特許第6498830号(P6498830)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6498830
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】カカオ豆加工物含有飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20190401BHJP
   A23L 2/38 20060101ALI20190401BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20190401BHJP
   A23G 1/56 20060101ALI20190401BHJP
   A23C 9/156 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   A23L2/00 F
   A23L2/38 B
   A23L2/00 B
   A23L2/52
   A23G1/56
   A23C9/156
   A23L2/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-175990(P2018-175990)
(22)【出願日】2018年9月20日
【審査請求日】2018年11月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(74)【代理人】
【識別番号】100130683
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 政広
(72)【発明者】
【氏名】米山 里奈
(72)【発明者】
【氏名】藤田 裕
【審査官】 柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−517030(JP,A)
【文献】 Mixed Berry Drink. [online]. 2018-JUL uploaded. MiNTEL GNPD, (ID#)5815255 [Retrieved on 2018-DEC-11]. Retrieved from the internet:<URL:http://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/5815255/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−2/84
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ−アミノ酪酸を含む、鉄分配合のカカオ豆加工物含有飲料であって、
前記飲料中に含まれる鉄分の総含有量が、0.7mg以上1.5mg以下/飲料100gであり、
前記γ−アミノ酪酸の質量比が、前記飲料中に含まれる総鉄分1質量部に対して、4.67質量部以上14質量部以下である、前記飲料
【請求項2】
前記飲料が、カカオ豆加工物含有乳飲料又はココア飲料である、請求項1記載の飲料。
【請求項3】
γ−アミノ酪酸、鉄化合物、及びカカオ豆加工物を混合して原料液を調製する工程を含み、鉄分の総含有量が、0.7mg以上1.5mg以下/飲料100gであり、前記γ−アミノ酪酸の質量比が、前記鉄分の配合量1質量部に対して、4.67質量部以上14質量部以下であることを特徴とするカカオ豆加工物含有飲料の製造方法。
【請求項4】
鉄分配合カカオ豆加工物含有飲料にγ−アミノ酪酸を添加することを特徴とする、鉄分配合カカオ豆加工物含有飲料の鉄味を軽減する方法であって、
前記飲料中に含まれる鉄分の総含有量が0.7mg以上1.5mg以下/飲料100gであり、前記γ−アミノ酪酸の質量比が、前記鉄分の配合量1質量部に対して、4.67質量部以上14質量部以下にする、前記方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、カカオ豆加工物含有飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
カカオ豆の加工物は、チョコレートやココアといった飲料等の原料として広く利用されており、嗜好性の優れた食品原料である。このカカオ豆加工物を配合した飲料として、例えばカカオ豆加工物含有乳飲料及びココア飲料が挙げられる。近年では、カカオ豆に含まれる成分(例えばポリフェノール等)が健康増進等に関与しているとの報告もあり、またカカオ豆加工物特有の良好な風味もあるために、カカオ豆加工物含有飲料が消費者から注目を集めるようになっている。加えて、近年の飲料市場における消費者の健康志向の高まりにより、消費者はカカオ豆加工物含有飲料にさらなる機能性を望むようになってきている。
【0003】
例えば、特許文献1では、アセスルファムカリウム、スクラロース及びエリスリトールを含む甘味料をそれぞれ特定量含有させることで、低カロリーのココア飲料であっても、呈味、食感等の点で、従来のココア飲料に比べて遜色のないものを提供することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−19441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、消費者の健康志向の高まりから、より機能性の高いカカオ豆加工物含有飲料の提供を検討した。そして、本発明者は、機能性の高い成分として、食生活等で欠乏しやすい鉄分に着目した。
【0006】
本発明者は、乳飲料に鉄分を配合した飲料では鉄味(鉄臭味いわゆる血の風味)がしなかったので、さらにココアパウダーを配合して鉄分及びココア含有の乳飲料を製造したところ、逆に強く鉄味を感じ、あまり好まれない呈味になることに気がついた。飲料では鉄味はあまり好まれない呈味であるので、この鉄味を軽減する必要があると本発明者は考えた。
【0007】
斯様に、カカオ豆加工物含有飲料で鉄分を強化する際、カカオ豆加工物及び鉄分を併用することによって鉄味がかえって増強するため、この増強された鉄味を軽減させることに技術困難性があるが、しかし本発明者は、この問題点を解決することを試みた。
【0008】
そこで、本技術は、鉄味が軽減された鉄分配合のカカオ豆加工物含有飲料を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、鉄分配合のカカオ豆加工物含有飲料に、γ−アミノ酪酸(以下、「GABA」ともいう)を含有させることによって、鉄味を軽減させることができることを見出した。γ−アミノ酪酸(GABA)を用いることによって、カカオ豆加工物及び鉄分が併用されることで増強されている鉄味を軽減できたことは、本発明者にとっても全く意外であった。本発明者は、斯様にして本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0010】
本技術は、γ−アミノ酪酸を含む、鉄分配合のカカオ豆加工物含有飲料を提供するものである。
本技術は、γ−アミノ酪酸、鉄化合物、及びカカオ豆加工物を混合して原料液を調製する工程、を含むカカオ豆加工物含有飲料の製造方法を提供するものである。
本技術は、鉄分配合カカオ豆加工物含有飲料にγ−アミノ酪酸を添加することを特徴とする、鉄分配合カカオ豆加工物含有飲料の鉄味を軽減する方法を提供するものである。
前記飲料が、カカオ豆加工物含有乳飲料又はココア飲料であってもよい。
前記飲料中のγ−アミノ酪酸が、鉄分1質量部に対して、3〜20質量部であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本技術によれば、鉄味が軽減された鉄分配合のカカオ豆加工物含有飲料を提供することができる。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本技術中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術を実施するための好適な実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。尚、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。
【0013】
<1.本技術の鉄分配合のカカオ豆加工物含有飲料>
本技術の鉄分配合のカカオ豆加工物含有飲料(以下、「本技術の飲料」ともいう)について、以下に説明する。
本技術の鉄分配合のカカオ豆加工物含有飲料は、少なくともγ−アミノ酪酸、鉄分及びカカオ豆加工物が含まれる飲料であり、γ−アミノ酪酸、鉄分及びカカオ豆加工物の各成分を同時期又は別々に配合して得ることができるものである。前記飲料は、カカオ豆加工物含有乳飲料又はココア飲料が好適である。また、本技術の鉄分配合の飲料は、機能性目的又は医薬目的として鉄分を強化する飲料であってもよい。
【0014】
〔1−1.カカオ豆加工物含有飲料〕
本技術の「カカオ豆加工物含有飲料」は、原料としてカカオ豆加工物を含む飲料であれば特に限定されず、乳飲料、ココア飲料又は清涼飲料等のいずれであってよい。
【0015】
なお、一般的に「乳飲料」とは、乳等省令(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令)では、生乳、牛乳若しくは特別牛乳又はこれらを原料として製造した食品を主要原料とした飲料であって、重量百分率で乳固形分3.0%以上の成分を含有するものとされている。なお、乳固形分含有量、その他乳成分の含有量は、乳等省令の「乳等の成分規格の試験法」に記載の各定量方法によって測定することができる。
また、一般的に「ココア飲料」は、一例として、カカオマス、ココアパウダー及びチョコレートから選ばれる1種又は2種以上を、砂糖等の甘味料、乳原料、香料と共に水に溶解して調製できるものであり、ココア飲料は清涼飲料に分類される場合もある。本技術においては、乳固形分3.0%未満のカカオ豆加工物含有飲料を「ココア飲料」とする。
【0016】
〔1−2.カカオ豆加工物〕
本技術で用いられるカカオ豆加工物とは、生のカカオ豆又は焙煎したカカオ豆から調製されたものを包含することを意味する。カカオ豆から調製されたカカオ豆加工物の例として、例えば、生又は焙煎したカカオ豆を粗砕又は粉砕したもの;当該粉砕物等から更にココアバターを除いたもの;さらに任意に付加的な加熱処理又はpH調製のための各種塩溶液処理を施したもの;さらにこれら加工処理したものからの抽出物(例えば、テオプロミン、ポリフェノール等)等が挙げられ、これらを1種又は2種以上組み合わせたものでもよい。また、原料のカカオ豆はシャル(外皮)又はジャーム(胚芽)を含んでもよく、またそれらが除去されたカカオニブ(胚乳)の形態であってもよい。好適なカカオ豆加工物の例として、シャル及びジャームを除去した後に焙煎されたカカオ豆を磨砕、搾油、粗砕、微粉砕して得られるものを含む。
【0017】
カカオ豆加工物には、抗酸化作用、血管拡張作用、ストレス抑制及びアレルギー低減等を有するポリフェノール;利尿作用及び筋弛緩作用等を有するテオプロミン;覚醒作用等を有するカフェイン等が含まれており、カカオ豆の効能として、例えば、抗老化、動脈硬化症防止、抗高血圧、冷え性改善等が期待できるといわれている。
【0018】
前記カカオ豆加工物のより具体的な例として、例えば、カカオ豆から調製される「カカオマス」;そのカカオマスからココアバターの一部を除いた「ココアパウダー」;さらにココアパウダーに、砂糖等の甘味料、乳原料、香料を含む「チョコレート」;カカオ豆抽出物(例えば、カカオポリフェノール、カカオプロテイン、カカオテオプロミン等)等が挙げられる。
【0019】
前記カカオ豆加工物含有飲料において、上述したカカオ豆加工物として、例えば、カカオマス、ココアパウダー、チョコレート及びカカオ豆抽出物等からなる群から選択される1種又は2種以上のものを組み合わせたものを、原料として使用することが好適である。
【0020】
〔1−3.鉄分〕
本技術で用いられる鉄分は、通常飲食品に用いることが可能な鉄化合物を使用すれば特に限定されず、水に可溶性又は分散性がある鉄化合物を用いることが好適である。
【0021】
鉄分は生命を維持する上で不可欠な必須微量性要素の一つであるものの、1日あたりの鉄分の摂取量が不足傾向にあり、1日当たりの鉄分の栄養所要量を充足させることが重要である。鉄分不足は、老若男女を問わず、食生活環境、生活環境、発育段階等で起こりやすく、鉄分不足になりやすい者として、例えば、乳幼児、ダイエット実施者、月経血損失のある女性、妊婦・授乳婦等が挙げられる。
鉄分欠乏症として、栄養失調、貧血、運動機能や認知機能の低下、体温保持機能の低下、免疫機能の低下等が知られている。鉄分を摂取することで、鉄分不足により起因する症状を、予防、改善、又は治療することができる。
【0022】
なお、本技術において、「予防」とは、適用対象における疾患若しくは症状の発症の防止や遅延、又は適用対象の疾患若しくは症状の発症の危険性の低下をいう。また、「改善」とは、疾患、症状又は状態の好転;悪化の防止又は遅延;進行の逆転、防止又は遅延をいう。
【0023】
前記鉄化合物としては、特に限定されないが、水溶性鉄塩が好適である。
また、前記鉄化合物として、2価鉄化合物(第一鉄)及び/又は3価鉄化合物(第二鉄)が好ましい。前記鉄化合物として、前記2価鉄化合物の具体例として、クエン酸第一鉄ナトリウム、乳酸鉄、硫酸第一鉄、フマル酸第一鉄等;また、前記3価鉄化合物の具体例として、クエン酸鉄アンモニウム、ピロリン酸第二鉄、塩化第二鉄等;等が挙げられる。
本技術の飲料において、前記鉄化合物の群から選択される1種又は2種以上のものを使用して鉄分配合の飲料とすることが可能である。これらのうち、2価鉄化合物が好ましく、さらにクエン酸鉄塩が、水溶性の観点から好ましく、これらを1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0024】
本技術の飲料は、鉄分配合の飲料であるため、上述のような鉄分の効能及び作用を期待することができ、鉄分強化飲料とすることもできる。また、本技術の飲料は、鉄化合物無添加の通常のカカオ豆加工物含有飲料の原料に上述した鉄化合物を所定量配合して調製することができるため、本技術の飲料の鉄分含有量は、当該鉄化合物無添加の通常のカカオ豆加工物含有飲料中に含まれる鉄分含有量よりも高い。
【0025】
〔1−4.γ−アミノ酪酸〕
本技術で用いられるγ−アミノ酪酸(GABA)は、飲食品に使用可能なものであれば特に由来等は制限されず、本技術の飲料の原料として、例えば、抽出・精製GABAを使用してもよいし、GABA含有製品を使用してもよく、市販品を使用してもよい。前記GABA含有製品を、本技術の効果を損なわない範囲内において、本技術の原料として使用してもよいが、当該製品よりもさらにGABA純度を高めた抽出・精製GABAを用いることが本技術のカカオ風味維持及び風味改善の観点から好ましい。
【0026】
GABAの市販品として、例えば、GABA協和(GABA含有量99.0%以上;協和発酵バイオ社製)、ファーマギャバ(商標)(ギャバ濃度20%以上;株式会社ファーマフーズ)、純γ−アミノ酪酸(GABA)(発芽玄米由来GABA。濃度100%;山口化研株式会社製)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0027】
γ−アミノ酪酸は、動植物等に広く分布しているアミノ酸であり、4−アミノ酪酸ともGABAともいわれている。γ−アミノ酪酸は、生体内では、グルタミン酸の脱炭酸によって生成され、主に抑制性の中枢神経伝達物質として重要な役割を果たしている他、血圧降下作用等を有することも知られている。
【0028】
前記GABAは、発芽玄米、茶の生葉を嫌気的に処理してGABA含有量を増大させたギャバロン茶;紅麹;酵母エキス等に比較的多く含まれるものであることが知られている。
また、前記GABAは、グルタミン酸を含有する原料を、グルタミン酸脱炭酸酵素、グルタミン酸脱炭酸酵素を有する微生物(例えば乳酸菌等)等を用いて発酵させて得られる発酵物から調製することができ、本技術の飲料において発酵由来のGABAを用いることができる。
【0029】
本技術におけるγ−アミノ酪酸を使用することで、鉄分及びカカオ豆加工物の併用で増強される鉄味を軽減することができ、これにより、鉄分及びカカオ豆加工物配合の飲料が飲みやすくなる。またγ−アミノ酪酸を使用しても、カカオ豆加工物由来の風味や製品特有の風味が損なわれることがなく、これら風味を活かしやすい。
【0030】
本技術における別の側面として、本技術のγ−アミノ酪酸は、鉄分及びカカオ豆加工物の併用で生じる鉄味を軽減する剤の有効成分として含有させることができ、また当該鉄味軽減剤を製造するために使用することができる。また、本技術は、鉄分及びカカオ豆加工物の併用で生じる鉄味軽減のためのγ−アミノ酪酸又はその使用を提供することもできる。また本技術は、γ−アミノ酪酸を配合することによって鉄味を軽減する方法を提供することも可能である。
【0031】
〔1−5.各成分の含有量〕
本技術の飲料中におけるカカオ豆加工物の含有量は、特に限定されないが、飲料中、ココアパウダー換算で、その下限値として好ましくは0.1g/飲料100g以上、より好ましくは0.5g/飲料100g以上、さらに好ましくは1.0g/飲料100g以上である。コスト及び飲料の風味等の観点から、カカオ豆加工物の含有量の上限値としては、好ましくは5.0g/飲料100g以下、より好ましくは3.0g/飲料100g以下、さらに好ましくは2.0g/飲料100g以下である。カカオ豆加工物の含有量の数値範囲として、より好ましくは0.5〜3.0g/飲料100g、さらに好ましくは1.0〜2.0g/飲料100gである。これにより、カカオ豆加工物の呈味及び風味をより好適に得ることができる。
【0032】
本技術の飲料中における鉄分の総含有量は、特に限定されないが、飲料中、その下限値として好ましくは0.3mg/飲料100g以上、より好ましくは0.4mg/飲料100g以上、さらに好ましくは0.5mg/飲料100g以上、よりさらに好ましくは0.7mg/飲料100g以上である。コスト及び飲料の風味等の観点から、鉄分の含有量の上限値としては、好ましくは7mg/飲料100g以下、より好ましくは6mg/飲料100g以下、さらに好ましくは5mg/飲料100g以下、よりさらに好ましくは4.5mg/飲料100g以下、よりさらに好ましくは3.0mg/飲料100g以下、よりさらに好ましくは2.0mg/飲料100g以下、よりさらに好ましくは1.5mg/飲料100g以下である。鉄分の含有量の数値範囲として、より好ましくは0.3〜5mg/飲料100g、さらに好ましくは0.4〜3.5mg/飲料100gであり、よりさらに好ましくは0.5〜3.0mg/飲料100gである。これにより、鉄分の効能、並びにカカオ豆加工物の呈味及び風味をより好適に得ることができる。
【0033】
本技術の飲料は、鉄化合物を、通常のカカオ豆加工物含有飲料の原料に配合して調製されるため、当該通常のカカオ豆加工物含有飲料よりも鉄分含有量は高くなっており、鉄分の効能をより期待することができる。
なお、鉄分は、ICP分光分析方法で測定可能である。
【0034】
本技術の飲料における鉄分が上述の好適な含有量になるように、飲料原料に鉄化合物を配合(添加)することが好ましい。
本技術の飲料原料に配合する鉄酸化物中の鉄分の配合(添加)量は、配合量の下限値として好ましくは0.2mg/飲料100g以上、より好ましくは0.3mg/飲料100g以上であり、より好ましくは0.4mg/飲料100g以上であり、配合量の上限値として好ましくは3.0mg/飲料100g以下、より好ましくは2.0mg/飲料100g以下、その範囲としてより好ましくは0.2〜3.0mg/飲料100g、さらに好ましくは0.3〜2.0mg/飲料100gである。
【0035】
本技術の飲料中におけるγ−アミノ酪酸の含有量は、特に限定されないが、飲料中、その下限値として好ましくは0.001g/飲料100g以上、より好ましくは0.003g/飲料100g以上、さらに好ましくは0.004g/飲料100g以上、よりさらに好ましくは0.005g/飲料100g以上である。コスト及び飲料の風味等の観点から、γ−アミノ酪酸の含有量の上限値としては、好ましくは1g/飲料100g以下、より好ましくは0.1g/飲料100g以下、さらに好ましくは0.05g/飲料100g以下、よりさらに好ましくは0.01g/飲料100g以下である。γ−アミノ酪酸の含有量の数値範囲として、より好ましくは0.003〜0.03g/飲料100g、さらに好ましくは0.003〜0.01g/飲料100g、よりさらに0.005〜0.007g/飲料100gである。これにより、飲料の鉄味、並びにカカオ豆加工物の呈味及び風味をより好適に軽減することができる。
また、飲料原料に配合(添加)するγ−アミノ酪酸の配合量は、特に限定されないが、好ましくは0.003〜0.03g/飲料100g、より好ましくは0.003〜0.01g/飲料100g、さらに0.005〜0.007g/飲料100gである。
【0036】
本技術の飲料は、γ−アミノ酪酸を、通常のカカオ豆加工物含有飲料の原料に配合して調製されるため、当該通常のカカオ豆加工物含有飲料よりもγ−アミノ酪酸含有量は高くなっており、γ−アミノ酪酸の効能もより期待することができる。
なお、γ−アミノ酪酸は、ニンヒドリンによるポストカラム検出法で測定することができる。
【0037】
また、本技術のγ−アミノ酪酸は、本技術の飲料の鉄味を軽減することが可能であるので、この効果をより得るために、飲料中に含有する鉄分1質量部に対して、飲料中に含有するγ−アミノ酪酸(GABA/鉄分の質量含有比)は、その下限値として好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは4質量部以上、よりさらに好ましくは5質量部以上である。コスト等の観点から、この上限値としては、好ましくは40質量部以下、より好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下、よりさらに好ましくは15質量部以下である。この数値範囲として、鉄分1質量部に対して、より好ましくは3〜20質量部、さらに好ましくは3〜15質量部、よりさらに好ましくは7〜15質量部である。
このように鉄分に対してγ−アミノ酪酸を(GABA/鉄分の質量含有比)になるように使用することにより、飲料の鉄味をより効率よく好適に軽減することができ、またカカオ豆加工物の呈味及び風味をより活かしやすい。
【0038】
本技術の飲料には、本技術の効果を損なわない範囲内で、適宜、任意成分を用いることができる。当該任意成分として、例えば、乳・乳製品、油脂類(動植物性)、食物繊維、乳化剤、安定化剤、増粘剤、糖類、糖アルコール類、多糖類、pH調整剤、脂肪酸エステル類、矯味矯臭剤、香料、賦形剤等が挙げられる。
【0039】
乳・乳製品とは、一般的に乳・乳製品として使用されるものであれば特に限定されず、例えば、生乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリーム、バター、バターオイル、チーズ、濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、発酵乳、発酵乳パウダー、ブルククラム、ブロックミルク等が挙げられる。一般的に、ウシ由来の乳・乳製品(具体的には、牛乳等)が多く利用されている。本技術の飲料には、これらを1種又は2種以上含むものが好適である。
本技術の飲料における乳・乳製品の含有量は、特に限定されないが、飲料中、好ましくは1〜20g/飲料100g程度であり、乳飲料の場合、より好ましくは5〜20g/飲料100gである。また、乳飲料の場合、乳固形分は3〜7g/飲料100g程度が好適である。
【0040】
植物性脂肪分としては、例えば、植物油(例えば、ココアバター、ココナッツオイル等)等が挙げられ、本技術の飲料には、これらを1種又は2種以上含むものが好適である。
本技術の飲料における植物性油分の含有量は、特に限定されないが、飲料中、好ましくは0.1〜5g/飲料100g程度、より好ましくは0.5〜2g/飲料100gである。
【0041】
〔1−6.本技術の飲料及びその製造方法〕
本技術の飲料の製造方法は、特に限定されず、公知のカカオ豆加工物含有飲料の製造方法を利用して行うことができる。本技術の鉄分配合のカカオ豆加工物含有飲料の製造方法は、γ−アミノ酪酸を配合する工程を含むものである。
本技術のカカオ豆加工物含有飲料の製造工程として、例えば、カカオ豆加工物等の原料を混合して原料液を調製する工程、該原料液を加熱殺菌又は除菌(膜処理等)する工程、殺菌又は除菌した原料液を容器に充填する工程等が挙げられるが、本技術においてこれに限定されない。
また、本技術において、乳成分添加の場合には、カカオ加工物含有飲料の製造工程中のいずれの工程でもよく、例えば、原料液調製工程等が挙げられるが、これに特に限定されない。
【0042】
また、本技術の飲料の製造方法では、均質化処理をすることが好適である。当該均質化処理は、常法により行うことができる。例えば、ホモジナイザーを用い、65〜80℃の条件下、5〜25MPaの圧力で均質化する方法を例示することができるが、これに限定されない。
本技術の加熱殺菌又は除菌工程は、常法の加熱殺菌又は除菌により行うことができる。加熱殺菌の場合、通常は120〜150℃で1〜120秒間、飲料風味の観点からより好ましくは120〜140℃1〜3秒間程度であり、UHT殺菌(Ultra-High Temperature pasteurization)を行ってもよい。
本技術の充填工程は、常法により行うことができ、本技術の飲料に使用する飲料容器として、例えば、紙パック、PET容器、缶、ビン等が挙げられるが、これに限定されない。
【0043】
本技術の飲料の製造方法において、本技術の飲料に含まれる各成分の添加は、カカオ加工物含有飲料の製造工程中のいずれの工程でもよく、特に限定されず、例えば、調製工程での添加が挙げられ、また、各成分は上述したような含有量等に適宜調整することができる。
さらに、本技術において、鉄分及び/又はγ−アミノ酪酸の添加は、カカオ加工物含有飲料の製造工程中のいずれの工程でもよく、特に限定されず、例えば、調製工程で添加してもよいし、加熱殺菌工程後に添加してもよいし、容器充填工程前に添加してもよい。また、鉄分及び/又はγ−アミノ酪酸の添加工程は、添加後に加熱殺菌工程を行うことも可能である。また、鉄分及びγ−アミノ酪酸は、別々に又は同時期に添加してもよい。
さらに、本技術の飲料の製造方法において、γ−アミノ酪酸、鉄化合物、及びカカオ豆加工物を混合して原料液を調製する工程を少なくとも含むことが好ましい。
【0044】
上述のようにして得られた本技術の飲料は、γ−アミノ酪酸によって、舌が感じる鉄味を軽減することができる。
【0045】
〔1−7.カカオ豆加工物含有飲料用組成物〕
なお、本技術に係る飲料は、最終的に水等を配合して飲料として用いることができる飲料用組成物の形態にすることができる。当該飲料用組成物の形態は、最終的に飲料として用いる限りにおいて、液体、固体、粉体、顆粒、スラリー状、カプセル、チュアブル、錠剤等いずれの状態でもよく、その形態は特に限定されないが、液体、粉体、顆粒のいずれかであることが好適である。
また、本技術の飲料用組成物の最終形態は、液状又は流動状(例えば、ゼリー飲料、流動食等)にして喫食することが好適である。また、当該最終形態は、飲料であることが好適である。本技術の飲料用組成物は、飲むときに用法に従って飲料にする形態(例えば、濃縮液、顆粒状、固形状等)でもよく、当該用法の一例として「本品1つに対して冷水又は湯(190mL)を注いで飲料とし、これを飲む」等がある。
【0046】
また、本技術の飲料用組成物の製造方法は、特に限定されず、公知のカカオ豆加工物含有飲料用組成物の製造方法を利用して行うことができる。本技術の飲料用組成物は、上述した飲料の製造方法で飲料の形態として得ることもでき、また、本技術の飲料用組成物は、上述した調製工程後に、原料液を濃縮又は乾燥(スプレードライ方式、フリーズドライ方式等)を行う工程;各乾燥原料を混合する工程等の工程によって得ることができるが、これに限定されるものではない。また、本技術の飲料用組成物は、容器(プラスチック容器、袋、缶、ビン等)又は個別包装用容器に充填されていてもよい。
【0047】
〔1−8.本技術の用途(飲食品用等)〕
また、本技術は、鉄味が軽減された美味しく飲みやすい飲料であり、上述したように、使用する鉄分、カカオ豆加工物、GABAの各原料に、種々の効能が期待でき、種々の効能を得るための方法又は使用等を提供することもができる。また、本技術は、カカオ豆加工物を含むためカカオの呈味及び風味が良好な鉄分強化飲料とすることができると共に、この鉄味をGABAによって軽減することも可能である。本技術の飲料には流動状の流動食も含むことが可能である。
【0048】
前記飲食品は、液状、ペースト状、固体、粉末等の形態を問わず、錠菓、流動食、飼料(ペット用を含む)等が挙げられる。
【0049】
飲料類としては、本技術の効果を損なわない範囲内のものであればよく、例えば、炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等が挙げられる。
【0050】
また、本技術で定義される飲食品は、保健用途が表示された飲食品として提供・販売されることも可能である。
「表示」行為には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本技術の「表示」行為に該当する。
【0051】
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
【0052】
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
【0053】
また、「表示」には、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、医薬用部外品等としての表示も挙げられる。この中でも特に、消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品制度、これに類似する制度にて認可される表示等が挙げられる。後者の例としては、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク減少表示等を挙げることができる。より具体的には、健康増進法施行規則(平成15年4月30日日本国厚生労働省令第86号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)及びこれに類する表示が典型的な例である。
【0054】
また、本技術は、以下の構成を採用することも可能である。
〔1〕
γ−アミノ酪酸を含む、鉄分配合のカカオ豆加工物含有飲料。
〔2〕
前記飲料が、カカオ豆加工物含有乳飲料又はココア飲料である、前記〔1〕記載の飲料。
〔3〕
前記飲料中のγ−アミノ酪酸が、鉄分1質量部に対して、3〜20質量部である前記〔1〕又は〔2〕記載の飲料。
〔4〕
前記飲料の形態が、顆粒状、濃縮液、固体状、液状又はスラリー状である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の飲料。
〔5〕
前記飲料が、飲食時の鉄味が軽減されたものである、前記〔1〕〜〔4〕のいずれか記載の飲料。
〔6〕
γ−アミノ酪酸を含む、鉄分配合のカカオ豆加工物含有飲料の製造方法、又は、γ−アミノ酪酸、鉄化合物、及びカカオ豆加工物を混合して原料液を調製する工程、を含むカカオ豆加工物含有飲料の製造方法。
前記飲料が、カカオ豆加工物含有乳飲料又はココア飲料であることが好適である。
前記飲料中のγ−アミノ酪酸が、鉄分1質量部に対して、3〜20質量部であることが好適である。
前記飲料の形態が、顆粒状、濃縮液、固体状、液状又はスラリー状であることが好適である。
前記飲料が、飲食時の鉄味が軽減されたものが好適である。
〔7〕
前記γ−アミノ酪酸が、飲料の鉄味を軽減する、前記〔1〕〜〔6〕のいずれか記載の飲食品用組成物。
〔8〕
γ−アミノ酪酸を配合する鉄味軽減方法、又は、鉄分配合カカオ豆加工物含有飲料にγ−アミノ酪酸を添加することを特徴とする鉄分配合カカオ豆加工物含有飲料の鉄味を軽減する方法。
〔9〕
γ−アミノ酪酸を有効成分とする、鉄分及びカカオ豆加工物併用により生じる鉄味を軽減する剤。
〔10〕
鉄分及びカカオ豆加工物含有飲料の鉄味軽減剤を製造するための、γ−アミノ酪酸又はその使用。
〔11〕
鉄分及びカカオ豆加工物併用により生じる鉄味を軽減するための、γ−アミノ酪酸又はその使用。
【実施例】
【0055】
以下、実施例等に基づいて本技術をさらに詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例等は、本技術の代表的な実施例等の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0056】
〔実施例1〜4及び基準例1:鉄分配合のカカオ豆加工物含有乳飲料〕
下記表1に示す配合組成で各成分を精製水に溶解させ全量を4000mLとした。前記溶解液を85℃で6分加温保持後、15MPaで均質化、130℃で2秒間加熱殺菌し、ペットボトルに充填した実施例1〜4の液体飲料(GABAを含む鉄分配合のカカオ豆加工物含有乳飲料)及び基準(基準例1)の液体飲料(GABA無添加で、鉄分配合のカカオ豆加工物含有乳飲料)を得た。
このときのココアパウダー入りの乳飲料の配合設計は、乳脂肪分0.1〜1.0g/飲料100g、植物性脂肪分1.0〜1.5g/飲料100g、無脂乳固形分4.0〜6.0g/飲料100gであった。また、製品中に含まれる総鉄分1質量部に対して、製品中に含まれるGABAは、実施例1では7.14質量部、実施例2では10質量部、実施例3では14質量部、実施例4では4.67質量部であった。
【0057】
なお、ココアパウダー由来の鉄分量は、ココアパウダーをICP発光分光装置(アジレント・テクノロジー社製)で測定し、製品中の総鉄分は、表1に示すようにココアパウダー由来の鉄分量と添加鉄化合物由来の鉄分量の合計値である。
また、基準例1のGABA含有量は、ニンヒドリンによるポストカラム検出法(株式会社日立ハイテクノロジーズ)で測定し、検出限界以下であった。
【0058】
〔評価〕
専門パネラー6名にて、基準例の飲料で感じる鉄味を基準(コントロール)として、この基準の鉄味との対比で、各飲料の鉄味の評価を行い、その評価点の平均値を表1及び2の評価欄に記載した。
【0059】
評価基準:評点
基準例よりも鉄味が弱い :5点
基準例よりも鉄味がやや弱い :4点
基準例と鉄味が同じ :3点
基準例よりも鉄味がやや強い :2点
基準例よりも鉄味が強い :1点
【0060】
【表1】
【0061】
〔実施例5〜8及び基準:鉄分配合のココア飲料〕
下記表2に示す配合組成で各成分を精製水に溶解させ全量を4000mLとした。前記溶解液を85℃で6分加温保持後、15MPaで均質化、130℃で2秒間加熱殺菌し、ペットボトルに充填した実施例5〜8の液体飲料(GABAを含む鉄分配合のカカオ飲料)及び基準の液体飲料(GABA無添加で、鉄分配合のカカオ飲料)を得た。
このときのココア飲料の配合設計は、植物性脂肪分1.0〜1.5g/飲料100g、無脂乳固形分1.0〜2.9g/飲料100gであった。また、製品中に含まれる総鉄分1質量部に対して、製品中に含まれるGABAは、実施例5では7.14質量部、実施例6では10質量部、実施例7では14質量部、実施例8では4.67質量部であった。
【0062】
なお、ココアパウダー由来の鉄分量は、ココアパウダーをICP発光分光装置(アジレント・テクノロジー社製)で測定し、製品中の総鉄分は、表2に示すようにココアパウダー由来の鉄分量と添加鉄化合物由来の鉄分量の合計値である。
また、基準例2のGABA含有量は、ニンヒドリンによるポストカラム検出法(株式会社日立ハイテクノロジーズ)で測定し、検出限界以下であった。
【0063】
【表2】
【0064】
〔考察〕
実施例1〜4の乳飲料及び実施例5〜8のココア飲料のいずれにおいても、GABAを含有させることで鉄味を軽減させることができた。さらに、実施例1〜8の飲料のいずれにおいても、カカオ豆加工物特有の呈味及び風味も良好であった。
このことから、GABAを含有させることで、鉄味が軽減された鉄分配合のカカオ豆加工物含有飲料を提供することができる。また、GABA及び鉄分を含有させても、カカオ豆加工物特有の呈味及び風味も良好である。
【0065】
さらに、基準例の鉄分配合量の約2倍になった実施例4の乳飲料及び実施例8のココア飲料でも、GABAを含有させることで基準例よりも鉄味を軽減することができた。また、実施例1〜8において、製品中に含まれる鉄分1質量部に対して、製品中のGABAは、4.6質量部以上で良好な鉄味軽減効果が得られ、14質量部以下において特に飲料の風味に影響はなく、10及び14質量部でより良好な鉄味軽減効果が得られた。
このことから、GABAの鉄味軽減作用は非常に優れたものであるといえる。
【要約】
【課題】 鉄味が軽減された鉄分配合のカカオ豆加工物含有飲料を提供することを主な目的とする。
【解決手段】 γ−アミノ酪酸を含む、鉄分配合のカカオ豆加工物含有飲料;γ−アミノ酪酸、鉄化合物、及びカカオ豆加工物を混合して原料液を調製する工程、を含むカカオ豆加工物含有飲料の製造方法;鉄分配合カカオ豆加工物含有飲料にγ−アミノ酪酸を添加することを特徴とする、鉄分配合カカオ豆加工物含有飲料の鉄味を軽減する方法。 カカオ豆加工物含有乳飲料又はココア飲料であってもよい。
【選択図】 なし