【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる実情に鑑み、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。まず、柑橘果実の圧搾物である果汁は、水性成分であることから、油性化粧料への単純含有は困難と考え、界面活性剤を用いての安定に含有しうるかの可能性を検討した。ここで柑橘果実の果汁には、クエン酸や、ビタミン類などの種々の成分が含まれており、このような成分に影響を受けにくいものとして、イオン性の界面活性剤よりは、ノニオン界面活性剤が好ましく、さら検討を進めた結果、特定のHLBの範囲を有するノニオン界面活性剤が経時安定性上好ましいものであることがわかった。また、ノニオン界面活性剤の親水基としては、ポリオキシエチレン基と、ソルビタン骨格の構造を有するものが、柑橘果実の果汁を安定に含有させるという優れた特性を有することを見出した。そして、特定のノニオン界面活性剤を、柑橘果実の果汁とともに、25℃で液状の油を含む構成とすることにより、油性化粧料に濁ることなく透明な状態で含有させ、経時安定性に優れる透明油性化粧料を完成させた。これは従来からある白濁状態の乳化化粧料への含有技術とは全く異なるものである。また本発明のような構成の透明油性化粧料は、水系濃度が少ないために、果実果汁の機能を効果的に働かせることも期待でき、塗布した際に皮膚に対してべたつきがなく、エモリエント効果に優れる透明油性化粧料が得られることを見出し本発明を完成させた。
【0006】
すなわち本発明は、次の成分(a)〜(c);
(a)果実の圧搾物である果汁
(b)25℃にて液状の油
(c)HLB値が10〜15のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル
を含有することを特徴とする透明油性化粧料に関するものである。
【0007】
前記成分(a)が、レモン、グレープフルーツ、ユズ、オレンジから選ばれる一種又は二種以上の果実の圧搾物である果汁であることを特徴とする透明油性化粧料に関するものである。
【0008】
さらに、成分(d)として、多価アルコールを含有することを特徴とする透明油性化粧料に関するものである。
【0009】
前記成分(d)が、少なくとも1,3−ブチレングリコールを含むものであり、成分(d)中における1,3−ブチレングリコールの含有割合が、50質量%以上であることを特徴とする透明油性化粧料に関するものである。
【0010】
さらに成分(e)として、ジグリセリンと、炭素数8〜20の脂肪酸との、モノ、ジ又はトリエステルから選ばれる一種又は二種以上を含有することを特徴とする透明油性化粧料に関するものである。
【0011】
さらに成分(f)として、リン酸系界面活性剤を含有することを特徴とする透明油性化粧料に関するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の透明油性化粧料は、経時安定性に優れ、皮膚に対して油膜感やべたつきが少なく、エモリエント効果に優れるという利点がある。
【0013】
以下、本発明について特にその好ましい形態を中心に詳細に記載する。なお、本発明において、「〜」はその前後の数値を含む範囲を意味する。
【0014】
本発明の透明油性化粧料は、成分(a)として、柑橘果実の圧搾物である果汁を含有する。これは柑橘果実を一般的な果実圧搾機等を用いて圧搾したことにより得られる果汁である。なお、本発明においては、果汁は液状成分のもののみを意味し、果肉や、繊維、種子残留物等のものは含まれない。これら固形物は予め濾過などにより取り除いて用いるものとする。なお、製造工程において、濃縮あるいは水分等を添加して希釈しているものや、1,3−ブチレングリコール、エタノール、グリセリン等の他の成分を含有させたものであってもよい。
このような柑橘果実としては、特に限定されるものではないが、具体的な柑橘果実としては、ミカン、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、ユズ、キンカン、イヨカン、カボス、スダチ、シークワーサー、ライム、ハッサク、ベルガモットなどをあげることができる。これらの果汁は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
【0015】
本発明の成分(a)の柑橘果実の圧搾物である果汁として特に好ましくは、エモリエント効果の観点より、オレンジ果汁、レモン果汁、ユズ果汁、グレープフルーツ果汁が挙げられる。
【0016】
本発明の成分(a)の柑橘果実の圧搾物である果汁の含有量は、特に限定されないが、0.0001質量%(以下、質量%は単に、「%」と略す)以上、5%以下とすることが好ましく、さらには、0.001%以上、2%以下とすることがさらに好ましく、そしてさらに好ましくは、0.01%以上、1%以下とすることが好ましい。これらの範囲内とすれば、経時安定性に優れ、エモリエント効果の観点においても好ましいものとなる。
このような成分(a)の市販品としては、HORMO FRUIT LEMON、HORMO FRUIT ORANGE(以上、エスペリス社製)等のHORMO FRUITシリーズが挙げられる。
【0017】
本発明の透明油性化粧料は、成分(b)として、25℃にて液状の油を含有する。成分(b)は、成分(a)および(c)と共に用いることにより、エモリエント効果の観点より好ましいものとなる。液状油としては、通常の化粧料に使用される25℃で液状の油剤であれば、特に限定されるものでもなく、いずれのものも使用することができ、成分(b)の粘度としては、25℃において、10000mPa・s以下のものが好ましく、3000mPa・s以下であればより好ましい。ここでの粘度は、芝浦システム社製単一円筒型回転粘度計ビスメトロンVS−A1を用いて、3号ローターで6回転、60秒後の条件にて測定した値である。なお、後述する成分(e)は含まないものである。
このような成分(b)は、例えば、シリコーン油、フッ素系油剤、炭化水素油、エステル油、グリセライド油、高級脂肪酸、高級アルコール、天然動植物油剤および半合成油剤よりなる群から選ばれる1種又は2種以上のものを使用することができる。
以下、具体的に記載するが、これらに限定されるものではない。
【0018】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルトリメチコン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等の低粘度から高粘度のオルガノポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラトリフロロプロピルシクロテトラシロキサン、ペンタメチルペンタトリフロロプロピルシクロペンタシロキサン等の環状シロキサン等が挙げられる。
【0019】
フッ素系油剤としては、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン等が挙げられる。
【0020】
炭化水素油としては、直鎖状、分岐状、さらに揮発性の炭化水素油等が挙げられ、具体的には、α−オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、合成スクワラン、植物性スクワラン、スクワレン、流動パラフィン、流動イソパラフィン等が挙げられる。
【0021】
エステル油としては、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、イソステアリン酸イソセチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、2−エチルヘキサン酸セチル、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、クエン酸トリエチル、コハク酸2−エチルヘキシル、酢酸アミル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、リンゴ酸ジイソステアリル等が挙げられる。
【0022】
グリセライド油としては、アセトグリセリル、トリイソオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリルなどが挙げられる。
【0023】
高級脂肪酸としては、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イソステアリン酸等が挙げられる。
【0024】
高級アルコールとしては、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、2−デシルテトラデシノール、モノオレイルグリセリルエーテル(セラキルアルコール)等が挙げられる。
【0025】
また、天然動植物油剤及び半合成油剤としては、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、キョウニン油、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サザンカ油、サフラワー油、シナモン油、タートル油、大豆油、茶実油、ツバキ油、月見草油、トウモロコシ油、ナタネ油、日本キリ油、胚芽油、パーシック油、ヒマシ油、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、ヒマワリ油、ブドウ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ミンク油、メドウホーム油、綿実油、落花生油、液状ラノリン、酢酸ラノリンアルコール、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、卵黄油等が挙げられる。
【0026】
本発明の透明油性化粧料中の成分(b)の25℃で液状の油の含有量は、特に限定されないが、50〜99%とすることが好ましく、さらには、70〜90%とすることがさらに好ましい。この範囲とすれば、エモリエント効果の観点で好ましい。
【0027】
本発明の透明油性化粧料は、成分(c)として、HLB10〜15のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルを含有する。成分(c)は、本発明の透明油性化粧料の化粧料の製剤安定性の向上に寄与する。具体的には、ソルビトールに酸化エチレンを付加したものを脂肪酸でエステル化したものであって、HLBが10〜15の範囲であれば、いずれも使用することができ、1種又は2種以上を含有することができる。
ここで「ポリオキシエチレン」とは、特に限定されるものではなく、脂肪酸の種類等によっても適宜選択することが可能であるが、具体的には、概ね1分子あたり、20モル〜80モルの範囲のものが好ましい。なお、本明細書においては、ポリオキシエチレンをPOEと記載することもある。
また、「脂肪酸」は、特に限定されるものではないが、例えば、炭素数8〜22のものが好ましく、飽和、不飽和もしくは直鎖、分岐いずれのものであってもよく、またこれらを混合していてもよいものであり、ヤシ油脂肪酸のようなものであっても、いずれでもよい。
これらの中でも主としてソルビトールに酸化エチレンを付加したものをオレイン酸でエステル化したテトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビットが、経時安定性の点から好ましい。市販品としては、NIKKOL GO−430NV、440V、460V(以上、日光ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0028】
本発明の成分(c)の含有量は特に限定されないが、0.1〜50%とすることが好ましく、1〜30%がさらには好ましく、そしてさらに、5〜15%とすることが好ましい。この範囲内とすることにより、経時安定性に優れ、皮膚に対してべたつきがないという観点で好ましいものとすることができる。
【0029】
さらに、本発明の透明油性化粧料は、成分(d)として多価アルコールを含有する。ことで、経時安定性や塗布時の肌なじみに寄与する。このような多価アルコールとしては特に限定されないが、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトールなどが挙げられ、特に1,3−ブチレングリコールの含有割合が、多価アルコール全量に対して多いほど、成分(a)を含有する上で、経時安定性の観点で好ましいものとなり、その割合が50%以上であることが、経時安定性に加えて、塗布時の肌なじみの観点でも好ましい。
【0030】
本発明の成分(d)の含有量は、特に限定されないが、1〜20%とすることが好ましく、さらには、5〜10%とすることがさらに好ましい。この範囲とすることにより、経時安定性や塗布時の肌なじみの観点で好ましいものとすることができる。
【0031】
本発明は、成分(e)として、ジグリセリンと、炭素数8〜20の脂肪酸との、モノ、ジ又はトリエステルを含有する。成分(e)は、本発明においては、経時安定性、エモリエント効果を付与する目的で含有されるものである。なお、ここで「脂肪酸」は、飽和、不飽和もしくは直鎖、分岐いずれのものであってもよく、二種以上を混合していてもよいが、臭いや皮膚刺激性の観点から、飽和の分岐型が好ましく、特にイソステアリン酸が好ましい。市販品としては、例えば、コスモール41V、コスモール42V、コスモール43V(いずれも日清オイリオ社製)、ニッコールDGMO、DGDO、DGMIS(いずれも日光ケミカルズ社製)、IS−201P、IS−202P、O−201P(いずれも阪本薬品工業社製)、リソレックスPGIS21、リソレックスPGIS22、リソレックスPGIS23(いずれも高級アルコール工業社製)、EMALEX DISG−2、EMALEX TISG−2、EMALEX MOG−2、EMALEX MSG−2、EMALEX DSG−2(いずれも日本エマルジョン社製)等が挙げられる。
【0032】
本発明の成分(e)の含有量は、特に限定されないが、1〜20%とすることが好ましく、3〜15%とすることがさらに好ましく、5〜10%とすることが特に好ましい。この範囲とすることにより、経時安定性の観点で好ましいものとすることができる。
【0033】
さらに本発明の透明油性化粧料は、成分(f)としてリン酸系の界面活性剤を含有する。本発明の透明油性化粧料は、界面活性剤として、前記成分(c)を成分(b)と共に含有することで、成分(a)を安定に含有することが可能となる技術であるが、成分(f)をさらに含有することによりべたつきのなさが改善するため好ましい。リン酸系の界面活性剤とは高級アルコール又はそのポリオキシアルキレン誘導体の末端をリン酸エステル化した物を指し、残存する水酸基を適切なアルカリにより中和した塩を含むものである。中でも、ポリオキシエチレン付加アルキルエーテルリン酸類及びその塩類が好ましいがこれに限定されるものではなく、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。含有量としては0.01〜1%であれば経時安定性の観点で好ましい。市販品としては、HOSTAPHAT KW340D、HOSTAPHAT KL340D(以上、クラリアントジャパン社製)、ニッコールDDP−6、ニッコールDDP−8(以上、日光ケミカルズ社製)等がある。
【0034】
本発明の透明油性化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、前記成分の他に、通常化粧品に用いられる成分、例えば、界面活性剤、動植物由来油脂、シリコーン類、低級アルコール、動植物由来抽出エキス、保湿剤、増粘剤、金属封鎖剤、清涼剤、酸化防止剤、防腐・殺菌剤、pH調整剤、着色剤、各種香料などを目的に応じて適宜含有することができる。
【0035】
本発明の透明油性化粧料には、化粧油、洗顔料、クレンジング料、頭髪化粧料などの用途に好適に用いることができる。これらの中では、本発明の透明油性化粧料は毛穴の汚れ落ちに優れ、使用後にしっとり感を与える効果があることから、特に、洗顔料、クレンジング料、頭皮化粧料に好適に用いることができる。
【0036】
本発明の透明油性化粧料における、「透明」とは、透明ないし半透明のものを意味するものであり、透明性の評価は、分光光度計を用いて、波長700nmの光の透過率が70%以上であるものであり、好ましくは90%以上であり、そしてさらに好ましくは、98%以上のものである。そして本発明の透明油性化粧料は、より詳細には、油系ベース部分が、分離等をしていない一液相のものであり、剤型としては、油中水型の可溶化や、油中水型のマイクロエマルション等が挙げられる。また、このような油系ベースに、さらに粉体や、これを造粒した顆粒等を配合したものであってもよく、油系ベースの部分が透明であればよい。なお、水性成分が多くなると、二層分離型の化粧料となるものや、油中水型の乳化化粧料となるものもあるが、これらは本発明には含まれない。これは、水系含有量が多く、あるいは不透明なベースであり、従来からも乳化化粧料に果実果汁を含有する技術はあり、本発明の技術を用いる必要がないためである。
【0037】
本発明は、上記理由から少量の水を含有するものであってもよい。このような水の具体的な含有量としては、特に限定されるものではないが、透明油性化粧料全量に対して、5%未満であることが好ましく、1%未満であるとより好ましく、0.5%未満であるとより好ましい。
【0038】
本発明の透明油性化粧料の製造方法としては、特に限定されるものではないが、成分(a)〜(c)、その他の任意成分を混合した後、あらかじめ調製された洗浄基剤に含有することにより製造することができる。混合する機器としては、ディスパーや、パドルミキサー等の分散機器を用いることができる。
【0039】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。