特許第6498581号(P6498581)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498581
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】蓄電装置及び電流遮断装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/34 20060101AFI20190401BHJP
   H01M 2/30 20060101ALI20190401BHJP
   H01G 11/14 20130101ALI20190401BHJP
   H01G 11/74 20130101ALI20190401BHJP
【FI】
   H01M2/34 A
   H01M2/30 D
   H01G11/14
   H01G11/74
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-194797(P2015-194797)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-69087(P2017-69087A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2017年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗田 幹也
(72)【発明者】
【氏名】弘瀬 貴之
(72)【発明者】
【氏名】大井手 竜二
(72)【発明者】
【氏名】岩 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】小川 義博
(72)【発明者】
【氏名】光安 淳
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 騎慎
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−167085(JP,A)
【文献】 特開2013−175428(JP,A)
【文献】 特開2017−045660(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0263648(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/34
H01G 11/14
H01G 11/74
H01M 2/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケース内に収容されており、正極電極及び負極電極を備えている電極組立体と、
前記ケースの内外を通じており、貫通孔を有しており、前記ケースの外部にかしめ部が設けられており、前記ケースに固定されているかしめ部材と、
前記ケースと前記かしめ部の間に配置されている金属プレートと、
前記かしめ部材に接続されている電極端子と、
前記ケース内に収容されており、前記かしめ部材に固定されているとともに、前記ケース内の圧力が所定値を超えたときに作動するとともに前記貫通孔を覆っている変形部材によって前記電極端子と前記正極電極又は前記負極電極とを導通状態から非導通状態に切換える電流遮断装置と、
前記ケースの外部で前記貫通孔を覆っているとともに、前記かしめ部材に固定されている金属製の封止蓋と、
を備えており、
樹脂製の挿入部が前記封止蓋に固定されており、前記挿入部が、前記貫通孔内に挿入されており、
前記封止蓋が、前記金属プレートに溶接されている蓄電装置。
【請求項2】
前記ケースと前記金属プレートの間に、シール部材が配置されている請求項に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記金属プレートに、前記封止蓋の移動を規制する突出部が設けられている請求項1又は2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記蓄電装置が、二次電池である請求項1から3のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項5】
ケース内の圧力が所定値を超えたときに電極端子と電極の間の導通を遮断する電流遮断装置であって、
前記電流遮断装置は、
前記ケースの内外を通じており、貫通孔を有しており、前記ケースの外部にかしめ部が設けられており、前記ケースとの間に金属プレートを介在した状態で前記ケースに固定されるとともに前記電極端子に接続されるかしめ部材と、
前記電極に接続される通電部材と、
前記かしめ部材と前記通電部材の間に配置されており、前記かしめ部材に接続されており、前記貫通孔を覆っており、ケース内の圧力が所定値以下のときは前記通電部材に接触しているとともにケース内の圧力が所定値を超えたときに前記通電部材と非接触になる変形部材と、
前記ケースの外部で前記貫通孔を覆っており、前記貫通孔内に挿入されている樹脂製の挿入部が固定されており、前記金属プレートに溶接されることによって前記かしめ部材に固定される金属製の封止蓋と、
を備えている電流遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、電流遮断装置及び電流遮断装置を備えている蓄電装置に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置の技術分野では、蓄電装置が過充電されたり、内部で短絡が発生したときに、電極端子間(正極端子と負極端子)に流れる電流を遮断する電流遮断装置の開発が進められている。特許文献1の電流遮断装置は、ケースの内外の圧力差を利用して駆動する。具体的には、ケース内の圧力が所定値を超えたときに、電流遮断装置が駆動し、電流経路が遮断される。特許文献1の蓄電装置では、貫通孔を有するかしめ部材を用いて、電流遮断装置をケースに固定している。電流遮断装置は、かしめ部材の貫通孔を覆う変形部材を備えている。変形部材は、電極端子と電極組立体(正極電極又は負極電極)に電気的に接続されている。蓄電装置の内部圧力が所定値を超えると、変形部材が変形し、変形部材と電極組立体が非接続となり、電極端子間に流れる電流が遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−225500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電装置内には、電極,電解液等の部材が収容されている。これらの部材の劣化を抑制するために、蓄電装置の内部を外部からシールすることが必要である。なお、蓄電装置の内部圧力の上昇によって変形部材が変形する電流遮断装置では、変形部材の表面側空間と裏面側空間の間がシールされていないと、変形部材の表裏面で圧力差が生じず、電流遮断装置が適切に駆動しない。そのため、変形部材自身が蓄電装置の内部を外部からシールする役割を担っている。しかしながら、本発明者らの研究により、貫通孔を有するかしめ部材を備える蓄電装置では、外部からの水分の侵入に起因した劣化が起こり易いことが判明した。そのため、このタイプのかしめ部材を備える蓄電装置では、蓄電装置内に収容されている部材の劣化を抑制する新たな対策が必要である。本明細書は、貫通孔を有するかしめ部材を備える蓄電装置において、蓄電装置内部の部材の劣化を防止する技術を提供する。また、本明細書は、蓄電装置内部の部材の劣化を防止する電流遮断装置に関する技術も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記したように、変形板は、蓄電装置の内部圧力の上昇に伴い作動する。そのため、蓄電装置の内部空間は、変形板によって、蓄電装置の外部空間(かしめ部材の貫通孔内)から気密に保たれているはずである。しかしながら、上記したように、実際には貫通孔を有するかしめ部材を備える蓄電装置では、蓄電装置の内部に収容されている部材の劣化が起こる。本明細書で開示する蓄電装置は、かしめ部材の貫通孔内を、蓄電装置の外部空間からシールすることにより、蓄電装置の外部空間から蓄電装置の内部に水分が侵入することを確実に防止する。
【0006】
本明細書で開示する蓄電装置は、ケースと、電極組立体と、かしめ部材と、電極端子と、電流遮断装置と、封止蓋を備えている。電極組立体は、ケース内に収容されており、正極電極及び負極電極を備えている。かしめ部材は、ケースの内外を通じており、貫通孔を有しており、ケースの外部にかしめ部が設けられている。また、かしめ部材は、ケースに固定されている。電極端子は、かしめ部材に接続されている。電流遮断装置は、ケース内に収容されており、かしめ部材に固定されている。電流遮断装置は、ケース内の圧力が所定値を超えたときに作動するとともにかしめ部材の貫通孔を覆っている変形板を備えている。電流遮断装置は、変形板によって電極端子と正極電極又は負極電極とを導通状態から非導通状態に切換える。封止蓋は、金属製であり、ケースの外部で貫通孔を覆っているとともに、かしめ部材に固定されている。
【0007】
上記の蓄電装置は、金属製の封止蓋が、ケース外部で貫通孔を覆った状態で、かしめ部材に固定されている。そのため、かしめ部材の貫通孔内は、封止蓋によってケース外部(蓄電装置の外部空間)から封止されている。すなわち、貫通孔内は、変形板と封止蓋により、ケース内部及びケース外部から封止されている。上記の蓄電装置は、貫通孔内とケース内部の気密性が低下しても、貫通孔内がケース外部から封止されているため、ケース内部はケース外部から封止されている。そのため、ケース外部からケース内部への水分の侵入を防止することができる。上記蓄電装置は、従来の蓄電装置と比較して、ケース内部に収容されている部材が劣化することを抑制することができる。なお、「封止蓋がかしめ部材に固定されている」とは、封止蓋が直接かしめ部材に固定されている形態に限定されるものではない。「封止蓋がかしめ部材に固定されている」とは、かしめ部材に封止蓋とは異なる別部品が固定され、その別部品に封止蓋が固定されている形態も含まれる。
【0008】
本明細書では、ケース内の圧力が所定値を超えたときに電極端子と電極の間の導通を遮断する電流遮断装置も開示する。その電流遮断装置は、かしめ部材と、通電部材と、変形部材と、封止蓋を備えている。かしめ部材は、ケースの内外を通じており、貫通孔を有しており、ケースの外部にかしめ部が設けられている。また、かしめ部材は、ケースに固定されているとともに電極端子に接続されている。通電部材は、電極に接続されている。変形部材は、かしめ部材と通電部材の間に配置されており、かしめ部材に接続されている。変形部材は、ケース内の圧力が所定値以下のときは通電部材に接触しており、ケース内の圧力が所定値を超えたときに通電部材と非接触になる。封止蓋は、金属製であり、ケースの外部でかしめ部材の貫通孔を覆っているとともに、かしめ部材に固定されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施例の蓄電装置の断面図を示す。
図2図1の破線IIで囲った範囲の拡大図を示す。
図3】第2実施例の蓄電装置の特徴部分を示す。
図4】第3実施例の蓄電装置の特徴部分を示す。
図5】第4実施例の蓄電装置の特徴部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本明細書で開示する蓄電装置の技術的特徴の幾つかを記す。なお、以下に記す事項は、各々単独で技術的な有用性を有している。
【0011】
蓄電装置は、ケースと、電極組立体と、かしめ部材と、電極端子と、電流遮断装置と、封止蓋を備えている。電極組立体は、ケース内に収容されており、正極電極及び負極電極を備えていてよい。かしめ部材は、ケースの内外を通じていてよい。すなわち、かしめ部材の一部がケースの外部に位置しており、かしめ部材の他の一部がケースの内部に位置していてよい。かしめ部材は、貫通孔を備えていてよい。貫通孔の一方の開口がケース外部に位置し、他方の開口がケース内部に位置していてよい。かしめ部材は、ケースの内部でケースの壁面に沿って広がる基部と、ケースの内外を通じている軸部と、ケースの外部でかしめ変形されたかしめ部を備えていてよい。かしめ部材は、かしめ部をかしめ変形させることによりケースに固定されていてよい。
【0012】
電極端子は、かしめ部材に接続されていてよい。なお、電極端子は、かしめ部材に直接接続されていてもよいし、他の部材を介して接続されていてもよい。ケースとかしめ部の間に、金属プレートが配置されていてもよい。金属プレートは、かしめ部材とともにケースに固定されていてよい。金属プレートは、電極端子と接続されていてよい。この場合、かしめ部材は、金属プレートを介して電極端子と接続されている。換言すると、かしめ部材、金属プレート及び電極端子が一体となって、蓄電装置の電極端子として機能している。また、ケースと金属プレートの間に、シール部材が配置されていてもよい。
【0013】
電流遮断装置は、ケース内に収容されていてよい。また、電流遮断装置は、かしめ部材に固定されていてよい。なお、かしめ部材は、電流遮断装置の一部と捉えることもできる。その場合、電流遮断装置は、かしめ部材を備えており、そのかしめ部材によってケースに固定されていると表現することができる。電流遮断装置は、負極端子と負極電極の通電経路上に配置され、ケースの内圧が所定値を超えたときに、負極端子と負極電極の間の導通を遮断してもよい。あるいは、電流遮断装置は、正極端子と正極電極の通電経路上に配置され、ケースの内圧が所定値を超えたときに、正極端子と正極電極の間の導通を遮断してもよい。電流遮断装置は、かしめ部材の貫通孔を覆っている変形部材を備えており、ケース内の圧力が所定値を超えたときに、変形部材によって電極端子と正極電極又は負極電極を導通状態から非導通状態に切換えてよい。
【0014】
封止蓋は、ケースの外部でかしめ部材の貫通孔を覆っていてよい。また、封止蓋は、かしめ部材に固定されていてよい。封止蓋は、かしめ部材に直接固定されていてもよいし、かしめ部材とともにケースに固定されている金属プレートに固定されていてもよい。封止蓋は、金属製であってよい。封止蓋は、かしめ部材(または金属プレート)に溶接されていてよい。封止蓋が金属プレートに固定される場合、金属プレートに封止蓋の移動を規制する突出部が設けられていてもよい。また、封止蓋に、樹脂製の挿入部が固定されていてよい。挿入部は、かしめ部材の貫通孔に挿入されていてよい。挿入部の材料は、ブチルゴム,エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM),パーフルオロアルコキシアルカン(PFA),ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であってよい。
【0015】
上記したように、かしめ部材は、電流遮断装置の一部と捉えることができる。この場合、電流遮断装置は、かしめ部材と、通電部材と、変形部材と、封止蓋を備えていてよい。かしめ部材は、ケースの内外を通じており、貫通孔を有しており、ケースの外部にかしめ部が設けられており、ケースに固定されているとともに電極端子に接続されていてよい。通電部材は、電極に接続されていてよい。通電部材は、かしめ部材の基部と間隔を有して基部に対向する位置に配置されていてよい。通電部材は、変形部材と電極組立体の間に配置されていてよい。変形部材は、かしめ部材と通電部材の間に配置されていてよい。また、変形部材は、かしめ部材に接続されていてよい。具体的には、変形部材の端部がかしめ部材に固定されていてよい。変形部材が、かしめ部材の貫通孔を覆っていてよい。
【0016】
変形部材は、ケース内の圧力が所定値以下のときは通電部材に接触していてよい。変形部材の中央部が、通電部材に向けて突出し、通電部材に固定されていてよい。変形部材は、ケース内の圧力が所定値を超えたときに変形し、通電部材と非接触になってもよい。変形部材は、ケース内の圧力が所定値を超えたときに通電部材から離れるように反転してもよい。ケース内の圧力が所定値を超えたときに通電部材の中央部が破断し、変形部材が通電部材から離れてもよい。通電部材の中央部に、ケース内の圧力が所定値を超えたときに破断の起点となる溝(破断溝)が設けられていてもよい。破断溝は、通電部材の中央部を、連続的又は断続的に囲っていてもよい。変形部材の中央部は、破断溝に囲まれた位置で通電部材に固定されていてもよい。
【0017】
電流遮断装置は、2個の変形部材(第1変形部材,第2変形部材)を備えていてよい。この場合、通電部材が、第1変形部材と第2変形部材の間に設けられていてよい。第2変形部材は、通電部材と電極組立体の間に設けられていてよい。第2変形部材の通電部材側に、通電部材に向けて突出している突起が設けられていてよい。すなわち、第2変形部材は、通電部材に対して第1変形部材とは反対側に配置されているとともに、通電部材に向けて突出している突起を通電部材側に備えていてよい。突起が、通電部材から離れた状態で、破断溝に囲まれた部分に対向していてもよい。
【0018】
本明細書で開示する蓄電装置の一例として、二次電池、キャパシタ等が挙げられる。二次電池の電極組立体の一例として、セパレータを介して対向する電極対(負極及び正極)を有するセルが複数積層された積層タイプの電極組立体、セパレータを介して対向する電極対を有するシート状のセルが渦巻状に加工された捲回型の電極組立体が挙げられる。
【0019】
ケースの内部には、電極組立体,電解液が収容されている。電極組立体は、正極電極及び負極電極を備えている。正極電極用の金属箔として、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、ステンレス鋼又はそれらの複合材料を用いることができる。特に、アルミニウム又はアルミニウムを含む複合材料であることが好ましい。また、正極リードの材料として、正極電極用の金属箔と同様の材料を用いることができる。
【0020】
正極活物質は、リチウムイオンが侵入及び脱離可能な材料であればよく、LiMnO、Li(NiCoMn)0.33、Li(NiMn)0.5、LiMn、LiMnO、LiNiO、LiCoO、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiMnO、LiMn等を使用することができる。また、正極活物質としてリチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、あるいは、硫黄などを用いることもできる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。正極活物質は、必要に応じて導電材,結着剤等とともに正極電極用の金属箔に塗布される。
【0021】
負極電極用の金属箔として、アルミニウム、ニッケル、銅(Cu)等、又はそれらの複合材料等を使用することができる。特に、銅又は銅を含む複合材料であることが好ましい。また、負極リードの材料として、負極電極用の金属箔と同様の材料を用いることができる。
【0022】
負極活物質として、リチウムイオンが侵入及び脱離可能な材料を用いる。リチウム(Li)、ナトリウム(Na)等のアルカリ金属、アルカリ金属を含む遷移金属酸化物、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、高配向性グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料、シリコン単体又はシリコン含有合金又はシリコン含有酸化物を使用することができる。なお、負極活物質は、電池容量を向上させるため、リチウム(Li)を含まない材料であることが特に好ましい。負極活物質は、必要に応じて導電材,結着剤等とともに負極電極用の金属箔に塗布される。
【0023】
セパレータは、絶縁性を有する多孔質を用いる。セパレータとして、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、あるいは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布または不織布を使用することができる。
【0024】
電解液は、非水系の溶媒に支持塩(電解質)を溶解させた非水電解液であることが好ましい。非水系の溶媒として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状エステルを含んでいる溶媒、酢酸エチル、プロピロン酸メチルなどの溶媒、又はこれらの混合液を使用することができる。また、支持塩(電解質)として、例えば、LiPF、LiBF、LiAsF等を使用することができる。
【0025】
本明細書で開示する蓄電装置は、例えば車両に搭載され、モータに電力を供給することができる。以下、蓄電装置の構造について説明する。なお、以下の説明では、電流遮断装置が負極端子と負極電極の導通経路上に接続されている蓄電装置について説明する。本明細書で開示する技術は、電流遮断装置が正極端子と正極電極の導通経路上に接続されている蓄電装置に適用することもできる。
【実施例】
【0026】
(第1実施例)
図1を参照し、蓄電装置100の構造を説明する。蓄電装置100は、ケース1と、電極組立体3と、正極かしめ部材5と、正極端子(ボルト64)と、負極かしめ部材7と、負極端子(ボルト65)と、電流遮断装置10と、封止蓋15を備えている。ケース1は、金属製であり、略直方体形状である。ケース1の内部には、電極組立体3と電流遮断装置10が収容されている。電極組立体3は、正極電極と負極電極を備えている(図示省略)。正極タブ41が正極電極に固定されており、負極タブ42が負極電極に固定されている。ケース1の内部には、電解液が注入されており、大気が除去されている。正極かしめ部材5と負極かしめ部材7は、ケース1の蓋部1aに固定されている。正極かしめ部材5は、蓋部1aの開口81を介してケース1の内外に通じている。負極かしめ部材7は、蓋部1aの開口82を介してケース1の内外に通じている。
【0027】
蓋部1aの上面には、樹脂製のインシュレータ62、63が配置されている。インシュレータ62は正極かしめ部材5に固定されている。また、正極金属プレート60が、インシュレータ62の上面に配置されている。正極金属プレート60には、貫通孔60aが形成されている。貫通孔60aは、上面側に比べ、下面側のサイズが大きくなっている。インシュレータ62は、蓋部1aと正極金属プレート60を絶縁している。ボルト64が、貫通孔60aを通過している。具体的には、ボルト64の頭部が、貫通孔60a内に収容されている。また、ボルト64の軸部が、貫通孔60aを通って正極金属プレート60の上方に突出している。ボルト64は、正極端子(電極端子)の一例である。なお、正極かしめ部材5,正極金属プレート60及びボルト64は、電気的に接続されており、これらを合わせて正極端子と捉えることもできる。
【0028】
インシュレータ63は、負極かしめ部材7に固定されている。負極金属プレート61が、インシュレータ63の上面に配置されている。また、負極金属プレート61にも正極金属プレート60の貫通孔60aと同様の貫通孔が形成されており、貫通孔内にボルト65の頭部が収容され、ボルト65の軸部が貫通孔を通って負極金属プレート61の上方に突出している。ボルト65は、負極端子(電極端子)の一例である。インシュレータ63,負極金属プレート61及びボルト65の構成は、インシュレータ62,正極金属プレート60及びボルト64の構成と同様である。負極かしめ部材7,負極金属プレート61及びボルト65は、電気的に接続されており、これらを合わせて負極端子と捉えることもできる。
【0029】
電流遮断装置10が、負極かしめ部材7に固定されている。負極タブ42に接続されている負極リード44が、接続端子46を介して電流遮断装置10に接続されている。すなわち、電流遮断装置10は、電極組立体3の負極電極に電気的に接続されている。絶縁部材73が、負極リード44とケース1の間に配置されている。絶縁部材73は、負極リード44とケース1(蓋部1a)を絶縁している。正極タブ41に接続されている正極リード43が、正極かしめ部材5及び正極金属プレート60を介して、ボルト(正極端子)64に接続されている。絶縁部材72が、正極リード43とケース1の間に配置されている。絶縁部材72は、正極リード43とケース1(蓋部1a)を絶縁している。ボルト(正極端子)64は、電極組立体3の正極電極に電気的に接続されている。
【0030】
図2を参照し、負極かしめ部材7及び電流遮断装置10の構造について説明する。図2に示すように、負極かしめ部材7は、ケース1にかしめ固定されている。負極金属プレート61及びインシュレータ63は、負極かしめ部材7とともにケース1に固定されている。負極かしめ部材7は、基部95と、柱状部94と、かしめ部96を備えている。柱状部94が、基部95とかしめ部96を接続している。柱状部94は、ケース1の開口82を通過している。柱状部94は、基部95の中央部から伸びている。柱状部94には、貫通孔97が形成されている。基部95の上面は、ケース1の蓋部1aに沿って広がる平面を有している。基部95の端部には下方(電極組立体3側)に突出する突出部99が設けられている。すなわち、ケース1内から観察すると、基部95の中央部に凹部98が形成されており、凹部98の中央部に貫通孔97が形成されている。基部95はケース1の内部に設けられており、かしめ部96はケース1の外部に設けられている。
【0031】
電流遮断装置10は、負極かしめ部材7に固定されている。すなわち、電流遮断装置10は、負極かしめ部材7を介してケース1に固定されている。負極かしめ部材7は、電流遮断装置10の一部と捉えることもできる。この場合、電流遮断装置10の負極かしめ部材7がケース1に固定されているといえる。電流遮断装置10は、通電板20と、変形板30と、ホルダ80を備えている。通電板20及び変形板30は、各々通電部材及び変形部材の一例である。変形板30は、金属製のダイアフラムである。変形板30の外周部31は、基部95の突出部99に固定されている。具体的には、外周部31は、突出部99に溶接されている。変形板30の中央部32は、下方(電極組立体3側)に突出している。中央部32は、通電板20に接続されている。変形板30によって、ケース1内の空間が凹部98内の空間51からシールされている。空間51は大気圧に保たれている。
【0032】
通電板20は、金属製の平板である。通電板20は、負極かしめ部材7の基部95と間隔を有して基部95に対向する位置に配置されている。通電板20は、変形板30の下方に配置されている。すなわち、通電板20は、変形板30と電極組立体3の間に配置されている。金属製の接続端子46が、通電板20に接続している。接続端子46によって、通電板20と負極リード44が導通している(図1も参照)。通電板20の端部20eが、ホルダ80に固定されている。通電板20の中央部20cには、溝20aが形成されている。溝20aは、中央部20cの周囲を囲っている。変形板30の中央部32は、溝20aに囲まれた範囲で通電板20の中央部20cに固定されている。溝20aが形成された位置における通電板20の機械的強度は、溝20a以外の位置における通電板20の機械的強度よりも低い。また、中央部20cと端部20eの間に、通気孔20bが形成されている。通気孔20bにより、変形板30と通電板20との間の空間50は、ケース1内の空間と連通している。すなわち、空間50は、ケース1内の圧力と等しい。空間50が変形板30によって空間51からシールされているので、変形板30の表裏面には圧力差が生じ得る。
【0033】
ホルダ80は、上端部79と、中央部78と、突出部76を有している。上端部79は、ケース1の蓋部1aに沿って広がる平面を有している。上端部79の中央に貫通孔79aが形成されている。負極かしめ部材7の柱状部94は、貫通孔79a内に設けられている。上端部79は、ケース1の蓋部1aと、負極かしめ部材7の基部95の間に配置されている。ホルダ80は、負極かしめ部材7とともに、ケース1に固定されている。ホルダ80は、絶縁性を有する材料で形成されており、ケース1と負極かしめ部材7を絶縁している。
【0034】
中央部78は、上端部79の外周縁から下方に伸びている。負極かしめ部材7の基部95は、中央部78の内側に配置されている。中央部78の下方端に、突出部76が設けられている。通電板20は、突出部76に固定されている。突出部76の内面に、窪み77が形成されている。窪み77と、基部95の突出部99の外面と、通電板20の表面の間に、シール部材75が配置されている、シール部材75によって、ホルダ80の内面と負極かしめ部材7の外面の隙間がシールされている。
【0035】
金属製の封止蓋15が、かしめ部96を覆うように配置されている。封止蓋15は貫通孔97を覆っている。封止蓋15の端部15eは、ケース1の蓋部1aに向けて屈曲しており、負極金属プレート61に溶接されている。また、封止蓋15の中央部15cに、樹脂製の挿入部16が固定されている。挿入部16は、貫通孔97内に嵌め込まれている。挿入部16の材料はブチルゴムである。
【0036】
蓄電装置100は、ケース1内の圧力が所定値以下のときは、ボルト(負極端子)65と負極タブ42が電流遮断装置10を介して電気的に接続している。すなわち、ボルト65と負極電極の間が導通している。ケース1内の圧力が所定値を超えると、電流遮断装置10が、ボルト65と負極タブ42の導通を遮断し、蓄電装置100に電流が流れることを防止する。具体的には、ケース1内の圧力が上昇すると、通電板20及び変形板30の下面に作用する圧力が上昇する。一方、変形板30の上面には大気圧が作用する。このため、ケース1の内圧が上昇して所定値に達すると、変形板30の中央部32に接続されていた通電板20が、機械的に脆弱な溝20aを起点に破断する。そして、変形板30が反転して、上方に凸の状態に変化する。これによって、通電板20と変形板30を接続する通電経路が遮断され、電極組立体3(負極電極)とボルト65とが非導通状態となる。
【0037】
蓄電装置100及び電流遮断装置10の利点を説明する。上記したように、封止蓋15が貫通孔97を覆っている。封止蓋15により、貫通孔97内が、蓄電装置100の外部空間から封止されている。そのため、水分が、蓄電装置100の外部から貫通孔97を通じ、蓄電装置100の内部(ケース1内)に侵入することを防止することができる。ケース1内の材料(電解液,電極組立体3等)の劣化を長期間に亘り抑制することができる。なお、上記したように、蓄電装置100は、ケース1内の圧力が所定値を超えたときに、空間50の圧力が上昇し、変形板30が反転することにより、電流を遮断する。すなわち、変形板30は、ケース1内(すなわち空間50)を、貫通孔97と連通している空間51から封止している。しかしながら、経年劣化等により変形板30と負極かしめ部材7の間に僅かな隙間が生じることが起こり得る。蓄電装置100は、変形板30と負極かしめ部材7の間に隙間が生じたとしても、空間51自体が外部環境から封止されているので、従来と比較して、ケース1内に水分が侵入することが格段に抑制されている。
【0038】
蓄電装置100及び電流遮断装置10の他の利点を説明する。上記したように、封止蓋15は、負極金属プレート61に固定(溶接)されている。また、負極かしめ部材7は、かしめ固定を行う(かしめ部96を塑性変形させる)ことにより、ケース1に固定されている。製造上、かしめ部96の表面を平坦にすることは難しい。一方、負極金属プレート61の表面を平坦にすることは、容易である。蓄電装置100では、封止蓋15を、平坦な表面が得られやすい部品(負極金属プレート61)に溶接している。封止蓋15の溶接面と負極金属プレート61の溶接面の面合わせが容易となり、安定して溶接を行うことができる。なお、本明細書で開示する技術は、封止蓋15が貫通孔97をシールしていればよく、必ずしも封止蓋15を負極金属プレート61に溶接することを要しない。すなわち、封止蓋15を負極かしめ部材7のかしめ部96に固定してもよい。
【0039】
上記したように、挿入部16が、貫通孔97内に嵌め込まれている。そのため、封止蓋15と負極金属プレート61の溶接に不具合が生じても、空間51を蓄電装置100の外部からシールすることができる。あるいは、封止蓋15を負極金属プレート61にスポット溶接する等、封止蓋15と負極金属プレート61の間を完全にシールすることを省略することもできる。
【0040】
(第2実施例)
図3を参照し、蓄電装置100aについて説明する。蓄電装置100aは、蓄電装置100の変形例であり、負極金属プレート61とケース1の間に配置されている部品が蓄電装置100と異なる。蓄電装置100aについて、蓄電装置100と同じ部品は、蓄電装置100と同じ参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。
【0041】
蓄電装置100aでは、負極金属プレート61とケース1の間に、インシュレータ63aとシール部材67が配置されている。具体的には、シール部材67が、インシュレータ63aの内側で、負極金属プレート61とケース1の間に配置されている。シール部材67は、水分が、負極金属プレート61とケース1の隙間、負極金属プレート61と負極かしめ部材7(柱状部94,かしめ部96)の隙間、封止蓋15と負極かしめ部材7(かしめ部96)の隙間を通じ、貫通孔97に至ることを防止する。蓄電装置100aは、蓄電装置100よりも、ケース1内に水分が侵入することを抑制することができる。
【0042】
(第3実施例)
図4を参照し、蓄電装置100bについて説明する。蓄電装置100bは、蓄電装置100の変形例であり、負極金属プレート61bの構造が蓄電装置100の負極金属プレート61と異なる。蓄電装置100bについて、蓄電装置100と同じ部品は、蓄電装置100と同じ参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。
【0043】
蓄電装置100bでは、負極金属プレート61bの表面に、突出部69が設けられている。突出部69は、封止蓋15の側面に接している。突出部69を設けることにより、封止蓋15を負極金属プレート61bに固定(例えば、溶接)する際に、封止蓋15の移動を規制した状態で実施することができる。封止蓋15と負極金属プレート61bの固定を精度よく行うことができるので、貫通孔97内をより確実にシールすることができる。
【0044】
(第4実施例)
図5を参照し、蓄電装置200について説明する。蓄電装置200は、蓄電装置100の変形例であり、電流遮断装置210の構造が蓄電装置100の電流遮断装置10と異なる。蓄電装置200について、蓄電装置100と同じ部品は、蓄電装置100と同じ参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。
【0045】
電流遮断装置210は、変形板30に加え、第2の変形板40を備えている。以下の説明では、第1変形板30,第2変形板40と称する。第2変形板40は、通電板20に対して、第1変形板30とは反対側に配置されている。すなわち、通電板20は、第1変形板30と第2変形板40の間に配置されている。第2変形板40の端部40eが、通電板20に固定されている。具体的には、第2変形板40の端部40eが、通電板20の端部20eに溶接されている。
【0046】
第2変形板40の通電板20側には、絶縁性の突起45が設けられている。突起45は、第2変形板40の中央部40cに固定されており、通電板20に向けて突出している。突起45は、通電板20の中央部20cに対向している。より具体的には、突起45が、通電板20の溝20aで囲まれた範囲に対向している。
【0047】
ケース1の内圧が所定値以下のときは、突起45と通電板20の間には隙間が設けられている。ケース1の内圧が所定値を超えると、第2変形板40が、通電板20に向かって変形する。すなわち、突起45が、通電板20の中央部20cに向けて移動する。突起45が通電板20に接触し、通電板20が溝20aを起点として破断する。通電板20と第1変形板30が非導通となり、負極かしめ部材7と負極電極が非導通になる(図1も参照)。なお、通電板20と第1変形板30の間の空間50aは、通気孔20bを通じて、通電板20と第2変形板40の間の空間50bと連通している。そのため、突起45が通電板20に向けて移動すると、空間50aの圧力が上昇し、第1変形板30が上方に変形することができる。
【0048】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0049】
1:ケース
5:正極かしめ部材
7:負極かしめ部材
10:電流遮断装置
15:封止蓋
16:挿入部
60:正極金属プレート
61:負極金属プレート
64:正極電極
65:負極電極
67:シール部材
69:突出部
96:かしめ部
97:貫通孔
100:蓄電装置
図1
図2
図3
図4
図5