(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498596
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】感熱開放継手
(51)【国際特許分類】
A62C 31/05 20060101AFI20190401BHJP
A62C 35/68 20060101ALI20190401BHJP
A62C 37/11 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
A62C31/05
A62C35/68
A62C37/11
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-238560(P2015-238560)
(22)【出願日】2015年12月7日
(65)【公開番号】特開2017-104176(P2017-104176A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2018年10月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100188547
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴野 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 享介
【審査官】
稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】
特表平07−501250(JP,A)
【文献】
実開昭58−77763(JP,U)
【文献】
特表2005−501703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 31/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火剤が流入する一次側接続口と、前記一次側接続口に連通し、消火剤が流出する二次側接続口を有する本体部と、
前記一次側接続口と前記二次側接続口の間を塞ぐ弁体と、
熱を感知すると前記弁体を開放して、前記一次側接続口と前記二次側接続口の間を連通
させる感熱部と、
前記感熱部の周囲に設けられたフレームと、を備え、スプリンクラヘッドを有さない感熱開放継手であって、
前記二次側接続口は前記一次側接続口の側方に設けられ、
前記一次側接続口と前記感熱部を結ぶ軸である第一軸の直角方向に対して、前記二次側接続口の軸である第二軸の方向は、前記一次側接続口の側に向かって傾斜しており、
前記本体部において前記フレームが取り付けられた部分の外周と前記第一軸の間の距離は、前記二次側接続口における前記本体部の最外部と前記第一軸の間の距離よりも小さいことを特徴とする
感熱開放継手。
【請求項2】
前記二次側接続口は複数設けられ、
複数の前記第二軸は、前記第一軸の所定の位置で交差することを特徴とする
請求項1に記載の感熱開放継手。
【請求項3】
前記第一軸と前記第二軸がなす角度は、50乃至70度であることを特徴とする
請求項1または2に記載の感熱開放継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井に設ける消火設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感熱開放継手は、消火剤が供給される消火配管とスプリンクラヘッドに接続された消火配管との間に設けられ、熱を感知して消火剤をスプリンクラヘッドへ供給する継手である。火災の際に熱せられた空気は空間内の上部を伝わる。そのため、地下駐車場のように天井がなく、空間上部にダクトや配管が剥き出しで設置されている施設に感熱開放継手を設ける場合には、特許文献1のように感熱部を上に向けて取り付けて用いられる。しかし居室のように天井板がある施設では、消火配管等を天井板の上側に設置することになる。そして、火災の際に熱せられた空気は天井板の下面に沿って広がるため、特許文献2の
図6のように、下方に向けた感熱部を天井板の下に突出させて設置する必要がある。
【0003】
図4は、従来例における感熱開放継手101が天井13に設置された状態を示す。感熱開放継手101は、取り付け状態で消火剤が流入する一次側接続口111を上方に、二次側接続口112を側方に、感熱部120を下方に備えている。一次配管9は、消火剤が流入する消火配管であり、一次側接続口111に接続されている。感熱開放継手101は天井裏にある図示しない固定構造により上階の床スラブ等に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−160161号公報
【特許文献2】特開2006−305376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図4のように、天井13は一般的に、天井板131の上側である天井裏に、天井板131を取り付ける野縁132と、野縁132を取り付ける野縁受け(図示せず)を備えている。そして、上階の床スラブ下面である天井裏上面15等から吊り木(図示せず)等で野縁受けを吊り下げている。感熱開放継手101を設置したときに、
図4のように二次側接続口112の近くに野縁132等が配置されてしまうと、放出口であるスプリンクラヘッドに消火剤を供給する二次配管を二次側接続口112に取り付けることができない。そのため、感熱開放継手101を野縁132がない場所に設置して、野縁132や野縁受けに二次側接続口112からの二次配管と干渉しないようにせねばならず、感熱開放継手101の設置位置が制約されてしまう。
【0006】
感熱開放継手101の設置位置が制約されないように、二次側接続口112と感熱部120の間を長くして二次側接続口112の位置を高くして野縁132を避けると、感熱開放継手101が大きくなってしまう。さらに、一次側接続口111の位置が高くなるため、
図4のように天井板131と天井裏上面15の間が狭い天井裏の場合には、一次配管9が天井裏上面15と干渉して、感熱開放継手101を設置することができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためのものであり、以下の構成を有する。
【0008】
(1)本発明は、消火剤が流入する一次側接続口と、前記一次側接続口に連通し、消火剤が流出する二次側接続口と、前記一次側接続口と前記二次側接続口の間を塞ぐ弁体と、熱を感知すると前記弁体を開放して、前記一次側接続口と前記二次側接続口を連通させる感熱部と、を備えた感熱開放継手であって、前記二次側接続口は前記一次側接続口の側方に設けられ、前記一次側接続口と前記感熱部を結ぶ軸である第一軸の直角方向に対して、前記二次側接続口の軸である第二軸の方向は、前記一次側接続口の側に向かって傾斜していることを特徴とする感熱開放継手である。
【0009】
本発明によって、天井板の上にある野縁等を避けて放出口であるスプリンクラヘッドに配管できる。また、一次側接続口の位置が高くならないため、天井裏上面と天井板の間が狭い天井裏であっても感熱開放継手を設置することができる。
【0010】
(2)また、本発明は、前記二次側接続口は複数設けられ、複数の前記第二軸は、前記第一軸の所定の位置で交差することを特徴とする(1)に記載の感熱開放継手である。
この交差は感熱開放継手を横から見た際に第一軸の所定の位置で交差していればよく、たとえば、複数の第二軸がねじれの位置にあってもよい。
【0011】
本発明によって、分岐部品を用いることなく複数のスプリンクラヘッドに消火剤を送出することができる。また、複数の第二軸が第一軸の同じ位置で交差するので、たとえば第一軸との交差角度が同じ複数の第二軸を有した感熱開放継手は、一次側接続口から感熱部までの長さが抑えられる。
【0012】
(3)また、本発明は、複数の前記二次側接続口は、前記第一軸に対称に設けられていることを特徴とする(2)に記載の感熱開放継手である。
【0013】
本発明によって、消火剤が感熱開放継手の中を通る際、流れによって感熱開放継手に加わる横方向の力が、前記二次側接続口が対称に設けられていることによって相殺され、感熱時に感熱開放継手が安定する。
【0014】
(4)また、本発明は、前記第一軸と前記第二軸がなす角度は、50乃至70度であることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の感熱開放継手である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、二次側接続口の軸の方向を斜めに配置したことにより、感熱開放継手に取り付ける二次配管は天井板上部の野縁等を避けてスプリンクラヘッドへ配管しやすい。その結果、設置位置の自由度が高い感熱開放継手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態における感熱開放継手1の外面図。
【
図2】本発明の実施形態における感熱開放継手1の断面図。
【
図3】本発明の実施形態における感熱開放継手1を天井13に設置した状態を示す図。
【
図4】従来例における感熱開放継手101が天井13に設置された状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形が行われてもよい。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。また以下では、感熱開放継手1の設置状態での方向と図面での方向により、各構成の位置関係等を記述する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態における感熱開放継手1の外面図である。
図1(a)は天井13への設置状態における感熱開放継手1の上面図、
図1(b)は側面図を表す。
感熱開放継手1を上面から見ると、
図1(a)に示すように、一次側接続口21の側方である周囲に4つの二次側接続口22a,22b,22c,22dが設けられている。また、側面から見ると、
図1(b)に示されるように一次側接続口21が上方を向くのに対して、二次側接続口22a,22b,22c,22dは斜め上方を向いている。感熱開放継手1は下部に感熱部であるグラスバルブ5を備えている。
【0019】
一次側接続口21には一次配管9が取り付けられて消火剤が流入する。また、二次側接続口22a,22b,22c,22dには後述の二次配管10a等(
図3)が取り付けられて消火剤を流出し、スプリンクラヘッドへ消火剤を供給する。
【0020】
図2は、本発明の実施形態における感熱開放継手の断面図であり、
図1(a)のA−A線の位置で切断して側方から見た状態を表す。本体部2には一次側接続口21と二次側接続口22a,22b,22c,22dが設けられ、弁体3がない状態では互いにつながっている。二次側接続口22bは
図2の手前側に設けられ、二次側接続口22dは奥側に設けられているが、
図2は側方切断面図であるため表示されていない。一次側接続口21の下には弁体3が設けられている。弁体3は、ピストン4の上端の凸部に銅製でリング状の皿バネ31をはめ込んで構成されており、ピストン4が上部に押圧されることにより皿バネ31が本体部2の弁座24に押しつけられて一次側接続口21と二次側接続口22a,22b,22c,22dの間の経路を閉鎖する。フレーム7にはピストン孔71が設けられ、ピストン4が挿入されている。フレーム7とピストン4は金属製であり、ピストン4とピストン孔71との間の大部分において隙間を設けて張り付きが生じないようにしている。ピストン4の下には感熱部であるグラスバルブ5が設けられている。グラスバルブ5はガラス管にアルコールを封印したものであり、熱によりアルコールが膨張してガラス管を割る感熱部である。本体部2の下方にはフレーム挿入口23が設けられており、フレーム7がねじ込まれて固定されている。フレーム7の下部は板状のアーム72になっており下端に固定ネジ6がねじ込まれている。そして、アーム72の内側のグラスバルブ5を固定ネジ6で固定している。アーム72の外側には保護カバー8が設けられている。保護カバー8はグラスバルブ5に物等が衝突しないよう保護するためのものであり、本体部2の下端に固定されている。
【0021】
また
図2において、一点鎖線で示す第一軸210は、一次側接続口21と感熱部であるグラスバルブ5を結ぶ軸であり、第二軸220a,220cは、二次側接続口22a,22cの軸である。第二軸220a,220cの方向は第一軸210の直角方向から一次側接続口21の側に向かって傾斜しており、二次側接続口22a,22cは斜め上を向いている。また、一次側接続口21は上を向いている。そして、複数の第二軸220a,220cは、第一軸210の所定の位置Cで交差している。なお、表示されていない二次側接続口22b,22dと、その第二軸220b,220dについても同様である。二次側接続口22aと22c,及び22bと,22dはそれぞれ第一軸210に対称に設けられており、その傾斜角である第二軸220aと第一軸210,第二軸220bと第一軸210,第二軸220cと第一軸210,第二軸220dと第一軸210の角度は全て等しい。
【0022】
次に、感熱開放継手1の動作について説明する。
火災が発生する前の監視時において、グラスバルブ5は固定ネジ6で押し上げられてピストン4を支え、ピストン4の上端と皿バネ31からなる弁体3を押し上げている。そして、弁体3は上方に位置して皿バネ31を本体部2に押しつけ、一次側接続口21と二次側接続口22a,22b,22c,22dの間の経路を閉鎖している。
【0023】
火災による熱を感知する作動時においては、グラスバルブ5が一定以上の温度になって内部のアルコールが膨張し、グラスバルブ5が割れる。これによりピストン4は支えがなくなり、一次側接続口21から弁体3に伝わる消火剤の圧力とピストン4の重さにより、弁体3とともに下方へ移動して弁体3を開放し、一次側接続口21と二次側接続口22a,22b,22c,22dの間を連通する。その結果、消火剤が一次側接続口21から流入し、二次側接続口22a,22b,22c,22dから流出して、二次配管10a,10b,10c,10dを介して各スプリンクラヘッド11a,11b,11c,11dへ供給され、散布により火災を消火する。
【0024】
次に、感熱開放継手1の設置状態について説明する。
図3は、本発明の実施形態における感熱開放継手1を天井13に設置した状態を示す図である。天井板131等は断面で表記されている。なお、
図3においては、感熱開放継手1の手前側にある二次側接続口22b、二次配管10b及びスプリンクラヘッド11bの記載を省略している。また、
図3の奥側の二次側接続口22d、二次配管10d及びスプリンクラヘッド11dは、感熱開放継手1等に隠れているため記載されていない。
【0025】
天井板131と天井裏上面15の間の空間において、感熱開放継手1は図示しない固定部材により固定され、一次側接続口21で一次配管9と接続し、二次側接続口22a,22b,22c,22dで二次配管10a,10b,10c,10dと接続している。そして、二次配管10a,10b,10c,10dは各々スプリンクラヘッド11a,11b,11c,11dに接続している。
【0026】
感熱開放継手1は二次側接続口22a,22b,22c,22dが斜め上方を向いているため、
図3に示すように二次配管10a,10b,10c,10dは野縁132を容易に避けてスプリンクラヘッド11a,11b,11c,11dに到達する。また、野縁132を避けているにもかかわらず、二次側接続口22a,22b,22c,22dの位置が高くならない。そのために感熱開放継手1が上下方向に長くならず、一次側接続口21の位置も低くなる。したがって、天井裏上面15への一次配管9の干渉が生じにくい。
【0027】
実施の形態では感熱開放継手1は二次側接続口を4つ備えているが、1つでもよく、いくつでもよい。また実施の形態では、二次側接続口22aと,22c,及び22bと,22dは一次側接続口21を中心としてそれぞれ対称に設けられている。消火剤の散布時に、消火剤の流れによって感熱開放継手1に加わる横方向の力が相殺されるため、このように対称に設けることが好ましいが、必ずしも対称でなくてもよい。また、複数設けた二次側接続口22a〜22dは全てが二次配管に接続されている必要はなく、一部は閉鎖部材により閉鎖されてもよい。
【0028】
また、複数の第二軸がねじれの位置にあってもよいが、感熱開放継手を側面から見て第一軸の所定の位置で交差していることが好ましい。なお、実施形態のように複数の第二軸が第一軸の所定の位置で交差していなくてもよい。野縁132を避けるための角度として、第一軸と第二軸がなす角度は50乃至70度であることが好ましい。
【符号の説明】
【0029】
1 感熱開放継手、2 本体部、21 一次側接続口、22a,22b,22c,22d 二次側接続口、210 第一軸、220a,220b,220c,220d 第二軸、23 フレーム挿入口、24 弁座、3 弁体、31 皿バネ、4 ピストン、5 グラスバルブ(感熱部)、6 固定ネジ、7 フレーム、71 ピストン孔、72 アーム、8 保護カバー、9 一次配管、10a,10b,10c,10d 二次配管、11a,11b,11c,11d スプリンクラヘッド、101 感熱開放継手、111 一次側接続口、112 二次側接続口、120 感熱部、13 天井、131 天井板、132 野縁、15 天井裏上面