特許第6498879号(P6498879)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498879
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】保管容器
(51)【国際特許分類】
   F25D 3/00 20060101AFI20190401BHJP
   A45C 11/00 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   F25D3/00 B
   F25D3/00 D
   A45C11/00 L
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-133898(P2014-133898)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-11795(P2016-11795A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】トッパン・フォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸弘
【審査官】 山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−051632(JP,A)
【文献】 特開2004−347292(JP,A)
【文献】 特開2002−029573(JP,A)
【文献】 米国特許第06482332(US,B1)
【文献】 特開2013−228190(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/081581(WO,A1)
【文献】 特開2014−040273(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01477751(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 3/00
A45C 11/00
B65D 81/18
B65D 81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱剤が収納される蓄熱剤収納部が設置された保管容器であって、
前記蓄熱剤収納部は、
前記保管容器のいずれかの内壁面に着脱不可能に設置され、
凝固した蓄熱剤を取り出し可能に収納可能な第1の収納部と、
凝固していない蓄熱剤が取り出し不可能に収納された第2の収納部と、
凝固した蓄熱剤を取り出し可能に収納可能な第3の収納部とが、前記内壁面側からこの順で配置されている保管容器。
【請求項2】
請求項1に記載の保管容器において、
前記第3の収納部の前記第2の収納部とは反対側の面が、通気性を有するシートから構成されている保管容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被保管物を蓄熱剤を用いて定温保管する保管容器に関し、特に、複数の蓄熱剤を用いて被保管物を定温保管する保管容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、蓄熱剤を用いて食品等の被保管物を保冷することが行われている。一般に使用されている蓄熱剤は、0℃未満の融解点を持つものが用いられ、例えば、冷凍庫で−25℃程度の低温で冷却された後に冷凍庫から取り出されて使用される。また、蓄熱剤を凍結させる場合は、凝固点よりも10℃以上低い環境で凍結させることが一般的であることから、融解点が0℃近傍の蓄熱剤においても、−25℃の環境で凍結させることがしばしばある。そのため、蓄熱剤を冷凍庫から取り出した状態のまま使用すると、被保管物が0℃以下まで冷やされることになる。
【0003】
このように蓄熱剤を用いて保冷される被保管物の中には、例えば、検体等のように、その保管環境が2〜8℃程度が好ましく、0℃以下で保冷されることが好ましくないものもある。そこで、そのような被保管物を保冷する場合は、蓄熱剤を冷凍庫から取り出した後に、蓄熱剤の温度を融解点まで上昇させるために常温や冷蔵庫にて30分〜3時間程度放置した後に使用することが行われている。ところが、蓄熱剤を冷凍庫から取り出してある程度の時間放置することは、効率的ではなく、使用したい時にすぐに使用できない。
【0004】
ここで、2つの蓄熱剤を用いて被保管物が冷やされすぎないようにすることが考えられている。その場合、2つの蓄熱剤を重ね合わせるように配置し、被保管物側ではない蓄熱剤を凝固した状態とするとともに、被保管物側の蓄熱剤を凝固していない状態とすることにより、被保管物を、凝固していない蓄熱剤を介して凝固した蓄熱剤によって間接的に保冷する。これにより、被保管物の温度が、凝固していない蓄熱剤の凝固点よりも低くなることがなくなり、被保管物が冷やされすぎることを回避することができる。
【0005】
また、冷凍域において上述した蓄熱剤を用いて被保管物を所望の温度に保つことが行われており、この場合は、2つの蓄熱剤を重ね合わせるように配置し、被保管物側の蓄熱剤を凝固した状態とすることにより、被保管物を所望の温度に保温することができる。
【0006】
このように2つの蓄熱剤を重ね合わせて被保管物を定温で保管するための定温保管用具が、例えば特許文献1に開示されている。この定温保管用具は、被保管物が収容される保管容器の内壁面に取り付け可能に構成されているとともに、蓄熱剤を収納可能な二層のポケットを有している。そして、二重のポケットそれぞれに収納される蓄熱剤を、上述したように、被保管物側のものと被保管物側ではないものとの一方を凝固した状態とするとともに、他方を凝固していない状態とすることにより、被保管物を所望の温度で保管することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】意匠登録第1433322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したような定温保管用具においては、二層のポケットの一方に凝固した蓄熱剤を収納し、他方に凝固していない蓄熱剤を収納することになるため、これらを入れ間違えてしまう虞れがあり、入れ間違えた場合、被保管物を所望の温度で保管することができなくなってしまう。また、保管容器の内壁面に取り付けられる際に、取り付けの向きを間違えてしまう虞れがあり、その場合、上述したように凝固した蓄熱剤と凝固していない蓄熱剤を入れ間違わなかったとしても、凝固した蓄熱剤と凝固していない蓄熱剤との配置が所望のものとは逆となり、上記同様に被保管物を所望の温度で保管することができなくなってしまう。
【0009】
そこで、本出願人は、被保管物が収容される保管容器の内壁面に取り付けられる定温保管用具であって、第1の蓄熱剤が取り出し不可能に収納された第1の収納部と、定温保管用具が保管容器に取り付けられた場合に第1の収納部の内壁面側に隣接し、第2の蓄熱剤が取り出し可能に収納される第2の収納部とを有し、第2の収納部の第1の収納部とは反対側の外面に、定温保管用具を保管容器に取り付けるための取り付け部を具備する定温保管用具を考え出した。
【0010】
この定温保管用具においては、被保管物を定温で保管するための蓄熱剤を収納する第1の収納部と第2の収納部のうち、第2の収納部の第1の収納部とは反対側の外面に設けられた取り付け部によって保管容器に取り付けられるので、保管容器に対する取り付け向きを間違えてしまうことを回避できる。また、第1の収納部は、第1の蓄熱剤が取り出し不可能に収納されているので、使用時には第2の収納部に第2の蓄熱剤を収納するだけとなり、被保管物を所望の温度で保管するために第1の蓄熱剤と第2の蓄熱剤との一方を凝固していない状態とし、他方を凝固した状態とした場合に、これら凝固していない蓄熱剤と凝固している蓄熱剤とを、第1の収納部と第2の収納部に入れ間違えることを回避できる。また、上述したように保管容器に正しい向きで取り付けられ、かつ、第1の収納部と第2の収納部に蓄熱剤を入れ間違えることがないことから、被保管物に対する2つの蓄熱剤の位置関係が誤ったものとなることを回避できる。
【0011】
ところで、上述したような定温保管用具は、保管容器の天井面に取り付けられる場合もある。特に、被保管物を蓄熱剤によって冷却する場合、冷気は一般的には上部から下部に向かうため、定温保管用具を保管容器の天井面に取り付けることが好ましい。その場合、上記取り付け部の構造を、定温保管用具が天井から脱落しにくい構成とする必要がある。例えば、定温保管用具を保管容器の天井面に縫合等によって着脱不可能に取り付けてしまえば、定温保管用具の天井からの脱落を確実に回避することができる。また、定温保管用具を保管容器の天井面以外の内壁面に取り付ける場合も、定温保管用具を保管容器の内壁面に縫合等によって着脱不可能に取り付けてしまえば、保管容器が転倒した場合や、保管容器に強い振動が加わった場合に、定温保管用具が保管容器の内壁面から脱落してしまうことを確実に回避できる。
【0012】
このように、定温保管用具を保管容器の内壁面に着脱不可能に設置することは、定温保管用具が保管容器の内壁面から脱落してしまうことを確実に回避する有効な手段の1つである。
【0013】
ここで、上述した定温保管用具を保管容器の内壁面に着脱不可能に設置した場合、被保管物が冷やされすぎることを回避するためには、第2の蓄熱剤を凝固した状態として第2の収納部に収納すれば、凝固した第2の蓄熱剤と被保管物との間に、凝固していない第1の蓄熱剤が介在し、それにより、被保管物が冷やされすぎることを回避することができるが、冷凍域において被保管物を所望の温度に保つ場合は、第1の蓄熱剤を第1の収納部から取り出すことができないため、第1の蓄熱剤を凝固した状態とすることができず、また、第2の蓄熱剤を凝固した状態としても、第2の蓄熱剤を第2の収納部に収納した状態では、第2の蓄熱剤と被保管物との間に、凝固していない第1の蓄熱剤が介在し、被保管物を所望の温度に保温することができなくなってしまう。
【0014】
また、第1の収納部にファスナー等を取り付け、第1の蓄熱剤を第1の収納部から取り出すことができるような構成とした場合、第1の蓄熱剤を第1の収納部から取り出して凝固した状態とすることができる。しかしながら、上述したように、被保管物を冷やしすぎないようにする場合は第1の蓄熱剤を凝固していない状態とする一方、冷凍域において被保管物を所望の温度に保つ場合は第1の蓄熱剤を凝固した状態として第1の収納部に収納する必要があるため、2つの異なる環境において使用する場合に、第1の蓄熱剤を第1の収納部から取り出し/収納するといった作業が必須となり、作業が煩雑になってしまい、それに伴い、蓄熱剤を収納すべき収納部とは異なる収納部に収納してしまう入れ間違いのミスが生じる虞れがある。
【0015】
そこで、本出願人は、上述したような凝固された蓄熱剤と凝固されていない蓄熱剤を用いて被保管物を定温保管する構成において、被保管物に対する2つの蓄熱剤の位置関係が誤ったものとなることを回避しながらも、蓄熱剤を収納する部材が保管容器の内壁面から脱落してしまうことを確実に回避できる保管容器について鋭意研究を行った。
【0016】
本発明は、蓄熱剤を収納する部材が保管容器の内壁面から脱落してしまうことを確実に回避しながらも、凝固された蓄熱剤と凝固されていない蓄熱剤を用いて、これら2つの蓄熱剤の被保管物に対する位置関係が誤ったものとならずに被保管物を定温保管することができる保管容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明は、
蓄熱剤が収納される蓄熱剤収納部が設置された保管容器であって、
前記蓄熱剤収納部は、
前記保管容器のいずれかの内壁面に着脱不可能に設置され、
凝固した蓄熱剤を取り出し可能に収納可能な第1の収納部と、
凝固していない蓄熱剤が取り出し不可能に収納された第2の収納部と、
凝固した蓄熱剤を取り出し可能に収納可能な第3の収納部とが、前記内壁面側からこの順で配置されている。
【0018】
上記のように構成された本発明においては、蓄熱剤が収納される蓄熱剤収納部が、保管容器のいずれかの内壁面に着脱不可能に設置されていることにより、蓄熱剤が収納された蓄熱剤収納部が保管容器の内壁面から脱落してしまうことが確実に回避される。また、蓄熱剤収納部が、凝固した蓄熱剤を取り出し可能に収納可能な第1の収納部と、凝固していない蓄熱剤が収納された第2の収納部と、凝固した蓄熱剤を取り出し可能に収納可能な第3の収納部とが、保管容器の取り付けられる内壁面側からこの順で配置されているので、被保管物が冷やされすぎることを回避するためには、第2の収納部に収納された蓄熱剤が凝固していない状態において、凝固した蓄熱剤を第1の収納部に収納することにより、凝固した蓄熱剤と被保管物との間に、凝固していない蓄熱剤が介在し、それにより、被保管物が冷やされすぎることが回避される。また、冷凍域において被保管物を所望の温度に保つ場合は、凝固した蓄熱剤を第3の収納部に収納することにより、凝固した蓄熱剤と被保管物との間には、凝固していない蓄熱剤が介在せず、それにより、冷凍域において被保管物を所望の温度に保つことができる。
【0019】
また、蓄熱剤収納部が取り付けられる内壁面が、保管容器の天井面であれば、蓄熱剤収納部が保管容器に着脱不可能に設置されていることによる上述した効果が大きい。
【0020】
また、第3の収納部の第2の収納部とは反対側の面が、通気性を有するシートから構成されていれば、第2の収納部や第3の収納部に収納された蓄熱剤の冷気や熱が被保管物やその周囲に伝達されやすくなり、また、被保管物が冷やされすぎることを回避するために第3の収納部に蓄熱剤を収納しないで使用する場合に、第3の収納部が嵩張りにくくなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、蓄熱剤が収納される蓄熱剤収納部が、保管容器のいずれかの内壁面に着脱不可能に設置されているため、蓄熱剤が収納された部材が保管容器の内壁面から脱落してしまうことを確実に回避できる。また、第2の収納部に収納された蓄熱剤が凝固していない状態において、凝固した蓄熱剤を第1の収納部に収納することにより、被保管物が冷やされすぎることを回避でき、また、凝固した蓄熱剤を第3の収納部に収納することにより、冷凍域において被保管物を所望の温度に保つことができる。このように、第2の収納部に収納された蓄熱剤を取り出すことなく、使用環境に応じて、凝固した蓄熱剤を第1の収納部と第3の収納部とのいずれかに収納すればよいため、凝固した蓄熱剤と凝固していない蓄熱剤を用いて被保管物を定温保管する場合に、これら2つの蓄熱剤の被保管物に対する位置関係が誤ったものとなることはない。
【0022】
また、第3の収納部の第2の収納部とは反対側の面が、通気性を有するシートから構成されているものにおいては、第2の収納部や第3の収納部に収納された蓄熱剤の冷気や熱が被保管物やその周囲に伝達されやすくなり、また、被保管物が冷やされすぎることを回避するために第3の収納部に蓄熱剤を収納しないで使用する場合に、第3の収納部が嵩張りにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の保管容器の実施の一形態を示す外観斜視図である。
図2図1に示した蓄熱剤収納具の構成を示す図であり、(a)は外観斜視図、(b)は蓄熱剤収納具が保管容器の蓋部に取り付けられた状態における断面図である。
図3図1に示した保管容器に冷やされすぎることを回避したい被保管物を収容する場合の使用方法及び作用を説明するための図である。
図4】冷凍域において図1に示した保管容器に収容された被保管物を所望の温度に保つ場合の使用方法及び作用を説明するための図である。
図5図1に示した保管容器に用いられる蓄熱剤収納具の他の構成例を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、本発明の保管容器の実施の一形態を示す外観斜視図である。図2は、図1に示した蓄熱剤収納具2の構成を示す図であり、(a)は外観斜視図、(b)は蓄熱剤収納具2が保管容器1の蓋部3に取り付けられた状態における断面図である。
【0026】
本形態における保管容器1は図1に示すように、底部6と、底部6上に起立した4つの側壁部4とを有し、底部6と側壁部4とによって囲まれた領域が、被保管物が収容される収容スペース5となっている。収容スペース5の底部6とは反対側には蓋部3が蝶番等によって開閉可能に取り付けられており、蓋部3を開けた状態で被保管物が出し入れされ、蓋部3が閉じられた状態で被保管物が所望の温度で保管されることになる。なお、保管容器1の底部6、側壁部4及び蓋部3の収納スペース5側の面のそれぞれが、本発明における内壁面となる。蓋部3には、収容スペース5側の面、すなわち保管容器1の天井面に蓄熱剤収納具2が取り付けられている。
【0027】
蓄熱剤収納具2は図2に示すように、アルミ等からなり、可撓性を有する2枚の区切りシート11,21と、通気性を有するメッシュ状の表シート31とが重ね合わされて構成されている。
【0028】
区切りシート11,21は、その4辺にて互いに封着されており、それにより、これら2枚の区切りシート11,21の間にてそれらの4辺にて囲まれた領域が第2の収納部20となっている。この収納部20には、蓄熱剤40が収納されている。蓄熱剤40は、区切りシート11,21がその4辺にて互いに封着されていることにより、収納部20に取り出し不可能に収納されている。
【0029】
区切りシート11は、その3辺に沿う領域が固定部12となり、この固定部12が蓋部3の収容スペース5側の内壁面に固着されることによって蓋部3に取り付けられており、区切りシート11と蓋部3との間にて、区切りシート11の固定部12以外の1辺を開口部とした第1の収納部10が形成されている。
【0030】
表シート31は、区切りシート11,21を覆うように配置され、その3辺に沿う領域が固定部32となり、この固定部32が蓋部3の収容スペース5側の内壁面に固着されることによって蓋部3に取り付けられており、表シート11と区切りシート21との間にて、表シート31の固定部32以外の1辺を開口部とした第3の収納部30が形成されている。なお、区切りシート11と表シート31の収納部10,30の開口部となる辺は、互いに重なる辺となっている。
【0031】
区切りシート11及び表シート31の蓋部3への取り付けは、区切りシート11及び表シート31の固定部12,32にて縫合等によって行われており、区切りシート11及び表シート31が蓋部3から取り外し不可能となっている。
【0032】
このように、蓄熱剤収納具2が蓋部3に取り付けられることにより、3つの収納部10,20,30を具備する蓄熱剤収納部が構成される。そして、この蓄熱剤収納部は、保管容器1の蓋部3の内壁面に着脱不可能に設置され、収納部10と、蓄熱剤40が取り出し不可能に収納された収納部20と、収納部30とが、蓋部3の内壁面側からこの順で配置されていることになる。
【0033】
以下に、上記のように構成された保管容器1の使用方法及びその際に生じる作用について説明する。
【0034】
まず、冷やされすぎることを回避したい被保管物を保管容器1に収容する場合の使用方法及び作用について説明する。
【0035】
図3は、図1に示した保管容器1に冷やされすぎることを回避したい被保管物を収容する場合の使用方法及び作用を説明するための図であり、保管容器1の縦断面図を示す。
【0036】
図1に示した保管容器1に、冷やされすぎることを回避したい被保管物を収容する場合は、図3に示すように、凝固した蓄熱剤50を収納部10に収納して使用する。収納部10は、区切りシート11の固定部12以外の1辺が開口部となっているため、この開口部から蓄熱剤50を収納部10に収納することができる。すると、収納部20に収納された凝固していない蓄熱剤40が、凝固した蓄熱剤50と被保管物となる物品7との間に介在することになる。
【0037】
そして、蓄熱剤50が凝固しており、蓄熱剤40が凝固していないことにより、蓄熱剤40,50間の熱エネルギーJ1の交換により、蓄熱剤40が蓄熱剤50によって冷却される。そして、冷却された蓄熱剤40と物品7との間の熱エネルギーJ2の交換により、物品7が蓄熱剤40によって保冷される。
【0038】
このように、物品7が、凝固した蓄熱剤50によって、凝固していない蓄熱剤40を介して間接的に保冷されることになる。これにより、物品7の温度が、凝固していない蓄熱剤40の凝固点よりも低くなることがなくなり、物品7が冷やされすぎることを回避することができる。
【0039】
この際、収納部30には蓄熱剤が収納されていないが、表シート31がメッシュ状のものであるため、蓄熱剤40の温度による冷気や熱が物品7やその周囲に伝達しやすくなるとともに、収納部30が嵩張りにくくなっている。
【0040】
また、区切りシート11,21がその4辺にて互いに封着されているとともに、区切りシート11と表シート31のそれぞれが、その3辺に沿う固定部12,32が蓋部3の収容スペース5側の内壁面に固着されることによって蓋部3に取り付けられているため、蓄熱剤40,50が収納された蓄熱剤収納具2が保管容器1の天井から脱落してしまうことを確実に回避することができる。
【0041】
また、蓄熱剤40は、凝固していない状態においては定型性を有さないものとなっている。そのため、振動等によって蓄熱剤40が蓄熱剤収納具2から意図せずに脱落してしまう虞れがある。ところが、凝固していない蓄熱剤40は、収納部20にて取り出し不可能に収納されているため、蓄熱剤収納具2から意図せずに脱落してしまうことがない。
【0042】
次に、冷凍域において被保管物を所望の温度に保つ場合の使用方法及び作用について説明する。
【0043】
図4は、冷凍域において図1に示した保管容器1に収容された被保管物を所望の温度に保つ場合の使用方法及び作用を説明するための図であり、保管容器1の縦断面図を示す。
【0044】
冷凍域において図1に示した保管容器1に収容された被保管物を所望の温度に保つ場合は、図4に示すように、凝固した蓄熱剤60を収納部30に収納して使用する。収納部30は、表シート31の固定部32以外の1辺が開口部となっているため、この開口部から蓄熱剤60を収納部30に収納することができる。すると、収納部20に収納された凝固していない蓄熱剤40が存在するものの、この蓄熱剤40は、凝固した蓄熱剤60の物品7とは反対側に存在することになるため、凝固した蓄熱剤60と被保管物となる物品7との間には、凝固していない蓄熱剤が介在しない。
【0045】
そして、凝固した蓄熱剤60と物品7との間の熱エネルギーJの直接の交換により、物品7の温度を蓄熱剤60の凝固点に応じた温度に保つことができる。この際、表シート31が通気性を有するメッシュ状のものであるため、凝固した蓄熱剤60の温度による冷気や熱が物品7やその周囲に伝達しやすくなる。また、凝固していない蓄熱剤40が、凝固している蓄熱剤60からの冷気によって冷却されて凝固していくため、凝固した2つの蓄熱剤40,50を用いて物品7が一定の温度に保たれることとなり、それにより、1つの蓄熱剤を用いた場合と比べて保温時間を長くすることができる。
【0046】
また上記同様に、区切りシート11,21がその4辺にて互いに封着されているとともに、区切りシート11と表シート31のそれぞれが、その3辺に沿う固定部12,32が蓋部3の収容スペース5側の内壁面に固着されることによって蓋部3に取り付けられているため、蓄熱剤40,50が収納された蓄熱剤収納具2が保管容器1の天井から脱落してしまうことを確実に回避することができる。
【0047】
上記のように、収納部20に収納された蓄熱剤40が凝固していない状態において、凝固した蓄熱剤50を収納部10に収納することにより、物品7が冷やされすぎることを回避でき、また、凝固した蓄熱剤60を収納部30に収納することにより、冷凍域において物品7を所望の温度に保つことができる。このように、収納部20に収納された蓄熱剤40を取り出すことなく、使用環境に応じて、凝固された蓄熱剤を収納部10と収納部30とのいずれかに収納すればよいため、2つの蓄熱剤の物品7に対する位置関係が誤ったものとなることがない。
【0048】
なお、本形態においては表シート31がメッシュ状のものを例に挙げて説明したが、表シート31を区切りシート11,21と同様の材質から構成してもよい。ただし、表シート31がメッシュ状のように通気性を有するシートから構成されていれば、上述したように、収納部20,30に収納された蓄熱剤の冷気や熱が被保管物やその周囲に伝達されやすくなり、また、被保管物が冷やされすぎることを回避するために収納部30に蓄熱剤を収納しないで使用する場合に、収納部30が嵩張りにくくすることができる。その場合、収納部30の収納部20とは反対側の一面を表シート31で覆うのではなく、幅広のバンド等を用いて、収納部30に収納された蓄熱剤を保持する構成としてもよい。ただし、メッシュ状の表シート31を用いた方が、蓄熱剤を収納部30に容易に収納することができる。
【0049】
また、本形態においては、保管容器1の蓋部3の収納スペース5側の面に蓄熱剤収納具2が取り付けられた場合を例に挙げて説明したが、蓄熱剤収納具2は、保管容器1の保管容器1の底部6、側壁部4及び蓋部3の収納スペース5側の面のいずれに取り付けられてもよい。蓄熱剤収納具2が蓋部3に取り付けられた場合、蓄熱剤収納具2には蓋部3とは反対の方向に重力による力が加わっているため、蓄熱剤収納具2の脱落回避の効果が大きいが、蓄熱剤収納具2が蓋部3以外に取り付けられた場合であっても、保管容器1が転倒した場合や、保管容器1に強い振動が加わった場合に、蓄熱剤収納具2が保管容器1の内壁面から脱落してしまうことを確実に回避できるという効果を奏する。また、本形態のように蓋部3が開閉されることで被保管物が保管容器1に出し入れされるのではなく、側壁部4の1つの面が開閉されることで被保管物が保管容器1に出し入れされる構成のものにおいては、その側壁部4を開閉する際の振動や側壁部4の傾きの変化等によって、蓄熱剤収納具2が保管容器1から脱落してしまう可能性が高まるが、蓄熱剤収納具2がその側壁部4の内壁面に着脱不可能に設置されていることにより、蓄熱剤収納具2の脱落回避の効果を得ることができる。
【0050】
また、本形態においては、区切りシート11,21がその4辺にて互いに封着されることにより、蓄熱剤40が収納部20に取り出し不可能に収納されているが、区切りシート11,21の一部にファスナー等の開閉自在な取り出し口を設け、蓄熱剤40をこの取り出し口を介して収納部20から取り出すことができるようにしてもよい。その場合でも、蓄熱剤40が収納部20に収納された状態で取り出し口を閉じることで、上記同様に、振動等によって蓄熱剤40が蓄熱剤収納具2から意図せずに脱落してしまうことが回避される。
【0051】
また、本形態においては、区切りシート11と表シート31のそれぞれが、その3辺に沿う固定部12,32が蓋部3の収容スペース5側の内壁面に固着されることによって、3つの収納部10,20,30を具備する蓄熱剤収納部が、保管容器1の蓋部3の内壁面に着脱不可能に設置され、それにより、蓄熱剤40,50が収納された蓄熱剤収納具2が保管容器1の天井から脱落してしまうことを確実に回避することができるが、3つの収納部10,20,30を具備する蓄熱剤収納部が、保管容器1の蓋部3の内壁面に着脱可能に設置されている構成とした場合であっても、蓄熱剤40,50が収納された蓄熱剤収納具2が保管容器1の天井から脱落してしまうことを確実に回避することができるという効果は得にくくなってはしまうものの、凝固した蓄熱剤と凝固していない蓄熱剤を用いて被保管物を定温保管する場合に、これら2つの蓄熱剤の被保管物に対する位置関係が誤ったものとなることはないという効果については、上記同様に得ることができる。
【0052】
(他の実施の形態)
図5は、図1に示した保管容器1に用いられる蓄熱剤収納具の他の構成例を示す外観斜視図である。
【0053】
本例における蓄熱剤収納具102は図5に示すように、図2に示したものに対して、表シート131の形状が異なるものである。本例における表シート131は、図2に示したもののように保管容器1に固着される固定部32が設けられておらず、収納部130の開口部を構成する辺以外の3辺が区切りシート121に固着されている。そして、区切りシート111の固定部112が保管容器1の蓋部3の収容スペース5側の内壁面に固着されることによって、蓄熱剤収納具102が蓋部3に取り付けられることになる。
【符号の説明】
【0054】
1 保管容器
2,102 蓄熱剤収納具
3 蓋部
4 側壁部
5 収容スペース
6 底部
7 物品
10,20,30,110,130 収納部
11,21,111,121 区切りシート
12,32,112 固定部
31,131 表シート
40,50,60 蓄熱剤
図1
図2
図3
図4
図5