(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
測距光を発光する光源部と、該光源部からの測距光を測距光軸上へ照射する投光光学部と、測定対象物からの反射光を受光する受光光学部と、該受光光学部で集光された前記反射光を電気信号へと変換する受光素子と、托架部に設けられ前記測定対象物に対して測距光を走査する走査部と、該走査部により走査される測距光の照射方向を検出する角度検出部と、前記托架部の振動量を検出する振動検出部と、閾値が格納された記憶部を有する制御演算部とを具備し、該制御演算部は、前記走査部の回転数が低回転数から最大回転数迄漸次増大する様制御し、回転数と検出された振動量と関連付けて前記記憶部に格納し、測定条件に基づき演算された回転数に対応する振動量と、前記閾値とを比較し、前記演算された回転数に対応する振動量が前記閾値よりも小さいと判断すると、前記測定対象物の測定を実行することを特徴とする3次元測量装置。
前記制御演算部は、前記演算された回転数に対応する振動量が前記閾値よりも大きいと判断すると、前記演算された回転数とは異なる回転数で測定を実行する請求項1の3次元測量装置。
前記制御演算部は、前記演算された回転数に対応する振動量が前記閾値よりも大きいと判断すると、設置条件の変更を促すアラームを通知する請求項1の3次元測量装置。
前記振動検出部が前記測定対象物の測定中に振動を検出すると、前記制御演算部は検出された振動量と前記閾値とを比較し、前記検出された振動量が前記閾値よりも小さいと判断すると、前記測定対象物の測定を継続させる請求項1の3次元測量装置。
前記制御演算部は、前記検出された振動量が前記閾値よりも大きいと判断すると、更に前記検出された振動量が継続して発生していると判断すると、前記走査部の回転を停止させ、前記演算された回転数とは異なる回転数となる様前記走査部の回転数を再度演算し、前記検出された振動量が一時的に発生した場合は、前記閾値を越えた状態で取得した測定値を削除し、測定を継続させる請求項4の3次元測量装置。
所定の測定条件に基づき測定対象物の測定を行う3次元測量方法であって、托架部に設けられた走査部の回転数を低回転数から最大回転数迄漸次増大させる工程と、該走査部の回転数とその時の前記托架部の振動量を関連付けて記憶部に格納する工程と、測定条件に基づき前記走査部の回転数を演算する工程と、演算された回転数に対応する振動量を予め設定された閾値と比較する工程と、該閾値よりも小さいと判断されると前記測定対象物の測定処理を行い、前記閾値よりも大きいと判断されると前記演算された回転数とは異なる回転数となる様前記走査部の回転数を再度演算する工程とを有することを特徴とする3次元測量方法。
前記測定対象物の測定処理を行う工程は、前記托架部の振動を検出すると、検出された振動量と前記閾値とを比較し、該閾値よりも小さいと判断されると前記測定対象物の測定処理を続行し、前記閾値よりも大きいと判断されると前記演算された回転数とは異なる回転数となる様前記走査部の回転数を再度演算する工程を有する請求項6の3次元測量方法。
走査部を回転して測距光を回転照射し、点群データを取得する3次元測量方法であって、振動量に対する閾値を設定し、測定を実行して振動量が前記閾値を越えた場合は、前記走査部の回転数を変更することを特徴とする3次元測量方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は斯かる実情に鑑み、振動の影響を抑制し、高精度な測定が可能な3次元測量装置及び3次元測量方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、測距光を発光する光源部と、該光源部からの測距光を測距光軸上へ照射する投光光学部と、測定対象物からの反射光を受光する受光光学部と、該受光光学部で集光された前記反射光を電気信号へと変換する受光素子と、托架部に設けられ前記測定対象物に対して測距光を走査する走査部と、該走査部により走査される測距光の照射方向を検出する角度検出部と、前記托架部の振動量を検出する振動検出部と、閾値が格納された記憶部を有する制御演算部とを具備し、該制御演算部は、前記走査部の回転数が低回転数から最大回転数迄漸次増大する様制御し、回転数と検出された振動量と関連付けて前記記憶部に格納し、測定条件に基づき演算された回転数に対応する振動量と、前記閾値とを比較し、前記演算された回転数が前記閾値よりも小さいと判断すると、前記測定対象物の測定を実行する3次元測量装置に係るものである。
【0009】
又本発明は、前記制御演算部は、前記演算された回転数に対応する振動量が前記閾値よりも大きいと判断すると、前記演算された回転数とは異なる回転数で測定を実行する3次元測量装置に係るものである。
【0010】
又本発明は、前記制御演算部は、前記演算された回転数に対応する振動量が前記閾値よりも大きいと判断すると、設置条件の変更を促すアラームを通知する3次元測量装置に係るものである。
【0011】
又本発明は、前記振動検出部が前記測定対象物の測定中に振動を検出すると、前記制御演算部は検出された振動量と前記閾値とを比較し、前記検出された振動量が前記閾値よりも小さいと判断すると、前記測定対象物の測定を継続させる3次元測量装置に係るものである。
【0012】
又本発明は、前記制御演算部は、前記検出された振動量が前記閾値よりも大きいと判断すると、更に前記検出された振動量が継続して発生していると判断すると、前記走査部の回転を停止させ、前記演算された回転数とは異なる回転数となる様前記走査部の回転数を再度演算し、前記検出された振動量が一時的に発生した場合は、前記閾値を越えた状態で取得した測定値を削除し、測定を継続させる3次元測量装置に係るものである。
【0013】
又本発明は、所定の測定条件に基づき測定対象物の測定を行う3次元測量方法であって、托架部に設けられた走査部の回転数を低回転数から最大回転数迄漸次増大させる工程と、該走査部の回転数とその時の前記托架部の振動量を関連付けて記憶部に格納する工程と、測定条件に基づき前記走査部の回転数を演算する工程と、演算された回転数に対応する振動量を予め設定された閾値と比較する工程と、該閾値よりも小さいと判断されると前記測定対象物の測定処理を行い、前記閾値よりも大きいと判断されると前記演算された回転数とは異なる回転数となる様前記走査部の回転数を再度演算する工程とを有する3次元測量方法に係るものである。
【0014】
又本発明は、前記測定対象物の測定処理を行う工程は、前記托架部の振動を検出すると、検出された振動量と前記閾値とを比較し、該閾値よりも小さいと判断されると前記測定対象物の測定処理を続行し、前記閾値よりも大きいと判断されると前記演算された回転数とは異なる回転数となる様前記走査部の回転数を再度演算する工程を有する3次元測量方法に係るものである。
【0015】
更に又本発明は、走査部を回転して測距光を回転照射し、点群データを取得する3次元測量方法であって、振動量に対する閾値を設定し、測定を実行して振動量が前記閾値を越えた場合は、前記走査部の回転数を変更する3次元測量方法に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、測距光を発光する光源部と、該光源部からの測距光を測距光軸上へ照射する投光光学部と、測定対象物からの反射光を受光する受光光学部と、該受光光学部で集光された前記反射光を電気信号へと変換する受光素子と、托架部に設けられ前記測定対象物に対して測距光を走査する走査部と、該走査部により走査される測距光の照射方向を検出する角度検出部と、前記托架部の振動量を検出する振動検出部と、閾値が格納された記憶部を有する制御演算部とを具備し、該制御演算部は、前記走査部の回転数が低回転数から最大回転数迄漸次増大する様制御し、回転数と検出された振動量と関連付けて前記記憶部に格納し、測定条件に基づき演算された回転数に対応する振動量と、前記閾値とを比較し、前記演算された回転数が前記閾値よりも小さいと判断すると、前記測定対象物の測定を実行するので、設置場所や設置状態等の設置条件に拘わらず、前記托架部に共振が生じる前記走査部の共振回転数を確実に検出することができる。
【0017】
又本発明によれば、前記制御演算部は、前記演算された回転数に対応する振動量が前記閾値よりも大きいと判断すると、前記演算された回転数とは異なる回転数で測定を実行するので、共振により托架部が大きく振動した状態で測定が行われることがなく、測定結果に対する共振による振動の影響を抑制でき、高精度に測定対象物の測定を行うことができる。
【0018】
又本発明によれば、前記制御演算部は、前記演算された回転数に対応する振動量が前記閾値よりも大きいと判断すると、設置条件の変更を促すアラームを通知するので、設置条件の変更により前記演算された回転数で測定対象物の測定を行うことができる。
【0019】
又本発明によれば、前記振動検出部が前記測定対象物の測定中に振動を検出すると、前記制御演算部は検出された振動量と前記閾値とを比較し、前記検出された振動量が前記閾値よりも小さいと判断すると、前記測定対象物の測定を継続させるので、該測定対象物の測定中に外部的要因により生じる振動を検出することができる。
【0020】
又本発明によれば、前記制御演算部は、前記検出された振動量が前記閾値よりも大きいと判断すると、更に前記検出された振動量が継続して発生していると判断すると、前記走査部の回転を停止させ、前記演算された回転数とは異なる回転数となる様前記走査部の回転数を再度演算し、前記検出された振動量が一時的に発生した場合は、前記閾値を越えた状態で取得した測定値を削除し、測定を継続させるので、托架部が閾値を超える振動量で振動した状態で測定が継続されるのを防止でき、測定結果に対する振動の影響が抑制され、高精度に測定対象物の測定を行うことができる。
【0021】
又本発明によれば、所定の測定条件に基づき測定対象物の測定を行う3次元測量方法であって、托架部に設けられた走査部の回転数を低回転数から最大回転数迄漸次増大させる工程と、該走査部の回転数とその時の前記托架部の振動量を関連付けて記憶部に格納する工程と、測定条件に基づき前記走査部の回転数を演算する工程と、演算された回転数に対応する振動量を予め設定された閾値と比較する工程と、該閾値よりも小さいと判断されると前記測定対象物の測定処理を行い、前記閾値よりも大きいと判断されると前記演算された回転数とは異なる回転数となる様前記走査部の回転数を再度演算する工程とを有するので、前記閾値を越える振動が生じた状態で前記測定対象物の測定が行われるのが防止され、測定結果に対する振動の影響を抑制でき、高精度に前記測定対象物の測定を行うことができる。
【0022】
又本発明によれば、前記測定対象物の測定処理を行う工程は、前記托架部の振動を検出すると、検出された振動量と前記閾値とを比較し、該閾値よりも小さいと判断されると前記測定対象物の測定処理を続行し、前記閾値よりも大きいと判断されると前記演算された回転数とは異なる回転数となる様前記走査部の回転数を再度演算する工程を有するので、測定処理中に振動が生じた場合であっても、前記閾値を越える振動が生じた状態で前記測定対象物の測定が行われるのが防止され、測定結果に対する振動の影響を抑制でき、高精度に前記測定対象物の測定を行うことができる。
【0023】
更に又本発明によれば、走査部を回転して測距光を回転照射し、点群データを取得する3次元測量方法であって、振動量に対する閾値を設定し、測定を実行して振動量が前記閾値を越えた場合は、前記走査部の回転数を変更するので、該走査部の回転数と振動量との関連付けが不要となり、処理を簡略化でき、作業時間の短縮を図ることができるという優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0026】
先ず、
図1に於いて、本実施例に係る3次元測量装置の一例である3次元レーザスキャナについて説明する。
【0027】
図1に示される様に、3次元レーザスキャナ1は、三脚(図示せず)に取付けられる整準部2と、該整準部2に設けられた基盤部3と、該基盤部3に水平回転部4を介して水平方向に回転可能に設けられた托架部5と、該托架部5に鉛直回転軸6を中心に鉛直方向(高低方向)に回転可能に設けられた走査ミラー7とを有している。
【0028】
前記整準部2は、例えば3つの調整螺子8を有し、前記托架部5に設けられた傾斜センサ(図示せず)が水平を検出する様前記調整螺子8を調整することで、前記整準部2の整準がなされる。
【0029】
前記水平回転部4は、前記基盤部3に軸受9を介して回転自在に、且つ鉛直に支持された水平回転軸11を有している。該水平回転軸11に前記托架部5が支持され、該托架部5が前記水平回転軸11と一体に回転する様になっている。
【0030】
前記水平回転部4には、水平駆動モータ12を含む水平駆動部13、前記水平回転軸11の回転角を検出する水平角検出器(例えばエンコーダ)14が収納されている。前記水平駆動モータ12によって前記水平回転軸11を中心に前記托架部5が回転され、前記水平回転軸11の前記基盤部3に対する回転角、即ち前記托架部5の回転角は前記水平角検出器14によって検出される様になっている。
【0031】
又、該水平角検出器14の検出結果(水平角)は、制御演算部15(後述)に入力され、検出結果に基づき該制御演算部15により前記水平駆動モータ12の駆動が制御される様になっている。
【0032】
前記托架部5の中央部に凹部16が形成され、該凹部16を挾み左右に室5a,5bが形成されている。一方の前記室5a(図示では左側の室)には、鉛直駆動部17、鉛直角検出器18が収納され、他方の前記室5b(図示では右側の室)には、測距発光部19、共通光路部21、測距部22、撮像部23等が収納されている。又、前記托架部5の内部の所要位置には、前記制御演算部15、振動検出部である加速度センサ24等が収納されている。更に、前記托架部5の所要部分には、表示部25、操作部26が設けられている。
【0033】
前記鉛直回転軸6は水平に延びる軸心を有し、前記托架部5に軸受27を介して回転自在に支持されている。前記鉛直回転軸6の一端部は前記凹部16に突出しており、前記鉛直回転軸6の突出端に前記走査ミラー7が前記鉛直回転軸6の軸心に対して45°傾いた状態で設けられている。前記走査ミラー7は、前記鉛直回転軸6によって前記凹部16内に支持され、前記鉛直回転軸6を中心に鉛直方向に回転自在となっている。
【0034】
前記鉛直駆動部17は鉛直駆動モータ28を有し、該鉛直駆動モータ28により前記鉛直回転軸6が回転される様になっている。前記鉛直駆動モータ28により、前記鉛直回転軸6を介して前記走査ミラー7が回転される。尚、前記鉛直回転軸6、前記走査ミラー7、前記鉛直駆動モータ28等により走査部29が構成される。
【0035】
前記鉛直回転軸6には前記鉛直角検出器18、例えばインクリメンタルエンコーダが設けられ、該鉛直角検出器18により、前記托架部5に対する前記鉛直回転軸6の回転角が検出される。前記鉛直角検出器18の検出結果(鉛直角)は、前記制御演算部15に入力され、検出結果に基づき該制御演算部15により前記鉛直駆動モータ28の駆動が制御される様になっている。
【0036】
又、前記加速度センサ24は、前記托架部5に生じたX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の3軸方向の振動量(振幅)を検出可能となっている。前記加速度センサ24の検出結果は、前記制御演算部15に入力される様になっている。
【0037】
前記測距発光部19は、測距光源部31と、ハーフミラーやビームスプリッタ等の光路分割部材32と、対物レンズ等から構成される投光光学部33と、ミラー34とを有している。前記測距光源部31は、例えば半導体レーザ等であり、測距光35として測距光軸36上に不可視光である赤外光のパルスレーザ光線を発する。又、前記測距光源部31は、所要の光強度、所要のパルス間隔等、所要の状態でパルス光が発光される様前記制御演算部15に制御される様になっている。
【0038】
前記共通光路部21は、第1ビームスプリッタ38と第2ビームスプリッタ39とを有している。又、前記測距部22は、集光レンズ等から構成される受光光学部41と、光路延長部42と、光路結合部43と、受光素子44とを有している。
【0039】
前記測距光源部31より出力された前記測距光35は、一部が前記光路分割部材32を透過し、前記投光光学部33を介して前記ミラー34に入射される。前記測距光35は、前記ミラー34に反射されて前記共通光路部21へと導かれる。又、残りの前記測距光35は、内部参照光として前記光路分割部材32により反射され、内部参照光路37へと導かれる。
【0040】
前記ミラー34に反射された前記測距光35は、前記第1ビームスプリッタ38、前記第2ビームスプリッタ39により順次反射され、該第2ビームスプリッタ39に反射された後、前記走査ミラー7へと導かれる。尚、前記第1ビームスプリッタ38、前記第2ビームスプリッタ39を透過した前記測距光35は、図示しない反射防止部材により吸収される。
【0041】
尚、前記走査ミラー7は偏向光学部材であり、該走査ミラー7は水平方向から入射した前記測距光35を直角に反射し、又前記走査ミラー7に入射した反射測距光を前記第2ビームスプリッタ39に向って水平方向に反射する様になっている。
【0042】
前記共通光路部21から前記走査ミラー7に導かれた前記測距光35は、前記走査ミラー7により反射され、図示しない測定対象物へと照射される。又、該走査ミラー7が前記鉛直回転軸6を中心に回転されることで、前記測距光35は鉛直面内で回転照射される。
又、前記水平回転部4が前記托架部5を水平方向に回転させることで、前記測距光35は前記水平回転軸11を中心に水平方向に回転照射される。従って、前記走査ミラー7の鉛直方向の回転と前記托架部5の水平方向の回転の協働により、測定範囲全域を前記測距光35により走査できる。
【0043】
測定範囲内に存在する測定対象物にて反射された反射測距光は、前記走査ミラー7に入射し、該走査ミラー7によって反射され、前記共通光路部21に入射する。前記反射測距光は、前記第2ビームスプリッタ39にて反射され、更に第1ビームスプリッタ38を透過し、前記測距部22へと導かれる。
【0044】
該測距部22は、前記第1ビームスプリッタ38を透過した反射測距光を前記受光素子44へ導くと共に、前記内部参照光路37により導かれた内部参照光を前記光路結合部43を介して前記受光素子44に導く様になっている。
【0045】
前記第1ビームスプリッタ38を透過した反射測距光は、前記受光光学部41に入射し、該受光光学部41にて集光され、前記光路延長部42へと入射する。該光路延長部42を透過した反射測距光は、前記光路結合部43を介して前記受光素子44に受光される。
又、前記内部参照光路37を経た内部参照光が、前記光路結合部43を介して前記受光素子44に受光される。
【0046】
該受光素子44に於いて、前記反射測距光と前記内部参照光は、反射測距光電気信号と内部参照光電気信号へと変換され、前記制御演算部15へと送られる。前記反射測距光電気信号と前記内部参照光電気信号との時間間隔の差に基づき測定対象物迄の距離が測定される様になっている。
【0047】
前記制御演算部15は、測定した測定対象物迄の距離と、前記鉛直角検出器18により検出された鉛直角と、前記水平角検出器14により検出された水平角とに基づき、測定対象物の座標値を算出する。又、パルス毎の測定対象物の座標値を記録することで、測定範囲全域に関する、或は測定対象物に関する点群データを得ることができる。前記水平角検出器14及び前記鉛直角検出器18により、前記測距光軸36の方向を検出する角度検出部が構成される。
【0048】
前記撮像部23の撮像光軸上には撮像素子45が設けられ、該撮像素子45はデジタル画像信号を出力する様になっている。該撮像素子45は、例えばCCDやCMOSセンサ等、画素(ピクセル)の集合体で構成されたものであり、各画素は前記撮像素子45内での位置が特定できる様になっている。
【0049】
次に、
図2を参照して、前記3次元レーザスキャナ1の制御系について説明する。
【0050】
前記制御演算部15には、前記操作部26、前記鉛直角検出器18、前記水平角検出器14が電気的に接続されている。前記制御演算部15には、前記鉛直角検出器18、前記水平角検出器14からの角度検出信号が入力されると共に、作業者の操作により前記操作部26からの信号が入力される。
【0051】
作業者は、該操作部26から前記3次元レーザスキャナ1の測定を開始するのに必要な条件設定、例えば測定範囲の設定、点群データ密度(ピッチ)の設定、或は撮像時の撮像条件の設定等を行い、更に後述する共振回転数検出処理の開始指示や測定開始の指令等の入力ができる。前記操作部26から入力された設定条件等は、前記表示部25により確認できる様になっている。尚、前記操作部26や前記表示部25は、前記托架部5に設けられてもよく、或は別途独立して設けられ、無線、赤外線等の信号伝達媒体により遠隔操作可能としてもよい。
【0052】
前記制御演算部15は、前記測距光源部31、前記水平駆動モータ12、前記鉛直駆動モータ28を駆動すると共に、作業状況、測定結果等を表示する前記表示部25を制御する。又、前記制御演算部15には、メモリーカード、HDD等の外部記憶装置46が設けられる。該外部記憶装置46は、前記制御演算部15に固定的に設けられてもよく、或は着脱可能に設けられてもよい。
【0053】
次に、前記制御演算部15の概略について説明する。
【0054】
該制御演算部15は、CPUに代表される演算部47と、記憶部48と、前記測距光源部31の発光を制御する為の測距発光駆動部49と、前記水平駆動モータ12を駆動制御する為の前記水平駆動部13と、前記鉛直駆動モータ28を駆動制御する為の前記鉛直駆動部17とを有している。又、前記制御演算部15は、前記測距部22により得られた距離データを処理する為の距離データ処理部51と、前記撮像部23により得られた画像データを処理する為の画像データ処理部52と、前記加速度センサ24により得られた振動量データと前記走査部29の回転数を関連付ける振動量データ処理部53等を有している。
【0055】
前記記憶部48は、測距、鉛直角の測定、水平角の測定を実行させる為のシーケンスプログラム、測距の演算等を行う演算プログラム、測定データの処理を実行する測定データ処理プログラム、前記撮像部23の撮像状態を制御する為の撮像プログラム、画像処理を実行する画像処理プログラム、前記加速度センサ24に検出された振動量を前記走査部29の回転数と関連付ける関連付けプログラム、検出された振動量が閾値を越えたかどうかを判断する判断プログラム、判断結果を通知する通知プログラム、データを前記表示部25に表示させる為の画像表示プログラム等のプログラム、或はこれらのプログラムを統合管理するプログラム等を格納する。
【0056】
又、前記記憶部48は、測定データ、画像データ、振動量データ等のデータを格納すると共に、予め設定された振動量の閾値等を格納している。
【0057】
尚、前記距離データ処理部51、前記画像データ処理部52、前記振動量データ処理部53の機能を前記演算部47に実行させてもよく、この場合前記距離データ処理部51と前記画像データ処理部52と前記振動量データ処理部53は省略できる。
【0058】
又、前記距離データ処理部51と前記画像データ処理部52と前記振動量データ処理部53とを別途設けてもよい。例えば、別途PCを装備し、該PCに前記距離データ処理部51と前記画像データ処理部52と前記振動量データ処理部53の機能を実行させる様にしてもよい。この場合、前記3次元レーザスキャナ1と前記PCとに通信手段を設け、距離データ、画像データ、振動量データを該PCに送信し、該PCで距離データ処理、画像データ処理、振動量データ処理を実行する様にしてもよい。尚、通信手段としては、光通信、無線通信、LAN等所要の通信手段を採用することが可能である。
【0059】
前記3次元レーザスキャナ1により測定対象物を高精度に測定する為には、前記托架部5に大きな振動、例えば共振が生じた状態で測定を行わない様にし、測定結果に対する共振の影響を抑制するのが望ましい。
【0060】
前記3次元レーザスキャナ1は、三脚や前記3次元レーザスキャナ1を設置する地面の状態、三脚の材質、三脚の脚の伸ばし具合等の設置条件により、前記走査部29を回転させた際に、前記托架部5が共振し、振動量が急激に増大する回転数(共振回転数)が異なる(
図3(A)、
図3(B)参照)。従って、前記3次元レーザスキャナ1を設置した後、前記托架部5に共振が生じる前記走査部29の回転数を検出する必要がある。
【0061】
本実施例では、測定対象物の測定を行う前工程として、前記走査部29を低回転数から最大回転数迄回転数を変化させて回転させ、予め設定された閾値を越える振動量を生じた回転数を共振回転数として検出し、共振回転数で測定を行わない様にしている。尚、本実施例に於いて、低回転数は前記走査部29が回転していない状態も含むものとする。
【0062】
図4のフローチャートを用い、共振回転数を検出する為の、前記走査部29の共振回転数検出処理について説明する。
【0063】
STEP:01 先ず、前記制御演算部15は、前記鉛直駆動部17に前記鉛直駆動モータ28を駆動させ、例えば10秒程度で前記走査部29の回転数を0rpmから前記3次元レーザスキャナ1(前記走査部29)の最大回転数、例えば2000rpm迄一定の増加率で漸次増大させる。
【0064】
STEP:02 前記走査部29を回転させている間、前記托架部5に生じる振動量は前記加速度センサ24により常時検出されている。前記振動量データ処理部53は、前記加速度センサ24により検出された振動量と、その時の前記走査部29の回転数とを所定回転数間隔でサンプリングし、前記振動量と前記回転数とを関連付け、前記走査部29の回転数とそれに対応する予想振動量として前記記憶部48に格納する。
【0065】
図5(A)〜
図5(C)は、平坦ではない床の上に直接前記3次元レーザスキャナ1を載置し、前記托架部5(H軸)を2rpmで回転させた状態で、前記走査部29(V軸)の回転数を変化させた場合の振動量の一例を示すグラフである。尚、上側の振動波形はX軸方向の振動量を示し、中間の振動波形はY軸方向の振動量を示し、下側の振動波形はZ軸方向の振動量を示している。又、
図5(A)〜
図5(C)中、縦軸は前記托架部5の振動量を加速度で示しており、横軸は前記走査部29の回転角を示している。
【0066】
図5(A)は、前記走査部29の回転数を600rpmとした場合を示し、600rpmで該走査部29を回転させた際の振動量が、予想振動量として該走査部29の回転数と関連付けられて前記記憶部48に格納される。
【0067】
図5(B)は、前記走査部29の回転数を1700rpmとした場合を示し、1700rpmで該走査部29を回転させた際の振動量が、予想振動量として該走査部29の回転数と関連付けられて前記記憶部48に格納される。
【0068】
図5(C)は、前記走査部29の回転数を1950rpmとした場合を示し、1950rpmで該走査部29を回転させた際の振動量が、予想振動量として該走査部29の回転数と関連付けられて前記記憶部48に格納される。
【0069】
尚、図示はしないが、0rpm〜2000rpm間の、
図5(A)〜
図5(C)以外の回転数についても同様に、検出された振動量が予想振動量として前記走査部29の回転数と関連付けられて前記記憶部48に格納される。STEP:02の工程を実行することで、0rpm〜2000rpmの間で共振回転数があるかどうか、更に存在する場合には共振回転数の取得が行われる。
【0070】
STEP:03 0rpm〜2000rpm迄の前記走査部29の回転数と前記加速度センサ24により検出された振動量との関連付けが完了すると、次に、前記操作部26より測定範囲や点群データの密度(ピッチ)等の測定条件が入力される。
【0071】
STEP:04 該操作部26より測定条件が入力されると、前記制御演算部15は、入力された測定条件を満たせる様な前記走査部29の回転数を演算する。
【0072】
STEP:05 前記振動量データ処理部53は、演算された前記走査部29の回転数と対応する予想振動量を前記記憶部48より取出し、予想振動量が予め設定された閾値を越えるかどうかを比較する。
【0073】
例えば、閾値を100mgとした場合、演算された前記走査部29の回転数が600rpmの場合、
図5(A)に示される様に、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向のいずれの振動量も閾値内であるので、前記托架部5に共振が発生していないと判断される。
【0074】
又、演算された前記走査部29の回転数が1700rpmの場合、
図5(B)に示される様に、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の振動量がやや増大しているが、いずれの振動量も閾値内であるので、前記托架部5に共振が発生していないと判断される。
【0075】
又、演算された前記走査部29の回転数が1950rpmの場合、
図5(C)に示される様に、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向のいずれの場合も、所定の回転角周期で振動量が大幅に増大し、閾値を越えた振動量が検出される。この場合には、前記托架部5に共振が発生していると判断され、前記走査部29の回転数1950rpmが共振回転数であると判断される。
【0076】
上記した様に、予想振動量が閾値を越えていた場合には、前記振動量データ処理部53によりその時の前記走査部29の回転数が共振回転数であると判断される。前記制御演算部15は、STEP:04にて演算された前記走査部29の共振回転数を除く他の回転数を演算し、再度予想振動量を求める。又、前記振動量データ処理部53は、予想振動量が閾値を超えるかどうかを再度比較する。
【0077】
尚、前記制御演算部15が前記走査部29の他の回転数を演算する場合、共振回転数が上限に近い場合には該走査部29の回転数を減少させる様演算し、共振回転数が下限に近い場合には該走査部29の回転数を増大させる様演算するのが望ましい。
【0078】
又、予想振動量が閾値を越えないと判断された場合には、入力された測定条件にて測定対象物の測定が可能と判断され、共振回転数検出処理を終了する。
【0079】
尚、STEP:02に於いて、検出された振動量が閾値を超えるものについては、対応する前記走査部29の回転数を共振回転数として設定してもよい。この場合、STEP:05に於いて、前記振動量データ処理部53は、演算された前記走査部29の回転数が共振回転数であるかどうかを判断するだけでよい。
【0080】
又、STEP:02にて検出される振動量が、前記走査部29の回転によるものか、或は外部的要因による突発的なものであるかどうかは、振動している時間及び振動周波数により判断することができる。
【0081】
共振回転数検出処理の終了後、作業者が改めて前記操作部26より測定開始を入力する様にしてもよい。又、共振回転数検出処理の終了後、自動的に前記3次元レーザスキャナ1による測定が開始される様にしてもよい。
【0082】
測定処理では、前記測距発光駆動部49により前記測距光源部31が駆動され、該測距光源部31からパルスレーザ光線が前記測距光35として発光される。
【0083】
該測距光35は、前記光路分割部材32により平行光束とされ、更に前記ミラー34、前記第1ビームスプリッタ38、前記第2ビームスプリッタ39に反射された後、前記走査ミラー7によって直角に偏向され、測定対象物に向って照射される。
【0084】
前記測定対象物で反射された反射測距光は、前記走査ミラー7に入射し、該走査ミラー7により直角に偏向され、前記第2ビームスプリッタ39に反射され、前記第1ビームスプリッタ38に透過された後、前記受光光学部41により集光される。該受光光学部41により集光された反射測距光は、前記光路延長部42を透過し、前記光路結合部43を介して前記受光素子44へと入射する。又、前記光路分割部材32により分割された前記測距光35(内部参照光)も、前記内部参照光路37を介し、前記光路結合部43を経て前記受光素子44へと入射される。
【0085】
前記測距光35及び反射測距光は、前記受光素子44にて測距光電気信号と反射測距光電気信号へと変換され、前記制御演算部15へと送られる。該制御演算部15では、前記距離データ処理部51により前記測距光電気信号と前記反射測距光電気信号の時間間隔が測定され、測定された時間間隔を基に測定対象物迄の距離が算出される。算出された測定対象物迄の距離は、前記記憶部48に格納される。
【0086】
又、距離測定と並行して、前記撮像部23により測定対象物の画像が取得され、前記画像データ処理部52により所定の画像処理がなされ、前記記憶部48に格納される。
【0087】
尚、測定処理中、前記3次元レーザスキャナ1の近傍をトラクターが通過した等、外部的要因により前記3次元レーザスキャナ1に振動が生じることがある。測定対象物を高精度に測定する為には、前記3次元レーザスキャナ1の設置条件に起因する共振の他に、外部的要因による突発的な振動の影響についても抑制するのが望ましい。
【0088】
図6のフローチャートを用い、測定処理中に前記托架部5に外部的要因により振動が発生した場合の外部振動抑制処理について説明する。
【0089】
STEP:11 測定が開始されると、前記制御演算部15により演算された回転数に基づき前記走査部29が回転されると共に、前記托架部5が所定の速度で回転されて測定が行われる。
【0090】
STEP:12 測定処理中、前記加速度センサ24により、前記托架部5に生じる振動量が常時検出され、前記振動量データ処理部53により検出された振動量が閾値を超えるかどうかが常時比較されている。検出された振動量が閾値を下回る場合には、測定処理が続行される。
【0091】
STEP:13 前記加速度センサ24により検出された振動量が、閾値を越えた場合には、前記制御演算部15が前記水平駆動部13、前記鉛直駆動部17、前記測距発光駆動部49を停止させる。
【0092】
STEP:14 前記水平駆動部13、前記鉛直駆動部17、前記測距発光駆動部49の停止後、前記制御演算部15は、閾値を越えた振動量が検出された際の前記走査部29の回転数とは異なり、且つ入力された測定条件を満たす前記走査部29の回転数を再度演算する。該走査部29の回転数の再演算後、前記制御演算部15は演算した回転数に基づいて前記走査部29を回転させると共に、前記水平駆動部13、前記鉛直駆動部17、前記測距発光駆動部49を駆動させる。
【0093】
尚、STEP:11〜STEP:14の処理は、前記3次元レーザスキャナ1による測定処理が終了する迄繰返される。
【0094】
前記3次元レーザスキャナ1による測定処理中、STEP:11〜STEP:14の外部振動抑制処理が行われることで、測定処理中に外部的要因で前記托架部5に振動が生じた状態で測定が行われるのを防止することができる。従って、測定結果に対する外部的要因による振動の影響を抑制でき、高精度に測定対象物の測定を行うことができる。
【0095】
尚、STEP:12に於いて、更に閾値を越えた振動量の検出が一時的なものかどうかを判断する様にしてもよい。閾値を越えた振動が一時的なものであると判断された場合には、閾値を越えた振動量が検出された時の測定値を削除し、前記走査部29の回転数は変更されずに測定が継続される。
【0096】
上述の様に、本実施例では、前記3次元レーザスキャナ1により測定を行う前に共振回転数検出処理を行っているので、前記3次元レーザスキャナ1の設置場所や設置状態等の設置条件に拘わらず、確実に共振回転数を検出でき、共振回転数で前記走査部29が回転されるのを防止することができる。
【0097】
従って、共振により前記托架部5が大きく振動した状態で測定が行われることがないので、測定結果に対する共振による振動の影響を抑制でき、高精度に測定対象物の測定を行うことができる。
【0098】
又、前記3次元レーザスキャナ1による測定処理中に外部振動抑制処理を行っているので、測定処理中に外部的要因によって前記托架部5に振動が生じた場合に、該托架部5が振動した状態で測定が行われるのを防止することができる。従って、測定結果に対する外部的要因による振動の影響を抑制でき、高精度に測定対象物の測定を行うことができる。
【0099】
尚、本実施例では、STEP:01〜STEP:05を測定を実行する前の共振回転数検出処理としているが、当該処理を前記3次元レーザスキャナ1の設置可否処理として行ってもよい。
【0100】
設置可否処理の場合、STEP:04で演算された前記走査部29の回転数に対応する予想振動量が、STEP:05で予め設定された閾値を上回ると判断されると、前記表示部25の表示、或は音声等により、前記3次元レーザスキャナ1の設置場所や設置状態等の設置条件の変更を促すアラームが通知される。
【0101】
作業者は、通知されたアラームに従って前記3次元レーザスキャナ1の設置条件を変更し、再度設置可否処理を行うことで、該3次元レーザスキャナ1の設置条件が妥当であるかを再度確認することができる。
【0102】
該3次元レーザスキャナ1を設置する際に、設置可否処理を行う様にすることで、例えば前記測距光源部31に使用されるレーザ結晶の質等の部品の制約により、前記制御演算部15により演算された回転数で測定したい場合等に効果的に測定を行うことができる。
【0103】
更に、前記3次元レーザスキャナ1を設置した後、測定条件を入力し、測定条件に基づき前記走査部29を所定回数で回転させ、その時の振動量が閾値を越えるか判断する様にしてもよい。該振動量が閾値を越える場合には、予め設定された回転数に前記走査部29の回転数を変更し、その時の振動量と閾値とを比較する。
【0104】
上記の様に処理することで、STEP:02の回転数と振動量との関連付けが不要となり、処理を簡略化でき、作業時間の短縮を図ることができる。