(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
停電時に前記無停電電源からの通電がない場合に、鍵を差し込んで回すことで前記電磁ドアロックを施錠状態にするための鍵装置を備えることを特徴とする請求項3に記載の恒温槽。
前記ドアは、前記収容部内を確認するための窓を閉塞する透明板と、前記透明板の周囲に配置されている窓防磁部材とを有し、前記窓防磁部材は、前記漏磁防止手段であることを特徴とする請求項3または4に記載の恒温槽。
前記本体には、結線用の開口を有し、前記結線用の開口は、開口閉鎖防磁部材で閉塞され、前記開口閉鎖防磁部材は、前記漏磁防止手段であることを特徴とする請求項7に記載の恒温槽。
前記本体は、前記収容部内の温度を維持するために空気を通す通気口を有し、前記通気口には、通気口防磁部材が配置され、前記通気口防磁部材は、前記漏磁防止手段であることを特徴とする請求項8に記載の恒温槽。
前記本体は、部材を通すための部材通し用開口を有し、前記部材通し用開口はシールドコーキングがされ、前記シールドコーキングは、前記漏磁防止手段であることを特徴とする請求項9に記載の恒温槽。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の保管庫の内部では、物品情報読み取り装置が、物品を出し入れする際に物品に関する情報の読み取りをするので、その際に生じる電磁波が保管庫の外部に漏出する可能性がある。電磁波が保管庫の外部に漏出すると、物品情報等の情報が外部に漏れてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、電磁波が外部に漏出するのを防ぐことができる恒温槽を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、請求項1に記載の恒温槽は、保管対象物を所定の温度で保管するための収容部を有する本体と、前記収容部内の前記保管対象物の温度情報を検出する保管対象物温度計と、前記本体の内部に配置されて、前記収容部内の前記保管対象物から出される前記保管対象物に関する情報を受信する情報受信部と、前記収容部内で発生する電磁波が前記収容部内から外部へ漏出するのを防止する漏磁防止手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の恒温槽では、漏磁防止手段が、収容部内で発生する電磁波が前記収容部内から外部へ漏出するのを防止するので、電磁波が本体の外部に漏出するのを防ぐことができる。このため、保管対象物に関する情報が庫外に漏れるのを防ぐことができる。
【0008】
請求項2に記載の恒温槽では、前記本体は、前記収容部に通じる開口部と、前記開口部を開閉可能に塞ぐドアと、前記ドアの周囲に設けられたドア防磁部材とを有し、前記ドア防磁部材は、前記漏磁防止手段であることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の恒温槽では、ドアの周囲にはドア防磁部材が設けられているので、電磁波がドアの周囲から本体の外部に漏出するのを防ぐことができる。
【0010】
請求項3に記載の恒温槽では、前記ドアは、前記収容部内を確認するための窓を閉塞する透明板と、前記透明板の周囲に配置されている窓防磁部材とを有し、前記窓防磁部材は、前記漏磁防止手段であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の恒温槽では、窓防磁部材が透明板の周囲に配置されているので、電磁波がドアの窓の周囲から本体の外部に漏出するのを防ぐことができる。
【0012】
請求項4に記載の恒温槽では、前記透明板に貼り付けられる透明板防磁部材を有し、前記透明板防磁部材は、前記漏磁防止手段であることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の恒温槽では、透明板防磁部材が透明板に貼り付けられるので、電磁波がドアの窓の透明板から本体の外部に漏出するのを防ぐことができる。
【0014】
請求項5に記載の恒温槽では、前記透明板防磁部材は、前記透明板の内側と外側に貼り付けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の恒温槽では、透明板防磁部材は、透明板の内側と外側に貼り付けられているので、電磁波がドアの窓の透明板から本体の外部に漏出するのを、より確実に防ぐことができる。
【0016】
請求項6に記載の恒温槽では、前記本体には、結線用の開口を有し、前記結線用の開口は、開口閉鎖防磁部材で閉塞され、前記開口閉鎖防磁部材は、前記漏磁防止手段であることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の恒温槽では、結線用の開口は、開口閉鎖防磁部材で閉塞されているので、電磁波が結線用の開口から本体の外部に漏出するのを防ぐことができる。
【0018】
請求項7に記載の恒温槽では、前記本体は、前記収容部内の温度を維持するために空気を通す通気口を有し、前記通気口には、通気口防磁部材が配置され、前記通気口防磁部材は、前記漏磁防止手段であることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の恒温槽では、通気口には、通気口防磁部材が配置されているので、電磁波が通気口から本体の外部に漏出するのを防ぐことができる。
【0020】
請求項8に記載の恒温槽では、前記本体は、部材を通すための部材通し用開口を有し、前記部材通し用開口はシールドコーキングがされ、前記シールドコーキングは、前記漏磁防止手段であることを特徴とする。
【0021】
請求項8に記載の恒温槽では、部材通し用開口はシールドコーキングがされているので、電磁波が部材通し用開口から本体の外部に漏出するのを防ぐことができる。
【0022】
請求項9に記載の恒温槽では、前記本体に接続されている電源ケーブルは防磁ケーブルであり、前記防磁ケーブルは、前記漏磁防止手段であることを特徴とする。
【0023】
請求項9に記載の恒温槽では、電源ケーブルは防磁ケーブルであるので、電磁波が電源ケーブルから漏出するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、電磁波が外部に漏出するのを防ぐことができる恒温槽を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を用いて、本発明を実施するための形態(以下、実施形態と称する)を説明する。
【0027】
(恒温槽1の全体構成)
図1は、本発明の恒温槽の好ましい実施形態を示す正面図である。
図2は、
図1に示す恒温槽1の内部構造例を模式的に示す左側の側面図である。
図3は、
図1に示す恒温槽1の右側の側面図である。
図4は、
図1に示す恒温槽1の背面図である。
図5は、
図1に示す恒温槽1の平面図である。
【0028】
図1ないし
図3に示す恒温槽1は、内部温度を精密に制御して管理することができる箱型の保管庫である。この恒温槽1は、例えば、
図2に例示するように、保管対象物の一例である複数のボトルBを、好ましくは低温状態を維持した状態で保管することができ、恒温槽1は、低温恒温槽あるいは冷蔵庫ともいう。恒温槽1は、
図2に示す薬品等を収容したボトルBを、所定温度(例えば4℃)の低温の状態に保持できるように、恒温槽1内を温度制御して保管管理する。
【0029】
図1ないし
図3に示すように、この恒温槽1は、本体2と、ドア(扉)3を備える。本体2とドア3は、金属製であり、例えばSUS(ステンレス鋼)により作られている。本体2は、好ましくは箱型の収容体である。
図1に示すように、本体2は、上面4と、下面5と、左右の側面6,7と、背面8と、前面9を有している。本体2の下面5は、移動可能にするために、四隅部にキャスタ5Aを備えている。
【0030】
図2に示すように、本体2は、内部に収容部20を有する。本体2の前面9には、ボトルB等を収容部20内へ出し入れするための縦長の長方形の開口部10が設けられている。
図1と
図2に示すように、例えば片開き式の長方形状のドア3は、本体2に対して、ヒンジ部11を用いて、開閉可能に取り付けられている。本体2内の収容部20は、ドア3により開口部10を塞ぐことで、外部に対する密封性と断熱性を保持している。
【0031】
図1に示すように、ドア3は、本体2の収容部20内が見えるように、透光性を有する例えば長方形状の観測窓12を有する。この観測窓12には、例えば透明なペアガラスがはめ込まれている。観測窓12としてペアガラスを用いることで、普通の一枚板のガラスを用いる場合に比べて、ドア3は、断熱性を確保でき、収容部20内の冷却状態を維持し易い。
【0032】
図1に示すように、ドア3は、把手3Aと、電磁ドアロック13と、非常時に用いられる鍵装置14を備える。
【0033】
図1と
図3に示すように、本体2の上面4には、モニタ表示部15が配置されている。このモニタ表示部15は、例えばカラー液晶表示部であり、使用者が画面にタッチすることで、各種の情報の表示や、本体2に対して指示する項目等を入力することができる。
図3に示すように、モニタ表示部15は、上面4に対して、脚部16により支持されており、モニタ表示部15の位置と姿勢は、脚部16を用いて、自在に変更することができる。
【0034】
図1に示す電磁ドアロック13は、使用者が、本体2において認証を受けることで、ドア3を施錠したり、逆にドア3の施錠を解除することができる。使用者が、例えばモニタ表示部15の画面15Aに対して、タッチ入力で所定のパスワードを入力したり、認証用のカードを近づけることで、使用者は、ドア3を施錠したり、逆にドア3の施錠を解除することができる。
【0035】
この電磁ドアロック13は、例えば商用電源からの電源供給を受けてドア3の施錠動作をする。このように、ドア3は、電磁ドアロック13を備えているために、恒温槽1が通常の連続運転を行っている際に、認証された使用者以外の者がドア3を開けることができない。従って、
図2に示すように、恒温槽1の収容部20内に保管されているボトルBは、認証された使用者以外の者は取り出すことができない。これにより、恒温槽1がボトルBを連続して低温保管をしているときに、ボトルBの保管上のセキュリティの保持ができる。
【0036】
また、非常の場合、例えば停電時には、電磁ドアロック13は商用電源からの通電がないために、ドア3を解錠状態にしてしまう。停電時に、無停電電源(UPS電源)からの通電があれば、電磁ドアロック13によりドア3の施錠状態を維持することができる。しかし、無停電電源からの通電ない場合には、使用者が、
図1に示す鍵装置14に、鍵を差し込んで回すことで、ドア3をロック(施錠)状態にして、ドア3が開かないようにすることができる。
【0037】
これにより、恒温槽1が停電により外部から電源供給を受けられない場合等の非常時には、認証された使用者以外の者が、恒温槽1の収容部20内に保管されているボトルBを、取り出すことができないので、恒温槽1は、停電時に、ボトルBの保管上のセキュリティの保持ができる。
【0038】
図1に示すように、本体2の上部には、庫内温度表示部17と、記録計17Aと、温度調節器17Bと、独立過昇防止器17Cが設けられている。この庫内温度表示部17は、グリコール温度計ともいい、
図2に示す収容部20内におけるボトル温度計29が測定するボトル温度の情報を表示する。記録計17Aは、ボトル温度計29が測定するボトル温度の情報と、収容部20内の測定温度等を記録する。温度調節器17Bは、収容部20内の温度を調節する。
【0039】
図1に示すように、本体2の上部には、上限限界温度異常表示部18Aと、下限限界温度異常表示部18Bと、ドア開成表示部18Cと、異常警報ブザー19が、設けられている。上限限界温度異常表示部18Aと下限限界温度異常表示部18Bは、例えばともに赤色ランプであり、ドア開成表示部18Cは、例えば黄色ランプである。
【0040】
図1に示す上限限界温度異常表示部18Aは、
図2に示すボトルBが所定温度(例えば4℃)を超えた温度、例えばアラーム設定値の6℃を超えたときに、
図2に示す制御部100の指令により、ボトルBの温度の異常上昇を点灯して警報し、異常警報ブザー19が音でも警報する。下限限界温度異常表示部18Bは、ボトルBが所定温度を下回った温度、例えば4℃を下回ったときに、制御部100の指令により、ボトルBの温度の異常下降を点灯して警報し、異常警報ブザー19が音でも警報する。
【0041】
図1に示すドアセンサ18Dは、ドア3が開いていることを検出して、
図2の制御部100に通知する。
図1のドア開成表示部18Cは、例えばドア3が所定時間を超えて開いていると制御部100が判断すると、制御部100の指令により点灯して、ドア3が開成状態であることを警報するとともに、異常警報ブザー19が音でも警報する。
【0042】
(収容部20の構造)
次に、
図2を参照して、本体2の収容部20の構造例を説明する。
【0043】
図2に示す収容部20は、
図2に例示するように、保存対象物である例えば薬品を充填した複数のボトルBを収容して、これらのボトルBを、所定温度、例えば2℃から8℃の低温の温度範囲の内の所定温度である好ましく4℃に保持する。
【0044】
この収容部20の内面は、上面20A、下面20B、左右の側面20C,20Cと、背面20Dを有する。収容部20の上面20A、下面20B、左右の側面20C,20Cと、背面20Dの外側の周囲には、温度調整空気導入経路30が、収容部20の内部の温度調整をするために設けられている。すなわち、温度調整空気導入経路30は、収容部20の上面20A,下面20B,左右の側面20C,20C,背面20Dの外側において温度調整空気を通して、温度調整空気を収容部20内に導入する。
【0045】
図3に示す温度調整空気導入経路30は、背面20Dの後側に、図示しないが温度調整用の熱交換器とヒータを有する。熱交換器とヒータは、収容部20の槽内の温度調整を行う。これにより、収容部20の内部は、指定の温度で低温状態に維持した状態で、ボトルBの温度を、例えば2℃から8℃の温度範囲内の所定温度として、好ましくは4℃に保持することができる。
【0046】
収容部20内には、複数の棚板21,22が水平にしかも間隔をおいて配置されている。棚板21は、左右の側面20C,20Cは、それぞれ棚板支持部23,23を備えている。左右の棚板支持部23,23は、上下方向に沿って配置されて棚板21,22の両端部を保持している。
【0047】
棚板21の上下方向の位置は、棚板支持部23,23において任意に変更することができる。これに対して、最も下段に位置する棚板22は、上下方向の位置が高さ20Eの位置で固定されている。このように、最も下段に位置する棚板22の上下方向の位置が固定されているのは、この棚板22の下の位置に次に説明するボトル温度計29を配置するためである。これにより、棚板22の位置が固定されているので、ボトル温度計29を置くための空間を確保でき、棚板22がボトル温度計29に誤って当たることを防げる。
【0048】
図2に示すように、収容部20の下面20Bの上には、例えば1つのボトル温度計29が配置されている。ボトル温度計29は、保管対象物であるボトルBの温度を直接測定する代わりに、ボトルBのダミーとして測定して、ボトル温度計29が測定したボトル温度情報BTの温度をボトルBの温度とみなす。このボトル温度計29は、保管対象物温度計の例である。
【0049】
図2に例示するボトル温度計29は、ダミーボトルを有している。このダミーボトルの大きさや材質は、例えばボトルBのものと同様のものとすることができる。ダミーボトルの中には、ボトル内部液として例えば無毒性グリコールが収容されており、温度プローブがこのグリコールの温度を測定するようになっている。
【0050】
このボトル内部液は、ボトルBに収容されている薬品に相当するダミーの薬品である。これにより、このボトル温度計29は、収容部20内におけるボトルBの温度を直接測定するのに代えて、収容部20内におけるボトルBの薬品の温度をモニタリングすることができる。
【0051】
図2に例示するように、例えば1つのボトル温度計29は、本体2の外界雰囲気の影響を受け易い収容部20の内部の前面側に置く。すなわち、ボトル温度計29は、例えばドア3を開けると温度変化が生じやすい位置であるドア3寄りの前側の位置等に配置するのが好ましい。ボトル温度計29により検出される検出温度は、各ボトルB内の薬品の温度よりも高くないものとする。
【0052】
図2に示すボトル温度計29が検出するボトル温度情報の温度は、ワークであるボトルBの温度として扱う。すなわち、ボトルB内の薬品の温度は直接測定できないので、ボトル温度計29が測定するボトル温度情報の温度が、ボトルBの温度情報の温度であるとして扱われる。このボトル温度情報の温度は、例えば有線の通信線を介して、
図2に示す制御部100に通知される。モニタ表示部15は、制御部100からの指令により、ボトル温度情報の温度を表示する。制御部100とコンバータ101等が、本体2の上部に配置されている。
【0053】
また、ボトル温度情報の温度(ボトルBの温度情報の温度)が、所定温度(例えば4℃)を超えた温度、例えばアラーム設定値の6℃を超えたときには、制御部100の指令により、上限限界温度異常表示部18Aが点灯して警報し、異常警報ブザー19が警報する。ボトル温度情報の温度(ボトルBの温度情報の温度)が、所定温度を下回った温度、例えば4℃を下回ったときには、制御部100の指令により、下限限界温度異常表示部18Bは点灯して警報し、異常警報ブザー19が警報する。
【0054】
図2に示すように、収容部20の内部には、情報受信部として、好ましくは複数の受信用のアンテナ40から43が配置されている。アンテナ40は上面20Aに配置され、アンテナ43は下面20Bに配置されている。アンテナ41,42は背面20Dに配置されている。
【0055】
図2に示すように、収容部20の内部に配置されるボトルBには、それぞれボトルBに関する個別の情報を発信するための情報発信部としての、情報発信機能部50が例えば貼り付けることで配置されている。各ボトルBの情報発信機能部50は、そのボトルBの個別情報を記憶している。収容部20内では、アンテナ40から43の少なくとも1つは、情報発信機能部50から送信されてくるボトルBの個別情報を、無線通信により受信して、制御部100に送る。
【0056】
アンテナ40から43は、ボトルBの個別情報を受信する情報受信部の例である。各ボトルBの情報発信機能部50が、アンテナ40から43側から無線で、問い合わせを受けると、各情報発信機能部50は、記憶しているボトルBの個別情報、例えばボトルBの製造番号(ロット番号)、ボトルBの重量、ボトルBの中に入っている薬品の種類等のボトルB(薬品)に関する情報等を、アンテナ40から43の少なくとも1つへ無線で送信する。
【0057】
このように、複数のアンテナ40から43が収容部20内の異なる位置に配置されているので、ボトルBが収容部20内のどの位置にあっても、各ボトルBの情報発信機能部50からの個別情報を、確実に受信できる。
【0058】
例えば、制御部100は、アンテナ40から43で受信したボトルBについての個別情報から、ボトルBの在荷情報を得る。また、制御部100は、収容部20内にある重量センサからボトルBの重量情報を得る。制御部100は、在荷情報や重量情報からボトルBの監視情報を作成する。この監視情報は、制御部100から、外部通信ユニット102を通じて、例えば本体2の外部の所定の情報ステーションに、無線または有線により送信することができる。
【0059】
(恒温槽1の漏磁防止構造例)
次に、恒温槽1に設けられている漏磁防止構造の具体的な例を説明する。
【0060】
上述したように、
図2に例示するアンテナ40から43や、各ボトルBの情報発信機能部50は、収容部20内で電磁波を発生する。この発生した電磁波が、本体2の収容部20内から、本体2の庫外に漏出するのを防止する漏磁防止手段60が、本体2の各部位に配置されている。これにより、電磁波が本体2の外部に漏出するのを防ぐことができ、ボトルBに関する情報が、本体2の庫外に漏れ出るのを防ぐことができる。以下に、具体的に説明する漏磁防止手段60は、電気的にグランドに接地されている。
【0061】
(ドア用の防磁部材61)
まず、
図6から
図8を参照して、ドア用の防磁部材61について説明する。
【0062】
図2と
図6に示すように、本体2は長方形の開口部10を有しており、ドア3はこの開口部10を開閉可能に塞ぐ。
【0063】
図6は、本体2とドア3を示す分解斜視図である。
図6に示すドア用の防磁部材61は、漏磁防止手段60の例であり、ドア3の内側であってドア3の周囲に対応する位置、すなわち本体2の前面9にある開口部10の周囲の位置に配置されている。このドア用の防磁部材61は、
図6に例示している。ドア用の防磁部材61は、本体2の前面9において、開口部10を形成している縁部分に沿って取り付けられている。
【0064】
このドア用の防磁部材61は、開口部10を形成している縁部分に沿った長方形状の枠型になっており、例えば導電材の心材に対して網状の金属物質で覆った構造のものを採用できる。ドア用の防磁部材61は、電気的にグランドに接地されている。
図7は、本体2に配置されたこのドア用の防磁部材61の一部を示し、
図8は、
図7に示すR部分の拡大図である。
図9は、
図3に示す部分Nのドア用の防磁部材61とドアセンサ18Dの付近を示す図である。
【0065】
これにより、ドア用の防磁部材61は、ドア3と本体2の前面9との間では、アンテナ40から43や、各ボトルBの情報発信機能部50が、収容部20内で発生する電磁波を、ドア3と本体2の前面9の間から庫外に漏出するのを防止する。
【0066】
(窓防磁部材62)
次に、
図6と
図10を参照して、窓防磁部材62について説明する。
【0067】
図10は、観測窓12の透明板63の断面構造例を示している。
【0068】
図6に示すように、ドア3は、収容部20内を確認するための観測窓12を閉塞する透明板63と、透明板63の周囲に配置されている窓防磁部材62を有している。窓防磁部材62は、漏磁防止手段60の例であり、観測窓12の周囲に配置されている。この漏磁防止手段60は、ドア3の外面から見えないようにドア3の内側において、観測窓12を形成している部分に沿って配置されている。
【0069】
図10に示すように、透明板63は、好ましくはペアガラスであり、第1ガラス板63Aと、第2ガラス板63Bを有している。第1ガラス板63Aと第2ガラス板63Bとの間には、空気層63Cが形成されている。これにより、透明板63がペアガラスであり空気層63Cを有していることから、透明板63の断熱性を向上している。
【0070】
第1ガラス板63Aの外面63Dには、フィルム状の透明板防磁部材64が貼り付けられている。また、第2ガラス板63Bの内面63Eには、フィルム状の別の透明板防磁部材65が貼り付けられている。透明板防磁部材64と別の透明板防磁部材65は、例えば細い金属製のメッシュ部材を有しており、透明板防磁部材64と別の透明板防磁部材65は、漏磁防止手段60の例である。透明板防磁部材64と別の透明板防磁部材65は、電気的にグランドに接地されている。
【0071】
これにより、窓防磁部材62は、アンテナ40から43や、各ボトルBの情報発信機能部50が、収容部20内で発生する電磁波を、観測窓12付近から庫外に漏出させてしまうのを防止する。
【0072】
(結線用の開口のための開口閉鎖防磁部材70)
次に、
図3と
図11を参照して、結線用の開口のための開口閉鎖防磁部材70を説明する。
【0073】
図11は、本体2の側面7に設けられた結線用の開口71と、開口閉鎖防磁部材70の断面構造例を示している。
【0074】
図3と
図1に示すように、本体2の側面7には、結線用の開口71が設けられている。この結線用の開口71は、結線(配線ライン)を
図2の収容部20内から外部に導くための例えば円形状の貫通孔である。結線用の開口71の好ましくは外側と内側は、開口閉鎖防磁部材70で閉塞されている。開口閉鎖防磁部材70は、漏磁防止手段60の一例である。開口閉鎖防磁部材70は、電気的にグランドに接地されている。
【0075】
図11に示すように、開口閉鎖防磁部材70は、例えば結線用の開口71の周囲に固定されるリング状の固定部材72と、円形状の蓋部材73を有する。この蓋部材73は、固定部材72に対して着脱可能に取り付けられている。例えば、固定部材72は金属製であり、円形状の蓋部材73はプラスチック製であるが、固定部材72がプラスチック製であり、円形状の蓋部材73が金属製でも良い。
【0076】
これにより、開口閉鎖防磁部材70は、アンテナ40から43や、各ボトルBの情報発信機能部50が、収容部20内で発生する電磁波を、結線用の開口71から庫外に漏出するのを防止する。
【0077】
(通気口防磁部材90)
次に、
図1から
図4と
図12を参照して、通気口防磁部材90を説明する。
【0078】
図1に示すように、本体2の前面9の下部には、通気口80が設けられ、
図2に示すように、本体2の側面6の下部には、通気口81が設けられている。
図3に示すように、本体2の側面7の下部には、通気口82が設けられ、
図4に示すように、本体2の背面8の下部には、通気口83が設けられている。
【0079】
図12は、例えば通気口防磁部材90を備える通気口80の構造例を、代表して示す断面図である。
図1から
図4に示すように、本体2の通気口80から83は、収容部20内の温度を維持するために配置されている熱交換器やヒータ等の熱を、本体2から本体2の庫外へ空気を通すことで排気する。
【0080】
各通気口80から83には、ステンレス等の金属製の通気口板79を有している。通気口板79の内側には、それぞれ通気口防磁部材90が配置されている。通気口防磁部材90は、ステンレス等の金属製のメッシュ部材であり、漏磁防止手段60の一例である。通気口防磁部材90は、電気的にグランドに接地されている。
【0081】
これにより、通気口防磁部材90は、アンテナ40から43や、各ボトルBの情報発信機能部50が、収容部20内で発生する電磁波を、通気口80付近から庫外に漏出させてしまうのを防止する。
【0082】
(部材通し用防磁部材95)
次に、
図4を参照して、部材通し用防磁部材95を説明する。
【0083】
図4に示すように、本体2の側面8の上部には、部材通し開口96やサービスコンセント99が設けられている。部材通し開口96は、部材通し用防磁部材95を備える。部材通し開口96は、例えばLAN(ローカルエリアネットワーク)用のLANポートである。この部材通し開口96は、導電性のシールドコーキングである部材通し用防磁部材95により防磁されている。部材通し用防磁部材95は、漏磁防止手段60の一例である。部材通し用防磁部材95は、電気的にグランドに接地されている。
【0084】
これにより、部材通し用防磁部材95は、アンテナ40から43や、各ボトルBの情報発信機能部50が、収容部20内で発生する電磁波を、部材通し開口96付近から庫外に漏出させてしまうのを防止する。
【0085】
(電源ケーブル97)
また、
図1に示すように、本体2に接続されている電源ケーブル97は、防磁ケーブルである。電源ケーブル97には、防磁用の金属製のメッシュが配置されている。防磁ケーブルである電源ケーブル97は、漏磁防止手段60の一例である。電源ケーブル97は、電気的にグランドに接地されている。
【0086】
これにより、電源ケーブル97は、アンテナ40から43や、各ボトルBの情報発信機能部50が、収容部20内で発生する電磁波を、電源ケーブル97から庫外に漏出させてしまうのを防止する。
【0087】
図13は、ボトルBとボトル温度計29を収容部20内に配置する際の好ましい領域120の例を模式的に示す平面図である。収容部20において、ボトルBとボトル温度計29を配置して温度補償をするための好ましい領域120は、斜線で示す範囲である。この領域120は、収容部20の全領域に対して、好ましくは10%小さくした範囲である。
【0088】
(恒温槽1におけるボトルBの温度制御例)
次に、
図14を参照して、
図3の恒温槽1の収容部20内に保管されているボトルBの温度制御例を説明する。
図14は、恒温槽1の収容部20内に保管されているボトルBの温度制御例を示している。
【0089】
図14では、縦軸が温度T(℃)を示し、横軸が時間(t)を示している。
図14の縦軸には、好ましい温度設定例を示している。例えば、ボトル温度TPが4℃であり、ボトル温度の下限値T2が2℃であり、ボトル温度の上限値T1が8℃である。そして、ボトル温度の警告をするためのアラーム設定値TSは、8℃よりも低い温度である例えば6℃である。このボトル温度TPは、上述した
図5に示すボトル温度計29により得られるボトル温度情報の温度である。2℃を下回った場合には、本体2が異常状態である。
【0090】
図14には、ボトル温度TPの曲線TT,TT1と、収容部20(槽内)温度の曲線TRを示している。
図3に示す収容部20内に配置されたボトルBのボトル温度TPが4℃で維持された状態で、時間t0において、
図3のドア3が開くと、ボトル温度TPの曲線TTと、槽内温度の曲線TRは、4℃から共に上昇を始める。
【0091】
図14において時間t0から時間tCになると、
図1のドア3が開いているので、槽内温度の曲線TRは、上限値T1(8℃)よりもさらに上昇することにより、ボトル温度TPの曲線TTが所定温度の4℃からアラーム設定値TSの6℃を超えるおそれがある。
【0092】
このように、ボトル温度TPが予め定めたアラーム設定値TS(例えば6℃)を超えると、
図5に示す異常警報音発生部61Cは、警報音(アラーム)を発生する。異常警報音発生部61Cが警報音を発生することで、警報を受けた使用者はドア3をすぐに閉じることができる。これにより、ドア3を開けたとしても、ボトルB内の薬品が上限値T1を超えることがないようにドア3を閉めることができる。
【0093】
なお、時間t0から時間tCの時間Δtの値は、変数であり、例えばボトルの大きさや材質、薬品の種類や量等により異なる。
【0094】
図14において、さらに時間tDにおいてドア3を閉めると、槽内温度の曲線TRは下がって槽内温度の曲線TRは再び所定温度4℃を維持するので、ボトル温度の曲線TTは、上限値T1(8℃)を超えないようにして、再び徐々に下がって4℃になっていく。
【0095】
例えば、時間tDにおいて、槽内温度の曲線TRは4℃である。ボトル温度TPの曲線TTが下がっていって例えば5℃位になったときに、使用者が時間tDにおいて再びドア3を開けたとすると、ボトル温度TPの曲線TTは、ボトル温度TPの曲線TT1に示すように、再び上昇する。
【0096】
そして、時間tEにおいてボトル温度TPがアラーム設定値TSを超えるので、
図5に示す異常警報音発生部61Cは、再び警報音(アラーム)を発生する。異常警報音発生部61Cが警報音を発生することで、警報を受けた使用者は、ドア3を時間tEにおいてすぐに閉じることができる。これにより、ドア3を再び開けたとしても、ボトルB内の薬品が上限値T1を超えることがないように、ボトルBは収容部20内において所定温度の4℃で保管することができる。
【0097】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、各実施形態は一例であり、特許請求の範囲に記載される発明の範囲は、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更できるものである。
【0098】
上述した実施形態の恒温槽1は、例えば保管対象物としては、所定温度の低温で保管する必要がある薬品を例に挙げているが、これに限らず、他の種類や分野の保管対象物であっても良い。
【0099】
情報受信部としてのアンテナの配置数や配置位置や配置姿勢は、図示例に限らず、任意に設定できる。保管対象物であるボトルBの配置数や配置位置は、図示例に限らず、任意に設定できる。
【0100】
棚板21の配置枚数等は、
図3に示す例に限定されない。精密な温度管理を要する薬品等は、例えばガラス製のボトル状の容器に限らず、他の形状の容器であっても良い。ドア3は片開き式ではなく、両開き式(観音開き式)でも良い。