(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記安全装置には、前記ダイ上に配置されている前記ワークの上面から所定の距離の位置に、前記前側監視領域及び前記奥側監視領域による侵入物の検出を無効化するミュートポイントが設定されており、
前記前側探索範囲及び前記奥側探索範囲は、前記上部テーブルが上端に位置しているときの前記前側監視領域及び前記奥側監視領域の上端から前記ミュートポイントまでの範囲である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のプレスブレーキ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態のプレスブレーキについて、添付図面を参照して説明する。まず、
図1を用いて、プレスブレーキの概略的な構成を説明する。プレスブレーキは、上部テーブル10と、下部テーブル20とを備える。上部テーブル10は、左右に設けた油圧シリンダ11L及び11Rによって、上下動するように構成されている。
【0013】
アクチュエータ12L及び12Rは、それぞれ、油圧シリンダ11L及び11Rを駆動する。アクチュエータ12L及び12Rは、例えば、双方向回転ポンプ121と、双方向回転ポンプ121を正転または逆転させるモータ122とで構成される。
【0014】
プレスブレーキ制御装置50が、モータ122を正転させるようモータ122を制御すると、双方向回転ポンプ121が正転して油圧シリンダ11L及び11Rを下降させることができる。プレスブレーキ制御装置50が、モータ122を逆転させるようモータ122を制御すると、双方向回転ポンプ121が逆転して油圧シリンダ11L及び11Rを上昇させることができる。プレスブレーキ制御装置50は、NC装置によって構成することができる。
【0015】
リニアエンコーダ13L及び13Rは、上部テーブル10の上下方向の位置を検出する。リニアエンコーダ13L及び13Rが検出した位置情報(上部テーブル10のストローク)は、プレスブレーキ制御装置50及び後述する安全制御部42に供給される。プレスブレーキ制御装置50は、位置情報に基づいて上部テーブル10の上下方向の位置を制御する。
【0016】
上部テーブル10の位置情報が安全制御部42に供給されず、プレスブレーキ制御装置50が位置情報を安全制御部42に供給してもよい。
【0017】
上部テーブル10には図示していない上部金型ホルダが取り付けられ、下部テーブル20には図示していない下部金型ホルダが取り付けられている。上部金型ホルダにはパンチ14が装着され、下部金型ホルダにはパンチ14と協働してワークWを加工するダイ24が装着されている。このようにして、上部テーブル10はパンチ14を保持し、下部テーブル20はダイ24を保持する。例えば平板状の板材であるワークWは、ダイ24上に配置されている。上部テーブル10を下降させると、ワークWはパンチ14とダイ24とによって挟まれて折り曲げられる。
【0018】
次に、本実施形態のプレスブレーキが備える安全装置の概略的な構成を説明する。
図1において、上部テーブル10の左側には、アーム15Lを介して投光器30が装着されている。上部テーブル10の右側には、アーム15Rを介して、受光器41と安全制御部42とを含む受光ユニット40が装着されている。安全制御部42は受光ユニット40の外部に設けられていてもよい。投光器30及び受光ユニット40は、安全装置を構成する。
【0019】
投光器30は、パンチ14とダイ24との間を通過するように受光器41に向けてレーザ光L30を射出し、受光器41はレーザ光L30を受光する。上部テーブル10が下降すると、特に侵入物または障害物がなければ、レーザ光L30がワークWによって遮られるまで、受光器41はレーザ光L30を受光する。
【0020】
安全制御部42は、受光器41がレーザ光L30を受光する受光状態であるか、レーザ光L30を受光しない遮光状態であるかによって、上部テーブル10の下降を停止させるか否かを決定する停止信号Sstopを生成して出力する。停止信号Sstopは、値が“0”であれば上部テーブル10の下降を停止させず下降を継続させることを示し、値が“1”であれば上部テーブル10の下降を停止させることを示す。
【0021】
停止信号Sstopの値が“1”になり、上部テーブル10が停止した後、安全制御部42は、受光器41がレーザ光L30を受光する受光状態になれば、停止信号Sstopとして値“0”を出力し、上部テーブル10の再下降を許可する。受光器41がレーザ光L30を受光しない遮光状態が続く場合、例えば上部テーブル10を低速に下降させる等、安全が確保される条件下に限り上部テーブル10の再下降を許可してもよい。
【0022】
受光器41がレーザ光L30を受光すれば、レーザ光L30は手等の侵入物によって遮られていないということである。そこで、安全制御部42は停止信号Sstopとして値“0”を出力する。上部テーブル10が下降する途中でレーザ光L30が手等の侵入物によって遮られると、受光器41はレーザ光L30を受光しない。そこで、安全制御部42は停止信号Sstopとして値“1”を出力する。
【0023】
後述するように、安全制御部42は、レーザ光L30が侵入物以外の障害物(ワークWまたはプレスブレーキの可動部等)によって遮られて受光器41がレーザ光L30を受光しなかった場合には、停止信号Sstopとして値“1”を出力しないように構成されている。
【0024】
安全制御部42は、工程開始時点で既にレーザ光L30が侵入物以外の障害物(ワークWまたはプレスブレーキの可動部等)によって遮られて受光器41がレーザ光L30を受光しなかった場合には、停止信号Sstopとして値“1”を出力してもよい。
【0025】
安全制御部42が停止信号Sstopとして値“1”を出力すると、プレスブレーキ制御装置50は上部テーブル10の下降を停止させ、プレスブレーキによるワークの曲げ加工を中断させる。
【0026】
図2及び
図3を用いて、安全装置の具体的な構成を説明する。
図2に示すように、投光器30はレーザ光源301と、レーザ光源301が射出した拡散光のレーザ光を平行光であるレーザ光L30とするコリメートレンズ302とを有する。
【0027】
受光器41は、例えば9個のフォトダイオードPd1〜Pd9を有する。便宜上、フォトダイオードPd1〜Pd9にはそれぞれ1〜9の数字を付している。フォトダイオードは光検出器の一例である。フォトダイオードPd1〜Pd9は、レーザ光L30の受光状態と遮光状態とを個別に検出する。受光器41は、フォトダイオードPd1〜Pd9それぞれの出力信号を増幅する増幅器Ap1〜Ap9と、増幅器Ap1〜Ap9より出力される電流値に基づいて、レーザ光L30が遮られているか否かを示す判別値を出力する判別値出力部410とを有する。
【0028】
図3は、上部テーブル10が上端(開端)に位置して状態で、投光器30より受光器41を見たときの、フォトダイオードPd1〜Pd9の配置の状態を示している。
図3の左側がプレスブレーキの前側、右側がプレスブレーキの奥側である。
【0029】
フォトダイオードPd1〜Pd3は、パンチ14がダイ24に向かって下降していくときのパンチ14の移動経路よりも前側に垂直方向に配列されている。フォトダイオードPd4〜Pd6は、移動経路よりもわずかに奥側に垂直方向に配列されている。フォトダイオードPd4〜Pd6は、移動経路上に配列されていてもよい。フォトダイオードPd7〜Pd9は、移動経路よりも奥側に垂直方向に配列されている。
【0030】
図3に示す例では、フォトダイオードPd1,Pd4,Pd7、フォトダイオードPd2,Pd5,Pd8、フォトダイオードPd3,Pd6,Pd8は、それぞれ、垂直方向の同じ位置に配置されている。
【0031】
移動経路よりも前側に配置するフォトダイオードの数、移動経路上または移動経路よりもわずかに奥側に配置するフォトダイオードの数、移動経路より奥側に配置するフォトダイオードの数は3個に限定されることはなく、2個でもよいし、4個以上でもよい。レーザ光L30を受光するフォトダイオードの数は限定されない。フォトダイオードの数が多いほど、侵入物を検出しやすくなる。
【0032】
移動経路よりも前側に配置するフォトダイオードの数と、移動経路上または移動経路よりもわずかに奥側に配置するフォトダイオードの数と、移動経路より奥側に配置するフォトダイオードの数は同じでなくてもよい。移動経路よりも前側と、移動経路上または移動経路よりもわずかに奥側と、移動経路より奥側とでフォトダイオードの配置の仕方が異なっていてもよい。
【0033】
一例として、判別値出力部410は、増幅器Ap1〜Ap9がレーザ光L30を受光して増幅器Ap1〜Ap9より所定レベル以上の電流値が出力される場合には、レーザ光L30が遮られていないことを示す判別値“0”を出力する。判別値出力部410は、増幅器Ap1〜Ap9のいずれかがレーザ光L30を受光せず、増幅器Ap1〜Ap9のうち対応する増幅器より所定レベル以上の電流値が出力されない場合には、レーザ光L30が遮られたことを示す判別値“1”を出力する。
【0034】
安全制御部42は、2つの中央処理装置(CPU)421及び422を有する。判別値出力部410より出力された判別値はCPU421及び422に供給される。
図2においては、判別値出力部410からCPU421及び422への信号線を1本で表現しているが、CPU421及び422には、フォトダイオードPd1〜Pd9それぞれの出力信号に基づく判別値Det1〜Det9が並列的に供給される。
【0035】
安全装置は、フォトダイオードPd1〜Pd3によって形成される前側監視領域411と、フォトダイオードPd4〜Pd6によって形成される中央監視領域412と、フォトダイオードPd7〜Pd9によって形成される奥側監視領域413とを有する。プレスブレーキ制御装置50には、フォトダイオードPd1〜Pd9の取り付け位置に関する情報と、前側監視領域411と中央監視領域412と奥側監視領域413に関する情報が設定されている。
【0036】
前側監視領域411は、パンチ14の移動経路よりも前側において、フォトダイオードPd1〜Pd3によって人の手等の侵入物の侵入を監視する領域である。中央監視領域412は、移動経路上または移動経路よりもわずかに奥側において、フォトダイオードPd4〜Pd6によって侵入を監視する領域である。奥側監視領域413は、移動経路より奥側において、フォトダイオードPd7〜Pd9によって侵入を監視する領域である。
【0037】
図4の(a)〜(d)に示すように、上部テーブル10の下降に伴って、ここでは図示していない投光器30と、受光器41(前側監視領域411、中央監視領域412、及び、奥側監視領域413)が下降する。
図4の(a)は、
図3と同じ上部テーブル10が上端に位置して状態である。
【0038】
プレスブレーキ制御装置50は、金型高さ等のパンチ14及びダイ24に関する情報、板厚等のワークWに関する情報を有する。プレスブレーキ制御装置50は、ダイ24上に配置されているワークWの上面から人の手(指)が入らない程度に短い所定の距離の位置にミュートポイントPmuteを設定する。ミュートポイントPmuteに関する情報は、CPU421及び422に供給される。ミュートポイントPmuteは、ワークWの上面から例えば6mm程度の距離に設定される。
【0039】
図4の(c)ではフォトダイオードPd3,Pd6,Pd9がミュートポイントPmuteを過ぎているので、CPU421及び422はフォトダイオードPd3,Pd6,Pd9を無効化する。
図4の(d)では全てのフォトダイオードPd1〜Pd9がミュートポイントPmuteを過ぎているので、CPU421及び422はフォトダイオードPd1〜Pd9を無効化する。
【0040】
ミュートポイントPmuteは、ワークWがレーザ光L30を遮ってもプレスブレーキの動作を停止させないようにするために設定されている。
【0041】
上部テーブル10及び受光器41が
図4の(a)〜(d)に示すように下降すると、
図5に示すように、パンチ14の移動経路よりも前側には、前側監視領域411の下降により前側探索範囲4110が形成され、パンチ14の移動経路よりも奥側には、奥側監視領域413の下降により奥側探索範囲4130が形成される。
【0042】
前側探索範囲4110は前側監視領域411が移動する範囲であり、奥側探索範囲4130は奥側監視領域413が移動する範囲である。但し、本実施形態においては、ミュートポイントPmuteを設定しているため、前側探索範囲4110は、上部テーブル10が上端に位置しているときの前側監視領域411の上端部からミュートポイントPmuteまでの範囲である。奥側探索範囲4130は、上部テーブル10が上端に位置しているときの奥側監視領域413の上端部からミュートポイントPmuteまでの範囲である。
【0043】
プレスブレーキ制御装置50は、予めシミュレーションを実行することによって、ワークWのそれぞれの加工工程において、ワークWまたはプレスブレーキの可動部等の障害物が前側探索範囲4110または奥側探索範囲4130と干渉するか否か及び障害物の高さを検出する。プレスブレーキ制御装置50によるシミュレーション結果は、CPU421及び422に供給されて保持される。
【0044】
図6は、サイドフランジWsfを有するワークWを加工する場合を示している。ワークWのサイドフランジWsfは障害物の第1の例である。
図6に示す加工工程のシミュレーションにより、プレスブレーキ制御装置50は、サイドフランジWsfが前側探索範囲4110と干渉することを検出する。また、プレスブレーキ制御装置50は、サイドフランジWsfの前側探索範囲4110内における高さHsfを検出する。CPU421及び422は、
図6に示す加工工程において、前側監視領域411による侵入物の侵入の検出を無効にする箱曲げモードに設定する。
【0045】
CPU421及び422は、箱曲げモードに設定していても、検出した障害物の高さが予め与えられた高さHsfと一致しない場合には、前側監視領域411による侵入物の侵入の検出を続けてもよい。
【0046】
図6において、
図1では図示が省略されているバックゲージ60はワークWの奥側端部に押し当てられている。バックゲージ60は、プレスブレーキの可動部の一例である。プレスブレーキ制御装置50は、ワークWの奥側端部を位置させる位置に合わせてバックゲージ60を移動させる。バックゲージ60にワークWの奥側端部を押し当てれば、ワークWが前後方向の適切な位置に位置決めされて加工される。ここでは、バックゲージ60は奥側探索範囲4130と干渉していない。
【0047】
図7は、ワークWをダイ24よりも奥側に短い距離だけ突出させて加工する場合を示している。バックゲージ60は、ワークWの奥側端部に押し当てられている。ここでは、バックゲージ60は奥側探索範囲4130と干渉している。バックゲージ60は障害物の第2の例である。プレスブレーキ制御装置50には、突き当て部材の高さ等のバックゲージ60に関する情報が設定されているので、加工工程のシミュレーションによって、バックゲージ60が奥側探索範囲4130と干渉すること及び奥側探索範囲4130における障害物の高さを検出することができる。
【0048】
図7に示す加工工程においては、プレスブレーキ制御装置50は、バックゲージ60が奥側探索範囲4130と干渉することを検出する。CPU421及び422は、
図7に示す加工工程において、奥側監視領域413による侵入物の侵入の検出を無効にするバックゲージモードに設定する。
図7においては、ワークWはサイドフランジWsfを有さないため、ワークWは前側探索範囲4110と干渉していない。
【0049】
CPU421及び422は、バックゲージモードに設定していても、検出した障害物の高さが予め与えられた障害物の高さと一致しない場合には、奥側監視領域413による侵入物の侵入の検出を続けてもよい。
【0050】
所定の加工工程において、
図6と同様にサイドフランジWsfが前側探索範囲4110と干渉し、かつ、
図7と同様にバックゲージ60が奥側探索範囲4130と干渉する場合には、CPU421及び422は、箱曲げモード及びバックゲージモードに設定する。
【0051】
以上のように、本実施形態において、安全装置は、前側探索範囲4110及び奥側探索範囲4130それぞれで個別の所定の高さの障害物が干渉するか否かを検出することができる。本実施形態において、安全装置は、所定の高さの障害物が前側探索範囲4110と干渉することが検出されたときには前側監視領域411による侵入物の検出を無効化する。本実施形態において、安全装置は、所定の高さの障害物が奥側探索範囲4130と干渉することが検出されたときには奥側監視領域413による侵入物の検出を無効化する。
【0052】
CPU421及び422は、サイドフランジWsfが前側探索範囲4110と干渉するときに、箱曲げモード及びバックゲージモードに設定して前側監視領域411及び奥側監視領域413の双方による侵入物の侵入の検出を無効にしてもよい。CPU421及び422は、バックゲージ60が奥側探索範囲4130と干渉するときに、箱曲げモード及びバックゲージモードに設定して前側監視領域411及び奥側監視領域413の双方による侵入物の侵入の検出を無効にしてもよい。
【0053】
前側探索範囲4110または奥側探索範囲4130に干渉することがある障害物は、サイドフランジWsf及びバックゲージ60に限定されない。ワークWに形成されているバーリング等の成形物が障害物となることがある。ワークWにバーリング等の成形物が形成されている場合、プレスブレーキ制御装置50はワークWの情報に基づいてシミュレーションを実行することにより、成形物が前側探索範囲4110または奥側探索範囲4130に干渉するか否かを検出することができる。
【0054】
さらに、連続的な2つの加工工程において、次の加工工程の開始時点で障害物が前側探索範囲4110または奥側探索範囲4130と干渉し、停止信号Sstopとして値“1”が出力されることを避けるため、プレスブレーキ制御装置50は、現在の加工工程の終了時に、上部テーブル10を次のように上方に退避させることが好ましい。
【0055】
図8の(a)は現在の加工工程の終了時に、上部テーブル10を上方に退避させた状態を示している。
図8の(b)は次の加工工程を示しており、次の加工工程においてサイドフランジWsfが前側探索範囲4110と干渉する。このような場合、プレスブレーキ制御装置50は、
図8の(a)に示すように、前側監視領域411及び奥側監視領域413が、前側探索範囲4110内のサイドフランジWsfの最大高さHsfよりも上方に位置するように上部テーブル10を上方に退避させる。
【0056】
このようにすれば、次の加工工程の開始時において、停止信号Sstopとして値“1”が出力され、プレスブレーキの動作が停止してしまうことを回避することができる。
【0057】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。