【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0009】
手段1.浴槽の側壁部に貫通形成されたオーバーフロー口に挿通されるとともに、前記オーバーフロー口の延びる方向に沿って往復移動可能な操作部材と、
筒状のチューブ部材、及び、当該チューブ部材の内周において往復移動可能に構成され、前記操作部材の変位を浴槽の排水口に設けられた栓蓋側へと伝達する伝達部材を有するレリースワイヤとを備え、
前記操作部材は、
前記浴槽の表面側に表出する操作用の被操作部と、
前記被操作部に直接又は間接的に固定され、前記操作部材の往復移動方向に沿って延びる軸部とを有する操作装置であって、
前記浴槽に対し前記軸部を相対回転不能に規制する回転規制部と、
前記軸部の外周又は内周に配置されるとともに、前記軸部の周方向に沿って前記軸部に対し相対回動可能であり、かつ、自身の相対回動時に前記伝達部材の一端部を押圧し、自身の回動方向の接線方向に沿って前記伝達部材の一端部を往動させる筒状の回動部を具備し、
前記回動部は、前記軸部に設けられた軸側接触部と接触可能な回動側接触部を有し、
前記軸側接触部のうち前記回動側接触部と接触する部位、及び、前記回動側接触部のうち前記軸側接触部と接触する部位の少なくとも一方は、前記操作部材の往復移動方向に対し傾斜する傾斜面状をなし、
前記被操作部の押圧による前記操作部材の往動に伴い、前記軸側接触部が前記回動側接触部を押圧することで、前記回動部が前記軸部に対し相対回動するように構成されていることを特徴とする操作装置。
【0010】
上記手段1によれば、操作部材を往動させたときに、回動部が回動して伝達部材の一端部を押圧し、その結果、回動部の回動方向の接線方向に沿って伝達部材の一端部が往動する。従って、伝達部材の一端部の往復移動方向を、操作部材の往復移動方向と直交する方向(操作部材の周方向)とすることができ、また、操作部材と伝達部材の一端部とが直列的に並ばないようにすることができる。これにより、操作部材の往復移動方向に沿った操作装置の長さを非常に小さなものとすることができる。その結果、良好な安全性や美感を確保しつつ、壁面等との間隔が小さい側壁部のオーバーフロー口に対応して操作装置を配設することがより容易に可能となる。
【0011】
また、回転規制部によって、浴槽に対し軸部を相対回転不能とすることができ、ひいては操作部材を往動させたときに回動部をより確実に回動させることができる。これにより、上述の作用効果をより確実に発揮させることができる。
【0012】
さらに、伝達部材の往復移動方向を操作部材の往復移動方向と直交する方向(操作部材の周方向)とするために、上記特許文献1の
図1等に示されるように、レリースワイヤを曲げる必要はない。従って、レリースワイヤの曲げに伴い、伝達部材及びチューブ部材間で生じる摩擦力が大きくなって操作性が低下してしまったり、伝達部材等に破損が生じてしまったりすることをより確実に防止できる。
【0013】
手段2.前記被操作部の表面を押圧したときに、前記伝達部材の一端部の移動量が、前記操作部材の移動量よりも大きくなるように構成されていることを特徴とする手段1に記載の操作装置。
【0014】
上記手段2によれば、栓蓋のより確実な上下動を図りつつ、操作部材の往復移動量(ストローク量)をより小さなものとすることができる。従って、操作部材の往復移動方向に沿った操作装置の長さをより小さなものとすることができ、オーバーフロー口に対応して操作装置を配設することが一層容易に可能となる。
【0015】
さらに、排水口を開閉するために必要な操作部材の移動量を小さくすることができるため、使用者が排水口を開閉しようとしたときに、操作部材の移動量が不十分となり、排水口の開閉に失敗してしまう(例えば、排水口を閉鎖したつもりが、実際には閉鎖されていない)といった事態をより確実に防止することができる。これにより、使用者にとっての使い勝手の向上を図ることができる。
【0016】
尚、上記手段2は、例えば、回動部の回動軸から回動部のうち伝達部材の一端部を押圧する部位までの距離(回動半径)を調節したり、軸側接触部及び回動側接触部の少なくとも一方に設けられた傾斜面状部分の、操作部材の往復移動方向に対する傾斜角度を調節したり〔すなわち、操作部材の単位移動量当たりにおける回動部の回動量(回転角度)を調節したり〕することで実現することができる。
【0017】
手段3.少なくとも前記回動側接触部のうち前記軸側接触部と接触する部位は、前記操作部材の往復移動方向に対し傾斜する傾斜面状をなしており、
前記回動側接触部のうち前記軸側接触部と接触する部位は、その全域において、前記操作部材の往復移動方向に対する傾斜が一定とされた螺旋状をなすことを特徴とする手段1又は2に記載の操作装置。
【0018】
上記手段3によれば、操作部材を往動させたときに、軸側接触部において、回動側接触部に接触する部分を常に同一部分とすることができる。従って、操作部材を往動させたときに、回動部を安定的に回動させることができ、動作安定性の向上を図ることができる。
【0019】
また、上記手段3によれば、操作部材を往動させるときに、使用者は、操作部材に生じる負荷の変化(前記負荷は、例えば、伝達部材を復動させるための戻り力付与部等で生じる力の変化や、軸側接触部及び回動側接触部間で生じる摩擦力の変化、開栓の状態などにより変化する)等をより確実に知覚することができる。その結果、使用者は、排水口を開閉する際に、操作部材を介して操作部材や栓蓋の状況などをより確実に把握することができ、ひいては操作ミスが生じてしまう等の事態をより確実に防止できる。
【0020】
手段4.少なくとも前記回動側接触部のうち前記軸側接触部と接触する部位は、前記操作部材の往復移動方向に対し傾斜する傾斜面状をなしており、
前記回動側接触部のうち前記軸側接触部と接触する部位は、前記操作部材の往復移動方向に対する傾斜が一定ではない形状をなすことを特徴とする手段1又は2に記載の操作装置。
【0021】
上記手段4によれば、操作部材を往動させる際に操作部材へと加わる力などを考慮し、回動側接触部の傾斜を調整することで、良好な操作性を得ることができる。
【0022】
例えば、操作部材を往動させて回動部を回動させるときに、回動部が回動し開栓し始めるまでには、開栓した後よりも比較的大きな力を要する点を考慮して、回動側接触部のうち、操作部材を往動させて回動部を回動させるときに軸側接触部と最初に接触する部分の傾斜を、回動側接触部におけるその他の部分の傾斜よりも緩やかにしてもよい。この場合には、回動部を回動させて開栓し始めるときに必要となる被操作部への押圧力を比較的小さくすることができる。
【0023】
また、例えば、伝達部材を復動させるための戻り力付与部(バネ部材)等が設けられ、操作部材を往動させるにつれて、前記戻り力付与部等から操作部材に対しその復動方向に加わる力が大きくなるように構成した場合には、回動側接触部のうち、前記戻り力付与部等から操作部材に対しその復動方向に加わる力が所定値よりも大きくなる段階で軸側接触部と接触する部分の傾斜を、回動側接触部におけるその他の部分の傾斜よりも緩やかにしてもよい。この場合には、例えば、被操作部を往動させるときの最後の段階などにおいて、回動部を回動させるために被操作部へと加えることが必要な押圧力を比較的小さく抑えることができる。
【0024】
さらに、例えば、回動側接触部のうち、回動部を回動させるために被操作部へと加えることが必要な押圧力が比較的小さくて済む段階(例えば、回動部の回動開始後、各部材間の遊びや隙間がなくなるまでの段階)で軸側接触部と接触する部分については、その傾斜を比較的急なものとしてもよい。この場合には、被操作部の押込量(操作量)が比較的小さくても、伝達部材を比較的大きく移動させることができる。
【0025】
手段5.少なくとも前記軸側接触部のうち前記回動側接触部に接触する部位は、前記操作部材の往復移動方向に対し傾斜する傾斜面状をなしており、
前記軸側接触部のうち前記回動側接触部に接触する部位は、その全域において、前記操作部材の往復移動方向に対する傾斜が一定とされた螺旋状をなすことを特徴とする手段1又は2に記載の操作装置。
【0026】
上記手段5によれば、基本的には上記手段3と同様の作用効果が奏されることとなる。すなわち、動作安定性の向上を図ることができるとともに、操作ミスが生じてしまう等の事態をより確実に防止することができる。
【0027】
手段6.少なくとも前記軸側接触部のうち前記回動側接触部に接触する部位は、前記操作部材の往復移動方向に対し傾斜する傾斜面状をなしており、
前記軸側接触部のうち前記回動側接触部に接触する部位は、前記操作部材の往復移動方向に対する傾斜が一定ではない形状をなすことを特徴とする手段1又は2に記載の操作装置。
【0028】
上記手段6によれば、基本的には上記手段4と同様の作用効果が奏されることとなる。すなわち、操作部材を往動させる際に操作部材へと加わる力などを考慮し、軸側接触部の傾斜を調整することで、良好な操作性を得ることができる。
【0029】
尚、上記手段6に係る操作装置としては、例えば、上記手段4において例示した回動側接触部の構成を、軸側接触部のうち回動側接触部に接触する部位へと適用したものなどを挙げることができる。
【0030】
手段7.前記軸側接触部と前記回動側接触部とは、点接触又は線接触であることを特徴とする手段1乃至6のいずれかに記載の操作装置。
【0031】
上記手段7によれば、軸側接触部と回動側接触部との接触抵抗をより小さなものとすることができる。従って、操作部材を移動させる際に要する力を一層低減させることができ、操作性を一層向上させることができる。
【0032】
手段8.前記浴槽に対し直接又は間接的に取付けられ、前記回動部のその回動軸方向の端面が接触するとともに、前記回動部の回動時に前記端面が摺動する回動支持部を備え、
前記軸部は、前記被操作部とは反対側に開口する穴部を具備し、
前記回動支持部は、前記穴部に挿通される棒状部を備え、
前記穴部及び前記棒状部は、前記穴部に対し前記棒状部が挿通された状態において、前記棒状部に対し前記軸部が相対回転不能となるように構成されており、前記棒状部及び前記軸部のうち前記穴部を形成する部位によって前記回転規制部が構成されることを特徴とする手段1乃至7のいずれかに記載の操作装置。
【0033】
上記手段8によれば、回動部は、その回動時に、回動支持部を摺動する。従って、回動部をより安定的に回動させることができ、装置の動作安定性を一層高めることができる。
【0034】
さらに、上記手段8によれば、回動支持部が回転規制部の一部(棒状部)を有するものとされる。そのため、装置の小型化を一層図ることができ、オーバーフロー口に対応して操作装置を配設することがより一層容易に可能となるとともに、製造コストの低減を図ることができる。
【0035】
尚、回動支持部は、回動部の端面と接触する部位に、ボールベアリングやころ軸受等を備えていてもよい。この場合には、回動部をよりスムーズに回動させることができる。