(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態の切断機1は、下刃50と上刃70で挟み込んで切断対象であるシート100を切断するものである。
図1は、本発明の一実施形態に係る切断機1を示す図である。
図2は、本実施形態のシート切断部20を示す側面図である。
【0016】
まず、切断機1の全体的な構成について説明する。
図1に示すように、切断機1は、筐体11と、シート導入部12と、シート搬送部13と、スリット形成部14と、操作部15と、シート切断部20と、を主要な構成として備える。
【0017】
筐体11は、切断機1を構成する各部品を支持する外装部品である。シート導入部12は、首振り機構を有し、該シート導入部12からシート搬送部13に切断対象のシート100が送られる。シート搬送部13は、回転駆動する複数の搬送ローラ16(
図2参照)によってシート100をシート切断部20に送る。本実施形態のシート搬送部13は、ニップ圧・ギャップ調整機能を有する。
【0018】
スリット形成部14は、シート切断部20の上流側に配置されており、搬送されるシート100に対してスリットを形成する。本実施形態のスリット形成部14は、スリット刃の上下位置を調整する機能及びシート100の幅方向の端部の位置を調整する機能を有する。操作部15は、切断機1の各種の操作を行うためのものであり、タッチパネル式の電子部品である。
【0019】
シート切断部20は、シート搬送部13の搬送ローラ16によって送り出されるシート100を切断するための部分である。次に、シート切断部20の詳細な構成について説明する。
【0020】
図2に示すように、シート切断部20は、下刃ユニット40と、下刃ユニット40に対して上下動する上刃ユニット60と、を備える。
【0021】
下刃ユニット40は、筐体11に固定される下刃ベース41と、下刃ベース41の上面に取り付けられる下刃50と、を備える。
【0022】
上刃ユニット60は、上刃ベース61と、上刃支持体62と、コイルばね63と、シート押さえ部64と、を備える。
【0023】
上刃ベース61は、下刃ユニット40の下方に配置される駆動モータ90の駆動力により下刃ベース41に対して上下動する。本実施形態の駆動モータ90は、クラッチ・ブレーキモータである。
【0024】
駆動モータ90の回転力は、プーリベルト91を介して円板状のディスク部92に伝達される。ディスク部92には、その中心から偏芯した位置に偏芯軸93が設けられている。偏芯軸93は、リンク機構94を介して上刃ベース61に連結されている。リンク機構94は、上刃ベース61の両側にそれぞれ連結される。このリンク機構94によって偏芯軸93の回転運動が直線運動に変換され、上刃ベース61は、上死点位置(第1位置)から下死点位置(第2位置)までの所定のストローク範囲を移動する。
【0025】
図3は、本実施形態のシート切断部20を示す正面図である。この
図3では駆動モータ90の図示が省略されている。
図3に示すように、リンク機構94には、上死点を検出する上死点検出センサ95が設けられる。上死点検出センサ95は、リンク機構94の動きに基づいて上刃ユニット60の上死点を検出し、この上死点検出センサ95の検出信号に基づいてクラッチOFF、ブレーキONのタイミングが制御される。
【0026】
上刃支持体62は、直方体のブロック状に形成されており、その両側が回転軸65を介して上刃ベース61に回転自在に支持される。回転軸65は水平方向を向いており、上刃支持体62は垂直方向を含む所定角度範囲に回転自在に支持される。
【0027】
上刃支持体62には、細長の上刃70が固定される。上刃70は、上側刃先71と、ツメ部72と、を備える。上側刃先71は、正面視において、その長手方向の一側(
図3における紙面右側)から他側(
図3における紙面左側)に向かうに従って上側に傾斜するように形成される。ツメ部72は、上側刃先71の長手方向の一側から下方に突出する。
【0028】
図2に示すように、コイルばね63は、上刃ベース61と上刃支持体62の間であって、回転軸65の上方に配置される。コイルばね63によって上刃支持体62は、その上部が上刃ベース61の上部から離れる方向に付勢される。
【0029】
図4は、本実施形態のシート切断部20を示す平面図である。
図4に示すように、コイルばね63は、上刃ユニット60の左右両側に配置されている。
【0030】
コイルばね63の後側の端部を収容するベース側収容部66が上刃ベース61に形成されるとともに、コイルばね63の前側の端部を収容する支持体側収容部67が上刃支持体62に形成される。ベース側収容部66及び支持体側収容部67は、左右両側のそれぞれに2箇所形成されており、合計4箇所形成されている。
【0031】
図4に示す例では、左右両端のベース側収容部66及び支持体側収容部67にコイルばね63が合計2個配置されている。一方、内側に位置するベース側収容部66及び支持体側収容部67にはコイルばね63を配置していない。後述するように、コイルばね63の数や種類は、切断する対象物に応じて調節することができる。
【0032】
また、支持体側収容部67には、コイルばね63を収容した状態で付勢力を調節することができる付勢力調節部68が配置される。本実施形態の付勢力調節部68は、六角レンチによって付勢力調節部68のナット部分の締結力を調整することにより、コイルばね63の圧縮量を変えて付勢力を調整できるようになっている。
【0033】
図5は、上死点位置におけるシート切断部20の内部構造を示す側面図である。
図5に示すように、コイルばね63によって上刃支持体62を付勢する力(
図5の白抜きの矢印参照)が働くことによって、上刃支持体62は下刃50の設置された方向に回転力が付与される(
図5の黒色の矢印)。
【0034】
コイルばね63による付勢力を大きくすれば、上刃70が下刃50に押し付けられる力が増大することになる。本実施形態では、コイルばね63の付勢力及び個数を調節することができるので、切断対象にあわせて下刃50に対する上刃70の加圧力を柔軟に調節することができる。例えば、コイルばね63を付勢力の異なるものに換えた上でコイルばね63の本数を変えることによってより精密に加圧力を調節できる。
【0035】
図6は、上死点位置における上刃70と下刃50の位置関係を示す正面図である。
図6に示すように、上刃ベース61が上死点にある位置では、上刃70のツメ部72が下刃50の前側に当接した状態となっている。この時点では、上側刃先71と下側刃先51は接触していない。従って上刃ベース61が上死点にある位置では、上刃70の姿勢は下刃50に当接するツメ部72によって維持された状態となる。
【0036】
図7は、上死点位置における上刃70と下刃50の位置関係を示す平面図である。
図7の平面視に示すように、上死点位置にある状態で、上刃ユニット60の移動方向で上刃70と下刃50の位置関係を見たときに、上刃70におけるツメ部72が形成される側と反対側の一部が下刃50に重なる状態となる。即ち、下刃50は、上刃70のツメ部72が当接する側(
図7の紙面右側)から反対側(
図7の紙面左側)に向けてシート100の搬送方向(
図7の紙面下側)に所定角度αだけ傾くように下刃ベース41に取り付けられているのである。なお、所定角度αは、微小な角度、例えば、上刃の長手方向を基準として0度より大きく1度以下の範囲であることが好ましく、切断状況をより一層良くする観点からは0.05度以上0.1度以下の範囲であることがより好ましい。
【0037】
次に、本実施形態の切断機1が備える下刃50の位置調節機能について説明する。
図5に示すように、下刃ベース41には下刃調節機構80が設けられる。下刃調節機構80は、下刃ベース41に対して前後方向に移動するスクリュー部81と、スクリュー部81と一体的に移動し、下刃50の位置を決める下刃ストッパ82と、下刃ベース41の内部で下刃ストッパ82を下刃50に接触する方向に付勢するストッパばね83と、を備える。
【0038】
図8は、下刃調節機構を示す横断面図である。
図8に示すように、下刃調節機構80は、下刃ベース41の長手方向の両側に配置されている。スクリュー部81をドライバー等の操作器具で調整することで下刃ストッパ82を移動させて下刃50の位置を調整することができる。本実施形態の下刃ストッパ82は、下刃50の後面に接触して下刃50の移動を規制する。
【0039】
左右両側に配置されるスクリュー部81をそれぞれ操作し、下刃ストッパ82の前後方向の位置を調節することにより、平面視において上刃70に対して下刃50を傾斜させることができる。下刃ストッパ82で位置調整した後、ボルト等の締結部材によって下刃50を下刃ベース41に固定する。
【0040】
本実施形態では、上刃70の切断角度の調整も、この下刃調節機構80によって行う。
図9は、下刃50が相対的に前側に位置調整されたシート切断部20の要部を示す側面図である。なお、
図9では下刃ストッパ82の図示を省略している。
【0041】
図9に示すように、上刃70の向きをシート100の搬送方向の下流側に傾けたい場合は、下刃50を相対的に前側に位置させる。
図9では、下刃50が下刃ベース41に対して距離dだけ前方に突出している。ツメ部72が接触した状態で下刃50を前側に移動させると上刃支持体62がコイルばね63の付勢力によって追従し、上刃70の上側刃先71(先端)が前側に傾いた状態となる。
【0042】
図10は、下刃50が相対的に後側に位置調整されたシート切断部20の要部を示す側面図である。なお、
図10においても下刃ストッパ82の図示を省略している。
【0043】
図10に示すように、上刃70の向きをシート100の搬送方向の上流側に傾けたい場合は、下刃50を相対的に後側に位置させる。
図10では、下刃50が下刃ベース41の内側に位置している。ツメ部72が接触した状態で下刃50を後側に移動させると上刃支持体62がコイルばね63の付勢力によって追従し、上刃70の上側刃先71が後側に傾いた状態となる。
【0044】
このように、下刃調節機構80によって切断角度を調節することができる。例えば、切断を行う対象物であるシート100の厚みが大きい場合やシート100の積層数が多い場合等は、切断時にシート100が下刃50から逃げるように動く傾向がある。このような場合は、
図10に示すように、上刃70の向きを搬送方向の上流側に傾けておくことにより、シート100が下刃50から逃げ難くなり、切断作業を適切に行うことができる。
【0045】
シート切断部20の主要な構成は以上の通りである。次に、
図11から
図13を参照して切断処理を行う際の上刃70の挙動について説明する。
【0046】
図11は、上刃ベース61が上死点位置にある状態の上刃70と下刃50の位置関係を模式的に示す図である。
図11の(a)は
図6のA−A線、(b)はB−B線、(c)はC−C線の位置にそれぞれ対応している。
図11の(a)から(c)に示すように、上刃ベース61が上死点位置にある状態では、上刃70は、そのツメ部72のみ下刃50に当接しており、上側刃先71については下刃50に当接していない状態である。そして、上刃70に対して下刃50が傾いた状態となっている(
図7参照)。このように、上刃70の姿勢はツメ部72によって維持された状態となるので、上述の通り、上刃70の切断角度は下刃50の前後方向の位置によって決まることになる。
【0047】
図11に示す上死点位置から上刃ベース61が下方に移動するにつれて上側刃先71のシート100への接触部分がツメ部72側からその反対側に徐々に移動することになる。
【0048】
図12は、上刃ベース61がストローク中央位置にある状態の上刃70と下刃50の位置関係を模式的に示す図である。
図12の(a)〜(c)は、
図11の(a)〜(c)の位置にそれぞれ対応している。
図12の(a)から(c)に示すように、上刃ベース61が上死点位置からストローク中央位置まで下がると上側刃先71の接触部分も左右方向の中央あたりまで移動する。
【0049】
図12の(a)にも示されるように、上側刃先71における左右方向の中央からツメ部72の反対側の部分は、下刃50に接触していない。また、
図12の(c)にも示されるように、接触部分よりもツメ部72側の上側刃先71は下刃50から離間していく。
【0050】
上刃ベース61がストローク中央位置にある状態から更に下死点位置まで移動するにつれて上側刃先71のシート100への接触部分が中央から更にツメ部72から離れる方向に徐々に移動する。
【0051】
図13は、上刃ベース61が下死点位置にある状態の上刃70と下刃50の位置関係を模式的に示す図である。
図13の(a)〜(c)は、
図11の(a)〜(c)の位置にそれぞれ対応している。下死点位置では、
図13の(c)に示すように、上刃ベース61が下死点位置にある状態では、上刃70は、その上側刃先71におけるツメ部72の反対側の端部が下刃50との接触部分になっている。
【0052】
図13に示す状態では、上刃70に対して下刃50が上死点位置での傾きとは反対側に傾いている。そして、上側刃先71の中央やツメ部72が形成される側については下刃50から離間した状態になっている。この状態では、
図13(a)に示すように、ツメ部72は、
図12(a)に示す状態に比べても下刃50との間隔が大きくなっている。
【0053】
このように、本実施形態の切断機1によれば、上刃ベース61の上死点位置から下死点位置への移動に伴って切断部分が点接触を維持したままツメ部72側からツメ部72の反対側に向かって徐々に移動することになる。
【0054】
以上説明した実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
即ち、本実施形態の切断機1は、下刃50を支持する下刃ベース41と、水平方向を軸として回動可能に上刃70を支持し、下刃ベース41に対して上死点位置(第1位置)から下死点位置(第2位置)の間を上下動する上刃ユニット60と、回転方向で上刃70を下刃50に近づくように付勢するコイルばね63と、を備える。上刃70は、その上側刃先71が一側から他側に向けて上方に傾斜するとともに、該上側刃先71の一側から下側に突出し、上死点位置で下刃50に当接するツメ部72を有する。下刃ベース41は、上死点位置で上刃70及び下刃50を上下方向で見たときに、下刃50のツメ部72に当接する側と反対側の一部が上刃70に重なるように、下刃50を上刃70に対して傾斜させた状態で固定可能に構成される。
【0055】
これにより、上刃70が下方に移動するにつれて切断部分が長手方向の一側から他側に向かって移動することになる。例えば、切断部分が上側刃先71の中央にあるときは、ツメ部72側の反対側(
図12(a))だけでなくツメ部72側(
図12(c))も下刃50から離間することになる。このように、上刃70を支持する上刃ユニット60を下方に移動させるだけで、シート100に対して下刃50を切断処理の最初から最後まで良好に点接触させることができるので、切断面も略90度となって切断対象物であるシート100の良好な切断面を得ることができる。
【0056】
また、本実施形態の下刃ベース41は、下刃50の一側の位置をシート100の切断方向に直交する方向で調節する左側の下刃調節機構80と、下刃50の他側の位置をシート100の切断方向に直交する方向で調節する右側の下刃調節機構80と、を有する。
【0057】
これにより、切断を行う対象物の硬度や厚みにあわせて下刃50の傾斜角度及び上刃70の切断角度を調整することができる。また、上刃70に対する下刃50の傾斜角度を調節する機構と、ツメ部72を介して下刃50に当接する上刃70の切断角度を調節する機構と、を兼ねることになるので、切断機1の構成をシンプルにまとめることができる。
【0058】
また、本実施形態のコイルばね63は、上刃ユニット60に配置されるとともに、その付勢力が調節可能に構成される。
【0059】
本実施形態では、コイルばね63の本数、種類及び圧縮量を調節することにより、上刃70の加圧力を調節できるので、切断する対象物の硬度や厚みに応じて付勢力を調節し、適切な加圧力で対象物を切断することができる。例えば、硬度の硬い対象物を切断する場合はコイルばね63の本数を4本にして加圧力を増やして切断を行うことができる。また、加圧力をできるだけ少なくしたい場合には、付勢力を小さくするようにコイルばね63の圧縮量を付勢力調節部68で小さくすることができる。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。例えば、上記実施形態では、付勢部としてコイルばね63を用いたが、ねじりバネ等、他の形状のバネやゴム等の弾性体を用いる等、事情に応じて適宜変更することができる。
【0061】
上記実施形態では、駆動モータ90として、クラッチ・ブレーキモータを用いる構成を例に説明したが、ステッピングモータやサーボモータ等、その他のモータを用いることもできる。また、シリンダ等、モータ以外の駆動源を用いることもできる。
【0062】
上記実施形態では、切断機1がシート導入部12、シート搬送部13、スリット形成部14、操作部15等の構成を備える例を説明したが、これらの構成、例えば、スリット形成部14を省略する等、切断機1の構成は事情に応じて適宜変更することができることは勿論である。