(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6499170
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】シリコンマイクロリングに基づくMOD−MUX WDM送信機の動作および安定化
(51)【国際特許分類】
G02F 1/025 20060101AFI20190401BHJP
H04B 10/50 20130101ALI20190401BHJP
H04J 14/02 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
G02F1/025
H04B10/50
H04J14/02
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-524409(P2016-524409)
(86)(22)【出願日】2014年10月15日
(65)【公表番号】特表2016-535862(P2016-535862A)
(43)【公表日】2016年11月17日
(86)【国際出願番号】US2014060625
(87)【国際公開番号】WO2015057795
(87)【国際公開日】20150423
【審査請求日】2017年10月4日
(31)【優先権主張番号】61/891,025
(32)【優先日】2013年10月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515318186
【氏名又は名称】エレニオン・テクノロジーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100119781
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】バエル−ジョーンズ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ヤーン
(72)【発明者】
【氏名】ディング,ラン
【審査官】
岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/114578(WO,A1)
【文献】
特開2010−027664(JP,A)
【文献】
特開2011−227206(JP,A)
【文献】
特開2004−266865(JP,A)
【文献】
米国特許第08027587(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00−1/125,
1/21−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合された変調された信号を出力するためのポートを含む光バスと、
第1の光学的波長で第1の光学的信号を生成するための第1のレーザと、
前記第1の光学的信号を、第1の変調信号によって搬送された情報で変調して、第1の変調された光信号を生成するようにされた第1の同調可能な変調器であって、第1の同調可能な変調器が、第1の同調可能な変調器の前の第1の光信号、又は、第1の同調可能な変調器の後の第1の変調された光信号、の少なくとも1つの強度に基づいて同調可能なように構成されるものと、
第1の変調された光信号を、前記光バスに加えるように構成された第1のフィルタ多重器と、
第2の光学的波長において第2の光学的信号を生成するための第2のレーザと、
第2の光信号を、第2の変調信号によって搬送された情報で変調して、第2の変調された光信号を生成するように構成される第2の同調可能な変調器であって、第2の同調可能な変調器が、第2の同調可能な変調器の前の第2の光信号、又は、第2の同調可能な変調器の後の第2の変調された光信号、の少なくとも1つの強度に基づいて同調可能なように構成されるものと、
前記第2の変調された光信号を、第1の変調された光信号と共に、光バスに加えて、結合された、変調された信号を生成するように構成される第2のフィルタ多重器と、
を備え、
第1の光信号の一部をタップオフするための、前記第1のレーザと前記第1の同調可能な変調器の間に配置される第1の信号スプリッタと、
第1の光電流を生成するために、第1の光信号の一部を受信するように構成される第1の光検知器と、
第1の変調された光信号の一部をタップするために、前記第1の同調可能な変調器と前記第1のフィルタ多重器の間に配置される第2の信号スプリッタと、
第2の光電流を生成するために、第1の変調された光信号の一部を受信するように構成される第2の光検知器と、
を更に備え、
第1の同調可能な変調器が、第1及び第2の光電流の少なくとも1つに基づいた第1の所望のロスが実現されるまで同調されるように構成され、
前記第1のフィルタ多重器を越えた位置において第1の変調された光信号の光照射を受信するように構成される第3の光検知器と、
第1のフィルタ多重器を同調して、第3の光検知器において受信された光照射に基づいて、第1の変調された光信号のロスを最小化するように構成されるチューナと、
を更に備える、
WDM送信器システム。
【請求項2】
第1と第2のフィルタ多重器の各々が、マイクロリングフィルタ多重器を備え、
第1及び第2の同調可能な変調器の各々が、マイクロリング変調器を備え、
第1及び第2のフィルタ多重器、及び、第1及び第2の同調可能な変調器が、単一のチップの上に配置される、
請求項1に記載のWDM送信器システム。
【請求項3】
第1の同調可能な変調器が、第1の所望の消光比を生成するための第1の光学的波長から、わずかにそらされた変調器共振を提供するために同調可能なように構成される、
請求項1または2に記載のWDM送信器システム。
【請求項4】
第2の同調可能な変調器が、第2の所望の消光比を生成するために、第2の光学的波長から、わずかにそらされた変調器共振を提供するために同調可能なように構成される、
請求項1から3のいずれかの請求項に記載のWDM送信器システム。
【請求項5】
第1の光学的波長が第1のフィルタ多重器のピークにあるまで、チューナが、第1のフィルタ多重器を同調するために構成される、
請求項1から4のいずれかの請求項に記載のWDM送信器システム。
【請求項6】
第3の光検知器が、前記フィルタ多重器を越えた位置における光照射から第3の光電流を生成し、
チューナが、第3の光電流が最小化されるまで第1のフィルタ多重器を同調するために構成される、
請求項1から5のいずれかの請求項に記載のWDM送信器システム。
【請求項7】
第1のフィルタ多重器が、第1のフィルタ要素のFSRを増加させ、第1と第2の変調された光信号の間の干渉を減少させるための、複数のリングフィルタを備える、請求項1から6のいずれかの請求項に記載のWDM送信器システム。
【請求項8】
第3の光学的波長において第3の光信号を生成するための第3のレーザと、
前記第3の光信号を、第3の変調信号によって搬送される情報で変調して、第3の変調された光信号を生成するように構成される第3の同調可能な変調器であって、
第3の同調可能な変調器が、第3の所望の消光比を生成するための変調器共振波長を提供するために同調可能であるように構成される
ものと、
第3の変調された光信号を、第1の及び第2の変調された光信号と共に、光バスに加えて、結合された変調された信号を生成するように構成される第3のフィルタ多重器と、
を更に備える、請求項1から7のいずれかの請求項に記載のWDM送信器システム。
【請求項9】
光バスから入力光信号を受信するために構成される第1のフィルタ逆多重器と、
入力光信号上に符号化された情報を回復するために第1のフィルタ逆多重器に結合される検知器と、
を更に備える、請求項1から8のいずれかの請求項に記載のWDM送信器システム。
【請求項10】
第1のレーザを用いて第1の光学的波長において第1の光信号を生成するステップと、
前記第1の光信号を、第1の変調信号によって搬送される情報で変調して、第1の同調可能な変調器を用いて第1の変調された光信号を生成するステップと、
第1の同調可能な変調器の前の第1の光信号、又は、第1の同調可能な変調器の後の第1の変調された光信号の、少なくとも1つの強度に基づいて第1の同調可能な変調器を同調するステップと、
前記第1の変調された光信号を、第1のフィルタ多重器を用いて光バスに加えるステップと、
第2のレーザを用いて、第2の光学的波長において第2の光信号を生成するステップと、
前記第2の光信号を、第2の変調信号によって搬送される情報で変調して、第2の同調可能な変調器を用いて第2の変調された光信号を生成するステップと、
第2の同調可能な変調器の前の第2の光信号、又は、第2の同調可能な変調器の後の第2の変調された光信号の、少なくとも1つの強度に基づいて第2の同調可能な変調器を同調するステップと、
第2の変調された光信号を、第1の変調された光信号と共に光バスに加えて、第2のフィルタ多重器を用いて、結合された変調された信号を生成するステップと、
を含み、
前記第1のレーザと前記第1の同調可能な変調器の間に配置される第1の信号スプリッタを用いて第1の光信号の一部をタップオフするステップと、
第1の光信号の一部を受信するように構成される第1の光検知器において第1の光電流を生成するステップと、
前記第1の同調可能な変調器と前記第1のフィルタ多重器の間に配置される第2の信号スプリッタを用いて第1の変調された光信号の一部をタップオフするステップと、
第1の変調された光信号の一部を受信するように構成される第2の光電池器において第2の光電流を生成するステップと、
第1の及び第2の光電流の少なくとも1つに基づいて、第1の所望のロスが実現されるまで、第1の同調可能な変調器を同調するステップと、
を更に含み、
前記第1のフィルタ多重器を越えた位置における第3の光検知器を用いて第1の変調された光信号の光照射を受信するステップと、
第1のフィルタ多重器を同調して、第3の光検知器において受信された光照射に基づいて、第1の変調された光信号のロスを最小化するステップと、
を更に含む、
WDM送信器システムを作動させる方法。
【請求項11】
第1の同調可能な変調器を同調するステップが、
第1の同調可能な変調器を同調して、第1の光学的波長からわずかにそれた、第1の変調器共振を提供して、第1の所望の消光比を生成するステップ、
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第2の同調可能な変調器を同調するステップが、
第2の同調可能な変調器を同調して、第2の光学的波長からわずかにそれた、第2の変調器共振を提供して、第2の所望の消光比を生成するステップを含む、
請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
第1のフィルタ多重器を同調するステップが、第1の光学的波長が、第1のフィルタ多重器のピークにあるまで第1のフィルタ多重器を同調するステップを含む、
請求項10から12のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項14】
第3の光検知器において、前記フィルタ多重器を越えた位置における光照射から第3の光電流を生成するステップを更に含み、
第1のフィルタ多重器を同調するステップが、第3の光電流が最小化されるまで第1のフィルタ多重器を同調するステップを含む、
請求項10から13のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項15】
第1のフィルタ逆多重器において、光バスから入力光信号を受信するステップと、
第1のフィルタ逆多重器に結合された検知器を用いて、入力光信号上に符号化された情報を回復するステップと、
を更に含む、
請求項10から14のいずれかの請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本願は、2013年10月15日に出願された同時係属の米国特許仮出願第61/891,025号に対する優先権および利益を主張するものであり、この出願は全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002]本発明は、一般に、光送信機に関し、特に、波長分割多重方式を採用する光送信機に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]相互接続が次世代コンピューティングシステムの障害として考えられていることを考慮すると、超高速集約データレート光ネットワークおよび光相互接続を構築するための波長分割多重(WDM)システムは、過去数年でますます関心を集めている。マイクロリング共振器は、小フットプリント、小キャパシタンス、および、低電力消費によって、オンチップネットワークおよび光相互接続の重要なビルディングブロックを形成するために最も一般的な装置のうちの1つである。過去10年で、マイクロリングベースの変調器、フィルタ、スイッチ、レーザ、および、他の構造物を設計および実証する上でのかなりの進展が見られる。
【0004】
[0004]通常使用されるリングベースのWDM送信機アーキテクチャは、
図1に示される。本図において、一連のリング変調器は1つのバス導波路を共有する。このアーキテクチャは「コモンバス」アーキテクチャと言われる。この構成は、WDMシステムにおける特定の波長に関連付けるための各リング変調器を必要としない。その代わりに、リングを最も近い波長に割り当てることで、同調電力全体を最小限に抑える柔軟性をもたらす。しかしながら、コムレーザまたは予め多重化されたレーザ源は共通入力時に必要とされ、バス導波路における光が多重リング共振器変調器を通過するため、混変調が導入される場合がある。
【0005】
[0005]多波長はバス導波路に常に存在し、かつ、各リング変調器と相互作用するが、モニター用光検出器は必然的に波長に反応しないという事実によって、コモンバス設計における自動熱安定化は特に困難である。
【0006】
[0006]複数の波長を共通光ファイバ上に多重化するための改良された機器が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007]一態様によると、本発明は光変調器システムを特徴とする。該システムは、複数の入力段を含み、該複数の入力段のそれぞれの入力段は、該複数の入力段の他のものの動作の光学波長と異なる光学波長で動作するように構成され、それぞれの入力段は、レーザから異なる光学波長を有する光を受けるように構成される光入力ポートと、異なる光学波長を有する光を、搬送波波長として該異なる光学波長上に調光信号を生じさせるために変調信号によって伝えられる情報で変調するように構成される第1の変調器と、搬送波波長として該異なる光学波長上の調光信号を、種々の搬送波波長を有する少なくとも2つの光信号を伝えるように構成される光バス上に付加するように構成されるフィルタ多重器と、を含む。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008]一実施形態では、光変調器システムは、複数の入力段のうちの少なくとも1つにおいて、光入力ポートと第1の変調器との間に据えられる第1の信号スプリッタ、および、第1の信号スプリッタから光照射を受けるように構成される第1の光検出器、第1の変調器とフィルタ多重器との間に据えられる第2の信号スプリッタ、ならびに、第2の信号スプリッタから光照射を受けるように構成される第2の光検出器、および、フィルタ多重器を越える場所で光照射を受けるように構成される第3の光検出器をさらに含む。
【0009】
[0009]別の実施形態では、光変調器システムは、フィルタ多重器のそれぞれと光通信する出力ポートを有する光バスをさらに含む。当該光バスは、出力信号として、搬送波波長として異なる光学波長上に対応する調光信号を含む多重化光信号をもたらすように構成される。
【0010】
[0010]さらに別の実施形態では、光変調器は、OOK、ASK、PSK、FSKおよびPolSKから成るプロトコル群から選択されるプロトコルに従って動作するように構成される。
【0011】
[0011]また別の実施形態では、光変調器は、送信機として、および、受信機として動作するように構成される。
[0012]さらなる実施形態では、光変調器は波長のドリフトが可能とされ、通信光受信機を、ドリフトする波長を受信するために同調させる。
【0012】
[0013]別の態様によると、本発明は、光変調器システムにおける熱的状況を制御する方法に関する。該方法は、複数の入力段を含む光変調器システムを提供するステップであって、該光変調器システムは、複数の入力段であって、該複数の入力段のそれぞれの入力段は、該複数の入力段の他のものの動作の光学波長と異なる光学波長で動作するように構成され、それぞれの入力段は、レーザから異なる光学波長を有する光を受けるように構成される光入力ポート、異なる光学波長を有する光を、搬送波波長として該異なる光学波長上に調光信号を生じさせるために変調信号によって伝えられる情報で変調するように構成される第1の変調器、および、搬送波波長として該異なる光学波長上の該調光信号を、種々の搬送波波長を有する少なくとも2つの光信号を伝えるように構成される光バス上に付加するように構成されるフィルタ多重器、を含む、複数の入力段、該複数の入力段のうちの少なくとも1つにおいて、光入力ポートと第1の変調器との間に据えられる第1の信号スプリッタ、および、第1の信号スプリッタから光照射を受けるように構成される第1の光検出器、第1の変調器とフィルタ多重器との間に据えられる第2の信号スプリッタ、ならびに、第2の信号スプリッタから光照射を受けるように構成される第2の光検出器、および、フィルタ多重器を越える場所で光照射を受けるように構成される第3の光検出器、を含む、ステップと、該複数の入力段のうちの対応する1つにおいて、第1の光検出器および第2の光検出器上の光電流を観察するステップと、前記第1の光検出器および前記第2の光検出器における光電流の所望の比率を達成するために第1の変調器において熱同調器を同調するステップと、その後、第3の光検出器における光電流を最小限に抑えるためにフィルタ多重器において熱同調器を同調することによって、ある温度範囲にわたって光変調器システムの動作を維持するステップと、を含む。
【0013】
[0014]別の態様によると、本発明は、光変調器システムを動作させる方法に関する。該方法は、複数の入力段を含む光変調器システムを提供するステップであって、該光変調器システムは、複数の入力段を含み、該複数の入力段のそれぞれの入力段は、該複数の入力段の他のものの動作の光学波長と異なる光学波長で動作するように構成され、それぞれの入力段は、レーザから異なる光学波長を有する光を受けるように構成される光入力ポート、異なる光学波長を有する光を、搬送波波長として該異なる光学波長上に調光信号を生じさせるための情報で変調するように構成される第1の変調器、および、搬送波波長として該異なる光学波長上の調光信号を、種々の搬送波波長を有する少なくとも2つの光信号を伝えるように構成される光バス上に付加するように構成されるフィルタ多重器を含む、ステップと、対応する搬送波として光入力信号を該複数の入力段のそれぞれにもたらすステップであって、対応する搬送波は対応する異なる光学波長を有する、ステップと、該搬送波上へ変調されるべき情報を伝える変調信号を該複数の入力段のそれぞれにもたらすステップと、光バスの出力において対応する異なる光学波長を有する対応する搬送波のうちの少なくとも1つを有する変調された信号を回復するステップと、を含む。
【0014】
[0015]一実施形態では、方法は、フィルタ多重器の対応する1つと光通信する特定の搬送波波長を有する光信号を受信するように構成される少なくとも1つの光検出器を提供するステップと、光バスからフィルタ多重器において特定の搬送波波長を有する変調された信号を受信するステップと、少なくとも1つの光検出器によって特定の搬送波波長を有する変調された信号を検出するステップと、特定の搬送波波長がない、変調された信号上の符号化された情報を含む信号であって、ユーザに対して表示され、不揮発性メモリにおいて記録され、および/または、さらなる操作のために別の装置に送信されるように構成される信号を、少なくとも1つの光検出器から受信するステップと、をさらに含む。
【0015】
[0016]本発明の前述のならびに他の目的、態様、特徴および利点は、以下の説明および特許請求の範囲からより明らかとなろう。
[0017]後述される図面および特許請求の範囲を参照して、本発明の目的および特徴はより良く理解できる。図面は、必ずしも一定の比例通りではなく、全般的に、本発明の原理を示すことに重点が置かれる。図面では、さまざまな図全体にわたって、同様の数字は同様の部分を示すために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】[0018]これまでの先行技術のコモンバスアーキテクチャを示す図である。
【
図2】[0019]CW源がリング変調器に送り込まれ、調光がリングフィルタによってバス導波路に対して多重化される、本発明の原理によるMod−MUX WDM送信機アーキテクチャの機器および動作原理を示す概略図である。
【
図3】[0020]自動熱安定化の便宜的方法を提供する、本発明の原理によるMod−MUX WDM送信機の機器および動作原理を示す概略図である。
【
図4】[0021]多重化部として複数のリングを有する、本発明の原理によるMod−MUX WDM送信機アーキテクチャを示す概略図である。
【
図5】[0022]本発明の原理によるMod−MUX送信機が製作されているチップの画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[0023]リング変調器を使用するWDM送信機を実装するためのMod−MUXアーキテクチャについて説明する。従来の「コモンバス」アーキテクチャと比較して、Mod−MUXアーキテクチャは多くの利点を示す。Mod−MUX送信機を自動で熱的に安定化させるために使用可能な手順についても説明する。
【0018】
[0024]Mod−MUXアーキテクチャoは、コモンバス設計の弱点を克服する。
図2に示されるように、Mod−MUXアーキテクチャにおいて、それぞれのチャネルのレーザは、リング変調器(Mod)に送り込まれ、次いで、調光は、リングアドフィルタ多重器(MUX)によってバス導波路上へ多重化される。
図2において、第1のMod−MUXは波長λ
1で動作し、第2のMod−MUXは波長λ
2で動作し、n番目のMod−MUXは波長λ
nで動作する。ここで、nは、Mod−MUXが対応できる異なる波長の数を定義する1より大きい整数である。
【0019】
[0025]
図2では、それぞれのMod−MUXは、他の搬送波信号波長と異なる波長を有する搬送波信号を受信する対応する光入力(210、220、2n0)、変調された搬送波信号を生じさせるために変調器に与えられるデータ信号(例えば、変調信号によって伝えられる情報)に応答した信号による対応する搬送波信号を変調する対応する変調器(211、221、2n1)、変調された搬送波信号をバス230上へ多重化することで組み合わせられた変調された信号が出力240でもたらされる対応する多重器(212、222、2n2)を有する。出力信号は、場合により、所与の波長に対応するデジタル形式でまたはアクティブ/非アクティブインジケータの形式で、記録できる、別の装置へ送信できる、または、ユーザに対して表示できる。便宜上、説明されるような特定の波長を有する単一搬送波信号で動作する変調器および多重器(Mod−MUX)は、Mod−MUXユニットと言われる場合もある。
【0020】
[0026]このアーキテクチャはいくつかの利点を与え、コム光源をもたらす必要性をなくし、各レーザ波長が1つのリング変調器のみを通過する事実によって、混変調を回避する。Mod−MUXは、それぞれのMod−MUX分岐が1つのレーザ波長のみで動作するため、コモンバスアーキテクチャと比較して熱安定化方式を簡素化するための互換性を与える。リング変調器およびリングフィルタそれぞれのための特定の設計が提供されて、(リング変調器における)最大許容品質係数による最良の同調性、および、(リングフィルタにおいて)損失が少なく、クロストークが少ない十分な帯域幅といった、それぞれの要素の性能を最適化することができる。
【0021】
[0027]適正な動作のために、好ましくは、
図2に示されるように、同調可能なCW光を各入力へ送信する際にバス出力で光強度を監視するべきである。まず、フィルタを同調して、目標のチャネル間隔を達成し、次いで、変調器共振を同調して、対応するフィルタとほぼ一致させる。原理として、レーザ波長は、データストリームの損失および光フィルタリングを最小限に抑えるために光フィルタのピークにあるものとすべきであることが好ましく、変調器共振は、好ましくは、所望の消光比を生成するために単一リング変調器にあるそのままの状態で、レーザ波長からわずかにそらすべきである。
【0022】
[0028]さまざまな実施形態では、それぞれの変調器要素は、単一リングまたはマルチリングであってよい。他の実施形態では、変調器要素は、マッハツェンダ干渉計(MZI)、電界吸収(EA)光変調器、または、別のタイプの変調器といった種々のタイプの変調器であってよい。
【0023】
[0029]いくつかの実施形態では、変調器要素は、具体的には、(例えば、該変調器要素を適合させるために物理的に互いに近接して置くことによって)共に熱的にドリフトさせることで、制御システムの構成を簡略化するように設計されてよい。
【0024】
[0030]いくつかの実施形態では、Mod−MUX送信機は、さらなるタップ、検出器、および、制御システムの作成に有用な同様の要素を含むことができる。
[0031]いくつかの実施形態では、「制御ノブ」を提供し、それによって動作温度、および、バイアス信号のような動作パラメータを制御するために、(要素を加熱するおよび/または冷却する)熱同調器、および、PIN接合同調器など、リングに付加される要素があってもよい。
【0025】
[0032]いくつかの実施形態では、共振器は、リング、円板、または、さまざまな線形キャビティといった他の構造であってよい。
Mod−MUX送信機の自動熱安定化
[0033]
図3に移って、ここで、Mod−MUX送信機の自動熱同調を達成するための機器および手順を提示する。波長λ
1で動作する第1のMod−MUXは、波長λ
1の搬送波信号が導入される入力300、変調器301、MUX302、タップ303、光検出器304、タップ305、光検出器306、および、光検出器307を含む。波長λ
nで動作するn番目のMod−MUXは、波長λ
nの搬送波信号が導入される入力3n0、変調器3n1、MUX3n2、タップ3n3、光検出器3n4、タップ3n5、光検出器3n6、および、光検出器3n7を含む。バス320は、波長λ
1、λ
2、…、λ
nの搬送波信号上の対応する変調された信号を受信し、かつ、出力ポート330において多重化された結果をもたらす。
図3において、2つの波長λ
1およびλ
nのみで動作するMod−MUXユニットが示される。しかしながら、種々の異なる波長で動作する任意の便宜的な数のMod−MUXユニットが提供可能であることは理解されるべきである。いくつかの実施形態では、タップは95/5タップである。2つのタップが適合される限り他のタップ比を使用することができ、十分な照度がもたらされることで、該照度は測定可能であり、タップを通って変調器へ通過した照度は適切である。
図3に見られるように、2つのタップ(303、305、および、3n3、3n5)は対応するリング変調器301、3n1の前後に挿入される。分岐させた光度は、監視用PD(304、306、および、3n4、3n6)それぞれに送り込まれる。第3の監視用PD(307、3n7)は、対応するリングフィルタ302、3n2のスルー出力に接続される。各分岐において以下の手順を適用することは、リング変調器およびフィルタを同調することになるため、送信機は適正に作動することができる。
【0026】
[0034]選択されたMod−MUXユニット(例えば、
図3の最左ユニット)について:
1.リング変調器301上で熱同調器を同調し、モニター用PD304(a)およびPD306(b)上でそれぞれ光電流I
aおよびI
bを監視する。
【0027】
2.I
b/I
aが所望のバイアス損失を達成する時、同調を停止する。
3.リングフィルタ上で熱同調器を同調することで、モニター用PD307(c)上の光電流I
cは最低限に抑えられる。
【0028】
[0035]この技術は以下を可能にする:
1.独立したリング変調器の層を介して、
図2に示されるような、波長分割変調(WMD)および多重化(システム多重化(muxing))(例えば、単一の光ファイバ上の種々の波長における光信号の組合せ)を達成し、その後、一組のリング変調器を使用して、コモン光バス上へ個々の信号をシステム多重化するための2レベルの一連のカスケード式リング変調器の使用。
【0029】
2.1つの層を変調用に、次の層を多重化用に使用する2層の組のリング変調器に基づいたWDM送信用のコム光源の必要性の回避。
3.種々のレーザ信号用の種々のリング変調器間の混変調を回避するための、本明細書に記載されるアーキテクチャの利用。
【0030】
4.2層の組のリング変調器を熱的に安定化させ、かつ、ある温度範囲にわたって効果的な変調およびWDM動作を達成するための、「Mod−MUX送信機の自動熱安定化」の節において説明されたアルゴリズムの利用。
【0031】
[0036]
図4は、多重化ユニットとして複数のリングを有する、本発明の原理によるMod−MUX WDM送信機アーキテクチャを示す概略図である。
[0037]多重器における複数のリングを使用することによって2つの利点がもたらされる。第1に、2つの連結されたリングのフリースペクトルレンジ(FSR)は、バーニア効果によって単一リングよりずっと大きくなり、これによって送信機の動作波長範囲は拡大する。第2に、2つの連結されたリングの波長選択能力は、2つのリングフィルタが高次フィルタであるため、単一リングより良好である。換言すれば、隣接したチャネル間の干渉は低減可能である。
【0032】
[0038]
図5は、本発明の原理によるMod−MUX送信機が製作されているチップの画像である。
[0039]送信機は、CMOS互換のフォトニクス半導体製造工場において製作される。そのプロセスは、トップシリコンが220nm、底部酸化物厚が2μmであるSOITECから20.32cm(8インチ)のシリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウェーハで開始する。高抵抗性の取り扱いシリコン(750Ωcm)はRF性能を徹底するために使用された。格子結合器およびシリコン導波路は3つのドライエッチングによって形成された。pn接合および接触領域を形成するためにシリコンに対して6つの実装ステップが適用された。電気相互接続のために、アルミニウムの2つの層が沈着された。全ての場合において、248nmのフォトリソグラフィが利用された。
【0033】
[0040]Liu、Yangらの「30GHz silicon platform for photonics system」、Optical Interconnects Conference、2013年5月5日、IEEE、および、Liu、Yangらの「Silicon Mod−MUX−Ring transmitter with 4 channels at 40 Gb/s」、Optics Express 22(2014):16431〜16438、2014年6月25日において、製作プロセスがさらに説明され、該文献のそれぞれは内容全体が参照により本明細書に組み込まれる
応用
[0041]本願は、光通信ネットワーク上で情報を送信する周知の方法で使用可能である。例えば、かかるシステムおよび方法は、I.Djordjevicら、Coding for Optical Channels、Chapter 2、Fundamentals of Optical Communication、25〜73頁、Springer、2010年、ISBN978−1−4419−5569−2において論じられ、光学部品、直接的検出による種々の変調フォーマット、および、コヒーレント検出による種々の変調方式を説明するとされ、該文献は全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
[0042]光ファイバシステムの莫大な帯域幅ポテンシャルを活用するために、種々の多重化技法(OTDMA、WDMA、CDMA、SCMA)、変調フォーマット(OOK、ASK、PSK、FSK、PolSK、CPFSK、DPSKなど)、復調方式(直接的検出またはコヒーレント)、および、技術が利用可能である。
【0035】
[0043]実際面では、2つのタイプの外部変調器:マッハツェンダ変調器(MZM)および電界吸収変調器(EAM)が一般的に使用される。MZMで使用可能な考えられる変調フォーマットは、ゼロ/非ゼロチャープによるオンオフ変調(OOK)、二位相偏移変調(BPSK)、差動位相偏移変調(DPSK)、直角位相偏移変調(QPSK)、差動QPSK(DQPSK)、および、デューティサイクル33%、50%、または、67%のゼロ復帰(RZ)を含む。
【0036】
[0044]基本の光変調フォーマットは以下のように:(1)パルスが存在すると1で表され、パルスがないと0で表されるオンオフ変調(OOK)、(2)正弦波パルスの振幅に情報が埋め込まれる振幅偏移変調(ASK)、(3)情報が位相に埋め込まれる位相偏移変調(PSK)、(4)情報が周波数に埋め込まれる周波数位相変調(FSK)、および、(5)情報が偏光に埋め込まれる偏光偏移変調(PolSK)で分類可能である。さまざまな変調フォーマットは、直接的検出、すなわち、(1)非ゼロ復帰(NRZ)、(2)ゼロ復帰(RZ)、(3)交番マーク反転(AMI)、(4)デュオバイナリ変調、(5)搬送波抑圧RZ、(6)NRZ差動位相偏移変調(NRZ−DPSK)、および、(7)RZ差動位相偏移変調(RZ−DPSK)で使用可能である。
【0037】
設計および製作
[0045]本明細書に記載されるのと同様の要素を有する装置を設計および製作する方法は、米国特許第7,200,308号、第7,339,724号、第7,424,192号、第7,480,434号、第7,643,714号、第7,760,970号、第7,894,696号、第8,031,985号、第8,067,724号、第8,098,965号、第8,203,115号、第8,237,102号、第8,258,476号、第8,270,778号、第8,280,211号、第8,311,374号、第8,340,486号、第8,380,016号、第8,390,922号、第8,798,406号、および、第8,818,141号のうちの1つまたは複数において記載され、これら文献のそれぞれは全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
動作
[0046]いくつかの実施形態では、本発明のMod−MUX送信機は、OOK、ASK、PSK、FSK、および、PolSKを含むさまざまな変調フォーマットで使用可能である。
【0039】
[0047]いくつかの実施形態では、本発明のMod−MUX送信機は、熱的に安定化されるのではなく、波長のドリフトを可能とされる。かかる実施形態では、入射波長へロックするために、通信受信機は自身を同調する。
【0040】
[0048]いくつかの実施形態では、本発明のMod−MUX送信機は、送信機および受信機のどちらかまたは両方として使用可能である。送信機構造は説明されている。受信機としての使用について、WDMリングのうちの少なくとも1つは検出器をもたらし、この検出器によって、光バスから多重分離された信号を受信することができる。双方向動作について、例えば、送信機および受信機(トランシーバ)として、MUXリングの一部は変調器をもたらし、一部は検出器をもたらす。例えば、
図3において、波長λ
1で動作する第1のMod−MUXを考えると、入力300への搬送波信号の光源を切ることが考えられる。MUX302を使用してバス320から波長λ
1の搬送波を有する信号を回復することがあり得る。タップ303および光検出器304、タップ305および光検出器306、ならびに光検出器307のいずれかを使用して信号を検出できる場合がある。それによって、波長λ
1の搬送波上で符号化された情報を回復することができる。
【0041】
定義
[0049]動作またはデータ取得からの結果を記録すること、例えば、特定的な周波数または波長での結果を記録することは、非一時的に、記憶要素へ、機械可読記憶媒体へ、または、記憶装置への書き込み出力データとして意味するように理解され、かつ、本明細書では定義される。本発明において使用することができる非一時的機械可読記憶媒体は、磁気フロッピーディスクおよびハードディスクなどの電子、磁気および/または光記憶媒体、いくつかの実施形態では、DVDディスク、CD−ROMディスクのいずれか(すなわち、読み取り専用光記憶ディスク)、CD−Rディスク(すなわち、追記型光記憶ディスク)およびCD−RWディスク(すなわち、書き換え可能光記憶ディスク)を採用できるDVDドライブおよびCDドライブ、RAM、ROM、EPROM、コンパクトフラッシュ(登録商標)カード、PCMCIAカード、または、代替的にはSDもしくはSDIOメモリなどの電子記憶媒体、ならびに、記憶媒体へ対応しかつ読み書きする電子部品(例えば、フロッピーディスクドライブ、DVDドライブ、CD/CR−R/CD−RWドライブまたはコンパクトフラッシュ/PCMCIA/SDアダプタ)を含む。別段明示的に記載されない限り、本明細書における「記録する」または「記録」へのいずれの言及も、非一時的に記録すること、または、非一時的な記録に言及すると理解される。
【0042】
[0050]機械可読記憶媒体の技術分野における当業者には既知であるように、データを記憶する新たな媒体およびフォーマットは絶えず考案されており、将来利用可能となる場合がある任意の便宜的な市販の記憶媒体および対応する読み取り/書き込み装置が、特に、より大きな記憶容量、より速いアクセス速度、より小さいサイズ、および記憶される情報1ビット当たりのより低いコストをもたらすのであれば、使用に適切であると考えられる。ある条件下では、穿孔紙テープまたは穿孔カード、テープまたはワイヤ上の磁気記録、印刷文字の光学記録または磁気記録(例えば、OCRおよび磁気により符号化された記号)、ならびに、一次元バーコードおよび二次元バーコードなどの機械可読記号といった周知の古くからある機械可読媒体も使用に利用可能である。後の使用のための画像データの記録(例えば、メモリへまたはデジタルメモリへの画像の書き込み)が行われて、出力として、ユーザへ表示するためのデータとして、または、後の使用に利用可能とされるデータとして、記録された情報の使用を可能にする。かかるデジタルメモリ要素またはチップは、スタンドアローンのメモリ装置とすることができる、または、対象の装置内に内蔵可能である。「出力データを書き込むこと」または「画像をメモリへ書き込むこと」は、本明細書では、マイクロコンピュータ内に登録するために変換データを書き込むことを含むとして定義される。
【0043】
理論的検討
[0051]本明細書に挙げられる理論的な記載は正しいと考えられるが、本明細書に記載および特許請求される装置の動作は、理論的な記載の精確さまたは妥当性に左右されるものではない。すなわち、本明細書に提示した理論と異なる基本原理で観測結果を説明することができる今後の理論的発展は、本明細書に記載の発明を損なうものとはならない。
【0044】
[0052]本明細書において確認される全ての特許、特許出願、特許出願公開、学術論文、書籍、公表論文、または、他の公的に入手可能な資料は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。参照により本明細書に組み込まれるとしたが、現行の定義、言説、または本明細書に明示的に記載される他の開示資料と矛盾する、あらゆる資料またはその一部は、組み込まれる資料と、現行の開示資料との間に矛盾が生じない範囲で組み込まれるに過ぎない。矛盾が生じた場合、好ましい開示として本開示を優先して矛盾を解決するものとする。
【0045】
[0053]本発明は、図面に例示されるように、好ましい様式を参照して、特に示されかつ説明されているが、特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな細部の変更によって本発明に影響を与える場合があることは、当業者には理解されるであろう。