(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498586
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】エレベーターの情報通信システム
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20190401BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20190401BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
B66B5/00 G
B66B3/00 R
B66B3/00 U
H04Q9/00 301B
H04Q9/00 311J
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-202010(P2015-202010)
(22)【出願日】2015年10月13日
(65)【公開番号】特開2017-75004(P2017-75004A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2018年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠
(72)【発明者】
【氏名】辻 太郎
【審査官】
須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−031018(JP,A)
【文献】
特開2010−020375(JP,A)
【文献】
特開2006−089256(JP,A)
【文献】
特開平07−257852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00
B66B 3/00
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの乗りかごの運行制御を行う制御装置と、前記エレベーターの作業現場で使用され、前記制御装置との通信が可能な携帯端末と、前記制御装置に通信回線を介して接続され、前記エレベーターを遠隔的に監視する監視センタとを備え、
前記監視センタは、前記制御装置を介して発報される情報を処理する処理装置と、この処理装置で処理された情報を記憶可能な記憶部とを有するエレベーターの情報通信システムであって、
前記監視センタの前記処理装置は、前記制御装置及び前記通信回線を介して前記携帯端末から発報される操作情報を含む危険性の低い一般発報情報を受信したか否か判別し、前記一般発報情報を受信したと判別したとき、前記一般発報情報の前記記憶部への記憶処理を阻止する一般発報判別処理部を有することを特徴とするエレベーターの情報通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベーターの情報通信システムにおいて、
前記携帯端末は、無線通信端末から成り、
前記制御装置に接続される前記乗りかごの操作盤は、前記無線通信端末との無線通信が可能な無線通信部を有することを特徴とするエレベーターの情報通信システム。
【請求項3】
請求項2に記載のエレベーターの情報通信システムにおいて、
前記無線通信端末から発報される前記操作情報は、作業開始情報と作業終了情報とを含み、前記監視センタの前記一般発報判別処理部は、前記作業開始情報を受信したか否か判別し、前記作業開始情報を受信したと判別したときから前記作業終了情報を受信するまでの間、前記一般発報情報の前記記憶部への記憶処理を阻止するものから成ることを特徴とするエレベーターの情報通信システム。
【請求項4】
請求項3に記載のエレベーターの情報通信システムにおいて、
前記無線通信端末から発報される前記操作情報は、作業終了予想時間を含み、
前記監視センタの前記処理装置は、前記作業開始情報を受信したときからの時間を計測する時間計測部と、前記時間計測部によって計測された時間が、前記作業終了予想時間に至ったか否か判別する終了時間判別部とを有し、
前記処理装置は、前記終了時間判別部で前記時間計測部が計測した時間が前記作業終了予想時間に至ったと判別し、かつ、前記無線通信端末からの前記作業終了情報の受信が無いときに、前記無線通信端末に前記作業終了情報の発報を要求する要求信号を出力する処理を行うことを特徴とするエレベーターの情報通信システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のエレベーターの情報通信システムにおいて、
前記監視センタの前記処理装置は、前記一般発報情報よりも危険性の高い危険発報情報を受信したか否か判別し、前記危険発報情報を受信したと判別したとき、前記危険発報情報を前記記憶部に記憶させる処理を行う危険発報判別処理部を有することを特徴とするエレベーターの情報通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの作業現場で用いられる端末装置からの発報を受信可能な監視センタを備えたエレベーターの情報通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術が特許文献1に開示されている。この従来技術は非常通報装置であり、保守員が携帯する情報出力装置と、電話回線を介して監視センタへ非常通報が可能な中央演算処理回路とを備え、設備機器の保守点検に際して保守員が情報出力装置を中央演算処理回路に接続したとき、各種検出器によって検出された監視センタへの非常通報を阻止する阻止部を、中央演算処理回路に設けた構成となっている。これにより保守点検中の検出器の作動による監視センタへの非常通報が阻止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−255599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来技術では、保守点検中に、中央演算処理回路に接続された情報出力装置、すなわち携帯端末から発報される操作情報が監視センタに送信され、本来監視センタにおいては必要とされない情報が記憶処理され、監視センタにおける処理操作が煩雑になる問題があった。
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の目的は、保守員による作業中に発報される携帯端末からの操作情報を含む危険性の低い一般発報情報の、監視センタの記憶部における記憶処理を阻止することができるエレベーターの情報通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明に係るエレベーターの情報通信システムは、エレベーターの乗りかごの運行制御を行う制御装置と、前記エレベーターの作業現場で使用され、前記制御装置との通信が可能な携帯端末と、前記制御装置に通信回線を介して接続され、前記エレベーターを遠隔的に監視する監視センタとを備え、前記監視センタは、前記制御装置を介して発報される情報を処理する処理装置と、この処理装置で処理された情報を記憶可能な記憶部とを有するエレベーターの情報通信システムであって、前記監視センタの前記処理装置は、前記制御装置及び前記通信回線を介して前記携帯端末から発報される操作情報を含む危険性の低い一般発報情報を受信したか否か判別し、前記一般発報情報を受信したと判別したとき、前記一般発報情報の前記記憶部への記憶処理を阻止する一般発報判別処理部を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るエレベーターの情報通信システムによれば、監視センタの処理装置の一般発報判別処理部における判別処理によって、保守員による作業中に発報される携帯端末からの操作情報を含む危険性の低い一般発報情報の、監視センタの記憶部における記憶処理を阻止することができる。これにより本発明は、携帯端末を所持する保守員による作業中に従来生じていた監視センタの煩雑な処理操作を解消することができる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係るエレベーターの情報通信システムの一実施形態の構成を示す図である。
【
図2】本実施形態に備えられる監視センタの処理装置の要部構成を示す図である。
【
図3】本実施形態に備えられる制御装置における処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】本実施形態に備えられる監視センタにおける処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るエレベーターの情報通信システムの実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係る情報通信システムが適用されるエレベーターは、乗りかご1と、この乗りかご1との重量バランスを確保するつり合い重り2とを備えている。乗りかご1は、行先階の指定、及びドアの開閉の指定等が可能な操作盤1aを備えている。この操作盤1aには、無線通信を可能にさせる無線通信部を設けてある。また、このエレベーターは、乗りかご1の操作盤が接続され、乗りかご1の運行制御を行う制御装置3を備えている。
【0011】
本実施形態は、エレベーターの保守点検作業等に際し保守員4aによって使用される携帯端末、例えは乗りかご1の操作盤1aの無線通信部を介して制御装置3との通信が可能な無線通信端末4を備えている。
【0012】
また、本実施形態は、エレベーターの制御装置3に通信回線5を介して接続され、エレベーターを遠隔的に監視する監視センタ6を備えている。
【0013】
この監視センタ6は、通信回線5に接続されエレベーターの制御装置3との間で信号の送受信が可能な通信部7と、この通信部7及び通信回線5を介して制御装置3から発報される情報を処理する処理装置8と、この処理装置8で処理された情報を記憶する記憶部9と、処理装置8で処理された情報を表示する表示部10とを有する。
【0014】
図2に示すように、監視センタ6の処理装置8は、乗りかご1の操作盤1a、エレベーターの制御装置3、通信回線5、及び監視センタ6の通信部7を介して、無線通信端末4から発報される操作情報を含む危険性の低い一般発報情報を受信したか否か判別し、一般発報情報を受信したと判別したとき、記憶部9への該当する一般発報情報の記憶処理を阻止する一般発報判別処理部8aを備えている。
【0015】
無線通信端末4から発報される操作情報は、例えば保守点検作業の具体的な作業内容、作業開始情報、作業終了予測時間、及び作業終了情報を含んでいる。
【0016】
監視センタ6の一般発報判別処理部8aは例えば、一般発報情報に含まれる無線通信端末4からの操作情報である作業開始情報を受信したか否か判別し、作業開始情報を受信したとき、その作業開始情報を受信したときから無線通信端末4からの操作情報である前述の作業終了情報を受信するまでの間、監視センタ6の記憶部9への一般発報情報の記憶処理を阻止するものから成っている。
【0017】
また、監視センタ6の処理装置8は、無線通信端末4からの操作情報である作業開始情報を受信したときからの時間を計測する時間計測部8bと、この時間計測部8bによって計測された時間が、前述の作業終了予想時間に至ったか否か判別する終了時間判別部8cを備えている。
【0018】
処理装置8は、終了時間判別部8cで時間計測部8bで計測された時間が作業終了予想時間に至ったと判別し、かつ、無線通信端末4からの作業終了情報の受信が無いときに、監視センタ6の通信部7、通信回線5、制御装置3、及び乗りかご1の操作盤1aに設けた無線通信部を介して無線通信端末4に、作業終了情報の発報を要求する要求信号を出力する処理を行う。
【0019】
また、監視センタ6の処理装置8は、無線通信端末4から発報される操作情報を含む一般発報情報よりも危険性の高い所定の検出器から出力される危険発報情報を受信したか否か判別し、危険発報情報を受信したと判別したときに、監視センタ6の記憶部9へ危険発報情報を記憶させる処理と、表示部10へ危険発報情報を表示させる処理を行う危険発報判別処理部8dを備えている。
【0020】
このように構成した本実施形態における処理動作を以下に説明する。
【0021】
〔制御装置3における処理動作〕
図3に示すように、エレベーターの制御装置3は、乗りかご1の操作盤1aに設けられる無線通信部を介して無線通信端末4からの操作情報を受信したか否か判別する(手順S1)。
【0022】
無線通信端末4からの操作情報を受信したとき(手順S1でイエス)、その操作情報が作業開始情報か否か判別する(手順S2)。
【0023】
操作情報が作業開始情報であると判別されたとき(手順S2でイエス)、通信回線5を介して監視センタ6へ、作業開始情報、作業の内容、及び作業終了予想時間を発報する(手順S3)。
【0024】
手順S2の判別で、操作情報が作業開始情報でないと判別されたとき(手順S2でノー)、操作情報が作業終了情報か否か判別する(手順S4)。
【0025】
操作情報が作業終了情報であると判別されたとき(手順S4でイエス)、通信回線5を介して監視センタ6へ作業終了情報を発報する。
【0026】
手順S4の判別で、操作情報が作業終了情報でないと判別されたとき(手順S4でノー)、制御装置3は発報要因について判別する。すなわち、危険性の低い一般発報が発生したのか、危険性の高い危険発報が発生したのか判別する(手順S6)。
【0027】
ここで、発報要因が発生していると判別されたとき(手順S6でイエス)、その発報要因は、危険性の低い一般発報か否か判別する(手順S7)。
【0028】
一般発報であると判別されたとき(手順S7でイエス)、通信回線5を介して監視センタ6へ一般発報情報を発報する(手順S8)。
【0029】
手順S7の判別で、一般発報でないと判別されたとき(手順S7でノー)、発報要因は一般発報よりも危険性の高い危険発報か否か判別する(手順S9)。
【0030】
危険発報であると判別されたとき(手順S9でイエス)、通信回線5を介して監視センタ6へ危険発報情報を発報する(手順S10)。
【0031】
前述した手順S6の判別で、発報要因が発生していないと判別されたとき(手順S6でノー)、及び手順S9の判別で、危険発報でないと判別されたときには(手順S9でノー)、手順S1の「はじめ」に戻る。
【0032】
〔監視センタにおける処理動作〕
監視センタ6の処理装置8に設けられる一般発報判別処理部8aは、判定に用いる作業フラグを0にする(手順S11)。
【0033】
この状態において、監視センタ6の通信部7は、エレベーターの制御装置3からの発報情報を受信する(手順S12)。以下の判別処理は、処理装置8の一般発報判別処理部8a、あるいは危険発報判別処理部8dで行われる。
【0034】
一般発報判別処理部8aは、通信部7で受信した発報情報が、無線通信端末4からの作業開始情報を含むか否か判別する(手順S13)。
【0035】
発報情報が、無線通信端末4からの作業開始情報を含むと判別されたとき(手順S13でイエス)、作業フラグを1にする(手順S14)。
【0036】
発報情報が作業開始情報を含まないと判別されたとき(手順S13でノー)、発報情報が作業終了情報か否か判別する(手順S15)。
【0037】
発報情報が作業終了情報でないと判別されたとき(手順S15でノー)、危険性の低い一般発報か否か判別する(手順S16)。
【0038】
発報情報が、一般発報情報であると判別されたとき(手順S16でイエス)、作業フラグが1かどうか判別する(手順S17)。
【0039】
作業フラグが1と判別されたとき、該当する無線通信端末4からの操作情報を含む一般発報情報の記憶部9への記憶処理、及び表示部10への表示処理を阻止して手順S12に戻る。
【0040】
作業フラグが1でないと判別されたとき、すなわち作業フラグが0と判別されたとき(手順S17でノー)、該当する一般発報情報を記憶部9に記憶させ、表示部10に表示させる処理を行う。なお、前述の手順S17,S18における判別処理は、無線通信端末4を所持する保守員4aによる作業が終了した後に発報される一般発報に基づくものである。
【0041】
次に、手順S16で、発報情報が一般発報でないと判別されたとき(手順S16でノー)、処理装置8の危険発報判別処理部8dは、発報情報が、危険発報か否か判別する(手順S19)。
【0042】
発報情報が危険発報であると判別されたとき(手順S19でイエス)、該当する危険発報情報を記憶部9に記憶させ、表示部10に表示させる処理を行う。
【0043】
発報情報が危険発報でないと判別されたとき、記憶部9への記憶、及び表示部10への表示を要しない情報と見做され、手順S12に戻る。
【0044】
また、前述した手順S15の判別で、作業終了情報であると判別されたとき(手順S15でイエス)、監視センタ6は、無線通信端末4を所持する保守員4aによる作業が終了したことを把握し、手順S12に戻る。
【0045】
なお、監視センタ6の処理装置8は、無線通信端末4からの作業開始情報を受信したときに(手順S13でイエス)、この処理装置8に含まれる時間計測部8bによって時間の計測を開始する。また、この処理装置8に含まれる終了時間判別部8cによって、時間計測部8bによって計測された時間が、作業開始情報と共に送信されてきた前述の作業終了予想時間に至ったかどうか判別することが行われる。
【0046】
処理装置8は、終了時間判別部8cで時間計測部8bで計測された時間が作業終了予想時間に至ったと判別し、かつ、無線通信端末4からの作業終了情報の受信が無いときに、通信部7、通信回線5、エレベーターの制御装置3、及び乗りかご1の操作盤1aに設けられた無線通信部を介して、無線通信端末4に作業終了情報の発報を要求する要求信号を出力する処理を行う。
【0047】
このように構成した本実施形態によれば、監視センタ6の処理装置8の一般発報判別処理部8aにおける判別処理によって、保守員4aの作業中に生じる無線通信端末4からの操作情報を含む危険性の低い一般発報情報の監視センタ6の記憶部9への記憶処理、及び表示部10への表示処理を阻止することができる。これにより本実施形態は、無線通信端末4を所持する保守員4aによって行われる作業に伴って生じる監視センタ6の煩雑な処理操作を解消することができる。
【0048】
また、本実施形態は、保守員4aの作業中に、無線通信端末4から発報される操作情報を含む危険性の低い一般発報情報の記憶部9への記憶処理、及び表示部10への表示処理を阻止した状態であっても、監視センタ6の危険発報判別処理部8dにおける判別処理によって、図示しない検出器等から出力される危険性の高い危険発報情報の記憶部9への記憶処理、及び表示部10への表示処理を実行することから、危険性の高い危険発報情報を監視センタ6は確実に把握することができ、迅速な対応を取ることができる。
【0049】
また、本実施形態は、無線通信端末4から作業終了情報が発報されないときには、処理装置8は無線通信端末4に、作業終了情報の発報を促す要求信号を出力することから、その要求信号の出力後にあっても無線通信端末4から作業終了情報の発報が引き続いて無い場合には、作業を行っている保守員4a側に何らかの問題を生じていると監視センタ6は把握でき、このような場合にも迅速に対応することができる。
【0050】
本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前述した実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1・・乗りかご、1a・・操作盤、3・・制御装置、4・・無線通信端末(携帯端末)、4a・・保守員、5・・通信回線、6・・監視センタ、7・・通信部、8・・処理装置、8a・・一般発報判別処理部、8b・・時間計測部、8c・・終了時間判別部、8d・・危険発報判別処理部、9・・記憶部