特許第6498535号(P6498535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498535
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】X線管
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/06 20060101AFI20190401BHJP
【FI】
   H01J35/06 D
   H01J35/06 E
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-117322(P2015-117322)
(22)【出願日】2015年6月10日
(65)【公開番号】特開2017-4749(P2017-4749A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】下野 隆
(72)【発明者】
【氏名】阿武 秀郎
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭46-1620(JP,A)
【文献】 実開昭54-44688(JP,U)
【文献】 特開2006-286264(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0291903(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを放出するフィラメントを有する陰極と、
前記電子ビームが入射されてX線を放出する陽極ターゲットと、
内部に前記陰極および前記陽極ターゲットを収容する真空外囲器と
を具備するX線管であって、
前記陰極は、
前記真空外囲器の一部を構成して前記真空外囲器の外部に露出し、前記フィラメントに通電するリード線が前記真空外囲器の内部側と外部側とに貫通するように取り付けられた金属製のリード線支持体と、
前記リード線支持体に接触固定され、前記フィラメントを支持する金属製のフィラメント支持体とを有する
ことを特徴とするX線管。
【請求項2】
前記陰極は、前記フィラメント支持体に接触固定され、前記フィラメントから放出される前記電子ビームを集束する金属製の集束電極を有する
ことを特徴とする請求項1記載のX線管。
【請求項3】
前記フィラメント支持体は、前記フィラメントから放出される前記電子ビームを集束する機能を有する
ことを特徴とする請求項1記載のX線管。
【請求項4】
前記リード線は、電気的に絶縁されて前記リード線支持体に支持され、
前記フィラメントは、電気的に絶縁されて前記フィラメント支持体に支持されている
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載のX線管。
【請求項5】
前記リード線支持体および前記フィラメント支持体のいずれか一方は、円筒状に形成され、側面に開口部が設けられ、内部に前記フィラメントに固定されているフィラメント端子と前記リード線とが挿通されるとともに、前記開口部に対向して前記フィラメント端子と前記リード線とが接続されている
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載のX線管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線を放出するX線管に関する。
【背景技術】
【0002】
X線管において、X線の焦点寸法を管理するためには、陰極カップに対するフィラメントの位置を厳しく管理する必要がある。従来構造では、陰極カップにステアタイトやセラミックなどの絶縁体を介してフィラメントを固定している。
【0003】
一方、管球外からフィラメントに通電するためリード線が真空外囲器のガラスを貫通した構造となっている。リード線の1本または2本がフィラメントに接続されるが、残りは陰極カップを支持する陰極カバーに固定されている。
【0004】
X線管の動作中のフィラメントは2000℃を超える温度で使用されるので、フィラメントの近傍に配置される陰極カップなどの陰極部品はフィラメントからの輻射熱によって加熱される。陰極カップからの放熱経路は、陰極カバーを経てリード線から管外へ放熱されるルートが支配的である。一般にリード線の太さは1〜2mm、長さは10〜20mmなので、真空断熱に近い構造になっており、フィラメントで発生した熱量により陰極カップの温度が上がりやすい。陰極カップの温度を実測した結果、フィラメント電力が10W程度のとき、陰極カップは200℃以上であった。
【0005】
フィラメントは熱電子の放出のため高温にする必要あるが、その他の陰極部品は真空外囲器内へのガス放出の観点から温度が低いことが望まれている。それは、フィラメントのように極めて高温な部分の吸着ガスは短時間に脱離するが、数100℃の部分は脱離速度が小さく、長期間にわたってガス放出を続け、真空外囲器内の真空度をゆっくり悪化させるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭59-16063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、フィラメント近傍の陰極部品の温度を低減し、長期使用時における真空外囲器内の真空度の低下を抑制できるX線管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態のX線管は、電子ビームを放出するフィラメントを有する陰極と、電子ビームが入射されてX線を放出する陽極ターゲットと、内部に陰極および陽極ターゲットを収容する真空外囲器とを具備する。陰極は、真空外囲器の一部を構成して真空外囲器の外部に露出し、フィラメントに通電するリード線が真空外囲器の内部側と外部側とに貫通するように取り付けられた金属製のリード線支持体と、リード線支持体に接触固定され、フィラメントを支持する金属製のフィラメント支持体とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態を示すX線管の断面図である。
図2】同上X線管の断面図である。
図3】第2の実施形態を示すX線管の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、第1の実施形態を、図1および図2を参照して説明する。
【0011】
図1および図2に示すように、X線管10は、固定陽極型X線管であり、陰極11、陽極ターゲット12、これら陰極11および陽極ターゲット12を収容する真空外囲器13を備えている。真空外囲器13は、ガラス製で円筒状に形成された胴部14を有し、この胴部14の一端に陰極11が封止されているとともに、胴部14の他端に陽極ターゲット12が封止され、真空外囲器13の内部が真空状態に保持されている。
【0012】
そして、陰極11は、電子ビーム16を放出するフィラメント17を備えるとともに、リード線支持体18、フィラメント支持体19および集束電極としての陰極カップ20を備えている。
【0013】
フィラメント17は、このフィラメント17の両端が一対のフィラメント端子21にそれぞれ電気的に接続され、一対のフィラメント端子21を介してフィラメント支持体19に支持されている。
【0014】
リード線支持体18は、金属製で円筒状に形成され、X線管10の中心軸と同軸に配設されている。リード線支持体18は、端面部22および周面部23を有し、内部に空間部24が形成されている。リード線支持体18の外周と真空外囲器13の一端とが筒状の連結部材25によって真空気密に連結されている。リード線支持体18の端面部22が真空外囲器13の外部に露出されている。
【0015】
リード線支持体18の端面部22には、一対のフィラメント端子21に電気的に接続される一対のリード線26が挿通される挿通孔27、および、空間部24にゲッター28を配置する場合に、そのゲッター28の両端に接続される一対のリード線29が挿通される挿通孔30が形成されている。挿通孔27,30は、絶縁性を有する閉塞部31,32によってそれぞれ閉塞されている。リード線26,29は、閉塞部31,32を貫通して真空気密に取り付けられている。したがって、リード線支持体18は、リード線26,29を電気的に絶縁して支持している。
【0016】
リード線支持体18の内部の空間部24にフィラメント端子21およびリード線26が挿通され、これらフィラメント端子21とリード線26とが直接または別のリード線などの中継部品を介して溶接などによって接続されている。
【0017】
リード線支持体18の周面部23には、孔または切り欠きによって構成される開口部33が形成されている。開口部33は、フィラメント端子21とリード線26との溶接などによる接続箇所に対向されている。そして、開口部33を通じて、フィラメント端子21とリード線26との接続作業が可能となっている。
【0018】
また、フィラメント支持体19は、金属製で円筒状に形成され、X線管10の中心軸と同軸に配設されている。フィラメント支持体19は、リード線支持体18に対して少なくとも一部が面接触するように固定され、リード線支持体18に対して高い熱伝導性が確保されている。
【0019】
フィラメント支持体19は、フィラメント17を収容する凹部34、フィラメント17の両端が挿通する一対の孔部35を有している。孔部35には絶縁性を有する円筒状の筒部36が取り付けられ、この筒部36にフィラメント端子21を固定するスリーブ37が取り付けられている。したがって、フィラメント支持体19は、フィラメント17を電気的に絶縁して支持している。
【0020】
また、陰極カップ20は、金属製で円筒状に形成され、X線管10の中心軸と同軸に配設されている。陰極カップ20は、少なくとも一部が面接触するようにねじ38で固定され、フィラメント支持体19に対して高い熱伝導性が確保されている。陰極カップ20には、フィラメント17が露出する窓孔39が形成されている。
【0021】
また、陽極ターゲット12と真空外囲器13の他端とが筒状の連結部材42によって真空気密に連結されている。陽極ターゲット12には、陰極11から電子ビーム16が入射されることによりX線(利用X線束)43を放出する焦点を形成するターゲット面44を有している。
【0022】
そして、X線管10の動作中において、フィラメント17は、熱電子の放出のため高温にする必要あり、2000℃を超える温度で使用される。一方、陰極カップ20などの他の陰極部品は真空外囲器13内へのガス放出の観点から温度が低いことが好ましい。
【0023】
フィラメント17の近傍に配置される陰極カップ20などの陰極部品は、フィラメント17からの輻射熱によって加熱され、温度上昇する。
【0024】
このとき、陰極カップ20はフィラメント支持体19に、フィラメント支持体19はリード線支持体18にそれぞれ高い熱伝導性が確保して固定されているとともに、リード線支持体18の端面部22が真空外囲器13の外部に露出されているため、陰極カップ20およびフィラメント支持体19からの真空外囲器13の外部(空気中または絶縁媒体中など)への放熱効率のよい放熱経路が形成される。そのため、陰極カップ20およびフィラメント支持体19などの温度上昇を抑制することができる。
【0025】
したがって、陰極カップ20およびフィラメント支持体19などの放熱効率が高く、陰極カップ20およびフィラメント支持体19などの温度上昇を抑えることができ、長期使用時における真空外囲器13内でのガス発生を抑制し、真空外囲器13内の真空度の低下を抑制することができる。
【0026】
また、リード線支持体18にフィラメント支持体19を固定する構造であるため、リード線支持体18の内部に、フィラメント端子21とリード線26との接続箇所が位置するが、リード線支持体18の側面に開口部33を設けることにより、この開口部33を通じてフィラメント端子21とリード線26との接続作業ができる。
【0027】
なお、リード線支持体18およびフィラメント支持体19の構造によっては、フィラメント端子21とリード線26とを接続作業するための開口部をフィラメント支持体19に設けてもよい。
【0028】
次に、図3に第2の実施形態を示す。なお、第1の実施形態と同じ構成は同じ符号を用い、その構成および作用効果についての説明を省略する。
【0029】
フィラメント支持体19と陰極キャップ20とを一体に設けたものである。すなわち、フィラメント支持体19が、フィラメント17から放出される電子ビーム16を集束する機能を有している。
【0030】
この構成により、部品点数を削減でき、放熱効率をさらに向上させることができる。
【0031】
なお、X線管は、固定陽極型X線管に限らず、回転陽極型X線管であってもよい。
【0032】
また、X線管は、真空外囲器の胴部の主要材料をガラスとしたが、セラミクスやメタルであってもよい。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
10 X線管
11 陰極
12 陽極ターゲット
13 真空外囲器
16 電子ビーム
17 フィラメント
18 リード線支持体
19 フィラメント支持体
20 集束電極としての陰極カップ
21 フィラメント端子
26 リード線
33 開口部
43 X線
図1
図2
図3