特許第6498760号(P6498760)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6498760-熱可塑性加硫物組成物 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498760
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】熱可塑性加硫物組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/24 20060101AFI20190401BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20190401BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20190401BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20190401BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   C08J3/24 ZCES
   C08L101/00
   C08K3/04
   C08L21/00
   C08J3/22CEZ
【請求項の数】8
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2017-522186(P2017-522186)
(86)(22)【出願日】2015年9月3日
(65)【公表番号】特表2017-531727(P2017-531727A)
(43)【公表日】2017年10月26日
(86)【国際出願番号】US2015048364
(87)【国際公開番号】WO2016064479
(87)【国際公開日】20160428
【審査請求日】2017年5月31日
(31)【優先権主張番号】62/068,057
(32)【優先日】2014年10月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599134676
【氏名又は名称】エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100071010
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 行造
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100185535
【弁理士】
【氏名又は名称】逢坂 敦
(72)【発明者】
【氏名】チャン、オスカー・オー
(72)【発明者】
【氏名】ウール、ユジーン・アール
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−117018(JP,A)
【文献】 特開平08−253634(JP,A)
【文献】 特表2008−545810(JP,A)
【文献】 特表2000−515189(JP,A)
【文献】 特開平11−100512(JP,A)
【文献】 特表2008−544075(JP,A)
【文献】 特開2002−265692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−3/28;99/00
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
B29B 7/00−11/14
B29B 13/00−15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂、エラストマー成分、硬化剤およびカーボンブラックマスターバッチのそれぞれをチャンバーに導入する工程、および
前記エラストマー成分の少なくとも一部を熱可塑性加硫物を形成するように動的加硫する工程であって、前記エラストマー成分が少なくとも部分的に加硫され、前記熱可塑性樹脂を含んでいる連続相中に分散される工程
を含む方法であって、
前記カーボンブラックマスターバッチが(i)0.850〜0.920g/cmの密度、ならびに(ii)190℃および2.16kgの加重でASTM D1238によって測定された0.05〜50g/10分のメルトインデックスを有する、プロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーを含んでいるキャリアー樹脂中に分散されたカーボンブラック粒子を含んでいるとともに、
前記プロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーが、65重量%〜99重量%のプロピレン由来単位ならびにエチレンおよびC〜C10アルファオレフィンのうちの1種に由来する1重量%〜35重量%のコモノマー単位を含んでおりかつ75J/g以下の融解熱を有するプロピレン−α−オレフィンコポリマーであり、さらに前記熱可塑性加硫物が、前記可塑性加硫物の重量基準で4重量%以下の前記プロピレン−α−オレフィンコポリマーを含んでいる、方法。
【請求項2】
前記エラストマー成分の少なくとも一部の前記動的加硫の後に、前記熱可塑性加硫物を200米国メッシュ(74ミクロン)またはそれよりも細かいスクリーンに通す工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱可塑性加硫物が、
(a)前記熱可塑性加硫物の1インチ×18インチ(2.54cm×45.72cm)の押し出された細片に9個以下の染みの表面染み計測数、および
(b)前記プロピレンに基いたもしくはエチレンに基いたコポリマーを含む全てのキャリアー樹脂が代わりにホモポリプロピレンキャリアー樹脂であること以外は同一の熱可塑性加硫物と比較して2〜15%速い押し出し処理速度であって、前記ホモポリプロピレンキャリアー樹脂が10〜35g/10分の範囲のメルトフローレートおよび0.945g/cmの密度を有する、押し出し処理速度
の一方または両方を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記熱可塑性加硫物を形成するように前記熱可塑性樹脂および前記硬化剤が存在する状態で前記エラストマー成分の少なくとも一部を動的加硫する工程であって、前記エラストマー成分が少なくとも部分的に加硫され、前記熱可塑性樹脂を含んでいる連続相中に分散される工程、および
前記カーボンブラックマスターバッチを前記熱可塑性加硫物中に導入する工程であって、前記カーボンブラックマスターバッチが、プロピレン−α−オレフィンコポリマーを含んでいるキャリアー樹脂中に分散されたカーボンブラック微粒子を含んでおり、前記プロピレン−α−オレフィンコポリマーが、65重量%〜99重量%のプロピレン由来単位ならびにエチレンおよびC〜C10アルファオレフィンのうちの1種に由来する1重量%〜35重量%のコモノマー単位を含んでおりかつ75J/g以下の融解熱を有する工程、
を含む方法。
【請求項5】
前記カーボンブラックマスターバッチを前記熱可塑性加硫物中に導入する工程が、前記熱可塑性加硫物が前記動的加硫の後で溶融状態に留まっている間に、前記カーボンブラックマスターバッチと前記熱可塑性加硫物とをブレンドする工程を含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記カーボンブラックマスターバッチを前記熱可塑性加硫物に導入する前に複数の熱可塑性加硫物ペレットを形成するように、前記熱可塑性加硫物をペレット化する工程をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記カーボンブラックマスターバッチを導入した後で、前記熱可塑性加硫物を200米国メッシュ(74ミクロン)またはそれよりも細かいスクリーンを通させる工程をさらに含む、請求項4〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記カーボンブラックマスターバッチを導入した後で、前記熱可塑性加硫物が、前記熱可塑性加硫物の重量基準で4 重量%以下の前記プロピレン−α−オレフィンコポリマーを含んでいる、請求項4〜7のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者
チャン、オスカー・オーおよびウール、ユジーン・アール
関連出願の相互参照
本出願は、2014年10月24日に出願された米国特許仮出願第62/068,057号の優先権を主張し、その開示内容はその参照によって本明細書に完全に取り込まれる。
技術分野
【0002】
本発明は、熱可塑性加硫物、詳細には添加物を含んでいる熱可塑性加硫物を形成するための組成物、および同加硫物を含んでいる組成物に関する。さらに、本発明は上記の組成物を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
熱可塑性加硫物(「TPV」)とは、連続の熱可塑性相中に分散相を形成する、微細に分散された架橋されたエラストマー粒子を含んでいる熱可塑性組成物の一部類である。TPVは、熱可塑性物の加工処理特性とともに、エラストマー相によってもたらされるエラストマー特性の利益を有する。TPVは、動的加硫を含むプロセスによって製造されることができ、動的加硫とは、少なくとも1種の非加硫性熱可塑性ポリマー成分のブレンドの中で、その熱可塑性物をその融解温度以上に保ちながら、強力なせん断および混合条件の下で、溶融された熱可塑性物とエラストマー成分との溶融混合の間にそのエラストマー成分を選択的に架橋する(あるいは代わりに「硬化する」または「加硫する」とも言われる。)プロセスである。たとえば、米国特許第4,130,535号、4,594,390号、6,147,160号、7,622,528号および7,935,763号を参照せよ。これらのそれぞれの全体は参照によって本明細書に取り込まれる。
【0004】
従来のプラスチック加工処理装置は、TPVを、押し出し、射出しまたは他様に成形し、このようにして圧縮し形状を与えて、有用な製品へとすることができる。これらの熱可塑性加硫物は、十分な耐久性とともに重量が軽く魅力的なものにされることができ、かつこれらの製品寿命の最後には再加工処理されて新製品を製造することができる。これらの理由から、熱可塑性加硫物は産業の中で広く、たとえば、自動車部品、例としてダッシュボードおよびバンパー、エアダクト、ウェザーシール、流体シールおよびその他の自動車ボンネット下用途として;機械用の、ギヤーおよび歯車、車輪および駆動ベルトとして;電子装置用の、筐体および絶縁物として;カーペット、衣類および寝具用の織物としてならびにクッションおよびマットレス用の詰め物として;および建築用伸縮継手として;使用されている。熱可塑性加硫物は、消費財にも広く使用されており、容易に加工処理され、他のプラスチックでの場合と同じように着色されることができ、また、基板材料またはその一部に、たとえば多成分積層体中のより硬いプラスチックまたは金属に、ゴムのような「ソフトタッチ」または反発性を付与することができる弾性的性質を提供する。
【0005】
熱可塑性加硫物は、バンバリーミキサー、ロールミキサーおよび他のタイプのせん断溶融加工処理ミキサー内の動的加硫によって調製されることができる。連続プロセスである利点のために、このような材料は単軸または多軸押出機で調製されることができる。
【0006】
熱可塑性加硫物が形成されおよびゴム成分の加硫が生じる環境は、顕著なせん断力、熱および様々な添加物の存在によって典型的には特徴付けられ、添加物としては、たとえばゴムの架橋を促進するゴム硬化剤および共働剤が挙げられる。加工処理条件およびTPVに含まれるべき材料の選択は、押し出し後のTPVの質に実質的な影響を与えることがある。優れた押し出し特性を維持しながら良好な物理的性質および加工処理性を示すTPVを提供することが望ましい。しかし、これらの望ましい特性のバランスを保つことは困難であることが判明している。押し出し物表面平滑度(これは押し出し物表面粗さ(ESR)とも言われる。)は、このESRが最終押し出し製品の好適さおよび審美性を決定付けることがあるので、特に重要な押し出し特性である。それと同時に、TPVの加工処理性、たとえば押し出し処理速度を改善するためのかなりの余地が依然として残っている。したがって、TPVの配合処方を決定し加工処理する場合に、物理的性質および加工処理性、たとえば押し出し処理速度を改善する努力と合わせて、ESRを維持しまたは改善することが望ましい。
【0007】
本発明は、TPV組成物およびTPVの加工処理性、たとえば押し出し処理速度を、それと同時に物理的特性、たとえば表面平滑度も維持しまたは改善しながら、改善する方法に関する。ある実施形態では、本発明は、TPVを、およびTPVをつくる方法を提供し、このTPVは、連続相の熱可塑性樹脂中に分散相を形成する少なくとも部分的に架橋されたエラストマーを含んでおり、それはさらにマスターバッチ添加物も含んでいる。マスターバッチ添加物は、キャリアー樹脂中に分散されたカーボンブラックおよび/または他の1種または数種の添加物を含んでいてもよい。カーボンブラックは、たとえばTPVに黒色を与えるために典型的には使用され、またそのTPVに耐紫外線性を与えることができる。カーボンブラックおよび/または他の(数種の)添加物がポリプロピレンキャリアー樹脂中に分散されてTPVに添加されるべきマスターバッチを形成することができるけれども、本発明者らは驚いたことに、プロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーがTPV中に取り込まれるマスターバッチ用の優れたキャリアー樹脂であることを見出した。特に、プロピレンに基いたまたはエチレンに基いた特定のコポリマーがTPV配合物に添加されるマスターバッチのキャリアー樹脂として使用された場合、得られたTPVは、他に得られる有益な特性の中でも、改善された表面平滑度およびより速い押し出し処理速度を示す。さらにより驚いたことに、これらの結果は、そのTPV配合物中に直接ブレンドされた、プロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーを含んでいるTPVと比較してさえも改善されている。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明は、1つの様相では、熱可塑性加硫物を製造するプロセスを提供し、このプロセスでは、エラストマー成分、硬化剤組成物および熱可塑性樹脂を含んでいるTPV配合物が加工処理されて、TPVが形成される。加工処理は、エラストマー成分が少なくとも部分的に架橋され熱可塑性樹脂を含んでいる連続相中に分散されるように、エラストマー成分の動的加硫を含んでもよい。いくつかの様相では、カーボンブラックが、加工処理の間に、プロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーキャリアー樹脂中に分散されたカーボンブラックを含んでいるカーボンブラックマスターバッチを介してTPV配合物に添加される。他の様相では、1種以上の他の添加物が、加工処理の間に、1種以上の添加物マスターバッチであって、それぞれの添加物マスターバッチがプロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーキャリアー樹脂中に分散されたその1種以上の他の添加物のうちの1種以上を含んでいるものを介して、TPV配合物に添加される。マスターバッチは、動的加硫の前に、その間にまたはその後にTPV配合物に添加されてもよい。ある様相では、本発明のプロセスは、200メッシュまたはそれよりも細かいスクリーンを通してTPV配合物を押し出す工程をさらに含んでいてもよく、これは表面平滑度をさらに改善することができる。
【0009】
本明細書で使用される「TPV配合物」とは、TPVを形成するためにTPV配合物を加工処理する前にまたはその間にブレンドされたまたは他様に集められた成分の混合物を言う。これは、一緒に混合され次に加工処理される成分が、その混合された成分を加工処理する間にこれらの成分のいくつかまたは全ての間で起こる反応次第で、その配合物に添加されたのと同じ量で最終TPV中に存在することもあり存在しないこともあるという事実を認識した上でのものである。
【0010】
本発明は、他の様相では、プロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーのキャリアー樹脂中に分散された、1種以上の添加物を含んでいるマスターバッチを形成する工程、およびこのマスターバッチ、エラストマー成分および熱可塑性樹脂をブレンドして、TPV配合物を形成する工程を含んでもよい。マスターバッチの1種以上の添加物は、特定の様相では、カーボンブラックを含んでいるか、あるいはカーボンブラックから成る。ブレンドする工程は、マスターバッチの添加の前に、その間にまたはその後に熱可塑性樹脂中のエラストマー成分の動的加硫を含んでもよい。ブレンドされたTPV配合物は、さらに押し出されてまたは他様に加工処理されて、1種以上の添加物、プロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマー、エラストマー成分および熱可塑性樹脂を含んでいるTPVが得られてもよく、その結果、該エラストマー成分は少なくとも部分的に加硫されて該熱可塑性樹脂を含んでいる連続相内に分散される。押し出しまたは他の加工処理工程は、いくつかの様相では、TPV配合物を200メッシュまたはそれよりも細かいスクリーンを通させる工程を含んでもよい。
【0011】
さらなる様相では、本発明は、上記のプロセスのいずれかによって形成されたTPVを提供する。他の様相では、本発明は、熱可塑性樹脂、カーボンブラックおよび/または他の(数種の)添加物ならびにプロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマー内に分散された、少なくとも部分的に架橋されたエラストマー成分を含んでいるTPVを提供し、このプロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーは、カーボンブラックおよび/または他の(数種の)添加物のキャリアー樹脂としてこのTPV中に取り込まれる。代わりにまたは追加して、ある様相のTPVは、加硫可能なエラストマー成分、熱可塑性樹脂、硬化剤組成物、およびプロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーキャリアー樹脂内に分散されたカーボンブラック(および/または他の(数種の)添加物)を含んでいるマスターバッチ、を含んでいる組成物の動的加硫によって得られる製品であると特性付けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】様々な熱可塑性加硫物配合物の押し出し処理速度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、より詳細に記載されるように、本発明はTPV、およびプロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーキャリアー樹脂中に分散された1種以上の添加物を含んでいるマスターバッチの添加を含むTPVを形成するプロセスに関する。特定の実施形態では、マスターバッチは、プロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマー樹脂中に分散されたカーボンブラックを含んでいるカーボンブラックマスターバッチである。様々な実施形態のこのマスターバッチは、TPVの製造中に任意のTPV中に含有されるのに適している。ある実施形態は、TPV配合物をTPVを形成するように動的加硫することを含む方法を提供する。TPV配合物は、エラストマー成分、熱可塑性樹脂、硬化剤組成物、およびプロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマー中に分散された1種以上の添加物(たとえば、カーボンブラック)を含んでいるマスターバッチを含んでもよい。TPV配合物は、動的加硫によることを含めて加工処理されて、以下のものを含んでいるTPVを形成することができる:
(i)少なくとも部分的に架橋され、熱可塑性樹脂の連続相内に分散されたエラストマー成分、
(ii)1種以上の添加物、
(iii)上記の1種以上の添加物のプロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーキャリアー樹脂、および
(iv)動的加硫反応のあり得る副生成物および/またはあり得る未反応硬化剤組成物。
他の実施形態では、マスターバッチは、加工処理の間にではあるが、動的加硫の後に添加されてもよい。ある実施形態では、(先に記載されたマスターバッチ中の1種以上の添加物に加えて)他の添加物が、加工処理の間に、動的加硫の前にまたはその後に、直接の添加としてか、あるいは追加のマスターバッチ(これは、従来のキャリアー樹脂またはプロピレンに基いたもしくはエチレンに基いたコポリマーキャリアー樹脂を含んでいてもよい。)を介した添加として、含まれてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態のTPV配合物の各成分が以下で、より詳細に検討され、引き続いて、様々な実施形態によるTPVを形成するために使用される加工処理が説明される。
エラストマー成分
【0015】
TPVの製造に使用するのに適した任意のエラストマーが、本発明のいくつかの実施形態のTPVを製造するのに使用されることができる。用語「エラストマー」とは、エラストマー特性を示す任意の天然または合成のポリマーを言い、本明細書では「ゴム」と同義に使用されることができる。本発明で提供されるTPVのエラストマー成分は、加硫される(すなわち、硬化されるまたは架橋される)ことができなければならない。本発明に従って使用される典型的なエラストマーは、不飽和無極性エラストマー、2種以上のモノオレフィンの無極性エラストマーコポリマーを含むモノオレフィンコポリマーエラストマー(EPエラストマー)を含んでもよく、後者は少なくとも1種のポリエン、通常ジエンとともに共重合されてもよい(EPDMエラストマー)。EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンエラストマー)は、エチレン、プロピレンおよび1種以上の非共役ジエンのポリマーであり、これらのモノマー成分は、ジーグラー−ナッタ、メタロセンまたは他の有機金属化合物で触媒された反応を使用して重合されてもよい。コポリマーがエチレン、アルファオレフィンおよびジエンモノマーから調製される場合には、そのコポリマーはターポリマーと、または多数のオレフィンもしくはジエンが使用される場合にはテトラポリマーとさえ呼ばれることができる。
【0016】
要件を満たしている非共役ジエンとしては、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENBまたはEP(ENB)DMと呼ばれる。)、1,4−ヘキサジエン(HD)、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、1,6−オクタジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,4−シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン(DCPD)、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNBまたはEP(VNB)DMと呼ばれる。)、ジビニルベンゼン等またはこれらの組み合わせが挙げられる。このようなエラストマーは、結晶性または半結晶性ポリマーに寄与する物理的性質を維持しながら、概して約95パーセントを超える硬化状態を有する熱可塑性加硫物を製造する能力を有する。デカリン中135℃で測定された0.1〜10dl/グラムの固有粘度(η)を有するEPエラストマーおよびEPDMエラストマーが好ましい。とりわけ好ましい実施形態では、エラストマーはEPDMを含む。
【0017】
エラストマーコポリマーは、約20〜約90モルパーセントのエチレンモノマーに由来するエチレン単位を含んでいてもよい。好ましくは、これらのコポリマーは約40〜約85モルパーセント、より好ましくは約50〜約80モルパーセントのエチレン単位を含んでいる。さらに、コポリマーがジエン単位を含んでいる場合には、ジエン単位は約0.1〜約5モルパーセント、好ましくは約0.1〜約4モルパーセント、より好ましくは約0.15〜約2.5モルパーセントの量で存在することができる。コポリマーの残余は、一般にアルファオレフィンモノマーに由来する単位から構成されることになる。したがって、コポリマーは約10〜約80モルパーセント、好ましくは約15〜約50モルパーセント、より好ましくは約20〜約40モルパーセントのアルファオレフィンモノマーに由来するアルファオレフィン単位を含んでいてもよい。上記のモルパーセントはポリマーの全モル数を基準とする。
【0018】
エラストマー成分は、少なくとも部分的に加硫されることができる、任意の1種以上の他の適当なエラストマーコポリマー、たとえばブチルエラストマー、天然ゴム、およびTPVに含有されるのに適した任意の他の(合成または天然の)エラストマー、例として米国特許第7,935,763号および第8,653,197号に開示されたものを含んでもよく、これらの特許のそれぞれの全体は参照によって本明細書に取り込まれる。
【0019】
エラストマーは、とりわけ分子量の範囲の上限域にあるものは、しばしばその製造プロセスにおいて油展されているので、本発明のプロセスに従ってそのまま直接、加工処理されることができる。すなわち、いくつかの実施形態によるTPV中に含有されるエラストマー成分は、エラストマーおよびエキステンダー油の両方を含んでいる。
熱可塑性樹脂
【0020】
熱可塑性加硫物の製造に使用するのに適した任意の熱可塑性樹脂が、様々な実施形態の熱可塑性樹脂、たとえば非晶性、結晶性または半結晶性の熱可塑性物として使用されることができる。概して、すでに参照によって本明細書に取り込まれた米国特許第7,935,763号に記載された任意の熱可塑性物は適当なものである。
【0021】
特定の実施形態では、熱可塑性樹脂は、アルファオレフィン、たとえばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、2−メチル−1−プロペン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセンまたはこれらの混合物を重合することによって形成される1種以上の結晶化可能なポリオレフィンを含んでいてもよい。たとえば、公知の、エチレン結晶性を有するエチレンに基いたホモポリマーまたはコポリマーが適している。市販の製品としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)および超低密度ポリエチレン(VLDPE、またはプラストマー)が挙げられる。アイソタクチックプロピレン結晶性を有する、プロピレンに基いたホモポリマーおよびコポリマー、たとえばアイソタクチックプロピレンおよびプロピレンとエチレンまたは他のC4〜C10アルファオレフィンもしくはジオレフィンとの結晶化可能なコポリマーが好まれる。エチレンとプロピレンとのコポリマー、またはエチレンもしくはプロピレンと、別のアルファオレフィン、たとえば1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、2−メチル−1−プロペン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセンもしくはこれらの混合物とのコポリマーも適している。これらの熱可塑性樹脂としては、ブロック、ランダムまたは混合によるポリマー合成のいずれかの、リアクターポリプロピレンコポリマーおよびインパクトポリプロピレンコポリマーが挙げられる。
【0022】
結晶性または半結晶性熱可塑性物は一般に、サンプルの融解する範囲内での最大の熱吸収量の温度として定義されるピーク「融点」(「Tm」)を有する。いくつかの実施形態の熱可塑性物のTmは、約40、50、60、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115および120℃のいずれか1つの最低値から約170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350℃のいずれか1つの最高値までの範囲内にあってもよい。特定の実施例の実施形態では、Tmは約40℃〜約350℃、約75℃〜約210℃、約85℃〜約180℃、約90℃〜約180℃、約120℃〜約170℃の範囲内にあってもよい。これらの熱可塑性物のガラス転移温度(Tg)は、約−25℃〜約10℃、好ましくは約−5℃〜約5℃である。より一般的に言えば、半結晶性およびガラス質の極性熱可塑性物を含めて、有用な熱可塑性物は100℃までおよび100℃超、さらに150℃超のTgを有することになる。特性付ける温度は、ASTM D−3418のテスト方法に従ってDSCによって測定される。
【0023】
特定の実施形態による熱可塑性物は、高度に結晶性のアイソタクチックまたはシンジオタクチックのポリプロピレンを含んでいる。このポリプロピレンは概して、約0.85〜約0.91g/ccの密度を有し、主として約0.90〜約0.91g/ccの密度を有するアイソタクチックポリプロピレンである。また、1未満のメルトフローレートを有する高分子量および超高分子量ポリプロピレンが極めて好ましい。これらのポリプロピレン樹脂は、ASTM D−1238による0.2〜3000dg/分、より好ましくは1.2dg/分未満、最も好ましくは0.8dg/分以下であるメルトフローレートによって特性付けられる。メルトフローレートは、ポリマーが標準圧力の下でどの程度容易に流れるかの指標であり、ASTM D−1238を使用することによって230℃および2.16kgの荷重で測定される。
【0024】
熱可塑性樹脂は、さらに追加の成分を、たとえば米国特許第7,935,763号にこの熱可塑性樹脂との関連で記載されたような追加の成分のいずれかを含んでいてもよい。たとえば、追加の成分のいずれかは、追加の非架橋性エラストマー、例として非TPVの熱可塑性物および熱可塑性エラストマーを含んでもよい。これらの例としては、ポリオレフィン、たとえばポリエチレンホモポリマーおよび1種以上のC〜Cアルファオレフィンとのコポリマーが挙げられる。
硬化剤組成物
【0025】
いくつかの実施形態の硬化剤組成物は1種以上の硬化剤を含んでいる。好適な硬化剤としては、加硫可能なエラストマーまたはより詳細には熱可塑性加硫物を加工処理するものとして当業者に知られているもののうちの任意のものが挙げられる。様々な実施形態による硬化剤組成物は、米国特許第8,653,197号(すでに参照によって本明細書に取り込まれたもの)で、および米国特許第8,653,170号(この全体も参照によって本明細書に取り込まれる。)で検討されたように、任意の硬化剤および/または共働剤を含んでもよく、また硬化剤および/または共働剤を含める任意の方法をさらに含んでもよい。
【0026】
好適な硬化剤としては、水素化ケイ素(これはヒドロシリル化による硬化を引き起こすことができる。)、フェノール樹脂、過酸化物、フリーラジカル開始剤、イオウ、亜鉛金属化合物等の1種以上が挙げられる。これらの名前を挙げられた硬化剤は多くの場合に、エラストマーの全体としての硬化状態を改善する目的のために、開始剤、触媒等としての役割をする1種以上の共働剤とともに使用される。たとえば、いくつかの実施形態の硬化剤組成物は、酸化亜鉛(ZnO)および塩化スズ(SnCl)の一方または両方を含んでいる。硬化剤組成物は、1つ以上の場所で、たとえば融解混合押出機のフィードホッパーで添加されてもよい。いくつかの実施形態では、硬化剤および何らかの追加の共働剤は、TPV配合物に一緒に添加されてもよく、他の実施形態では、1種以上の共働剤は、TPV配合物がTPVを形成するために加工処理を受けている間に、そのTPV配合物にいずれの1種以上の硬化剤とも異なるときに添加されてもよい(以下で、より詳細に検討される)。
【0027】
硬化剤は、特定の実施形態では、1種以上のフェノール樹脂を含んでいてもよい。適当なフェノール樹脂としては、米国特許第2,972,600号、第3,287,440号、第5,952,425号および第6,437,030号(これらのそれぞれは参照によって本明細書に取り込まれる。)に開示されたものが挙げられ、また好ましいフェノール樹脂としてはレゾール樹脂と呼ばれるものが挙げられ、米国特許第8,653,197号(すでに参照によって本明細書に取り込まれている。)で詳細に検討されている。硬化剤組成物がフェノール樹脂を含んでいる特定の実施形態では、硬化剤組成物はZnOおよびSnClの一方または両方も含んでいる。
【0028】
ZnOおよびSnClに加えて、いくつかの実施形態の硬化剤組成物としては、加えてまたは代わりに、任意の他の好適な共働剤、たとえばトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、リン酸トリアリル、イオウ、N−フェニル基−ビス−マレイミド、ジアクリル酸亜鉛、ジメタクリル酸亜鉛、ジビニルベンゼン、1,2−ポリブタジエン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、3官能性アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、多官能性アクリレート、抑制されたシクロヘキサンジメタノールジアクリレートエステル、多官能性メタクリレート、アクリレートおよびメタクリレート金属塩、オキシム、たとえばキノンジオキシム等が挙げられる。
マスターバッチ
【0029】
本発明のTPV配合物は、プロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーを含んでいるキャリアー樹脂中に分散された1種以上の添加物を含んでいるマスターバッチも含有してよい。いくつかの実施形態では、1種以上の添加物としては、マスターバッチを介してTPV中に取り込まれるのに適した任意の添加物が挙げられる(たとえば、キャリアー樹脂中への分散に適した任意の添加物が、それによってTPV中に組み込まれることができるマスターバッチを形成する)。その例としては、フィラー、エキステンダーおよび着色剤等が挙げられる。特定の例としては、従来の無機物、たとえば炭酸カルシウム、クレイ、シリカ、タルク、二酸化チタン、これらとともに有機および無機ナノスケールフィラーが挙げられる。
【0030】
特定の実施形態では、マスターバッチは、プロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーキャリアー樹脂中に分散されたカーボンブラックを含んでおり、これらから本質的に成りまたはこれらから成る。「から本質的に成る」とは、キャリアー樹脂に関して、キャリアー樹脂の特性が様々な実施形態のプロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーの特性の範囲内に留まることを意味する(以下で、より詳細に検討される)。マスターバッチ中に分散されたカーボンブラックに関して、「から本質的に成る」とは、キャリアー樹脂内に分散されたカーボンブラック以外の任意の(数種の)成分が、TPV配合物(および加工処理後に得られたTPV)の特性が任意のそのような追加の(数種の)成分が全くなかった場合に有したであろう特性と異ならないような特性を有する(および/または異ならないと言うのに十分なほど少量である)ことを意味する。特に、このような特性としては表面平滑度および押し出し処理速度が挙げられる。
マスターバッチ中のカーボンブラック粒子
【0031】
いくつかの実施形態によるマスターバッチのカーボンブラックは、石油製品の不完全燃焼によって製造された任意の従来のタイプのカーボンブラック(たとえば、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック)の粒子を含む。典型的な粒子直径は、約5、10、15、20、25、30、35および40nmのいずれか1つの最低値から約50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320および330nmのいずれか1つの最高値までの範囲であってもよい。カーボンブラック粒子は、約90、95、100、105、110および115nmのいずれか1つの最低値から約200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850および900nmのいずれか1つの最高値までのサイズの範囲の強凝集体(たとえば、その強凝集体が球体に近似される場合にはサイズは直径である。)、および/または約1、2、3、4、5、6、7、8、9および10ミクロンのいずれか1つの最低値から約90、100、150、200、250、300、350および400ミクロンまたはそれ以上のいずれか1つの最高値までのサイズの範囲の弱凝集体を形成してもよい。
【0032】
ある実施形態では、カーボンブラックは、TPVに紫外線防護および/または着色(すなわち、黒色の着色)を付与する。
マスターバッチ中の他の添加物
【0033】
上記のように、マスターバッチはまた、加えてまたは代わりに、キャリアー樹脂内に分散された1種以上の他の添加物も含んでいてもよい。この場合にも、特定の例としては、フィラー、エキステンダーおよび着色剤等(たとえば、従来の無機物、例として炭酸カルシウム、クレイ、シリカ、タルク、二酸化チタン、これらとともに有機および無機ナノスケールフィラー)が挙げられる。
プロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーキャリアー樹脂
【0034】
マスターバッチキャリアー樹脂は、プロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーを含んでいる。一般に、プロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーは、(i)約0.850〜約0.920g/cm、または他の実施形態では約0.860〜約0.910g/cmの密度、および(ii)約0.05〜約50g/10分、または他の実施形態では約0.1〜約30g/10分のメルトインデックス(MI)を有してもよい。
【0035】
本明細書で使用される密度は、ASTM D1505−10、密度勾配法によるプラスチックの密度の標準試験方法、ASTMインターナショナル、米国、ペンシルベニア州、ウェストコンショホッケン、2010年(www.astm.org)において、2014年10月の時点でASTMインターナショナルによって規定されているASTM D−1505に従って室温で測定されて報告されるものであり、上記の標準試験方法はその全体が参照によって本明細書に取り込まれる。本明細書で使用されるMIは、ASTM D1238−13、押し出し可塑度計による熱可塑性物のメルトフローレートの標準試験方法、ASTMインターナショナル、米国、ペンシルベニア州、ウェストコンショホッケン、2013年(www.astm.org)において、2014年10月の時点でASTMインターナショナルによって規定されているASTM D−1238に従って190℃および2.16kgの荷重で測定されるものであり、上記の標準試験方法はその全体が参照によって本明細書に取り込まれる。したがって、本明細書に記載されたどのような密度および/またはMIも、これらのそれぞれの標準試験方法(ASTM D1505、ASTM D−1238)と一致する様式で測定されることができる。
【0036】
さらに、本明細書で使用されるプロピレンとエチレンとのコポリマーは、コポリマーの全重量基準で、プロピレンに基いたモノマーがコポリマー中の相対多数のモノマーを形成する場合に「プロピレンに基いて」いる(すなわち、プロピレンに基いたモノマーが他のどの単一モノマーよりも大きい重量%でコポリマー中に存在する)。同様に、プロピレンとエチレンとのコポリマーは、エチレンに基いたモノマーがコポリマー中の相対多数のモノマーを形成する場合に「エチレンに基いて」いる。プロピレンに基いたコポリマーは、プロピレンの名前を最初に挙げることによって示され(たとえば、「プロピレン−エチレンコポリマー」または「プロピレン−α−オレフィンコポリマー」)、同様にエチレンに基いたコポリマーについては、エチレンの名前を最初に挙げることによって示される(たとえば、「エチレン−プロピレンコポリマー」または「エチレン−α−オレフィンコポリマー」。プロピレンおよび/またはエチレンのコポリマーは、任意的に1種以上の追加のコモノマーを含んでいてもよい。
【0037】
ある実施形態では、キャリアー樹脂は、本明細書に記載された様々な実施形態による1種以上のプロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーから成りまたはそれから本質的に成っていてもよい。この文脈における「から本質的に成る」とは、キャリアー樹脂がその1種以上のプロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマー以外のポリマーを、その1種以上のプロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーから成るキャリアー樹脂と比較して、キャリアー樹脂の特性(特にHf、メルトフローレートおよびメルトインデックスの1種以上)を変更するのに十分な量では含んでいないことを意味する。
【0038】
ある好ましい実施形態によるプロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーは、次のうちのいずれか1種以上を含んでいてもよい:プロピレン−α−オレフィンコポリマー、エチレン−α−オレフィンコポリマーおよびエチレン−プロピレンコポリマーゴム。これらのそれぞれは、順番に以下で、より詳細に検討される。
プロピレン−α−オレフィンコポリマーキャリアー樹脂
【0039】
いくつかの実施形態では、このキャリアー樹脂は、結晶性領域が非結晶性領域によって遮られたランダムコポリマーであるプロピレン−α−オレフィンコポリマーを含んでおりまたはそれから成る。どのような理論によっても限定されるつもりはないが、非結晶性領域は、結晶化可能でないポリプロピレンセグメントの領域および/またはコモノマー単位を含有する領域に由来することがあると考えられる。高度にアイソタクチックのポリプロピレンと比較して、プロピレンの挿入の際の過誤導入(立体的および領域的欠陥)によっておよび/またはコモノマーの存在によって、プロピレン−α−オレフィンコポリマーの結晶化度および融点は低減する。プロピレン−α−オレフィンコポリマーは、プロピレン由来単位、およびエチレンまたはC〜C10アルファオレフィンの少なくとも1種に由来する単位、ならびに任意的にジエン由来単位を含んでいる。このコポリマーは、このプロピレン−α−オレフィンコポリマーの重量基準で少なくとも約60重量%のプロピレン由来単位を含んでいる。いくつかの実施形態では、プロピレン−α−オレフィンコポリマーは、本明細書に記載されたような、隣接するアイソタクチックプロピレン単位に起因して限定された結晶化度および融点を有するプロピレン−α−オレフィンコポリマーエラストマーである。他の実施形態では、プロピレン−α−オレフィンコポリマーは、一般に立体規則性およびコモノマー組成における何らかの実質的な分子間不均質を有しておらず、また一般に分子内組成分布における何らかの実質的な不均質を有していない。
【0040】
プロピレン−α−オレフィンコポリマーは、プロピレン−α−オレフィンコポリマーの全重量基準で、約50重量%超、好ましくは約60重量%超、より好ましくは約65重量%超、さらにより好ましくは約75重量%超または約99重量%までのプロピレン由来単位を含んでいる。いくつかの好ましい実施形態では、プロピレン−α−オレフィンコポリマーは、約75重量%〜約95重量%、より好ましくは約75重量%〜約92.5重量%、さらにより好ましくは約82.5重量%〜約92.5重量%、最も好ましくは約82.5重量%〜約90重量%のプロピレン−α−オレフィンコポリマーの重量に基いた量でプロピレン由来単位を含んでいる。対応して、エチレンもしくはC〜C10アルファオレフィンの少なくとも1種に由来する単位またはコモノマーは、プロピレン−α−オレフィンコポリマーの全重量基準で、約1重量%〜約35重量%、または好ましくは約5重量%〜約35重量%、より好ましくは約5重量%〜約25重量%、さらにより好ましくは約7.5重量%〜約25重量%、さらにより好ましくは約7.5重量%〜約20重量%、さらにより好ましくは約8重量%〜約17.5重量%、最も好ましくは約10重量%〜約17.5重量%の量で存在してもよい。
【0041】
プロピレン−α−オレフィンコポリマーは、約50J/g以下の融解熱、約100℃以下の融点およびアイソタクチックポリプロピレンの約2%〜約65%の結晶化度、および好ましくはASTM D−1238によって230℃および2.16kgの荷重で測定された800g/10分(dg/分)未満のメルトフローレート(「MFR」)を有してもよく、メルトフローレートはまた、すでに参照によって本明細書に取り込まれたASTM D1238−13、押し出し可塑度計による熱可塑性物のメルトフローレートの標準試験方法に2014年10月の時点で記載されたようにも測定される。特定の実施形態では、プロピレン−α−オレフィンコポリマーは、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20g/10分のいずれか1つの最低値から約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、75、100、125、150および200g/10分のいずれか1つの最高値までの範囲であってもよく、ただし、最高値は最低値以上であることを条件とする。したがって、たとえば、ある実施形態によるプロピレン−α−オレフィンコポリマーのMFRは、約15〜約25g/10分もしくは約18〜22g/10分の範囲内または約20g/10分であってもよい。
【0042】
代わりにまたは追加して、いくつかの実施形態のプロピレン−α−オレフィンコポリマーは、ASTM D−1238によって190℃および2.16kgの荷重で測定されたそのメルトインデックスによって特性付けられてもよい。プロピレン−α−オレフィンコポリマーは、約1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0および4.5g/10分のいずれか1つの最低値から約8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、15.0、20.0、30.0、40.0および50.0g/10分のいずれか1つの最高値までの範囲のメルトインデックスを有してもよい。
【0043】
プロピレン−α−オレフィンコポリマーは1種より多いコモノマーを含んでいてもよい。1種より多いコモノマーを有するプロピレン−α−オレフィンコポリマーの好ましい実施形態としては、プロピレン−エチレン−オクテン、プロピレン−エチレン−ヘキセンおよびプロピレン−エチレン−ブテンコポリマーが挙げられる。
【0044】
エチレンまたはC〜C10アルファオレフィンのうちの少なくとも1種に由来する1種より多いコモノマーが存在するいくつかの実施形態では、各コモノマーの量はプロピレン−α−オレフィンコポリマーの約5重量%未満であってもよいが、コモノマーの合計量はプロピレン−α−オレフィンコポリマーの重量基準で約5重量%以上である。
【0045】
好ましい実施形態では、コモノマーはエチレン、1−ヘキセンまたは1−オクテンであり、プロピレン−α−オレフィンコポリマーの重量基準で、好ましくは約5重量%〜約25重量%、約5重量%〜約20重量%、約5重量%〜約16重量%、約6重量%〜約18重量%、約8重量%〜約20重量%、約9重量%〜約13重量%、またはいくつかの実施形態では、約10重量%〜約12重量%の量である。対応して、これらの実施形態のあるものでは、プロピレン−α−オレフィンコポリマーは、約75重量%〜約95重量%、約80重量%〜約95重量%、約84重量%〜約95重量%、約82重量%〜約94重量%、約80重量%〜約92重量%、約87重量%〜約91重量%、またはいくつかの実施形態では、約88重量%〜約90重量%のプロピレン由来単位を含んでいてもよい。
【0046】
1つの実施形態では、プロピレン−α−オレフィンコポリマーはエチレン由来単位を含んでいる。プロピレン−α−オレフィンコポリマーは、プロピレン−α−オレフィンコポリマーの重量基準で約5重量%〜約35重量%、好ましくは約5重量%〜約25重量%、約7.5重量%〜約20重量%、約9重量%〜約13重量%、約10重量%〜約12重量%または約10重量%〜約17.5重量%のエチレン由来単位を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、プロピレン−α−オレフィンコポリマーは、プロピレンおよびエチレンに由来する単位から本質的に成る、すなわち、このプロピレン−α−オレフィンコポリマーは、重合の際に使用されたエチレンおよび/もしくはプロピレン供給原料流中に不純物として典型的に存在する量で何らかの他のコモノマーを、もしくはプロピレン−α−オレフィンコポリマーの融解熱、融点、結晶化度もしくはメルトフローレートに実質的な影響を与えることになる量で何らかの他のコモノマーを、または重合プロセスに意図的に加えられた何らかの他のコモノマーを、含んでいない。このような実施形態では、その結果、プロピレン−エチレンコポリマーは、エチレン由来単位に加えて残余のプロピレン由来単位を上に列挙されたいずれか1つの範囲で含むことになる。
【0047】
いくつかの実施形態では、ジエンコモノマー単位が、プロピレン−α−オレフィンコポリマー中に含まれる。ジエンの例には以下のものがあるが、これらに限定されない:5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ジビニルベンゼン、1,4−ヘキサジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、1,6−オクタジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,4−シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンまたはこれらの組み合わせ。ジエンコモノマーの量は、プロピレン−α−オレフィンコポリマーの重量基準で0重量%、または0.5重量%、または1重量%、または1.5重量%以上、および5重量%、または4重量%、または3重量%、または2重量%以下である。
【0048】
プロピレン−α−オレフィンコポリマーは、約50、45、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21および20J/gのいずれか1つの数値以下のHfを有する。いくつかの実施形態の好適なプロピレン−α−オレフィンコポリマーは、約0.5、1.0、1.5、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0および7.0J/gのいずれか1つの下限Hfを有してもよい。
【0049】
プロピレン−α−オレフィンコポリマーは、アイソタクチックポリプロピレンの、約2%〜約65%、好ましくは約0.5%〜約40%、好ましくは約1%〜約30%、より好ましくは約5%〜約35%の、本明細書に記載されたDSC方法によって測定された結晶化度パーセントを有してもよい。プロピレンの最高秩序構造(すなわち、結晶化度100%)に対する熱エネルギーは189J/gと推定されている。いくつかの実施形態では、コポリマーはアイソタクチックポリプロピレンの約0.25%〜約25%または約0.5%〜約22%の範囲の結晶化度を有する。
【0050】
いくつかの実施形態では、プロピレン−α−オレフィンコポリマーのプロピレン由来単位は、約50%〜約99%、より好ましくは約65%〜約97%、より好ましくは約75%〜約97%のアイソタクチックトライアド分率を有する。他の実施形態では、プロピレン−α−オレフィンコポリマーは、約75%以上、約80%以上、約82%以上、約85%以上または約90%以上の13C NMRによって測定されたトライアド立体規則性を有する。
【0051】
ポリマーのトライアド立体規則性は、mおよびr連鎖の二元の組み合わせで表現された3個の隣接したプロピレン単位の連鎖、すなわち頭−尾結合から成る連鎖の相対的な立体規則性である。これは通常、プロピレン−α−オレフィンコポリマー中の特定の立体規則性の単位数と全てのプロピレントライアドとの比率として表現される。プロピレンコポリマーのトライアド立体規則性(mm分率)は、プロピレンコポリマーの13C NMRスペクトルから決定されることができる。トライアド立体規則性の計算は米国特許第5,504,172号に記載されており、その全内容は参照によって本明細書に取り込まれる。
【0052】
プロピレン−α−オレフィンコポリマーは、DSCによって測定された単一ピークの融解転移を有してもよい。1つの実施形態では、コポリマーは、約90℃以下の主ピーク転移点とともに約110℃以上の広い融解転移の終点を有する。ピーク「融点」(「Tm」)は、サンプルの融解の領域内の最大の熱吸収量の温度として定義される。しかし、コポリマーは、主ピークに隣接しておよび/または融解転移の終点において二次融解ピークを示すことがある。本開示発明の目的のためには、このような二次融解ピークはまとめて単一の融点と見なされ、これらのピークの中で最大のものがプロピレン−α−オレフィンコポリマーのTmと見なされる。プロピレン−α−オレフィンコポリマーは、約100℃以下、約90℃以下、約80℃以下または約70℃以下のTmを有してもよい。1つの実施形態では、プロピレン−α−オレフィンコポリマーは、約25℃〜約100℃、約25℃〜約85℃、約25℃〜約75℃または約25℃〜約65℃のTmを有する。いくつかの実施形態では、プロピレン−α−オレフィンコポリマーは約30℃〜約80℃、好ましくは約30℃〜約70℃のTmを有する。
【0053】
示差走査熱量測定(「DSC」)のデータは、Perkin Elmer社製DSC 7を使用して得られた。約5mg〜約10mgの試験されるポリマーのシートが、およそ200℃〜230℃でプレスされ、次に打ち抜き型を用いて取り出され、室温で48時間アニールされた。サンプルはその後アルミニウムサンプル皿の中に密閉された。DSCデータは、サンプルを最初に−50℃まで冷却し次にそれを10℃/分の速度で200℃まで徐々に加熱することによって記録された。サンプルは200℃に5分間保たれ、その後第2の冷却−加熱サイクルが適用された。第1および第2のサイクルの両方の熱イベントが記録された。融解曲線の下の面積が測定され、融解熱および結晶化度を決定するために使用された。結晶化度パーセント(Xパーセント)は、X%=[曲線の下の面積(ジュール/グラム)/B(ジュール/グラム)]*100の式を使用して計算され、この式でBは主モノマー成分のホモポリマーの融解熱である。Bについての値は、ポリマーハンドブック、第4版、John Wiley & Sons社、米国、ニューヨーク州、1999年刊に見出される。189J/gの値(B)が100%結晶性のポリプロピレンの融解熱として使用された。融解温度は第2の加熱サイクル(または第2の融解)の間に測定され報告された。
【0054】
1つ以上の実施形態では、プロピレン−α−オレフィンコポリマーは、100未満、他の実施形態では75未満、他の実施形態では60未満および他の実施形態では30未満のASTM D−1646によって測定されたムーニー粘度[ML(1+4)@125℃]を有してもよい。本明細書で使用されるムーニー粘度は、ML(1+4)@125℃が、ASTM D1646−99によって125℃の温度で1分間の予熱時間および4分間のせん断時間にわたってML、すなわち大ローターを使用して測定されたムーニー粘度を示すように、ローター([予熱時間、分間]+[せん断時間、分間]@測定温度、℃])の書式を使用して報告される。特に指定のない限り、ムーニー粘度は、本明細書ではASTM D−1646によってML(1+4)@125℃としてムーニー単位で報告される。
【0055】
プロピレン−α−オレフィンコポリマーは、ASTM D−1505によって測定された室温で約0.850g/cm〜約0.920g/cm、約0.860g/cm〜約0.900g/cm、好ましくは約0.860g/cm〜約0.890g/cmの密度を有してもよい。
【0056】
プロピレン−α−オレフィンコポリマーは、約5,000〜約5,000,000g/モル、好ましくは約10,000〜約1,000,000g/モルおよびより好ましくは約50,000〜約400,000g/モルの重量平均分子量(「Mw」);約2,500〜約2,500,000g/モル、好ましくは約10,000〜約250,000g/モルおよびより好ましくは約25,000〜約200,000g/モルの数平均分子量(「Mn」);および/または約10,000〜約7,000,000g/モル、好ましくは約80,000〜約700,000g/モルおよびより好ましくは約100,000〜約500,000g/モルのz−平均分子量(「Mz」)を有してもよい。プロピレン−α−オレフィンコポリマーは、約1.5〜約20、または約1.5〜約15、好ましくは約1.5〜約5およびより好ましくは約1.8〜約5および最も好ましくは約1.8〜約4の分子量分布(「MWD」)を有してもよい。
【0057】
プロピレン−α−オレフィンコポリマーは、ASTM D412によって測定された約2000%未満、約1000%未満または約800%未満の破断点伸びを有してもよい。
【0058】
プロピレン−α−オレフィンコポリマーを調製するのに適したプロセスは、いくつかの実施形態では、メタロセンに触媒されたまたはジーグラー−ナッタに触媒されたプロセス、たとえば溶液、気相、スラリーおよび/または流動床重合反応を含んでもよい。適当な重合プロセスは、たとえば米国特許第4,543,399号、第4,588,790号、第5,001,205号、第5,028,670号、第5,317,036号、第5,352,749号、第5,405,922号、第5,436,304号、第5,453,471号、第5,462,999号、第5,616,661号、第5,627,242号、第5,665,818号、第5,668,228号および第5,677,375号;PCT公開物第WO 96/33227号および第WO 97/22639号;および欧州公開物第EP−A−0 794 200号、第EP−A−0 802 202号および第EP−B−634 421号に記載されており、これらの全内容は参照によって本明細書に取り込まれる。
エチレン−α−オレフィンコポリマーキャリアー樹脂
【0059】
いくつかの実施形態では、キャリアー樹脂は、追加してもしくは代わりに、1種以上のエチレン−α−オレフィンコポリマーを含んでいるかまたはそれから成ってもよい。適当なα−オレフィンコモノマーは、C〜C10α−オレフィンに基いたモノマーのいずれか1種以上を含んでいる。ある実施形態では、α−オレフィンはブテンおよびオクテンの一方または両方(たとえば、エチレン−ブテンおよび/またはエチレン−オクテンコポリマー)である。
【0060】
いくつかの実施形態では、エチレン−α−オレフィンコポリマーは、エチレン−α−オレフィンコポリマーの重量基準で約60、65、70、75、80、85、90および95重量%のいずれか1つの数値以上の量でエチレンに基いた単位を含んでいる。これらの実施形態のあるものでは、エチレン−α−オレフィンコポリマーのエチレンに基いた単位の含有量は、エチレン−α−オレフィンコポリマーの重量基準で約99、95、90、85、80、75および70重量パーセントのいずれか1つの上限を有してもよいが、ただし上限が下限以上であることを条件とする。いくつかの実施形態では、コモノマーは、エチレン−α−オレフィンコポリマーの重量基準で約1、5、10、15、20、25および30重量%のいずれか1つの数値以上の量で、ならびにエチレン−α−オレフィンコポリマーの重量基準で約40、35、30、25、20、15、10および5重量%のいずれか1つの数値以下の量で存在するが、ただし上限が下限以上であることを条件とする。
【0061】
いくつかの実施形態のエチレン−α−オレフィンコポリマーは、約0.850〜約0.920g/cmの密度を有する。ある実施形態では、エチレン−α−オレフィンコポリマーは、約0.865〜約0.910g/cmまたは約0.8675〜約0.910g/cmの範囲内の密度を有する。様々な実施形態では、エチレン−α−オレフィンコポリマーは、約0.850、0.860、0.865、0.870、0.875、0.880および0.885g/cmのいずれか1つから約0.900、0,905、0.910、0.915及び0.920g/cmのいずれか1つまでの範囲内の密度を有してもよい。密度は、本明細書に記載された他の全ての密度と同じように、ASTM D−1505に適合した方法で室温で測定される。
【0062】
さらに、このような実施形態によるエチレン−α−オレフィンコポリマーは、約0.4g/10分〜約40g/10分または約0.5g/10分〜約30g/10分の範囲内のメルトインデックスを有してもよい。これらの実施形態のあるものによるエチレン−α−オレフィンコポリマーのメルトインデックスは、約0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4および1.5g/10分のいずれか1つから約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35および40g/10分のいずれか1つまでの範囲内に入る。これらのMIは、本明細書の他の箇所と同じように、ASTM D1238に適合した方法で190℃および2.16kgの荷重で測定される。
【0063】
ある実施形態のエチレン−α−オレフィンは、約0.865〜約0.900g/cmの範囲内に入る密度および約0.5〜約4.0g/10分の範囲内に入るMIの両方を有するエチレン−オクテンコポリマーであってもよい。他の特定の実施形態のエチレン−α−オレフィンコポリマーは、約0.870〜約0.910g/cmの範囲内に入る密度および約1.0〜約30.0g/10分の範囲内に入るMIの両方を有するエチレン−ブテンおよび/またはエチレン−ヘキセンコポリマーであってもよい。また、さらに他の特定の実施形態のエチレン−α−オレフィンコポリマーは、約0.880〜約0.910g/cmの範囲内に入る密度および約1.0〜約30.0g/10分の範囲内に入るMIの両方を有するエチレン−オクテンコポリマーであってもよい。
【0064】
好適なエチレン−α−オレフィンコポリマーの例としては、ExxonMobil Chemical社、米国、テキサス州、ヒューストンから市販されているExact(商標)名のエチレンに基いたコポリマー、たとえばExact(商標)エチレン−ブテンコポリマーおよびExact(商標)エチレン−オクテンコポリマーが挙げられる。
エチレン-プロピレンゴムキャリアー樹脂
【0065】
いくつかの実施形態では、キャリアー樹脂は、加えてまたは代わりに、1種以上のエチレン−プロピレンゴム(「EPゴム」)を含んでいてもよい。任意的に、EPゴムは1種以上のジエンに基いたモノマーを含んでいてもよい。たとえば、いくつかの実施形態のEPゴムはEPDMターポリマーであってもよい。
【0066】
ある実施形態のEPゴムは、EPゴムの重量基準で、約45、50、55、60および65重量%のいずれか1つの数値以上の量で、ならびに約55、60、65、70、75、80および85重量%のいずれか1つの数値以下の量でエチレンに基いた単位を含んでいるが、ただし上限は下限以上である。
【0067】
EPゴムは、EPゴムの重量基準で約0重量%〜約10.0重量%の範囲内のジエン含有量(たとえば、ジエン由来のコモノマーの量)を有してもよい。特定の実施形態では、ジエン含有量は、EPゴムの重量基準で、約0.0、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5および5.0重量%のいずれか1つの数値以上、ならびに約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5および10.0重量%のいずれか1つの数値以下であってもよいが、ただし上限は下限以上である。
【0068】
特定の実施形態では、EPゴムは、約0.850〜約0.885g/cmまたは約0.860〜約0.880g/cmの範囲内の密度を有してもよい。さらに、このような実施形態によるEPゴムは、約0.05〜約1.1g/10分または約0.1〜約1.0g/10分の範囲内のMIを有してもよい。密度およびMIは、それぞれASTM D−1505(室温)およびASTM D−1238(190℃、2.16kg)と適合する方法で測定される。
マスターバッチの形成
【0069】
ここでマスターバッチに戻ると、マスターバッチは、1種以上の添加物(たとえば、カーボンブラック)の粒子をキャリアー樹脂とブレンドしそのような粒子をキャリアー樹脂中に分散させる任意の適当なプロセスによって形成されてもよい。たとえば、添加物粒子およびキャリアー樹脂はドライブレンドされ、続いてその混合物が、完成物品をつくるのに使用される押出機の中で直接にか、あるいは別のミキサー(たとえば、バンバリー(商標)ミキサー)中で予備溶融混合をされることによって、キャリアー樹脂の融解温度より高い温度で溶融混合されてもよい。マスターバッチのドライブレンドは、予備溶融混合なしに直接、射出成形されることもできる。せん断を生成させ混合する能力のある機械装置の例としては、ニーダーまたは1個以上の混合先端もしくはフライトを有する混合要素を備えた押出機、1個以上のスクリューを備えた押出機、同方向または異方向回転タイプの押出機、コペリオンZSK2軸押出機(Coperion社から入手可能)、バンバリーミキサー、FCM(商標)ファレルコンティニュアスミキサー(両方ともFarrel社、米国、コネティカット州、Ansoniaから入手可能)およびBUSSニーダー(商標)(米国、イリノイ州、Carol StreamのBuss USA社から入手可能)等が挙げられる。必要とされる、混合のタイプおよび強度、温度ならびに滞留時間は、上記の機械のうちの1種の選択と組み合わせて、混練または混合の要素、スクリュー設計およびスクリュー速度(3000rpm未満)の選択によって達成されることができる。典型的には、溶融混合の温度は約60℃〜約130℃であり、滞留時間は約10〜約20分間である。
【0070】
いったん溶融混合されまたは他様に溶融ブレンドされると、添加物粒子およびプロピレン−α−オレフィンキャリアー樹脂を含んでいるマスターバッチは、任意の適当な手段、たとえばストランドペレット化等によってペレット化されてもよい。いくつかの実施形態では、水中ペレット化(たとえば、溶融したマスターバッチを、溶融した押し出し物の温度よりも低い温度に維持された水浴中に押し出し、そのマスターバッチをペレット化する工程)が、少なくとも一部にはプロピレン−α−オレフィンコポリマーの性質の故に、マスターバッチをペレット化するのに特に適している可能性がある。ある実施形態では、マスターバッチの水中ペレット化は、米国特許第8,709,315号に教示された手法によって実施されてもよく、その全体は参照によって本明細書に取り込まれる。
【0071】
いくつかの実施形態によるマスターバッチは、カーボンブラックおよび/または他の添加物粒子がプロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーキャリアー樹脂内に十分に分散し、そこで実質的に凝集しないようにブレンドされ形成される。
【0072】
添加物がカーボンブラックを含んでいる特定の実施形態では、キャリアー樹脂中のカーボンブラック粒子の凝集は、キャリアー樹脂中に含まれているカーボンブラック量の上限を定めることによって避けられてもよい。有利であることに、ある実施形態によってキャリアー樹脂としてプロピレン−α−オレフィンコポリマーを使用することは、より大量のカーボンブラック粒子がキャリアー樹脂内に分散され、それにもかかわらずこれらの粒子の凝集を防止することを可能にすることができる。これは、より大量のカーボンブラックがTPV配合物中に存在することを可能にし、それによって、得られるTPVの特性に悪影響を及ぼさないで配合物のコストが下げられる。たとえば、マスターバッチ中のカーボンブラックの充填量が多ければ多いほど、得られるTPV中で同じ最終濃度を達成するのに必要な総マスターバッチ量はそれだけ少なくなり、これはより低い輸送費等をもたらす。しかし、本発明の実施形態によってキャリアー樹脂を使用してさえも、カーボンブラック粒子は、十分である高い濃度を超えて存在すると、依然として凝集することになり、この凝集はマスターバッチを含んでいる、得られたTPV中の不十分な混合および/または表面欠陥を招くことになる。したがって、いくつかの実施形態では、マスターバッチは約50重量%以下のカーボンブラック粒子を含んでいてもよく、他の実施形態では、マスターバッチは約49、48、47、46、45、44および43重量%のいずれか1つの数値以下のカーボンブラック粒子を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、マスターバッチは35、36、37、38、39、40、41、42および43重量%のいずれか1つの数値以上のカーボンブラック粒子を含んでいてもよい。ある実施形態では、マスターバッチは約45重量%のカーボンブラック粒子を含んでいる。
【0073】
いくつかの実施形態では、マスターバッチは、(1種以上のフィラー、着色剤、エキステンダーまたは他の添加物、たとえばカーボンブラックに加えて)1種以上の追加の成分、たとえば加工助剤(たとえば、スリップ剤)、酸化防止剤および安定剤等のいずれか1種以上をさらに含んでいる。ある実施形態では、(微粒子状またはそうでない)TPVに含有されるのに適した任意の添加物が、マスターバッチ中に取り込まれてもよい。
追加のTPV添加物
【0074】
いくつかの実施形態の熱可塑性加硫物配合物は、任意的にマスターバッチに加えて1種以上の添加物をさらに含んでいてもよい。好適な追加のTPV添加物には、可塑剤、プロセス油、フィラー、加工助剤、酸捕捉剤および/または同様なものがあるが、これらに限定されない。
【0075】
任意の適当なプロセス油が、いくつかの実施形態のTPV配合物に含まれていてもよい。特定の実施形態では、プロセス油は以下のものから選ばれてもよい:(i)エキステンダー油、すなわち油展ゴム中に存在する油(たとえば、エラストマー成分中に存在する油、(ii)フリーの油、すなわち(エラストマーおよび熱可塑性加硫物のようないずれかの他のTPV配合物成分とは別途に)加硫工程の間に添加される油、(iii)硬化剤油、すなわち硬化剤を溶解させ/分散させるのに使用される油、たとえば油中硬化剤の分散物、例として油中フェノール樹脂の分散物(また、このような実施形態ではしたがって、硬化剤組成物はTPV配合物中に油中硬化剤添加物として存在してもよい。)、および(iv)上記の(i)〜(iii)の油の任意の組み合わせ。したがって、プロセス油は別の成分の一部として(たとえば、プロセス油がエキステンダー油である場合に、エラストマー成分がエラストマーとエキステンダー油とを含んでいるようにそのエラストマー成分の一部として、またはプロセス油が油中硬化剤のキャリアーである場合に、硬化剤組成物が硬化剤油と硬化剤とを含んでいるようにその硬化剤組成物の一部として)TPV配合物中に存在してもよい。他方、プロセス油は、TPVに他の成分とは別途に、すなわちフリーの油として添加されてもよい。
【0076】
エキステンダー油、フリーの油および/または硬化剤油は、様々な実施形態では、同じまたは異なる油であってもよい。プロセス油は、(i)「精製された」油または「鉱油」および(ii)合成油の1種以上を含んでいてもよい。本明細書で使用される鉱油とは、石油原油に由来しかつ1種以上の精製および/または水素化処理工程(たとえば、分留、水素化分解、脱蝋、異性化および水素化仕上げ)に付されてその成分が精製され化学的に変性されて最終的な1組の特性が獲得された潤滑油の粘度(すなわち、1mm/秒以上の100℃での動粘度)を有する任意の炭化水素液体を言う。このような「精製された」油は「合成」油と対照的であり、「合成」油は、触媒、開始剤および/または熱を使用してモノマー単位をより大きい分子へと結合することによって製造される。
【0077】
一般に、いくつかの実施形態による、精製されたまたは合成のプロセス油は、芳香族、ナフテンおよびパラフィン油のいずれか1種以上を含んでいてもよいが、これらに限定されない。典型的な合成プロセス油は、直鎖状ポリアルファオレフィン、分枝状ポリアルファオレフィンおよび水素化ポリアルファオレフィンである。本発明のいくつかの実施形態の組成物は、有機エステル、アルキルエーテルまたはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。米国特許第5,290,886号および米国特許第5,397,832号は上記に関して本明細書に取り込まれる。
【0078】
ある実施形態では、プロセス油(たとえば、エキステンダー油、フリーの油および/または硬化剤油のいずれか1種以上の全てまたは一部)の少なくとも一部は、低い芳香族/イオウ含有量の油であり、(i)プロセス油のその一部の重量基準で5重量%未満、3.5重量%未満または1.5重量%未満の芳香族含有量、および(ii)プロセス油のその一部の重量基準で0.3重量%未満または0.003重量%未満のイオウ含有量を有する。芳香族含有量は、ASTM D2007の方法に適合する様式で測定されてもよい。いくつかの実施形態のプロセス油の芳香族炭素パーセントは、好ましくは2%未満、1%未満または0.5%未満である。ある実施形態では、プロセス油中に芳香族炭素は存在しない。本明細書で使用される芳香族炭素の割合(%)は、ASTM D2140に従う方法によって測定された全炭素原子の数に対する芳香族炭素原子の数の割合(%)である。
【0079】
特定の実施形態の好適なプロセス油はAPIグループI、II、III、IVおよびVの基油を含んでいてもよい。API 1509、エンジン油ライセンス供与および認証システム、第17版、2012年9月、付属書Eを参照せよ。これは参照によって本明細書に取り込まれる。好適なプロセス油の特定の例としては、Chevron社、米国、テキサス州、ヒューストンから入手可能なParalux(商標)および/またはParamount(商標)油が挙げられる。
【0080】
一般に、好適なプロセス油は、2014年5月12日に出願され発明の名称を「熱可塑性加硫物および同加硫物をつくる方法」とする米国特許仮出願第61/992,020号に記載された任意のプロセス油を含んでもよく、その全体は参照によって本明細書に取り込まれる。さらに、いくつかの実施形態のプロセス油は、そこに記載された任意の割合で存在してもよい。
【0081】
いくつかの実施形態のTPV配合物は、加えてまたは代わりに、ポリマー加工添加物を含んでいてもよい。このような実施形態で使用される加工添加物は、非常に高いメルトフローインデックスを有するポリマー樹脂である。これらのポリマー樹脂には、直鎖状および分枝状分子の両方があり、これらの分子は約500dg/分超、より好ましくは約750dg/分超、さらにより好ましくは約1000dg/分超、さらにより好ましくは約1200dg/分超、さらにより好ましくは約1500dg/分超であるメルトフローレートを有する。本発明の熱可塑性エラストマーは、様々な分枝状または様々な直鎖状のポリマー加工添加物の混合物とともに直鎖状および分枝状の両方のポリマー加工添加物の混合物を含んでいてもよい。ポリマー加工添加物について記載されるときは、他様に特定されない限り、直鎖状および分枝状の両方の添加物が意図されている。好ましい直鎖状ポリマー加工添加物は、ポリプロピレンホモポリマーである。好ましい分枝状ポリマー加工添加物としては、ジエン変性ポリプロピレンポリマーが挙げられる。同様の加工添加物を含んでいる熱可塑性加硫物は米国特許第6,451,915号に記載されており、これは参照によって本明細書に取り込まれる。
【0082】
さらに、本発明の配合物は、加えてまたは代わりに、強化用および非強化用のフィラー、酸化防止剤、安定剤、潤滑剤、ブロッキング防止剤、静電防止剤、ワックス、発泡剤、顔料、難燃剤およびゴム配合技術分野で知られた他の加工助剤を含んでいてもよい。これらの添加物は、ある実施形態では、全組成物の約50重量パーセントまでを構成することができる。使用されることができるフィラーおよびエキステンダーには、従来の無機物、たとえば炭酸カルシウム、クレイ、シリカ、タルク、二酸化チタンとともに有機および無機のナノスケールのフィラーがある。フィラーは好ましくは、ポリプロピレンのようなキャリアー樹脂と一緒にマスターバッチの形で加えられる。
【0083】
ある実施形態では、追加のTPV添加物は、それ自体の別個の追加の(数種の)マスターバッチとして(たとえば、そのような追加のマスターバッチ1種につき1種以上の追加のTPV添加物として)添加されてもよい。このような実施形態では、各追加のマスターバッチは、上で検討された様々な実施形態のマスターバッチのいずれか1種のキャリアー樹脂によるキャリアー樹脂を含んでいてもよく、および/または各追加のマスターバッチは従来のキャリアー樹脂を含んでいてもよい。
【0084】
ある実施形態では、TPV配合物は酸捕捉剤を含んでいてもよい。これらの酸捕捉剤は好ましくは、所望の度合いの硬化が達成された後で熱可塑性加硫物に添加される(TPV配合物の加工処理に関連して、以下で、より詳細に検討される)。好ましくは、酸捕捉剤は動的加硫の後に添加される。有用な酸捕捉剤としてはハイドロタルサイトが挙げられる。合成及び天然のハイドロタルサイトの両方が使用されることができる。典型的な天然ハイドロタルサイトは、式MgAl(OH)1−6CO・4HOによって表わされることができる。合成ハイドロタルサイト化合物は、式Mg4.3Al(OH)12.6CO・mHOまたはMg4.5Al(OH)13CO3.3・5HOを有すると考えられ、これはDHA−4A(商標)またはKyowaad(商標)1000(協和化学工業社、日本国)の商品名で得られることができる。他の商品の例は、Alcamizer(商標)の商品名で入手可能なものである。
TPV配合物の組成
【0085】
一般に、様々な実施形態によるTPV配合物は、エラストマー成分、熱可塑性樹脂、硬化剤およびマスターバッチ(たとえば、カーボンブラックマスターバッチ)とともに何らかの他の任意的な添加物を含んでいる。以下で、より詳細に検討されるように、TPV配合物は、加工処理、たとえば動的加硫を受けてTPVを形成する。ある実施形態では、マスターバッチおよび/または任意の他の添加物は、加工処理の間に、動的加硫の前かあるいはその後に、TPV配合物に添加されてもよい。
【0086】
TPV配合物中の様々な成分の相対量は便宜的に、配合物中のエラストマーの量を基準として特性付けられ、特にゴムの100重量部当たりの重量部(phr)で特性付けられる。エラストマー成分がエラストマーおよびエキステンダー油の両方を含んでいる実施形態では、EPDMのように商業的に入手可能な多くのエラストマーの場合に普通に行われているように、phr量は、エラストマー成分中に存在するエキステンダー油を除いた、エラストマー成分中のエラストマーの量のみを基準とする。したがって、100部のEPDM(ゴム)と75部のエキステンダー油とを含んでいるエラストマー成分は、実際には175 phrで(すなわち、100部のEPDMゴム基準で)TPV配合物中に存在するとみなされることになる。このようなTPV配合物が50phrの熱可塑性樹脂をさらに含んでいると見なされるとしたら、この配合物は、100重量部のエラストマーおよび75重量部のエキステンダー油に加えて50重量部の熱可塑性樹脂を含んでいることになる。
【0087】
いくつかの実施形態のTPV配合物は、エラストマーまたはゴム100重量部当たり約20〜約300部の量(phr)で熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。様々な実施形態では、熱可塑性樹脂は、約30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、165、170および175phrのいずれか1つの最低値から約100、125、150、175、200、225、250、275および300phrのいずれか1つの最高値までの範囲の量でTPV配合物中に含まれている。熱可塑性樹脂は、上記の最低値のいずれか1つから上記の最高値のいずれか1つまでの範囲の量で含まれていてもよいが、ただし最高値が最低値以上であることを条件とする。特定の実施形態では、熱可塑性樹脂の量を増加することは、動的加硫されたTPVの硬度を増加させることに対応する。
【0088】
エラストマー成分がエラストマーのみから成る場合には、定義によりエラストマーは100phrで存在する(というのは、それがphr表記法の基礎だからである)。しかし、エラストマー成分がエラストマー以外の成分、たとえばエキステンダー油を含んでいる実施形態では、そのエラストマー成分は、約100.05、100.1、100.15、100.2、105、110、115および120phrのいずれか1つの最低値から約110、120、125、150、175、200、225および250phrのいずれか1つの最高値までの範囲の量でTPV配合物中に含まれていてもよい。
【0089】
様々な実施形態のTPV配合物は、(添加物(たとえば、カーボンブラック)およびプロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーを含んでいるキャリアー樹脂を含んでいる)マスターバッチを約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24および25phrのいずれか1つの最低値から約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49および50phrのいずれか1つの最高値までの範囲の量でさらに含んでいる。マスターバッチは、上記の最低値のいずれか1つから上記の最高値のいずれか1つまでの範囲の量で含まれていてもよいが、ただし最高値が最低値以上であることを条件とする。多数の添加物(微粒子および/またはそうでないもの)がマスターバッチに含まれている、ある実施形態では、そのマスターバッチは、より多い量で、たとえば約55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300および350phrのいずれか1つの数値までの多い量でTPV配合物中に存在してもよい。
【0090】
TPV配合物はまた、1種以上の硬化剤組成物(硬化剤ならびに任意的に1種以上の共働剤および/または硬化剤油を含んでいる、上記したような硬化剤組成物)も含んでいる。いくつかの実施形態では、1種以上の硬化剤組成物は、約2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9および10phrのいずれか1つの最低値から約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24および25phrのいずれか1つの最高値までの範囲の強凝集体の量でTPV配合物中に存在する。1種以上の硬化剤組成物は、上記の最低値のいずれか1つから上記の最高値のいずれか1つまでの範囲の量で含まれていてもよいが、ただし最高値が最低値以上であることを条件とする。
【0091】
上記のとおり、ある実施形態のTPV配合物は、追加のTPV添加物を、すなわちマスターバッチ中に送り込まれた1種以上の添加物以外の添加物、およびまたTPV配合物の別の成分(たとえば、エラストマー成分)中に含まれている何らかの添加物以外の添加物を任意的に含んでいてもよい。追加の添加物の量は別個のものであり、TPV配合物の別の成分中にすでに含まれている添加物に追加されるものである。たとえば、エラストマー成分中に含まれているエキステンダー油のような何らかの添加物は、配合物に添加されたエラストマー成分の量の一部としてすでに考慮に入れられており、したがって、追加の添加物の記載される量は、エラストマー成分にすでに含まれている添加物を除いたものである。同様に、マスターバッチに含まれているいずれの添加物もすでに考慮に入れられており、したがって、本明細書で追加の(数種の)添加物の量について記載するときは、マスターバッチにすでに含まれているような添加物を含んでいない。上記の注意書きに従うことを条件として、追加の添加物は、約0phr〜約300phrの範囲の量で強凝集体としてTPV配合物中に存在してもよい。ある実施形態では、追加の添加物は、約0、10、20、30、40、50、60、70、80、90および100phrのいずれか1つの最低値から約100、125、150、175、200、225、250、275および300phrのいずれか1つの最高値までの範囲の量でTPV中に存在してもよい。追加の添加物は、上記の最低値のいずれか1つから上記の最高値のいずれか1つまでの範囲の強凝集体の量で含まれていてもよいが、ただし最高値が最低値以上であることを条件とする。
【0092】
あるいは、便宜的に、様々な実施形態のTPV配合物の成分は、以下の記載に従うTPV配合物中のその重量パーセントに基いて特性付けられてもよい:
・(数種の)熱可塑性樹脂は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24および25重量%のいずれか1つの最低値から約12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54および55重量%のいずれか1つの最高値までの範囲の量でTPV配合物中に存在してもよい。
・(数種の)エラストマー成分は、約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30および35重量%のいずれか1つの最低値から約35、40、45、50、55、60、65、70、75および80重量%のいずれか1つの最高値までの範囲の量でTPV配合物中に存在してもよいが、ただし最高値が最低値以上であり、かつ(数種の)エラストマー成分は約20〜約300phrの範囲内でTPV配合物中に存在することを条件とする。
・(数種の)硬化剤は、約0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9および1.0重量%のいずれか1つの最低値から約1.0、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12および13重量%のいずれか1つの最高値までの範囲の量でTPV配合物中に存在してもよいが、ただし最高値が最低値以上であり、かつ(数種の)硬化剤は約0.5〜約25phrの範囲内でTPV配合物中に存在することを条件とする。
・マスターバッチは、約0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9および10重量%のいずれか1つの最低値から約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27および27.5重量%のうちのいずれか1つの最高値までの範囲の量でTPV配合物中に存在してもよいが、ただし最高値が最低値以上であり、かつカーボンブラックマスターバッチが約10〜約50phrの範囲内でTPV配合物中に存在することを条件とする。すでに前に記載されたようなマスターバッチ中に数種の添加物が存在する場合には、そのマスターバッチは約30、35、40、45、50、55および60重量%のいずれか1つの数値までの量で存在してもよいが、ただしカーボンブラックマスターバッチが約10〜約350phrの範囲内でTPV配合物中に存在することを条件とする。
・任意的な(数種の)追加のTPV添加物は、約0、5、10、15、20、25、30、35および40重量%のいずれか1つの最低値から約30、35、40、45、50、55、60および65重量%のいずれか1つの最高値までの範囲の量でTPV配合物中に存在してもよいが、ただし最高値が最低値以上であり、かつ(数種の)添加物が約0〜約300phrの範囲内でTPV配合物中に存在することを条件とする。
【0093】
最後に、ある実施形態では、TPV配合物中に存在する(カーボンブラックマスターバッチ、他の(数種の)添加物マスターバッチを経由して、および/または任意の他の手段を経由して添加された)プロピレン−α−オレフィンコポリマーの量が、強凝集体としてTPV配合物の全重量基準で約6、5、4、3または2重量%のいずれか1つの数値以下であることも留意されなければならない。ある好ましい実施形態では、プロピレン−α−オレフィンコポリマーは、TPV配合物中におよび/または得られたTPV中に約4重量%未満の量で、ならびに他の実施形態では約3重量%未満の量で存在してもよい。
TPV配合物を加工処理する工程
【0094】
熱可塑性加硫物は好ましくは、TPV配合物の加工処理によって調製され、いくつかの実施形態によるこの加工処理は動的加硫を含む。動的加硫とは、エラストマー、硬化剤および少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含んでいるブレンド中に含有されているエラストマーの加硫(すなわち、架橋または硬化)プロセスを言う。エラストマーは、熱可塑性樹脂の融点以上の温度においてせん断および伸張の条件の下で加硫される。したがって、エラストマーは同時に架橋されかつ熱可塑性樹脂マトリックス内に(好ましくは微粒子として)分散される。もっとも、他の形態、たとえば共連続形態が、硬化の程度、エラストマーとプラスチックとの粘度比、混合の強度、滞留時間および温度によっては存在してもよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、加工処理する工程は、エラストマー成分、熱可塑性樹脂および硬化剤を含んでいるTPV配合物をチャンバー内で溶融ブレンドする工程を含んでもよい。チャンバーは、熱可塑性加硫物を形成するのに必要な温度およびせん断力の条件の下で、選ばれた組成物をブレンドするのに適している任意の容器であってもよい。この点に関しては、チャンバーは、ミキサー、たとえばバンバリー(商標)ミキサー、またはミル、または押出機であってもよい。1つの実施形態によれば、チャンバーは押出機であり、それは単軸または多軸押出機であってもよい。用語「多軸押出機」とは、2本以上のスクリューを有する押出機を意味し、2本または3本スクリュー押出機が典型的であり、いくつかの実施形態では2本すなわちツインスクリュー押出機が好ましい。押出機のスクリューは複数のローブを有してもよく、2本および3本ローブのスクリューが好ましい。本発明の実施形態の方法に従って、他のスクリュー設計が選択されてもよいことは容易に理解されるだろう。いくつかの実施形態では、動的加硫は押し出しの間にまたは押し出しの結果として生じてもよい。
【0096】
エラストマーの動的加硫は、米国特許第4,594,390号に定義された比較的高いせん断を達成するように実施されてもよく、同特許は参照によって本明細書に取り込まれる。いくつかの実施形態では、動的加硫中にTPV配合物の成分が受ける混合強度および滞留時間は好ましくは、米国特許第4,594,390号に提案されたものよりも大きい。特定の実施形態では、ブレンドは約400℃を超えない温度で、好ましくは約300℃を超えない温度で、より好ましくは約250℃を超えない温度で実施されてもよい。溶融ブレンドが実施される最低温度は一般に、約130℃以上、好ましくは約150℃以上、より好ましくは約180℃以上である。ブレンド時間は、TPV配合物に使用される化合物の性質およびブレンド温度を考慮に入れて選ばれる。ブレンド時間は一般に、約5秒〜約120分の間で、ほとんどの場合に約10秒〜約30分の間で様々である。
【0097】
いくつかの実施形態では、動的加硫は相反転を含んでいてもよい。当業者が正しく理解するように、動的加硫は、熱可塑性樹脂よりも大きい体積分率のゴムを含有させることから開始されてもよい。そのようなものとして、ゴムの体積分率が熱可塑性樹脂の体積分率よりも大きい場合には、熱可塑性樹脂は不連続相として存在してもよい。動的加硫が進むとともに、動的混合の下でゴムの粘度が増加し相反転が生じる。言い換えれば、相反転時に熱可塑性樹脂相は連続相になる。
【0098】
カーボンブラックマスターバッチおよび任意の他の(数種の)添加物は好ましくは、動的加硫が実施されるときにTPV配合物の内に存在している。もっとも、いくつかの実施形態では、マスターバッチおよび/または(もし存在するならば)任意の1種以上の他の添加物は、硬化および/または相反転の後で(たとえば、加工処理のうちの動的加硫の部分の後で)組成物に加えられてもよい。マスターバッチおよび/または他の追加の成分は、様々な技術を使用することによって動的加硫の後で加えられてもよい。1つの実施形態では、マスターバッチおよび/または他の追加の成分は、熱可塑性加硫物が動的加硫プロセスからのその溶融状態に留まっている間に、加えられることができる。たとえば、追加の成分は、連続加工処理装置、例として1軸または2軸押出機を使用するプロセス内の動的加硫の位置の下流で加えられることができる。他の実施形態では、熱可塑性加硫物は「仕上げられ」ることができる、すなわちペレット化され、その後溶融され、そして追加の成分がこの溶融された熱可塑性加硫物製品に加えられることができる。この後者のプロセスは成分の「第2の通し」による添加と呼ばれることがある。
【0099】
ある実施形態では、溶融された形態のTPVは、動的加硫後の任意の点で1枚以上の網目スクリーンを含んでいるスクリーンパックを通されてもよい。ある実施形態では、スクリーンパックは、200標準米国メッシュのスクリーン(すなわち、網目の1方向の直線1インチ(2.54cm)当たりで測定されて200の開口を有する網目スクリーン)またはそれよりも細かいスクリーン(すなわち、1インチ当たり200メッシュのスクリーンよりも多い数の開口を有するスクリーン、たとえば230、270、325または400米国メッシュのスクリーン)を含んでいる。他の実施形態では、スクリーンパックは120、140、170またはこれらよりも細かい米国メッシュのスクリーンを含んでいてもよい。ある実施形態のスクリーンパックは複数のスクリーンを含んでいる。たとえば、スクリーンパックは3枚のスクリーンを直列に、すなわち2枚の支持スクリーンの間に(たとえば、エッジ溶接またはスクリーンパックを形成する他の慣用手段によって)挟まれた最も微細な内側の網目スクリーンを含んでいてもよい。たとえば、スクリーンパックは、20/200/20のパック(20米国メッシュの2枚のスクリーンの間に挟まれた200米国メッシュのスクリーンを表す。)であってもよい。他の実施形態では、スクリーンパックは5枚以上のスクリーンを直列に、たとえば10/20/200/20/10のスクリーン配置(ここでもこれらの数字は米国メッシュサイズを表す。)を含んでいてもよい。一般に、真ん中のスクリーンは、直列の2枚以上の支持スクリーンによって囲まれた、そのスクリーンパックで最も細かいスクリーンであってもよい。支持スクリーンは、中心のスクリーンよりも細かくない任意の適当な網目サイズ(たとえば、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80または100等の米国メッシュのいずれか1つ)であってもよい。スクリーンの網目サイズは、ミクロン単位で等価なものとして表わされてもよく、ミクロンの数字はスクリーンのほぼ正方形の開口の幅または長さを示す。したがって、(網目の1方向の直線1インチ当たりで測定されて200の開口を有する)200米国メッシュのスクリーンは、74ミクロンのスクリーン(それぞれのほぼ正方形の開口が74ミクロンの長さおよび幅を有することを意味する。)と等価である。
【0100】
いくつかのこのような実施形態では、TPVは動的加硫の直後にスクリーンパックを通されてもよく、または他の実施形態では、TPVは組成物が溶融状態にある任意の他の点で(たとえば、他の成分の第2の通しによる添加の際に)スクリーンパックを通されてもよい。有利であることに、いくつかの実施形態によるこのようなスクリーンパックにTPVを通すことは、押し出しまたは他の加工処理の後に得られるTPVの表面の平滑度を高めることができる。
【0101】
エラストマーが部分的にまたは完全に硬化されてもよいという事実にもかかわらず、本発明の組成物は、従来のプラスチック加工処理技術、たとえば押し出し、射出成形および圧縮成形によって加工処理され、また再加工処理されることができる。これらの熱可塑性エラストマー内のゴムは通常、熱可塑性物の連続相またはマトリックス内で、加硫されまたは硬化されたゴムの微細化されかつ十分に分散された粒子の形態をしている。もっとも、共連続の形態または相反転もまた可能性がある。
【0102】
マスターバッチキャリアー樹脂としてプロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーを含めることは、いくつかの実施形態では、TPV配合物の加工処理性(および/またはTPVの加工処理性)を増加させる。たとえば、いくつかの実施形態によって形成されたTPV配合物は、特に従来のキャリアー樹脂、たとえばホモポリプロピレンを使用してマスターバッチから形成されたTPV配合物と比較して増加した押し出し処理能力を示す。この押し出し処理能力の増加は、TPVを形成するためのTPV配合物の最初の加工処理、および/または形成されたTPVの加工処理(たとえば、以下でより詳細に検討される、最終用途製品の形成のためにTPVペレット等を再加工処理すること)のいずれかで、あるいはその両方で実現されてもよい。いくつかの実施形態によってプロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーキャリアー樹脂を含むTPV配合物の押し出し処理能力は、代りにホモポリプロピレンまたは他の従来のキャリアー樹脂を含んでいる、対応するTPV配合物の押し出し処理速度よりも約2%〜約15%大きいことがある。ある実施形態では、この改良分は約5%〜約7%であることもある。
得られた熱可塑性加硫物
【0103】
いくつかの実施形態で得られたTPVはしたがって、TPV配合物を形成する成分の加工処理に続くこれらの成分のコンパウンド化された反応生成物を含んでおり、この加工処理は動的加硫を含むことによって特性付けられてもよい。
【0104】
好ましい実施形態では、TPVは、熱可塑性の媒体内で微細化されかつ十分に分散された粒子の形態をしている硬化されたエラストマーを含んでいる。別の言い方をすれば、TPVは、(熱可塑性樹脂を含んでいる)連続相の中に(少なくとも部分的に硬化されたエラストマー成分を含んでいる)分散相を含んでいる。様々なこれらの実施形態では、エラストマー粒子は、50マイクロメートル未満、好ましくは30マイクロメートル未満、より好ましくは10マイクロメートル未満、さらにより好ましくは5マイクロメートル未満、さらにより好ましくは1マイクロメートル未満である平均直径を有する。好ましい実施形態では、粒子の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも75%は、5マイクロメートル未満、より好ましくは2マイクロメートル未満、さらにより好ましくは1マイクロメートル未満の平均直径を有する。
【0105】
1つの実施形態では、得られたTPV中のエラストマーは、有利であることに完全にまたは十分に硬化される。硬化度は、抽出剤として沸騰キシレンを使用することによって熱可塑性加硫物から抽出可能であるゴムの量を決定することによって測定されることができる。この方法は米国特許第4,311,628号に開示され、これは参照によって本明細書に取り込まれる。好ましくは、ゴムは、15重量パーセント以下、好ましくは10重量パーセント以下、より好ましくは5重量パーセント以下、さらにより好ましくは3重量パーセント以下が、米国特許第5,100,947号および第5,157,081号に記載されたように沸騰キシレンによって抽出可能である硬化度を有し、これらの特許は参照によって本明細書に取り込まれる。あるいは、ゴムは、架橋密度がエラストマー1ミリリットル当たり好ましくは少なくとも4×10−5、より好ましくは少なくとも7×10−5、さらにより好ましくは少なくとも10×10−5モルであるように硬化度を有する。Ellulらによる「動的加硫されたTPE中の架橋密度および相形態」、RUBBER CHEMISTRY AND TECHNOLOGY、第68巻、573〜587頁(1995年)も参照せよ。同文献は参照によって本明細書に取り込まれる。
【0106】
マスターバッチのキャリアー樹脂としてプロピレン−α−オレフィンコポリマーを含めることは、驚いたことにTPVの改善された特性、たとえば改善された表面平滑度をもたらす。以下の実施例において関連してより詳細に検討されるように、(取り込まれるカーボンブラックマスターバッチのキャリアー樹脂としてプロピレン−α−オレフィンコポリマーを含めるのではなく)TPV配合物中にプロピレン−α−オレフィンコポリマーを直接にブレンドしてまさしく同じプロピレン−α−オレフィンコポリマーを含めることによって形成されたTPVと比較しても、このことは思いがけないことである。何故ならば、一般に、TPV配合物に含まれているプロピレン−α−オレフィンコポリマーの量を増加させると、加工処理工程、たとえば押し出しの間のTPVの処理量の増加をもたらすことはできるが、得られたTPVの弾性特性にマイナスの影響を与えることと二律背反にあることがこれまでに見出されているからである。特に、改善された押し出し処理速度を得るために必要であるTPV配合物中に直接ブレンドされるプロピレン−α−オレフィンコポリマーの最小量は、最終TPVの重量基準で少なくとも6重量%である。しかし、TPV中に4重量%を超えてプロピレン−α−オレフィンコポリマーを含めると、TPVの弾性特性、たとえばTPVの圧縮永久歪み(すなわち、TPVに力を加え、その力を除いた後に残るTPVの永久変形)に悪影響を及ぼす。
【0107】
驚いたことに、カーボンブラックマスターバッチのキャリアー樹脂としてプロピレン−α−オレフィンコポリマーを使用し、このようなカーボンブラックマスターバッチをTPVに加えると、TPV中に4重量%未満の、たとえばわずかに約3重量%の合計プロピレン−α−オレフィンコポリマー量で、(以下の実施例2のサンプルE1およびE2に示されるように)処理能力増加の利益を実現することが可能になる。これは、好都合であることに、それを超えるとTPVのエラストマー弾性が低下する4重量%のプロピレン−α−オレフィンコポリマーのカットオフ値より下にある。
【0108】
TPV配合物の場合と同様に、得られるTPV(たとえば、TPVのペレット等が最終用途製品の形成のために再加工処理される場合)の押し出し処理速度もいくつかの実施形態では、従来のキャリアー樹脂、たとえばホモポリプロピレンを用いて形成されたTPVの押し出し処理能力と比較して改良される。いくつかの実施形態によってプロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーキャリアー樹脂を含んでいるTPVの押し出し処理能力は、代りにホモポリプロピレンおよび/または他の従来のキャリアー樹脂の(数種の)マスターバッチを取り込んでいる、対応するTPVの場合の押し出し処理速度よりも約2%〜約15%大きいことがある。ある実施形態では、この改良は約5%〜約7%であることもある。
【0109】
さらに、このような態様で含まれているプロピレン−α−オレフィンコポリマーは追加して、最終のTPVの表面外観を改善する。改善された表面外観は、押し出し表面粗さ(ESR)の減少、表面染み計測数の減少のいずれかまたは両方として観察される。押し出し表面粗さは、「天然ゴムおよびEPDM熱可塑性エラストマーの化学的表面処理:摩擦および接着への影響」、Rubber Chemistry and Technology、第67巻、第4号(1994年)に記載されているように表面性状の評価基準であり、同文献は参照によって本明細書に取り込まれる。表面染み計測数は、押し出された熱可塑性加硫物サンプルの表面染みの数の目測評価基準である。本明細書に報告されているように、表面染み計測数およびESR値は1インチ×18インチ(2.54cm×45.72cm)の押し出されたTPV細片に基いている。表面染み計測数は目視検査によって行われ、染み(たとえば、表面上の凸凹、変色または顕微鏡検査によってのみ視認できるものではなくて裸眼で視認できるその他の不規則形状)の数を数えることを含む。ESRは、粗さプロファイルの算術平均であるRaによってミクロン単位で測定される。
【0110】
ある実施形態のTPV(および/またはある実施形態によって形成されたTPV)は9、8、7、6、5、4、3、2または1のいずれか1つの数値以下の表面染み計測数を有することがある。
[実施例]
【実施例1】
【0111】
TPVをつくるための4種のカーボンブラックマスターバッチが、表1に示されるように、異なるキャリアー樹脂を用いて調製された。最初に、3種のカーボンブラックマスターバッチサンプル(#1〜3)が、(表1に報告されている)異なるMFRの市販のアイソタクチックポリプロピレンキャリアー樹脂からつくられ、次に4番目のマスターバッチサンプルが、上で検討された実施形態のプロピレン−α−オレフィンコポリマーに従ってプロピレン−α−オレフィンコポリマーのキャリアー樹脂(この場合ではVistamaxx(商標)ポリマー、グレード6202;ExxonMobil Chemical社、米国、テキサス州、ベイタウンから入手可能)を用いてつくられた。Vistamaxx(商標)ポリマー、グレード6202は、ASTM D1505に従って測定された0.863g/cmの密度、ASTM D1238(190℃、2.16kg)に従って測定された9.1g/10分のメルトインデックス、20g/10分のメルトフローレート(MFR)および15重量%のエチレン由来単位含有量(残余はプロピレン由来単位である。)を有していた。(サンプル#1〜3の)アイソタクチックポリプロピレンホモポリマーは0.945g/cmの典型的なアイソタクチックポリプロピレンの密度を有していた。
【0112】
マスターバッチ中のカーボンブラックの濃度は、ポリプロピレン樹脂の場合には40重量%に保たれ、これはカーボンブラック濃度がこれよりも高いと凝集が起きるためである。しかし、(キャリアー樹脂としてVistamaxx(商標)6202を使用している)サンプル#4中のカーボンブラックは45重量%であった。
[表1]カーボンブラックマスターバッチサンプル
【表1】
【実施例2】
【0113】
実施例1のカーボンブラックマスターバッチのそれぞれが、2種のTPV配合物をつくるために使用されて、合計8種のサンプル配合物がつくられた。それぞれのTPV配合物は、約300RPMで操作されるCoperion社製ZSK53二軸押出機を使用してペレットに形成された。製造速度は約90kg/時であった。二軸押出機の終端で最終ペレットの形成前に、材料は100米国メッシュか、あるいは200米国メッシュのスクリーンを含むスクリーンパック(それぞれ、20/100/20および20/200/20のスクリーンパック)を通された。したがって、サンプルのうちの4種(C1、C3、C5およびE1)は100米国メッシュを使用してつくられ、他の4種(C2、C4、C6およびE2)は200米国メッシュを使用してつくられた。8種のTPV配合物および8種の得られたTPVのそれぞれの特性が、サンプルC1〜C6およびE1〜E2として下の表2に示され、E1およびE2のそれぞれは実施例1のマスターバッチサンプル#4(すなわち、プロピレン−α−オレフィンキャリアー樹脂を含んでいるマスターバッチ)を含んでいる本発明のTPV配合物を示す。さらに、表2はサンプルC8も含み、これはプロピレン−α−オレフィンコポリマー(Vistamaxx(商標)3000)をTPV配合物に直接添加することによって調製された。サンプルC7は、上記の実施例1のカーボンブラックMB#1を使用して調製された第2のサンプルであり、C8に対するさらなる比較として示されている。
【0114】
表2の押し出し処理速度は一軸押出機の場合について報告されており、TPVペレットが一軸押出機で(たとえば、最終用途のTPV製品の形成のために)加工処理される場合のTPVペレットの処理速度を示している。
【0115】
表2に示されるように、それぞれのサンプルTPV配合物は様々な他の成分をさらに含んでいた。「EPDM」とは、Vistalon(商標)3666EPDMゴムであり、これは64.0重量%のエチレン含有量(ASTM D3900)および4.5重量%のENBジエン含有量(ASTM D6047)を有するエチレン−プロピレン−ジエンゴムである。V3666は75phrの油で油展されており、52MU(ML 1+4,125℃;ASTM D1646)のムーニー粘度を有する。V3666はExxonMobil Chemical社から商業的に入手可能である。
【0116】
「クレイ」とはIcecap(商標)K クレイである。
【0117】
「酸化亜鉛」または「ZnO」とはKadox 911酸化亜鉛である。
【0118】
「FRPP」とは、低メルトフローまたは1未満のメルトフローのポリプロピレンホモポリマーPP5341であり、ExxonMobil Chemical社から商業的に入手可能である。「HFPP」とは、高メルトフローのポリプロピレンホモポリマーF180Aであり、Braskem America社から商業的に入手可能である。FRPPおよびHFPPはTPV配合物の熱可塑性樹脂を一緒に構成する。
【0119】
「SnCl」とは、無水塩化第一スズのポリプロピレンマスターバッチである。塩化第一スズマスターバッチは、塩化第一スズ45重量%および0.8g/10分のMFRを有するポリプロピレン55重量%を含有する。
【0120】
「RIO」とは、油中フェノール樹脂の硬化剤であり、30重量%のフェノール樹脂および70重量%のプロセス油を含有する。
【0121】
「油#1」および「油#2」とは、それぞれParalux(商標)6001R油であり、これらはChevron社から商業的に入手可能である。油#1および油#2はそれぞれ、動的加硫の前および後のCoperion社製押出機に沿った異なる点で配合物に添加される。
【0122】
「VM3000」とは、Vistamaxx(商標)ポリマー、グレード3000であり、ExxonMobil Chemical社から商業的に入手可能である。VM3000は、0.873g/cmの密度(ASTM D1505によって測定されたもの)、3.6g/10分のMI(190℃、2.16kgにおけるASTM D1238)、8g/10分のMFR、11重量%のエチレン由来単位および残余量のプロピレン由来単位を有する。
【0123】
カーボンブラックMB#1〜#4のそれぞれは、実施例1に記載されたように調製されたカーボンブラックマスターバッチのうちの1つを示す。
[表2]サンプルTPVの特性
【表2】
【0124】
表2に示されたように、本発明の実施形態による、ペレット化されたサンプルE1およびE2は、他の全てのサンプル(Vistamaxx(商標)が直接TPV配合物に添加されて調製されたものを含む。)と比較して、優れた押し出し処理速度(それぞれ、78.6および78.72kg/時の単軸押出機速度)を示した。その上、E1およびE2のそれぞれの表面染み計測数は、(同じスクリーンサイズを使用してつくられた他のサンプルと比較したときに)ポリプロピレンキャリアー樹脂のマスターバッチを使用してつくられた比較のTPV配合物よりも低かった(すなわち、表面平滑度は高かった)。最後に、同様に明らかなように、200メッシュのスクリーンは全てのサンプルについて、100メッシュスクリーンを通された同じTPV配合物と比較して、より低い表面染み計測数をもたらした。
【0125】
図1は、プロピレン−α−オレフィンコポリマーのカーボンブラックマスターバッチキャリアー樹脂の使用によって達成された押し出し処理速度の改善をさらに実証する。図1に示されたように、サンプルE1は、サンプルC1およびC7(両方とも従来のカーボンブラックマスターバッチを使用してつくられたもの)よりも著しく優れており、さらにその上サンプルC8(従来のカーボンブラックマスターバッチを使用して、さらにVistamaxx(商標)が直接TPV配合物に添加されてつくられたもの)よりも優れていた。
実施形態
【0126】
実施形態1.
熱可塑性樹脂、エラストマー成分、硬化剤およびカーボンブラックマスターバッチのそれぞれをチャンバーに導入する工程、および
該エラストマー成分の少なくとも一部を熱可塑性加硫物を形成するように動的加硫する工程であって、該エラストマー成分が少なくとも部分的に加硫され該熱可塑性樹脂を含んでいる連続相中に分散される工程
を含む方法であって、
該カーボンブラックマスターバッチが(i)約0.850〜約0.920g/cmの密度、ならびに(ii)190℃および2.16kgの荷重でASTM D1238によって測定された約0.05〜約50g/10分のメルトインデックスを有する、プロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーを含んでいるキャリアー樹脂中に分散されたカーボンブラック粒子を含んでいる、方法。
【0127】
実施形態2.
該エラストマー成分の少なくとも一部の当該動的加硫の後に、該熱可塑性加硫物を200米国メッシュまたはそれよりも細かいスクリーンを通させる工程をさらに含む、実施形態1に記載の方法。
【0128】
実施形態3.
該プロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーおよび該カーボンブラック粒子を溶融混合する工程、および
該プロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーキャリアー樹脂中に分散された該カーボンブラック粒子を含んでいる複数のマスターバッチペレットを、該マスターバッチペレットがその後に該チャンバーに導入されて該カーボンブラックマスターバッチとして使用されるように形成する工程、
をさらに含む、実施形態1または2に記載の方法。
【0129】
実施形態4.
該複数のマスターバッチペレットを形成する工程が、該溶融混合された、該プロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーおよび該カーボンブラック粒子を水中ペレット化する工程を含む、実施形態3に記載の方法。
【0130】
実施形態5.
該チャンバーがミキサー、ミルおよび押出機から成る群から選ばれる、実施形態1〜4のいずれか1形態に記載の方法。
【0131】
実施形態6.
該動的加硫が、該熱可塑性樹脂、該エラストマー成分、該硬化剤および該カーボンブラックマスターバッチを溶融混合することによって少なくとも部分的に実施される、実施形態1〜5のいずれか1形態に記載の方法。
【0132】
実施形態7.
該プロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーが、プロピレン−α−オレフィンコポリマー、エチレン−α−オレフィンコポリマー、EPゴムおよびこれらの任意の組み合わせから成る群から選ばれる、実施形態1〜6のいずれか1形態に記載の方法。
【0133】
実施形態8.
該プロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーが、約50重量%〜約99重量%のプロピレン由来単位ならびにエチレンおよびC〜C10アルファオレフィンのうちの1種に由来する約1重量%〜約35重量%のコモノマー単位を含んでおりかつ約75J/g以下の融解熱を有するプロピレン−α−オレフィンコポリマーである、実施形態7に記載の方法。
【0134】
実施形態9.
該熱可塑性加硫物が、該熱可塑性加硫物の重量基準で4重量%以下のプロピレン−α−オレフィンコポリマーを含んでいる、実施形態8に記載の方法。
【0135】
実施形態10.
該プロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーが、約60重量%〜約99重量%のエチレン由来単位ならびにブテンおよびオクテンのうちの1種に由来する約1重量%〜約40重量%のコモノマー由来単位を含んでいるエチレン−α−オレフィンコポリマーである、実施形態7に記載の方法。
【0136】
実施形態11.
該プロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーが、約45重量%〜約85重量%のエチレン由来単位および約0.5重量%〜約10.0重量%のジエン由来コモノマーを含んでいるEPゴムである、実施形態7に記載の方法。
【0137】
実施形態12.
該エラストマー成分がエチレン−プロピレン−ジエンエラストマー(EPDM)を含んでいる、実施形態1〜11のいずれか1形態に記載の方法。
【0138】
実施形態13.
該チャンバーに可塑剤、プロセス油、フィラー、加工助剤、酸捕捉剤およびこれらの任意の組み合わせから成る群から選ばれた1種以上の添加物を導入する工程をさらに含む、実施形態1〜12のいずれか1形態に記載の方法。
【0139】
実施形態14.
熱可塑性加硫物を調製する方法であって、
(i)熱可塑性樹脂および硬化剤が存在する状態で熱可塑性加硫物を形成するように少なくともエラストマー成分の一部を動的加硫する工程であって、該エラストマー成分が少なくとも部分的に加硫され、該熱可塑性樹脂を含んでいる連続相中に分散される工程、および
(ii)カーボンブラックマスターバッチを該熱可塑性加硫物中に導入する工程であって、該カーボンブラックマスターバッチが、プロピレン−α−オレフィンコポリマーを含んでいるキャリアー樹脂中に分散されたカーボンブラック微粒子を含んでおり、該プロピレン−α−オレフィンコポリマーが、約50重量%〜約99重量%のプロピレン由来単位ならびにエチレンおよびC〜C10アルファオレフィンのうちの1種に由来する約1重量%〜約35重量%のコモノマー単位を含んでおりかつ約75J/g以下の融解熱を有する工程、
を含む方法。
【0140】
実施形態15.
該カーボンブラックマスターバッチを該熱可塑性加硫物中に導入する工程が、該熱可塑性加硫物が該動的加硫の後で溶融状態に留まっている間に、該カーボンブラックマスターバッチと該熱可塑性加硫物とをブレンドする工程を含む、実施形態14に記載の方法。
【0141】
実施形態16.
該カーボンブラックマスターバッチを該熱可塑性加硫物に導入する前に、複数の熱可塑性加硫物ペレットを形成するように該熱可塑性加硫物をペレット化する工程をさらに含む、実施形態14に記載の方法。
【0142】
実施形態17.
該カーボンブラックマスターバッチと該熱可塑性加硫物とをブレンドする工程が、該熱可塑性加硫物ペレットと該カーボンブラックマスターバッチとを溶融混合する工程を含む、実施形態16に記載の方法。
【0143】
実施形態18.
該プロピレン−α−オレフィンコポリマーと該カーボンブラックとを溶融混合し、該プロピレン−α−オレフィンコポリマーキャリアー樹脂中に分散された該カーボンブラックを含んでいる複数のマスターバッチペレットを、該マスターバッチペレットが該熱可塑性加硫物に導入されるカーボンブラックマスターバッチとして使用されるように形成する工程をさらに含む、実施形態14〜17のいずれか1形態に記載の方法。
【0144】
実施形態19.
該カーボンブラックマスターバッチを導入した後で、該熱可塑性加硫物を200米国メッシュまたはそれよりも細かいスクリーンを通させる工程をさらに含む、実施形態14〜18のいずれか1形態に記載の方法。
【0145】
実施形態20.
該カーボンブラックマスターバッチを導入した後で、該熱可塑性加硫物が、該熱可塑性加硫物の重量基準で4重量%以下の該プロピレン−α−オレフィンコポリマーを含んでいる、実施形態14〜19のいずれか1形態に記載の方法。
【0146】
実施形態21.
該熱可塑性加硫物が、該熱可塑性加硫物の1インチ×18インチ(2.54cm×45.72cm)の押し出された細片に9個以下の染みの表面染み計測数を有する、実施形態1〜13のいずれか1形態に記載の方法。
【0147】
実施形態22.
該熱可塑性加硫物が、該プロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーを含む全てのキャリアー樹脂が代わりにホモポリプロピレンキャリアー樹脂であること以外は同一の熱可塑性加硫物と比較して約2%〜約15%速い押し出し処理速度を有する、実施形態1〜13および21のいずれか1形態に記載の方法。
【0148】
実施形態23.
該熱可塑性加硫物が、該熱可塑性加硫物の1インチ×18インチの押し出された細片に9個以下の染みの表面染み計測数を有する、実施形態14〜20のいずれか1形態に記載の方法。
【0149】
実施形態24.
該熱可塑性加硫物が、該プロピレンに基いたまたはエチレンに基いたコポリマーを含む全てのキャリアー樹脂が代わりにホモポリプロピレンキャリアー樹脂であること以外は同一の熱可塑性加硫物と比較して約2%〜約15%速い押し出し処理速度を有する、実施形態14〜20および23のいずれか1形態に記載の方法。
【0150】
実施形態25.
実施形態1〜24のいずれか1形態に記載の方法によって形成された熱可塑性加硫物。
【0151】
本発明が特定の実施形態を参照して記載され説明されてきたけれども、当業者は本発明が本明細書に必ずしも例示されていない変形にも適していることを理解するだろう。そういうわけで、したがって、本発明の真の範囲を決定する目的のためには添付された特許請求の範囲のみが参照されなければならない。さらに、用語「含んでいる(comprising)」は、オーストラリア法の目的のためには、用語「含んでいる(including)」と同義であると考えられる。同様に組成物、要素または一群の要素の前に移行句「含んでいる(comprising)」がある場合は常に、本発明者らは、組成物、要素または一群の要素の記載の前に移行句「から本質的に成る(consisting essentially of)」、「から成る(consisting of)」、「から成る群から選ばれた(selected from the group consisting of)」または「である(is)」がある場合のその組成物、要素または一群の要素と同じものも考慮に入れていると理解されたい。さらに、具体的に参照された全ての特許、論文および他の文書は、参照によって本明細書に取り込まれる。
図1