(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/18 , F16C 33/41 , F16C 33/58 , F16C 35/073 , F16C 35/077 , F16C 43/04 , H02K 5/173
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の軸受装置にあっては、内輪と外輪とをずらしつつ、複数の転動体を内輪と外輪との間に挿入するため、作業が煩雑であり、多大な作業工数を必要する。また、複数の転動体を均等に配列するために、例えば従来技術に記載のエア噴射装置等の専用の製造装置が必要となり、多大な設備費用を必要とする。したがって、転がり軸受部の製造コストが高コストとなるおそれがある。
【0008】
また、特許文献2に記載の軸受装置にあっては、回動部材を外輪に外嵌して組み込んだ際に、一対の外輪の中心軸が互いにずれてしまうおそれがある。特に、回動部材の組み込み前に軸受装置の品質が保証できている場合であっても、回動部材の組み込み後に発生する一対の外輪の相対ズレにより、軸受装置の品質が保証できなくなるおそれがある。この一対の外輪の相対ズレは、回動部材が回動する際のトルクリップルおよびトルク増大の原因となるため、スライダと磁気記録媒体との間で情報の記録および再生を行う際に、記録不良および再生不良が発生するおそれがある。
したがって、従来技術の軸受装置にあっては、製造工程の簡単化による製造コストの低コスト化と、回動時のトルクリップルおよびトルク増大の抑制との両立という点で課題が残されている。
【0009】
そこで本発明は、簡単な作業で低コストに製造できるとともに、回動時のトルクリップルおよびトルク増大を抑制できる軸受装置、この軸受装置の製造方法およびこの軸受装置を備えた情報記録再生装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の軸受装置は、シャフトと、前記シャフトの軸方向に並んで配置された一対の転がり軸受部と、を備え、前記一対の転がり軸受部は、それぞれ前記シャフトの中心軸と同軸上に配置された内輪と、前記シャフトの径方向の外側から前記内輪を囲繞する外輪と、前記内輪と前記外輪との間に転動自在に保持された複数の転動体と、前記内輪と前記外輪との間に配置され、前記複数の転動体を転動自在に保持して環状に均等配列可能なリテーナと、を備え、前記径方向における前記転動体の最内部と前記中心軸との離間距離を第一離間距離とし、前記径方向における前記転動体の最外部と前記中心軸との離間距離を第二離間距離とし、前記軸方向における前記一対の転がり軸受部の間に向かう方向を前記軸方向の内側とし、前記軸方向における前記一対の転がり軸受部の間から離れる方向を前記軸方向の外側としたとき、前記内輪は、前記軸方向における内側および外側のいずれか一方側の端部の外半径が前記第一離間距離よりも小さく形成されるとともに、前記軸方向の前記一方側から前記軸方向の内側および外側のいずれか他方側に向かって前記第一離間距離よりも外半径が大きくなるように形成された内輪転動面を備え、前記外輪は、前記軸方向における前記他方側の端部の内半径が前記第二離間距離よりも大きく形成されるとともに、前記軸方向の前記他方側から前記一方側に向かって前記第二離間距離よりも内半径が小さくなるように形成された外輪転動面を備え、前記外輪における前記外輪転動面よりも前記一方側には、前記径方向の内側に向かって張り出すように膨出する厚肉部が形成され、前記厚肉部の前記径方向の内側における先端部は、前記軸方向から見て、前記リテーナと重なるように設けられている
とともに、前記転動体の中心に対応した位置に配置されることを特徴としている。
【0011】
本発明によれば、内輪は、軸方向の一方側の端部の外半径が第一離間距離よりも小さく形成されるとともに、軸方向の一方側から他方側に向かって第一離間距離よりも外半径が大きくなるように形成された内輪転動面を備え、外輪は、軸方向の他方側の端部の内半径が第二離間距離よりも大きく形成されるとともに、軸方向の他方側から一方側に向かって第二離間距離よりも内半径が小さくなるように形成された外輪転動面を備えているので、環状に均等配列した転動体を内輪転動面に載置した後に軸方向から外輪を挿入し、または、環状に均等配列した転動体を外輪転動面に載置した後に軸方向から内輪を挿入することで、内輪転動面と外輪転動面との間に転動体を簡単に配置できる。これにより、内輪と外輪とをずらしつつ転動体を内輪と外輪との間に挿入し、複数の転動体を周方向に均等配置するという従来の煩雑な作業や、専用の製造装置が必要ないので、簡単な作業で転がり軸受部を製造できる。したがって、軸受装置の低コスト化ができる。
また、軸方向に沿って金型を移動させて内輪および外輪を形成できるので、例えば鍛造等により低コストに形成できる。
また、従来技術のように内輪と外輪とをずらしつつ転動体を内輪と外輪との間に挿入する場合、内輪と外輪との隙間の大きさにより、挿入可能な転動体の個数や大きさが制限されることとなる。これに対して、本発明によれば、転動体を内輪転動面に載置した後に軸方向から外輪を挿入し、または、転動体を外輪転動面に載置した後に軸方向から内輪を挿入することで、内輪転動面と外輪転動面との間に複数の転動体を配置するので、従来技術のように内輪と外輪との隙間によって個数や大きさの制限を受けることなく転動体を配置できる。したがって、軸受装置の剛性を所望に設定することができる。
また、外輪における外輪転動面よりも軸方向における一方側には、径方向の内側に向かって膨出する厚肉部が形成され、厚肉部の径方向の内側における先端部がリテーナと重なるように設けられているので、厚肉部の厚みを十分確保するとともに、外輪の剛性をさらに向上させることができる。
【0012】
また、前記リテーナは、本体部と、前記本体部から前記軸方向に沿って立設され、前記転動体を転動自在に保持する複数対の爪部と、を備え、前記本体部を前記厚肉部とは反対側に配置したことを特徴としている。
【0013】
本発明によれば、リテーナの本体部を厚肉部とは反対側に配置することにより、リテーナを設けた場合であっても、リテーナと厚肉部との干渉を防止するとともに、一対の転がり軸受部における厚肉部の形成領域以外のスペースを有効活用できる。したがって、転動体を周方向に均等配列できるとともに、軸受装置の薄型化(軸方向の短縮化)ができる。
【0014】
また、前記軸方向の前記一方側は、前記軸方向の内側とされ、前記一対の転がり軸受部の内輪は、互いに相対的に予圧が付与された状態で前記シャフトに固定され、前記一対の転がり軸受部の外輪は、互いに一体形成されていることを特徴としている。
【0015】
本発明によれば、軸方向の一方側は、一対の転がり軸受部における軸方向の内側とされるので、内輪転動面は、軸方向の内側端部の内半径が第一離間距離よりも小さく形成されるとともに、軸方向の内側から外側に向かって第一離間距離よりも内半径が大きくなるように形成される。これにより、軸方向の内側から環状に均等配列した転動体を挿入して内輪転動面に配置できるので、簡単な作業で転がり軸受部を製造できる。
また、予圧が付与された状態で内輪がシャフトに固定されているので、いわゆる内輪予圧により軸受装置を形成できる。また、外輪が一体形成されているので、一対の転がり軸受部の高剛性化ができ、軸受装置の共振周波数(共振点)を高くできる。したがって、高速回転に対応可能な軸受装置とすることができる。
【0016】
また、前記軸方向の前記一方側は、前記軸方向の内側とされ、前記外輪
が挿入されて固定される円筒状のスリーブを備え、前記一対の転がり軸受部の内輪は、互いに相対的に予圧が付与された状態で前記シャフトに固定されていることを特徴としている。
【0017】
本発明によれば、いわゆる内輪予圧により軸受装置を形成できる。また、外輪に挿入されて外輪が固定される円筒状のスリーブを備えているので、厚肉部により外輪の剛性を確保しつつ、例えば情報記録再生装置を構成するアーム等の回動部材等を装着した場合であっても、外輪の変形を防止できる。また、スリーブを設けることで、一対の転がり軸受部の高剛性化ができ、軸受装置の共振周波数(共振点)を高くできる。したがって、高速回転に対応可能な軸受装置とすることができる。
【0018】
また、前記軸方向の前記一方側は、前記軸方向の外側とされ、前記外輪
が挿入されて固定される円筒状のスリーブを備え、前記一対の転がり軸受部の外輪は、互いに相対的に予圧が付与された状態で前記スリーブに固定されていることを特徴としている。
【0019】
本発明によれば、予圧が付与された状態で外輪がスリーブに固定されているので、いわゆる外輪予圧により軸受装置を形成できる。これにより、一対の転がり軸受部の高剛性化ができ、軸受装置の共振周波数(共振点)を高くできるので、高速回転に対応可能な軸受装置とすることができる。
【0020】
前記外輪の外周面には、前記厚肉部に対応する位置に、前記径方向に凹んだ凹部が形成されていることを特徴としている。
【0021】
本発明によれば、スリーブと外輪とを接着剤により固定する場合に、凹部に接着剤を滞留させてスリーブと外輪とを確実に接着固定することができる。しかも、凹部は、外輪の外周面において、厚肉部に対応する位置に形成されているので、接着剤の硬化時に接着剤が収縮しても、厚肉部により外輪の変形を防止できる。これにより、スリーブに対して接着剤により固定する際に外輪が変形するのを防止することができるので、軸受装置が回動する際のトルクリップルおよびトルク増大を抑制できるとともに、軸受装置の共振周波数(共振点)を高くできる。したがって、高速回転に対応可能な軸受装置とすることができる。
【0022】
また、本発明の軸受装置の製造方法は、前記一対の転がり軸受部のうち、第一転がり軸受部の前記内輪および前記外輪のいずれか一方部材を配置する第一配置工程と、前記リテーナのうち、第一リテーナおよび第二リテーナのそれぞれに、前記複数の転動体を転動自在に保持させて環状に均等配列するリテーナ保持工程と、前記第一転がり軸受部の一方部材に対して、前記軸方向から前記複数の転動体を前記第一リテーナごと挿入して配置する第一転動体配置工程と、前記第一リテーナにより保持された前記複数の転動体に対して、前記第一転がり軸受部の前記内輪および前記外輪のいずれか他方部材を前記軸方向から挿入して配置する第二配置工程と、前記一対の転がり軸受部のうち、第二転がり軸受部の前記内輪および前記外輪のいずれか他方部材を、前記第一転がり軸受部の他方部材に対して軸方向に連ねて配置する第三配置工程と、前記第二転がり軸受部の他方部材に対して、前記軸方向から前記複数の転動体を前記第二リテーナごと挿入して配置する第二転動体配置工程と、前記第二リテーナにより保持された前記複数の転動体に対して、前記第二転がり軸受部の前記内輪および前記外輪のいずれか一方部材を前記軸方向から挿入して配置する第四配置工程と、を備えたことを特徴としている。
【0023】
本発明によれば、リテーナ保持工程で予め複数の転動体を環状に均等配列した後、第一転動体配置工程および第二転動体配置工程で、第一リテーナおよび第二リテーナごと複数の転動体を外輪転動面および内輪転動面に載置できる。これにより、従来技術のように内輪と外輪とをずらしつつ転動体を内輪と外輪との間に挿入し、複数の転動体を周方向に均等配置するという従来の煩雑な作業が必要ないので、簡単に転がり軸受部を形成できる。
したがって、本発明の軸受装置の製造方法によれば、上述のように厚肉部により外輪の剛性を確保できるとともに外輪の変形を防止でき、かつトルクリップルおよびトルク増大を抑制できる軸受装置の製造コストを削減して、低コスト化ができる。
また、従来技術のように内輪と外輪とをずらしつつ転動体を内輪と外輪との間に挿入する場合、内輪と外輪との隙間の大きさにより、挿入可能な転動体の個数や大きさが制限されることとなる。これに対して、本発明によれば、第一配置工程から第四配置工程を備えているので、転動体を内輪転動面に載置した後に軸方向から外輪を挿入し、または、転動体を外輪転動面に載置した後に軸方向から内輪を挿入することで、内輪転動面と外輪転動面との間に複数の転動体を配置するので、従来技術のように内輪と外輪との隙間によって個数や大きさの制限を受けることなく転動体を配置できる。したがって、軸受装置の剛性を所望に設定することができる。
【0024】
また、本発明の情報記録再生装置は、の軸受装置と、前記軸受装置の端部を支持するハウジングと、前記外輪に外嵌され、前記シャフトの中心軸回りに回動する回動部材と、前記回動部材に装着され、磁気記録媒体との間で情報の記録および再生を行うスライダと、を備えたことを特徴としている。
【0025】
本発明によれば、簡単な作業で製造できて低コスト化ができるとともに、トルクリップルおよびトルク増大を抑制でき、かつ軸受装置の共振周波数(共振点)を高くできる軸受装置を備えているので、高性能な情報記録再生装置の低コスト化ができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、内輪は、軸方向の一方側の端部の外半径が第一離間距離よりも小さく形成されるとともに、軸方向の一方側から他方側に向かって第一離間距離よりも外半径が大きくなるように形成された内輪転動面を備え、外輪は、軸方向の他方側の端部の内半径が第二離間距離よりも大きく形成されるとともに、軸方向の他方側から一方側に向かって第二離間距離よりも内半径が小さくなるように形成された外輪転動面を備えているので、環状に均等配列した転動体を内輪転動面に載置した後に軸方向から外輪を挿入し、または、環状に均等配列した転動体を外輪転動面に載置した後に軸方向から内輪を挿入することで、内輪転動面と外輪転動面との間に転動体を簡単に配置できる。これにより、内輪と外輪とをずらしつつ転動体を内輪と外輪との間に挿入し、複数の転動体を周方向に均等配置するという従来の煩雑な作業や、専用の製造装置が必要ないので、簡単な作業で転がり軸受部を製造できる。したがって、軸受装置の低コスト化ができる。
また、軸方向に沿って金型を移動させて内輪および外輪を形成できるので、例えば鍛造等により低コストに形成できる。
また、従来技術のように内輪と外輪とをずらしつつ転動体を内輪と外輪との間に挿入する場合、内輪と外輪との隙間の大きさにより、挿入可能な転動体の個数や大きさが制限されることとなる。これに対して、本発明によれば、転動体を内輪転動面に載置した後に軸方向から外輪を挿入し、または、転動体を外輪転動面に載置した後に軸方向から内輪を挿入することで、内輪転動面と外輪転動面との間に複数の転動体を配置するので、従来技術のように内輪と外輪との隙間によって個数や大きさの制限を受けることなく転動体を配置できる。したがって、軸受装置の剛性を所望に設定することができる。
また、外輪における外輪転動面よりも軸方向における一方側には、径方向の内側に向かって膨出するとともに、外輪転動面の形成領域よりも径方向の肉厚が厚い厚肉部が形成されているので、外輪の剛性を確保できる。したがって、外輪に対して、例えばスリーブや情報記録再生装置を構成するアーム等の回動部材等を装着した場合であっても、外輪の変形を防止できるので、軸受装置が回動する際のトルクリップルおよびトルク増大を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、第一実施形態に係る軸受装置、軸受装置の製造方法および情報記録再生装置について説明をする。なお、以下では、実施形態に係る情報記録再生装置について説明したあと、軸受装置および軸受装置の製造方法について説明をする。
【0029】
(情報記録再生装置)
図1は、実施形態に係る情報記録再生装置1の斜視図である。
図1に示すように、情報記録再生装置1は、記録層を有するディスク(磁気記録媒体)Dに対して、書き込みおよび読み取りを行う装置である。情報記録再生装置1は、アーム(回動部材)8と、アーム8の先端側に支持されたヘッドジンバルアセンブリ4と、ヘッドジンバルアセンブリ4の先端に装着されたスライダ2と、ヘッドジンバルアセンブリ4をスキャン移動させるアクチュエータ(VCM:ボイスコイルモータ)6と、ディスクDを回転させるスピンドルモータ7と、情報に応じて変調した電流をスライダ2に供給する制御部5と、これら各構成品を内部に収容するハウジング9と、を備えている。
【0030】
ハウジング9は、例えばアルミニウムや鉄、ステンレス等の金属材料からなり、上部に開口部を有する箱型形状のものであって、平面視四角形状の底部9aと、底部9aの周縁部から垂直に立設された周壁(不図示)とで構成されている。周壁に囲まれたハウジング9の内側には、上述した各構成品を収容する収容凹部が形成される。底部9aの略中心には、スピンドルモータ7が取り付けられており、スピンドルモータ7に中心孔を嵌め込むことでディスクDが着脱自在に固定されている。
【0031】
ディスクDの側方には、軸受装置10が配置されている。軸受装置10の端部は、ハウジング9の底部9aに支持されている。軸受装置10の外周面には、アーム8が外嵌固着されている。アーム8の基端部は、上述したアクチュエータ6に接続されている。
またアーム8は、基端側から先端側に向かって、ディスクDの表面と平行に延設されている。
アーム8の先端には、ヘッドジンバルアセンブリ4が接続されている。ヘッドジンバルアセンブリ4は、サスペンション3と、サスペンション3の先端に装着され、ディスクDの表面に対向配置されたスライダ2と、を備えている。スライダ2は、ディスクDに対する情報の書き込み(記録)を行う記録素子と、ディスクDから情報の読み取り(再生)を行う再生素子とを備えている。
【0032】
上記のように構成された情報記録再生装置1において、情報の記録または再生を行うには、まずスピンドルモータ7を駆動して、ディスクDの中心軸L2回りにディスクDを回転させる。また、アクチュエータ6を駆動して、軸受装置10を回動中心としてアーム8を回動させる。これにより、ヘッドジンバルアセンブリ4の先端に配置されたスライダ2を、ディスクDの表面の各部にスキャン移動させることができる。そして、スライダ2の記録素子または再生素子を駆動することにより、ディスクDに対する情報の記録または再生を行うことができる。
【0033】
(第一実施形態の軸受装置)
図2は、第一実施形態に係る軸受装置10の側面断面図である。なお、
図2では、ハウジング9およびハウジング9の底部9aを二点鎖線で図示している。以下では、軸受装置10の軸線(すなわちシャフト20の軸線。以下、「中心軸L1」という。)に沿った方向を「軸方向」と呼ぶ。また、軸方向のうち、一対の転がり軸受部30,40の軸方向の内側を「軸方向の内側」と呼び、一対の転がり軸受部30,40の軸方向の外側を「軸方向の外側」と呼ぶ。また、中心軸L1に直交する方向を「径方向」と呼び、中心軸L1回りに周回する方向を「周方向」と呼ぶ。また、第一転がり軸受部30の複数の転動体35の中心P1を含む仮想面を仮想面F1と定義する。
図2に示すように、第一実施形態に係る軸受装置10は、ハウジング9の底部9aに立設されるシャフト20と、シャフト20の軸方向に並んで配置された一対の転がり軸受部30,40と、を備えている。
【0034】
シャフト20は、中心軸L1に沿って延びた略円柱形状の部材であり、例えばアルミニウムや鉄、ステンレス等の金属材料により形成されている。シャフト20は、ハウジング9の底部9a側が基端部とされ、軸方向に沿った反対側が先端部とされている。
シャフト20の基端部には、シャフト20の直径よりも拡径したフランジ部20aと、シャフト20の直径よりも縮径した縮径部20bと、がシャフト20の基端部側から先端部側に向かってこの順番に連設されている。縮径部20bには、ハウジング9の底部9aに形成された図示しない雌ねじに螺合する図示しない雄ねじが形成されている。そして、シャフト20は上記螺合によってハウジング9の底部9aに立設されている。この際、フランジ部20aがハウジング9の底部9aに接することで、シャフト20の高さ方向の位置決めがなされている。
【0035】
(転がり軸受部)
シャフト20には、軸方向に並んで一対の転がり軸受部30,40が配置されている。シャフト20の基端側には、一対の転がり軸受部30,40のうち第一転がり軸受部30が配置され、シャフト20の先端側には、一対の転がり軸受部30,40のうち第二転がり軸受部40が配置されている。
【0036】
(第一転がり軸受部)
第一転がり軸受部30は、シャフト20の中心軸L1と同軸上に配置された第一内輪36と、シャフト20の径方向の外側から第一内輪36を囲繞する第一外輪31と、第一内輪36と第一外輪31との間に転動自在に保持された複数の転動体35と、複数の転動体35を転動自在に保持して環状に均等配列可能な第一リテーナ60(請求項の「リテーナ」に相当。)と、を備えている。
なお、以下では、径方向における複数の転動体35の最内部と、中心軸L1との離間距離を第一離間距離K1と定義し、径方向における複数の転動体35の最外部と、中心軸L1との離間距離を第二離間距離K2と定義する。
【0037】
(第一内輪)
第一内輪36は、例えばステンレス等の金属材料からなる略円筒状の部材であり、例えば鍛造や機械加工等により形成されている。
第一内輪36は、軸方向の内側端部36bの外半径が、第一離間距離K1よりも小さく形成されている。
第一内輪36の外周面37における軸方向の中間部には、内輪転動面39が形成されている。内輪転動面39は、軸方向の内側から外側に向かって第一離間距離K1よりも外半径が漸次大きくなるように、側面断面が円弧状に形成されている。内輪転動面39は、第一内輪36の外周面37の全周にわたって形成されており、環状に配置された複数の転動体35の外表面が当接可能となっている。
【0038】
第一内輪36の内径は、シャフト20に挿入可能な寸法に形成されている。本実施形態では、第一内輪36の内径は、シャフト20の外径よりも若干大きくなるように形成されている。第一内輪36は、シャフト20に挿入されて、シャフト20のフランジ部20aに突き当てられた状態で例えば接着剤等により固定される。なお、第一内輪36の内径は、シャフト20の外径と同一か、若干小さくなるように形成されていてもよい。この場合においては、第一内輪36は、シャフト20に挿入されて圧入固定される。
【0039】
第一内輪36は、内輪転動面39の外径が軸方向の内側から外側に向かって大きくなるのに対し、内径が一様となっている。したがって、軸方向に沿って金型をスライド移動させて第一内輪36を成型できるので、第一内輪36の外形状を形成する場合には、鍛造が好適である。そして、鍛造により第一内輪36の外形状を形成した後、内輪転動面39のみを切削加工することにより、第一内輪36を形成できる。このように、切削加工のみにより第一内輪36を形成する場合と比較して、機械加工を行う工数を大幅に短縮できるので、製造コストを削減できる。
また、第一内輪36は、仮想面F1から軸方向の内側端部36bまでの距離D1が、仮想面F1から軸方向の外側端部36aまでの距離D2よりも短くなるように形成されている。これにより、第一内輪36の軸方向の長さを短縮できるので、軸受装置10の更なる小型化、軽量化および低コスト化ができる。
【0040】
転動体35は、金属材料により球状に形成されている。転動体35は、第一内輪36の内輪転動面39と、後述する第一外輪31の外輪転動面34との間に配置されており、各転動面34,39に沿って転動するようになっている。各転動面34,39の曲率半径は、転動体35の外面の曲率半径よりも若干大きくなるように形成されている。複数の転動体35は、第一リテーナ60によって、転動自在に周方向に沿って環状に均等配列されている。
【0041】
(第一リテーナ)
図3は、第一リテーナ60および第二リテーナ70の斜視図である。
第一リテーナ60は、中心軸L1回りを回転しながら、各転動体35を転動可能に保持する例えば樹脂等からなる部材であって、本体部61と、該本体部61に一体的に形成された複数対の爪部63と、を備えている。
図3に示すように、本体部61は、第一内輪36を径方向の外側から囲繞する円環状に形成されている。本体部61の軸方向の端面には、周方向に等間隔を開けて転動体35が挿入可能な球面状のボールポケットPが、例えば7個凹み形成されている。
【0042】
本体部61には、各ボールポケットPにそれぞれ対応するように複数対(本実施形態では7対)の爪部63が設けられている。これら各対の爪部63は、それぞれボールポケットP内に挿入された転動体35を転動自在に保持可能となっている。各対の爪部63は、それぞれ本体部61から中心軸L1(軸方向)に沿って立設されており、各ボールポケットPを間にして互いに周方向に向かい合うとともに、基端から先端に向かって互いの距離が接近するように円弧状に湾曲した状態で立ち上げられている。
【0043】
図2に示すように、複数(本実施形態では7個)の転動体35は、第一リテーナ60のボールポケットP(
図3参照)により周方向に略等間隔に配置された状態で保持されて、第一内輪36と第一外輪31との間に配置されている。第一リテーナ60の本体部61は、転動体35よりも軸方向の外側であって、第一外輪31に形成された後述の厚肉部25aとは反対側に配置される。
また、第一リテーナ60の内半径は、第一内輪36の最大外半径よりも大きく、かつ第一リテーナ60の外半径は、第一外輪31の最小内半径よりも小さくなるように形成されている。このように第一リテーナ60を形成することで、第一リテーナ60と第一内輪36および第一外輪31とが干渉することなく、複数の転動体35を第一内輪36の内輪転動面39と第一外輪31の外輪転動面34との間に配置できる。
【0044】
(第一外輪)
第一外輪31は、第一内輪36と同様に、例えばステンレス等の金属材料からなる略円筒状の部材であり、例えば鍛造や機械加工等により形成されている。
第一外輪31は、軸方向の外側端部31aの内半径が、第二離間距離K2よりも大きく形成されている。
第一外輪31の内周面33における軸方向の中間部には、外輪転動面34が形成されている。外輪転動面34は、軸方向の外側から内側に向かって第二離間距離K2よりも内半径が漸次小さくなるように、側面断面が円弧状に形成されている。外輪転動面34は、第一外輪31の内周面33の全周にわたって形成されており、環状に配置された複数の転動体35の外表面が当接可能となっている。
第一外輪31の外周面は、後述する凹部32を除き、軸方向にわたって外径が一様となるように形成されている。
また、第一外輪31の軸方向の外側端部31aは、第一内輪36の外側端部36aよりも軸方向の内側であって、外輪転動面34と後述する転動体35との当接部よりも軸方向の外側に配置されている。これにより、第一外輪31の軸方向の長さを短縮できるので、軸受装置10の更なる小型化、軽量化および低コスト化ができる。
【0045】
第一外輪31における外輪転動面34よりも軸方向の内側には、厚肉部25aが形成されている。厚肉部25aは、内側端部31bが径方向の内側に向かって張り出すように膨出している。ここで、第一リテーナ60の本体部61は、軸方向の外側に配置されるので、厚肉部25aと第一リテーナ60の本体部61とは、互いに干渉することがない。
厚肉部25aの膨出量は、第一内輪36やシャフト20等の他部品と干渉しないように設定される。本実施形態における厚肉部25aの先端部27aは、軸方向から見て、第一リテーナ60と重なるように設けられるとともに、転動体35の中心P1に対応した位置に配置される。
厚肉部25aの内面26aは、第一外輪31の外輪転動面34と連続的に形成されている。これにより、外輪転動面34と厚肉部25aの内面26aとの境界部分は、全周にわたって曲面形状に形成されるので、厚肉部25aの機械的強度が十分に確保される。
【0046】
第一外輪31の外周面には、厚肉部25aに対応する位置に、径方向に凹んだ凹部32が形成されている。本実施形態の凹部32は、第一外輪31の外周面の全周にわたって連続する溝状に形成されており、断面形状がU字形状となっている。なお、凹部32の形態は、本実施形態に限定されることはなく、例えば第一外輪31の外周面の全周にわたって断続的に凹部32が形成されていてもよいし、第一外輪31の外周面の一部分にのみ凹部32が形成されていてもよい。
【0047】
(第二転がり軸受部)
第二転がり軸受部40は、シャフト20の中心軸L1と同軸上に配置された第二内輪46と、シャフト20の径方向の外側から第二内輪46を囲繞する第二外輪41と、第二内輪46と第二外輪41との間に転動自在に保持された複数の転動体35と、複数の転動体35を転動自在に環状に均等配列する第二リテーナ70と、を備えている。本実施形態では、第二転がり軸受部40の第二内輪46、第二外輪41、複数の転動体35、第二リテーナ70は、それぞれ第一転がり軸受部30の第一内輪36、第一外輪31、複数の転動体35、第一リテーナ60と同一形状となっている。第二外輪41には、第一外輪31と同様に、外輪転動面44よりも軸方向の内側に厚肉部25bが形成されるとともに、第二外輪41の外周面における厚肉部25bに対応する位置に、凹部42が形成されている。第二転がり軸受部40は、第一転がり軸受部30に対して、面対称形状となるように配置されている。第二転がり軸受部40については、詳細な説明を省略する。
【0048】
(スリーブ)
本実施形態では、第一外輪31および第二外輪41は、それぞれ相対移動不能にスリーブ51により固定されている。スリーブ51は、例えばアルミニウムや鉄、ステンレス等の金属材料からなる略円筒状の部材であり、鍛造や機械加工等により形成されている。スリーブ51は、円筒状の本体筒部52と、本体筒部52の軸方向の中間部において径方向の内側に張り出すスペーサ部53と、を備えている。
スリーブ51の内径は、スペーサ部53を除き、第一外輪31および第二外輪41を本体筒部52の内側に挿入配置可能なように、第一外輪31および第二外輪41の外径よりも大きくなるように形成されている。
【0049】
スペーサ部53は、軸方向に所定の厚さを有しており、その内径が例えば第一外輪31および第二外輪41の厚肉部25a,25bよりも小さくなるように形成されている。
スペーサ部53を第一内輪36と第二内輪46との間に介在させることにより、軸方向に所定間隔だけ離間した状態で、第一外輪31および第二外輪41を配置できる。さらに、第一外輪31と第二外輪41との離間距離をスペーサ部53により保持しつつ、第一内輪36および第二内輪46を軸方向に沿って相対的に押圧した状態でシャフト20に固定することにより、第一内輪36と第二内輪46とに予圧を付与できる。
【0050】
スリーブ51には、第一外輪31および第二外輪41が挿入されて、それぞれスペーサ部53に突き当てられた状態で例えば接着剤等により固定される。これにより、スリーブ51、第一外輪31および第二外輪41は、外輪組立体50を構成している。
ここで、第一外輪31および第二外輪41の外周面には、それぞれ凹部32,42が形成されている。このため、スリーブ51に第一外輪31および第二外輪41を挿入して互いに接着する際、スリーブ51の内周面と第一外輪31および第二外輪41の外周面との間の接着剤は、凹部32,42内に滞留することができる。したがって、スリーブ51と第一外輪31および第二外輪41とを確実に接着固定できる。しかも、凹部32,42は、厚肉部25a,25bに対応した位置に形成されているので、凹部32,42の周辺部分は十分に剛性が確保されている。したがって、接着剤が硬化する際に収縮しても、第一外輪31および第二外輪41の変形が防止される。
【0051】
また、スリーブ51を備えることにより、軸受装置10の外径を一様とすることができる。また、スリーブ51にアーム8(
図1参照)を外嵌しても、第一外輪31と第二外輪41との中心軸に、相対ズレが発生することがない。したがって、軸受装置10に対して、アーム8(
図1参照)を精度良く装着できるので、高性能な情報記録再生装置1(
図1参照)を形成できる。
【0052】
上述のように形成された第一転がり軸受部30および第二転がり軸受部40は、第一内輪36の内側端部36bと、第二内輪46の内側端部46bとが互いに干渉しないように、シャフト20の軸方向に沿って並んで配置される。また、第一転がり軸受部30の第一内輪36および第二転がり軸受部40の第二内輪46は、予圧が付与された状態でスリーブ51に対して、例えば接着剤により固定される。
なお、第一内輪36および第二内輪46とシャフト20との固定方法や、第一外輪31および第二外輪41とスリーブ51との固定方法は、接着剤に限定されない。したがって、例えば、圧入やレーザー溶接等により、第一内輪36および第二内輪46をシャフト20に対して固定し、第一外輪31および第二外輪41をスリーブ51に対して固定してもよい。これにより、接着剤を用いることなく、第一内輪36および第二内輪46をシャフト20に対して固定でき、第一外輪31および第二外輪41をスリーブ51に対して固定できる。したがって、接着剤からのアウトガスの発生を防止でき、アウトガスに起因する情報記録再生装置1(
図1参照)の不良を防止できる。
【0053】
(軸受装置の製造方法)
続いて、第一実施形態の軸受装置10の製造方法について説明する。
図4は、第一実施形態の軸受装置10の製造工程(製造方法)のフローチャートである。
図4に示すように、軸受装置10の製造工程は、第一内輪配置工程S11(請求項の「第一配置工程」に相当。)と、リテーナ保持工程S13と、外輪組立体形成工程S15と、第一転動体配置工程S17と、外輪組立体配置工程S19(請求項の「第二配置工程」および「第三配置工程」に相当。)と、第二転動体配置工程S21と、第二内輪配置工程S23(請求項の「第四配置工程」に相当。)と、予圧付加工程S25とを備えている。以下に、各工程について説明する。
【0054】
(第一内輪配置工程S11)
図5は、第一内輪配置工程S11の説明図である。
まず、
図5に示すように、一対の転がり軸受部30,40の第一内輪36および第二内輪46(
図2参照)のうち、第一転がり軸受部30の第一内輪36をシャフト20に挿入し、第一内輪36を軸方向の外側に配置する第一内輪配置工程S11を行う。
第一内輪配置工程S11では、不図示の治具にシャフト20を立設させた状態で配置し、シャフト20の外周面に接着剤を塗布する。次いで、第一内輪36の外側端部36aをシャフト20のフランジ部20a側に配置した状態で、軸方向に沿って第一内輪36をシャフト20に挿入する。次いで、第一内輪36を押し込み、シャフト20のフランジ部20aに外側端部36aを当接させて配置する。その後、接着剤を固化させ、第一内輪36をシャフト20に固定する。以上で、第一内輪配置工程S11が終了する。
【0055】
(リテーナ保持工程S13)
図6は、リテーナ保持工程S13の説明図である。
続いて、
図6に示すように、第一リテーナ60および第二リテーナ70のそれぞれに、複数の転動体35を転動自在に保持させて環状に均等配列するリテーナ保持工程S13を行う。
リテーナ保持工程S13では、第一リテーナ60の一対の爪部63の間に転動体35を押し込み、第一リテーナ60の本体部61のボールポケットP内に転動体35を組み入れる。一対の爪部63は、転動体35を押し込む際の押圧力により外側に弾性変形する。これにより、一対の爪部63間に転動体35を挿入でき、ボールポケットP内に組み入れることができる。また、転動体35がボールポケットP内に挿入されると、一対の爪部63が元の状態に弾性的に復元変形して開口径が狭まるので、転動体35をボールポケットP内で脱落させることなく一対の爪部63で転動自在に保持できる。同様に複数(本実施形態では7個)の転動体35を第一リテーナ60に組み入れることにより、複数の転動体35は、第一リテーナ60によって周方向に均等配列された状態で転動自在に保持される。さらに同様に、複数(本実施形態では7個)の転動体35を第二リテーナ70に組み入れた時点で、リテーナ保持工程S13が終了する。
【0056】
なお、リテーナ保持工程S13は、第一内輪配置工程S11の前に行ってもよい。また、本実施形態では、第一リテーナ60および第二リテーナ70への転動体35の組み込みを、一工程(リテーナ保持工程S13)で行っているが、別工程で行ってもよい。具体的には、第一リテーナ60へ転動体35を組み込む第一リテーナ保持工程と、第二リテーナ70へ転動体35を組み込む第二リテーナ保持工程とに分割し、各リテーナ保持工程を異なるタイミングで行ってもよい。
【0057】
(外輪組立体形成工程S15)
図7は、外輪組立体形成工程S15の説明図である。
続いて、
図7に示すように、第一外輪31および第二外輪41をそれぞれ相対移動不能にスリーブ51に固定し、外輪組立体50を形成する外輪組立体形成工程S15を行う。
外輪組立体形成工程S15では、まず、スリーブ51の本体筒部52の内周面に接着剤を塗布する。スリーブ51の本体筒部52の内周面に塗布する接着剤としては、例えば嫌気性接着剤が好適である。次いで、スリーブ51に対して、軸方向の外側から内側に向かって、第一外輪31および第二外輪41を挿入する。このとき、第一外輪31および第二外輪41の外周面には、それぞれ凹部32,42が形成されているので、第一外輪31および第二外輪41を挿入することにより、スリーブ51の本体筒部52の内周面に塗布された接着剤が、凹部32,42内に入り込んで滞留する。
【0058】
次いで、第一外輪31の内側端部31bおよび第二外輪41の内側端部41bがそれぞれスペーサ部53に突き当たるまで、第一外輪31および第二外輪41を押し込むとともに、接着剤を硬化させる。ここで、凹部32,42は、それぞれ第一外輪31の厚肉部25aおよび第二外輪41の厚肉部25bに対応する位置に形成されているので、接着剤が硬化する際に収縮しても、第一外輪31および第二外輪41の変形が防止される。接着剤が硬化した時点で、スリーブ51、第一外輪31および第二外輪41が一体的に形成されて外輪組立体50が構成される。以上で、外輪組立体形成工程S15が終了する。
なお、外輪組立体形成工程S15は、少なくとも外輪組立体配置工程S19の前に行っていればよい。また、本実施形態では、スリーブ51への第一外輪31および第二外輪41の組み込みを、一工程(外輪組立体形成工程S15)で行っているが、別工程に分けて行ってもよい。
【0059】
(第一転動体配置工程S17)
図8は、第一転動体配置工程S17の説明図である。
続いて、
図8に示すように、第一内輪36に、軸方向の内側から複数の転動体35を第一リテーナ60ごと挿入し、第一内輪36の内輪転動面39に複数の転動体35を載置する第一転動体配置工程S17を行う。
このとき、第一リテーナ60の本体部61をシャフト20のフランジ部20a側に配置するとともに、第一リテーナ60の爪部63の先端をシャフト20の先端側に配置した状態で、複数の転動体35を第一リテーナ60ごと第一内輪36に挿入する。これにより、第一リテーナ60の本体部61は、軸方向の外側に配置される。
ここで、第一リテーナ60の内半径は、第一内輪36の最大外半径よりも大きく形成されているので、転動体35を第一リテーナ60に保持させて環状に均等配列した状態で、第一リテーナ60と第一内輪36とが干渉することなく、転動体35を第一リテーナ60ごと軸方向の内側から挿入して内輪転動面39に載置できる。また、第一内輪36の内側端部36bの外半径は、第一離間距離K1よりも小さく形成されている。したがって、第一転動体配置工程S17では、軸方向の内側から複数の転動体35を第一リテーナ60ごと、第一内輪36の内側端部36bに干渉することなく容易に挿入できる。また、第一内輪36の内輪転動面39は、軸方向の内側から外側に向かって第一離間距離K1よりも外半径が漸次大きくなるように形成されている。したがって、第一転動体配置工程S17では、複数の転動体35を第一リテーナ60ごと第一内輪36に挿入することで、複数の転動体35を簡単に内輪転動面39に載置できる。しかも、複数の転動体35は、第一リテーナ60により相対移動不能に均等配列されて保持されているので、治具等を用いることなく、複数の転動体35を内輪転動面39に載置した状態で保持できる。このように、本実施形態の第一転動体配置工程S17によれば、複数の転動体35を容易に第一内輪36の径方向の外側に配置できる。以上で、第一転動体配置工程S17が終了する。
【0060】
(外輪組立体配置工程S19)
図9は、外輪組立体配置工程S19の説明図である。
続いて、
図9に示すように、第一内輪36に対して外輪組立体50を軸方向の内側から挿入する外輪組立体配置工程S19を行う。
ここで、第一リテーナ60の外半径は、第一外輪31の最小内半径よりも小さくなるように形成されているので、転動体35を環状に均等配列した状態で、第一外輪31を挿入することにより、第一リテーナ60と第一外輪31とが干渉することなく、転動体35を簡単に外輪転動面34に当接させることができる。
また、第一外輪31の外側端部31aの外半径は、第二離間距離K2よりも大きく形成されている。したがって、外輪組立体配置工程S19では、軸方向の内側から第一外輪31を、複数の転動体35と干渉することなく第一内輪36に容易に挿入できる。また、第一外輪31の外輪転動面34は、軸方向の外側から内側に向かって第二離間距離K2よりも内半径が漸次小さくなるように形成されている。したがって、外輪組立体配置工程S19では、軸方向の内側から外輪組立体50を第一内輪36に挿入したときに、第一外輪31の外輪転動面34が複数の転動体35に当接できる。これにより、外輪組立体50は、軸方向の所定位置に位置決めされるので、治具等を用いることなく、複数の転動体35に外輪転動面34が当接した状態で外輪組立体50を保持できる。
なお、本実施形態においては、スリーブ51、第一外輪31および第二外輪41が互いに固定されて外輪組立体50が構成されていることから、第一内輪36に外輪組立体50を軸方向の内側から挿入することで、第一外輪31の外輪転動面34を転動体35に当接させるとともに第二外輪41を軸方向の外側に配置できる。すなわち、外輪組立体配置工程S19では、第一外輪31を第一内輪36の径方向の外側に配置し、第一外輪31の外輪転動面34を転動体35に当接させる第一外輪配置工程S19A(請求項の「第二配置工程」に相当。)と、第一外輪31に対して第二外輪41を軸方向に連ねて軸方向の外側に配置する第二外輪配置工程S19B(請求項の「第三配置工程」に相当。)とが、同時に行われる。
このように、本実施形態の外輪組立体配置工程S19によれば、スリーブ51、第一外輪31および第二外輪41により構成された外輪組立体50を容易に第一内輪36の径方向の外側に配置できる。以上で、外輪組立体配置工程S19が終了する。
【0061】
(第二転動体配置工程S21)
図10は、第二転動体配置工程S21の説明図である。続いて、
図10に示すように、外輪組立体50の第二外輪41に、軸方向の外側から複数の転動体35を第二リテーナ70ごと挿入し、軸方向の外側の外輪転動面44に複数の転動体35を載置する第二転動体配置工程S21を行う。
このとき、第二リテーナ70の爪部63の先端をシャフト20のフランジ部20a側に配置するとともに、第二リテーナ70の本体部61をシャフト20の先端側に配置した状態で、複数の転動体35を第二リテーナ70ごと第二外輪41に挿入する。これにより、第二リテーナ70の本体部61は、軸方向の外側に配置される。
ここで、第二リテーナ70の外半径は、第二外輪41の最小内半径よりも小さくなるように形成されているので、転動体35を環状に均等配列した状態で第二外輪41に挿入することにより、第二リテーナ70と第一外輪31とが干渉することなく、転動体35を簡単に外輪転動面44に載置できる。
また、軸方向の外側に配置された第二外輪41の外側端部41aの内半径は、第二離間距離K2よりも大きく形成されている。したがって、第二転動体配置工程S21では、複数の転動体35を第二リテーナ70ごと、第二外輪41の外側端部41aに干渉することなく容易に挿入できる。また、第二外輪41の外輪転動面44は、軸方向の外側から内側に向かって第二離間距離K2よりも内半径が漸次小さくなるように形成されている。したがって、第二転動体配置工程S21では、軸方向の外側から複数の転動体35を第二リテーナ70ごと第二外輪41に挿入することで、複数の転動体35を簡単に外輪転動面44に載置できる。しかも、複数の転動体35は、第二リテーナ70により相対移動不能に均等配列されて保持されているので、治具等を用いることなく、複数の転動体35を第二外輪41の外輪転動面44に載置した状態で保持できる。このように、本実施形態の第二転動体配置工程S21によれば、複数の転動体35を容易に第二外輪41の径方向の内側に配置できる。以上で、第二転動体配置工程S21が終了する。
【0062】
(第二内輪配置工程S23)
図11は、第二内輪配置工程S23および予圧付加工程S25の説明図である。続いて、
図11に示すように、一対の転がり軸受部30,40の第一内輪36および第二内輪46のうち、第二転がり軸受部40の第二内輪46をシャフト20に挿入し、第二内輪46を軸方向の外側に配置する第二内輪配置工程S23を行う。第二内輪配置工程S23では、第二内輪46の内側端部46bをシャフト20のフランジ部20a側に配置するとともに、第二内輪46の外側端部46aをシャフト20の先端側に配置した状態で、シャフト20の軸方向に沿って第二内輪46を挿入する。
ここで、第二リテーナ70の内半径は、第二内輪46の最小外半径よりも大きくなるように形成されているので、転動体35を環状に均等配列した状態で、第二内輪46を挿入することにより、第二リテーナ70と第二内輪46とが干渉することなく、転動体35を簡単に内輪転動面49に当接させることができる。
また、軸方向の外側に配置された第二内輪46の内側端部46bの外半径は、第一離間距離K1よりも小さく形成されている。したがって、第二内輪配置工程S23では、第二内輪46の内側端部46bを、複数の転動体35に干渉することなく容易に挿入できる。また、第二内輪46の内輪転動面49は、軸方向の内側から外側に向かって第一離間距離K1よりも外半径が漸次大きくなるように形成されている。したがって、第二内輪配置工程S23では、軸方向の外側から第二内輪46をシャフト20に挿入したときに、第二内輪46の内輪転動面49が複数の転動体35に当接できる。これにより、第二内輪46は、軸方向の所定位置に位置決めされるので、治具等を用いることなく、複数の転動体35に内輪転動面49が当接した状態で第二内輪46を保持できる。このように、本実施形態の第二内輪配置工程S23によれば、第二内輪46を容易にシャフト20の径方向の外側に配置できる。以上で、第二内輪配置工程S23が終了する。
【0063】
(予圧付加工程S25)
続いて、第一内輪36および第二内輪46を軸方向に沿って相対的に押圧しつつ、シャフト20に固定する予圧付加工程S25を行う。ここでは、第一内輪36が固定された状態で、第二内輪46を第一内輪36側に向かって押圧することにより、第一内輪36および第二内輪46を相対的に押圧している。なお、第二内輪46の押圧は、不図示の治具を用いて行う。
第二転がり軸受部40の第二内輪46を押圧することにより、第一転がり軸受部30の第一内輪36と、第二転がり軸受部40の第二内輪46との離間距離は短くなる。ここで、第一転がり軸受部30の第一外輪31と、第二転がり軸受部40の第二外輪41とは、スリーブ51に固定されて一体的に形成されている。したがって、第二内輪46を軸方向の内側に向かって押圧することにより、第二転がり軸受部40の転動体35が第二外輪41の外輪転動面44を押圧するとともに、第一外輪31が軸方向の外側に向かって押圧される。また、第一外輪31が軸方向の外側に向かって押圧されることにより、第一転がり軸受部30の転動体35が第一外輪31の外輪転動面34に押圧されて、第一内輪36の内輪転動面39を押圧する。
【0064】
このように、第二転がり軸受部40の第二内輪46を軸方向に沿って押圧することで、第一転がり軸受部30の第一内輪36および第二転がり軸受部40の第二内輪46に予圧が付与される。ここで、外輪転動面34,44と厚肉部25a,25bの内面26a,26bとの境界部分は、全周にわたって曲面形状に形成されており、機械的強度が十分に確保されているので、所望の予圧を付与できる。そして、接着剤が硬化するまで、第二転がり軸受部40の第二内輪46を押圧する。
接着剤が硬化した時点で、予圧付加工程S25が終了し、第一実施形態の第二変形例に係る軸受装置10が完成する。
【0065】
なお、第一内輪配置工程S11、外輪組立体形成工程S15および第二内輪配置工程S23では、それぞれ接着剤を用いることにより、第一内輪36および第二内輪46をシャフト20に固定し、第一外輪31および第二外輪41をスリーブ51に固定していた。これに対して、例えば、圧入やレーザー溶接等により、第一内輪36および第二内輪46をシャフト20に固定し、第一外輪31および第二外輪41をスリーブ51に固定してもよい。これにより、接着剤を用いることなく第一内輪36および第二内輪46をシャフト20に固定でき、第一外輪31および第二外輪41をスリーブ51に固定できる。したがって、接着剤からのアウトガスの発生を防止でき、アウトガスに起因する情報記録再生装置1の不良を防止できる。
【0066】
(第一実施形態の効果)
本実施形態によれば、第一内輪36および第二内輪46は、軸方向の内側端部36b,46bの外半径が第一離間距離K1よりも小さく形成されるとともに、軸方向の内側から外側に向かって第一離間距離K1よりも外半径が漸次大きくなるように形成された内輪転動面39,49を備え、第一外輪31および第二外輪41は、軸方向の外側端部31a,41aの内半径が、第二離間距離K2よりも大きく形成されるとともに、軸方向の外側から内側に向かって第二離間距離K2よりも内半径が漸次小さくなるように形成された外輪転動面34,44を備えているので、第一リテーナ60に保持させて環状に均等配列した転動体35を第一内輪36の内輪転動面39に載置した後に軸方向から第一外輪31を挿入し、第二リテーナ70に保持させて環状に均等配列した転動体35を第二外輪41の外輪転動面44に載置した後に軸方向から第二内輪46を挿入することで、内輪転動面39,49と外輪転動面34,44との間に転動体35を簡単に配置できる。これにより、内輪と外輪とをずらしつつ転動体を内輪と外輪との間に挿入した後、複数の転動体を周方向に均等配列するという従来の煩雑な作業が必要なく、簡単に第一転がり軸受部30および第二転がり軸受部40を形成できるので、軸受装置10の低コスト化ができる。
また、軸方向に沿って金型を移動させて第一内輪36、第二内輪46、第一外輪31および第二外輪41を形成できるので、例えば鍛造等により低コストに形成できる。
また、従来技術のように内輪と外輪とをずらしつつ転動体を内輪と外輪との間に挿入する場合、内輪と外輪との隙間の大きさにより、挿入可能な転動体の個数や大きさが制限されることとなる。これに対して、本実施形態によれば、転動体35を第一内輪36の内輪転動面39に載置した後に軸方向から第一外輪31を挿入し、または、転動体35を第二外輪41の外輪転動面44に載置した後に軸方向から第二内輪46を挿入することで、内輪転動面39,49と外輪転動面34,44との間に複数の転動体35を配置するので、従来技術のように内輪と外輪との隙間によって個数や大きさの制限を受けることなく転動体35を配置できる。したがって、軸受装置10の剛性を所望に設定することができる。
また、第一外輪31および第二外輪41における外輪転動面34,44よりも軸方向における内側には、径方向の内側に向かって膨出する厚肉部25a,25bが形成され、厚肉部25a,25bの径方向の内側における先端部27a,27bが、軸方向から見て第一リテーナ60および第二リテーナ70と重なるように設けられているので、厚肉部25a,25bの厚みを十分確保するとともに、第一外輪31および第二外輪41の剛性をさらに向上させることができる。
【0067】
また、第一リテーナ60の本体部61および第二リテーナ70の本体部61を、それぞれ厚肉部25a,25bとは反対側(第一実施形態においては軸方向の外側)に配置することにより、第一リテーナ60および第二リテーナ70を設けた場合であっても、第一リテーナ60および第二リテーナ70と厚肉部25a,25bとの干渉を防止するとともに、一対の転がり軸受部30,40における厚肉部25a,25bの形成領域以外のスペースを有効活用できる。したがって、転動体35を周方向に均等配列できるとともに、軸受装置10の薄型化(軸方向の短縮化)ができる。
【0068】
また、予圧が付与された状態で第一内輪36および第二内輪46がシャフト20に固定されているので、いわゆる内輪予圧により軸受装置10を形成できる。また、第一外輪31および第二外輪41が固定される円筒状のスリーブ51を備えているので、厚肉部25a,25bにより第一外輪31および第二外輪41の剛性を確保しつつ、例えば情報記録再生装置1を構成するアーム8を装着した場合であっても、第一外輪31および第二外輪41の変形を防止できる。また、スリーブ51を設けることで、一対の転がり軸受部30,40の高剛性化ができ、軸受装置10の共振周波数(共振点)を高くできる。したがって、高速回転に対応可能な軸受装置10とすることができる。
【0069】
また、スリーブ51と第一外輪31および第二外輪41とを接着剤58により固定する場合に、凹部32,42に接着剤58を滞留させてスリーブ51と第一外輪31および第二外輪41とを確実に接着固定することができる。しかも、凹部32,42は、第一外輪31および第二外輪41のそれぞれの外周面において、厚肉部25a,25bに対応する位置に形成されているので、接着剤58の硬化時に接着剤58が収縮しても、厚肉部25a,25bにより第一外輪31および第二外輪41の変形を防止できる。これにより、スリーブ51に対して接着剤58により固定する際に第一外輪31および第二外輪41が変形するのを防止することができるので、軸受装置10が回動する際のトルクリップルおよびトルク増大を抑制できるとともに、軸受装置10の共振周波数(共振点)を高くできる。したがって、高速回転に対応可能な軸受装置10とすることができる。
【0070】
また、本実施形態の軸受装置10の製造方法によれば、リテーナ保持工程S13で予め複数の転動体35を第一リテーナ60および第二リテーナ70に保持させて環状に均等配列した後、第一転動体配置工程S17および第二転動体配置工程S21で、第一リテーナ60および第二リテーナ70ごと複数の転動体35を内輪転動面39および外輪転動面44に載置できる。これにより、一度に複数の転動体35を均等配列できるので、従来技術のように内輪と外輪とをずらしつつ転動体を内輪と外輪との間に挿入した後、複数の転動体を周方向に均等配列するという煩雑な作業が必要ないので、簡単に一対の転がり軸受部30,40を形成できる。
したがって、本実施形態の軸受装置10の製造方法によれば、上述のように厚肉部25a,25bにより第一外輪31および第二外輪41の剛性を確保できるとともに第一外輪31および第二外輪41の変形を防止でき、かつトルクリップルおよびトルク増大を抑制できる軸受装置10の製造コストを削減して、低コスト化ができる。
また、従来技術のように内輪と外輪とをずらしつつ転動体を内輪と外輪との間に挿入する場合、内輪と外輪との隙間の大きさにより、挿入可能な転動体の個数や大きさが制限されることとなる。これに対して、本実施形態の軸受装置10の製造方法によれば、第一内輪配置工程S11、第一外輪配置工程S19A、第二外輪配置工程S19B、および第二内輪配置工程S23を備えているので、転動体35を第一内輪36の内輪転動面39に載置した後に軸方向から第一外輪31を挿入し、または、転動体35を第二外輪41の外輪転動面44に載置した後に軸方向から第二内輪46を挿入することで、内輪転動面39,49と外輪転動面34,44との間に複数の転動体35を配置するので、従来技術のように内輪と外輪との隙間によって個数や大きさの制限を受けることなく転動体35を配置できる。したがって、軸受装置10の剛性を所望に設定することができる。
【0071】
また、本実施形態の情報記録再生装置1によれば、簡単な作業で製造できて低コスト化ができるとともに、トルクリップルおよびトルク増大を抑制でき、かつ軸受装置の共振周波数(共振点)を高くできる軸受装置10を備えているので、高性能な情報記録再生装置1の低コスト化ができる。
【0072】
(第一実施形態の第一変形例)
図12は、第一実施形態の第一変形例に係る軸受装置10の説明図である。
続いて、第一実施形態の第一変形例に係る軸受装置10について説明する。なお、以下では、第一実施形態と同様の構成部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
第一実施形態の軸受装置10は、シャフト20と、第一内輪36および第二内輪46とが別部品として形成されていた(
図2参照)。
これに対して、
図12に示す第一実施形態の第一変形例に係る軸受装置10のように、シャフト120と第一内輪36とが一体的に形成されていてもよい。
第一実施形態では、第一内輪配置工程S11において、第一内輪36をシャフト20に挿入し、シャフト20のフランジ部20aに外側端部36aを当接させて位置決めしつつシャフト20に第一内輪36を固定していた(
図2参照)。これに対して、第一実施形態の第一変形例では、シャフト120と第一内輪36とが一体的に形成されている。
【0073】
第一実施形態の第一変形例によれば、軸受装置10の部品点数をさらに削減できるので、軸受装置10のさらなる小型化、軽量化および低コスト化ができる。また、第一転がり軸受部30の第一内輪36をシャフト120に挿入する必要がないので、軸受装置10の組立工数を短縮して製造コストを削減できる。したがって、軸受装置10のさらなる低コスト化ができる。
なお、第一実施形態の第一変形例では、シャフト120と第一転がり軸受部30の第一内輪36とが一体的に形成されている場合を例に説明したが、シャフト120と第二転がり軸受部40の第二内輪46とが一体的に形成されていてもよい。すなわち、第一転がり軸受部30の第一内輪36および第二転がり軸受部40の第二内輪46のうちのいずれか一方がシャフト120と一体的に形成されていれば、上記の作用効果を得ることができる。
【0074】
(第一実施形態の第二変形例)
図13は、第一実施形態の第二変形例に係る軸受装置10の側面断面図である。
続いて、第一実施形態の第二変形例に係る軸受装置10について説明する。なお、以下では、第一実施形態と同様の構成部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
第一実施形態では、スリーブ51に第一外輪31および第二外輪41が挿入固定されており、スリーブ51、第一外輪31および第二外輪41が一体的に形成されて外輪組立体50を構成していた(
図2参照)。
これに対して、
図13に示す第一実施形態の第二変形例のように、スリーブを設けることなく、第一外輪31と第二外輪41とを一体形成してもよい。このとき、第一外輪31の厚肉部25aおよび第二外輪41の厚肉部25bについても、一体形成される。なお、
図13においては、第一外輪31と第二外輪41との境界を二点鎖線で図示している。
第一実施形態の第二変形例によれば、第一外輪31と第二外輪41とが一体形成されているので、一対の転がり軸受部30,40の高剛性化ができ、軸受装置10の共振周波数(共振点)を高くできる。したがって、第一実施形態の作用効果に加えて、高速回転に対応可能な軸受装置10とすることができる。
【0075】
(第二実施形態に係る軸受装置)
図14は、第二実施形態に係る軸受装置210の側面断面図である。
続いて、第二実施形態に係る軸受装置210について説明する。
第一実施形態および第一実施形態の各変形例に係る軸受装置10は、いわゆる内輪予圧により第一内輪36および第二内輪46に予圧が付与されていた(
図2、
図12および
図13参照)。
これに対して、
図14に示すように、第二実施形態に係る軸受装置210は、第一外輪31および第二外輪41がスリーブ51に挿入されるとともに、いわゆる外輪予圧により第一外輪31および第二外輪41に予圧が付与されている点で、第一実施形態および第一実施形態の各変形例に係る軸受装置10と異なっている。なお、以下では、第一実施形態および第一実施形態の各変形例と同様の構成部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。また、第二転がり軸受部40は、第一転がり軸受部30に対して面対称形状となるように配置されているため、第二転がり軸受部40については詳細な説明を省略する。
【0076】
第一内輪36は、軸方向の外側端部36aの外半径が、第一離間距離K1よりも小さく形成されている。内輪転動面39は、軸方向の外側から内側に向かって第一離間距離K1よりも外半径が漸次大きくなるように、側面断面が円弧状に形成されている。
第一外輪31は、軸方向の内側端部31bの内半径が、第二離間距離K2よりも大きく形成されている。第一外輪31の外輪転動面34は、軸方向の内側から外側に向かって第二離間距離K2よりも内半径が漸次小さくなるように、側面断面が円弧状に形成されている。外輪転動面34は、第一外輪31の内周面33の全周にわたって形成されており、環状に配置された複数の転動体35の外表面が当接可能となっている。
【0077】
厚肉部25aは、第一外輪31の外側端部31aから径方向の内側に張り出すように膨出している。厚肉部25aの内面26aは、第一外輪31の外輪転動面34と連続的に形成されている。第一外輪31の外周面には、厚肉部25aに対応する位置に、径方向に凹んだ凹部32が形成されている。本実施形態の凹部32は、第一外輪31の外周面の全周にわたって連続する溝状に形成されている。
【0078】
第一転がり軸受部30の第一内輪36と第二転がり軸受部40の第二内輪46との間には、スペーサ55が配置されている。スペーサ55は、例えばアルミニウムや鉄、ステンレス等の金属材料からなる部材であり、鍛造や機械加工等により形成されている。
スペーサ55の外径は、第一転がり軸受部30の第一内輪36における内側端部36bの外径、および第二転がり軸受部40の第二内輪46における内側端部46bの外径と略同一となるように形成されている。また、スペーサ55の内径は、第一内輪36および第二内輪46とともにシャフト20に挿入可能なように、第一内輪36の内径および第二内輪46の内径と略同一となるように形成されている。
スペーサ55を第一内輪36と第二内輪46との間に介在させることにより、軸方向に所定間隔だけ離間した状態で、第一転がり軸受部30および第二転がり軸受部40を配置できる。したがって、第一内輪36と第二内輪46との離間距離をスペーサ55により保持しつつ、第一外輪31と第二外輪41との離間距離を短縮して第一外輪31と第二外輪41とに予圧を付与できる。
【0079】
スリーブ51は、スペーサ55と同様に、例えばアルミニウムや鉄、ステンレス等の金属材料により略円筒状に形成されて、鍛造や機械加工等により形成されている。スリーブ51と第一外輪31および第二外輪41とは、例えば接着剤等により固定されている。スリーブ51を備えることにより、軸受装置210の外径を一様とすることができる。したがって、軸受装置210に対して、アーム8(
図1参照)を精度良く装着できるので、高性能な情報記録再生装置1(
図1参照)を形成できる。
【0080】
第二転がり軸受部40の第二外輪41を軸方向に沿って押圧することで、第一転がり軸受部30の第一外輪31および第二転がり軸受部40の第二外輪41に予圧が付与される。ここで、外輪転動面34,44と厚肉部25a,25bの内面26a,26bとの境界部分は、全周にわたって曲面形状に形成されており、機械的強度が十分に確保されているので、所望の予圧を付与できる。
第二実施形態の軸受装置210によれば、予圧が付与された状態で第一外輪31と第二外輪41とがスリーブ51に固定されているので、いわゆる外輪予圧により軸受装置210を形成できる。これにより、一対の転がり軸受部30,40の高剛性化ができ、軸受装置210の共振周波数(共振点)を高くできるので、高速回転に対応可能な軸受装置210とすることができる。
【0081】
なお、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0082】
シャフト20,120の形状は、各実施形態および各変形例に限定されることはない。また、第一リテーナ60および第二リテーナ70の形状や、転動体35の配置個数等は各実施形態に限定されない。例えば、各実施形態および各変形例の第一リテーナ60および第二リテーナ70は、爪部63が本体部61から軸方向に沿って立設されていた。これに対して、爪部63が本体部61から軸方向に対して傾斜するように、径方向の外側または径方向の内側に向かって立設されていてもよい。
また、各実施形態および各変形例においては、第一リテーナ60および第二リテーナ70を備えていたが、第一リテーナ60および第二リテーナ70を用いることなく、内輪転動面39,49と外輪転動面34,44との間に複数の転動体35を配置してもよい。
また、各部材を適宜一体形成してもよい。したがって、例えば、第二実施形態において、スペーサ55を設けることなく、第一内輪36と第二内輪46とを一体形成してもよい。
【0083】
第一リテーナ60および第二リテーナ70の配置方向は各実施形態および各変形例に限定されない。したがって、第一リテーナ60の本体部61が転動体35よりも軸方向の外側に配置され、第二リテーナ70の本体部61が転動体35よりも軸方向の内側に配置されていてもよい。ただし、厚肉部25a,25bとは反対側に第一リテーナ60および第二リテーナ70の本体部61を配置することで、厚肉部25a,25bと第一リテーナ60および第二リテーナ70との干渉を防止するとともに、厚肉部25a,25bの形成領域以外のスペースを有効活用でき、軸受装置10,210の薄型化(軸方向の短縮化)ができる点で、各実施形態および各変形例に優位性がある。
【0084】
第一実施形態では、情報記録再生装置1のアーム8の回動軸として軸受装置10を適用していたが、軸受装置10の適用は、情報記録再生装置1のアーム8の回動軸に限定されない。例えば、情報記録再生装置1のディスクDを回転させるスピンドルモータ7の回転軸として軸受装置10を適用してもよいし、レーザー光源を走査するためのポリゴンミラーの回動軸として軸受装置10を適用してもよい。
【0085】
また、第一実施形態および各変形例では、第一内輪36および第二内輪46を軸方向に沿って相対的に押圧した状態で、第一内輪36および第二内輪46をシャフト20に固定することにより予圧を付与し、第二実施形態では第一外輪31および第二外輪41を軸方向に沿って相対的に押圧した状態で、第一外輪31および第二外輪41をスリーブ51に固定することにより予圧を付与する、いわゆる定位置予圧を採用していた。これに対して、例えば、付勢部材を設け、第一内輪36および第二内輪46または第一外輪31および第二外輪41を軸方向に沿って相対的に押圧した状態で保持することにより予圧を付与する、いわゆる定圧予圧を採用してもよい。
【0086】
また、第二実施形態において、厚肉部25a,25bの先端部27a,27bを第一リテーナ60および第二リテーナ70の内周面よりも径方向の内側に配置し、第一内輪36および第二内輪46に対して近接配置することにより、第一内輪36と第一外輪31との隙間、および第二内輪46と第二外輪41との隙間を閉塞するようにしてもよい。これにより、厚肉部25a,25bは、第一外輪31および第二外輪41の強度を確保するとともに、軸受装置210の回転時における外部へのグリースの飛散やアウトガスの放出を抑制するシール部材としても機能できる。
【0087】
また、第一実施形態および第一実施形態の第一変形例では、第一外輪31および第二外輪41は、それぞれスリーブ51のスペーサ部53を介して設けられており、第一外輪31の内側端部31bと第二外輪41の内側端部41bとが離間していた。これに対して、例えば、スリーブ51のスペーサ部53を設けることなく、第一外輪31の内側端部31bと第二外輪41の内側端部41bとを当接させた状態で第一外輪31および第二外輪41を設けてもよい。また、例えば、スリーブ51を廃止するとともに、環状のスペーサを介して第一外輪31および第二外輪41を設けてもよい。
【0088】
また、第二実施形態では、第一内輪36および第二内輪46は、それぞれスペーサ55を介して設けられており、第一内輪36の内側端部36bと第二内輪46の内側端部46bとが離間していた。これに対して、例えば、スペーサ55を設けることなく、第一内輪36の内側端部36bと第二内輪46の内側端部46bとを当接させた状態で第一内輪36および第二内輪46を設けてもよい。
【0089】
また、第一実施形態および第二実施形態では、第一外輪31および第二外輪41の外周面にそれぞれ凹部32,42を設けていたが、第一内輪36および第二内輪46の内周面に凹部を設けてもよい。これにより、シャフト20に第一内輪36および第二内輪46を挿入して互いに接着する際、第一内輪36および第二内輪46の凹部に接着剤を滞留させることができる。
【0090】
また、第一実施形態では、第一外輪31および第二外輪41をスリーブ51に固定し、スリーブ51に対してアーム8を固定していたが、スリーブ51を設けることなく、第一外輪31および第二外輪41に対して直接アーム8を固定してもよい。
【0091】
また、各実施形態および各変形例における内輪転動面39,49および外輪転動面34,44は、それぞれ外半径および内半径が漸次変化する曲面状に形成されていた。これに対して、例えば内輪転動面39,49および外輪転動面34,44は、一部に平面部分を含んでいてもよい。
【0092】
また、各実施形態および各変形例をそれぞれ適宜組み合わせてもよい。例えば、第一実施形態の第一変形例と第二変形例とを組み合わせて、第一転がり軸受部30の第一内輪36とシャフト120とを一体形成するとともに、第一外輪31と第二外輪41とを一体形成してもよい。
【0093】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。