特許第6498554号(P6498554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498554
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】散水車
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/30 20060101AFI20190401BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20190401BHJP
   E01H 3/02 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   B60P3/30
   G01C21/26 A
   E01H3/02
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-144660(P2015-144660)
(22)【出願日】2015年7月22日
(65)【公開番号】特開2017-24541(P2017-24541A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】速水 健一
(72)【発明者】
【氏名】高山 英孝
(72)【発明者】
【氏名】遠山 祥敬
【審査官】 中野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−151614(JP,A)
【文献】 特開2005−176741(JP,A)
【文献】 特開2014−092377(JP,A)
【文献】 特開平08−237810(JP,A)
【文献】 特開平08−120635(JP,A)
【文献】 特開2011−008383(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−0940610(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/30
E01H 3/02
H01H 10/00
G01C 21/00 − 21/36
G01C 23/00 − 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を収容するタンクと、
散水量の調整が可能に構成され、前記タンクの水を散布する散水装置と、
前記散水装置の散水量を制御する制御装置と、
前記タンクの水量を検出する水量センサと、
GPS信号を受信するGPS受信機と、
予め設定された複数の散水コースが記憶された散水コースデータベースと、
作業員によって操作され、前記複数の散水コースのうちのいずれかを選択する散水コース選択装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記GPS受信機によって受信された前記GPS信号から特定される現在位置と、前記散水コース選択装置によって選択された散水コースの終点の位置とから、残りの散水区間の距離を特定する残区間特定部と、
前記水量センサにより検出された前記タンクの水量と、前記残区間特定部により特定された残りの散水区間の距離とに基づいて、前記散水装置の散水量を制御する散水量制御部と、
を有している、散水車。
【請求項2】
前記散水量制御部は、単位走行距離当たりの散水量が一定になるよう前記散水装置の散水量を制御するように構成されている、請求項1に記載の散水車。
【請求項3】
車速を検出する車速センサを備え、
前記散水量制御部は、車速が大きいほど単位時間当たりの散水量が多くなるように前記散水装置を制御するように構成されている、請求項2に記載の散水車。
【請求項4】
作業員により制御開始の指示が入力される入力装置を備え、
前記残区間特定部は、前記入力装置が入力されると前記残りの散水区間の距離を特定し、
前記散水量制御部は、前記残区間特定部が前記残りの散水距離を特定すると前記散水装置の散水量の制御を開始するように構成されている、請求項1〜3のいずれか一つに記載の散水車。
【請求項5】
前記散水コースには、第1の散水区間と、非散水区間を挟んで前記第1の散水区間と隣り合う第2の散水区間とが含まれ、
前記残区間特定部および前記散水量制御部は、前記第1の散水区間を走行した後、前記非散水区間において前記入力装置が入力されると、前記第2の散水区間の始点を残りの散水区間の始点とする、請求項4に記載の散水車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は散水車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高速道路等の道路上に水を散布するために散水車が用いられている。散水車は、予め定められた散水区間を走行しながら、タンク内の水を散布する。特許文献1には、道路に設けられたキロポストおよびGPS(Global Positioning System)を利用して現在位置を特定することができる散水車が開示されている。
【0003】
従来の散水車では、例えば以下のようにして散水作業が行われていた。すなわち、初期の区間では一定の散水量で散水を行い、散水作業がある程度進んだ後、作業員がタンクの水の残量を考慮して散水量を変更する。その際、作業員は、タンクの水の残量とともに残りの区間の距離を推定し、残りの区間を一定の車速で走行した場合にタンクの水を全て使い切るように、経験と勘に基づいて変更後の散水量を決定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−8383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の散水作業では、散水量の変更は作業員の経験と勘に基づいて行われていたため、変更後の散水量が多すぎたり少なすぎたりする場合があった。しかし、変更後の散水量が多すぎると、散水区間の終点に到達する前にタンクの水を使い切ってしまい、一部の区間の散水を行うことができない。一方、変更後の散水量が少なすぎると、終点到達時にタンクに水が余ってしまい、タンクの水を使い切ることができない。
【0006】
ここで、タンクの水を使い切ることができるよう、散水量の変更を頻繁に行うことが考えられる。しかし、散水量の変更を頻繁に行うことは、作業員によって負担が大きい。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、所定区間の散水作業において、作業員に負担をかけずにタンクの水を過不足なく使用できる散水車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る散水車は、水を収容するタンクと、散水量の調整が可能に構成され、前記タンクの水を散布する散水装置と、前記散水装置の散水量を制御する制御装置と、前記タンクの水量を検出する水量センサ、GPS信号を受信するGPS受信機と、予め設定された複数の散水コースが記憶された散水コースデータベースと、作業員によって操作され、前記複数の散水コースのうちのいずれかを選択する散水コース選択装置と、を備える。前記制御装置は、前記GPS受信機によって受信された前記GPS信号から特定される現在位置と、前記散水コース選択装置によって選択された散水コースの終点の位置とから、残りの散水区間の距離を特定する残区間特定部と、前記水量センサにより検出された前記タンクの水量と、前記残区間特定部により特定された残りの散水区間の距離とに基づいて、前記散水装置の散水量を制御する散水量制御部と、を有している。
【0009】
上記散水車によれば、GPS信号から特定される現在位置と、選択された散水コースの終点の位置とから、残りの散水区間の距離を特定するので、残りの散水区間の距離を正確に特定することができる。そして、タンクの水量と上記残りの散水区間の距離とに基づいて、散水装置の散水量が制御される。よって、散水区間の終点に到達する前にタンクの水を使い切ったり、終点到達時にタンクに水が余ってしまうことを避けることができる。また、作業員が自ら散水量の変更を行う必要がないので、作業員に負担をかけることがない。したがって、上記散水車によれば、作業員に負担をかけずにタンクの水を過不足なく使用することができる。
【0010】
本発明の好ましい一態様によれば、前記散水量制御部は、単位走行距離当たりの散水量が一定になるよう前記散水装置の散水量を制御するように構成されている。
【0011】
散水作業では水を均一に散布することが好ましい。上記態様によれば、残りの散水区間において水を均一に散布することができる。
【0012】
本発明の好ましい他の一態様によれば、車速を検出する車速センサを備える。前記散水量制御部は、車速が大きいほど単位時間当たりの散水量が多くなるように前記散水装置を制御するように構成されている。
【0013】
上記態様によれば、車速が大きい場合には単位時間当たりの散水量が自動的に多くなり、逆に、車速が小さい場合には単位時間当たりの散水量が自動的に少なくなる。それにより、単位走行距離当たりの散水量が一定に保たれ、水を均一に散布することができる。
【0014】
本発明の好ましい他の一態様によれば、作業員により制御開始の指示が入力される入力装置を備える。前記残区間特定部は、前記入力装置が入力されると前記残りの散水区間の距離を特定し、前記散水量制御部は、前記残区間特定部が前記残りの散水距離を特定すると前記散水装置の散水量の制御を開始するように構成されている。
【0015】
上記態様によれば、前記制御を開始する地点をユーザが自由に決めることができ、利便性が向上する。
【0016】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記散水コースには、第1の散水区間と、非散水区間を挟んで前記第1の散水区間と隣り合う第2の散水区間とが含まれる。前記残区間特定部および前記散水量制御部は、前記第1の散水区間を走行した後、前記非散水区間において前記入力装置が入力されると、前記第2の散水区間の始点を残りの散水区間の始点とする。
【0017】
散水コースの散水区間は必ずしも連続した一つの区間とは限らず、離間した複数の区間である場合がある。上記態様によれば、非散水区間において前記制御の開始が指示された場合、第2の散水区間の始点を残りの散水区間の始点とする。そのため、非散水区間にて前記制御の開始が指示された場合でも、散水区間においてタンクの水を過不足なく使用することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、所定区間の散水作業において、作業員に負担をかけずにタンクの水を過不足なく使用できる散水車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の一形態に係る散水車の側面図である。
図2】前記散水車の散水装置の構成を示すブロック図である。
図3】前記散水車の制御装置および各種機器の構成を示すブロック図である。
図4】(a)および(b)は、キロポストを利用した散水コースの例を示す図である。
図5】(a)および(b)は、残区間特定部により特定される残りの散水区間の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る散水車1について説明する。図1に示すように、散水車1は、運転室2と、水を収容するタンク3と、タンク3の水を散布する散水装置4とを備えている。
【0021】
散水装置4は、車両の前部から水を散布する前方ノズル11と、車両の後部から水を散布する後方ノズル12とを有している。図2に示すように散水装置4は、タンク3、前方ノズル11、および後方ノズル12を接続する配管6と、配管6を通じてタンク3から前方ノズル11および後方ノズル12に水を送るポンプ5と、を有している。ポンプ5と前方ノズル11との間には弁13が設けられ、ポンプ5と後方ノズル12との間には弁14が設けられている。ポンプ5は送液量の調整が可能なポンプであってもよく、弁13および弁14は流量調整が可能な弁であってもよい。散水装置4は、前方ノズル11および後方ノズル12から散布する水の量、すなわち散水量の調整が可能に構成されている。散水装置4は、ポンプ5の送液量を調整することにより散水量の調整が可能に構成されていてもよく、弁13および弁14で水の流量を調整することにより散水量の調整が可能に構成されていてもよい。本実施形態では、ポンプ5は遠心式ポンプからなり、その回転数が調整可能に構成されている。弁13および弁14は、開状態と閉状態とに切り換えられる弁により構成されている。ただし、散水装置4の上記構成は一例に過ぎず、散水装置4の構成は何ら限定されない。
【0022】
図3に示すように、散水車1は、GPS信号を受信するGPS受信機15と、GPS受信機15が受信したGPS信号から散水車1の現在位置を取得する車両位置検出装置16と、散水車1の車速を検出する車速センサ17と、散水車1のエンジン(図示せず)の回転数を検出するエンジン回転数センサ18と、タンク3の水位を検出する水位センサ19と、ポンプ5の回転数を検出するポンプ回転数センサ20と、弁13および弁14の開閉状態を検出する弁状態検出センサ21と、散水コース選択装置22と、制御開始スイッチ23と、表示装置28とを備えている。本実施形態では、タンク3に収容されている水の量(水量)はタンク3の水位に基づいて検出される。水位センサ19は、タンク3の水量を検出する水量センサの一例である。ただし、水量センサは水位センサ19に限定されない。水量センサは、例えばタンク3の水の重量を検出するセンサであってもよい。表示装置28は、例えば運転室2内に設けられたディスプレイである。散水コース選択装置22は、散水コースデータベース26に記憶されている予め定められた複数の散水コースのうちから、いずれか一つの散水コースを選択するときに作業員によって操作されるものである。なお、作業員は散水装置4を操作する人のことであり、例えば、運転室2の運転席(図示せず)に座る運転手または助手席(図示せず)に座る他の乗員などである。
【0023】
散水車1は、複数のキロポストの位置の情報が記憶されたキロポストデータベース27を備えている。散水コースは、キロポストを利用して設定されていてもよい。例えば図4(a)に示すように、散水コースとして、始点となるキロポストKPsと終点となるキロポストKPeとを設定しておき、それらキロポストKPsとKPeとの間の区間を散水区間としてもよい。この場合、散水車1は、始点キロポストKPsを通過するときに散水を開始し、終点キロポストKPeに到達したときに散水を終了する。
【0024】
また、散水コースは、散水を行う散水区間と、散水を行わない非散水区間とを含んでいてもよい。例えば図4(b)に示すように、散水コースは、第1の始点キロポストKPs1から第1の終点キロポストKPe1までの第1の散水区間S1と、散水を行わない非散水区間Tと、第2の始点キロポストKPs2から第2の終点キロポストKPe2までの第2の散水区間S2とによって構成されていてもよい。このように、散水コースは、互いに離間する複数の散水区間(2つに限らず、3つ以上であってもよい)を含んでいてもよい。
【0025】
なお、上記の散水コースは例示であり、散水コースの設定手法は何ら限定されない。散水コースは、必ずしもキロポストを利用したものに限られない。すなわち、散水コースの始点および終点の少なくとも一方がキロポストの設置位置でなくてもよい。
【0026】
図3に示すように、散水車1は制御装置25を備えている。制御装置25は、ポンプ5の回転数を調整することによりポンプ5の送液量を制御することができる。また、制御装置25は、弁13および弁14の開閉を制御することができる。制御装置25は、散水を開始するときに弁13および弁14を開き、散水を終了するときに弁13および弁14を閉じる。制御装置25は、ポンプ5の送液量および弁13,14の開閉を制御することにより、散水装置4の散水量を制御することができる。特に本実施形態では、制御装置25は、散水コースの終点においてタンク3の水を使い切る散水制御を実行可能に構成されている。散水車1は、作業員によって操作され、上記散水制御の開始を指示する制御開始スイッチ23を備えている。制御開始スイッチ23の配置および構成は何ら限定されないが、本実施形態では、運転室2に配置されたスイッチ(図示せず)によって構成されている。制御開始スイッチ23は、例えば、運転席の前の操作パネルに設けられる。
【0027】
制御装置25の具体的構成は特に限定されないが、本実施形態では、CPU、ROM、およびRAMを有するマイクロコンピュータによって構成されている。制御装置25は、残区間特定部31と散水量制御部32とを有している。残区間特定部31は、車両位置検出装置16によってGPS信号から特定された散水車1の現在位置と、散水コース選択装置22によって選択された散水コースの終点の位置とから、当該散水コースの残りの散水区間の距離を特定する。散水量制御部32は、水位センサ19により検出されたタンク3の水の残量と、残区間特定部31により特定された残りの散水区間の距離とに基づいて、散水装置4の散水量を制御する。残区間特定部31および散水量制御部32は、ハードウェアにより構成されていてもよく、上記コンピュータが所定のコンピュータプログラムを実行することにより機能的に実現されてもよい。
【0028】
作業員は、散水コースの始めの方では、例えば予め定められた一定の散水量で散水を行う。散水コースの途中で作業員が制御開始スイッチ23を入力することにより、散水制御が開始される。例えば、図5(a)に示すように、始点キロポストKPsから終点キロポストKPeまで連続的に散水を行う散水コースが選択されているときに、途中の地点Pmで制御開始スイッチ23が入力されると、残区間特定部31は、地点Pmから終点キロポストKPeまでを残りの散水区間として、その距離D1を算出する。図5(b)に示すように、第1の散水区間S1、非散水区間T、および第2の散水区間S2により構成される散水コースが選択されているときに、非散水区間Tの途中の地点Pmで制御開始スイッチ23が入力されると、残区間特定部31は、当該地点Pm以降の散水区間(すなわち第2の散水区間S2)を残りの散水区間として、その距離D2を算出する。なお、制御開始スイッチ23が入力された地点以降に複数の散水区間が設定されている場合には、それら複数の散水区間の合計が残りの散水区間と見なされ、それら複数の散水区間の合計の距離が算出される。
【0029】
散水量制御部32は、残りの散水区間でタンク3の水を過不足なく使い切るように散水装置4を制御する。本実施形態では、散水量制御部32は、残りの散水区間に水を均一に散布するよう、散水車1の単位走行距離当たりの散水量が一定になるように散水量を制御する。すなわち、タンク3の水量がQ[l]、残りの散水区間の距離がL[m]の場合、散水量制御部32は散水装置4の散水量をQ/L[l/m]とする。なお、ここで言う「一定」とは、必ずしも厳密な意味での一定に限らず、実質的に一定と見なせる場合も含まれる。すなわち、多少の変動(例えば、±10%の変動)があったとしても、実質的に一定と見なせる場合も含まれる。
【0030】
ところで、通常、運転手はできるだけ一定の速度で散水車1を走行させるが、散水区間には例えば上り坂や下り坂が含まれ、散水車1の車速は必ずしも一定とはならない。そのため、単位時間当たりの散水量[l/s]を一定に保ったとしても、単位走行距離当たりの散水量[l/m]は必ずしも一定とはならない。そこで、散水量制御部32は、車速センサ17で検出される車速に応じて、散水装置4の単位時間当たりの散水量を制御する。詳しくは、散水量制御部32は、車速が大きいほど単位時間当たりの散水量が多くなるように散水装置4を制御する。これにより、単位走行距離当たりの散水量が一定に保たれる。
【0031】
なお、散水コース、散水車1の現在位置、タンク3の水の残量、車速、散水装置4の単位時間当たりの散水量等の情報は、表示装置28にリアルタイムに表示されるようになっていてもよい。これにより、作業員は散水作業の状況を的確に把握することができる。
【0032】
以上のように、本実施形態に係る散水車1によれば、GPS信号から特定される散水車1の現在位置と、散水コースデータベース26に記憶された散水コースの終点の位置とから、残りの散水区間の距離を特定するので、残りの散水区間の距離を正確に特定することができる。そして、タンク3の水の残量と上記残りの散水区間の距離とに基づいて、散水装置4の散水量を制御する。よって、本実施形態に係る散水車1によれば、散水コースの終点に到達する前にタンク3の水を使い切ったり、終点に到達した時にタンク3に水が余ってしまうことを避けることができる。また、上記散水制御は制御装置25によって自動的に行われるので、作業員が自ら散水量の変更を行う必要がない。そのため、作業員の負担を軽減することができる。したがって、散水車1によれば、作業員に負担をかけずにタンク3の水を過不足なく使用することができる。
【0033】
また、本実施形態に係る散水車1では、残りの散水区間において、単位走行距離当たりの散水量が一定になるよう散水装置4の散水量を制御する。そのため、残りの散水区間において水を均一に散布することができる。
【0034】
また、本実施形態に係る散水車1では、車速が大きいほど単位時間当たりの散水量が多くなるように散水装置4を制御する。そのため、車速が大きい場合には単位時間当たりの散水量が自動的に多くなり、逆に、車速が小さい場合には単位時間当たりの散水量が自動的に少なくなる。したがって、本実施形態に係る散水車1によれば、車速が変わっても単位走行距離当たりの散水量が一定に保たれ、水を均一に散布することができる。
【0035】
本実施形態に係る散水車1によれば、作業員が制御開始スイッチ23を押すことにより、前述の散水制御が開始される。そのため、散水制御を開始する地点を作業員が自由に決めることができ、利便性を高めることができる。
【0036】
図5(b)に例示したように、散水区間は必ずしも連続した一つの区間とは限らず、離間した複数の区間S1,S2となっている場合がある。本実施形態に係る散水車1によれば、非散水区間Tにおいて制御開始スイッチ23が押された場合、第2の散水区間S2の始点KPs2を残りの散水区間の始点とする。そのため、非散水区間Tにて前記散水制御の開始が指示された場合でも、残りの散水区間S2においてタンク3の水を過不足なく使用することができる。
【0037】
以上、本発明の実施の一形態について説明してきたが、本発明は前記実施形態に限らず、種々の形態にて実施できることは勿論である。前記実施形態では、散水車1は前方ノズル11および後方ノズル12を備えていたが、水を散布する手段は前方ノズル11および後方ノズル12に限られない。散水車1は、他のノズルを備えていてもよい。また、前方ノズル11または後方ノズル12はなくてもよい。
【0038】
前記実施形態の説明では、散水時に弁13および弁14を開き、前方ノズル11および後方ノズル12の両方から水を散布することとしたが、弁13および弁14のいずれか一方のみを開き、前方ノズル11または後方ノズル12から水を散布することとしてもよい。
【0039】
散水車1が備えるタンク3の数は1つでもよいが、複数であってもよい。この場合、タンク3の水量とは、複数のタンクの水量の合計をいうものとする。
【符号の説明】
【0040】
1 散水車
2 運転室
3 タンク
4 散水装置
5 ポンプ
11 前方ノズル
12 後方ノズル
13,14 弁
15 GPS受信機
17 車速センサ
19 水位センサ(水量センサ)
22 散水コース選択装置
23 制御開始スイッチ(入力装置)
25 制御装置
26 散水コースデータベース
31 残区間特定部
32 散水量制御部
図1
図2
図3
図4
図5