(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498488
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】法面点検方法、法面撮影装置、および車両
(51)【国際特許分類】
G01C 7/04 20060101AFI20190401BHJP
G01C 11/06 20060101ALI20190401BHJP
G01B 11/30 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
G01C7/04
G01C11/06
G01B11/30 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-65142(P2015-65142)
(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公開番号】特開2016-183934(P2016-183934A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2018年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100093986
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 雅男
(74)【代理人】
【識別番号】100128864
【弁理士】
【氏名又は名称】川岡 秀男
(72)【発明者】
【氏名】橘 菊生
(72)【発明者】
【氏名】間野 耕司
(72)【発明者】
【氏名】島村 秀樹
【審査官】
梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−042956(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/050162(WO,A1)
【文献】
特開2009−177251(JP,A)
【文献】
特開2000−074669(JP,A)
【文献】
特開2013−024686(JP,A)
【文献】
特開2001−014316(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0171431(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 − 11/30
G01B 21/00 − 21/32
G01C 1/00 − 15/14
G06T 1/00 − 1/40
G06T 3/00 − 5/50
G06T 9/00 − 9/40
G06T 11/60 − 13/80
G06T 17/05
G06T 19/00 − 19/20
H04N 5/222 − 5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面の状態を外観観察に基づいて点検し、変状が認められたときにその状態および位置を記録する法面点検方法であって、
天端あるいは法尻側方の平坦面を走行する車両から焦点距離の異なる複数のカメラにより法面を高さ方向に分割して法面での解像度をほぼ均一にして連続撮影するとともに、前記車両に搭載した位置計測手段により撮影位置を記録し、
前記連続撮影した画像および撮影位置及び姿勢を利用した写真測量によって法面の3次元計測データを作成し、
前記3次元計測データを利用し、法面に正対する方向に投影変換を行った直射投影画像に基づき法面の状態を外観観察し、
変状が認められたときにその状態および位置を特定する法面点検方法。
【請求項2】
請求項1に記載の法面点検方法であって、
焦点距離の異なる複数のカメラを焦点距離が長いカメラほど仰俯角が大きく、各カメラの法面における撮影範囲が仰俯角方向に連続するように各カメラを車両に支持する架台を前記車両に取り付けた法面撮影装置にて前記連続撮影することを特徴とした請求項1に記載の法面点検方法。
【請求項3】
前記架台は、前記各カメラの仰俯角を調整可能にしたことを特徴とする請求項2に記載の法面点検方法。
【請求項4】
前記架台は、車両との間に上下動自在に支持するリンク機構を有する請求項2または請求項3に記載の法面点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は法面点検方法、法面撮影装置、および車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
法面の状態を外観観察に基づいて点検し、変状が認められたときにその状態および位置を記録する法面点検方法としては、従来、特許文献1に記載のものが知られている。この従来例は、堤防の変状に加えて護岸侵食などをも対象にした河川全般の点検に関するものであり、点検作業に際して点検作業者は携帯型情報端末を携帯する。
【0003】
上記携帯型情報端末には監視対象情報が記録されており、そのGPS機能によって監視対象情報と連動して点検作業者を監視地点へとナビゲートする。監視地点付近に点検作業者が到達すると、点検箇所や点検事項などの監視項目が携帯型情報端末により画像と音声でガイドされ、この後、点検作業者の目視による点検によって異常を発見した場合には、その場所と状況などの監視結果を点検作業者がその場で携帯型情報端末に入力する。以上の携帯型情報端末は、管理者事務所において監視結果を管理サーバに転送し、これにより管理サーバの河川データベースに監視結果が記録される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-83132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来例は点検作業に膨大な手間がかかるという欠点がある。すなわち、上述した堤防等の法面は、河川に沿って設けられるなど距離範囲が極めて長くなりやすい上に、勾配に配慮して斜面長が長くなることもあまり珍しくはないことから、これを点検作業者が実地点検するとなると、多大な時間と労力を費やさなければならない。
【0006】
また、点検は一般的には、例えば晴天時など外観観察に適したタイミングで行うのが点検精度を高めるために望ましい上に、例えば土堤のように事前に除草処理が必要な場合には、除草処理後に迅速に行うことが理想的である。しかしながら、上述のように多大な時間を要することになると、このような融通性が低くなる。
【0007】
本発明は以上の欠点を解消すべくなされたものであって、点検効率に優れた法面点検方法の提供を目的とする。また、本発明の他の目的は、点検効率を向上させることのできる法面撮影装置および車両の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上述した目的は、
法面1の状態を外観観察に基づいて点検し、変状が認められたときにその状態および位置を記録する法面点検方法であって、
天端2あるいは法尻3側方の平坦面4を走行する車両5から焦点距離の異なる複数のカメラ6により法面1を高さ方向に分割して
法面1での解像度をほぼ均一にして連続撮影するとともに、前記車両5に搭載した位置計測手段7により撮影位置を記録し、
前記連続撮影した画像および撮影位置を利用した写真測量によって法面1の3次元計測データを作成し、
前記3次元計測データを利用し、法面1に正対する方向に投影変換を行った直射投影画像に基づき法面1の状態を外観観察し、
変状が認められたときにその状態および位置を特定する法面点検方法を提供することにより達成される。
【0009】
本発明によれば、法面1の点検作業は、予め写真測量により取得した法面1に関するデータ、具体的には例えば3Dモデルや法面1(傾斜面)の正対方向からの直射投影画像データを観察してなされる。写真測量成果には法面1の外観形状と位置の双方の情報が含まれており、このためデータ観察によって変状の有無を点検することができる上に、変状が認められたときには、変状箇所の状態、位置を直ちに特定することができる。
【0010】
また、写真測量にはいわゆるモービルマッピングシステム(Mobile mapping System)が利用されるために、法面1が河川に沿って設けられるなどして距離範囲が極めて長い場合にもあまり手間取ることはない。さらに、写真測量のためのカメラ6として焦点距離の異なる複数のものを用い、これら複数のカメラ6により法面1を高さ方向に分割撮影し、カメラ6毎の撮影距離の違いを上述の焦点距離の違いによりカバーして地上解像度をほぼ均一にすることから、斜面長が長い場合であっても、その全長に渡って外観形状および位置を極めて精密に計測することができる。
【0011】
したがって本願発明によれば、例えば河川堤防の天端2に設けられた道路にモービルマッピング計測用の車両5を走行させ、焦点距離の異なる複数のカメラ6により法面1全体をほぼ均一の地上解像度によって撮影しておき、これにより得られたデータを通じて法面1の外観を観察することから、法面1が広大である場合にも、その点検を少ない人手と時間で極めて容易にすることができる。また、このように時間を要しないことにより、天候に配慮した点検の融通性を非常に高めることができるし、法面1の除草処理後の迅速な点検にも対応することができる。
【0012】
上述した位置情報は、緯度や経度、標高値を用いる以外にも、例えば河川等に沿った法面1であれば距離標の示す距離により特定することが可能であり、また、斜面長の方向に関しては、全斜面長における割合をもってして特定することが可能である。一方、モービルマッピングに際しては、計測用の車両5を天端2あるいは法尻3側方の平坦面4において走行させることにより、法面1を全斜面長に渡って一括してカメラ6に収めることが可能になる。
【0013】
この場合において、天端2から撮影したときには、法尻3側からでは撮影が難しい天端2、正確には天端2の法肩8寄りの部分を撮影範囲に含めることが可能になる。また、このように天端2の法肩8寄りの部分や、あるいは法尻3側方の平坦面4における法尻3寄りの部分をそれぞれ所定の範囲Sに渡って撮影範囲に含めるようにしておけば、法肩8や法尻3の位置を特定しやすくなるために、上述のように全斜面長における割合を利用して斜面長方向の位置特定をしやすくなるし、写真測量の際の標定にも役立てることができる。
【0014】
以上の法面点検方法は、
焦点距離の異なる複数のカメラ6と、
車両5に搭載されて前記カメラ6の各々を車両5一側縁部上方における車両進行方向Dに対して直交する面内において当該一側縁部側の一側方に向けて、かつ、仰俯角方向に撮影範囲を連続させて角度調整自在に支持する架台9とを有する法面撮影装置10を利用して実現することが可能である。
【0015】
この法面1撮影装置において、カメラ6は、架台9によって車両5の撮影方向側の一側縁部の上方に支持され、これにより撮影時におけるモービルマッピング計測用の車両5自体、あるいはこの車両5に搭載される機材などの写り込みを低減することができる。したがって例えば、上述のように天端2を走行する車両5から、その一側方近傍の法肩8周辺を含めた法面1全体、さらには法尻3周辺をも含めて、これら全体をほぼ均一の地上解像度で精密に撮影することができる。
【0016】
また、以上の法面撮影装置10を車両5に搭載した際に、架台9を車幅方向にスライド移動自在にすれば、非計測時における車幅方向のバランスを良好にすることができる。なお、車両5は、自走可能な自動車以外にも、例えば自転車や、牽引可能に形成されたものでも足りる。
【発明の効果】
【0017】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、法面の点検効率を高めることができ、法面の安全性向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る法面点検方法のフローチャートである。
【
図2】モービルマッピング作業を説明する図で、(a)は車両の背面方向から示した図、(b)は平面図、(c)は車両の走行に伴う撮影範囲の推移を説明する図である。
【
図3】法面撮影装置10を搭載した車両を説明する図で、(a)は撮影時の要部背面図、(b)は非撮影時を示す背面図である。
【
図4】他の実施の形態におけるモービルマッピング作業を説明する図で、車両の背面方向から示した図である。
【
図5】他の実施の形態における法面撮影装置10を搭載した車両を説明する図で、撮影時の要部背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1ないし
図3に本発明の実施の形態を示す。この実施の形態は
図2(a)および(b)に示すように、河川堤防の一種である土堤を点検対象としたものであり、具体的には、土堤の川表の法面1にモグラの穴が存在していないかを点検する。この土堤は、川表に法面1をおよそ1/2勾配で形成したもので、その斜面長は数十メートルに及び、また、天端2の中央部には舗装道路20が設けられるとともに、法尻3の側方には適宜の広さの高水敷(平坦面4)が形成される。以上の土堤における点検対象距離範囲は、河川21に沿って数キロメートルに及ぶ。
【0020】
図1に示すように、点検作業は先ず最初に、法面1を除草することから始められる(ステップS-1)。この除草の際には、必要に応じて、写真測量の際の標定に利用するための基準点が天端2の法肩8近傍等の適宜場所に設置される。
【0021】
以上の除草処理によって外見からモグラの穴を見付けやすい状態が整ったら、続いてモービルマッピング作業がなされる(ステップS-2)。モービルマッピング計測用の車両5には、
図3(a)に示すように、写真測量用のカメラ6、および位置計測手段7としてのGNSS(Global Navigation Satellite System)が搭載されるとともに、カメラ6の撮影姿勢を計測するために図外のIMU(Inertial Measurement Unit)も搭載される。この車両5には、図示省略されるが以上に加えて、位置計測手段7として上述したGNSS7を補助するためのオドメータや、レーザ測距装置、さらには上述した写真測量用ではなく観察用のカメラも搭載される。
【0022】
上記写真測量用のカメラ6は、解像度の非常に高いもの、具体的にはこの実施の形態においてはピクセルサイズが5Mpixelのカラー撮影可能なものが用いられ、また、フレームレートが15FPSのものが用いられる。この写真測量用のカメラ6は、
図3(a)に示すように、3台で構成され、各カメラ6のレンズにはそれぞれ焦点距離の異なる単焦点レンズ、具体的にはこの実施の形態においては画角や被写界深度に配慮して8.5mm、12mm、16mmのものが使用される。なお、
図3において7aはGNSS7の受信機であり、車両5上面側の離れた位置に2台設置される。
【0023】
以上の写真測量用のカメラ6は、
図3(a)に示すように、車両5に搭載される架台9により支持され、この架台9とともに法面撮影装置10を構成する。上記架台9は、例えば適宜の金属等により形成され、上述した3台のカメラ6の全てを車両5の一側方に向くように支持する。また、上記架台9は、上述した一側方側の車両5一側縁部上方における、車両進行方向Dに対して直交する面内において、撮影範囲が仰俯角方向に連続するように各カメラ6を支持する。具体的には、
図2(b)および
図3(a)に示すように、車両5の一側縁部上方において各カメラ6を上下方向に並べ、撮影範囲が仰俯角方向に連続するように各カメラ6を適宜の異なる仰俯角に支持する。なお、
図2(b)において二点鎖線は各カメラ6の単一撮影画像における撮影領域22A、22B、22C(撮影範囲)を、
図3(a)において二点鎖線の矢印は各カメラ6の光軸を示す。
【0024】
また、以上の架台9による各カメラ6の支持角度は調整自在であり、この実施の形態においては
図2(a)に撮影領域(撮影範囲)を二点鎖線で示すように、車両5一側方近傍から、高水敷の法尻3から適宜の距離を離れた位置までの間が全て撮影領域となるように予め調整される。これにより
図2(b)に示すように、天端2の法肩8近傍、および高水敷の法尻3近傍のそれぞれにおける所定の範囲Sが撮影される。さらに、
図2(b)に示すように、仰俯角方向に隣接配置されるカメラ6の撮影範囲同士は、仰俯角方向に適宜の割合で重複するように設定される。なお、以上の架台9によるカメラ6の支持角度の変更に際しては、上述のように撮影領域が仰俯角方向に連続する関係を維持して3台同時に一括してできるようにすることが可能である。
【0025】
さらにまた、この実施の形態において架台9は、上述した3台のカメラ6のそれぞれの光軸が一点で交差するように各カメラ6を適宜の異なる仰俯角に支持する。具体的には、
図3(a)に示すように、各カメラ6は、光軸の交差点を中心とする曲率線上に支持され、3台のカメラ6の中で最も高い位置にあるカメラ6が最も大きい仰俯角にされて架台9から最も近い場所を撮影し、反対に最も低い位置にあるカメラ6が最も小さい仰俯角にされて架台9から最も遠い場所を撮影する。残余の中間のカメラ6は、これら2台の仰俯角の中間程度の角度にされ、2台の撮影場所の中間を撮影する。
【0026】
さらに、以上の架台9、すなわち上述の法面撮影装置10は、
図3(a)において実線の矢印で示すように、車両5に形成される架台支持部11により車幅方向にスライド移動自在に支持される。この架台支持部11は、
図3(a)に示すように、車幅方向に相対移動自在に積層状に連結される2枚の支持板部23を有し、上述した架台9は、上側の支持板部23の上面に固定される。両支持板部23は、例えば図外のモータ等により相対移動可能にすることが可能である。なお、架台9の移動範囲は、車幅方向の中央から、上述した車両5の一側方側まで、より正確には一側方側の車両5の側縁よりも車幅方向に飛び出さない程度までの範囲にされる。
【0027】
加えて上記架台支持部11は、同じく
図3(a)において実線の矢印で示すように、架台9を上下動自在にも支持する。架台支持部11の車高方向への駆動は、例えば図外の油圧シリンダにより実現することが可能である。なお、架台9の上下動可能な範囲は、この実施の形態においては車両5内部から地上高3.6m程度の高さまでの範囲にされる。また、
図3において24はリンク機構である。
【0028】
したがって写真測量用のカメラ6は、架台支持部11により架台9が移動されることによって、
図3(b)に示す車両5内部への収納位置から、上述のように撮影方向側の車両5一側縁部上方である撮影位置へと移動することができ、これにより撮影画像におけるケラレが少なくされる。なお、図示省略されるが、車両5のルーフには、写真測量用カメラ6が撮影位置をとるときには開放され、
図3(b)に示すように上述した写真測量用カメラ6を含む架台9自体を車両5内部への収納位置に移動させたときには閉塞される適宜のドアを備えた開口部が設けられる。また、
図3(b)において25は車輪である。
【0029】
したがって上述したモービルマッピング作業は、
図2(a)に示すように、写真測量用のカメラ6を撮影位置に配置した車両5を天端2の舗装道路20に適宜低速走行させ、点検対象距離範囲の全域に渡って法面1、および天端2・高水敷4の一部を連続撮影してなされ、また、各撮影タイミングにおけるカメラ6の位置や姿勢をGNSS7、IMUにより逐次記録してなされる。また、上記連続撮影の際には、
図2(c)に示すように、前後の撮影タイミングの撮影領域22、22'(撮影範囲)が走行方向に適宜の割合でオーバーラップするようにされ、さらに、3台のカメラ6のシャッタースピードは光量に配慮してやや異なるものにされる。なお、舗装道路20に不測の起伏があり、これによって車両5が撮影時に上下動してしまったような場合にも、上述のように天端2や高水敷4の一部を含めるように撮影範囲を設定しているために、法面1が斜面長方向に全域に渡って撮影されないような事態が防止できる。
【0030】
以上のようにしてモービルマッピング作業を終えたら、
図1に示すように、取得した撮影画像等を利用した写真測量によって法面1の3次元計測データが作成される(ステップS-3)。3次元計測データは、GNSS7等により記録されたカメラ6の撮影位置や撮影姿勢を利用し、連続撮影された撮影画像同士をステレオマッチングして、具体的にはコンピュータや図化機を用いて得ることができる。また、このステレオマッチングの際には、上述のGNSS7等に基づくカメラ6の撮影位置や撮影姿勢に対し、車両5におけるカメラ6の設置位置や設置角度を加味して最終的な撮影位置や撮影姿勢が特定され、さらに、上述のように除草処理時に設置した基準点や、レーザ測距装置による取得データ、さらには撮影画像に河川21の距離標が映っている場合にはその位置情報が必要に応じて利用される。
【0031】
加えて、以上のようにして作成される3次元計測データは、GNSS7により特定される経緯度による位置情報をから、河川21の距離標に基づく距離による位置情報に変換される。この変換は、経緯度座標系を川の流れの方向に沿った1次元座標系に変換すれば足り、川の流れの方向は例えば法肩8等を基準にして決定すれば足りる。
【0032】
さらにまた、上記3次元計測データは、コンピュータを利用した3次元モデリングにより数値地形モデルのような3Dモデルにされ、その法面1の領域には、川幅方向、すなわち上述の座標系の座標軸に直交する方向における位置をの目安となるメッシュが設定される。このようなメッシュとしては例えばマップドメッシュを利用することができ、そのサイズは、例えば法面1の斜面長の1/10等にすることが可能である。なお、上述の法面1領域は、オペレータによる指示に基づいて決定することが可能である。
【0033】
以上のようにして3次元計測データが完成したら、続いて変状の有無がチェックされる(ステップS-4)。このチェックは、例えば、輪郭抽出(エッジ検出)やパターンマッチングを利用して、モグラの穴の仮想直径サイズに近似するサイズの輪郭部分が存在しないかを探索したり、あるいは、標高段彩図を生成してこれをオペレータに目視させたり、さらには、上述した3Dモデル自体を目視させても足りる。
【0034】
以上のチェックにより変状が見付かったら、最後に、変状箇所の状態および位置を記録する(ステップS-5)。変状箇所の状態の記録は、変状箇所を3Dモデルから部分的に切り出して行うことが可能である。また、その位置の記録は、変状箇所の3次元計測データにおける位置情報に基づいてすれば足りる。例えば上述の3Dモデルから変状箇所を含む距離座標の周辺部分を切り出せば、その状態、距離座標、および上述のマップドメッシュによる斜面長方向の目安位置を得ることができる。
【0035】
図4および
図5に本発明の他の実施の形態を示す。なお、この実施の形態において上述した実施の形態と同一の要素は図中に同一の符号を付して説明を省略する。この実施の形態において、点検対象である土堤の法面1には、
図4に示すように小段26が形成されるとともに、全面に渡ってコンクリート27が打設される。また、点検は、このコンクリートに亀裂が存在していないかについてなされる。
【0036】
さらに、この実施の形態において、架台9は、
図5に示すように、3台のカメラ6のそれぞれの光軸が交差しないように各カメラ6を適宜の異なる仰俯角に支持する。具体的には、3台のカメラ6の中で最も高い位置にあるカメラ6が最も小さい仰俯角にされて架台9から最も遠い場所を撮影し、反対に最も低い位置にあるカメラ6が最も大きい仰俯角にされて架台9から最も近い場所を撮影する。残余の中間のカメラ6は、これら2台の中間程度の仰俯角にされ、2台のカメラ6の撮影範囲の双方に適宜の割合で仰俯角方向に重複する撮影範囲に設定される。なお、3台のカメラ6の仰俯角は、法面1の勾配や架台9におけるカメラ6の支持位置などに応じて決定することができ、例えばこの実施の形態においては3台のカメラ6全てが同一の仰俯角、言い換えれば光軸同士が平行となるように設定することも可能である。
【0037】
加えて、この実施の形態においては、3次元計測データの作成(ステップS-3)の際に、撮影画像同士がモザイク処理により結合されるとともに、このようにして得られた結合画像が、3次元計測データを利用して法面1(傾斜面)に正対する方向に投影変換処理される。
【0038】
変状のチェック(ステップS-4)は、例えば、上述のように投影変換処理した結合画像において、エッジ検出により明るさが鋭敏に変化する箇所が存在しないか探索したり、あるいは、結合画像自体をオペレータに目視させても足りる。また、変状箇所の記録(ステップS-5)には、結合画像から変状箇所を含む距離座標の周辺部分を切り出してすることが可能である。
【0039】
なお、以上においてはモグラの穴や亀裂が法面1にないかを点検したが、例えば変状のチェックの際に3Dモデルに基づいて法面1の平滑度を確認し、はらみ出しや崩壊を点検するなど、他の点検を含めてすることも可能である。また、以上においては土堤の川表の法面1を点検対象にする場合を示したが、川裏側の法面1や、あるいは海岸、道路などに設けられる法面1を対象にすることも可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 法面
2 天端
3 法尻
4 平坦面
5 車両
6 カメラ
7 位置計測手段
8 法肩
9 架台
10 法面撮影装置
11 架台支持部
D 車両進行方向
S 所定の範囲