特許第6499069号(P6499069)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6499069遊動式の釣糸ガイド、当該釣糸ガイドの製造方法、及び当該釣糸ガイドを備えた釣竿
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6499069
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】遊動式の釣糸ガイド、当該釣糸ガイドの製造方法、及び当該釣糸ガイドを備えた釣竿
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/04 20060101AFI20190401BHJP
【FI】
   A01K87/04 E
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-249800(P2015-249800)
(22)【出願日】2015年12月22日
(65)【公開番号】特開2017-112868(P2017-112868A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】川村 拓司
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 英二
(72)【発明者】
【氏名】及川 勝広
【審査官】 中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−166842(JP,A)
【文献】 実開昭52−168892(JP,U)
【文献】 実開昭55−178375(JP,U)
【文献】 米国特許第05361529(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/00−87/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
竿体にその長手方向において前後に遊動可能に設けられ、前記長手方向の後方へ所定の目的位置までスライドすることにより、当該目的位置において前記竿体に圧着される遊動式の釣糸ガイドであって、
釣糸が挿通されるガイドリングと、
前記ガイドリングを保持するガイド本体と、を備え、
前記ガイド本体は、前記ガイドリングが取り付けられるリング保持部と、前記竿体が挿通可能な貫通孔が形成された取付部と、前記リング保持部の下端と前記取付部の第1の領域とを接続するフレームと、を有し、
前記竿体は、前記長手方向の前方向に先細りとなるテーパー形状を有し、
前記貫通孔を画定する前記取付部の内周面は、前記貫通孔の軸線方向に対して第1の傾斜角を有する第1の内周面と、前記第1の傾斜角よりも小さな第2の傾斜角を有する第2の内周面と、を有し、
前記第1の傾斜角は、前記竿体の外表面の前記目的位置における前記軸線方向に対する傾斜角よりも大きく、
前記第2の傾斜角は、前記竿体の外表面の前記目的位置における前記軸線方向に対する傾斜角と一致しており、
前記第2の内周面の少なくとも一部が前記第1の領域に配されている、釣糸ガイド。
【請求項2】
竿体にその長手方向において前後に遊動可能に設けられ、前記長手方向の後方へ所定の目的位置までスライドすることにより、当該目的位置において前記竿体に圧着される遊動式の釣糸ガイドであって、
釣糸が挿通されるガイドリングと、
前記ガイドリングを保持するガイド本体と、を備え、
前記ガイド本体は、前記ガイドリングが取り付けられるリング保持部と、前記竿体が挿通可能な貫通孔が形成された取付部と、前記リング保持部の下端と前記取付部の第1の領域とを接続するフレームと、を有し、
前記貫通孔を画定する前記取付部の内周面は、第1の径を有する第1の内周面と、前記第1の径よりも小さな第2の径を有する第2の内周面と、を有し、
前記取付部の前記内周面の前記第2の径は、前記竿体の前記目的位置における外周面の径と一致しており、
前記第2の内周面の少なくとも一部が前記第1の領域に配されている、釣糸ガイド。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の釣糸ガイドを備える釣竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竿体の長手方向に遊動可能な遊動式の釣糸ガイド、当該釣糸ガイドの製造方法、及び当該釣糸ガイドを備えた釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
釣竿は、細長い竿体と、当該竿体に取り付けられてリールから当該竿体の先端まで釣糸を案内する釣糸ガイドとを備える。釣糸ガイドには、竿体の外表面に接着等により固定される固定式のものと、竿体に遊動自在に嵌め込まれる遊動式のものとがある。竿体に遊動自在に嵌め込まれる遊動式の釣糸ガイドは、単に遊動ガイドと呼ばれることもある。
【0003】
従来の遊動ガイドは、例えば、特開2011−010578号公報、特開2011−010577号公報、特開2010−104264号公報、特開2004−187579号公報、特開2004−000273号公報、特開2003−284455号公報、特開2003−274809号公報、及び特開2003−047371号公報に開示されている。
【0004】
これらの公知文献に記載されているように、従来の一般的な遊動ガイドは、硬質のガイドリングと、当該ガイドリングを保持するための樹脂製のガイド本体とを備える。ガイド本体は、竿体が挿通される筒状の取付部と、当該取付部に連続しガイドリングを嵌め込むための貫通孔が形成されたリング保持部と、この取付部とリング保持部とを接続する板状のフレームとを有する。この遊動ガイドは、釣竿の運搬時等の未使用時には取付部を介して竿体に緩く嵌め込まれている。釣竿の使用時には、この緩く嵌め込まれている遊動ガイドを竿体に沿って手元側に移動させる。竿体は、手元側が太くなるように形成されているので、遊動ガイドを竿体の所定の取付位置まで移動させると、遊動ガイドの取付部を竿体と固く嵌め合わせることができる。このように、遊動ガイドは、竿体の長手方向に遊動自在に移動できるように竿体に取り付けられており、使用時に竿体の所定の位置に固く嵌め合わされる。
【0005】
特開2000−14280号公報に示されているように、遊動ガイドを竿体の目的位置へスライドさせるときに、その取付部に大きな応力が発生することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−010578号公報
【特許文献2】特開2011−010577号公報
【特許文献3】特開2010−104264号公報
【特許文献4】特開2004−187579号公報
【特許文献5】特開2004−000273号公報
【特許文献6】特開2003−284455号公報
【特許文献7】特開2003−274809号公報
【特許文献8】特開2003−047371号公報
【特許文献9】特開2000−014280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
遊動ガイドの取付部に大きな応力が作用すると、当該取付部が破壊されるおそれがある。そこで、遊動ガイドを竿体の目的位置へスライドさせるときに取付部が破壊されにくくするための改善が望まれる。
【0008】
本発明の目的の一つは、遊動ガイドを竿体の目的位置へスライドさせるときに取付部が破壊されにくくするための改善を提供することである。本発明のこれ以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、竿体にその長手方向において前後に遊動可能に設けられ、前記長手方向の後方へ所定の目的位置までスライドすることにより、当該目的位置において前記竿体に圧着される遊動式の釣糸ガイドに関する。竿体は、前記長手方向の前方向に先細りとなるテーパー形状を有する。当該釣糸ガイドは、釣糸が挿通されるガイドリングと、前記ガイドリングを保持するガイド本体と、を備える。このガイド本体は、前記ガイドリングが取り付けられるリング保持部と、前記竿体が挿通可能な貫通孔が形成された取付部と、前記リング保持部の下端と前記取付部の第1の領域とを接続するフレームと、を有する。取付部の第1の領域は、当該取付部の軸方向における一部の領域を意味する。取付部の軸方向は、当該取付部に形成された貫通孔の軸方向を意味し、当該貫通孔に挿通された竿体の軸方向とほぼ一致する。
【0010】
本発明の一態様において、前記貫通孔を画定する前記取付部の内周面は、前記貫通孔の軸線方向に対して第1の傾斜角を有する第1の内周面と、前記第1の傾斜角よりも小さな第2の傾斜角を有する第2の内周面と、を有する。前記第2の内周面は、少なくともその一部が前記第1の領域に配されている。この第1の傾斜角は、前記竿体の外表面の前記目的位置における前記軸線方向に対する傾斜角よりも大きく、この第2の傾斜角は、前記竿体の外表面の前記目的位置における傾斜角と一致している。本発明において、この第2の傾斜角は、前記竿体の外表面の前記目的位置における傾斜角と厳密に一致することは必要とされない。例えば、第2の内周面の第2の傾斜角と竿体の外表面の目的位置における傾斜角との間に僅かなずれがあったとしても、釣糸ガイドを竿体の目的位置までスライドさせたときに当該目的位置において取付部の内周面が竿体の外周面に圧着され竿体に対する移動が規制されていれば、その第2の傾斜角と竿体の外表面の目的位置における傾斜角とは一致していると考えることができる。第2の内周面の第2の傾斜角と竿体の外表面の目的位置における傾斜角との間に、例えば、0.5度以内、0.3度以内、0.1度以内、または0.05度以内のずれがあっても、両者は一致していると考えることができる。
【0011】
当該態様によれば、釣糸ガイドを竿体の目的位置までスライドさせたときに、前記第1の領域に配されている第2の内周面が竿体の外周面と接触する一方、第1の内周面は竿体と接触しない。よって、当該態様によれば、取付部のうち強度が高い第1の領域で竿体からの応力を受けることができるので、釣糸ガイドの竿体への取付時に取付部が破壊されにくい。
【0012】
本発明の一態様において、前記貫通孔を画定する前記取付部の内周面は、第1の径を有する第1の内周面と、前記第1の径よりも小さな第2の径を有する第2の内周面と、を有する。前記取付部の前記内周面の前記第2の径は、前記竿体の前記目的位置における外周面の径と一致している。前記第2の内周面は、その少なくとも一部が前記第1の領域に配されている。
【0013】
当該態様によれば、釣糸ガイドを竿体の目的位置までスライドさせたときに、当該第2の内周面が竿体の外周面と接触する一方、第1の内周面は竿体と接触しない。よって、当該態様によれば、取付部のうち強度が高い第1の領域で竿体からの応力を受けることができるので、釣糸ガイドの竿体への取付時に取付部が破壊されにくい。
【0014】
本発明の一態様において、前記貫通孔を画定する前記取付部の内周面は、前記竿体の後方に向かって拡径する第1の内周面と、前記竿体の前方に向かって拡径する第2の内周面と、を有する。前記第1の内周面は、前記貫通孔の軸線方向に対して第1の傾斜角だけ傾いている。前記第1の傾斜角は、前記竿体の外表面の前記目的位置における前記軸線方向に対する傾斜角よりも大きく、前記取付部の前記内周面の前記境界における径は、前記竿体の前記目的位置における外周面の径と一致している。前記第1の内周面と前記第2の内周面との境界が前記第1の領域に配されている。
【0015】
当該態様によれば、釣糸ガイドを竿体の目的位置までスライドさせたときに、前記取付部の内周面は、前記第1の内周面と前記第2の内周面との境界付近で竿体の外周面と接触する一方、第1の内周面の大部分は竿体と接触しない。よって、当該態様によれば、取付部のうち強度が高い第1の領域で竿体からの応力を受けることができるので、釣糸ガイドの竿体への取付時に取付部が破壊されにくい。
【0016】
本発明の一態様においては、前記取付部の前記貫通孔を画定する内周面には、前記貫通孔の周方向に延伸するリング状の突起が形成されている。前記貫通孔の径は、前記突起の位置において、前記竿体の前記目的位置における外周面の径と一致している。また、当該取付部の内周面は、前記突起よりも後方における径が前記竿体の前記目的位置における外周面の径よりも大きくなるように形成されている。前記突起は前記第1の領域に配されている。
【0017】
当該態様によれば、釣糸ガイドを竿体の目的位置までスライドさせたときに、前記取付部の内周面に形成された突起が竿体の外周面と接触する一方、取付部の内周面の突起以外の部分は竿体と接触しない。よって、当該態様によれば、取付部のうち強度が高い第1の領域で竿体からの応力を受けることができるので、釣糸ガイドの竿体への取付時に取付部が破壊されにくい。
【0018】
本発明において、前記取付部の前記内周面の前記境界における径と前記竿体の前記目的位置における外周面の径とが厳密に一致することは必要とされない。また、本発明において、前記取付部の内周面の前記突起における径と、前記竿体の前記目的位置における外周面の径とが厳密に一致することは必要とされない。取付部は樹脂等の弾性変形する材料で形成されるので、前記取付部の前記内周面の前記境界における径及び前記取付部の内周面の前記突起における径は、前記竿体の前記目的位置における外周面の径よりも若干小さくても、取付部が弾性変形することにより、釣糸ガイドが竿体の目的位置までスライドできる程度であれば構わない。例えば、前記取付部の前記内周面の前記境界における径や前記取付部の内周面の前記突起における径が、前記竿体の前記目的位置における外周面の径より例えば0.1mm、0.05mm、0.03mm、または0.01mm小さくても、両者は一致していると考えることができる。
【0019】
本発明の一態様は、釣糸ガイドを備える釣竿に関する。当該釣竿は、本発明の様々な態様に係る釣竿ガイドを備えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の様々な実施形態により、遊動ガイドを竿体の目的位置へスライドさせるときに取付部が破壊されにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る釣竿の構成を示す側面図。
図2】本発明の一実施形態に係る釣糸ガイドの正面図
図3図1に示した釣糸ガイドの側面図
図4図1に示した釣糸ガイドの断面図。図4においては、釣糸ガイド10の貫通孔18に竿体5が挿通され、釣糸ガイド10が竿体5の目的位置までスライドされている。
図5】本発明の一実施形態に係る釣糸ガイドの側面図
図6】本発明の一実施形態に係る釣糸ガイドの側面図
図7】本発明の一実施形態に係る釣糸ガイドの側面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の様々な実施形態を適宜図面を参照して説明する。共通する構成要素には複数の図面をまたがって同一の参照符号が付されている。各図面は、便宜上、必ずしも同一の縮尺により示されているとは限らない点に留意されたい。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る釣糸ガイド10を備える本発明の一実施形態に係る釣竿1の外観図である。図示の実施形態において、釣竿1は、手元竿3と、複数(図1の例では3本)の中竿5と、穂先竿7と、を有する振り出し式の釣竿である。釣竿1の不使用時においては、中竿5及び穂先竿7が中空の手元竿3に収納される。
【0024】
手元竿3、中竿5、及び穂先竿7は、例えば、炭素繊維に合成樹脂を含浸したプリプレグシート等を用いて形成され得る。また、手元竿3、中竿5、及び穂先竿7は、それぞれ穂先方向に先細りとなるテーパー形状を有する。釣竿1はあくまで例示であり、本発明の釣糸ガイドは、遊動式の釣糸ガイドが用いられる任意の釣竿とともに用いられ得る。
【0025】
中竿5及び穂先竿7の外周面には、リールRから繰り出される釣糸を釣竿1の穂先まで案内する複数の釣糸ガイド10が設けられている。当該釣糸ガイド10は、遊動式の釣糸ガイドである。この釣糸ガイド10は、竿体5又は竿体7にその長手方向において前後に遊動可能に設けられる。釣糸ガイド10は、前記長手方向の後方(つまり、手元側)の目的位置までスライドすると、竿体5又は竿体7の外表面に圧着される。このように、釣糸ガイドは、その使用時には、竿体5又は竿体7の目的位置に、当該竿体5又は竿体7に対して軸方向への移動や軸周りでの回転が規制された状態で配置される。竿体5、7(中竿5及び穂先竿7)が手元竿3に収納されるときには、遊動式の釣糸ガイド10は、竿体の穂先側端部に移動させられる。
【0026】
図2は、一実施形態における釣糸ガイド10の正面図であり、図3は、釣糸ガイド10の側面図である。図3に示されている前後方向において、図2は、後側(釣糸ガイド10を竿体に取り付けた場合における手元側)から釣糸ガイド10を見た図を示している。図2及び3においては、竿体5、7を省略している。
【0027】
釣糸ガイド10は、図示するように、ガイド本体11と、このガイド本体11に取り付けられる環状のガイドリング12と、を備える。このガイド本体11は、ガイドリング12を保持するためのほぼ環状のリング保持部13と、筒状の取付部14と、このリング保持部13の下端と取付部14とを接続するフレーム16と、を備える。図示のように、リング保持部13には貫通孔15(ガイド孔15ということもある。)が形成されている。このガイド孔15は、リング保持部13の内周面13cによって画定される。取付部14には竿体5,7の軸方向(前後方向)に沿って延びる貫通孔18が形成されている。貫通孔18は、取付部14の内周面14cによって画定される。貫通孔18には竿体5,7が挿通される。
【0028】
ガイドリング12は、容易に摩耗せず、また、内側に通されて摺動する釣糸に対する摩擦力が小さくなるように、例えば、チタン、アルミニウム、SUS、セラミックスなどの硬質材料によって形成される。
【0029】
フレーム16は概ね板状に形成されており、取付部14の上部から概ね上方に向かって延伸する。図示の例において、フレーム16は、その後面16bが取付部14からやや前方(穂先側)に向かって傾斜する方向に延びている一方、その前面16aが取付部14から竿体の軸方向と垂直な方向に延伸している。フレーム16は、その全体が竿体の軸方向と垂直な方向に延伸するように構成されてもよい。
【0030】
図3に示されているように、フレーム16は、取付部14のうち第1の領域Rと接続される。この第1の領域Rは、取付部14のうち、その軸線方向(仮想線Lの延伸方向)において所定の幅を有する領域である。第1の領域Rは、図3に示すように、取付部14の軸線方向の中央付近に配されていてもよい。図3に示した第1の領域Rの配置及び寸法は例示に過ぎず、第1の領域Rは、取付部14の軸線方向の様々な位置に配される。例えば、第1の領域Rは、取付部14の軸線方向の後端に一定の幅を有するように設けられても良い。この場合、フレーム16は、取付部14の後端付近とリング保持部13の下端とを接続するように設けられる。他の態様において、第1の領域Rは、取付部14の軸線方向の前端に一定の幅を有するように設けられても良い。この場合、フレーム16は、取付部14の前端付近とリング保持部13の下端とを接続するように設けられる。
【0031】
取付部14には、上述したように貫通孔18が形成されており、この貫通孔18に竿体5,7が通される。図3に示すように、この貫通孔18を画定する取付部14の内周面は、取付部14(貫通孔18)の軸線方向(仮想線Lの延伸方向)に対して第1の傾斜角を有する第1の内周面14c1と、前記第1の傾斜角よりも小さな第2の傾斜角を有する第2の内周面14c2と、を有する。取付部14又は貫通孔18の軸線方向は、貫通孔18に竿体(例えば、竿体5又は竿体7)が挿通されたときには、当該竿体の軸方向とほぼ一致する。
【0032】
貫通孔18は、テーパーリーマー等の工具を用いて所定のテーパー角を有するように加工される。具体的には、第1の内周面14c1の第1の傾斜角に相当する角度を有するテーパーリーマーを用いて第1の内周面14c1を形成したのち、第2の内周面14c2の第2の傾斜角に相当する角度を有するテーパーリーマーを用いて第2の内周面14c2を形成することができる。取付部14の貫通孔18を画定する内周面14cには、釣糸ガイド10の軸方向(竿体5、7の長手方向)に沿って延伸する複数の凸条(不図示)を形成してもよい。かかる凸条により、釣糸ガイド10が竿体5、7の周方向へ不用意に回転することを抑制できる。
【0033】
図3に示した実施形態においては、第2の内周面14c2の一部、具体的には第2の内周面14c2の後側の部分が前記第1の領域Rに配されている。他の実施形態においては、第2の内周面14c2全体が第1の領域Rに配されていても良い。例えば、第1の領域Rを取付部14の前端面14aまで延ばすことにより、第2の内周面14c2全体を第1の領域Rに配することができる。
【0034】
図4を参照して、貫通孔18を画定する第1の内周面14c1及び第2の内周面14c2と、竿体の外周面との関係について説明する。図示のように、貫通孔18は、取付部14の軸線方向に対する第1の内周面14c1の傾斜角(第1の傾斜角)が、取付部14の軸線方向に対する竿体5の外表面の傾斜角よりも大きくなるように形成される。これにより、貫通孔18に竿体(例えば竿体5又は竿体7)を挿通した状態で、上記の釣糸ガイド10を当該竿体の後方(手元側)へスライドさせると、大径の第1の内周面14c1は当該竿体と接触しない。
【0035】
また、貫通孔18は、取付部14の軸線方向に対する第2の内周面14c2の第2の傾斜角が、取付部14の軸線方向に対する竿体5の外表面の傾斜角と一致するように形成される。ここで、竿体5の外表面の傾斜角は、例えば、釣糸ガイド10が圧着される竿体5の目的位置における傾斜角を意味する。これにより、竿体の目的位置まで釣糸ガイド10を押し込むと、取付部14は図4に示すように第2の内周面14c2を介して竿体5の外表面に圧着される。上述したように、第2の内周面の第2の傾斜角と竿体の外表面の目的位置における傾斜角との間に例えば、0.5度以内、0.3度以内、0.1度以内、または0.05度以内のずれがあっても、釣糸ガイド10を竿体5の目的位置までスライドさせたときに、取付部14の内周面14cが竿体5の外周面に圧着され、釣糸ガイド10の竿体5に対する移動が規制されていれば、両者は一致していると考えることができる。
【0036】
当該実施形態において、この内周面14c1は、取付部14の第1の領域Rに配されているので、釣糸ガイド10を竿体後方へスライドさせるときに竿体から取付部14への応力は、取付部14のうち第1の領域Rに集中して作用する。この第1の領域Rにはフレーム16が接続されているので、取付部14は、第1の領域Rにおいて他の領域よりも強度が高くなっている。よって、釣糸ガイド10を竿体の目的位置に取り付けるときに、取付部14のうち強度が高い第1の領域Rで竿体からの応力を受けることができるので、この釣糸ガイド10は、竿体への取付時に破壊されにくい。
【0037】
次に、図5を参照して、本発明の他の実施形態に係る釣糸ガイド20について説明する。この釣糸ガイド20は、取付部の内周面の形状以外は、上述した釣糸ガイド10と同様に構成することができる。
【0038】
図5に示すように、貫通孔18を画定する取付部14の内周面14cは、第1の径を有する第1の内周面24c1と、この第1の径よりも小さな第2の径を有する第2の内周面24c2と、を有する。貫通孔18は、この取付部14の第2の内周面24c2における第2の径が、竿体の外周面の径と一致するように形成される。例えば、内周面24c2の第2の径は、竿体における当該釣糸ガイド20の取り付け位置(目的位置)において、当該竿体の外周面の径と一致する。この場合、当該竿体は、目的位置において緩やかなテーパー角を有することが望ましい。これにより、釣糸ガイド20を竿体の目的位置にスライドさせたときに、当該竿体を当該釣糸ガイド20の内周面24c2に押し込みやすくなる。図5に示すように、第2の内周面24c2の少なくとも一部は、第1の領域Rに配される。
【0039】
当該態様によれば、釣糸ガイド20を竿体の目的位置までスライドさせたときに、当該第2の内周面24c2が竿体の外周面と接触する一方、第1の内周面24c1は竿体と接触しない。よって、当該態様によれば、取付部14のうち強度が高い第1の領域Rで竿体からの応力を受けることができるので、釣糸ガイド20の竿体への取付時に取付部14が破壊されにくい。
【0040】
次に、図6を参照して、本発明の他の実施形態に係る釣糸ガイド30について説明する。この釣糸ガイド30は、取付部の内周面の形状以外は、上述した釣糸ガイド10と同様に構成することができる。
【0041】
図6に示すように、貫通孔18を画定する取付部14の内周面14cは、竿体の後方に向かって拡径する第1の内周面34c1と、当該竿体の前方に向かって拡径する第2の内周面34c2とを有する。第1の内周面34c1は、貫通孔18の軸線方向に対して第1の傾斜角だけ傾いている。第1の内周面34c1の第1の傾斜角は、釣糸ガイド10に形成されている内周面14c1の第1の傾斜角と同様に、取付部14の軸線方向に対する竿体5の外表面の傾斜角よりも大きくなるように形成される。この実施形態において、貫通孔18は、取付部14の内周面14cの第1の内周面34c1と第2の内周面34c2との境界Bにおける径が、竿体の目的位置における外周面の径と一致し、また、当該境界Bが第1の領域Rに配されるように形成される。
【0042】
当該態様によれば、釣糸ガイド30を竿体の目的位置までスライドさせたときに、取付部14の内周面14cが第1の内周面34c1と第2の内周面34c2との境界Bを介して竿体の外周面と接触する一方、第1の内周面34c1は竿体と接触しない。よって、当該態様によれば、取付部14のうち強度が高い第1の領域Rで竿体からの応力を受けることができるので、釣糸ガイド30の竿体への取付時に取付部14が破壊されにくい。
【0043】
次に、図7を参照して、本発明の他の実施形態に係る釣糸ガイド40について説明する。この釣糸ガイド40は、取付部の内周面の形状以外は、上述した釣糸ガイド10と同様に構成することができる。
【0044】
図7に示すように、貫通孔18を画定する取付部14の内周面14cは、貫通孔18の周方向に延伸するリング状の突起45が形成されている。貫通孔18、この突起45の位置における径が、竿体の目的位置における外周面の径と一致するように形成される。また、取付部14の内周面14cのうち突起45よりも後方にある後方内周面44cの径が、竿体の目的位置における外周面の径よりも大きくなり、また、突起45が第1の領域Rに配されるように形成される。
【0045】
当該態様によれば、釣糸ガイド40を竿体の目的位置までスライドさせたときに、取付部14の内周面14cが突起45を介して竿体の外周面と接触する一方、後方内周面44cは竿体と接触しない。よって、当該態様によれば、取付部14のうち強度が高い第1の領域Rで竿体からの応力を受けることができるので、釣糸ガイド40の竿体への取付時に取付部14が破壊されにくい。
【0046】
本発明の一実施形態において、ガイド本体11は、樹脂によって一体の単一部材として射出成形される。ガイド本体11を形成する樹脂は、例えば、多数の強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂である。本発明の一実施形態においては用いられる繊維強化樹脂は、炭素繊維等の強化繊維に、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、又はポリカーボネート等のマトリクス樹脂を含浸させたものであってもよい。この強化繊維の各々は、その繊維長さが比較的短いもの、例えば、平均繊維長さが0.5−10mmの範囲にある、いわゆる短繊維であってもよい。釣糸ガイド10の取付部14及びフレーム16を短繊維を含有する繊維強化樹脂を用いて形成することにより、当該釣糸ガイド10は、平均繊維長さが10mmよりも長い長繊維を含有する繊維強化樹脂で成形した場合よりも、曲げ剛性が小さくなる。この結果、本発明の様々な実施形態における釣糸ガイド10は、釣竿1の曲がりに対する追従性を確保し易い。また、強化繊維の各々は、例えば、略円柱形状を有し、平均繊維径が3〜15μmの範囲にあり、平均繊維長さが0.5〜10mmの範囲にある。また、一実施形態において、繊維強化樹脂における強化繊維の含有量は、例えば、マトリクス樹脂に対して10〜60質量%の範囲にある。ここに開示した強化繊維の形状、寸法、及び含有量等は例示であって、本発明の実施形態における強化繊維のこれらの特性は、ここに例示したものに限られない。
【0047】
次に、本発明の各実施形態に係る釣糸ガイドの製造方法を説明する。各実施形態における釣糸ガイドは、まず、樹脂材料から一体の単一部材としてガイド本体11を成形する。次に、成形されたガイド本体11の取付部14の内周面14cをテーパーリーマー等の工具を用いて所望の形状に加工する。取付部14の内周面14cの形状の一例は、図3及び図5ないし図7に示されている。次に、リング保持部13の貫通孔15にガイドリング12を取り付けることにより、本発明の各実施形態に係る釣糸ガイドが得られる。
【0048】
本発明の実施形態は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な変更が可能である。例えば、釣竿1に設けられる釣糸ガイド10の数、位置、形状等は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0049】
1 釣竿
3 手元竿
5 中竿
7 穂先竿
10、20、30、40 釣糸ガイド
11 ガイド本体
12 ガイドリング
13 リング保持部
14 取付部
15 貫通孔(ガイド孔)
16 フレーム
18 貫通孔
45 突起
R 第1の領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7