(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固定ホルダーと固定ダイスからなる固定型と、可動ホルダーと可動ダイスからなる可動型と、前記固定ダイスと前記可動ダイスとにより画成されるキャビティを減圧する真空排気手段とを有する真空ダイカスト装置において、
前記固定ホルダー、前記固定ダイス、前記可動ホルダー又は前記可動ダイスの任意の位置に形成されるとともに押出ピン又は鋳抜きピンを含むピン部材を配設するためのピン部材貫通孔と、
前記ピン部材貫通孔の反キャビティ側の開口部に形成されるアタッチメント取付穴と、
前記アタッチメント取付穴に設置可能であるとともに、真空排気手段と接続されたホースが有するホース接続部品を取り付け可能なホース取付部を有するアタッチメントと、
を備え、
前記アタッチメントが前記アタッチメント取付穴に対して取り付けられることで、前記キャビティが前記ピン部材貫通孔を介して減圧されることを特徴とする真空ダイカスト装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上掲した従来の真空ダイカスト装置では、ピン部材貫通孔を介してキャビティの真空引きを行う場合、ダイカスト金型の内部に真空引き用の回路を形成する必要があり、型構成が複雑になるという課題が存在していた。すなわち、真空ダイカスト装置のダイカスト金型には、押ピン穴やクーラー穴、鋳抜きピン穴等が複数存在しているので、真空引き用の回路を形成するに当たっては、これら各種の穴と真空引き用回路とが干渉しないようにしなければならない。かかる構成を実現するためには、真空引き用回路が複雑にならざるを得ず、さらに、この様な複雑な回路を製作するためには、ダイカスト金型自体を大きくしなければならなかった。
【0006】
また、複雑な真空引き用回路を製作せずに真空ダイカスト装置を構成する手段として、ダイカスト金型の背面側に押出ピンと押出板を覆う密閉ボックスを設け、この密閉ボックスを真空引きする方法も従来から存在していた。しかしながら、押出ピンと押出板を覆う密閉ボックスを真空引きする方法は、装置規模が大きくなるとともに、真空引き作業に時間を要してしまうなど、コスト面や生産効率等の面で各種の課題が発生することとなる。
【0007】
本発明は、上述した従来技術に存在する種々の課題に鑑みて成されたものであって、その目的は、ダイカスト金型の内部に真空引き用の回路を形成することなく真空ダイカスト法を行えるようにした真空ダイカスト装置および真空ダイカスト法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0009】
本発明に係る真空ダイカスト装置(1)は、固定ホルダー(3A)と固定ダイス(3B)からなる固定型(3)と、可動ホルダー(4A)と可動ダイス(4B)からなる可動型(4)と、前記固定ダイス(3B)と前記可動ダイス(4B)とにより画成されるキャビティ(5)を減圧する真空排気手段(17,18)とを有する真空ダイカスト装置(1)であって、前記固定ホルダー(3A)、前記固定ダイス(3B)、前記可動ホルダー(4A)又は前記可動ダイス(4B)の任意の位置に形成され
るとともに押出ピン(12,13)又は鋳抜きピン(51)を含むピン部材を配設するためのピン部材貫通孔(10,11、110)と、前記ピン部材貫通孔(10,11、110)の反キャビティ側の開口部に形成されるアタッチメント取付穴(29)と、前記アタッチメント取付穴(29)に設置可能であるとともに、真空排気手段(17,18)と接続されたホース(33)が有するホース接続部品(34)を取り付け可能なホース取付部(32)を有するアタッチメント(31)と、を備え、前記アタッチメント(31)が前記アタッチメント取付穴(29)に対して取り付けられることで、前記キャビティ(5)が
前記ピン部材貫通孔(10,11、110)を介して減圧されることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る真空ダイカスト装置(1)では、前記アタッチメント(31)が前記アタッチメント取付穴(29)に対してシール部材(26)を介して設置されていることとすることができる。
【0011】
また、本発明に係る真空ダイカスト装置(1)において、前記アタッチメント(31)および前記アタッチメント取付穴(29)のそれぞれには、互いに螺合可能な雄ネジ(62)又は雌ネジ(61)が形成されており、前記アタッチメント(31)および前記アタッチメント取付穴(29)が螺合結合されていることとすることができる。
【0012】
さらに、本発明に係る真空ダイカスト装置(1)において、前記アタッチメント(31)は、前記ホース取付部(32)を複数有することとすることができる。
【0013】
なお、本発明に係る真空ダイカスト法は、上述した真空ダイカスト装置(1)を用いて真空ダイカストを行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ダイカスト金型の内部に真空引き用の回路を形成することなく真空ダイカスト法を行えるようにした真空ダイカスト装置および真空ダイカスト法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
本実施形態に係る真空ダイカスト装置および真空ダイカスト法について、
図1に基づき説明する。ここで、
図1は、本実施形態に係る真空ダイカスト装置の断面図である。
【0018】
本実施形態に係る真空ダイカスト装置1は、ダイカスト金型2を備えており、ダイカスト金型2は、固定型3と、この固定型3に当接・離間する可動型4とにより構成されている。固定型3と可動型4の当接面がダイカスト金型2の分割面(PL面)である。固定型3は、固定ホルダー3Aと、固定ホルダー3Aに収容固定されキャビティ5の一部を画成する固定ダイス3Bとを備える。固定ホルダー3Aには、給湯口6aが形成された射出スリーブ6が接続されている。射出スリーブ6には、給湯口6aから供給されたアルミニウム合金等の溶湯Mをキャビティ5に充填するための射出プランジャ7が往復摺動可能に設けられている。固定ホルダー3Aと固定ダイス3Bの分割面(ダイカスト金型2の分割面)には、排気ランナー3aが形成され、固定ホルダー3Aの上方には、排気ランナー3aに連通する真空バルブ8が収容配置されている。
【0019】
可動型4は、可動ホルダー4Aと、可動ホルダー4Aに収容固定された可動ダイス4Bとを備える。可動ダイス4Bは、固定ダイス3Bとともにキャビティ5を画成する。可動ホルダー4Aには、分流子9が収容固定されている。可動ダイス4Bの分割面(ダイカスト金型2の分割面)には、分流子9を介して溶湯Mをキャビティ5へ導くランナー4aが形成されている。可動ホルダー4Aと可動ダイス4Bには、押出ピン貫通孔10、11が、その一端側(
図1における紙面右側)をキャビティ5に開口して形成されている。押出ピン貫通孔10、11には、それぞれ押出ピン12、13が配置されている。押出ピン12、13の後端は、押出板14に固定され、この押出板14が図示せぬ駆動機構又は可動型4の開閉動作に協働する機構により駆動され、押出ピン10、11の先端(
図1における紙面右側の先端部)がキャビティ5に対して突出、後退可能となっている。
【0020】
可動ホルダー4Aの分割面(ダイカスト金型2の分割面)には、型締め時に固定ホルダー3Aと可動ホルダー4Aの間をシールするためのOリング等のシール部材15が設けられている。
【0021】
真空バルブ8は、排気ランナー3aの所定の位置に配置された図示せぬ溶湯感知センサーが溶湯Mを感知するまでは、後述する真空タンク17と排気ランナー3aとを連通する連通位置に保持され、溶湯感知センサーが溶湯Mを感知したときに、この連通を遮断する遮断位置に切換え可能となっている。なお、
図1では、連通位置に保持された真空バルブ8を示している。
【0022】
本実施形態に係る真空ダイカスト装置1では、真空タンク17が電磁弁19を介して真空バルブ8に接続されている。ここで電磁弁19は、真空バルブ8と真空タンク17とを連通させる連通位置と、両者間の連通を遮断する遮断位置とに切換え可能に設けられている。真空タンク17は、真空ポンプ18に接続されており、真空タンク17と真空ポンプ18が、本実施形態に係る真空排気手段を構成する。
【0023】
さらに、図示せぬ離型剤スプレー装置が、型開き時に固定型3と可動型4との間の空間を進退可能にダイカスト金型2の近傍に設けられる。また、ダイカスト品を取り出すための図示せぬロボットと、ダイカスト金型2を外部冷却するための図示せぬ冷却水供給装置とが、ダイカスト金型2の近傍に配置されている。
【0024】
そして、本実施形態に係る真空ダイカスト法では、固定型3と可動型4を開状態にして、図示せぬ離型剤スプレー装置を固定型3と可動型4との間の空間に侵入させ、キャビティ5に離型剤を塗布する。
【0025】
次に、固定型3と可動型4を閉じ、真空バルブ8が連通位置に保持されている状態で、電磁弁19を連通位置に切換えてキャビティ5を減圧する。こうしてキャビティ5の減圧を開始してキャビティ5を所定の真空度にした後に、射出プランジャ7により射出スリーブ6内の溶湯Mを加圧し、溶湯Mを分流子9およびランナー4aを介してキャビティ5に充填する。キャビティ5を充填した溶湯Mが排気ランナー3aに配置された図示せぬ溶湯感知センサーに感知されると、真空バルブ8が遮断位置に切換えられる。
【0026】
その後、型開きがなされ、押出板14が図示せぬ駆動機構又は可動型4の開閉動作に協働する機構により駆動されることにより、押出ピン12、13がダイカスト品をキャビティ5から分離させる。そして、図示せぬロボットがダイカスト品を取り出すとともに、図示せぬ冷却水供給装置が固定型3と可動型4を外部冷却することにより、本実施形態に係る真空ダイカスト法の一サイクルが終了する。
【0027】
以上、本実施形態に係る真空ダイカスト装置1の基本構成と、本実施形態に係る真空ダイカスト法についての説明を行った。次に、本実施形態に係る真空ダイカスト装置1が備える特徴的な構成について、
図2を用いて説明を行う。ここで、
図2は、本実施形態に係る真空ダイカスト装置の要部構成を説明するための概略断面図である。
【0028】
上述したように、本実施形態に係る真空ダイカスト装置1には、ダイカスト品をキャビティ5から分離させるための押出ピン12、13が可動型4に対して設置されている。そして、本実施形態では、この押出ピン12、13の設置箇所からキャビティ5を真空引きするための構成が採用されている。すなわち、本実施形態では、可動型4を構成する可動ホルダー4Aと可動ダイス4Bを貫通するように押出ピン貫通孔10、11が形成されており、この押出ピン貫通孔10、11に対して押出ピン12、13が軸方向で移動可能に構成されている。そして、押出ピン貫通孔10、11の反キャビティ側(つまり、可動ホルダー4Aの外周面側)の開口部に対してアタッチメント取付穴29が形成されている。アタッチメント取付穴29には、アタッチメント31が設置可能となっており、アタッチメント取付穴29に対してアタッチメント31を取り付けた状態で、押出ピン10、11の先端(
図1における紙面右側の先端部)がキャビティ5に対して突出、後退可能となっている。さらに、アタッチメント取付穴29は、押出ピン貫通孔10、11を介してキャビティ5と導通するように構成されているので、アタッチメント31を用いて真空引きを行うことで、押出ピン12、13の設置箇所からキャビティ5を真空引きすることができるようになっている。
【0029】
本実施形態に係るアタッチメント31は、押出ピン12、13を導通させるための貫通孔31aを有して構成されており、この貫通孔31aの外方側の開口端部には、スクレーパー35が設置されている。スクレーパー35は、アタッチメント31の貫通孔31aを導通する押出ピン12、13が、アタッチメント31に対して軸方向で往復移動可能としつつも外部からの空気の侵入を防止するためのシール部材として機能する部材である。また、スクレーパー35は、外部からの塵芥等のごみの侵入を防止する機能をも有している。
【0030】
また、本実施形態に係るアタッチメント31は、ホース取付部32を有して構成されている。このホース取付部32は、例えば、真空タンク17と真空ポンプ18とによって構成される真空排気手段と接続するホース33が有するホース接続部品34を取り付けることが可能な取付穴として構成される部位である。ホース33が有するホース接続部品34をホース取付部32に対して取り付けることにより、アタッチメント31の内部を介してキャビティ5を真空引きすることが可能となる。
【0031】
さらに、本実施形態に係るアタッチメント31には、可動ホルダー4Aに形成されたアタッチメント取付穴29との接続面に対してシール部材としてのOリング26が設置されている。また、アタッチメント取付穴29に対するアタッチメント31の取付状態を確実化するために、アタッチメント31の外周面には、押さえ板36が固定設置されている。この押さえ板36については、不図示かつ公知の固定手段によって構成することができ、アタッチメント31を可動ホルダー4Aに対して押し付けることのできるものであれば、どの様なものを採用しても良い。
【0032】
さて、上述したように、アタッチメント31はOリング26を介して可動ホルダー4Aに形成されたアタッチメント取付穴29に通気不能な状態で設置されており、アタッチメント31の貫通孔31aと押出ピン12、13とはスクレーパー35によって通気不能な状態で往復動可能に設置されており、さらに、可動ホルダー4Aと可動ダイス4Bとは、
図2にて示すように、こちらもシール部材としてのOリング28によって通気不能な状態で設置されている。したがって、アタッチメント31の内部から可動ホルダー4Aと可動ダイス4Bとを貫通して形成された押出ピン貫通孔10、11を経由してキャビティ5に至るまでの空間は、気密状態が維持されることとなる。したがって、真空タンク17と真空ポンプ18とによって構成される真空排気手段を動作させると、押出ピン貫通孔10、11とアタッチメント31の内部を介してキャビティ5が真空引きされ、押出ピン12、13の設置箇所での真空引きが実施されることとなる。
【0033】
なお、上述した本実施形態に係るアタッチメント31およびアタッチメント取付穴29による真空引きのための構成は、上述した可動ダイス4Bだけではなく、可動型4や固定型3のあらゆる部位に形成・設置することが可能であるため、設置の自由度が非常に高い構成となっている。また、従来技術のように、型の内部に真空引きのための回路を形成する必要が無いので、型の大型化を招くこともなく、既存のダイカスト金型に対しても容易に適用することができるので、コスト面からも非常に有利なものとなっている。
【0034】
以上、
図2を用いて、本実施形態に係る真空ダイカスト装置1が備える特徴的な構成であるアタッチメント31およびアタッチメント取付穴29による真空引きするための構成を説明した。ただし、本発明の構成は、
図2で例示した構成に限られるものではなく、あらゆる変形形態を採用することができる(なお、以下の変形例では、上述した本実施形態と同一又は類似する部材について、同一符号を付して説明を省略することとする。)。
【0035】
例えば、
図3は、本実施形態に係るアタッチメントの変形例を示す図であるが、
図3に示すように、本実施形態に係るアタッチメント31に対しては、複数のホース取付部32を形成することができる。
図3では、アタッチメント31に対して、2つのホース取付部32を形成した例が示されている。例えば、ダイカスト金型において複数の箇所で部分真空を行いたい場合には、
図2で示したアタッチメント31のホース取付部32と、
図3で示したアタッチメント31のホース取付部32とを1本のホース33で接続するとともに、
図3で示したアタッチメント31の残りのホース取付部32と真空排気手段をホース33で接続することで、ダイカスト金型2の外部に真空排気回路を形成することが可能となる。かかる構成は、真空排気手段を増設する必要性もなく、様々な形態の真空排気回路をダイカスト金型2の外部に形成することが容易にできるので、低コスト化を実現できるという効果を得ることができる。
【0036】
また例えば、
図2で例示した本実施形態に係るアタッチメント31は、可動ホルダー4Aに形成されたアタッチメント取付穴29に対して設置したものであったが、アタッチメント31を取り付けるためのアタッチメント取付穴29については、可動ダイス4Bに対して設けることも可能である。かかる変形形態例を、
図4に示す。ここで、
図4は、本実施形態に係るアタッチメントおよびアタッチメント取付穴の別の変形例を示す図である。
【0037】
図4で示す変形例の場合、押出ピン貫通孔10、11とアタッチメント取付穴29は、可動ダイス4Bに対して形成されており、この押出ピン貫通孔10、11に対して押出ピン12、13が軸方向で移動可能に構成されている。アタッチメント取付穴29には、アタッチメント31が設置可能となっている。一方、可動ホルダー4Aは、アタッチメント31の取り付けを阻害しないように開口部29aを有して構成されている。そして、可動ダイス4Bに形成されたアタッチメント取付穴29と、このアタッチメント取付穴29に設置されるアタッチメント31とは、アタッチメント31に設置されたシール部材としてのOリング26を介して設置されている。したがって、アタッチメント31はOリング26を介して可動ダイス4Bに形成されたアタッチメント取付穴29に通気不能な状態で設置されており、アタッチメント31の貫通孔31aと押出ピン12、13とはスクレーパー35によって通気不能な状態で往復動可能に設置されている。
【0038】
かかる構成を備えることにより、アタッチメント31の内部から可動ダイス4Bを貫通して形成された押出ピン貫通孔10、11を経由してキャビティ5に至るまでの空間は、気密状態が維持されることとなる。したがって、真空タンク17と真空ポンプ18とによって構成される真空排気手段を動作させると、押出ピン貫通孔10、11とアタッチメント31の内部を介してキャビティ5が真空引きされ、押出ピン12、13の設置箇所での真空引きが実施されることとなる。
【0039】
以上、
図2〜
図4を用いて、押出ピン12、13の設置箇所で真空引きを行うための本発明の構成を説明した。しかし、本発明の構成は、押出ピン12、13の設置箇所で真空引きを行うために用いられるだけでなく、例えば、鋳抜きピンに対しても適用することが可能である。そこで、鋳抜きピンに対して本発明を適用した場合の実施形態例について、
図5を用いて説明する。ここで、
図5は、本実施形態に係るアタッチメントを鋳抜きピンに対して適用した場合の形態例を示す図である。
【0040】
図5で例示する鋳抜きピン51は、可動ダイス4Bに設置されている。この鋳抜きピン51の内部には空洞51aが形成されており、空洞51a内には外部から高温の熱を受ける鋳抜きピン51を冷却するためのクーラー52が挿入設置されている。クーラー52は、外部から水等の冷却媒体の循環供給を受けることで、鋳抜きピン51から好適に熱を奪うことができるようになっている。
【0041】
さて、
図5で示す形態例では、可動型4を構成する可動ホルダー4Aと可動ダイス4Bを貫通するように鋳抜きピン設置孔110が形成されており、この鋳抜きピン設置孔110に対して鋳抜きピン51が設置されている。そして、鋳抜きピン設置孔110の反キャビティ側(つまり、可動ホルダー4Aの外周面側)の開口部に対してアタッチメント取付穴29が形成されている。アタッチメント取付穴29には、アタッチメント31が設置可能となっており、アタッチメント取付穴29に対してアタッチメント31を取り付けた状態で、アタッチメント31の内部空間(後述する貫通孔31a)とアタッチメント取付穴29および鋳抜きピン設置孔110と、キャビティ5とが導通するように構成されている。したがって、アタッチメント31を用いて真空引きを行うことで、鋳抜きピン51の設置箇所からキャビティ5を真空引きすることができるようになっている。
【0042】
アタッチメント31は、クーラー52を導通させるための貫通孔31aを有して構成されており、この貫通孔31aの外方側の開口端部には、シール部材としてのOリング55が設置されている。Oリング55は、アタッチメント31の貫通孔31aを導通するクーラー52を安定して設置しつつ、アタッチメント31の内部に対する空気の侵入を防止するためのシール部材として機能する部材である。
【0043】
また、アタッチメント31は、ホース取付部32を有して構成されている。このホース取付部32は、例えば、真空タンク17と真空ポンプ18とによって構成される真空排気手段と接続するホース33が有するホース接続部品34を取り付けることが可能な取付穴として構成される部位である。ホース33が有するホース接続部品34をホース取付部32に対して取り付けることにより、アタッチメント31の内部を介してキャビティ5を真空引きすることが可能となる。
【0044】
さらに、アタッチメント31には、可動ホルダー4Aに形成されたアタッチメント取付穴29との接続面に対してシール部材としてのOリング26が設置されている。また、アタッチメント取付穴29に対するアタッチメント31の取付状態を確実化するために、アタッチメント31の外周面には、押さえ板36が固定設置されている。この押さえ板36については、不図示かつ公知の固定手段によって構成することができ、アタッチメント31を可動ホルダー4Aに対して押し付けることのできるものであれば、どの様なものを採用しても良い。
【0045】
上述したように、アタッチメント31はOリング26を介して可動ホルダー4Aに形成されたアタッチメント取付穴29に通気不能な状態で設置されており、アタッチメント31の貫通孔31aとクーラー52とはOリング55によって通気不能な状態で設置されており、さらに、可動ホルダー4Aと可動ダイス4Bとは、こちらもシール部材としてのOリング28によって通気不能な状態で設置されている。かかる構成を備えることにより、アタッチメント31の内部の貫通孔31aから可動ホルダー4Aと可動ダイス4Bとを貫通して形成された鋳抜きピン設置孔110を経由してキャビティ5に至るまでの空間は、気密状態が維持されることとなる。したがって、真空タンク17と真空ポンプ18とによって構成される真空排気手段を動作させると、アタッチメント31の内部を介してキャビティ5が真空引きされ、鋳抜きピン51の設置箇所での真空引きが実施されることとなる。
【0046】
なお、
図5で例示したアタッチメント31およびアタッチメント取付穴29による真空引きのための構成は、上述した可動ダイス4Bだけではなく、可動型4や固定型3のあらゆる部位に形成・設置することが可能であるため、設置の自由度が非常に高い構成となっている。また、従来技術のように、型の内部に真空引きのための回路を形成する必要が無いので、型の大型化を招くこともなく、既存のダイカスト金型に対しても容易に適用することができるので、コスト面からも非常に有利なものとなっている。
【0047】
以上、
図5を用いて、アタッチメント31を鋳抜きピン51の設置箇所に対して適用した場合の形態例を説明した。なお、
図2〜
図5を用いて説明した形態例では、アタッチメント取付穴29に対するアタッチメント31の取り付けを、押さえ板36とOリング26とによって実現した場合を説明した。しかし、アタッチメント取付穴29に対するアタッチメント31の取り付け手段については、他のあらゆる設置手段を適用可能であり、例えば、ネジによる螺合結合手段を用いることも可能である。その変形例を
図6に示す。ここで、
図6は、
図5で例示したアタッチメント31およびアタッチメント取付穴29による真空引きを実現するための構成に対して、ネジによる螺合結合手段を適用した場合の変形例を示す図である。
【0048】
図6に示す変形例の場合、可動ホルダー4Aの外周面側に対してアタッチメント取付穴29が形成されている。このアタッチメント取付穴29の外方側の開口端部内面には、雌ネジ61が形成されている。一方、アタッチメント31の金型設置側の外周面には、雄ネジ62が形成されている。つまり、アタッチメント31およびアタッチメント取付穴29のそれぞれには、互いに螺合可能な雄ネジ62と雌ネジ61が形成されており、アタッチメント31およびアタッチメント取付穴29が螺合結合されることで、アタッチメント取付穴29に対するアタッチメント31の取り付けが実現できるのである。なお、螺合結合によるアタッチメント31とアタッチメント取付穴29の取り付けであっても、上述した押さえ板36とOリング26とによる取り付けの場合と同様に、好適なシール機能を発揮することができる。かかる構成を備えることにより、アタッチメント31の内部の貫通孔31aから可動ホルダー4Aと可動ダイス4Bとを貫通して形成された鋳抜きピン設置孔110を経由してキャビティ5に至るまでの空間は、気密状態が維持されることとなる。したがって、真空タンク17と真空ポンプ18とによって構成される真空排気手段を動作させると、アタッチメント31の内部を介してキャビティ5が真空引きされ、鋳抜きピン51の設置箇所での真空引きが実施されることとなる。よって、
図6に示す変形例の場合であっても、ダイカスト金型2の内部に真空引き用の回路を形成することなく真空ダイカスト法を行えるようにした真空ダイカスト装置および真空ダイカスト法を提供することができる。
【0049】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0050】
例えば、
図6で示した螺合結合によるアタッチメント31とアタッチメント取付穴29の取り付け手段については、鋳抜きピン51に対してのみ適用可能なものではなく、
図2〜
図4にて例示した押出ピン12、13に対しても適用可能である。
【0051】
また、上述した実施形態では、アタッチメント31とアタッチメント取付穴29の取り付けを、可動型4に対して行った場合を例示して説明したが、アタッチメント31とアタッチメント取付穴29の取り付け箇所については、固定型3に対して行うようにしても良い。すなわち、アタッチメント取付穴29の形成箇所については、固定ホルダー3A、固定ダイス3B、可動ホルダー4A又は可動ダイス4Bのいずれでも良く、これらの部材において押出ピン又は鋳抜きピン等のピン部材を配設するためのピン部材貫通孔が設けられている位置に形成することが可能である。
【0052】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。