特許第6498876号(P6498876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498876
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】減酸素装置、及び、冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/00 20060101AFI20190401BHJP
【FI】
   F25D23/00 302Z
   F25D23/00 302A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-123591(P2014-123591)
(22)【出願日】2014年6月16日
(65)【公開番号】特開2016-3803(P2016-3803A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 達哉
【審査官】 久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−019621(JP,A)
【文献】 特開2014−009860(JP,A)
【文献】 特開平05−254803(JP,A)
【文献】 特開2013−067851(JP,A)
【文献】 特開2004−293827(JP,A)
【文献】 特開2001−149738(JP,A)
【文献】 特開平08−325772(JP,A)
【文献】 特開2006−266539(JP,A)
【文献】 特開平09−287869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 1/00 − 31/00
C25B 9/00 − 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の上面に設けられたアノードと、前記アノードの上面であって前記アノードに通電するアノード集電体と、前記固体高分子電解質膜の下面に設けられたカソードと、前記カソードの下面であって前記カソードに通電するカソード集電体とを有した減酸素ユニットが横方向に配され、
前記減酸素ユニットに給水を行う給水タンクが、前記アノード集電体の上方に配され、
水制限膜が、前記アノード集電体と前記給水タンクとの間に配され、
前記給水タンクの上面が、前記水制限膜の位置から離れるほど上になるように傾斜して設けられ、
前記水制限膜の位置にある前記上面より、高い位置にある前記上面に酸素排出口が設けられている、
減酸素装置。
【請求項2】
前記減酸素ユニットは、上部材と下部材とを有し、
前記上部材と前記下部材の間に、上から順番に前記アノード、前記アノード集電体、前記固体高分子電解質膜、前記カソード、前記カソード集電体が配され、
前記上部材に開口部が開口し、
前記開口部に前記水制限膜が設けられ、
前記上部材の上に前記給水タンクが設けられている、
請求項1に記載の減酸素装置。
【請求項3】
前記減酸素装置が、減酸素室の上方に配された、
請求項1に記載の減酸素装置。
【請求項4】
請求項1に記載の前記減酸素装置減酸素室に配された、
冷蔵庫。
【請求項5】
前記減酸素室が野菜室に配された、
請求項4に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、減酸素装置、及び、それを用いた冷蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、CA(Controled Atmosphere)貯蔵方法には、固体高分子電解質膜を用いて減酸素室の酸素を減少させる固体高分子電解質方法がある。
【0003】
この固体高分子電解質膜方法を用いた減酸素装置は、アノードで水を電気分解して水素イオンを作り、その水素イオンが固体高分子電解質膜内を移動してカソードに到達し、減酸素室内の酸素と反応して水を生成することで、酸素を減少させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−218924号公報
【特許文献2】特開2013−160486号公報
【特許文献3】特開2004−293827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような減酸素装置において、アノードに水を供給する必要があるが、このアノードに必要量の水を供給することが非常に難しいという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明の実施形態は上記問題点に鑑み、固体高分子電解質膜方法を用いた減酸素装置においてアノードに水を確実に供給できる減酸素装置、及びそれを用いた冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の上面に設けられたアノードと、前記アノードの上面であって前記アノードに通電するアノード集電体と、前記固体高分子電解質膜の下面に設けられたカソードと、前記カソードの下面であって前記カソードに通電するカソード集電体とを有した減酸素ユニットが横方向に配され、前記減酸素ユニットに給水を行う給水タンクが、前記アノード集電体の上方に配され、水制限膜が、前記アノード集電体と前記給水タンクとの間に配され、前記給水タンクの上面が、 前記水制限膜の位置にある前記上面より、高い位置にある前記上面に酸素排出口が設けられている、酸素装置である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の冷蔵庫の横から見た縦断面図。
図2】冷蔵庫の扉を外した状態の正面図。
図3】減酸素室の平面図。
図4】減酸素室の側面図。
図5】減酸素室の正面図。
図6】減酸素装置の分解斜視図。
図7】減酸素装置の一部拡大縦断面図。
図8】減酸素装置の横から見た縦断面図。
図9】減酸素装置の上から見た横断面図。
図10】減酸素装置の後から見た縦断面図。
図11】減酸素装置の一部切欠き斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態の減酸素装置200について図1図11に基づいて説明する。本実施形態の減酸素装置200は、冷蔵庫10内にある減酸素室100に設けられている。
【0010】
(1)冷蔵庫10の構造
冷蔵庫10の構造について図1図2に基づいて説明する。図1は冷蔵庫10の全体の側面から見た縦断面図であり、図2は冷蔵庫10のキャビネット12の正面図である。
【0011】
冷蔵庫10のキャビネット12は断熱箱体であって、内箱と外箱とより形成され、その間に断熱材が充填されている。このキャビネット12内部は、上から順番に冷蔵室14、野菜室16、小型冷凍室18及び冷凍室20を有し、小型冷凍室18の横には製氷室21が設けられている。野菜室16と小型冷凍室18及び製氷室21の間には断熱仕切体36が設けられている。冷蔵室14と野菜室16とは水平な仕切体38によって仕切られている。冷蔵室14の前面には、観音開き式の扉14aが設けられ、野菜室16、小型冷凍室18、冷凍室20及び製氷室21にはそれぞれ引出し式の扉16a,18a,20aが設けられている。
【0012】
キャビネット12の背面底部には、機械室22が設けられ、冷凍サイクルを構成する圧縮機24などが載置されている。この機械室22背面上部には、制御板26が設けられている。
【0013】
冷蔵室14の背面下部から野菜室16の背面において、冷蔵用蒸発器(以下、「Rエバ」という)28が設けられ、その下方には冷蔵用送風機(以下、「Rファン」という)30が設けられている。Rエバ28とRファン30とは、エバカバー15で形成されたRエバ室17に配されている。Rエバ28には、Rエバ28で発生した除霜水を溜める受け皿54が設けられている。
【0014】
小型冷凍室18の背面から冷凍室20の背面にかけてのFエバ室29には冷凍用蒸発器(以下、「Fエバ」という)32が設けられ、その上方には冷凍用送風機(以下、「Fファン」という)34が設けられている。Rエバ28で冷却された冷気は、Rファン30によって冷蔵室14及び野菜室16に送風される。Fエバ32で冷却された冷気は、Fファン34によって小型冷凍室18、製氷室21、冷凍室20に送風される。
【0015】
冷蔵室14の背面には、冷蔵室14の庫内温度を検出する冷蔵室用センサ(以下、「Rセンサ」という)31が設けられ、冷凍室20の背面には、冷凍室20の庫内温度を検出する冷凍用センサ(以下、「Fセンサ」という)35が設けられている。
【0016】
図1に示すように、冷蔵室14には、複数の棚40が設けられ、下部には引出し式のチルド容器42を有するチルド室44が設けられている。このチルド室44は低温室であって、肉や魚を収納する。冷蔵室14の扉14aの背面には複数のドアポケット46が設けられている。野菜室16には、引出し式の野菜容器48が設けられている。
【0017】
図1図2に示すように、野菜室16の天井部に当たる仕切体38には、減酸素室100が吊り下げられ、仕切体38の下方であって、かつ、減酸素室100の上部には横方向(水平方向)に減酸素装置200が設けられている。この減酸素室100、減酸素装置200については、後から詳しく説明する。
【0018】
制御板26に設けられたマイクロコンピュータよりなる制御部には、Rファン30、Fファン34、圧縮機24,Rセンサ31、Fセンサ35、減酸素装置200が接続されている。
【0019】
(2)減酸素室100
減酸素室100について、図1図5に基づいて説明する。図4に示すように、野菜室16の天井面を構成する水平な仕切体38の左側後部に複数本の吊り下げ部材106によって支持部材108が吊り下げられ、これら支持部材108に減酸素室100が固定されている。
【0020】
支持部材108は、上板110と、上板110の両側部から下方に突出した側板112,112と、上板110の後部から下方に突出した後板114とより構成されている。両側板112,112の両側部の内側にはレール116,116が水平に設けられている。
【0021】
減酸素室100は、前面が開口した直方体であり、上面板118、両側面板120,120、下面板122、後面板124を有する。図4に示すように、両側面板120,120の外方には、突部126が突出し、減酸素室100を支持部材108に取り付ける場合に、突部126をレール116に沿って移動し固定する。両側面板の前端には、上下一対の腕部128,128を有する固定部材130が設けられている。
【0022】
減酸素室100には、図4に示すように前面の開口部から収納される減酸素容器102が引き出し自在に配されている。減酸素容器102は、その前部に扉104を有し、扉104の中央部から後方に爪部132が突出している。この爪部132は、扉104を閉じた状態で、固定部材130の上下一対の腕部128,128と係合する。また、扉104の後端部外周部に沿ってパッキング134が設けられている。パッキング134は、扉104を閉めた状態で、減酸素室100内部を密閉する。減酸素室100の上面板118の前部には開口部136が設けられ、その上方には減酸素装置200が取り付けられる。
【0023】
(3)減酸素装置200
減酸素装置200について、図6図11に基づいて説明する。減酸素装置200は、横方向(水平方向)に配された減酸素セル204を含む減酸素ユニット202を有する。なお、各部材の厚みは薄いものであるが、図6図7において説明を判り易くするために、その厚みは拡大して記載している。
【0024】
減酸素セル204を有する減酸素ユニット202について、図6図7に基づいて説明する。
【0025】
まず、シート状の減酸素セル204は、図7に示すように固体高分子電解質膜(以下、単に「電解質膜」という)206と、電解質膜206の上面に設けられたアノード208と、電解質膜206の下面に設けられたカソード210とを有する。カソード210は、カーボン触媒とカーボンペーパーを積層したものであり、アノード208とカソード210には白金の触媒がそれぞれ担持されている。電解質膜206、アノード208及びカソード210がホットプレスなどを用いて一体に接合され、シート状の減酸素セル204が形成されている。
【0026】
アノード208の上には、額縁状のバッキングシート221を介してアノード集電体212が配置されている。アノード集電体212は、シート状であって、アノード電極213と気体が通過するためのスリット状の開口部216を有している。
【0027】
アノード集電体212の上には、水制限膜224が配置されている。水制限膜224は、フィルム状であって、水蒸気量を予め定めた所定の水蒸気量に制限してアノード208に送る。
【0028】
水制限膜224の上には、額縁状のバッキングシート222が配置されている。
【0029】
カソード210の下には、カソード集電体214が設けられている。カソード集電体214は、シート状であって、カソード電極215と気体が通過するためのスリット状の開口部216を有している。なお、額縁状の絶縁体220が、カソード210とカソード集電体214の間に配置され、両集電体212,214が接触しないようにしている。
【0030】
次に、シート状の減酸素セル204の形状について説明する。減酸素セル204を減酸素装置200に組み込む場合に、アノード208側の面(以下、「アノード面」という)とカソード210側の面(以下、「カソード面」という)とを間違って取り付けると、減酸素装置200は動作しない。そのため、本実施形態ではシート状の減酸素セル204は、図6に示すように、長方形の一つの角部を斜めに切り取った六角形の裏表反転非対称形状に形成されている。本明細書において「裏表反転非対称形状」とは、減酸素セル204のカソード面とアノード面とを反転させても同一形状でなく、取り付ける作業者がアノード面とカソード面とを簡単に見分けることができる形状を言う。アノード集電体212は、減酸素セル204と同一形状、同一の大きさであり、アノード電極213が突出している。カソード集電体214は、減酸素セル204と同一形状、同一の大きさであり、カソード電極215が突出している。額縁状の絶縁体220、額縁状のパッキングシート221、額縁状のパッキングシート222、水制限膜224は、減酸素セル204と同一の形状、同一の大きさに形成されている。
【0031】
図6図7に示すように、カソード集電体214、絶縁体220、減酸素セル204、パッキングシート221、アノード集電体212、水制限膜224、パッキングシート222を順番に積み重ねたものを「減酸素ユニット202」という。そして、制御部は、アノード集電体212によってアノード208にプラス通電を行い、カソード集電体214によってカソード210にマイナス通電を行う。
【0032】
減酸素ユニット202は、透明な長方形状の板材である下部材226の上に横方向(水平方向)に載置され、その上に長方形状の板材である上部材226が被さっている。
【0033】
横方向(水平方向)に配された下部材226の中央部分には、図6に示すように減酸素ユニット202よりも若干大きいサイズの位置決めリブ230が突出し、この位置決めリブ230の中に、上下方向に貫通した開口部232がスリット状に設けられている。このスリット状の開口部232は、カソード集電体214のスリット状の開口部218に対応した位置に設けられている。また、位置決めリブ230の周囲には、上部材226をネジ止めするためのネジ孔234が設けられている。このネジ孔234の外周には、下部材226を減酸素室100の上面板118にネジ止めするためのネジ孔236が設けられている。下部材228の上面であって、上部材226の4つの角部に相当する位置には、位置決め突片266が突出している。
【0034】
横方向(水平方向)に配された上部材226の下面中央部分には、図7に示すように減酸素ユニット202を収納した位置決めリブ230よりも大きいサイズで、かつ、同じ形状の収納凹部238が設けられている。この収納凹部238の内部には、アノード集電体212のスリット状の開口部216に対応したスリット状の開口部240が設けられている。また、図6に示すように収納凹部238の外周部には、下部材226に取り付ける場合のネジ孔242が貫通している。
【0035】
上部材226の上部には、図11に示すように透明な給水タンク244が一体に形成されている。この給水タンク244の平面形状は、図9に示すように上部材226よりも一回り小さく、上部材226の上方に水が溜まるように設けられ、給水タンク244の下面が、上部材226の上面と兼ねており、給水タンク244の下面には、上記したスリット状の開口部240が開口している。給水タンク244の上面246は、前部ほど下方に傾斜している。
【0036】
給水タンク244の後面右側から給水路248が、図9に示すように後方に突出している。この給水路248の上面は給水タンク244の上面246に沿って傾斜している。給水路248の右側面後端部には、図10に示すように給水管250が接続される。給水路248の後端部上面のみ開口し、酸素排出口252を形成している。給水管250は、Rエバ28からの除霜水を溜める受け皿54から水が供給され、この供給のために不図示のポンプが設けられている。
【0037】
給水タンク244の後面左側から排水路254が、図9に示すように後方に突出している。この排水路254の上面は、図8に示すように給水タンク244の上面246に沿って傾斜している。排水路254の左側後端部には、図10に示すように排水空間256が設けられ、この排水空間256の底面から排水管258が突出している。排水空間256と排水路254とは、縦板状の堰260によって仕切られ、この堰260は排水路254の他の面よりも低い。排水空間256の上面と排水路254の後端部上面は開口し、酸素排出口262が形成されている。排水管258は、受け皿54に接続され、減酸素装置200から排水された水は排水管258を通って受け皿54に排水される。
【0038】
LEDよりなる照明装置138が、図3図5に示すように、減酸素室100の上面板118であって、かつ、減酸素装置200の側方に設けられている。この照明装置138は酸素装置200を照明する。
【0039】
のぞき窓56が、図8図10に示すように減酸素装置200に対応する仕切り板38に開口している。こののぞき窓56は、照明装置138で照明された減酸素装置200の動作状態を確認できる。
【0040】
減酸素装置200を組み立てる場合には、図6に示すように下部材226の位置決めリブ230に減酸素ユニット202を載置し、その上から給水タンク244を有する上部材226を被せて、ネジ264でネジ止めする。そして、この減酸素装置200を、図3図4に示すように、減酸素室100の上面板118の開口部136に対応した位置に横方向(水平方向)にネジ止めする。
【0041】
(4)減酸素装置200の動作状態
次に減酸素装置200の動作状態について説明する。上記したように給水管250から水が供給され、給水路248を通って給水タンク244に水が満たされる。給水タンク244に水が満たされていくと、図8図10に示すように排水路254においても同様に水位が高くなり、水位が堰260を超えた場合には、堰260から水が溢れて排水空間256に流れ、排水管258により排水される。すなわち、この堰260は、給水タンク244が満杯になり、図10に示すように給水タンク244が満杯になって酸素排出口252,262から溢れ出るのを防止している。
【0042】
給水タンク244に貯まった水は、図7に示すように上部材226のスリット状の開口部240を経て水制限膜224に供給される。水制限膜224において、必要な量のみ透過され、アノード集電体212のスリット状の開口部216を経てアノード208に水が至る。この場合に水は自重によってアノード208に必ず至るため、従来の縦方向に減酸素ユニット202を置いた場合とは違い、確実に水がアノード208に供給される。
【0043】
減酸素室100に食品を収納すると、制御板26の制御部が、両集電体212,214に通電を開始する。両集電体212,214が通電されると、アノード208とカソード210では次の式(1)と式(2)のような減酸素反応が行なわれる。

アノード・・・2H2O→O2+4H++4e- ・・・(1)

カソード・・・O2+4H++4e-→2H2O ・・・(2)

この式(1)と式(2)の減酸素反応を説明すると、給水タンク244からの水が自重によって、上部材226のスリット状の開口部232を通り水制限膜224を経てアノード208に至る。この水はアノード208で電気分解され水素イオン(プロトンH+)が作られ(式(1)参照)、その水素イオンが電解質膜116内を移動してカソード210に到達し、減酸素室100から流入した空気に含まれる酸素と反応して水を生成し、酸素を消費する(式(2)参照)。これにより減酸素室100内の減酸素が行われ、食品をCA貯蔵できる。
【0044】
アノード208で発生した酸素は、上部材226の開口部240を経て給水タンク244に浮上する。給水タンク244の中には水が溜まっているため、酸素は気泡となる。この酸素の気泡は、給水タンク244から排出する必要がある。図8に示すように、給水タンク244の上面246は前方ほど下方に傾斜し、酸素の気泡は軽いため給水タンク244の上面246に沿って後方に移動し給水路248、排水路254の後部に移動する。この酸素の気泡は、給水路248の後端部と排水路254の後端部にくると、浮かび上がり酸素排出口252,262から排出される。これにより給水タンク244に発生した酸素が溜まることがない。この酸素の気泡の移動状態は、給水タンク244が透明であるため、ユーザは、図9に示すように、仕切り体38ののぞき窓56を通して見ることができる。
【0045】
(5)効果
本実施形態によれば、減酸素ユニット202が横方向に配され、その上に給水タンク244が設けられているため、水の自重により減酸素ユニット202にスムーズに水を供給できる。また、減酸素ユニット202で生成された水は、下方に抜け易く反応が促進される。
【0046】
また、減酸素ユニット202で発生した酸素の気泡は、透明な給水タンク244の上面246を通して、のぞき窓56からユーザが見ることができるため、図9に示すように、ユーザが減酸素装置200が動作している状態を目で確認できる。特に、照明装置138で給水タンク244内部を照明しているため、酸素の気泡をより確認し易い。また、減酸素装置200の製造工程において、減酸素装置200を組み立てた状態で酸素の発生検査を行うことができる。
【0047】
また、給水タンク244の上面246が傾斜しているため、図8に示すように、発生した酸素の気泡を傾斜に沿って上方へ逃がし易く、給水タンク244の内部が見え易くなる。また、内部が曇って見え難くするのを防止できる。
【0048】
また、給水路248と排水路258の後端部に酸素排出口252,262が設けられているため、発生した酸素を確実に逃がすことができ、さらに、酸素排出口252,262から減酸素ユニット202で発生した熱が逃げるので、給水タンク244内部が曇りにくい。
【0049】
また、排水路258と排水空間256の間に堰260を設けているため、酸素排出口262からあふれようとする水を排水でき、さらに、必要量の水は給水タンク244内部に確保できる。
【0050】
また、仕切り体38と減酸素室100との隙間は、従来はデッドスペースであったが、この隙間に横向きの減酸素装置200を取り付けることにより、野菜室16内部のスペースを有効利用できる。
【0051】
(6)変更例
上記実施形態において、給水タンク244の内周面に浸水処理を施してもよい。この浸水処理を施すことにより給水タンク244の内側をより曇りにくくできる。
【0052】
また、上記実施形態では照明装置138を設けたが、この照明装置138を設けることなく、冷蔵室12内部の照明で給水タンク244内部を目で確認できるようにしてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、給水タンク244への給水は、Rエバ28からの除霜水を供給したが、これに代えて製氷装置に水を供給するためのタンクから水を供給してもよい。また、排水する水は、機械室22にある蒸発皿に直接排水してもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、給水タンク244内部に水を溜めて減酸素セル202に供給したが、これに代えて減酸素セル202の上部に吸水剤を設けて、空気中の水分を吸水して放出してもよい。例えば、粉体又は流体のA型のシリカゲルからなる吸水剤を用い、空気中の水分から水を吸収するものであり、この場合にはイオンコンタミン成分のない純水を給水できる。また、吸水剤はゼオライトなどでもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、減酸素室100の上面に減酸素装置200を直接取り付けたが、これに代えて減酸素室100の上面と減酸素装置200との間をダクトでつなぎ減酸素装置200を他の位置に取り付けてもよい。この場合であっても減酸素装置200の減酸素ユニット202は横方向(水平方向)に取り付ける。
【0056】
また、上記実施形態では、減酸素室100を野菜室に設けたが、これに限らず冷蔵室14の下部にあるチルド室44に設けてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、減酸素室100の前面開口部から減酸素容器102を引き出し可能にしたが、これに代えて減酸素室100の上面が開口して食品を取り出す構造でもよい。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
10・・・冷蔵庫、100・・・減酸素室、102・・・減酸素容器、200・・・減酸素装置、202・・・減酸素ユニット、204・・・減酸素セル、212・・・アノード集電体、214・・・カソード集電体、224・・・水制限膜、226・・・下部材、228・・・上部材、244・・・給水タンク
図1
図2
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