(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平面視弧状にそれぞれ形成されると共に少なくとも一方が基端部側を中心として回動可能に構成されて各々の先端部側が閉じた閉状態においてクランプ対象を取り囲む環状体を構成する一対のクランプ部を備えたクランプセンサであって、
前記各クランプ部は、前記閉状態において互いに対向する対向面が前記各先端部にそれぞれ形成されると共に、前記各対向面から突出するように配設されて前記閉状態において互いに係合して当該各クランプ部の厚み方向への前記各先端部相互の移動を規制すると共に前記各対向面を互いに離間させる係合部を備えて構成され、
前記各対向面は、前記環状体における前記各クランプ部の前記先端部と前記基端部とを結ぶ方向に沿った直線を軸とする回動方向の外力が前記閉状態の当該各クランプ部に作用していないときに互いに平行となるように形成され、
前記係合部は、前記各対向面における前記厚み方向の両端部を除く位置に配設されて、前記回動方向の外力が前記閉状態の前記各クランプ部に作用して前記各対向面が回動する際の支点を構成するクランプセンサ。
前記係合部は、互いに離間して並ぶようにいずれか一方の前記対向面に配設された複数の第1突起部と、他方の前記対向面に配設されて前記閉状態において前記各第1突起部の間に位置する第2突起部とを備えて構成されている請求項1記載のクランプセンサ。
請求項1から5のいずれかに記載のクランプセンサと、当該クランプセンサによって検出された被検出量に基づいて前記クランプ対象についての被測定量を測定する測定部とを備えている測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、クランプセンサおよび測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0019】
最初に、測定装置の一例としての電流測定装置1の構成について、図面を参照して説明する。
図1に示す電流測定装置1は、例えば、電線400(クランプ対象の一例:
図2参照)に流れる電流(被測定量の一例)を測定可能に構成されている。具体的には、電流測定装置1は、
図1に示すように、装置本体2およびクランプセンサ3を備えて構成されている。
【0020】
装置本体2は、
図1に示すように、測定部2a、操作部2b、表示部2cおよび制御部2dを備えて構成されている。
【0021】
測定部2aは、制御部2dの制御に従い、クランプセンサ3によって検出された磁気(被検出量の一例)に基づいて電線400に流れる電流を測定する測定処理を実行する。
【0022】
操作部2bは、各種のスイッチを備えて構成され、各スイッチが操作されたときに操作信号を出力する。表示部2cは、制御部2dの制御に従って電流の測定値等を表示する。制御部2dは、操作部2bから出力される操作信号に従って装置本体2を構成する各部を制御する。
【0023】
クランプセンサ3は、クランプ対象としての電線400をクランプした状態(取り囲んだ状態:
図2参照)において検出量の一例としての磁気を検出可能に構成され、
図2,3に示すように、本体部10、固定アーム20および可動アーム50(以下、固定アーム20および可動アーム50を合わせて「アーム20,50」ともいう)を備えて構成されている。
【0024】
本体部10は、
図2,3に示すように、互いに嵌合可能な一対のケース11a,11bを備え、
図5に示すように、固定アーム20の基端部20b側、および可動アーム50の基端部50b側を収容可能に構成されている。また、
図2,3に示すように、本体部10の先端部10aには、固定アーム20の先端部20a側、および可動アーム50の先端部50a側を突出させる開口部10bが形成されている。また、本体部10の側部10cには、可動アーム50の基端部50bに設けられているレバー54レバー54を突出させる開口部10dが形成されている。
【0025】
固定アーム20は、
図6,7に示すように、互いに嵌合可能な一対のカバー21、コア41(
図7参照)および検出素子71(一例として、ホール素子:同図参照)を備えて構成されている。また、固定アーム20は、
図6に示すように、クランプ部22および支持部23を備えて構成されている。この場合、各カバー21の先端部21a側(
図7参照)がクランプ部22を構成し、カバー21の基端部21b側(同図参照)が支持部23を構成する。
【0026】
クランプ部22は、
図5に示すように、平面視弧状に形成されている。また、クランプ部22は、先端部22aと可動アーム50における後述するクランプ部52の先端部52aとが閉じた状態(以下、「閉状態」ともいう)において、クランプ対象としての電線400を取り囲む環状体300を構成する。
【0027】
また、
図6に示すように、クランプ部22の先端部22a(クランプ部22を構成する各カバー21の先端部21a)には、対向面31が形成されている。この対向面31は、閉状態において、可動アーム50におけるクランプ部52の先端部52aに形成されている後述する対向面61(
図8参照)に対向する。また、対向面31は、環状体300におけるクランプ部22,52の先端部22a,52aと各基端部22b,52bとを結ぶ方向(
図2,3における上下方向)に沿った直線(例えば、
図3に示す直線302)を軸とする回動方向B(
図3参照)の外力が閉状態のクランプ部22,52に作用していないときに、クランプ部52の対向面61に対して平行となるように形成されている(
図10参照)。
【0028】
また、対向面31には、
図6に示すように、係合部32が配設されている。係合部32は、互いに離間して並ぶように配設された突起部33a〜33d(第1突起部に相当する:以下、区別しないときには「突起部33」ともいう)を備えて構成されている。この場合、突起部33a〜33dは、同図に示すように、対向面31における、環状体300の中心軸301(
図3も参照)に平行なクランプ部22の厚み方向Aの端部31aを除く位置に配設されている。
【0029】
具体的には、このクランプセンサ3では、
図6に示すように、突起部33a,33bは、クランプ部22の外周側(同図における上側)の縁部における端部31aよりもクランプ部22の厚み方向Aの中央部31b(カバー21,21の接合部)側でかつ中央部31bを除く位置、より具体的には、中央部31bから同じ距離だけそれぞれ離間した2つの位置に配設されている。また、突起部33c,33dは、クランプ部22の内周側(同図における下側)の縁部における端部31aよりも中央部31b側でかつ中央部31bを除く位置、より具体的には、中央部31bから同じ距離だけそれぞれ離間した2つの位置にそれぞれ配設されている。
【0030】
この係合部32は、閉状態において、可動アーム50におけるクランプ部52の対向面61に配設されている後述する係合部62と互いに係合し(
図10参照)、クランプ部22,52の厚み方向Aへの(厚み方向Aに沿った)クランプ部22,52の先端部22a,52a相互の移動を規制すると共に、クランプ部22,52の対向面31,61を互いに離間させる機能を有している。また、係合部32は、閉状態のクランプ部22,52に回動方向B(
図3参照)の外力が作用してクランプ部22,52が回動した(捩れた)際に、これに伴って対向面31,61が回動(転向)する際の支点を構成する(支点として機能する:
図11参照)。
【0031】
また、クランプ部22には、
図7に示すように、コア41および検出素子71が配設されている。この場合、検出素子71は、クランプ部22の先端部22a(コア41の先端部と対向面31との間)に配設されている。
【0032】
支持部23は、
図6に示すように、クランプ部22の基端部22bに設けられている。また、支持部23は、
図5に示すように、ネジ80によって本体部10に取り付けられており、これによって、固定アーム20(クランプ部22および支持部23)が本体部10に固定されている。
【0033】
可動アーム50は、
図8,9に示すように、互いに嵌合可能な一対のカバー51,51、コア42(
図9参照)を備えて構成されている。また、可動アーム50は、
図8に示すように、クランプ部52、支持部53およびレバー54を備えて構成されている。この場合、カバー51の先端部51a側(
図9参照)がクランプ部52を構成し、カバー51の基端部51b側(同図参照)がレバー54を構成する。また、カバー51におけるクランプ部52の構成部分とレバー54の構成部分との間の部分が支持部53を構成する。
【0034】
クランプ部52は、
図5に示すように、平面視弧状に形成されている。また、クランプ部52は、基端部52b側に設けられている支持部53に配設された支持軸53aを中心として(つまり、基端部52b側を中心として)回動可能に構成されている。また、クランプ部52には、
図9に示すように、コア42が配設されている。
【0035】
また、
図8に示すように、クランプ部52の先端部52a(クランプ部52を構成する各カバー51の先端部51a)には、閉状態において、クランプ部22の対向面31に対向する対向面61が形成されている。また、対向面61は、回動方向B(
図3参照)の外力が閉状態のクランプ部22,52に作用していないときに、クランプ部22の対向面31に対して平行となるように形成されている(
図10参照)。
【0036】
また、対向面61には、
図8に示すように、係合部62が配設されている。係合部62は、互いに離間して並ぶように配設された突起部63a〜63d(第2突起部に相当する:以下、区別しないときには「突起部63」ともいう)を備えて構成されている。この場合、突起部63a〜63dは、同図に示すように、対向面61における、環状体300の中心軸301に平行なクランプ部52の厚み方向Aの端部61aを除く位置に配設されている。
【0037】
具体的には、このクランプセンサ3では、
図8に示すように、突起部63a,63bは、クランプ部52の外周側(同図における上側)の縁部における端部61aよりも厚み方向Aの中央部61b(カバー51,51の接合部)側でかつ中央部61bを除く位置、より具体的には、中央部61bから同じ距離だけそれぞれ離間した2つの位置にそれぞれ配設されている。また、突起部63a,63bの配設位置は、
図10に示すように、クランプ部22,52が閉状態のときに、クランプ部22における突起部33a,33bの間の隙間34aに位置する(挿入される)ように規定されている。
【0038】
また、突起部63c,63dは、クランプ部52の内周側(同図における下側)の縁部における端部61aよりも中央部61b側でかつ中央部61bを除く位置、より具体的には、中央部61bから同じ距離だけそれぞれ離間した2つの位置にそれぞれ配設されている。また、突起部63c,63dの配設位置は、
図10に示すように、クランプ部22,52が閉状態のときに、クランプ部22における突起部33c,33dの間の隙間34bに位置する(挿入される)ように規定されている。
【0039】
この係合部62は、閉状態において、クランプ部22の対向面31に配設されている係合部32と互いに係合し(
図10参照)、厚み方向Aへのクランプ部22,52の先端部22a,52a相互の移動を規制すると共に、クランプ部22,52の対向面31,61を互いに離間させる機能を有している。また、係合部62は、回動方向B(
図3参照)の外力が閉状態のクランプ部22,52に作用して対向面31,61が回動する際の支点を構成する(支点として機能する:
図11参照)。
【0040】
支持部53は、
図8に示すように、クランプ部52の基端部52bに設けられている。また、支持部53は、支持軸53a(
図5,9参照)によって本体部10に軸支されており、これによって可動アーム50(クランプ部52、支持部53およびレバー54)が支持軸53aを中心として回動可能となっている。また、支持部53と本体部10との間には、図外の付勢部材(例えば、ねじりコイルバネ)が配設されて、この付勢部材によってクランプ部22,52の先端部22a,52a同士が閉じる向きに可動アーム50(クランプ部52)が付勢されている。
【0041】
レバー54は、
図8に示すように、支持部53の端部に設けられている。このレバー54は、可動アーム50を回動させてクランプ部22,52の先端部22a,52aを開閉させる際に用いられる。この場合、
図4に示すように、レバー54を本体部10側に押し込んだときに、クランプ部22,52の先端部22a,52aが開いた状態(以下、「開状態」ともいう)となり、レバー54の押し込みを解除したときには、付勢部材の付勢力によって先端部22a,52aが閉状態となる。
【0042】
次に、電流測定装置1の使用方法について、図面を参照して説明する。
【0043】
この電流測定装置1のクランプセンサ3では、非使用時(初期状態)において、
図2,3に示すように、クランプ部22,52の先端部22a,52aが閉じた閉状態となっている。この閉状態では、
図10に示すように、アーム20,50におけるクランプ部22,52の対向面31,61が互いに対向し、クランプ部22,52の係合部32,62が互いに係合している。具体的には、係合部32を構成する突起部33a,33bの間の隙間34aに係合部62を構成する突起部63a,63bが位置し、係合部32を構成する突起部33c,33dの間の隙間34bに係合部62を構成する突起部63c,63dが位置している。
【0044】
また、係合部32,62の係合により、厚み方向A(
図10参照)へのクランプ部22,52の先端部22a,52a相互の移動が規制されると共に、クランプ部22,52の対向面31,61が互いに離間している。また、非使用時では、回動方向B(
図3参照)の外力が閉状態のクランプ部22,52に作用していないため、
図10に示すように、対向面31,61が互いに平行な状態に維持されている。また、この状態では、クランプ部52の突起部63a〜63dの先端部が、クランプ部22の対向面31に当接している。
【0045】
例えば、クランプ対象としての電線400(
図2参照)に流れている被測定量としての電流を測定する際には、まず、クランプセンサ3のクランプ部22,52でクランプ対象の電線400をクランプする。具体的には、
図4に示すように、可動アーム50のレバー54を本体部10側に押し込む。この際に、クランプ部52が基端部52b側(支持軸53a)を中心として回動し、クランプ部52の先端部52aがクランプ部22の先端部22aから離反し、先端部22a,52aが開いた開状態となる。
【0046】
次いで、開状態のクランプ部22,52を電線400に近づけ、クランプ部22,52の先端部22a,52a間の隙間に電線400を通過させ、
図4に示すように、クランプ部22,52によって挟まれた領域に電線400を位置させる。
【0047】
続いて、レバー54の押し込みを解除する。この際に、付勢部材の付勢力により、クランプ部22の先端部22aにクランプ部52の先端部52aが近接する向きにクランプ部52が回動し、先端部22a,52aが閉状態となる。これにより、
図2に示すように、クランプ部22,52によって電線400がクランプされ、電線400を取り囲む環状体300がクランプ部22,52によって構成される。また、クランプ部22,52で電線400をクランプしたときに、クランプ部22に配設されている検出素子71が、電線400に流れる電流によって生じる磁気を検出して検出信号を出力する。
【0048】
ここで、例えば、電線400をクランプしているときに、電線400とクランプ部22,52とが接触して、
図11に示すように、閉状態のクランプ部22,52に回動方向Bの外力が作用したときには、クランプ部22,52の回動(捩れ)に伴って対向面31,61が回動方向Bに回動(転向)する。このクランプセンサ3では、対向面31,61同士が当接せずに離間し、対向面31,61から突出するように形成された突起部33で構成された係合部32、および突起部63で構成された係合部62が係合している。このため、同図に示すように、係合部分(この例では、突起部63a,63cの先端部)を支点として対向面31,61が回動する。
【0049】
一方、
図12に示すように、閉状態において対向面31,61同士が当接する(同図に実線で示す状態となる)従来の構成では、回動方向Bの外力が閉状態のクランプ部22,52に作用したときに、同図に破線で示すように、対向面31,61の一方の端部(同図の例では、下端部)を支点として回動し、対向面31,61における他方の端部(同図の例では、上端部)において、対向面31,61が最も離間する。この場合、対向面31,61が回動する角度(クランプ部22,52の捩れ角)をθとし、対向面31,61の厚み方向Aの長さをT2とすると、対向面31,61が最も離間する端部における離間距離L3(同図参照)は、L3≒θ×T2となる。つまり、この構成では、対向面31,61の回動の前後において、対向面31,61の距離が最大でL3≒θ×T2だけ変化する。
【0050】
これに対して、このクランプセンサ3では、回動方向Bの外力が作用していないときの離間距離をL0(
図10参照)、外力が作用したときの離間距離をL2(
図11参照)とすると、対向面31,61の回動の前後における対向面31,61の離間距離の最大の変化量L1(L2−L0)は、対向面31,61が回動する角度をθとし、支点となる突起部63a,63cの先端部の位置から対向面31,61の端部(
図11における上端部)までの長さをT1とすると、距離が最大でL1≒θ×T1だけ変化する。この場合、このクランプセンサ3では、突起部33が、対向面31における端部31aを除く位置、つまり端部31aよりも厚み方向Aの中央部31b側に配設され、突起部63が、対向面61における端部61aを除く位置、つまり端部61aよりも厚み方向Aの中央部61b側に配設されている。このため、このクランプセンサ3では、対向面31,61が回動する際に支点となる位置から対向面31,61が最も離間する厚み方向Aの端部までの長さ(上記したT1)が対向面31,61の厚み方向Aの長さT2よりも短くなる。したがって、このクランプセンサ3では、対向面31,61が回動する角度が同じとき、つまりクランプ部22,52に作用する回動方向Bの外力が同じときには、従来の構成と比較して、対向面31,61の回動の前後における対向面31,61の離間距離の最大の変化量を少なく抑えられることが明らかである。
【0051】
また、このクランプセンサ3では、対向面31における厚み方向Aの中央部31bを除く位置に突起部33が配設され、対向面61における厚み方向Aの中央部61bを除く位置に突起部63が配設されている。ここで、このクランプセンサ3では、2つのカバー21を接合することによってクランプ部22が構成されており、各カバー21の接合部位が対向面31の中央部31bに位置している。また、各カバー21は溶着によって接合されているため、一般的に、接合部位が盛り上がっている(他の部分よりも突出している)。このため、例えば、突起部63が対向面61の中央部61bに配設されている構成では、閉状態において突起部63の先端部が対向面31の中央部31b、つまり溶着によって盛り上がった部分に当接することとなる。
【0052】
この場合、溶着によって盛り上がった部分は、突起部63の先端部との接触が繰り返されることで、次第に押しつぶされる。このため、突起部63が対向面61の中央部61bに配設されている構成では、対向面31,61の離間距離が使用回数を重ねるに従って変化する(近接する)こととなる。これに対して、このクランプセンサ3では、上記したように、対向面61の中央部61bを除く位置に突起部63が配設されているため、突起部63の先端部が対向面31の中央部31b(溶着によって盛り上がった部分)に当接することがない。このため、このクランプセンサ3では、溶着によって盛り上がった部分が突起部63との当接によって押しつぶされることに起因する対向面31,61の離間距離の変化を確実に防止することが可能となっている。
【0053】
次いで、装置本体2の操作部2bを操作して測定開始を指示する。この際に、装置本体2の制御部2dが測定部2aを制御して、測定処理を実行させる。この測定処理では、測定部2aは、クランプセンサ3の検出素子71から出力された検出信号(クランプセンサ3によって検出された検出量としての磁気)に基づいて電線400に流れる電流(クランプ対象についての被測定量)を測定する。続いて、制御部2dが、表示部2cを制御して、測定部2aによって測定された電流の値を表示させる。
【0054】
この場合、このクランプセンサ3では、回動方向Bの外力が閉状態のクランプ部22,52に作用したとしても、上記したように、クランプ部22,52の回動に伴う対向面31,61間の離間距離の最大の変化量が少なく抑えられている。このため、このクランプセンサ3および電流測定装置1では、対向面31,61間の離間距離の変動による検出特性の変化を少なく抑えることができる結果、被検出量の検出精度、および被検出量に基づく被測定量の測定精度の低下を確実に抑制することが可能となっている。
【0055】
次いで、測定が終了したときには、レバー54を押し込むことによってクランプ部22,52を開状態とさせ、続いて、クランプ部22,52の先端部22a,52aの間の隙間に電線400を通過させるようにしてクランプセンサ3を電線400から離反させる。次いで、レバー54の押し込みを解除して、クランプ部22,52を閉状態とさせる。続いて、他の電線400に流れる電流を測定する際には、上記した操作を実行する。
【0056】
このように、このクランプセンサ3および電流測定装置1によれば、回動方向Bの外力がクランプ部22,52に作用して対向面31,61が回動する際の支点を構成する係合部32,62を対向面31,61における厚み方向Aの端部31a,61aを除く位置に配設したことにより、対向面31,61が回動する際の支点から対向面31,61が最も離間する位置までの長さを、閉状態において対向面31,61同士が当接する従来の構成よりも短くすることができる。このため、このクランプセンサ3および電流測定装置1によれば、回動の前後における対向面31,61の離間距離の最大の変化量を少なく抑えることができる。したがって、このクランプセンサ3および電流測定装置1によれば、回動方向Bに外力がクランプ部22,52に作用したときの対向面31,61間の離間距離の変動による検出特性の変化を少なく抑えることができる結果、被検出量の検出精度、および被検出量に基づく被測定量の測定精度の低下を確実に抑制することができる。
【0057】
また、このクランプセンサ3および電流測定装置1によれば、互いに離間して並ぶように対向面31に配設された複数の突起部33と、対向面61に配設されて閉状態において各突起部33の間に位置する突起部63とを備えて係合部32,62を構成したことにより、簡易な構成でありながら、厚み方向Aへの先端部22a,52a相互の移動を規制する機能、対向面31,61を互いに離間させる機能、および対向面31,61が回動する際の支点としての機能を、係合部32,62に確実に発揮させることができる。このため、係合部32,62の構成が複雑なことに起因する動作不良を低減させることができると共に、係合部32,62の構成が簡易な分、クランプセンサ3および電流測定装置1の製造コストを十分に低減させることができる。
【0058】
また、このクランプセンサ3および電流測定装置1によれば、対向面31における厚み方向Aの中央部31bを除く位置に突起部33を配設し、対向面61における厚み方向Aの中央部61bを除く位置に突起部63を配設したことにより、例えば、対向面31の中央部31bに溶着によって盛り上がった部分が存在しているとしても、その部分に突起部63の先端部が当接することを回避することができる。このため、このクランプセンサ3および電流測定装置1によれば、溶着によって盛り上がった部分が突起部63との当接によって押しつぶされることに起因する対向面31,61の離間距離の変化を確実に防止することができる。
【0059】
次に、クランプセンサの他の例としての
図13に示すクランプセンサ103について説明する。なお、以下の説明において、上記したクランプセンサ3と同じ構成要素についての図示、および重複する説明を省略する。このクランプセンサ103は、同図に示すように、固定アーム120および可動アーム150を備えている。また、固定アーム120は、クランプ部122を備え、可動アーム150は、クランプ部152を備えている。また、クランプ部122の先端部122aには、対向面131が形成され、クランプ部152の先端部152aには、対向面161が形成されている。対向面131,161は、閉状態において、互いに対向し、回動方向Bの外力が閉状態のクランプ部122,152に作用していないときに、互いに平行となるように形成されている。
【0060】
また、対向面131には、
図13に示すように、係合部132が配設されている。係合部132は、互いに離間して並ぶように配設された突起部133a〜133d(第1突起部に相当する:以下、区別しないときには「突起部133」ともいう)を備えて構成されている。この場合、各突起部133は、同図に示すように、対向面131における厚み方向Aの端部131aを除く位置に配設されている。
【0061】
具体的には、突起部133a,133bは、クランプ部122の外周側(
図13における紙面手前側)の縁部における端部131aよりも厚み方向Aの中央部131b側でかつ中央部131bを除く位置、より具体的には、中央部131bから同じ距離だけそれぞれ離間した2つの位置に配設されている。また、突起部133c,133dは、クランプ部122の内周側(同図における紙面奥側)の縁部における端部131aよりも中央部131b側でかつ中央部131bを除く位置、より具体的には、中央部131bから同じ距離だけそれぞれ離間した2つの位置にそれぞれ配設されている。また、各突起部133は、閉状態において先端部がクランプ部152の対向面161に当接するように構成されている。
【0062】
また、対向面161には、
図13に示すように、係合部162が配設されている。係合部162は、突起部163a,163b(第2突起部に相当する:以下、区別しないときには「突起部163」ともいう)を備えて構成されている。この場合、各突起部163は、対向面161における厚み方向Aの端部161aを除く位置に配設されている。具体的には、突起部163aは、対向面161におけるクランプ部122の外周側(同図における紙面手前側)の縁部であって、かつ対向面161における厚み方向Aの中央部161bに配設され、閉状態において突起部133a,133bの間の隙間134aに位置するようになっている。また、突起部163bは、対向面161におけるクランプ部122の内周側(同図における紙面奥側)の縁部であって、かつ対向面161における厚み方向Aの中央部161bに配設され、閉状態において突起部133c,133dの間の隙間134bに位置するようになっている。また、各突起部163は、閉状態において先端部がクランプ部122における対向面131(この例では、中央部131b)から離間するように構成されている。
【0063】
このクランプセンサ103では、回動方向Bの外力がクランプ部122,152に作用したときに、突起部133の先端部(対向面161との接触部分)を支点として対向面131,161が回動する。
【0064】
このクランプセンサ103においても、係合部132,162が対向面131,161における厚み方向Aの端部131a,161aを除く位置に配設されているため、対向面131,161が回動する際の支点から対向面131,161が最も離間する位置までの長さを、従来の構成よりも短くすることができる。したがって、このクランプセンサ103においても、回動の前後における対向面131,161の離間距離の最大の変化量を少なく抑えることができるため、対向面131,161間の離間距離の変動による検出特性の変化を少なく抑えることができる結果、被検出量の低下を確実に抑制することができる。
【0065】
また、このクランプセンサ103では、対向面131における厚み方向Aの中央部131bを除く位置に各突起部133が配設され、対向面161における厚み方向Aの中央部161bに突起部163が配設されている。このため、このクランプセンサ103によれば、中央部161bを除く位置に突起部163が配設されている構成と比較して、対向面131,161が回動する際の支点となる各突起部133の配設位置を対向面131の中央部131bに近付けることができる結果、支点(突起部133の先端部)から対向面131,161が最も離間する位置までの長さをさらに短くすることができる。
【0066】
また、このクランプセンサ103では、閉状態において各突起部163の先端部がクランプ部122における対向面131(この例では、中央部131b)から離間するように構成されている。このため、このクランプセンサ103によれば、例えば、対向面131の中央部131bに溶着によって盛り上がった部分が存在しているとしても、その部分に突起部163の先端部が当接することを回避することができるため、盛り上がった部分が突起部163との当接によって押しつぶされることに起因する対向面131,161の離間距離の変化を確実に防止することができる。
【0067】
次に、クランプセンサの他の例としての
図14に示すクランプセンサ203について説明する。なお、以下の説明において、上記したクランプセンサ3,103と同じ構成要素についての図示、および重複する説明を省略する。このクランプセンサ203は、同図に示すように、固定アーム220および可動アーム250を備えている。また、固定アーム220は、クランプ部222を備え、可動アーム250は、クランプ部252を備えている。また、クランプ部222の先端部222aには、対向面231が形成され、クランプ部252の先端部252aには、対向面261が形成されている。対向面231,261は、閉状態において、互いに対向し、回動方向Bの外力が閉状態のクランプ部222,252に作用していないときに、互いに平行となるように形成されている。
【0068】
また、対向面231には、
図14に示すように、係合部232が配設されている。係合部232は、互いに離間して並ぶように配設された突起部233a〜233d(第1突起部に相当する:以下、区別しないときには「突起部233」ともいう)を備えて構成されている。この場合、各突起部233は、同図に示すように、対向面231における厚み方向Aの端部231aを除く位置に配設されている。
【0069】
具体的には、突起部233a,233bは、クランプ部222の外周側(
図14における紙面手前側)の縁部における端部231aよりも厚み方向Aの中央部231b側でかつ中央部231bを除く位置、より具体的には、中央部231bから同じ距離だけそれぞれ離間した2つの位置に配設されている。また、突起部233c,233dは、クランプ部222の内周側(同図における紙面奥側)の縁部における端部231aよりも中央部231b側でかつ中央部231bを除く位置、より具体的には、中央部231bから同じ距離だけそれぞれ離間した2つの位置にそれぞれ配設されている。また、各突起部233は、閉状態において先端部がクランプ部252の対向面261から離間するように構成されている。
【0070】
また、対向面261には、
図14に示すように、係合部262が配設されている。係合部262は、突起部263a,263b(第2突起部に相当する:以下、区別しないときには「突起部263」ともいう)を備えて構成されている。この場合、各突起部263は、対向面261における厚み方向Aの端部261aを除く位置に配設されている。具体的には、突起部263aは、対向面261におけるクランプ部222の外周側(同図における紙面手前側)の縁部であって、かつ対向面261における厚み方向Aの中央部261bに配設され、閉状態において突起部233a,233bの間の隙間234aに位置するようになっている。また、突起部263bは、対向面261におけるクランプ部222の内周側(同図における紙面奥側)の縁部であって、かつ対向面261における厚み方向Aの中央部261bに配設され、閉状態において突起部233c,233dの間の隙間234bに位置するようになっている。また、各突起部263は、閉状態において先端部がクランプ部222における対向面231(この例では、中央部231b)に当接するように構成されている。
【0071】
このクランプセンサ203では、回動方向Bの外力がクランプ部222,252に作用したときに、突起部263の先端部(対向面231との接触部分)を支点として対向面231,261が回動する。
【0072】
このクランプセンサ203においても、係合部232,262が対向面231,261における厚み方向Aの端部231a,261aを除く位置に配設されているため、対向面231,261が回動する際の支点から対向面231,261が最も離間する位置までの長さを、従来の構成よりも短くすることができる。したがって、このクランプセンサ203においても、回動の前後における対向面231,261の離間距離の最大の変化量を少なく抑えることができるため、対向面231,261間の離間距離の変動による検出特性の変化を少なく抑えることができる結果、被検出量の検出精度の低下を確実に抑制することができる。
【0073】
また、このクランプセンサ203では、対向面261の中央部261bに突起部263が配設され、閉状態において各突起部263の先端部がクランプ部222における対向面231に当接するように構成されている。このため、このクランプセンサ203によれば、対向面231,261が回動する際の支点(突起部233の先端部)から対向面231,261が最も離間する位置までの長さを一層短くすることができる。
【0074】
なお、クランプセンサおよび測定装置の構成は、上記の構成に限定されない。例えば、係合部を4つの第1突起部、および4つまたは2つの第2突起部で構成した例について上記したが、係合部を構成する突起部の数は、上記の例の数に限定されず任意に規定することができる。
【0075】
また、クランプ部22の対向面31に突起部33(第1突起部)を配設し、クランプ部52の対向面61に突起部63(第2突起部)を配設した例について上記したが、対向面31に突起部63を配設し、対向面61に突起部33を配設する構成を採用することもできる。また、クランプ部122の対向面131に突起部133(第1突起部)を配設し、クランプ部152の対向面161に突起部163(第2突起部)を配設した例について上記したが、対向面131に突起部163を配設し、対向面161に突起部133を配設する構成を採用することもできる。さらに、クランプ部222の対向面231に突起部233(第1突起部)を配設し、クランプ部252の対向面261に突起部263(第2突起部)を配設した例について上記したが、対向面231に突起部263を配設し、対向面261に突起部233を配設する構成を採用することもできる。
【0076】
また、閉状態において、第2突起部が2つの第1突起部の間に位置する構成例について上記したが、閉状態において、第2突起部が各第1突起部の外側(厚み方向Aの端部側)に位置する構成を採用することもできる。また、閉状態において、複数の第2突起部のうちの一部が2つの各第1突起部の間に位置し、他の第2突起部が各第1突起部の外側に位置する構成を採用することもできる。
【0077】
また、2つのクランプ部22,52の一方が固定され(回動せず)他の一方のみが回動可能とした構成例について上記したが、2つのクランプ部22,52の双方を回動可能とする構成を採用することもできる。
【0078】
クランプ部22に検出素子71を配設した例について上記したが、クランプ部52に検出素子71を配設する構成や、クランプ部22およびクランプ部52の双方に検出素子71を配設する構成を採用することもできる。
【0079】
また、検出素子71としてホール素子を用いる構成例について上記したが、磁気抵抗効果素子、磁気インピーダンス素子、フラックスゲートセンサ等の磁気検出素子を検出素子71として用いる構成を採用することもできる。
【0080】
また、測定装置の一例として、クランプセンサ3によって検出された被検出量に基づいて被測定量としての電流を測定する電流測定装置1を例に挙げて説明したが、クランプセンサ3によって検出された被検出量に基づいて他の物理量(例えば、抵抗や電力)を測定する測定装置に適用することもできる。