特許第6499024号(P6499024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6499024
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】複合型集合住宅
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/04 20060101AFI20190401BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   E04H1/04 A
   E04B1/94 F
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-119637(P2015-119637)
(22)【出願日】2015年6月12日
(65)【公開番号】特開2017-2643(P2017-2643A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2017年9月14日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 那由加
【審査官】 土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−062761(JP,A)
【文献】 特開昭63−156144(JP,A)
【文献】 特開2015−101857(JP,A)
【文献】 特開2013−112995(JP,A)
【文献】 特開平11−182069(JP,A)
【文献】 特開昭61−087063(JP,A)
【文献】 特開昭48−036919(JP,A)
【文献】 特開2013−204324(JP,A)
【文献】 米国特許第06079171(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/04
E04H 9/14
E04B 1/94
E04B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の住戸を有する建物本体の上に傾斜屋根部が設けられた集合住宅であって、
前記建物本体に設けられ、前記傾斜屋根部の直下に配置された一の住戸に隣接し、前記複数の住戸の各玄関に通ずる共用通路と、
前記一の住戸及び前記共用通路の上方に界壁がない状態で設けられ、前記傾斜屋根部を構成する屋根裏空間と、
前記一の住戸及び前記共用通路の上方に設けられた屋根側梁の上に、前記一の住戸及び前記共用通路が設けられた全域にわたって設けられた屋根裏防火材と
を有する集合住宅を第1集合住宅部とし、
前記第1集合住宅部と、当該第1集合住宅部の前記各住戸とは異なる複数の住戸を有する第2集合住宅部とが横方向に並んだ状態で一体化されてなる複合型集合住宅であって、
前記共用通路は、前記第2集合住宅部が有する住戸の各玄関にも通ずる空間であり、
前記第2集合住宅部が有しかつ防火性能を備えた外壁部のうち、前記第1集合住宅部と接続する側の外壁部の外壁高さは、前記第1集合住宅部の前記傾斜屋根部よりも高く設定され、
前記第1集合住宅部の前記傾斜屋根部は、その前記第2集合住宅部の側の端部が前記外壁部に接続されていることを特徴とする複合型集合住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の住戸を有する集合住宅、及び複数の集合住宅が一体化されてなる複合型集合住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の住戸を備えた集合住宅において、最上階にある住戸の上に傾斜屋根部が設けられた構成が知られている(特許文献1参照)。このような傾斜屋根部を有する場合、最上階の住戸と傾斜屋根部の屋根面との間には、屋根裏空間が設けられるのが一般的である。
【0003】
ここで、最上階にある一の住戸と、それに隣接する別の住戸又は各住戸の玄関につながる共用通路が設けられた共用空間等の隣接空間とを有し、当該一の住戸及び隣接空間の上に屋根裏空間が設けられた構成がある。このような構成の場合、最上階の前記一の住戸と前記隣接空間との間には、建築基準法等の法令で定められた基準を満たす仕切り壁が設けられる。そして、屋根裏空間を通じて火が回ることも抑制するため、屋根裏空間にも、前記仕切り壁の上方に界壁が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−285806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、集合住宅において、住戸間や住戸と共用空間との間の延焼抑制に関しては、いまだ改善の余地があった。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、住戸間や住戸と共用空間との間の延焼抑制機能が高められた集合住宅及び複合型の集合住宅を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決すべく、第1の発明では、複数の住戸を有する建物本体の上に傾斜屋根部が設けられた集合住宅であって、前記傾斜屋根部の直下に配置された一の住戸に隣接する隣接空間と、前記一の住戸及び前記隣接空間の上方に設けられ、前記傾斜屋根部を構成する屋根裏空間と、前記一の住戸及び前記隣接空間の天井側に設けられた屋根側梁の上に、前記一の住戸及び前記隣接空間が設けられた全域にわたって設けられた屋根裏防火材とを有することを特徴とする。
【0008】
この第1の発明によれば、屋根裏防火材が屋根側梁の上に設けられているため、仮に一の住戸又は隣接空間で火災が発生しても、その火が屋根裏空間に至ることが抑制される。そのため、屋根裏空間を通じて、一の住戸で発生した火災による火が隣接空間へ回ること、隣接空間で発生した火災による火が一の住戸へ回ることが抑制され、延焼の可能性は低減する。これにより、屋根裏空間において、一の住戸と隣接空間とを仕切る仕切り壁の上方に界壁を設けなくても、延焼抑制を図ることができる。
【0009】
そして、屋根裏空間に界壁を設けなくてもよいとなれば、一の住戸と隣接空間とを仕切る仕切り壁が、平面視において一部折り曲げられてクランク状に形成されるよう場合でも、その仕切り壁の形状に合わせた界壁を屋根裏空間に設ける必要がなくなる。このようなクランク状をなす界壁を屋根裏空間に設けることになれば、同じ屋根裏空間に設けられる束の配置調整が必要となったり、狭い屋根裏空間での界壁設置作業という煩雑な施工が必要となったりするが、それらが不要となる。これにより、屋根裏空間の構成を簡素化することができ、傾斜屋根部の施工性改善も期待できる。
【0010】
第2の発明では、前記隣接空間は、複数の住戸の各玄関に通ずる共用通路が設けられた共用空間であることを特徴とする。
【0011】
この第2の発明によれば、一の住戸と共用空間とを仕切る仕切り壁は、横並びで隣接する住戸間を仕切る仕切り壁よりも、平面視において一部が折り曲げられてクランク状に形成される構成が比較的多い。そのため、隣接空間が共用空間である場合には、屋根裏空間の構成簡素化や傾斜屋根部の施工性改善という第1の発明の効果がより好適となる。
【0012】
第3の発明では、上記第2の発明の集合住宅を第1集合住宅部とし、前記第1集合住宅部と、当該第1集合住宅部の前記各住戸とは異なる複数の住戸を有する第2集合住宅部とが横方向に並んだ状態で一体化されてなる複合型集合住宅であって、前記共用空間は、前記第2集合住宅部が有する住戸の各玄関にも通ずる空間であることを特徴とする。
【0013】
この第3の発明によれば、第1集合住宅部に設けられた共用空間は、第2集合住宅部に設けられた各住戸の玄関に通じているため、第1集合住宅部の共用通路を、複合型集合住宅に設けられた複数の住戸で共用できる。これにより、第2集合住宅部にも独自に共用通路を設ける必要がなくなり、その分、空間を住戸のために利用して、敷地を有効活用できる。
【0014】
第4の発明では、上記第1又は第2の発明の集合住宅を第1集合住宅部とし、前記第1集合住宅部と、当該第1集合住宅部の前記各住戸とは異なる複数の住戸を有する第2集合住宅部とが横方向に並んだ状態で一体化されてなる複合型集合住宅であって、前記第2集合住宅部が有する外壁部のうち、前記第1集合住宅部と接続する側の外壁部の外壁高さは、前記第1集合住宅の前記傾斜屋根部よりも高く設定され、前記第1集合住宅部の前記傾斜屋根部は、その前記第2集合住宅部の側の端部が前記外壁部に接続されていることを特徴とする。
【0015】
この第4の発明によれば、第1集合住宅部の傾斜屋根部が第2集合住宅部の外壁部に接続されているため、第1集合住宅部の屋根裏空間を囲う外壁部の一部を、第2集合住宅部の外壁部と兼用できる。この第2集合住宅部の外壁部は、外壁部としての防火性能を有している。そのため、第1集合住宅部の傾斜屋根部を独立して構成する場合に比べ、延焼抑制の性能を維持しつつ、構成の簡素化や施工性の改善に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】複合型集合住宅の正面側から見た断面図。
図2図1のA−A断面図。
図3】複合型集合住宅の1階間取り図。
図4】複合型集合住宅の2階間取り図。
図5】防火性能を有する部分を示す概略断面図。
図6】防火性能を有する部分を示す1階概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態の複合型集合住宅は、複数の住戸を有する集合住宅部を複数有し、それら複数の集合住宅部が一体化されて一つの建物とされたものである。この複合型集合住宅は、鉄骨軸組構造によって2階建てに構成されたものとして具体化されている。
【0018】
図1は、複合型集合住宅の正面側から見た断面図であり、図2図1のA−A断面図である。なお、図1及び図2に示す断面図では、説明を簡略化するため、構造部分が省略されている部分もある。また、以下で「横方向」という場合は、この図1の状態を基準とした横方向(図1の左右方向)を意味するものとする。
【0019】
図1及び図2に示すように、複合型集合住宅10は、第1集合住宅部11と、第2集合住宅部12との2つの集合住宅部が一体化された建物である。以下、それぞれの集合住宅部11,12ごとに構成を説明する。
【0020】
[第1集合住宅部11]
はじめに、第1集合住宅部11から説明する。図1及び図2に示すように、第1集合住宅部11は、ベタ基礎である第1基礎21と、その第1基礎21の上に設けられた第1建物本体22と、第1建物本体22の上に設けられた第1屋根部23とを有している。
【0021】
第1建物本体22は2階建てであり、1階部分22aと2階部分22bとを有している。また、第1建物本体22は、住戸部30と、共用空間40とを有している。住戸部30と共用空間40とは横方向に並んで設けられており、両者を区画する区画壁部22cは住戸部30と屋外とを区画する外壁部22dと同等の構造となっている。
【0022】
ちなみに、区画壁部22cは、防火性能を有する窯業系サイディング等の外壁材を有して構成されている。また、外壁部22dも、防火性能を有する窯業系サイディング等の外壁材を有して構成されている。
【0023】
まず、住戸部30について、その1階部分22aには第1住戸31が設けられ、2階部分22bには第2住戸32が設けられている。第1住戸31と第2住戸32とは、いずれも同一の床面積かつ同じ間取り構成を有しており、上下に並んで設けられている。第1住戸31と第2住戸32との間には階間部33が設けられている。第2住戸32は、第1屋根部23の直下に設けられた住戸であり、「一の住戸」に相当する。
【0024】
階間部33には、建物躯体を構成する中間梁H1が設けられている。また、第2住戸32の天井側には、同じく建物躯体を構成する屋根側梁H2が設けられている。中間梁H1は、第1基礎21に立設された柱(図示略)によって支持され、屋根側梁H2は、中間梁H1に立設された柱(図示略)によって支持されている。中間梁H1及び屋根側梁H2はそれぞれ複数本よりなり、それらが水平方向に格子状をなすようにして連結されている。
【0025】
第1住戸31の床部31aは、構造用合板等の構造用下地材、フローリング等の床仕上げ材、ポリスチレンフォーム等の断熱材を含んで構成されている。第1住戸31の床下には、ベタ基礎である第1基礎21の平面部分に立設された束T1が設けられており、第1住戸31の床部31aは、第1基礎21及び束T1によって支持されている。
【0026】
第1住戸31の天井部31bは、階間部33に設けられた前記中間梁H1に設けられた吊下げ具T2によって吊下げられている。その天井部31bを構成するのは、軽量鉄骨が組み合わされてなる天井下地フレーム、ロックウール等の断熱材、石膏ボード等の防火性能を有する天井下地材、クロス等の天井仕上げ材等である。
【0027】
図3は、複合型集合住宅10の1階間取り図である。この図3に示すように、第1住戸31は、玄関51、リビングダイニングキッチン(LDK)52、居室53、トイレ54、浴室55、収納空間56等に区画されている。そのうち、玄関51は、住宅最奥側に設けられている。また、住戸部30と共用空間40とを区画する区画壁部22cの一部であり、玄関51への入口51aが設けられる玄関壁部51bは、住戸部30側へ奥まって設けられている。そのため、区画壁部22cは、建物奥側で、平面視において折れ曲がったクランク状をなすように形成されている。
【0028】
図1及び図2に戻り、第2住戸32について、その床部32aは、合板等の下地材、フローリング等の床仕上げ材、石膏ボード等の防火性能を有する床下地材を含んで構成されている。これらによって構成された第2住戸32の床部32aは、階間部33に設けられた前記中間梁H1により支持されている。
【0029】
第2住戸32の天井部32bは、前記屋根側梁H2に設けられた吊下げ具T2によって吊下げられている。その天井部32bを構成するのは、軽量鉄骨が組み合わされてなる天井下地フレーム、グラスウール等の断熱材、石膏ボード等の防火性能を有する天井下地材、クロス等の天井仕上げ材等である。
【0030】
図4は、複合型集合住宅10の2階間取り図である。この図4に示すように、第2住戸32は、玄関61、リビングダイニングキッチン(LDK)62、居室63、トイレ64、浴室65、収納空間66等に区画されている。それらの配置は、第1住戸31と同じとなっている。このため、第2住戸32の玄関61も、第1住戸31の玄関51の直上にあり、住宅最奥側に設けられている。また、住戸部30と共用空間40とを区画する区画壁部22cの一部であり、玄関61への入口61aが設けられる玄関壁部61bも、住戸部30側へ奥まって設けられている。そのため、区画壁部22cは、2階部分22bでも、建物奥側で、平面視において折れ曲がったクランク状をなすように形成されている。
【0031】
次に、共用空間40について説明する。この共用空間40は、「隣接空間」に相当する。図1図3及び図4に示すように、共用空間40は、第1住戸31及び第2住戸32の各玄関51,61に至るための共用廊下としての役割を有している。共用空間40は、住戸部30と横方向に並んで設けられ、区画壁部22cによって住戸部30と区画されている。共用空間40は、第2集合住宅部12が有する区画壁部22cと平行な後述の第1外壁部27cによっても区画されている。さらに、図3及び図4に示すように、住宅正面側に設けられた正面壁部41と、住宅奥側に設けられた奥側壁部42とによっても屋外と区画されている。そのため、共用空間40は、屋内空間となっている。
【0032】
図3に示すように、1階部分22aにおいて、正面壁部41には共用空間40への入口43が設けられ、その入口43の正面側には玄関ポーチ44が設けられている。なお、正面壁部41及び奥側壁部42も、防火性能を有する窯業系サイディング等の外壁材を有して構成されている。
【0033】
この共用空間40には、1階部分22aの共用通路となる1階共用床部45と、2階部分22bの共用通路となる2階共用床部46と、両共用床部45,46をつなぐ階段47とが設けられている。
【0034】
1階共用床部45は、共用空間40の入口43から、住宅最奥側に設けられた第1住戸31の玄関51につながる床構造部分であり、敷設されたコンクリートの表面にタイル貼りなどの仕上げ処理がなされた構成を有している。前述したように玄関壁部51bが住戸部30側へ奥まって設けられているため、第1住戸31の玄関51前では、1階共用床部45が横方向に拡張されている。
【0035】
2階共用床部46は、第2住戸32の玄関61(図4参照。)につながる床構造部分であり、階間部33と同じ高さ位置に設けられている。その構造として、中間梁H1(図示略)を含んで構成されている。2階共用床部46は、第2住戸32の玄関61の前にのみ設けられている。つまり、2階共用床部46は住宅最奥側にのみ設けられており、2階共用床部46の正面側では、共用空間40が1階部分22aと2階部分22bとの上下に空間が連通する吹き抜け空間となっている。この吹き抜けとなった空間に、階段47が設けられている。
【0036】
共用空間40はこのような構成となっているため、吹き抜け部分には中間梁H1が設けられていない一方、屋根側梁H2は、共用空間40の天井部分まで貼り出した状態で設けられている。そして、住戸部30の屋根側(第2住戸32の天井側)及び共用空間40の天井側に設けられた屋根側梁H2の上には、第1建物本体22の屋根側部分全域にわたり、防火性能を有するパーティクルボード等の屋根裏防火材22eが設けられている。この屋根裏防火材22eの防火性能としては、耐火時間45分以上となる準耐火性能を有するものであることが好ましい。
【0037】
共用空間40の天井部40aは、住戸部30から張り出した屋根側梁H2に設けられた吊下げ具T2によって吊下げられている。その天井部40aを構成するのは、軽量鉄骨が組み合わされてなる天井下地フレーム、窯業系サイディング等の防火性能を有する外壁材等である。
【0038】
次に、第1屋根部23について説明する。図1及び図2に示すように、第1屋根部23は、複合型集合住宅10の正面側から奥側に向けて、一方向に下向きに傾斜する片流れの傾斜屋根となっている。このため、第1屋根部23は「傾斜屋根部」に相当する。第1屋根部23は、束71と、垂木フレーム72と、屋根表面仕上げ部73とを有している。
【0039】
束71は屋根側梁H2に立設され、第1屋根部23内に複数設けられている。垂木フレーム72は、片流れとなる第1屋根部23の屋根面を形成するように複数設けられ、束71の上端部に連結されている。これら垂木フレーム72は、束71によって支持されている。これら各束71と各垂木フレーム72によって、第1屋根部23の構造部分が形成されている。屋根表面仕上げ部73は、垂木フレーム72によって形成された屋根面全域に設けられ、野地板等の屋根下地材、アスファルトルーフィン具等の防水下地材、屋根用鋼板等の屋根材等により構成されている。
【0040】
屋根側梁H2と屋根表面仕上げ部73との間に形成された空間は、第2住戸32及び共用空間40の天井裏側に存在する屋根裏空間74となっている。この屋根裏空間74を囲うように、屋根外壁部74aが設けられている。この屋根外壁部74aは、防火性能を有する窯業系サイディング等の外壁材を有して構成されている。
【0041】
[第2集合住宅部12]
次に、第2集合住宅部12について説明する。図1及び図2に示すように、第2集合住宅部12は、第1集合住宅部11と横方向に並んで設けられている。そして、第2集合住宅部12は、ベタ基礎である第2基礎26と、その第2基礎26の上に設けられた第2建物本体27と、第2建物本体27の上に設けられた第2屋根部28とを有している。
【0042】
第2建物本体27は2階建てであり、1階部分27aと2階部分27bとを有している。この第2建物本体27は、第1集合住宅部11の共用空間40に面する第1外壁部27cと、屋内外を区画する第2外壁部27dとを有している。ちなみに、これら外壁部27c,27dは、防火性能を有する窯業系サイディング等の外壁材を有して構成されている。第1外壁部27cは第1集合住宅部11の区画壁部22cと平行をなし、その上端部には、第1集合住宅部11の屋根側梁H2の端部が連結されている。
【0043】
第2建物本体27の1階部分27aには第3住戸36が設けられ、2階部分27bには第4住戸37が設けられている。第3住戸36と第4住戸37とはいずれも同一の床面積かつ同じ間取り構成を有しており、上下に並んで設けられている。第3住戸36と第4住戸37にとの間には階間部38が設けられている。
【0044】
階間部38には、建物躯体を構成する中間梁H3が設けられている。中間梁H3は、第2基礎26に立設された柱(図示略)によって支持されている。中間梁H3は複数本よりなり、それらが水平方向に格子状をなすようにして連結されている。
【0045】
ここで、説明の便宜上、第2屋根部28について先に説明する。図1に示すように、第2屋根部28は、第1屋根部23の傾斜方向と直交する方向であって、第1集合住宅部11側から横方向へ下向きに傾斜する片流れの傾斜屋根となっている。図2に示すように、第2屋根部28の頂上部分は、第1屋根部23の頂上部分よりも高い位置に設けられ、このより高い位置から傾斜している。図1に戻って、第2屋根部28は、垂木フレーム76と、屋根トラス部77と、屋根表面仕上げ部78とを有している。
【0046】
垂木フレーム76は、中間梁H3に立設された柱(図示略)間に架け渡され、片流れとなる第2屋根部28の屋根面を形成するように複数設けられている。屋根トラス部77は、垂木フレーム76の下に設けられ、当該垂木フレーム76と連結されている。この屋根トラス部77の存在により、第2屋根部28の強度が補強されている。この屋根裏空間79を囲うように、屋根外壁部79aが設けられている。屋根表面仕上げ部78は、垂木フレーム76によって形成された屋根面全域に設けられ、野地板等の屋根下地材、アスファルトルーフィン具等の防水下地材、屋根用鋼板等の屋根材等により構成されている。
【0047】
屋根トラス部77が存在する領域は、第4住戸37の天井裏側に存在する屋根裏空間79となっている。この屋根裏空間79を囲うように、屋根外壁部79aが設けられている。前述したように、第2屋根部28のうち、第1集合住宅部11側の最も高い頂上部分は、第1屋根部23より高い位置にあるため、屋根外壁部79aには、第1屋根部23の第2集合住宅部12側が連結されている。
【0048】
なお、この屋根外壁部79aは、防火性能を有する窯業系サイディング等の外壁材を有して構成されている。そして、屋根外壁部79aと第1外壁部27cとで、第2集合住宅部12の外壁部が構成されている。
【0049】
次に、第2建物本体27に設けられた第3住戸36及び第4住戸37について説明する。第3住戸36の床部36aは、構造用合板等の構造用下地材、フローリング等の床仕上げ材、ポリスチレンフォーム等の断熱材を含んで構成されている。第3住戸36の床下には、ベタ基礎である第2基礎26の平面部分に立設された束T3が設けられており、第3住戸36の床部36aは、第2基礎26及び束T3によって支持されている。
【0050】
第3住戸36の天井部36bは、階間部38に設けられた前記中間梁H3に設けられた吊下げ具T4によって吊下げられている。その天井部36bを構成するのは、軽量鉄骨が組み合わされてなる天井下地フレーム、ロックウール等の断熱材、石膏ボード等の防火性能を有する天井下地材、クロス等の天井仕上げ材等である。
【0051】
図3に示すように、第3住戸36は、玄関81、リビングダイニングキッチン(LDK)82、居室83、トイレ84、浴室85等に区画されている。そのうち、玄関81は住宅最奥側に設けられ、第1住戸31の玄関51と向かい合うように配置されている。このように、第1住戸31の玄関51と第3住戸36の玄関81とが向かい合っても設けられているため、玄関51,81への出入りに必要な空間を確保すべく、前述したように、第1住戸31側の玄関壁部51bが奥まって設けられている。
【0052】
次に、第4住戸37について、その床部37aは、合板等の下地材、フローリング等の床仕上げ材、石膏ボード等の防火性能を有する床下地材を含んで構成されている。これらによって構成された第4住戸37の床部37aは、階間部38に設けられた前記中間梁H3により支持されている。
【0053】
第4住戸37の天井部37bは、屋根トラス部77の下端部に設けられた吊下げ具T4によって吊下げられている。その天井部37bを構成するのは、軽量鉄骨が組み合わされてなる天井下地フレーム、グラスウール等の断熱材、石膏ボード等の防火性能を有する天井下地材、クロス等の天井仕上げ材等である。
【0054】
図4に示すように、第4住戸37は、玄関91、リビングダイニングキッチン(LDK)92、居室93、トイレ94、浴室95等に区画されている。それらの配置は、第3住戸36と同じとなっている。このため、第4住戸37の玄関61も、第2住戸32の玄関61と向かい合うように配置されている。ここでも、玄関61,91への出入りに必要な空間を確保すべく、第2住戸32側の玄関壁部61bが奥まって設けられている。
【0055】
また、第4住戸37のLDK92については、第3住戸36のそれと異なり、一部が天井高となるように構成されている。その天井高部分については、図1に示すように、屋根トラス部77が設けられていない。そのため、天井高部分の天井部37bは、垂木フレーム76に設けられた吊下げ具T4によって吊下げられている。
【0056】
[第1集合住宅部11と第2集合住宅部12の一体化]
複合型集合住宅10は、上記のように構成された第1集合住宅部11と第2集合住宅部12とが一体化されている。具体的には、第1集合住宅部11の住戸部30や2階共用床部46に設けられた中間梁H1と、第1集合住宅部11に設けられた屋根側梁H2とが、第2集合住宅部12の第1外壁部27cに連結されている。また、第1集合住宅部11の第1屋根部23の一端側(第2集合住宅部12側)が、第2集合住宅部12の屋根外壁部79aに連結されている。これらの連結によって、第1集合住宅部11と第2集合住宅部12とが一体化され、一つの複合型集合住宅10となっている。
【0057】
そして、この複合型集合住宅10では、各所に防火性能が付与されている。図5は防火性能を有する部分を示す概略断面図であり、図6は防火性能を有する部分を示す1階概略平面図である。この図5及び図6に示すように、複合型集合住宅10のうち、第1集合住宅部11では、区画壁部22c、外壁部22d、屋根外壁部74a、共用空間40の正面壁部41や奥側壁部42で防火対策が施されている。また、各住戸31,32の天井部31b,32b、共用空間40の天井部40a、屋根側梁H2の上に設けられた屋根裏防火材22eによっても、防火対策が施されている。第2集合住宅部12では、第1外壁部27c、第2外壁部27d、屋根外壁部79a、各住戸36,37の天井部36b,37bで防火対策が施されている。
【0058】
[本実施形態による効果]
以上説明した本実施形態の複合型集合住宅10によれば、以下に示す各種の効果を得ることができる。
【0059】
複合型集合住宅10において、第1集合住宅部11では、屋根裏防火材22eが屋根側梁H2の上に設けられているため、仮に第2住戸32又は共用空間40で火災が発生しても、その火が屋根裏空間74に至ることが抑制される。そのため、屋根裏空間74を通じて、第2住戸32で発生した火災の火が共用空間40へ回ること、共用空間40で発生した火災の火が第2住戸32へ回ることが抑制され、延焼の可能性は低減する。これにより、屋根裏空間74において、住戸部30と共用空間40とを区画する区画壁部22cの上方に界壁を設けなくても、延焼抑制を図ることができる。
【0060】
このように屋根裏空間74に界壁を設けなくてもよいとなれば、住戸部30と共用空間40とを区画する区画壁部22cが、玄関壁部51b,61bのところでクランク状に形成されていても、その形状に合わせた界壁を屋根裏空間74に設ける必要がなくなる。屋根裏空間74にクランク状をなす界壁を設けることになれば、同じ屋根裏空間74に設けられる束71の配置調整が必要となったり、狭い屋根裏空間74での界壁設置作業という煩雑な施工が必要となったりするが、それらが不要となる。これにより、屋根裏空間74の構成を簡素化することができ、第1屋根部23の施工性改善も期待できる。
【0061】
特に、上記区画壁部22cのように、各住戸31,32と共用空間40と仕切る仕切り壁は、クランク状に形成される構成が比較的多いため、上記のような界壁非設置の構成を採用することのメリットは大きい。
【0062】
また、複合型集合住宅10において、第1集合住宅部11に設けられた共用空間40は、第2集合住宅部12に設けられた各住戸36,37の玄関81,91に通じている。つまり、共用空間40は、各集合住宅部11,12の設けられた住戸31,32,36,37に共用される。これにより、第2集合住宅部12にも独自に共用空間を設ける必要がなくなり、その分、空間を第3住戸36及び第4住戸37のために利用して、敷地を有効活用できる。
【0063】
第2集合住宅部12において、第1集合住宅部11側の外壁部(第1外壁部27c及び屋根外壁部79a)の外壁高さは、第1集合住宅部11の第1屋根部23よりも高く設定されている。そして、第1屋根部23は、第2集合住宅部12の屋根外壁部79aに接続されている。これにより、第1集合住宅部11の屋根裏空間74は、その囲いの一部が第2集合住宅部12の屋根外壁部79aとなっている。この屋根外壁部79aには、窯業系サイディング等により防火性能を有している。そのため、第1集合住宅部11の第1屋根部23を独立して構成する場合に比べ、延焼抑制の性能を維持しながら、構成の簡素化や施工性の改善を期待できる。
【0064】
[他の実施形態]
(1)上記実施の形態では、第1集合住宅部11において、住戸部30の1階部分22a及び2階部分22bにそれぞれ一つずつの住戸31,32が設けられた構成としたが、同じ階部分に、横並びで複数の住戸が設けられた構成としてもよい。この場合、上記実施形態では共用空間40を隣接空間としていたことに代えて、横並びで設けられた複数の住戸のうち、一の住戸に隣接する他の住戸を隣接空間としてもよい。
【0065】
(2)上記実施の形態では、第1集合住宅部11及び第2集合住宅部12のいずれも2階建ての建物とし、複合型集合住宅10の全体として2階建て建物とした。これに代えて、各集合住宅部11,12のいずれも1階建てとなる平屋の建物であってもよいし、3階建て以上の建物であってもよい。また、第1集合住宅部11と第2集合住宅部12とで、階数が異なっていてもよい。
【0066】
(3)上記実施の形態では、第1集合住宅部11の第1屋根部23及び第2集合住宅部12の第2屋根部28のいずれも片流れの傾斜屋根としたが、切妻屋根等の傾斜屋根であってもよい。また、第2屋根部28に関しては傾斜屋根である必要はなく、陸屋根であってもよい。
【0067】
(4)上記実施の形態では、第2集合住宅部12の各住戸36,37の玄関81,91に至るための空間として、第1集合住宅部11に設けられた共用空間40を利用している。これに代えて、第2集合住宅部12にも、その各住戸36,37に至るための独自の共用空間を設けてもよい。
【0068】
(5)上記実施の形態では、第1集合住宅部11と第2集合住宅部12とが一体化された複合型集合住宅10としたが、第2集合住宅部12を省略し、第1集合住宅部11のみの建物としてもよい。この場合、第1集合住宅部11が一つの「集合住宅」となり、第1建物本体22は「建物本体」に相当する。
【0069】
(6)上記実施の形態では、複合型集合住宅10が鉄骨軸組構造によって構成されているが、木造の在来工法によって構築されてもよいし、複数の建物ユニットが組み合わされてなるユニット式建物によって構築されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10…複合型集合住宅、11…第1集合住宅部(集合住宅)、12…第2集合住宅部、22…第1建物本体(建物本体)、22e…屋根裏防火材、23…第1屋根部(傾斜屋根部)、27c…第1外壁部(外壁部)、31…第1住戸(住戸)、32…第2住戸(一の住戸)、36…第3住戸(住戸)、37…第4住戸(住戸)、40…共用空間(隣接空間)、51,61,81,91…玄関、74…屋根裏空間、79a…屋根外壁部(外壁部)、H2…屋根側梁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6