特許第6499035号(P6499035)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6499035-消火設備 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6499035
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】消火設備
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/11 20060101AFI20190401BHJP
   A62C 35/02 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   A62C35/11
   A62C35/02 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-144906(P2015-144906)
(22)【出願日】2015年7月22日
(65)【公開番号】特開2017-23386(P2017-23386A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伏見 誠
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−213067(JP,A)
【文献】 特開平09−122264(JP,A)
【文献】 特開2005−152291(JP,A)
【文献】 特開2004−130054(JP,A)
【文献】 特開昭58−174777(JP,A)
【文献】 特開平11−197265(JP,A)
【文献】 特開平03−185598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00−99/00,
G08B 17/00,
F16K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火水が貯留される貯水タンクと、
ガス配管を介して前記貯水タンクに接続され、前記貯水タンク内に不活性ガスを導入して前記消火水を加圧する高圧ガスボンベと、
送水管を介して前記貯水タンクに接続され、前記貯水タンクから送水される前記消火水を散水する消火用ヘッドと、を有し、
記貯水タンク内の前記消火水を散水し終えても、前記高圧ガスボンベから前記不活性ガスが継続して供給されて前記消火用ヘッドより噴射され
火設備において、
前記貯水タンクに設けられ、前記貯水タンク内の水位を検出する水位センサと接続されると共に、前記消火用ヘッドが設けられる消火区画の監視をする人検出手段と接続される制御盤と、を有し、
前記水位センサが低水位を検出すると共に、前記人検出手段が人を検出したときに、前記送水管に設けられる遮断弁を閉弁し、前記不活性ガスの噴射を停止することを特徴とする消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消火設備に関し、特にスプリンクラヘッド等の消火用ヘッドを備えた消火設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、スプリンクラ消火設備は、水源である水槽にポンプが設けられており、該ポンプの駆動によって、スプリンクラヘッドまで消火水を送水している。(例えば、特許文献1参照。)
しかし、上記のようなスプリンクラ消火設備では、水槽が大きくなり、ポンプやメイン配管等が必要となるため、広い設置場所の確保やコスト増大等の問題があった。
【0003】
そこで、大きな水槽やポンプを用いない、いわゆるパッケージ型の消火設備がある。その消火設備は、ガスボンベと貯水タンクとが加圧ラインによって接続され、貯水タンクと散水ヘッドとが散水ラインによって接続されている。そして、火災時には、貯水タンクに貯めている消火水を、ガスボンベから送出する不活性ガスによって加圧し、圧力水槽から消火水をスプリンクラヘッドまで送水する。(例えば、特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−197265号公報
【特許文献2】特開平09−239059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2のような消火設備では、水源が貯水タンクの中に貯められている消火水だけであり、火災の規模によっては、消火水が不足する場合が考えられる。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、火災の規模が大きく、消火水が足りなくなったときであっても、消火活動を継続することができる消火設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、消火水が貯留される貯水タンクと、ガス配管を介して貯水タンクに接続され、貯水タンク内にガスを導入して消火水を加圧する高圧ガスボンベと、送水管を介して貯水タンクに接続され、貯水タンクから送水される消火水を散水する消火用ヘッドと、を有する消火設備において、貯水タンク内の消火水を散水し終えても、ガスが継続して供給されて消火用ヘッドより噴射され、消火用ヘッドが設けられる消火区画の監視をする人検出手段が人を感知したとき、ガスの噴射を停止することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、貯水タンク内の消火水を散水し終えても、高圧ガスボンベからガスを貯水タンク内に導入するため、消火用ヘッドから散水をし終えた後も、不活性ガスを噴射するので、消火水の散水だけで消火できなかった火災を消火又は抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る消火設備100の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に基づいて、本発明に係る消火設備100について説明する。
なお、以下の説明において、火災感知器22は火災を感知していないときを通常時又は監視時と称し、消火用ヘッド5は動作前を通常時又は監視時と称するものとする。
【0011】
<消火設備100の構成>
図1を参照して、本発明に係る消火設備100について説明する。消火設備100の各機器は、配管による接続と、信号線による電気的な接続がある。
【0012】
消火設備100は、主に貯水タンク1と、貯水タンク1とガス配管11を介して接続される高圧ガスボンベ10と、貯水タンク1と送水管3を介して接続される消火用ヘッド5と、からなる。
【0013】
貯水タンク1は、内部に消火水が貯留されており、さらに、不活性ガスにより消火水は加圧された状態となっている。また、貯水タンク1には、制御盤2が併設されており、制御盤2が消火設備100の各種制御を行う。
【0014】
制御盤2は、後述する火災受信機20、水位センサ9、接点付圧力計16、人感センサ30等の各種センサから出力される各種信号を受信して、遮断弁7や電磁弁12を制御するものである。
【0015】
水位センサ9は、貯水タンク1内に設けられており、制御盤2と電気的に接続されている。水位センサ9は、貯水タンク1内の水位を監視しており、水位が一定の水位より低下したとき(低水位を検出したとき)に、低水位信号を制御盤2に出力するものである。ここで、低水位とは、例えば、消火用ヘッド5から正常な散水分布を得られなくなる位まで水量が減少したときの水位であり、貯水タンク1内に消火水がほぼなくなった状態のことである。
【0016】
送水管3は、一端が貯水タンク1に接続され、他端が消火用ヘッド5に接続され、貯水タンク2から送水される消火水が消火用ヘッド5に届くまでに通る流路となる。送水管3は、その途中に常時閉の遮断弁7が設けられており、遮断弁7の一次側の送水管3には消火水が加圧充水され、遮断弁7の二次側の送水管3は空配管となっている。
【0017】
遮断弁7は、制御盤2と電気的に接続しており、制御盤2から出力される開弁信号又は閉弁信号を受信して、開弁、閉弁を行うものである。
【0018】
消火用ヘッド5は、例えば、火災により開放する閉鎖型スプリンクラヘッドである。
【0019】
高圧ガスボンベ10は、内部に不活性ガスが高圧状態で封入されている。不活性ガスとは、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素等である
ガス配管11は、一端が貯水タンク1に接続され、他端が高圧ガスボンベ10に接続され、高圧ガスボンベ10から送出される不活性ガスが貯水タンク1に届くまでの流路となる。ガス配管11は、その途中に、高圧ガスボンベ10に近い方から、電磁弁12、圧力調整弁14、接点付圧力計16が設けられる。
【0020】
電磁弁12は、制御盤2と電気的に接続しており、火災時に制御盤2から出力される開放信号を受信して開弁するものである。電磁弁12が開弁すると、高圧ガスボンベ10から送出される不活性ガスが電磁弁12を通過する。
【0021】
圧力調整弁14は、電磁弁12を通過してきた不活性ガスの圧力を使用圧力まで減圧するものである。
【0022】
接点付圧力計16は、ガス配管11内の圧力を計るもので、制御盤2と電気的に接続している。接点付圧力計16は、ガス配管11内が所定の圧力より低下したときに、低圧信号を制御盤2に出力するものである。
【0023】
火災受信機20は、火災感知器22及び発信機24と電気的に接続されていると共に、制御盤2とも電気的に接続している。火災感知器22が火災を感知したとき、又は発信機24が操作されたときには、火災感知器22又は発信機24は火災信号を火災受信機20に出力する。火災信号を受信した火災受信機20は、火災受信信号を制御盤2に出力する。
【0024】
人感センサ30は、消火用ヘッド5が設置される消火区画と同一の区画内に設置されており、制御盤2と電気的に接続している。人感センサ30は、設置される消火区画内の人の存在を監視するものであり、人を感知したとき、人検出信号を制御盤2に出力するものである。
【0025】
<消火設備100の動作及び効果>
図1に基づいて、消火設備100の火災時の動作について説明する。ここでは、火災により火災感知器22又は発信機24が、消火用ヘッド5より先に作動したものとして説明するが、消火用ヘッド5が先に作動したとしても消火設備100の動作に支障はない。
【0026】
先ず、火災によって火災感知器22が作動する、又は火災を見つけた人が発信機24を操作することにより、火災信号が火災受信機20に出力される。火災信号を受信した火災受信機20は、火災受信信号を制御盤2に出力する。
【0027】
次に、火災受信信号を受信した制御盤2は、開弁信号を遮断弁7に出力し、遮断弁7を開弁する。遮断弁7が開弁すると、送水管3の遮断弁7の二次側に消火水が流入し、送水管3は加圧充水される。そして、火災によって消火用ヘッド5が開放されると、消火用ヘッド5は、送水管3内の加圧された消火水を散水する。消火用ヘッド5の散水が開始されると、加圧されている貯水タンク1の貯留水が送水管3を通り、消火用ヘッド5まで供給され、消火水にかかる圧力が低下する。
【0028】
次に、貯水タンク1内の圧力が所定の圧力より低下すると、接点付圧力計16から制御盤2に低圧信号を出力する。低圧信号を受信した制御盤2は、電磁弁12に開放信号を出力して、電磁弁12を開弁させる。すると、高圧ガスボンベ10から圧力調整弁14により所定の圧力に調圧された不活性ガスが、ガス配管11を通り、貯水タンク1内に導入される。これにより、貯水タンク1内の消火水が加圧されるので、送水管3に消火水が供給され消火用ヘッド5から散水を継続することができる。
【0029】
最後に、貯水タンク1内の消火水を散水し終えたとき、高圧ガスボンベ10から不活性ガスの供給は継続され、送水管3を介して消火用ヘッド3から不活性ガスを噴射する。即ち、高圧ガスボンベ10は、貯水タンク1内の消火水を全て放出しても余る量の不活性ガスを有している。これにより、消火水を散水し終えたときに、火災が継続していたとしても、不活性ガスの噴射により火災を抑制、消火することができる。
【0030】
なお、貯水タンク1内の消火水を散水し終えたとき、水位センサ9により低水位信号が制御盤2に出力される。また、消火用ヘッド5及び人感センサ30が設けられる消火区画に人が居た場合、人感センサ30から人検出信号が制御盤2に出力される。制御盤2は、水位センサ9が出力する低水位信号と、人感センサ30が出力する人検出信号を受信すると、遮断弁7に閉弁信号を出力し、遮断弁7を閉弁させる。これにより、貯水タンク1の消火水を全て散水した後、高圧ガスボンベ10の不活性ガスを噴射しているときに、人が存在した場合、不活性ガスの噴射を停止し、人を窒息させないようにすることができる。
【0031】
以上のように、本発明の実施の形態によれば、本発明は、以下の構成を備えたものである。
(1)本発明は、消火水が貯留される貯水タンク1と、ガス配管11を介して貯水タンク1に接続され、貯水タンク1内に不活性ガスを導入して消火水を加圧する高圧ガスボンベ10と、送水管3を介して貯水タンク1に接続され、貯水タンク1から送水される消火水を散水する消火用ヘッド5と、を有する消火設備100において、貯水タンク1内の消火水を散水し終えても、高圧ガスボンベ10から不活性ガスを貯水タンク1内に導入することを特徴とするものである。
【0032】
(2)また、本発明は(1)において、火災受信機20を備え、該火災受信機20から出力される火災受信信号により、送水管3に設けられる常時閉の遮断弁7を開放することを特徴とするものである。
【0033】
(3)また、本発明は(2)において、火災受信機20の火災受信信号の出力と、消火用ヘッド5の感熱動作とにより、消火用ヘッド5から散水することを特徴とするものである。
【0034】
(4)また、本発明は(2)又は(3)において、貯水タンク1に設けられる制御盤2は、貯水タンク1内の水位を検出する水位センサ9と、消火用ヘッド5が設けられる消火区画の監視をする人検出手段(人感センサ30等)と接続し、水位センサ9が低水位を検出すると共に、人検出手段が人を検出したときに、遮断弁7を閉止することを特徴とするものである。
【0035】
上記の構成を備えたことにより、本発明に係る消火設備100は、貯水タンク1内の消火水を散水し終えても、高圧ガスボンベ10から不活性ガスを貯水タンク1内に導入するため、消火用ヘッド5から消火水を散水し終えた後も、不活性ガスを噴射するので、消火水の散水だけで消火できなかった火災を消火することができる。
【0036】
また、消火区画に人が存在した場合、人感センサ30等の人検出手段と水位センサ9により遮断弁7を閉弁するので、人が窒息することがない。
【0037】
なお、制御盤2は、人感センサ30が出力する人検出信号と水位センサ9が出力する低水位信号とを受信すると、遮断弁7を閉弁するとして説明したが、人がいる可能性がない消火区画であれば、遮断弁7を閉じる必要がなく、人感センサ30及び水位センサ9を設けなくても良い。この場合、貯水タンク1内の消火水を全て散水し終えても、消火用ヘッド5から高圧ガスボンベ10内の不活性ガスを全て放出できるので、消火効率が向上する。
【0038】
また、人感センサ30の代わりに、赤外線カメラ等で人検出信号を出力しても良い。
また、不活性ガスが二酸化炭素の場合、消火設備100に二酸化炭素濃度計をさらに設け、二酸化炭素濃度が一定値より高まった場合に遮断弁7を閉弁しても良い。
【0039】
また、制御盤2は、火災受信機20が出力する火災受信信号を受信して、遮断弁7を開弁するとして説明したが、それに加えて電磁弁12を開弁しても良い。その場合、接点付圧力計16を設ける必要はなくなる。
【符号の説明】
【0040】
1 貯水タンク、2 制御盤、3 送水管、5 消火用ヘッド、7 遮断弁、9 水位センサ、10 高圧ガスボンベ、11 ガス配管、12 電磁弁、14 圧力調整弁、16 接点付圧力計、20 火災受信機、22 火災感知器、24 発信機、30 人感センサ、100 消火設備。
図1