【文献】
FARIBORZ Rahimi et al.,Variability of hand tremor in rest and in posture - A pilot study,2011 Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society,2011年 8月30日,pp.470-473,DOI: 10.1109/IEMBS.2011.6090067
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筋群が、外転/内転(A/A)筋群、屈曲−伸展(F/E)筋群、尺屈−橈屈(U/R)筋群および回内−回外(P/S)筋群の1つまたはそれ以上を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
筋群が、側方傾斜筋群、軸回転筋群、矢状方向の傾斜筋群、屈曲−伸展(F/E)筋群、尺屈−橈屈(U/R)筋群、外転/内転(A/A)筋群、および回内−回外(P/S)筋群の1または複数を含む、請求項1または11に記載のシステム。
複数の運動センサが、少なくとも1個の加速度計、少なくとも1個のジャイロスコープおよび少なくとも1個の電位磁力計を含む、請求項1、2、4から7および10から12のいずれか一項に記載のシステム。
【実施例】
【0035】
好ましい態様の説明
実施例
実施例1:手首における振戦の構成および方向性バイアスの運動学的評価
運動学的方法論は、上肢の動きのダイナミクスを研究するためによく確立されている。技術的な進歩が、これを振戦などの複雑な動きの特性化において信頼性が高く、実行可能な選択肢にした。例えば、手首の振戦は可変であり、3方向の運動を有する:屈曲/伸展(F/E)、橈屈/尺屈(R/U)、回内/回外(P/S)。従って、経時的な動きの複雑さの視覚的にもたらされる判断は難しく、不正確になり得る。さらに、これまでの運動学的研究は、それらの筋肉構成および筋群内の方向性バイアスに複雑な動きを分解していない。本明細書に記載の通り、運動学的方法論は、振戦ダイナミクスの改善された特性化につながる、全てのこれらの変数の評価を可能にし得る。ETおよびPDの両方における振戦の生体力学を理解するために、手首におけるこれらの振戦タイプの構成を、運動学的に評価し、振戦のダイナミクスの複雑さを実証し、運動学的評価を振戦構成の古典的な視覚評価と比較した。
【0036】
ETおよびPD患者の便宜的サンプルは、三次医療運動障害クリニックから1人の運動障害神経科医によって研究への参加のために募集された。患者は、8ヶ月間に亘る手の振戦のためのBoNT A局所注射の最適化における進行中の大規模研究に登録された。臨床的に確認されたETを有する最初の11名の患者および17名のPD患者のベースラインデータが、検討された(表1)。運動障害の専門家によるETの診断は、現在の基準に基づく[Benito−Leon 2011; Deuschl 1998]。全てのPD患者は、PDについてのUKの脳バンクの基準を満たした。選択基準には、全ての対象が、この研究のために排除されることなく登録前の最低6ヶ月間安定した投薬管理をされること、一次および最も厄介な症状として振戦を有すること、そしてボツリヌス毒素投与を受けていないことが含まれる。対象のいずれも、他の神経障害を有していなかった。データ記録のために、利き手の動きをET患者のものと見なした。PD患者において、より大きな振戦振幅を有することが報告された手は、利き手に関わりなく評価し、全ての運動学的評価を、薬物の“オン“状態で行った。
【0037】
【表1】
【0038】
運動学的方法
運動学的装置を用いて、全体的な振戦振幅/重症度に加えて、手首の振戦の構成を記録した。手首の屈曲/伸展(F/E)および橈屈/尺屈(R/U)を、手首関節を横切るように配置したツインフレキシブル軸エレクトロゴニオメータ(SG65、Biometrics Ltd)を用いて測定した。前腕回内/回外(P/S)を、手の背側表面に固定された2D傾斜計(Noraxon(登録商標))を用いて測定した。両方とも、該センサは、手首での3自由度(DOF)角度測定を提供した。指の振戦はまた、3度の直線加速度を供する中指の遠位指節間関節にて直線加速度計(3D、6g、Noraxon(登録商標))を用いて記録した。
図1は、センサの配置を示している。
【0039】
この装置は、振戦の重症度の全体的な測定を提供する。エレクトロゴニオメータは、手首および前腕の相対的な動きを記録するが、傾斜計および加速度計は、グローバルな慣性座標系を有した。センサは、医療用テープを使用して標準的な位置に取り付けられ、TeleMyo 2400T G2およびPCインターフェースを介してラップトップに接続された。データは、デジタルサンプリングされ(1500Hzにて、MyoResearch XP Master Edition 1.08.09 ソフトウェアを用いて、Noraxon(登録商標))、オフライン処理および分析のために保存された。
【0040】
全ての記録は、座った状態で行った。センサを装着後、手を、手首および肘について、中立位P/S、中立位R/U、および中立位F/Eで固定垂直面に対して置いた。この中立位での5秒間のデータを較正のために使用した。その後、対象に、一連の3つのタスク:休息時、静止時および中立静止(posture−neut)を各10秒間行い、そして振戦の動きに対する抵抗または補正をしないよう依頼した。休息位置の間、対象は、自身の膝上に中立位回内でリラックスして手を置いた。静止位置では、対象が、両腕を外側に開き、自身の手を床に平行に前方へ突き出し、手のひらを床に向けた。中立静止では、手の向きを除いて同じ位置であり、手のひらを互いに向かい合わせた。これらの一連のタスクを全3回繰り返した。振戦を解明するために臨床神経学的検査で古典的に評価された、休息および静止の2タスクのみを、構成分析に用いた。方向性バイアスは、R/Uについて回内の位置にて、F/EおよびP/Sについて中立静止にて実験した。これらの四肢の位置は、重力の影響を排除するように選択した。
【0041】
シグナル処理をMatLab(登録商標)(MathWorks、R2011a)で行った。各対象データファイルに関して、各試験に対応するセグメントを全てのタスクについて抽出した。各セグメントは、手首についての3つの角度位置シグナル、および指についての3つの直線加速度シグナルを含んだ。各角度位置シグナルについて、中立位置較正中の平均値を、さらなる処理の前に差し引いた。全ての振戦シグナル(角度位置および加速度の両方)を、バンドパスフィルタにかけた(2−20Hz、最小二乗法有限インパルス応答フィルタ、2000年製)。シグナルは、両端に対称的に記入した。各振戦シグナルについて、フィルタリング後、二乗平均平方根(RMS)値を、フィルタの一過性の影響を避けるために、振幅の測定値として計算した。試験中の3D指振戦の振幅、手首振戦の3構成の振幅、および各構成の方向性バイアスを、休息時の3試験および静止時の3試験について計算した。指での直線加速度の3Dを組み合わせて(RMS)、全体的な振戦の重症度を提供する。手首振戦に対する3構成のそれぞれについての寄与度を、合計した3D角度振幅(F/E+R/U+P/S)について決定した。3構成のそれぞれについての方向性バイアスを、アカウント方向(ポジティブ=F/R/P;ネガティブ=E/U/S)を考慮して、シグナルを平均化することによって計算した。
【0042】
振戦加速度振幅は、通常、傾斜分布および対数変換される。従って、全体的な手指振戦(複合3D)振幅は、分析前に対数変換された。対数変換されたデータは、パラメトリック解析のための基準を満たした。3つの試験の平均振幅を、診断の効果と休息位置および静止位置についての反復測定との間の2方向ANOVAで比較した。アルファレベルを0.05に設定し、TukeyのHSD検定を事後分析のために行った。
【0043】
手首振戦の3構成のそれぞれについての寄与度を、3つの試験について平均化した。
【0044】
3つの試験での平均方向性バイアスデータは、パラメトリック解析のための基準を満たした。対象の各群毎に、別々の単変量ANOVAを、手首振戦構成(F/E、R/U、P/S)のそれぞれにおける方向性バイアスを比較した。信頼区間(95%)を、構成の平均バイアスが大きく正または負であったかどうかを調べるために使用した。統計分析を、STATISTICA(登録商標)8.0、StatSoft Incで行った。
【0045】
視覚的方法
運動学的評価を従来技術の標準的な視覚的評価と比較するために、視覚的振戦評価の以下の臨床スケールが、8名のET患者および11名のPD患者に利用可能であった。1人の評価者は、注射されるべき手について統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)の適用を行った。UPDRSからの項目20(休息時振戦:手L/R)および21(手の動作時振戦:L/R)は、振戦および上肢に関連する特定の視覚的評価であり、全ての患者について集めた。同じデータ収集セッションでは、対象に、両手のFahn−Tolosa−Marin振戦評価尺度[Fahn 2003]の一部として、アルキメデスの螺旋および直線を描くように求めた。直線および螺旋描写における振戦スコアは0−4の範囲であり、全ての患者について個別評価により評価した。
【0046】
運動学的スキームと臨床的スキームとの比較
記録された臨床的尺度を有する対象の同じ群(8名のET患者および11名のPD患者)について、潜在的な注射のために選択された筋肉の選択に対する振戦評価法の効果を調べた。臨床評価は、目視観察、および上記のように使用される臨床尺度のスコアに基づいた。担当医は、注射のための筋群およびBoNT A注射のために必要とされ得る投与量を選択した(スキーム1と呼ぶ)。
【0047】
全ての対象の募集後、運動学的分析データを、患者の臨床評価を知らされていない同じ担当医に無作為順で提示した。運動学的データは、何らの識別子なしに、各振戦構成の運動方向、振幅および相対的寄与度を得た(
図2参照)。これらのペアは、前腕でのP/S、手首でのF/EおよびR/Uを含んだ。
【0048】
視覚に基づく臨床的決定と同様に、担当医は、最適化された結果のための筋肉およびBoNT Aの可能性のある投与量を含む、注射パラメーターを選択した。
【0049】
結果
11名のET患者(70±8.8歳)および17名のPD患者(64±8.0歳)を、上記の表1にまとめた対象統計表で評価した。振戦スコアのまとめを表2に示す。全ての休息時試験および静止時試験における平均手指振戦(加速、対数変換前)および手首振戦(角度)振幅もまた、各対象について示した。UPDRSの項目20(手のみ)および項目21をまとめて、各対象について、直線および螺旋描写でスコアと共に示した。
【0050】
3D加速度計の指での測定は、手指、手首および肘から生じる振戦を示すため、手指の振戦を、全体的な振戦の重症度を表すために用いた。休息時のETの振戦の振幅は、静止時のETの値より顕著に低く(F(1、26)=5.25、p=0.030、およびpost−hoc TukeyのHSD検定)、一方、休息時および静止時のPDは、有意な差はなかった。加えて、静止時のETおよびPDもまた有意な差はなかった。これらのデータを
図3Aに示す。
【0051】
運動学的測定と臨床的測定(UPDRS振戦スコア)との全体的な振戦の重症度を比較するために、手指の振戦についての休息時および静止時の加速度振幅を、3回の試験について平均した。手首の角度も同様に平均した。次いで、これら2つの測定を、全体的な振戦の臨床的指標である、UPDRSの加算項目20および21に対して個別に比較した。指の動きを加速度として記録し、手首の動きを角度として記録したため、これらを加算することができなかった。ETおよびPDの両者における振戦振幅のUPDRSの項目(20+21)と運動学的測定との間に強い線形依存があった(ピアソンの相関係数、r=0.84、対数変換平均手指振戦および手首の振戦振幅の平均角度について、それぞれr=0.84)。
【0052】
【表2】
【表3】
【0053】
ET患者およびPD患者間の休息時および静止時の手の振戦の合算UPDRSスコアに有意差はなく(それぞれ、ET患者(95%CI[2.6、3.9])およびPD患者(95%CI[3.2、5.0]))、振戦の重症度について両群で差がないことが示された。しかしながら、個別のUPDRS項目20(休息時の手の振戦:ET:[0、1.3]、PD:[2.3、3.1])および項目21(動作時振戦:ET:[2.3、2.9]、PD:[0.7、2.2])は、2つの群の患者間で有意差があった。同様に、ETおよびPDにおける休息時および静止時の運動学的測定は、有意差がなかった(休息時手指:ET:[0.0、0.5]、PD:[0.5、2.7];静止時手指:ET:[0.0、1.4]、PD:[0.9、4.2];休息時手首:ET:[0.1、0.4]、PD:[0.3、1.4];静止時手首:ET:[0.2、1.6]、PD:[0.2、2.4])。直線描写(ET:[1.8、3.2]、PD:[0.6、2.3])または螺旋描写(ET:[1.6、3.1]、PD:[0.3、2.0])スコアで、有意差はなかった。
【0054】
振戦の構成は、休息時および静止時の両対象群および両タスク群について、
図3Bおよび
図3Cに示されている。ETについて、休息時、いずれの構成も手首の振戦に優位であることが見出されなかった(Kruskal−Wallis検定:H(2、N=33)=3.76、p=0.153)。ETについて、静止時、F/Eは、他の2つの構成よりも優位であることが見出された(H=12.26、p=0.002)。PDについて、休息時および静止時の両方で、F/Eは、R/Uよりも有意に大きかったが(それぞれ、H(2、N=51)=6.28、p=0.043;H=12.78、p=0.002)、P/Sより大きくはなかった。
【0055】
個別に各自由度を分割するために、本発明者らは、手指ではなく、手首で拮抗筋のペア毎に方向性バイアスを計算した(F対E、R対U、P対S)。これは、1つの方向構成が、ETおよびPDの両方に対して優位であるかどうかを示した。両対象群の3つの手首の振戦構成の各々の平均方向性バイアスは、
図3Dおよび
図3Eに示されている。両対象群について、方向性バイアスは、構成間で有意に異なっていた(ET、F(2、30)=4.84、p=0.015;PD、F(2、48)=36.18、p<0.001)。ET患者について、唯一の有意な平均バイアスは、P/Sについて回内方向であった。PD患者について、3つ全ての構成が有意な平均方向性バイアスを有していた。F/Eのバイアスは伸展方向、R/Uは尺屈方向、およびP/Sは回内方向であった。構成に関して、手首の振戦運動は、多くの場合、構成(F/E、R/UおよびP/S)のいずれとも複合性を有さず、明らかに振戦運動に影響を与えなかった。この複雑性を評価するために、1構成を、貢献が>70%(任意)であった場合、影響有りと見なした。各対象について、休息時および静止時試験は、ETおよびPDについて別個に平均化し、その後、この閾値以上の任意の構成の発生を評価した。この分析は、ETについて、優位性が、休息時:0%、静止時:36%であり、PDについては、休息時:23%、静止時:23%であることを明らかにした。一例として、3名の異なる対象についての手首の振戦構成は、各対象について
図4に示す通りであり、振戦構成は、その対象に特有であった。
【0056】
本実施例は、休息時および静止時の両方で、振戦がETおよびPDに存在することを示している。ETにおいて、振戦は、明らかに静止時に優位であるが、PDにおいて、休息時および静止時の両方で、
該コホート
において等しかった。PD振戦の振幅は、対象において全体的に高かった。加えて、かなりのばらつきが振戦振幅に存在していた。これらの結果を
図2および
図3のパネルAに示す。コホートにおけるPD振戦の静止構成は、典型的なPD患者よりも重篤な振戦を有する患者の結果である得るが、それは、静止時振戦が、休息時PDと同程度の重症度で存在し得て、タスクを実行する機能的障害に寄与し得るという点を強調している。
【0057】
ETおよびPDにおける振戦の複合構成は、それぞれ、
図3のパネルBおよびCに明確に示されている。ETにおいて、休息時、F/E、R/UおよびP/Sの3つ全ての構成が、ほぼ均等に寄与している。静止時、この構成は、F/Eが優勢になるように顕著に変化する。しかしながら、P/SおよびR/Uも持続するが、より低い割合である。そのため、患者がETの優勢な静止に関連する問題を有する場合、屈折および伸張に寄与する筋群へのBoNT Aの注射を開始することが提案される。患者が休息時振戦を有するようにも見られ、診断が未だETである場合、P/SおよびR/Uでのさらなる注射が考慮され得る。
図3Dに見られるような運動に対する寄与に関するこれらの構成の方向性バイアスの分析は、該注射が、F/EおよびR/Uに寄与する筋群間で等しく分割されるべきであり、一方で、回内筋が中立位から統計的にバイアスされたため、回内筋が、回外筋よりも多くを受容すべきであることを示す。このことは、寄与の全体的印象であり、個別化された筋肉注射は、対象の個々の評価および固有の特性に基づいていることに留意すべきである。
【0058】
図3Cはまた、PD振戦において、F/EおよびP/Sが休息時および静止時に有意に等しく、両状態において、R/Uよりも顕著に高く寄与していることを示す。これは、PD振戦について注射を考慮するとき、これらの運動サブコンポーネントの両方を、開始時からほぼ同量で注射すべきであることを示唆している。これらの患者に対する振戦への寄与に関してこれらの構成の方向性バイアスの分析は、注射量が、伸筋が屈筋より多くを受容すべきであり;尺屈筋が橈側偏位筋より多くを受容すべきであり、そして回内筋が回外筋よりも多くを受容すべきであるように、拮抗筋間で分割されるべきであることを示す。ECRおよびECUが、ECU>ECRで注射され、一方でPRQおよびPRTがSUPおよび可能性のある上腕二頭筋よりも多く注射される、デシジョン・トリーが提案され得る。注射に使用するBoNT Aの注射投与量は、一般的に、担当医に公知である。本明細書に記載のような個々の対象における振戦の運動学的分析に基づいて、担当医は、その対象に適当な投与量を選択することができる。
【0059】
本実施例は、対象群内(
図2)および対象群間(
図3)の振戦パラメーターにおける顕著な変化を示した。これまでに、振戦振幅後、手首の振戦における2番目に可変な因子はその構成であることが示されている。さらに、タスクの変化は、手首の振戦の構成を変えることがある(
図2)。このことは、1つの状況における振戦の単一および簡単な視覚的検査が十分ではないことを意味する。臨床的設定において、異なる位置の種々の対象の振戦を観察し、振戦の全体的な構成を決定することは、極めて困難である。実際に、担当医は、長期間にわたり、または異なる位置間で、まとめて評価する能力を有しない。この可変性および単純な視覚的検査による認識の困難性により、筋肉の選択が最適ではないかもしれないことが可能性としてある。
【0060】
従って、運動を示す振戦の分解は、ET(休息時:0%、静止時:36%)およびPD(休息時:23%、静止時:23%)において、1−DOFが優位であった(>70%の寄与)。ETおよびPDにおけるタスクの変動は、振幅および構成の変化をもたらした。振幅は、ETにおいて休息時から静止時に顕著に増大したが、この増大は、PDでは顕著ではなかった。構成変化は、ETのみに有意であった。各DOFにおける方向性バイアスが、ETにおける回内について、およびPDにおける回外、尺屈、および回内について、手首関節で観察された。
【0061】
振戦に寄与する筋群を選択する際のスキーム1(視覚的)およびスキーム2(運動学的)の間の一致を評価した。特定の筋肉が両スキームで明らかになったとき、一致数1が割り当てられ、外2つのスキームの一方のみで筋肉が明らかになったとき、一致数は0であった。決定を、スキームに使用される筋肉毎に行い、リストを表3に一致と共に示す。
【0062】
振戦における運動の優位な特性の決定は視覚的に行われるため、視覚的方法で行われる筋構成およびその後の注射用の筋肉を、運動学的評価によって提供されたものと比較した。注射を経験した手の臨床的評価と客観的運動学的評価により与えられた評価との低一致性は、このような複雑な振戦の視覚的評価の固有の困難性を強調している。表3は、ETおよびPDそれぞれについて、視覚的に選択された筋群と、盲検化運動学的評価とが、全体的に36%および53%のみ一致したことを示す。従って、視覚的臨床的な評価と、同じ注射器による盲検法での振戦ダイナミクスの運動学的評価とによって行われた可能性のある注射のための筋肉の選択における違いが強調された。
【0063】
【表4】
【0064】
本実施例で概説されるような、振戦に関与する筋肉の構成および方向性バイアスを決定するための振戦の運動学的解析は、振戦を制御するために対象に薬剤をどこに、どの程度投与するかについて、客観的な非視覚的評価方法を提供する。この分析は、ETおよびPDにおける振戦の複雑さの視覚的評価の限界を強調している。
【0065】
実施例2:運動学的分析を用いる四肢振戦および偏位の処置ならびに手首、肘および肩のA型ボツリヌス毒素(BoNT A)注射
上腕における振戦の正確な表示を捕捉するために、測定を、腕全体の全ての主要な関節上で行った;手首、肘および肩。手首の振戦は、高度に可変であり、実施例1に記載の通り、運動の3方向:屈折/伸張(F/E)、橈屈/尺屈(R/U)および回内/回外(P/S)を有する。肘の振戦は、屈折/伸張(F/E)によって行われる一方向の動きを有し、一方、肩の振戦は、三方向の動き:屈折/伸張(F/E)、外転/内転(A/A)、および外部/内部回転を有する。実施例1と同じ基準を用いて、実施例1とは異なり18名のETおよび23名のPD患者を、8ヶ月間の腕の振戦研究に登録し、基準データを収集した(表4)。
【0066】
【表5】
【0067】
運動学的方法
運動学的装置を用いて、全体的な振戦振幅/重症度に加えて、手首の振戦の構成を記録した。手首の屈折/伸張(F/E)および橈屈/尺屈(R/U)を、手首関節を横切って配置されたツインフレキシブル軸エレクトロゴニオメータ(SG150、Biometrics Ltd)を用いて測定した。前腕回内/回外(P/S)を、前腕内側、橈側手根屈筋に平行に沿って配置されたシングルフレキシブル軸エレクトロトーションメータ(Q150、Biometrics Ltd)を用いて測定した。それらと共に、センサは、手首における3自由度(DOF)角度測定を提供した。手の振戦はまた、3度の線形加速度を与える手上の直線加速度計(3D、6g、Noraxon(登録商標))を用いて記録した。シングルフレキシブル軸エレクトロゴニオメータを肘関節上に配置して屈折/伸張(F/E)を測定し、別のツイン軸エレクトロゴニオメータを肩関節上に配置して屈折/伸張(F/E)および外転/内転(A/A)を測定した。
図5Aは、手首、肘および肩の振戦を測定するための、これらのセンサタイプの独特の配置を示す。手首を斜めに横切って配置されたセンサは、特に、手首の動きの完全な範囲のデータを収集するのに有用であった。
【0068】
全ての記録を、実施例1に記載の通りに、同じPCインターフェースを用いて座った状態で行った。手首の較正はまた、実施例1に記載の説明と同様の通りであり、これに肘および肩の較正を追加し、ここで、それぞれ個々に、肘に中立位F/Eに配置されて、その後肩に中立位F/Eおよび中立位A/Aの位置に配置されて較正された。その後、対象は、最初、腕と手をリラックスした状態にし、休息時に患者自身の膝上に置き(rest−1)、その後、支持体面上に腕を休めて(rest−2)、振戦を測定するために一連の7タスクを行った。手は、振戦に対する重力の影響を低減するため側面に手のひらをむけてもよい。rest−1およびrest−2中の振戦を誘発するために、患者は、記録中に腕をリラックスした状態に維持することが求められ、一方で、振戦を誘発するために記録していない腕でハンドジェスチャーを作成するタスクを行い、記録中の腕がよりリラックスするように、対象を記録している腕からそらせた。次いで、両腕および手を地面から平行に全面に突き出し、手のひらを地面に向けた(post−1)。その後、両腕を再び静止−中立に配置し、腕および手を前方へ伸ばし、この時、手のひらを互いに向かい合わせた(posture−2)。その後、患者に、上記の実施例1に記載の通り、鼻と標的との間の目標指向運動(運動性)を行うよう求めた。最後に、患者に空のカップ(無負荷)および加重カップ(全負荷)を自身の前に持ち、着席するように求めた。全てのタスクを、それぞれ20秒継続して行い、合計3回繰り返した。運動性タスクではない全てのタスクを、完全な腕の振戦分析に使用した。
【0069】
シグナル処理を、実施例1と同様に、MatLab(登録商標)(MathWorks、R2011a)で行った。各対象データファイルについて、各試験に対応するセグメントをタスク毎に抽出した。各セグメントは、手首、肘および肩について3つの角度位置シグナル、および手について3つの線形加速シグナルを含んだ。各角度位置シグナルについて、中立位較正中の平均値を、さらなる処理の前に差し引いた。全ての振戦シグナル(角度位置および加速度の両方)を、フィルタリングバンドパスした(2−20Hz、最小二乗有限インパルス応答フィルタ、2000年製)。シグナルを両端に対して対称的に記した。各振戦シグナルについて、フィルタリング後、二乗平均平方根(RMS)値を、フィルタの一過性の影響を避けるために、振幅の測定値として計算した。試験中の、手の振戦の3D振幅、手首の3構成の振戦、および各構成の方向性バイアスを、rest−1、rest−2の3試験、ならびにpost−1、post−2の3試験、ならびに無負荷および全負荷の3試験について計算した。手の線形加速度の3Dを振幅とし(RMS)、全体的な振戦の重症度を提供した。手首の振戦に対する3構成のそれぞれの寄与度は、3D角度振幅(F/E、R/UおよびP/S)と手首での1構成(F/E)を組み合わせて決定した。同様に、肩での2構成の寄与度を、F/EおよびA/Aについて決定した。構成それぞれについての方向性バイアスを、シグナル、方向を考慮して(正=F/R/P;負=E/U/S)、シグナルを平均化することにより計算した。また、手首でのバイアスは、post−1およびpost−2中に手首でさらに分析されて、拮抗筋の1群が、他の群に比べて治療中により配慮が必要かどうかを判断するための情報が担当医に提供された。この処理は、
図6A、6Bおよび6Cに示されている。
【0070】
結果
対象の独特の右腕振戦の測定および分析後に、データはレビューを受けるために担当医に提供された。該情報に基づき、手首、肘および肩の各四肢セグメントの全体の図示値(
図7A)を調べた。
図7Aの上から4つ目のパネルを見ると、手首、肘および肩の合計振戦振幅は、それぞれ1.22、0.12および0.1であった。次いで、手首、肘および肩での最大値が処置を必要とするかどうかの最初の決定がなされた。処置を必要とした四肢セグメントの組み合わせに応じて、各肢セグメントについて、該肢が休息時、伸ばし腕静止中、動作位置で捕捉されるかどうか、および腕が種々の負荷位置にあるときに捕捉されるかどうかを、示された情報に基づいてさらに検討した(
図7Aの5番目パネル)。休息時、静止時、動作時、負荷時または全ての腕の位置の組み合わせにおける四肢の位置に基づき、最大振戦振幅を決定することができた。
【0071】
手首について、最大振戦振幅は、
図7Aの最初のパネルに示す通り、1.22であった。休息時および負荷時の手首の振戦振幅から、グラフ化した結果は、下位運動値である屈折−伸張(F/E)および橈屈−尺屈(R/U)に相関している(
図7Aの2番目パネル参照)。(F/E)および(R/U)の手首の動きに関連する振戦振幅は、偏位/バイアスの重大度の臨床評価を補助し、手首は、中立/通常の位置を有している(
図7Aの3番目パネル)。その後、これらの2つの下位運動での最大振幅は、手首での関心の優先度の面で上から2つのアーム静止からランク付けされる。休息時、静止時および負荷時のF/EおよびR/Uについての手首の偏位(方向性バイアス)および振戦振幅からなる、手首での最終構成に基づき、投薬パラダイムならびに注射のための筋肉の選択が決定され得る。
【0072】
肘について、振戦振幅(
図7Aの最初のパネルに見られる、0.12)が、臨床的に有意であることが見出された。肘における回内−回外(P/S)および橈屈−尺屈(R/U)サブ運動を、別々に評価した。担当医は、肘で測定された振戦が、同様に上腕二頭筋により影響を受ける手首の動きに寄与することを、運動学的評価中に完全に見出した。肘の構成に基づき、同量を肘の筋肉に注射した。しかしながら、回外偏位/バイアスが有意であった場合、薬剤のさらなる投与を上腕に行った。これは、肘の屈曲が回外するような伸張と比較して、肘の屈曲とは異なる肘に注射される。
【0073】
肩でのサブ運動は、屈折−伸張(F/E)および外転−内転(A/A)と同定された。各サブ運動での相対的振戦振幅が個別に考えられた。F/EおよびA/Aの一方または両方が、個々のサブ運動として屈折および/または伸張、外転および/または内転を考慮して、振戦に寄与するとして選択されるかどうかが決定された。
【0074】
各関節において、振戦の振幅、構成および方向性バイアスは、その後、注射の投与量および位置の選択を可能にした。供された情報に基づき、注射のために選択された筋肉は、以下のリストから選ばれ得る:橈側手根屈筋、尺側手根屈筋、腕橈屈筋、橈側手根伸筋、橈側手根伸筋、円回内筋、方形回内筋、回外筋、上腕二頭筋、胸筋、大円筋、上腕三頭筋、三角筋、棘上筋および棘下筋。本実施例において、橈側手根屈筋、尺側手根屈筋、橈側手根伸筋、橈側手根伸筋、円回内筋、方形回内筋、上腕二頭筋、胸筋、上腕三頭筋および棘上筋が、BoNT A注射のために選択された。
【0075】
対象は、最初のBoNT Aの注射後6週間のフォローアップ評価を有した。担当医および患者の両方が、治療後に手および腕の機能が顕著に改善したと評価した。運動学的値(
図7B参照)は、手首、肘および肩の総振戦振幅の有意な減少を示す。
図7Aと
図7Bを比較して、その振戦振幅が手首で1.22から0.13へ減少し、肘で0.12から0.08に減少し、そして肩で0.1から0.08に減少したことが分かった。手首の偏位は、大きく寄与することが明らかではなく、正常に戻ったように見える。
【0076】
実施例3:運動学的解析およびA型ボツリヌス毒素(BoNT A)注射を用いる斜頸を有する頭頸部振戦治療
対象の頭頸部振戦を、実施例1および2に記載の運動学的方法に従って一般的に測定し、分析した。これを達成するために、センサを
図8Aに示す通り、対象の頭頸部のセンサと共に、対象の身体上に配置した。
図8Aは、頭、肩および首上のセンサを示す。トーションメータを首の後ろに配置し、2つの傾斜計を両肩上に配置し、そして1つの傾斜計を、患者の頭部の側面に配置した。トーションメータは、回転の関節可動域に沿って回転性振戦およびジストニ
ア運動を検出することができた。肩上の2つの傾斜計は、肩の挙上を捕捉することができる。患者の頭部の側面に位置する傾斜計は、横方向の左右傾斜および前後方向の頭部矢状方向後屈についての振戦およびジストニ
ア運動を測定するために用いた。頭部のこれと同じ傾斜計は、横方向の左右傾斜および前後方向の頭部矢状方向後屈中の頭部(caput)およびコリス頭部(collis head)運動の関節可動域を記録することもできた。患者は、各運動記録の前に、患者の頭部を最小限の回転、側方傾斜および前後方向の矢状方向後屈を含む中立位置に調節することにより、較正位置に配置された。頭部も、較正中の振戦およびジストニ
ア運動を防止するために、やさしく保持していた。評価には12タスクが含まれている。最初の評価は、着座位置にて、任意の不随意運動を阻止することなく、頭頸部できるだけリラックスして維持しながら、前方を見るよう患者に求めることにより行った。最初のタスクは、患者が一般的に期待しているとき、頭部位置バイアスを決定するために重要である。その後、第二のタスクのために、患者に同様にリラックスした状態で眼を閉じるように求めた。第三および第四のタスクは、患者に、頭をできる限り左へ、その後右へ回転させるように求めた。第五から第八のタスクは、患者に、眼を開けた状態で頭を上向きの頭頸部位置(caput and collis)方向に傾け、次いで、頭頸部位置方向の頭を下向きに傾けることを伴った。最後の4タスクは、再び頭頸部位置に左右に頭を傾けるように患者に求めた。全てのタスクは、少なくとも3つの試験のために行われる。
【0077】
全評価中、3自由度を、側方傾斜、矢状方向傾斜および軸回転について記録し、2自由度を、肩の角度上昇について記録する。各自由度のための較正時の平均値を計算し、患者が行う他のタスクとの比較のための基準点として用いる。5シグナル毎に、シグナルをバンドパスフィルタに通し、その後、タスク1および2(Rest Eye−open、Rest Eyes−Closed)中の振戦の平均振幅を、3つ全ての試験について計算して、ボックスプロットとして示す。分析され、医師に提供されたデータは、3種類のグラフのいずれか1つである。第一のグラフは、異常なバイアス値を示すが、頭は中立位置に支持され、リラックスしており、振戦またはジストニ
ア運動に無抵抗である。第二のグラフは、眼を開けた休息状態および眼を閉じた休息状態時の振戦振幅(RMS角度、度数)を示す。第三のグラフは、タスク遂行中の頭頸部の関節可動域を示す。この処理は、
図6Eに示されている。
【0078】
対象の頭頸部振戦の測定および分析に続いて、データをレビューのために医師に提供した。初めに、処置が必要かどうかを、運動学的値に基づく、側方傾斜、回転および矢状方向運動の、3つの主要な位置のそれぞれで評価した。これらの3つの主要な位置運動値は、0の値を有する、通常の頭部位置からの偏位を表す。肩の上げ下げもまた、治療が必要かどうかを決定するために調査した。
【0079】
図9Aに見られるように、運動学的結果は、傾き、回転および矢状方向の運動学的値をさらに評価する必要性を示している。各運動のための個々の運動の記録もまた、眼を開けた状態(Eye−O)と眼を閉じた状態(Eye−C)との相違について評価した(
図9Aの上パネル参照)。運動学的値に基づいて、対象は、頭を右に傾ける頭部静止偏位を有することが明らかである。運動学的値はまた、対象の頭部が前傾(下顎)および左に回転していることを示している。
【0080】
ここで、異常な頭部静止が決定されており、各第一位置での振戦角度振幅についてのさらなる評価が行われる。運動学的データ(
図9A、2番目パネル)は、傾斜運動、その後の回転運動および最後の矢状方向前後運動における最も大きな振戦を示す。頭部偏位および振戦寄与度の両方を評価して、対象の首の関節可動域を運動学的データ(
図9A、三番目パネル)から評価し、運動異常を評価する。
【0081】
投薬管理表(dosing table)が構築され、注射に必要な筋肉が、運動の問題の頭部静止、振戦および可能性のある範囲について補正を助けるために選択された。提供された情報に基づき、注射のために選択された右および/または左の筋肉が、以下のリストから選択され得る:頭半棘筋、頭板状筋、僧帽筋、挙筋肩甲骨、胸鎖乳突筋、斜角筋、頸板状筋および頭最長筋。本実施例において、左右の頭板状筋、左右の胸鎖乳突筋および右側肩甲挙筋を、BoNT A注射のために選択した。
【0082】
対象を、最初のBoNT A注射の6週間後にフォローアップ評価した。医師および患者の双方が、頭部振戦の減少に伴って頭部静止に顕著な改善を見出した。運動学的値(
図9B)は、側方傾斜、矢状方向傾斜および回転を含む総振戦振幅運動の顕著な低減を示す(
図9Aの上パネルと比較して
図9Bの上パネルを参照のこと)。運動学的測定結果はまた、治療後の患者の全体的な関節可動域における改善を示す。
【0083】
実施例4:運動学的解析からのデータを用いる、A型ボツリヌス毒素(BoNT A)注射投与量の決定および筋肉の選択
本発明の前に、投与量レジメンは振戦の重症度にのみ基づいており、それは、筋群と個々の筋肉との間の総投与量を分割する方法にガイダンスを提供しないが、薬剤の総投与量を情報とした。構成および方向性バイアスについての正確な情報がなければ、総投与量は、完全に医師の判断と経験に基づいて、筋群と筋肉との間で分割された。本発明では、筋群構成および方向性バイアスについての正確な情報が、より高精度かつ一貫性の、適当に総投与量を分割するための提言を行うことを可能にする。とりわけ、今回、振戦における方向性バイアスを決定することができるため、特定の筋肉に注射されるべき薬剤の量を正確に決定することができる。
【0084】
特定の関節の筋肉に注射する薬剤の総投与量は、振戦の振幅によって示される関節での振戦の重症度により知らされる。振幅は、相関関係が一貫して提供される、任意の単位、例えば、角度変化または振戦の各自由度の二乗平均平方根(RMS)の平均で表され得る。0°からの全平均角度振幅度数を、振戦に関与する各筋群の平均振幅から決定することができる(例えば、F/E、R/UおよびP/S)。関節のための総投与量は、投与量 対 その関節についての振戦振幅の標準曲線から、または振幅の範囲を総投与量の範囲に相関付ける評価尺度から、または医師の経験から振幅を総投与量に相関付けることから、決定され得る。いくつかの場合に、総最大投与量は、制御された実験および薬物コストのために選択基準などの外部要因によって禁止され得る。
【0085】
一旦、総投与量が決定されると、総投与量は、各筋群の振戦に対する相対的寄与度に基づいて筋群間で分割され得る。次いで、各筋肉に供される投与量は、センサにより検出された相対的なバイアスに基づいて各筋肉群内の方向性バイアスから決定され得る。
【0086】
本実施例において、A型ボツリヌス毒素(BoNT A)注射の投与量および位置は、本態性振戦(ET)対象の関節運動の振幅、構成および方向性バイアスのために収集されたセンサデータから決定される。同様の手順が、他の振戦タイプ、例えば、パーキンソン病を有する対象における振戦に対して行われてよい。
【0087】
運動学的データを、
図1に示すセンサシステムを用いて、振戦事象中に本態性振戦(ET)対象の右腕から収集した。センサからの運動学的データをまとめたグラフを、手首関節運動(
図10A)、肘関節運動(
図10B)および肩関節運動(
図10C)について準備した。
図10Aは、全振幅(上グラフ)、構成(すなわち、総振戦に対する筋群の寄与)(中グラフ)および各筋群内の方向性バイアス(下グラフ)を含む手首関節についてのデータを提供する。
図10Bは、肘関節についての全振幅データを提供する。
図10Cは、全振幅(上グラフ)および構成(すなわち、総振戦に対する筋群の寄与)(下グラフ)を含む肩関節についてのデータを提供する。方向性バイアスデータは、肩関節についてグラフ化されず、肩の動きには方向性バイアスは存在しなかったと仮定された。各関節について収集されたデータは、一連の4つの静止タスク:Post−1、Post−2、Load−1およびLoad−2について得られた。静止タスクPost−1およびPost−2は、上に記載されている。Load−1は、対象が肘を90度曲げた腕で空のカップを保持することを伴う。Load−2は、カップが一杯であること以外、Load−1と同様である。対象が本態性振戦ではなくパーキンソン病を有する場合、さらに2つの静止タスクからのデータ(すなわち、Rest−1およびRest−2)もまた収集され得る。
【0088】
対象は全体的研究の一部であった。研究では、特定の関節に投与され得るBoNT Aの最大用量を含む処置のための選択基準を除外した。用量は振戦の振幅に関係するため、関節運動の最大振幅および最小振幅は、各関節について禁止された。最小値より低いか、または最大値より高い運動は処置されなかった。全振幅グラフ中の点線は、除外基準内であった対象を同定するために用いられた最大振幅および最小振幅を示している。実際には、対照試験外を、医師は、そのような制限を無視してよい。
【0089】
以下の表5は、これらの各関節での動きに関与する特定の筋肉のまとめを提供し、それ故、筋肉は、BoNT A療法の対象である。
【表6】
【0090】
手首:
手首に関して、
図10Aの上グラフは、一連の4つの静止タスク:Post−1、Post−2、Load−1およびLoad−2における、手首での振戦の振幅を示す。振戦の振幅を決定するために、担当医は、まず初めに、決定の基になる1または複数の静止タスクを選択する必要がある。医師は、対象が特定のタスクを最も面倒だと考える場合に別のタスクを選択するのが自由であるか、または全部もしくは一部のタスクの平均を使用することができるが、最も高い振戦振幅または変動を有する静止タスクが、通常選択される。2以上のタスクが同様の振幅を有するとき、Loadタスクは、静止タスクより優先して採られ、Load−2は、Load−1タスクより優先して採られる。
図10Aの上図において、Load−2は、全振幅を決定するために選択されるタスクである。タスクの少なくとも2つの振幅が、包含のための最小振幅を下回っている場合、医師は、関節が全てを注射されるかどうかを決定しなければならない。
【0091】
図10Aの上グラフからのLoad−2データに基づいて手首の総用量を選択するために、相関図が手首関節について求められる。この場合、振幅は、除外される最大限界(2.31°)と最小限界(0.58°)との間の4つの実質的に等しい範囲に分割され、10単位の増分での投与量が、以下の通り、4つの範囲に相関している:全振幅が1.89°−2.31°であるとき、60単位;全振幅が1.46°−1.88°であるとき、50単位;全振幅が1.02°−1.45°であるとき、40単位;全振幅が0.58°−1.01°であるとき、30単位である。Load−2タスクの全振幅は、0.58°−1.01°の範囲であるため、手首総投与量は、30単位に設定されている。
【0092】
総投与量を筋群間で分割する方法を決定するために、
図10Aの中グラフに示すような全振戦に対する各筋群の寄与を、各タスクについて調査する。Post−1について、寄与は、約55% F/E、20% R/Uおよび25% P/Sである。Post−2について、寄与は、約45% F/E、25% R/Uおよび30% P/Sである。Load−1について、寄与は、約37% F/E、20% R/Uおよび43% P/Sである。Load−2について、寄与は、約34% F/E、23% R/Uおよび43% P/Sである。1または複数のタスクからのデータが選択され、該選択は、医師の経験に基づくか、または平均値を採ってもよい。この場合、タスク全体の平均がとられ、各筋群の平均寄与は、42.5% F/E;22% R/U;および、35.5% P/Sである。手首に供された総投与量は30単位であるため、F/E群は12.75単位を受け取り、R/U群は6.6単位を受け取り、そしてP/S群は10.65単位を受け取り得る。
【0093】
各個々の手首の筋肉におけるBoNT Aの投与量を決定するために、方向性バイアス(すなわち、通常の位置からの偏位)を示す
図10Aの下グラフを調べる。
図10の下グラフの調査において、Post−1およびPost−2タスクは、重力によって相殺されていない、異なる自由度に焦点を当てることに留意すべきである。従って、Post−1において、尺屈は、−10°から−20°の間であると予期される。Post−2において、F/EおよびS/P静止は、±5°から−5°の間であると予期される。予期される偏位は点線で示されている。
【0094】
Post−1データは、20%(5°の偏位当たり10%)のバイアスの変化に等しい、予期される尺屈位置からの−10°の橈屈方向のずれを示している。従って、R/U筋群内で、70%の運動が橈屈筋肉によるものであり、30%が尺屈筋肉によるものである。R/U筋群は、総投与量の6.6単位を受容するため、4.6単位は橈屈筋(FCR、ECR)に行き、2単位は尺屈筋(FCU、ECU)に行く必要がある。
【0095】
図10Aの下グラフのPost−2データは、5%(5°の偏位当たり10%)のバイアスの変化に等しい、予期される屈曲範囲からの2.5°の屈曲方向のずれを示す。これは10%未満であり、有意でないと考えられ、従って、屈曲および伸展筋の両方は、F/E筋群の寄与に等しく寄与する。F/E筋群は12.75単位の総投与量を受容するため、6.375単位は屈曲筋(FCR、FCU)に行き、6.375単位は伸展筋(ECR、ECU)に行く必要がある。
【0096】
図10Aの下グラフのPost−2データはまた、10%(5°の偏位当たり10%)のバイアスの変化に等しい、予期される回外範囲から5°の回外方向のずれを示す。従って、S/P筋群内で、60%の運動が回内筋によるものであり、40%が回外筋によるものである。S/P筋群は10.65単位の総投与量を受容するため、6.39単位は回内筋(PT、PQ)に行き、4.26単位は回外筋(Sup)に行く必要がある。
【0097】
表5から、いくつかの筋肉が2以上の筋群分析による投与量を受けることが明らかである。例えば、FCRは、屈曲筋について計算される用量と橈屈筋について計算される用量に基づく投与量を受け取り得る。従って、筋群の種々の面についての用量は、その面(例えば、屈曲)を有する全ての筋肉間で均等に分割され、他の面(例えば、橈屈)間で同様に分割後に計算される用量に追加される。同様の分析が、表6に示すような表を作成するために、各手首の筋肉に注射するBoNT Aの量に達するように各筋肉に行われ得る。
【0098】
【表7】
【0099】
追加された複雑性において、上腕筋(M. biceps brachii)はまた、手首の回外にも関与している。従って、この分析で示されるより多くのBoNT Aが、回外筋に注射される必要がある。さらに、BoNT Aは不連続単位サイズでのみ利用可能であるため、5単位が、典型的に、注射が示唆されるとき、いずれか一方の手首の筋肉に注射され得る最小値であり、計算の結果は、ほぼ5単位に四捨五入されるべきである。従って、表6から、各手首の筋肉が、手首関節に合計35単位のBoNT Aのうち5単位を受け取り得ることが、上記から明らかである。
【0100】
この実施例において、より低い振戦重症度とほぼ5単位に四捨五入した投与量の組み合わせは、全ての手首の筋肉が5単位を受容し得ることを示す計算になった。しかしながら、構成寄与度および方向性バイアスを同じに維持するが、振戦の重症度が2.0の振幅に増大することは、総投与量を60単位まで増大させ得る。手首に対する60単位の合計では、表6の筋肉当たりの単位を2倍にすることができ、ほぼ5単位に四捨五入されると、各筋肉は、以下のBoNT Aの投与量を受け取り得る:FCR=10U;FCU=10U;ECR=10U、ECU=10U;PT=5U;PQ=5U;Sup=5U。
【0101】
肘:
肘に対して、
図10Bのグラフは、一連の4つの静止タスク:Post−1、Post−2、Load−1およびLoad−2における肘での振戦の振幅を示す。医師は、対象が特定のタスクを最も面倒だと考える場合に別のタスクを選択するのは自由であるが、最も高い振戦振幅または変動を有する静止タスクは、通常、選択される。2以上のタスクが同様の振幅を有するとき、Loadタスクは静止タスクより優先して取られ、Load−2タスクは、Load−1タスクよりも優先される。Load−2が最大振幅および変動を示すため、用量は、Load−2タスクのデータに基づき得る。タスクのうちの少なくとも2つの振幅が、包含のための最小振幅を下回っている場合には、医師は、関節が全てを注射されるかどうかを決定しなければならない。振戦の重症度は全てのタスクの選定基準の範囲内であるため、肘は、BoNT A注射について検討される。
【0102】
図10BのグラフからのLoad−2データに基づいて肘に対する総用量を選択するために、相関図が、肘関節について検討される。この場合、振幅は、除外される最大限界(1.00°)と最小限界(0.05°)の間の4つの実質的に等しい範囲に分割されており、投与量は、以下の4つの範囲に相関している:全振幅が0.77°−1.00°であるとき、60単位であり;全振幅が0.53°−0.76°であるとき、50単位であり;全振幅が0.30°−0.52°であるとき、40単位であり;全振幅が0.05°−0.9°であるとき、0単位である。Load−2タスクの全振幅が0.30°−0.52°の範囲であるため、肘の総投与量は40単位に設定される。方向性バイアスがないと仮定すると、上腕二頭筋および上腕三頭筋のそれぞれは、投与量の半分、すなわち、各20単位を受け取り得る。しかしながら、上腕筋(上腕二頭筋)は手首の回外にも関与し、肘データは、0.53°−0.76°の範囲にぎりぎりであるため、医師は、50単位の投与量を肘に投与する、二頭筋および三頭筋のそれぞれに25単位を投与することを検討することができる。しかし、BoNT A投与量は、一般的に、10単位ずつ肩に投与され、従って、20単位が上腕二頭筋に与えられ、20単位が上腕三頭筋に与えられる。
【0103】
肩:
肩に関して、
図10Cの上グラフは、一連の4つの静止タスク:Post−1、Post−2、Load−1およびLoad−2における肩での振戦の振幅を示す。振戦の振幅を決定するために、医師は、まず初めに、決定の基になる1または複数の静止タスクを選択する必要がある。医師は、対象が特定のタスクを最も面倒だと考える場合に別のタスクを選択するのは自由であるが、最も高い振戦振幅または変動を有する静止タスクは、通常選択される。2以上のタスクが同様の振幅を有するとき、静止タスクより優先して採られ、Load−2は、Load−1タスクより優先して採られる。
図10Cの上グラフにおいて、Load−2は、全振幅を決定するために選択されるタスクである。タスクの少なくとも2つの振幅が、包含のための最小振幅を下回っている場合、医師は、関節が全てで注射されるかどうかを決定しなければならない。振戦の重症度が、全てのタスクの選定基準の範囲内であるため、肩は、BoNT A注射について検討される。
【0104】
図10Cの上グラフからのLoad−2データに基づいて肩に対する総用量を選択するために、相関図が、肩関節について検討される。この場合、振幅は、除外される最大限界(0.71°)と最小限界(0.04°)の間の4つの実質的に等しい範囲に分割されており、投与量は、以下の4つの範囲に相関している:全振幅が0.55°−0.71°であるとき、80単位であり;全振幅が0.39°−0.54°であるとき、60単位であり;全振幅が0.21°−0.38°であるとき、40単位であり;全振幅が0.04°−0.21°であるとき、0単位である。Load−2タスクの全振幅が0.21°-0.38°の範囲に十分近かったため、肩の総投与量は40単位に設定される。
【0105】
図10Cの下グラフは、各静止位置での振戦(すなわち、振戦の構成)に対する各筋群の寄与を示し、ここで、Shl−Flxは、屈曲/伸展筋群を示し、Shl−Abdは、肩における外転/内転筋群を示す。総投与量を筋群間に分ける方法を決定するために、
図10Cの下グラフに示す総振戦に対する各筋群の寄与を、各タスクについて調べる。Post−1について、寄与は、約45% F/Eおよび55% Add/Abdである。Post−2について、寄与は、約45% F/Eおよび55% Add/Abdである。Load−1について、寄与は、約45% F/Eおよび55% Add/Abdである。Load−2について、寄与は、約47% F/Eおよび53% Add/Abdである。1また複数のタスクからのデータが選択され、該選択は、医師の経験に基づくか、または平均値を採ってもよい。この場合、タスクのほとんどが、各筋群の寄与について45% F/Eおよび55% Add/Abdを示すため、これが選択された。肩に供される総用量が40単位であるため、F/E群は18単位を受容し、Add/Abd群は22単位を受容する。
【0106】
本実施例において、肩筋群内の方向性バイアスは等しいと考えられるため、屈曲に関与する個々の筋肉(すなわち、大胸筋−表5参照)は、屈曲/伸展群に対する用量の半分を受容し、伸張に関与する筋肉(すなわち、大胸筋−表5参照)は残り半分を受容する。従って、大胸筋および大円筋は、屈曲/伸展筋群について決定された18単位のうち両者とも9単位ずつを受容する。外転/内転筋群は、全40単位のBoNT Aのうち22単位を受容し、方向性バイアスがないと仮定すると、このうち外転筋が11単位を、内転筋が11単位を受容する。肩には2つの外転筋(三角筋および棘上筋−表5参照)が存在し、これらのそれぞれは、外転筋に対して決定された11単位のBoNT Aのうち5.5単位を受容する。肩には1つの内転筋(大胸筋−表5参照)が存在し、この筋肉は、内転筋に対して決定された11単位のBoNT Aの全部を受容する。大胸筋は既に、屈曲筋に対して決定された投与量から9単位を受容しているため、大胸筋は、合計20単位のBoNT Aを受容する。投与量は5または10単位で与えられるため、大円筋は10単位を受容し、三角筋および棘上筋はそれぞれ5単位を受容する。
【0107】
まとめ:
筋肉バイアス当たりの用量のまとめを表7に示す。
【表8】
【0108】
方法は、各静止タスクまたは一般的に考慮される全てのもしくは一部の静止タスクについての一連の推奨投与量を提供することができる。上記の通り、医師は、該推奨から変更することが可能であり、他の考慮事項に基づいて、この方法による投与量を変更することができ、例えば、総投与量は、調節、他の処置パラメーターもしくは購入のしやすさ(affordability)により最大量に制限され得るか、または、薬剤は、1セット単位でのみ注射され得る(例えば、5または10単位)。さらに、振戦の重症度に対する総投与量の相関は、より多くのデータが収集され、処置の結果が評価されるように、調整され得る。
【0109】
投薬について、考慮されるタスクは、関節間で異なり得る。5単位が、所望の総用量を四捨五入して越えるために手首の投薬から除かれる必要がある場合には、まず、ECRからの5単位の除去が、分散のリスクを最小限にするために最善である。手首の回外筋が、10単位以上またはそれと同量を注射されている場合、上腕二頭筋は、肘での振戦重症度が、肘でのBoNT A注射を必要としたかどうかに関わらず、さらに20単位を受容するべきである。個々の肩の筋肉に与えられる最小用量が20単位に設定され、四捨五入した値が三角筋に対して10単位および棘上筋に対して10単位であるとき、棘上筋は20単位を受容し、三角筋は0単位を受容すべきである。
【0110】
最終的に、所定の関節に投与されるべきBoNT Aの総投与量の選択は、本実施例に記載の通り、振戦の振幅データによって導かれ得るか、または過去の経験もしくは他の考慮事項に基づき医師により単に選択されてもよい。しかしながら、総投与量を特定の筋肉間で分割する方法は、各筋肉が、振戦への筋肉の寄与に基づいて総投与量の適当な割合を受け取ることを保証するために、本明細書に記載の方法に従って可能であり、有利に行われる。
【0111】
実施例5:運動学的解析からのデータを用いる、A型ボツリヌス毒素(BoNT A)注射投与量の決定および筋肉の選択
運動学的データ、
図1に示すセンサシステムを用いて、振戦イベント中の本態性振戦(ET)対象の左腕で収集された。手首、肩および肘関節の運動学的データは
図11Aに示されている。
【0112】
左腕の筋肉に注射するA型ボツリヌス毒素(BoNT A)の総投与量を決定するために、
図11B−Iに示す工程1−12を行った。
図11B−Fの工程1−6は、手首の筋肉へのBoNT A投与量を決定するためのものである。
図11Gの工程7−8は、肘の筋肉へのBoNT A投与量を決定するためのものである。そして、
図11H−Iの工程9−12は、肩の筋肉へのBoNT A投与量を決定するためのものであり、
図11Jは、対象の左腕の筋肉のために計算された投与量をまとめたものである。
【0113】
図11Aに示すデータに基づいて
図11B−Iに示した方法は、実施例4に概説した方法と同様である。しかしながら、実施例5において、センサデータからの生の数値データを、グラフからのデータの代わりに用いる。さらに、腕に与えられ得るBoNT Aの用量に禁止される上限はない。BoNT Aの投与量は、手首、肘および肩での振戦の振幅のみから決定され、振幅は各関節のためのそれぞれの標準的な相関チャート(用量表)と比較される。各相関チャートは、関節での振戦の振幅(重症度)に基づいてBoNT Aの最大用量を提供する。標準的相関チャートは、大規模な試行錯誤法から開発され、熟練した医師の経験によって情報化された。
【0114】
図11Bに示す通り、手首の筋肉に与えられるBoNT Aの総投与量は、初めに、振幅が最高値であるタスクについての振戦の振幅を決定することにより、工程1−3において決定される。この場合、Posture−2タスクは、2.26°で最大振幅を与える。
図11Bの相関チャートから、2.26°での振幅は、手首の筋肉に与えられる80Uの総投与量に相当する。手首における各筋群に与える80Uの割合を決定するために、
図11Cに示す工程4は、振戦についての筋群構成データを用いる(該筋群構成データは
図11Aに提供される)。手首に対するBoNT Aの総投与量は、振戦に対する各筋群の寄与に応じて、手首における筋群に比例配分される。筋群内の方向性バイアスを考慮するために、
図11Aの手首バイアス情報を、
図11D−Eに示す工程5に利用する。各筋群のバイアスの大きさは、
図11Dの相関チャートと比較して、投与量を変えることによりその量に達し、該変化は、そのバイアスを供与する筋肉への投与量の増加、およびそのバイアスを供与しない筋肉への投与量の対応する低減であり得る。従って、筋群への投与量は、振戦における方向性バイアスが存在する場合に、筋群内の個々の筋肉間で不均等に分割されたよい。この場合には、筋群の3つ(F/E、R/UおよびP/S)の全ては、方向性バイアスを有するため、筋群内の投与量が、
図11Eの工程5.5−5.6で計算されるのに従って調整される。手首の筋肉当たりのBoNT Aの正確な投与量は、
図11Fの工程6に示すように計算される。BoNT Aの投与量は、指定したサイズで利用可能であるため、筋肉当たりの最終投与量は、正確な投与量を適当に四捨五入することによって得られる。最終投与量のそれぞれの合計は、振幅から決定される総投与量を超えないようにすべきである(この場合は80U)。
図11Fの工程6は、最終投与量が、振戦の振幅から決定された総投与量よりも多くの量まで追加されるイベントにおいて、特定の筋肉での投与量を低減させるための工程を記載する。この場合には、振戦の振幅から決定された総投与量と最終投与量の合計は同じであるので、何の低減も必要ない。
【0115】
図11Gに示す通り、肘の筋肉に与えるBoNT Aの総投与量は、初めに、振幅が最も高いタスクの振戦の振幅を決定することにより、工程7において決定される。この場合、Load−2タスクは、0.67°で最大振幅を供する。
図11Gの相関チャートから、0.67°の振幅は、肘の筋肉に与えられる50Uの総投与量に相当する。
図11Gの工程8は、総投与量を肘の筋肉間で分割する方法を示している。肘の筋肉は2つのみであるため、各筋肉は総投与量の半量を受容し、各筋肉は25UのBoNT Aを受容する。
【0116】
図11Hに示す通り、肩の筋肉に与えられるBoNT Aの総投与量は、初めに、振幅が最も高いタスクの振戦の振幅を決定することにより、工程9において決定される。この場合、Load−2タスクは、0.34°で最大振幅を供する。
図11Hの相関チャートから、0.34°の振幅は、肩の筋肉に与えられる60Uの総投与量に相当する。振戦への筋群の寄与は、総投与量に各筋群の寄与の割合を乗じて、
図11Hの工程10−11にて計算され得て、ここで寄与の割合は、
図11Aのデータに供される。筋肉当たりの正確な用量は、特定の筋肉(例えば、大胸筋)が2以上の筋群に寄与し得るため、
図11Iの工程12に概説される通り、筋群の寄与を個々の筋肉に分けることにより決定され得る。BoNT A投与量は、指定したサイズで利用可能であるため、筋肉当たりの最終投与量は、正確な投与量を適当に四捨五入することによって得られる。最終投与量のそれぞれの合計は、振幅から決定される総投与量を超えないようにすべきである(この場合は60U)。
図11Iの工程12は、最終投与量が、振戦の振幅から決定された総投与量よりも多くの量まで追加されるイベントにおいて、特定の筋肉での投与量を低減させるための工程を記載する。この場合には、振戦の振幅から決定された総投与量と最終投与量の合計は同じであるので、何の低減も必要ない。
【0117】
図11Jは、
図11Aのデータが収集された本態性振戦対象の左腕に、各関節で筋肉のそれぞれに注射されるBoNT A投与量のまとめを提供する。
図11Jに見られる通り、方法は、左腕が、合計190UのBoNT Aを受容し、手首に80U、肘に50U、そして肩に60Uを受容すべきことが決定されている。
【0118】
実施例6:投与量最適化工程
上記の分析に基づきA型ボツリヌス毒素(BoNT A)での初期治療後、対象のフォローアップ治療は、既に開発されている注射計画を利用可能である。しかしながら、該注射計画の最適化は、最初の処置で得られる結果に基づくことが望ましい。対象の再訪におけるかかる最適化は、以下の最適化レジメンを用いて決定され得る。
【0119】
工程1:
工程1は、対象が、最初の処置の結果として任意の筋肉の筋力低下を経験したかどうかを、該対象に尋ねることを含む。質問は、好ましくは手首から、その後肘、次いで肩と始まり、関節毎に尋ねられる。
【0120】
1A:対象が手首の筋力低下を報告するとき、弱い特定の筋群が決定される。この決定は、対象に尋ねる、対象を調査する、対象にタスクを実行させる、またはそれらの組み合わせによって行われ得る。筋力低下が屈曲に関連するとき、FCR筋肉に注射されるBoNT Aの量は、5単位まで低減される(必要に応じて、一連の来院時に繰り返され得る)。筋力低下が伸展に関連するとき、ECR筋肉およびECU筋肉のそれぞれに注射されるBoNT Aの量は、5単位まで低減される(必要に応じて、一連の来院時に繰り返され得る)。筋力低下が回転に関連するとき、SUP筋肉に注射されるBoNT Aの量は、5単位まで低減され(必要に応じて、一連の来院時に繰り返され得る)、PT筋肉およびPQ筋肉のそれぞれに注射されるBoNT Aの量は、5単位まで低減される(必要に応じて、一連の来院時に繰り返され得る)。
【0121】
1B:対象が肘の筋力低下を報告するとき、肘の各筋肉に注射されるBoNT Aの量は、5単位まで低減される(必要に応じて、一連の来院時に繰り返され得る)。
【0122】
1C:対象が肩の筋力低下を報告するとき、弱い特定の筋群が決定される。この決定は、対象に尋ねる、対象を調査する、対象にタスクを実行させる、またはそれらの組み合わせによって行われ得る。筋力低下がAbd/Add筋群にあるとき、Abd/Add筋肉のそれぞれに注射されるBoNT Aの量は、5単位まで低減される(必要に応じて、一連の来院時に繰り返され得る)。筋力低下がF/E筋群にあるとき、F/E筋肉のそれぞれに注射されるBoNT Aの量は、5単位まで低減される(必要に応じて、一連の来院時に繰り返され得る)。
【0123】
筋力低下が関節に報告されている場合には、最初の治療レジメンが、工程1に上記のように変更を組み込んで、その関節に繰り返される。以下の工程2および3は、治療レジメンへの変更が、工程1に従いその関節に行われていない場合には、その関節には行われない。筋力低下が、1つの関節で報告されているが、他の関節で報告されていないとき、工程1は、筋力低下により影響を受ける関節に行われてもよいが、工程2または3は、筋力低下の影響を受けていない1もしくは複数の関節に行われてもよい。
【0124】
工程2:
関節に対する筋力低下が工程1で報告されていない場合には、運動学的測定値の別のセットが、弱点が工程1で報告されなかったために振戦に関与する関節のそれぞれで取られている。測定を行うには、振戦の振幅は、該振戦の振幅が最も大きいタスクから決定される。
【0125】
2A:新たに測定された関節での振戦の振幅(重症度)が、新しいデータに従い許容されるレベルまで低減しているとき、それらの関節については、以下の工程3に進む。
【0126】
2B:新たに測定された関節での振戦の振幅(重症度)が十分に低下しておらず、以前の評価と比較して、各筋群からの寄与が10%以上シフトしているとき、10単位のBoNT Aが、振戦において優位な影響を受けている筋群に追加される。他の筋群に注射されるBoNT Aの量は、低減されない。
【0127】
2C:寄与が、以前の評価に比べて10%未満シフトしているとき、全ての筋群は、5単位のBoNT Aを受容する。
【0128】
工程2が、上記の通り、関節でのBoNT A注射への調整を必要とするとき、その関節については、工程3に進まない。
【0129】
工程3:
関節での治療の調整が、工程1または工程2に従って行われるとき、工程3は、治療の調整を受けた関節について実行されない。関節での治療の調整が、工程1または工程2に従って行われていないとき、工程3は、治療の調整を受けていない関節について行われる。
【0130】
工程3において、対象は、目的の特定の関節での振戦がより良好であるかどうか尋ねられる。この質問は、工程1で筋力低下が報告されていなくとも尋ねられ、改善が工程2で決定される。時には、対象は、一般的に、時間の経過とともにほとんど、あるいは全く改善を経験していないかもしれないが、工程2での測定は、振戦が通常ほど激しく起こらない日に行われ得る。
【0131】
3A:対象は、振戦がより良好であると報告するとき、治療への変更は行われず、該対象は、最初の治療レジメンを繰り返して処置される。
【0132】
3B:対象は、振戦が良好ではなく、ほとんどの振戦の原因となる特定の動作を同定することができないことを報告するとき、以前に投与された各筋肉でのBoNT A投与量は、5単位まで増加されるが、BoNT Aは、以前にBoNT Aを受容していない筋肉には注射されない。各関節は独立して評価される。
【0133】
3C:振戦が屈曲に関連すると報告するとき、FCRおよびFCU筋肉に注射されるBoNT Aの量は、5単位まで増加される(必要に応じて、一連の来院時に繰り返され得る)。振戦が伸展に関連するとき、ECR筋肉およびECU筋肉のそれぞれに注射されるBoNT Aの量は、5単位まで増加される(必要に応じて、一連の来院時に繰り返され得る)。筋力低下が回転に関連するとき、SUP筋肉に注射されるBoNT Aの量は、5単位まで増加され(必要に応じて、一連の来院時に繰り返され得る)、PT筋肉およびPQ筋肉のそれぞれに注射されるBoNT Aの量は、5単位まで増加される(必要に応じて、一連の来院時に繰り返され得る)。振戦が橈屈に関連するとき、FCR筋肉およびECR筋肉のそれぞれに注射されるBoNT Aの量は、5単位まで増加される(必要に応じて、一連の来院時に繰り返され得る)。
【0134】
3D:対象は、肘での振戦を報告するとき、肘の筋肉のそれぞれに注射されるBoNT Aの量は、5単位まで増加される(必要に応じて、一連の来院時に繰り返され得る)。
【0135】
3E:対象は、肩における振戦を報告するとき、振戦を引き起こしている特定の筋群が決定される。この決定は、対象に尋ねる、対象を調査する、対象にタスクを実行させる、またはそれらの組み合わせによって行われ得る。振戦がAbd/Add筋群で起こっているとき、Abd/Add筋肉のそれぞれに注射されるBoNT Aの量は、5単位まで増加される(必要に応じて、一連の来院時に繰り返され得る)。振戦がF/E筋群で起こっているとき、F/E筋肉のそれぞれに注射されるBoNT Aの量は、5単位まで増加される(必要に応じて、一連の来院時に繰り返され得る)。
【0136】
参考文献:各文献は、その内容全体が、引用により本明細書中に包含される。
Benito−Leon J, Louis ED. (2011) “Update on essential tremor.” Minerva Med. 102, 417−40.
Deuschl G, et al. (1998) “Consensus statement of the Movement Disorder Society on Tremor. Ad Hoc Scientific Committee.” Mov Disord. 13, Suppl 3, 2−23.
Fahn S, et al. (2003) “Clinical rating scale for tremor.” in Parkinson’s disease and movement disorders. J. Jankovic and E. Tolosa, Eds., ed: Williams and Wilkins, 1993.
Rahimi F, et al. (2011) “Variability of hand tremor in rest and in posture−−a pilot study.” in Conf Proc IEEE Eng Med Biol Soc. 470−3.
Rahimi F, Bee C, Debicki D, Roberts AC, Bapat P, Jog M. (2013) Effectiveness of BoNT A in Parkinson’s Disease Upper Limb Tremor Management. Can J Neurol Sci. 40, 663−669.
【0137】
本発明の新規な特徴は、本発明の詳細な説明の検討により当業者に明らかであろう。しかしながら、特許請求の範囲は、実施例に記載の好ましい態様に限定されるべきではなく、全体として明細書と矛盾のない最も広い解釈が与えられるべきことが、理解されるべきである。