特許第6498655号(P6498655)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6498655水道配管の漏水箇所検知方法とそれに用いる器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498655
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】水道配管の漏水箇所検知方法とそれに用いる器具
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/04 20060101AFI20190401BHJP
   G01M 3/20 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   G01M3/04 F
   G01M3/20 P
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-230842(P2016-230842)
(22)【出願日】2016年11月29日
(65)【公開番号】特開2018-87733(P2018-87733A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2017年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】514240932
【氏名又は名称】尾▲崎▼ 雄
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 雄
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−186122(JP,A)
【文献】 特開平08−184398(JP,A)
【文献】 特開平06−043065(JP,A)
【文献】 特開平11−306470(JP,A)
【文献】 特開平07−280297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00〜3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土中に埋め込まれた水道配管の漏水箇所を検出する方法であって、止水栓を閉鎖して給水を停め、全ての蛇口を開放した後その一つの蛇口から加圧流体を送り込み、配管中の残水を排出する工程と、残水排出後、加圧流体に含まれる臭い成分の土中拡散性能と水道配管の土中埋設深さ及び検知動物の感知能力を勘案して加圧圧力を0.3MPs程度に加圧して配管漏水箇所から臭い成分を土中に拡散させる工程と、配管亀裂から土中に拡散し、土中で臭い成分が吸収され、残部が土中から地表に拡散可能な検知動物の感知能力以上の臭い成分を配管に沿って移動する検知動物に感知させ、漏水箇所を検出させる工程からなることを特徴とする水道水漏水箇所検査方法。
【請求項2】
加圧流体が加圧気体であって、止水栓を閉鎖して給水を停め、全ての蛇口を開放した後その一つの蛇口にコンプレッサ−を接続して加圧気体を送り込み、配管中の残水を排出する工程と、残水排出後、コンプレッサーから加圧気体にコンクリートなどを貫通する透過力をもった植物由来のアロマオイル等を水に含有させてなる臭い成分を含めて加圧気体を配管中に供給して充たす工程と、配管中に充たした臭い成分を含む気体を0.3MPs程度に加圧して配管漏水箇所から土中に拡散させる工程と、配管から土中に拡散する臭い成分を土中から地表に検知動物の検知濃度以上を漏出させ、配管に沿って移動する検知動物に感知させ、漏水箇所を検出させる工程からなることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
検査動物が人間の10万倍の臭覚検知能力を有し、特定の臭いで訓練された麻薬等を探索する警察犬である請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、土中の水道配管での漏水を探知するための漏水検知方法とそれに用いる器具に関する。
【背景技術】
【0002】
漏水を探知するには、検査員の熟練した技術が不可欠であった。しかし、個々人の感覚に頼ることになるので、判定に統一性がないという不都合がある。そこで、様々な装置が開発されている。例えば、配水管に取り付けたセンサで検出した信号データを記憶し、記憶された信号データから、車両の通行などによる音または振動の一過性の信号データを除去して、これを正常時の信号データと比較することにより漏水の有無を判断し、漏水があれば警報を出すようにした装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、この装置では、正常時の信号データと比較して判断するものであるため、判定の結果は、予め記憶しておく正常時の信号データに大きく依存する。また、漏水の程度等様々な要因によって信号データは当然に異なるので、一過性の信号データを除去したとしても、誤診を引き起こす可能性がある。さらに、正常時の信号データを予め記憶させるが、そもそもその正常時の信号データの作成が、地域(例えば交通の激しい場所か、飛行機の航路近くか等)、時期(近くで建築や道路工事などが行われているか、台風が来たか、強風の吹く季節か等)などにより差異があるため、一定せず、漏水検出がとても難しいとしている。
【0004】
そこで、安価にして誰でも操作でき親しみやすいうえに、誤診もなくすことができるようにするため、センサで検出した音波または振動波の信号データを、そのスペクトルを示すべく変換して表示装置に表示する検出信号表示ステップと、上記検出した信号データを、フィルタリング指令を待って、予め作成し記憶した雑音除去フィルタ、または予め記憶した雑音サンプル信号を基に作成した雑音除去フィルタでフィルタリングするフィルタリングステップと、該フィルタリングステップで絞り込んだ絞込み信号のスペクトルを表示する絞込み信号表示ステップを有する漏水探知方法が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平5−22171号公報
【特許文献2】特開2004−37414号公報
【特許文献3】特開2003−254851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、センサで漏水現象による音波または振動波の信号データを検知する方法は如何にしても測定環境の外乱の影響を受けやすく、機械性能を高感度にすると、設備費が高く、検知制度に限界がある。そこで、発光物質を含有する漏水検査液を用いる方法も提案されている(特許文献3)が、建物の場合はいざ知らず、地中深く配管された水道管からの漏水を視覚的に検知することは困難である。そこで、聴覚でなく、視覚でもなく、漏水箇所を検知できる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、従来の、センサでの漏水現象による音波または振動波の信号データを検知する聴覚による方法は、機械的精度の限界がある一方、発光物質を含有する漏水検査液を用いる視覚によるものは、地中での漏水現象に伴う検知には限界が見られることに鑑み、鋭意研究の結果、完成したもので、臭覚によるものは、聴覚、視覚と違って、土中から拡散しやすく、検知しやすいだけでなく、犬の臭覚を利用すると、人間の10万倍といわれる臭覚を活用することができることに着目したもので、土中に埋め込まれた水道配管の漏水箇所を検出する方法であって、止水栓を閉鎖して給水を停め、全ての蛇口を開放した後その一つの蛇口から加圧流体を送り込み、配管中の残水を排出する工程と、残水排出後,加圧流体に含まれる臭い成分を加圧して配管漏水箇所から土中に拡散させる工程と、配管亀裂から土中に拡散する臭い成分を配管に沿って移動する検知動物に感知させ、漏水箇所を検出させる工程からなることを特徴とする水道水漏水箇所検査方法にあり、好ましくは、加圧流体として加圧気体を用い、止水栓を閉鎖して給水を停め、全ての蛇口を開放した後その一つの蛇口にコンプレッサを接続して加圧気体を送り込み、配管中の残水を排出する工程と、残水排出後,コンプレッサーから加圧気体に臭い成分を含めて配管中に供給して充たす工程と、配管中に充たした臭い成分を含む気体を加圧して配管漏水箇所から土中に拡散させる工程と、配管から土中に拡散する臭い成分を配管に沿って移動する検知動物に感知させ、漏水箇所を検出させる工程からなることを特徴とする。本発明においては、探索動物としては麻薬等を探索する警察犬等の犬種が好ましいが、豚等のその他の臭気検知動物であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外乱の影響を受けやすい聴覚、地表面からの地中内の発光が観測しにくい視覚に比して臭いは地表面からの観測が容易である上、犬の臭覚を利用するので、訓練された犬の臭覚を利用して確実に漏水箇所を地表で探索することができる。
【0009】
土中に埋め込まれた水道管の漏水箇所を検出する方法に使用する臭い成分を含む流体としては、気体を利用するのが好ましく、圧縮空気を供給するコンプレッサと、臭い成分を圧縮空気に混入させるパヒュームメーカーと、コンプレッサとパヒュームメーカーとを接続するエアホースと、パヒュームメーカーと水栓柱とを接続するエアーホースとからなり、パヒュームメーカーが円筒体からなり、下半分にノーズワークウォータを収納する貯蔵部とコンプレッサーからの圧縮空気をノーズワークウォータの貯蔵部中でバブリングさせる多数の気泡孔を有する気泡筒を備え、コンプレッサからの圧縮空気をノーズワークウォータ中に送り込み、臭い成分を含む気体を生成する装置を用いるのがよい。なお、本発明において、ノーズワークウォータとは水道管内に送る香り又はにおいは人畜無害で水と導水を流すと水道管内に付着した香りが残ることなく水道水とともに排出できる水をいい、また、コンクリートなどを透過する貫通力をもった香りを生成できる水が望ましく、植物由来のアロマオイルなどを薄めた液体などを使用して漏水探知犬の探索を容易にする水溶液をいう。さらに、パヒュームメーカーとはコンプレッサより送られるエアーをノーズワークウォータ(液体)中で小さな気泡状にして噴射することにより臭気を帯びたエアーを製造する装置をいう。
【0010】
漏水箇所が探索されると、路中に埋め込まれた水道管の漏水箇所を配管に沿って掘削するが、配管を表出させるには、50から90度の角度で屈曲する「く」の字状屈曲部の両側面で閉鎖し、先端部から掘削爪を突出させてなり、両側面を親指と小指で支持し、屈曲部中央から前方に人差し指、中指及び薬指を伸ばし、屈曲部頂部を支点とし、手首揺動させて掘削し、掘削土をバケット内に収納して掘り出し可能である手動バケットを用いるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の気体パヒュームメーカーを使用する漏水検査方法のシステムの1例を示す概略図である。
図2図2Aは気体パヒュームメーカーの側面図、図2Bはその側面図である。
図3】漏水検査方法の実施例を示す概念図である。
図4】漏水箇所を配管に沿って掘削するバケットの斜視図である。
図5図4のバケットの操作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施態様を添付図面にしたがって説明する。 本発明の漏水検査方法は図1に示すように、次のステップで行われる。
(第1ステップ)排水工程: 止水栓1を閉鎖して給水を停める。ついで、全ての蛇口を開放した後その一つの蛇口(作業のしやすい水栓柱:通常コン柱という)にカプラ2を取り付け、コンプレッサ−3をエアホース4を介して接続して加圧空気を送り込み、配管中の残水を排出する。
(第2ステップ)充填工程: 残水排出後,コンプレッサー3から加圧空気に臭い成分を含めて配管中供給して満たす。臭い成分を含む気体を作成するために図2に示すパヒュームメーカー10を用いる。この土中に埋め込まれた水道管の漏水箇所を検出する方法に使用する臭い成分気体を生成するシステムは、圧縮空気を供給するコンプレッサー3と、臭い成分を圧縮空気に混入させるパヒュームメーカー10と、コンプレッサー3とパヒュームメーカー10とを接続する第1エアホース4と、パヒュームメーカーと水栓柱とを接続する第2エアホース5とからなる。パヒュームメーカー10は密封円筒体11からなり、下半分にノーズワークウォータWを収納する貯蔵部12を備え、該貯蔵部12のノーズウオータ中に多数の気泡孔12aを有する気泡筒12を配管し、コンプレッサー3からの圧縮空気を第1エアパイプ4で送気口11aから気泡筒12に送り込んで、ノーズワークウォータW中でバブリングさせ、臭い成分を含む気体を生成させ、排出口11bから排出し、第2エアバブル5で止水栓1に送るようになっている。11cは注液口である。ここで、ノーズワークウォータWは人畜無害で水道水を流すと水道管内に香りが残りにくいのが好ましく、また、コンクリートなどを貫通する透過力をもった植物由来のアロマオイル等を水に含有させて用いるのが好ましい。
(第3ステップ)拡散工程: 配管に満たした臭い成分の気体を加圧して配管漏水箇所から土中に拡散させる。加圧は0.3MPs程度の圧力で配管亀裂から土中に臭い成分を拡散させることができる。加圧力は臭い成分を含む空気の土中拡散性能と水道配管の土中埋設深さ及び検知動物の感知能力を勘案して適宜決定することができる。
(第4ステップ)探索工程: 配管から土中に拡散する臭い成分を配管に沿って検査員Mが検知犬Dを移動させると、漏水箇所から土中に拡散し、地表に漏れる臭い成分を検知犬Dが検出する。検知犬は通常、人間の臭覚の10万倍の能力を有する。この検出犬Dは臭覚ハウンドと呼ばれる犬種に特定の臭い成分を覚えさせる訓練を施す。それによって、同種の臭い成分をノーズワークウォータW中に含ませておけば、そこでバブリングした空気を検出用空気として使用すれば、配管亀裂箇所から土中に臭い成分が拡散し、幾分、地表に漏れ出て、検査犬Dにより、漏水箇所を検出することができる。
(第5ステップ)掘削工程: 土中に埋め込まれた水道管の漏水箇所を配管に沿って掘削するには図4に示す手動バケット20を用いるのがよい。50から90度の角度で屈曲する「く」の字状屈曲片21の両側面22で閉鎖し、先端部から掘削爪23を突出させてなる。このバケット20は図5に示すように、両側面22を親指と小指で支持し、屈曲片21の中央21aから前方に人差し指、中指及び薬指を伸ばし、屈曲片頂部を支点とし、手首揺動させて掘削し、掘削土をバケット内に収納してバケット幅で所定地面の掘り出しが可能である。
【0013】
検査動物として上記実施例では麻薬等を探索する警察犬を用いたが、トリフ探しで用いる豚を用いるようにしてもよい。
【0014】
上記実施例では臭い成分を含む気体を用いたが、臭い成分を含む液体を用いてもよい。
【符号の説明】
【0015】
1 止水栓
3 コンプレサー
10 パヒュームメーカー
W ノーズワークウォータ
M 検査員
D 検知犬
図1
図2
図3
図4
図5