特許第6498868号(P6498868)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6498868データ送信機、データ通信システム、データ送信方法、およびデータ送信プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498868
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】データ送信機、データ通信システム、データ送信方法、およびデータ送信プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/7156 20110101AFI20190401BHJP
   H04L 7/04 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   H04B1/7156
   H04L7/04 100
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-89707(P2014-89707)
(22)【出願日】2014年4月24日
(65)【公開番号】特開2015-211242(P2015-211242A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2017年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】599161890
【氏名又は名称】NECネットワーク・センサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】松永 博志
【審査官】 原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−318869(JP,A)
【文献】 特開平08−288929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/7156
H04L 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたデジタルデータに基づいて、所定のパケット単位で所定のサンプリング処理を行ってベースバンド信号を生成するパケット単位処理手段と、
前記パケット単位処理手段が生成した前記ベースバンド信号に基づいて出力信号を生成する出力信号生成手段と、
前記出力信号生成手段が生成した前記出力信号を所定のタイミングで周波数ホッピングさせて送信する送信手段とを備え、
前記パケット単位処理手段は、
前記送信手段が前記出力信号の前記周波数ホッピングを予め決められたタイミングで開始するように、前記周波数ホッピングが開始されるときに送信開始される、入力された前記デジタルデータの前に所定のフレームデータを付加するフレーム付加手段を含み、
前記フレーム付加手段によって前記所定のフレームデータが付加されたデジタルデータに前記所定のパケット単位で前記所定のサンプリング処理を施す
ことを特徴とするデータ送信機。
【請求項2】
前記パケット単位処理手段は、前記所定のフレームデータが付加されたデジタルデータに所定のサンプリング周波数で前記所定のサンプリング処理を施して、I成分とQ成分とを有する前記ベースバンド信号を生成する
請求項1に記載のデータ送信機。
【請求項3】
前記予め決められたタイミングは、前記出力信号のうち前記入力されたデジタルデータに応じた部分を送信開始するときである
請求項1または請求項2に記載のデータ送信機。
【請求項4】
前記フレーム付加手段は、前記出力信号において、前記周波数ホッピングが開始されるタイミングと前記デジタルデータが送信開始されるタイミングとの間隔が所定の間隔になるように構成されたデータを含む前記フレームデータを前記デジタルデータの前に付加する
請求項1から請求項3のうちいずれかに記載のデータ送信機。
【請求項5】
前記パケット単位処理手段は、プログラム制御に従って処理を実行するプロセッサである
請求項1から請求項4のうちいずれかに記載のデータ送信機。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうちいずれかに記載のデータ送信機と、
前記データ送信機が送信した前記出力信号に基づく電波を受信するデータ受信機と
を備えた
ことを特徴とするデータ通信システム。
【請求項7】
入力されたデジタルデータに基づいて、所定のパケット単位で所定のサンプリング処理を行ってベースバンド信号を生成するパケット単位処理ステップと、
前記パケット単位処理ステップで生成した前記ベースバンド信号に基づいて出力信号を生成する出力信号生成ステップと、
前記出力信号生成ステップで生成した前記出力信号を所定のタイミングで周波数ホッピングさせて送信する送信ステップとを含み、
前記パケット単位処理ステップで、
前記送信ステップにおいて前記出力信号の前記周波数ホッピングを予め決められたタイミングで開始するように、前記周波数ホッピングが開始されるときに送信開始される、入力された前記デジタルデータの前に所定のフレームデータを付加し、前記所定のフレームデータが付加されたデジタルデータに前記所定のパケット単位で前記所定のサンプリング処理を施す
ことを特徴とするデータ送信方法。
【請求項8】
コンピュータに、
入力されたデジタルデータに基づいて、所定のパケット単位で所定のサンプリング処理を行ってベースバンド信号を生成するパケット単位処理と、
前記パケット単位処理で生成した前記ベースバンド信号に基づいて出力信号を生成する出力信号生成処理と、
前記出力信号生成処理で生成した前記出力信号を所定のタイミングで周波数ホッピングさせて送信する送信処理とを実行させ、
前記パケット単位処理で、
前記送信処理において前記出力信号の前記周波数ホッピングが予め決められたタイミングで開始されるように、前記周波数ホッピングが開始されるときに送信開始される、入力された前記デジタルデータの前に所定のフレームデータを付加するフレーム付加処理を実行させ、
前記フレーム付加処理によって前記所定のフレームデータが付加されたデジタルデータに前記所定のパケット単位で前記所定のサンプリング処理を施させる
ためのデータ送信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数ホッピングの技術を用いて通信を行うデータ送信機、データ受信機、データ通信システム、データ送信方法、およびデータ送信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信機器間の通信の機密性を高める等の目的のために、通信に用いる電波の周波数を所定の時間間隔で切り替える周波数ホッピングの技術が採用されている。周波数ホッピングが採用された通信システムでは、送信側は、2.5ミリ秒や4ミリ秒等の極めて短い時間間隔で搬送周波数を切り替えて信号を送信する。受信側は、送信側の周波数の切り替えタイミングに合わせて(同期を図って)、受信する搬送周波数を切り替え、送信された信号を受信する。
【0003】
周波数ホッピングが採用された通信システムにおいて、搬送波を変調する送信側の変調器と、変調された搬送波を復調する受信側の復調器とは、一般に、いずれも専用のハードウェアによってそれぞれ構成されている。
【0004】
特許文献1に記載されている方法では、送信側が、搬送波を所定の同期ワードを含むデータで変調し、パケット化して送信する。そして、受信側が、受信したパケットを復調したデータに含まれる当該同期ワードに基づいて、ペイロード等の開始位置を検出する。
【0005】
特許文献2に記載されている方法では、所定のデータ間隔で送信される通知信号と同期ワードとに基づいて、フレーム同期位置が特定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−45012号公報
【特許文献2】特開2004−153693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、送信側の変調器と受信側の復調器とを専用のハードウェアで構成した場合には、いずれも予め定められた動作のみを行うため、予め定められた種類の変調方式およびフレーム以外に対応することができない。
【0008】
特許文献1に記載されている方法は、送信側および受信側における各処理をビットごとに行っている。また、特許文献2に記載されている方法は、所定のクロック周波数に基づいてサンプリングされたデータに応じて、DSP(Digital Signal Processor)において各処理が行われている。
【0009】
しかし、ビットやクロック周波数に基づいてサンプリングされたデータという小さい単位ごとに各処理を行うように構成された場合には、処理効率が低いという問題がある。処理効率が低いと、送信側の変調器と受信側の復調器とを専用のハードウェアで構成しなければならず、予め定められた種類の変調方式およびフレーム以外に対応することができない。
【0010】
そこで、本発明は、周波数ホッピングで通信する送信側と受信側とが高い処理効率で同期することができるデータ送信機、データ受信機、データ通信システム、データ送信方法、およびデータ送信プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によるデータ送信機は、入力されたデジタルデータに基づいて、所定のパケット単位で所定のサンプリング処理を行ってベースバンド信号を生成するパケット単位処理手段と、パケット単位処理手段が生成したベースバンド信号に基づいて出力信号を生成する出力信号生成手段と、出力信号生成手段が生成した出力信号を所定のタイミングで周波数ホッピングさせて送信する送信手段とを備え、パケット単位処理手段は、送信手段が出力信号の周波数ホッピングを予め決められたタイミングで開始するように、入力されたデジタルデータの前に所定のフレームデータを付加するフレーム付加手段を含み、フレーム付加手段によって所定のフレームデータが付加されたデジタルデータに所定のパケット単位で所定のサンプリング処理を施すことを特徴とする。
【0012】
本発明によるデータ受信機は、所定のタイミングで周波数ホッピングが開始される電波の受信処理を行う受信手段と、受信処理による受信信号に基づくデジタルデータの生成処理を所定のパケット単位で行うデジタルデータ生成手段と、デジタルデータに含まれている所定のデータに基づいて、周波数ホッピングが開始されるタイミングを算出する周波数切替算出手段と、周波数切替算出手段が算出したタイミングに基づいて、周波数ホッピングが開始された電波の受信処理を受信手段に行わせる周波数切替手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明によるデータ通信システムは、いずれかの態様のデータ送信機、および所定のタイミングで周波数ホッピングが開始され、データ送信機が送信した出力信号に基づく電波の受信処理を行う受信手段と、受信処理による受信信号に基づくデジタルデータの生成処理を所定のパケット単位で行うデジタルデータ生成手段と、デジタルデータに含まれている所定のデータに基づいて、周波数ホッピングが開始されるタイミングを算出する周波数切替算出手段と、周波数切替算出手段が算出したタイミングに基づいて、周波数ホッピングが開始された電波の受信処理を受信手段に行わせる周波数切替手段とを備えたことを特徴とするデータ受信機を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明によるデータ送信方法は、入力されたデジタルデータに基づいて、所定のパケット単位で所定のサンプリング処理を行ってベースバンド信号を生成するパケット単位処理ステップと、パケット単位処理ステップで生成したベースバンド信号に基づいて出力信号を生成する出力信号生成ステップと、出力信号生成ステップで生成した出力信号を所定のタイミングで周波数ホッピングさせて送信する送信ステップとを含み、パケット単位処理ステップで、送信ステップにおいて出力信号の周波数ホッピングを予め決められたタイミングで開始するように、入力されたデジタルデータの前に所定のフレームデータを付加し、所定のフレームデータが付加されたデジタルデータに所定のパケット単位で所定のサンプリング処理を施すことを特徴とする。
【0015】
本発明によるデータ送信プログラムは、コンピュータに、入力されたデジタルデータに基づいて、所定のパケット単位で所定のサンプリング処理を行ってベースバンド信号を生成するパケット単位処理と、パケット単位処理で生成したベースバンド信号に基づいて出力信号を生成する出力信号生成処理と、出力信号生成処理で生成した出力信号を所定のタイミングで周波数ホッピングさせて送信する送信処理とを実行させ、パケット単位処理で、送信処理において出力信号の周波数ホッピングが予め決められたタイミングで開始されるように、入力されたデジタルデータの前に所定のフレームデータを付加するフレーム付加処理を実行させ、フレーム付加処理によって所定のフレームデータが付加されたデジタルデータに所定のパケット単位で所定のサンプリング処理を施させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、周波数ホッピングで通信する送信側と受信側とを高い処理効率で同期させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態の通信システムの構成例を示すブロック図である。
図2】送信側通信機器の動作を示すフローチャートである。
図3】フレーム付加部によってフレームデータがユーザデータに付加されたビットデータの構成を示す説明図である。
図4】受信側通信機器の動作を示すフローチャートである。
図5】受信側通信機器における受信信号の処理結果を示す説明図である。
図6】本発明の第2の実施形態のデータ送信機の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施形態1.
本発明の第1の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態の通信システムの構成例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態の通信システム100は、送信側通信機器200と受信側通信機器300とを含む。
【0019】
送信側通信機器200は、プログラム制御に従って処理を実行するDSP210およびFPGA(Field−Programmable Gate Array)220と、記憶部230と、通信部240とを含む。DSP210は、フレーム付加部211、ビット−シンボル変換部212、帯域制限フィルタ部213、アップサンプラ部214、および周波数設定部215を含み、所定の大きさのデータの単位である所定のパケット単位で、入力されたユーザデータを処理する。また、FPGA220は、直交変調部221および周波数切替タイミング発生部222を含む。通信部240は、アンテナ243を介して出力信号を送信するアナログ送信部241と、当該アナログ送信部241に出力信号の送信周波数を切り替えさせる周波数切替部242とを含む。
【0020】
送信側通信機器200において、フレーム付加部211は、ユーザによって入力されたユーザデータに所定のフレームデータを付加する。ビット−シンボル変換部212は、ユーザデータにフレームデータが付加されたビットデータをシンボルデータに変換したベースバンド信号を生成して、帯域制限フィルタ部213に入力する。ベースバンド信号は、互いに直交するI(In−phase)成分とQ(Quadrature)成分とを有し、帯域制限フィルタ部213およびアップサンプラ部214を通過した後に直交変調部221で直交変調される。そして、直交変調部221は、アップサンプラ部214を通過したベースバンド信号に基づいて、例えば、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)信号を生成する。
【0021】
また、記憶部230には、周波数ホッピングで用いられる周波数が所定のホッピングパターンに応じた順序でテーブル形式で記憶されている。周波数設定部215は、記憶部230に記憶されているテーブルに基づいて、送信側通信機器200から送信される出力信号の送信周波数を決定する。すなわち、周波数設定部215は、例えば、所定のホッピングパターンに基づいて出力信号の送信周波数を決定する。周波数切替タイミング発生部222は、フレーム付加部211がユーザデータにフレームデータを付加したタイミングに基づくタイミングで、周波数設定部215が決定した送信周波数を示す周波数情報を周波数切替部242に入力する。
【0022】
周波数切替部242は、周波数切替タイミング発生部222が周波数情報を入力したときに、アナログ送信部241が送信する出力信号の送信周波数を当該周波数情報によって示された周波数に切り替えさせ、周波数ホッピングを行う。
【0023】
受信側通信機器300は、プログラム制御に従って処理を実行するDSP310およびFPGA320と、通信部340とを含む。通信部340は、送信された出力信号をアンテナ343を介して受信するアナログ受信部341と、当該アナログ受信部341に、受信する受信信号の周波数を切り替えさせる周波数切替部342とを含む。FPGA320は、直交復調部321および周波数切替タイミング発生部322を含む。DSP310は、帯域制限フィルタ部311、シンボルタイミング検出部312、シンボル−ビット変換部313、フレーム除去部314、同期ワード検出部315、および周波数切替タイミング算出部316を含み、所定の大きさのデータの単位である所定のパケット単位で、入力された信号を処理する。
なお、DSP310における処理単位である所定のパケット単位は、DSP210の処理単位である所定のパケット単位と同じデータの大きさであってもよいし、異なるデータの大きさであってもよい。
【0024】
受信側通信機器300において、送信された出力信号をアンテナ343を介してアナログ受信部341が受信して、受信信号を直交復調部321に入力する。直交復調部321は、入力された受信信号に基づいて、I成分とQ成分とを有するベースバンド信号を生成して帯域制限フィルタ部311に入力する。帯域制限フィルタ部311は、例えば、プログラム制御に従って数kHz〜数十kHz以下の周波数の信号を通過させるルートナイキストフィルタ等のローパスフィルタとして動作するDSP310によって実現される。
【0025】
帯域制限フィルタ部311を通過した信号は、シンボルタイミング検出部312を介してシンボル−ビット変換部313に入力されて、ビットデータに変換される。当該ビットデータは、フレーム除去部314によってフレームデータが除去されて出力される。また、当該ビットデータは、同期ワード検出部315にも入力されて、フレームデータに含まれている同期ワードを検出する。周波数切替タイミング算出部316は、同期ワード検出部315が検出した同期ワードに基づいて、アナログ受信部341が受信する受信信号の周波数を切り替えるタイミングを算出する。周波数切替タイミング発生部322は、周波数切替タイミング算出部316が算出したタイミングに基づいて、周波数切替部342に周波数切り替えのタイミングを指示する。周波数切替部342は、周波数切替タイミング発生部322の指示に応じて、アナログ受信部341に受信周波数を切り替えさせる。
【0026】
なお、受信側通信機器300は、例えば、周波数ホッピングで用いられる周波数が所定のホッピングパターンに応じた順序でテーブル形式で記憶されている記憶部(図示せず)を有する。そして、例えば、周波数切替部342は、記憶部に記憶されている周波数を読み出し、アナログ受信部341に、読み出した周波数に受信周波数を切り替えさせる。
【0027】
次に、本発明の第1の実施形態の通信システム100の動作について説明する。まず、送信側通信機器200の動作について説明する。図2は、送信側通信機器200の動作を示すフローチャートである。図2に示すように、送信側通信機器200は、ユーザデータが入力されると、DSP210のフレーム付加部211が当該ユーザデータの先頭にパケット単位でフレームデータを付加する処理を行う(ステップS101)。
【0028】
具体的には、例えば、フレームデータが4つのパケットからなる場合に、ステップS101において、ユーザデータにフレームデータを付加する処理は4回行われる。それに対して、例えば、フレームデータを数十個に小分けにして、所定のサンプリング周波数に基づくサンプリングのタイミングで順次ユーザデータに付加するように構成された場合には、ユーザデータにフレームデータを付加する処理は、数十回に亘って行われる。したがって、本実施形態によれば、所定のサンプリング周波数に基づくサンプリングのタイミングでフレームデータを付加する場合に比べて、処理の回数を減らすことができる。よって、DSP210の処理負荷を良好に軽減することができる。なお、DSP210において以下に述べる各処理もパケット単位で行われるので、当該DSP210の処理負荷を良好に軽減することができる。
【0029】
図3は、フレーム付加部211によってフレームデータがユーザデータに付加されたビットデータの構成を示す説明図である。図3に示すように、フレーム付加部211は、ユーザデータの先頭に、プリアンブルと同期ワードと同期データとからなるフレームデータを付加する。また、フレーム付加部211は、ユーザデータを所定のデータ単位で分割し、分割した各ユーザデータ間およびフレームデータとの間に、図3において「G」で示されているガードビットを挿入する。
【0030】
同期ワードは、例えば、周波数ホッピングが開始されることを示す情報である。同期データは、例えば、ユーザデータの先頭を予め決められた位置にするための予め決められた長さのデータである。
【0031】
本実施形態では、フレームデータが送信された後においてユーザデータの送信が開始されたときに、周波数ホッピングが開始される。そして、所定のデータ単位で分割された各ユーザデータ間の各ガードビットが送信されるタイミングで周波数ホッピングがそれぞれ行われる。
【0032】
なお、DSP210のフレーム付加部211は、ユーザデータの先頭にフレームデータを付加したときに、その旨をFPGA220の周波数切替タイミング発生部222に通知する。
【0033】
ビット−シンボル変換部212は、ステップS101の処理でフレーム付加部211によってフレームデータがユーザデータに付加されたビットデータをシンボルデータに変換する処理をパケット単位で行い(ステップS102)、ベースバンド信号を生成する。そして、ビット−シンボル変換部212は、互いに直交するI成分とQ成分とを有するベースバンド信号を帯域制限フィルタ部213にパケット単位で入力する。なお、ベースバンド信号におけるI成分をI信号ともいい、ベースバンド信号におけるQ成分をQ信号ともいう。
【0034】
帯域制限フィルタ部213は、例えば、プログラム制御に従ってルートナイキストフィルタ等のローパスフィルタとして動作するDSP210によって実現される。そして、帯域制限フィルタ部213は、例えば、数kHz〜数十kHz以下の周波数の信号を通過させるフィルタリング処理を行う(ステップS103)。
【0035】
また、帯域制限フィルタ部213を通過したベースバンド信号は、DSP210のアップサンプラ部214に入力される。アップサンプラ部214は、入力されたベースバンド信号をシンボルデータのサンプリングレート(シンボルレート)よりも高い周波数でサンプリングする処理をパケット単位で行う(ステップS104)。具体的には、例えば、アップサンプラ部214は、シンボルレートが8kHzであるベースバンド信号を、当該シンボルレートの8倍である64kHzでサンプリングする処理をパケット単位で行う。なお、アップサンプラ部214は、ベースバンド信号をシンボルレートの10倍等の他の周波数でサンプリングしてもよい。
【0036】
そして、アップサンプラ部214は、サンプリングしたベースバンド信号、つまりアップサンプルしたベースバンド信号をFPGA220の直交変調部221に入力する。直交変調部221は、入力されたベースバンド信号のI信号とQ信号とを直交振幅変調する(ステップS105)。
【0037】
直交変調部221は、I信号とQ信号とを、例えば、QPSK(四位相偏移変調:Quadrature Phase Shift Keying)や、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、π/4QPSK、FSK(周波数偏移変調:Frequency Shift Keying)等の変調方式で直交振幅変調する。
【0038】
直交変調部221は、ベースバンド信号のI信号とQ信号とを直交振幅変調した出力信号を通信部240のアナログ送信部241に入力する(ステップS106)。
【0039】
アナログ送信部241は、ステップS106の処理で入力された出力信号がユーザデータに基づく出力信号でない場合に(ステップS107のN)、当該出力信号をアンテナ243に出力する(ステップS108)。ステップS106の処理で入力された出力信号がユーザデータに基づく出力信号でない場合とは、出力信号がフレームデータに基づく信号である場合である。前述したように、本実施形態では、出力信号がフレームデータに基づく信号である場合には、周波数ホッピングは行われない。したがって、アナログ送信部241は、出力信号がフレームデータに基づく信号である場合には、所定の送信周波数で出力信号をアンテナ243に出力する。そして、出力信号は、アンテナ243によって電波に変換されて送信される。
【0040】
また、ステップS106の処理で入力された出力信号がユーザデータに基づく出力信号である場合に(ステップS107のY)、周波数の切り替えタイミングであるときに(ステップS109のY)、以下の処理が行われる。すなわち、周波数切替タイミング発生部222は、フレーム付加部211からユーザデータの先頭にフレームデータを付加したことを通知された場合に、周波数設定部215に記憶部230から所定のホッピングパターンに応じた周波数を読み出させる。そして、周波数設定部215に、記憶部230から読み出させた周波数を出力信号の送信周波数に決定させる(ステップS110)。
【0041】
周波数切替タイミング発生部222は、周波数設定部215が決定した送信周波数を示す周波数情報を周波数切替部242に入力する。周波数切替部242は、周波数切替タイミング発生部222が周波数情報を入力したときに、以下の処理を行う。すなわち、周波数切替部242は、アナログ送信部241に、送信する出力信号の送信周波数を当該周波数情報によって示された周波数に切り替えさせて(ステップS111)、当該出力信号をアンテナ243に出力する(ステップS112)。
【0042】
なお、周波数の切り替えタイミングでないときに(ステップS109のN)、アナログ送信部241は、送信する出力信号の送信周波数を切り替えることなく当該出力信号をアンテナ243に出力させる(ステップS112)。そして、出力信号は、アンテナ243によって電波に変換されて送信される。
【0043】
そして、送信側通信機器200に入力されたユーザデータが全て送信された場合に(ステップS113のY)、処理を終了し、送信されていないユーザデータがある場合に(ステップS113のN)、ステップS102の処理に移行する。
【0044】
次に、受信側通信機器300の動作について説明する。図4は、受信側通信機器300の動作を示すフローチャートである。図5は、受信側通信機器300における受信信号の処理結果を示す説明図である。
【0045】
図4に示すように、受信側通信機器300において、アンテナ243を介して送信された出力信号はアンテナ343によって受信されると(ステップS201)、図5(a)に例示した受信信号に変換されて受信処理を行うアナログ受信部341に順次入力される。アナログ受信部341は、アンテナ343によって順次入力された受信信号をFPGA320の直交復調部321に順次入力する。直交復調部321は、受信信号から、I成分とQ成分とを有するベースバンド信号を取り出す復調処理を行う(ステップS202)。具体的には、直交復調部321は、例えば、受信信号に正弦波を混合して順次I信号を取り出す。また、直交復調部321は、例えば、受信信号に余弦波を混合して順次Q信号を取り出す。
【0046】
DSP310は、FPGA320が取り出したI信号とQ信号とを所定のパケット単位で順次取り込み(図5(b)参照)、DSP310の帯域制限フィルタ部311を通過させる(ステップS203)。そして、DSP310のシンボルタイミング検出部312は、順次取り込まれたI信号とQ信号とをパケット単位で所定のサンプリング周波数で順次サンプリングする。シンボルタイミング検出部312は、I信号とQ信号とのサンプリング結果における各シンボルの間の区切りを検出する処理を、前述したパケット単位で順次行う(ステップS204)。
【0047】
DSP310のシンボル−ビット変換部313は、ステップS204の処理でシンボルタイミング検出部312が検出した各シンボル間の区切りに基づいて、前述したパケット単位で各シンボルをビットデータにそれぞれ変換する(ステップS205)。
【0048】
したがって、DSP310のシンボル−ビット変換部313によるパケット単位のステップS205の処理によって、図3に示す送信されたビットデータと同様なビットデータをパケット単位で順次得ることができる(図5(c)参照)。
【0049】
そして、シンボル−ビット変換部313は、変換後のビットデータをフレーム除去部314と同期ワード検出部315とにパケット単位で順次入力する。フレーム除去部314は、入力されたビットデータにフレームデータが含まれていた場合に、当該フレームデータを除去して、受信側通信機器300から出力する(ステップS206)。そして、アナログ受信部341に入力された受信信号に基づくデータの処理が終了した場合に(ステップS207のY)、処理を終了する。
【0050】
アナログ受信部341に入力された受信信号に基づくデータの処理が終了していない場合に(ステップS207のN)、同期ワード検出部315は、以下の処理を行う。すなわち、シンボル−ビット変換部313が順次入力した図5(c)に示すビットデータから同期ワードの検出を試みる。図5(b),(c)に示す例では、同期ワード検出部315は、パケットcが変換されたビットデータから、同期ワードを検出する。なお、同期ワード検出部315は、ビットデータにおいて同期ワードの後尾である、図5(c)において「t」で示されるタイミングで同期ワードを検出したとする。
【0051】
そして、同期ワード検出部315は、検出したタイミング「t」を示す同期ワード検出タイミング情報を周波数切替タイミング算出部316に入力する。DSP310の周波数切替タイミング算出部316は、入力された同期ワード検出タイミング情報に基づいて、周波数ホッピングを開始するタイミング「t」を算出する。
【0052】
具体的には、周波数切替タイミング算出部316は、同期ワードが含まれているパケットcの後尾に対応するビットが入力されたタイミング「t」とタイミング「t」との間にステップS204の処理におけるサンプリングが行われる回数「D」を算出する。回数「D」は、図5(c)に示すように、以下の式(1)で算出される。
【0053】
D=A−(B−C)・・・式(1)
なお、Aは、タイミング「t」とタイミング「t」との間に所定のサンプリング周波数によるサンプリングが行われる回数であり、予め設定された固定値である。Bは、一のパケットにおいて、先頭に応じたビットが入力されてから後尾に応じたビットが入力されるまでの間に所定のサンプリング周波数によるサンプリングが行われる回数であり、やはり、予め設定された固定値である。Cは、パケットcにおいて先頭に応じたビットが入力されてからタイミング「t」が到来するまでの間に所定のサンプリング周波数によるサンプリングが行われる回数である。タイミング「t」は、式(1)によって算出されたDとタイミング「t」と所定のサンプリング周波数とに基づいて算出される。
【0054】
周波数切替タイミング算出部316は、算出したタイミング「t」を示すタイミング情報を周波数切替タイミング発生部322に入力する。具体的には、周波数切替タイミング算出部316は、例えば、現在からタイミング「t」が到来するまでにサンプリングが行われる回数を示すタイミング情報を周波数切替タイミング発生部322に入力する。
【0055】
また、周波数切替タイミング発生部322は、入力されたタイミング情報に基づいて、タイミング「t」が到来したと判断した場合に(ステップS208のY)、例えば、前述した図示しない記憶部から所定のホッピングパターンに応じた周波数を読み出す。そして、周波数切替タイミング発生部322は、読み出した周波数をアナログ受信部341における受信周波数に決定する(ステップS209)。
【0056】
周波数切替タイミング発生部222は、決定した受信周波数を示す周波数情報を周波数切替部342に入力する。周波数切替部342は、周波数切替タイミング発生部322が周波数情報を入力したときに、アナログ受信部341に、受信処理を行う受信周波数を当該周波数情報によって示された周波数に切り替えさせる(ステップS210)。そして、ステップS201の処理に移行する。すると、ステップS201では、切り替えられた周波数、つまり、周波数ホッピングが行われた周波数で受信処理が行われる。したがって、送信側通信機器200における周波数ホッピングのタイミングに受信側通信機器300の周波数ホッピングのタイミングを同期させることができる。
【0057】
本実施形態によれば、送信側通信機器200において、入力されたユーザデータの処理をパケット単位で行うので、ビットやクロック周波数に基づいてサンプリングされたデータという小さい単位ごとに行う場合に比べて、処理効率を向上させることができる。したがって、プログラム制御に従って処理を実行するDSP210およびFPGA220に各処理を実行させることができる。
【0058】
また、専用のハードウェアで各処理を行うように構成された場合には、予め定められた種類の変調方式およびフレーム以外に対応することができない。しかし、本実施形態によれば、プログラム制御に従って処理を実行するDSP210およびFPGA220に各処理を実行させるので、プログラムを変更することによって、様々な種類の変調方式およびフレームに柔軟に対応することが可能になる。
【0059】
また、本実施形態によれば、受信側通信機器300において、受信した信号の処理をパケット単位で行うので、ビットやクロック周波数に基づいてサンプリングされたデータという小さい単位ごとに行う場合に比べて、処理効率を向上させることができる。したがって、プログラム制御に従って処理を実行するDSP310およびFPGA320に各処理を実行させることができる。
【0060】
また、専用のハードウェアで各処理を行うように構成された場合には、予め定められた種類の変調方式およびフレーム以外に対応することができない。しかし、本実施形態によれば、プログラム制御に従って処理を実行するDSP310およびFPGA320に各処理を実行させるので、プログラムを変更することによって、様々な種類の変調方式およびフレームに柔軟に対応することが可能になる。
【0061】
したがって、本実施形態によれば、受信側通信機器200と送信側通信機器300とを高い処理効率で同期させて周波数ホッピングを行って通信させることができる。
【0062】
なお、本実施形態では、送信側通信機器200と受信側通信機器300との間で、周波数ホッピングの周波数切り替えのタイミングを同期させているが、TDMA(Time Division Multiple Access)等において一方の通信機器と他方の通信機器との間における送受信タイミングの同期にも適用することができる。具体的には、例えば、一方の通信機器が、データの送信側であるときに受信側に切り替わるタイミングを示す情報を他方の通信機器に送信し、当該他方の通信機器が、当該情報に基づくタイミングでデータの送信を開始する。
【0063】
また、SCPC(Single Channel Per Carrier)等の周波数分割多元接続にも適用可能である。
【0064】
実施形態2.
本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。図6は、本発明の第2の実施形態のデータ送信機の構成例を示すブロック図である。図6に示すように、本発明の第2の実施形態のデータ送信機20は、パケット単位処理手段21(図1に示すDSP210に相当)、出力信号生成手段22(図1に示すFPGA220に相当)、および送信手段24(図1に示す通信部240に相当)を含む。また、パケット単位処理手段21は、フレーム付加手段25(図1に示すフレーム付加部211に相当)を含む。
【0065】
パケット単位処理手段21は、入力されたデジタルデータに基づいて、所定のパケット単位で所定のサンプリング処理を行ってベースバンド信号を生成する。出力信号生成手段22は、パケット単位処理手段21が生成したベースバンド信号に基づいて出力信号を生成する。送信手段24は、出力信号生成手段22が生成した出力信号を所定のタイミングで周波数ホッピングさせて送信する。フレーム付加手段25は、送信手段24が出力信号の周波数ホッピングを予め決められたタイミングで開始するように、入力されたデジタルデータの前に所定のフレームデータを付加する。
【0066】
そして、パケット単位処理手段21は、フレーム付加手段25によって所定のフレームデータが付加されたデジタルデータに所定のパケット単位で所定のサンプリング処理を施す。
【0067】
本実施形態によれば、周波数ホッピングで通信する送信側と受信側とを高い処理効率で同期させることができる。
【符号の説明】
【0068】
20 データ送信機
21 パケット単位処理手段
22 出力信号生成手段
24 送信手段
25 フレーム付加手段
100 通信システム
200 送信側通信機器
210、310 DSP
211 フレーム付加部
212 ビット−シンボル変換部
213、311 帯域制限フィルタ部
214 アップサンプラ部
215 周波数設定部
220、320 FPGA
221 直交変調部
222、322 周波数切替タイミング発生部
230 記憶部
240 通信部
241 アナログ送信部
242、342 周波数切替部
243、343 アンテナ
312 シンボルタイミング検出部
313 シンボル−ビット変換部
314 フレーム除去部
315 同期ワード検出部
316 周波数切替タイミング算出部
321 直交復調部
341 アナログ受信部
300 受信側通信機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6