特許第6498860号(P6498860)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498860
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】車輌用灯具及び光学体
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/265 20180101AFI20190401BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20190401BHJP
   F21S 41/148 20180101ALI20190401BHJP
   F21S 41/29 20180101ALI20190401BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20190401BHJP
   F21W 103/10 20180101ALN20190401BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20190401BHJP
【FI】
   F21S41/265
   F21S41/143
   F21S41/148
   F21S41/29
   F21W102:13
   F21W103:10
   F21Y115:10
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-183852(P2013-183852)
(22)【出願日】2013年9月5日
(65)【公開番号】特開2015-53117(P2015-53117A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年8月3日
【審判番号】不服2017-19360(P2017-19360/J1)
【審判請求日】2017年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】内田 直樹
【合議体】
【審判長】 氏原 康宏
【審判官】 一ノ瀬 覚
【審判官】 仁木 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−71751(JP,A)
【文献】 特開平11−232906(JP,A)
【文献】 実公昭52−25159(JP,Y1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0268304(US,A1)
【文献】 特開平1−293311(JP,A)
【文献】 特開2002−286987(JP,A)
【文献】 特開昭62−153908(JP,A)
【文献】 実開昭60−184013(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第2187114(EP,A1)
【文献】 特開2013−152855(JP,A)
【文献】 特開2014−26741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/25 - 41/275
G02B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する光源と、
前記光源から出射された光の制御を行い複数の光学素子を有する光学体とを備え、
前記複数の光学素子における外周部の少なくとも一部同士が連結され、
前記複数の光学素子として樹脂製の第1のレンズと前記第1のレンズと別体で形成された樹脂製の第2のレンズが用いられ、
前記第1のレンズの上端部と下端部に後方へ突出された連結部が形成され、
前記第2のレンズの上端部と下端部に前方へ突出された連結部が形成され、
前記第1のレンズの連結部が前記第2のレンズの連結部に連結されることによって前記第1のレンズと前記第2のレンズが一体化され、
前記第1のレンズの光軸と前記第2のレンズの光軸が一致された
車輌用灯具。
【請求項2】
前記光源が前記第1のレンズと前記第2のレンズの合成主面における曲率半径の中心側に配置された
請求項1に記載の車輌用灯具。
【請求項3】
光源から出射された光の制御を行い複数の光学素子を有する光学体であって、
前記複数の光学素子における外周部の少なくとも一部同士が連結され、
前記複数の光学素子として樹脂製の第1のレンズと前記第1のレンズと別体で形成された樹脂製の第2のレンズが用いられ、
前記第1のレンズの上端部と下端部に後方へ突出された連結部が形成され、
前記第2のレンズの上端部と下端部に前方へ突出された連結部が形成され、
前記第1のレンズの連結部が前記第2のレンズの連結部に連結されることによって前記第1のレンズと前記第2のレンズが一体化され、
前記第1のレンズの光軸と前記第2のレンズの光軸が一致された
光学体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源から出射された光の制御を行う光学体及びこれを備えた車輌用灯具についての技術分野に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】独国特許出願公開第102008056403号明細書
【背景技術】
【0003】
車輌用灯具には、例えば、カバーとランプハウジングによって構成された灯具外筐の内部に、光源等を有する灯具ユニットが配置されたものがある。
【0004】
このような灯具ユニットには、光源から出射された光を制御する光学体として機能するレンズやリフレクター等が設けられている。例えば、レンズは光源から出射された光を所定の方向へ導くことにより制御して外部へ向けて照射する機能を有し、リフレクターは光源から出射された光をレンズ等へ向けて反射することにより制御する機能を有している。
【0005】
上記のような車輌用灯具には、光学体として複数の光学素子、例えば、複数のレンズが設けられたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1に記載された車輌用灯具にあっては、光学素子である二つのレンズとして補正レンズと凸レンズが設けられ、これらの二つのレンズが光軸方向において離隔して配置されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような複数の光学素子を有する車輌用灯具にあっては、これらの各光学素子間に位置ずれが生じていると、光源から出射された光の制御が適正に行われず、外部へ照射された光によって形成される配光パターンが良好に形成されなくなるおそれがある。従って、各光学素子間の高い位置精度が確保され、各光学素子がそれぞれ設計上の所定の位置に配置されている必要がある。
【0008】
そこで、本発明車輌用灯具及び光学体は、上記した問題点を克服し、複数の光学素子間の位置精度の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る車輌用灯具は、光を出射する光源と、前記光源から出射された光の制御を行い複数の光学素子を有する光学体とを備え、前記複数の光学素子における外周部の少なくとも一部同士が連結され、前記複数の光学素子として樹脂製の第1のレンズと前記第1のレンズと別体で形成された樹脂製の第2のレンズが用いられ、前記第1のレンズの上端部と下端部に後方へ突出された連結部が形成され、前記第2のレンズの上端部と下端部に前方へ突出された連結部が形成され、前記第1のレンズの連結部が前記第2のレンズの連結部に連結されることによって前記第1のレンズと前記第2のレンズが一体化され、前記第1のレンズの光軸と前記第2のレンズの光軸が一致されたものである。
【0010】
これにより、複数の光学素子における外周部の少なくとも一部同士が連結されることにより光学体が構成される。また、光学体から照射された光によって形成される配光パターンが鮮明に形成される。また、第1のレンズと第2のレンズを一体に形成する必要がないため、第1のレンズと第2のレンズの形状の自由度が向上する。また、第1のレンズと第2のレンズを薄型にすることができるため、射出成形において冷却され第1のレンズと第2のレンズが成形されるときのヒケの発生が抑制される。
【0011】
上記した本発明に係る車輌用灯具においては、前記複数の光学素子と前記連結部が一体に形成されて前記光学体が構成されることが望ましい。
【0012】
これにより、複数の光学素子間の位置決め作業が不要になる。
【0015】
上記した本発明に係る車輌用灯具においては、前記光源が前記第1のレンズと前記第2のレンズの合成主面における曲率半径の中心側に配置されることが望ましい。
【0016】
これにより、従来より用いられている光学ユニットの平凸レンズと同様に、光軸に対して広がる光を集光制御できるため、従来の光学ユニットの周辺部品を使用することが可能であり、製造コストの低減を図ることができる。
【0017】
本発明に係る光学体は、光源から出射された光の制御を行い複数の光学素子を有する光学体であって、前記複数の光学素子における外周部の少なくとも一部同士が連結され、前記複数の光学素子として樹脂製の第1のレンズと前記第1のレンズと別体で形成された樹脂製の第2のレンズが用いられ、前記第1のレンズの上端部と下端部に後方へ突出された連結部が形成され、前記第2のレンズの上端部と下端部に前方へ突出された連結部が形成され、前記第1のレンズの連結部が前記第2のレンズの連結部に連結されることによって前記第1のレンズと前記第2のレンズが一体化され、前記第1のレンズの光軸と前記第2のレンズの光軸が一致されたものである。
【0018】
これにより、複数の光学素子における外周部の少なくとも一部同士が連結されて光学体が構成される。また、光学体から照射された光によって形成される配光パターンが鮮明に形成される。また、第1のレンズと第2のレンズを一体に形成する必要がないため、第1のレンズと第2のレンズの形状の自由度が向上する。また、第1のレンズと第2のレンズを薄型にすることができるため、射出成形において冷却され第1のレンズと第2のレンズが成形されるときのヒケの発生が抑制される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数の光学素子における外周部の少なくとも一部同士が連結されるとともに、複数の光学素子として樹脂製の第1のレンズと前記第1のレンズと別体で形成された樹脂製の第2のレンズが用いられ、前記第1のレンズの上端部と下端部に後方へ突出された連結部が形成され、前記第2のレンズの上端部と下端部に前方へ突出された連結部が形成され、前記第1のレンズの連結部が前記第2のレンズの連結部に連結されることによって前記第1のレンズと前記第2のレンズが一体化され、前記第1のレンズの光軸と前記第2のレンズの光軸が一致されるため、複数の光学素子間の位置精度の向上を図ることができ、また、光学体から照射された光によって形成される配光パターンが鮮明に形成される。また、第1のレンズと第2のレンズを一体に形成する必要がないため、第1のレンズと第2のレンズの形状の自由度が向上する。また、第1のレンズと第2のレンズを薄型にすることができるため、射出成形において冷却され第1のレンズと第2のレンズが成形されるときのヒケの発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図2乃至図8と共に本発明車輌用灯具及び光学体の基本的構成例を示すものであり、本図は、車輌用灯具の概略縦断面図である。
図2】光学体の垂直断面図である。
図3】光学体の水平断面図である。
図4】別の車輌用灯具の概略縦断面図である。
図5】金型の内部に光学体を成形するための溶融樹脂が充填された状態を示す水平断面図である。
図6】溶融樹脂が固化され金型が離型されて光学体が成形された状態を示す水平断面図である。
図7】光学体の垂直面内における光路を示す模式図である。
図8】光学体の水平面内における光路を示す模式図である。
図9図10と共に本発明車輌用灯具及び光学体の実施の形態を示すものであり、本図は、連結部がそれぞれ設けられた二つのレンズを示す斜視図である。
図10】連結部がそれぞれ設けられた二つのレンズが連結された状態を示す斜視図である。
図11】本発明の比較例を示すものであり、一方のレンズの光軸が傾斜された例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明車輌用灯具及び光学体の基本的構成例と本発明を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。
【0022】
<車輌用灯具の概略構成>
車輌用灯具1は、例えば、車輌用前照灯であり、それぞれ車体の前端部における左右両端部に取り付けられて配置されている。
【0023】
車輌用灯具1は前方に開口された凹部を有するランプハウジング2とランプハウジング2の開口を閉塞するカバー3とを備えている(図1参照)。ランプハウジング2とカバー3によって灯具外筐4が構成され、灯具外筐4の内部空間は灯室5として形成されている。
【0024】
灯室5には灯具ユニット6が配置されている。灯具ユニット6は、放熱機能を有するヒートシンク7とヒートシンク7上に配置された光源モジュール8と光源モジュール8の前方に配置された光学体9とを有している。
【0025】
光源モジュール8はヒートシンク7上に配置された回路基板8aと回路基板8a上に搭載された光源8bとを有している。光源8bとしては、例えば、発光ダイオード(LED)が用いられている。尚、光源8bは発光ダイオードに限られることはなく、レーザーダイオード(LD)、放電灯、ハロゲンランプ、有機EL(Electro Luminescence)等の他の種類が用いられていてもよい。
【0026】
光源8bの駆動時には回路基板8aや光源8bに発生する熱がヒートシンク7に伝達され、ヒートシンク7から熱が放出されて光源ユニット8の温度上昇が抑制される。尚、光源8bとして放電灯、ハロゲンランプ、有機ELが用いられる場合にはヒートシンクは不要である。
【0027】
光源8bは光が前方へ向けて出射されるように配置されており、車輌用灯具1は光学体9に光源8bから出射された光が直接入射されて光学体9から配光制御された光が照射される所謂直射型の車輌用灯具である。尚、車輌用灯具1はパラボラ型のリフレクターを用いた所謂パラボラ光学系として構成することが可能である。
【0028】
<光学体の比較例
光学体9は、例えば、後述する金型に溶融樹脂が充填され金型に充填された溶融樹脂が冷却されて成形される射出成形によって一体に形成されている(図2及び図3参照)。光学体9は二つの光学素子として設けられ前後に離隔して位置された第1のレンズ11及び第2のレンズ12と両者を連結する連結部13、13とが一体に形成されて成る。光学体9は図示しないホルダーに保持された状態で灯室5に配置されている。
【0029】
第1のレンズ11と第2のレンズ12はそれぞれ水平断面形状で見て両凸状に形成されている。第1のレンズ11の光軸P1と第2のレンズ12の光軸P2とは一致されている(図2参照)。第1のレンズ11と第2のレンズ12の合成主面Sは、例えば、第1のレンズ11と第2のレンズ12の間に位置され、合成主面Sにおける曲率半径の中心側に光源8bが配置されている。
【0030】
連結部13、13はそれぞれ第1のレンズ11と第2のレンズ12の上端部間と下端部間を連結する位置に設けられている。
【0031】
上記したように、光学体9にあっては、第1のレンズ11の光軸P1と第2のレンズ12の光軸P2とが一致されているため、光学体9から照射された光によって形成される配光パターンが鮮明に形成され、良好な配光パターンを形成することができる。
【0032】
但し、本発明の比較例としては、光学体9において、光軸P1と光軸P2が平行にされているが一致されていないように構成することも可能である。
【0033】
また、第1のレンズ11と第2のレンズ12の合成主面Sにおける曲率半径の中心側に光源8bが配置されているため、各部の加工精度や組付精度等によって光源8bが第1のレンズ11と第2のレンズ12の合成焦点からずれて配置された場合においても、光学体9の高い結像性能を確保することができる。
【0034】
尚、上記には、直射型の車輌用灯具1を例として示したが、本発明においては、図4に示すように、光源モジュール8の上方にリフレクター10が配置され光源8bから出射された光がリフレクター10で反射されて光学体9に入射され光学体9から光が照射される所謂プロジェクター型の車輌用灯具1Aを用いることも可能である。
【0035】
この場合には、リフレクター10の反射面が略楕円曲面に形成され、リフレクター10の後側焦点に光源8bが配置され、リフレクター10の前側焦点が第2のレンズ12の後側焦点に一致される。
【0036】
<光学体の成形>
上記のように構成された光学体9は、第1の型50と第2の型60を有する金型70によって、以下のようにして成形される(図5及び図6参照)。
【0037】
先ず、第1の型50と第2の型60が突き合わされて金型70の内部にキャビティ71が形成され、キャビティ71に溶融樹脂100が充填される(図5参照)。キャビティ71は第1のレンズ11を成形するための第1の部分71aと第2のレンズ12を成形するための第2の部分71bと連結部13、13をそれぞれ成形するための第3の部分71c、71cとから成る(図5に一方の第3の部分71cのみ示す。)。第1の部分71aと第2の部分71bは第3の部分71c、71cによって連通されている。第1の部分71aと第2の部分71bは前後に離隔して位置され、第3の部分71c、71cは第1の部分71aと第2の部分71bの間において上下に離隔して位置されている。
【0038】
次に、溶融樹脂100が冷却されて固化される。
【0039】
続いて、第1の型50と第2の型60が左右方向において離型され、第1の部分71aによって第1のレンズ11が形成され、第2の部分71bによって第2のレンズ12が形成され、第3の部分71c、71cによってそれぞれ連結部13、13が形成され、光学体9が一体に形成される(図6参照)。
【0040】
このように第1のレンズ11と第2のレンズ12と連結体13、13が一体に形成されて光学体9が構成されるため、第1のレンズ11と第2のレンズ12のホルダーへの組付に際して第1のレンズ11と第2のレンズ12の位置決め作業を行う必要がなく作業性の向上を図ることができる。
【0041】
また、第1のレンズ11と第2のレンズ12が一体に形成された連結体13、13によって連結されているため、第1のレンズ11と第2のレンズ12の間の位置精度の向上を図ることができる。
【0042】
<光学体における制御>
上記のように構成された車輌用灯具1において、光源8bから光が出射されると、出射された光が第2のレンズ12から光学体9に入射されて制御され、光学体9及びレンズ3を透過されて外部へ照射される。このとき光学体9に入射された光が第2のレンズ12と第1のレンズ11の各面において順に屈折されることにより制御され、光学体9から平行光が照射される(図7及び図8参照)。
【0043】
尚、光学体9にあっては、上記したように、連結部13、13がそれぞれ光学体9の上下両端部に設けられており、第1のレンズ11から入射された光が連結部13、13に入射されないようにされている(図7参照)。このように光学体9に入射された光が連結部13、13には入射されないため、連結部13、13によって光が反射や屈折されることがなく、所望の配光パターンを形成することができる。
【0044】
但し、光学体9において、連結部13、13に光源8bから出射された光が入射され連結部13、13によって入射された光が反射又は屈折されて制御されるように構成することも可能である。また、連結部13、13は第1のレンズ11と第2のレンズ12の位置決め機能を有していればよく、光学体9を灯室5において固定する機能を有している必要はない。光学体9を灯室5において固定する機能は、例えば、光学体9を保持するホルダーが有していればよい。
【0045】
光学体の構成
上記には、第1のレンズ11と第2のレンズ12と連結部13、13が一体に形成された例を示したが、例えば、第1のレンズ11と第2のレンズ12が別体で形成され第1のレンズ11又は第2のレンズ12の少なくとも一方に連結部が一体に形成され第1のレンズ11と第2のレンズ12が連結部によって連結されてもよい。以下には、例として、第1のレンズ11と第2のレンズ12の双方に連結部が一体に形成された光学体9Aの例を示す(図9及び図10参照)。
【0046】
光学体9Aには第1のレンズ11の上端部と下端部にそれぞれ後方へ突出された連結部14、14が一体に形成されている。連結部14の後面には後方へ突出された結合ピン14a、14aが左右に離隔して設けられている。
【0047】
第2のレンズ12の上端部と下端部にはそれぞれ前方へ突出された連結部15、15が一体に形成されている。連結部15の後面には前方に開口された結合穴15a、15aが左右に離隔して形成されている。
【0048】
連結部14、14の結合ピン14a、14a、・・・がそれぞれ連結部15、15の結合穴15a、15a、・・・に嵌合され、連結部14、14、15、15によって第1のレンズ11と第2のレンズ12が連結される。
【0049】
このように第1のレンズ11と第2のレンズ12が別体で形成され連結部14、14、15、15によって第1のレンズ11と第2のレンズ12が連結されるように構成することにより、第1のレンズ11と第2のレンズ12を一体に形成する必要がないため、第1のレンズ11と第2のレンズ12の形状の自由度の向上を図ることができる。
【0050】
尚、上記には、連結部14に結合ピン14a、14aが設けられ連結部15に結合穴15a、15aが形成された例を示したが、逆に、連結部14に結合穴が形成され連結部15に結合ピンが設けられていてもよい。
【0051】
また、上記には、第1のレンズ11と第2のレンズ12の双方に連結部が一体に設けられた例を示したが、第1のレンズ11又は第2のレンズ12の一方に連結部が設けられていてもよい。この場合に、連結部に結合ピンが設けられているときには連結部が設けられていない第1のレンズ11又は第2のレンズ12に結合穴が形成されていればよく、連結部に結合穴が形成されているときには連結部が設けられていない第1のレンズ11又は第2のレンズ12に結合ピンが設けられていればよい。
【0052】
<まとめ>
以上に記載した通り、車輌用灯具1、1Aにあっては、第1のレンズ11及び第2のレンズ12が第1のレンズ11と第2のレンズ12の少なくとも一方の外周部に一体に形成された連結部13、13(14、14又は15、15)によって連結されて光学体9(9A)が構成されている。
【0053】
従って、第1のレンズ11又は第2のレンズ12の少なくとも一方に連結部13、13(14、14又は15、15)が一体に形成されているため、第1のレンズ11と第2のレンズ12の位置精度の向上を図ることができる。
【0054】
また、光学体9、9Aが第1のレンズ11と第2のレンズ12の2枚のレンズによって構成されているため、全体を1枚のレンズによって構成する場合に比し第1のレンズ11と第2のレンズ12を薄型にすることができ、光学体9、9Aの全体としての薄型化を図ることが可能になる。特に、光学体9、9Aが2枚のレンズによって構成されることにより、光学体が1枚のレンズによって構成される場合に比し、光が屈折される面が2面から4面に増えるため、第1のレンズ11と第2のレンズ12の各面の曲率を小さくでき、光学体9、9Aの全体としての薄型化を図ることが可能になる。
【0055】
特に、第1のレンズ11と第2のレンズ12を薄型にすることができるため、射出成形において冷却されて第1のレンズ11と第2のレンズ12が成形されるときのヒケの発生が抑制され、光学体9、9Aの成形精度の向上を図ることができる。
【0056】
<その他>
光学体9、9Aにおいては、第1のレンズ11又は第2のレンズ12の少なくとも一方をフレネルレンズとして形成することが可能である。第1のレンズ11又は第2のレンズ12の少なくとも一方をフレネルレンズとして形成することにより、光学体9、9Aの薄型化を図ることができる。
【0057】
また、フレネルレンズの外周側にフレネルレンズにおける外周部の曲面に連続する曲面を有する別のレンズを配置することも可能である。これにより光学体9、9Aが外部から視認されたときの見栄えの向上を図ることができる。
【0058】
さらに、第1のレンズ11又は第2のレンズ12の少なくとも一方に着色が施されていてもよく、第1のレンズ11又は第2のレンズ12の少なくとも一方が回折レンズ(DOE:Diffractive Optical Element)にされていてもよい。
【0059】
さらにまた、第1のレンズ11と第2のレンズ12のレンズ面の少なくとも一面に反射防止用のコーティングや反射防止用の微細構造が形成されていてもよい。
【0060】
尚、上記には、第1のレンズ11と第2のレンズ12の二つのレンズを有する光学体9、9Aを例として説明したが、本発明における光学体は3枚以上のレンズを有し、これらの各レンズがそれぞれ連結部によって連結されていてもよい。
【0061】
また、上記には、光学体9、9Aが樹脂材料によって形成された例を示したが、光学体はガラスによって形成されていてもよい。
【0062】
さらに、上記には、複数の光学素子として複数のレンズが用いられた例を示したが、本発明の比較例としては、複数の光学素子が何れもレンズに限られることはなく、例えば、複数の光学素子としてレンズとリフレクターの組み合わせ等のレンズ以外の光学素子が用いられていてもよい。
【0063】
さらにまた、光学体9、9Aの形状は図7及び図8に示した形状に限られることはなく、光の屈折方向が光軸から離隔する方向になるように光学体9、9Aの形状を形成することも可能である。このような構成は、路面配光の拡散領域への利用に好適であると共に広範囲への光の照射を必要とする標識灯にも適用が可能になる。
【0064】
また、上記には、第1のレンズ11の光軸P1と第2のレンズ12の光軸P2が平行な例を示したが、本発明の比較例としては、図11に示すように、一方のレンズ、例えば、第2のレンズ12を第1のレンズ11に対して傾斜させて第2のレンズ12の光軸P2が第1のレンズ11の光軸P1に対して傾くように構成することも可能である。
【0065】
このような構成にすることにより、他の構造物50が存在する場合に構造物50との干渉を回避した状態で光学体9、9Aを配置することが可能になる。また、第2のレンズ12が傾斜されることにより、車輌用前照灯1、1Aの前後方向における小型化及び設計の自由度の向上を図ることが可能になる。
【0066】
また、上記した光学体9、9Aは、例えば、クリアランスランプ等の車輌用標識灯の光学モジュール用のレンズとしても適用することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…車輌用灯具、2…ランプハウジング、3…カバー、4…灯具外筐、6…灯具ユニット、8b…光源、9…光学体、1A…車輌用前照灯、11…第1のレンズ、12…第2のレンズ、13…連結部、9A…光学体、14…連結部、15…連結部
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11