(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る回転慣性制振装置及び構造物の振動抑制装置を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下幾つかの実施形態について説明するが、本発明は各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲及びその趣旨に逸脱することなく、数多くの改良、変更、変形、置換をなすこと及び応用例を想到することが当業者には可能である。
【0012】
まず本発明に係る回転慣性制振装置の基本的な構造及び動作について説明する。
図1は本発明に係る回転慣性制振装置の基本的な構造及び動作を示す模式図、
図2は本発明に係る回転慣性制振装置の原理を説明する模式図である。以下で説明する回転慣性制振装置100は、基本的な構成及び動作、原理を説明するために単純化している。
図1に示すように、回転慣性制振装置100は、ボールねじ機構110と、錘部120及び錘部保持手段130からなる回転質量部140と、駆動手段150と、ケース部材160と、取付部170とから構成される。
ボールねじ機構110は、ボールねじ軸111及びボールナット112を構成部材として備え、一方の構成部材であるボールナット112の直線運動を他方の部材であるボールねじ軸111の回転運動に変換する。なお、ボールねじ軸111を直線運動させ、ボールナット112を回転駆動させて錘部120を回転軌道運動させる構成とすることもできる。
【0013】
錘部120は、ボールねじ軸111の軸線Oを対称軸として2個配置され、ボールねじ軸111の回転により所定半径「R」で回転軌道運動する。なお、錘部120は、軸線Oの周囲に等角度間隔で配置されれば、3個以上設けてもよい。錘部保持手段130は、錘部120をボールねじ軸111に、回転半径が変更可能な状態で保持する。駆動手段150は、錘部保持手段130を変形させ、錘部120の回転軌道の半径を変更する。ケース部材160は、ボールねじ軸111を低摩擦状態で回転運動可能に保持し、ボールナット112を相対回転不能且つ直線運動可能に保持する。ケース部材160は、回転質量部140を覆う円筒状の部材である。取付部170は、ボールナット112に接続され、ボールナット112をケース部材160に対して直線運動可能に保持すると共に、回転慣性制振装置100に他の構造部材を取付け可能に構成される。
ボールねじ機構110は、公知の機構であり、直線運動と回転運動とを相互に高い効率で変換する。このため、ボールねじ軸111を回転動可能にケース部材160に保持して、このボールねじ軸111にねじ込まれたボールナット112を直線運動させると、ボールナット112は回転運動する。ボールねじ軸111は、ケース部材160にボールベアリング等の軸受180を介して取付けられている。
【0014】
錘部保持手段130は、ボールねじ軸111に取付けられた第1の回転支持部131と、第2の回転支持部132とを備える。また回転質量部140において、錘部120は、第1の回転支持部131と第2の回転支持部132との間で錘部120を支持する棒状の節部材であるアーム部材133、134によって第1の回転支持部131及び第2の回転支持部132に取付けられている。
アーム部材133は一端を錘部120に錘側ピン133aにより、他端を第1の回転支持部131に回転支持部側ピン133bによりそれぞれ回動可能に保持されている。また、アーム部材134は、一端を錘部120に錘側ピン134aにより、他端を第2の回転支持部132に回転支持部側ピン134bによりそれぞれ回動可能に保持されている。これにより、
図1(b)に示すように、第2の回転支持部132を第1の回転支持部131側に移動させることにより、錘部120を軸線Oから離間させることができ、回転軌道半径「R」を無段階に変更できる。錘部保持手段の構造は錘部の回転軌道半径を変更できるものであれば、種々変更できる。
【0015】
駆動手段150は、駆動軸151を軸線Oに沿って移動される。駆動軸151と第2の回転支持部132との間には、第2の回転支持部132の回転を駆動軸151に伝達せず、軸方向に沿った力だけを伝達する伝達機構からなる接続部材135が配置される。駆動手段としては、油圧シリンダ、電動ねじ機構等のアクチュエータ、手動の駆動機構等とすることができる。
ケース部材160は、軸受180を介してボールねじ軸111を回転運動可能に保持し、ボールねじ軸111を直線運動可能に保持する。また、ケース部材160は、回転質量部140を覆っている。ケース部材160は、円筒状の本体の一端、即ち駆動手段150側の端部に構造部材が接続される接続部161を、軸受180側の端部にボールねじ機構110を保持する円筒形の保持部162を備える。保持部162は、構造部材と接続可能に構成された取付部170を相対回転不能な状態で、且つ軸線Oに沿って相対直線運動できる状態で保持する。
【0016】
以上の構成を備える回転慣性制振装置100において、取付部170から入力された直線運動は、ボールねじ機構110で回転運動に変換され、2つの錘部120を、軸線Oを中心とする半径「R」の円軌道で回転させ、回転慣性質量を発生させる。そして、本例では、駆動手段150を駆動して錘部保持手段130を変形させて錘部120の軌道半径「R」を変更する。
【0017】
第1の回転支持部131と第2の回転支持部132とを最も引き離した状態(
図1(a))から、駆動手段150を駆動して第2の回転支持部132を第1の回転支持部131に近接させる(
図1(b))。この動作により、アーム部材133、アーム部材134が開いて、錘部120の軌道半径は、
図2(a)に示す「r
0」から、
図2(b)に示す「r
1」に変化する(r
0<r
1)。このとき、駆動手段150が第2の回転支持部132の位置を連続的に変更するので、錘部120の軌道半径が連続的に変更され、回転慣性質量が連続的に変化する。回転慣性制振装置100は、この動作により、錘部120による回転慣性質量を連続的に変更することができる。
【0018】
ここで、回転慣性制振装置100において、ボールねじ軸111のリード長(ねじ山のピッチ)を「L」、質量「m」の錘部120の重心の軌道半径を「r」とすると、微小時間「dt」の間にボールねじ軸111に軸線O方向の変位「dx」が入力されたとき、回転慣性力によりボールナット112に働く軸方向力(反力)「F
I」は、次式で表すことができる。
【0020】
本式から、回転質量部140における錘部120の軌道半径「r」をわずかに変更するだけで、大きく「F
I」を変更できることがわかる。
このような回転慣性制振装置100においては、接続部161と、取付部170との間には、
図2(c)に示すように、回転質量部140による回転慣性質量100Mと、回転慣性制振装置100自体の剛性による抵抗力回転慣性制振装置100Rとが作用する。これらの成分により、接続部161に接続された構造部材と、取付部170に接続された構造部材との間の振動を抑制することができる。
【0021】
以上の例は、錘部120の回転軌道半径が駆動手段150の動作によって増加するものである。本発明にあっては、駆動手段150の駆動により、錘部120の回転軌道半径「R」を減少させて回転慣性質量を変更することができる。
図3は本発明に係る回転慣性制振装置の他の基本動作を示す模式図である。この回転慣性制振装置100Aでは、駆動手段150を駆動して第2の回転支持部132を第1の回転支持部131に近接させることにより、錘部120の軌道半径を「r
0」から「r
2」に減少させる(r
0>r
2)。
【0022】
なお、上述した回転慣性制振装置100、回転慣性制振装置100Aのいずれの場合にあっても、駆動手段150を駆動させ、第2の回転支持部132を第1の回転支持部131に近接させるときには、錘部120の軌道半径が択一的に増加又は減少するように構成しておく。例えば、回転慣性制振装置100にあっては、錘部120の軌道半径が減少方向に移動しないストッパを備えるようにするほか、初期位置(
図1(a))において、アーム部材133、134を開き側に配置するように第2の回転支持部132の初期位置を設定しておく。また、回転慣性制振装置100Aにあっては、錘部120の軌道半径が増加方向に移動しないストッパを備えるようにするほか、初期位置(
図1(a))において、アーム部材133、134を縮小側に配置するように第2の回転支持部132の初期位置を設定しておく。
【0023】
以上の構成を備える回転慣性制振装置100によれば、回転質量部140において錘部120の円軌道運動の半径「R」を連続的に変更して、回転慣性質量を連続的に変更することができ、回転慣性制振装置100を、制振対象の振動特性に合致した回転慣性質量に設定できる。
【0024】
<第1実施形態>
次に、本発明の第1実施形態に係る回転慣性制振装置について説明する。
図4は本発明に係る回転慣性制振装置の第1実施形態を示すものであり、(a)は断面図、(b)は内部構造を示した斜視図である。第1実施形態に係る回転慣性制振装置200は、ボールねじ機構210と、回転質量部240と、駆動機構としてアクチュエータである油圧シリンダ250、ケース部材260と、取付部270とを備える。回転質量部240は、錘部220及び錘部220を回転軌道半径可変に保持する錘部保持手段230からなる。回転慣性制振装置200は、ケース部材260の接続部261と取付部270とに接続された2つの構造部材の間の制振を行う。
【0025】
ボールねじ機構210は、ボールねじ軸211とボールナット212とからなり、ボールナット212の直線運動をボールねじ軸211の回転運動に変換する。錘部220は、錘部保持手段230によってボールねじ軸211の軸線Oを対称軸として、即ち軸線Oの周囲に等角度間隔で4個配置され、ボールねじ軸211の回転により所定半径で回転軌道運動する。なお、錘部220は、軸線Oの周囲に等角度間隔で配置されれば、4個に限らず、2個、3個、又は5個以上設けても良い。
【0026】
ボールねじ機構210のボールねじ軸211は、ボールベアリング280を介してケース部材260に保持される。ボールナット212は、取付部270に取付けられており、取付部270は、キー263で回転不能とされて、ケース部材260の保持部262に直線運動可能に配置される。ボールベアリング280は、ナット281でケース部材260から抜けないように保持されている。
錘部保持手段230は、ボールねじ軸211に取付けられた第1の回転支持部231と、第2の回転支持部232と、アーム部材233、234とを備える。錘部220は、第1の回転支持部231と第2の回転支持部232と間で錘部220を支持する棒状の節部材であるアーム部材233、234によって第1の回転支持部231及び第2の回転支持部232に取付けられている。
【0027】
アーム部材233は、一端を錘部220に錘側ピン233aにより、他端を第1の回転支持部231に回転支持部側ピン233bによりそれぞれ回動可能に保持されている。また、アーム部材234は、一端を錘部220に錘側ピン234aにより、他端を第2の回転支持部232に回転支持部側ピン234bによりそれぞれ回動可能に保持されている。これにより、錘部保持手段230は錘部220と共にリンク機構を形成する。
油圧シリンダ250は、ケース部材260の底部材264に設置されている。油圧シリンダ250において、ピストンロッド251はシリンダ253内のピストン252に接続され、ピストンロッド251は、軸線Oに沿って往復駆動される。ピストンロッド251と第2の回転支持部232との間には、第2の回転支持部232の回転が伝達されない接続部材として2つのスラストボールベアリング235が配置される。また、2つのスラストボールベアリング235の間には、ボールベアリング236が配置される。このボールベアリング236は、回転質量部240の回転が第2の回転支持部232に伝達されることなく、回転質量部240をより安定に保持されるため設けられる。なお、回転質量部240の回転をボールベアリング280だけで安定に保持することができればボールベアリング236を用いずともよい。ピストンロッド251と、スラストボールベアリング235からの連結軸256とは、ジョイント部材255で連結される。
【0028】
本実施形態に係る回転慣性制振装置200によれば、油圧シリンダ250を駆動することにより、第2の回転支持部232を第1の回転支持部231に近接、又は離間させることができる。これにより、錘部220の回転軌道半径を連続的に増加、又は減少させることができ、回転慣性制振装置200の回転慣性質量を連続的に変更できる。このとき、油圧シリンダ250は、高速且つ正確に制御することができ、回転慣性制振装置200の回転慣性質量を迅速且つ正確に変更できる。
【0029】
<第1実施形態の変形例>
図5は本発明に係る回転慣性制振装置の第1実施形態の変形例を示す図である。本例に係る回転慣性制振装置200Aは、
図4に示した回転慣性制振装置200のスラストボールベアリング235に換えてボールジョイント290を配置している。ボールジョイント290は、
図5(b)、(c)に示すように、回転支持部側ケース291、油圧シリンダ側ケース292の間に、フランジ部293aを備える回転支持部側連結軸293と、フランジ部294aを備える油圧シリンダ側連結軸294を配置して構成している。
そして、回転支持部側ケース291とフランジ部293aの間にボール列295を配置し、フランジ部293aとフランジ部294aとの間にボール列296を配置し、フランジ部294aと油圧シリンダ側ケース292との間にボール列297を配置している。各ボール列295、296、297が接触する回転支持部側ケース291、油圧シリンダ側ケース292、フランジ部293a、及びフランジ部294aの面にはV溝が形成されている。回転支持部側ケース291と油圧シリンダ側ケース292との間には、締め付け及び隙間調整用のシム部材298が配置され、回転支持部側ケース291と油圧シリンダ側ケース292とはボルト299で連結される。
本例では、第2の回転支持部232の回転は、ボールジョイント290によって良好に遮断され、ピストンロッド251に伝達されない。本例に係る回転慣性制振装置200Aによれば、ボールジョイント290の回転抵抗が少ないため、油圧シリンダ250側の抵抗を受けることなく、回転質量部240はボールナット212の直進運動により高い効率で回転して回転質量部240を回転させることができる。
【0030】
<第2実施形態>
図6は本発明に係る回転慣性制振装置の第2実施形態を示す図である。本実施形態に係る回転慣性制振装置300は、ボールねじ機構210と、回転質量部240と、駆動機構としてアクチュエータである電動ねじ機構350と、ケース部材260と、取付部270とを備える。回転質量部240は、錘部220と錘部保持手段230とからなる。
回転慣性制振装置300において、ボールねじ機構210、錘部220、錘部保持手段230、回転質量部240、ケース部材260、取付部270の構成は、実施形態1で示したものと同一である。このため、図中に実施形態1の同一の符号を付する。
【0031】
以下、電動ねじ機構350について説明する。電動ねじ機構350は、ねじ棒351と、モーター352と、ナット353と、筒状部材354と、キー355と、回転防止部材356と、キー357とを備えて構成される。ねじ棒351は、モーター352で正逆の両方向に回転駆動される。ナット353は、筒状部材354内においてキー355で回転が禁止された状態に配置される。また、ナット353には、ねじ棒351がねじ込まれる。筒状部材354は、第2の回転支持部232にスラストボールベアリング235を介して連結されている。このため、第2の回転支持部232の回転は、筒状部材354には伝達されない。また、筒状部材354は、キー357を介して回転防止部材356内に回転が禁止され、軸線O方向に移動可能に配置されている。更に、回転防止部材356は、ケース部材260の底部材264に固着されている。
このような、電動ねじ機構350において、モーター352を回転駆動すると、ナット353が軸線O方向に沿って移動する。このナット353に伴って筒状部材354が移動して、第2の回転支持部232を軸線O方向に移動させる。
【0032】
本実施形態に係る回転慣性制振装置300によれば、電動ねじ機構350を駆動することにより、第2の回転支持部232を第1の回転支持部231に近接、又は離間させることができる。これにより、錘部220の回転軌道半径を連続的に増加、又は減少させることができ、回転慣性制振装置300の回転慣性質量を変化させることができる。このとき、電動ねじ機構350は、高速且つ正確に制御することができ、回転慣性制振装置300の回転慣性質量を迅速且つ正確に変更できる。
【0033】
<第3実施形態>
図7は本発明に係る回転慣性制振装置の第3実施形態を示すものであり、(a)は断面図、(b)は内部構造を示した斜視図である。また、
図8は本発明に係る回転慣性制振装置の第3実施形態において錘部の軌道半径が増加した状態を示す図である。本実施形態に係る回転慣性制振装置400は、ボールねじ機構210と、錘部420及び錘部保持手段430からなる回転質量部440と、駆動機構としてアクチュエータである油圧シリンダ250と、ケース部材260と、取付部270とを備える。
回転慣性制振装置400において、ボールねじ機構210、油圧シリンダ250、ケース部材260及び取付部270の構成は実施形態1で示した回転慣性制振装置200と同一である。このため、図中に実施形態1の同一の符号を付する。
【0034】
以下回転質量部440について説明する。回転質量部440は、軸線Oに対称に配置された2つの錘部420と、これらの錘部420を回転軌道半径可変に保持する錘部保持手段430とから構成される。錘部保持手段430は、ボールねじ軸211に取付けられた第1の回転支持部431と、第2の回転支持部432とを備える。錘部420は、第1の回転支持部431と第2の回転支持部432と間で錘部420を支持する板ばね433、434によって第1の回転支持部431及び第2の回転支持部432に取付けられている。なお、錘部420は、軸線Oの周囲に等角度間隔で配置されれば、3個以上設けてもよい。
板ばね433は、一端を錘部420に六角穴付きねじ等である固定手段433aで固定され、他端を第1の回転支持部431に固定手段433bで固定されている。また、板ばね434は、一端を錘部420に固定手段434aで固定され、他端を第2の回転支持部432に固定手段434bで固定されている。また、板ばね433、434は、弾性的に変形する。
【0035】
本実施形態に係る回転慣性制振装置400によれば、油圧シリンダ250のピストンロッド251を押し出すと、
図8に示すように、第2の回転支持部432を第1の回転支持部431に近接させることができる。このとき、板ばね433、434は、弾性変形して錘部420を外側に押し出す。このため、錘部420の回転軌道半径が増加する。この状態で、油圧シリンダ250がピストンロッド251を引けば、錘部420の軌道半径は
図7に示す状態まで戻る。このようにして、回転慣性制振装置400は、錘部420の回転軌道半径を連続的に増加、又は減少させることができ、回転慣性質量を変化させることができる。
本実施形態に係る回転慣性制振装置400によれば、錘部保持手段430を板ばね433、434で構成しているので、構造を簡単なものとできる。更に、油圧シリンダ250により高速且つ正確に制御することができる。
【0036】
<第4実施形態>
図9は本発明に係る回転慣性制振装置の第4実施形態を示すものであり、(a)は断面図、(b)は内部構造を示した斜視図である。本実施形態に係る回転慣性制振装置500は、ボールねじ機構210と、回転質量部540と、ケース部材260と、取付部270とを備える。回転質量部540は、錘部520及び錘部保持手段530からなる。本実施形態では、錘部保持手段530として錘部520を回転軌道半径方向に移動させる油圧シリンダ531を配置している。この油圧シリンダ531は、駆動手段であるアクチュエータとしても動作するものであり、ピストンロッド533を出し入れすることにより錘部520の回転軌道半径を連続的に変更して、回転慣性制振装置500の回転慣性質量を連続的に変更する。
回転慣性制振装置500において、ボールねじ機構210、ケース部材260、取付部270の構成は、実施形態1で示したものと同一である。このため、図中に実施形態1の同一の符号を付する。
【0037】
錘部保持手段530を構成する油圧シリンダ531は、ボールねじ軸211と共に回転する軸部材590に、軸線Oを対称軸として放射方向に2つ配置されている。軸部材590は、ケース部材260の底部材264に配置されたボールベアリング580によってケース部材260内に回転可能に配置される。油圧シリンダ531は、シリンダ532とピストンロッド533とを備えており、軸部材590内に配置された油圧経路から作動油が供給され、駆動される。なお、シリンダ532内には、コイルスプリング534が配置され、シリンダ532内に圧油が供給されないとき、ピストンロッド533はこのコイルスプリング534の押し付け力でシリンダ532内に押し込まれる。ピストンロッド533の先端には、錘部520が設置されている。なお、油圧シリンダ531は、軸線Oの周囲に等角度間隔で配置されれば、3個以上設けてもよい。
油圧シリンダ531に圧油が供給されると、ピストンロッド533がコイルスプリング534の押し付け力に抗してシリンダ532から飛び出し、錘部520の回転軌道半径が増加する。一方、シリンダ532から圧油が抜けるとピストンロッド533はコイルスプリング534の押し付け力によりシリンダ532内に押し込まれ、錘部520の回転軌道半径が増加する。
【0038】
本実施形態に係る回転慣性制振装置500によれば、油圧シリンダ531を駆動することにより、錘部520の回転軌道半径を連続的に増加、減少させることができる。また、油圧シリンダ531は、高速且つ正確に制御することができる。本実施形態によれば、回転質量部における連結箇所や接合箇所を少なくでき、簡単な構成とすることができる。
【0039】
<第5実施形態>
図10は本発明に係る回転慣性制振装置の第5実施形態を示す図である。本実施形態に係る回転慣性制振装置600は、手動機構として手動ねじ機構650を備える。
回転慣性制振装置600は、ボールねじ機構210と、回転質量部240と、手動ねじ機構650と、ケース部材260と、取付部270とを備える。回転質量部240は、錘部220及び錘部保持手段230とからなる。ボールねじ機構210、錘部220、錘部保持手段230、回転質量部240、ケース部材260及び取付部270の構成は、実施形態1で示したものと同一である。このため、図中に実施形態1の同一の符号を付する。
手動ねじ機構650は、ねじ棒651と、ナット653と、筒状部材654と、キー655と、回転防止部材656と、キー657とを備えて構成される。ねじ棒651には、工具によってねじ棒651を回転するための回転ヘッド652が配置される。ねじ棒651は、この回転ヘッド652を手動で正逆の両方向に回転することで駆動できる。ナット653には、ねじ棒651がねじ込まれる。またナット653は、筒状部材654内においてキー655によって回転が禁止された状態に配置される。
【0040】
筒状部材654は、第2の回転支持部232にスラストボールベアリング235を介して連結されている。このため、第2の回転支持部232の回転は、筒状部材654には伝達されない。また、筒状部材654は、キー657を介して回転防止部材656内に回転が禁止され、且つ軸線O方向に移動可能に配置されている。更に、回転防止部材656は、ケース部材260の接続部261側の底部材264に固着されている。ケース部材260の底部材264には、取外し可能に板部材265が配置されている。回転ヘッド652を駆動するときには、板部材265を接続部261と共に取外し、回転ヘッド652を露出させる。
このような、手動ねじ機構650において、回転ヘッド652を回転すると、ねじ棒651が回転して、ナット653が軸線O方向に沿って移動する。このナット653の移動に伴って筒状部材654が移動して、第2の回転支持部232を軸線O方向に移動させる。
【0041】
本実施形態に係る回転慣性制振装置600によれば、手動ねじ機構650を駆動することにより、錘部220の回転軌道半径を連続的に増加、減少させることができる。また、本実施形態に係る回転慣性制振装置600によれば、簡単な構成で且つ動力を必要とすることなく回転慣性質量を所望の値に変更することができる。
【0042】
<第6実施形態>
図11は本発明に係る回転慣性制振装置の第6実施形態を示す図である。本実施形態に係る回転慣性制振装置700は、錘部720に作用する遠心力により錘部720の回転軌道半径を変更する。
回転慣性制振装置700は、ボールねじ機構210と、回転質量部740と、ケース部材260と、取付部270とを備える。回転質量部740は、錘部720及び錘部保持手段730からなる。錘部720は、ボールねじ軸211の軸線Oを対称軸として、即ち軸線Oの周囲に等角度間隔で4個配置され、ボールねじ軸211の回転により所定半径で回転軌道運動する。なお、錘部720は、軸線Oの周囲に等角度間隔で配置されれば、4個に限らず、2個、3個、5個以上設けても良い。
【0043】
ケース部材260の底部材264には、ボールベアリング780が配置され、回転軸790が軸線Oに沿って回転可能に配置されている。錘部保持手段730は、ボールねじ軸211に取付けられた第1の回転支持部731と、第2の回転支持部732とを備える。錘部720は、第1の回転支持部731と第2の回転支持部732と間で錘部720を支持する棒状の節部材であるアーム部材733、734によって第1の回転支持部731及び第2の回転支持部732に取付けられている。
アーム部材733は一端を錘部720に錘側ピン733aにより、他端を第1の回転支持部731に回転支持部側ピン733bによりそれぞれ回動可能に保持されている。また、アーム部材734は、一端を錘部720に錘側ピン734aにより、他端を第2の回転支持部732に回転支持部側ピン734bによりそれぞれ回動可能に保持されている。
【0044】
本実施形態では、第2の回転支持部732は、回転軸790の第2の回転支持部732側の端部に軸線O方向にスライド可能に接続されている。即ち、第2の回転支持部732は、回転軸790にスライド自在に配置された連結部材735に取付けられている。以上の構成により、本実施形態において第2の回転支持部732は、軸線O方向に沿って移動できる。
【0045】
本実施形態において第1の回転支持部731と第2の回転支持部732とは、コイルスプリング750で連結されている。このコイルスプリング750は、第1の回転支持部731と第2の回転支持部732とを離間させる方向に第2の回転支持部732を押す。このため、ボールねじ軸211の回転によって錘部720が回転すると、遠心力で錘部720が外側に向けて移動し、この錘部720の移動により第2の回転支持部732が第1の回転支持部731側に移動しようとする。そして、第2の回転支持部732は、第1の回転支持部731側への力とコイルスプリング750の付勢力とが釣り合う位置に保持される。第2の回転支持部732の位置は、錘部720の回転速度が高いほど第1の回転支持部731に近づく。
本実施形態に係る回転慣性制振装置700によれば、入力される直線運動に応じて錘部の軌道半径を変更して回転慣性質量を変更することができる。
【0046】
<第7実施形態>
図12は本発明に係る回転慣性制振装置の第7実施形態を示すものである。本実施形態に係る回転慣性制振装置800は錘部保持手段830として、錘部820を回転軌道半径方向に移動可能に配置するシリンダ部材831を備える。回転慣性制振装置800は、ボールねじ機構210と、回転質量部840と、ケース部材260と、取付部270とを備える。回転質量部840は、錘部820及び錘部保持手段830からなる。回転慣性制振装置800において、ボールねじ機構210、ケース部材260、取付部270は実施形態1で示したものと同一である。このため、図中に実施形態1の同一の符号を付する。
錘部820は、ボールねじ軸211の軸線Oを対称軸として2個配置され、ボールねじ軸211に連結された軸部材890の回転により所定半径で回転軌道運動する。軸部材890は底部材264に配置されたボールベアリング880によって回転可能に保持される。なお、錘部820は、軸線Oの周囲に等角度間隔で配置されれば、3個以上設けてもよい。
【0047】
錘部保持手段830を構成するシリンダ部材831は、軸部材890に軸線Oを対称軸として放射方向に2つ配置されている。シリンダ部材831は、シリンダ832と、ロッド833と、圧縮コイルスプリング834と備えている。圧縮コイルスプリング834は、シリンダ832内に配置されロッド833を軸線O方向に押し付けている。
ボールねじ軸211の回転によって錘部820が回転すると、遠心力で錘部820が、圧縮コイルスプリング834に抗して外側に向け移動する。そして、錘部820は、錘部820に加わる遠心力と、圧縮コイルスプリング834の力とが釣り合う位置に保持される。この位置は、錘部820の回転速度が高いほど軸線Oから遠くなる。
【0048】
本実施形態に係る回転慣性制振装置800によれば、簡単な構成で入力される直線運動に応じて錘部の軌道半径を変更して回転慣性質量を変更することができる。
【0049】
<回転質量部の変形例>
本発明において、錘部保持手段を構成する錘部と錘保持手段の構造は上述した形状に限らない。以下変形例について説明する。
図13、
図14は、本発明の回転慣性制振装置に適用する錘部及び錘部保持手段の変形例を示す図である。これらの例で示す回転錘部材は、錘部材と錘部保持手段を構成する部材とを兼ねる回転錘部材として構成される。これらの回転錘部材は、第1の回転支持部及び第2の回転支持部に適宜の手段で取付けられて回転質量部を構成する。例えば、
図4に示した回転慣性制振装置200において、回転錘部材は、第1の回転支持部231と第2の回転支持部232との間に配置され、錘部220とアーム部材233、234と同様の動作をなす。
【0050】
図13(A)に示した回転錘部材910は、ピン911で2つの回転部材912、913を角度変更可能に連結したものである。回転部材912は、タブレット状の錘部912aと棒状の延長部912bとからなる。同様に、回転部材913は、タブレット状の錘部913aと棒状の延長部913bとからなる。ピン911は錘部912a、913aで両回転部材912、913を連結する。この例に係る回転錘部材910によれば、ピン911を中心として回転部材912、913が挟む角度を変更して、錘部912a、913aの回転軌道半径を変更できる。
【0051】
図13(B)に示した回転錘部材920は、ピン921、923、926と、錘部922、925と、延長部924、927とを組み合わせて構成したものである。錘部922、925は、所定の質量を有する厚板で形成され、両先端部においてピン921で互いに回動可能に連結される。また、錘部922には長穴部922aが貫通形成され、この長穴部922aにおいて、延長部924がピン923でスライド可能に連結される。同様に、錘部925には長穴部925aが開設され、この長穴部925aにおいて、延長部927がピン926でスライド可能に連結される。
この例に係る回転錘部材920によれば、各部材がピン921、923、926を中心として回転すると共に長穴部922a、925aによって移動して錘部922、925と延長部924、927との取付け状態が変化して、錘部922、925の回転軌道半径を変更できる。
【0052】
図14(A)に示す回転錘部材930は、ピン931で錘部932と、腕部933、934を回転可能に連結したものである。錘部932は、上面部932aとこの上面部932aの両側部から延設される板状部932b、932cとから構成されている。板状部932b、932cは、上面部932aと交差(直交)する同方向に突出している。腕部933、934の上端部(一端部)が、互いに組み合わされて板状部932b、932cの間に挿入され、腕部933、934と板状部932b、932cはピン931により回動自在に構成される。この例に係る回転錘部材930によれば、ピン931を中心とする腕部933、934の角度を変更して、錘部932の回転軌道半径を変更することができる。
【0053】
図14(B)に示す回転錘部材940は、軸部941で2つの回転部材942、943を角度変更可能に連結したものである。この回転部材942、943は、錘部942a、943aと、腕部942b、943b、取付け部942c、943cとで構成されている。また、一方の回転部材942の錘部942aには軸部941が一体に形成され、他方の回転錘部材の穴部に挿入されている。この例に係る回転錘部材940によれば、軸部941を中心として腕部942b、943bの角度が変更して、錘部942a、943aの回転軌道半径を変更することができる。
【0054】
図15は本発明の回転慣性制振装置に適用する回転質量部の変形例を示す図である。
図15に示した例は、回転慣性制振装置1100の回転質量部1140として、蛇腹状に変形可能な筒体1120を配置したものである。この例では、錘部と錘部保持手段とが一体に形成される。筒体1120は、第1の回転支持部1131と第2の回転支持部1132との間に配置され、油圧シリンダ250の駆動により、軸線O方向に伸縮する。筒体1120が伸びた状態で筒体1120の平均半径が最も大きくなり、回転慣性質量が最大となる。一方、筒体1120が収縮した状態で筒体の平均半径が小さくなり回転慣性質量が最小となる。その他の構造は、第1実施形態に係る回転慣性制振装置200と同一である。このため同一の部材には同一の符号を付する。本例に係る回転慣性制振装置1100によれば、連結箇所や接合箇所を少なくでき、簡単な構成とすることができる。
【0055】
上記各実施形態では、回転質量部として節部材をピン結合して構成したリンク機構、ばね板を用いた機構、シリンダを備える機構等について説明した。また、同様に駆動手段として油圧シリンダ、電動ねじ機構等のアクチュエータ、手動ねじ機構等について説明した。本発明は、上記各実施形態で示した回転質量部と駆動手段との組み合わせに限定されず、各種の機構を適宜組み合わせて実現できる。
【0056】
<構造物の振動抑制装置の実施形態>
以下本発明に係る構造物の振動抑制構造の実施形態について説明する。
図16は本発明に係る構造物の振動抑制装置の実施形態を示す模式図である。本実施形態に係る構造物の振動抑制装置1400では、上述した実施形態に係る回転慣性制振装置のうちの一つの回転慣性制振装置1410を使用して構造物の免震構造を実現する。振動抑制装置1400は、構造物1500と、構造物1500と地盤Gとの間に配置した回転慣性制振装置1410と制動弾性装置1420(例えばオイルダンパー)と制動抵抗装置1430(例えば積層ゴム)とで構成される。
【0057】
本実施形態に係る振動抑制装置1400によれば、回転慣性制振装置の回転慣性質量を変更して、構造物の振動の特性に応じた最適なものとできる。
また、回転慣性制振装置1410を、構造物1500に配置した加速度計等のセンサー1450が検知した加速度等の検出値に基づいて制御手段1540によって制御して回転慣性質量を変更することができる。この場合、回転慣性制振装置1410としては、実施形態1〜4のものを使用する。この例によれば、回転慣性制振装置1410を構造物1500の振動特性に適した回転慣性質量に調整でき建築物を効果的に免震することができる。なお、センサーとしては、加速度計の他、変位計、速度計を使用することができ、これらのセンサーが検知する検出値から演算により求めた加速度に基づいて、回転慣性制振装置1410を制御してもよい。
【0058】
図17は本発明に係る構造物の振動抑制装置の他の実施形態を示す模式図である。本実施形態は建造物の制振装置を構成する。制振装置1600は、上述した各実施形態に係る回転慣性制振装置のうちの一つの回転慣性制振装置1610を備え、構造物の剛性成分1620と共に制振を行う。この制動弾性装置1620を地盤Gと第1構造体S1、第1構造体S1、第2構造体S2、第3構造体S3のそれぞれの間に配置する。この例によれば、各構造体の間に配置した制振装置1600を各構造体間の特性に最適な制振特性とするべく回転慣性制振装置1610の回転慣性質量を変更できる。
また、第1構造体S1、第2構造体S2、第3構造体S3に各回転慣性制振装置1610に対応するセンサーを配置し、各回転慣性制振装置1610をそれぞれセンサーの検出値に基づいて制御手段で制御することができる。このとき回転慣性制振装置1610として第1実施形態1〜第4実施形態のものを使用する。この例によれば、回転慣性制振装置1610を各構造体S1〜S3の振動特性に適した回転慣性質量に調整でき建築物を効果的に制振することができる。
【0059】
図18は本発明に係る構造物の振動抑制装置の更に他の実施形態を示す模式図である。実施形態に係る構造物の振動抑制装置は、構造物1700の各階層の構造部材に構造部材の振動の状態を検知するセンサー1840、1850、1860、1870を備え、このセンサー1840、1850、1860、1870が検出した振動に基づいて各階層に配置した回転慣性制振装置1810、1820、1830の回転慣性質量を制御手段1880で制御する。
この実施形態に係る構造物の制振装置は、地盤1711、構造部材1712、1713に回転慣性制振装置1810、1820、1830の一端を接続し、回転慣性制振装置1810、1820、1830の他端を、連結部材1715、1716、1717、1718、1719、1720を介して構造部材1712、1713、1714に接続している。また、地盤1711、構造部材1712、1713、1714にセンサー1840、1850、1860、1870を配置し、このセンサー1840の検出値に基づいて制御手段1880で回転慣性制振装置1810、1820、1830のアクチュエータを駆動制御するものである。
【0060】
本例では、センサー1840、1850、1860、1870で検出した地盤1711及び構造部材1712、1713、1714の応答状態に基づいて、回転慣性制振装置1810、1820、1830の回転慣性質量を変更して、建物全体としての制振を図ることができる。なお、回転慣性制振装置やセンサーをどのように建築物に配置するかは、適宜変更することができる。
なお、制御装置を外部の地震情報に基づいて回転慣性制振装置1810、1820、1830を制御することができる。このようにすれば、構造物を地震波が到来する以前から最適な減衰力を発揮するよう回転慣性制振装置1810、1820、1830の回転慣性質量を変更することができ、初期振動に対しても効果的な減衰効果を得ることができる。
【0061】
<本発明の実施態様例の構成、作用、効果>
<第1態様>
本態様の回転慣性制振装置100は、ボールねじ軸111及びボールナット112を構成部材として備え、一方の構成部材の直線運動を他方の構成部材の回転運動に変換するボールねじ機構110と、他方の構成部材の回転運動に伴って円軌道運動する錘部120、及び、円軌道運動の半径を連続的に変更可能な状態で錘部120を他方の構成部材に保持させる錘部保持手段130を備え、錘部120の円軌道運動により回転慣性質量を発生させる回転質量部140と、を備えることを特徴とする。
本態様によれば、回転質量部において錘部の円軌道運動の半径を連続的に変更して、回転慣性質量を連続的に変更することができる。即ち、回転質量部140における錘部保持手段130での錘部120の円軌道半径を連続的に変更して回転慣性制振装置100における回転慣性質量を連続的に変更できる。これにより、回転慣性制振装置100の回転慣性質量を振動条件や制振対象の特性に容易に適合するものとできる。
【0062】
<第2態様>
本態様の錘部保持手段130は、ボールねじ機構110の他方の構成部材に相対回転不能に取付けられた第1の回転支持部131と、ボールねじ軸111と同一の軸線O回りに回転自在に、且つ第1の回転支持部に対して接近又は離間可能に構成された第2の回転支持部132と、を備え、第2の回転支持部132が第1の回転支持部131に接近したときに錘部120を外径方向又は内径方向に移動させ、第2の回転支持部132が第1の回転支持部131から離間したときに錘部120を内径方向又は外径方向に移動させることにより、錘部120の円軌道運動の半径を変更することを特徴とする。
本態様によれば、錘部保持手段は、第2の回転支持部132を第1の回転支持部131に近接させることにより、回転質量部の錘部の円軌道運動の半径を内側又は外側に連続的に変更することができ、回転慣性質量を連続的に変更することができる。これにより、回転慣性制振装置100の回転慣性質量を振動条件や制振対象の特性に容易に適合するものとできる。
【0063】
<第3形態>
本形態の回転慣性制振装置200において、錘部保持手段230は、第1の回転支持部231、第2の回転支持部232、及び錘部保持手段230に回動可能に結合されたアーム部材233、234を有するリンク機構を備えることを特徴とする。
本形態によれば、錘部の軌道半径を簡単で確実に動作するリンク機構の動作により変更することができる。これにより、回転慣性制振装置200の回転慣性質量を振動条件や制振対象の特性に容易に適合するものとできる。
【0064】
<第4形態>
本形態の回転慣性制振装置400において、錘部保持手段430は、第1の回転支持部431、第2の回転支持部432、及び錘部420に接続された板ばね433、434を備えることを特徴とする。
本態様によれば、錘部420の軌道半径を単純な構造で確実に動作する板ばね433、434の変形により変更できる。これにより、回転慣性制振装置400の回転慣性質量を振動条件や制振対象の特性に容易に適合するものとできる。
【0065】
<第5形態>
本形態の回転慣性制振装置1100において、錘部と錘部保持手段とは一体として構成される筒体1120であることを特徴とする。
本形態によれば、連結箇所や接合箇所を少なくでき、簡単な構成とすることができる。これにより、回転慣性制振装置1100の回転慣性質量を振動条件や制振対象の特性に容易に適合するものとできる。
【0066】
<第6形態>
本形態に係る回転慣性制振装置500の錘部保持手段530は、錘部520を回転軌道半径方向に移動させる油圧シリンダ531を備えることを特徴とする。
本形態によれば、連結箇所や接合箇所を少なくでき、簡単な構成とすることができる。これにより、回転慣性制振装置500の回転慣性質量を振動条件や制振対象の特性に容易に適合するものとできる。
【0067】
<第7形態>
本形態に係る回転慣性制振装置100において、錘部保持手段130を駆動して半径を変更する駆動手段150を備えることを特徴とする。
本形態によれば、駆動手段150で錘部保持手段130を駆動して錘部保持手段130の軌道半径を変更して回転慣性質量を所望の値に変更することができる。これにより、回転慣性制振装置100の回転慣性質量を振動条件や制振対象の特性に容易に適合するものとできる。
【0068】
<第8形態>
本形態の回転慣性制振装置200において、駆動手段は、外部からの制御により駆動される油圧シリンダ250であることを特徴とする。
本形態によれば、減衰すべき振動の特性に対応して錘部保持手段130を油圧シリンダ250で能動的に駆動して最適な回転慣性質量を発生できる。
【0069】
<第9形態>
本形態の回転慣性制振装置600において、駆動手段は、手動により操作される手動ねじ機構650であることを特徴とする。
本形態によれば、簡単な構成で且つ動力を必要とすることなく、錘部保持手段を駆動して錘部の軌道半径を変更して回転慣性質量を所望の値に変更することができる。
【0070】
<第10形態>
本形態の回転慣性制振装置700において、駆動手段は、回転質量部740の錘部720に発生する遠心力で動作するものであることを特徴とする。
本形態によれば、簡単な構成で入力される直線運動に応じて発生する錘部720の遠心力で錘部720の軌道半径が変更され回転慣性質量を変更することができる。
【0071】
<第11形態>
本形態の回転慣性制振装置100は、ボールねじ軸111を回転運動可能に保持し、ボールナット112を直線運動可能に保持すると共に、回転質量部140を覆うケース部材160を備えることを特徴とする。
本形態によれば、ケース部材160によりボールねじ軸111を回転可能、ボールナット112を直線運動可能に保持できる。また、ケース部材160で回転質量部140を覆うことができ、回転質量部140を露出状態にしない。
【0072】
<第12形態>
本形態の構造物の振動抑制装置は、構造物1700の構造部材1712、1713、1714の間に回転慣性制振装置1810、1820、1830を備えることを特徴とする。
本形態によれば、回転慣性制振装置の回転慣性質量を変更する。これにより、回転慣性質量を構造物の振動の特性に応じた最適なものとできる。
【0073】
<第13形態>
本形態の構造物の振動抑制装置は、構造物の構造部材の間に配置された回転慣性制振装置1810、1820、1830と、アクチュエータの動作を制御する制御手段1880とを備えることを特徴とする。
本形態によれば、制御手段1880で制御されたアクチュエータにより回転慣性制振装置1810、1820、1830の回転慣性質量を変更する。これにより、回転慣性質量を構造物の振動の特性に応じた最適なものとできる。
【0074】
<第14形態>
本形態の構造物の振動抑制装置において、構造部材1712、1713、1714に配置され、構造部材の振動の状態を検知するセンサー1840、1850、1860、1870を備え、制御手段1880が、センサー1840、1850、1860、1870の検出値に基づいてアクチュエータを制御することを特徴とする。
本形態によれば、制御手段1880はセンサー1840、1850、1860、1870が検出した構造部材の振動を減衰させるのに最適な減衰力を発揮するよう回転慣性質量を変更する。これにより、構造物1700の振動を効果的に減衰させることができる。
【0075】
<第15形態>
本実施形態の構造物の振動抑制装置は、センサーが、配置された回転慣性制振装置1810、1820、1830に対応して配置され、制御手段1880が、各回転慣性制振装置1810、1820、1830に対応するセンサー1840、1850、1860の検出値に基づいてアクチュエータを制御することを特徴とする。
本形態によれば、制御手段1880は、各回転慣性制振装置1810、1820、1830に対応したセンサー1840、1850、1860が検出した構造部材の振動を減衰させるのに最適な減衰力を発揮するよう回転慣性質量を変更する。これにより、構造物の振動を効果的に減衰させることができる。
【0076】
<第16形態>
本形態の構造物の振動抑制装置は、制御手段1880が、外部からの地震情報に基づいて回転慣性制振装置1810、1820、1830のアクチュエータを制御することを特徴とする。
本形態によれば、外部の地震情報に基づいて回転慣性制振装置1810、1820、1830を動作させることができ、構造物を地震波が到来する以前から最適な減衰力を発揮するよう回転慣性質量を変更することができる。これにより、初期振動に対しても効果的な減衰効果を得ることができる。