特許第6499229号(P6499229)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6499229閉塞面の外周縁部から延びるアンカーを有する閉塞デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6499229
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】閉塞面の外周縁部から延びるアンカーを有する閉塞デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20190401BHJP
【FI】
   A61B17/12
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-121541(P2017-121541)
(22)【出願日】2017年6月21日
(62)【分割の表示】特願2014-530881(P2014-530881)の分割
【原出願日】2012年9月14日
(65)【公開番号】特開2017-196447(P2017-196447A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2017年7月5日
(31)【優先権主張番号】61/535,830
(32)【優先日】2011年9月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/615,228
(32)【優先日】2012年9月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】コビー シー.ラーセン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ジェイ.マスターズ
(72)【発明者】
【氏名】エドワード イー.ショー
【審査官】 後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−529384(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0054515(US,A1)
【文献】 特表2003−529410(JP,A)
【文献】 特表2007−502689(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0062838(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
係合手段と;
前記係合手段の外辺部のまわりの異なる部位から延びる複数の細長部材と;
前記複数の細長部材に配置された膜と;を具備する閉塞デバイスであって、
前記膜と前記複数の細長部材は、
外周部を有する閉塞面であって、各々が該面部分の前記外周部の方へ湾曲している前記複数の細長部材の第1部分を含む閉塞面と;
前記閉塞面に対して遠位へ、遠位端まで延びる本体部であって、前記遠位端へ向かうテーパー部を形成していて、前記テーパー部を形成するために互いの方へ収束する前記複数の細長部材の第2部分を含む本体部と;を形成しており、
前記閉塞面は、前記係合手段に関する時計回り方向及び反時計回り方向の少なくとも一方において前記閉塞面の領域内で湾曲している前記複数の細長部材の各々の部分によって形成され、前記閉塞面が略平面である、閉塞デバイス。
【請求項2】
前記閉塞面は展開形態において適合性を有する、請求項1に記載の閉塞デバイス。
【請求項3】
前記閉塞面は前記展開形態において生体組織の部分の小口の形状に適合可能である、請求項に記載の閉塞デバイス。
【請求項4】
前記本体部は展開形態において適合性を有する、請求項1に記載の閉塞デバイス。
【請求項5】
前記本体部は前記展開形態において生体組織の部分の形状に適合可能である、請求項に記載の閉塞デバイス。
【請求項6】
前記閉塞面は心耳の小口の形状に適合可能であり、前記本体部は前記心耳に適合可能である、請求項1に記載の閉塞デバイス。
【請求項7】
前記係合手段はアイレットを具備する、請求項1に記載の閉塞デバイス。
【請求項8】
複数の細長部材上に配置された膜を具備する、患者の付属器官を閉塞する閉塞デバイスであって、
前記膜及び前記複数の細長部材は:
前記付属器官の小口に適合するように構成された閉塞面であって、外周部を有し、前記外周部は、各々が該面部分の前記外周部の方へ湾曲している前記複数の細長部材の第1部分を含んでいる、閉塞面と、
前記付属器官に適合するように構成されて、前記閉塞面からテーパー部を形成している本体部であって、前記テーパー部を形成するために互いの方へ収束する前記複数の細長部材の第2部分を含む本体部と、を形成しており、
前記閉塞面は、時計回り方向及び反時計回り方向の少なくとも一方において前記閉塞面の領域内で湾曲している前記複数の細長部材の各々の部分によって形成され、前記閉塞面が略平面である、閉塞デバイス。
【請求項9】
前記複数の細長部材は、ファン状に広がって該閉塞デバイスの閉塞手段及びアンカー手段を形成するように構成されている、請求項に記載の閉塞デバイス。
【請求項10】
前記アンカー手段は、フレーム要素の複数のストラットに曲がり部を含んでいる、請求項に記載の閉塞デバイス。
【請求項11】
前記アンカー手段は、前記フレーム要素の外側部分に位置決めされた少なくとも一つのアンカーを具備する、請求項10に記載の閉塞デバイス。
【請求項12】
前記少なくとも一つのアンカーは、前記フレーム要素の前記テーパー状領域において前記フレーム要素の部分に配置されて取り付けられている、請求項11に記載の閉塞デバイス。
【請求項13】
前記膜は、該膜を通過する血流を妨げる速やかな組織の内部成長を誘発するように構成されている、請求項に記載の閉塞デバイス。
【請求項14】
前記膜及び前記複数の細長部材は送達形態と展開形態とを有し、前記膜及び前記複数の細長部材は、送達システムの構成要素の中に挿入されるときに前記送達形態に畳まれるように構成されている、請求項に記載の閉塞デバイス。
【請求項15】
前記複数の細長部材の前記第1部分が共通の湾曲を含んでいる、請求項に記載の閉塞デバイス。
【請求項16】
前記複数の細長部材の前記第1部分が交差していない、請求項に記載の閉塞デバイス。
【請求項17】
前記複数の細長部材の前記第1部分が接続されていない、請求項に記載の閉塞デバイス。
【請求項18】
複数の細長部材を含むフレーム要素であって、遠位端と近位端、送達形態と展開形態、閉塞面、円筒状領域、及びテーパー状領域を有するフレーム要素と;
前記フレーム要素の前記テーパー状領域及び前記閉塞面を実質的に覆う膜と;
を具備する閉塞デバイスであって、
前記閉塞面は、前記フレーム要素の長手方向軸線に関する時計回り方向及び反時計回り方向の少なくとも一方において該閉塞面の領域内で湾曲している前記複数の細長部材の各々の部分によって形成されるとともに、前記フレーム要素の前記近位端の方に位置づけられており、
前記円筒状領域は、前記閉塞面から第1の距離だけ略遠位方向に延びており、
前記テーパー状領域は、前記展開形態において、前記遠位端と前記近位端との間で前記円筒状領域の遠位端から延びており、
前記複数の細長部材は、前記展開形態において、前記遠位端から前記閉塞面へファン状に広がっており、前記閉塞面が略平面である、閉塞デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2011年9月16日に出願された米国特許仮出願No.61/535,830の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、例えば、患者体内の構造又は導管、特にヒトの心臓の心耳、を閉塞するために使用できる閉塞デバイスに関し、また、そのデバイスを送達、展開、及び撤去又は再配置を含めてそのデバイスを作成し使用する方法に関する。本明細書に記載されたデバイスは経皮的に又は血管内を経由して送達できる。
【背景技術】
【0003】
塞栓性脳卒中はわが国の死因の第3位であり、身体障害の主要な原因である。合衆国だけで年間780,000件を超える脳卒中が発生している。このうち約110,000件が出血性脳卒中であり、670,000件が虚血性脳卒中(血管狭窄又は塞栓による)である。心臓が原因になる虚血性脳卒中の最も多い原因は心房細動による血栓塞栓症である。6件中1件の脳卒中(年間約130,000件)が心房細動に基因する。心房細動は最も普通の心臓不整脈である。それが起こると急速な乱れた心拍動が生じ、心拍出量が低下し、血管系に不規則で乱れた血流が生ずる。世界中に800万人を超える心房細動の患者がおり、毎年80万件の新たな症例が報告されている。心房細動は年齢が同等の健康な対照群に比べて脳卒中のより大きなリスクと結びついている。心房細動の患者は、一部は脳卒中の恐れのために、さらにそのリスクを減らすために必要な投薬治療のために、生活の質が著しく低下するのが普通である。
【0004】
患者が心房細動から心房内血栓を生ずるとき、血塊は90パーセントをこえる時間で心臓の左心耳で又は左心耳を起源として発生する。左心耳は小さな親指又は吹き流しに似た形の閉じた空洞である。それは僧帽弁と左肺静脈の間の左心房の前外側壁に結合している。正常な心臓サイクルで左心耳は左心房と共に収縮し、血液が停滞しないようにする。しかし、心房細動では、左心耳はしばしば電気信号の乱れのために力強く収縮できない。その結果、左心耳内の滞留した血液中に血塊が形成されやすくなる。
【0005】
心房細動患者における脳卒中防止のための薬物治療、例えばワーファリンの経口投与又は全身投与は、しばしば重篤な副作用や患者の順守の欠如のために不十分になることがある。侵襲的な外科的又は胸腔鏡下の手術が左心耳を除去するために行われているが、多くの患者は病状が良くないために又は前に心臓手術を行ったためにこの手術の候補者として適当でない。さらに、これらの外科治療に認められる大きなリスクはしばしばそれによって得られる可能な利益を上回る。
【0006】
心房細動の患者における脳卒中の防止のために左心耳を閉塞しようと試みる現在の市販のデバイスの多くは、心耳自身の組織と係合する組織貫通固定部材を有する剛い円筒状支持フレームを用いている。左心耳の入口部は幾何形状及びサイズが様々である。円形の入口部を前提とした剛いフレームによって左心耳を封止することは血栓塞栓が全身の血液循環に入り込むのを阻止するのに有効でないことがある。
【0007】
現在のデバイスのいくつかに見られるもう一つの問題は、デバイスで用いられる濾過式の膜にある。これらの膜はマクロな孔を有し、膜を通る血流を停止させるのに相当な時間を必要とするのが普通である。これらの膜は左心耳を閉塞するのに数時間から数週間かかることがある。フィルタ膜の凝固/閉塞プロセスが起こっている間に血栓塞栓が血流に入り込む可能性がある。心房細動の患者の多くは血液をさらさらにするための何らかのタイプの(凝固防止剤や血小板凝固阻害剤による)治療を受けており、それがこれらのフィルタ膜の凝固/閉塞プロセスを長引かせて患者を脳卒中の危険に曝すことになる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0054515号明細書
【発明の概要】
【0009】
本発明の全般的な第1の様態において、閉塞デバイスは、遠位端と近位端及び送達形態と展開形態を有するフレーム要素を含む。閉塞デバイスはまた外周縁部を有する閉塞面を含み、閉塞面はフレーム要素の近位端の方に位置している。閉塞デバイスはまた閉塞面の外周縁部に位置する少なくとも一つのアンカーを含み、上記少なくとも一つのアンカーは閉塞面の外周縁部に対して鋭角に延びている。
【0010】
いろいろな実施例で、上記少なくとも一つのアンカーは、デバイスの軸方向寸法に関して近位方向に突出する組織係合部材を含むことができる。上記少なくとも一つのアンカーは、デバイスの軸方向寸法に関して遠位方向に突出する組織係合部材を含むことができる。上記少なくとも一つのアンカーは、アンカー近くのフレーム要素の部分から接線方向に延びる組織係合部材を含むことができる。上記少なくとも一つのアンカーは、外周縁部によって画定される平面内に実質的に位置している。閉塞面は凹状の配向を有することができる。閉塞面は凸状の配向を有することができる。閉塞面は実質的に平面の配向を有することができる。外周縁部に複数のアンカーを配置することができる。フレームはテーパー状領域を含むことができる。閉塞デバイスはまた血液の通過を阻止するように構成された膜を含むことができ、膜はフレームの少なくとも一部を覆う。膜はフッ素ポリマーを含むことができる。膜はポリテトラフルオロエチレンを含むことができる。膜は延伸ポリテトラフルオロエチレンを含むことができる。フレームは複数のワイヤを含むことができる。上記複数のワイヤはニチノールを含むことができる。フレームは閉塞面から略遠位方向に第1の距離にわたって延びる円筒状領域を含むことができ、上記テーパー状領域は上記円筒状領域の遠位端からフレームの遠位端へ延びる。閉塞デバイスはまた、円筒状領域とテーパー状領域の接続部の近くに配置された一つ以上のアンカーを含むことができる。フレーム要素は花弁形状とその花弁形状の頂点を含むことができ、花弁形状の頂点はフレーム要素の曲がり部を含む。上記少なくとも一つのアンカーは上記花弁形状の頂点に位置することができる。上記少なくとも一つのアンカーは第1のカフ(cuff)と第2のカフを含むことができ、フレーム要素は第1及び第2のカフのそれぞれを通り、第1のカフは頂点の第1の側に位置し、第2のカフは頂点の第1の側と異なる第2の側に位置する。
【0011】
本発明の全般的な第2の様態において、血管を閉塞する方法は、(a)遠位端と近位端及び送達形態と展開形態を有するフレーム要素と;(b)外周縁部を有し、上記フレーム要素の近位端の方に位置する閉塞面と;(c)閉塞面の外周縁部に位置する少なくとも一つのアンカー;を含む閉塞デバイスを用意するステップを含み、少なくとも一つのアンカーの少なくとも一部は閉塞面の外周縁部に対して鋭角に延びる。この方法はまた、閉塞デバイスを送達形態で構成するステップと、閉塞デバイスを送達部位へ進めるステップと、閉塞デバイスを送達部位で展開するステップを含む。
【0012】
いろいろな実施例で、送達部位は左心耳である。少なくとも一つのアンカーは左心耳の入口部の近くの組織と係合することができる。
【0013】
本発明の実施形態のその他の利点、利益、及び新しい特徴は以下の詳細な説明と添付された図面から明らかになるであろう。すべての参照文献、刊行物、及び特許は、それに含まれる図面を含めて全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、患者の体内の孔、欠損、又は心耳を閉塞するために用いることができる閉塞デバイスの例を示す側面図である。
図2図2は、図1の閉塞デバイスの近位端を示す正面図である。
図3図3は、図1の閉塞デバイスのフレームの例を示す斜視図である。
図4A図4Aは、図3のフレームの一部を示す拡大斜視図である。
図4B図4Bは、図3のフレームの一部を示す拡大斜視図である。
図5図5は、図1の閉塞デバイスを作るのに用いることができる治具の例を示す斜視図である。
図6図6は、図5の治具を図3のフレームのワイヤと共に示す斜視図である。
図7図7は、図5の治具をそれに巻かれたパタンで示された図6のワイヤと共に示す斜視図である。
図8A図8Aは、図5の治具を図3のフレームの部分を形成するように巻かれた図6のワイヤと共に示す斜視図である。
図8B図8Bは、図5の治具を図3のフレームの部分を形成するように巻かれた図6のワイヤと共に示す斜視図である。
図8C図8Cは、図5の治具を図3のフレームの部分を形成するように巻かれた図6のワイヤと共に示す斜視図である。
図9図9は、図3のフレームの一部を示す斜視図である。
図10A図10Aは、中心ピンと係合した形で長手方向に拡げられる前の図3のフレームを示す斜視図である。
図10B図10Bは、中心ピンと係合した形で長手方向に拡げられる前の図3のフレームを示す斜視図である。
図11A図11Aは、熱固定心棒と係合した熱処理前の図3のフレームを示す斜視図である。
図11B図11Bは、熱固定心棒と係合した熱処理前の図3のフレームを示す斜視図である。
図12A図12Aは、図3のフレームをセットするために用いることができる熱固定用具を示す斜視図である。
図12B図12Bは、図3のフレームをセットするために用いることができる熱固定用具を示す斜視図である。
図12C図12Cは、図3のフレームをセットするために用いることができる熱固定用具を示す斜視図である。
図13図13は、図11Aと11Bの熱固定心棒と係合した熱処理後の図3のフレームを示す斜視図である。
図14A図14Aは、熱固定心棒の例を示す図である。
図14B図14Bは、熱固定心棒の例を示す図である。
【0015】
いろいろな図面において同じ参照番号及び符号は同じ要素を表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に記載されるデバイスと方法は、患者の体内における心臓などの孔、欠損、又は心耳を閉塞するのに用いることができるデバイス、及びそのデバイスを作成し使用する方法に関する。デバイスのいくつかの実施例は、右又は左心耳、瘻、動脈瘤、及び動脈管開存を閉塞するために用いることができるが、それだけに限定されない。いくつかの実施形態では、この閉塞デバイスは多様な開口幾何形状とサイズに適合できるだけの十分な順応性のあるフレームを備える。本明細書に記載されるデバイスの実施例は、カテーテル又はシースに、最初の展開の時点でもその後の時点でも容易に搭載することができ、体内の展開された場所からデバイスを再配置する又は撤去することができる。
【0017】
心房細動は左心耳(LAA)で発生する血液凝固という結果を招くことがあり、ここで記載される閉塞デバイスはLAAに関して説明されるけれども、本明細書に記載される閉塞デバイスは体の他の部位にも用いることができる。このデバイスのある実施形態は、例えば右心耳でも用いることができる。一般に、このデバイスの実施例は、血塊が脱出するのを防ぐ必要がある又は血流を阻止する又は実質的に減少させる必要がある血管の開口を含めて体のどんな適当な開口にでも設置して用いることができる。
【0018】
特に、閉塞デバイスのいくつかの実施形態はLAAを閉塞するように構成でされ得る。本明細書に記載されるデバイスの実施例はいろいろな解剖形状の左心耳入口部に合わせて用いることができ、LAAを効率的に閉塞することができ、アンカー固定による外傷や出血のリスクが小さくしっかりした確実なアンカー固定を実現し、デバイスに含まれる閉塞膜を横切る血流を急速に停止させることができる。この閉塞デバイスは、LAAの組織にしっかりと確実にアンカー固定され、LAA組織の刺通による臨床的な後遺症が著しく少ない、又は、外傷となる刺通を生じないフレームを含む。以下により詳しく説明するが、いろいろなタイプのアンカー手段をここに開示されるデバイスで用いることができ、アンカー手段はデバイスのいろいろな部分に配置又は結合することができる。
【0019】
閉塞デバイスのいろいろな実施形態は、膜を通る血流を実質的に又は完全に阻止するように構成された膜を含む。いくつかの実施形態では、閉塞デバイスは速やかな組織の内部成長を誘発して膜を通過する血流をただちに妨げるように構成された膜を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、閉塞デバイスは、少なくとも部分的に膜で覆われた閉塞面と、閉塞面の外周縁部に位置する一つ以上のアンカーを含む。いくつかの実施形態では、一つ以上のアンカーは、閉塞デバイスの閉塞面の外周縁部ではない部分に位置している。
【0021】
図1と2は、患者体内のLAAなどの構造又は導管を閉塞するために用いられる閉塞デバイス100のある実施形態を示す。閉塞デバイス100は、近位側アイレット110、遠位側アイレット112、閉塞面106、前記閉塞面106から遠位方向に延びる略円筒状領域107、前記円筒状領域107からデバイスの遠位端の方に延びるテーパー状領域108、及び閉塞デバイス100のフレーム102(図3を見よ)を覆う膜104を含む。管腔が2つのアイレット110と112を通り、デバイス100の長さにわたって延びることができる。
【0022】
閉塞面106は、展開された形態にあるときにLAAの入口部、又はその他の生体の入口部の形に順応して変形するように構成される。例えば、閉塞面106の直径は、閉塞デバイス100を展開する間に送達システムによってフレーム102にトルクを伝達することによって変えられるか又は調整されることができる。図1と2に示された例では、閉塞面106は凹形状を有する。しかし、別の例では、閉塞面106は凸形状、又は平坦な又は平面形状を有することができる。閉塞面106の適応性は閉塞デバイス100のサイズ設計における融通性を可能にし、しばしば形が不規則であり、患者によってサイズがかなり大きく異なるLAAの入口部に閉塞デバイス100を設置することを容易にする。
【0023】
ある一般的な実施形態では、閉塞面106から遠位方向に延びる略円筒状領域107は任意の適切な長さであってよい。このように、円筒状領域107の長さはLAAの入口のばらつき又はLAAの形状のばらつきを許容できる。例えば、いくつかの実施形態では、円筒状領域107の長さは約0.2cmから約0.7cmまでであり、いくつかの実施形態では、この長さは約0.5cmである。同様に、円筒状領域107から遠位側アイレット112まで延びているテーパー状領域108の長さは約0.6cmから約1.2cmまでであり、いくつかの実施形態では、この長さは約1.0cmである。さらに、テーパー状領域108の輪郭は、閉塞デバイス100をLAAの内側領域で十分確実に位置決めするためにデバイスの長手軸線に対して適当などんな傾斜を有してもよい。例えば、テーパー状領域108はLAAの内側領域の変動するテーパーに合うように構成され得る。接続部130は円筒状領域107とテーパー状領域108の間の境界を画定する。
【0024】
図1と2の例では、アイレット110と112は略円筒状の形を有する。しかし、一般にアイレット110と112は、矩形形状、その他の多角形形状、又は不規則形状など、いろいろな形状で設けることができる。アイレット110と112の一方又は両方を、閉塞デバイス100を患者体内の送達部位まで送達するのに用いられる送達システム(例えば送達カテーテル)の一つ以上の構成要素と係合するように形成することができる。例えば、送達カテーテルをアイレット110と112のどちらか又は両方と係合させることは、トルクを閉塞デバイス100に加えて維持することを可能にする。いくつかの実施形態では、閉塞デバイス100にトルクを加えることは、デバイスの設置を容易にし、またいくつかの実施形態では、デバイスのアンカー又はアンカー手段を送達部位において組織と係合させることを容易にする。
【0025】
デバイス100は、デバイスのフレーム102の部分に取り付けられたアンカー50、50a、50b、60を含むことができる(図4A)。使用できるアンカーの例が、図1、2、3、4A、4B、10A、10B、及び11Aに示される。いくつかのアンカー50は、図1と2に示されているように、閉塞デバイス100の閉塞面106の外周縁部114を形成するフレーム部分に取り付けることができる。閉塞面106は、マルチワイヤ・フレーム102の近位端から構造的に形成される。上述したように、図1と2に示された例では、閉塞面は凹形状であり、これによって閉塞面106の外周縁部114上のアンカーをデバイスの長手寸法に関して近位方向に又は部分的に近位方向に突出させることが容易になる。そのような訳で、いくつかの実施形態では、閉塞面の外周縁部114上のアンカー50は閉塞面106の外周縁部114とは同一平面にない(近位方向に突出しているので)。デバイスの軸線の方向に沿って近位方向に突出しているアンカーは、組織と係合すること、及び展開の次のデバイスの移動を防ぐことに利点がある(例えば、デバイスが心耳から出ることを防ぐ)。
【0026】
別の実施形態では、閉塞面の外周縁部114上のアンカー50は閉塞面106の外周縁部114と同一平面にある(すなわち、外周縁部114によって画定される平面内に又は実質的にその平面内にある)。例えば、アンカーはアンカー50に近接するワイヤ・フレームの部分から接線方向に突出している。さらに別の実施形態では、アンカーは閉塞面106の外周縁部114から遠位方向又は部分的に遠位方向に突出するように形成され、従ってやはり外周縁部114とは同一平面にないと認められる。
【0027】
それに関連して、閉塞面が凸の輪郭又は平面輪郭を有する実施形態の場合、いろいろな場合に、閉塞面の外周縁部上に位置しているアンカー50は同様にデバイスの長手寸法に関して近位方向に、部分的に近位方向に、遠位方向に又は部分的に遠位方向に突出するように方向付けられ、このような場合にも閉塞面の外周縁部と同一平面にはないと認められる。あるいはまた、アンカーは閉塞面の外周縁部と同一平面内に位置することもできる。いくつかの実施例では、アンカーはアンカー50に近接するワイヤ・フレームの部分から接線方向に突出している。
【0028】
図10Aを参照して見られるように、フレームはデバイス100の閉塞面106を画定する花弁21を含むことができる。以下でより詳しく説明するように、フレーム102の花弁21は、アイレット110及び112のまわりのワイヤ101のらせん巻回と同じ方向に広がる。ある例では、各花弁21は隣接する花弁21に対して約60度ずれている。花弁の形状は変えることができ(例えば、アイレットから花弁頂点までの半径を変えることによって)、より多くの又はより少ない花弁21を用いることができる。異なる数のワイヤ101と花弁21を用いる実施例では、花弁21は別の量でずらされる。例えば、4つの花弁を有する4ワイヤ・デバイスでは、各花弁は隣接する花弁に対して約90度ずれる。5つの花弁を有する5ワイヤ・デバイスでは、各花弁は隣接する花弁に対して約72度ずれる。8つの花弁を有する8ワイヤ・デバイスでは、各花弁は隣接する花弁に対して約45度ずれる。図10Aを参照して見られるように、各花弁21は隣接する花弁21の一部分に重なってよい。花弁の幅は、例えば、より多くの又はより少ない花弁が含まれる場合に変化する。花弁は頂点23を含む。花弁の幅を調整して用途に応じた望ましい並置の仕方を実現できる。例えば、アイレット110から花弁頂点までの半径が大きくなるように花弁の幅が増大されると、花弁21の頂点23でデバイスからまわりの組織に及ぼされる付着力が小さくなり、逆にアイレット110から花弁頂点までの半径が小さくなるように花弁の幅が減少されると、花弁21の頂点23でデバイスからまわりの組織に及ぼされる付着力が大きくなる。このようにして、デバイスの組織並置特性がデバイスの巻き方のパラメータによって調整される。
【0029】
図10Aを参照して見られるように、アンカー50はデバイスの花弁21の頂点23に又はその近くに配置される。第1のカフ56は頂点23の第1の側に配置され、第2のカフ57は頂点23の第2の側に配置される。デバイスが細長い送達形態にあるとき、例えばデバイスが送達される際に送達カテーテル又はシースの管腔内に拘束されているとき、細長部材101が送達形態で略真直に又は直線状に引っ張られるように、アイレット110、112は離れされている。送達形態では、アンカー50の組織係合部分54が対応する細長部材101と実質的に接触するように、アンカー50も同様に略真直に又は直線状に引っ張られる。例えば、細長部材101は組織係合部分54の近くの部位に押し込まれる。
【0030】
デバイスが送達部位においてカテーテルから拡げられてあまり拘束されない体腔の環境に進入すると、デバイスはその展開形態を取る(例えば、細長部材101の形状記憶性質によって)。その結果、細長部材101は、展開形態で頂点23を有する曲がり部を形成し、細長部材101によって、アンカーの第1のカフ56を第2のカフ57に結合するアンカー接続部分55が曲げられて細長部材101の形に合うようにされる。いくつかの実施例では、カフ接続部分55は細長部材101よりも柔軟であるため、このように曲がる。これが生じたとき、アンカーの組織係合部分54は略真直のままであり、その結果、頂点23が発達するにつれて組織係合部分54は送達部位における組織に対する効果的に高い接触力を生み出す。LAAを閉塞する例では、デバイスの展開は心耳の入口に近い領域で高い接触力を生み出す。いくつかの例では、デバイスはアンカーを含まず、細長部材の頂点23はデバイスが展開したときに高い接触力を生み出し、その場合は細長部材自身がデバイスを定位置に固定する。同様に、いくつかの例では、アンカー50は、組織を貫通することなく外傷を与えずに組織と係合するように設計された組織係合部分54を含む。
【0031】
いくつかの例では、一つ以上のアンカー50が円筒状領域107においてフレーム102に、例えば接続部130のすぐ近位側のフレーム102に、配置される(例えば、図1のアンカー50aを見よ)。いくつかの例では、一つ以上のアンカー50が、テーパー状領域108においてフレーム102に、例えば接続部130のすぐ遠位側のフレーム102に、配置される(例えば、図1のアンカー50bを見よ)。いくつかの例では、アンカー50は円筒状領域107とテーパー状領域108で、フレーム102に配置される。そのような例では、アンカーは比較的大きな曲げ半径を有する曲がり部115に配置されるか、又は実質的に真直なフレーム102に沿って配置される。一般的な実施形態では、閉塞デバイス100は任意の適当な数のアンカー50を含むことができる。いくつかの場合にはアンカー50aとアンカー50bは省略される。
【0032】
アンカー50は、フレーム102から(例えば、円筒状領域107において、テーパー状領域108において、接続部130において、又は閉塞面106の外周縁部に沿ってフレーム102から)、又はその組合せ若しくは部分組合せから、アンカーに近接するフレームの部分に対するいろいろな角度で(例えば、鋭角に、直角に、又は鈍角に)延びる。いくつかの例では、一つ以上のアンカー50が、アンカーに近接するフレーム102の部分から(例えば、円筒状領域107において、テーパー状領域108において、接続部130において、又は閉塞面106の外周縁部に沿ってフレーム102から)延びる。いくつかの例では、一つ以上の又はすべてのアンカー50が、フレーム102から、図2の矢印51に示されるように、略時計回りの方向に延びる。いくつかの例では、一つ以上の又はすべてのアンカー50が、フレーム102から、図2の矢印53に示されるように、略反時計回りの方向に延びる。いくつかの例では、閉塞デバイス100は、フレーム102から略時計回りの方向に延びるいくつかのアンカー50と、フレーム102から略反時計回りの方向に延びるいくつかのアンカー50を含む。アンカー50は、非恒久的な生物分解性又は生物吸収性の材料など、任意の適当な材料から作ることができる。例えば、アンカー50は、NiTi、L605鋼、ステンレス鋼、又はその他の適当な生物適合性材料から作ることができる。いくつかの例では、(すべてのアンカーが同じ材料から作られるのでなく)アンカーは異なる材料から作られる。
【0033】
ある実施形態は、閉塞面106の外周縁部114から接線方向に突起又は突出したアンカーを有することができる。ある実施形態は、閉塞面106の外周縁部114から略接線方向に突起又は突出したアンカーを有することができる。ある実施形態は、閉塞面106の外周縁部114に対して鋭角に閉塞面と同じ又は実質的に同じ平面内で突起又は突出したアンカーを有することができる。いくつかの例では、アンカーの組織係合部分は約30〜60度の鋭角に、いくつかの例では約20度で、又は約30度で、又は約40度で、又は約50度で、又は約60度で、突出する。いくつかの実施例では、外周縁部114に対して鋭角に、閉塞面106に関して同じ平面で突出するアンカーは、デバイスの送達性に関して、また送達カテーテルへのデバイスの再捕獲性に関して、例えばデバイスを撤去又は再配置したい場合、利点がある。
【0034】
本明細書で開示されたデバイスで使用できるアンカーのタイプに関するその他の情報については、その内容全体がすべての点で参照によって本明細書に組み込まれる2012年9月13日にエドワード・イー・ショウ(Edward E. Shaw)を発明者として出願された「医療デバイス固定アンカー」という標題の同時係属中の米国特許出願を見られたい。
【0035】
閉塞デバイス100は細長部材のマルチフレーム102から作ることができる。いくつかの実施例では、細長部材はワイヤであってよく、簡単のために以下ではワイヤと呼ぶ。マルチワイヤ・フレーム102は、複数の特有の長さの比較的柔軟で耐疲労性の細長部材101、例えばワイヤ、から作ることができる。マルチワイヤ・フレーム102は半硬質であってよい。拡げることができるフレーム102は任意の数の耐疲労性の細長部材101から構成できる。拡げることができるフレーム102は用途に適したどんなサイズに形成することもできる。ヒトの左心耳の入口部のサイズは約10mmから約32mmまでの範囲にあり、平均は約21mmプラス又はマイナス約4mmである。デバイスのサイズは入口部のサイズの全範囲を含むように製造できる。ある実施形態は、複数の細長部材、デバイスの製造で用いられる例えば4、5、6、7、8、9本又はそれ以上のワイヤを有する。拡げることができるフレーム102はワイヤから、例えば弾性を有する耐疲労性のワイヤ、から製造できる。拡げることができるフレーム102は、弾性を有するワイヤから構成でき、前記弾性は、拡げることができるフレーム102が、カテーテルによる送達又は胸腔鏡送達のために畳まれることを可能にし、また体腔内に位置決めされるとすぐに所望の形態に自動的に拡がることを可能にする。弾性ワイヤは、スプリング・ワイヤ、形状記憶合金ワイヤ、又は超弾性合金ワイヤであってよい。生体適合性を有し、強く、柔軟で弾力があるどんなワイヤも用いることができる。例えば、ワイヤは、ニチノール、L605鋼、ステンレス鋼、その他のどんな生体適合性ワイヤであってよい。弾性ワイヤは、芯に異なる金属を含む二層(drawn filled)タイプのニチノールであってもよい。ニチノールの超弾性は、この用途にとってそれを有用な材料にする。ニチノール・ワイヤは、所望の形に熱固定されることができる。ステンレス鋼ワイヤがそれに代わる材料である。これは、所望の形に塑性変形されることができる。センタレス研削法によって多重直径を有するように形成されたワイヤも用いることができる。その他の形状記憶合金や塑性変形できる材料もこの用途に適している。ある実施形態では、拡げることができるフレーム102は、芯にプラチナなどのX線不透過性金属を含む二層タイプのNiTiワイヤから構成できる。展開されると、ワイヤ構造は永久変形なしにその展開された形状を回復する。拡げることができるフレーム102、及び拡げることができるフレームのその他の実施形態は、外径(OD)が約0.12から約0.4mmの弾性ワイヤ材料から形成することができる。その他の実施形態は外径が約0.3mmのワイヤから形成することができる。
【0036】
マルチワイヤ・フレーム102は部分的に又は実質的に膜104で覆うことができる。図1と2に示されるように、膜構成要素104は血液の通過を阻止するように構成される。ある実施形態では、膜を通る血液の通過を阻止するように、すなわち膜を通る血流を実質的に遮るように、構成された膜構成要素104が設けられる。別の実施形態では、速やかな組織の内部成長を誘発して膜を通る血流路を直ちに閉塞する膜構成要素104が設けられる。ある実施形態では、血液又は体液不透過性の膜を含む膜構成要素104が設けられ、前記幕構成要素104は膜を通る血流や体液の流れを遮るが、内部成長と内皮細胞増殖は促進される。このような実施形態では、延伸ポリテトラフルオロエチレン高分子膜などのフッ素ポリマー膜が用いられる。膜構成要素104を横切る血液や体液の通過の阻止は、迅速であって、血栓プロセスに依存しない。膜構成要素104は、永続性がある閉塞とデバイス固定のための組織内部成長の土台として機能する。
【0037】
膜構成要素104のミクロ多孔質構造は組織の内部成長及び/又は内皮細胞増殖を促進するように調整され得る。膜構成要素104はいろいろな化学的又は物理的プロセスによっていくつかの機械的又は物理的性質を増強するように変えることができる。膜構成要素104に親水性のコーティングを施して濡れ性質とエコー透過性を高めることができる。さらに、内皮細胞の付着、移動、及び/又は増殖を促進し、血栓形成を防ぐ化学成分を膜構成要素104が含むように物理化学的な改質を採用できる。共有結合で付着するヘパリンによる表面改質は膜の改質の一例である。膜構成要素104は入口部に恒久的に埋め込むことができる。膜構成要素104は、ポリテトラフルオロエチレンや延伸ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素ポリマー;ポリエステル;シリコーン;ウレタン;又はその他の生体適合性ポリマー及びそれらの組合せを含め、どんな生体適合性材料からも作ることができる。ある実施形態は、ポリテトラフルオロエチレン又は延伸ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素ポリマーを含む膜構成要素を含む。別の実施形態では、膜構成要素は延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む。
【0038】
次に図3を参照すると、閉塞デバイス100は複数の細長部材又はワイヤ101から成るフレーム102を含む。フレーム102は、図3の実施形態では6本のワイヤ101を含むように図示されているが、一般にフレーム102は任意の適当な本数のワイヤ101を含むことができる(例えば、4本、5本、7本、8本、9本、10本、又はそれより多くのワイヤを含むことができる)。ワイヤ101は、フレーム102の近位端における近位側アイレット110を形成して、そこからフレーム102の遠位端における遠位側アイレット112まで延び、そこで遠位側アイレット112がワイヤ101によって形成される。アイレット110と112の間でワイヤ101は外へ拡がってデバイス100の閉塞手段と固定手段を構成する。例えば、閉塞面106がフレーム102の近位端の近くに設けられる。図3に示されるように、デバイス100のフレーム102、特に近位側アイレット110と遠位側アイレット112は、以下で説明する、デバイス100を作るのに用いられる心棒44に取り付けられた形で示されている。近位側アイレット110と遠位側アイレット112の間で、心棒44上にスペーサ管52が延びてアイレット110と112を所望の量だけ隔離する。
【0039】
アンカー50と60の実施形態が図4A〜4Bに示されている。図4Aは、ある長さのニチノール管からカットされ、組織係合部材54(例えば、逆刺)とアンカー保持カフ59を有するアンカー60を示す。アンカー保持カフ59は任意の適当な方法によってワイヤ101に取り付けることができる。アンカー保持カフは機械的嵌合、溶接、又は接着剤によってワイヤ101に取り付けることができる。図4Bは、組織係合部材54、第1のアンカー保持カフ56、及び第2のアンカー保持カフ57を含むアンカー50を示している。アンカー(50、60)はデバイス100を形成するために必要などんなサイズのワイヤ101にも適応できる内径を有するようにサイズを決めることができる。アンカー50と60のいずれか一方又は両方が、単独又は組合せで用いられることができる。細長部材の曲がり部115は、例えば図10Aの頂点23に対応する。
【0040】
いくつかの例では、アンカー50、60が用いられない場合でも、例えば曲がり部115がフレーム102の固定手段を提供し得る。例えば、曲がり部115は、閉塞デバイス100を送達部位に固定するために送達部位(例えば、LAA)で組織に接触、係合、又は穿刺するように構成されることができ、そのような例では、ワイヤの曲がり部115自身が主要アンカーであると見なされるか又は主要な固定手段を与えるものと見なされる。このように、デバイス100のフレーム102の一つ以上の部分が送達部位でデバイスを固定するのに用いられてよい。
【0041】
再び図3を参照すると、ワイヤ101は比較的柔軟で疲労に強く、半剛性で、フレーム102が展開された形態では所定の形状をとることができ、送達システムの構成要素(例えば、送達シース)に挿入されると送達形態に畳まれることができる。例えば、ワイヤ101は疲労に強く弾性を有するワイヤであってよい。弾性によってフレーム102はカテーテルによる送達又は胸腔鏡による送達のためにつぶれることができ、体腔に位置決めされると自動的に拡がって所望の形態になることができる。ワイヤ101は、ばね線材、形状記憶合金線、又は超弾性合金線であってよい。いくつかの例では、ワイヤ101の一つ以上の部分がワイヤ101の一つ以上の他の部分よりもより柔軟であったり、より柔軟でなかったりする。一般に、ワイヤ101は、生態適合性を有して十分に強く、柔軟で弾力性があるどんな細長部材も含むことができる。
【0042】
ワイヤ101は、ニチノール(NiTi)、L605鋼、ステンレス鋼、又は他の適当な生態適合性材料から作ることができる。ワイヤ101は、また、二層(drawn-filled)タイプのNiTiから、異なる材料の金属芯を含む形で作ることができる。ニチノールの超弾性はNiTiをこのワイヤ101のための特に良い材料候補にする(例えば、NiTi線ワイヤは熱固定で所望の形にすることができる)。いくつかの実施形態では、ステンレス鋼で作られたワイヤ101を塑性変形させて所望の形にすることができる。いくつかの実施形態では、ワイヤ101はセンタレス研削法で変化する直径を有するように形成される。いくつかの実施形態では、ワイヤ101は他の形状記憶合金又は塑性変形可能な材料で作られる。いくつかの実施形態では、ワイヤ101は二層(drawn-filled)タイプのNiTiワイヤで作られ、ワイヤ101の中心にはプラチナなどX線不透過金属が含まれる。展開されると、このワイヤは永久変形することなしに展開形状を回復する。いくつかの実施形態では、ワイヤ101は外径が約0.12mmから約0.4mmまで(例えば、約0.3mm)である。ワイヤ101は、任意の適切な断面形状であってよい。例えば、いくつかの実施形態では、ワイヤ101は、丸い、卵形、正方形、長方形、ダイアモンド形、又はその他の多角形断面を有する。いくつかの実施例では、ワイヤ101は織り目のある表面を含み、それは送達部位で組織と接触したときに、組織と直接接触する場合でもワイヤ101と組織の間に配置された膜104を介して接触する場合でも、移動に対する大きな抵抗を提供する。
【0043】
再び図1と2を参照すると、フレーム102は血液の通過を阻止するように構成された膜104で部分的に又は実質的に覆われる(すなわち、膜104は膜104を通る血流を実質的に遮ることができる)。いくつかの実施形態では、膜104は速やかな組織の内部成長を誘発するように構成され、膜104を通る血流を直ちに遮ることができる。いくつかの実施形態では、膜104は血液又はその他の体液に対して不透過性である。いくつかの例では、膜を通る血液又は体液の通過の阻止は迅速であり、血栓形成プロセスに依存しない。いくつかの実施形態では、膜104はミクロ多孔質構造を有し、それが耐久性のある閉塞と閉塞デバイス100の固定のために組織の内部成長の土台として機能する。いくつかの実施形態では、膜104は内皮細胞増殖を促進するミクロ多孔質構造を提供する。膜のいくつかの実施形態は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)ポリマーなどのフッ素ポリマーを含む。
【0044】
いくつかの例では、膜104はいろいろな化学的又は物理的プロセスによっていくつかの機械的又は物理的性質を増強するように変えることができる。例えば、膜104に親水性のコーティングを施して膜104の濡れ性質とエコー透過性を高めることができる。いくつかの実施形態では、膜104を化学成分によって改質させて、内皮細胞の付着、細胞移動、細胞増殖など、一つ以上のプロセスを促進し、血栓形成を起こりにくくすることができる。例えば、膜104を共有結合で付着するヘパリンによって改質させることができる。いくつかの例では、膜104はLAAの入口部に恒久的に埋め込むことができる。膜104は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やePTFEなどのフッ素ポリマー;ポリエステル;シリコーン;ウレタン;又はその他の生体適合性ポリマー及びそれらの組合せ、など、任意の適当な生体適合性材料から作ることができる。
【0045】
さらに図1と2を参照すると、いくつかの実施形態で、閉塞デバイス100は上述したようにフレーム102の一つ以上の領域に配置された一つ以上のアンカー50を含み、アンカー50は送達部位で組織に穿刺して閉塞デバイス100を送達部位に固定するように構成されている。いくつかの例では、アンカーは組織を貫通することなく外傷なしに組織と接触するように構成される。膜104はアンカー50が膜104を通過することを可能にする孔を含むことができるか、又はいくつかの実施例では、アンカー50が単純に膜104を貫通することができる。
【0046】
いくつかの例では、一つ以上のアンカー50は、フレーム102の外周縁部部分に沿って一つ以上の曲がり部又は頂点115に配置され(図3、4A、4Bを見よ)、閉塞面106の外周縁部114で膜104を貫通して延びる(図1、2を見よ)。いくつかの例では、アンカー50は図4Aと4Bに示された曲がり部115よりも大きな又は小さな半径を有する曲がり部115に配置される。いくつかの実施形態では、一つ以上のアンカー50は閉塞面106の外周縁部114から離間されたフレーム102のある領域に配置される。例えば、一つ以上のアンカー50は、閉塞デバイス100が円筒状領域107からテーパー状領域108に移行する接続部130の近くでフレーム102の曲がり部115(例えば、比較的大きな半径を有する曲がり部115)に配置される。
【0047】
図5〜8Cを参照して、デバイス100などの閉塞デバイスの組み立ての例を説明する。10%のプラチナを芯に含むタイプで直径が約0.23mmで長さが約1mのNiTiワイヤ(例えば、Fort Wayne Metals, Fort Wayne, IN.からの)を入手して閉塞デバイス100のワイヤ101を形成する。特定の長さのワイヤ101が切り取られることも切り取られないこともあるが、ワイヤ101は以下で説明するような巻回パタンを完成するのに十分な長さがなければならない。いくつかのの例では、電解研磨されたワイヤ101が入手される。NiTiワイヤを電解研磨するといくつかの良く知られた性質が付与される。例えば、電解研磨によってワイヤ101の表面に酸化チタンの層が自発的に形成され、ワイヤ101の表面上のニッケルの量が選択的に減少し、ワイヤ101の応力の一部が減少し、それによりワイヤ101の疲労特性が改善される。
【0048】
図5はデバイス100などの閉塞デバイスを巻くのに用いられる基本治具8を示す。それぞれ約1mの長さを有する3本のワイヤ101が半分に折られ、ワイヤ101の自由端がワイヤ供給孔10、12、14、16、18、及び20に送り込まれる。例えば、ワイヤ101は漏斗状の開口19を通されて、開口19の底で供給孔10、12、14、16、18、及び20から出る。詳しくは、図6を参照すると、ワイヤ101は基本治具8の平坦な端面で孔10、12、14、16、18、及び20を通って出る。ワイヤ101をぴんと張って正しい位置に保つために、6本のワイヤの自由端におもりが付けられる。図5と7を特に参照すると、基本治具8が旋盤のチャックに固定され、中心ピン22が基本治具8の中心ピン穴24(図5を見よ)に、この中心ピン22をしっかりと着座させるのに十分な深さまで(図7を見よ)挿入される。基本治具8はワイヤ供給孔10、12、14、16、18、及び20が中心ピン22の鉛直上方に方向付けられて配置され、ワイヤ101は中心ピン22の後方側に配置される。
【0049】
特に図7を参照すると、中心ピン22のまわりにワイヤ101を巻き付けることによって閉塞デバイスの近位側アイレット110を生成するために、花弁治具穴36が約720度回される。詳しくは図8Aを参照すると、花弁治具38が花弁治具穴36に挿入される。ワイヤ101を交叉させることなくワイヤ101が花弁治具38に載置される。いくつかの例では、図1と2に示されているアンカー50などのアンカーをワイヤ101に取り付けることができる。例えば、一つ以上のアンカー50(図示せず)を一つ以上のワイヤ101に、デバイス100が展開された位置にあるときのワイヤの頂点又はその近くに取り付けることができ、頂点はワイヤが花弁治具38の丸められた縁39のまわりに巻き付く箇所に対応する。こうしてアンカーはデバイス100が展開された位置にあるときの閉塞面106の外周縁部114(図1を見よ)に、又はその近くに配置される。別の例では、一つ以上のアンカー50は一つ以上のワイヤ101に、頂点、すなわちワイヤが花弁治具38の丸められた縁39に巻き付く箇所、から離れたところに取り付けられる。例えば、一つ以上のアンカー50は一つ以上のワイヤ101に、ワイヤが花弁治具38の丸められた縁39に巻き付く箇所からどちらか適当な方向に(例えば、花弁治具38が緩くカーブしている部分に沿って)約0.1cm、0.2cm、0.3cm、又は0.4cm離れたところに取り付けられる。アンカーは、接着剤、溶接、圧着、閉じ込め、締まりばめ、又はフレームの一体化された部分にするなど、公知の任意の方法によって取り付けられてよい。いくつかの例では、アンカー50は略“V”形状を含み、ワイヤ101を収容できるサイズの内径の管から作られる。アンカー50はワイヤ上で滑らせて、図8A、8B、及び8Cに示されるように、“V”形状のアンカーがワイヤ101上で花弁治具38の丸められた縁39に位置するように配置される。このようにしてアンカーは、展開された位置にあるときのデバイス100の頂点に配置される。
【0050】
特に図8Aと8Bを参照すると、閉塞デバイス100のフレーム102の花弁21(図9を見よ)を生成するために、基本治具8が約360度回転される。アンカー77はここに説明したアンカーのいずれかであるか、又は異なる型のアンカーであってもよい。特に図8Cを参照すると、基本治具8は、遠位側アイレット112を生成するために、ワイヤ101が中心ピンの上に配置された状態でさらに約720度回転される。ワイヤ・ピボット7が治具8のワイヤ・ピボット孔9に挿入される。ワイヤ101がワイヤ・ピボット7のまわりに送られ、基本治具8のアンカー板11の下に配置される。アンカー板11はねじ15によって基本治具8に固定される。ワイヤ101はアンカー板11のおもりがかかった側でカットされる。
【0051】
おもりを除去して、組立体は、例えば約475℃の温度に設定された対流オーブンに約15分間入れられる。組立体はオーブンから出されて、水中で急冷される。次に治具8と38を取り外し、部分的に形成された閉塞デバイスを取り出すことができる(図9を見よ)。
【0052】
図10Aと10Bを参照すると、ワイヤ端がアイレット110と112まで切りつめられ、各花弁21が隣接する花弁21に対して約60度ずれる形になるように、フレーム102の花弁21がアイレット110と112のまわりでワイヤ101のらせん巻回と同じ方向に拡げられる。異なる数のワイヤ101と花弁21を用いる実施例では、花弁21はこれと異なる量だけずれる。例えば、4つの花弁を有する4ワイヤ・デバイスでは、各花弁は隣接する花弁に対して約90度ずれる。5つの花弁を有する5ワイヤ・デバイスでは、各花弁は隣接する花弁に対して約72度ずれる。8つの花弁を有する8ワイヤ・デバイスでは、各花弁は隣接する花弁に対して約45度ずれる。図10Aを参照して見られるように、各花弁21は隣接する花弁21の一部に重なってよい。
【0053】
図11Aと11Bを参照すると、熱固定心棒44が入手される。アイレット110と112の間にはスペーサ管52が配置される。図12A〜12Cを参照すると、部分的に形成された閉塞デバイスと共に熱固定心棒44が熱固定用具48の内側に入れられる。熱固定心棒44はベース板46の中心孔に挿入される。熱固定用具48は花弁21の望ましい角度を実現するように配置され、ワイヤ101は、ねじり固定針金を用いて結束される。組立体は475度の温度に設定された対流オーブンに約15分間入れられ、取り出され、そして水で急冷される。
【0054】
花弁21の所望の向きを保ったまま、部分的に形成された閉塞デバイスが次のようにフッ化エチレンプロピレン(FEP)粉末でパウダー・コーティングされる。フレーム102、スペーサ管52、及び熱固定心棒44がブレンダー(例えば、Variable Speed Lab ブレンダー、waring, Torrington, CT.)に挿入される。熱固定心棒44の一端は接地される。ブレンダーの羽根の先端が露出されたままで、ある量の粉末がブレンダーに加えられる。フレーム102、スペーサ管52、及び熱固定心棒44がブレンダーの中央領域に吊され、ブレンダーに蓋がかぶせられ、ブレンダーが最高の設定まで約5秒間スイッチオンされる。フレーム102、スペーサ管52、及び熱固定心棒44が取り出され、熱固定心棒44を軽くたたいてフレーム102上の粉末コーティングが一様になるようにする。弱い真空を固定ポイントに印加して過剰なFEP粉末を除去し、次にフレーム102、スペーサ管52、及び熱固定心棒44を約320℃に設定された対流オーブンの内側に約3分間吊す。
【0055】
次に図13を参照すると、フレーム102、スペーサ管52、及び熱固定心棒44がオーブンから取り出され、放置冷却される。次に心棒44を取り出して、2つのアイレット110、112の間からスペーサ管52を取り外すことができる。図14Aと14Bを参照すると、波形がつけられた心棒123が示されており、互いから適当な距離をおいた第1及び第2の波形124を含む。波形は、例えば粉末コーティングやグラフトの取り付けなど、いくつかの処理ステップ中にアイレットを離して保持する。近位側アイレット110と遠位側アイレット112をピンセットでつかむことによってフレーム102は波形がつけられた心棒123上で長さが延びる。アイレット110と112は心棒123の波形124を超えた位置に固定される。
【0056】
閉塞デバイス100の膜104は、いくつかの実施例では多孔質のePTFEフィルムを含む。いくつかの実施例では、膜104は以下の性質を有する:メタノール沸点圧が0.7psi;質量/面積が2.43g/cm2;長手方向マトリクス引っ張り強度が約96,000psi;直角方向マトリクス引っ張り強度が約1,433psi;長手方向最大荷重が約1.6kg/in;厚さが約0.00889mm。メタノール沸点圧は直径1インチの土台、上昇速度が0.2psi/秒、液体媒体がメタノールである注文製作のマシンで測定できる。材料の長さと幅は金属のスケールを用いて測定できる。面密度は天秤(例えば、モデルGF−400 Top Loader Balance,ANG,San Jose,CA)を用いて36×5インチのサンプルで測定される。長手方向最大荷重は10kgのロードセルを備えた材料試験機(例えば、モデル5564,Instron,Grove City,PA)を用いて測定される。ゲージ長さは1インチ、クロスヘッド速度は25mm/分である。サンプル幅は1インチである。長手方向引っ張り試験測定値は材料の長さ方向で取得される。厚さは1/4インチのフット直径で厚さゲージ(例えば、Mitutoyo Digital Indicator 547−400)を用いて測定される。長手方向マトリクス引っ張り強度(MTS)は次の式を用いて計算される:
【数1】
ここで:ρPTFE=2.2g/cc
σsample=(最大荷重/幅)/厚さ
ρsample=(質量/面積)/厚さ
密度は質量を体積で割って計算される。
【0057】
ePTFEフィルムから30mmフィルム管が次の仕方で構成され得る。直径25mmの閉塞デバイスの場合、スリット幅が約1.905cmのフィルムが外径30mmの心棒に巻かれる。フィルムの重なりの度合はいろいろであるが、縁のある程度の重なりがあることが好ましい。次に管を心棒から取り外して、管の内径が約25mmになるまで引き伸ばす。
【0058】
次にフィルム管を、ePTFEフィルムを用いて張力がかかった品物上ですべらせて管の端を2つのアイレット110、112のまわりに確保する。いくつかの実施例では、以下の性質を有するFEP粉末でコーティングされた別の多孔質ePTFEフィルムが入手される:質量/面積が約36.1g/cm2;長手方向最大荷重が約12.6kg/in;横方向最大荷重が約0.3kg/in;そして厚さが約0.0012in。フィルムにおけるFEP厚さは約62.5%である。FEP厚さ(%)はFEP厚さとフィルム厚さの比として計算される。報告された値は5つのサンプルの平均測定値である。FEP厚さとフィルム厚さは、ePTFE/FEP積層材料の断面の走査電子顕微鏡画像から次のように測定される。拡大率は全フィルム厚さを見ることができるように選ばれる。画像の水平縁と直角方向に5本の線をランダムにフィルム厚さ全体を横切るように引く。厚さは、FEP厚さとフィルム厚さを測定することによって決定される。
【0059】
FEPがコーティングされたePTFEフィルムの2mm幅の細片が、FEP側を下にして、上記確保された部分のまわりに4回巻かれ、フィルムの層を結合させて一緒にするように半田ごてで加熱される。(図1と2に示されたような)閉塞デバイス100と心棒が約320℃に設定された対流オーブンの内側に約3分間入れられ、その後取り出され、放置冷却される。過剰なePTFE材料は切りつめられる。
【0060】
上述した例のいくつかは、別のアンカー部材50がデバイス・フレーム102の一つ以上のワイヤに取り付けられた閉塞デバイスの実施形態(例えば、図1、2、8A〜C、及び9を見よ)と、フレーム102のワイヤ101における曲がり部自身が送達部位でデバイスを固定するために用いられる実施形態(例えば、図3、4A、4Bを見よ)を含む。いくつかの実施形態では、閉塞デバイスは、閉塞デバイスの一つ以上のワイヤがデバイスに一体化されたアンカー手段を画定するように形成できる。特に閉塞デバイスは、閉塞デバイスの一つ以上のワイヤがデバイスのアンカー・アームに一体化されたアンカー手段を画定し、アンカー・アームが全体としてデバイスのアンカー領域を画定するように形成できる。
【0061】
上で説明し以下のクレームで示される教示に向けられる他に、上で説明し以下のクレームで示される特徴の異なる組合せを含むデバイス及び/又は方法も考えられる。そのような訳で、細長部材の記載は以下の従属クレームの特徴のその他の可能な組合せを含む別のデバイス及び/又は方法にも向けられる。
【0062】
上の説明で多くの特徴と利点が、いろいろな選択肢、並びにデバイス及び/又は方法の詳細な構造と機能をふくめて記述された。この開示は単に例示を意図したものであり、すべてを尽くすことを意図していない。いろいろな変更が、特に構造、材料、要素、構成要素、形状、サイズ、及び部品の配置に関して、ここで説明された原理の範囲内の組合せを含めて添付クレームが、表現される言葉の広い一般的な意味によって示される範囲の全体にわたって可能であることは当業者には明らかであろう。これらのいろいろな変更が添付されたクレームの精神と範囲を逸脱しない限りにおいて、それらの変更は本発明に包含されるものである。
【符号の説明】
【0063】
50 アンカー
100 閉塞デバイス
102 フレーム要素
104 膜
106 閉塞面
107 円筒状領域
108 テーパー状領域
110 近位端
112 遠位端
114 外周縁部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13
図14A
図14B