特許第6498826号(P6498826)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6498826
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】被覆電線の被覆剥ぎ取り装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/12 20060101AFI20190401BHJP
【FI】
   H02G1/12 068
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-158697(P2018-158697)
(22)【出願日】2018年8月27日
【審査請求日】2018年9月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000109598
【氏名又は名称】テンパール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】五反田 文治
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−119829(JP,A)
【文献】 特開平5−111123(JP,A)
【文献】 特開2008−160911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆電線から被覆を剥ぎ取る被覆電線の被覆剥ぎ取り装置であって、
前記被覆電線には、軸方向に離間して形成され前記被覆における剥ぎ取り部分の両端に配置される2つの環状スリットと、前記2つの環状スリットの間に軸方向に延びる1つの直線状スリットと、が予め形成されており、
前記被覆電線に対向して配置され前記被覆電線における前記直線状スリットが形成された部分に近づくように前記被覆電線の軸方向に交差する方向に移動可能な一対の第1アーム部であって、前記被覆電線の軸方向に並んで配置されると共に、前記被覆電線の軸方向において互いが近づく側又は互いが離れる側に移動可能に構成される一対の第1アーム部と、
前記被覆電線を挟んで前記一対の第1アーム部に対向して配置され前記被覆電線における前記直線状スリットが形成された部分と反対側の部分に近づくように前記被覆電線の軸方向に交差する方向に移動可能な一対の第2アーム部であって、前記被覆電線の軸方向に並んで配置されると共に、前記被覆電線の軸方向において互いが近づく側又は互いが離れる側に移動可能に構成される一対の第2アーム部と、
前記剥ぎ取り部分を前記一対の第1アーム部と前記一対の第2アーム部とで前記被覆電線の径方向に挟んだ状態で、前記剥ぎ取り部分を両端部側から中央部側に寄せるように、前記被覆電線の軸方向において、前記一対の第1アーム部を互いが近づく側に移動させ、かつ、前記一対の第2アーム部を互いが近づく側に移動させるように制御する第1制御を実行し、前記第1制御の実行後に、前記被覆電線の軸方向において前記一対の第2アーム部を互いが近づく側に位置させた状態で、前記剥ぎ取り部分における前記直線状スリットが形成された部分を中央部側から両端部側に寄せるように、前記被覆電線の軸方向において前記一対の第1アーム部を互いが近づく側に位置した状態から互いが離れる側に移動させるように制御する第2制御を実行する制御部と、を備える被覆電線の被覆剥ぎ取り装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2制御の実行後に、前記被覆電線の軸方向において前記一対の第2アーム部を互いが近づく側に位置させた状態で、前記一対の第2アーム部を前記被覆電線から離れるように制御する第3制御を実行する請求項1に記載の被覆電線の被覆剥ぎ取り装置。
【請求項3】
前記一対の第1アーム部及び前記一対の第2アーム部は、それぞれ、前記被覆電線の外周面に沿って配置される凹状の円弧面を有し、
前記円弧面の曲率は、前記被覆電線の外周面の曲率よりも曲がりが緩やかな曲率である請求項1又は2に記載の被覆電線の被覆剥ぎ取り装置。
【請求項4】
前記一対の第1アーム部及び前記一対の第2アーム部は、それぞれ、前記被覆電線の外周面に沿って配置される凹状の円弧面を有し、
前記円弧面には、前記被覆電線の軸方向に交差する方向に延びる溝が形成される請求項1〜3のいずれかに記載の被覆電線の被覆剥ぎ取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆電線の被覆剥ぎ取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被覆電線の被覆を剥ぎ取る被覆剥ぎ取り装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の被覆電線の被覆剥ぎ取り装置は、被覆電線の被覆の剥ぎ取り部分を剥ぎ取る際に、剥ぎ取り部分の両端に輪郭形状の刃により環状スリットを形成すると共に、剥ぎ取り部分に直線刃により直線スリットを形成して、剥ぎ取り部分を両端側から中央側に寄せることで、剥ぎ取り部分を被覆電線から除去するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−166871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の被覆電線の被覆剥ぎ取り装置においては、環状スリットや直線状スリットの切り込みを刃を用いて形成するため、芯線に傷を付ける可能性があった。また、被覆部分を両端から中央に寄せて被覆を芯線から除去しても、環状スリット及び直線スリットの形成時に被覆が芯線に食い込んでしまい、被覆が芯線に残存することがあった。一方で、芯線に食い込んだ被覆を強い力で除去すると、芯線への負荷が増加し、解れ(ほつれ)や損傷が生じやすくなる。そのため、芯線への負荷を低減しつつ、被覆を容易に剥ぎ取ることが望まれる。
【0005】
本発明は、芯線の解れや損傷を抑制できると共に、被覆が芯線に残存することを抑制でき、被覆電線から被覆を容易に剥ぎ取ることができる被覆電線の被覆剥ぎ取り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被覆電線から被覆を剥ぎ取る被覆電線の被覆剥ぎ取り装置であって、前記被覆電線には、軸方向に離間して形成され前記被覆における剥ぎ取り部分の両端に配置される2つの環状スリットと、前記2つの環状スリットの間に軸方向に延びる1つの直線状スリットと、が予め形成されており、前記被覆電線に対向して配置され前記被覆電線における前記直線状スリットが形成された部分に近づくように前記被覆電線の軸方向に交差する方向に移動可能な一対の第1アーム部であって、前記被覆電線の軸方向に並んで配置されると共に、前記被覆電線の軸方向において互いが近づく側又は互いが離れる側に移動可能に構成される一対の第1アーム部と、前記被覆電線を挟んで前記一対の第1アーム部に対向して配置され前記被覆電線における前記直線状スリットが形成された部分と反対側の部分に近づくように前記被覆電線の軸方向に交差する方向に移動可能な一対の第2アーム部であって、前記被覆電線の軸方向に並んで配置されると共に、前記被覆電線の軸方向において互いが近づく側又は互いが離れる側に移動可能に構成される一対の第2アーム部と、前記剥ぎ取り部分を前記一対の第1アーム部と前記一対の第2アーム部とで前記被覆電線の径方向に挟んだ状態で、前記剥ぎ取り部分を両端部側から中央部側に寄せるように、前記被覆電線の軸方向において、前記一対の第1アーム部を互いが近づく側に移動させ、かつ、前記一対の第2アーム部を互いが近づく側に移動させるように制御する第1制御を実行し、前記第1制御の実行後に、前記被覆電線の軸方向において前記一対の第2アーム部を互いが近づく側に位置させた状態で、前記剥ぎ取り部分における前記直線状スリットが形成された部分を中央部側から両端部側に寄せるように、前記被覆電線の軸方向において前記一対の第1アーム部を互いが近づく側に位置した状態から互いが離れる側に移動させるように制御する第2制御を実行する制御部と、を備える被覆電線の被覆剥ぎ取り装置に関する。
【0007】
また、前記制御部は、前記第2制御の実行後に、前記被覆電線の軸方向において前記一対の第2アーム部を互いが近づく側に位置させた状態で、前記一対の第2アーム部を前記被覆電線から離れるように制御する第3制御を実行することが好ましい。
【0008】
また、前記一対の第1アーム部及び前記一対の第2アーム部は、それぞれ、前記被覆電線の外周面に沿って配置される凹状の円弧面を有し、前記円弧面の曲率は、前記被覆電線の外周面の曲率よりも曲がりが緩やかな曲率であることが好ましい。
【0009】
また、前記一対の第1アーム部及び前記一対の第2アーム部は、それぞれ、前記被覆電線の外周面に沿って配置される凹状の円弧面を有し、前記円弧面には、前記被覆電線の軸方向に交差する方向に延びる溝が形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、芯線の解れや損傷を抑制できると共に、被覆が芯線に残存することを抑制でき、被覆電線から被覆を容易に剥ぎ取ることができる被覆電線の被覆剥ぎ取り装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態における被覆電線の被覆剥ぎ取り装置の構成を示す斜視図である。
図2】被覆電線の被覆剥ぎ取り装置を側方から視た図である。
図3】被覆電線の被覆剥ぎ取り装置を上方から視た図である。
図4A】被覆電線の被覆剥ぎ取り装置の動作を説明する図であって、被覆電線を保持部に保持させて被覆剥ぎ取り装置にセットした状態を示す図である。
図4B】被覆電線の被覆剥ぎ取り装置の動作を説明する図であって、図4Aに示す状態から、第1アーム部及び第2アーム部が被覆電線を挟み込んだ状態を示す図である。
図4C】被覆電線の被覆剥ぎ取り装置の動作を説明する図であって、図4Bに示す状態から、一対の第1アーム部及び一対の第2アーム部それぞれが、被覆電線の軸方向において、互いが近づく側に移動した状態を示す図である。
図4D】被覆電線の被覆剥ぎ取り装置の動作を説明する図であって、図4Cに示す状態から、一対の第1アーム部が、被覆電線の軸方向において、互いが離れる側に移動した状態を示す図である。
図4E】被覆電線の被覆剥ぎ取り装置の動作を説明する図であって、図4Dに示す状態から、第1アーム部が被覆電線から離れる側に移動した状態を示す図である。
図4F】被覆電線用の被覆剥ぎ取り装置の動作を説明する図であって、図4Eに示す状態から、第2アーム部が剥ぎ取り部分を挟んだ状態で被覆電線から離れる側に移動した状態を示す図である。
図4G】被覆電線の被覆剥ぎ取り装置の動作を説明する図であって、図4Fに示す状態から、一対の第2アーム部が、被覆電線の軸方向において、互いが離れる側に移動して、被覆電線を落下させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態における被覆電線10の被覆剥ぎ取り装置1について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態における被覆電線10の被覆剥ぎ取り装置1の構成を示す斜視図である。図2は、被覆電線10の被覆剥ぎ取り装置1を側方から視た図である。図3は、被覆電線10の被覆剥ぎ取り装置1を上方から視た図である。
【0013】
図1図3に示すように、本実施形態の被覆電線10の被覆剥ぎ取り装置1は、被覆電線10から被覆11を剥ぎ取る装置である。
なお、本実施形態においては、第1アーム部4及び第2アーム部6が離間する方向をX方向といい、X方向における第1アーム部4が配置される側をX1側といい、X方向における第2アーム部6が配置される側をX2側という。X方向は、被覆剥ぎ取り装置1にセットされた被覆電線10の径方向に一致する。被覆剥ぎ取り装置1にセットされた場合の被覆電線10の軸方向をY方向という。Y方向は、X方向に直交する。また、X方向及びY方向に直交する鉛直方向をZ方向という。
【0014】
被覆電線10は、図1に示すように、被覆剥ぎ取り装置1にセットされる。被覆電線10は、被覆剥ぎ取り装置1にセットされた場合に、Y方向に延びて配置される。被覆電線10は、図2に示すように、それぞれ、径方向の内部側に配置される芯線12と、径方向の外部側において芯線12を周方向に覆って配置される被覆11と、を有する。本実施形態においては、例えば、芯線12は、銅の材料で形成された複数の線材を撚ることで構成された撚り線である。被覆11は、芯線12の外面を被覆する。なお、芯線12は、撚り線に限定されず、例えば、単線でもよい。
【0015】
被覆電線10には、図1に示すように、2つの環状スリット111と、1つの直線状スリット112と、が予め形成されている。
2つの環状スリット111は、被覆電線10の軸方向に離間して形成され、被覆11における剥ぎ取り部分110の両端に配置された環状の切り込みである。環状スリット111は、被覆電線10の外周面において周方向の全域に亘って形成される。
1つの直線状スリット112は、被覆11における剥ぎ取り部分110に形成された直線状の切り込みである。1つの直線状スリット112は、2つの環状スリット111の間において、被覆電線10の軸方向に延びる直線状に形成される。本実施形態においては、1つの直線状スリット112は、2つの環状スリット111の間に亘って形成される。また、1つの直線状スリット112は、被覆電線10の被覆剥ぎ取り装置1にセットされた状態において、被覆電線10のX1側を向くように配置される。
【0016】
2つの環状スリット111及び1つの直線状スリット112は、本実施形態の被覆電線10の被覆剥ぎ取り装置1にセットされる前に、例えば、レーザ加工により予め形成される。例えば、レーザ加工により環状スリット111及び直線状スリット112を形成する場合には、レーザ光によりスリットを形成するため、芯線12に傷を付けることなく、被覆11のみに切り込みを入れることができる。なお、2つの環状スリット111及び1つの直線状スリット112の形成方法は、レーザ加工に限定されない。また、被覆電線10に予め形成する切り込みの形状は、前記環状スリット111や前記直線状スリット112のスリットの切り込みに代えて、ミシン目の切り込みでもよい。
【0017】
被覆電線10の被覆剥ぎ取り装置1は、図1に示すように、台座板2と、被覆電線10を保持する一対の保持部3と、一対の第1アーム部4,4と、第1駆動機構部5(第1径方向駆動機構51、第1軸方向駆動機構52)と、一対の第2アーム部6,6と、第2駆動機構部7(第2径方向駆動機構71、第2軸方向駆動機構72)と、制御部9と、を備える。
【0018】
台座板2は、Y方向に幅を有して、X方向に延びる板状に形成される。
一対の保持部3は、台座板2のX方向の中央部において、Y方向に離間して配置される。一対の保持部3は、被覆電線10を軸方向がY方向に沿うように配置した状態で、被覆電線10を保持する。保持部3は、一対の保持板31,31と、保持部支持台32と、を有する。一対の保持板31,31は、X方向において、対向して並んで配置される。一対の保持板31,31は、X方向において、互いが近づく方向又は互いが離間する方向に移動され、互いが近づく方向に移動された場合に、被覆電線10を挟み込む。一対の保持板31は、Y方向(被覆電線10の軸方向)に離間した部分の2箇所で、被覆電線10を保持する。
【0019】
図2及び図3に示すように、一対の第1アーム部4,4及び一対の第2アーム部6,6は、被覆電線10を径方向に挟んで対向しており、X方向に離間して配置される。一対の第1アーム部4,4は、被覆電線10に対してX方向のX1側に配置される。一対の第2アーム部6,6は、被覆電線10に対してX方向のX2側に配置される。
【0020】
一対の第1アーム部4,4は、被覆電線10のX1側の側方において、被覆電線10における直線状スリット112が形成された部分に対向して配置される。
一対の第1アーム部4,4は、互いが、被覆電線10の軸方向(Y方向)に並んで配置される。
【0021】
一対の第1アーム部4,4は、X方向に移動可能に構成され、被覆電線10に近づく側又は被覆電線10から離れる側に移動可能である。一対の第1アーム部4,4は、被覆電線10における直線状スリット112が形成された部分に近づくように、被覆電線10の軸方向に交差するX方向(被覆電線10の径方向)に移動可能である。
【0022】
一対の第1アーム部4,4は、被覆電線10の軸方向に沿って並んで配置され、被覆電線10の軸方向(Y方向)において、互いが近づく側又は互いが離れる側に移動可能に構成される。一対の第1アーム部4,4は、被覆電線10の軸方向において互いが近づく側に移動されることで、被覆電線10の軸方向において閉じる側に移動され、被覆電線10の軸方向において互いが離れる側に移動されることで、被覆電線10の軸方向において開く側に移動される。
【0023】
一対の第1アーム部4,4は、図3に示すように、それぞれ、先端側に配置される第1爪部41を有する。一対の第1爪部41,41は、第1アーム部4の先端において、被覆電線10側に突出すると共に、互いが近づくように被覆電線10の軸方向の内側に延びる。
【0024】
第1爪部41は、図2に示すように、被覆電線10の軸方向に幅を有する対向円弧面411(円弧面)を有し、第1爪部41の対向円弧面411の曲率半径(アール)は、被覆電線10の外周面の曲率半径(アール)よりも曲がりが緩やかな曲率である。これにより、一対の第1アーム部4,4と一対の第2アーム部6,6(後述)との間に被覆電線10を挟み込む際に、一対の第1アーム部4,4の対向円弧面411は、被覆電線10を締め付けることが抑制された状態で挟み込むことができる。よって、第1爪部41は、被覆電線10を変形させることが抑制された状態で、即ち芯線12への負荷を低減した状態で、X1側から被覆電線10を挟み込むことができる。
【0025】
第1爪部41の対向円弧面411には、図1及び図2に示すように、被覆電線10の軸方向に並んで配置される複数の溝411aが形成される。複数の溝411aは、それぞれ、対向円弧面411において、被覆電線10の外周面に沿った円弧状の溝状に延びて形成され、被覆電線10の軸方向に交差する方向に延びる。第1爪部41の複数の溝411aは、第1爪部41を被覆電線10の軸方向に移動させた場合に、被覆11の表面に引っ掛かるため、被覆11の剥ぎ取り部分110を芯線12への負荷を低減させた状態で中央部側又は端部側に容易に寄せることができる。本実施形態においては、溝411aは、例えば、円弧方向に延びる凹状に形成される。なお、溝を、例えば、円弧方向に延びる凸状に形成してもよい。
【0026】
図1に示すように、第1駆動機構部5は、一対の第1アーム部4,4を被覆電線10の径方向(X方向)において被覆電線10に近づく側又は被覆電線10から離れる側に移動させる第1径方向駆動機構51と、一対の第1アーム部4,4を被覆電線10の軸方向(Y方向)において互いが近づく側(閉じる側)又は離れる側(開く側)に移動させる第1軸方向駆動機構52と、を有する。
【0027】
第1径方向駆動機構51は、支持台座511と、径方向駆動部512と、移動台座513と、を有する。支持台座511は、X方向のX1側の端部側において、台座板2の上面に固定されている。径方向駆動部512は、支持台座511のZ方向の上部に固定され、径方向駆動部512のX1側に配置される移動台座513をX方向のX1側又はX2側に移動させるように駆動する。移動台座513は、X方向に延びるガイド軸21に沿ってX方向に移動される。移動台座513のZ方向の上部には、第1軸方向駆動機構52が固定され、第1軸方向駆動機構52のX2側の側部には、一対の第1アーム部4,4が取り付けられている。
【0028】
以上のように構成される第1径方向駆動機構51は、径方向駆動部512を駆動することで、移動台座513をX方向のX1側又はX2側に移動させて、移動台座513に固定された第1軸方向駆動機構52を介して、一対の第1アーム部4,4を、被覆電線10の軸方向に交差するX方向(被覆電線10の径方向)に移動させることが可能である。
また、第1軸方向駆動機構52は、側部に取り付けられた一対の第1アーム部4,4を、被覆電線10の軸方向(Y方向)において、互いが近づく側(閉じる側)又は離れる側(開く側)に移動させることが可能である。
【0029】
図2及び図3に示すように、一対の第2アーム部6,6は、被覆電線10のX2側の側方において、被覆電線10を挟んで一対の第1アーム部4,4に対向して配置され、被覆電線10における直線状スリット112と反対側に配置される。一対の第2アーム部6,6は、互いが、被覆電線10の軸方向(Y方向)に並んで配置される。
【0030】
なお、一対の第2アーム部6,6の構成は、前述の一対の第1アーム部4,4が被覆電線10における直線状スリット112側のX1側に配置されているのに対して、被覆電線10における直線状スリット112と反対側に配置される点が異なるのみで、前述の一対の第1アーム部4,4の構成と同様である。一対の第2アーム部6,6は、被覆電線10に対して、一対の第1アーム部4,4と対称の形状である。
【0031】
一対の第2アーム部6,6は、X方向に移動可能に構成され、被覆電線10に近づく側又は被覆電線10から離れる側に移動可能である。一対の第2アーム部6,6は、被覆電線10における直線状スリット112が形成された部分と反対側の部分に近づくように、被覆電線10の軸方向に交差するX方向(被覆電線10の径方向)に移動可能である。
【0032】
一対の第2アーム部6,6は、被覆電線10の軸方向に沿って並んで配置され、被覆電線10の軸方向(Y方向)において、互いが近づく側又は互いが離れる側に移動可能に構成される。一対の第2アーム部6,6は、被覆電線10の軸方向において互いが近づく側に移動されることで、被覆電線10の軸方向において閉じる側に移動され、被覆電線10の軸方向において互いが離れる側に移動されることで、被覆電線10の軸方向において開く側に移動される。
【0033】
一対の第2アーム部6,6は、図3に示すように、それぞれ、先端側に配置される第2爪部61を有する。一対の第2爪部61,61は、第2アーム部6の先端において、被覆電線10側に突出すると共に、互いが近づくように内側に延びる。第2爪部61は、図1及び図2に示すように、対向円弧面611(円弧面)を有する。第2爪部61の対向円弧面611には、被覆電線10の軸方向に並んで配置される複数の溝611aが形成される。第2爪部61の対向円弧面611及び複数の溝611aの構成は、第1爪部41の対向円弧面411及び複数の溝411aと同様の構成である。そのため、第2爪部61の対向円弧面611及び複数の溝611aの構成の説明を省略する。
【0034】
第2駆動機構部7は、一対の第2アーム部6,6を被覆電線10の径方向(X方向)において被覆電線10に近づく側又は被覆電線10から離れる側に移動させる第2径方向駆動機構71と、一対の第2アーム部6,6を被覆電線10の軸方向(Y方向)において互いが近づく側(閉じる側)又は離れる側(開く側)に移動させる第2軸方向駆動機構72と、を有する。
なお、第2駆動機構部7は、前述の第1駆動機構部5が一対の第1アーム部4,4を移動させるのに対して、一対の第2アーム部6,6を移動させる点において異なるのみで、前述の第1駆動機構部5と同様の構成である。
【0035】
第2径方向駆動機構71は、支持台座711と、径方向駆動部712と、移動台座713と、を有する。支持台座711は、X方向のX2側の端部側において、台座板2の上面に固定されている。径方向駆動部712は、支持台座711のZ方向の上部に固定され、径方向駆動部712のX2側に配置される移動台座713をX方向のX1側又はX2側に移動させるように駆動する。移動台座713は、X方向に延びるガイド軸21に沿ってX方向に移動される。移動台座713のZ方向の上部には、第2軸方向駆動機構72が固定され、第2軸方向駆動機構72のX1側の側部には、一対の第2アーム部6,6が取り付けられている。
【0036】
以上のように構成される第2径方向駆動機構71は、径方向駆動部712を駆動することで、移動台座713をX方向のX1側又はX2側に移動させて、移動台座713に固定された第2軸方向駆動機構72を介して、一対の第2アーム部6,6を、被覆電線10の軸方向に交差するX方向(被覆電線10の径方向)に移動させることが可能である。
また、第2軸方向駆動機構72は、側部に取り付けられた一対の第2アーム部6,6を、被覆電線10の軸方向(Y方向)において、互いが近づく側(閉じる側)又は離れる側(開く側)に移動させることが可能である。
【0037】
制御部9について説明する。制御部9は、第1駆動機構部5及び第2駆動機構部7の動作を制御することで、被覆電線10の被覆11を剥がす動作を制御することができる。
【0038】
制御部9は、X方向(被覆電線10の軸方向に交差する径方向)において、一対の第1アーム部4,4を被覆電線10に近づく側又は離れる側に移動するように、第1駆動機構部5の第1径方向駆動機構51を制御する。また、制御部9は、X方向(被覆電線10の軸方向に交差する径方向)において、一対の第2アーム部6,6を被覆電線10に近づく側又は離れる側に移動するように、第2駆動機構部7の第2径方向駆動機構71を制御する。
【0039】
また、制御部9は、Y方向(被覆電線10の軸方向)において、一対の第1アーム部4,4を互いが近づく側(閉じる側)又は互いが離れる側(開く側)に移動するように、第1駆動機構部5の第1軸方向駆動機構52を制御する。また、制御部9は、Y方向(被覆電線10の軸方向)において、一対の第2アーム部6,6を互いが近づく側(閉じる側)又は互いが離れる側(開く側)に移動するように、第2駆動機構部7の第2軸方向駆動機構72を制御する。
【0040】
また、制御部9は、次の第1制御〜第3制御を実行可能である。
制御部9は、第1制御として、剥ぎ取り部分110を一対の第1アーム部4,4と一対の第2アーム部6,6とで被覆電線10の径方向に挟んだ状態で、剥ぎ取り部分110を両端部側から中央部側に寄せるように、Y方向(被覆電線10の軸方向)において、一対の第1アーム部4,4を互いが近づく側(閉じる側)に移動させるように第1駆動機構部5の第1軸方向駆動機構52を制御し、かつ、一対の第2アーム部6,6を互いが近づく側(閉じる側)に移動させるように第2駆動機構部7の第2軸方向駆動機構72を制御する。
また、制御部9は、第2制御として、第1制御の実行後に、一対の第2アーム部6,6を互いが近づく側(閉じる側)に位置させた状態で、剥ぎ取り部分110における直線状スリット112が形成された部分を中央部側から両端部側に寄せるように、Y方向(被覆電線10の軸方向)において、一対の第1アーム部4,4を互いが近づく側(閉じる側)に位置した状態から互いが離れる側(開く側)に移動させるように、第1駆動機構部5の第1軸方向駆動機構52を制御する。
また、制御部9は、第3制御として、第2制御の実行後に、Y方向(被覆電線10の軸方向)において一対の第2アーム部6,6を互いが近づく側(閉じる側)に位置させて一対の第2アーム部6,6が剥ぎ取り部分110を挟み込んだ状態で、X方向において、一対の第2アーム部6,6を被覆電線10から離れるように第2駆動機構部7の第2径方向駆動機構71を制御する。
【0041】
次に、被覆電線10の被覆剥ぎ取り装置1を用いて、被覆電線10から被覆11を剥がす動作について説明する。図4A図4Gは、被覆電線10の被覆剥ぎ取り装置1の動作を説明する図である。
【0042】
まず、図4Aに示すように、予め2つの環状スリット111,111及び直線状スリット112が形成された被覆電線10を、一対の保持部3,3に保持させることで、被覆電線10の被覆剥ぎ取り装置1にセットする。2つの環状スリット111及び1つの直線状スリット112は、被覆電線10を一対の保持部3,3にセットする前に、被覆電線10に、例えば、レーザ加工により予め形成される。
【0043】
次に、図4Aに示すように、制御部9は、一対の第1アーム部4,4を互いに被覆電線10の軸方向に離れる側(開く側)に位置させると共に一対の第2アーム部6,6を互いに被覆電線10の軸方向に離れる側(開く側)に位置させた状態で、X方向(被覆電線10の軸方向に交差する径方向)において、一対の第1アーム部4,4及び一対の第2アーム部6,6を、被覆電線10から離れた側から近づく側に移動するように、第1駆動機構部5及び第2駆動機構部7を制御する。これにより、図4Bに示すように、一対の第1アーム部4,4及び一対の第2アーム部6,6は、それぞれ、互いが被覆電線10の軸方向に離れた側(開く側)に位置した状態で、被覆電線10を径方向に挟み込む。
【0044】
続けて、制御部9は、剥ぎ取り部分110を一対の第1アーム部4,4と一対の第2アーム部6,6とで径方向に挟んだ状態で、図4Bに示すように、剥ぎ取り部分110を両端部側から中央部側に寄せるように、Y方向(被覆電線10の軸方向)において、一対の第1アーム部4,4を互いが近づく側(閉じる側)に移動させ、かつ、一対の第2アーム部6,6を互いが近づく側(閉じる側)に移動させるように制御する(第1制御)。
【0045】
これにより、図4Cに示すように、一対の第1アーム部4,4及び一対の第2アーム部6,6は、それぞれ、Y方向(被覆電線10の軸方向)において、互いが近づく側(閉じる側)に移動される。よって、被覆11の剥ぎ取り部分110は、環状スリット111において被覆11から切断されて被覆電線10が軸方向の中央側に寄せられる。この状態においては、被覆11の剥ぎ取り部分110は、被覆電線10の軸方向において、一対の第1アーム部4,4の第1爪部41同士の間に挟み込まれ、かつ、一対の第2アーム部6,6の第2爪部61同士の間に挟み込まれている。
【0046】
次に、制御部9は、一対の第2アーム部6,6を移動させない状態(被覆電線10の軸方向において一対の第2アーム部6,6を互いが近づく側に位置させた状態)で、図4Cに示す状態から、剥ぎ取り部分110における直線状スリット112が形成された部分を中央部側から両端部側に寄せるように、Y方向(被覆電線10の軸方向)において、一対の第1アーム部4,4を互いが近づく側(閉じる側)に位置した状態から互いが離れる側(開く側)に移動させるように制御する(第2制御)。これにより、図4Dに示すように、被覆11は、直線状スリット112が設けられた剥ぎ取り部分110において、中央部側に引き寄せられた状態から両端部側に引き延ばされる。その結果、直線状スリット112の切り込みの隙間が広がって、剥ぎ取り部分110を直線状スリット112の反対側から引っ張って引き剥がす際に、直線状スリット112の切り込みが開きやすくなる。
【0047】
その後、図4Eに示すように、一対の第1アーム部4,4を被覆電線10から離れる側(X1側)に移動させた後に、制御部9は、被覆電線10の軸方向において一対の第2アーム部6,6が剥ぎ取り部分110を挟み込んだ状態(被覆電線10の軸方向において一対の第2アーム部6,6を互いが近づく側に位置させた状態)で、X方向(被覆電線10の軸方向に交差する径方向)において、一対の第2アーム部6,6を被覆電線10から離れる側(X2側)に移動するように制御する(第3制御)。
【0048】
これにより、図4Fに示すように、一対の第2アーム部6,6をX2側に移動させることで、一対の第2アーム部6,6により挟まれた剥ぎ取り部分110をX2側に引っ張ることで、切り込みの隙間が広がった直線状スリット112を介して、被覆電線10から被覆11の剥ぎ取り部分110を剥ぎ取ることができる。このように、被覆電線10から被覆11の剥ぎ取り部分110を、容易に剥ぎ取ることができる。
【0049】
その後、図4Gに示すように、制御部9は、Y方向(被覆電線10の軸方向)において、一対の第2アーム部6,6を互いが離れる側(開く側)に移動させる。これにより、被覆11の剥ぎ取り部分110を落下させることができるため、剥ぎ取り部分110を回収することができる。
【0050】
本発明における本実施形態の被覆電線10の被覆剥ぎ取り装置1によれば、次のような効果が奏される。
(1)被覆電線10の剥ぎ取り装置1は、被覆電線10から被覆11を剥ぎ取る被覆電線10の被覆剥ぎ取り装置1であって、被覆電線10には、2つの環状スリット111と1つの直線状スリット112と、が予め形成され、剥ぎ取り部分110を一対の第1アーム部4,4と一対の第2アーム部6,6とで被覆電線10の径方向に挟んだ状態で、被覆電線10の軸方向において、一対の第1アーム部4,4を互いが近づく側に移動させ、かつ、一対の第2アーム部6,6を互いが近づく側に移動させるように制御する第1制御を実行し、第1制御の実行後に、被覆電線10の軸方向において一対の第2アーム部6,6を互いが近づく側に位置させた状態で、一対の第1アーム部4,4を互いが近づく側(閉じる側)に位置した状態から互いが離れる側(開く側)に移動させるように制御する第2制御を実行する制御部9と、を備える。そのため、剥ぎ取り部分110が直線状スリット112において中央部側に寄せられた後に、両端部側に引き延ばされることで、直線状スリット112の切り込みの隙間が広がって、剥ぎ取り部分110を直線状スリット112の反対側から引っ張って引き剥がす際に、直線状スリット112の切り込みが開きやすくなる。これにより、切り込みの隙間が広がった直線状スリット112を介して、被覆11の剥ぎ取り部分110を、容易に剥ぎ取ることができる。よって、芯線12の解れや損傷を抑制できると共に、被覆11が芯線12に残存することを抑制でき、被覆電線10から被覆11を容易に剥ぎ取ることができる。
【0051】
(2)制御部9は、第2制御の実行後に、被覆電線10の軸方向において一対の第2アーム部6,6を互いが近づく側に位置させた状態で、一対の第2アーム部6,6を被覆電線10から離れるように制御する第3制御を実行する。そのため、被覆電線10から被覆11の剥ぎ取り部分110を、容易に剥ぎ取ることができる。
【0052】
(3)第1アーム部4,4の対向円弧面411の曲率は、被覆電線の外周面の曲率よりも曲がりが緩やかな曲率である。また、第2アーム部6,6の対向円弧面611の曲率は、被覆電線の外周面の曲率よりも曲がりが緩やかな曲率である。これにより、一対の第1アーム部4,4と一対の第2アーム部6,6との間に被覆電線10を挟み込む際に、一対の第1アーム部4,4の対向円弧面411が、被覆電線10を締め付けることが抑制されると共に、一対の第2アーム部6,6の対向円弧面611が、被覆電線10を締め付けることが抑制される。よって、被覆電線10を変形させることが抑制された状態で、即ち芯線12への負荷を低減させた状態で、被覆電線10を挟み込むことができる。
【0053】
(4)第1アーム部4,4の対向円弧面411には、被覆電線10の軸方向に交差する方向に延びる複数の溝411aが形成される。また、第2アーム部6,6の対向円弧面611には、被覆電線10の軸方向に交差する方向に延びる複数の溝611aが形成される。そのため、第1爪部41の複数の溝411aは、第1爪部41を被覆電線10の軸方向に移動させた場合に、被覆11の表面に引っ掛かるため、被覆11の剥ぎ取り部分110を中央部側又は端部側に容易に寄せることができる。
【0054】
以上、好適な実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されることなく種々の形態で実施することができる。
【0055】
(アーム形状)
一対の第1アーム部4,4及び一対の第2アーム部6,6は、被覆電線10の被覆剥ぎ取り装置1を上方(Z軸方向)から視た場合の形状が、L字形状に限定されず、かつ、一対の第1アーム部4,4と第2アーム部6,6は、それぞれ非対称の形状でもよい。例えば、第2アーム部の形状を直線形状で構成してもよい。これにより、アーム形状を簡略化することができ、製造コストを低減することができる。なお、第1アーム部4,4と第2アーム部6,6の形状を逆に構成してもよい。
【0056】
(爪部の長さ)
第1爪部41と第2爪部61は、被覆電線10を径方向に挟み込んだ場合に、互いに接触しない長さ、かつ、対向円弧面411,611の半径が被覆電線10の半径よりも短く構成されていてもよい。これにより、爪部同士の接触による衝突破損を防止し、かつ、被覆電線10を径方向に挟み込んだ場合に、第1爪部41と第2爪部61とが互いに接触しない程度の大きさの半径を有する被覆電線10に対する剥ぎ取り動作を行うことが可能である。よって、第1アーム部4,4と第2アーム部6,6とを、それぞれの被覆電線10の半径に応じて個別に製造する必要がなくなるため、第1アーム部4,4と第2アーム部6,6の製造コストや交換作業工数を削減することができる。
【0057】
(爪部形状)
また、第1爪部41と第2爪部61は、対向円弧面411,611を有して構成されているが、被覆電線10の外周面に接する部分を有するように多角形状に構成してもよい。例えば、爪部同士が接した時に、Y方向(被覆電線10の軸方向)に視た場合の断面(X方向に切断した場合の断面)の形状が六角形となるように構成してもよい。これにより、爪部に円弧面を形成する場合と比較して、六角形の辺同士が鈍角で当接する角部に被覆電線を挟み込む際に、被覆電線10の被覆11が押し出される隙間が生じるため、第1爪部41は、被覆電線10を変形させることが抑制された状態で、即ち、芯線12への負荷を低減した状態で、X1側から被覆電線10を挟み込むことができる。
【0058】
(爪部の対向円弧面の溝)
また、第1爪部41、第2爪部61の対向円弧面411,611に設けられる溝411a,611aは、被覆電線10の外周面に沿った円弧状の溝状に延びて形成されるが、円弧方向に対して角度を有して、例えば、ローレット形状のように斜め状に形成されてもよい。更に、一対の第1アーム部4,4と第2アーム部6,6は、それぞれ移動方向または撚り線のねじれ方向に応じて非対称に形成されてもよい。これにより、第1アーム部4,4と第2アーム部6,6とをそれぞれY方向の中央部側に寄せる制御を行なう場合に、被覆11を容易に剥ぎ取ることができる。
【0059】
(被覆電線から被覆を剥ぎ取る動作について)
制御部9における第1制御において、剥ぎ取り部分110を一対の第1アーム部4,4と一対の第2アーム部6,6とで径方向に挟んだ状態で、図4Bに示すように、剥ぎ取り部分110を両端部側から中央部側に寄せるように、Y方向(被覆電線10の軸方向)において、一対の第1アーム部4,4を互いが近づく側(閉じる側)に移動させ、かつ、一対の第2アーム部6,6を互いが近づく側(閉じる側)に移動させるように制御しているが、これに限定されず、一対の第1アーム部4,4と一対の第2アーム部6,6をそれぞれが閉じる側に移動させる際に、所定の時間差を設けて駆動させる制御を行なってもよい。これにより、被覆電線10に設けられた環状スリット111のうち、一対の第1アーム部4,4側の被覆11を先に剥ぎ取ることができ、被覆電線10が引き延ばされるために、環状スリット111の切り込みと、直線状スリット112の切り込みが開きやすくなる。よって、被覆11に食い込んだ芯線12を取り除きやすくなり、被覆11を容易に剥ぎ取ることができる。
【0060】
なお、所定の時間差とは、剥ぎ取り部分110を径方向に挟んだ状態において、一対の第1アーム部4,4のみが先に移動を開始した時間を0(ゼロ)として、第1爪部41の有する幅と第2爪部61の有する幅とが非重複状態になるまでの時間をtとした場合に、0(ゼロ)からtまでの間の任意の時間を時間差として設定したものである。
【符号の説明】
【0061】
1 被覆電線の被覆剥ぎ取り装置
4 第1アーム部
6 第2アーム部
9 制御部
10 被覆電線
11 被覆
110 剥ぎ取り部分
111 環状スリット
112 直線状スリット
411,611 対向円弧面(円弧面)
411a、611a 溝
【要約】
【課題】芯線の解れや損傷及び被覆が芯線に残存することを抑制でき、被覆電線から被覆を容易に剥ぎ取ることができる被覆電線の被覆剥ぎ取り装置を提供すること。
【解決手段】被覆電線10の被覆剥ぎ取り装置1であって、被覆電線10には、2つの環状スリット111と1つの直線状スリット112と、が予め形成されており、剥ぎ取り部分110を一対の第1アーム部4,4と一対の第2アーム部6,6とで径方向に挟んだ状態で、被覆電線10の軸方向において、一対の第1アーム部4,4を互いが近づく側に移動させ、かつ、一対の第2アーム部6,6を互いが近づく側に移動させるように制御する第1制御を実行し、第1制御の実行後に、一対の第2アーム部6,6を互いが近づく側に位置させた状態で、一対の第1アーム部4,4を互いが近づく側に位置した状態から互いが離れる側に移動させるように制御する第2制御を実行する制御部9と、を備える。
【選択図】図4D
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G