【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年8月20日、株式会社産経デジタルが、自社が運営するサイト「Sankei Biz(http://www.sankeibiz.jp/top.htm)」にて、松村 繁廣が発明した「複雑形状部品の洗浄装置」について公開した。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
加工部品等の洗浄装置は、洗浄装置のケーシング内に、被洗浄物を回転台に載せて、周囲に配された複数のノズルから洗浄液や空気を噴射して被洗浄物を洗浄するものである。また、乾燥機能を備える洗浄装置では、これにエアノズルが追加され、コンプレッサーを通じて噴射されるエアブローと被洗浄物の回転により、被洗浄物の乾燥を行うものが一般的である。
【0003】
その他、例えば次のような洗浄装置がある。特許文献1の洗浄装置は、カプセル型の洗浄室と、洗浄室の一方に設けたノズルと、他方に設けた吸引部と、洗浄室内に設けた回転自在のワーク支持台とを備え、洗浄室において、ノズルより噴射される洗浄液、洗浄水、又は空気を旋回するとともに、吸引部に誘導可能とする構成としたカプセル型の洗浄装置である(特許文献1の第1図参照)。
【0004】
また、加工部品用の洗浄装置ではないが、基板用の洗浄装置として次のものがある。特許文献2の基板用の洗浄装置は、カップと、基板を保持する回転テーブルと、これを回転させる駆動軸と、回転テーブルの回転によって発生する空気流を排出する排出管と、空気流を整流して排気管へ導く整流体と、空気流を導入する導入口が開口形成された複数の風洞部とを具備する(特許文献2の第1図参照)。
【0005】
また、特許文献3の洗浄装置は、これも基板用の洗浄装置であって、上カップと、下カップと、基板を保持する回転テーブルと、下カップの底壁に排気ダクトを円周方向に180°の位置関係となるように2箇所設け、上カップの上端部にフィルタ付き吸気装置を具備する洗浄装置である(特許文献3の第1図参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のエアブローを具備した洗浄装置や特許文献1の洗浄装置は、エアブローにより洗浄室内に空気を送るため、コンプレッサーなどを必須の構成とし、装置コストや運転コストがかかる。また、エアブローは圧縮空気を用いるので、ドレン水などの処理が必須となり手間がかかる。また、特許文献1の洗浄装置は、洗浄室がカプセル型であるので、洗浄する部品が大きくなると装置全体も大きくなるし、カプセル内が高湿になるおそれがある。
【0008】
また、特許文献2及び特許文献3の洗浄装置は、基板用の洗浄装置であるので、部品洗浄用の洗浄装置と異なり、基板に水分が付着しない構成とすることを主たる目的としている。そのため、水分やミストが基板の裏側に付着しないよう、空気の排出口が底部の外縁に設けられていて、基板の下面に空気が行きづらく、乾燥が十分に行えないおそれがある。
【0009】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、被洗浄物の回転と空気によって、被洗浄物を効果的に水切り乾燥する洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために本発明に係る洗浄装置は、被洗浄物を洗浄する洗浄装置であって、筒状の洗浄室と、前記洗浄室内に配され、被洗浄物を保持する回転台と、前記回転台を回転させる回転機構と、前記回転台と前記回転機構との間に配される回転軸と、前記洗浄室内に空気を送る吸気口と、空気を排出する排気口と、前記排気口に接続されるブロアと、複数のノズルと、洗浄液を排出する排水口と、を備える。この構成によれば、被洗浄物の回転と空気によって、被洗浄物が効果的に水切り乾燥される。
【0011】
好ましくは、この洗浄装置は、前記洗浄室が、底部と、上方が覆われた有底筒状の筒部と、を備え、前記底部は、前記回転台よりも下に配され、中央が開口して当該開口と前記回転軸との間に所定の隙間を有し、周縁から当該開口に向けて傾斜しており、前記吸気口は、前記筒部の上方に配され、前記排気口は、前記底部よりも下に配され、前記洗浄室内の空気が、前記底部の開口を通過して、前記排気口より排気される。
【0012】
ここで、所定の隙間とは、空気が通過し、空気の流れが滞らない程の隙間である。すなわち、開口を形成する底部の周縁部と回転軸とが近接しないよう構成することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、ブロアによって洗浄室内の高湿の空気が排出され、洗浄室の上方から流入した空気が洗浄室内を通過して下方より排出される過程で、被洗浄物が乾燥される。洗浄室からの空気の流れは、底部の中央にある開口と回転軸との隙間を通ることになるので、この時、空気が被洗浄物の下面を通過して、被洗浄物全体を効率よく乾燥する。また、被洗浄物が回転することで、被洗浄物の周りに空気の渦ができ、相乗的に被洗浄物が水切り乾燥される。
【0014】
好ましくは、この洗浄装置は、前記被洗浄物が治具を介して前記回転台に保持され、前記被洗浄物と前記回転台との間に空間が形成され、前記回転台に、上下に貫通する切り欠きが設けられている。
【0015】
ここで、治具とは、例えば被洗浄物の隅角や側面を保持する柱状の治具や板状の治具、フレーム状の治具、若しくは被洗浄物を下面より保持する柱状の治具などが考えられ、被洗浄物が回転台と接することなく、間に空間が形成されるものであればよい。この構成によれば、被洗浄物と回転台との間に空間が設けられ、かつ、回転台に切り欠きが設けられているので、この空間を空気が通過して、被洗浄物の下面を効率よく乾燥できる。
【0016】
好ましくは、この洗浄装置は、前記排水口が開閉可能なゲートを有する。この構成によれば、被洗浄物を空気で乾燥させる時に排水口のゲートを閉めることで、排水口からの空気の漏れを防ぐことができ、洗浄室内の空気の流速を早くして、乾燥度を高めることが可能となる。
【0017】
好ましくは、この洗浄装置は、前記筒部は、前記回転軸と平行に分割されて、固定された第1筒部と、上下に可動する第2筒部とを有する。
【0018】
この構成によれば、第2筒部が上下して、被洗浄物の洗浄室への着脱が容易となる。また、筒部を上下に分割せず、回転軸と平行に分割することで、上下に分割した場合に比べて、上下動のストロークを短くでき、洗浄装置全体のコンパクト化に寄与する。
【0019】
また、この洗浄装置は、前記複数のノズルは、第1ノズル群と、第2ノズル群と、を備え、前記第1ノズル群は、前記第1筒部に取り付けられ、前記第2ノズル群は、前記底部に取り付けられている。この構成によれば、第1ノズル群が、被洗浄物の上面及び側面を上方より洗浄し、第2ノズル群が、被洗浄物の下面及び側面を下方より洗浄する。この時、回転台に切り欠きが設けられているため、被洗浄物の下面を効率よく洗浄することができる。また、第1ノズル群と第2ノズル群が、いずれも固定された第1筒部と底部に取り付けられているので、取り付けや配線がしやすい。
【0020】
好ましくは、この洗浄装置は、前記第1ノズル群と、前記第2ノズル群とが、前記被洗浄物を介し略対向して配されている。この構成によれば、被洗浄物が回転するので、被洗浄物全体を効率よく洗浄することができる。
【0021】
また、この洗浄装置は、前記複数のノズルは、第1ノズル群と、第2ノズル群と、第3ノズル群と、を備え、前記第1ノズル群及び前記第2ノズル群及び前記第3ノズル群は、前記第1筒部に取り付けられている。
【0022】
ここで、例えば、第1ノズル群が筒部の側面上方に取り付けられ被洗浄物の上面を狙い、第2ノズル群が側面中央に取り付けられ被洗浄物の側面を狙い、第3ノズル群が側面下方に取り付けられ被洗浄物の下面を狙う構成とする。このようにすれば、これらノズル群により、被洗浄物の全体をムラなく洗浄できる。また、これらノズル群が、いずれも固定された第1筒部に取り付けられているので、取り付けや配線がしやすい。
【0023】
好ましくは、この洗浄装置は、前記排気口と前記ブロアとは、ダクトを介して接続され、前記排気口と前記ブロアとの間に、空気と液体を分離する気液分離フィルタを更に備える。この構成によれば、排気口から出る空気に含まれるミストや、排気口から液体が排出された場合に、気液分離フィルタによって空気と液体とに分離できる。
【0024】
また、この洗浄装置は、前記ブロアと前記吸気口とが接続され、前記ブロアより排出された空気が前記洗浄室内に循環されてもよい。この構成によれば、ブロアより排出された空気を再利用することができ、コンプレッサーを必須とせず、空気を用いた被洗浄物の乾燥が可能となり、省エネに寄与する。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明に係る洗浄装置によれば、被洗浄物の回転と空気によって、被洗浄物を効果的に水切り乾燥できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づき説明するが、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。特に、下記実施形態のノズルの本数や配置、各部材の形状等は一例であり、本発明は下記に限定されない。
【0028】
<第1実施形態>
(1.洗浄装置の構造)
図1は、本発明の一実施形態に係る洗浄装置の概略構成を示す図である。
図1に示すように、洗浄装置1は、フレーム2に、制御盤3、ベッセルフィルタ4、洗浄液のポンプ5、オイルスキマー6、洗浄液のヒータ7、洗浄液のタンク8、操作パネル9、洗浄室10が取り付けられている。
【0029】
図2は、洗浄室付近の拡大図である。
図3は、洗浄室付近を上面から見た図である。
図2、
図3に示すように、洗浄室10は、下方の底部11と、上方が覆われた有底筒状の筒部12と、を備える。底部11は、平面視が円形で、中央に円形の開口11aを有し、周縁から開口11aに向けて下向きに傾斜している。筒部12は、円筒形の側面部12aと、上方に円錐状の天井部12bとを備え、下方が開口している。
【0030】
また、筒部12は、円周方向に縦に分割され、第1筒部12Aと第2筒部12Bとを備える。第2筒部12Bは、シリンダ13によって上下に移動する。被洗浄物Wを洗浄室に着脱する時は第2筒部12Bを上にあげ、被洗浄物Wを洗浄又は水切り乾燥する時は第2筒部12Bを下におろす。なお、第2筒部12Bには樹脂性の透明部分を有し、そこから洗浄室内の様子が見える。
【0031】
また、第1筒部12Aは固定されており、第1筒部12Aの上方には吸気口14が設けられている。吸気口14には、吸気ダクト15を介して吸気フィルタ16が接続されていて、外気を取り込む。
【0032】
また、第1筒部12Aには、複数のノズル17が所定の間隔をあけて取り付けられている(
図4参照)。一例として本実施形態の複数のノズル17は、洗浄液を噴射するノズルを用いているが、洗浄液と空気を噴射する2流体ノズルを用いてもよい。また、空気を噴射するエアノズルを追加してもよい。本実施形態において、これら複数のノズル17を合わせて第1ノズル群17Aと称する。
【0033】
また、底部11には、複数のノズル18が所定の間隔をあけて取り付けられている(
図5参照)。一例として本実施形態の複数のノズル18は、洗浄液を噴射するノズルを用いているが、洗浄液と空気を噴射する2流体ノズルを用いてもよい。また、空気を噴射するエアノズルを追加してもよい。本実施形態において、これら複数のノズル18を合わせて第2ノズル群18Aと称する。
【0034】
また、第1ノズル群17Aと第2ノズル群18Aとは、被洗浄物Wを介し略対向するように配置されている(
図2、
図3参照)。これにより、洗浄液が被洗浄物Wの斜め上方と斜め下方から噴射されるので、被洗浄物Wが回転すれば、被洗浄物Wの全体が効率よく洗浄される。
【0035】
一方、洗浄室10の下方には、基台19と、基台19と底部11の周縁とが固定された、筒部12と略同径の円筒状の側壁20と、が設けられている。側壁20には、空気を排出する排気口21と、洗浄液等の液体を排出する排水口22とが取り付けられている。排水口22は排気口21よりも下方に設けられており、排水口22には開閉ゲート23が設けられている。排水口22からの排水は、図示しない異物を除去するフィルタを通り、タンク8に貯留される。
【0036】
また、排気口21は、排気ダクト24とサイクロンフィルタ25を介して、ブロア26と接続されている。ブロア26によって洗浄室内の空気を吸引排気する。
【0037】
また、サイクロンフィルタ25は、気液分離フィルタであり、排気口21から排出される空気に含まれるミストや、排気口21から液体が排出された場合に、空気と液体とに分離する。サイクロンフィルタ25の排気口とブロア26とが接続され、サイクロンフィルタ25の排水口からの排水はタンク8に貯留される。
【0038】
また、ブロア26からの排気は、そのまま外部に排出してもよいし、吸気ダクト15を介してブロア26と吸気口14とを接続して、洗浄室内に循環してもよい(
図6参照)。
【0039】
一方、基台19の中央に円形の開口が形成されていて、この開口に回転軸27が挿通されている。回転軸27は、下方が回転軸27を回転させるモータ28に接続され、上方が底部11の開口11aを挿通し、洗浄室内の回転台29に接続されている。モータ28の回転により、回転台29が回転する。
【0040】
また、回転台29は、略円形のテーブルで、上下に貫通する4つの切り欠き29aが形成されている。切り欠き29aにより、ノズル18から洗浄液を噴射した時に、被洗浄物Wの下面に洗浄液をあてることができる。
【0041】
また、回転台29の上面には、4本の柱状の治具30が立設されている。4本の治具30は、周方向に間隔をあけて配されており、被洗浄物Wを保持する。治具30は、柱状の直方体形状であって、一部が切り欠かれて段が付いている。段が付いていることにより、治具30で被洗浄物Wを保持した時に、被洗浄物Wと回転台29との間に空間が形成される。この空間により、洗浄液が被洗浄物Wの下面にあたるし、空気が通過して被洗浄物Wを効率よく乾燥する。
【0042】
なお、治具30の形状は一例であり、例えば回転台29の中心から立設する1本の柱状としてもよく、被洗浄物Wと回転台29との間に空間が形成されれば、その他の形状でもよい。
【0043】
(2.洗浄・乾燥工程について)
次に、洗浄装置1を用いた被洗浄物Wの洗浄・乾燥工程について説明する。なお、一例として、被洗浄物Wが直方体形状の場合について説明する。
【0044】
(2−1.洗浄工程)
被洗浄物Wを洗浄装置1にセットする。第2筒部12Bを上方に移動させて、洗浄室内を露出した状態で、被洗浄物Wを回転台29の治具30に取り付ける。そして、第2筒部12Bを下方に移動させて、洗浄室を閉める。
【0045】
モータ28を作動して回転台29を回転させ、ノズル17及びノズル18から洗浄液を噴射させる。これにより、被洗浄装置Wが回転台29とともに回転しながら、洗浄液により全体が洗浄される。なお、この時、排水口22の開閉ゲート23は開けておく。噴射された洗浄液は、底部11の開口11aを通過して、排水口22より排水される。
図7に洗浄液の流れを示す。
【0046】
所定時間、被洗浄物Wを洗浄したら、ノズル17及びノズル18の噴射をやめ、回転台29の回転を止める。
【0047】
(2−2.乾燥工程)
洗浄液の排水が終わったのを確認して、開閉ゲート23を閉じる。これは、洗浄室内を通過する空気の速度を高めるためである。次に、再度モータ28を作動して回転台29を高速回転させ、ブロア26を作動させる。そうすると、洗浄後の洗浄室内の高湿の空気が、排気口21、排気ダクト24、サイクロンフィルタ25を通過して、ブロア26より排気される。なお、サイクロンフィルタ25において、水分がタンク8へ排出される。
【0048】
そして、洗浄室内の空気がなくなると、外気が、吸気フィルタ16、吸気ダクト15を通り、吸気口14から洗浄室内に連続的に流入する。この空気は、洗浄室10の上方から下方に向けて流れる過程で、被洗浄物Wを乾燥させ、底部11の開口11aを通過して、排気口21より排気される。
【0049】
図8を参照して、この空気の流れを具体的に説明する。洗浄室10の上方の吸気口14から流入した空気は、一部が被洗浄物Wの上面にあたり分流し、一部が被洗浄物Wの周りを流れる。この時、被洗浄物Wは回転台29とともに高速回転するので、被洗浄物Wの周りには周方向の流れができる。これにより、被洗浄物Wの側面に高速で流れる空気が多量にあたり、乾燥が促進される。
【0050】
また、被洗浄物Wの下に回転台29との間の空間があるので、この空間に空気が入り込み、被洗浄物Wの下面も乾燥される。
【0051】
そして、被洗浄物W及び回転台29の周囲を通過した空気は、底部11にあたり、かつ、開口11aに向けて底部11の斜面に沿って中央に流れていく。この時、回転台29の下方には空気の渦ができるので、これにより被洗浄物Wの下面の乾燥が更に促進される。
【0052】
そして、開口11aから洗浄室10の下方に出て行く。この時、空気は、開口11aと回転軸27との隙間を通るので流速が早く、開口11aを有する底部11を設けない場合に比べて、洗浄室内を流れる空気の流速も早くなる。これにより、被洗浄物Wの乾燥度が高くなる。
【0053】
開口11aを出た空気は、排気口21、排気ダクト24、サイクロンフィルタ25を通過して、ブロア26より排気される。
【0054】
所定時間、被洗浄物Wを水切り乾燥したら、ブロア26と回転台29の回転を止める。そして、第2筒部12Bを上方に移動させて、洗浄室内を露出して、被洗浄物Wを取り外す。以上により、被洗浄物Wの洗浄・乾燥が完了する。
【0055】
(2−3.変形例)
また、複数のノズル17及びノズル18に、空気を噴射するエアノズルを追加した洗浄装置を用いる場合、乾燥工程において、エアノズルから空気を噴射して、被洗浄物Wの乾燥を促進する。
【0056】
また、
図6に示す吸気ダクト15を介してブロア26と吸気口14とが接続された構成の洗浄装置40を用いる場合、乾燥工程において、ブロア26より排気した空気を洗浄室内に循環させて、この空気を乾燥に再利用する。
【0057】
(3.本実施形態の効果)
以上の構造を有する洗浄装置1によれば、1台の洗浄装置で、被洗浄物Wの洗浄及び乾燥ができる。また、洗浄液を噴射する複数のノズル17と複数のノズル18とを、被洗浄物Wを斜め上方と斜め下方から狙うように、被洗浄物Wに対して略対向するように配置し、かつ、被洗浄物Wを水平回転させながら洗浄するので、被洗浄物Wの全体を効率よく洗浄できる。
【0058】
また、ブロア26によって洗浄室内に外気を取り込み、かつ、回転台29を回転して被洗浄物Wが回転されるので、被洗浄物Wの周りに空気流ができて、被洗浄物Wの上面及び側面が効率よく水切り乾燥される。また、被洗浄物Wが治具30を介して回転台29に保持されるので、被洗浄物Wと回転台29の間に空間が形成され、被洗浄物Wの下方の空間に空気が流入して、被洗浄物Wの下面が乾燥される。これらによって、被洗浄物Wの全体が効率よく水切り乾燥される。
【0059】
また、洗浄室10の底部11の中央に開口11aが設けられているので、洗浄室内の空気が被洗浄物Wの側面周りから下方の中央に導かれ、被洗浄物Wの下面に空気の渦流ができ、また回転台29に切り欠き29aが形成されているので、空気によって被洗浄物Wの下面を乾燥する。
【0060】
また、底部11の開口11aと回転軸27との間に、これらが近接せず、空気が通過でき流れが滞らない隙間が形成されているので、ここを通過する空気の流速が早く、洗浄室内の空気の流速も早くなり、被洗浄物Wの乾燥度が向上する。また、排水口22に開閉ゲート23が設けられているので、乾燥工程において開閉ゲート23を閉めることによって、洗浄室内の密閉度があがり空気の流速が早くなり、被洗浄物Wの乾燥度が向上する。
【0061】
<第2実施形態>
次に、上記第1実施形態の洗浄装置と異なる構成の第2実施形態の洗浄装置について説明する。なお、第1実施形態と同一の構成又は相当する構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。第2実施形態の洗浄装置100と第1実施形態の洗浄装置1との主な構成の違いは、洗浄装置の筒部の形状、ノズルの配置、吸気口の配置、サイクロンフィルタの有無である。
【0062】
図9は、第2実施形態に係る洗浄装置100の概略構成を示す図である。
図10は、洗浄装置100のノズル配置を示す説明図である。
図11A−Cは、洗浄装置100のノズル配置を示す矢視図であり、
図10における矢視記号に対応する。
【0063】
図9に示すように、洗浄装置100は洗浄室110を備える。洗浄室100は、下方の底部111と、上方が覆われた有底筒状の筒部112と、を備える。底部111は、平面視が円形で、中央に円形の開口111aを有し、周縁から開口111aに向けて下向きに傾斜している。筒部112は、円筒形の側面部と、上方に平板状の天井部とを備え、下方が開口している。
【0064】
また、筒部112は、円周方向に縦に分割され、第1筒部112Aと第2筒部112Bとを備える。ここで、第1筒部112Aにおける側面部を側面部112Aaとし、天井部を天井部112Abとする。第2筒部112Bにおける側面部を側面部112Baとし、天井部を天井部112Bbとする。
【0065】
第2筒部112Bは、シリンダ13によって上下に移動する。また、第1筒部112Aは固定されており、第1筒部112Aの上方の天井部112Abには吸気口14が設けられている。吸気口14には、吸気ダクト15を介して吸気フィルタ16が接続されていて、外気を取り込む。
【0066】
また、第1筒部112Aの側面部112Aaには、中方に複数のノズル117が取り付けられ、下方と上方に複数のノズル118が取り付けられている(
図9、
図10参照)。本実施形態において、複数のノズル117を合わせて第1ノズル群117A、下方の複数のノズル118を合わせて第2ノズル群118A、上方の複数のノズル118を合わせて第3ノズル群118Bと称する。
【0067】
ノズル群117Aの各ノズル117の噴射口は、径方向の中心に向かうよう配置されている(
図9、
図11B参照)。下方のノズル群118Aの各ノズル118は、径方向の略中心に向かって横に伸び、先端の噴射口が回転台29の略中心に向かうよう下方に傾斜している(
図9、
図11A参照)。また、上方のノズル群118Bの各ノズル118は、径方向の略中心に向かって伸び、先端の噴射口が回転台29の略中心に向かうよう上方に傾斜している(
図9、
図11C参照)。
【0068】
ノズル群117Aの各ノズル117が被洗浄物Wの側面を洗浄し、ノズル群118Aの各ノズル118が被洗浄物Wの下面を洗浄し、ノズル群118Bの各ノズル118が被洗浄物の上面を洗浄する。これにより、被洗浄物Wが回転すれば、被洗浄物Wの全体が効率よく洗浄される。
【0069】
一方、洗浄室110の下方には、基台19と、基台19と底部111の周縁とが固定された、筒部112と略同径の円筒状の側壁20と、が設けられている。側壁20には、空気を排出する排気口21と、洗浄液等の液体を排出する排水口22とが取り付けられている。また、排気口21は、排気ダクト24を介してブロア26と接続されている。ブロア26によって洗浄室内の空気を吸引排気する。
【0070】
これにより、ブロア26によって、洗浄室内の上方から外気を取り込んで下方の排気口21より空気を排出し、かつ、回転台29を回転して被洗浄物Wが回転されるので被洗浄物Wの周りに空気流ができて、被洗浄物Wの上面及び側面が効率よく水切り乾燥される。
【0071】
<その他の実施形態>
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、洗浄室は円筒形に限られず、各筒状でもよい。また、ノズルは、洗浄液を噴射するノズルに限られず、洗浄液と空気を噴射する2流体ノズルでもよい。また、空気を噴射するエアノズルを追加してもよい。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。