(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
(構成)
1.原子炉
図1は、本実施形態に係るコアキャッチャを適用する原子炉の一構成例の概略構成を表す縦断面図である。
図1では、沸騰水型原子炉を例示している。以下、本発明を沸騰水型原子炉に適用した場合を説明するが、本発明は、加圧水型原子炉等の軽水炉、高速増殖炉、新型転換炉、高温ガス炉など他の型式の原子炉に対しても適用可能である。
【0012】
図1に示すように、原子炉40は、原子炉圧力容器(圧力容器)1、原子炉格納容器(格納容器)41及び原子炉建屋42を備えている。原子炉建屋42は、格納容器41の外周側に格納容器41を取り囲むように設けられている。格納容器41内に、圧力容器1が格納されている。
【0013】
圧力容器1は、炉心シュラウド55を収納している。炉心シュラウド55内には、複数の燃料集合体56が装荷された炉心50が格納されている。複数の燃料集合体56の下端部は炉心支持板57により支持され、上端部は上部格子板58により保持されている。燃料集合体56は、核燃料物質として、例えば、ウラン燃料のペレットをジルカロイ製の被覆管内にその軸方向に複数充填した燃料棒を有している。圧力容器1内の炉心50の下方には、複数の制御棒案内管59が設けられている。各制御棒案内管59内には、燃料集合体56間に出し入れされて原子炉出力を制御する制御棒60が設けられている。圧力容器1の下鏡61には、制御棒駆動機構(不図示)を収容する複数の制御棒駆動機構ハウジング5が取り付けられている。
【0014】
格納容器41は、気密性を有するように円筒状に形成されている。格納容器41の上部には、上蓋43が取り外し可能に取り付けられている。格納容器41は、冷却水が充填された圧力抑制プールを有する圧力抑制室(ウェットウェル)45等を備えている。格納容器41の内部には、ドライウェル44、格納容器下部空間2などが設けられている。
【0015】
ドライウェル44は、圧力容器1等を取り囲むように設けられている。格納容器下部空間2は、圧力容器1の下方に設けられ、複数の制御棒駆動機構ハウジング5等を収容している。ドライウェル44と格納容器下部空間2は、格納容器41の底部に形成されたコンクリート製の格納容器床面(床面)3から上方向に立設する筒状のペデスタル62により区画されている。圧力容器1は圧力容器支持構造物22を介してペデスタル62により支持されている。図中では圧力容器支持構造物22は突起部17により支持されているが、ここで突起部17はペデスタル62の壁の厚さが上方の原子炉遮蔽壁部で減少することで生じるペデスタル62の段差等、圧力容器支持構造物22の支持点の概念を表す。格納容器41における圧力容器1の下方の床面3にはコアキャッチャ4が配置されている。以下、コアキャッチャ4について説明する。
【0016】
2.コアキャッチャ
図2は本実施形態に係る格納容器下部空間の概略構成を表す縦断面図、
図3は
図2の矢印III−III線による矢視断面図である。
【0017】
図2に示すように、コアキャッチャ4は、耐熱層11Aを備えている。耐熱層11Aは、複数の耐熱材ブロック8A、保護板9A及び支持部材10Aを備えている。
【0018】
図3に示すように、耐熱材ブロック8Aは、床面3上に水平方向(
図3の上下方向及び左右方向)に間隔を空けて並べて配置してある。本実施形態では、複数の耐熱材ブロック8Aは平面視で四角形状であるが(耐熱材ブロック8A’を参照)、最外周に配置するものについてはペデスタル62の内壁面の形状に沿うようにカットしてある(耐熱材ブロック8A’’を参照)。耐熱材ブロック8Aには、例えば、延性が低く且つ融点が高く強度も高い物質(ジルコニア、アルミナ等のセラミック材料)が適用される。なお、製造上の制約と施工上の必要性から、一般的に、格納容器の床面に配置する耐熱材は、シームレス形状ではなくブロック形状、板状等に形成される。
【0019】
図2に示すように、保護板9Aは、ペデスタル62の内面の形状に合わせて形成され、床面3の全体を覆うように設けられている。保護板9Aは、圧力容器1に格納容器下部空間2を挟んで対向するように配置されている。保護板9Aは、複数の耐熱材ブロック8Aの上方を覆うように設けられ、圧力容器1の破損部6から床面3に向かって落下する炉心溶融物7を受けて保持する。なお、本実施形態では、保護板9Aを一枚で形成した場合を例示しているが、水平方向に複数に分割した分割板を並べて形成しても良い。
【0020】
複数の支持部材10Aは、一端部(下端部)が床面3に接地し、他端部(上端部)が保護板9Aに連結するように、床面3から上方向に立設している。本実施形態では、複数の支持部材10Aと保護板9Aはボルト等により連結されている。複数の支持部材10Aは、複数の耐熱材ブロック8Aに荷重(保護板9A及び支持部材10Aの重量)を掛けることなく保護板9Aを支持している。本実施形態では、支持部材10Aは、保護板9Aと耐熱材ブロック8Aの間に間隙部13が形成されるように保護板9Aを支持している。間隙部13は、高さ(
図2の上下方向の長さ)が想定される炉心溶融物7の衝撃荷重及び自重による保護板9Aの撓みの変位値よりも大きくなるようにしてある。本実施形態では、支持部材10Aは、耐熱材ブロック8Aの側壁面と接するように設けられている。保護板9A及び支持部材10Aには、耐熱材ブロック8Aより靭性(強度及び延性)の高い物質(例えば、鋼やステンレス)が適用される。なお、本明細書で靭性の高い物質とは、材料の引張り強さや降伏応力が高いと同時に展延性の高い物質のことを言う。
【0021】
図3に示すように、本実施形態では、複数の支持部材10Aは水平方向に延在する鉛直姿勢の壁状の部材である。複数の支持部材10Aは、水平一方向(
図3の左右方向)に4枚、水平他方向(
図3の上下方向)に4枚並べて配置されていて、格子状に連結している。なお、本実施形態では、複数の支持部材10Aを水平一方向に4枚、水平他方向に4枚並べて配置した場合を例示しているが、水平一及び他方向に並べる支持部材10Aの枚数は限定されない。例えば、水平一及び他方向に3枚以下又は5枚以上の支持部材10Aを並べても良く、また、水平一及び他方向に異なる枚数の支持部材10Aを並べても良い。
【0022】
(動作)
本実施形態に係るコアキャッチャ4における動作について、何らかの原因によって圧力容器1への注水機能が停止したことにより炉心溶融物7が圧力容器1の破損部6を貫通して落下した万一の場合を想定して説明する。
【0023】
圧力容器1への注水機能が停止した場合、例えば圧力容器1内の圧力変動に伴って、圧力容器1の破損部6から炉心溶融物7が落下する前に格納容器下部空間2内に冷却水が注水される。格納容器下部空間2内に注水された冷却水は、コアキャッチャ4を冠水させ、格納容器下部空間2に水プールを形成する。以下、冷却水が注水されなかった場合は、雰囲気の気体を、冷却水に相当する冷却源と読み替えても良い。
【0024】
圧力容器1の破損部6から落下した炉心溶融物7は、冷却水により冷却されつつ水プール内を下方に落下し、コアキャッチャ4の保護板9Aで受け止められ、保持される。保護板9Aに炉心溶融物7が衝突した際の衝撃荷重は、複数の支持部材10Aを介して床面3に伝達される。保護板9Aは、高温の炉心溶融物7により温度が上昇して溶融し始める。なお、保護板9Aに適用される物質(例えば、鋼等)は耐熱材ブロック8Aに適用される物質(例えば、セラミックス材料等)に比べて熱伝導性が高い。そのため、保護板9Aが溶融する過程で、保護板9Aに保持された炉心溶融物7の保有熱が、保護板9Aの炉心溶融物7を保持している部分(保持部)から周辺部に伝わる。
【0025】
保護板9Aが溶融した後、炉心溶融物7は複数の耐熱材ブロック8Aで受け止められ、保持される。耐熱材ブロック8Aで保持された炉心溶融物7は、例えば、格納容器下部空間2に形成された水プールの冷却水による上部からの冷却と耐熱材への伝熱によって冷却される。その後、炉心溶融物7は崩壊熱と冷却量のバランスに依存して保有熱が時間の経過に伴い減衰し、耐熱材ブロック8A上で凝固する。なお、保護板9Aが溶融した後、炉心溶融物7により支持部板10Aが溶融した場合、耐熱材ブロック8A間に形成される間隙は、冷却水の流入を許容しつつ炉心溶融物7の狭隘流路内での凝固作用を利用して流入を許容しない隙間として機能する。
【0026】
一方、例えば、圧力容器1の破損部6から炉心溶融物7が落下した後に格納容器下部空間2内に冷却水が注水された場合でも、保護板9A又は耐熱材ブロック8A上で保持された炉心溶融物7は、格納容器下部空間2内に注水された冷却水による上部からの冷却と耐熱材への伝熱によって冷却され、崩壊熱と冷却量のバランスに依存して保有熱が時間の経過に伴い減衰し、凝固する。
【0027】
(比較例)
図4乃至6は、比較例の格納容器下部空間の概略構成を表す縦断面図である。
図4乃至6において、
図2と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0028】
図4に示すように、比較例のコアキャッチャ4’は耐熱材ブロック8Aのみを備え、保護板9A及び支持部材10Aを備えていない。その他の構成は、上述の実施形態に係るコアキャッチャ4と同様である。
【0029】
例えば、圧力容器1の内圧が高い場合、
図5に示すように、圧力容器1の破損部6から勢いよく落下する炉心溶融物7の衝撃荷重により、耐熱材ブロック8Aが飛散する可能性がある。また、炉心溶融物7の落下速度が低い場合でも、
図6に示すように、高温の炉心溶融物7が耐熱材ブロック8Aに接触することにより、耐熱材ブロック8Aの表面近傍と内部の温度差が大きくなる。そうすると、温度に依存する膨張率の差によって、延性の低い耐熱材ブロック8Aに割れ15が生じる可能性がある。また、耐熱材ブロック8Aの自重と炉心溶融物7の重量により、耐熱材ブロック8Aに圧縮応力が作用し、耐熱材ブロック8Aの底部に割れ16が生じる可能性もある。耐熱材ブロック8Aに細かな割れが生じた場合、割れが生じた部分の熱伝導度が低下する。そうすると、炉心溶融物7の熱に対して耐熱材ブロック8Aの局所で温度が上昇し、炉心溶融物7による耐熱材ブロック8Aの侵食が促進され得る。
【0030】
(効果)
(1)本実施形態のコアキャッチャ4においては、複数の耐熱材ブロック8Aの上方を保護板9Aで覆い、その保護板9Aを耐熱材ブロック8Aに荷重を掛けることなく支持部材10Aで支持している。そのため、圧力容器1から落下した炉心溶融物7を保護板9Aの上面で受け止め、炉心溶融物7の衝撃荷重が耐熱材ブロック8Aに作用することを避けることができる。従って、炉心溶融物7の衝撃荷重から耐熱材ブロック8Aを保護することができ、比較例のように耐熱材ブロック8Aが飛散したり、耐熱材ブロック8Aに割れが生じたりすることを抑制することができ、炉心溶融物7を耐熱材ブロック8A上で凝固させて格納容器41の床面3への炉心溶融物7の侵食を抑制することができる。
【0031】
(2)本実施形態では、保護板9Aは、耐熱材ブロック8Aより高い靱性を有し、耐熱材ブロック8Aに比べて、引張り強さや降伏応力が高く、延展性が優れている。そのため、圧力容器1から落下した炉心溶融物7により破損することなく炉心溶融物7を確実に受け止めることができる。従って、格納容器41の床面3への炉心溶融物7の侵食を確実に抑制し、格納容器41の健全性を確保することができる。
【0032】
(3)本実施形態では、支持部材10Aを壁状の部材としている。そのため、保護板9Aを介して伝達する炉心溶融物7の保有熱を耐熱材ブロック8Aの側面にも伝達させることができる。従って、炉心溶融物7の熱を拡散させることができ、耐熱材ブロック8Aの温度上昇を抑制し、炉心溶融物7による耐熱材ブロック8Aの侵食速度を抑制することができる。また、耐熱材ブロック8Aの局所の加熱を緩和することもできる。更に、本実施形態では、複数の支持部材10Aを相互に連結しているため、コアキャッチャ4の強度を向上させることもできる。
【0033】
(4)本実施形態では、保護板9Aと耐熱材ブロック8Aの間に間隙部13を形成し、間隙部13の高さを想定される炉心溶融物7の衝撃荷重及び自重による保護板9Aの撓みの変位値よりも大きくしている。そのため、炉心溶融物7の衝撃荷重及び自重により保護板9Aが撓んでも、保護板9Aが耐熱材ブロック8Aの上面に接触して耐熱材ブロック8Aが破損することを回避することができる。
【0034】
(変形例)
図7は、本実施形態に係るコアキャッチャの変形例を表す図である。
図7において、
図3と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0035】
図7に示すように、本変形例は、支持部材の形状が上述の実施形態と異なる。その他の構成は、上述の実施形態と同様である。
【0036】
本変形例のコアキャッチャは、支持部材10Aの代わりに支持部材12を備えている。支持部材12は、断面が円形状に形成された柱状の部材である。
図7は、複数の支持部材12を水平一方向(
図7の左右方向)に等間隔に4本並べてなる支持部材群12Aを、水平他方向(
図7の上下方向)に等間隔に4列並べた場合を例示している。なお、支持部材12の本数、配置方法等は限定されない。例えば、3本以下又は5本以上の支持部材12により支持部材群12Aを構成しても良く、3列以下又は5列以上の支持部材群12Aを水平他方向に並べても良い。また、支持部材12を等間隔に並べて配置しなくても良い。
【0037】
本変形例では、耐熱材ブロック8A同士を間隙36を空けて配置している。間隙36は、例えば、格納容器下部空間2(
図2を参照)に注水された冷却水の流入を許容しつつ炉心溶融物7の狭隘流路内での凝固作用を利用して流入を許容しない幅(数mm程度)となるように形成されている。
【0038】
本変形例では、支持部材12を柱状の部材としているため、耐熱材ブロック8Aへの要求事項が緩和される。従って、耐熱材ブロック8Aを容易に床面3へ配置することができる。また、支持部材12と保護板9A(
図2を参照)の接触部分が減少するため、支持部材12に対し保護板9Aを容易に取り付けることができる。以上より、コアキャッチャの施工性及びメンテナンス性を向上させることができる。
【0039】
<第2実施形態>
(構成)
図8は、本実施形態に係る格納容器下部空間の概略構成を表す縦断面図である。
図8において、上記第1実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0040】
図8に示すように、本実施形態に係るコアキャッチャ14は、耐熱層11Aを複数積層している点で第1実施形態に係るコアキャッチャ4と異なる。その他の構成は、第1実施形態のコアキャッチャ4と同様である。
【0041】
図8に示すように、本実施形態では、耐熱層(最下層)11A上に第2の耐熱層11Bを積層し、第2の耐熱層11B上に第3の耐熱層(最上層)11Cを積層している。以下、第2,3の耐熱層11B,11Cとの関係で、耐熱層11Aを第1の耐熱層と呼ぶ。
【0042】
第2の耐熱層11Bは、複数の耐熱材ブロック8B、保護板9B及び複数の支持部材10Bを備えている。耐熱材ブロック8B、保護板9B及び支持部材10Bは、第1の耐熱層11Aの耐熱材ブロック8A、保護板9A及び支持部材10Aと同様の構造である。耐熱材ブロック8Bは、下層の第1の耐熱層11Aの保護板9A上に載置されている。支持部材10Bは、上方から見て、下層の第1の耐熱層11Aの支持部材10Aに対して水平一方向(
図8の左右方向)に半ピッチだけずれた位置で、保護板9Aに接地している。
【0043】
第3の耐熱層11Cは、複数の耐熱材ブロック8C、保護板9C及び複数の支持部材10Cを備えている。耐熱材ブロック8C、保護板9C及び支持部材10Cは、第1の耐熱層11Aの耐熱材ブロック8A、保護板9A及び支持部材10Aと同様の構造である。耐熱材ブロック8Cは、下層の第2の耐熱層11Bの保護板9B上に載置されている。支持部材10Cは、上方から見て、下層の第2の耐熱層11Bの支持部材10Bに対して水平一方向に半ピッチだけずれた位置で、保護板9Bに接地している。
【0044】
なお、本実施形態では、支持部材10Bを支持部材10Aに対し水平一方向に半ピッチだけずれた位置に、支持部材10Cを支持部材10Bに対し水平一方向に半ピッチだけずれた位置にそれぞれ設けた場合を例示しているが、支持部材10B,10Cを設ける位置は上述の場合に限定されない。例えば、支持部材10Bを支持部材10Aに対し水平他方向(
図8の紙面に向かう方向)に半ピッチだけずれた位置に設け、支持部材10Cを支持部材10Bに対し水平他方向に半ピッチだけずれた位置に設けても良い。また、支持部材10Bを支持部材10Aに対し水平一及び方向に半ピッチだけずれた位置に設け、支持部材10Cを支持部材10Bに対し水平一及び方向に半ピッチだけずれた位置に設けても良い。
【0045】
(動作)
図9は、本実施形態に係るコアキャッチャにおける動作を説明する図である。
【0046】
圧力容器1の破損部6から落下した炉心溶融物7は、水プール内を下方に落下し、コアキャッチャ14の第3の耐熱層11Cの保護板9Cで受け止められ、保持される。保護板9Cに炉心溶融物7が衝突した際の衝撃荷重は、支持部材10C、第2の耐熱層11Bの保護板9B,支持部材10B、第1の耐熱層11Aの保護板9A,支持部材10Aを介して、耐熱材ブロック8A〜8Cに伝わることなく床面3に伝達される。保護板9Cに保持された炉心溶融物7の保有熱は、保護板9Cの保持部から周辺部に伝わりつつ支持部材9Cを介して耐熱材ブロック8Cに伝わる。また、炉心溶融物7の保有熱は、支持部材10Cから保護板9B,支持部材10Bを介して耐熱材ブロック8Bにも伝わる。更に、炉心溶融物7の保有熱は、支持部材10Bから保護板9A,支持部材10Aを介して耐熱材ブロック8Aにも伝わる。
【0047】
保護板9Cが溶融した後、炉心溶融物7は耐熱材ブロック8Cで受け止められ、保持される。そして、耐熱材ブロック8C上の炉心溶融物7は、例えば、格納容器下部空間2に形成された水プールの冷却水による上部からの冷却と耐熱材への伝熱によって冷却され凝固する。
【0048】
万一、保護板9C及び耐熱材ブロック8Cが炉心溶融物7により溶融した後、炉心溶融物7が未だ凝固していない場合や、圧力容器1の破損部6から再び炉心溶融物7が落下してくる場合には、炉心溶融物7は第2の耐熱層11Bの保護板9B等で受け止められ、保持される。以降、冷却水と耐熱材への伝熱により冷却され凝固する。
【0049】
(比較例)
図10は、比較例の格納容器下部区画の概略構成を表す縦断面図である。
図10において、
図9と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0050】
図10に示すように、比較例のコアキャッチャ14’は、耐熱材ブロック8A〜8Cのみを積層し、保護板9A〜9C及び支持部材10A〜10Cを備えていない。その他の構成は、上述の実施形態に係るコアキャッチャ14と同様である。
【0051】
例えば、圧力容器1の内圧が高い場合、
図10に示すように、圧力容器1の破損部6から勢いよく落下する炉心溶融物7の衝突荷重により、耐熱材ブロック8A〜8Cが飛散する可能性がある。また、炉心溶融物7の落下速度が低い場合でも、高密度の炉心溶融物7により耐熱材ブロック8A〜8Cがペデスタル62側に押し退けられ、炉心溶融物7が床面3に到達する可能性がある。更に、耐熱材ブロック8A〜8Cに割れが生じる可能性もある。
【0052】
(効果)
本実施形態では、第1実施形態と同様の効果に加えて以下の効果が得られる。
【0053】
本実施形態では、第1の耐熱層11A上に第2,3の耐熱層11B,11Cを積層しているので、第3の耐熱層11Cの保護板9Cが炉心溶融物7により溶融した場合でも、下層の第1,2の耐熱層11A,11Bにより炉心溶融物7を受け止めて保持することができる。従って、コアキャッチャの耐熱性能を長期に亘って確保することができ、格納容器41の床面3への炉心溶融物7の侵食をより確実に抑制することができる。
【0054】
また、保護板9Cに保持された炉心溶融物7の保有熱を耐熱材ブロック8A,8Bにも伝えることができるので、炉心溶融物7の保有熱をより拡散させることができる。従って、耐熱材ブロック8Cの温度上昇を緩和させることができる。
【0055】
<第3実施形態>
(構成)
図11は、本実施形態に係る格納容器下部空間の概略構成を表す縦断面図である。
図11において、上記第2実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0056】
図11に示すように、本実施形態に係るコアキャッチャ24は、第1の耐熱層11Aを除く第2,3の耐熱層11B,11Cの支持部材10B,10Cの接地位置が第2実施形態に係るコアキャッチャ14と異なる。その他の構成は、第2実施形態のコアキャッチャ14と同様である。
【0057】
図11に示すように、本実施形態では、支持部材10Bを下層の第1の耐熱層11Aの支持部材10Aに対応する位置で保護板9Aに接地し、支持部材10Cを下層の第2の耐熱層11Bの支持部材10Bに対応する位置で保護板9Bに接地している。つまり、本実施形態では、上方から見て、支持部材10Bを支持部材10Aに対応した位置に配置し、支持部材10Cを支持部材10Bに対応した位置に配置している。
【0058】
(効果)
本実施形態では、第2実施形態と同様の効果に加えて以下の効果が得られる。
【0059】
図8に例示したコアキャッチャ14では、支持部材10Cを支持部材10B間に接地している。そのため、保護板9Bには、炉心溶融物7の自重及び衝撃荷重並びに保護板9C,支持部材10C及び耐熱材ブロック8Cの重量を支持可能な強度が要求される。従って、保護板9Bの厚みを保護板9Cより厚くする必要がある。同様の理由から、保護板9Aの厚みを保護板9Bより厚くする必要がある。
【0060】
これに対し、本実施形態では、支持部材10A,10B,10Cを一直線状に配置している。そのため、保護板9B,9C及び支持部材10B,10Cの重量を支持部材10Aで支持することができ、その分、保護板9A,9Bに要求される強度を軽減させることができる。従って、
図8に例示したコアキャッチャ14に対し、保護板9A,9Bの厚みを抑制することができるので、コアキャッチャの耐熱性能を維持しつつ、製造コストを減少させることができる。
【0061】
<第4実施形態>
(構成)
図12は本実施形態に係る格納容器下部空間の概略構成を表す縦断面図、
図13は
図12のXIII部の拡大図である。
図12,13において、上記第3実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0062】
図12,13に示すように、本実施形態に係るコアキャッチャ34は、支持部材10A〜10Cの代わりに支持部材30を備えている点で、第3実施形態に係るコアキャッチャ24と異なる。その他の構成は、第3実施形態のコアキャッチャ24と同様である。
【0063】
図12は本実施形態に係る格納容器下部空間の概略構成を表す縦断面図、
図13は
図12のXIII部の拡大図である。
図12,13において、上記第3実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0064】
図12,13に示すように、本実施形態に係るコアキャッチャ34は、支持部材10A〜10Cの代わりに支持部材30を備え、第1,2の耐熱層11A,11Bの保護板9A,9Bに孔部19A,19Bが形成されている点で、第3実施形態に係るコアキャッチャ24と異なる。その他の構成は、第3実施形態のコアキャッチャ24と同様である。
【0065】
支持部材30は、一端部が床面3に接地し、他端部が孔部19A,19Bを通り抜けて第3の耐熱層11Cの保護板9Cに連結するように、床面3から上方向に立設している。支持部材30は、断面が円形状に形成された一本の通し柱状の部材であり、第1〜3の耐熱層11A〜11Cで共用されている。
【0066】
支持部材30は、ストッパー(支持部)21A,21Bを備えている。ストッパー21A,21Bは、支持部材30の側壁面から水平方向に突出して設けられている。ストッパー21Aは、ストッパー21Bの下方に設けられている。ストッパー21Aの水平方向の突出長さLaは、ストッパー21Bの水平方向の突出長さLbより長く形成されている。
【0067】
孔部19Aは、内径がストッパー21Bの突出長さLbより長く且つストッパー21Aの突出長さLaより短くなるように形成されている。孔部19Bは、内径がストッパー21Bの突出長さLbより短くなるように形成されている。
【0068】
上述の構成により、例えば、孔部19Aに支持部材30を通して保護板9Aを支持部材30に対して押し下げると、保護板9Aはストッパー21Bを通過し、ストッパー21Aに当接して支持される。次いで、孔部19Bに支持部材30を通して保護板9Bを支持部材30に対して押し下げると、保護板9Bはストッパー21Bに当接して支持される。
【0069】
なお、保護板9Aに孔部19Aを形成し、保護板9Bに孔部19Bを形成する代わりに、保護板9Aを縁部がストッパー21Bを通過してストッパー21Aに掛かるように形成し、保護板9Bを縁部がストッパー21Bに掛かるように形成しても良い。この場合も、上述と同じ手順により保護板9A,9Bを支持部材30に取り付けることができる。
【0070】
(効果)
本実施形態では、第3実施形態と同様の効果に加えて以下の効果が得られる。
【0071】
本実施形態では、第1〜3の耐熱層11A〜11Cを支持部材30により支持している。そのため、耐熱層毎に支持部材を設ける構成に比べて、支持部材30の強度を向上させることができる。それに伴い、炉心溶融物7の衝撃荷重や炉心溶融物7の保有熱による保護板9A〜9Cの変形を抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態では、支持部材30にストッパー21A,21Bを設け、ストッパー21Aの突出長さLaを保護板9Aに形成した孔部19Aの内径より長くし、ストッパー21Bの突出長さLbを孔部19Aより短く且つ保護板9Bに形成した孔部19Bの内径より長くしている。そのため、支持部材30に保護板及び耐熱材ブロックを交互に載置する(つまり、支持部材30に保護板9Aを載置し、保護板9A上に耐熱材ブロック8Bを載置し、支持部材30に保護板9Bを載置し、保護板9B上に耐熱材ブロック8Aを載置し、保護板9Cを取り付ける)だけで第1〜3の耐熱層11A〜11Cを形成することができる。従って、コアキャッチャを容易に組み立てることができ、配置性及びメンテナンス性を向上させることができる。
【0073】
<第5実施形態>
(構成)
図14は本実施形態に係る格納容器下部空間の概略構成を表す縦断面図、
図15は
図14のXV部の拡大図である。
図14,15において、上記第4実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0074】
図14,15に示すように、本実施形態に係るコアキャッチャ44は、支持部材30の代わりに支持部材40を備えている点で、第4実施形態に係るコアキャッチャ34と異なる。その他の構成は、第4実施形態のコアキャッチャ34と同様である。
【0075】
支持部材40は、一端部が床面3に接地し、他端部が孔部20A,20Bを通り抜けて第3の耐熱層11Cの保護板9Cに連結するように、床面3から上方向に立設している。支持部材40は、断面が円形状に形成された一本の通し柱状の部材であり、第1〜3の耐熱層11A〜11Cで共用されている。
【0076】
支持部材40は、第1支持部40A、第2支持部40B及び第3支持部40Cを備えている。第1〜3支持部40A〜40Cは、支持部材40の第1〜3の耐熱層11A〜11Cに対応する部分である。第2支持部40Bの径Tbは、第1支持部40Aの径Taより小さく形成されている。つまり、上方から見て、第2支持部40Bは、第1支持部40Aより断面積が小さくなるように形成されている。第1支持部40Aと第2支持部40Bの境界には、段差部23Aが形成されている。第3支持部40Cの径Tcは、第2支持部40Bの径Tbより小さく形成されている。つまり、上方から見て、第3支持部40Cは、第2支持部40Bより断面積が小さくなるように形成されている。第2支持部40Bと第3支持部40Cの境界には、段差部23Bが形成されている。
【0077】
孔部20Aは、内径が第2支持部40Bの径Tbより長く且つ第1支持部40Aの径Taより短くなるように形成されている。孔部20Bは、内径が第3支持部40Cの径Tcより長く且つ第2支持部40Bの径Tbより短くなるように形成されている。
【0078】
上述の構成により、例えば、孔部20Aに支持部材40を通して保護板9Aを支持部材40に対して押し下げると、保護板9Aは段差部23Bを通過し、段差部23Aに当接して支持される。次いで、孔部20Bに支持部材40を通して保護板9Bを支持部材40に対して押し下げると、保護板9Bは段差部23Bに当接して支持される。
【0079】
なお、保護板9Aに孔部20Aを形成し、保護板9Bに孔部20Bを形成する代わりに、保護板9Aを縁部が段差部23Bを通過して段差部23Aに掛かるように形成し、保護板9Bを縁部が段差部23Bに掛かるように形成しても良い。この場合も、上述と同じ手順により保護板9A,9Bを支持部材40に取り付けることができる。
【0080】
(効果)
本実施形態では、第4実施形態と同様の効果に加えて以下の効果が得られる。
【0081】
本実施形態では、本実施形態では、第1〜3支持部40A〜40Cに要求される強度を満たすように、第1支持部40Aから第3支持部40Cに向かって径を小さくして段差部23A,23Bを形成している。従って、第4実施形態の支持部材30よりも容易に支持部材を加工することができ、更に支持部材の物量を減少させることができる。
【0082】
<第6実施形態>
(構成)
図16は、本実施形態に係る格納容器下部空間の概略構成を表す縦断面図である。
図16において、上記第2実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0083】
図16に示すように、本実施形態に係るコアキャッチャ54は、第1〜3の耐熱層11A〜11Cの支持部材50A〜50Cが床面3まで延在して床面3に接地している点で、第2実施形態に係るコアキャッチャ14と異なる。その他の構成は、第2実施形態のコアキャッチャ14と同様である。
【0084】
支持部材50A〜50Cは、断面が円形状に形成された柱状の部材である。支持部材50Aは、一端部が床面3に接地し、他端部が保護板9Aに連結するように、床面3から上方向に立設している。保護板9Aには、第1の孔部(不図示)及び第2の孔部33Aが形成されている。第1の孔部は支持部材50Bを挿通可能な大きさに形成され、第2の孔部33Aは支持部材50Cを挿通可能な大きさに形成されている。支持部材50Bは、一端部が床面3に接地し、他端部が保護板9Bに連結するように、床面3から保護板9Aに形成された第1の孔部を通り抜けて上方向に立設している。保護板9Bには、孔部33Bが形成されている。孔部33Bは、支持部材50Cを挿通可能な大きさに形成されている。支持部材50Cは、一端部が床面3に接地し、他端部が保護板9Bに連結するように、床面3から第2の孔部33A及び孔部33Bを通り抜けて上方向に立設している。
【0085】
なお、本実施形態では、支持部材50A〜50Cを柱状の部材とした場合を例示しているが、支持部材50A〜50Cを壁状の部材とし、保護板9Aに支持部材50B,50Cを挿通可能なスリット等を形成し、保護板9Bに支持部材50Cを挿通可能なスリット等を形成する構成としても良い。
【0086】
(効果)
本実施形態では、第2実施形態と同様の効果に加えて以下の効果が得られる。
【0087】
本実施形態では、支持部材50A〜50Cの一端部が床面3に接地しているので、支持部材50A,50Bは、炉心溶融物7の自重及び衝突荷重、耐熱材ブロック8B,8C並びに保護板9A,9Bの重量のみを支持可能な強度を有していれば良い。そのため、支持部材50A,50Bの径を床面3に向かって大きくする必要がなく(つまり、支持部材50A,50Bの径を床面3に向かって一様とすることができ)、容易に製造することができる。
【0088】
また、本実施形態では、上層の保護板が炉心溶融物7により溶融するまでは、支持部材40A,40Bには、耐熱材ブロック8B,8C及び構造板9A,9Bの重量のみが掛かる。すなわち、保護板9Cの重量等が掛からない分、支持部材40A,40Bの疲労度を緩和させることができる。
【0089】
<第7実施形態>
(構成)
図17は、本実施形態に係る格納容器下部空間の概略構成を表す縦断面図である。
図17において、上記第3実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0090】
図17に示すように、本実施形態に係るコアキャッチャ64は、床面保護板35を備える点で、第3実施形態に係るコアキャッチャ24と異なる。その他の構成は、第3実施形態のコアキャッチャ24と同様である。
【0091】
床面保護板35は、保護板9A〜9Cと同様の形状に形成され、床面3に載置されている。床面保護板35上に第1〜3の耐熱層11A〜11Cが配置されている。具体的には、第1の耐熱層11Aの支持部材10Aの一端部は、床面3上ではなく床面保護板35に接地している。
【0092】
(効果)
本実施形態では、第3実施形態と同様の効果に加えて以下の効果が得られる。
【0093】
本実施形態では、炉心溶融物7の自重及び衝撃荷重、耐熱材ブロック8A,8B,8C、保護板9A,9B,9C並びに支持部材10A,10B,10Cの重量を床面保護板35に掛けることができるため、床面3に対する面圧を低減させることができる。従って、局所の重量の付加による床面3の破損を回避することができる。
【0094】
また、本実施形態では、第1の耐熱層11Aの支持部材10Aを床面保護板35に接地させているので、床面3に接地させる場合に比べて、接地対象の平面レベルが安定化している。従って、第1〜3の耐熱層11A〜11Cの安定性を向上させることができる。
【0095】
更に、本実施形態では、床面3と第1の耐熱層11Aの間に床面保護板35を設けているため、支持部材10Aから床面保護板35に伝わる炉心溶融物7の保有熱を耐熱材ブロック8Aに伝えることができる。加えて、床面3との接触面積が支持部材10Aに比べて増加するため、床面3への放熱量を増加させることができる。以上より、炉心溶融物7の保有熱をより拡散させることができる。
【0096】
<第8実施形態>
(構成)
図18は、本実施形態に係るコアキャッチャの一構成例の概略構成を表す縦断面図である。
図18において、上記第2実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0097】
図18に示すように、本実施形態に係るコアキャッチャ74は、保護板9A〜9C及び支持部材10A〜10Cに連通孔を形成している点で、第2実施形態に係るコアキャッチャ14と異なる。その他の構成は、第2実施形態のコアキャッチャ14と同様である。
【0098】
過去のシビアアクシデントで得られた知見を基に原子炉の安全機能を強化するアクシデントマネジメント(AM)対策の一例として、格納容器下部区画2に冷却水を注水し、高温で且つ崩壊熱による温度上昇が生じる炉心溶融物7を冷却して格納容器41の破損を回避する方法がある。
【0099】
本実施形態では、上述のAM対策を活用し、保護板9A〜9Cに第1連通孔25を形成し、支持部材10A〜10Cに第2連通孔26を形成している。本実施形態では、第1連通孔25と第2連通孔26を同じ形状に形成している。なお、以下の説明では、支持部材10A〜10Cを水平方向に延在する鉛直姿勢の壁状の部材とし、第1〜3の耐熱層11A〜11Cの耐熱材ブロック8A〜8Cを収容する空間をそれぞれ第1〜第3収容室38A〜38Cとする。
【0100】
第1収容室38Aは、天井面及び底面をそれぞれ保護板9A及び床面3とし、側面を支持部材10A(最外周に位置するものは支持部材10A及びペデスタル62)としている。第2収容室38Bは、天井面及び底面をそれぞれ保護板9B及び保護板9Aとし、側面を支持部材10B(最外周に位置するものは支持部材10B及びペデスタル62)としている。第3収容室39Cは、天井面及び底面をそれぞれ保護板9C及び保護板9Bとし、側面を支持部材10C(最外周に位置するものは支持部材10C及びペデスタル62)としている。
【0101】
保護板9Aに形成された第1連通孔25は、第1収容室38Aと第2収容室38Bを連通している。保護板9Bに形成された第1連通孔25は、第2収容室38Bと第3収容室38Cを連通している。保護板9Cに形成された第1連通孔25Cは、第3収容室38Cと格納容器下部区画2を連通している。支持部材10Aに形成された第2連通孔26は、隣接する第1収容室38A同士を連通している。支持部材10Bに形成された第2連通孔26Bは、隣接する第2収容室38B同士を連通している。支持部材10Cに形成された第2連通孔26は、第3収容室38C同士を連通している。なお、本実施形態では、第1連通孔25と第2連通孔26を同じ形状に形成した場合を例示したが、この場合に限られない。例えば、第1連通孔25を第2連通孔26より大きくしても良い。
【0102】
本実施形態では、格納容器下部区画2に冷却水が注水されると、冷却水は第1連通孔25から第3収容室38Cに流入する。第3収容室38Cに流入した冷却水は、第2連通孔26を介して隣接する第3収容室38Cに流入しつつ、第1連通孔25から第2収容室38Bに流入する。以降、冷却水は第1収容室38Aにも流入し、第1〜3収容室38A〜38Cを満たす。
【0103】
(効果)
本実施形態では、第2実施形態と同様の効果に加えて以下の効果が得られる。
【0104】
本実施形態では、保護板9A〜9Cに第1連通孔25を形成し、支持部材10A〜10Cに第2連通孔26を形成しているので、第1〜3の耐熱層11A〜11C内を冷却水で満たすことができる。そのため、保護板9C上の炉心溶融物7を保護板9Cを介して下部から冷却することができる。また、耐熱材ブロック8A〜8Cを冷却水により冷却することができる。以上より、炉心溶融物7を冷却するための熱容量を増加させることができる。
【0105】
<第9実施形態>
(構成)
図19は、本実施形態に係るコアキャッチャの一部の一構成例の概略構成を表す縦断面図である。
図19において、上記第8実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0106】
図19に示すように、本実施形態に係るコアキャッチャ84は、耐熱材ブロック8Cに縦溝27及び横溝28を形成し、保護板9Cの下面に縦リブ29及び横リブ30を溶着している点で、第8実施形態に係るコアキャッチャ74と異なる。その他の構成は、第2実施形態のコアキャッチャ14と同様である。なお、
図19には1つの耐熱材ブロック9Cを例示しているが、耐熱材ブロック9A,9B及び他の耐熱材ブロック9Cについても同様である。
【0107】
縦溝27は、水平一方向(
図19の左右方向)に間隔をあけて並べて配置されている。縦溝27は、耐熱材ブロック9Cの上面に、耐熱材ブロック9Cの水平他方向(
図19の紙面に向かう方向)に直線状に延在するように形成されている。横溝28は、水平他方向に間隔をあけて並べて配置されている。横溝28は、耐熱材ブロック9Cの上面に、耐熱材ブロック9Cの水平一方向に直線状に延在するように形成されている。縦溝27及び横溝28は、例えば、耐熱材ブロック9Cの上面から底面側(保護板9B側)に向かって耐熱材ブロック9Cを削ることにより形成される。
【0108】
縦リブ29は、水平一方向に間隔をあけて並べて配置されている。縦リブ29は、保護板9Cの下面から下方に縦溝27内まで延在するように保護板9Cの下面に溶着されている。縦リブ29は、縦溝27の側面及び底面に間隙を介して設けられている。横リブ30は、水平他方向に間隔をあけて並べて配置されている。横リブ30は、保護板9Cの下面から下方に横溝28内まで延在するように保護板9Cの下面に溶着されている。横リブ30は、横溝28の側面及び底面に間隙を介して設けられている。縦リブ29と横リブ30は、相互に溶着されている。なお、本実施形態では、縦リブ29及び横リブ30を縦溝27及び横溝28の側面に間隙を介して設けた場合を例示しているが、縦リブ29及び横リブ30を縦溝27及び横溝28の側面に接触するように設けても良い。
【0109】
(効果)
本実施形態では、第8実施形態と同様の効果に加えて以下の効果が得られる。
【0110】
本実施形態では、保護板9Cの下面に縦リブ29及び横リブ30を溶着しているので、保護板9の伝熱面積を増加させ、炉心溶融物7の放熱を促進させることができる。また、炉心溶融物7の保有熱を縦リブ29及び横リブ30を介して耐熱材ブロック8Cに伝えることができる。また、第1連通孔25C及び第2連通孔26Cを介して第3収容室を満たした冷却水との接触面積を増加させることができる。以上より、炉心溶融物7の除熱性能をより向上させることができる。
【0111】
また、本実施形態では、保護板9Cの下面に溶着した縦リブ29と横リブ30を相互に溶着しているので、保護板9と縦リブ29及び横リブ30との拘束により、保護板9の曲げや引っ張り、圧縮に対する強度を向上させることができる。
【0112】
<第10実施形態>
(構成)
図20は、本実施形態に係るコアキャッチャの一構成例の概略構成を表す縦断面図である。
図20において、上記第3実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0113】
図20に示すように、本実施形態に係るコアキャッチャ94は、水冷式コアキャッチャを更に備え、支持部材10Aを床面3に挿入して設けてある点で、第3実施形態に係るコアキャッチャ24と異なる。その他の構成は、第3実施形態のコアキャッチャ24と同様である。なお、特に図示していないが、本実施形態でも、保護板9A〜9Cに第1連通孔25A〜25Cを形成し、支持部材10A〜10Cに第2連通孔26A〜26Cを形成してある(
図18を参照)。
【0114】
本実施形態のコアキャッチャ94は、耐熱材ブロック8A〜8C、保護板9A〜9C及び支持部材10A〜10Cを備える耐熱式コアキャッチャと、給水ヘッダー31、伝熱管32及び流路33を備える水冷式コアキャッチャとを備えている。
【0115】
給水ヘッダー31は、床面3の一部を掘り下げた凹部形状に形成されている。給水ヘッダー31は、第1の耐熱層11A内の冷却水を伝熱管32に供給する機能を有している。伝熱管32は、床面3の下方に設けられ、外側(ペデスタル62側)に向かって上り傾斜で拡がっている。伝熱管32は、流路33に接続し、供給ヘッダー31から供給された冷却水を流路33に導く機能を有している。流路33は、ペデスタル62内を上方向に延在するように設けられている。流路33は、格納容器下部区画2に開口する開口部37を備え、伝熱管32から導かれた冷却水を格納容器下部空間2に放出する機能を有している。
【0116】
支持部材10Aは、床面3を貫通し床面3に挿入して設けられている。支持部材10Aは、一端部が伝熱管32の最下端部(つまり、給水ヘッダー31と伝熱管32の接続部)より下方まで延在して設けられている。
【0117】
図20に例示する構成では、格納容器下部区画2に注水された冷却水により、格納容器下部区画2内に水プールが形成されている。図中のW1は水プールの水面を示している。第1,2連通孔25,26を介して第1の耐熱層11Aに流入した冷却水は、給水ヘッダー31に流下する。給水ヘッダー31から伝熱管32に導かれた冷却水は、流路33に向かって伝熱管32を流れつつ床面3を冷却する。床面3を冷却した冷却水は、格納容器下部区画2内の冷却水との密度差により流路33を上昇して開口部37から格納容器下部区画2内に放出され、循環する。
【0118】
(効果)
本実施形態では、第2実施形態と同様の効果に加えて以下の効果が得られる。
【0119】
本実施形態でも、保護板9A〜9Cに第1連通孔25A〜25Cを形成し、支持部材10A〜10Cに第2連通孔26A〜26Cを形成しているので、第8実施形態と同様の効果が得られる。
【0120】
また、本実施形態では、給水ヘッダー31、伝熱管32及び流路33を備える水冷式コアキャッチャを更に備えているので、コアキャッチャの耐熱性能及び冷却性能を向上させ、格納容器41の床面3への炉心溶融物7の侵食をより確実に抑制して格納容器41の健全性をより高めることができる。一方、耐熱式コアキャッチャは、炉心溶融物7の自重及び衝撃荷重、並びに耐熱材ブロック8A〜8C、保護板9A〜9C及び支持部材10A〜10Cの重量を床面3の上面で受け止めるため、床面3の下方に設けた中空構造の給水ヘッダー31や伝熱管32が床面3からの圧縮荷重により変形、破損等する可能性がある。これに対し、本実施形態では、支持部材10Aの一端部を床面3に挿入して伝熱管32の最下端部よりも下方まで延在して設けているので、給水ヘッダー31や伝熱管32を上述の重量から開放することができる。従って、給水ヘッダー31や伝熱管32の変形、破損等を回避することができる。
【0121】
また、本実施形態のコアキャッチャ94は、耐熱式コアキャッチャに水冷式コアキャッチャを組み合わせ、耐熱式コアキャッチャの床面3に接地する支持部材を水冷式コアキャッチャの伝熱管32の最下端部より下方まで延在させることにより得られる。このように、本実施形態のコアキャッチャ94は、上述の各実施形態の耐熱式コアキャッチャから容易に得ることができる。
【0122】
<その他>
本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加したり、各実施形態の構成の一部を削除することも可能である。
【0123】
上述した第2〜10実施形態では、格納容器41の床面3上に3つの耐熱層を積層した場合を例示した。しかし、本発明の本質的効果は、圧力容器から落下する炉心溶融物等の衝撃荷重から耐熱材を保護し、格納容器の床面への炉心溶融物の侵食を抑制することができるコアキャッチャを提供することであり、この本質的効果を得る限りにおいては、床面3上に積層する耐熱層の層数は限定されない。例えば、2つの耐熱層を積層しても良いし、4つ以上の耐熱層を積層しても良い。
【0124】
また、上述した第8〜10実施形態では、保護板9A〜9Cに第1連通孔25を形成し、支持部材10A〜10Cに第2連通孔26を形成した場合を例示したが、他の実施形態の保護板及び支持部材にも連通孔を形成することは可能である。