特許第6498891号(P6498891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498891
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】研磨方法及び研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/10 20120101AFI20190401BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   B24B37/10
   H01L21/304 621B
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-180567(P2014-180567)
(22)【出願日】2014年9月4日
(65)【公開番号】特開2016-52711(P2016-52711A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2017年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】503043481
【氏名又は名称】株式会社池上精機
(74)【代理人】
【識別番号】100079164
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 勇
(72)【発明者】
【氏名】金堂 善一郎
(72)【発明者】
【氏名】森脇 徹
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 健太郎
【審査官】 稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−138126(JP,A)
【文献】 特開平08−174409(JP,A)
【文献】 特開昭60−025651(JP,A)
【文献】 特開平01−216767(JP,A)
【文献】 実開昭62−068761(JP,U)
【文献】 特開2014−073573(JP,A)
【文献】 特開昭54−040391(JP,A)
【文献】 特開2010−221370(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103878669(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/04−37/10
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を研磨盤上の円盤状の研磨材で研磨する研磨方法において、
前記研磨材に対して前記試料をX方向に移動するX軸テーブルと前記研磨材に対して前記X軸テーブルを前記X方向に直交するY方向に移動するY軸テーブルとを用い、前記試料を研磨する開始位置から前記研磨材上に沿って前記X方向と前記Y方向との合成方向である渦巻き状に移動させる第1の工程と、
前記第1の工程による前記試料の移動過程を経て、前記開始位置と前記移動後の位置で前記研磨材に対する前記試料の研磨領域を変化させる第2の工程と、
前記第2の工程における前記研磨材に対する前記試料の研磨領域の変化に基づいて、前記研磨材上の研磨位置により生じる研磨量の差を補正する第3の工程とを同時に実行し、
前記試料の研磨領域を変化させるとは、前記試料を研磨する開始位置における前記研磨材の外周側に位置する前記研磨領域を内周側へ変えるとともに、前記試料を研磨する開始位置における前記研磨材の内周側に位置する前記研磨領域を外周側へ変えることである、
ことを特徴とする研磨方法。
【請求項2】
前記請求項1に記載の研磨方法において、
前記第2の工程において、前記試料を研磨する開始位置からの前記試料の移動過程を経て、前記開始位置と前記移動後の位置で前記試料の研磨領域を前記研磨材の内外に対して変化させることを特徴とする研磨方法。
【請求項3】
前記請求項2に記載の研磨方法において、
前記第2の工程において、前記試料を研磨する開始位置からの前記試料の移動過程中に、前記開始位置と前記移動後の位置で前記試料の研磨領域を前記研磨盤の内外に対して連続して変化させることを特徴とする研磨方法。
【請求項4】
試料を研磨盤上の円盤状の研磨材で研磨する研磨装置において、
前記研磨材に対して前記試料をX方向に移動するX軸テーブルと前記研磨材に対して前記X軸テーブルを前記X方向に直交するY方向に移動するY軸テーブルとを用い、前記試料を研磨する開始位置から前記X方向と前記Y方向との合成方向である渦巻き状の前記試料の移動過程を経て、前記開始位置と前記移動後の位置で前記研磨材に対する前記試料の研磨領域を変化させることにより、前記研磨材上の研磨位置により生じる研磨量の差を補正する試料移動機構を有し、
前記試料の研磨領域を変化させるとは、前記試料を研磨する開始位置における前記研磨材の外周側に位置する前記研磨領域を内周側へ変えるとともに、前記試料を研磨する開始位置における前記研磨材の内周側に位置する前記研磨領域を外周側へ変えることである、
ことを特徴とする研磨装置。
【請求項5】
前記請求項4に記載の研磨装置において、
前記XY移動機構は、前記試料を研磨する開始位置からの前記試料の移動過程を経て、前記開始位置と前記移動後の位置で前記研磨材の内外に対する前記試料の研磨領域を変化させるものであることを特徴とする研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を偏研磨するのを回避する研磨方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶方位の観察にはCP(Cross section Polisher)やIM(Ion Milling)というイオンビーム加工装置が不可欠である。結晶の方位解析では、その前段階の研磨工程の仕上げによって大きく影響される。これまでの研磨紙や研磨剤を用いた機械研磨では、試料表面(観察面)に、研磨加工によって表面応力が発生したり、疵やボイド(穴)が生じたり、クラック(割れ)及び非晶質層が発生することがあった。
【0003】
そこで、電解研磨によって加工層を除去する工夫も行われてきた。特にEBSD(Electron Back Scattering diffraction Pattern)による結晶方位や歪分布状態の解析を行うときに、試料表面に加工変質層による加工歪みが存在すると正確に評価することができない。このため、非常に弱いイオンビームで再加工を行うことにより、例えば硬・軟質複合材料の界面においても凹凸のない、綺麗な研磨面を得ることができ微小領域の高倍率観察や結晶方位解析(EBSD)が可能な試料が作られてきた。
【0004】
前記イオンビームでの加工方法は、その装置が高価であることに加えて加工時間も長時間掛かる。そこで機械研磨だけで結晶方位解析が容易にできる機械式研磨機の要求が高まっている。
【0005】
機械式研磨機は試料と研磨盤の研磨材とを対峙させ、前記試料と前記研磨盤とを同一方向あるいは逆方向に回転させつつ前記試料を前記研磨材で研磨していた(例えば特許文献1,特許文献2)。前記研磨材とは、研磨に必要な部材を意味する。
【0006】
従来の機械式研磨装置においては図2に示すように、円盤状の試料ホルダ30に複数の試料31を同心円上に配置して自転させつつ研磨盤32上で公転させて、前記試料31を前記研磨盤32上の研磨材で研磨していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−148479号
【特許文献2】特開2004−209564号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図2から明らかなように、前記研磨盤32が回転中心Oの周りに回転する際、前記研磨盤32の外周側32aと回転中心側の内周側32bとの周速に差が生じている。すなわち、前記試料31の外側31aは前記研磨盤32の周速が早い外周側32aで研磨され、前記試料31の内側31bは前記研磨盤32の周速が遅い内周側32bで研磨されることになる。
【0009】
従って、前記試料31の外側31aの研磨量は多く、前記試料31の内側31bの研磨量は少なくなり、前記試料31の内側31bと外側31aとの研磨量に前記研磨盤の周速の違いによる差が生じてしまい、前記試料31が不均一に研磨されてしまう。
【0010】
以上のように前記試料31が不均一に研磨されると、その研磨面のうち比較的平坦な組織を顕微鏡で部分的に観察せざるを得ず、前記試料31の結晶方位を研磨面全体で正確に観察及び分析することができないという課題があった。
【0011】
さらに、比較的平坦な組織を顕微鏡で部分的に観察する場合であっても、周速差による研磨量不均一の影響が目的とする平面組織・積層組織及び界面組織に生じてしまい、正確に観察・分析することができないという課題があった。
【0012】
従って、前記平面組織・積層組織及び界面組織の観察・分析に正確性を確保するには、機械式研磨機による研磨には限界があり、熟練者による高度な研磨方法で研磨する必要があった。
【0013】
本発明の目的は、試料を研磨する際に研磨盤の内外周間に生じる周速差に起因する研磨量の不均一を補正する研磨方法及び研磨装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従来は、機械式研磨機による研磨速度などを変更することにより、研磨量の不均一を補正する試みがなされているが、現状では改善されていないのが実情である。本発明者は、研磨量の不均一が研磨盤の周速差に起因することを突き止めて、試料を研磨する際に研磨盤の内外周間に生じる周速差に起因する研磨量の違いを補正することを実現させている。
【0015】
具体的には、本発明に係る試料を研磨盤上の円盤状の研磨材で研磨する研磨方法は、前記研磨材に対して前記試料をX方向に移動するX軸テーブルと前記研磨材に対して前記X軸テーブルを前記X方向に直交するY方向に移動するY軸テーブルとを用い、前記試料を研磨する開始位置から前記研磨材上に沿って前記X方向と前記Y方向との合成方向である渦巻き状に移動させる第1の工程と、前記第1の工程による前記試料の移動過程を経て、前記開始位置と前記移動後の位置で前記研磨材に対する前記試料の研磨領域を変化させる第2の工程と、前記第2の工程における前記研磨材に対する前記試料の研磨領域の変化に基づいて、前記研磨材上の研磨位置により生じる研磨量の差を補正する第3の工程とを同時に実行し、前記試料の研磨領域を変化させるとは、前記試料を研磨する開始位置における前記研磨材の外周側に位置する前記研磨領域を内周側へ変えるとともに、前記試料を研磨する開始位置における前記研磨材の内周側に位置する前記研磨領域を外周側へ変えることである、ことを特徴とするものである。
【0016】
本発明に係る研磨装置は、試料を研磨盤上の円盤状の研磨材で研磨する研磨装置において、前記研磨材に対して前記試料をX方向に移動するX軸テーブルと前記研磨材に対して前記X軸テーブルを前記X方向に直交するY方向に移動するY軸テーブルとを用い、前記試料を研磨する開始位置から前記X方向と前記Y方向との合成方向である渦巻き状の前記試料の移動過程を経て、前記開始位置と前記移動後の位置で前記研磨材に対する前記試料の研磨領域を変化させることにより、前記研磨材上の研磨位置により生じる研磨量の差を補正する試料移動機構を有し、前記試料の研磨領域を変化させるとは、前記試料を研磨する開始位置における前記研磨材の外周側に位置する前記研磨領域を内周側へ変えるとともに、前記試料を研磨する開始位置における前記研磨材の内周側に位置する前記研磨領域を外周側へ変えることである、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明によれば、研磨材における試料を研磨する開始位置からの前記試料の移動課程を経て、前記開始位置と前記移動後の位置で前記研磨材に対する前記試料の研磨領域を変化させ、前記研磨材に対する前記試料の研磨領域の変化に基づいて、前記研磨材上の研磨位置により生じる研磨量の差を補正することができ、CPやIMによる加工に代わる研磨を機械式研磨によって実現することができるという顕著な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る研磨方法における試料の軌跡を示す図である。
図2】従来例に係る研磨方法における試料の軌跡を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る研磨装置の全体を示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る研磨装置の全体を示す上面図である。
図5】本発明の実施形態に係る研磨装置に用いるX軸駆動機構を示す斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係る研磨装置に用いるY軸駆動機構を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係る研磨装置に用いるZ軸駆動機構を示す斜視図である。
図8】本発明の実施形態に係る研磨装置に用いるコントローラを詳細に示す構成図である。
図9】本発明の実施形態に係る研磨装置に用いるコントローラが試料を研磨材の研磨面内に描く試料の移動パターンを示す軌跡図である。
図10】本発明の実施形態に係る研磨装置に用いるウエイトキャンセラ及びウエイトコントローラを示す斜視図である。
図11】(a)は本発明の実施形態に係る研磨方法で研磨して金属組織を観察した顕微鏡写真、(b)は従来例に係る研磨方法で研磨して金属組織を観察した顕微鏡写真である。
図12】金属組織を観察したEBSD像であって、(a)は表面加工層のあるEBSD像、(b)は表面加工層がないEBSD像をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて詳細に説明する。
【0020】
本実施形態に係る研磨装置を示す図3において、図の上下方向にZ軸方向、図の左右方向にX軸方向、図の奥行き方向にY軸方向をそれぞれ設定して説明する。さらに、本発明の実施形態に係る研磨装置による研磨には、単純に試料を研磨することにとどまらず、積層界面構造,多層膜(薄膜)の観察及び除去,結晶解析に必要な試料情報を得るための研磨,半導体の故障解析,メッキ層の構造解析,電子部品などの平面研磨や断面研磨を含むものである。
【0021】
本実施形態は図1に示すように、研磨盤3の研磨材2上における試料5を研磨する開始位置から前記研磨材2上に沿って移動させる第1の工程と、前記第1の工程による前記試料5の移動過程を経て、前記開始位置S1と前記移動後の位置S2〜S16で前記研磨材2に対する前記試料の研磨領域を変化させる第2の工程と、前記第2の工程における前記研磨材に対する前記試料の研磨領域の変化に基づいて、前記研磨材上の研磨位置により生じる研磨量の差を補正する第3の工程とを実行することを特徴とするものである。すなわち、前記開始位置S1と前記移動後S2〜S16の位置で前記研磨材2に対する前記試料5の研磨領域(内周側5bと外周側5a)を変化させることにより、前記研磨材に対する前記試料の研磨領域の変化に基づいて、前記研磨材上の研磨位置により生じる研磨量の差を補正する。そして、試料移動機構(4A)を用いることにより、前記試料5を研磨する開始位置からの前記試料の移動過程を経て、前記開始位置S1と前記移動後S2〜S16の位置で前記研磨材2に対する前記試料の研磨領域5の研磨領域(内周側5bと外周側5a)を変化させることにより、前記研磨材に対する前記試料の研磨領域の変化に基づいて、前記研磨材上の研磨位置により生じる研磨量の差を補正するようにしている。ここで、試料5の研磨領域(内周側5bと外周側5a)を変化させるとは、試料5を研磨する開始位置S1における研磨材2の外周側に位置する研磨領域(外周側5a)を内周側へ変えるとともに、試料5を研磨する開始位置S1における研磨材2の内周側に位置する研磨領域(内周側5b)を外周側へ変えることである。また前記試料移動機構(4A)による試料5の移動と研磨盤3による研磨材2の回転とを併用させて試料を研磨するばかりでなく、研磨材2の回転を停止させて前記試料移動機構(4A)による試料5の移動のみによって試料を研磨してもよいものである。なお、研磨材2としては円盤状の研磨材を用いているが、必要に応じて円盤以外の形状のものを用いてもよいものである。
【0022】
前記試料移動機構は前記試料の移動過程をX方向とY方向との合成方向或いはX方向又はY方向に規制するXY移動機構であるが、試料5の研磨量に応じて試料をZ軸方向に移動させて試料5と研磨材2との研磨状態を維持する必要があるため、以下の説明では、前記試料移動機構として3次元テーブルを用いている。
具体的には、本発明の実施形態に係る研磨装置は図3及び図4に示すように、装置本体1に回転自在に支持され且つ研磨盤3の上面に存在する研磨材2と(図4参照)と、直交するX軸方向とY軸方向とZ軸方向との3軸方向に移動する3次元テーブル4と、前記3次元テーブル4に支持され試料5を研磨面2aに対向させて保持する試料ホルダ6とを有し、さらに前記3次元テーブル4の動作を制御する図8に示すコントローラCとを有している。
前記3次元テーブル4は図3及び図4に示すように、前記研磨盤3上の直交する2軸のXY座標面上で前記試料5を研磨する開始位置S1から移動後の位置S2に前記試料5を移動させるXY軸移動機構4Aと、前記XY軸機構4Aに搭載され前記試料ホルダ6をZ方向(図1の上下方向)に移動するためのZ軸移動機構4Bとから構成されている。
【0023】
前記研磨盤3は図4に示すように、その上面が円盤状に形成され、その上面に円盤状の研磨材2が交換可能に装備される。前記円盤状研磨盤3の外側には、リング状の衝立11が立ち上げて形成されている。前記リング状衝立11は、供給ノズル10から供給される洗浄液を前記研磨材2の研磨面2aの範囲に飛散を止めるものであり、前記洗浄済の洗浄液を図示しない排出口から適宜排出するようになっている。なお、微粒径の砥粉を混合させた混濁液を供給するには前記供給ノズル10から滴下し、その微粒径の砥粉により試料5を研磨するようにしてもよいものである。
【0024】
前記3次元テーブル4は図3及び図4に示すように、図5に示すX軸テーブル7と、図6に示すY軸テーブル8と、図7に示すZ軸テーブル9とから構成されている。前記X軸テーブル7と前記Y軸テーブル8は、前記研磨材2上の直交する2軸のXY座標面上で前記試料5を研磨する開始位置S1から対局する対局位置S2に前記試料5を移動させるXY軸移動機構4Aを構成している。さらに、前記Z軸テーブル9は、前記XY軸機構4Aに搭載され前記試料ホルダ6をZ方向(図1の上下方向)に移動するためのZ軸移動機構4Bを構成している。
【0025】
[Y軸テーブル]
前記X軸テーブル7は図5に示すように前記Y軸テーブル8に支持されてX軸方向に移動するので、先ず、前記Y軸テーブル8について説明する。
前記Y軸テーブル8は前記研磨盤3の上面と平行なXY座標面のY軸方向に移動させるものであり、図6に示すように、2本の平行なガイドレール8aと、前記平行なガイドレール8aに沿う送りねじ8bと、Y軸用駆動モータ8cと、2本の支持腕8dと、前記研磨盤3の下面を回転可能に支持する基盤8eとを有している。
【0026】
前記2本のガイドレール8aは図6に示すように、前記研磨盤3の上面のY軸方向をカバーする長さを有し、前記基盤8eの下面にY軸方向(図3の奥行き方向)で平行に対向させて取付けられている。前記送りねじ8aは、その両端が軸受け8fにそれぞれ軸支されて前記2本のガイドレール8aのうちの1本のガイドレール8aに平行な姿勢に取付けられている。前記Y軸用駆動モータ8cは、伝達機構8jを介して前記送りねじ8bに連結されている。従って、前記Y軸用駆動モータ8cが時計方向又は逆時計方向に回転駆動すると、その駆動力が前記伝達機構8jを介して前記送りねじ8bに伝達され、前記送りねじ8bが前記軸受け8fに軸支されて回転することになる。
前記2本の支持腕8dは、その基部が前記ガイドレール8aにそれぞれ支持されて前記ガイドレール8aによりY軸方向に往復移動可能にガイドされている。前記2本の支持腕8dのうち1本の支持腕8dの基部には前記送りねじ8bがねじ込まれており、前記2本の支持腕8aは前記送りねじ8bの回転によりY軸方向に往復可動するようになっている。さらに、前記2本の支持腕8dは図5及び図7に示すように、前記研磨盤3に対して上方に立ち上がっており、前記2本の支持腕8bは図7に示すように、その上端に前記X軸テーブル7を水平に支持している。
【0027】
[X軸テーブル]
前記X軸テーブル7は前記研磨盤3の上面と平行なXY座標面のX軸方向に移動させるものであり、図5に示すように、基盤7aと、2本のガイドレール7bと、送りねじ7cと、X軸用駆動モータ7d、移動駒7gとを有している。
【0028】
前記ベース7aは図5に示すように、Y軸テーブル8の2本の支持腕8aに跨がる長さを有しており、Y軸テーブル8の2本の支持腕8aに水平に支持されている。前記2本のガイドレール7bは、前記研磨盤3上に装填した前記研磨材2の研磨面2aのX軸方向をカバーする長さを有し、前記ベース7aにX軸方向(図3の左右方向)で平行に対向させて取付けられている。前記送りねじ7cは、その両端が軸受け7eにそれぞれ軸支されて前記2本のガイドレール7bのうち1本のガイドレール7bに平行な姿勢でX軸方向に向けて取付けられている。前記X軸用駆動モータ7dは、伝達機構7fを介して前記送りねじ7cに連結されている。従って、前記X軸用駆動モータ7dが時計方向又は逆時計方向に回転駆動すると、その駆動力が前記伝達機構7fを介して前記送りねじ7cに伝達され、前記送りねじ7cが前記軸受け7fに軸支されて回転することになる。
【0029】
前記移動駒7gは前記2本のガイドレール7bにガイドされてX軸方向に移動可能に取り付けられ、前記移動駒7gには前記送りねじ7cがねじ込まれており、前記移動駒7gは前記送りねじ7cの回転によりX軸方向に往復可動するようになっている。
【0030】
[Z軸テーブル]
前記Z軸テーブル9は前記X軸テーブル7の移動駒7gに支持されてZ軸方向に前記試料ホルダ6を往復可能に支持するものであり、図7に示すように、基台9aと、ガイドレール9bと、送りねじ9cと、Z軸用駆動モータ9dとを有している。なお、駆動モータ7d,8c,9eとして、ステッピングモータを図示したが、このモータに限られるものではない。
【0031】
前記基盤9aは図7に示すように下端に嵌合溝9eを有しており、その嵌合溝9eがX軸テーブル7(図5参照)の移動駒7gの凸状片7hに嵌合しており、前記基盤9aはX軸テーブル7(図5参照)の移動駒7gに固定されている。前記ガイドレール9bは前記基盤9aにZ軸方向に向けて取り付けられ、前記試料ホルダ6の基台6aは前記基盤9aに取り付けた上下梁9gにZ軸方向に向けて往復可能に支持されている。前記送りねじ9cはその両端が軸受けに軸支されて前記基盤9aにZ軸方向に向けて取り付けられ、前記Z軸用駆動モータ9dは伝達機構9fを介して前記送りねじ9cに連結されている。従って、前記Z軸用駆動モータ9dが時計方向又は逆時計方向に回転駆動すると、その駆動力が前記伝達機構9fを介して前記送りねじ9cに伝達されて前記試料ホルダ6の基台6aがZ軸方向に往復可動するようになっている。
【0032】
前記試料ホルダ6は前記研磨盤3の上面と平行なXY座標面上に前記X軸テーブル7及び前記Y軸テーブル8により移動されるとともに、前記Z軸テーブル9によりZ軸方向(図3の上下方向)に往復移動(上下移動)可能に支持されるものであり、図3及び図4並びに図7に示すように、基台6aと、移動軸6bと、チャック6cと、ウエイトキャンセラ6dとを有している。図7に示すウエイトキャンセラ6dは研磨面積が比較的大きく硬い試料5を研磨する際の荷重を管理することにより微小領域の高倍率観察やダメージの少ない試料5を得るために用いるものである。
【0033】
前記試料ホルダ6の基台6aは、前記Z軸テーブル9の上下梁9gにZ軸方向(図3の上下方向)に往復可能(上下移動)に支持されるともに、前記Z軸テーブル9の送りねじ9cに連結されている。従って、前記Z軸用駆動モータ9eを時計方向或いは反時計方向に回転させると、前記Z軸テーブル9の送りねじ9cはZ軸の周りに時計方向或いは反時計方向に回転し、この送りねじ9cの回転により、前記試料ホルダ6の基台6aがZ軸方向に往復(上下動)移動される。
【0034】
前記移動軸6bは前記基台6aにZ軸方向(図7の上下方向)に摺動可能に支持され、その下端に前記チャック6cを介して前記ホルダ6が装備されている。前記ホルダ6は研磨対象となる試料5を保持するようになっている。さらに、前記ホルダ6の試料台6cで試料5を挟んで前記ホルダ6に保持する、あるいは前記試料5を前記試料台6cに貼り付けそのホルダ6cをチャック6cに装備することにより、前記試料5をホルダ6に保持する。
【0035】
図7に示す前記ウエイトキャンセラ6dは、横軸6eと、L型金具6fと、重り6gと、連繋部材6hとを有している。前記横軸6eは前記基台6aの上端に設けた軸受け6jに水平姿勢で回転可能に支持されており、前記L型金具6fの短辺側6kが前記横軸6eの一端に固定されている。
前記連繋部材6hは、前記移動軸6bの上下方向への動きを前記横軸6eの回転に変換して伝達するように前記横軸6eと前記移動軸6bとを連繋させている。前記移動軸6bが上方向に移動する過程においては、前記連繋部材6hは前記横軸6eを反時計方向に回転させ、前記移動軸6bが下方向に移動する過程においては、前記連繋部材6hは前記横軸6eを時計方向に回転させる。前記移動軸6b,前記連繋部材6hを含む試料ホルダ6の総荷重は前記試料5を前記研磨材2の研磨面2aで研磨する際の加圧力として作用するものであるから、前記L型金具6fの長辺側に装填する重り6gの重量が前記試料ホルダ6の荷重をキャンセルする重量に調節することにより、前記加圧力を前記試料5がダメージを受けない極めて低い値(理想的には零の値)になるように管理することができる。前記試料ホルダ6による加圧力を前記ウエイトキャンセラ6dによりキャンセラした後に、前記試料5を研磨する際に適正な接触圧に相当する重量の重り6mを前記移動軸6bに取り付けて、前記重り6mの重量を前記試料ホルダ6に加える。これにより、前記試料にダメージを加えることなく正確に研磨することができる。なお、前記L型金具6fを枢支している枢支点の位置を変更して梃子比を変更することにより複数の荷重が異なる前記試料ホルダ6の荷重をキャンセルするのに対応することができる。
【0036】
図7に示すウエイトキャンセラ6d及び前記重り6mに代えて、図10に示すウエイトコントローラを用いてもよいものである。図7に示すウエイトキャンセラ6d及び前記重り6mの組み合わせによるウエイトキャンセラ6dは研磨面積が比較的大きい試料5を研磨する際の荷重を管理する場合に最適であるが、図10に示すウエイトコントローラは研磨面積が比較的小さい試料5を研磨する際の荷重を管理する場合に最適であり、試料5の研磨面積の大小に応じて図7あるいは図10のウエイトコントローラを選択して用いることになる。
【0037】
図10に示すウエイトコントローラは図7に示す試料ホルダ6の基台6aに移動軸6bが上下移動可能に支持されており、前記移動軸6bの下端に前記ホルダ6が装着されている。さらに、前記ホルダ6と前記基台6aとの間には板バネ20が取付られ、板バネ20の一端20aを前記チャック6cに取付け、その途中を湾曲させて遊び20bを持たせて、その他端20cを前記基台6aに取付けている。前記チャック6cには試料5をセットする試料台6kが設けられている。
【0038】
図10に示すウエイトコントロールは、前記板バネ20に撓みを加えないでフリーな状態で前記チャック6cを支持している状態のまま、前記チャック6cの試料5を研磨面2aに接触させると、その場合、前記試料5に加わる前記試料ホルダ6の荷重はほぼ零になる。この状態から前記試料ホルダ6をZ軸テーブル9によりZ軸方向に押し下げて前記試料5を加圧して研磨面2aに接触させると、前記試料5を加圧した力に相当するバネ力が前記板バネ20に蓄力される。前記試料ホルダ6はZ軸テーブル9により前記試料5の研磨量に応じてZ軸方向を研磨材2の研磨面2aに向けて下降するため、前記板バネ20がさらに撓むことはなく、前記板バネ20に蓄力された力が研磨に必要な荷重として前記試料5に研磨継続中に加わることになり、前記試料にダメージを加えることなく研磨に必要な荷重を加えて研磨することができる。
【0039】
図10に示すウエイトコントローラは、前記板バネ20に撓みを加えないでフリーな状態で前記チャック6cを支持している状態が、図7に示すウエイトキャンセラ6dにより、前記試料ホルダ6による加圧力が試料5に加わるのをキャンセラした状態に相当し、前記試料5を研磨する際に適正な接触圧に相当する重量の重り6mを前記移動軸6bに取り付けて、前記重り6mの重量を前記試料ホルダ6に加える。これにより、前記試料にダメージを加えることなく正確に研磨することができる。
図10に示すウエイトコントローラは、図7に示すウエイトキャンセラ6d及び前記重り6mに代えて板バネ20のみを用いる構成であり、その構成を簡素化することができるという効果を有している。
【0040】
[コントローラ]
上述したように前記3次元テーブル4の動作を制御するコントローラCは具体的には、前記3次元テーブル4のうちXY軸移動機構4Aを直交する2軸のXY方向に駆動制御して、前記試料5を研磨する開始位置S1から対局する対局位置S2に前記試料5を前記研磨材2の回転中心Oを避けて移動させ、前記対局位置S2での前記試料5の外周側5aの研磨領域A及び内周側5bの研磨領域Bを前記開始位置S1での前記試料5の外周側5aの研磨領域A及び内周側5bの研磨領域Bに対して反転させる機能を有している。その具体的な構成について説明する。
【0041】
前記コントローラCは図8に示すように、図3および図4に示す装置本体1の前面パネルに取り付けたキースイッチ群13と、装置本体1に装備した顕微鏡用のLED14と、メインCPU基板15と、サブCPU基板16とを有している。
【0042】
前記メインCPU基板15は図8に示すように、メインのCPU15aと、電源部と、LEDドライバ15cと、パラメータメモリ15dと、駆動モータドライバ15eとを有している。前記メインのCPU15aは、LEDドライバ15cと、パラメータメモリ15dと、駆動モータドライバ15eとを有している。前記メインのCPU15aは、前記サブCPU基板16のサブCPU16aを制御するようになっている。前記電源部は、商用電源の電圧を例えばAC24Vに降圧する電源ユニット15bと、前記電源ユニット15bからのAC24VをDC5Vに変換するDC/DCコンバータ15fと、前記DC/DCコンバータ15fからのDC5VをDC3.3Vに降圧するリニアレギュレータ15jとを有しており、前記リニアレギュレータ15jからの出力電源を前記メインのCPU15aに供給するようになっている。
【0043】
前記LEDドライバ15cは前記メインのCPU15aからの指令に基づいて前記顕微鏡用のLED14を駆動して顕微鏡で観察する試料5を照明するようになっている。前記駆動モータドライバ15eは前記メインのCPU15aからの指令に基づいて、前記研磨盤3を回転駆動させる駆動モータ17を駆動制御するようになっている。
【0044】
前記パラメータメモリ15dは、前記試料ホルダ6及び前記試料5の位置を前記研磨材2の研磨面2aと平行なXY座標面内で且つ前記研磨材の研磨面2aの範囲内で任意に変化させる際に後述のX軸用駆動モータ7d及びY軸用駆動モータ8cを駆動するためのパラメータを記憶している。前記パラメータは、図3および図4に示す装置本体1の前面パネルに取り付けたキースイッチ群13の操作によって入力される。
前記パラメータメモリ15dに記憶されているパラメータの例を説明すると、前記試料ホルダ6及び前記試料5の位置を前記研磨材2の研磨面2aと平行なXY座標面内で且つ前記研磨材2の研磨面2aの範囲内で、図1に示す円弧状軌跡、図8に示す渦巻き曲線、内トロコイド曲線状軌跡あるいはジグザグ状に移動させるための軌跡のパラメータを記憶している。
【0045】
前記サブCPU基板16は図8に示すように、前記メインのCPU15aによる制御指令に基づいて、サブCPU16aと、X軸用駆動モータのドライバ16bと、Y軸用駆動モータのドライバ16cと、Z軸用駆動モータのドライバ16dと、電源部とを有している。前記サブCPU16aは、X軸原点センサS1が検出する前記X軸用駆動モータ7dの原点位置情報に基づいて前記X軸用駆動モータのドライバ16bを駆動制御し、Y軸原点センサS2が検出する前記Y軸用駆動モータ8cの原点位置情報に基づいて前記Y軸用駆動モータのドライバ16cを駆動制御し、Z軸原点センサS3が検出する前記Z軸用駆動モータ9eの原点位置情報に基づいて前記Z軸用駆動モータのドライバ16dを駆動制御するようになっている。前記電源部は、前記電源ユニット15bからのAC24VをDC5Vに変換するDC/DCコンバータ16fと、前記DC/DCコンバータ16fからのDC5VをDC3.3Vに降圧するリニアレギュレータ16jとを有しており、前記リニアレギュレータ16jからの出力電源を前記サブCPU16aに供給するようになっている。
【0046】
前記X軸用駆動モータのドライバ16bは、前記X軸テーブル7のX軸用駆動モータ7dを駆動制御して前記X軸用の送りねじ7cを回転駆動するようになっている。前記Y軸用駆動モータのドライバ16cは、前記Y軸テーブル8のY軸用駆動モータ8cを駆動制御して前記Y軸用の送りねじ8bを回転駆動するようになっている。前記Z軸用駆動モータのドライバ16dは、前記Z軸テーブル9のZ軸用駆動モータ9eを駆動制御して前記Z軸用の送りねじ9dを回転駆動するようになっている。
【0047】
18はジョイステックユニットであり、そのジョイステックユニット18からのAC用出力信号がAC/DCコンバータでDC用信号に変換されて前記サブCPU16aに出力される。
【0048】
次に、本実施形態に係る研磨装置を用いて試料5を研磨する場合について説明する。図1は、XY軸移動機構4Aを直交する2軸のXY方向に駆動制御し、かつ前記試料ホルダ6に支えられた試料5を研磨材2の回転中心Oを避けて研磨材2の外周側5aに沿って円弧状に研磨開始位置S1から対局位置S2に移動させて、前記対局位置S2での前記試料5の外周側5aの研磨領域A及び内周側5bの研磨領域Bを前記開始位置S1での前記試料5の外周側5aの研磨領域A及び内周側5bの研磨領域Bに対して変化させる(反転させる)場合を示している。図3に示す試料5を移動させる軌跡のパラメータをキースイッチ群13により入力し、これらのパラメータをパラメータメモリ15dに記憶させておく。
【0049】
次に、上面に研磨材2を貼り付けた研磨盤3を駆動モータ17のスピンドルに取り付ける。微細な試料5をそれに対応したワークホルダに取り付けた後、そのワークホルダを試料ホルダ6のチャック6cに取付ける。試料5の取付けが終了したら、試料ホルダ6の移動軸6bを下方に移動して、試料5が研磨盤3の研磨材2の研磨面2aに接触させる。試料5を研磨材2の研磨面2aに接触させる際には、ウエイトキャンセラ6dを用いて試料ホルダ6の荷重をキャンセルし、試料ホルダ6の移動軸6bに研磨に必要な荷重の重り6mを搭載し、その重り6mの荷重により試料5を研磨材2の研磨面2aに接触させる。
【0050】
次にメイン基板15に搭載したメインCPU15aに研磨開始の指令をキースイッチ群13により入力すると、メインCPU15aはパラメータメモリ15dから図1に示す試料5の軌跡のパラメータを読み出し、そのパラメータに基づいて演算処理を実行し、研磨材2の研磨面2a内におけるX軸テーブル7による試料ホルダ5のX軸方向への移動量とY軸テーブル8による試料ホルダ5のY軸方向への移動量をサブCPU16aに出力する。
【0051】
前記サブCPU16aは、X軸原点センサS1が検出する前記X軸用駆動モータ7dの原点位置情報に基づいて前記X軸用駆動モータのドライバ16bを駆動制御し、Y軸原点センサS2が検出する前記Y軸用駆動モータ8cの原点位置情報に基づいて前記Y軸用駆動モータのドライバ16cを駆動制御し、Z軸原点センサS3が検出する前記Z軸用駆動モータ9eの原点位置情報に基づいて前記Z軸用駆動モータのドライバ16dを駆動制御する。
【0052】
前記X軸用駆動モータのドライバ16bは、前記X軸テーブル7のX軸用駆動モータ7dを駆動制御して前記X軸用の送りねじ7cを回転駆動する。前記Y軸用駆動モータのドライバ16cは、前記Y軸テーブル8のY軸用駆動モータ8cを駆動制御して前記Y軸用の送りねじ8bを回転駆動する。
【0053】
以上のように、コントローラCは図1に示すように、試料5をXY軸移動機構4Aにより研磨材2上に直交する2軸のXY方向に駆動制御し、研磨材2の外周側5aに沿って円弧状に研磨開始位置S1から試料5を移動させて、前記試料5を研磨する研磨開始位置S1からの前記試料5の移動過程(研磨開始位置S1〜移動後位置S2〜S15又はS16)を経て、前記開始位置S1と前記移動後の位置S2〜S15又はS16との前記試料5の外周側5aの研磨領域A及び内周側5bの研磨領域Bを変化させる(入れ替える)ことにより、前記研磨盤3の内外の周速差による研磨量の差を補正する。
【0054】
図1に示すように、試料5の軌跡を検討すると、研磨開始位置S1における試料5の外周側5aの研磨領域Aは研磨材2の外周側2aに対峙し、試料5の内周側5bの研磨領域Bは研磨材2の内周側2bに対峙している。この研磨開始位置S1から試料5を図1に示す軌跡に基づいて移動させると、3時方向までの試料5〜5(移動後位置S1,S2,S3,S4,S5)では、その外周側5aの研磨領域Aは研磨材2の外周側2aに対峙する割合が多く、3時方向を過ぎて6時方向に移動するに従って試料5〜5(移動後位置S6,S7,S8,S9では、その内周側5bの研磨領域Bは研磨材2の外周側2aに対峙する割合が多くなる。
【0055】
そして、対局の移動後位置S9に至ると、移動後位置S9における試料5の外周側5aの研磨領域Aは研磨材2の内周側2bに対峙し、試料5の内周側5bの研磨領域Bは外周側2bに対峙することになる。すなわち、前記移動後位置S9での前記試料5の外周側5aの研磨領域A及び内周側5bの研磨領域Bは前記開始位置S1での前記試料5の外周側5aの研磨領域A及び内周側5bの研磨領域Bに対して完全に入れ替わることになる。
【0056】
さらに、6時方向から9時方向に移動すると、試料510〜513(移動後位置S10,S11,S12,S13)では、その内周側5bの研磨領域Bは外周側2aに対峙する割合が多くなる。さらに、9時方向から12時方向(研磨開始位置S1)に移動すると、試料514〜516,5(移動後位置S14,S15,S16,S1)では、その外周側5aの研磨領域Aは研磨材2の外周側2aに対峙する割合が多くなる。
【0057】
以上のように、試料5を研磨する開始位置S1からの前記試料5の移動課程を経て、前記開始位置S1と前記移動後の位置で前記研磨材に対する前記試料の研磨領域を変化させることにより、前記研磨盤の内外の周速差による研磨量の差を補正する。
【0058】
以上のように本実施形態によれば、試料5を研磨する開始位置S1からの前記試料5の移動課程を経て、前記開始位置S1と前記移動後の位置との前記試料の研磨領域を変化させることにより、前記研磨盤の内外の周速差による研磨量の差を補正するため、前記研磨材の内外周側間の周速差による不均一な研磨量を均一に補正することができる。
【0059】
さらに図1において、研磨開始位置S1から移動後位置S9を通って再度元の位置に戻る試料5の移動軌跡において、試料5の外周側5aと内周側5bとの中間領域に着目すると、研磨開始位置S1から3時方向までの課程における試料5〜5の中間領域は外周側2aに対峙する割合が多く、試料5〜5の中間領域は内周側2bに対峙する割合が多い。
【0060】
さらに、3時方向を過ぎて6時方向(移動後位置S9)に至る過程では、試料5〜5の中間領域は内周側2bに対峙する割合が多く、試料5〜5の中間領域は外周側2aに対峙する割合が多くなる。
【0061】
6時方向の移動後位置S9から12時方向の研磨開始位置S1における試料5の軌跡の課程においても、試料510〜515,5の中間領域が外周側2a及び内周側2bと接する面積が逐次変化する。
【0062】
以上のように、試料5の中間領域が外周側2a及び内周側2bと接する面積が逐次変化するので、試料5の中間領域における研磨盤3の内外周側間の周速差による不均一な研磨量を均一に補正することができる。図12に示すEBSDによる電子解析パターンに基づいて説明すると、従来の機械研磨では図12(a)に示すように表面加工層が含まれるが、本実施形態による機械研磨では図12(b)に示すように表面加工層のない研磨ができる。
【0063】
前記研磨盤の内外の周速差による不均一な研磨量を均一に補正することができるため、前記試料の研磨される面にダレが生じることがなく、その研磨面のいずれの位置でも前記試料の結晶方位を研磨面全体で正確に観察することができる。
【0064】
試料が積層構造であって積層構造の界面組織を観察する際、積層構造の界面組織の観察・分析に正確性を確保するには、機械式研磨機による研磨には限界があり、熟練者による高度な研磨方法で研磨する必要があったが、本実施形態では、試料の研磨面の全面が平坦に研磨されることになるため、積層構造の界面組織の観察・分析に正確性を確保する観察を正確に行うことができる。
【0065】
試料の研磨面が内周側及び外周側での研磨量を均一にすることでダレの発生を抑制することができ、その結果、試料に樹脂包埋をしなくても研磨することができる。
【0066】
さらに、前記試料ホルダ6は図7に示すように、上下動する移動軸6bの下端にチャック6cを介して試料5を取り付けることになるから、試料5を研磨材2の研磨面2aに接触させる際に、試料5以外の荷重、すなわち移動軸6b及びチャック6cなどの試料ホルダ6の総荷重が試料5に加わり、これらの荷重を受けて試料5が研磨材2の研磨面2a内に加わってしまう。
【0067】
そこで、本実施形態では、ウエイトコントローラ6dが基台に揺動可能に枢支され、その一端が移動軸6bに枢支されており、ウエイトコントローラ6dの他端に試料5に加わる荷重をキャンセルする重り6mが交換可能に取り付けられている。
従って、重り6mの調節により、試料5が研磨材の研磨面に接触する際の荷重をキャンセルすることができる。以上のように、ウエイト(荷重)をキャンセルしたのち、試料5を研磨材2の研磨面2aで研磨する際に設定された荷重に相当する重り6mを移動軸6bに装着することにより、適正な荷重の下で試料を研磨することができる。
【0068】
次に、図7に示すウエイトコントローラを使用して研磨した場合の研磨結果を図11に基づいて説明する。図11(a)は本実施形態による研磨方法に基づいて試料を研磨した面を観察した図であり、図11(a)から明らかなように試料の研磨される面に塑性流動層がなく、正常な組織(材料本来の組織)が顕在していることが分かる。
【0069】
これに対して、従来例(図2参照)に係る研磨方法に基づいて金属組織を研磨した面を観察すると、図11(b)に示すように、試料の研磨された面には塑性流動層が多数存在する。特に、白枠で囲んだ領域には異常組織が観察されている。このような異常組織は、大きな荷重で研磨されたり、試料の表面に加工変質層が残っていることにより観察される。これをなくすには、本実施形態は試料にできるだけ荷重を掛けないで研磨しており、図11(a)に示すように、金属組織に塑性流動層がない研磨を実行できる最適な方法である。
EBSD(Electron Back Scattering Diffraction)法は微小領域の結晶方位解析であり、電子線後方散乱回折パターンの発生から詳細な結晶解析ができる。表面加工層がある場合には図12(a)に示したように、ノイズの多いEBSD像しか得られないが、表面加工層がないときは図12(b)のように、きれいなEBSD像が得られる。図12(b)に示すように表面加工層が残らないように研磨する最適な方法が本発明の研磨方法である。
【0070】
本発明により、ISやIMによる加工に代わる研磨を機械式研磨によって実現することができた。
【0071】
試料5の移動軌跡を図9に示す渦巻き状に設定することにより、研磨盤3上の研磨面2a内における未使用領域上に試料5の移動軌跡を設定することができ、試料5を研磨する際の研磨面2aは磨滅されていない新層面の状態にあり、研磨の際の削り粉などで試料にダメージを与えることを回避することができる。
【0072】
図10に示すバネ20bを用いたウエイトコントローラを使用すると、バネ20bにより試料ホルダ6を支えて試料ホルダ6の荷重を零にキャンセルすることができ、バネ20bのバネ荷重により試料5に研磨に必要な荷重を加えることができるので、表面傷が付きやすい軟質金属であるAl,Cu,Mgなどの試料を研磨することができる。
【0073】
以上の説明では、XY移動機構4Aにより図1に示すように研磨盤3上のX方向とY方向との合成方向に試料の移動過程を設定したが、これに限られるものではない。XY移動機構4AによりX方向あるいはY方向の一方向にのみ試料の移動過程を設定してもよいものでる。
【0074】
以上、前記実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細については、当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができる。また、本発明には、前記実施形態の構成の一部又は全部を相互に適宜組み合わせたものも含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る研磨装置は、イオンミリングによる加工に代わる研磨を機械式研磨によって実現することができ、例えば、EBSD用の試料作成、半導体の故障解析、金属や高分子材料等の研磨に最適となる。
【符号の説明】
【0076】
1 装置本体
2 研磨材
2a 研磨材の研磨面
3 研磨盤
4 移動テーブ
4A XY軸移動機構
5 試料
6 試料ホルダ
7 X軸テーブル
8 Y軸テーブル
C コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12