特許第6498822号(P6498822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6498822
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】床暖房装置の温水漏洩調査方法
(51)【国際特許分類】
   F24D 3/16 20060101AFI20190401BHJP
   G01M 3/20 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   F24D3/16 Z
   G01M3/20 B
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-119217(P2018-119217)
(22)【出願日】2018年6月22日
【審査請求日】2018年8月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】割田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】結城 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】富永 泰平
(72)【発明者】
【氏名】本村 優季
(72)【発明者】
【氏名】高倉 康平
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−177007(JP,A)
【文献】 特開昭60−133340(JP,A)
【文献】 特開平10−213300(JP,A)
【文献】 特開平06−235675(JP,A)
【文献】 特開平05−340837(JP,A)
【文献】 特開2018−044862(JP,A)
【文献】 特開平11−344412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 3/16
G01M 3/20− 3/22
G01M 3/04
F17D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の水平方向に接合された複数の床面材の下方側に配置された温水配管を有する床暖房装置の温水漏洩調査方法に適用され、
前記温水配管内の水を空気よりも軽いガスに置き換える置換工程と、
前記空気よりも軽いガスを検出するセンサを一の前記床面材と他の前記床面材との接合部に沿って移動させるガス検出工程と、
を有する床暖房装置の温水漏洩調査方法であって、
前記床暖房装置は、複数の系統の前記温水配管を備え、
前記置換工程の前に、前記複数の系統の前記温水配管内の圧力をそれぞれ上昇させ、所定の時間の経過後の圧力降下量を確認する気密検査工程を有し、
前記置換工程において、前記気密検査工程で所定の圧力降下量を超えた系統の前記温水配管内の水を空気よりも軽いガスに置き換える床暖房装置の温水漏洩調査方法。
【請求項2】
建物の水平方向に接合された複数の床面材の下方側に配置された温水配管を有する床暖房装置の温水漏洩調査方法に適用され、
前記温水配管内の水を空気よりも軽いガスに置き換える置換工程と、
前記空気よりも軽いガスを検出するセンサを一の前記床面材と他の前記床面材との接合部に沿って移動させるガス検出工程と、
を有する床暖房装置の温水漏洩調査方法であって、
前記床暖房装置は、複数の系統の前記温水配管を備え、
前記置換工程の前に、前記複数の前記床面材の含水率を測定する含水率測定工程を有し、
前記置換工程において、前記含水率測定工程で含水率が他の部分と比べて相対的に高い床面材の下方側の系統の前記温水配管内の水を空気よりも軽いガスに置き換える床暖房装置の温水漏洩調査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床暖房装置の温水漏洩調査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、床面を温める床暖房装置が開示されている。この床暖房装置は、床面材である下地合板及び仕上げ材の下方側に配置された温水配管(温水パイプ)を備えている。この温水配管内を温水が通過することで、床面が温められるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−61638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、温水配管を設置する際の作業時や下地合板および仕上げ材を床根太に固定する際に、カッター等の刃物や釘等によって温水配管を損傷させることが考えられる。また、設置から数年を経た後に、損傷した温水配管から温水が漏れ出す場合がある。よって、床面材に覆われた温水配管からの漏水箇所を特定することが難しい。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、床面材に覆われた温水配管からの漏水箇所を特定することができる床暖房装置の温水漏洩調査方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項記載の床暖房装置の温水漏洩調査方法は、建物の水平方向に接合された複数の床面材の下方側に配置された温水配管を有する床暖房装置の温水漏洩調査方法に適用され、前記温水配管内の水を空気よりも軽いガスに置き換える置換工程と、前記空気よりも軽いガスを検出するセンサを一の前記床面材と他の前記床面材との接合部に沿って移動させるガス検出工程と、を有する床暖房装置の温水漏洩調査方法であって、前記床暖房装置は、複数の系統の前記温水配管を備え、前記置換工程の前に、前記複数の系統の前記温水配管内の圧力をそれぞれ上昇させ、所定の時間の経過後の圧力降下量を確認する気密検査工程を有し、前記置換工程において、前記気密検査工程で所定の圧力降下量を超えた系統の前記温水配管内の水を空気よりも軽いガスに置き換える。
【0011】
請求項記載の床暖房装置の温水漏洩調査方法によれば、置換工程の前に、複数の系統の温水配管内の圧力をそれぞれ上昇させ、所定の時間の経過後の圧力降下量を確認する(気密検査工程)。そして、置換工程において、気密検査工程で所定の圧力降下量を超えた系統の温水配管内の水を空気よりも軽いガスに置き換える。これにより、漏水が想定されない系統の温水配管内の水を空気よりも軽いガスに置き換える作業を不要とすることができる。
【0012】
請求項記載の床暖房装置の温水漏洩調査方法は、建物の水平方向に接合された複数の床面材の下方側に配置された温水配管を有する床暖房装置の温水漏洩調査方法に適用され、前記温水配管内の水を空気よりも軽いガスに置き換える置換工程と、前記空気よりも軽いガスを検出するセンサを一の前記床面材と他の前記床面材との接合部に沿って移動させるガス検出工程と、を有する床暖房装置の温水漏洩調査方法であって、前記床暖房装置は、複数の系統の前記温水配管を備え、前記置換工程の前に、前記複数の前記床面材の含水率を測定する含水率測定工程を有し、前記置換工程において、前記含水率測定工程で含水率が他の部分と比べて相対的に高い床面材の下方側の系統の前記温水配管内の水を空気よりも軽いガスに置き換える。
【0013】
請求項記載の床暖房装置の温水漏洩調査方法によれば、置換工程の前に、複数の床面材の含水率を測定する(含水率測定工程)。そして、置換工程において、含水率測定工程で含水率が他の部分と比べて相対的に高い前記床面材の下方側の系統の温水配管内の水を空気よりも軽いガスに置き換える。これにより、漏水が想定されない系統の温水配管内の水を空気よりも軽いガスに置き換える作業を不要とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る床暖房装置の温水漏洩調査方法は、床面材に覆われた温水配管からの漏水箇所を特定することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ガス温水システムの概略の構成を示す模式図である。
図2】床暖房装置の床暖マット及び温水配管を備えた床の断面を示す側断面図であり、二重床捨て貼り無構造の床の断面を示している。
図3】床暖房装置の床暖マット及び温水配管を備えた床の断面を示す側断面図であり、二重床捨て貼り有構造の床の断面を示している。
図4】床暖房装置の床暖マット及び温水配管を備えた床の断面を示す側断面図であり、スラブ直貼構造の床の断面を示している。
図5】温水配管からの漏水箇所の特定の可否を示した表であり、含水率測定、サーモビューア及び漏洩音検査による特定の可否を示している。
図6】温水配管内の温水をヘリウムガスに置き換える工程を示す模式図である。
図7】ヘリウム検知器を示す正面図である。
図8】ガス検出工程を模式的に示す模式図である。
図9】温水配管からの漏水箇所の特定の可否を示した表であり、ヘリウム検知器、含水率測定及びサーモビューアによる特定の可否を示している。
図10】ヘリウム検知器を用いて温水配管からの漏水箇所の特定を行った際の精度等を示す表であり、3人の調査者の結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
先ず、ガス温水システムの概略の構成について説明し、次に、床暖房装置の概略の構成について説明し、最後に、床暖房装置の温水漏洩調査方法について説明する。
【0017】
(ガス温水システムの概略の構成)
図1に示されるように、ガス温水システム10は、内部で都市ガス等のガスを燃焼させることによって熱交換器を通過する水を温める熱源機12を備えている。この熱源機12は、戸建てやマンション等の居住スペース14の外側(室外16)に配置された状態で、建物の壁等に固定されている。
【0018】
熱源機12で温められた温水は、温水配管18、20を介して建物の内部に導入される。そして、温水配管18に接続されたバルブ22を操作することで、熱源機12で温められた温水を浴室26等で使用することができる。また、図示しない操作部を操作することで、熱源機12で温められた温水を浴槽27に供給することが可能となっている。
【0019】
熱源機12で温められた温水は、温水配管24を介して浴室26の天井部に設置された浴室暖房乾燥機28の内部に導入される。この浴室暖房乾燥機28の内部を通過する温水によって、浴室26の温度を上昇させることが可能となっている。
【0020】
(床暖房装置の概略の構成)
また、熱源機12は、リビングルーム30等の床32を温める床暖房装置34の一部を構成している。床暖房装置34は、熱源機12と、熱源機12に接続された温水配管36と、当該温水配管36に接続されていると共に、複数の床面材52の下方側に配置される温水配管38と、を備えている。なお、温水配管38は、マット40と一体化されており、この温水配管38及びマット40によって床暖マット42が構成されている。そして、床暖マット42は、一例として図2図4に示された各構造の床32内に配置されている。
【0021】
図2には、二重床捨て貼り無構造の床32に床暖マット42が設けられた構成が記載されている。この床32は、建物の基礎44上に支持具46を介して支持されたパーティクルボード48と、パーティクルボード48上に重ねられた合板50と、合板50上に重ねられた床暖マット42と、床暖マット42上に重ねられた複数の床面材52(フローリング材)と、を有する層状となっている。ここで、複数の床面材52は、建物の水平方向に並べられた状態で建物の水平方向に接合されている。建物の水平方向に隣り合う一の床面材52と他の床面材52とは、凸凹状の第1嵌合部52Bと第2嵌合部52Aとが嵌合することによって接合されている。なお、第1嵌合部52Bと第2嵌合部52Aとの嵌合部(接合部)をさね部54と呼ぶ。
【0022】
図3には、二重床捨て貼り有構造の床32に床暖マット42が設けられた構成が記載されている。この床32では、図1に記載された構成に対して、複数の床面材52と床暖マット42との間に合板50が設けられている。
【0023】
図4には、スラブ直貼構造の床32に床暖マット42が設けられた構成が記載されている。この床32では、床スラブ56上に床暖マット42が設けられ、この床暖マット42上に複数の床面材52が接着剤58を介して固定されている。
【0024】
(床暖房装置の温水漏洩調査方法)
ここで、床暖マット42を設置する際や床面材52の設置時の作業時に、カッター等の刃物や釘等によって温水配管38を損傷させることが考えられる。そして、温水配管38に加わる繰り返しの圧力変動や温度変化、釘の腐食によって、損傷した箇所を起点として温水配管38に亀裂や隙間が生じ、この亀裂や隙間から温水(水)が漏れ出す場合がある。この場合、複数の床面材52に覆われた温水配管38からの漏水箇所を特定することが難しい。なお、温水配管38からの漏水は、一例として、温水配管38への補水間隔が所定の時間よりも短いことをトリガーとして判断される。
【0025】
温水配管38からの漏水箇所を調査する方法として、床面材52の含水率を測定する方法がある。この方法では、複数の床面材52の中で他の床面材52よりも含水率が高い床面材52の下方側で温水配管38から漏水していると推測できる。
【0026】
また、温水配管38からの漏水箇所を調査する方法として、サーモビューアを用いる方法がある。この方法では、複数の床面材52をサーモビューアで観測し、他の部分よりも温度が高い又は低い箇所を探す。そして、他の部分よりも温度が高い又は低い箇所の下方側で温水配管38から漏水していると推測できる。
【0027】
さらに、温水配管38からの漏水箇所を調査する方法として、床面材52に聴診器等を当てて、温水(水)の漏洩音(漏水音)を調査する方法がある。この方法では、漏洩音が観測された箇所の下方側で温水配管38から漏水していると推測できる。
【0028】
ここで、図5には、上記の含水率測定、サーモビューア及び漏洩音調査による温水配管38からの漏水箇所の特定の可否を検証した結果の表が示されている。
【0029】
なお、この表に記載された「漏洩有判定」とは、温水配管38内の圧力を上昇させ(一例として0.24MPaまで上昇させ)、所定の時間の経過後の圧力が大きく下がる(一例として0.03〜0.01MPaまで下がる)ほどの漏水が生じている場合である。また、「漏洩無判定」とは、温水配管38内の圧力を上昇させ(一例として0.24MPaまで上昇させ)、所定の時間の経過後の圧力が大きく下がらない(一例として0.23〜0.19MPa程度までしか下がらない)微小な漏水が生じている場合である。
【0030】
また、この表に記載された「二重床捨て貼り無」とは図2に記載された床32を模擬した場合であり、「二重床捨て貼り有」とは図3に記載された床32を模擬した場合であり、「直貼」とは図4に記載された床32を模擬した場合である。
【0031】
さらに、この表に記載された「釘有」とは、施工時の釘により温水配管38が損傷した場合を模擬した場合であり、「釘無」とは、施工時の釘以外(例えばカッター等の刃物)により温水配管38が損傷した場合を模擬した場合である。
【0032】
そして、図5の表に示されるように、「漏洩有判定」の場合で、かつ「二重床捨て貼り無」の構成では、「釘有」及び「釘無」ともに含水率測定で漏水箇所を特定できることがわかる。
【0033】
また、「漏洩有判定」又は「漏洩無判定」の場合で、かつ「二重床捨て貼り無」の構成では、「釘有」の場合でのみサーモビューアで漏水箇所を特定できることがわかる。
【0034】
しかしながら、上記の場合以外では、含水率測定、サーモビューア及び漏洩音調査によって温水配管38からの漏水箇所の特定を行うことが困難又は不可能であることがわかる。
【0035】
以上の結果より、床32の構造に左右されにくく、また温水配管38からの漏水量が少ない場合においても温水配管38からの漏水箇所を特定できる床暖房装置の温水漏洩調査方法の開発が望まれる。以下、ヘリウムガス60(図6参照)及びヘリウムガス検知器62(図7参照)を用いた床暖房装置の温水漏洩調査方法について説明する。
【0036】
(ヘリウムガス及びヘリウムガス検知器を用いた床暖房装置の温水漏洩調査方法)
図1及び図6に示されるように、先ず、熱源機12と温水配管36との接続を外す。なお、図1においては図示を省略しているが、図6に示されるように、温水配管36は、熱源機12から床暖マット42の温水配管38へ向かう温水が流れる往き配管36Aと、床暖マット42の温水配管38から熱源機12へ向かう温水が流れる戻り配管36Bと、を有している。
【0037】
次に、往き配管36Aに空気入れを接続して空気を注入することで、戻り配管36B側から排水する。
【0038】
そして、温水配管36(往き配管36A及び戻り配管36B)及び床暖マット42の温水配管38内の水が抜けきったことが確認された後に、往き配管36Aをヘリウムガス60のボンベ64に接続する。また、戻り配管36B側に排出バルブ66を接続する。ここで、ボンベ64から往き配管36Aへ供給されるヘリウムガス60の圧力は、レギュレータ68によって調整される。そして、レギュレータ68の圧力調整バルブ70を調節することで、ボンベ64から往き配管36Aへ供給されるヘリウムガス60の圧力を調節する。なお、本実施形態では、ボンベ64から往き配管36Aへ供給されるヘリウムガス60の圧力は、0.3〜0.35MPaに調整される。
【0039】
戻り配管36Bに接続された排出バルブ66を解放した状態で、レギュレータ68のストップバルブ72を解放することで、ヘリウムガス60を往き配管36Aへ注入する。そして、温水配管36(往き配管36A及び戻り配管36B)及び床暖マット42の温水配管38内に残存している空気が、排出バルブ66から排出されたタイミングで、当該排出バルブ66を閉じる。そして、温水配管36(往き配管36A及び戻り配管36B)及び床暖マット42の温水配管38内がヘリウムガス60で満たされて、所定の圧力(0.3〜0.35MPa)となった時点でストップバルブ72を閉じる(置換工程)。
【0040】
なお、温水配管36(往き配管36A及び戻り配管36B)及び床暖マット42の温水配管38内がヘリウムガス60で満たされて、所定の圧力(0.3〜0.35MPa)となったか否かは、レギュレータ68及び排出バルブ66に設けられたゲージ74により確認することができる。
【0041】
ここで、各部屋に床暖房が設置されていること等により、複数の系統の温水配管36(往き配管36A及び戻り配管36B)及び床暖マット42を有する場合、前述の置換工程の前に、複数の系統の温水配管36(往き配管36A及び戻り配管36B)及び床暖マット42の温水配管38内の圧力をそれぞれ上昇させ、所定の時間の経過後の圧力降下量を確認する(気密検査工程)。そして、気密検査工程で所定の圧力降下量を超えた系統の温水配管36(往き配管36A及び戻り配管36B)及び床暖マット42の温水配管38内の水をヘリウムガス60に置き換える。これにより、漏水が想定されない系統の温水配管36(往き配管36A及び戻り配管36B)及び床暖マット42の温水配管38内の水をヘリウムガス60に置き換える作業を不要とすることができる。なお、上記気密検査工程では検出できない微小な漏水が生じている可能性がある場合には、すべての系統の温水配管36(往き配管36A及び戻り配管36B)及び床暖マット42の温水配管38内の水をヘリウムガス60に置き換える。
【0042】
また、複数の系統の温水配管36(往き配管36A及び戻り配管36B)及び床暖マット42を有する場合、前述の置換工程の前に、複数の床面材52の含水率を測定する(含水率測定工程)。そして、含水率測定工程で含水率が他の部分と比べて相対的に高い床面材52の下方側の系統の温水配管36(往き配管36A及び戻り配管36B)及び床暖マット42の温水配管38内の水をヘリウムガス60に置き換える。これにより、漏水が想定されない系統の温水配管36(往き配管36A及び戻り配管36B)及び床暖マット42の温水配管38内の水をヘリウムガス60に置き換える作業を不要とすることができる。なお、上記含水率測定工程では検出できない床32の構造や微小な漏水が生じている可能性がある場合には、すべての系統の温水配管36(往き配管36A及び戻り配管36B)及び床暖マット42の温水配管38内の水をヘリウムガス60に置き換える。
【0043】
温水配管36(往き配管36A及び戻り配管36B)及び床暖マット42の温水配管38内がヘリウムガス60で満たされて、所定の圧力(0.3〜0.35MPa)となった状態で、図7及び図8に示されるように、センサとしてのヘリウムガス検知器62のプローブ62Aを一の床面材52と他の床面材52との接合部であるさね部54に沿って移動させる(ガス検出工程)。
【0044】
ここで、ヘリウムガス検知器62は、検知器本体62Bを備えており、この検知器本体62Bには、プローブ62Aが接続されている。検知器本体62Bには、インジケータ62Cが設けられている。このインジケータ62Cが点灯すると共に検知器本体62Bからビープ音が発生することで、ヘリウムガス60が検出されたことが調査者に知らされるようになっている。
【0045】
そして、ヘリウムガス60がヘリウムガス検知器62によって検出されることで、当該検出された箇所の床面材52の下方側において温水配管38の漏水箇所を特定することができる。これにより、ヘリウムガス60が検出された箇所の床面材52及びその周縁部の床面材52のみを取り外すことにより、温水配管38の補修や交換等の必要な処置を行うことができる。
【0046】
図9には、ヘリウムガス60及びヘリウムガス検知器62を用いた方法、含水率測定及びサーモビューアによる温水配管38からの漏水箇所の特定の可否を検証した結果の表が示されている。なお、含水率測定及びサーモビューアを用いた結果は、図5に記載された結果と同じである。この図に示されるように、ヘリウムガス60及びヘリウムガス検知器62を用いた方法では、「漏洩無判定」の場合で、かつ「二重床捨て貼り有」の構成を除いては、すべての場合で漏水箇所を特定できることがわかる。すなわち、従来の方法である含水率測定、サーモビューア及び漏洩音調査によっては検出できない場合においても温水配管38からの漏水箇所の特定をすることができることがわかる。
【0047】
また、ヘリウムガス60は、可燃性のないガスとしては最も軽いガスである。そのため、温水配管38における損傷箇所(漏水箇所)から流出したヘリウムガス60は、さね部54から速やかに上昇する。その結果、ガス検出工程において、さね部54から上昇したヘリウムガス60をヘリウムガス検知器62によって容易に検出することができる。また、ヘリウムガス60は、無臭であると共に不燃性のガスであることから、住環境への影響を少なくしつつ、床暖房装置の温水漏洩調査を行うことができる。
【0048】
また、図10には、ヘリウムガス60及びヘリウムガス検知器62を用いて温水配管38からの漏水箇所の特定を行った際の精度等を示す表が示されている。この図に示されるように、従事期間、業務内容、漏水調査経験の有無にかかわらず、A,B,Cの3人の調査者のいずれが調査した場合においても、測定精度(ヘリウムガス検知器62が反応した箇所から温水配管38における損傷個所までの距離)及び測定時間のばらつきが少ないことがわかる。
【0049】
なお、本実施形態では、ヘリウムガス60を用いた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。ヘリウムガス60に換えて空気よりも軽い他のガスや混合ガスを用いてもよい。
【0050】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
34 床暖房装置
38 温水配管
52 床面材
60 ヘリウムガス
62 ヘリウムガス検知器(センサ)
【要約】
【課題】床面材に覆われた温水配管からの漏水箇所を特定する。
【解決手段】床暖房装置の温水漏洩調査方法は、建物の水平方向に接合された複数の床面材52の下方側に配置された温水配管38を有する床暖房装置34の温水漏洩調査方法に適用される。温水配管38内の水を空気よりも軽いガスに置き換える置換工程と、空気よりも軽いガスを検出するヘリウムガス検知器62のプローブ62Aを一の床面材52と他の床面材52との接合部に沿って移動させるガス検出工程と、を有する。
【選択図】図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10