特許第6498492号(P6498492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498492
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】保持具およびそれを用いた滅菌方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/00 20060101AFI20190401BHJP
   A61J 1/06 20060101ALI20190401BHJP
   A61L 2/04 20060101ALI20190401BHJP
   A61L 2/26 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   A61M5/00 514
   A61J1/06 M
   A61L2/04
   A61L2/26
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-67494(P2015-67494)
(22)【出願日】2015年3月27日
(65)【公開番号】特開2016-185278(P2016-185278A)
(43)【公開日】2016年10月27日
【審査請求日】2018年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】東野 庸平
【審査官】 芝井 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−514633(JP,A)
【文献】 特許第5382663(JP,B2)
【文献】 特表2014−505542(JP,A)
【文献】 特開2012−100927(JP,A)
【文献】 特開2012−071046(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0161225(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00
A61J 1/06
A61L 2/04
A61L 2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状で、互いに対向する2つの第1辺部と、互いに対向する2つの第2辺部と、前記2つの第1辺部と前記2つの第2辺部とを連結する4つの隅部とを有する矩形状の本体部と、前記本体部の上面から突出して形成されかつ前記2つの第1辺部及び前記2つの第2辺部よりも内側に配置された多数の筒状部とを有し、前記筒状部に医療器具を保持する保持具であって、
前記本体部が、前記2つの第2辺部のそれぞれに前記本体部の上面から突出して形成された第1外周リブと、前記第1外周リブに交差するように前記本体部の上面から突出して形成された第1補強リブとを有し、
前記本体部が、前記2つの第1辺部のそれぞれに前記本体部の上面から突出して形成された第2外周リブをさらに有し、
前記第1外周リブが、前記本体部の外縁の一部を形成する前記第2辺部の側端部と、前記第2辺部の前記側端部に最も近い位置に形成された前記筒状部との間に前記第2辺部の前記側端部に沿って形成され
前記第2外周リブが、前記本体部の外縁の一部を形成する前記第1辺部の側端部と、前記第1辺部の前記側端部に最も近い位置に形成された前記筒状部との間に前記第1辺部の前記側端部に沿って形成されたことを特徴とする保持具。
【請求項2】
前記筒状部は、軸方向に開口する上端開口部と下端開口部とを有することを特徴とする請求項1に記載の保持具。
【請求項3】
前記本体部が、前記第1外周リブと前記第2外周リブとを繋ぐように前記本体部の前記4つの隅部の上面から突出して形成された第3外周リブをさらに有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の保持具。
【請求項4】
前記本体部が、隣接する前記筒状部同士を繋ぐように前記本体部の上面から突出して形成された筒間リブをさらに有することを特徴とする請求項1から請求項3の少なくとも1項に記載の保持具。
【請求項5】
前記筒間リブは、前記2つの第1辺部の内縁近傍同士を、前記2つの第2辺部の長手方向に沿って直線的に繋ぐ第1筒間リブを有することを特徴とする請求項4に記載の保持具。
【請求項6】
前記筒状部に保持された医療器具を滅菌する際に、前記本体部の前記2つの第1辺部が前記2つの第1辺部の長手方向に沿って延在する滅菌ラックの載置台で支持され、かつ、前記本体部の前記2つの第2辺部が前記載置台で支持されないことを特徴とする請求項1から請求項5の少なくとも1項に記載の保持具。
【請求項7】
保持具に保持された医療器具を滅菌する滅菌法であって、
板状で、互いに対向する2つの第1辺部と、互いに対向する2つの第2辺部と、前記2つの第1辺部と前記2つの第2辺部とを連結する4つの隅部とを有する矩形状の本体部と、前記本体部の上面から突出して形成されかつ前記2つの第1辺部よりも内側に配置される多数の筒状部と、前記2つの第2辺部のそれぞれに前記本体部の前記上面から突出し、かつ、前記本体部の外縁の一部を形成する前記第2辺部の側端部に沿って形成された第1外周リブと、前記2つの第1辺部のそれぞれに前記本体部の前記上面から突出し、かつ、前記本体部の外縁の一部を形成する前記第1辺部の側端部に沿って形成された第2外周リブをさらに有する保持具を準備する工程と、
前記保持具の前記筒状部に前記医療器具を保持する工程と、
前記医療器具を保持した前記保持具を、前記2つの第1辺部の長手方向に沿って延在する載置台を有する滅菌ラックに、前記2つの第1辺部が前記載置台に支持され、かつ、前記2つの第2辺部が前記載置台で支持されないように載置する工程と、
前記滅菌ラックに載置された保持具ごと前記医療器具に熱負荷のかかる滅菌を施す工程とを有することを特徴とする滅菌方法。
【請求項8】
前記筒状部が、前記2つの第2辺部よりも内側に配置され、
前記第1外周リブが、前記第2辺部の前記側端部と、前記第2辺部の前記側端部に最も近い位置に形成された前記筒状部との間に形成され
前記第2外周リブが、前記第1辺部の前記側端部と、前記第1辺部の前記側端部に最も近い位置に形成された前記筒状部との間に形成されており、
前記保持具が、前記第1外周リブに交差するように前記本体部の上面から突出して形成された第1補強リブをさらに有することを特徴とする請求項7に記載の滅菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具を保持する保持具およびそれを用いた滅菌方法に関する。特に、プレフィルドシリンジに用いられる滅菌後に薬液が充填されるプレフィルドシリンジ用外筒を保持する保持具およびそれを用いた滅菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、予め薬液が充填された医療用器具、例えばプレフィルドシリンジが多く利用されるようになってきた。プレフィルドシリンジの製造では、自らシリンジ用外筒を製造することなく、購入したシリンジ用外筒に薬液を充填することが一般的である。このため、シリンジ用外筒は、外筒製造メーカから搬送されるもので、搬送前に滅菌されていることが好ましく、未滅菌のものでも、薬液充填前に滅菌を行うことが必要となる。
【0003】
特許文献1には、シリンジ用外筒の搬送容器として、複数のシリンジ用外筒(特許文献1では注射筒)を搬送する際に、その全体をガス不透過性フィルムからなる袋に入れてガスにより滅菌を行い、その後、袋内部を減圧状態にした医療用容器が記載されている。そして、特許文献1では、この医療容器が、注射筒を保持するための円筒状の保持部が複数個設けられた板状で矩形状の保持具と、上面が開口して、その開口内部に保持具が入れ子(ネスト)として設置されたボックス状の容器本体とを有することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、シリンジ用外筒の輸送コンテナとして、複数のシリンジ用外筒(特許文献2では注射器本体)を保管するネストを収容する内部コンテナを有し、内部コンテナの内部に設けられたレール等のホルダにネストが収納された状態で滅菌輸送する再利用可能なコンテナが記載されている。そして、特許文献2では、このネストが、平らな構造(平面板)で矩形状のネスト本体と、ネスト本体に多数形成され注射器本体を収容する開口部とを有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5412275号公報
【特許文献2】特許第5382663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、プレフィルドシリンジの製造では、特許文献1または2に記載された搬送容器または輸送コンテナを使用せずに、未滅菌のシリンジ用外筒を特許文献1または2に記載のネストに収容した状態で滅菌を行い、次いで、滅菌されたシリンジ用外筒に無菌環境下で薬液を充填してプレフィルドシリンジとすることが検討されている。このようなプレフィルドシリンジの製造においては、滅菌の際に、滅菌時の熱、および、ネストに収容されるシリンジ用外筒の重量によって、板状のネストに変形が生じやすい。特に、矩形状のネストの一方の互いに対向する2つの辺部が滅菌ラックの載置台に支持され、他方の互いに対向する2つの辺部が支持されない状態で滅菌が施されると、載置台に支持されている2つの辺部からネストの中央に向かって下向きに板状のネストが湾曲する。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題を解決すべく創案されたもので、その課題は、保持具に医療器具を保持し、かつ、保持具が滅菌ラックの載置台に支持された状態で滅菌が施されても、変形が生じない保持具およびそれを用いた滅菌方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明に係る保持具は、板状で、互いに対向する2つの第1辺部と、互いに対向する2つの第2辺部と、前記2つの第1辺部と前記2つの第2辺部とを連結する4つの隅部とを有する矩形状の本体部と、前記本体部の上面から突出して形成されかつ前記2つの第1辺部及び前記2つの第2辺部よりも内側に配置された多数の筒状部とを有し、前記筒状部に医療器具を保持する保持具であって、前記本体部が、前記2つの第2辺部のそれぞれに前記本体部の上面から突出して形成された第1外周リブと、前記第1外周リブに交差するように前記本体部の上面から突出して形成された第1補強リブとを有し、前記本体部が、前記2つの第1辺部のそれぞれに前記本体部の上面から突出して形成された第2外周リブをさらに有し、前記第1外周リブが、前記本体部の外縁の一部を形成する前記第2辺部の側端部と、前記第2辺部の前記側端部に最も近い位置に形成された前記筒状部との間に前記第2辺部の前記側端部に沿って形成され、前記第2外周リブが、前記本体部の外縁の一部を形成する前記第1辺部の側端部と、前記第1辺部の前記側端部に最も近い位置に形成された前記筒状部との間に前記第1辺部の前記側端部に沿って形成されたことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る保持具は、前記筒状部が、軸方向に開口する上端開口部と下端開口部とを有することが好ましい。
【0010】
本発明に係る保持具は、前記本体部が、前記第1外周リブと前記第2外周リブとを繋ぐように前記4つの隅部の上面から突出して形成された第3外周リブをさらに有することが好ましい。
【0011】
本発明に係る保持具は、前記本体部が、隣接する前記筒状部同士を繋ぐように前記本体部の上面から突出して形成された筒間リブをさらに有することが好ましい。また、本発明に係る保持具は、前記筒間リブが、前記2つの第1辺部の内縁近傍同士を、前記2つの第2辺部の長手方向に沿って直線的に繋ぐ第1筒間リブを有することが好ましい。
【0012】
本発明に係る保持具は、前記筒状部に保持された医療器具を滅菌する際に、前記本体部の前記2つの第1辺部が前記2つの第1辺部の長手方向に沿って延在する滅菌ラックの載置台で支持され、かつ、前記本体部の前記2つの第2辺部が前記載置台で支持されないことが好ましい。
【0013】
本発明の保持具によれば、本体部が第1外周リブと、第1補強リブとを有することにより、滅菌の際に、筒状部に医療器具を保持し、本体部の2つの第1辺部が滅菌ラックの載置台で支持され、かつ、本体部の2つの第2辺部が載置台で支持されない状態で滅菌が施されても、保持具が2つの第1辺部から本体部の中央に向かって下向きに湾曲することが抑制される。また、本発明の保持具によれば、本体部が、第2外周リブ、第3外周リブおよび筒間リブの少なくとも1つをさらに有することにより、滅菌の際に、保持具が湾曲することがさらに抑制される。
【0014】
本発明に係る滅菌方法は、保持具に保持された前記医療器具を滅菌する滅菌法であって、板状で、互いに対向する2つの第1辺部と、互いに対向する2つの第2辺部と、前記2つの第1辺部と前記2つの第2辺部とを連結する4つの隅部とを有する矩形状の本体部と、前記本体部の上面から突出して形成されかつ前記2つの第1辺部よりも内側に配置される多数の筒状部と、前記2つの第2辺部のそれぞれに前記本体部の前記上面から突出し、かつ、前記本体部の外縁の一部を形成する前記第2辺部の側端部に沿って形成された第1外周リブと、前記2つの第1辺部のそれぞれに前記本体部の前記上面から突出し、かつ、前記本体部の外縁の一部を形成する前記第1辺部の側端部に沿って形成された第2外周リブをさらに有する保持具を準備する工程と、前記保持具の前記筒状部に前記医療器具を保持する工程と、前記医療器具を保持した前記保持具を、前記2つの第1辺部の長手方向に沿って延在する載置台を有する滅菌ラックに、前記2つの第1辺部が前記載置台に支持され、かつ、前記2つの第2辺部が前記載置台で支持されないように載置する工程と、前記滅菌ラックに載置された保持具ごと前記医療器具に熱負荷のかかる滅菌を施す工程とを有することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る滅菌方法は、前記筒状部が、前記2つの第2辺部よりも内側に配置され、前記第1外周リブが、前記第2辺部の前記側端部と、前記第2辺部の前記側端部に最も近い位置に形成された前記筒状部との間に形成され、前記第2外周リブが、前記第1辺部の前記側端部と、前記第1辺部の前記側端部に最も近い位置に形成された前記筒状部との間に形成されており、前記保持具が、前記第1外周リブに交差するように前記本体部の上面から突出して形成された第1補強リブをさらに有することが好ましい。
【0016】
本発明の滅菌方法によれば、第1外周リブと、第2外周リブとを有する保持具を用いることにより、滅菌の際に、保持具の筒状部に医療器具を保持し、保持具の本体部の2つの第1辺部を滅菌ラックの載置台で支持し、かつ、本体部の2つの第2辺部を載置台で支持しない状態で滅菌が施されても、保持部材が2つの第1辺部から本体部の中央に向かって下向きに湾曲することが抑制される。また、本発明の滅菌方法によれば、第1補強リブをさらに有する保持具を用いることにより、滅菌の際に、保持具が湾曲することがさらに抑制される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る保持具よれば、保持具に医療器具を保持し、かつ、保持具を滅菌ラックの載置台に支持した状態で滅菌が施されても、保持具に変形が生じない。
また、本発明に係る滅菌方法によれば、保持具に医療器具を保持し、かつ、保持具を滅菌ラックの載置台に支持した状態で滅菌が施されても、保持具に変形が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る保持具の上面側から見た平面図である。
図2図1の保持具の滅菌ラックの載置台に支持される第1辺部の側端部側から見た側面図である。
図3図1の保持具の滅菌ラックの載置台に支持されない第2辺部の側端部側から見た側面図である。
図4図1のA−A線断面図である。
図5図1のB−B線断面図である。
図6図1のC−C線断面図である。
図7】本発明に係る保持具が載置される滅菌ラックの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る保持具の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の保持具1は、本体部2と、筒状部3とを有し、滅菌の際には筒状部3に医療器具を保持する。
【0020】
ここで、医療器具とは、例えば、プレフィルドシリンジに用いられるシリンジ用外筒である。図2図3に示すように、シリンジ用外筒50は、筒状の外筒本体部51と、外筒本体部51の先端側に取り付けられたノズルキャップ52とからなり、外筒本体部51の基端側には径方向の外側に延出するフランジ部53が形成されている。そして、滅菌の際には、シリンジ用外筒50をノズルキャップ52側から筒状部3に差し入れて、筒状部3の上端部3bにフランジ部53を引っ掛けることで、筒状部3にシリンジ用外筒50が保持される(図5参照)。
【0021】
保持具1は、滅菌の際には、図7に示すような滅菌ラック100に載置される。そして、保持具1は、滅菌ラック100に載置される際には、本体部2の互いに対向する2つの第1辺部2A、2Bは滅菌ラック100の2つの第1辺部2A、2Bの長手方向に沿って延在する載置台101で支持されるが、本体部2の互いに対向する2つの第2辺部2C、2Dは載置台101で支持されない。なお、2つの第1辺部2A、2Bと第2辺部2C、2Dとを連結する4つの隅部2Fは、載置台101に支持されてもよく、支持されなくてもよい。また、載置台101には、切り欠き部102が設けられており、2つの第1辺部2A、2Bの一部は、この切り欠き部102上に位置する。このため、2つの第1辺部2A、2Bの一部は、載置台101で支持されない。なお、この切り欠き部102には、保持具1を載置台101から持ち上げるための保持具ハンド(図示せず)の支持部が挿入される。
【0022】
図1図6に示すように、本体部2は、第1外周リブ4と、第1補強リブ5とを有する。保持具1は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等の汎用オレフィン系樹脂や、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテルなどのエンジニアリングプラスチック等の合成樹脂からなり、成形等によって作製される。なお、医療器具を蒸気滅菌(オートクレーブ)により滅菌する場合、保持具1は、耐熱性を有する合成樹脂からなることが好ましく、特に、荷重たわみ温度が110〜130℃の合成樹脂からなることが好ましい。
【0023】
(本体部)
図1に示すように、本体部2は、互いに対向する2つの第1辺部2A、2Bと、互いに対向する2つの第2辺部2C、2Dと、2つの第1辺部2A、2Bと2つの第2辺部2C、2Dと連結する本体部の4つの隅部2Fとを有する矩形状の平板で構成される。また、2つの第1辺部2A、2Bは、本体部2の外縁の一部を形成する側端部2a、2bを有し、2つの第2辺部2C、2Dは、本体部2の外縁の一部を形成する側端部2c、2dを有する。ここで、矩形状は、正方形状、長方形状であるが、台形形状も含むものとする。また、2つの第2辺部2C、2Dの側端部2c、2dは、直線状に限定されず、曲線状であってもよい。なお、第1辺部2A、2B、第2辺部2C、2Dの幅は図1に記載された幅に限定されず、載置台によって適宜調整される。
【0024】
本体部2の大きさは、保持する医療器具によって種々の大きさのものが用いられ、特に限定されない。例えば、医療器具がプレフィルドシリンジに用いられるシリンジ用外筒の場合には、板長さが229〜231mm、板幅が197〜199mm、板厚が1.0〜3.0mm(好ましくは1.0〜2.0mm)の平板が用いられる。ここで、板長さは、第1辺部2A、2Bの長手方向(側端部2a、2b)に沿った本体部2の長さ、板幅は、第2辺部2C、2Dの長手方向(側端部2c、2d)に沿った本体部2の長さである。
【0025】
本体部2は、把持部2fおよび切欠部2gが形成されていてもよい。把持部2fは、保持具1を次工程(例えば、薬液充填工程)に搬出する際に、吸着ハンド(図示せず)等で把持される部分で、本体部の4つの隅部2Fの上面と、載置台101で支持される第1辺部2A、2Bの上面の一部に形成される。切欠部2gは、次工程(例えば、薬液充填工程)において、保持具1の位置合わせに用いられる部分で、載置台101で支持されない第2辺部2C、2Dの側端部2c、2dに形成される。
【0026】
(筒状部)
図1図5に示すように、筒状部3は、本体部2の上面2eから突出して形成された筒状体であって、本体部2の上面2eに所定の間隔、好ましくは等間隔をおいて多数形成される。また、筒状部3は、2つの第1辺部2A、2Bおよび2つの第2辺部2C、2Dよりも内側に配置されている。
【0027】
筒状部3は、軸方向に開口する開口部3aを有し、開口部3aに医療器具を収納することで、医療器具を保持している。具体的には、図2図3図5に示すように、医療器具がシリンジ用外筒50の場合には、筒状部3の上端部3bでシリンジ用外筒50のフランジ部53を保持している。なお、筒状部3は、2つの第1辺部2A、2Bよりも内側に配置されているため、2つの第1辺部2A、2Bが滅菌ラックの載置台101に支持された際に、筒状部3に保持されたシリンジ用外筒50が、載置台101と干渉しない。
【0028】
図1図4図5に示すように、筒状部3は、上端部3bから下端部3cに向かって、開口部3aの開口径が拡径するテーパ形状をとることが好ましい。開口部3aの平面視形状は、医療器具を保持できれば、特に限定されないが、円形状であることが好ましい。また、開口部3aの開口径も、医療器具を保持できる直径に設定され、例えば、医療器具がシリンジ用外筒50である場合には、シリンジ用外筒50の外径に対して1.0mm以上大きい開口径を設定するまた、筒状部3の本体部2からの突出高さも、医療器具を保持できる高さに設定され、医療器具がシリンジ用外筒50の場合には10〜25mmである。
【0029】
(第1外周リブ)
図1図3図6に示すように、第1外周リブ4は、2つの第2辺部2C、2Dのそれぞれに本体部2の上面2eから突出して形成された直立した板状体である。そして、第1外周リブ4は、本体部2の外縁の一部を形成する第2辺部2C、2Dの側端部2c、2dと、側端部2c、2dに最も近い位置に形成された筒状部3との間に、第2辺部2C、2Dの側端部2c、2dに沿って形成されている。なお、第1外周リブ4と側端部2c(2d)との距離は、特に限定されず、成形の際の製品(保持具1)の取り出し性を考慮して適宜設定する。
【0030】
図3に示すように、第1外周リブ4の突出高さは、筒状部3の突出高さと同じ、もしくは筒状部3の突出高さよりも低いことが好ましい。なお、第1外周リブ4の突出高さは、筒状部3の突出高さよりも1mm以上低い方が好ましい。これにより、筒状部3の上端部3bでシリンジ用外筒50のフランジ部53を保持する際に、第1外周リブ4がフランジ部53と干渉せず、フランジ部53を傷つけたり、フランジ部53と擦れて異物が発生したりすることがない。なお、第1外周リブ4の突出高さが筒状部3よりも高い場合、成形金型が壊れやすくなると共に、医療器具を筒状部3に挿入し難くなる。
【0031】
第1外周リブ4の幅は、特に限定されず2.0mm程度であるが、成形の際の製品(保持具1)の取り出しが容易になることから、下部側から上部側に向かって幅を減少させることが好ましい。なお、第1外周リブ4の最上部での幅が薄すぎると、第1外周リブ4の強度等が低下するため、0.5mm以上とすることが好ましい。
【0032】
前記のように、本体部2が第1外周リブ4を有することにより、本体部2の剛性が向上し、滅菌の際に本体部2が第1辺部2A、2Bから本体部2の中央に向かって下向きに湾曲することを抑制することが可能となる。
【0033】
(第1補強リブ)
図1図3図6に示すように、第1補強リブ5は、第1外周リブ4に交差するように本体部2の上面2eから突出して形成された直立した板状体である。図1に示すように、第1補強リブ5は、側端部2c、2dに最も近い位置に形成された筒状部3と結合していることが好ましい。図6に示すように、第1補強リブ5の側端部側は、成形の際の製品(保持具1)の取り出しが容易になる、すなわち、型抜きし易くするため、上部側を切り欠いて、下部側に傾斜する形態であることが好ましい。
【0034】
第1補強リブ5の突出高さおよび幅については、前記した第1外周リブ4と同様である。なお、図6に示すように、第1補強リブ5の突出高さは、第1外周リブ4よりも高く設計することが好ましい。
【0035】
前記のように、本体部2が第1補強リブ5を有することにより、第1外周リブ4の剛性が向上し、本体部2の剛性がさらに向上する。その結果、滅菌の際の本体部2の湾曲がさらに抑制される。
【0036】
図1に示すように、本発明の保持具1は、本体部2が、第1外周リブ4および第1補強リブ5に加えて、第2外周リブ6、第3外周リブ7および筒間リブ8の少なくとも1つをさらに有することが好ましい。
【0037】
(第2外周リブ)
図1図2に示すように、第2外周リブ6は、2つの第1辺部2A、2Bのそれぞれに本体部2の上面2eから突出して形成された直立した板状体である。そして、第2外周リブ6は、本体部2の外縁の一部を形成する2つの第1辺部2A、2Bの側端部2a、2bと、側端部2a、2bに最も近い位置に形成された筒状部3との間に第1辺部2A、2Bの側端部2a、2bに沿って形成されている。第2外周リブ6の突出高さおよび幅については、前記した第1外周リブ4と同様である。
【0038】
本体部2が第2外周リブ6を有することにより、本体部2の剛性が向上し、滅菌の際の本体部2の湾曲がさらに抑制される。また、本体部2は、第2外周リブ6と交差するように本体部2の上面から突出して形成された第2補強リブ9を有することが好ましい。これにより、第2外周リブ6の剛性が向上し、本体部2の剛性がさらに向上する。その結果、滅菌の際の本体部2の湾曲がさらに抑制される。第2補強リブ9は、直立した板状体であって、その突出高さおよび幅は、前記した第1補強リブ5と同様である。
【0039】
(第3外周リブ)
図1図2図3に示すように、第3外周リブ7は、第1外周リブ4と第2外周リブ6とを繋ぐように、4つの隅部2Fのそれぞれに本体部2の上面2eから突出して形成された直立した板状体である。そして、第3外周リブ7は、本体部2の4つの隅部2Fに設けられた把持部2fの内側近傍に形成される。
【0040】
第3外周リブ7の平面視形状は、第1外周リブ4と第2外周リブ6とを繋ぐ形状であれば、特に限定されないが、吸着ハンド(図示せず)による本体部2の把持作業の妨げにならないように、本体部2の中心に向かって湾曲した形状であることが好ましい。第3外周リブ7の突出高さおよび幅は、前記した第1外周リブ4と同様である。
【0041】
本体部2が第3外周リブ7を有することにより、第1外周リブ4と第2外周リブ6とが一体化されるため、第1外周リブ4の剛性が向上し、本体部2の剛性がさらに向上する。その結果、滅菌の際の本体部2の湾曲がさらに抑制される。
【0042】
(筒間リブ)
図1に示すように、筒間リブ8(81、82)は、隣接する筒状部3同士を繋ぐように本体部2の上面2eから突出して形成された直立した板状体である。筒間リブ8(81、82)の突出高さおよび幅は、前記した第1外周リブ4と同様である。なお、図2図3に示すように、筒間リブ8(81、82)の突出高さは、第1外周リブ4および第2外周リブ6よりも高く設計することが好ましい。
本体部2が筒間リブ8(81、82)を有することにより、本体部2の剛性がさらに向上し、滅菌の際の本体部2の湾曲がさらに抑制される。
【0043】
本体部2を平面視した際の筒間リブ8(81、82)の結合形態は、2つの第2辺部2C、2Dの長手方向(側端部2c、2dに平行な方向)に隣接する筒状部3同士を繋ぐ第1筒間リブ81と、2つの第2辺部2A、2Bの長手方向(側端部2a、2bに平行な方向)に隣接する筒状部3同士を繋ぐ第2筒間リブ82とが格子状に配置された形態が好ましい。また、第1筒間リブ81は、2つの第2辺部2A、2Bの内縁近傍同士を2つの第2辺部2C、2Dの長手方向(側端部2c、2dに平行な方向)に沿って直線的に繋ぐように形成されていることが好ましい(例えば図1の一番左及び一番右に位置する第1筒間リブ81)。また、筒間リブ8(81、82)は、成形の際の樹脂注入口に相当するゲート部10の近傍には形成しないことが好ましい。なお、平面視した際の結合形態は、斜め方向に隣接する筒状部3同士を繋ぐ筒間リブ8がハニカム形状に配置された形態であってもよい。
【0044】
保持具1の作製において、本体部2、筒状部3、第1外周リブ4、第1補強リブ5、第2外周リブ6、第2補強リブ9、第3外周リブ7および筒間リブ8(81、82)は、成形によって一体に作製されることが好ましい。これにより、本体部2の剛性を向上させる各リブの機能が確実に発揮され、滅菌の際の本体部2の湾曲が確実に抑制される。
【0045】
次に、本発明に係る滅菌方法について、説明する。
本発明の滅菌方法は、保持具に保持された医療器具を滅菌する滅菌法であって、図1に示すような板状で、互いに対向する2つの第1辺部2A、2Bと、互いに対向する2つの第2辺部2C、2Dと、2つの第1辺部2A、2Bと2つの第2辺部2C、2Dとを連結する4つの隅部2Fとを有する矩形状の本体部2と、本体部2の上面から突出して形成され、かつ2つの第1辺部2A、2Bよりも内側に配置される多数の筒状部3と、を有する保持具1を準備する工程と、保持具1の筒状部3に医療器具を保持する工程と、医療器具を保持した保持具1を、2つの第1辺部2A、2Bの長手方向に沿って延在する載置台101を有する滅菌ラック100(図7参照)に、2つの第1辺部2A、2Bが載置台101に支持され、かつ、2つの第2辺部2C、2Dが載置台101で支持されないように載置する工程と、滅菌ラック100に載置された保持具1ごと医療器具に熱負荷のかかる滅菌を施す工程とを有することを特徴とする。なお、本発明の滅菌方法における滅菌条件は、従来公知の条件を用いる。
【0046】
本発明の滅菌方法においては、以下に示す特徴を持った保持具1を使用することにより、滅菌の際の熱、および、保持具1に保持される医療器具の重量(荷重)、特に蒸気滅菌(オートクレーブ)の際の熱および荷重による保持具1(本体部2)の変形、具体的には、本体部2が2つの第1辺部2A、2Bから本体部2の中央に向かって下向きに湾曲することを抑制するものである。
【0047】
本発明の滅菌方法で用いられる保持具1は、2つの第2辺部2C、2Dのそれぞれに本体部2の上面2eから突出し、かつ、本体部2の外縁の一部を形成する第2辺部2C、2Dの側端部2c、2dに沿って形成された第1外周リブ4を有している。
【0048】
また、保持具1は、筒状部3が、2つの第2辺部2C、2Dよりも内側に配置され、 第1外周リブ4が、第2辺部2C、2Dの側端部2c、2dと、側端部2c、2dに最も近い位置に形成された筒状部3との間に形成されており、第1外周リブ4に交差するように本体部3の上面2eから突出して形成された第1補強リブ5をさらに有することが好ましい。
なお、第1外周リブ4は、2つの第2辺部2C、2Dの側端部2c、2dに形成された側壁部、すなわち、リブ側面が側端部2c、2dの端面と同一面となる壁部で構成されていてもよい。この場合、筒状部3は、2つの第2辺部2C、2Dに設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 保持具
2 本体部
2A、2B 第1辺部
2C、2D 第2辺部
2F 隅部
2a、2b、2c、2d 側端部
2e 上面
3 筒状部
4 第1外周リブ
5 第1補強リブ
6 第2外周リブ
7 第3外周リブ
8 筒間リブ
81 第1筒間リブ
82 第2筒間リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7