【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年9月3日〜5日 JASIS2014 幕張メッセ国際展示場ブース:7B201(千葉県千葉市美浜区中瀬2丁目1)において「手腕挿入開口型フード」に関する技術について発表
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を用いて、本発明を実施するための形態(以下、実施形態と称する)を説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の手腕挿入開口型フードの全体構成を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す手腕挿入開口型フード1から、上下動可能ガラス板7を取り外した状態を示す斜視図である。
【0024】
図1に示す手腕挿入開口型フード1は、例えば後述する作業空間SPの背面上方から吸気されてその後に排気される。このことから、手腕挿入開口型フード1の作業空間SP内は負圧に保たれ、作業空間SP内の空気が直接、作業空間SPの外部に漏れ出ることが無いように構成されている。
【0025】
図1に示すように、この手腕挿入開口型フード1は、例えばアルミニウムフレーム等で構成された縦長で台形状の本体カバー3と、この本体カバー3により覆われた載置台150を有している。この本体カバー3の前面側2は傾斜して形成されており、この前面側2には、
図1と
図2に示すように、前面開口5が形成されている。
図2に示すように、前面開口5は長方形状に形成されている。
【0026】
図1に示すように、この本体カバー3は、載置台150の周囲を覆うための遮蔽箱体であり、本体カバー3と載置台150とは、別体である。本体カバー3と載置台150とが別体に作られているので、本体カバー3側で生じる振動は、載置台150側には伝わらないようになっている。
【0027】
この載置台150は、ほぼ直方体状の台であり、上面部は、被処理物や精密天秤等の精密な秤量計を載置するための平坦な載置面151になっている。本体カバー3は、例えば4本の脚3Mにより自立しており、本体カバー3の内部には、載置台150が収容されている。
【0028】
図1に示す上下動可能ガラス板7が、前面側2に沿ってT方向にスライドすることで、この前面開口5は、上下動可能ガラス板7により開閉可能になっている。このT方向は、垂直方向に対して所定角度で傾斜している方向である。この上下動可能ガラス板7は、作業空間SPの前面の開口を、上下方向(T方向)に移動する透明板によって閉塞するための前面開口閉塞手段である。
【0029】
この上下動可能ガラス板7は、上下可能内部の作業空間SPが作業者により見えるようにするために、透明なガラス板で形成されている。
図1に示す本体カバー3の状態では、上下動可能ガラス板7は、最も下の位置に移動されて完全に閉じた状態であり、前面開口5は閉じている。この上下動可能ガラス板7は、全面あるいは一部が着色(蒸着も含む)され、あるいは分割されていても構わない。
【0030】
なお、本体カバー3の両側部には、それぞれ透明なガラス板で閉塞された側部開放部9が設けられていることから、作業者は、この側部開放部9を通じて作業空間SP内を見ることができる。作業空間SP内に位置されている載置面151には、図示しないが被処理物BTや、秤量計等の精密な秤量機器等が載置されるようになっている。
【0031】
図2に示すように、手腕挿入開口型フード1の本体カバー3から、上下動可能ガラス板7を取り外した状態では、前面側2の上部は、上側の前面板13と下側の前面板19Rを有する。この前面板13は、前面開口5の上辺部分を形成し、前面板19Rは、前面開口5の下辺部分を形成している。
【0032】
この前面側2には、前面板13の左右両端位置に、案内レール部13A,13Bが配置されている。
【0033】
これらの左右位置のある案内レール部13A,13Bは、上下動可能ガラス板7のT方向の両端部分を保持し、しかも上下動可能ガラス板7をT方向に沿って移動可能にスライドして位置決めさせるスライド位置決め手段である。
【0034】
案内レール部13A,13Bの上端部13T、13Rは、
図1と
図2に示すように、本体カバー3の上面部3Tよりも高く位置されており、上端部13T、13Rの間には、横部材13Hが固定されている。この横部材13Hが設けられていることにより、案内レール部13A,13Bの補強を図っている。しかも、横部材13Hが設けられていることにより、上下動可能ガラス板7が案内レール部13A,13Bに沿ってT1方向に上昇される場合の上限のストッパの役割を果たしている。
【0035】
図3は、上下動可能ガラス板7の形状例を示す正面図である。
図4(A)は、
図1に示す上下動可能ガラス板7の手腕挿入部100の筒状体21の付近を示す斜視図である。
図4(B)は、
図4(A)に示すA−A線における断面図である。
【0036】
図3に示すように、上下動可能ガラス板7は、長方形状の板材である。上下動可能ガラス板7のほぼ中央部よりも下の位置には、2つの横長の長円形の開口部7A,7Bが、X方向に関して間隔をおいて設けられている。上下動可能ガラス板7は、上辺部7Tと下辺部7Lと、左辺部7Nと右辺部7Mと、露出部分7Rを有し、さらに上窓枠15と下窓枠16を有している。
【0037】
露出部分7Rは、上窓枠15と下窓枠16の間にある上下動可能ガラス板7の一部分である。左右の開口部7A,7Bは、露出部分7Rにおいて間隔を置いて形成されており、これらの開口部7A,7Bは、
図4に示すように、後で説明する左右の筒状体21を、左右方向であるX方向に沿って、それぞれ案内して位置決めするための案内孔部である。
【0038】
図1と
図4(A)に示すように、上下動可能ガラス板7の手腕挿入部100は、上窓枠15と下窓枠16を有している。これらの上窓枠15と下窓枠16は、左右の案内レール部13A,13Bの間において、X方向に平行に間隔をおいて設けられている。
【0039】
ここで、
図1と
図4と
図5を参照して、2つの筒状体21,21と、窓ガラス19A,19Bについて説明する。
図5は、上下動可能ガラス板7を、T1方向に少し持ち上げた状態を示す斜視図である。
【0040】
図1と
図4(A)に示す2つの筒状体21,21は、作業者の右手と左手のために用意されていて、同じ大きさのものである。
図4(A)に示すように、窓ガラス19A,19Bも同じ大きさのものである。窓ガラス19A,19Bは、それぞれ長方形状のガラス板である。各窓ガラス19A,19Bの上辺部19Cは、上窓枠15にはめ込まれており、各窓ガラス19A,19Bの下辺部19Dは、下窓枠16にはめ込まれている。
【0041】
これらの窓ガラス19A,19Bは、前面開口閉塞手段である上下動可能ガラス板7に設けられて、作業空間SPへ作業者の左右の手腕を挿入するための筒状体21,21の位置を左右方向(X方向)に移動して、それぞれ位置決め可能とする筒状体移動手段である。
【0042】
従って、各窓ガラス19A,19Bは、上窓枠15と下窓枠16に沿ってそれぞれ別々にX方向に移動して位置決め可能である。なお、各窓ガラス19A,19Bの上辺部19Cと下辺部19Dと、上窓枠15と下窓枠16には、ゴム製または樹脂製のパッキンが設けられていることで、気密度を高めている。
【0043】
図5に示すように、上下動可能ガラス板7を、T1方向に持ち上げると、上下動可能ガラス板7の下辺部7Lが持ち上がる。さらに、上下動可能ガラス板7を、T1方向に持ち上げると、前面側2の下部では、上下動可能ガラス板7の下辺部7Lが下部の前面板19Rから上がることで離れるので、上下動可能ガラス板7の下辺部7Lと下部の前面板19Rの間には、下部の開口部分が形成できる。この状態では、この下部の開口部分を通じて、例えば作業空間SP内の掃除、例えば上下動可能ガラス板7の内面の掃除を行うことができる。また、この下部の開口部分を通じて、作業空間SP内に、各種の使用する器具や、被処理物の出し入れを、容易に行うことができる。
【0044】
図3に示すように、上窓枠15と下窓枠16は、左右方向であるX方向の長さが、上下動可能ガラス板7のX方向の長さに比べて長く形成され、上窓枠15と下窓枠16の左右部分には、上下動可能ガラス板7の一部分が左辺部7Nと右辺部7Mが設けられている。
図5と
図3に示すように、上窓枠15と下窓枠16の間の領域には、上下動可能ガラス板7の露出部分7Rがある。
【0045】
図5と
図4(A)と
図4(B)に示すように、上窓枠15と下窓枠16は、2枚の窓ガラス19A,19BをそれぞれX方向に移動して位置決め可能なように保持している。
図4(B)に示すように、上窓枠15と下窓枠16の断面形状は、例えばほぼL字型になっている。
図4(A)と
図4(B)に例示するように、上窓枠15は、窓ガラス19A,19Bの各上辺部19Cを保持し、下窓枠16は、窓ガラス19A,19Bの各下辺部19Dを保持している。これにより、窓ガラス19A,19Bは、それぞれ上窓枠15と下窓枠16において、X方向に沿って移動して位置決め可能である。
【0046】
ただし、
図4(A)に示す窓ガラス19A,19Bは、常に、それぞれ上下動可能ガラス板7の破線で示す長円形の開口部7A,7Bを塞いでいる。これにより、窓ガラス19A,19Bが上窓枠15と下窓枠16の間で、引き戸式にX方向に沿ってスライドさせて、互いに近づけて中央位置に寄せたり、逆に互いに遠ざけて左右位置に引き離した場合に、上下動可能ガラス板7と窓ガラス19A,19Bとの間に、隙間ができないようにする。これにより、
図1に示す作業空間SPと外部との間で空気が行き来するのを遮断する。
【0047】
なお、上下動可能ガラス板7における上窓枠15と下窓枠16の取り付け方は、例えばねじ止め、嵌合、接着等の種々の方法が採用でき、特に限定されない。
【0048】
次に、
図4と
図6を参照して、窓ガラス19A,19Bに固定されている筒状体21について説明する。
図6(A)と
図6(B)は、ガラス板19A,19Bと、筒状体21の例を示す正面図である。
【0049】
図6(A)に示すように、窓ガラス19A,19Bには、それぞれ円形の孔19Hが形成されており、各筒状体21は、窓ガラス19A,19Bに対して、各孔19Hに対応する位置に固定されている。各筒状体21は、窓ガラス19A,19Bに対して、ねじ止め、接着等により固定することができるが、特に限定されない。
【0050】
図6(A)と
図4(B)に示すように、各筒状体21の内部の各孔19Hには、ほぼ円形の被覆体30が配置されている。この被覆体30は、作業者の手腕を筒状体21内に挿入する際に弾性変形し易いように、例えば弾性変形性と柔軟性に優れた薄い材料であるシリコン樹脂等により作られている。これにより、被覆体30は、作業者の手腕が、この筒状体21の挿入用開口部内に挿入されていない場合には、
図1に示す作業空間SPと外部との間で空気が行き来するのを遮断する役割を有している。
【0051】
図6(A)と
図4(B)に示す被覆体30の例では、それぞれ例えば8本の切れ目61が形成されており、8つの扇型の部分32を有している。ただし、
図6(A)に示す被覆体30では、切れ目61の形成方向が、T方向(上下方向)に形成されているが、
図6(B)に示す別の例の被覆体30では、切れ目61の形成方向が、T方向とは重ならないように形成されている。また、被覆体30に形成される切れ目61の数は、特に限定されない。
【0052】
図4に戻ると、各筒状体21は、窓ガラス19A,19Bの外側と内側の両方に突出して設けられており、作業者の手腕は、ゴム手袋GBに入れてゴム手袋GBで覆った状態で、手腕をゴム手袋GBのまま筒状体21に挿入して、ゴム手袋GBで覆った手腕により被覆体30の中心位置を押し広げることで、
図7に示すように、ゴム手袋GBで覆われた手腕を作業空間内に挿入できるようになっている。
【0053】
図7は、ゴム手袋GBが、各筒状体21に取り付けられた例を示す斜視図である。
図7に示すように、ゴム手袋GBで覆った手腕HDは、上下動可能ガラス板7の長円形の開口部7A(7B)を通じて、作業空間SP内に挿入することができる。作業者は、挿入したゴム手袋GBで覆った手腕HDを用いて、作業空間SPに置かれた
図1に示す被処理物BTを処理することができる。
【0054】
図8は、筒状体21の形状例と、ゴム手袋GBが使用されている例を示す断面図である。
【0055】
図7と
図8に示すゴム手袋GBは、袖の長い形状の手袋であり、開放端部である袖部分33と、手指被覆部分34を有している。筒状体21は、外側部分41と、内部側の延長部分40を有している。筒状体21の外側部分41は、上下動可能ガラス板7の外側に位置され、筒状体21の内部側の延長部分40は、上下動可能ガラス板7の内側に位置されている。すなわち、この延長部分40は、上下動可能ガラス板7の内側領域、すなわち作業空間SP側に延長して形成されている。
【0056】
この延長部分40が、作業空間SP側に延長して設けられていることにより、作業者は手腕を筒状体21の外側部分41だけでなく、筒状体21の延長部分40の上に載せた状態で、作業の際の待ち時間において手腕HDを休めることができる。すなわち、作業者が行う作業は、長時間かかることがあり、1つの作業を行った後に次の作業を行うまでの間、作業を止めて待機する場合には、作業者は、この待ち時間に手腕HDを内部側の延長部分40と筒状体21の外側部分41に載せて状態で、手腕HDを休めることができる。
【0057】
しかも、
図8に例示すように、好ましくは、クッション材45が、内部側の延長部分40の上に設けられている。このクッション材45は、例えば低反発素材を用いることができる。
【0058】
このようにクッション材45を設けることにより、作業者は、この待ち時間に手腕HDを内部側の延長部分40と筒状体21の外側部分41に載せて状態で、より楽に手腕HDを休めることができる。これにより、使い勝手が向上し、作業効率が向上する。
【0059】
また、
図8に示すように、筒状体21の外側部分41は、複数の段差部分42を有している。この段差部分42は、ゴム手袋GBの袖部分33をはめ込んで固定する際のスベリ止めの役割を有する。これにより、ゴム手袋GBの袖部分33は、筒状体21の外側部分41に被せるようにはめ込んだ状態で、外れないようにすることができる。
【0060】
このゴム手袋GBを用いることで、手腕HDを作業空間SP内に入れて、被処理物を手で処理することにより、作業者の手腕HDと筒状体21と上下動可能ガラス板7の間に隙間が形成されないようになっている。これにより、作業空間SP内の気体が筒状体21を通じて外部に漏れるのを防げる。
【0061】
また、作業者の体格や作業の内容に応じて、
図7に示す左側の窓ガラス19Aと筒状体21とゴム手袋GBの組立体と、右側の窓ガラス19Bと筒状体21とゴム手袋GBの組立体は、上窓枠15と下窓枠16の間で、引き戸式にX方向に沿ってスライドさせて、互いに近づけて中央位置に寄せたり、逆に互いに遠ざけて左右位置に引き離すことができる。これにより、作業者は、手腕HDのX方向における位置を変更できるので、被処理物の対する処理がさらに容易に確実にすることができる。
【0062】
図9は、上下動可能ガラス板7を前面板13の案内レール部13A,13Bに沿ってT方向に上下移動するための上下動機構部200を示している。
【0063】
図9に示す上下動機構部200では、滑車31a,31bが、前面板13の案内レール部13A,13Bの上部に取り付けられている。滑車31a,31bには、ロープ33a,33bがそれぞれ掛けられている。ロープ33a,33bは、金属ワイヤ、紐、針金等である。なお、
図9では、図示の簡単化のために、窓枠15,16や窓ガラス19A,19Bの図示は省略している。
【0064】
ロープ33a,33bの一端は、上下動可能ガラス板7の両端部の下部に固定され、ロープ33a,33bの他端には、バランス錘35a,35bが取り付けられている。バランス錘35a,35bの重さは、上下動可能ガラス板7の重さとバランスが取れるようになっている。
【0065】
ただし、上下動可能ガラス板7の重さを低減するために、バランス錘を用いているが、例えばバネ式、エアー式、あるいは油圧式シリンダ等を用いても良い。
【0066】
図9(A)では、バランス錘35a,35bの重さと、上下動可能ガラス板7の重さが、バランスを取りながら静止しており、
図9(B)では、上下動可能ガラス板7をT1方向に上げた状態で、バランス錘35a,35bの重さと、上下動可能ガラス板7の重さが、バランスを取りながら静止している。
図9(C)では、上下動可能ガラス板7をT2方向に最も下げた状態で、バランス錘35a,35bの重さと、上下動可能ガラス板7の重さが、バランスを取りながら静止している。
【0067】
この上下動可能ガラス板7の上下移動は、
図7に示すように、作業者が、ゴム手袋GBを介して挿入した手腕HDを上下に移動することで、この手腕HDの上下移動に応じて、窓ガラス19A,19Bを介して上下動可能ガラス板7が上下動することができる。そして、作業者が手腕HDの上下動を止めると、その停止位置で、上下動可能ガラス板7がバランス錘35a,35bとバランスを取って静止することができる。
【0068】
また、作業者の手腕HDのX方向への移動は、作業者が、ゴム手袋GBを介して挿入した手腕HDを左右方向であるX方向に動かすことで、窓ガラス19A,19Bが上窓枠15と下窓枠16に沿って移動することから、横長の長円形の開口部7A,7Bの規制範囲内で、左右の手腕HDをそれぞれ別個にX方向に移動して位置決めすることができる。
【0069】
次に、上述した手腕挿入開口型フード1の使用例を説明する。
【0070】
使用者は、
図9(A)に示すように、上下動可能ガラス板7をT1方向に少し上げて、
図1に示すように、作業空間SP内の載置面151には、被処理物BTを載置する。そして、
図9(C)に示すように、使用者は、上下動可能ガラス板7をT2方向に下げて閉じる。
【0071】
図7と
図8に示すように、使用者は、手腕HDをゴム手袋GBに挿入しながら、手腕HDをゴム手袋GBとともに、作業空間SP内に挿入して、作業空間SP内の被処理物BTを処理する。
【0072】
この作業の際に、作業者が筒状体21内に挿入した手腕HDを上下(T方向)に移動することで、この手腕HDの上下移動に応じて、窓ガラス19A,19Bを介して上下動可能ガラス板7が上下動する。そして、作業者が手腕HDの上下動を止めると、その停止位置で、上下動可能ガラス板7がバランス錘35a,35bとバランスを取って静止することができる。これにより、作業者の両側の手腕HDのT方向についての位置を、被処理物の処理に応じて自由に変更することができる。
【0073】
しかも、作業者が筒状体21内に挿入した手腕HDを、必要に応じて左右方向(X方向)に動かすことにより、窓ガラス19A,19Bが上窓枠15と下窓枠16の間で、引き戸式にX方向に沿ってスライドさせて、互いに近づけて中央位置に寄せたり、逆に互いに遠ざけたりすることができる。これにより、作業者の両腕のX方向についての位置を、被処理物の処理に応じて自由に変更することができる。
【0074】
図8に示すように、筒状体21は、内端部としての内部側の延長部分40を有している。この延長部分40は、上下動可能ガラス板7の内側領域、すなわち作業空間SP側に延長して形成されている。この延長部分40が、作業空間SP側に延長して設けられていることにより、筒状体21の軸方向の長さを、作業空間SPの外部領域だけでなく、作業空間SP領域内においても確保することができる。
【0075】
このため、作業者は、手腕HDを載せた状態で、作業の際の待ち時間において手腕HDを休めることができる。作業者が行う作業は、長時間かかることがあり、1つの作業を行った後に次の作業を行うまでの間、作業を止めて待機する場合に、作業者は、この待ち時間に手腕HDを内部側の延長部分40と筒状体21の外側部分41に載せて状態で、手腕HDを休めることができる。
【0076】
しかも、
図8に例示すように、クッション材45が、内部側の延長部分40の上に設けられている。このようにクッション材45を設けることにより、たとえ筒状体21が硬い材質で作られていても、作業者は、この待ち時間に手腕HDを筒状体21の内部側の延長部分40と筒状体21の外側部分41に載せた状態で、より楽に手腕HDを休めることができる。
【0077】
これにより、長時間の処理作業であっても、作業者はより快適に作業を行うことができる。すなわち、筒状体21の内端部である延長部分40が、前面開口閉塞手段である上下動可能ガラス板7から作業空間SP内にまで延びるように形成されているので、作業者は、筒状体21の内端部である延長部分40と筒状体21の外側部分41に渡って、手腕HDを置いて休めることができる。従って、作業者は、例えば開口からゴム手袋GBを用いて、被処理物の処理を行う際に、処理を待つ等の待機時間においても、手腕の疲れを軽減することができる。
【0078】
本発明の第1実施形態では、
図1に示すように、本体カバー3と載置台150とは、別体であり、本体カバー3側の振動は、載置台150側には伝わらないようになっている。例えば、被処理物をμgオーダーで精密秤量する場合には、精密な天秤が測定する数値が安定までに時間が掛かる。また、天秤だけではなく、多くの精密計量装置は温度安定が必要であり、測定する数値の安定には時間を要する。
【0079】
その間は、作業者の両側の手腕HDは、測定する数値の安定を待つために、天秤を設置している載置台151に触れることはできない。このことから、作業者の両側の手腕HDは、載置台151からは浮かした状態で、ピンセットやスパチラ及びサンプル瓶を保持した状態を維持することになる。
【0080】
このように、作業者の両腕が、ピンセット等を保持した状態であっても、手腕HDは、筒状体21の内端部である延長部分40に手腕HDを置いて休めることができる。このため、作業者は、例えば開口からゴム手袋GBを用いて、被処理物の処理を行う際に、処理を待つ等の待機時間においても、手腕HDの疲れを軽減することができる。
【0081】
次に、本発明の他の実施形態を順次説明するが、上述した第1実施形態と同様の箇所には同じ符号を記して、その説明を省略する。
【0082】
(第2実施形態)
図10は、本発明の第2実施形態を示す断面図である。
【0083】
本発明の第2実施形態が、
図8に示す本発明の第1実施形態と異なるのは、クッション材145の形状である。
図8では、クッション材45が、筒状体21の内部側の延長部分40にだけ設けられているが、
図10に示す第2実施形態では、クッション材145は、筒状体21の内部側の延長部分40と筒状体21の外側部分41に渡って設けられている。
【0084】
従って、たとえ筒状体21が硬い材質で作られていても、作業者は、この待ち時間に手腕HDを筒状体21の内部側の延長部分40と筒状体21の外側部分41のクッション材145の上に載せた状態で、さらにより楽に手腕HDを休めることができる。これにより、長時間の処理作業であっても、作業者はさらにより楽な姿勢で、快適に作業を行うことができる。
【0085】
(第3実施形態)
図11は、本発明の第3実施形態を示す断面図である。
【0086】
図11に示す本発明の第3実施形態では、筒状体21の内部側の延長部分40が可撓性を有しており、弾性変形可能である。これにより、
図11(A)から
図11(B)に示すように、作業者が手腕HDを筒状体21内に挿入すると、延長部分40は弾性変形することができる。このため、作業者は、この待ち時間に手腕を筒状体21の内部側の延長部分40と筒状体21の外側部分41に渡って載せた状態で、さらにより楽に手腕HDを休めることができる。これにより、長時間の処理作業であっても、作業者はさらにより楽な姿勢で、快適に作業を行うことができる。
【0087】
また、筒状体21の全体が可撓性を有していても良い。これにより、筒状体21は、載せた手腕HDの重みでなじむように弾性変形するので、手腕HDを置き易く、楽に手腕HDを休めることができる。これにより、長時間の処理作業であっても、作業者はさらにより楽な姿勢で、快適に作業を行うことができる。
【0088】
(第4実施形態)
図12と
図13は、本発明の第4実施形態を示す断面図である。
【0089】
図12と
図13に示す本発明の第4実施形態では、筒状体21の構造や、筒状体21がX方向に移動して位置決めできることは、本発明の第1実施形態から第3実施形態と同じである。
【0090】
さらに、第4実施形態では、筒状体21は、さらにT方向(T1方向、T2方向)に沿って微小に移動して位置の変更を行って、しかも位置決めすることができるようになっている。すなわち、筒状体21の窓ガラス19A(19B)と、筒状体21の間には、ラチェット機構のような位置変更部70が設けられている。この位置変更部70は、第1爪部材71と、第2爪部材72により構成されている。
【0091】
図12に示す第1爪部材71は、窓ガラス19A(19B)側に設けられ、第2爪部材72は、筒状体21の延長部分73に設けられている。第1爪部材71は、複数の爪71Aを有し、第2爪部材72は、複数の爪72Aを有する。これらの複数の爪71Aと複数の爪72Aは、噛み合っている。
【0092】
図12に示す第1爪部材71は、保持部材74の力により、複数の爪71Aを複数の爪72Aに噛み合わせるように押し付けている。この保持部材74は、ゴム板等の弾性変形可能な板材である。第1爪部材71は取っ手75を有している。
【0093】
そこで、作業者が、
図12に示す取っ手75を持って、
図13に示すように、保持部材74の力に抗して第1爪部材71をY1方向に引っ張ることにより、複数の爪71Aが複数の爪72Aから離れる。
【0094】
この複数の爪71Aと複数の爪72Aとを離した状態を保持して、作業者は、筒状体21のT1方向あるいはT2方向に微小に移動して、その後保持部材74の引っ張るのを止めることで、保持部材74は、複数の爪71Aを複数の爪72Aに押し当ててかみ合わせることができる。このようにして、筒状体21のT方向の高さ位置は、複数の爪71Aと複数の爪72Aにおけるかみ合わせ位置を変えることで、微小に変更して位置決めすることができる。
【0095】
筒状体21のT方向への大きな移動は、すでに説明したように、窓ガラス19A,19Bを介して上下動可能ガラス板7が上下動させればよい。しかし、作業に応じて、筒状体21のT方向への微小な移動を行って高さ位置を変えて、しかも位置決めしたい場合には、複数の爪71Aと複数の爪72Aとの噛み合い位置を変えるだけで、簡単に筒状体21のT方向への微小な移動による高さ位置の変更と、位置決めを行うことができる。これにより、作業者は、両方の手腕の高さ位置を微妙に変えて、被処理物の大きさや載置位置に応じて、さらにより楽な姿勢で、快適に作業を行うことができる。
【0096】
(第5実施形態)
図14と
図15は、本発明の第5実施形態を示す断面図である。
【0097】
図14と
図15に示す本発明の第5実施形態では、上下動可能ガラス板7の下部の位置に、開閉扉300が、追加して設けられている。この開閉扉300は、縦方向の枠材301と横方向の枠材302と、透明のガラス板303を有している。枠材302は、下窓枠16に対して、2つのヒンジ部材304を用いて、
図13から
図14に示すように、RR方向(開く方向)とRS方向(閉じる方向)に、開閉可能に取り付けられている。
【0098】
このように、開閉扉300が、上下動可能ガラス板7に設けられることにより、作業者は、
図15に示すように、この開閉扉300だけを開けることで生じる開口部ORを通じて、作業空間SP内の掃除、例えば上下動可能ガラス板7の内面の掃除を行うことができる。また、この開閉扉300を開けることで生じる開口部ORを通じて、作業空間SP内に、各種の使用する器具や、被処理物の出し入れを、容易に行うことができる。
【0099】
本発明の実施形態の手腕挿入開口型フード1は、作業空間SPの前面の開口を、上下方向(T方向)に移動する透明板によって閉塞する前面開口閉塞手段としての上下動可能ガラス板7と、前面開口閉塞手段に設けられて、作業空間へ作業者の手腕を挿入するための筒状体21の位置を左右方向(X方向)に移動可能とする筒状体移動手段としての窓ガラス19A,19Bと、を備え、筒状体21の内端部(延長部分40)が、筒状体21に挿入された作業者の腕を保持し得る構造になっている。
【0100】
このために、筒状体21の内端部(延長部分40)が、筒状体21に挿入された作業者の腕を保持し得るので、作業者は、筒状体21の上下動可能ガラス板7に手を置いて休めることができる。これにより、作業者は、例えば開口からゴム手袋を用いて、被処理物の処理を行う際に、処理を待つ等の待機時間においても、手(手腕)の疲れを軽減することができる。
【0101】
また、手腕挿入開口型フード1では、作業空間SPの前面の開口を、透明板によって閉塞する前面開口閉塞手段としての上下動可能ガラス板7と、この上下動可能ガラス板7に設けられて、作業空間SPへ作業者の手腕を挿入するための筒状体21を有し、この筒状体21は、作業空間SP内に手腕を挿入するための挿入用開口部と、挿入用開口部の少なくとも腕を置く位置に配設されるクッション材45(145)と、を有する。
【0102】
このため、筒状体21が、上下方向や左右方向に移動しない構造を有する手腕挿入開口型フード1の場合に、たとえ筒状体21が硬い材質で作られていても、作業者は、この待ち時間に手(手腕)をクッション材45(145)に載せた状態で、さらにより楽に手(手腕)を休めることができる。これにより、長時間の処理作業であっても、作業者はさらにより楽な姿勢で、快適に作業を行うことができる。
【0103】
さらに、手腕挿入開口型フード1では、筒状体21は、可撓性を有している。このために、作業者は、この待ち時間に手(手腕)を筒状体に載せた状態で、さらにより楽に手(手腕)を休めることができる。これにより、長時間の処理作業であっても、作業者はさらにより楽な姿勢で、快適に作業を行うことができる。
【0104】
手腕挿入開口型フード1では、筒状体21の位置は、左右方向だけでなく、上下方向に沿って調整して位置決め可能な位置変更部70を有する。このために、筒状体21は、作業に応じて、高さ位置を微小に変更して位置決めすることができ、作業性が向上する。
【0105】
手腕挿入開口型フード1は、作業空間SPの前面の開口を、上下方向に移動する透明板によって閉塞する前面開口閉塞手段(7)と、前面開口閉塞手段に設けられて、作業空間へ作業者の手を挿入するための筒状体21と、前面開口閉塞手段の下部に設けられて、作業空間を開閉可能な開閉扉300と、を有する。
【0106】
これにより、作業者は、この開閉扉だけを開けることで生じる開口部を通じて、作業空間SP内の掃除、例えば前面開口閉塞手段である上下動可能ガラス板7の内面の掃除を行うことができる。また、この開閉扉を開けることで生じる開口部を通じて、作業空間内に、各種の使用する器具や、被処理物の出し入れを、容易に行うことができる。
【0107】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、各実施形態は一例であり、特許請求の範囲に記載される発明の範囲は、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更できるものである。本発明の各実施形態は、任意に組み合わせることができる。
【0108】
上述した手腕挿入開口型フード1は、例えば秤量しようとする物質、例えば微小粒子物質PM2.5を精密に測定するために用いられる恒温恒湿チャンバ装置として用いることができる。
【0109】
本発明の実施形態の手腕挿入開口型フード1は、作業空間内が陰圧例であるが、手腕挿入開口型フード1は、陰圧だけではなく、陽圧であっても適用できる。
【0110】
本発明の実施形態の手腕挿入開口型フード1では、突出部分(延長部分40)を、着脱自在に設けることができる。または、本発明の実施形態の手腕挿入開口型フード1では、突出部分(延長部分40)を、筒状体21の内部に引き込み可能として、突出部分(延長部分40)が作業空間内に突出しないようにする構成とすることが可能である。
【0111】
このように、突出部分(延長部分40)作業空間SP内に突出しないようにする場合に、突出部分(延長部分40)を、筒状体21の内部に引き込む構造としては、例えば
図8に例示するようにゴム手袋GBであるグローブを裏返しにして、作業空間SP内に入れ込むのと同様にして、突出部分(延長部分40)を裏返しにするようにして、筒状体21の内部に引き込む場合と、単純に(硬性のある)筒状体21の突出部分(延長部分40)のみを、筒状体21の内部から外すようにして、引き込む場合がある。