特許第6498857号(P6498857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6498857表示素子前面用フィルムおよび表面部材付き表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498857
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】表示素子前面用フィルムおよび表面部材付き表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20190401BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20190401BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20190401BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20190401BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20190401BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   G02B5/02 B
   G02F1/1335
   G09F9/00 313
   H05B33/02
   H05B33/14 A
   H05B33/14 Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-66834(P2012-66834)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-200332(P2013-200332A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2015年3月10日
【審判番号】不服2017-12856(P2017-12856/J1)
【審判請求日】2017年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000125978
【氏名又は名称】株式会社きもと
(74)【代理人】
【識別番号】100111419
【弁理士】
【氏名又は名称】大倉 宏一郎
(72)【発明者】
【氏名】柴田 寛
(72)【発明者】
【氏名】早川 亮平
【合議体】
【審判長】 中田 誠
【審判官】 河原 正
【審判官】 宮澤 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−98809(JP,A)
【文献】 特開2010−66761(JP,A)
【文献】 特開平10−217380(JP,A)
【文献】 特開2005−265863(JP,A)
【文献】 特開平10−282312(JP,A)
【文献】 特開平10−73719(JP,A)
【文献】 特開平9−265004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00-5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示素子上に設けられる表面部材の少なくとも一部に用いられる表示素子前面用フィルムであって、
透明基材上に機能層を有してなり、
前記機能層はバインダー成分およびマット剤を含み、
前記バインダー成分は、電離放射線硬化型樹脂と、ガラス転移温度45℃以上かつ重量平均分子量7万以上である熱可塑性樹脂とを含み、前記バインダー成分中における各成分の重量割合が、前記電離放射線硬化型樹脂が50重量%以上71重量%以下、前記熱可塑性樹脂の重量割合が29重量%以上50重量%以下であり、
前記マット剤は、粒子径分布の変動係数が15%以下である、
表示素子前面用フィルムの全光線透過率(JISK7361−1:1997)が90%以上、ヘーズ(JIS K7136:2000)が10%以下
であることを特徴とする表示素子前面用フィルム。
【請求項2】
前記マット剤の含有量が、前記バインダー成分100重量部に対して0.35重量部以上1重量部以下であることを特徴とする請求項1記載の表示素子前面用フィルム。
【請求項3】
前記マット剤の平均粒子径が0.5〜10μmであることを特徴とする請求項1又は2記載の表示素子前面用フィルム。
【請求項4】
前記機能層が防眩層またはニュートンリング防止層であることを特徴とする請求項1から3何れか1項記載の表示素子前面用フィルム。
【請求項5】
表示素子上に表面部材を有してなり、前記表面部材の少なくとも一部に、請求項1から4何れか1項記載の表示素子前面用フィルムを含むことを特徴とする表面部材付き表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子、CRT表示素子、プラズマ表示素子、EL表示素子等の各種表示素子の前面に用いられるフィルム、およびこれを含む表面部材付き表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示素子やプラズマ表示素子等の表示素子上には、その表面を保護するとともに、その画面への外部光の映り込みによる眩しさからくる見にくさを防止するために、基材上に表面凹凸処理を施した防眩性フィルムが用いられている。そして、このような基材上に施される表面凹凸処理としては、マット剤となる粒子を含有させた防眩層が一般に用いられている。
【0003】
しかし、各種表示素子の高精細化が進んだ結果、このようなマット剤を含む防眩層を備えた従来の防眩性フィルムを表示素子上に使用すると、防眩層に含有されている粒子が中心となって形成されるレンズ形状を原因としてスパークルと呼ばれるぎらつき現象が発生し、高精細化されたカラー画面がぎらついて見えてしまうという問題が生じるようになってきた。
【0004】
また、表示素子上に設けられる表面部材としては、上述した防眩性フィルムのほかにもタッチパネルなどがある。これら表面部材は、表面部材と表示素子との間隔、および表面部材を構成する部材どうしの間隔が部分的に狭まることを原因として、ニュートンリングが発生するという問題がある。このため、表面部材を構成する材料には、マット剤を含むニュートンリング防止層が設けられているが、上述した防眩層と同様の問題(スパークルの発生)を生じている。
【0005】
このように、防眩性やニュートンリング防止性を発現する上でマット剤は必要なものではあるが、当該マット剤を中心として形成されるレンズによりスパークルが発生してしまい、防眩性又はニュートンリング防止性と、スパークル防止性とを同時に満足することは困難であった。
【0006】
この問題を解決するため、ニュートンリング防止層に電離放射線硬化型樹脂以外の他の樹脂成分を含有させる手段(特許文献1)、ニュートンリング防止層中のマット剤の粒子径分布の変動係数を大きくする手段(特許文献2)が開示されている。
【0007】
特許文献1の発明は、電離放射線硬化型樹脂によって形成される「うねり」の形状を他の樹脂成分で微妙に緩やかにすることによって、マット剤を中心として形成されるレンズを小さくし、当該課題を解決したものである。特許文献2の発明は、粒子径がそろったマット剤により光が均一に散乱することを、粒子径がばらついたマット剤を用いることにより防止し、当該課題を解決したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−265863号公報(段落番号0027,0043)
【特許文献2】特開2005−265864号公報(段落番号0027)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1および2の発明は、近年さらに高精細化されてきたカラーの表示素子に対して必ずしもスパークルを防止できるものではなかった。
【0010】
そこで本発明は、防眩性やニュートンリング防止性と、スパークル防止性とを同時に満足できる表示素子前面用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の表示素子前面用フィルムは、表示素子上に設けられる表面部材の少なくとも一部に用いられる表示素子前面用フィルムであって、透明基材上に機能層を有してなり、前記機能層はバインダー成分およびマット剤を含み、前記バインダー成分は、電離放射線硬化型樹脂と、ガラス転移温度45℃以上かつ重量平均分子量7万以上である熱可塑性樹脂とを含み、前記バインダー成分中における各成分の重量割合が、前記電離放射線硬化型樹脂が50重量%以上71重量%以下、前記熱可塑性樹脂の重量割合が29重量%以上50重量%以下であり、前記マット剤の粒子径分布の変動係数が15%以下である、表示素子前面用フィルムの全光線透過率(JISK7361−1:1997)が90%以上、ヘーズ(JIS K7136:2000)が10%以下であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の表示素子前面用フィルムは、前記マット剤の平均粒子径が0.5〜10μmであることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の表示素子前面用フィルムは、前記機能層が防眩層またはニュートンリング防止層であることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の表面部材付き表示素子は、表示素子上に表面部材を有してなり、前記表面部材の少なくとも一部に、本発明の表示素子前面用フィルムを含むことを特徴とするものである。
【0015】
なお、本発明でいう「粒子径分布の変動係数」および「平均粒子径」はコールターカウンター法により算出される値である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の表示素子前面用フィルムによれば、防眩性とスパークル防止性とを同時に満足することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の表示素子前面用フィルムの一実施形態を示す断面図
図2】従来の表示素子前面用フィルムの一例を示す断面図
図3】本発明の表面部材付き表示素子の一実施形態を示す断面図
図4】本発明の表面部材付き表示素子の他の実施形態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明の表示素子前面用フィルムについて説明する。本発明の表示素子前面用フィルムは、透明基材上に機能層を有してなり、前記機能層はバインダー成分およびマット剤を含み、前記バインダー成分は、電離放射線硬化型樹脂と、ガラス転移温度45℃以上かつ重量平均分子量7万以上である熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂とを含み、前記バインダー成分中における各成分の重量割合が、前記電離放射線硬化型樹脂が50重量%以上85重量%未満、前記熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂の重量割合が15重量%を超えて50重量%以下であり、前記マット剤は、粒子径分布の変動係数が15%以下であることを特徴とするものである。
【0019】
図1は、本発明の表示素子前面用フィルム1の実施の形態を示す断面図である。図1は透明基材11上に、バインダー成分121およびマット剤122を含む機能層12を有している。
【0020】
透明基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、アクリルなどがあげられる。これらの中でも、延伸加工、特に二軸延伸加工されたポリエチレンテレフタレートフィルムが、機械的強度や寸法安定性に優れる点で好ましい。
【0021】
透明基材は、表面にコロナ放電処理を施したり、易接着層を設けることによって機能層との接着性を向上させたものも好適に用いられる。透明基材の厚みとしては、一般には25〜500μmであり、好ましくは50〜200μmである。
【0022】
機能層としては、防眩層、ニュートンリング防止層などがあげられる。このような機能層は、バインダー成分およびマット剤を含むものを用いる。
【0023】
機能層のバインダー成分は電離放射線硬化型樹脂を含む。電離放射線硬化型樹脂は、電離放射線(紫外線または電子線)の照射によって架橋硬化することができる光重合性プレポリマーから形成することができ、この光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマーが特に好ましく使用される。このアクリル系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート、ポリフルオロアルキルアクリレート、シリコーンアクリレート等が使用できる。さらにこれらのアクリル系プレポリマーは単独でも使用可能であるが、架橋硬化性を向上させ機能層の硬度をより向上させるために、光重合性モノマーを加えることが好ましい。
【0024】
光重合性モノマーとしては、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート等の単官能アクリルモノマー、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート等の2官能アクリルモノマー、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等の多官能アクリルモノマー等の1種若しくは2種以上が使用される。
【0025】
機能層は、上述した光重合性プレポリマーおよび光重合性モノマーを紫外線で硬化させるために、光重合開始剤や光重合促進剤等の添加剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α−アシルオキシムエステル、チオキサンソン類等があげられる。
【0026】
また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合障害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどがあげられる。
【0027】
また、電離放射線硬化型樹脂として、電離放射線硬化型有機無機ハイブリッド樹脂を用いてもよい。
【0028】
機能層がマット剤を含み、かつバインダー成分として電離放射線硬化型樹脂を含んでいると、マット剤を中心として「うねり」が発生することによりレンズ形状が形成され(図2)、スパークルが発生してしまう。そこで、本発明では、電離放射線硬化型樹脂に、ガラス転移温度45℃以上かつ重量平均分子量7万以上の熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂を含有させることにより、うねりの発生を抑制し(図1)、スパークルの発生を防止している。このような効果を生じる理由は、以下のように考えられる。
【0029】
まず、電離放射線硬化型樹脂単独の場合、当該樹脂が乾燥、硬化する過程で流動することで「うねり」が形成されると考えられる。ここにガラス転移温度45℃以上かつ重量平均分子量7万以上の熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂を加えると、電離放射線硬化型樹脂の流動が抑制され、「うねり」の発生が抑制されると考えられる。
【0030】
このような熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂としては、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等があげられる。熱可塑性樹脂と熱硬化型樹脂とを比較すると、表面形状を調整しやすく、取扱い性に優れるという点で熱可塑性樹脂が好適である。
【0031】
また、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂に(メタ)アクリロイル基を導入しても良い。(メタ)アクリロイル基を導入することで電離放射線硬化型樹脂と強固に結合することができる。
【0032】
熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂は、上述したようにガラス転移温度45℃以上、重量平均分子量は70000以上のものを用いる。ここで、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂のガラス転移温度は80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。また、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂の重量平均分子量は80000以上であることが好ましい。
【0033】
バインダー成分中における電離放射線硬化型樹脂の重量割合は、50重量%以上85重量%未満である。また、バインダー成分中における熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂の重量割合は、15重量%を超えて50重量%以下である。熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂を15重量%を超す量とすることにより、うねりの発生を十分に抑制してスパークルを防止することができ、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂を50重量%以下とすることにより、必要以上に熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂を含むことによる塗膜強度の低下を防止することができる。
【0034】
なお、バインダー成分中における電離放射線硬化型樹脂の重量割合は、下限で60重量%以上であることが好ましく、上限で80重量%以下であることが好ましく、75重量%以下であることがさらに好ましい。また、バインダー成分中における熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂の重量割合は、下限で20重量%以上であることが好ましく、25重量%以上であることがより好ましく、上限で40重量%以下であることが好ましい。
【0035】
マット剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、シリカ、カオリン、クレー、タルク等の無機粒子や、アクリル樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリウレタン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、エポキシ樹脂粒子等の樹脂粒子があげられる。このような微粒子としては、取扱い性、および表面形状の制御のしやすさという観点から球形の微粒子を用いることが好ましい。また、樹脂粒子は、バインダー成分と屈折率差を近づけやすく、スパークルの発生を防止しやすいとともに、透明性を阻害しづらい点で好適である。
【0036】
本発明では、マット剤の粒子径分布の変動係数が15%以下、好ましくは10%以下のものを用いる。マット剤の粒子径分布の変動係数を15%以下とすることにより、局所的な大きな凸部を原因とするスパークルの発生を防止できる。なお、微粒子の粒子径分布の変動係数とは、微粒子の粒子径分布のバラツキ状態を示す値であって、粒子径分布の標準偏差を平均粒子径で除した値の百分率である。
変動係数=(不偏分散の平方根)/(算術平均値)×100%
【0037】
マット剤の平均粒子径は、機能層の厚みによって異なるため一概にはいえないが、0.5μm以上が好ましく、1μm以上であることがより好ましい。また、マット剤の平均粒子径は、大きすぎるとスパークルを誘発する傾向にあるため、10μm以下が好ましく、8μm以下がさらに好ましい。
【0038】
マット剤の含有量は、バインダー成分100重量部に対して0.05重量部以上が好ましく、0.1重量部以上がより好ましい。また、マット剤の含有量は、多すぎるとスパークルを誘発する傾向にあるため、バインダー成分100重量部に対して5重量部以下が好ましく、3重量部以下がより好ましく、1重量部以下がさらに好ましい。
【0039】
機能層中には、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの添加剤を添加してもよい。
【0040】
機能層は、上述した機能層を構成するバインダー成分やマット剤などを含む組成物を、透明基材上に塗布、乾燥、電離放射線照射することにより、形成することができる。
【0041】
表示素子前面用フィルムは、スパークルを防止するため、全光線透過率(JIS K7361−1:1997)が90%以上、へーズ(JIS K7136:2000)が10%以下であることが好ましい。
【0042】
次に、本発明の表面部材付き表示素子を説明する。本発明の表面部材付き表示素子は、表示素子上に表面部材を有してなり、前記表面部材の少なくとも一部に、本発明の表示素子前面用フィルムを含むことを特徴とするものである。
【0043】
表示素子しては、液晶表示素子、CRT表示素子、プラズマ表示素子、EL表示素子等があげられる。
【0044】
表面部材としては、保護板、タッチパネル、偏光板などがあげられる。本発明ではこれら表面部材の少なくとも一部に、上述した本発明の表示素子前面用フィルムを含む。
【0045】
例えば、表面部材が保護板2の場合、保護板2の表面側に、防眩性フィルムとして本発明の表示素子前面用フィルム1を積層した構成(図3)、保護板2の背面側に、ニュートンリング防止フィルムとして本発明の表示素子前面用フィルム1を積層した構成(図4)があげられる。また、本発明の表示素子前面用フィルム自体を、防眩性及び/又はニュートンリング防止性を有する保護板として、表示素子上に設けてもよい。
【0046】
また、表面部材がタッチパネル2の場合、タッチパネル2の表面側に、防眩性フィルムとして本発明の表示素子前面用フィルム1を積層した構成(図3)、タッチパネル2の背面側に、ニュートンリング防止フィルムとして本発明の表示素子前面用フィルム1を積層した構成(図4)などがあげられる。また、本発明の表示素子前面用フィルム自体を、防眩性フィルムとしてタッチパネルの最表面の部材として用いる構成もあげられる。また、本発明の表示素子前面用フィルム自体を、ニュートンリング防止フィルムとしてタッチパネルの最表面、中間、最背面の部材として用いる構成もあげられる。
【0047】
また、表面部材が偏光フィルム2の場合、偏光フィルム2の表面側に、防眩性フィルムとして本発明の表示素子前面用フィルムを貼り合わせた構成(図3)などがあげられる。
【0048】
以上のような本発明の表面部材付き表示素子は、所定の機能(防眩性、ニュートンリング防止性等)を備えつつ、スパークルを防止することができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施形態をより具体化した実施例を挙げ、さらに詳細に説明する。なお、本実施例において「部」、「%」は、特に示さない限り重量基準である。
【0050】
[実施例1]
厚み125μmの透明ポリエステルフィルム(コスモシャインA4350:東洋紡績社)の一方の面に、下記処方のニュートンリング防止層塗布液aを塗布、乾燥、紫外線照射し、厚み3μmのニュートンリング防止層を形成し、実施例1の表示素子前面用フィルムを得た。
【0051】
<ニュートンリング防止層塗布液a>
・電離放射線硬化型樹脂 125部
(ユニディック17-813:DIC社、固形分80%)
・熱可塑性アクリル樹脂
(アクリディックA195:DIC社、固形分40%) 107部
(ガラス転移温度:94℃、重量平均分子量:85000)
・光重合開始剤 3部
(イルガキュア184:チバ・ジャパン社)
・アクリル樹脂粒子 0.7部
(MX−500:綜研化学工業社)
(平均粒子径:5μm,変動係数:9%)
・希釈溶剤 200部
【0052】
参考例
ニュートンリング防止層塗布液aの熱可塑性アクリル樹脂の添加量を65部に変更した以外は、実施例1と同様にして参考例の表示素子前面用フィルムを得た。
【0053】
[実施例
ニュートンリング防止層塗布液aの熱可塑性アクリル樹脂の添加量を250部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例の表示素子前面用フィルムを得た。
【0054】
[実施例
ニュートンリング防止層塗布液aの熱可塑性アクリル樹脂を下記の材料に変更し、添加量を95部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例の表示素子前面用フィルムを得た。
・熱可塑性アクリル樹脂
(アクリディックA166:DIC社、固形分45%)
(ガラス転移温度:49℃、重量平均分子量:75000)
【0055】
[実施例
ニュートンリング防止層塗布液aのアクリル樹脂粒子を下記の材料に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例の表示素子前面用フィルムを得た。
・アクリル樹脂粒子
(テクポリマーSSX−105:積水化成品工業社)
(平均粒子径:5.3μm,変動係数:8.5%)
【0056】
[実施例
ニュートンリング防止層塗布液aの熱可塑性アクリル樹脂を下記の材料に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例の表示素子前面用フィルムを得た。
・熱可塑性アクリル樹脂
(アクリディックWDL−787:DIC社、固形分40%)
(ガラス転移温度:90℃、重量平均分子量:72000)
【0057】
[比較例1]
ニュートンリング防止層塗布液aの熱可塑性アクリル樹脂を下記の材料に変更し、添加量を85部に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例1の表示素子前面用フィルムを得た。
・熱可塑性アクリル樹脂
(アクリディック49-394-IM:DIC社、固形分50%)
(ガラス転移温度:16℃、重量平均分子量:65000)
【0058】
[比較例2]
ニュートンリング防止層塗布液aの熱可塑性アクリル樹脂を下記の材料に変更し、添加量を95部に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例2の表示素子前面用フィルムを得た。
・熱可塑性アクリル樹脂
(アクリディックA165:DIC社、固形分45%)
(ガラス転移温度:66℃、重量平均分子量:42000)
【0059】
[比較例3]
ニュートンリング防止層塗布液aの熱可塑性アクリル樹脂の添加量を40部に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例3のディスプレイ前面用フィルムを得た。
【0060】
[比較例4]
ニュートンリング防止層塗布液aの熱可塑性アクリル樹脂の添加量を300部に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例4のディスプレイ前面用フィルムを得た。
【0061】
[比較例5]
ニュートンリング防止層塗布液aのアクリル樹脂粒子を下記の材料に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例5の表示素子前面用フィルムを得た。
・アクリル樹脂粒子
(テクポリマーMB20X-5:積水化成品工業社)
(平均粒子径:5μm,変動係数:約20%)
【0062】
[評 価]
実施例1〜5、参考例および比較例1〜6により得られた表示素子前面用フィルムについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
1.スパークル
サイズ3インチ、解像度:480×854dpiのワイドVGA液晶の液晶表示画面を全面グリーン表示にして、表示素子上に各表示素子前面用フィルムを載置して目視で観察を行った。その結果、スパークルが全く見えないものを「◎」、スパークルが僅かに見えるが支障ないものを「○」、スパークルが激しく見えるものを「×」とした。
【0064】
2.ニュートンリング防止性
各表示素子前面用フィルムを、表面が平滑なガラス板の上にニュートンリング防止層が密着するように乗せて指で押しつけ、ニュートンリングが発生するかどうかを目視にて評価した。評価は、ニュートンリングが発生しなかったものを「○」、ニュートンリングが発生したものを「×」とした。
【0065】
3.表面硬度
三波長蛍光灯ランプ下で黒い下地の上に各表示素子前面用フィルムをニュートンリング防止層が上面になるように置き、♯0000のスチールウールを約2cm2/200g荷重で1回擦り、表面の傷を目視で評価した。その結果、傷がほとんど見えないものを「○」、傷が僅かに見えるものを「△」、傷がはっきり見えるものを「×」とした。
【0066】
【表1】
【0067】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜の表示素子前面用フィルムは、機能層のバインダー成分としては、電離放射線硬化型樹脂と、ガラス転移温度45℃以上かつ重量平均分子量7万以上である熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂とを本発明の範囲で含み、さらに機能層中のマット剤の粒子径分布の変動係数が15%以下であることから、スパークル防止性に優れるもの(〇又は◎)であった。
【0068】
特に、実施例1,2,4,5の表示素子前面用フィルムは、電離放射線硬化型樹脂と、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂との割合が最適範囲であり、かつ熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂のガラス転移温度が高いことから、スパークル防止性にきわめて優れるもの(◎)であった。

【0069】
一方、比較例1,2のものは、電離放射線硬化型樹脂と、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂との重量比が本発明の範囲内であるが、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂ガラス転移温度が低いか、重量平均分子量が小さいものである。そのためスパークルを防止できるものではなかった。
【0070】
比較例3,4のものは、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂のガラス転移温度や重量平均分子量は本発明の範囲内であるが、当該樹脂と電離放射線硬化型樹脂との重量比が本発明の範囲外のものである。そのため、スパークルを防止できないか、硬度が極端に劣るものであった。
【0071】
比較例5のものは、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂のガラス転移温度や重量平均分子量が本発明の範囲内であり、かつ当該樹脂と電離放射線硬化型樹脂との重量比も本発明の範囲外であるが、機能層中のマット剤の粒子分布の変動係数が15%を超えるものである。そのため、スパークルを防止できないものであった。
【符号の説明】
【0072】
1・・・・表示素子前面用フィルム
11・・・透明基材
12・・・機能層
121・・バインダー成分
122・・マット剤
2・・・・保護板、タッチパネル、偏光板
3・・・・表示素子
4・・・・表面部材付き表示素子
図1
図2
図3
図4