(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記内部空間内に配置され、前記燃焼器から前記内部空間に排出される燃焼済みの燃料ガスとの熱交換によって、前記燃料電池スタックでの発電に用いられる燃料ガスまたは空気を加熱する熱交換器
をさらに具備する請求項2または3に記載の燃料電池。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
排ガスはその温度差から空気より軽くなっており、排気を上下に取回した場合、運転条件によっては、滞留が発生する可能性がある。その場合、リークガスが発火、爆発する可能性もあり、排ガスの滞留が、ハード上発生しない構造とすべきである。
特許文献1の技術においては、リークガスを回収する排気口が筐体上面中央部から鉛直上向きに開口しており、排ガスの滞留は発生しにくい。しかし、上部に浄化触媒、熱交換器設置のための大きな余剰スペースが必要となる。設置方法が限定され、例えば、一般家庭用としては、適用し難い。また、排気口が鉛直上向きに開口するため、燃料電池スタックの上部から熱が過剰に排出され、燃料電池スタックの上部が過度に冷却され易い。この結果、燃料電池の発電効率が低下する畏れがある。
特許文献2、3の技術はいずれも、排ガスの滞留を考慮しているとはいえない。例えば、特許文献3の技術は、開空間の空気相通のためのものであり、ガス滞留に関わるものではない。
上記に鑑み、本発明は、筐体内での未燃ガスの滞留を防止した燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明の一態様に係る燃料電池は、
空気より比重が小さい燃料ガスにより、発電する単セルを有する燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックが配置される、内部空間を有する断熱容器と、
前記燃料ガスを前記内部空間から排気する排気部を具備する燃料電池スタックであって、
前記内部空間が、傾斜する上面および鉛直な側面を有し、
前記排気部が、前記上面の最上部に対応して配置される開口部を有し、
前記排気部に接続され、前記鉛直な側面を貫通して、前記燃料ガスを外部に排気する排ガス出口部をさらに具備する、
ことを特徴とする。
【0010】
内部空間が、傾斜する上面(天板)を有することで、燃料電池スタックから漏れたリークガス(可燃成分として、空気より比重が小さい燃料ガス等を含む)が上面の最上部に集まる。上面の最上部に集まったリークガスは、この最上部に対応して配置される開口部から排気部に入り、外部に排気される。即ち、燃料電池を収納する断熱容器の内部空間の上面を、水平方向に対して傾斜させ、その最上部に配置した開口部から排気することで、リークガス(燃料ガス等)の滞留が発生しないようにすることができる。特に、内部空間を、鉛直な側面を有する形状(錐形状)とすることで、最上部の範囲を限定し、最上部からのリークガスの排出を容易とすることができる。
【0011】
燃料電池スタックの上部は、燃料電池スタック全体の端部に位置するため、一般に、温度が低下し易い。本態様では、排気部のガスが内部空間の側面から排気されることで、内部空間の上面から排気される場合と比べて、燃料電池スタックの上部での過度の冷却が防止される。この結果、断熱容器の断熱性が確保され、燃料電池スタックの発電効率の向上が図られる。
【0012】
(2) 前記燃料電池スタックからの使用済みの燃料ガスを燃焼させ、前記内部空間に排出する燃焼器をさらに具備しても良い。
燃焼器からの排ガスによって、内部空間からリークガスを強制的に排出できる。
【0013】
(3) 前記燃焼器が、前記燃料電池スタックよりも鉛直方向下側に配置される排出口を有しても良い。
排出口を燃料電池スタックよりも鉛直方向下側に配置することで、排出口からの排ガスによって、燃料電池スタックから漏れたリークガスを効果的に内部空間の最上部に導くことができる。
【0014】
(4) 前記内部空間内に配置され、前記燃焼器から前記内部空間に排出される燃焼済みの燃料ガスとの熱交換によって、前記燃料電池スタックでの発電に用いられる燃料ガスまたは空気を加熱する熱交換器をさらに具備しても良い。
燃焼済みの燃料ガスによって、燃料電池スタックでの発電に用いられる予定の燃料ガスまたは空気を加熱することで、燃料電池スタックの昇温速度が向上し、より効率的な発電が可能となる。
【0015】
(5) 前記排気部が前記燃料ガスを分解する触媒を有しても良い。
リークガス中の燃料ガスを触媒によって分解することで、点火、爆発の可能性を低減できる。
【0016】
(6) 前記触媒との熱交換によって、前記燃料電池スタックでの発電に用いられる燃料ガスまたは空気を加熱する第2の熱交換器をさらに具備しても良い。
触媒からの発熱によって、燃料電池スタックでの発電に用いられる予定の燃料ガスまたは空気を加熱することで、より効率的な発電が可能となる。
【0017】
(7) 前記燃料ガスまたは空気が、前記第2の熱交換器および前記熱交換器によって前記第2の熱交換器および前記熱交換器の順に加熱されても良い。
触媒からの発熱および燃焼済みの燃料ガスによって、燃料ガスまたは空気を順に加熱することで、より効率的な発電が可能となる。
【0018】
(8) 前記熱交換器と前記第2の熱交換器が一体に形成されても良い。
熱交換器と第2の熱交換器を一体に形成することで、より効率的な発電が可能となる。
【0019】
(9) 前記上面が、
第1の方向に傾斜する第1の上面と、
前記第1の上面に前記最上部が形成されるように、第2の方向に傾斜する第2の上面と、を有しても良い。
第1の上面と第2の上面との間に、最上部が形成されることで、最上部の範囲を限定できる。その結果、最上部からのリークガスの排出を容易とすることができる。
【0020】
(10) 前記上面が、
前記第1の上面と、前記第2の上面との間に配置され、前記最上部を有する第3の上面をさらに有しても良い。
第3の上面を最上部とし、リークガスを集めることができる。
【0021】
(11) 前記排気部が、前記燃料ガスを上方から下方に向かって排気する排気経路を有しても良い。
燃料ガス(リークガス)が排気部を、鉛直方向で上方から下方に向かって移動することで、比重の小さいリークガス(未燃ガス)を触媒で浄化することが容易となる。
なお、排気部の開口部の鉛直方向下側に、排ガス出口部を配置できる。
【0022】
(12) 前記排ガス出口部が、前記燃料ガスを水平方向に排気しても良い。
燃料ガスを水平方向に排気することで、垂直方向に排気する場合と比べて、断熱容器の断熱の確保、および熱効率の向上が容易となる。
【0023】
(13) 前記燃料電池スタックを加熱するガスバーナーをさらに具備しても良い。
ガスバーナーからの排ガスによって、内部空間からリークガスを強制的に排出できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、筐体内での未燃ガスの滞留を防止した燃料電池を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1〜
図3はそれぞれ、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池システム100を表す斜視図、側面図、および正面図である。この内、斜視図では、判り易さのために構成の一部の記載を省略している。
【0027】
燃料電池システム100は、燃料電池スタック110、断熱容器120、補助器130、起動バーナ170、排気部180を有する。
【0028】
燃料電池スタック110は、燃料ガス(例えば、都市ガス)と酸化剤ガス(例えば、空気)との供給を受けて発電を行う。
燃料電池スタック110は、例えば、700℃程度の高温にて稼働されるため、発電効率および安全性の観点から、断熱容器120に収納されている。
【0029】
補助器130は、改質器150、燃焼器140、熱交換器160を有する。燃料電池スタック110の、鉛直方向で下方に補助器130が配置され、更に、補助器130の下方に起動バーナ170が配置されている。燃焼器140は、燃料電池スタック110から排出されるガス(後述する残余のガス)を燃焼させる。改質器150は、燃料ガスの改質を行う。熱交換器160は、燃焼器140からの熱によって外部から導入される酸化剤ガスを加熱する。
【0030】
起動バーナ170は、燃料電池システム100の起動時に、燃料電池スタック110の加熱を行う。
排気部180は、燃料電池スタック110からのリークガス(燃料ガス(改質ガス、水素ガス)、やCOガス等)および補助器130および起動バーナ170からの排ガスを断熱容器120の外部に排出する。
【0031】
以下、各構成について詳細に説明する。
(燃料電池スタック110の詳細)
燃料電池スタック110は、発電単位である(平面視で)正方形の板状の単セル(燃料電池セル)40が板厚方向(
図1〜
図3の上下方向:積層方向)に複数個積層されたものである。
この燃料電池スタック110の外周縁部には、燃料電池スタック110を積層方向に貫く複数(この実施形態では8つ)の貫通孔19が設けられており、この貫通孔19には、各単セル40を一体に固定するボルト21が配置され、ボルト21にはナット23が螺合している。
【0032】
貫通孔19のうち、いくつかの所定の貫通孔19(
図1では各辺の中央の4箇所)は、ボルト21との間に筒状の空間(貫通流路)25(25a〜25d)を有するように大径に形成されている。この貫通流路25は、後述するガス(燃料ガスや酸化剤ガス)の流路として利用される。
【0033】
なお、この貫通流路25は、燃料電池スタック110の積層方向に延びるマニホールドであり、後述する様に、この内部マニホールド(詳しくは貫通流路25c、25d)を利用して、燃焼器140に残余の燃料ガスや残余の酸化剤ガスが供給される。
【0034】
また、燃料電池スタック110の積層方向の一方の側(
図1〜
図3の下方)に、ボルト21で囲まれる中央部分に、前記補助器130が近接して配置されている。
【0035】
燃料電池スタック110、特に、単セル40の積層部分等から燃料ガス(改質ガス、水素ガス)、やCOガス等がリークする畏れがある。後述のように、本実施形態では、このようなリークガスが断熱容器120内に滞留することを防止できる。
【0036】
(単セル40の詳細)
図4は、単セル40の側面図である。
図4に示すように、単セル40は、いわゆる燃料極支持膜形タイプの燃料電池セルであり、インターコネクタ41、45、集電体42、枠部43、セル本体44を有する。尚、
図4では、判り易さのために構成の一部を、分解して説明している。
【0037】
インターコネクタ41、45は、単セル40間の導通を確保し、かつガス流路を遮断する、上下一対の導電性(例えば、金属)のプレートである。なお、単セル40間には、1個のインターコネクタのみが配置される(インターコネクタの共有)。
【0038】
集電体42は、セル本体44(空気極55)とインターコネクタ41との間の導通を確保するためのものであり、例えば、SUS(ステンレス)等の金属材料からなる。
【0039】
枠部43は、開口46を有する。この開口46内は、気密に保持され、かつ酸化剤ガス流路47、燃料ガス流路48に区分される。枠部43は、空気極フレーム51、絶縁フレーム52、セパレータ(その外周縁部)53、燃料極フレーム54を有する。空気極フレーム51は、酸化剤ガス流路47側に配置される金属製のフレームである。絶縁フレーム52は、インターコネクタ41、45間を電気的に絶縁する、セラミックス製のフレームである。セパレータ53は、セル本体44を接合し、かつ酸化剤ガス流路47、燃料ガス流路48を遮断する金属製のフレームである。燃料極フレーム54は、燃料ガス流路48側に配置される金属製のフレームである。
【0040】
枠部43は、ボルト21に対応する前記貫通孔19を有する。
【0041】
セル本体44は、空気極(カソード)55、固体電解質体56、燃料極(アノード)57を積層して構成される。固体電解質体56の酸化剤ガス流路47側、燃料ガス流路48側それぞれに、空気極55、燃料極57が配置される。空気極55としてはペロブスカイト系酸化物、各種貴金属及び貴金属とセラミックとのサーメットが使用できる。固体電解質体56としては、YSZ、Sc−SZ、SDC、GDC、ペロブスカイト系酸化物等の材料が使用できる。また、燃料極57としてはNi及びNiとセラミックとのサーメットが使用できる。
【0042】
なお、燃料ガス流路48においては、燃料ガスは、
図4の左右方向(ここでは同図右側から左側に)流れるように供給され、酸化剤ガス流路47においては、酸化剤ガスは、同図紙面と垂直方向(ここでは紙面裏側から表側に)流れるように供給される。
【0043】
(補助器130の詳細)
補助器130は、上側燃焼器141と下側燃焼器142との間に改質器150、熱交換器160が積層して配置されたものであり、上側燃焼器141と下側燃焼器142とは連通孔143により連通している。
【0044】
このうち、改質器150は、燃料電池スタック110に供給される燃料ガスを水素リッチの燃料ガス(改質ガス)に改質する板状の装置である。この改質器150の上流側(
図2左側)は、外部から燃料ガスG1が供給される燃料ガス導入流路151と、外部から改質水Lが供給される改質水導入流路152とに接続されている。一方、改質器150の下流側は、連結部材153の連結流路154を介して、ボルト21が貫通される(燃料ガスの供給用の)貫通流路25bに接続されている。
【0045】
また、燃焼器140は、発電後に各単セル40より排出される残余のガス、即ち発電に使用されなかった残余の燃料ガスG12と酸化剤ガスとを反応させて燃焼させる板状の装置であり、この燃焼器140内で燃焼によって生じた排ガスG3は、連通孔143を通って、断熱容器120の内部空間123に排出される。燃焼器140は、燃料電池スタック110からの使用済みの燃料ガスを燃焼させ、内部空間123に排出する。
なお、燃焼器140内には、上述した燃焼を促進させる(例えば、Pt、Pdからなる)燃焼触媒が配置されている。
【0046】
上側燃焼器141の上流側は、貫通流路25c、25dに接続される。上側燃焼器141は、連結部材144の連結流路145を介して、(残余の燃料ガスの排出用の)貫通流路25dに接続される。また、上側燃焼器141は、連結部材146の連結流路147を介して、(残余の酸化剤ガスの排出用の)貫通流路25cに接続される。
下側燃焼器142の、鉛直方向で下側に、排ガスの排出用の排出口149を有する排出部148が設けられる。排出口149は断熱容器120の内部空間123に開口している。
【0047】
熱交換器160は、燃焼器140からの熱によって、外部から導入される酸化剤ガスG2を加熱する。熱交換器160は、直方形形状の部材であり、その上流側には、外部から酸化剤ガスG2を導入する酸化剤ガス導入流路161が接続される。一方、熱交換器160の下流側は、連結部材162の連結流路163を介して、ボルト21が貫通される(酸化剤ガスG2の供給用の)貫通流路25aに接続されている。
【0048】
ここで、断熱容器120の内部空間123に存在する各種のガスとしては、燃焼器140から排出される排ガス(通常は未燃焼のガスが含まれている)や、それ以外の他のガス(例えば、単セル40の積層部分等からリークするおそれのある水素ガスやCOガス等のリークガス)が挙げられる。なお、以下では、これらのガスを混合排ガス(または混合排気ガス)と称する。
【0049】
起動バーナ170には、燃料ガスと酸化剤ガスとの混合気G4を供給する混合気供給流路171が接続されている。起動バーナ170の上部で混合気G4が燃焼する。燃焼後の排ガスは、内部空間123に放出され、排気部180から排出される。
【0050】
補助器130(排出口149)、起動バーナ170は、燃料電池スタック110より、鉛直方向で下方に配置されている。このため、燃料電池スタック110からのリークガスを補助器130(排出口149)、起動バーナ170からの排気ガスで、内部空間123の上方に強制的に移動させ、排気部180から容易に排出することができる。リークガスの可燃成分(燃料ガス、水素ガス、一酸化炭素)は、空気、排ガスに比べて比重が小さく、内部空間123の、鉛直方向で上方に移動しやすい。燃料電池スタック110の、鉛直方向で下方から排気ガスを排出することで、リークガスの可燃成分を強制的に内部空間123の上方に移動させ、排気部180から排出することができる。
【0051】
(断熱容器120の詳細)
この断熱容器120は、容器本体121、断熱材122、内部空間123、側面124、上面125、126を有する。
【0052】
容器本体121は、例えば、ステンレスからなる箱体(筐体)である。容器本体121は、その内部(内部空間123)にガスを閉じこめることができるガスタイトな構造である。
【0053】
断熱材122は、容器本体121の外周に配置されるセラミック板であり、断熱材122は、断熱容器120を覆い、断熱容器120を熱タイト(断熱構造)とする。
【0054】
なお、本実施形態の断熱容器120は、容器本体121、断熱材122が接して一体の構造であるが、容器本体121、断熱材122との間に、一部又は全体に空間を設けてもよい(例えば別体の構成でもよい)。
【0055】
内部空間123は、容器本体121内の空間において、各装置(熱交換器160、補助器130、燃料電池スタック110、補助器130)の外側の空間のことを言う。
【0056】
側面124は、鉛直である。後述のように、側面124は、上面125、126と共に、錐形状の最上部Pmhを形成し、最上部Pmhへのリークガスの可燃成分の集積を促進する。
【0057】
上面125、126は、互いに異なる第1、第2の方向に傾斜(水平方向に対して傾斜)し、上面125、126の間に高い領域(位置P1、P2を結ぶ領域)を形成する。
上面125、126は全体として第3の方向に傾斜(水平方向に対して傾斜)する。この結果、上面125、126の間の高い領域は、位置P2から位置P1に向かって高くなる勾配を有し、側面124の近傍に最上部Pmhが形成される。即ち、側面124、上面125、126の3者が交わる箇所が最上部Pmhであり、混合排ガス(特に、空気等より比重の小さい燃料ガス(リークガスの成分))は、この最上部Pmhに集まり、排気部180から外部に排出される。
なお、ここでは、上面125、126は平面であるが、曲面としても良い。
【0058】
(排気部180の詳細)
排気部180は、略直方体形状の部材であり、開口部181、排ガス流路182を有し、排ガス出口部183に接続される。
【0059】
開口部181は、排気部180の内部(排ガス流路182)に通じる開口である。開口部181は、完全に開口していても良いし、網(メッシュ)等が取り付けられていても良い。混合排ガスが通過可能であれば、開口部181の状態は特に問題とはならない。
開口部181は、内部空間123の最上部Pmhに対応して配置され、内部空間123の最上部Pmhから混合排ガスを導入する。即ち、最上部Pmhに近接して配置される開口部181等によって、内部空間123の最上部Pmhと断熱容器120の外部とが通じる。例えば、内部空間123内での最上部Pmhの高さH0に対して、開口部181の高さH1が80%程度以上であれば(H1/H0≧0.8)、最上部Pmhと開口部181は近接していると言える。
【0060】
排ガス流路182は、燃料ガスを、鉛直方向で上方から下方に向かって排気する排気経路である。排ガス流路182は、筒形状であれば、種々の形状を取り得る。排ガス流路182は、例えば、円形筒形状(円筒形状)、扁平筒形状、方形筒形状、多角形筒形状とすることができる。
【0061】
排ガス出口部183は、排ガス流路182に接続され、側面124を貫通して、燃料ガスを水平方向に排気する。排ガスを水平方向に排出することが、断熱容器120の構成上好ましい。排ガスを、鉛直方向で上方に排出しようとすると、断熱容器120の天井(上方)に排ガスの出口を設けなければならなくなり、断熱性が弱くなる。断熱容器120の上方には、排ガスの出口を設けず、十分な断熱を確保することが、熱効率の観点から好ましい。即ち、燃料ガスを水平方向に排気することで、垂直方向に排気する場合と比べて、断熱容器の断熱の確保、および熱効率の向上が容易となる。
【0062】
排ガス流路182に、燃焼触媒184を配置し、混合排ガス中の未燃焼のガスを燃焼(分解)させても良い。
【0063】
燃焼触媒184は、例えば、PtやPdの微粒子を担持させたハニカム形状のメタル材を利用できる。なお、燃焼触媒は、上記に限ることなく、粒々形状(所謂、ペレット形状)でもよい。また、メタル材に限ることなく、セラミック表面に、上記の金属を付与したものでもよい。
【0064】
(燃料電池システム100の動作)
燃料電池システム100におけるガスの流れについて説明する。
燃料電池システム100の始動時(起動時)には、混合気G4が混合気供給流路171を介して起動バーナ170に供給され、混合気G4が燃焼することによって、燃料電池スタック110等が加熱される。
【0065】
そして、燃料電池システム100によって発電を行う場合には、酸化剤ガスG2は、酸化剤ガス導入流路161から熱交換器160内に導入され、予熱が行われる。予熱された酸化剤ガスは、連結流路163から燃料電池スタック110の所定の貫通流路25aに導入され、貫通流路25aから各単セル40の酸化剤ガス流路47(
図4参照)に供給される。
【0066】
また、酸化剤ガスの供給と同時に、燃料ガス(原料ガス)G1は、燃料ガス導入流路151を介して改質器150に導入されるとともに、改質水は、改質水導入流路152を介して改質器150内に導入され、改質器150内にて燃料ガスの改質が行われる。
【0067】
改質された燃料ガス(改質ガス)は、連結流路154を介して燃料電池スタック110の所定の貫通流路25bに導入され、貫通流路25bから各単セル40の燃料ガス流路48(
図4参照)に供給される。
【0068】
そして、各単セル40内にて、燃料ガスと酸化剤ガスとを用いて発電が行われ、発電後の残余のガス(残余の燃料ガスと酸化剤ガス)とは、それぞれ所定の貫通流路25c、25dに導入される。即ち、残余の燃料ガスは貫通流路25dに、残余の酸化剤ガスは貫通流路25cに導入される。
【0069】
次に、残余の燃料ガスは、貫通流路25dから上側燃焼器141に導入されるとともに、残余の酸化剤ガスは、貫通流路25cから上側燃焼器141に導入され、この上側燃焼器141内で残余の燃料ガスG12と残余の酸化剤ガスとが燃焼する。なお、上側燃焼器141は、連通孔143を介して下側燃焼器142と連通しているので、下側燃焼器142においても、同様に残余の燃料ガスと残余の酸化剤ガスとが燃焼する。
【0070】
そして、残余の燃料ガスと残余の酸化剤ガスとが燃焼して生じた排ガスG3は、下側燃焼器142の排出口149から、内部空間123に排出される。
内部空間123に排出された排ガスは、断熱容器120と燃料電池スタック110との間隙を通って、燃料電池スタック110の全体の温度を均一にするように熱を授受しながら上昇する。
【0071】
また、例えば単セル40の積層部分などからリークして内部空間123に排出された各種のガス(リークガス)も、同様に、断熱容器120と燃料電池スタック110との間隙等を通って上昇し、排ガス流路182に導入される。
【0072】
混合排ガス中、リークガスの可燃成分(燃料ガス、水素ガス、一酸化炭素ガス)は、空気や排ガスよりも比重が小さいため、内部空間123の上部に移動しやすい。燃料電池スタック110の、鉛直方向で下方に配置される補助器130(あるいは起動バーナ170)から放出される排ガスG3によって、内部空間123の上部への移動が促進される。最終的に、リークガスの可燃成分は、内部空間123の最上部Pmhに集積される。
【0073】
リークガスの可燃成分は、排ガスと混じった混合排ガスとして、最上部Pmhに対応して配置される開口部181から排気部180(排ガス流路182)に導入される。
排ガス流路182に導入された混合排ガス中の未燃焼のガスが燃焼触媒184にて燃焼される。
【0074】
本実施形態によれば、燃料電池スタック110からのリークガスの可燃成分が、その下方からの排ガスG3によって、内部空間123の最上部Pmhに集められ、排気部180から外部に排気される。その結果、リークガスが内部空間123内に滞留することなく、順に排気される。このため、燃料電池スタック110からガスがリークした場合でも、可燃性ガスが滞留し筐体内で、燃焼、爆発することは無い。
【0075】
本実施形態では、補助器130(燃焼器140)(および起動バーナ170)からの排ガスによって、内部空間123からリークガスを強制的に排出できる。特に、燃焼器が、燃料電池スタック110よりも鉛直方向下側に配置される排出口149を有するので、排出口149からの排ガスによって、リークガスを効果的に最上部Pmhに導くことができる。
【0076】
(変形例)
図5、
図6は、変形例1、2に係る燃料電池システム100a、100bを表す斜視図である。
燃料電池システム100aでは、上面125、126の間に、上面127が配置されている。上面127は平面であり、上面127、側面124の間に最上部Pmhが形成される。排気ガスG3と共にリークガス(燃料ガス)を最上部Pmhに集めて、排気部180から外部に排出できる。第1の実施形態に比して、最上部Pmhの幅が広くなるが、リークガスを集めて排出することが可能である。
【0077】
燃料電池システム100bでは、上面127に替えて、上面127aが配置される。上面127aは曲面であるが、変形例1と同様に、上面127a、側面124の間に最上部Pmhが形成される。排気ガスG3と共にリークガス(燃料ガス)を最上部Pmhに集めて、排気部180から外部に排出できる。
なお、1つの曲面によって、上面125、126、127aに対応する形状を構成しても良い。
また、これらの変形例に於いて、上記の実施形態と同様の構成については、記載を省略しているが、上記の実施形態の説明と同様である。
【0078】
(第2の実施形態)
図7は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池システム100cを表す斜視図である。
ここでは、内部空間123の上面が、1枚の平面(上面128)から構成される。この上面128は、位置P2から位置P1に向かって高くなる勾配を有し、側面124の近傍に最上部Pmhが形成される。この結果、第1の実施形態、変形例1、2と比べて、最上部Pmhの幅が大きくなっている。
なお、ここでは、上面128を平面としたが、曲面とすることも可能である。
【0079】
燃料電池システム100cの排気部180aは、開口部181a、排ガス流路182aを有し、排ガス出口部183に接続される。
開口部181aは、最上部Pmhの幅に対応する幅広の開口を有し、最上部Pmhから混合排気ガスを導入できる。
排ガス流路182aは、上部と下部で幅が異なる。排ガス流路182aの上部は幅が一定であるが、その下部は、鉛直方向で下方に行くに従って、幅が小さくなっている(幅が絞り込まれる)。
このように、排気部180aが幅広の開口部181a、幅が絞り込まれる排ガス流路182aによって、幅広の最上部Pmhから効率的に混合排気ガスを導入、排気することができる。
また、この第2の実施形態に於いて、上記の実施形態と同様の構成については、記載を省略しているが、上記の実施形態の説明と同様である。
【0080】
(第3の実施形態)
図8は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池システム100dを表す側面図である。燃料電池システム100dは、浄化ガス経路185、熱交換器190を有し、排ガス出口部183aが熱交換器190に接続される。
浄化ガス経路185は、排気部180に配置された燃焼触媒184により、浄化された混合排気ガスを、熱交換器190に導入するための経路(ガス流路)である。浄化ガス経路185は、排気部180の鉛直方向で下面に接続され、鉛直方向で下方に伸びる。浄化ガス経路185は、熱交換器190の、鉛直方向で上方においてL字形状に屈曲して、さらに、熱交換器190の上方に沿って伸びるように配置され、熱交換器190の上面において熱交換器190に接続される。
なお、
図8では、判り易さのために、起動バーナ170の記載を省略している。これは、後述の
図9でも同様である。
【0081】
浄化ガス流路185は、排気部180からの排気ガスを熱交換器190に流入させる流路である。排ガス出口部183aは、断熱容器120の鉛直な側面124を貫通して燃料ガスを外部に排気するように、熱交換器190に接続される。
【0082】
熱交換器190は、浄化された排気ガスG3の熱によって、燃料ガスG1、酸化剤ガスG2、および改質水Lを加熱する。熱交換器190は、直方形形状の部材であり、燃料ガス導入流路151、改質水導入流路152、酸化剤ガス導入流路161、および浄化ガス流路185が接続される。その結果、熱交換器190内に燃料ガスG1、酸化剤ガスG2、改質水L、および浄化された排気ガスG3(以下、燃料ガスG1等という)が流入する。流入した燃料ガスG1等は、熱交換器190内で区分され、直接接触することは無いが、熱交換によって、浄化された排気ガスG3の熱が燃料ガスG1、酸化剤ガスG2、および改質水Lに移行する。
【0083】
熱交換器190で加熱された燃料ガスG1と改質水Lは、改質器150に流入し、燃料ガスG1が水素リッチに改質される。また、熱交換器190で加熱された酸化剤ガスG2は、熱交換器160に流入し、さらに加熱される。
【0084】
熱交換器190での加熱に用いられた浄化された排ガスG3は、排ガス出口部183aから外部に排出される。
また、この第3の実施形態に於いて、上記の実施形態と同様の構成については、記載を省略しているが、上記の実施形態の説明と同様である。
【0085】
(第4の実施形態)
図9は、本発明の第4の実施形態に係る燃料電池システム100eを表す側面図である。燃料電池システム100eは、熱交換器190a、190bを有する。
熱交換器190a、190bは、燃料ガスG1、酸化剤ガスG2、および改質水Lを、(熱交換器190a、熱交換器190bの)順に加熱する。
ここで、熱交換器190aは、本発明に於ける第2の熱交換器の一形態、熱交換器190bは、本発明に於ける熱交換器(第1の熱交換器)の一形態となる。尚、熱交換器190bは、(第2の熱交換器に対する表現として、)第1の熱交換器としても良い。
【0086】
熱交換器190aは、燃焼触媒184からの発熱および排ガスG3により、燃料ガスG1、酸化剤ガスG2、改質水Lを加熱する。熱交換器190aは、直方形形状の部材であり、排ガス流路182からの排ガスG3が流入すると共に、燃焼触媒184と熱的に接続される。また、熱交換器190aには、燃料ガス導入流路151、改質水導入流路152、および酸化剤ガス導入流路161が接続され、燃料ガスG1等が流入する。熱交換によって、燃焼触媒184および排ガスG3の熱が燃料ガスG1、酸化剤ガスG2、および改質水Lに移行する。
【0087】
熱交換器190bは、排ガスG3により、燃料ガスG1、酸化剤ガスG2、および改質水Lをさらに加熱する。
【0088】
熱交換器190a、190bで加熱された燃料ガスG1と改質水Lは、改質器150に流入し、燃料ガスG1が水素リッチに改質される。また、熱交換器190a、190bで加熱された酸化剤ガスG2は、熱交換器160に流入し、さらに加熱される。
【0089】
熱交換器190a、190bでの加熱に用いられた排ガスG3は、熱交換器の内部に設置されている仕切り板186の下側を通過する。その後、排ガスG3は、鉛直な側面124を貫通するように設置されている排ガス出口部183aから外部に排出される。
ここでは、熱交換器190a、190bを一体構造としているが、熱交換器190a、190bを分割可能としても良い。また、熱交換器190bを、補助器130に於ける熱交換器160に連結した構造とすることも可能である。
また、この第4の実施形態に於いて、上記の実施形態と同様の構成については、記載を省略しているが、上記の実施形態の説明と同様である。
【0090】
(その他の実施形態)
本発明の実施形態は上記の実施形態に限られず拡張、変更可能であり、拡張、変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。