(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜
図9を用いて、本発明の実施形態に係るウェビング巻取装置について説明する。なお、図中に適宜示す矢印Z方向、矢印R方向及び矢印C方向は、スプールの軸方向、径方向及び周方向をそれぞれ示すものとする。また以下、単に軸方向、径方向、周方向を示す場合は、特に断りのない限り、スプールの軸方向、径方向、周方向を示すものとする。
【0016】
図1に示されるように、本発明の実施形態に係るウェビング巻取装置10は、フレーム12と、図示しないウェビングを巻取るスプール14と、第1フォースリミッタ機構16を構成するトーションシャフト18(
図2も参照)と、を備えている。また、ウェビング巻取装置10は、車両緊急時にスプール14を強制的に巻取方向へ回転させるプリテンショナ機構20と、フォースリミッタ荷重発生機構及びフォースリミッタ荷重調節機構を有する第2フォースリミッタ機構22と、を備えている。
【0017】
フレーム12は、矩形枠状に形成されていると共に、車体に固定される板状の背板12Aを備えている。また、背板12Aの幅方向両端部からは脚片12B,12Cが略直角に延出されており、この脚片12B,12Cにおける背板12Aとは反対側の端部は、接続板12Dによって繋がれている。
【0018】
スプール14は、略円柱状に形成されていると共に図示しないウェビングが巻取られる巻取部14Aを備えている。この巻取部14Aには、ウェビングが挿通される挿通孔14Bが形成されており、この挿通孔14Bは、径方向外側から見て軸方向を長手方向とする矩形状に形成されている。また、ウェビングが挿通孔14Bに挿通されて、当該ウェビングの長手方向の端部にストッパ部材が取付けられることで、当該ウェビングの長手方向の端部がスプール14に係止されている。また、スプール14が周方向他方側(矢印C方向とは反対方向)へ回転されることで、ウェビングがスプール14に巻取られると共に、ウェビングがスプール14から引出されることで、スプール14が周方向一方側(矢印C方向)へ回転される、すなわち、スプール14が引出方向へ回転されるようになっている。また、スプール14の軸方向他方側(矢印Z方向とは反対方向)の端部には、後述するプリテンショナ機構20の移動部材38が係合する係合歯部14Cが設けられている。
【0019】
図2に示されるように、スプール14の軸心部には、後述するトーションシャフト18が挿入されるトーションシャフト挿入孔14Dが形成されている。また、トーションシャフト挿入孔14Dの閉止端側には(軸方向他方側には)、トーションシャフト18の軸方向他方側の端部が係合する図示しない第1被係合部が形成されている。そして、トーションシャフト18の軸方向他方側の端部が当該第1被係合部に係合することで、トーションシャフト18の軸方向他方側の端部とスプール14とが一体回転可能に結合されるようになっている。
【0020】
スプール14の軸心部かつ当該スプール14の軸方向一方側の端部には、回転制限機構24の一部を構成する回転制限ナット26が格納される回転制限ナット格納孔14Eが形成されている。回転制限ナット格納孔14Eの内縁部は、軸方向一方側から見て回転制限ナット26の外縁部の形状に対応する六角形状に形成されている。これにより、回転制限ナット格納孔14Eに挿入された回転制限ナット26とスプール14とが一体に回転することが可能となっている。回転制限ナット格納孔14Eのスプール14の軸方向一方側の端から他方側への深さは、回転制限ナット26の厚みに比して深く設定されている。これにより、回転制限ナット26が、回転制限ナット格納孔14Eに沿って軸方向に移動することが可能となっている。
【0021】
図1に示されるように、スプール14の軸方向一方側の端部には、後述する巻付部48に係合する係合片28及び図示しない付勢部材が格納される格納孔14Fが形成されている。また、係合片28は、格納孔14F内に配置された状態でスプール14に傾動可能に支持されており、さらに係合片28は、付勢部材によって格納孔14Fから飛出す方向に付勢されている。そして、ウェビング巻取装置10が組立てられた状態では、係合片28は格納孔14F内にその全体が格納された状態となっていると共に、当該係合片28の傾動が図示しない傾動規制部材によって規制されている。また、スプール14が、後述するロックベース30に対して回転され始める際に、傾動規制部材による係合片28の傾動の規制が解除されて、係合片28が格納孔14Fから飛出すようになっている。また、格納孔14Fから飛出した係合片28が、巻付部48に係合することで、スプール14と巻付部48とが一体回転することが可能となっている。
【0022】
また、スプール14の軸方向一方側には、ロック機構の一部を構成するロック部としてのロックベース30及びロックギヤ32が設けられている。ロックベース30は、軸方向を厚み方向とする略円板状に形成されており、このロックベース30には、フレーム12の脚片12Cに設けられた図示しないラチェット歯に係合する第1被係合歯30Aが形成されている。また、ロックギヤ32は、ロックベース30に傾動可能に取付けられており、このロックギヤ32には、上記ラチェット歯に係合する第2被係合歯32Aが形成されている。そして、車両の緊急時に、フレーム12の脚片12Cに設けられた図示しないラチェット歯に、ロックベース30の第1被係合歯30A及びロックギヤ32の第2被係合歯32Aが係合することで、ロックベース30の回転が規制されるようになっている。
【0023】
図2に示されるように、ロックベース30の軸方向他方側には、当該ロックベース30と一体に形成されていると共に回転制限機構24の他の一部を構成する筒状部30Bが設けられている。この筒状部30Bは、略円筒状に形成されており、この筒状部30Bの外周部には、回転制限ナット26が螺合する雄螺子部30Cが形成されている。
【0024】
また、ロックベース30の軸心部には、後述するトーションシャフト18の軸方向一方側の端部が係合する図示しない第2被係合部が形成されている。そして、トーションシャフトの軸方向一方側の端部が第2被係合部に係合されることで、トーションシャフト18の軸方向一方側の端部とロックベース30とが一体回転可能に結合されるようになっている。
【0025】
トーションシャフト18は、略棒状に形成されており、このトーションシャフト18の軸方向一方側の端部及び他方側の端部には、ロックベース30に設けられた第2被係合部及びスプール14に設けられた第1被係合部にそれぞれ係合する図示しない第2係合部及び第1係合部が設けられている。また、トーションシャフト18における第2係合部と第1係合部との間の部位は、当該第2係合部及び第1係合部よりも小径とされていると共に、軸方向に沿って略一定の円形断面とされた捩れ部18Aとされている。そして、スプール14のロックベース30に対する引出方向への回転がトーションシャフト18を介して制限された状態において、ウェビングから乗員に作用される荷重が所定値を超えた際に、トーションシャフト18の捩れ部18Aが捩れて、スプール14のロックベース30に対する引出方向への回転が許容されるようになっている。
【0026】
図1に示されるように、プリテンショナ機構20は、ケース34に接続されたシリンダ36と、シリンダ36内に配置された複数の移動部材38と、移動部材38を押圧するピストン球40と、シリンダ36の一端部に取付けられたガスジェネレータ42と、を含んで構成されている。シリンダ36は、鋼管材が所定の形状に曲げられることによって形成されており、このシリンダ36には、略円柱状に形成された複数の移動部材38が挿入されている。また、シリンダ36におけるガスジェネレータ42よりも移動部材838側には、球状に形成されたピストン球40が挿入されている。そして、ガスジェネレータ42の作動により発生した高圧のガスによってシリンダ36内の圧力が上昇することで、ピストン球40が移動部材38を押圧する。これにより、複数の移動部材38がシリンダ36内を移動した後にスプール14に設けられた係合歯部14Cに係合すると共に当該係合歯部14Cを押圧する。これにより、スプール14が巻取方向へ回転されるようになっている。
【0027】
図3に示されるように、第2フォースリミッタ機構22は、フレーム12の脚片12C(
図1参照)に固定されるプリセット部としてのハウジング44と、ハウジング44の軸方向一方側の端部に取付けられるカバーシート46と、を備えている。また、第2フォースリミッタ機構22は、ハウジング44とカバーシート46との間に配置される巻付部48、エネルギ吸収部材としてのエネルギ吸収ワイヤ50、押圧部(第1押圧部)としてのワイヤガイド52、押圧部(第2押圧部)としてのレバー54、及び変位部材としてのカム56を備えている。
【0028】
ハウジング44は、軸方向一方側が開放された箱状に形成されており、このハウジング44は、フレーム12の脚片12C(
図1参照)と対向して延びる底壁44Aと、底壁44Aの外周端から軸方向一方側に向けて屈曲して延びる側壁44Bと、を備えている。底壁44Aには、スプール14(
図1参照)の軸方向一方側の端部が挿通される挿通孔44Cが形成されている。また、後述する巻付部48は、この挿通孔44Cの内周縁部に形成された段差部44Dに係合されることで回転可能に支持されている。また、底壁44Aにおいて挿通孔44Cが形成された部位の径方向外側には、後述するワイヤガイド52が取付けられるワイヤガイド取付部44Eが設けられており、このワイヤガイド取付部44Eには、円形の支持孔44Fが形成されている。側壁44Bの径方向内側の面は、後述する巻付部48と径方向に対向して配置されており、この側壁44Bの径方向内側の面の一部は、円筒面状に形成されたプリセット面44Gとされている。また、本実施形態では、プリセット面44Gと巻付部48との間に両者を隔てる壁が無い構成とされている。また、側壁44Bにおいて底壁44Aのワイヤガイド取付部44Eに対応する部位には、後述するレバー54を傾動可能に支持する凹状のレバー支持部44Hが形成されている。さらに、側壁44Bにおいて底壁44Aのワイヤガイド取付部44Eに対応する部位でかつレバー支持部44Hに隣接する部位には、後述するカム56が配置される凹状のカム配置部44Iが形成されている。なお、底壁44Aにおいてカム配置部44Iに対応する部位には、後述するカム56の軸方向他方側の端部を支持する図示しない軸支孔が形成されている。
【0029】
カバーシート46は、ハウジング44の側壁44Bの軸方向一方側の端部に取付けられており、このカバーシート46には、ハウジング44の底壁44Aに形成された挿通孔44Cに対応する挿通孔46Aが形成されている。また、カバーシート46においてハウジング44のワイヤガイド取付部44Eと軸方向に対向する部位には、円形の支持孔46Bが形成されており、さらにカバーシート46においてハウジング44のカム配置部44Iに対応する部位には、後述するカム56の軸部56Aが挿通される挿通孔46Cが形成されている。
【0030】
図2及び
図3に示されるように、巻付部48は、筒状に形成されており、この巻付部48は、スプール14と同軸上でかつ当該スプール14の軸方向一方側の端部の径方向外側に配置されている。また、巻付部48の内周部には、前述の係合片28が係合する複数の係合歯部48Aが周方向に沿って形成されている。さらに、巻付部48の外周部における軸方向他方側の端部には、径方向外側に向けて突出するフランジ部48Bが形成されている。また、巻付部48の外周面においてフランジ部48Bよりも軸方向一方側の部位は、後述するエネルギ吸収ワイヤ50が巻取られる巻取面48Cとされている。
【0031】
エネルギ吸収ワイヤ50は、鋼材等を用いて形成された線状の部材(針金状の部材)が巻回されることによって形成されている。具体的には、エネルギ吸収ワイヤ50は、線状の部材が軸方向に沿って周方向に環状に巻回されることによって形成された環状部50Aを備えている。また、前述のハウジング44のプリセット面44Gにセットされる前の自然状態の環状部50Aの外径は、当該プリセット面44Gの内径よりも大きな外径とされている。そして、環状部50Aが縮径された状態で、環状部50Aがプリセット面44Gの径方向内側に配置されて、当該環状部50Aの径方向外側の面がプリセット面44Gの径方向内側の面に当接することで、エネルギ吸収ワイヤ50がハウジング44に取付けられるようになっている。また、エネルギ吸収ワイヤ50の軸方向一方側の端部50Bは、環状部50Aの一部を構成している。
図4に示されるように、エネルギ吸収ワイヤ50の軸方向他方側の端部50Cは、環状部50Aの径方向内側を通じて当該環状部50Aの軸方向一方側に変位されている。そして、エネルギ吸収ワイヤ50の軸方向他方側の端部50Cが、巻付部48の軸方向一方側の端部に係止されている。これにより、
図8に示されるように、エネルギ吸収ワイヤ50において巻付部48に係止されている部位50Dと後述するワイヤガイド52とレバー54との間に挟持されている部位50Eとが巻付部48の軸方向にオフセットして配置されるようになっている。
【0032】
図3及び
図4に示されるように、ワイヤガイド52は、エネルギ吸収ワイヤ50よりも強度の低い材料を用いて形成されており、このワイヤガイド52は、軸方向視で径方向外側の面及び径方向内側の面が緩やかに湾曲された三日月状に形成されていると共に、軸方向に所定の厚みを有するブロック状に形成されている。また、ワイヤガイド52の軸方向他方側及び一方側には、ハウジング44に形成された支持孔44F及びカバーシート46に形成された支持孔46Bに挿入される円柱状の支持柱52A,52Bが設けられている。また、ワイヤガイド52の径方向内側の面は、ハウジング44に取付けられたエネルギ吸収ワイヤ50の環状部50Aが当接するセット面52Cとされている。このセット面52Cは、ワイヤガイド52がハウジング44のワイヤガイド取付部44Eに取付けられた状態において、プリセット面44Gの延長上に配置されるようになっている。なお、セット面52Cの曲率とプリセット面44Gの曲率とは略同一の曲率となるように設定されている。また、ワイヤガイド52の径方向外側の面は、エネルギ吸収ワイヤ50の軸方向他方側の端部50Cと環状部50Aから変位された部位との間の部位をガイドするガイド面52Dとされている。また、このガイド面52Dの周方向の中間部には、窪み部52Eが形成されている。これにより、ガイド面52Dには、複数の湾曲部が形成されている。
【0033】
レバー54は、ハウジング44に形成されたレバー支持部44H内に配置される軸部54Aと、軸部54Aからワイヤガイド52側に向けて延びる腕部54Bと、腕部54Bの先端に設けられた移動部54Cと、を有するブロック状に形成されている。具体的には、軸部54Aは、レバー支持部44Hの内周面の形状に対応する円柱状に形成されており、この軸部54Aがレバー支持部44H内に配置されることで、腕部54Bが傾動されるようになっている。また、腕部54Bが傾動されることで、当該腕部54Bの先端に設けられた移動部54Cがワイヤガイド52と近接する又は離間する方向へ移動するようになっている。移動部54Cは、ワイヤガイド52のガイド面52Dに形成された窪み部52Eと対向して配置されている。そして、移動部54Cがワイヤガイド52側へ向けて移動されることで、エネルギ吸収ワイヤ50が移動部54Cとワイヤガイド52との間に挟持されると共にワイヤガイド52のガイド面52Dに沿った形状に変形されるようになっている。
【0034】
カム56は、略円柱状に形成された軸部56Aと、軸部56Aの軸方向他端側に設けられていると共に回転されることでレバー54の移動部54Cを押圧するカム本体部56Bと、を備えている。
図4に示されるように、カム本体部56Bは、一部が切欠かれた円柱状に形成されており、これによりカム本体部56Bの外周部には、大径部56Cと、この大径部よりも曲率半径が小さく設定された小径部56Dと、大径部56Cと小径部56Dとを繋ぐ接続部56Eと、が設けられている。そして、カム本体部56Bの大径部56Cとレバー54の移動部54Cとが当接している状態では、レバー54の移動部54Cがワイヤガイド52のガイド面52Dと近接して配置されており、またカム本体部56Bの小径部56Dとレバー54の移動部54Cとが当接している状態では、レバー54の移動部54Cがワイヤガイド52のガイド面52Dと離間して配置されるようになっている。
【0035】
また、
図5に示されるように、上記カム56は、カム回動機構58を介して減速して回転されるようになっている。具体的には、カム回動機構58は、トーションシャフト18の軸方向一方側の端部に取付けられることでスプール14と一体回転可能とされたプライマリギヤ60と、カム56の軸方向一方側の端部に取付けられたファイナルギヤ62と、プライマリギヤ60の回転をファイナルギヤ62に伝達する第1中間ギヤ64及び第2中間ギヤ66と、を含んで構成されている。そして、ウェビングがスプール14に全量巻取られた状態から所定の長さまで引出される際には、カム本体部56Bの小径部56Dとレバー54の移動部54Cとが当接している。これにより、レバー54の移動部54Cがワイヤガイド52のガイド面52Dと離間して配置される。また、ウェビングがスプール14から上記所定の長さを超えて引出されると、カム本体部56Bの接続部56Eとレバー54の移動部54Cとが当接した後に、当該カム本体部56Bの大径部56Cとレバー54の移動部54Cとが当接するようになっている。これにより、レバー54の移動部54Cがワイヤガイド52のガイド面52Dに近接して配置されるようになっている。なお、本実施形態では、ウェビングが小柄な乗員に装着された際に、ウェビングがスプール14から上記所定の長さを超えずに引出されると共に、ウェビングが大柄な乗員に装着された際に、ウェビングがスプール14から上記所定の長さを超えて引出されるように設定されている。なお、小柄な乗員とは、AF05のダミーと同体型とされた乗員であり、大柄な乗員とは、AM50ダミーと同体型とされた乗員である。また、本実施形態では、上記カム回動機構58を構成するプライマリギヤ60、ファイナルギヤ62、第1中間ギヤ64及び第2中間ギヤ66は、フレーム12の脚片12Cに取付けられるギヤケース68に形成されたギヤ収容凹部68A内に配置されており、このギヤ収容凹部68Aは、ギヤカバー70により閉止されている。
【0036】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0037】
図1に示されるように、本実施形態では、図示しないウェビングがスプール14から引出されることで、ウェビングが車両の乗員の身体に装着される。
【0038】
また、ウェビングが車両の乗員の身体に装着された状態で、車両が衝突することにより、ロック機構が作動すると、ロックベース30の引出方向への回転が阻止される。その結果、このロックベース30にトーションシャフト18を介して連結されたスプール14の引出方向への回転が制限されて、スプール14からのウェビングの引出しが制限される。したがって、車両前方へ移動しようとする乗員の身体がウェビングによって拘束される。
【0039】
また、車両が衝突することにより、ガスジェネレータ42が作動されると、ピストン球40が複数の移動部材38を移動させる。また、移動された移動部材38が、スプール14に設けられた係合歯部14Cに係合すると共に当該係合歯部14Cを押圧すると、スプール14が巻取方向へ回転される。これにより、ウェビングがスプール14に所定の長さだけ巻取られ、乗員に装着されたウェビングの弛みが取除かれると共にウェビングによる乗員の拘束力が増加される。
【0040】
また、ロックベース30の引出方向への回転が規制された状態で、更に大きな力で乗員の身体がウェビングを引張り、この引張力に基づく引出方向へのスプール14の回転力がトーションシャフト18の捩れ部18A(
図2参照)の耐捩れ荷重(耐変形荷重)を上回ると、捩れ部18Aが捩れる(変形する)。すなわち、第1フォースリミッタ機構16が作動される。これにより、スプール14のフォースリミッタ荷重(捩れ部18Aの耐捩れ荷重)以上での引出方向への回転が許容される。したがって、捩れ部18Aの捩れによりスプール14の引出方向への回転が許容されて、ウェビングのスプール14からの引出しが許容されることで、ウェビングによる乗員の胸部への負荷(負担)が軽減される。また捩れ部18Aの捩れ分だけウェビングの引張りに供される乗員の運動エネルギが吸収される。
【0041】
さらに、本実施形態では、スプール14が回転制限ナット26(
図2参照)と共にロックベース30に対して引出方向へ回転し始めると、回転制限ナット26が筒状部30Bに沿って軸方向一方側に向けて移動する。そして、スプール14が回転制限ナット26と共にロックベース30に対して所定の回転数だけ回転されると、当該回転制限ナット26の軸方向一方側の端面がロックベース30に当接する。これにより、スプール14のロックベース30に対する回転数が所定の回転数に制限される。
【0042】
ところで、
図4及び
図6に示されるように、ウェビングが大柄な乗員に装着されていることにより、カム本体部56Bの大径部56Cとレバー54の移動部54Cとが当接している状態では、レバー54の移動部54Cがワイヤガイド52のガイド面52Dに近接して配置される。これにより、エネルギ吸収ワイヤ50が移動部54Cとワイヤガイド52との間に挟持されると共にワイヤガイド52のガイド面52Dに沿った略波線形状に変形される。
【0043】
また、スプール14がロックベース30に対して引出方向へ回転され始めると、すなわち、トーションシャフト18が捩れ始めると、
図1に示された係合片28が、スプール14の格納孔14Fから飛出して巻付部48の係合歯部48Aに係合する。これにより、スプール14と巻付部48とが一体回転する。さらに、巻付部48が回転されると、エネルギ吸収ワイヤ50が、移動部54Cとワイヤガイド52との間で変形されながら(3つの扱き部Tで扱かれながら)当該移動部54Cとワイヤガイド52との間から引出されて巻付部48に巻取られる。これにより、スプール14のフォースリミッタ荷重(トーションシャフト18の捩れ部18Aの耐捩れ荷重とエネルギ吸収ワイヤ50の扱き荷重との合計)以上での引出方向への回転が許容される。
【0044】
したがって、トーションシャフト18の捩れ部18Aが捩れると共にエネルギ吸収ワイヤ50が変形されながら移動部54Cとワイヤガイド52との間から引出されることで、ウェビングによる乗員の胸部への負荷(負担)が軽減されると共に、トーションシャフト18の捩れ部18Aが捩れ変形された分及びエネルギ吸収ワイヤ50が変形された分のウェビングの引張りに供される乗員の運動エネルギが吸収される。
【0045】
一方、
図7に示されるように、ウェビングが小柄な乗員に装着されていることにより、カム本体部56Bの小径部56Dとレバー54の移動部54Cとが当接している状態では、レバー54の移動部54Cがワイヤガイド52のガイド面52Dと離間して配置される。これにより、エネルギ吸収ワイヤ50が移動部54Cとワイヤガイド52との間で変形されない、或いは、ほとんど変形されない状態となる。そのため、スプール14が巻付部48と共に引出方向へ回転されると、エネルギ吸収ワイヤ50は移動部54Cとワイヤガイド52との間で変形されない(或いはほとんど変形されない)で巻付部48に巻取られる。これにより、スプール14のフォースリミッタ荷重(トーションシャフト18の捩れ部18Aの耐捩れ荷重)以上での引出方向への回転が許容される。
【0046】
以上説明したように、本実施形態では、ウェビングが大柄な乗員に装着されている場合では、フォースリミッタ荷重の荷重値が高荷重値にされる。一方、ウェビングが小柄な乗員に装着されている場合では、フォースリミッタ荷重の荷重値が低荷重値にされる。このため、乗員を体格に応じて適切に保護することができる。
【0047】
ここで、本実施形態の第2フォースリミッタ機構22では、ウェビングのスプール14への残巻量に応じて、すなわち、ウェビングが装着される乗員の体格に応じて、エネルギ吸収ワイヤ50の変形量(エネルギ吸収ワイヤ50に作用する押圧力)が調節される。これにより、乗員の体格を検出するための体重センサ等を設けることなくフォースリミッタ荷重を調節することができる。すなわち、本実施形態のウェビング巻取装置10によれば、構成部品の点数が増加することを抑制しつつフォースリミッタ荷重を調節することができる。
【0048】
また、本実施形態の第2フォースリミッタ機構22では、スプール14の回転がカム56に伝達されて当該カム56が回転されることで、エネルギ吸収ワイヤ50の変形量が調節される。これにより、レバー54の移動部54Cとワイヤガイド52のガイド面52Dとを近接させる又は離間させるための電気的なアクチュエータを設けなくても、第2フォースリミッタ機構22が生じさせるフォースリミッタ荷重を調節することができる。
【0049】
また、
図8に示されるように、本実施形態では、エネルギ吸収ワイヤ50において巻付部48に係止されている部位50Dとワイヤガイド52とレバー54との間に挟持されている部位50Eとが巻付部48の軸方向にオフセットして配置されている。そのため、巻付部48がスプール14と共に回転されると、
図9に示されるように、ワイヤガイド52とレバー54との間から引出されたエネルギ吸収ワイヤ50は、フランジ部48Bとクリアランスを有しながら巻付部48に螺旋状に巻取られる。これにより、巻付部48及びスプール14が一周を超えて回転される領域においても、エネルギ吸収ワイヤ50が径方向に重ならないように巻取ることができる。
【0050】
さらに、本実施形態では、エネルギ吸収ワイヤ50において巻付部48に係止されている部位50Dとワイヤガイド52とレバー54との間に挟持されている部位50Eとの間にテンションが生じると、ワイヤガイド52においてエネルギ吸収ワイヤ50が当接している部分が、当該エネルギ吸収ワイヤ50の形状に対応する凹状に変形する。すなわち、エネルギ吸収ワイヤ50がワイヤガイド52において凹状に変形した部分に嵌まり込むような状態となる。これにより、エネルギ吸収ワイヤ50においてワイヤガイド52とレバー54との間に挟持されている部位の巻付部48の軸方向への位置を保つことができる。なお、
図10に示されるように、エネルギ吸収ワイヤ50においてワイヤガイド52とレバー54との間に挟持されている部位の巻付部48の軸方向への位置を保つための規制部としての規制突起52Fをワイヤガイド52に設けることにより、エネルギ吸収ワイヤ50においてワイヤガイド52とレバー54との間に挟持されている部位の巻付部48の軸方向への位置を保つように構成することもできる。また、規制突起52Fが設けられている場合においても、ワイヤガイド52においてエネルギ吸収ワイヤ50が当接している部分が、当該エネルギ吸収ワイヤ50の形状に対応する凹状に変形するように構成してもよい。さらに、規制突起52Fに対応する規制部としての規制突起をレバー54側に設けてもよい。
【0051】
さらに、
図4に示されるように、本実施形態では、エネルギ吸収ワイヤ50の軸方向他方側の端部50Cが、環状部50Aの径方向内側を通じて当該環状部50Aの軸方向他方側に変位されていると共に、当該エネルギ吸収ワイヤ50の軸方向他方側の端部50Cが、巻付部48の軸方向一方側の端部に係止されている。そのため、エネルギ吸収ワイヤ50においてワイヤガイド52とレバー54との間に挟持されている部位50Eの軸方向一方側への移動が当該エネルギ吸収ワイヤ50の環状部50Aに当接することにより阻止される。これにより、エネルギ吸収ワイヤ50においてワイヤガイド52とレバー54との間に挟持されている部位50Eの軸方向一方側への移動を抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態では、第2フォースリミッタ機構22を構成するエネルギ吸収ワイヤ50、ハウジング44のプリセット面44G、巻付部48等を径方向に沿って配列することにより、フォースリミッタ荷重を発生させる機構の軸方向への大型化を抑制することができる。その結果、ウェビング巻取装置10の軸方向への大型化を抑制することができる。しかも、本実施形態では、第2フォースリミッタ機構22を有することにより、スプール14の軸心部に設けられたトーションシャフト18が発生させるフォースリミッタ荷重を小さく設定することが可能となる。これにより、トーションシャフト18の小型化(小径化及び軸短化)を図ることができる。
【0053】
さらに、本実施形態では、第2フォースリミッタ機構22を構成するエネルギ吸収ワイヤ50、ハウジング44及び巻付部48等の各構成部品が、回転制限機構24の径方向外側に配置されている。そのため、第2フォースリミッタ機構22を構成する各構成部品が回転制限機構24に対して軸方向にオフセットして配置されている場合に比して、ウェビング巻取装置10の軸方向への大型化を抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態では、エネルギ吸収ワイヤ50の環状部50Aの径方向外側の面がプリセット面44Gの径方向内側の面に当接することで、エネルギ吸収ワイヤ50がハウジング44に取付けられるようになっている。当該構成とすることにより、エネルギ吸収ワイヤ50の環状部50Aと巻付部48とを隔てるための壁が不要になる。これにより、ウェビング巻取装置10の軸方向への大型化をより一層抑制することができる。また、エネルギ吸収ワイヤ50の環状部50Aと巻付部48とを隔てるための壁を有する構成では、エネルギ吸収ワイヤ50において環状部50Aから引出された部分が当該壁に巻付くことが考えられる。しかしながら、本実施形態では、このような不要な巻付き荷重が生じることを抑制することができる。
【0055】
さらに、本実施形態では、第2フォースリミッタ機構22を構成するエネルギ吸収ワイヤ50がスプール14と共に回転されない構成とされている。これにより、スプール14からウェビングを引出す際のフィーリングを良好にする(軽くする)ことができると共に、ウェビングをスプール14にスムーズに巻取らせることができる。
【0056】
なお、本実施形態では、カム56のカム本体部56Bに大径部56C及び小径部56Dを設けることによって、エネルギ吸収ワイヤ50の変形量を調節した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図11に示されるように、カム本体部56Bの外周面の曲率半径を当該カム本体部56Bの周方向に沿って徐々に大きくなるように設定することもできる。当該構成では、ウェビングのスプール14への残巻量が少なくなるにつれてエネルギ吸収ワイヤ50の変形量を無段階で大きくすることができる。また、カム本体部56の外周面に大径部56Cと小径部56Dとの間の曲率半径とされた部位を設けることによって、エネルギ吸収ワイヤ50の変形量を3段階を超える多段階で大きくしてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、カム56の移動部54Cをワイヤガイド52側に向けて移動させることで、エネルギ吸収ワイヤ50の変形量を調節した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ワイヤガイド52をカム56側に向けて移動させることで、エネルギ吸収ワイヤ50の変形量を調節してもよいし、ワイヤガイド52及びカム56の両方を移動させることで、エネルギ吸収ワイヤ50の変形量を調節してもよい。
【0058】
また、本実施形態では、第1フォースリミッタ機構16及び第2フォースリミッタ機構22を備えたウェビング巻取装置10について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2フォースリミッタ機構22と同様のフォースリミッタ機構のみを備えたウェビング巻取装置としてもよい。
【0059】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。