なるHAグリコシル化が(アミノ酸残基144、172、及び177[それぞれ、H3付番130、158、及び163]に)順次獲得され、ヒト分離株に一貫して見られるように思われた。1957年のH2N2パンデミックインフルエンザウイルスの出現はH1N1ウイルスに取って代わり、このH1N1ウイルスは、ヒトでの流行から消失した。H1N1ウイルス株は1977年にヒトで再出現し、1950年代に循環していたH1N1ウイルスと同じグリコシル化部位を含んでいた。1986年に、グリコシル化部位144は、位置142(H3付番:128;これらのグリコシル化部位は非適合性である)でのグリコシル化に置き換えられ、部位71(H3付番:59)における追加のグリコシル化がほぼ同時に獲得された。しかしながら、1987年に、グリコシル化部位172は失われ、それ以来、2009 pH1N1の出現の直前に循環していた季節性ウイルスを含む、当時のH1N1ウイルスは、HAの球状ヘッド中にグリコシル化部位71、142、及び177を含んでいた(図22B及び22C)。2009 pH1N1のグリコシル化状態は、1918 H1N1パンデミックウイルスのグリコシル化状態と同じであるので、2009 pH1N1ウイルスは、免疫選択圧の結果として、同じ又は同様のグリコシル化を経時的に獲得し得る(Weiらの文献(2010, Sci Transl Med 2, 24ra21))。そこで、2009 pH1N1ウイルスの病原性及び抗原性特性に対する追加のグリコシル化の具体的な効果を評価した。
【0746】
(6.5.3.2 HAの球状ヘッド中での追加のグリコシル化は、インビトロではなく、インビボでpH1N1ウイルスを弱毒化する)
HAグリコシル化の順次付加だけが異なる、2009 pH1N1(Neth/09株)組換えウイルスを作製して、季節性H1N1におけるこれらの部位の一過性の出現を模倣した。何度か試みたにもかかわらず、Neth/09バックグラウンドでHAグリコシル化部位144、172、及び177を含むウイルスのレスキューは不可能であり、これらの特定のグリコシル化の組合せが、さらなる代償的突然変異を必要とし得ることが示唆された。それにもかかわらず、他の全ての突然変異体ウイルスのレスキューに成功した。これらの組換えウイルスのインビトロ表現型解析により、4つの追加のグリコシル化(Neth/09 HA 71-142-172-177)を含むウイルスだけが、MDKCでより小さいプラークの表現型を有することが示された(図23A)。HAグリコシル化部位の付加は、これらの部位の使用と一致する、SDS-PAGEでのHAの移動度の低下をもたらした(図23B)。成長動態を実施して、初代分化ヒト気管気管支上皮細胞(HTBE)で複製するウイルスの能力に対するグリコシル化の効果を評価した。ウイルスは全て、もとのWT Neth/09分離株ウイルスのレベルと同様の高いレベル(>107pfu/ml)で複製し(図23C)、これらの追加のグリコシル化がヒト細胞の感染に影響を及ぼさないことが示された。次に、組換えグリコシル化ウイルスの病原性能力をC57BL/6マウスで評価した。この実施例から、体重減少により評価される、マウスにおけるウイルスの病原性のグリコシル化依存的弱毒化(すなわち、HA中のグリコシル化部位が多いほど、病原性は小さい)(図24A〜E)が見出された。グリコシル化部位144を含むウイルスだけが、WT Neth/09ウイルスに感染したマウスで見られるのと同様の体重減少パターンを示した(図24B)。2以上の追加のグリコシル化部位を有するウイルスは全て、大幅に弱毒化された(図24C〜E)。罹患率は、感染してから最初の7日間のマウスにおける肺ウイルス力価と相関した。144-172、71-142-177、及び71-142-172-177に感染した動物は、WT Neth/09と比べて有意により低い力価を有していた。これが異なる動物モデルでも正しいかどうかを明らかにするために、インフルエンザウイルスの発症を研究するための最も優れた動物モデルの1つとして広く認められているフェレットで、WTウイルスと比べた144-172グリコシル化ウイルスの病原性を評価した。全体的な体重減少の統計的に有意な減少が144-172ウイルスに感染した動物で見られた(図24G)。興味深いことに、両方の群から7日目に至るまで得られた鼻洗浄液力価、及び3日目の鼻甲介の力価は、差を示さなかった(図24H及びI)。しかしながら、3日目のフェレットの気管及び肺は、WT Neth/09と比べて、144-172ウイルスの感染の低下を示した(図24I)。これは、グリコシル化H1N1ウイルスが(鼻の)上気道では同様のレベルまで複製することができる一方、それらが下気道(気管及び肺)ではあまり感染及び複製することができないことを示唆している。
【0747】
(6.5.3.3 HAグリコシル化部位144は、WT HAに対するポリクローナル抗体応答を回避する一方、マウスでより幅広いポリクローナル応答を誘導する)
H1N1ウイルスの抗原性特性に対するグリコシル化の効果についての洞察を得るために、各々のグリコシル化突然変異体ウイルスに感染したマウスから得られた血清の互いに対するHAI活性(表9、下記)を試験した。マウスへのrWTウイルス又は71-142-177もしくは71-142-172-177グリコシル化ウイルスの感染は、グリコシル化ウイルス144及び144-172に対するほとんど又は全く検出できない血清HAIをもたらしたが、他のウイルスに対して一定レベルの交差反応性が残存した。驚くべきことに、144又は144-172グリコシル化を含むウイルスの感染は、全てのHAグリコシル化突然変異体ウイルス及びWT Neth/09ウイルスに交差反応することができる抗体応答を誘発した。総合すると、これは、144グリコシル化部位を含むものを除き、ウイルスによって誘導されるポリクローナルHAI活性の大部分が、144グリコシル化によって効率的にマスクされる部位、おそらくは、Saに対するものであることを示している。対照的に、位置144におけるグリコシル化は、ポリクローナル抗体応答の誘導のパターンを変化させ、この応答は、HA中の多数の抗原性領域に対するものであるように思われ、単一のグリコシル化事象によっても、複数回のグリコシル化事象によってマスクされない。対照的に、位置71-142-177又は71-142-172-177におけるグリコシル化を含むウイルスの感染は、より狭い交差反応性パターンを誘導し、ポリクローナル液性応答がわずかに変化するが、おそらくは部位Sa周辺に集中し続けていることを示唆している。
表9.2009 pH1N1グリコシル化突然変異体の感染後のマウス血清のHAI力価
【表12】
[この文献は図面を表示できません]
aマウスを、表示されたHAセグメントを含むNeth/99組換えウイルスに感染させた。
bHAI力価は、血球凝集阻害活性を示す最大希釈を表す。
c相同な力価は太字で示されている。
【0748】
(6.5.3.4 HAグリコシル化部位144は、ヒトでのpH1N1不活化ワクチンに対するポリクローナル抗体応答を回避する)
次に、ヒトで抗体応答を誘発する2009 pH1N1不活化ワクチンの能力を、グリコシル化Haを有する2009 H1N1ウイルスに対する阻害活性とともに試験した。2009 pH1N1一価ワクチンを受けたほとんどの成人個体は、全てのグリコシル化突然変異体ウイルスに対する検出可能な抗体応答を有することが分かった(表10、下記)。それにもかかわらず、最も低い交差反応性が144(及び144-172)グリコシル化部位を含むウイルスで見られ、これら2つのウイルスに対して試験したとき、1つの個体は、検出不可能なHAI活性レベルを示した。これは、マウス血清検査の結果と密接に一致し、部位144におけるグリコシル化のマスキング効果を強調するものである。予想された通り、過去に循環した季節性H1N1ウイルスを含む2009年の三価の季節性ワクチンは、そのグリコシル化レベルとは関係なく、pH1N1ウイルスに対する顕著なHAI力価を誘導しなかった(表10、下記)。ヒトにおける過去のインフルエンザウイルスへの曝露のレベルは、そのポリクローナル抗体応答に影響を及ぼし得るので、一価p2009 H1N1不活化ワクチンで免疫されたあまり感作されていない集団(<18歳の小児)における血清HAI力価についても評価を行なった。これらの個体の血清活性は、成人のものと同様の交差反応性パターンを有しており、144及び144-172グリコシル化突然変異体ウイルスに対するより低いHAI活性を示した(表11、下記)。対照的に、小児及び成人血清の中には、71-142-177及び71-142-172-177グリコシル化ウイルスに対するかなりの活性を示すものもあった(表10及び11、下記)。
表10.2009 pH1N1不活化ワクチンによるワクチン接種後の成人ヒト血清のHAI力価
【表13】
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a太線の囲みは、各々の個体についての最低の交差反応性力価を示す。
bそれぞれ、ワクチン接種後0日目(前)及び21日目(後)に得られたヒト血清試料。
cそれぞれ、ワクチン接種後0日目(前)及び63日目(後)に得られたヒト血清試料。
d 2009 TIV: A/ブリスベン/57/2007(H1N1)株、A/ブリスベン/10/2007(H3N2)株、及びB/ブリスベン/60/2008株を含んでいた三価不活化インフルエンザウイルスワクチン。
表11.2009 pH1N1不活化ワクチンによるワクチン接種後の小児ヒト血清のHAI力価。
【表14】
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aそれぞれ、ワクチン接種後0日目(前)及び42日目(後)に得られたヒト血清試料。
b太線の囲みは、各々の個体についての最低の交差反応性力価を強調している。
c 2009 H1N1不活化ワクチンを0日目及び21日目に投与した。
d 2009 TIV: A/ブリスベン/57/2007(H1N1)株、A/ブリスベン/10/2007(H3N2)株、及びB/ブリスベン/60/2008株を含む三価不活化インフルエンザウイルスワクチンを0日目に投与し、2009 H1N1ワクチンを21日目に投与した。
【0749】
(6.5.3.5 最近の季節性H1N1ウイルスにおけるグリコシル化欠失は、そのインビボ病原性を増大させ、pH1N1 2009ウイルス感染に対する交差防御を誘発する)
H1N1ウイルスの病原性及び抗原性特性におけるHAグリコシル化の役割をさらに解明するために、そのHA中、部位71、142、及び177に、3つの追加のグリコシル化部位を含む当時のTx/91季節性株に基づく、1組のグリコシル化欠失ウイルスを作製した。HAグリコシル化部位の除去は、予想された通り、SDS-PAGEでのより速いHA移動をもたらした(図25A)。しかしながら、致死未満用量のWT Tx/91ウイルス(1×103pfu)の感染は、マウスの罹患をもたらさなかった;2つ又は3つのグリコシル化の欠失を含むウイルス(Δ71-177及びΔ71-142-177)の感染は、rWTウイルスと比べて顕著なレベルの体重減少をもたらした(図25B)。最も高い罹患率は、Δ71-142-177ウイルスで観察された。Δ71-142-177ウイルスは、それがHAの球状ヘッド中にグリコシル化部位を有さないという点で2009 pH1N1とよく似ているウイルスである。これにより、HAのグリコシル化がH1N1ウイルスのインビボ病原性能力に負の影響を及ぼすことが再び確認された。これらのグリコシル化欠失ウイルスの感染が、抗原性が極めて多様なWT 2009 H1N1ウイルスに対する交差防御的液性応答を誘発することができるかどうかを調べるために、これらの動物を、感染後27日目に、50%致死用量(LD50)の100倍のWT Neth/09ウイルスに感染させた。過去にrWT Tx/91に感染したマウスは全て、Neth/09感染のために死亡し、部位71に1つの欠失したグリコシル化を含むウイルス(Δ71)に感染したマウスは、大幅な体重減少及びわずか20%の生存率を示した(図25C及びD)。対照的に、部位71-177におけるグリコシル化欠失を有するウイルス(Δ71-177)及び71-142-177におけるグリコシル化欠失を有するウイルス(Δ71-142-177)に感染した動物は、大幅な体重減少(最大〜20%)を示したが、それらは全て、Neth/09の致死感染から生き残り(図25D)、Δ71-142-177に感染した動物は、全体的により低い罹患レベルを示した(図25C)。これらのデータは、HAグリコシル化が、抗原性部位をマスキングする際に、及び抗原性が多様なH1N1インフルエンザウイルス株に対する防御的免疫応答を誘発する際に重要な役割を果たすことを示している。
【0750】
(6.5.4 考察)
この実施例では、現在の2009 pH1N1株との関連での病原性及び抗原性交差反応性に対するHAタンパク質におけるグリコシル化の効果を評価した。過去に季節性H1N1ウイルスについて観察されたもののような、HAタンパク質における一過性のグリコシル化の獲得を模倣するように改変された1組の組換え2009 pH1N1ウイルスを利用して、グリコシル化が、これらのウイルスの発症機序及び抗原性特性を調節する際に重要な役割を果たすことが示された。
【0751】
2009 pH1N1ウイルスの最初の配列解析から、発生時に世界中で循環していた季節性H1N1ウイルス(Bris/59様)と比べた劇的な違いが明らかになった(Dawoodらの文献(2009, N Engl J Med 360, 2605-2615); Gartenらの文献(2009, Science 325, 197-201); Smithらの文献、2009(Nature 459, 1122-1125))。HAタンパク質のクローン解析、並びに本発明者ら及び他の研究者らの実験的研究(Kashらの文献(2010, Influenza and other respiratory virus 4, 121-127); Manicassamyらの文献(2010, PLoS Pathog 6, e1000745); Skountzouらの文献(2010, J. Immunol. 1895(3), 1642-1649))から、2009パンデミックウイルスは、1950年代以前にヒトで循環したより古いH1N1ウイルスとより密接に関連することが示された。H1N1季節性ウイルスのHAは、ヒトにおけるその進化の間に、おそらくは免疫選択圧の結果として、グリコシル化部位を獲得した。興味深いことに、いくつかのグリコシル化が出現したが、最終的には消失し、一部はやがて固定された(図22)。これは、ウイルス進化の間に、これらのグリコシル化の中に、ウイルスにとって有害なものとなり得るものがある一方、ヒトにおける連続変異変異体の出現に対する適応及び/又は免疫回避優位性を提供し得るものもあることを示唆している。2009 pH1N1パンデミックウイルスと1918 H1N1パンデミックウイルスはHA1中に同じグリコシル化パターンを有するので、2009 pH1N1株が同様の進化パターンを経て、時間とともに、過去に季節性H1N1で観察されたものと同様のHAにおけるグリコシル化を獲得した可能性がある(図22)。したがって、2009 pH1N1ウイルスを、1918年のその出現以来ヒトH1N1ウイルスで天然に生じる追加のグリコシル化モチーフを有するように改変した。これにより、2009 pH1N1ワクチンによってヒトで誘発される防御的抗体応答との関連におけるそのような突然変異の潜在的意義の研究も可能になった。
【0752】
HA中に追加のグリコシル化部位を含む組換えNeth/09ウイルスは、マウス及びフェレットで弱毒化された(図24)。それにもかかわらず、MDCK及び初代HTBE細胞におけるグリコシル化ウイルスの感染及び複製能力は顕著には影響を受けなかった(図23)。WTウイルスと144-172ウイルスの間で、144-172感染動物の肺及び気管ではウイルス量に違いが観察されたが、鼻甲介では違いが観察されなかった。これらの動物モデルにおけるグリコシル化pH1N1ウイルスの感染は、概して、H1N1季節性ウイルスの感染を連想させる。このH1N1季節性ウイルスは、マウスモデルでは、通常、疾患を引き起こさず(Bouvier & Lowenの文献(2010, Viruses 2, 1530-1563); Picaらの文献(2011, Journal of Virology 85(23), 12825-9))、フェレットでは、上気道で高力価になるまで複製するが、下気道では複製しない(Mainesらの文献(2009, Science 325, 484-487); Munsterらの文献(2009, Science 325, 481-483))。pH1N1ウイルス中にグリコシル化部位を付加することによって病原性が低下しただけでなく、Tx/91 H1N1ウイルスとの関連でグリコシル化を欠失させることによって病原性が増大した。したがって、HA中のグリコシル化の獲得は、H1N1ウイルスの病原性を軽減するように思われる。
【0753】
Neth/09グリコシル化突然変異体ウイルスの抗原性特徴により、HA中の部位Saが、マウス、フェレット(データは示さない)、及びヒトについての主要な抗原性領域であることが示唆されたが、それは、この部位周辺(例えば、部位144及び144-172)の残基への1つ又は2つのグリコシル化の付加が、WTの非グリコシル化ウイルスによって誘発されるポリクローナル応答のHAI活性を顕著に低下させるのに十分であったからである。HAIの劇的な低下は71-142-172-177ウイルスでは見られないので、これら2つの部位のうち、144がこの効果の原因となるものであると思われる。部位144におけるグリコシル化はHAI反応性を回避する際に最も効率的であったので、現在の不活化2009 pH1N1ワクチン株によるヒトの免疫は、pH1N1で免疫したマウス及びフェレットにおける免疫応答を連想させる全体的なポリクローナル抗体免疫応答を誘導した(表10、上記)。同様に、解析された小児のワクチン接種後血清は、71-142-177及び71-142-172-177ウイルスに対してかなりの活性を示すが、144及び144-172ウイルスに対してはあまり活性を示さない。全般的に、これは、ヒトH1N1ウイルスのグリコシル化がその抗原性特性に大きく影響を及ぼすことを示している。2009 pH1N1株は、季節的に世界中で循環し続けるので、免疫媒介性の抗原圧の結果として、HAの新たな変化が進化し、その抗原性特性を調節する2009 pH1N1株における新規のグリコシル化部位の出現を促進することもあり得る。もしこれが正しければ、病原性及び抗原性におけるその影響を解析することが興味深いことであろう。
【0754】
重要なことに、グリコシル化部位144及び144-172を有するウイルスの感染は、作製された全てのWT及びNeth/09グリコシル化ウイルスと交差反応することができるより幅広いポリクローナル応答を誘導した(表9、上記)。ポリクローナル応答の兆しの増大は、他のエピトープに対する液性応答を変更する抗原性中心の変化をもたらす、免疫優性部位Saの遮蔽によるものである可能性が高い。注目すべきことに、致死未満用量のTx/91欠失突然変異体Δ71-177及びΔ71-142-177に感染したマウスで観察されるWT Neth/09ウイルスに対する交差防御は、液性応答の「阻止」又は変更におけるグリコシル化の重要性を強調するものである。これらの結果は、部位Sa周辺でのグリコシル化の出現の重要な進化的役割を示すものでもあるが、それは、この領域の又はその近くでのグリコシル化の欠失は交差反応性における重大な影響を有するためである。まとめると、これらの知見は、HAの抗原性特性における特定のグリコシル化の免疫調節効果、及び同じく、感染及びワクチン接種に対する免疫応答の兆しに対するグリコシル化の効果を強調するものである。
【0755】
(6.6 実施例6:2009パンデミックH1N1インフルエンザウイルスの感染によって誘発される血球凝集素ストーク抗体)
この実施例は、ステムドメイン特異的抗体を研究するために使用されたキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを記載している。これらのポリペプチドを用いて、2009パンデミックH1N1ウイルスの感染が、血球凝集素ステムに対するウイルス中和抗体の力価の増加を誘発することが明らかにされた。キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに加えて、従来の血球凝集阻害アッセイで検出されないインフルエンザウイルス中和抗体を測定するために使用することができるアッセイも記載されている。
【0756】
(6.6.1 材料及び方法)
(6.6.1.1 細胞及びプラスミド)
293T及びMDCK細胞をATCCから入手し、それぞれ、各々10%胎仔ウシ血清(HyClone)及び100ユニット/mlのペニシリン-100μg/mlのストレプトマイシン(Pen/Strep, Gibco)を補充したダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)及び最小必須培地(両方ともGibco製)中で維持した。10%胎仔ウシ血清を補充したTNM-FH培地(Gemini Bioproducts)と、Hyclone SFX昆虫培養培地(ThermoScientific)とを、Sf9及びBTI-TN5B1-4(High Five)細胞培養に使用した。
【0757】
A/マガモ/スウェーデン/81/02(cH6/1)ウイルス又はA/ホロホロチョウ/香港/WF10/99(cH9/1)ウイルスのいずれかに由来する球状ヘッドドメインを含むA/プエルトリコ/8/1934(PR8)のストークを有するキメラ血球凝集素(cHA)構築物を、以前に記載された方法を用いて作製した(Haiらの文献(2008, J Virol 82, 10580); Fodorらの文献(1999, J Virol 73, 9679))。簡潔に述べると、キメラ血球凝集素(cHA)の様々な成分を、Sap I部位を含むプライマーでPCRにより増幅させ、Sap Iで消化し、pDZプラスミド(Quinlivanらの文献(2005, J Virol 79, 8431))のSap I部位にクローニングした。バキュロ転移プラスミドの作製のために、cH6/1及びcH9/1をPCRにより増幅させ、BamHI及びNotIで切断し、C末端T4ファージフォルドン及び6-hisタグを有する修飾されたpFastBac(Invitrogen)バキュロ転移ベクターにインフレームでクローニングした(Meierらの文献(2004, J Mol Biol 344, 1051))。全てのプラスミドの配列をサンガーシークエンシングにより確認した。
【0758】
(6.6.1.2 組換えバキュロウイルス作製、タンパク質発現、及び精製)
組換えcH6/1及びcH9/1タンパク質を作製するために、バキュロ転移ベクターを、製造業者の指示に従って、大腸菌株DH10Bac(Invitrogen)中に形質転換した。正しい表現型を示すDH10Bacコロニーを採取し、成長させ、バクミドをPlasmid Midi Kit(Qiagen)を用いて調製した。
【0759】
cH6/1又はcH9/1遺伝子を担持するバクミドを、製造業者の指示に従ってCellfectin II(Invitrogen)を用いて、Sf9細胞にトランスフェクトした。組換えバキュロウイルスを、TNM-FH培地(Gemini Bioproducts, West Sacramento, CA)中で成長させたSf9細胞で増幅させ、力価をプラークアッセイにより決定した(Kingらの文献(2007, Methods Mol Biol 388, 77))。
【0760】
HyClone SFX昆虫細胞培地(Thermo Fisher Scientific)中で成長させたHigh Five細胞を、500mlの振盪フラスコ中、10の感染多重度(MOI)及び1×106細胞/mlの細胞密度で、cH6/1又はcH9/1を発現する組換えバキュロウイルスに感染させた(Krammerらの文献(2010, Mol Biotechnol 45, 226))。感染96時間後、細胞を回収し、2000×g及び室温で10分間の低速遠心分離により、上清から分離した。cHAタンパク質の精製のために、上清を回収し、Ni-NTA樹脂(Qiagen)とともに4℃で2時間インキュベートした。スラリーをカラムに充填し、洗浄バッファー(50mM Na2HCO3、300mM NaCl, 20mMイミダゾール、pH 8)で3回洗浄した。タンパク質を溶出バッファー(50mM Na2HCO3、300mM NaCl、250mMイミダゾール、pH 8)で0.5mlずつ溶出させ、ブラッドフォード試薬でタンパク質含量について試験し、タンパク質を含む画分をプールした。プール画分をPBS中でバッファー交換し、10kD分子量カットオフを有するAmicon Ultra遠心分離フィルターユニット(Millipore)を用いて、スイング式バケットローター中で濃縮した。タンパク質の純度及びアイデンティティをSDS-PAGE、クマシー染色、及びウェスタンブロットにより試験した。以下の抗体:抗H6ヤギ抗血清(BEI, #NR-663)、G1-26(抗H9、マウス; BEI# NR-9485)、3951(ウサギ、抗HA2 PR8)(Gravesらの文献(1983, Virology 126, 106))、PY102(抗PR8ヘッド、マウス)、及び12D1(抗H3ストーク、マウス)(Wangらの文献(2010, PLoS Pathog 6, e1000796))を用いて、cHAの発現を確認した。最終的なタンパク質濃度をブラッドフォード試薬で決定した。
【0761】
(6.6.1.3 組換えcHA発現ウイルスのレスキュー)
cH9/1を発現する組換えウイルスをレスキューするために、PR8由来の6つの野生型ウイルスセグメントのvRNA及びmRNAをコードするリバースジェネティックスプラスミド、並びにA/マガモ/アルバータ/24/01ウイルス及びcH9/1由来のN3 NAをコードするプラスミドを、以前に記載されている通りに使用した(Haiらの文献(2008, J Virol 82, 10580); Fodorらの文献(1999, J Virol 73, 9679, 27))。簡潔に述べると、293T細胞に、製造業者の指示に従ってLipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて、1μgの8つのプラスミドの各々をトランスフェクトした。トランスフェクションの12時間後、培地を、0.3%ウシ血清アルブミン、10mM HEPES、及び1.5μgのTPCK(l-1-トシルアミド-2-フェニルエチルクロロメチルケトン)処理トリプシン/mL(Sigma T1426)を含むDMEMと交換した。トランスフェクションの2日後、ウイルス含有上清を10日齢の発育鶏卵中に接種した。37℃で2日間のインキュベーションの後、尿膜腔液を回収し、ニワトリ赤血球の血球凝集により、ウイルスの存在についてアッセイした。その後、レスキューされたcH9/1ウイルスを10日齢卵中で増殖させ、次いで、37℃で48時間インキュベートした。ウイルスストックの力価を、TPCKトリプシンの存在下、以前に記載されているMDCK細胞でのプラークアッセイにより測定した(Steelらの文献(2009, J Virol 83, 1742))。cH9/1 RNAの配列を逆転写PCR産物のシークエンシングにより確認した。
【0762】
(6.6.1.4 キメラ血球凝集素の発現を確認するための免疫蛍光)
MDCK細胞のコンフルエントな単層を、2のMOIでcH9/1N3ウイルスに感染させた。感染の48時間後、細胞を固定し、0.1%Tween 20を含むPBS中の1%ウシ血清アルブミンでブロッキングした。その後、細胞をマウスmAb:抗NP抗体HT103、PY102、抗H9(BEI NR#9485)、又は汎H1ストーク特異的抗体(6F12)とともにインキュベートした。0.1%Tween 20を含むPBSで3回洗浄した後、細胞をAlexa Fluor 488コンジュゲート抗マウスIgG(Invitrogen)とともに1時間インキュベートした。感染細胞をOlympus IX70顕微鏡を用いた蛍光顕微鏡法により解析した。
【0763】
(6.6.1.5 ヒト血清試料)
ヒト血清試料を回収し、施設内プロトコルに準拠して使用した。血清を3つの患者コホート:pH1N1に感染していない成人、pH1N1に感染していない小児、及びpH1N1ウイルスに感染した成人から回収した。血清をpH1N1に感染した患者から症候性感染の最初の3週間以内に回収した。プール血清を用いる実験については、等容量の各々の試料を混合して、プールを作製した。感染の確認は、Wrammertらによって、RT-PCR及び血清学的アッセイにより実施された(Wrammertらの文献(2011, J Exp Med 208, 181-193))。
【0764】
(6.6.1.6 血球凝集素阻害アッセイ)
回収された血清を、血球凝集の非特異的阻害因子を除去するために、トリプシン-熱-過ヨウ素酸処理によって、又はRDE処理によって最初に不活化した(Coleman, Dowdleの文献(1969, Bull World Health Organ 41, 415(1969))。血球凝集阻害(HI)アッセイを実施して、以前に記載されている通りに、cH9/1N3及びA/アヒル/フランス/MB42/76(H6 HA)(Desselbergerらの文献(1978, Proc Natl Acad Sci U S A 75, 3341(Jul, 1978))ウイルスとの反応性を試験した(Lowenらの文献(2009,. J Virol 83, 2803))。HI活性が1:10希釈の血清で見られない場合、試料を陰性とみなす。
【0765】
(6.6.1.7 ELISA)
96ウェルELISAプレート(Qiagen HisSorb又はNunc Immulon 2)に、PBSに希釈した50ulのバキュロウイルス発現cH6/1、cH9/1、もしくは全長血球凝集素(H5 HA、BEI NR#660; H3 HA、BEI NR#15171)タンパク質、又はH1配列(PR8)の長いαヘリックス(LAH)(Wangらの文献(2010, Proc Natl Acad Sci U S A 107, 18979))をコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを0.5%ミルク/2%ヤギ血清/PBSでブロッキングし、その後、PBS/0.1%Tween(PBST)で3回洗浄した。モノクローナル抗体、ヒト対象由来血清、及び対照として使用されるマウス血清をPBS又はブロッキングバッファーに連続希釈し、その後、プレートに添加し、次いで、室温で1時間インキュベートした。その後、プレートをPBSTで3回洗浄し、アルカリホスファターゼ(AP)(Meridian Life Science)又は抗マウスAP(Invitrogen)に結合させたヤギ抗ヒトIgG[Fc]の1:5000希釈液とともにさらに1時間インキュベートした。PBSTで3回洗浄した後、p-ニトロフェニルホスフェート基質(Sigma)を添加した。10分後、反応をNaOHで停止させ、光学密度測定を405nmで行なった。
【0766】
(6.6.1.8 プラーク減少アッセイ)
感染した成人及び未感作(pH1N1ウイルスに感染していない)患者由来血清を最初にプールし、IgGタンパク質の精製のために、プロテインGセファロース(GE Healthcare)を含む重力流カラムに充填した。カラムをPBSで洗浄した。ポリクローナル抗体を0.1Mグリシンバッファー(pH 2.7)で溶出させた。2M Tris-HClバッファー(pH 10)を1:10の比率ですぐに添加して、pHをもとに戻した。溶出液をPBS中でバッファー交換し、50kD MWカットオフを有するAmicon Ultra-15遠心分離フィルターユニット(Millipore)を用いて、スイング式バケットローター中で濃縮した。タンパク質濃度を、A280法を用いてNanoDrop 2000分光光度計で測定した。非特異的血清阻害因子の除去を、多数のウイルス株を用いて、精製IgG調製物中にHI活性が存在しないことを示すHI試験で確認した(データは示さない)。ストーク反応性抗体の中和能力を、以前に記載されている通りに評価した(Wangらの文献(2010, PLoS Pathog 6, e1000796))。ウイルスを、1ウェル当たり100プラーク形成単位を生じさせる濃度にまで最初に希釈した。その後、プール血清由来の様々な濃度のIgGをウイルスとともに室温で1時間共インキュベートした。MDCK細胞を播種した6ウェルプレートをPBSで洗浄し、その後、200ulのウイルス-IgG混合物に感染させた。37℃で45分間のインキュベーションの後、ウイルス及びIgGを細胞から吸引し、適切な抗体濃度及びTPCKトリプシンを含む寒天オーバーレイを各々のウェルに添加した。プレートを37℃で2日間インキュベートした。プラークを、抗H9抗体G1-26を用いた免疫染色により可視化した(Bouvierらの文献(2008, J Virol 82, 10052))。
【0767】
(6.6.1.9 シュードタイプ粒子中和アッセイ)
シュードタイプ粒子産生の手順を以前の研究を基に改変した(Evansらの文献(2007, Nature 446, 801))。簡潔に述べると、293-T細胞に、(i)所望のレポーターを含むプロウイルス(V1-GLuc)、(ii)HIV Gag-Pol、(iii)キメラcH9/1血球凝集素タンパク質、及び(iv)B型インフルエンザ/山形/16/88ノイラミニダーゼ(NA)をコードする4つのプラスミドをコトランスフェクトした(Tscherneらの文献(2010, J Virol Methods 163, 336))。V1-GLucプラスミドは、細胞から分泌され、細胞上清中で検出することができるルシフェラーゼタンパク質をコードしている。トランスフェクションの48時間後、上清を回収し、その後、cH9/1粒子調製物を精製するために濾過した(0.45μm孔径)。その後、粒子を(感染後に線形範囲内のルシフェラーゼ活性を与えることが判明している量で)様々な濃度(50μg/ml、10μg/ml、及び2μg/ml)の精製ヒトIgGとともにインキュベートし、MDCK細胞に添加した。感染が6時間進行した後、細胞を洗浄し、新鮮な上清を細胞の上に配置した。シュードタイプ粒子を用いる感染は全て、1μg/mlポリブレン(Sigma, St. Louis, MO)の存在下で実施した(Tscherneらの文献(2010, J Virol Methods 163, 336))。感染の48時間後、ルシフェラーゼアッセイを実施した。
【0768】
(6.6.2 結果)
(6.6.2.1 キメラ血球凝集素に基づく試薬の開発)
解析ツールとしての役割を果たすキメラ血球凝集素(cHA)構築物を作製して、ヒト血清中のストーク抗体の存在を評価した。C52とC277の間に存在し、かつHAストークとヘッドの境界の線引きをするジスルフィド結合を利用することにより、PR8ウイルスのHA由来のストークドメインの上にH6又はH9血球凝集素の球状ヘッドドメインをコードする発現プラスミドを人為的に作製した(図26A)。ストーク抗体を含むヒト血清試料は、H6又はH9ウイルスに対する血球凝集素阻害(HI)活性について陰性である可能性が高い(これらのウイルス亜型に対して事前に曝露されていないことによる)が、H1血球凝集素ストークに対して事前に曝露されているためにcH6/1又はcH9/1構築物と反応するであろうと仮定した。これらのツール、組換え発現cHAタンパク質、及びcHAを発現するウイルスを用いて、ヒト血清試料中のストーク抗体の相対量を評価し、該ストーク特異的抗体によって媒介される中和活性を測定することができた。
【0769】
解析的アッセイ用のcH6/1及びcH9/1タンパク質を生成させるために、キメラHAをコードするプラスミドを作製し、バキュロウイルス発現系で可溶性タンパク質として発現させた。2μgの全タンパク質のクマシー染色から、これらの調製物における高い純度が示唆されている(図29A)。cH9/1のわずかな移動の遅れは、cH9/1ヘッド上での占められたグリコシル化部位の数の増加の結果であると考えられる。cHAタンパク質を、HAの様々な部分と反応する抗体を用いたウェスタンブロット解析によりさらに特徴付けた。図29Bに示すように、cH6/1、cH9/1、及びPR8由来の全長HAのみが、PR8ストークに特異的なウサギポリクローナル抗血清と反応した。H6、H9、及びPR8のヘッドドメインに対するモノクローナル抗体により、キメラ構築物がPR8ストークの上に外来のヘッドを発現することが確認された。H3タンパク質は、陰性対照として使用され、汎H3抗体12D1を使用した場合にのみ検出された(Wangらの文献(2010, PLoS Pathog 6, e1000796))。
【0770】
中和ストーク抗体を検出する目的で、キメラ分子を発現する組換えウイルスもレスキューした。過去1世紀にわたるヒトインフルエンザウイルスは全て、N1又はN2亜型のNAをコードしているので、cH9/1N3再集合体ウイルスのレスキューにより、どの(N1又はN2)ノイラミニダーゼ抗体活性も測定することなく、ストーク特異的抗体の中和能力の評価が可能になると推論された。cH9/1N3ウイルス(H9球状ヘッドHAと、N3亜型ノイラミニダーゼとともに、H1ストークを発現する)を、リバースジェネティックスを用いてレスキューし、高力価になるまで発育鶏卵中で成長させた。このウイルスのプラークアッセイ表現型は、PR8野生型ウイルスのプラークアッセイ表現型と同様であった(図29C)。ウイルス継代後のH9ヘッドの存在を確認するために、細胞をcH9/1N3ウイルスに感染させた。その後、感染細胞を、H9亜型血球凝集素タンパク質に特異的な抗体であるマウスmAb G1-26でプロービングした。汎H1ストーク特異的抗体6F12を用いて、野生型PR8ウイルス感染細胞とcH9/1N3ウイルス感染細胞の両方を検出した(図26B)。
【0771】
(6.6.2.2 ストーク特異的抗体はcHAに結合し、それを中和する)
cH6/1及びcH9/1タンパク質をツールとして用いて、ステム抗体を検出することができることを確認するために、これらのcHAの使用を、HAストークと反応することが知られている抗体で最初に検証した。実際、H1 HAのストークと反応する抗体であるマウスmAb C179(Okunoらの文献(1993, J Virol 67, 2552))は、ELISAにより、用量依存的な形でバキュロウイルス発現cH6/1及びcH9/1タンパク質に結合した(図30A及びB)。
【0772】
次に、cH9/1N3ウイルスの複製がモノクローナル抗体6F12によって阻害され得るかどうかを確認した。このモノクローナル抗体は、H1インフルエンザウイルスに対する中和活性を有する(データは示さない)。抗体6F12は、プラーク減少アッセイにおいて、用量依存的な形でcH9/1N3ウイルスに結合して、それを中和することができ(図30C及びD)、4μg/mlを超える濃度で100%阻害が見られた。これらの結果は、キメラタンパク質及び組換えcH9/1N3ウイルスを用いて、中和活性を有するストーク抗体を検出することができるという仮説を立証した。
【0773】
(6.6.2.3 pH1N1に感染した患者は、cHAに結合し、それを中和する高力価の抗体を有する)
cH6/1及びcH9/1可溶性タンパク質を用いて患者血液試料中のストーク反応性抗体を定量する前に、HI活性用の血清を、これら2つのHA亜型を発現するウイルスに対して試験した。A/アヒル/フランス/MB42/76(H6)及びcH9/1N3ウイルスを用いて、回収された成人及び小児血清試料の全てがHI陰性であることが確認された(結果は示さない)。
【0774】
次に、血清とcH6/1及びcH9/1タンパク質との反応性をELISAにより試験した。pH1N1ウイルスに感染していない成人及び小児対象から回収された血清は、どちらのタンパク質ともほとんど反応性を示さなかった。しかしながら、pH1N1インフルエンザウイルスに感染した患者から回収された血清は、両方のcHA構築物に対する結合の増強を示し、pH1N1感染者由来の血清プールと未感染の成人及び小児の血清プールと比較したとき、IgG反応性の違いは、(同等の光学密度測定値を生じる希釈液と比べて)30倍を超えて大きかった(図27A及びB)。したがって、陰性のHIデータを考慮することにより、cHAタンパク質との反応性がストークドメイン中で生じると推論された。
【0775】
ヒト血清のプール試料を用いて、HAステムの一部である、長いαヘリックス(LAH)に対するIgG結合も試験した。これらのIgGは、マウスにおける防御的免疫を媒介することが以前に示されていた(Wangらの文献(2010, Proc Natl Acad Sci U S A 107, 18979))。pH1N1に感染した患者由来の血清は、H1 LAHと反応する抗体を含んでいたが、パンデミックウイルスに曝露されていない患者は、最小限のLAH特異的血清抗体を有していた(図27C)。
【0776】
H5血球凝集素亜型は、H1 HAと同じ系統発生学的グループにあり、極めてよく似たストーク構造を共有する(Ekiertらの文献(2009, Science 324, 246))。興味深いことに、pH1N1に曝露された患者では、H5タンパク質と反応する血清抗体特異性が増大したが(図27D)、相同H5亜型ウイルスに対する血清HI活性が全くなかった(データは示さない)。この結果は、pH1N1ウイルスへの曝露によって、ストーク特異的抗体により媒介されるある程度の抗H5免疫が付与された可能性があることを示唆した。
【0777】
重要なことに、pH1N1に感染した患者では、H3血球凝集素タンパク質に特異的な血清抗体が増加しなかった(H3は、H1及びH5 HAとは別の系統発生学的グループにある)(図27E)。この結果は、pH1N1感染患者由来の血清中のストーク特異的抗体の力価の増強は、通常の免疫刺激の機能ではなく;むしろ、H1ストーク抗体特異性は、パンデミックウイルス株の感染によって選択的に増大したことを示している。
【0778】
次に、これらのヒト試料中に見られるこれらのストーク反応性抗体が中和能力を有するかどうかを評価した。感染した成人及び未感染の成人由来の血清試料をプールし、血球凝集素ヘッドに結合する非特異的阻害因子(例えば:シアル酸含有分子及びレクチン)を除去するために、全IgGを精製した。これらの純粋なIgG調製物を用いて、55.5μg/mL全血清IgGを超える抗体濃度での完全阻害プラーク形成(図28A及びB)が達成された。ELISAデータによると、pH1N1感染者由来の血清を未感染の成人の血清と比較したとき、中和活性の約30倍の違いが観察された。mAb 6F12を標準として用いて、6F12によって媒介される中和活性とポリクローナルヒトIgG調製物によって媒介される中和活性との比較を行なうことができた。cHAウイルスの100%中和をもたらした6F12の濃度とヒトIgGの濃度を比較することにより、最後の30日間にpH1N1に感染した患者由来の全ヒトIgGの7%が中和ストーク抗体を含むと推測された。
【0779】
最後に、ストーク反応性抗体の中和能力を、シュードタイプ粒子感染アッセイを用いて評価した。このアッセイは、宿主細胞へのウイルス侵入時に生成されるルシフェラーゼ活性の読出しを有する。cH9/1タンパク質を発現するシュードタイプ化粒子を精製ヒトIgGとともにインキュベートし、中和活性を、細胞上清中のルシフェラーゼ酵素活性の欠如をもたらす粒子侵入の阻害により測定した(方法参照)。プラーク減少アッセイと一致して、シュードタイプ化粒子アッセイも、10μg/mlを超える全IgG濃度で粒子の100%中和を示した(図28C)。
【0780】
(6.6.3 結論)
血球凝集素タンパク質の球状ヘッドに結合する抗体も含む調製物中でのストーク特異的抗体の選択的検出を可能にする、キメラ血球凝集素タンパク質及び該キメラタンパク質を発現するウイルスの形態の、新規の解析ツールを開発した。これらの新規の血球凝集素構築物は、不変のH1亜型ストークを異なる血球凝集素亜型由来の球状ヘッドドメインとともに(例えば:H1ストークをH6ヘッドとともに)有している。これを、血球凝集素タンパク質(19)のシステイン52と277の間に存在するジスルフィド結合を利用することによって達成し、介在配列と異なるHA亜型の配列とを交換した。
【0781】
これらのキメラ血球凝集素(cHA)構築物を用いて、pH1N1ウイルス感染が確認されたヒトの小コホートが、未感染の成人及びpH1N1ウイルスに感染していない小児対照と比べて高い力価のストーク特異的な中和抗体を生成させることが示された。これらの知見は、血球凝集素(hemagglutintin)ストークと反応する抗体が、pH1N1感染に応答して生成し、2009年のインフルエンザパンデミック以前に循環していた季節性H1N1ウイルスの絶滅の一因となった可能性が高いという仮説を支持する。
【0782】
(6.7 実施例7:キメラ血球凝集素:異なる亜型及び系統発生学的グループに由来する球状ヘッド及びストークドメインを発現するインフルエンザウイルス)
この実施例は、異なる血球凝集素亜型及び異なる系統発生学的グループの種々の球状ヘッド及びストーク組合せを包含するいくつかの機能的キメラインフルエンザウイルス血球凝集素、並びにこれらのキメラ血球凝集素を発現し、野生型インフルエンザウイルスの成長特性と同様の成長特性を有する組換えインフルエンザウイルスを記載している。これらのキメラ組換えウイルスは、野生型インフルエンザウイルスの成長特性と同様の成長特性を保有しており、ウイルス学的及び免疫学的アッセイでドメイン特異的抗体を測定するための試薬として使用することができる。
【0783】
(6.7.1 材料及び方法)
(6.7.1.1 細胞及びウイルス)
293T及びMDCK細胞をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)から入手し、10%胎仔ウシ血清(HyClone; Thermo Scientific)及びペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco, Invitrogen)を補充したダルベッコの最小必須培地(DMEM)又はMEM(Gibco, Invitrogen)のいずれかの中で維持した。A/プエルトリコ/8/1934(PR8)及びA/パース/16/2009(パース/09)野生型(Alexander Klimov, CDCにより親切に提供されたもの)及び組換えウイルスを、特定病原菌を含まない10日齢の発育鶏卵(Charles River)中、37℃で2日間成長させた。
【0784】
(6.7.1.2 プラスミドの構築)
様々なキメラ血球凝集素をコードするプラスミドを、以前に記載されているものと同様の戦略を用いて構築した(例えば、Fodorらの文献(1999, J Virol 73:9679-9682);及びHaiらの文献(2008, J Virol 82:10580-10590参照))。簡潔に述べると、キメラHAの様々なセグメントを、SapI部位を含むプライマーでPCRにより増幅させ、SapIで消化し、アンビセンス発現ベクターであるpDZベクターのSapI部位に、多重セグメントライゲーションによりクローニングした。このベクターでは、vRNA転写が、ヒトRNAポリメラーゼIプロモーター及びマウスRNAポリメラーゼIターミネーターによって制御され、mRNA/cRNA転写が、ニワトリβアクチンポリメラーゼIIプロモーターによって制御される(例えば、Quinlivanらの文献(2005, J Virol 79:8431-8439)参照)。本発明者らは、Daniel Perez(メリーランド大学)に対して、H7 HAプラスミド(Genbank ID: DQ017504)のことで深く感謝している。A/プエルトリコ/8/1934(PR8)遺伝子をコードするプラスミドを以前に記載されている通りに使用した(Haiらの文献(2008, J Virol 82:10580-10590))。
【0785】
(6.7.1.3 ヌクレオチド配列受託番号)
本研究で使用される構築されたcHA遺伝子は全て、受託番号IRD-RG-684014、IRD-RG-684022、IRD-RG-684030、及びIRD-RG-684038の下、インフルエンザ研究データベース(Influenza Research Database)に寄託されている。キメラcH1/1、cH5/1、cH7/3、及びcH5/3は、それぞれ、A/プエルトリコ/8-RGcH1-1/34、A/プエルトリコ/8-RGcH5-1/34、A/パース/16-RGcH7-3/09、及びA/パース/16-RGcH5-3/09として記載されている。
【0786】
(6.7.1.4 フローサイトメトリー解析)
細胞表面での血球凝集素タンパク質発現のレベルを評価するために、293T細胞に、製造業者の指示に従ってLipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて、1μgの適当なプラスミドをトランスフェクトするか、又はMDCK細胞をcHA発現組換えウイルスに感染させた。トランスフェクションの48時間後、293T細胞をトリプシン処理し、2%FBSを含むPBSに再懸濁させ、その後、モノクローナル抗体(mAb) 6F12(これは、本発明者らの実験室で作製された、グループ1 HAのストークドメインに広く反応するmAbである(データは示さない))(5μg/ml)で、又はH3 HAに対するmAb 12D1(5μg/mL)で染色した(Wangらの文献(2010, PLoS Pathog 6:e1000796)参照)。感染の12時間後、MDCK細胞をトリプシン処理により再懸濁させ、mAb 12D1で染色した。染色された細胞をBeckman Coulter Cytomics FC 500フローサイトメーターで解析し、結果を、FlowJoソフトウェアを用いて解析した。
【0787】
(6.7.1.5 偽粒子生成及び侵入アッセイ)
偽粒子産生のための手順を以前の研究を基に改変した(例えば、Evansらの文献(2007, Nature 446:801-805)及びTscherneらの文献(2010, J Virol Methods 163:336-43)参照)。簡潔に述べると、本発明者らは、293T細胞に、(i)所望のレポーターを含むプロウイルス(V1-Gaussiaルシフェラーゼ)(Evansらの文献(2007, Nature 446:801-805))、(ii)HIV Gag-Pol(Evansらの文献(2007, Nature 446:801-805))、(iii)キメラ血球凝集素タンパク質、及び(iv)B/山形/16/88ウイルスノイラミニダーゼ(NA)をコードする4つのプラスミドをコトランスフェクトした。トランスフェクションの72時間後、上清を回収し、その後、濾過した(0.45μm孔径)。シュードタイプウイルス様粒子(VLP)の存在を血球凝集アッセイにより評価した。異なるVLP調製物を同じ4血球凝集単位に調整した後、MDCK細胞に接種した。形質導入の効率を増大させるために、偽粒子を用いた以下のアッセイは全て、1μg/mLポリブレン(Sigma)の存在下で実施した(例えば、Evansらの文献(2007, Nature 446:801-805)及びTscherneらの文献(2010, J Virol Methods 163:336-43)参照)。
【0788】
侵入アッセイは、異なるキメラ血球凝集素を発現し、Gaussiaルシフェラーゼレポーターを含む偽粒子をMDCK細胞に形質導入することにより実施した。形質導入の24時間後、細胞を新鮮な培地で3回洗浄して、接種材料中に存在する残留Gaussiaルシフェラーゼタンパク質を除去した。形質導入の48時間後、ルシフェラーゼアッセイを実施した(Evansらの文献(2007, Nature 446:801-805))。
【0789】
(6.7.1.6 組換えキメラインフルエンザAウイルスのレスキュー)
プラスミドDNAからのA型インフルエンザウイルスのレスキューを以前に記載されている通りに実施した(例えば、Fodorらの文献(1999, J Virol 73:9679-9682);及びHaiらの文献(2008, J Virol 82:10580-10590)参照)。組換え野生型(rWT)PR8ウイルスを作製するために、293T細胞に、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて、1μgの8つのpDZ PR8レスキュープラスミドをコトランスフェクトした。cHA発現組換えウイルスを作製するために、野生型HAプラスミドを、所望のキメラHAをコードするプラスミドと置き換えた。トランスフェクションの6時間後、培地を、0.3%ウシ血清アルブミン(BSA)、10mM HEPES、及び1.5μg/ml TPCK(L-1-トシルアミド-2-フェニルエチルクロロメチルケトン)処理トリプシン(Sigma)を含むDMEMと交換した。トランスフェクションの24時間後、8日齢の発育鶏卵にウイルス含有上清を接種した。37℃で2日間のインキュベーションの後、尿膜腔液を回収し、ニワトリ赤血球の血球凝集により、ウイルスの存在についてアッセイした。ウイルスストックの力価を、以前に記載されている通りに、MDCK細胞でのプラークアッセイにより測定した(Fodorらの文献(1999, J Virol 73:9679-9682)、Haiらの文献(2008, J Virol 82:10580-10590))。
【0790】
(6.7.1.7 ウイルス成長動態アッセイ)
組換えウイルスの複製特徴を解析するために、10日齢の発育鶏卵に、100プラーク形成単位(pfu)の野生型又はcHA発現組換えウイルスを接種した。尿膜腔液を回収し、その後、0、9、24、48、及び72感染後時間(hpi)で、ウイルス成長についてアッセイした。尿膜腔液中に存在するウイルスの力価を、上で言及されている通りに、MDCK細胞でのプラークアッセイにより決定した。
【0791】
(6.7.1.8 プラークの免疫染色)
プラークを、以前に記載されているプロトコルを用いて、A型インフルエンザ核タンパク質(NP)に対するmAb HT103で免疫染色することにより可視化した(Bouvierらの文献(2008, Journal of Virology 82:10052-8);及びSteelらの文献(2009, J Virol 83:1742-53))。
【0792】
(6.7.1.9 ウェスタンブロット及び間接免疫蛍光解析)
コンフルエントなMDCK細胞を、表示された組換えインフルエンザウイルスに感染させるか(2の感染多重度[MOI])、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を37℃で1時間模擬感染させた。12hpiで、細胞を、以前に記載されている通りに、1×SDSローディングバッファー中で溶解させた(例えば、Haiらの文献(2008, J Virol 82:10580-10590)参照)。還元された細胞ライセートを、A型インフルエンザウイルス核タンパク質(NP)に対するモノクローナル抗体(mAb)(HT103)、PR8 HAヘッドドメインに対するモノクローナル抗体(PY102)、Cal/09 HAヘッドドメインに対するモノクローナル抗体(29E3)、VN/04 HAヘッドドメインに対するモノクローナル抗体(mAb #8)、及びHAストークに対して反応する汎H3抗体である12D1を用いたウェスタンブロット解析により解析した。H7ヘッドドメインを検出するために、ポリクローナルヤギ血清NR-3152(A/FPV/オランダ/27(H7)ウイルスに対して惹起されたもの、BEI Resources)を使用した。抗グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)抗体(Abcam)をローディング対照に使用した。増強化学発光タンパク質検出系(PerkinElmer Life Sciences)を用いて、タンパク質を可視化した。
【0793】
免疫蛍光解析のために、15-mmカバースリップ上のMDCK細胞のコンフルエントな単層を、2のMOIで組換えウイルスに感染させた。15hpiで、細胞を固定し、メタノール-アセトン(比率、1:1)で、-20℃で20分間透過処理した。0.1%Tween 20を含むPBS中の1%ウシ血清アルブミンでブロッキングした後、細胞を、上記の抗体、及びmAb 6F12とともに1時間インキュベートした。0.1%Tween 20を含むPBSで3回洗浄した後、細胞を、Alexa Fluor 594コンジュゲート抗マウスIgG(Invitrogen)又はAlexa Fluor 594コンジュゲート抗ヤギIgG(Invitrogen)とともに1時間インキュベートした。最後の3回の洗浄の後、感染細胞を、Olympus IX70顕微鏡を用いた蛍光顕微鏡法により解析した。
【0794】
(6.7.1.10 プラーク減少アッセイ)
プラーク減少アッセイを以前に記載されている通りに実施した(Wangらの文献(2010, PLoS Pathog 6:e1000796)参照)。PR8ストークの上のCal/09又はVN/04球状ヘッドドメインから構成されたcHAを発現する約60〜80pfuの組換えウイルスを、様々な濃度(100、20、4、0.8、0.16、及び0.032ug/ml)のmAb KB2(これは、本発明者らの実験室で作製された広域中和性抗HAストーク抗体である(データは示さない))とともに、又はそれらなしで、240uLの全容量中、室温で60分間インキュベートした。6ウェルプレート中のMDCK細胞のコンフルエントな層をPBSで2回洗浄し、その後、抗体-ウイルス複合体とともに37℃で40分間インキュベートした。その後、接種材料を吸引除去した後に、上記の濃度の抗体を補充した又は抗体を補充していないTPCK-トリプシン寒天オーバーレイを各々のウェルに添加した。プレートを37℃で2日間インキュベートした。その後、プラークを、抗A型インフルエンザNP抗体HT103を用いた免疫染色により可視化した(Bouvierらの文献(2008, Journal of Virology 82:10052-8);及びSteelらの文献(2009, J Virol 83:1742-53))。
【0795】
(6.7.1.11 シュードタイプ粒子中和アッセイ)
シュードタイプ粒子産生の手順は上記のものと同じであり、VN/04(H5)ヘッド又はCal/09(H1)ヘッドのいずれか及びPR8(H1)ストークから構成されるcHA構築物をB型インフルエンザ/山形/16/88ウイルスNAとともに使用した。その後、粒子を、100μg/mLから0.032μg/mLまでの5倍希釈の様々な濃度のmAb KB2とともにインキュベートした。その後、これらの混合物をMDCK細胞に添加した。形質導入が6時間進行した後、細胞を洗浄し、新鮮な培地を細胞の上に配置した。シュードタイプ粒子を用いる形質導入は全て、1μg/mLポリブレン(Sigma, St. Louis, MO)の存在下で実施した(Tscherneらの文献(2010, J Virol Methods 163:336-43))。形質導入の48時間後、侵入がmAb KB2によって遮断された程度をアッセイするために、ルシフェラーゼアッセイを実施した。
【0796】
(6.7.2 結果:)
(6.7.2.1 キメラ血球凝集素の作製)
Cys52-Cys277ジスルフィド結合を形成するシステイン残基が保存されているかどうかを確かめるために、H1、H3、H5、及びH7亜型のA型インフルエンザウイルスHA配列のアラインメントを本研究で使用した。これらのシステイン残基は、HA亜型にわたって極めて保存されているので、グループ1 HAとグループ2 HAの両方について、Cys52-Cys277ジスルフィド結合を、ヘッドドメインとストークドメインの間を線引きする点として使用した。Cys52とCys277の間の配列をヘッド領域と定義し、分子の残りの部分をストークと定義することにより、種々のHA亜型由来の新規のヘッド及びストーク組合せをコードする構築物を作製することができることが理論的に説明された(図31A及びB)。
【0797】
ヘッドドメインの交換が可能となり得る、血球凝集素亜型のストーク領域とストーク領域の間に存在するアミノ酸同一性度のために、本発明者らはさらに促された。ヘッドドメインと比べて、より高いパーセンテージのアミノ酸同一性が、全ての亜型にわたってストークドメイン中に見られた(図32)。
【0798】
インフルエンザHAの16種の亜型は全て、2つの系統発生学的グループに分類される(Palese及びShawの文献(2006, オルトミクソウイルス:ウイルス及びその複製(Orthomyxoviridae: the virus and their replication), Fields virology, 第5版, 1647-1690)。より高いパーセンテージのアミノ酸同一性が特定のグループのストーク領域内で観察されたので(図32)、及びグループ1ウイルス由来のヘッドドメイン及びストークドメインを含む1つのcHAウイルスの作製に成功していたので(Picaらの文献(2012, PNAS 109:2573-8))、グループ内cHAを作製する試みが行なわれた。グループ1については、パンデミックH1 Cal/09 HA又はVN/04球状ヘッドドメインのいずれかをPR8(H1)HA由来のストーク領域とともにコードする2つのキメラ血球凝集素構築物(それぞれ、cH1/1及びcH5/1)を作製した(図31B)。同様の戦略を適用して、異なるグループ2インフルエンザ株由来のヘッドドメイン及びストークドメイン:Alb/01(H7、グループ2)由来のヘッド及びパース/09(H3、グループ2)HA由来のストーク領域を発現するキメラHA(cH7/3)を作製した(図1B)。最後に、ヘッドドメイン及びストークドメインを交換して、パース/09 HA(H3、グループ2)ストークの上にVN/05 HA(H5、グループ1)のヘッドドメインを含むグループ間キメラHA(cH5/3)を作製することができるかどうかを評価した(図31B)。
【0799】
これらのプラスミドの構築後、様々なキメラHA構築物が発現され、野生型HAのように細胞表面に輸送されることができるかどうかを明らかにするために、実験を実施した。それぞれ、H1及びH3ストークドメイン特異的抗体で表面染色した後、一過性にトランスフェクトされた293T細胞の蛍光活性化セルソーター(FACS)解析を実施した。この方法を用いて、4つ全てのキメラ構築物の細胞表面発現を検出した(図33)。しかしながら、野生型PR8 HAと比べて、より少ない表面タンパク質発現がcH1/1構築物について検出され、これは、このキメラDNA構築物についてのCal/09 HAのヘッドドメインと関連する固有の性格又はより低いトランスフェクション効率に起因する可能性があった。さらに、cH7/3構築物とcH5/3構築物の細胞表面発現パターンに違いがあったことは注目すべきことである。この「二重ピーク」発現パターンは、トランスフェクション条件でのみ観察され、再現性があった。それは、cH7/3発現組換えウイルスの感染によっても、cH5/3発現組換えウイルスの感染によっても検出されなかった(図33)。したがって、これらのデータは、cHAがゴルジ複合体から細胞表面へと輸送されることができることを示している。
【0800】
次に、MDCK細胞の形質導入による様々なcHAの侵入特徴を、ルシフェラーゼレポーター構築物を含み、粒子表面にcHA及び野生型B/山形/16/88ウイルスNAを発現するレトロウイルスシュードタイプ粒子を用いて調べた。cHAタンパク質によって媒介される侵入効率をルシフェラーゼの読出しにより検出した。同程度のレベルのシュードタイプ粒子媒介性ルシフェラーゼ発現が、cH5/1、cH7/3、及びcH5/3キメラHA、並びに対応する野生型タンパク質について観察された(図34)。cH1/1 HAをコードする粒子は、他のHA構築物と比べてより低いルシフェラーゼレベルを発現し、これは、プロデューサー細胞株におけるcH1/1発現がより低く、したがって、粒子1つ当たりのHA三量体がより少ないことか、又はcH1/1 HAの侵入特性の効率がより低いことかのいずれかによるものである可能性があった。シュードタイプ粒子を4血球凝集素単位に正規化したとき、赤血球に対する結合の違いのために、シュードタイプ粒子の実際の量が変化し得るということもあり得る。
【0801】
(6.7.2.2 キメラ血球凝集素を有する組換えインフルエンザウイルスの作製)
本発明者らのcHA構築物は効率的に発現し、細胞表面に輸送されることが明らかにされていたので、cHAをコードする組換えインフルエンザウイルスをレスキューすることができるかどうかを評価するための研究を実施した。以前に発表されたプロトコルを用いて、様々なcHAを含むウイルスを作製するのに成功した(例えば、Fodorらの文献(1999, J Virol 73:9679-9682);及びHaiらの文献(2008, J Virol 82:10580-10590)参照)。得られたウイルスをプラーク精製し、10日齢の発育卵中で増幅させ、キメラセグメントをRT-PCRにより解析し、シークエンシングした。どの場合も、ウイルスは、予想されたキメラHAセグメントを有し、他のHAセグメントを有さないことが分かった(データは示さない)。
【0802】
レスキューされたウイルスにおけるcHAの存在を感染細胞のウェスタンブロット及び間接免疫蛍光によりさらに確認した(図35及び36)。MDCK細胞を、rWT PR8、野生型パース/09、cH1/1、cH5/1、cH7/3、及びcH5/3ウイルスに感染させた(図35及び36)。cH1/1及びcH5/1キメラHAタンパク質を、それぞれ、Cal/09(H1) HAのヘッドドメインに対して反応する抗体(29E3)(Medinaらの文献(2010, Nature Communications 1:28))又はVN/04(H5) HAのヘッドドメインに対して反応する抗体(mAb #8)(Steelらの文献(2009, J Virol 83:1742-53))を用いて、対応する試料中で検出した(図35)。汎H3抗ストークmAbである12D1を用いて、cH7/3とcH5/3と野生型パースHAの間で同程度の発現レベル(Wangらの文献(2010, PLoS Pathog 6:e1000796)参照)。野生型パースHAは、ゲル上でのより遅い移動を示し、これは、球状ヘッドドメイン中のグリコシル化部位の数がより多いためである可能性が高い。cH7/3又はcH5/3感染試料に対して、それぞれ、抗H7ポリクローナル抗体(NR-3152)又は抗H5モノクローナル抗体(mAb #8)を使用することにより、正確なHAヘッドドメインがH3ストークの上に発現することが確認された。陽性バンドは、どちらの場合にも検出された。

【0803】
免疫蛍光研究について、感染条件は、ウェスタンブロット解析に使用した条件と同様であった。感染細胞を、図35で使用されているような対応する抗体で染色した。感染細胞は全て、キメラ及び野生型HA、並びにA型インフルエンザウイルスNPの予想される発現を示した(図36)。
【0804】
(6.7.2.3 組換えウイルスの複製特徴)
野生型及び組換えウイルスの成長特性を、10日齢の発育鶏卵中、37℃で評価した(図37A)。キメラHAを発現する組換えウイルスの成長動態の比較のために、rWT PR8ウイルスを含めた。cH5/1及びcH5/3ウイルスは、rWT PR8ウイルスの複製動態と同程度の複製動態を示した。cH7/3ウイルスは、48hpiで、rWT PR8と同様のピーク力価(1×109PFU/mL)にまで成長したが、9hpiで、rWT PR8ウイルスと比べてウイルス力価が2log低下した。全ての時点でのウイルス力価の低下によって示されるように、cH1/1ウイルスは、rWT PR8ウイルスと比べて弱毒化された。それにもかかわらず、cH1/1ウイルスは、約108PFU/mLというかなりのピーク力価に達した。パース/09野生型ウイルスは、発育卵中で同程度のピーク力価にまで成長する(データは示さない)。
【0805】
キメラウイルスの各々のプラーク表現型もMDCK細胞で評価した。図37Bに示すように、全てのウイルスが同程度の大きさのプラークを形成した。これらのデータを合わせて、キメラHA構築物が正確にフォールディングし、生物学的に機能的であることが確認される。
【0806】
(6.7.2.4 ストーク特異的抗体は、cHA発現ウイルス及び偽粒子を中和することができる)
最後に、ストーク特異的抗体を、本発明者らが新たに作製した、cHAを発現する組換えウイルスを中和する能力について試験した。プラーク減少アッセイを、広範なグループ1反応性を有するHAストーク特異的抗体であるmAb KB2の存在下で、又は抗体なしで実施した。mAb KB2が、同様の効率でかつ用量依存的な形で、全てのcHA発現ウイルスを中和することが示された。100ug/mLで、mAb KB2は、cH1/1及びcH5/1ウイルスを、100%の効率で完全に中和することができ、4ug/mLもの低い濃度でもいくらかの中和活性があった(図38A)。
【0807】
これらの結果を確認するために、シュードタイプ粒子阻害アッセイをmAb KB2を用いて実施した。cH1/1又はcH5/1及びB型インフルエンザウイルスNAを発現するシュードタイプ粒子を、mAb KB2の存在下で又は抗体なしで、MDCK細胞に添加した。形質導入の48時間後、上清を回収し、ルシフェラーゼ活性を測定した。予想された通り、mAb KB2は、cH1/1及びcH5/1シュードタイプ粒子の侵入を、4ug/mLを超える濃度で、用量依存的な形で阻止した。シュードタイプ粒子の侵入を阻害するには、プラーク減少アッセイで使用される濃度と比べてより低い濃度のmAb KB2で十分であったが、シュードタイプ粒子の表面でのHA三量体の組込みがより少ないと想定されていたので、これは予想された結果であった(Cortiらの文献(2010, The Journal of Clinical Investigation 120:1663-73))。全ウイルスをシュードタイプ粒子と対比させて含むアッセイにおいて、mAbの中和能力が異なるというこの現象は、他の研究で認められている(Cortiらの文献(2010, The Journal of Clinical Investigation 120:1663-7321); Suiらの文献(2009, Nature Structural & Molecular Biology 16:265-73))。
【0808】
(6.7.3 結論)
ヘッドドメインとストークドメインの境界を定める保存されたジスルフィド結合Cys52-Cys277を利用することにより、異なるHA球状ヘッドドメインを有するキメラHAタンパク質を有するインフルエンザウイルスを作製するための新しい戦略を開発した。したがって、もとのヘッドドメインを別のHAのヘッドドメインと置換することにより、同じストークを有するが、異なる球状ヘッドを有するキメラHAのパネルを作製した。この設計を、PR8ストークドメインをCal/09及びVN H5球状ヘッドとともに含む、多数の亜型にわたって検討した。さらに、H7球状ヘッドをH3ストークドメイン上に配置した。これらの構築物は、両方の系統発生学的グループのインフルエンザHAタンパク質を網羅する。各々の構築物は細胞表面に発現し、図12に示すような融合活性を保持した。キメラHAを有する組換えウイルスの作製は、HAが正しくフォールディングし、生物学的機能を保持することをさらに立証した。
【0809】
(6.8 実施例8:1976及び2009 H1N1インフルエンザウイルスワクチンは、ヒトで抗血球凝集素ストーク抗体を強化する)
この実施例は、A/ニュージャージー/1976インフルエンザウイルスワクチンを受けていた個体が、年齢を一致させた対照と比べて、血球凝集素ストーク抗体の力価の上昇を示したことを示す。これらの対照対象が、A/カリフォルニア/04/09ワクチンを受けた後に、抗血球凝集素ストーク抗体の増加を経験したのに対し、A/ニュージャージー/1976ワクチンを受けた個体は、それを経験しなかった。これは、血清中の抗ステム/ストーク抗体の存在を検出するためのキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの有用性を示している。
【0810】
(6.8.1 材料及び方法)
(6.8.1.1 ヒト血清試料)
2009年10月に、ヒト血清を、NJ/76ワクチンを受けていた対象(n=20、平均年齢=62)及び年齢を一致させた対照(n=15、平均年齢=57)から回収した。研究開始前の4カ月以内にインフルエンザ様疾患を経験していた対象は除外した。2009年10月から2010年1月の間に、全ての対象に一価Cal/09様ワクチンを投与した。Cal/09ワクチンを受けてから6〜8カ月後、対象は、ワクチン接種後の採血をしてもらうために戻ってきた(20人のNJ/76ワクチン被接種者のうち5人;15人の対照対象のうち7人)。入手可能な血清の量が限られているので、等容量のCal/09ワクチン接種前血清及びCal/09ワクチン接種後血清を、両方の試料が入手可能である個体からプールし(NJ/76ワクチン被接種者=5人;対照対象=7人)、その後、これらのプールを複数のアッセイで試験した。
【0811】
(6.8.1.2 細胞及びウイルス)
Madin-Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞をATCCから入手し、10%胎仔ウシ血清(FCS, Hyclone)及び100U/mlペニシリン及びストレプトマイシン(Gibco)を補充したダルベッコの改変イーグル培地(DMEM, Gibco)中で維持した。Cal/09を、1μg/mlのl-1-トシルアミド-2-フェニルエチルクロロメチルケトン処理(TPCK)-トリプシン(Sigma-Aldrich)を含むDMEM中、MDCK細胞で増殖させた。A/アヒル/フランス/MB42/1976(フランス/76)ウイルスを10日齢の発育鶏卵中で増殖させた。cH5/1 N3ウイルスを、以前に記載されているリバースジェネティックス系を用いて作製した(例えば、Fodorらの文献(J Virol 1999; 73:9679-82); Neumannらの文献(Proc Natl Acad Sci U S A 1999; 96:9345-50)参照)。vRNA及びmRNAをコードするリバースジェネティックスプラスミドは、A/プエルトリコ/8/34(PR8)由来の6つのWTウイルスセグメント、並びにcH5/1 HA及びA/ブタ/ミズーリ/4296424/06ウイルス(Miss/06)由来のN3 NAをコードするプラスミドを含む。cH5/1及びN3 RNAの配列は、RT-PCR産物のシークエンシングにより確認した。感染は全て、1μg/ml TPCK-トリプシンを補充したDMEM(感染培地)を用いて実施した。
【0812】
(6.8.1.3 組換えインフルエンザウイルスタンパク質の発現及び精製)
PR8、A/ニューカレドニア/20/99(NC/99)ウイルス、及びcH6/1由来のHAのN末端細胞外ドメインのコード配列(例えば、Picaらの文献(Proc Natl Acad Sci U S A 2012; 109:2573-80)参照)。HAを、C末端ヘキサヒスチジン-タグ及びT4三量体化ドメインを有する修飾されたpFastBacベクター(Invitrogen)にインフレームでクローニングした。組換えバキュロウイルス(rBV)を製造業者の奨めに従って作製した。HyClone SFX昆虫細胞培地(Thermo Fisher Scientific)中で成長させたBTI-TN5B1-4(High Five)(Krammerらの文献(Mol Biotechnol 2010; 45:226-34))細胞を、500ml振盪フラスコ中、10の感染多重度(MOI)及び1×106細胞/mlの細胞密度で、HAを発現するrBVに感染させた。感染の72〜96時間後、細胞を回収し、室温(RT)で2000×gで10分間の低速遠心分離により上清から分離した。上清(250ml)を回収し、3mlのNi-NTA樹脂(Qiagen)とともに4℃で2時間インキュベートした。スラリーをカラムに充填し、洗浄バッファー(50mM Na2HCO3、300mM NaCl、20mMイミダゾール、pH 8)で3回洗浄した。タンパク質を溶出バッファー(50mM Na2HCO3、300mM NaCl、300mMイミダゾール、pH 8)で0.5mlずつ溶出させ、ブラッドフォード試薬でタンパク質含量について試験した。タンパク質を含む画分をプールし、30kDaのカットオフを有するAmicon Ultracell(Millipore)遠心分離ユニットを用いて濃縮し、バッファーをpH 7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に交換した。タンパク質の純度及びアイデンティティを、SDS-PAGE、クマシー染色、及びウェスタンブロットにより試験した。タンパク質濃度をブラッドフォード試薬で決定した。
【0813】
(6.8.1.4 免疫グロブリンG(IgG)終点力価の決定)
IgG終点力価を酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により決定した。簡潔に述べると、96ウェルプレート(Immulon 2; Nunc)に、炭酸塩/重炭酸塩バッファー、pH 9中の2μg/mlの精製組換えHA又はウシ血清アルブミン(BSA)を、4℃で一晩コーティングした。プレートを、RTで1時間、5%無脂肪乳でブロッキングし、PBS/0.025%Tween-20(PBS-T)で3回洗浄した。血清を5%無脂肪乳に連続希釈し、ウェルに添加した。プレートをRTで1時間インキュベートし、1時間後、それらをPBS-Tで3回洗浄した。ヤギ抗ヒトIgG-西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(Meridian Life Science社)二次抗体を5%無脂肪乳に1:5000で希釈した後、ウェルに添加し、RTで1時間インキュベートした。プレートをPBS-Tで3回再び洗浄し、その後、ペルオキシダーゼ基質(SigmaFAST OPD, Sigma-Aldrich)を添加した。基質とのインキュベーションをRTで5分間行なった後、3M HClの添加により、反応を停止させた。光学密度測定を490nmで行なった。HAに対して回収された光学密度を、各々の個々の血清希釈についてBSAに対して測定された光学密度から減算し、非特異的シグナルに対して正規化した。バックグラウンドシグナルを、二次抗体のみの反応性に基づいて、各々の特定の抗原について計算した。終点力価を、非特異的(BSA)シグナルの減算後のバックグラウンドを上回る少なくとも3標準偏差の光学密度を有するものとして定義した。
【0814】
(6.8.1.5 血球凝集阻害(HAI)アッセイ)
血清を、56℃で30分間、0.5容量の8mg/ml TPCK-トリプシン(Sigma-Aldrich)で処理することにより、血球凝集の非特異的阻害因子を除去した。その後、試料をRTに冷却し、その後、3容量の11mM過ヨウ素酸カリウム溶液(Sigma-Aldrich)を添加した。試料を過ヨウ素酸カリウムとともにRTで15分間インキュベートした後、3容量の1%グリセロール生理食塩水溶液を試料に添加し、これを再び、RTで15分間インキュベートした。最後に、1.5容量の0.85%生理食塩水を試料に添加し、その後、使用した。容量は全て、血清の出発容量に関連したものである。血球凝集アッセイを、0.5%ニワトリ赤血球(cRBC, Lampire Biological Laboratories)を用いてV底96ウェルプレート(Nunc)中で最初に実施して、3ウェル分の血球凝集をもたらすウイルスの希釈を決定した。ウイルス及び抗体を混合し、RTで30分間インキュベートした。その後、cRBCをウェルに添加し、プレートを氷上で約30分間インキュベートした後、読み取った。
【0815】
(6.8.1.6 マイクロ中和アッセイ)
簡潔に述べると、50%組織培養感染用量(TCID50)を、cH5/1 N3及びCal/09ウイルスについて、MDCK細胞での連続希釈により決定した。感染後、細胞を、37℃、5%CO2で、20時間インキュベートした。細胞を80%アセトンで固定し、3%過酸化水素及び5%無脂肪乳でブロッキングした。細胞を、1:2000希釈のビオチンコンジュゲートマウス抗NP(Millipore)、次いで、1:5000希釈の二次HRPコンジュゲートストレプトアビジン(Millipore)でプロービングした。ペルオキシダーゼ基質(SigmaFAST, Sigma-Aldrich)をウェルにRTで20分間添加した後、反応を3M HClで停止させた。マイクロ中和アッセイのために、200 TCID50/100μlを、先に記載したようにTPCK-トリプシンで事前処理しておいた連続希釈血清(感染培地中)のウェルに添加した。血清及びウイルス(cH5/1 N3又はCal/09)を37℃で1時間インキュベートした。血清/ウイルス混合物をコンフルエントなMDCK細胞の96ウェルプレートに移し、これを、吸着させるために、37℃、5%CO2で1時間インキュベートした。プレートをPBSで2回洗浄し、等濃度の希釈血清を含む感染培地とともに20時間再インキュベートした。固定及び抗体処理は、TCID50決定時に使用したもとの同一であった。中和力価を、感染性の少なくとも50%阻害をもたらす血清の希釈として定義した。
【0816】
(6.8.2 結果)
(6.8.2.1 NJ/76ワクチン被接種者は、Cal/09ワクチン接種前に上昇した力価のHAストーク抗体を有していた)
HAストーク抗体は、ヘッドドメインが過去の曝露とは実質的に異なっているが、ストークドメインがなおも保存されているHAに個体が曝露されている感染の状況において、最も効率的に増加すると考えられる(例えば、Palese及びWangの文献(MBio 2011; 2)参照)。A/フォートワーレン/1/50(FW/50、季節性)、NJ/76(ブタ起源)、NC/99(季節性)、及びCal/09(ブタ起源)由来のHA0のアミノ酸配列比較から、この点が示される(表12)。Cal/09及びNJ/76のHAは、季節性株NC/99のHAと比較したとき、全体でそれぞれ79.9%及び82.5%のアミノ酸配列同一性を共有する。同様に、NJ/76と以前から循環している季節性株FW/50との間の同一性度は83.0%であった。しかしながら、さらに解析すると、これらのタンパク質間の最大の同一性度は、HAストークドメイン中に存在し(Cal09対NC/99=88.9%同一性;NJ/76対NC/99=91.6%同一性;NJ/76対FW/50=90.9%同一性)、一方、ブタ起源のH1のヘッドドメインは、季節性H1のヘッドドメインとは実質的に異なる(Cal/09対NC/99=67.1%同一性;NJ/76対NC/99=69.7%同一性;NJ/76対FW/50=69.8%同一性)ことが明らかになる。ヒトでのその出現に30年を超える隔たりがあるにもかかわらず、ブタ起源のH1は、季節性H1に対してよりも互いに対してはるかに高い同一性度を示す(全HA0=91.0%同一性;ヘッドドメイン=85.9%同一性;ストークドメイン=94.6%同一性)。したがって、Cal/09感染(例えば、Picaらの文献(Proc Natl Acad Sci U S A 2012; 109:2573-8)参照)と類似した形で、NJ/76ワクチンのレシピエントは、Cal/09曝露前にHAストーク抗体の増加を経験した可能性がある。
表12:
Cal/09株、NJ/76株、NC/99株、及びFW/50株の血球凝集素アミノ酸配列比較
【表15】
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【0817】
NJ/76 HAとCal/09 HAとの類似性(及びNJ/76 HAとFW/50 HAの間の相違度)を考慮して、Cal/09のワクチン接種前に、NJ/76ワクチンを受けた対象が該ワクチンを受けていない対象よりも高い力価のストーク反応性抗体を有するかどうかを明らかにした。1976ワクチンを受けた個体(n=20)由来の血清を、該ワクチンを受けていない年齢を一致させた個体(n=15)由来の血清と比較した。cH6/1及びNC/99に対する終点IgG力価をELISAにより決定した。cH6/1 HAタンパク質は、H1ストークを含むが、H6ヘッドを含まない。ヒトのH6 IAVへの曝露の可能性は低いので、このタンパク質は、最近示されたように、グループ1 HAストーク結合抗体の検出のための有用なツールとしての役割を果たす(例えば、Picaらの文献(Proc Natl Acad Sci U S A 2012; 109:2573-8)参照)。顕著なことに、NJ/76ワクチン被接種者は、cH6/1 HAに対して対照対象と比べて有意に上昇したIgG終点力価を有していた(図39A)。2群間で季節性NC/99 HAに対するIgG終点力価に有意差は存在せず、この現象がHAストーク抗体に特異的であることが示された(図39B)。入手可能な試料が希少であるため、Cal/09ワクチン接種前及びCal/09ワクチン接種後血清プールを、両方の試料が入手可能である両方の群の全ての患者(NJ/76ワクチン被接種者=5/20;対照対象=7/15)から作製した。その後、各々の群由来のCal/09ワクチン接種前プールからのIgG終点力価をcH6/1及びNC/99 HAに対して決定し、それらが、個々の患者から回収されたデータを正確に反映し(図39A及び39B)、したがって、下流の用途に使用され得ることを保証した。実際、NJ/76ワクチン被接種者プールは、対照プールと比べてかなり上昇したcH6/1 HAに対する終点力価を示した(図39C)。しかしながら、この2群間でNC/99 HAに対するIgG終点力価に差は存在しなかった(図39D)。これらのデータは、NJ/76ワクチン被接種者が、Cal/09ワクチンを受ける前に、上昇した力価の抗HAストーク抗体を有していたことを示している。
【0818】
(6.8.2.2 NJ/76ワクチン被接種者は、Cal/09ワクチン接種前に、Cal/09に対する防御的HAI力価を有していた)
NJ/76ワクチンレシピエントだけがCal/09に対する防御的HAI力価を有していた一方、ワクチン接種されていない対象はそれを有していなかった(図40A)。プールされたHAI結果の信頼性を再び保証するために、該プールに含まれる各々の個体由来の血清を用いて、Cal/09に対してHAIアッセイを実施した。終点力価と同様、結果は、一貫性があり、かつ有意であり、プール血清が集団を正確に表すものであることを示している(図40B)。どちらの試料にもフランス/76ウイルス(H6N4)に対するHAI活性は観察されず、どの対象も、過去にH6ウイルスに曝露されていないことが確認された(図40A)。まとめると、これらの結果から、NJ/76ワクチン被接種者が、Cal/09ワクチン接種前に、Cal/09 HAの球状ヘッドに結合するHAI抗体の増加を経験したことが確認される。
【0819】
(6.8.2.3 抗HAストーク抗体力価は、Cal/09ワクチン接種後に、対照対象で増加した)
NJ/76ワクチンで免疫した個体と同様、p2009 IAVに感染した個体が、上昇した力価の抗HAストーク抗体を有するという観察(例えば、Picaらの文献(Proc Natl Acad Sci U S A 2012; 109:2573-8)参照)によって、Cal/09のワクチン接種も抗HAストーク抗体力価を増加させるかどうかを調べることになった。この目的のために、対照対象とNJ/76ワクチン被接種者の両方に、2009年10月から2010年1月までの間、一価Cal/09ワクチンを投与した。6〜8カ月後、対象は、そのワクチン接種後の採血をしてもらうために戻ってきた。NC/99 HA及びcH6/1 HAに対する終点IgG力価を、両方の群由来のワクチン接種後プール血清について、ELISAにより決定した。Cal/09ワクチン接種後の各々のHAタンパク質に対するIgG力価の変化倍率を計算するために、これらを、図39B及び39Dで決定されているワクチン接種前の値と比較した(表13)。対照対象の終点IgG力価は、cH6/1に対して2倍よりも大きく上昇したが、NJ/76ワクチン被接種者のIgG終点力価は増加しなかった。予想されたように、どちらの群でも、NC/99 HAに対して増加は観察されなかった。これらのデータは、Cal/09ワクチン接種もまた、抗HAストーク抗体の力価を増加させることができるが、過去にNJ/76に曝露されたことがない個体でのみ増加させることができることを示している。
表13:
NC/99 HA及びcH6/1 HAに対するCal/09ワクチン接種後IgG終点力価の変化
【表16】
[この文献は図面を表示できません]
【0820】
(6.8.2.4 NJ/76又はCal/09のワクチン接種は、相同HAストーク及び異種HAヘッドを含むウイルスに対する中和抗体を増加させた)
次に、NJ/76又はCal/09ワクチン接種後に経験される抗HAストーク抗体の増加が、相同HAストーク及び異種亜型(heterosubtypic)HAヘッドドメインを含むウイルスに対する中和力価の増強に対応するかどうかを明らかにした。これを検証するために、プール血清を用いて、cH5/1 N3ウイルスに対してマイクロ中和アッセイを実施した。cH5/1 N3ウイルスは、H5 HAヘッドドメイン、PR8 HAストーク、及びMiss/06由来のN3を含むので、該ウイルスを用いて、HAストーク中和抗体の存在を検出した。cH6/1に対するIgG終点力価データと一致して、NJ/76ワクチン被接種者由来の血清もまた、Cal/09のワクチン接種前の対照対象よりも顕著に強力なcH5/1 N3に対する中和力価を示した(2430対90)。しかしながら、対照対象しか、ワクチン接種後の中和抗体の増加(810、90から上昇)を経験しなかった(図41A)。NJ/76ワクチン被接種者は、Cal/09ワクチン接種前の対照対象よりも3倍強力であるCal/09に対する中和力価を有していた(90対30)。どちらの群も、Cal/09ワクチン接種後のCal/09に対する中和抗体力価の増加を経験した(図41B)。まとめると、これらのデータは、1976及び2009 H1N1ウイルスのワクチン接種によって増加した抗HAストーク抗体が、相同HAストーク及び異種亜型HAヘッドドメインを有するウイルスを中和する能力の増強に対応することを示している。
【0821】
(6.8.3 結論)
この実施例は、どちらも古典的ブタH1 HAを含む1976及び2009 H1N1 ワクチンが、HAストーク抗体の力価を増加させることができることを示す。さらに、ワクチン接種によって誘発される抗HAストーク抗体は、寿命が長いように思われ、多様なIAV株に対する部分的防御を提供することができる。
【0822】
(6.9 実施例9:普遍的なインフルエンザワクチンとしてのキメラ血球凝集素構築物)
この実施例は、独特な血球凝集素ヘッド及びストーク組合せを含むタンパク質である、キメラ血球凝集素(cHA)構築物のワクチン接種により誘発されることができるストーク特異的免疫応答の防御効力を示す。
【0823】
(6.9.1 材料及び方法)
(6.9.1.1 細胞及びウイルス)
293T及びMDCK細胞をATCCから入手し、ダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)及び最小必須培地(両方ともGibco製)中で維持した。各々に、10%胎仔ウシ血清(HyClone)、及び100ユニット/mlのペニシリン-100μg/mlのストレプトマイシン(Pen/Strep, Gibco)を補充した。
【0824】
インフルエンザウイルスA/フォートモンマス/1/1947(FM1)及びA/ネーデルラント/602/2009をマウス肺で継代し、その後、10日齢の発育鶏卵中で48時間成長させた。多塩基性切断部位が除去された低病原性A/ベトナム/1203/04(VN04):PR8 2:6再集合体ウイルス(例えば、Steelらの文献(2009, J Virol 83:1742-1753)参照)と、B/山形/16/1988ウイルスとを、ぞれぞれ、10日齢の発育鶏卵中、37℃で48時間又は33℃で72時間成長させた。
【0825】
組換えインフルエンザウイルスを上記のような及び以前に記載されているようなリバースジェネティックス系により産生した(例えば、Quinlivanらの文献(2005, J Virol 79:8431-8439)参照)。H1ストーク(PR8ウイルス由来)の上にH9ウイルスのHA球状ヘッドドメインを発現するウイルスであるcH9/1 N1ウイルスと、cH5/1(H5ヘッド(VN04)、H1ストーク)N1ウイルスとを、以前に記載されているのと同様の形でレスキューした(例えば、Picaらの文献(2012, PNAS USA 109:2573-2578)参照)。YAM-HAウイルスを作製するために、B/山形/16/1988(WT YAM) HAの細胞外ドメインをA/プエルトリコ/8/1934ウイルス HAの対応するドメインと置換した(例えば、Haiらの文献(2011, Journal of virology 85:6832-6843)参照)。他の7つのWT YAMウイルスセグメントをコードするリバースジェネティックプラスミドを以前の研究で構築した(例えば、Haiらの文献(2008, J Virol 82:10580-10590)参照)。レスキューの後、cHA発現組換えウイルスを、10日齢の発育鶏卵中、37℃で48時間増殖させた。YAM-HAウイルスを、8日齢の発育鶏卵中、33℃で72時間成長させた。
【0826】
組換えウイルス及び野生型ウイルスの力価を、上記のように、TPCKトリプシンの存在下、MDCK細胞(ATCC)で測定した。ELISAアッセイで使用するために、cH5/1 N1ウイルスを30%ショ糖クッション上で部分精製した。cH9/1 N1、cH5/1 N1、及びFM1ウイルスを勾配遠心分離で精製し、陽性対照ワクチンとして使用されるように、PBSに希釈した(1:4000)ホルムアルデヒドで不活化した。
【0827】
(6.9.1.2 cH6/1及びcH9/1タンパク質構築物の作製)
可溶性cH6/1及びcH9/1タンパク質を、上記のような及び以前に記載されているようなバキュロウイルス発現系を用いて生成させた(例えば、Picaらの文献(2012, PNAS USA 109:2573-2578)参照)。簡潔に述べると、バキュロ転移ベクターを最初に作製し、次いで、Sf9細胞へのバクミドのトランスフェクションを行なった。その後、組換えバキュロウイルスを用いて、High Five細胞に10のMOIで感染させた。感染の96時間後、上清を回収し、その後、Ni-NTA樹脂(Qiagen)とともに4℃で2時間インキュベートして、Hisタグ化組換えcHAタンパク質を精製した。スラリーをカラムに充填し、洗浄した後、pH 8の溶出バッファー(50mM Na2HCO3、300mM NaCl、250mMイミダゾール)中で溶出させた。タンパク質を含むプール画分をPBS中でバッファー交換し、10-kDa分子質量カットオフを有するAmicon Ultra遠心分離フィルターユニット(Millipore)を用いて、スイング式バケットローター中で濃縮した。タンパク質の純度及びアイデンティティを、SDS/PAGE、クマシー染色、及びウェスタンブロットにより試験した。最終的なタンパク質濃度をブラッドフォード試薬で決定した。
【0828】
(6.9.1.3 動物)
動物に、食餌及び水を自由に利用することを許し、12時間の明/暗周期で維持した。全ての鼻腔内処置のために、雌の6〜8週齢BALB/cマウス(Jackson Laboratories)を0.1mlのケタミン/キシラジン(0.15mgケタミン及び0.03mgキシラジン)の腹腔内(IP)注射で麻酔した。
【0829】
(6.9.1.4 ワクチン接種及び感染実験)
未感作の6〜8週齢の雌BALB/cマウスに、cH9/1タンパク質を、アジュバントR848(Invitrogen)の存在下で鼻腔内に(10ug)、及びMF59様アジュバント(Invitrogen)であるAddavaxとともに腹腔内に(10ug)ワクチン接種した。初回免疫の3週間後、動物をcH6/1タンパク質又はBSA(BioRad)で追加免疫した。追加免疫ワクチン接種も鼻腔内(10ug)及び腹腔内(10ug)に投与したが、ポリI:Cをアジュバント(Invitrogen)として使用した。不活化FM1ウイルス(1ug)を50ulの容量で陽性対照として筋肉内投与した。追加免疫の3週間後、動物から採血し、血清を回収し、動物を5 LD50のFM1ウイルスに感染させた。重量を、感染後14日間モニタリングした。
【0830】
他の実験において、動物を、cH9/1をコードするプラスミドDNA(80ug、TriGrid送達系; Ichor Medical Systems)で初回免疫し、次いで3週間後、ポリI:Cとともに鼻腔内(10ug)及び筋肉内(10ug)投与されるcH6/1又はcH9/1(対照)タンパク質で追加免疫した。3週間後、cH5/1又はcH9/1(対照)タンパク質で追加免疫を繰り返した。対照動物にも同じく、cH9/1をコードするDNAをDNA電気穿孔したが、(処置群と同様の方法で)BSAで2回追加免疫した。陽性対照動物は、不活化FM1もしくはPR8ウイルス(1μg)又は1μgのpH1N1一価スプリットワクチンのいずれかを筋肉内に受容した(BEI)。次いで、追加免疫の3〜5間後、動物を、5 LD50のPR8もしくはFM1、又は10 LD50のpH1N1ウイルスに感染させた。感染の48及び24時間前に、CD8+ T細胞除去に使用される動物を、300μgの抗CD8+ T細胞抗体(ATCCから購入したハイブリドーマ株2.43由来のもの)で処置し(例えば、M.L. Salemの文献(2000, Int. J. Immunopharmacol. 22:707)参照)、5 LD50のPR8ウイルスに感染させた。重量を、感染後14日間モニタリングした。20%カットオフを全てのウイルスに使用した。
【0831】
他の実験のために、マウスにYAM-HA又はWT YAMウイルスを接種し、次いで3週間後、ポリI:Cの存在下、BSA又はcH6/1タンパク質を筋肉内及び腹腔内にワクチン接種した。未感作動物は、追加の対照としての役割を果たした。全ての動物から採血し、ワクチン接種の3〜5週間後、250 LD50のcH9/1 N1ウイルス、又はPR8バックグラウンドで多塩基性切断部位が除去された10 LD50の2:6再集合体H5ウイルスに感染させた(例えば、Steelらの文献(2009, J Virol 83:1742-1753)参照)。ホルムアルデヒドで不活化したcH9/1 N1ウイルス(1ug)及びcH5/1 N1ウイルスを、適切なウイルス感染の陽性対照として、50ulの容量で筋肉内投与した。動物が感染後にその初期体重の30%超を失った場合、施設内ガイドラインに準拠して、動物を安楽死させた。20%カットオフを低病原性のcH9/1 N1及びA/ネーデルラント/602/2009ウイルスの感染に使用した。これら2つのウイルスを用いる感染については、全ての対照の死亡又は実質的な体重減少を評価するために、よりストリンジェントな用量を使用した(250又は10 LD50)。
【0832】
(6.9.1.5 酵素結合免疫吸着アッセイ)
Immulon 4HBX(Thermo Scientific)プレートに、5ug/mLになるまでPBSに希釈した部分精製cH5/1 N1ウイルスを一晩コーティングした。プレートを、3%無脂肪乳粉末を含む0.1%Tween 20-PBS(TPBS)で1時間ブロッキングし、その後、1%粉乳を含むTPBSに連続希釈したマウス血清とともに、室温で1時間インキュベートした。3回洗浄した後、プレートを、アルカリホスファターゼ(AP)結合抗マウスIgG(γ鎖特異的、Invitrogen)とともに室温で1時間インキュベートした。その後、プレートをTPBSで3回洗浄し、p-ニトロフェニルホスフェート(PNPP)基質(Zymed)で発色させ、0.5M NaOHで停止させ、405nmの光学密度で読み取った。全ての実験のために、Synergy 4(BioTek)プレートリーダーを使用した。
【0833】
ストーク特異的抗体力価を上記のようなELISAにより検出した。ストーク特異的反応性を定量するために、PR8抗原を用いて、ELISAプレートをコーティングした。ワクチン接種を受けたマウスにおけるストーク特異的抗体の中和能力を検出するために、血清をプールし、全血清IgGを精製した。
【0834】
H5 HAを発現する偽粒子を、以前に記載されている通りに、偽粒子侵入アッセイで使用した(例えば、Haiらの文献(2012, J. Virol. 86:5774-5781)及びN. Picaらの文献(2012, PNAS 109:2573-2578)参照)。侵入すると、偽粒子は、ルシフェラーゼレポーターを発現する。IgGによるこの侵入の阻害を、IgG処置していない対照と比べた発現のパーセンテージとして定量した。動物は、H5球状ヘッドドメインに曝露されていなかったので、これらのアッセイは、ワクチン接種によって産生されるストーク特異的抗体がウイルスを中和する程度を決定した。モノクローナル抗体CR6261、及びB型インフルエンザ野生型感染マウス由来の精製IgGを対照として使用した。
【0835】
(6.9.1.6 プラーク減少中和アッセイ(PRNA))
まず、mAbの希釈液を、60〜80プラーク形成単位(pfu)のウイルス(cH9N1 A型インフルエンザウイルス)とともに、RTで1時間、シェーカー上でプレインキュベートした。その後、ウイルス及び精製IgG混合物を用いて、MDCK細胞の単層に、2連で、12ウェルフォーマットで感染させ、10分毎に間欠的に揺り動かしながら、37℃で1時間インキュベートした。寒天オーバーレイに、対応するIgG希釈液を補充した。2感染後日(dpi)で、単層を4% PFA/1×PBSで30分間固定した。細胞を、5%NF-ミルク/1×PBSで、RTで30分間ブロッキングし、状況に応じて、いずれかのH9特異的モノクローナル抗体(5μg/mL)とともに、RTで1時間インキュベートした。HRPにコンジュゲートされた抗マウス二次抗体を1:1000希釈で二次抗体として使用した。プラークを、TrueBlueペルオキシダーゼ基質(KPL社)を用いて可視化し、反応を水道水で停止させた。プラークを各々の抗体について計数し、mAbなしの群と比べて、パーセント阻害を計算した。
【0836】
(6.9.1.7 統計学的検定)
統計解析を、片側スチューデントT検定(Prism4, GraphPad)を用いて実施した。図44Cについて、値は全て、標準誤差付きの平均値としてプロットされている。生存の差は、ログランク有意検定によるカプランマイヤー生存解析で計算した。
【0837】
P値を用いた解析については、0.05又はそれ未満のP値を統計的有意とみなす。分散が、統計的に異なるものと決定される場合は、ウェルチの補正を使用した。0.05又はそれ未満のP値を統計的有意とみなす。ストーク血清反応性を図3の最大重量減少と比較したとき、Iglewicz及びHoaglinの方法(E. Mykytka(編), 品質管理におけるASQC基本参考文献:統計的技術(The ASQC Basic References in Quality Control: Statistical Techniques). American Society of Quality Control)における、Iglewicz, B.及びH., D.の文献(1993. 第16巻:外れ値の検出及び処理方法(How to detect and handle outliers.)参照)に従って、1つの値を外れ値(修正Z-スコア>平均を上回る3.5標準偏差)として検出し、解析から除外した。
【0838】
(6.9.2 結果)
(6.9.2.1 cHA構築物の順次ワクチン接種はHAストーク特異的抗体を誘発し、致死的インフルエンザ感染からの防御をもたらす)
異なる抗原性を有するウイルス由来の球状ヘッドドメインを発現する構築物が、HAのストークドメインに対するポリクローナル応答を刺激することができると仮定した。これを検証するために、まず、マウスに、HAのストークがA/プエルトリコ/8/1934(PR8)ウイルスに由来するものであり、かつヘッドがH9分離株に由来するものであるcH9/1可溶性タンパク質を、アジュバントとともにワクチン接種した。初回免疫の3週間後、分子のストークドメインに対する液性応答を刺激する目的で、マウスを、第2の可溶性cHAであるcH6/1(H6ウイルス由来のヘッド、PR8ウイルス由来のストーク)で追加免疫した。(不活化FM1ウイルスをワクチン接種したマウスは、陽性対照としての役割を果たした)。追加免疫の3週間後、マウスから採血して、H1ストークドメインに対する血清反応性を評価し、その後、マウスに適応したA/フォートムーンモス(Fort Mounmoth)/1/1947(FM1)ウイルスに感染させた。図42Aに示すように、ワクチン接種マウスは、HAストークドメインに対する血清抗体応答を生じさせた。FM1に感染した後、動物は、かなりの量の重量を失ったが(図42B)、7日後に、90%の全生存率を取り戻した(図42C)。マウスがH9及びH6ウイルスの球状ヘッドドメインにしか曝露されていなかったとしても、全てのマウスがFM1ウイルスに対してHI陰性であることが立証され、それにより、ワクチン接種から誘発される防御がストークドメインに特異的な免疫応答の結果であることが確認された。したがって、PR8に基づくcHAのワクチン接種は、FM1ウイルス感染に対して防御的であるストーク特異的免疫をもたらす。
【0839】
(6.9.2.2 cH6/1タンパク質のワクチン接種は、cH9/1 N1ウイルス感染からの防御を媒介するストーク特異的免疫を誘発する)
2つの異なる可溶性cHA構築物を投与することにより、抗体応答をストークに対して生じさせたが、FM1感染後、かなりの程度の罹患が見られた。マウスは、インフルエンザウイルスに対して免疫学的に未感作であるので、HAストークに対する高い血清抗体力価を誘導するために、インフルエンザウイルスへの多重曝露と、それに続く、抗原性が異なるヘッドの導入が必要とされる可能性があった。血球凝集素ストークに対する特異性を有する血清抗体力価の刺激の増強は、感染も必要とする可能性があり、cHAタンパク質のみによる初回免疫及び追加免疫後の強力な防御が観察されない理由を説明することができる。
【0840】
ウイルス血球凝集素に対する免疫応答を刺激するが、他のウイルスタンパク質に対する防御的免疫を生じさせないために、PR8ウイルス由来のHAの細胞外ドメインを発現する組換えB/山形/16/1988ウイルス(YAM-HA)を構築した(例えば、Haiらの文献(2011, Journal of virology 85:6832-6843)参照)。インフルエンザウイルスへの事前曝露を模倣するために、マウスにYAM-HAを接種し、次いで3週間後、BSA又はcH6/1タンパク質をワクチン接種した。さらなる対照として、マウスを野生型B/山形/16/1988(WT YAM)ウイルスに感染させ、BSAをワクチン接種した。その後、HAストークのみに対する免疫応答の防御的性質を決定的に示すために、cH9/1(H9ヘッド、H1ストーク)を発現するA型インフルエンザウイルスを感染ウイルスとして使用した。この場合も、動物は、H1及びH6ウイルス由来の球状ヘッドドメインに曝露されるので、cH9/1 HAを発現するウイルスの感染後に見られる防御は、H1ストークドメインに対する免疫の結果である可能性が最も高い。
【0841】
図43Aに示すように、cH6/1タンパク質ワクチンを受け、次いで、YAM-HAに曝露された動物は、PR8バックグラウンドでcH9/1を発現するウイルスの250 LD50感染から完全に防御された。cH6/1可溶性タンパク質をワクチン接種した動物は、BSAをワクチン接種した動物と比べて統計的により少ない重量を3、4、及び5日目に失った。この重量減少からの防御は、BSAをワクチン接種したコホートと比べて、cH6/1をワクチン接種した群における生存の延長をもたらした(p=0.038;図43B)。未感作動物及びWT YAMを接種した動物は、感染から防御されず、他のワクチン接種群で見られた防御はいずれも、ウイルスの複製の結果ではなく、代わりに、H1ストークドメインに対する特異的な応答であったことを示している。動物は、H1及びH6ウイルス由来の球状ヘッドドメインに曝露され、かつcH9/1感染ウイルスに対してHI陰性であったので、ここで見られた防御は、H1ストークドメインに対する免疫の結果であると考えられる。
【0842】
HAストークに対する特異性を有するモノクローナル抗体が、季節性H1N1ウイルスに感染した又は該ウイルスに対するワクチン接種を受けた個体から単離され(例えば、Cortiらの文献(2010, The Journal of clinical investigation 120:1663-1673); Cortiらの文献(2011, Science 333:850-856); Ekiertらの文献(2011, Science 333:843-850); Suiらの文献(2009, Nat Struct Mol Biol 16:265-273); Throsbyらの文献(2008, PLoS One 3:e3942)参照)、かつストーク力価が、より低いレベルではあるが、pH1N1ウイルスに感染していない個体で認められる(例えば、Picaらの文献(2012, PNAS USA 109:2573-2578)参照)ことは注目すべきことである。したがって、YAM-HA接種動物がある程度のストーク力価を生じさせることができることは驚くべきことではない。しかしながら、cH6/1構築物のワクチン接種は、血清ストーク力価を4倍(同等のOD値を生じさせる希釈の逆数(reciprocal dilutions))増大させ(図43C)、動物を実質的な重量減少及び死亡から防御した(図43A及び43B)。cH6/1構築物のワクチン接種が、ウイルスを100%の効率で中和するストーク特異的IgGの産生を誘発したのに対し(YAM-HA+BSA)(図43D)、初回免疫のみの動物由来の血清は、バックグラウンドを辛うじて上回る中和レベルを示した(YAM-HA+BSA)。実際、YAM-HAを接種し、その後、BSAをワクチン接種した動物は、WT YAMウイルスを接種し、BSAをワクチン接種した動物と統計的に類似した生存率を有していた(p=0.058)。対照的に、cH6/1タンパク質をワクチンとして使用すると、WT YAMを接種した動物の生存と比べた場合に極めて有意な率である、感染からの100%の生存がもたらされた(p<.0001)。生存は、YAM-HAを接種し、BSAをワクチン接種したマウスの生存と比べた場合にも高まった(p=0.038)。これらの差は、偽粒子侵入アッセイでは反映されなかったが、それは、YAM-HA+BSAマウス及びYAM-HA+cH6/1マウス由来のIgGが、H5 HAをコードする偽粒子の侵入を同様の効率で阻害したためである(図43E)。後者のアッセイのみが、偽粒子の侵入を阻止する抗体の能力を検出することに留意するのは重要なことである。したがって、侵入の下流でのストーク抗体の作用及び/又は感染(免疫)細胞とのその相互作用は、このアッセイでは検出されない。これにより、中和の差がこれら2つの群で観察されず、インビボでの知見を反映しなかった理由を説明することができる。それにもかかわらず、これらの感染プロトコルによって誘発される抗体は、ストーク特異的であり、かつ広域中和性であった。感染ウイルスは、H1ウイルス由来のストークドメインのみをコードするので、見られた防御が、cH6/1ワクチン接種によって刺激されるHAストークドメインに対する宿主免疫応答の結果であったと結論付けることができる。
【0843】
(6.9.2.3 cH6/1タンパク質のワクチン接種は、致死的H5インフルエンザウイルス感染からマウスを防御する)
次に、cH6/1タンパク質のワクチン接種がH5ウイルスの感染からマウスを防御することができるかどうかを確かめた。上記のように、マウスに接種及びワクチン接種し、PR8バックグラウンドでA/ベトナム/1203/2004ウイルス由来のHA及びNAを発現する10 LD50の2:6再集合体ウイルスに感染させた(例えば、Steelらの文献(2009, J Virol 83:1742-1753)参照)。予想された通り、未感作動物及びWT YAMウイルスを接種した動物は感染から防御されず、8日目までに感染のために死亡した。YAM-HAウイルスを接種し、BSAをワクチン接種した動物は、感染から辛うじて防御され、生存率は40%であった。防御の増大は、動物にcH6/1タンパク質をワクチン接種したときに見られ、生存は90%であった。2つのワクチン群間の生存率の差は、統計的有意に近似したが(p=0.06)、cH6/1タンパク質をワクチン接種したマウスは、統計的により長い時間生存した(p=0.037)(図44A及び44B)。HAストークに対する反応性と、H5感染後のモニタリング期間にわたる%最大重量減少とを比較したとき、より高い血清ストーク力価を有する動物が、感染後により少ない重量を失う傾向にある逆相関が検出され(図44C)、cH6/1がHAストークに基づく免疫を増進させることができるという考えを支持した。
【0844】
ワクチン接種マウスが、それに対して免疫学的に感作されておらず、かつHI陰性であるHA球状ヘッドドメインを有する感染ウイルスを用いて、これらの結果は、ワクチン接種後の感染からの防御が、HAストークに対する免疫応答のみに基づいていたことを示している。受容体結合部位に対する交差反応性抗体が、ここで見られた防御において役割を果たし得る可能性を排除するために、マウスを全てHIについて試験し、そのそれぞれの感染ウイルスに対してHI陰性であることが分かった。
【0845】
(6.9.2.4 cHAのワクチン接種は、H1N1ウイルス感染からの防御を媒介するストーク特異的免疫を誘発する)
ストーク特異的抗体は、ヒト血清中で検出されている(例えば、図27A及び27B; M. Thorsbyらの文献(2008, PLoS One 3:e3942)、D.C. Ekiertらの文献(2009, Science 324:246-251)、D.C. Ekiertらの文献(2011, Science 333:843-850)、J. Wrammertらの文献(2011, J. Exp. Med. 208:181-193)、及びN. Picaらの文献(2012, PNAS 109:2573-2578)参照)。過去のインフルエンザウイルスHAへの曝露がストーク特異的免疫応答の強力な生成にとって重要である可能性があるので、マウスにおけるインフルエンザウイルスに対する既存の免疫を再現することができるかどうかを確認した。これにより、ウイルス感染後の罹患からより効率的に防御されると仮定した。これを達成するために、マウスを、cH9/1をコードするDNA発現ベクターで初回免疫し(例えば、J. Steelらの文献(2010, MBio 1(1), pii:e00018-10)参照)、その後、可溶性cH6/1タンパク質、次いで、cH5/1タンパク質(H5ヘッド、H1ストーク)で追加免疫し、最後に、H1N1ウイルスのパネルに感染させた(図45A〜45F)。FM1(図45A及び45B)、A/ネーデルラント/602/2009(pH1N1)(図45C及び45D)、並びにPR8ウイルス(図45E及び45F)に感染させた後、全てのcHAワクチン接種動物は感染から防御され、あるとしても、最小量の重量減少しか示さなかった。対照的に、cH9/1 DNAの初回免疫後にBSAを受容した陰性対照動物は、1匹の動物を除いて、かなりの量の重量を失い、9日目までに感染のために死亡した(図45A〜45F)。感染実験の各々におけるcHAワクチン接種動物の生存は、対照の生存と有意に異なっていた(図45B、45D、及び45F)。誘発された防御がストーク特異的液性免疫の結果であることを確認するために、血清がELISAによりH1 HAに結合することができるにもかかわらず、全てのマウスが各々の感染ウイルスに対してHI陰性であることを確認し(図45G)、本発明者らのワクチン接種プロトコルによるストーク特異的抗体の産生が確認された。HAストーク内のエピトープに対するCD8 T細胞が、ここで見られた防御において役割を果たし得る可能性があるので(例えば、M. Tamuraらの文献(J. Virol. 72:9404-9406)参照)、マウスにワクチン接種し、モノクローナル抗体2.43を投与することによってCD8 T細胞を除去し、その後、PR8に感染させた(M.L. Salemの文献(2000, Int. J. Immunopharmacol. 22:707-718))。除去は、重量減少にも生存転帰にも影響を及ぼさず、ワクチン接種によって誘発される防御における液性応答の関与を示唆した(図45H及び45I)。したがって、ヘッドではなく、HAストークに対する適応的液性免疫応答が、3つの異なるH1N1ウイルスに対する防御をもたらしていた。
【0846】
cHAに基づくワクチン接種プロトコルが、他の亜型に対する中和能力を有するストーク特異的抗体を誘導したことをさらに立証するために、H2 HAを有する偽粒子の侵入を阻止するワクチン接種マウス由来の精製IgGの能力を試験した。偽粒子は、侵入後にルシフェラーゼレポーター遺伝子を発現するので、中和活性を、細胞上清中のルシフェラーゼ酵素活性の欠如によって測定した(R. Haiらの文献(2012, J. Virol. 86:5774-5781)及びN. Picaらの文献(2012, PNAS 109:2573-2578))。感染後に見られる防御と一致して、ワクチン接種マウスから精製されるIgGは、用量依存的な形で、かつ陽性対照として使用されるHAストークに対する特異性を有するモノクローナル抗体であるCR6261の効力と同様の効力で偽粒子の侵入を阻害した(図45J)。したがって、ワクチン接種プロトコルは、H2と同様に、他のグループ1 HAを中和することができる、広範な特異性を有するストーク抗体を誘発した。
【0847】
(6.9.3 結論)
この実施例は、キメラHAのワクチン接種によって誘発することができるストーク特異的免疫応答の防御的効果を示している。HAストークに対する免疫応答がウイルス感染からの防御に十分であること、及びこのワクチン接種プロトコルが異種亜型防御をもたらすことが示された。年に1度のワクチン接種の必要性をなくし、かつパンデミックに対する準備を増強する、広範囲のインフルエンザウイルスに対する防御をもたらすための同様の戦略をヒトで開発することができる。
【0848】
(6.10 実施例10:血球凝集素ストーク反応性抗体は、マウスにおける季節性及びパンデミックH1N1インフルエンザウイルスの順次感染後に増加する)
この実施例は、季節性インフルエンザウイルスの感染と、それに続くパンデミックインフルエンザ株の感染が、マウスにおけるストーク特異的抗体の産生を刺激することを示し、ヒトインフルエンザ感染及び付随するストーク抗体免疫応答のマウスモデルの正当性を立証する。
【0849】
(6.10.1 材料及び方法)
(6.10.1.1 細胞及びウイルス)
293T及びMDCK細胞をATCCから入手し、ぞれぞれ、各々10%胎仔ウシ血清(HyClone)、及び100ユニット/mlのペニシリン-100μg/mlのストレプトマイシン(Pen/Strep, Gibco)を補充したダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)及び最小必須培地(両方ともGibco製)中で維持した。インフルエンザウイルス株A/ニューカレドニア/20/99(NC99)(H1N1)、A/ソロモン諸島/3/2006(SI06)(H1N1)、A/プエルトリコ/8/1934(PR8)(H1N1)、A/フォートモンマス/1/1947(FM1)(H1N1)、A/カリフォルニア/04/2009(Cal09)(93 H1N1)、及び低病原性A/ベトナム/1203/04(VN04):PR8 2:6再集合体ウイルス(H5N1)(例えば、J. Steelらの文献(2009, J. Virol. 83:1742-1753)参照)を10日齢の発育卵中で48時間成長させた。
【0850】
PR8抗原性を有する低温適応ウイルスを構築するために、A/アンアーバー/6/60に基づくレスキュー系を、Wangらによって記載された組換えプロトコル(例えば、S. Wangらの文献(2008, J. Virol. Methods 151:74-78)参照)に従って、精製ビリオンRNAからのウイルス遺伝子の逆転写(Transcriptor RT, Roche)、PCR増幅(PFU turbo, Stratagene)、及びベクターpPOL1へのクローニングによって作製した(例えば、E. Fodorらの文献(1999, J. Virol 73:9679-9682)参照)。PB1、PB2、PA、NP、M、及びNSをコードするA/アンアーバー/6/60プラスミドを、PR8株由来のHA及びNAをコードするプラスミドとともに用いて、PR8に基づく低温適応ウイルスをレスキューした。低温適応ウイルスを10日齢の発育鶏卵中で48時間成長させた。非構造タンパク質1(NS1)に欠失を有するPR8ウイルス構築するために、7つの他のPR8に基づくレスキュープラスミドに加えて、NS1の最初の73アミノ酸だけをコードするプラスミドを使用した。そのレスキューの後、ウイルスを8日齢の発育鶏卵中で48時間増殖させた(例えば、S.A. Kopecky-Brombergの文献(2009, Vaccine 27:3766-3774)参照)。
【0851】
組換え及び野生型ウイルスの力価を、以前に記載されている通りに、TPCKトリプシンの存在下、MDCK細胞(ATCC)で測定した(6)。ウイルスは、4℃で72時間のホルムアルデヒド処理後に不活化された。
【0852】
(6.10.1.2 組換えバキュロウイルス作製、タンパク質発現、及び精製)
NC99、Cal09、cH6/1(H6N1 A/マガモ/スウェーデン/81/02由来の球状ヘッドドメイン、PR8由来のストークドメイン)、又はVN04 HA及びVN04 NAを作製するために、バキュロウイルスに基づく発現系を以前に記載されている通りに利用した(N. Picaらの文献(2012, PNAS 109:2573-2578))。簡潔に述べると、バキュロ転移ベクターを大腸菌株DH10Bac(Invitrogen)中に形質転換し、コロニーを採取し、成長させた。バクミドを、Plasmid 116 Midi Kit(Qiagen)を用いて調製し、その後、製造業者の指示に従ってCellfectin II(Invitrogen)を用いて、Sf9細胞にトランスフェクトした。組換えバキュロウイルスを、TNM-FH培地(Gemini Bioproducts)中で成長させたSf9細胞で増幅させ、その後、それを用いて、HyClone SFX昆虫細胞培地(Thermo Fisher Scientific)中で成長させたHigh Five細胞に10のMOIで感染させた。感染の96時間後、上清を回収し、その後、Ni-NTA樹脂(Qiagen)とともに4℃で2時間インキュベートして、His122タグ化組換えHAタンパク質を精製した。スラリーをカラムに充填し、洗浄バッファー(50mM Na2HCO3、300mM NaCl、20mMイミダゾール、pH 8)で3回洗浄した。タンパク質を溶出バッファー(50mM Na2HCO3、300mM NaCl、250mMイミダゾール、pH 8)で0.5mLずつ溶出させ、ブラッドフォード試薬でタンパク質含量について試験し、タンパク質を含む画分をプールした。プール画分をPBS中でバッファー交換し、10-kDa分子質量カットオフを有するAmicon Ultra遠心分離フィルターユニット(Millipore)を用いて、スイング式バケットローター中で濃縮した。タンパク質の純度及びアイデンティティを、SDS/PAGE、クマシー染色、及びウェスタンブロットにより試験した。最終的なタンパク質濃度をブラッドフォード試薬で決定した。
【0853】
(6.10.1.3 動物)
動物実験は全て、マウントサイナイ医科大学施設内動物管理使用委員会(Mount Sinai School of Medicine Institutional Animal Care and Use Committee)のガイドラインに準拠して実施した。動物に、食餌及び水を自由に利用することを許し、12時間の明/暗周期で維持した。全ての鼻腔内処置のために、雌の6〜8週齢BALB/cマウス(Jackson Laboratories)を0.1mlのケタミン/キシラジン(0.15mgケタミン及び0.03mgキシラジン)の腹腔内(IP)注射で麻酔した。
【0854】
(6.10.1.4 感染及びワクチン接種)
5匹の6〜8週齢の雌のBALB/cマウスの群を麻酔し、PBSに希釈した50ulの104PFUのNC99、SI06、もしくはCal09ウイルス、103もしくは104PFUの低温適応PR8ウイルス、又は103もしくは104PFUのNS1切断型PR8ウイルスのいずれかを鼻腔内接種した。マウスは、50ulの容量で筋肉内に投与される1μgのホルムアルデヒド不活化PR8もしくはFM1ウイルス又は1μgのA/ブリスベン/57/07(TIV) H1 HAを含む市販の三価スプリットワクチン(該用量は、1μgのH3成分A/ウルグアイ/716/07及びB成分B/ブリスベン/60/08も含んでいた)も受容した。さらに、2群のマウスに、TriGridエレクトロポレーション装置(Ichor Medical Systems)を用いて、PR8 HA又はNC99 HAのいずれかをコードする80μgのpCAGGSプラスミドをワクチン接種した(例えば、J. Steelの文献(2010, MBio 1(1), pii:e00018-10)参照)。感染又はワクチン接種の4週間後、動物の眼窩後方から採血し、全血から血清を回収した。
【0855】
NC99ウイルスの感染後、マウスに、PBSに希釈した105もしくは106PFUのSI06ウイルス、又は103もしくは104PFUのCal09ウイルスを鼻腔内接種した。追加免疫の3日後、1群当たり3匹の動物をCO2で安楽死させ、肺を摘出し、FastPrep-24ホモジナイザー(MP)でホモジナイズした。肺ウイルス力価をMDCK細胞での力価測定により測定した。2回目の感染の4週間後、動物の眼窩後方から採血し、全血から血清を採取した。
【0856】
(6.10.1.5 酵素結合免疫吸着アッセイ及び偽粒子侵入アッセイ)
Immulon 4HBX(Thermo Scientific)プレートに、精製されたバキュロウイルス発現NC99、Cal09、cH6/1、もしくはVN04 HA(全てC末端T4フォルドンを有する)、又はVN04 NA(N末端四量体化ドメインを有する)を、コーティングバッファー(0.1M Na2CO3/NaHCO3、pH 9.2、50μl/ウェル)又はPBS中で一晩コーティングした(N. Picaらの文献(2012, PNAS 109:2573-2578))。プレートを、3%無脂肪乳粉末を含む0.1%Tween 20-PBS(TPBS)で1時間ブロッキングし、その後、1%粉乳を含むTPBSに連続希釈したマウス血清とともに室温で1時間インキュベートした。3回洗浄した後、プレートを、二次西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート抗マウスIgG抗体(Sigma)又はアルカリホスファターゼ(AP)結合抗マウスIgG(γ鎖特異的、Invitrogen)とともに室温で1時間インキュベートした。その後、プレートをTPBSで3回洗浄し、発色させた。HRP二次抗体を使用する場合は、プレートを、SigmaFAST OPD基質(Sigma)(100ul/ウェル)を用いて発色させ、3M HClで停止させ、490nmで読み取った。AP結合二次抗体を使用する場合は、プレートを、p-ニトロフェニルホスフェート(PNPP)基質(Zymed)で発色させ、0.5M NaOHで停止させ、405nmの光学密度で読み取った。全ての実験について、Synergy 4(BioTek)プレートリーダーを使用した。H5 HAに対する反応性を検出するELISA実験については、105PFUのNS1-切断型A/ベトナム/1203/2004ウイルスに感染したマウス由来の血清を陽性対照として使用した。
【0857】
(6.10.1.6 ポリクローナル血清からのマウスIgGの精製)
マウス血清をPBS(pH 7.4)に希釈し、0.45um滅菌フィルターユニットに通した。濾過した血清を、3mlの4 FastFlow Sepharose G(GE Healthcare)を含むカラムに充填した。このカラムを60mlのPBSで洗浄し、全IgGを0.1MグリシンHClバッファー(pH 2.7)で溶出させ、2M TRIS-HClバッファー(pH 10)を用いてすぐに中和した(A. Jungbauerらの文献(1989, J. Chromatogr 476:257-268))。その後、溶出されたIgGを濃縮し、30kDaのカットオフを有するAmicon Ultracell(Millipore)遠心分離ユニットを用いて(PBSに)バッファー交換した。タンパク質濃度を、A280法を用いて、NanoDrop 2000分光光度計で測定した。
【0858】
(6.10.1.7 シュードタイプ化粒子中和アッセイ)
シュードタイプ粒子産生の手順は、以前の研究を基に改変したものであり(185)、以前に記載されている(例えば、M.J. Evansの文献(2007, Nature 446:801-805)、R. Haiらの文献(2012, J. Virol. 86:5774-5781)、及びN. Picaらの文献(2012, PNAS 109:2573-2578)参照)。簡潔に述べると、293 T細胞に、ルシフェラーゼレポーター遺伝子、HIV Gag-Pol、キメラcH5/1血球凝集素タンパク質(A/ベトナム/1203/04 H5ヘッドドメイン及びPR8ストークドメイン)、B型インフルエンザウイルスB/山形/16/88由来のノイラミニダーゼを含むプロウイルスをコードする4つのプラスミドをコトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、上清を回収し、その後、cH5/1粒子調製物を精製するために濾過した(0.45μm孔径)。その後、粒子を様々な濃度の精製マウスIgGとともにインキュベートし、MDCK細胞に添加した。形質導入が6時間進行した後、細胞を洗浄し、新鮮な培地を細胞の上に配置した。形質導入は全て、1μg/mLポリブレン(Sigma, St. Louis, MO)の存在下で実施した。形質導入の48時間後、ルシフェラーゼアッセイを実施した。
【0859】
(6.10.1.8 受動伝達実験)
マウス(1群当たりn=5)に、NC99ウイルスであるNC99、次いで、Cal09もしくはSI06ウイルスに感染させた群由来の200ulの血清、又は未感作動物由来の血清を腹腔内接種した。接種2時間後、マウスを麻酔し、5 MLD50のVN04:PR8 2:6再集合体に感染させた(例えば、J. Steelらの文献(2009, J. Virol. 83:1742-1753)参照)。重量減少を14日間毎日モニタリングし、その初期体重の30%超を失ったマウスを死亡と記録し、安楽死させた。Prism4(GraphPad)を用いて統計解析を実施した。生存の差を、ログランク有意検定によるカプランマイヤー生存解析で計算した。0.05又はそれ未満のP値を統計的有意とみなす。
【0860】
(6.10.2 結果)
(6.10.2.1 ストーク感受性抗体は、季節性又はパンデミックH1N1ウイルスの感染によって誘導されるが、ワクチン接種によっては誘導されない)
5匹のマウスの群に、104PFUのNC99、SI06、又はCal09ウイルスを致死量未満で感染させ、4週間後、血清ストーク抗体力価の評価のために採血した。感染によって誘導されるストーク抗体の程度を明らかにするために、H1ウイルスのストーク及びH6ウイルスのヘッドを含む可溶性HA構築物であるcH6/1タンパク質を使用した(例えば、N. Picaらの文献(2012, PNAS 109:2573-2578)参照)。この試薬は、ポリクローナル血清におけるストーク特異的抗体の直接的検出を可能にする。季節性又はパンデミックウイルスに感染したマウスは全て、HAストークに対する反応性を有する抗体を産生した(図46)。対照的に、PR8もしくはNC99 HAをコードするDNAで初回免疫した動物、或いは不活化PR8もしくはFM1ワクチン又は市販のスプリットワクチンを筋肉内に受けた動物は、それらにワクチン接種した抗原に対するその血清転換にもかかわらず、ELISAによりcH6/1に対する反応性を有さなかった。動物に、103又は104の低温適応ウイルス又はNS1切断によって弱毒化された生ウイルスをワクチン接種したとき、ストーク特異的抗体力価はバックグラウンドを辛うじて上回った。ヘッドのない血球凝集素構築物をワクチン接種したマウス由来の血清(例えば、J. Steelらの文献(2010, MBio 1(1), pii:e00018-10)参照)及びストーク特異的モノクローナル抗体6F12を陽性対照として使用した(例えば、G.S. Tanらの文献(2012, J. Virol. 86:6179-6188)参照)。弱毒化ウイルスの複製レベルは、野生型ウイルスの複製レベルよりも低く、不活化/DNAワクチンは、ストーク反応性抗体を誘導しなかったので、これらの抗体の初期誘導が複製可能ウイルスによって大きく増強されたと仮定される。
【0861】
(6.10.2.2 パンデミックH1N1の追加免疫は、連続変異した季節性H1N1分離株の追加免疫よりも高い力価のストーク反応性抗体を誘発する)
104PFUのNC99ウイルスで初回免疫した動物を、初回免疫の4週間後に、2つの異なる用量のSI06(105、106PFU;「NC/SI」)又はCal09(103、104PFU;「NC/Cal」)で追加免疫した。4週間後、マウスから末期採血し、血清を、組換えcH6/1タンパク質を用いて、ストーク反応性抗体の存在について解析した。2回目のウイルス接種を受けた動物は全て、NC99にしか感染していなかったマウスと比べて上昇したストーク力価を有していた(図47)。実際、より低い用量(103のCal09又は105PFUのSI06ウイルス)を受容した動物は、より高い用量(104PFUのCal09又は106のSI06ウイルス)を受容した動物よりも弱い増加を有していたので、効果は用量依存的であった。しかしながら、NC/Cal感染動物が、NC/SI感染群と比べてより強いストーク力価誘導を示したことは注目すべきことである。事実、NC/Cal群と同程度の血清ストーク力価を生じさせるために、1000倍多くの季節性ウイルスSI06を必要とした(図47)。一次及び二次感染に対する血清転換を確認するために、全ての血清を、組換えNC99及びCal09 HAタンパク質に対する反応性について、ELISAにより試験した。
【0862】
複製によってストークに対する抗体の誘発が強く増強されるという知見に基づいて、Cal09感染動物に見られる抗ストーク力価の増加の上昇が、ウイルスの複製能力の増強の結果であり得るかどうかを確かめた。追加免疫の3日後、NC/Cal及びNC/SI動物を屠殺し、肺組織を回収した。SIウイルスは、順次感染させたマウスの肺では検出されなかったが、Cal09ウイルスは、この時点までに、105PFU/mLにまで成長した。
【0863】
(6.10.2.3 誘発されたストーク反応性抗体は、インビトロで中和活性を有する)
これらのストーク特異的抗体の中和能力を評価するために、シュードタイプ化粒子中和アッセイを使用した。H1ステム及びH5ヘッドを有するHAを発現する偽粒子(cH5/1)を、細胞への偽粒子の侵入の成功後に発現されるルシフェラーゼ253レポーター遺伝子を有するように改変した。そのため、侵入をルシフェラーゼ発現の関数として測定した。動物はH1N1ウイルスにしか曝露されなかったので、侵入の阻害はいずれも、HA(H1)ストークに対する中和抗体の結果であった。入手可能な血清の量が限られているため、NC99ウイルスで初回免疫されたが、その後、103 Cal09ウイルス又は105 SI06ウイルスで追加免疫されたマウス由来の血清の精製IgG調製物の相対的な中和効率のみを試験した。Cal09のみに感染したマウス由来の血清をさらなる比較点として使用した。幅広いグループ1特異性を有するストーク特異的抗体であるモノクローナル抗体6F12(例えば、G.S. Tanらの文献(2012, J. Virol. 86:6179-6188)参照)を陽性対照として使用した。
【0864】
90%を超える阻害は、NC/Calマウス又はNC/SIマウスのいずれかに由来するわずか50ug/mLの精製IgGで見られた。NC/Calマウス及びNC/SIマウスから単離されたIgGが、50又は10ug/mLで、同様の効率でcH5/1発現偽粒子の侵入を阻害することができたことは注目すべきことである。Cal09ウイルスのみに感染したマウス由来のIgGは低レベルの侵入阻害を示し、これは、未感作マウスで見られるレベルと同様であった。図47に示すように、この場合も、これは、この群における相対的なストーク抗体力価を反映している。
【0865】
(6.10.2.4 ストーク反応性抗体は受動伝達実験において異種感染から防御する)
そのような抗体のインビボでの防御効率を評価するために、順次感染させた動物由来の血清を未感作マウスに腹腔内投与し、次いで、PR8バックグラウンド(VN04)でH5N1再集合体ウイルスに感染させた。季節性ウイルス及びパンデミックウイルス(NC99 104PFU-Cal09 104PFU)を順次感染させたマウス由来の血清を受容した動物は、感染から部分的に防御され、生存率は80%であった。連続変異した季節性株(NC99 104PFU-SI06 106 PFU)にしか曝露されていないマウスもまた、感染から部分的に防御された(60%生存)。NC99ウイルス(104PFU)の1回の接種しか受けていないマウスは感染から防御されず、9日目までに、感染のために、全て死亡した(図48)。
【0866】
2つの初回免疫-追加免疫群間の生存の差は、統計的に有意なものではなかった(p=0.575)。しかしながら、順次感染させたマウスの生存は、初回免疫のみのマウス(NC99/SI06 p=0.018、NC99/Cal09 p=0.0023)及び対照マウス(NC99/SI06 p=0.0031、NC99/Cal09 p=0.0031)の生存と統計的に異なっており、ストーク反応性抗体のレベルの上昇が、異種亜型感染から防御することができることを示している。
【0867】
これらの知見は、実験群の各々についてのHAストークに対する血清反応性の程度とよく相関したので、VN04ウイルス由来のHAの反応性を評価した。予想された通り、H5 HAに対する反応性は、季節性ウイルス感染とパンデミックウイルス感染の両方を経験した群で最も高かった。連続変異した季節性株に感染したマウスは、104PFUのNC99ウイルスを1回しか接種していないマウスと比べて、VN04ウイルス由来のHAに対するより高い程度の反応性を示したが、この力価は、100倍少ないウイルスを追加免疫に使用したNC99/Cal09群の力価よりもさらに低かった。ここで見られた防御の程度に対するN1特異的抗体の寄与の可能性を排除するために、血清抗体力価をELISAにより評価した。力価は、最初のNC99ウイルス感染を強化するために使用されたウイルスと無関係に同等であった。季節性又はパンデミックH1N1ウイルスの追加免疫も同様に、1回のウイルス感染後に見られる応答と比べて、NA抗体力価を増強させた。
【0868】
(6.10.3 結論)
この実施例は、pH1N1ウイルスに感染した個体が、未感染個体(例えば、実施例6.8参照)と比べて、より高いストーク特異的抗体力価を有するという知見をマウスで再現している。インフルエンザ感染のこのマウスモデルにおいて、季節性H1N1ウイルスによるマウスの感染と、それに続くパンデミックH1N1株への曝露は、連続変異した季節性H1N1ウイルスの順次感染よりも大きい程度にHAストーク抗体力価を増加させた。
【0869】
(6.11 実施例11:グリコシル化を変化させることにより、インフルエンザ血球凝集素に対する液性免疫応答を保存されたストークドメインに向ける)
この実施例は、グリコシル化部位の導入によりインフルエンザヘッドドメイン中の抗原性部位をマスクすることによって、及びグリコシル化部位の除去により抗原性部位をストークドメイン中でより近づきやすいものにすることによって、インフルエンザウイルスの保存されたストークドメインに対する抗体を産生するように、免疫系を導くことができることを示す。
【0870】
(6.11.1 材料及び方法)
(6.11.1.1 欠失型グリコシル化突然変異体及び過剰グリコシル化突然変異体の作製及びクローニング)
N結合型グリコシル化は、タンパク質内のAsn-X-Ser/Thr配列モチーフによってプログラムされており、この場合、Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸であることができる。A/PR/8/34 HAの個々のグリコシル化部位又はその組合せの除去を、部位特異的突然変異生成(Stratagene, Santa Clara, CA)を用いて、Asn残基を密接に関連するGlnに突然変異させることにより実施した。リバース戦略を用いて、追加のAsn-X-Ser/Thr配列チーフを可変抗原性部位中に作出することによって、HAの球状ヘッドドメインに追加のN結合型グリコシル化部位を導入した。突然変異させた遺伝子をpCAGGSタンパク質発現プラスミド又はウイルスレスキュー用のpDZプラスミドに導入した(例えば、E. Fodorらの文献(1999, J. Virol. 73:9679-9682)及びR. Haiらの文献(2008, J. Virol. 82:10580-10590)参照)。
【0871】
(6.11.1.2 免疫蛍光アッセイ)
293 T細胞に、A/PR/8/34又はcH5/1血球凝集素の野生型及びグリコシル化突然変異体をコードするpCAGGSプラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を、0.5%PFA/1×PBSで、室温(RT)で30分間固定し、5%NF-ミルク/1×PBSで、RTで30分間ブロッキングした。mAbを5%NF-ミルク/1×PBSに希釈し、5μg/mLの最終濃度で、RTで1時間インキュベートした。陽性対照血清を1:100希釈した。細胞単層を1×PBSで3回洗浄し、その後、Alexa Fluor 488ロバ抗マウスIgG(Invitrogen)とともに、1:1000の希釈で、RTで1時間インキュベートした。蛍光反応性を、Olympus IX70倒立蛍光顕微鏡を用いて可視化した。
【0872】
(6.11.1.3 ウェスタンブロット)
SDS-PAGE(Biorad)及びウェスタンブロット解析を、抗体NR-4539及び抗マウス西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート二次抗体(Santa Cruz Biotechnology)を用いて、トランスフェクト細胞の還元された細胞ライセートで実施した。NR-4539モノクローナル抗A型インフルエンザウイルスHA2抗体は、NIHの生体防御及び新興感染症研究資源レポジトリ(Biodefense and Emerging Infections Research Resources Repository), NIAIDから入手した。
【0873】
(6.11.1.4 血球吸着アッセイ)
トランスフェクト細胞をコレラ菌(Vibrio cholera)由来のノイラミニダーゼ(シアリダーゼ)(Roche)とともに37℃で1時間インキュベートし、0.01%CaCl2及びMgCl2を含む1×PBSで3回洗浄した。次に、細胞単層を、PBS/CaCl2/MgCl2中の2%ニワトリ赤血球懸濁液とともに、氷上で30分間インキュベートし、PBS/CaCl2/MgCl2で再び3回洗浄した。接着した赤血球を、50mM NH4Clを添加し、細胞を15分間振盪させることにより溶解させた。ライセートを細胞から除去し、吸光度を540nmで測定した。
【0874】
(6.11.1.5 ウイルスレスキュー)
プラスミドDNAからのA型インフルエンザウイルスのレスキューを以前に記載されている通りに実施した(参照例えば、E. Fodorらの文献(1999, J. Virol. 73:9679-9682)、R. Haiらの文献(2008, J. Virol. 82:10580-10590)、及びG. Neumannらの文献(1999, PNAS 96:9345-9350))。組換え野生型(rWT)PR8ウイルスを作製するために、293T細胞に、1μgの8つのpDZ PR8レスキュープラスミドの各々を、Lipofectamine 2000(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いてコトランスフェクトした。様々なグリコ突然変異体HAを発現するウイルスを、同じ方法で、しかし、HAプラスミドを、突然変異体HA配列をコードする対応するプラスミドに置き換えて作製し、対応する突然変異体ウイルスを回収した。トランスフェクションの24時間後、ウイルス含有上清を8日齢の発育鶏卵中に接種した。37℃で2日間のインキュベーションの後、尿膜腔液を回収し、ニワトリ赤血球の血球凝集によって、及びMDCK細胞でのプラーク形成によって、ウイルスの存在についてアッセイした(例えば、E. Fodorらの文献(1999, J. Virol. 73:9679-9682)及びR. Haiらの文献(2008, J. Virol. 82:10580-10590)参照)。
【0875】
(6.11.2 結果)
(6.11.2.1 インフルエンザグリコシル化突然変異体は発現し、適切に過剰グリコシル化又は低グリコシル化される)
最大7つの追加のグリコシル化部位をPR8の球状ヘッドドメインに導入した(表3参照)。さらに、PR8のストークドメイン中のグリコシル化部位31及び289に対する欠失を作出した。そのような球状ヘッドドメイン突然変異のみを有するHA突然変異体、及びそのような球状ヘッドドメイン突然変異をストークドメイン突然変異と組み合わせて有するHA突然変異体を作出し、解析した。
表3.PR8ヘッドドメイングリコシル化突然変異体
【表17】
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【0876】
突然変異させたHAタンパク質が発現し、導入されたグリコシル化部位がインビトロでグリコシル化されたかどうかを明らかにするために、293 T細胞にHA突然変異体構築物をトランスフェクトし、ウェスタンブロット解析を細胞ライセートに対して実施した。抗A型インフルエンザHA2抗体によるウェスタンブロットのプロービングは、全てのウイルス構築物が発現することを示した(図49)。ウェスタンブロット上でのインフルエンザタンパク質の示差移動は、グリカンが、導入されたグリコシル化部位の数に対応する形で付加されていたことを示した。グリコシル化部位(複数可)が付加されていた構築物は、野生型PR8と比べてより大きい分子量に移動したが、グリコシル化部位(複数可)が欠失していた構築物は、野生型PR8と比べてより小さい分子量に移動した(図49)。野生型PR8に感染したマウス由来の抗血清の該構築物に対する結合は低下し、血清中の抗体の結合部位が、付加されたさらなるグリカン部位によって覆われたことを示唆している。
【0877】
免疫蛍光を用いて、インビトロでの突然変異体HA構築物の発現レベルを比較し、グリコシル化突然変異体HAタンパク質が、その天然の立体構造へと適切にフォールディングしているかどうかを明らかにした。4つ全ての抗原性部位でのHAの球状ヘッドドメインへの個々のグリコシル化部位の導入は、依然として、タンパク質発現及びHAストークドメイン特異的抗体結合を可能にした(図50A)。HA球状ヘッドドメインへのグリコシル化部位の付加は、野生型PR8 HAと比べて、抗ヘッドドメイン特異的抗体免疫蛍光シグナル(PY102抗体)の減少をもたらし、HAのヘッドドメイン中の抗原性部位が、実際に、導入された部位でのグリコシル化によってマスクされることを示した(図50B及び表4)。
表4.インフルエンザグリコシル化突然変異体の発現及び該突然変異体に対する抗体結合
【表18】
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【0878】
ストーク中の立体構造エピトープに特異的に結合する抗体(KB2、C179、及び6F12抗体)によるストークドメインの蛍光染色は、野生型PR8の蛍光染色と同程度であり、突然変異体ウイルスタンパク質が、ヘッドドメインへのグリコシル化部位の付加にもかかわらず、その天然の立体構造で適切にフォールディングされたことを示している(図50C)。グリコシル化部位がヘッドドメインに導入されている突然変異体PR8 HA構築物(42-1、42-4、及び42-5)をトランスフェクトした細胞、並びにグリコシル化部位がヘッドドメインに導入されている突然変異体構築物及びグリコシル化部位がストークドメインから除去されている突然変異体構築物(42-1、Δ
33/289; 42-4、Δ33/289; 42-5、Δ33/289)をトランスフェクトした細胞の免疫蛍光染色により、野生型PR8 HA構築物をトランスフェクトした細胞及びHAストークドメイン中の2つのグリコシル化部位だけが除去されたPR8 HA構築物(Δ33/289)をトランスフェクトした細胞と比べて、抗ヘッドドメイン抗体(PY102)に対する結合の減少が示された(図50C)。対照的に、野生型PR8及びグリコシル化部位がストークドメインから除去されたPR8と比べて、これらの同じ突然変異体を発現する細胞のストークドメインに結合する抗ストーク抗体の能力に差はなかった(図50C)。
【0879】
生存能力のある突然変異体ウイルスを感染細胞から回収することができるかどうかを評価するために、血球吸着アッセイを用いて、ウイルス突然変異体が、ニワトリ赤血球上のシアリル化受容体になおも結合することができるかどうかを決定した。シアリル化受容体に結合する能力を保持する突然変異体ウイルスは、該ウイルスが、その受容体を介して細胞に侵入することができることを示すことになる。特定のグリコシル化部位がHAストークから除去されているHA突然変異体を発現するインフルエンザウイルスをレスキューすることができた(図51)。次に、レスキューされるウイルスの能力を、以前に記載されている通りに、ニワトリ胚卵中での血球凝集素アッセイを用いて評価した。特に、位置289及び483、又は33、289、及び483のグリコシル化部位が除去されているHA突然変異体を発現するインフルエンザウイルスは、野生型PR8ウイルスと同様に、赤血球に結合した(図51)。対照的に、HAのヘッドドメインへのグリコシル化部位の付加は、突然変異体HAタンパク質を発現するウイルスの赤血球に結合する能力を実質的に妨害するように思われた(図51)。
【0880】
(6.12 実施例12:カルボキシ末端三量体化ドメインは、可溶性組換え血球凝集素基体のストークドメイン上の立体構造エピトープを安定化する)
この実施例は、カルボキシ末端三量体化ドメインが、組換え可溶性インフルエンザウイルス血球凝集素上のストークエピトープの構造完全性に重要であることを示す。
【0881】
(6.12.1 材料及び方法)
(6.12.1.1 細胞)
Sf9昆虫細胞(ATCC # CRL-1711)を、10%FBS(Atlanta Biologicals)、0.1%Pluronic F68(Sigma)、及びペニシリン-ストレプトマイシン抗生物質(Gibco)混合物を補充したTMN-FH培地(Gemini Bio-Products)中で成長させた。BTI-TN-5B1-4細胞(High Five - Vienna Institute of Biotechnologyのサブクローン)を、ペニシリン-ストレプトマイシン抗生物質混合物(Gibco)を補充したHyClone SFX無血清培地(Fisher Scientific)中で成長させた。
【0882】
(6.12.1.2 クローニング及び組換えバキュロウイルス作製)
H1株A/プエルトリコ/8/34(PR8)、A/カリフォルニア/04/09(Cal09)、H2株A/Japan/305/57(JAP57)、H3株A/香港/1/68(HK68)、A/ウィスコンシン/67/05(Wisc05)、及びH5株A/ベトナム/1203/04(VN04-多塩基性切断部位が除去されたもの;Steelらの文献(2009, J Virol 83: 1742-1753)参照)のHAをコードする配列を、ポリメラーゼ連鎖反応によりpCAGGSプラスミドから増幅させ、BamHI又はStuI及びNotI制限エンドヌクレアーゼ(NEB)を用いて、修飾されたpFastBacベクター(Invitrogen)にクローニングした。プライマー配列は請求に応じて入手可能である。三量体化ドメインを有さないHA及び三量体化ドメインを有するHAという2組の構築物をクローニングした:三量体化ドメインを有さないHA構築物は、HAのC末端膜貫通及び細胞内ドメインがヘキサヒスチジン-タグと置き換えられるように設計され(HA配列は、H1についてはI509、H2及びH5についてはV509、並びにH3についてはG508で終わる;H3付番);もう1組の構築物である三量体化ドメインを有するHAもC末端膜貫通及び細胞内ドメインを欠くが(HA配列は、V503で終わる-H3付番)、C末端ヘキサヒスチジン-タグに加えて、トロンビン切断部位及びT4フォルドン三量体化ドメインを含む(例えば、Meierらの文献(2004, J Mol Biol 344: 1051-1069)参照)(図52)。作製された組換えpFastBacクローンを、製造業者の指示に従ってDH10Bac細菌(Invitrogen)中に形質転換し、組換えバクミドをPureLink Plasmid Filter Midiprepキット(Invitrogen)で調製した。Cellfectin II(Invitrogen)を組換えバキュロウイルスのレスキューに用いて、組換えバクミドをSf9細胞中に形質転換した。全ての配列をサンガーシークエンシングにより確認した。
【0883】
(6.12.1.3 タンパク質発現、精製、及び特徴付け)
バキュロウイルスをSf9細胞で継代数3のストックになるまで増幅させ、その後、それを用いて、BTI-TN-5B1-4(High Five)細胞に、HyClone SFX無血清培地(Fisher Scientific)中、1×106細胞/mlで、10の感染多重度で感染させた。発現を、1000mlの振盪フラスコ中、28℃で96時間実施した。96時間後、上清を低速遠心分離(5000g、4℃、20分)により清澄化し、Ni-NTA(Qiagen)樹脂(250mlの培養上清に対して3mlのスラリー)とともに、室温(RT)で2時間インキュベートした。その後、樹脂-上清混合物を10mlのポリプロピレンカラム(Qiagen)に通した。保持された樹脂を15mlの洗浄バッファー(50mM Na2HCO3、300mM NaCl、20mMイミダゾール、pH 8)で4回洗浄し、タンパク質を溶出バッファー(50mM Na2HCO3、300mM NaCl、300mMイミダゾール、pH 8)で溶出させた。溶出液を、30kDaのカットオフを有するAmicon Ultracell(Millipore)遠心分離ユニットを用いて濃縮し、バッファーをpH 7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に交換した。タンパク質濃度を、ウシ血清アルブミン標準曲線とともにQuickstart Bradford Dye Reagent(Bio-Rad)を用いて定量した。タンパク質の純度、完全性、及びアイデンティティを、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)(4-20%ポリアクリルアミド - Mini PROTEAN TGXゲル, Bio-Rad)、クマシー染色、及びウェスタンブロット、又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により評価した。三量体化及び/又は多量体化の程度を、製造業者の奨めに従って、HAをビス-[スルホスクシンイミジル]スベレート(BS3 - Fisher Scientific)と架橋することにより試験した。簡潔に述べると、3μgのHAを、25倍モル濃度過剰のBS3クロスリンカーの存在下、30μlのPBS中でインキュベートした。混合物をRTで30分間インキュベートし、その後、1M Tris-HClバッファー(pH 8)を50mMの最終濃度まで添加することにより、BS3をクエンチした。その後、SDS-PAGE並びに/又はマウス抗his一次抗体(Sigma)及び抗マウス西洋ワサビペルオキシダーゼ(Santa Cruz Biotechnology)もしくはアルカリホスファターゼ(Santa Cruz Biotechnology)コンジュゲート二次抗体を用いたウェスタンブロット解析を実施した。
【0884】
(6.12.1.4 酵素結合免疫吸着アッセイ)
Immunolon 4HBX(Fisher Scientific)プレートに、三量体化ドメインを有する組換えHA及び三量体化ドメインを有さない組換えHAを、コーティングバッファー(0.1M Na2CO3/NaHCO3、pH 9.2、50μl/ウェル)中、5μg/mlの濃度で、4℃で一晩コーティングした。その後、プレートを、1%Tween 20を含むPBS(pH 7.4)(TBPS)及び3%無脂肪乳粉末を含む0.1%Tween 20-PBS(TPBS)で、RTで1時間ブロッキングした。ブロッキング後、プレートをTPBSで1回洗浄し、その後、3倍希釈のモノクローナル抗体又は血清(1%粉乳を含むTPBS中、1ウェル当たり100μl-モノクローナル抗体の出発濃度30μg/ml;血清については、1:100希釈)とともにRTで1時間インキュベートした。その後、プレートを100μlのTPBSで3回洗浄し、1:3000希釈(1ウェル当たり50μl)の西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート抗マウスIgG(Santa Cruz Biotechnology)又は抗ヒトFab二次抗体(Sigma)とともに、RTでさらに1時間インキュベートした。さらに3回洗浄した後、プレートを、SigmaFAST OPD基質(Sigma)(100ul/ウェル)を用いて発色させ、3M HCl(50μl/ウェル)で停止させ、490nmの吸光度で、Synergy 4(BioTek)プレートリーダーで読み取った。得られた読出しから、二次抗体のみとともにインキュベートしたウェルからの値をバックグラウンド減算した。
【0885】
安定性研究のために、三量体化ドメインを有するPR8ウイルス由来のHAを4℃で60日間、又は-80℃で保存し、1回(標準)、2回、3回、又は4回の凍結-解凍サイクルに供した。ストーク結合抗体と比べたヘッド結合抗体の安定性を、PY102及びC179モノクローナル抗体を用いて比較した。ELISAにおける抗体-HA組合せを、二回反復を使用する安定性研究を除き、三回反復で行なった。
【0886】
(6.12.2 結果)
(6.12.2.1 C末端三量体化ドメインはHAを安定化し、三量体形成を誘導する)
様々なグループ1及びグループ2 HAの細胞外ドメインを、バキュロウイルス発現系で、C末端T4ファージ三量体化ドメインを有する又はC末端T4ファージ三量体化ドメインを有さない可溶性形態で発現させた(図52)。感染の96時間後、タンパク質を回収し、Ni-NTAカラムを用いて、C末端ヘキサヒスチジン-タグを介して精製した。精製タンパク質を、超遠心スピンカラムを用いて濃縮し、タンパク質の完全性及び不純度についてSDS-PAGE及びクマシー染色により評価し、ブラッドフォード試薬で定量した。アミノ酸配列と、多塩基性切断部位のないバキュロウイルス発現全長HAは通常切断されないという事実とに基づくと、HAの細胞外ドメインは、グリコシル化を考慮しなければ、単量体当たり約60kDaの予想分子質量(すなわち、三量体当たり180kDa)を有することになる。60kDaの切断されていないHAバンド(HA0)に加えて、約40kDa(HA1)及び25kDa(HA2)のバンドが存在することによって示されるように、三量体化ドメインを有さないCal09(H1)、JAP57(H2)、及びVN04(多塩基性切断部位のないH5) HAは、一部切断されて、HA1とHA2になるように思われた。非還元変性SDS-PAGEで、三量体化ドメインを有するCal09、JAP57、及びVN04 HAについて60kDaのバンドだけが存在することに基づき、これらのタンパク質は、大部分が、切断されていないHA0として発現されると仮定することができる(図53A)。さらに、三量体化ドメインのないWisc05(H3) HAの調製物は、抗ストーク抗体(12D1)でプロービングしたときに反応性がある40kDaの分解産物を示した。したがって、この種は、非特異的切断の産物である可能性が高かった。三量体化ドメインを有するWisc05 HAは、HA0バンドとしてのみ出現した(図53A)。PR8及びHK68 HAは、三量体化ドメインがなくても、非常に安定である(HA0として存在する)ように見えた。
【0887】
HAの三量体化を示すために最近使用される親水性の11オングストロームの化学クロスリンカーのBS3を用いて、T4三量体化ドメインを有するHA又はT4三量体化ドメインを有さないHAを架橋した(例えば、Weldonらの文献(2010, PLoS One 5)参照)。架橋後、試料を還元変性ローディング色素に希釈し、還元変性SDS-PAGEゲル上で分離した。三量体化ドメインを有さないグループ1 HAは、ランニングゲル中をほとんど泳動せず、大部分がスタッキングゲルに保持される高分子量オリゴマーを形成した(図53B及び53C)。最も強い表現型は、VN04及びJAP57の場合に検出され;他のグループ1 HAは、さらなる三量体(約230kDa)、二量体(130〜150kDa)、及び単量体(60kDa)も形成した(図53B及び53C)。三量体化ドメインを有するグループ1 HAは、大部分が、SDS-PAGEゲル上で約230kDに泳動する三量体を形成し、また、ランニングゲル中に明確なバンドを形成した。しかしながら、それらは、二量体(約130〜150kDa、Cal09の場合に最も強い)及び単量体(60kDa)も形成した。グループ2 HAは、異なる形で挙動し: HK68 HAは、主に三量体を形成し、三量体化ドメインの存在を問わず、ある程度、二量体を形成した。Wisc05 HAは、三量体化ドメインの非存在下で、主に二量体化を示したが、T4ドメインを有するHAは、大部分が三量体化した。
【0888】
(6.12.2.2 C末端三量体化ドメインは、HA基体に対するストーク反応性抗体の結合を強く増強する)
三量体化ドメインを有するHA基体及び三量体化ドメインを有さないHA基質に対するこれらの抗体の示差結合を明らかにするために、HA構築物に対する広域反応性の中和抗体のパネルの反応性を評価した。ストーク特異的抗体mAb C179、マウスmAb 6F12、ヒトmAb CR6261(全てグループ1特異的);並びにマウスmAb 12D1及びヒトmAb CR8020(両方ともグループ2特異的)を本実験で使用した。最近単離され、H1 HaとH5 Haの両方に対する反応性を有することが特徴付けられた4つの他のストーク反応性抗体、KB2、BD3、GG3、及びIB11も本実験で使用した。対照として、HAの球状ヘッドドメインに結合することが知られている株特異的抗体を使用した。さらなる対照として、インフルエンザウイルス株(PR8、Cal09、H3、VN04)に致死量未満で感染させた又はVLP(JAP57)をワクチン接種したマウスの血清を使用した。抗体C179、CR6261、及び6F12は、試験された両方のH1 HA(Cal09及びPR8)に対する強い結合表現型を示した。それらが、三量体化ドメインを有するHAにのみ結合し(図54A及び54B);三量体化ドメインを有さないHAに対する結合が観察されなかったことは注目すべきことである。同様の結合特徴は、他の4つのストーク反応性広域中和性H1-H5抗体で見られた。対照的に、ヘッド特異的抗体、例えば、7B2(Cal09)及びPY102(PR8)は、三量体化ドメインの発現とは無関係にHAと反応し、これらの知見は、Cal09又はPR8感染動物由来の血清を用いて確認された(図54A及び54B)。
【0889】
この作用は、H1亜型に特異的なものではなく-三量体化ドメインを有するJAP57(H2)及びVN04(H5) HA並びに三量体化ドメインを有さないJAP57(H2)及びVN04(H5) HAに対するC179及びCR6261の結合を試験したとき、同様の表現型が観察され、その場合、これらの抗体は、三量体化形態のタンパク質とのみ反応した(図55A及び55B)。同じ結果は、4つのH1-H5抗体の反応性を評価したときに見られた。ヘッド特異的抗体8F8(JAP57)及びmAb#8(VN04)又はポリクローナル抗H2もしくは抗H5血清は、両方の形態のHAを同程度によく認識した。
【0890】
グループ2 HA結合抗体については、異なるパターンが出現した。ストーク抗体とグループ2 HAとの反応性に対する三量体化ドメインの効果を検証するために、広域反応性抗体CR8020及び12D1を使用した。CR8020がグループ2 HA中の立体構造エピトープに結合するのに対し、12D1は、HA2サブユニットの長いαヘリックス(LAH)内の線状エピトープに結合すると考えられる。三量体化ドメインを有するHK68及びWisc05 HAに対するCR8020結合は、三量体化ドメインを有さないHAに対する結合と比べて、大きく増強された(図56A及び56B)。しかしながら、三量体化ドメインの欠如は、グループ1 HAで見られるように、結合を完全に無効化するものではななかった。12D1は、三量体化ドメインを有するHAと三量体化ドメインを有さないHAを区別しなかった(図56)。
【0891】
(6.12.3 結論)
T4三量体化ドメインは、可溶性HA分子の三量体化の成功を可能にし、バキュロウイルス発現後のこれらの分子の安定性を大きく増大させる。
【0892】
本明細書で引用されている全ての刊行物、特許、及び特許出願は、各々の個々の刊行物又は特許出願が引用により組み込まれていることが具体的にかつ個別に示されているかのように、引用により本明細書に組み込まれている。上の発明は理解の明快さの目的のために図及び実施例によって少し詳細に記載されているが、本発明の教示に照らし、添付の請求項の精神又は範囲を逸脱することなく、一定の変更及び修正をそれに加えることができることが、当業者には容易に明らかであろう。
図1A
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図1B
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図1C
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図1D
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図2A
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図2B
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図3
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図4
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図5
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図6
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図7
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図8
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図9
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図10
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図11
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図12A-12B】
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図13A
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図13B
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図14A
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図14B
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図15A-15B】
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図16A-16F】
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図17
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図18
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図19
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図20
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図21
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図22A
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図22B-22C】
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図23
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図24A-24C】
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図24D-24F】
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図24G-24I】
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図25A-25B】
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図25C-25D】
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図26
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図27A-27B】
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図27C-27E】
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図28
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図29
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図30
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図31
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図32
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図33
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図34
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図35
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図36
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図37
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図38
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図39
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図40
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図41
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図42A
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図42B
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図42C
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図43A-B】
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図43C
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図43D
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図43E
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図44A
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図44B
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図44C
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図45A
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図45B
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図45C
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図45D
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図45E
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図45F
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図45G
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図45H
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図45I
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図45J
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図46
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図47
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図48
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図49
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図50A
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図50B
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図50C
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図51
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図52A-C】
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図53A-C】
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図54A
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図54B
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図55A
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図55B
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図56A
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図56B
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]