(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498907
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】テープフィーダ
(51)【国際特許分類】
H05K 13/02 20060101AFI20190401BHJP
【FI】
H05K13/02 B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-218576(P2014-218576)
(22)【出願日】2014年10月27日
(65)【公開番号】特開2016-86097(P2016-86097A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】500548884
【氏名又は名称】ハンファエアロスペース株式会社
【氏名又は名称原語表記】Hanwha Aerospace Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮原 清一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 公幸
(72)【発明者】
【氏名】西村 清盛
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 尚人
【審査官】
土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−222569(JP,A)
【文献】
特開2014−154691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を保持したキャリアテープ及びこのキャリアテープの上面を覆うカバーテープを有する部品供給用テープをテープ搬送経路に沿って移動させながら、当該テープ搬送経路の途中に配置されたスクレーパによって前記カバーテープを剥離させるテープフィーダにおいて、
前記スクレーパの直前のテープ搬送経路に、当該テープ搬送経路より上方に突出する突起を有する板バネ部材を配置し、
前記突起は、前記板バネ部材の上方に配置された別の板バネ部材に設けたスリットに差し込まれていることを特徴とするテープフィーダ。
【請求項2】
前記突起は、部品供給用テープの先端が突き当たることにより、当該部品供給用テープの先端を上方に押し上げつつ、その部品供給用テープの下面側に弾性的に潜り込む、請求項1に記載のテープフィーダ。
【請求項3】
前記突起は、前記テープ搬送経路に沿って前記スクレーパの直前から当該スクレーパの下流側にわたるように配置されており、当該突起の最高点が前記スクレーパの下流側にある、請求項1又は2に記載のテープフィーダ。
【請求項4】
前記スクレーパの直前のテープ搬送経路の上方に、部品供給用テープの全幅にわたる開口部を有する、請求項1から請求項3のいずれかに記載のテープフィーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品を保持した部品供給用テープをテープ搬送経路に沿って移動させることにより、その部品を例えば部品実装装置のピックアップ位置に供給するテープフィーダに関する。
【背景技術】
【0002】
部品実装装置において、移載ヘッドのノズルのピックアップ位置に部品(電子部品)を供給する方法として、テープフィーダを用いる方法が知られている。この方法は、部品を保持する部品供給用テープを供給リールから引き出し、部品の実装タイミングに同期させてピッチ送りしてノズルのピックアップ位置に供給するものである。部品供給用テープ(以下、単に「テープ」ともいう。)は、部品を保持するキャリアテープテープと、部品の保護と脱落防止のためにその部品を覆うようにキャリアテープの上面に接着(貼着)されたカバーテープとからなり、カバーテープはピックアップ位置に送られる手前でキャリアテープの上面から剥離される。そのため、従来一般的なテープフィーダは、そのテープ搬送経路の途中にキャリアテープからカバーテープを剥離させるためのスクレーパ等からなるカバーテープ剥離機構を有する(例えば特許文献1)。
【0003】
このカバーテープ剥離機構により、テープ搬送中に連続的にキャリアテープからカバーテープを剥離させることができる。しかし、テープの自動セッティング時などに新しいテープをテープフィーダに装着する場合、上記のカバーテープ剥離機構によっては新しいテープの先端部分においてキャリアテープからカバーテープを剥離させるには困難を伴う。特にテープの先端は、テープの切断時の影響等により、例えば
図7に示すように下方に垂れることが多い。そうすると、キャリアテープT1とカバーテープT2との界面の位置がスクレーパ11の高さ位置に合わないため、カバーテープの剥離に失敗することが多い。
【0004】
この点に関し特許文献1では、カバーテープの剥離開始位置において、テープを下方からガイドする下方ガイド部材を下面側からレバー部材によって押し上げる構成が提案されている。しかし、テープを下方から押し上げるだけでは、
図7に示したようなテープ先端の垂れを矯正することは困難で、依然としてカバーテープの剥離失敗が起こり、その剥離成功率は十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−156220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、部品供給用テープの先端部分においてキャリアテープからカバーテープを剥離させる剥離成功率を向上させることができるテープフィーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、次のテープフィーダが提供される。
「部品を保持したキャリアテープ及びこのキャリアテープの上面を覆うカバーテープを有する部品供給用テープをテープ搬送経路に沿って移動させながら、当該テープ搬送経路の途中に配置されたスクレーパによって前記カバーテープを剥離させるテープフィーダにおいて、
前記スクレーパの直前のテープ搬送経路に、当該テープ搬送経路より上方に突出する突起を有する
板バネ部材を配置し
、
前記突起は、前記板バネ部材の上方に配置された別の板バネ部材に設けたスリットに差し込まれていることを特徴とするテープフィーダ。」
【0008】
このように、スクレーパの直前のテープ搬送経路に、当該テープ搬送経路より上方に突出する突起を有する弾性体を配置したことで、この突起は、部品供給用テープの先端が突き当たることにより、当該部品供給用テープの先端を上方に押し上げつつ、その部品供給用テープの下面側に弾性的に潜り込む。したがって部品供給用テープの先端部分が、仮に
図7に示したように垂れていたとしても、その先端部分が突起によって弾性的に押し上がり、当該部品供給用テープの先端部分におけるキャリアテープとカバーテープとの界面の位置が、スクレーパの高さ位置に合うように矯正されるため、剥離成功率が向上する。
【0009】
本発明において突起は、前記テープ搬送経路に沿って前記スクレーパの直前から当該スクレーパの下流側にわたるように配置することができ、この場合、突起の最高点がスクレーパの下流側にあるような構成とすることが好ましい。仮に、突起の最高点がスクレーパの直前にあると、部品供給用テープの先端部分においてカバーテープの剥離が終わった後も、スクレーパの直前で部品供給用テープが最高点位置まで押し上げられる。そうすると、スクレーパがキャリアテープ上の部品と接触して干渉するおそれがある。これに対して、突起の最高点をスクレーパの下流側にすると、部品供給用テープの先端部分においてカバーテープの剥離が終わった後に、スクレーパがキャリアテープ上の部品と接触して干渉する問題の発生を抑えることができる。
【0010】
また、本発明においては、スクレーパの直前のテープ搬送経路の上方に、部品供給用テープの全幅にわたる開口部を設けることができる。このように開口部を設けると、スクレーパの直前で部品供給用テープの先端が突起に突き当たったときに、その部品供給用テープの先端部分が押し上げられやすくなるので、剥離成功率を更に向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のとおり本発明によれば、部品供給用テープの先端部分においてキャリアテープからカバーテープを剥離させる剥離成功率を向上させることができる。これにより、剥離失敗によるテープフィーダの動作停止の頻度を低減でき、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施例に係るテープフィーダの全体構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図1のテープフィーダのスクレーパ近傍を斜め上方から見た斜視図である。
【
図5】
図2のA−A断面による要部の斜視図である。
【
図6】第1板バネ部材及び第2板バネ部材の構成を示す斜視図である。
【
図7】部品供給用テープの先端部分が垂れた場合におけるスクレーパとの位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施例に係るテープフィーダの全体構成を概略的に示す図である。
図1のテープフィーダは、細長い箱型のテープフィーダ本体1に、以下に説明する各要素を設けて構成されており、部品を保持したテープTをピッチ送りすることにより、部品を部品実装装置のピックアップ位置Pに供給する。図示は省略するが、テープTにはその長手方向に沿って所定ピッチ(定ピッチ)で部品が保持されている。
【0015】
テープフィーダ本体1の上部にテープ搬送経路2が設けられている。テープTは、テープ搬送経路2のテープ導入部2aから導入され、テープ搬送経路2に沿って搬送される。
【0016】
テープ搬送経路2の下流端側に第1スプロケット3が配置されている。第1スプロケット3の歯はテープTに定ピッチで設けられたテープ送り用の孔部に噛み合い、第1スプロケット3がピッチ回転することにより、テープをピッチ送りする。第1スプロケット3には複数の中間ギヤ4を介して第1モータ5の回転軸が連結されており、第1モータ5の回転駆動により第1スプロケット3が回転する。この第1スプロケット3の下流側近接位置が部品のピックアップ位置Pとなっている。
【0017】
第1スプロケット3の上流側に第2スプロケット6が配置され、更に第2スプロケット6の上流側に第3スプロケット7が配置されている。第2スプロケット6及び第3スプロケット7のそれぞれの歯は、テープTに定ピッチで設けられたテープ送り用の孔部に噛み合い、第2スプロケット6及び第3スプロケット7が回転することにより、テープTがテープ搬送経路2に沿って送られる。第2スプロケット6及び第3スプロケット7は、それぞれ複数の中間ギヤ4を介して第2モータ8及び第3モータ9の回転駆動により回転する。これら第1モータ5、第2モータ8及び第3モータ9の回転駆動は、制御部10が制御する。第1モータ5、第2モータ8及び第3モータ9の種類は特に限定されないが、本実施例ではエンコーダ付きのサーボモータを使用している。
【0018】
図2は
図1のテープフィーダのスクレーパ近傍を斜め上方から見た斜視図、
図3はその正面透視図、
図4は
図3の要部拡大図、
図5は
図2のA−A断面による要部の斜視図である。
【0019】
第1スプロケット3と第2スプロケット6との間のテープ搬送経路2にスクレーパ11が配置されている。このスクレーパ11によって、テープ搬送経路2に沿って移動するテープTのキャリアテープからカバーテープを剥離させる。
【0020】
スクレーパ11は上面ガイド部材12と一体的に設けられている。そして上面ガイド部材12は、テープフィーダ本体1に対して支持ピン13を介して取り付けられている。これにより、上面ガイド部材12は支持ピン13周りに回転することでテープフィーダ本体1に対して開閉可能である。支持ピン13は、テープフィーダ本体1に対して上下方向に移動可能に装着されている。また、支持ピン13は、図示しない弾性部材によって常時下方に付勢されている。これにより、上面ガイド部材12はテープフィーダ本体1に対して下方に付勢されつつ上下方向に移動可能である。
【0021】
上面ガイド部材12は、テープフィーダ本体1に一体的又は固定的に設けられた下面ガイド部材14とともに、スクレーパ11の上流側のテープ搬送経路2を規定する。
【0022】
具体的に説明すると、
図5に表れているように上面ガイド部材12は、テープTの幅方向両側の上面をガイドする上ガイド面12aを有し、下面ガイド部材14は、テープTの幅方向両側の下面をガイドする下ガイド面14a有する。すなわち、上面ガイド部材12の上ガイド面12aと下面ガイド部材14の下ガイド面14aとでテープ搬送経路2が規定されている。
【0023】
また、下面ガイド部材14において、テープTの幅方向両側の下面をガイドする下ガイド面14aはテープTの幅方向に離隔して設けられており、これら幅方向両側の下ガイド面14a,14aの間には、テープTのキャリアテープT1に保持された部品(図示省略)が通過可能な空間14bが形成されている。この空間14bは、想定される最大の部品が通過可能な大きさとされている。
【0024】
この空間14bを利用して、第1板バネ部材15及び第2板バネ部材16が組み込まれている。なお、
図5において第1板バネ部材15及び第2板バネ部材16は省略している。
【0025】
第1板バネ部材15は
図6に示すように略台形状に形成され、
図3に表れているように、その両端がテープフィーダ本体1に固定され、上辺15aがテープ搬送経路2の下面側に臨むように配置される。この第1板バネ部材15の上辺15aは、テープ搬送経路2に沿って搬送されるテープTの下面を弾性的に支持する。
【0026】
第2板バネ部材16は、
図6に示すように第1板バネ部材15の長手方向半分の形状に対応する形状を有し、その先端側に鉛直に立ち上がる突起16aを有する。この突起16aを第1板バネ部材15の上辺15aに設けたスリット15bに差し込むことで、
図3に表れているように第1板バネ部材15と第2板バネ部材16とが組み合わせられた状態で、テープフィーダ本体1に取り付けられる。すなわち、第2板バネ部材16の基端は、第1板バネ部材15の一端とともにテープフィーダ本体1に固定される。一方、第2板バネ部材16の先端側(突起16a側)はフリーであり、弾性的に上下方向に移動可能である。
【0027】
この第2板バネ部材16の突起16aとスクレーパ11との位置関係は、
図4に示すとおりとなる。すなわち、突起16aは、テープ搬送経路2に沿ってスクレーパ11先端の直前から下流側にわたって、テープ搬送経路2より上方に突出するように位置する。また、突起16aの最高点16a−1は、スクレーパ11の下流側に位置する。
【0028】
以上の構成において、テープ搬送経路2を搬送されてきたテープTの先端が、スクレーパ11の直前で突起16aに突き当たると、突起16aは、当該テープTの先端を上方に押し上げつつ、そのテープTの下面側に弾性的に潜り込む。これにより、テープTの先端部分が
図7に示したように垂れていたとしても、その先端部分が突起16aによって弾性的に押し上がり、テープTの先端部分におけるキャリアテープT1とカバーテープT2との界面の位置がスクレーパ11の高さ位置に合うようになり、剥離成功率が向上する。
【0029】
また、本実施例では、突起16aの最高点16a−1はスクレーパ11の下流側に位置する。これにより、テープTの先端部分においてカバーテープの剥離が終わった後に、そのテープTがスクレーパ11の直前で過剰に押し上げられることを防止できる。よって、テープTの先端部分においてカバーテープの剥離が終わった後にスクレーパ11がキャリアテープ上の部品と接触して干渉する問題の発生を抑えることができる。
【0030】
更に、本実施例においては、
図2に示すように、スクレーパ11の直前のテープ搬送経路2の上方に、テープTの全幅にわたる開口部2aを設けている。このような開口部2aがあると、スクレーパ11の直前でテープTの先端が突起16aに突き当たったときに、そのテープTの先端部分が押し上げられやすくなるので、剥離成功率が更に向上する。
【符号の説明】
【0031】
1 テープフィーダ本体
2 テープ搬送経路
2a テープ導入部
3 第1スプロケット
4 中間ギヤ
5 第1モータ
6 第2スプロケット
7 第3スプロケット
8 第2モータ
9 第3モータ
10 制御部
11 スクレーパ
12 上面ガイド部材
12a 上ガイド面
13 支持ピン
14 下面ガイド部材
14a 下ガイド面
14b 空間
15 第1板バネ部材
15a 上辺
15b スリット
16 第2板バネ部材(弾性体)
16a 突起