【実施例】
【0026】
(第1実施例)
図1を参照し、蓄電装置100の構造を説明する。蓄電装置100は、ケース1と、電極組立体3と、正極かしめ部材5と、正極端子(ボルト64)と、負極かしめ部材7と、負極端子(ボルト65)と、電流遮断装置10と、封止蓋15を備えている。ケース1は、金属製であり、略直方体形状である。ケース1の内部には、電極組立体3と電流遮断装置10が収容されている。電極組立体3は、正極電極と負極電極を備えている(図示省略)。正極タブ41が正極電極に固定されており、負極タブ42が負極電極に固定されている。ケース1の内部には、電解液が注入されており、大気が除去されている。正極かしめ部材5と負極かしめ部材7は、ケース1の蓋部1aに固定されている。正極かしめ部材5は、蓋部1aの開口81を介してケース1の内外に通じている。負極かしめ部材7は、蓋部1aの開口82を介してケース1の内外に通じている。
【0027】
蓋部1aの上面には、樹脂製のインシュレータ62、63が配置されている。インシュレータ62は正極かしめ部材5に固定されている。また、正極金属プレート60が、インシュレータ62の上面に配置されている。正極金属プレート60には、貫通孔60aが形成されている。貫通孔60aは、上面側に比べ、下面側のサイズが大きくなっている。インシュレータ62は、蓋部1aと正極金属プレート60を絶縁している。ボルト64が、貫通孔60aを通過している。具体的には、ボルト64の頭部が、貫通孔60a内に収容されている。また、ボルト64の軸部が、貫通孔60aを通って正極金属プレート60の上方に突出している。ボルト64は、正極端子(電極端子)の一例である。なお、正極かしめ部材5,正極金属プレート60及びボルト64は、電気的に接続されており、これらを合わせて正極端子と捉えることもできる。
【0028】
インシュレータ63は、負極かしめ部材7に固定されている。負極金属プレート61が、インシュレータ63の上面に配置されている。また、負極金属プレート61にも正極金属プレート60の貫通孔60aと同様の貫通孔が形成されており、貫通孔内にボルト65の頭部が収容され、ボルト65の軸部が貫通孔を通って負極金属プレート61の上方に突出している。ボルト65は、負極端子(電極端子)の一例である。インシュレータ63,負極金属プレート61及びボルト65の構成は、インシュレータ62,正極金属プレート60及びボルト64の構成と同様である。負極かしめ部材7,負極金属プレート61及びボルト65は、電気的に接続されており、これらを合わせて負極端子と捉えることもできる。
【0029】
電流遮断装置10が、負極かしめ部材7に固定されている。負極タブ42に接続されている負極リード44が、接続端子46を介して電流遮断装置10に接続されている。すなわち、電流遮断装置10は、電極組立体3の負極電極に電気的に接続されている。絶縁部材73が、負極リード44とケース1の間に配置されている。絶縁部材73は、負極リード44とケース1(蓋部1a)を絶縁している。正極タブ41に接続されている正極リード43が、正極かしめ部材5及び正極金属プレート60を介して、ボルト(正極端子)64に接続されている。絶縁部材72が、正極リード43とケース1の間に配置されている。絶縁部材72は、正極リード43とケース1(蓋部1a)を絶縁している。ボルト(正極端子)64は、電極組立体3の正極電極に電気的に接続されている。
【0030】
図2を参照し、負極かしめ部材7及び電流遮断装置10の構造について説明する。
図2に示すように、負極かしめ部材7は、ケース1にかしめ固定されている。負極金属プレート61及びインシュレータ63は、負極かしめ部材7とともにケース1に固定されている。負極かしめ部材7は、基部95と、柱状部94と、かしめ部96を備えている。柱状部94が、基部95とかしめ部96を接続している。柱状部94は、ケース1の開口82を通過している。柱状部94は、基部95の中央部から伸びている。柱状部94には、貫通孔97が形成されている。基部95の上面は、ケース1の蓋部1aに沿って広がる平面を有している。基部95の端部には下方(電極組立体3側)に突出する突出部99が設けられている。すなわち、ケース1内から観察すると、基部95の中央部に凹部98が形成されており、凹部98の中央部に貫通孔97が形成されている。基部95はケース1の内部に設けられており、かしめ部96はケース1の外部に設けられている。
【0031】
電流遮断装置10は、負極かしめ部材7に固定されている。すなわち、電流遮断装置10は、負極かしめ部材7を介してケース1に固定されている。負極かしめ部材7は、電流遮断装置10の一部と捉えることもできる。この場合、電流遮断装置10の負極かしめ部材7がケース1に固定されているといえる。電流遮断装置10は、通電板20と、変形板30と、ホルダ80を備えている。通電板20及び変形板30は、各々通電部材及び変形部材の一例である。変形板30は、金属製のダイアフラムである。変形板30の外周部31は、基部95の突出部99に固定されている。具体的には、外周部31は、突出部99に溶接されている。変形板30の中央部32は、下方(電極組立体3側)に突出している。中央部32は、通電板20に接続されている。変形板30によって、ケース1内の空間が凹部98内の空間51からシールされている。空間51は大気圧に保たれている。
【0032】
通電板20は、金属製の平板である。通電板20は、負極かしめ部材7の基部95と間隔を有して基部95に対向する位置に配置されている。通電板20は、変形板30の下方に配置されている。すなわち、通電板20は、変形板30と電極組立体3の間に配置されている。金属製の接続端子46が、通電板20に接続している。接続端子46によって、通電板20と負極リード44が導通している(
図1も参照)。通電板20の端部20eが、ホルダ80に固定されている。通電板20の中央部20cには、溝20aが形成されている。溝20aは、中央部20cの周囲を囲っている。変形板30の中央部32は、溝20aに囲まれた範囲で通電板20の中央部20cに固定されている。溝20aが形成された位置における通電板20の機械的強度は、溝20a以外の位置における通電板20の機械的強度よりも低い。また、中央部20cと端部20eの間に、通気孔20bが形成されている。通気孔20bにより、変形板30と通電板20との間の空間50は、ケース1内の空間と連通している。すなわち、空間50は、ケース1内の圧力と等しい。空間50が変形板30によって空間51からシールされているので、変形板30の表裏面には圧力差が生じ得る。
【0033】
ホルダ80は、上端部79と、中央部78と、突出部76を有している。上端部79は、ケース1の蓋部1aに沿って広がる平面を有している。上端部79の中央に貫通孔79aが形成されている。負極かしめ部材7の柱状部94は、貫通孔79a内に設けられている。上端部79は、ケース1の蓋部1aと、負極かしめ部材7の基部95の間に配置されている。ホルダ80は、負極かしめ部材7とともに、ケース1に固定されている。ホルダ80は、絶縁性を有する材料で形成されており、ケース1と負極かしめ部材7を絶縁している。
【0034】
中央部78は、上端部79の外周縁から下方に伸びている。負極かしめ部材7の基部95は、中央部78の内側に配置されている。中央部78の下方端に、突出部76が設けられている。通電板20は、突出部76に固定されている。突出部76の内面に、窪み77が形成されている。窪み77と、基部95の突出部99の外面と、通電板20の表面の間に、シール部材75が配置されている、シール部材75によって、ホルダ80の内面と負極かしめ部材7の外面の隙間がシールされている。
【0035】
金属製の封止蓋15が、かしめ部96を覆うように配置されている。封止蓋15は貫通孔97を覆っている。封止蓋15の端部15eは、ケース1の蓋部1aに向けて屈曲しており、負極金属プレート61に溶接されている。また、封止蓋15の中央部15cに、樹脂製の挿入部16が固定されている。挿入部16は、貫通孔97内に嵌め込まれている。挿入部16の材料はブチルゴムである。
【0036】
蓄電装置100は、ケース1内の圧力が所定値以下のときは、ボルト(負極端子)65と負極タブ42が電流遮断装置10を介して電気的に接続している。すなわち、ボルト65と負極電極の間が導通している。ケース1内の圧力が所定値を超えると、電流遮断装置10が、ボルト65と負極タブ42の導通を遮断し、蓄電装置100に電流が流れることを防止する。具体的には、ケース1内の圧力が上昇すると、通電板20及び変形板30の下面に作用する圧力が上昇する。一方、変形板30の上面には大気圧が作用する。このため、ケース1の内圧が上昇して所定値に達すると、変形板30の中央部32に接続されていた通電板20が、機械的に脆弱な溝20aを起点に破断する。そして、変形板30が反転して、上方に凸の状態に変化する。これによって、通電板20と変形板30を接続する通電経路が遮断され、電極組立体3(負極電極)とボルト65とが非導通状態となる。
【0037】
蓄電装置100及び電流遮断装置10の利点を説明する。上記したように、封止蓋15が貫通孔97を覆っている。封止蓋15により、貫通孔97内が、蓄電装置100の外部空間から封止されている。そのため、水分が、蓄電装置100の外部から貫通孔97を通じ、蓄電装置100の内部(ケース1内)に侵入することを防止することができる。ケース1内の材料(電解液,電極組立体3等)の劣化を長期間に亘り抑制することができる。なお、上記したように、蓄電装置100は、ケース1内の圧力が所定値を超えたときに、空間50の圧力が上昇し、変形板30が反転することにより、電流を遮断する。すなわち、変形板30は、ケース1内(すなわち空間50)を、貫通孔97と連通している空間51から封止している。しかしながら、経年劣化等により変形板30と負極かしめ部材7の間に僅かな隙間が生じることが起こり得る。蓄電装置100は、変形板30と負極かしめ部材7の間に隙間が生じたとしても、空間51自体が外部環境から封止されているので、従来と比較して、ケース1内に水分が侵入することが格段に抑制されている。
【0038】
蓄電装置100及び電流遮断装置10の他の利点を説明する。上記したように、封止蓋15は、負極金属プレート61に固定(溶接)されている。また、負極かしめ部材7は、かしめ固定を行う(かしめ部96を塑性変形させる)ことにより、ケース1に固定されている。製造上、かしめ部96の表面を平坦にすることは難しい。一方、負極金属プレート61の表面を平坦にすることは、容易である。蓄電装置100では、封止蓋15を、平坦な表面が得られやすい部品(負極金属プレート61)に溶接している。封止蓋15の溶接面と負極金属プレート61の溶接面の面合わせが容易となり、安定して溶接を行うことができる。なお、本明細書で開示する技術は、封止蓋15が貫通孔97をシールしていればよく、必ずしも封止蓋15を負極金属プレート61に溶接することを要しない。すなわち、封止蓋15を負極かしめ部材7のかしめ部96に固定してもよい。
【0039】
上記したように、挿入部16が、貫通孔97内に嵌め込まれている。そのため、封止蓋15と負極金属プレート61の溶接に不具合が生じても、空間51を蓄電装置100の外部からシールすることができる。あるいは、封止蓋15を負極金属プレート61にスポット溶接する等、封止蓋15と負極金属プレート61の間を完全にシールすることを省略することもできる。
【0040】
(第2実施例)
図3を参照し、蓄電装置100aについて説明する。蓄電装置100aは、蓄電装置100の変形例であり、負極金属プレート61とケース1の間に配置されている部品が蓄電装置100と異なる。蓄電装置100aについて、蓄電装置100と同じ部品は、蓄電装置100と同じ参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。
【0041】
蓄電装置100aでは、負極金属プレート61とケース1の間に、インシュレータ63aとシール部材67が配置されている。具体的には、シール部材67が、インシュレータ63aの内側で、負極金属プレート61とケース1の間に配置されている。シール部材67は、水分が、負極金属プレート61とケース1の隙間、負極金属プレート61と負極かしめ部材7(柱状部94,かしめ部96)の隙間、封止蓋15と負極かしめ部材7(かしめ部96)の隙間を通じ、貫通孔97に至ることを防止する。蓄電装置100aは、蓄電装置100よりも、ケース1内に水分が侵入することを抑制することができる。
【0042】
(第3実施例)
図4を参照し、蓄電装置100bについて説明する。蓄電装置100bは、蓄電装置100の変形例であり、負極金属プレート61bの構造が蓄電装置100の負極金属プレート61と異なる。蓄電装置100bについて、蓄電装置100と同じ部品は、蓄電装置100と同じ参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。
【0043】
蓄電装置100bでは、負極金属プレート61bの表面に、突出部69が設けられている。突出部69は、封止蓋15の側面に接している。突出部69を設けることにより、封止蓋15を負極金属プレート61bに固定(例えば、溶接)する際に、封止蓋15の移動を規制した状態で実施することができる。封止蓋15と負極金属プレート61bの固定を精度よく行うことができるので、貫通孔97内をより確実にシールすることができる。
【0044】
(第4実施例)
図5を参照し、蓄電装置200について説明する。蓄電装置200は、蓄電装置100の変形例であり、電流遮断装置210の構造が蓄電装置100の電流遮断装置10と異なる。蓄電装置200について、蓄電装置100と同じ部品は、蓄電装置100と同じ参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。
【0045】
電流遮断装置210は、変形板30に加え、第2の変形板40を備えている。以下の説明では、第1変形板30,第2変形板40と称する。第2変形板40は、通電板20に対して、第1変形板30とは反対側に配置されている。すなわち、通電板20は、第1変形板30と第2変形板40の間に配置されている。第2変形板40の端部40eが、通電板20に固定されている。具体的には、第2変形板40の端部40eが、通電板20の端部20eに溶接されている。
【0046】
第2変形板40の通電板20側には、絶縁性の突起45が設けられている。突起45は、第2変形板40の中央部40cに固定されており、通電板20に向けて突出している。突起45は、通電板20の中央部20cに対向している。より具体的には、突起45が、通電板20の溝20aで囲まれた範囲に対向している。
【0047】
ケース1の内圧が所定値以下のときは、突起45と通電板20の間には隙間が設けられている。ケース1の内圧が所定値を超えると、第2変形板40が、通電板20に向かって変形する。すなわち、突起45が、通電板20の中央部20cに向けて移動する。突起45が通電板20に接触し、通電板20が溝20aを起点として破断する。通電板20と第1変形板30が非導通となり、負極かしめ部材7と負極電極が非導通になる(
図1も参照)。なお、通電板20と第1変形板30の間の空間50aは、通気孔20bを通じて、通電板20と第2変形板40の間の空間50bと連通している。そのため、突起45が通電板20に向けて移動すると、空間50aの圧力が上昇し、第1変形板30が上方に変形することができる。
【0048】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。