(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6498813
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】換気扇用風力発電システム
(51)【国際特許分類】
F03D 9/43 20160101AFI20190401BHJP
F03D 1/06 20060101ALI20190401BHJP
F03D 9/11 20160101ALI20190401BHJP
【FI】
F03D9/43
F03D1/06 A
F03D9/11
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-75952(P2018-75952)
(22)【出願日】2018年4月11日
【審査請求日】2018年4月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501188306
【氏名又は名称】株式会社フナボリ
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 政則
【審査官】
田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】
特表2017−520703(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3152090(JP,U)
【文献】
特開2005−076491(JP,A)
【文献】
特開2009−281228(JP,A)
【文献】
特開昭63−230965(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0286515(US,A1)
【文献】
特表2013−527381(JP,A)
【文献】
特開2011−007147(JP,A)
【文献】
特開2012−026687(JP,A)
【文献】
特開2016−98789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 9/43
F03D 1/06
F03D 9/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工場等の作業空間の壁面に設置された複数台の換気扇と、
それぞれの換気扇の吐出側に臨ませた風車のブレードと、
前記換気扇の風圧を受けた前記ブレードの回転により発電する発電機と、
前記発電機に接続された風力発電安定器・充電器と、
前記風力発電安定器・充電器に接続されて前記発電機によって発生した電力により充電する二次電池と、
前記二次電池の出力電圧を前記換気扇の駆動電圧まで昇圧させる変圧器とからなり、
複数台の換気扇のうちの第1の換気扇の風圧により発電されて前記変圧器により得られた電力により第2の換気扇を駆動し、該第2の換気扇の風圧により発電されて前記変圧器により得られた電力により第3の換気扇を駆動するようにして、前記複数台の換気扇の駆動電力を順次得るようにしたことを特徴とする換気扇用風力発電システム。
【請求項2】
前記複数台の換気扇のそれぞれに商用電源から電力を供給可能としてあることを特徴とする請求項1に記載の換気扇用風力発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工場等で利用される大型換気扇を利用する換気扇用風力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
火気を扱う工場や作業場あるいは空調装置を設置できない作業空間では、熱気が屋内にこもっては良好な作業環境を確保できず、作業員の負担が大きくなってしまうから、工場等の内部の換気を促進する必要がある。この換気のため、工場等の建屋の壁体には複数台の大型換気扇が配設されている。
【0003】
地球環境の保全対策として省エネルギーを図ることが推進されており、その一方策として再生可能エネルギーの利用の促進が推奨されている。再生可能エネルギーは発電に利用されることを筆頭として、種々の態様で利用されている。工場等においても再生可能エネルギーを積極的に利用することが、工場等の省エネルギーの促進にとって好ましい。
【0004】
例えば、特許文献1には、風力を利用することで、効果的に換気を行い省エネ効果を高めようとする、風力利用換気及び発電装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、円筒風洞の天板に吐出口を開けて換気扇を取り付け、該風洞の底板に吸入口を開けて、その近接直上に円錐台の形をした横回転体が該天盤から降ろした逆さ円錐台の形をした筒状の芯軸を該風洞外に出して発電器に直結して回転する構造の回転動力取り出し装置であって、該円錐台の斜壁は翼型翼2〜30枚を等間隔に立てて並べたもので、各翼の前縁は芯軸に正体するよりやや下向きにおじきしており、尚且つ前縁同士より後縁同士の間隔が狭くなるような翼厚を持つ構造の翼で構成される風力による回転動力取り出し装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−275510号公報
【特許文献2】特開2009−203974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された風力利用換気及び発電装置は、風力を羽根よりシャフトに伝え、回転数を調節して換気ファンを駆動させ室内等の換気を行うと同時に、別のシャフトにて発電を行うことで余分なエネルギーを効果的に利用使用とするものである。
【0008】
この特許文献1に開示された発明は、風力により換気ファンを駆動させるものであるため、風力を得られない場合には、換気ファンを駆動できず、また、発電を行うこともできない。
【0009】
また、特許文献2に開示された発明は、換気扇により風洞の底板に設けた吸入口から吸い込んだ空気により回転体を回転させて発電機により発電させようとするものであり、換気扇には換気機能を期待するものではない。このため、工場等の大型空間の換気扇としての利用には適していない。
【0010】
この発明は、工場等の換気を確実に行いながら発電を行って、工場等の省エネルギー化を図ることができる換気扇用風力発電システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係る
換気扇用風力発電装置システムは、工場等の作業空間の壁面に設置された複数台の換気扇と、それぞれの換気扇の吐出側に臨ませた風車のブレードと、前記換気扇の風圧を受けた前記ブレードの回転により発電する発電機と、前記発電機に接続された風力発電安定器・充電器と、前記風力発電安定器・充電器に接続されて前記発電機によって発生した電力により充電する二次電池と、前記二次電池の出力電圧を前記換気扇の駆動電圧まで昇圧させる変圧器とからなり、複数台の換気扇のうちの第1の換気扇の風圧により発電されて前記変圧器により得られた電力により第2の換気扇を駆動し、該第2の換気扇の風圧により発電されて前記変圧器により得られた電力により第3の換気扇を駆動するようにして、前記複数台の換気扇の駆動電力を順次得るようにしたことを特徴としている。
【0012】
また、前記複数台の換気扇のそれぞれに商用電源から電力を供給可能としてあることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る換気扇用風力発電
システムによれば、工場等の作業空間の換気を行う換気扇の風圧を利用して発電する換気扇用風力発電装置による発電電力で他の換気扇を駆動することができるので、工場等の消費電力削減の補助となる電力を得ることができ、省エネルギーの促進を図ることができる。
【0015】
また、
前記複数台の換気扇のそれぞれに対応した発電機による発電電力が他の換気扇を駆動するのに不足する場合には、商用電源から電力を供給することにより、換気扇を確実に作動させて、工場等の作業環境を良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明に係る換気扇用風力発電システムを説明する概略の構成図である。
【
図2】この発明に係る換気扇用
風力発電システムに利用する風力発電装置を説明する概略の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係る換気扇用風力発電システムを具体的に説明する。
【0018】
図1にはこの発明に係る換気扇用風力発電システムを、
図2には
この風力発電システムに用いられる換気扇用風力発電装置を示してある。
【0019】
まず、概略の構成を説明する概略図である
図2を参照して、換気扇用風力発電装置を説明する。この換気扇用風力発電装置10は、換気扇2と増速機や発電機等をケース内に備えているナセル11を主体として構成されており、発電機で発電された電力を安定電源として調整する風力発電安定器・充電器13、二次電池としてのバッテリー14等を主たる構成としている。
【0020】
工場等の作業空間1の壁体1aには換気扇2が取り付けられて、作業空間1内から空気を吸引して外部に排出させる。なお、作業空間1の規模に応じた能力の換気扇2が取り付けられることになるが、多くの工場では50インチ、200Vと大型換気扇2が壁体1aに適宜間隔を設けて複数台が設置される。
【0021】
換気扇2の吐出側には風力発電装置10を構成する図示しない回転軸や増速機、発電機等を備えたナセル11が配されており、換気扇2に対向させて配された風車のブレード12が換気扇2から排出された換気用空気の風圧を受けて回転するようにしてある。このブレード12の回転によってナセル11が備えた発電機により発電される。なお、風車には、水平軸式または垂直軸式のいずれでも利用することができる。また、ブレード12の形式についても、種々の形式のものを用いることができる。なお、ナセル11にはブレーキ装置が備えられており、風圧によってブレード12が定格の回転数以上に上昇した場合等には停止されるようになされている。
【0022】
ナセル11の発電機の出力は風力発電安定器・充電器13に提供される。この風力発電安定器・充電器13からの出力が二次電池としてのバッテリー14に供給されて充電される。風力発電安定器・充電器13にはブレーキスイッチ13aが設けられており、非常時等に動作を停止する。また、バッテリー14には、自動車用のバッテリーとして普及している電圧が12Vの2台のバッテリー14を直列に接続してある。そして、このバッテリー14の出力端子14a、14bから電力を得ることができ、得られた電力は工場内の各種設備の駆動等の電力に利用することができる。
【0023】
図1には、この発明に係る換気扇用風力発電システムの概略の構成を示してある。風力発電装置10で発生した電力により充電されたバッテリー14の出力側に変圧器15が接続されている。この変圧器15では、バッテリー14の出力電圧(24V)を換気扇2の駆動電圧(200V)まで昇圧する。
【0024】
変圧器15の出力電圧を、複数台(n台)の換気扇2a、…、2i、2n-1、2nが設置されている場合に、第1の換気扇2について設けられた風力発電装置10の出力を、第2の換気扇2aの駆動電力として利用する。さらに、この第2の換気扇2aについて設けられた風力発電装置10の出力を第nの換気扇2nの駆動に利用する。このように、複数台の換気扇2のひとつの第iの換気扇2iの駆動電力を隣接する第(i−1)の換気扇2i-1により発電された電力を利用する。なお、複数台の換気扇2のうちの第1の換気扇2は商用電源に連係させて駆動電力を得るようにしてあるが、他の換気扇2についても、発電に十分な風力を得られない場合には商用電源から駆動電力の供給を受けるようにしてあることが好ましい。
【0025】
このため、この風力発電システムによれば、前記第1の換気扇2の駆動源として商用電源3を利用し、その他の換気扇2iは異なる換気扇2i-1により発生した電力により駆動することになり、換気扇から排気されている風圧を利用して、省エネルギー化を促進する。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明に係る換気扇用風力発電システムによれば、工場等に設置されている換気扇により排出される空気の風圧により風力発電装置のブレードを回転させるので、従来排気されていた風力エネルギーの有効利用を図って、工場の省エネルギー化の促進に寄与する。
【符号の説明】
【0027】
1 作業空間
1a 壁体
2 換気扇
2a 換気扇
2n 換気扇
10 風力発電装置
11 ナセル
12 ブレード
13 風力発電安定器・充電器
13a ブレーキスイッチ
14、14 バッテリー(二次電池)
15 変圧器
【要約】
【課題】 工場等の作業空間の換気用に設置されている大型換気扇の排気の風圧を利用して発電する換気扇用風力発電装置を提案し、省エネルギー化の促進を図れる換気扇用風力発電システムを提案する。
【解決手段】 作業空間1の壁体1aに取り付けられた換気扇2の吐出側に風車のブレード12を対向させて配し、排出空気の風圧により回転させてナセル11の発電機により発電させる。発電電力は風力発電安定器・充電器13を通してバッテリー14に充電し、その出力電圧を変圧器15で昇圧して換気扇2の駆動電力を得る。この駆動電力で他の換気扇2aを駆動して発電電力を得、変圧器15を介して得た駆動電力により第nの換気扇2nを駆動する。複数台の換気扇2で発電して得られた駆動電力を異なる換気扇2iの駆動に利用する。
【選択図】
図1