【文献】
HACER KARATAS,SYNTHESIS AND POTENT IN VITRO ACTIVITY OF NOVEL 1H-BENZIMIDAZOLES AS ANTI-MRSA AGENTS,CHEMICAL BIOLOGY & DRUG DESIGN,BLACKWELL MUNKSGAARD,2012年 4月30日,VOL:80, NR:2,,PAGE(S):237 - 244,URL,http://dx.doi.org/10.1111/j.1747-0285.2012.01393.x
【文献】
LUO Y,SYNTHESIS AND IN VITRO CYTOTOXIC EVALUATION OF SOME THIAZOLYLBENZIMIDAZOLE DERIVATIVES,EUROPEAN JOURNAL OF MEDICINAL CHEMISTRY,フランス,EDITIONS SCIENTIFIQUE ELSEVIER,2011年,VOL:46, NR:1,,PAGE(S):417 - 422,URL,http://dx.doi.org/10.1016/j.ejmech.2010.11.014
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Qが、ピペラジン−1,4−ジイル;2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,5−ジイル;2,5−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン−2,5−ジイル;1,4−ジアゼパン−1,4−ジイル;N1,N2−ジアルキルエタン−1,2−ジアミン−N1,N2−ジイル;N1,N3−ジアルキルプロパン−1,3−ジアミン−N1,N3−ジイル;1,4−ジアミノアントラセン−9,10−ジオン−1,4−ジイル;C6アレーン−1,4−ジアミン−N1,N4−ジイル(前記アレーンが、2、3、5、または6位で1〜4個の置換基で置換され、各置換基が独立して、−C(O)O(C1〜C6)アルキル、OH、O(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルキル、CF3、F、Cl、及びBrからなる群から選択される);または置換ピペラジン−1,4−ジイル(前記ピペラジンが、2、3、5、または6位で1〜8個の置換基で置換され、各置換基が独立して、(C1〜C6)アルキル、アリール、アリール(C1〜C6)アルキル、C(O)OH、及びC(O)O(C1〜C6)アルキルからなる群から選択される)である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物。
【発明を実施するための形態】
【0023】
一般定義
別途明記されない限り、以下の定義は本出願を通して使用される。
【0024】
分散分析(ANOVA):データセットの全体的な変動を変動要因に基づいて特定の成分に分割する算術方法。これは、治療群間の数値的差異が統計的に有意であるか否かを決定するために使用されている。
【0025】
脂肪生成:新しい脂肪細胞または脂肪蓄積細胞が生成されるプロセス。
【0026】
対立遺伝子:同じ遺伝子をコードするいくつかの生存可能なDNAのうちの1つ。
【0027】
共役ジエン:単結合によって分離された2つの二重結合を含む分子。
【0028】
Db/dbマウス:レプチン受容体の長いアイソフォームの両方の対立遺伝子を欠いているタイプのマウスを定義するために使用される用語。この欠乏により、2型糖尿病を発症する傾向が高くなる。Db/dbマウスの詳細については、以下の例を参照のこと。
【0029】
エナンチオマー:光学異性体;偏光の平面を時計回り(+)または反時計回り(−)に回転させるそれらの能力に基づく分子の化学的分類。
【0030】
グリセミア:血液中のグルコース濃度。
【0031】
高血糖:正常範囲を超える血液中のグルコース濃度の増加。
【0032】
高インスリン血症:正常範囲を超える血液中のインスリン濃度の増加。
【0033】
インスリン血症:血液中のインスリン濃度。
インスリン抵抗性:インスリンに応答することも血液からグルコースを取り込むこともできない組織の能力。
【0034】
実質的に純粋な:少なくとも90重量%、好ましくは、98重量%、99重量%、または約100重量%のような少なくとも95重量%の純度を有すること。
【0035】
2型糖尿病または非インスリン依存性糖尿病:インスリンの作用に対する細胞の無応答によって引き起こされる一般的なタイプの糖尿病を指す用語。細胞がインスリンに応答しない場合、細胞は血液からグルコースを取り込むことができず、その結果、グルコトキシ毒性が生じる。さらに、細胞はグルコース酸化に由来するエネルギーから奪われている。
【0036】
IBD:炎症性腸疾患(IBD)には、あなた達の消化管のすべてまたは一部の慢性炎症が含まれる。IBDには主に潰瘍性大腸炎及びクローン病が含まれる。両方とも通常、重度の下痢、痛み、疲労、及び体重減少を伴う。IBDは衰弱させる可能性があり、時には生命を脅かす合併症を引き起こす可能性がある。
【0037】
潰瘍性大腸炎(UC):UCは、あなた達の大腸(結腸)及び直腸の最も内側の内層に持続性の炎症及び潰瘍(潰瘍)を引き起こすIBDである。
【0038】
クローン病:クローン病は、あなた達の消化管の内層の炎症を引き起こすIBDである。クローン病では、炎症はしばしば罹患組織の深部に広がる。炎症は、消化管の様々な領域(大腸、小腸、またはこれらの両方)に関与し得る。
【0039】
IL−10:ヒトサイトカイン合成阻害因子(CSIF)としても知られるインターロイキン−10(IL−10)は、抗炎症性サイトカインである。ヒトにおいて、IL−10は、IL10遺伝子によってコードされる。
【0040】
FOXP3:scurfinとも呼ばれるFOXP3(フォークヘッドボックスP3)は、免疫系応答に関与するタンパク質である。FOXタンパク質ファミリーのメンバーであるFOXP3は、調節性T細胞の発達及び機能におけるマスター調節体(転写因子)として機能するようである。
【0041】
TNF−アルファ:腫瘍壊死因子(TNF、カキシキシン、またはカケクチン、及び以前は腫瘍壊死因子アルファまたはTNFαとしても知られていた)は、全身性炎症に関与するサイトカインであり、急性期反応を刺激するサイトカイン群のメンバーである。
【0042】
MCP1:単細胞化学誘引物質タンパク質−1。内皮細胞、マクロファージに見られ、及び冠状動脈バイパス手術を受けている患者の血管平滑筋細胞における、アテローム性動脈硬化症病変の発症に重要なCCサイトカインのより古い用語。公式に好ましい用語は、ケモカイン(C−Cモチーフ)リガンド2である。
【0043】
インターフェロンガンマ:インターフェロンガンマは、炎症性二量体化可溶性サイトカインであり、インターフェロンのII型クラスの唯一のメンバーである。
【0044】
1型糖尿病:1型糖尿病は、かつては若年性糖尿病またはインスリン依存性糖尿病として知られていたが、膵臓がインスリンをほとんどまたはまったく産生しない慢性状態であり、糖(グルコース)が細胞に入ってエネルギーを生成するのに必要なホルモンである。
【0045】
白血球浸潤:白血球浸潤とは、修復プロセスを開始するために傷ついた組織に白血球を移動または浸透させるプロセスを指す。
【0046】
化学定義
用語「アルキル」は、それ自体または別の置換基の一部として、別途明記されない限り、完全に飽和した直鎖状、分枝鎖状、または環状の炭化水素ラジカルもしくはそれらの組み合わせを意味し、及び多価ラジカルを含み得、指定された炭素原子の数を有する(例えば、C
1〜C
10は、包括的に、1〜10個の炭素原子を意味する)。アルキル基の例としては、限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)エチル、シクロプロピルメチル、ならびにそれらの同族体及び異性体、例えば、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル等が挙げられる。別段の記載がない限り、「アルキル」という用語には、「ヘテロアルキル」及び「シクロアルキル」として以下でより詳細に定義されるアルキルの誘導体も含まれる。
【0047】
「アルケニル」という用語は、1つ以上の二重結合を含むことを除いて、上で定義したアルキル基を意味する。アルケニル基の例には、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)等の高級同族体及び異性体が含まれる。
【0048】
「アルキニル」という用語は、1つ以上の三重結合を含むことを除いて、上で定義したアルキルまたはアルケニル基を意味する。アルキニル基の例には、エチニル、1−及び3−プロピニル、3−ブチニルなどの高級同族体及び異性体が含まれる。
「アルキルレン」、「アルケニレン」、及び「アルキニレン」という用語は、単独でまたは別の置換基の一部として、それぞれ、−CH
2CH
2CH
2CH
2−で例示されるアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基由来の二価ラジカルを意味する。
【0049】
典型的には、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、アルケニレン、及びアルキニレン基は、1〜24個の炭素原子を有する。本発明においては、炭素数10以下を有するこれらの基が好ましい。「低級アルキル」または「低級アルキレン」におけるように、これらの基のいずれかに適用した場合の「低級」という用語は、炭素原子の数が10個以下の基を示す。
【0050】
「置換された」とは、1つ以上の置換基をさらに含む本明細書に記載の化学基を指し、低級アルキル、アリール、アシル、ハロゲン(例えば、CF
3のようなアルキルハロ)、ヒドロキシ、アミノ、アルコキシ、アルキルアミノ、アシルアミノ、チオアミド、アシルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシアルキル、メルカプト、チア、アザ、オキソ、飽和及び不飽和の両方の環状炭化水素、複素環などである。これらの基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルレン、アルケニレン、及びアルキニレン部分のあらゆる炭素または置換基に結合していてもよい。さらに、これらの基は、炭素鎖自体から垂れ下がっていても、それと一体であってもよい。
【0051】
「アリール」という用語は、本明細書では、芳香族置換基を指すために使用され、それは、一緒に縮合し、共有結合し、またはジアゾ、メチレン、もしくはエチレン部分のような共通の基と結合する。一般的な連結基は、ベンゾフェノンのようにカルボニルであってもよい。芳香環(複数可)には、例えば、とりわけ、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ジフェニルメチル、及びベンゾフェノンが含まれ得る。「アリール」という用語は、「アリールアルカリ」及び「置換アリール」を包含する。フェニル基の場合、アリール環は、一置換、二置換、三置換、四置換、または五置換されてもよい。より大きな環は、置換されていないか、または1つ以上の置換基を持っていてもよい。
【0052】
「置換アリール」とは、上記のアリールを指し、1つ以上の官能基を含み、例えば、低級アルキル、アシル、アルキルハロ(例えば、CF
3)、ヒドロキシ、アミノ、アルコキシ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、フェノキシ、メルカプト、及び芳香族環(複数可)と融合し、ジアゾ、メチレン、またはエチレン部分のような共通基に共有結合または結合した飽和及び不飽和の両方の環状炭化水素である。連結基はまた、シクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニルであってもよい。用語「置換アリール」は、「置換アリールアルキル」を包含する。
【0053】
「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、本明細書では、フッ素、臭素、塩素、及びヨウ素原子を指すために使用される。
【0054】
用語「ヒドロキシ」は、本明細書では基−OHを指すために使用される。
【0055】
「アミノ」という用語は、R及びR’が独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、またはそれらの置換類似体であるNRR’を示すために使用される。「アミノ」は、第二級アミン及び第三級アミンを示す「アルキルアミノ」及び基RC(O)NR’を示す「アシルアミノ」を包含する。
【0056】
投与
本発明の方法の過程において、本発明の治療的に有効な量の化合物は、多くの方法で、哺乳類及びヒトを含む動物に投与することができる。好ましい実施形態では、本発明の化合物は、経口投与または非経口投与され、他の形態の投与、例えば、医療用化合物によるものもまたはエアゾールが考慮される。
【0057】
経口投与の場合、有効量の化合物は、例えば、固体、半固体、液体、または気体の状態で投与することができる。特定の例は、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、溶液、懸濁液、シロップ、及びエリキシル剤を含む。しかしながら、化合物は、これらの形態に限定されるものではない。
【0058】
本発明の化合物を錠剤、カプセル、粉末、顆粒、溶液、または懸濁液へ製剤化するために、化合物は、好ましくは結合剤、崩壊剤、及び/または滑沢剤と混合される。必要に応じて、得られた組成物を、希釈剤、緩衝剤、浸透剤、防腐剤、及び/または香味剤と、既知の方法を用いて混合することができる。結合剤の例としては、結晶性セルロース、セルロース誘導体、コーンスターチ、シクロデキストリン、及びゼラチンが挙げられる。崩壊剤の例としては、コーンスターチ、ポテトデンプン、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムが挙げられる。潤滑剤の例としては、タルク及びステアリン酸マグネシウムが挙げられる。また、従来から使用されているラクトースやマンニトールなどの添加剤を使用することもできる。
【0059】
非経口投与の場合、本発明の化合物は、直腸投与または注射によって投与することができる。直腸投与には、坐剤を使用することができる。坐剤は、本発明の化合物を、体温で融解するが、室温では固体のままである薬学的に好適な賦形剤と混合することによって調製することができる。例としては、カカオバター、カーボンワックス、及びポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。得られた組成物は、本分野で既知の方法を用いて任意の所望の形態に成形することができる。
【0060】
注射による投与の場合、本発明の化合物は、皮下、皮内、静脈内、または筋肉内注射することができる。このような注射用の医薬品は、本発明の化合物を、公知の方法で植物油、合成樹脂酸のグリセリド、高級脂肪酸のエステル、またはプロピレングリコールなどの水性または非水性溶媒に溶解、懸濁、または乳化させることによって調製され得る。また、必要に応じて、慣用される可溶化剤、浸透圧調整剤、乳化剤、安定剤または防腐剤などの添加剤を添加することもできる。必要ではないが、組成物を殺菌または滅菌することが好ましい。
【0061】
本発明の化合物を製剤化して、懸濁液、シロップ、またはエリキシル剤にするために、薬学的に好適な溶媒を使用することができる。これらの中には、水の非限定的な例が含まれる。
【0062】
本発明の化合物は、医薬を調製するための他の薬学的に好適な活性を有する追加の化合物と一緒に使用することもできる。本発明の化合物をスタンドアロン化合物としてまたは組成物の一部として含有する薬物のいずれかを、それを必要とする対象の治療に使用することができる。
【0063】
本発明の化合物はまた、気体状または液体状の噴霧剤と一緒に、液体または微粉体の形態で化合物を充填することによって調製されたエアロゾルまたは吸入剤の形態で投与されてもよく、エアロゾル容器または噴霧器などの非加圧容器に、必要に応じて膨張剤などの公知の補助剤を充填してもよい。、例えば、ジクロロフルオロエタン、プロパン、または窒素の加圧ガスが、噴霧剤として使用されてもよい。
【0064】
本発明の化合物は、錠剤、カプセル、溶液、またはエマルジョンなどの医薬組成物として、それを必要とする哺乳類及びヒトを含む動物に投与することができる。単一投与または複数投与において、限定されないが、それらのエステル、その薬学的に好適な塩、それらの代謝産物、その構造的に関連する化合物、それらの類似体、及びそれらの組み合わせを含む、本発明に記載の他の形態の化合物の投与もまた本発明によって意図される。
【0065】
本発明の化合物はまた、食品または栄養補助食品として、栄養添加物として必要とする動物に投与することができる。
【0066】
「予防する」、「治療する」、または「改善する」及び本明細書中で使用される同様の用語は、予防及び完全または部分治療を含む。この用語には、症状の軽減、症状の改善、症状の重症度の低下、疾患の発生率の低下、または治療結果を改善する患者の状態のその他の変化も含まれ得る。
【0067】
本発明に記載された化合物は、好ましくは、組成物の形態で使用される及び/または投与される。好適な組成物は、好ましくは、医薬組成物、食料品、または食品補助剤である。これらの組成物は、化合物を送達するのに便利な形態を提供する。本発明の組成物は、酸化または溶解度に対する化合物の安定性を増大させるのに有効な量の酸化防止剤を含み得る。
【0068】
本発明の方法において投与される化合物の量または本発明の使用における投与のための化合物の量は、任意の好適な量である。好ましくは、それは、1日あたり約0.0001g〜約20g(より好ましくは0.01g〜1g、例えば0.05g〜0.5g)の化合物である。好適な組成物をそれに応じて製剤化することができる。生物学的に活性な薬剤を投与する当業者は、知られまたはよく理解されているパラメータに基づいて、様々な対象のための特定の投薬レジメンを開発することができるであろう。
【0069】
本発明による好ましい組成物は、医薬組成物であり、例えば、カプセル、ピル、カプレット、多粒子(顆粒、ビーズ、ペレット及びマイクロカプセル化粒子を含む)、粉末、エリキシル剤、シロップ、懸濁液、及び溶液である。医薬組成物は、典型的には薬学的に許容される希釈剤または担体を含むだろう。医薬組成物は、好ましくは、経口投与または非経口投与するために適合される。経口投与可能な組成物は、個体または液体形態であり得、とりわけ、錠剤、粉末、懸濁液、及びシロップの形態を取ってもよい。必要に応じて、組成物は、1つ以上の香味剤及び/または着色剤を含む。一般に、治療用及び栄養組成物は、化合物の作用により対象に対して著しく妨害しない任意の物質を含むことができる。
【0070】
そのような組成物における使用に適した薬学的に許容される担体は、薬学の分野において周知である。本発明の組成物は、0.01〜99重量%の本発明の化合物を含有することができる。本発明の組成物は概して、単位剤形で調製される。好ましくは、本発明に記載の化合物の単位用量は、1mg〜1000mg(より好ましくは50mg〜500mg)である。これらの組成物の調製に使用される賦形剤は、当該分野で公知の賦形剤である。
【0071】
組成物のための製品形態のさらなる例は、食品栄養補助剤であり、例えば、ゼラチン、デンプン、加工デンプン、グルコース、スクロース、ラクトース、及びフルクトースのようなデンプン誘導体からなる群から選択されるカプセル化材料を有する軟質ゲルまたは硬質カプセルの形態である。カプセル化材料は、必要に応じて架橋剤、または重合剤、安定剤、酸化防止剤、感光性充填剤を保護するための光吸収剤、防腐剤などを含んでもよい。好ましくは、食品栄養補助剤の化合物の単位用量は、1mg〜1000mg(より好ましくは50mg〜500mg)である。
【0072】
一般に、担体という用語は、記載された化合物と混合することができる組成物を表すために、本出願を通じて使用されてもよく、それは、医薬担体、食料品、栄養補助食品、または食事補助剤であってもよい。上記の材料は、本発明の目的のための担体とみなすことができる。本発明の特定の実施形態では、担体は、本発明の化合物に対してほとんどまたはまったく生物活性を有さない。
【0073】
投与量:本発明の方法は、それを必要とする動物に対して治療有効量の化合物を投与することを含み得る。化合物の有効量は、投与される化合物の形態、投与期間、投与経路(例えば、経口または非経口)、動物の年齢、及び動物またはヒトを含む動物の状態に依存する。
【0074】
例えば、動物において、2型糖尿病、前糖尿病、1型糖尿病、耐糖能障害、インスリン抵抗性、潰瘍性大腸炎、もしくはクローン病、または本明細書に記載の他の状態を治療または予防するために有効な化合物の量は、0.1〜10,000mg/kg/日の範囲であり得る。好ましい化合物の有効量は、1〜5,000mg/kg/日であり、より好ましい投与量は2〜100mg/kg/日である。我々の毒物学データが示すように、化合物は比較的毒性がないので、投与量の上限は重要ではない。約7〜100日の期間、より好ましくは15〜50日の期間、及び最も好ましい30〜42日の期間の範囲の間、動物に投与される場合、化合物の有効量は、腫瘍性大腸炎、クローン病、2型糖尿病、1型糖尿病、前糖尿病、メタボリックシンドローム、耐糖能障害、及び動物のインスリン抵抗性を治療または予防することにおいて最も有効である。
【0075】
免疫系の過活性化を防止するのに最も有効な量の化合物は、0.1〜500mg/kg/日の範囲であり、好ましい用量は1〜150mg/kg/日の範囲であり得る。
【0076】
有効量の本発明の化合物が、栄養的、治療的、医学的、または獣医学的組成物において投与される場合、好ましい用量は、食品または栄養補給食品に対して約0.01〜2.0重量%の範囲である。
特定の他の実施形態では、本発明は、IBD及び胃腸管炎症の治療及び予防におけるLANCL2結合性化合物及び構造的に関連する化合物、例えば、化合物、そのエステル、その薬学的に好適な塩、その代謝産物、その構造的に関連する化合物、またはその組み合わせからなる群から選択される化合物の使用のために提供する。
【0077】
さらに、概して、本発明は、関連する成分が胃、小腸、大腸及び直腸を含む消化管における炎症の阻害に関する。この効果は、生物学的効果を誘発する体内の様々な細胞タイプへの、化合物の曝露に起因する。細胞は、胃腸管組織、免疫細胞(すなわち、マクロファージ、単球、リンパ球)、または上皮細胞由来のものを含むことができる。特定の実施形態では、本発明は、炎症性腸疾患、クローン病、または潰瘍性大腸炎に関連する炎症を軽減または予防するために、本発明の化合物、例えば栄養補助食品で対象を治療することを提供する。本発明はまた、腸における細胞接着分子の発現を抑制するために、本発明の化合物を消化管に投与することを企図する。
【0078】
実施される場合、本発明の方法は、上記のような任意の許容可能な形態を使用して任意の許容される投与経路を介して対象に化合物を投与する方法、及び対象の身体が自然プロセスを介して標的細胞に化合物を分配することを可能にする方法によるものである。上述のように、投与は、同様に、標的細胞(すなわち、治療される細胞)を含む部位(例えば、器官、組織)への直接注射による投与であってもよい。
【0079】
さらに、投与することは任意の数のレジメンに従い得る。したがって、これは、実験的化合物の単回投与もしくは投薬、または、一定期間にわたる複数回の投与もしくは投薬を含み得る。したがって、治療は、所望の結果が達成されるまでステップを1回以上繰り返すことを含み得る。特定の実施形態において、治療は、数週間、数ヶ月または数年などの長期間にわたって継続することができる。当業者は、当該技術分野における既知のパラメータに基づいて、個体のための好適な投薬レジメンを容易に十分に開発することができる。本発明の化合物の投与量は、本発明のこれらの実施形態の方法において使用することができる。IBDの治療、消化管炎症の治療または腸内の細胞接着分子の発現を抑制することに関して、化合物を約1mg/日〜9,000mg/日の量で投与することが好ましい。
【0080】
投与される量は、対象、疾患または障害のステージ、対象の年齢、対象の一般的健康状態、及び医学分野の当業者にとって既知の日常的に考慮される種々の他のパラメータに依存して変化するだろう。一般的には、胃腸管における炎症の量の検出可能な変化を生じさせるために十分な量の化合物が投与され、IBDはしばしば個体が苦しんでいる痛みの量に関連する。現在IBD症状を経験していない患者では、誰かが探すかもしれない変化は、免疫細胞上のTNFα発現または血中の調節性T細胞の百分率のような免疫細胞パラメータを含み得る。好適な量が本明細書に開示されており、追加の好適な量は、本明細書に開示された量に基づいて、過度の実験もなしに、当業者によって特定され得る。
【0081】
1つの態様において、本発明は、IBDに罹患している対象、またはさもなくば、おそらくIBDを発症することによる、クローン病または潰瘍性大腸炎の遺伝的素因を備えた健康な個体を治療または予防する方法を提供する。この方法は、IBDの寛解型のものを治療することも含む。本発明によれば、用語「IBDに罹患している対象」は、IBDに典型的な1つ以上の臨床的徴候を示す疾患または障害を有する対象(例えば、動物、ヒト)を意味するために使用される。一般に、本発明のこの態様による治療または予防方法は、IBDの1つ以上の症状もしくは臨床発症を治療もしくは予防する上で、またはそのような症状(複数可)もしくは発症(複数可)の発展を予防する上で有効である化合物治療剤の量を対象に投与することを含む。
【0082】
したがって、本発明の方法によれば、本発明は、IBD、腸内感染に関連する炎症及び自己免疫疾患に関連する炎症の治療方法を提供し得る。治療の方法は、予防的方法であり得る。特定の実施形態では、方法は、IBD、腸内感染に関連する炎症及び自己免疫疾患に関連する炎症を治療する方法である。他の実施形態では、方法は、IBDを予防する方法である。実施形態では、方法は、IBDの寛解型が活性になるのを防ぐ方法である。さらに他の実施形態では、方法は、IBDに罹患している対象の健康状態、腸内感染に関連する炎症及び自己免疫疾患に関連する炎症を改善する方法である。胃腸感染症を引き起こす生物には、以下が含まれるが、これらに限定されない:エシェリヒア・コリ、シゲラ、サルモネラ、病原性ビブリオス、カンピロバクター・ジェジュニ、エルシニア・エンテロコリチカ、トキソプラズマ・ゴンディイ、エンテロモバヒストリチカ及びジアルジア・ランブリア。したがって、特定の実施形態では、本発明は、IBDに罹患している対象の健康、器官、及び/または組織、腸内感染に関連する炎症及び自己免疫疾患に関連する炎症、またはIBDの発症リスクでの腸内感染に関連する炎症及び自己免疫疾患に関連する炎症を保護する方法を提供する。
【0083】
本発明の一実施形態において、IBDを治療する方法は、例えば、有意な体重増加、全身免疫抑制、クッシング様外観、骨減少症/骨粗鬆症、現在利用可能なIBD治療(すなわち、コルチコステロイド、腫瘍壊死因子アルファインヒビター)に共通する膵炎のような識別可能な副作用を引き起こすことなくIBDを治療することを含む。すなわち、いくつかの細胞においてLANCL2の発現及び/または活性化に影響を及ぼすことによって、少なくとも部分的に治療効果を提供する本発明による治療の方法は、例えば、治療を受けていない他の同様の対象と比較して、治療されている対象における流体保持により体重の有意な増加を引き起こさずに有益な効果を提供することが見出された。
【0084】
このように、本発明の方法は、炎症を軽減する方法を提供することができる。方法は、全身的に(すなわち被験体の体全体に)または局所的に(例えば、投与部位またはT細胞及びマクロファージを含むがこれに限定されない炎症細胞の部位における)炎症を軽減することができる。本発明の方法による炎症を予防または治療する場合、見ることのできる1つの効果は、腸に浸透する血液単球またはマクロファージ及びリンパ球の和の減少である。もう1つは、CD4
+CD25
+FoxP3
+調節性T細胞などの調節性免疫細胞集団の増加、またはリンパ球もしくはマクロファージ(例えば、インターロイキン4(IL−4)もしくはIL−10の増加またはTNF−α及びIL−6の減少)の調節特性の増加であり得る。もう1つは、炎症性遺伝子及び/または接着分子の存在の減少であり得る。したがって、方法はまた、化合物治療剤が投与される対象の免疫応答に影響するまたはその免疫応答を変化させる方法を意図し得る。対象は、炎症性腸疾患またはT細胞の免疫調節もしくは細胞接着分子のダウンレギュレーションが望ましい結果である別の状態であってもよい。
【0085】
本発明はまた、本明細書に記載の化合物で感染症を治療する方法を提供する。そのような感染性疾患の非限定的な例には、ウイルス感染、細菌感染、及び真菌感染が含まれる。
【0086】
ウイルス感染の非限定的な例としては、アデノウイルス科のウイルス由来の感染、例えばとりわけ、アデノウイルス;単純ヘルペスのようなヘルペスウイルス科のウイルス、1型、単純ヘルペス、2型、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタイン−バーウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス、及び8型;ヒトパピローマウイルスのようなパピローマウイルス科のウイルス;BKウイルス及びJCウイルスのようなポリオーマウイルス科のウイルス;天然痘のようなポックスウイルス科のウイルス;B型肝炎ウイルスのようなヘパドナウイルス科のウイルス;ヒトボカウイルス及びパルボウイルスB19のようなパルボウイルス科のウイルス;ヒトアストロウイルスのようなアストロウイルス科のウイルス;ノーウォークウイルスのようなカリシウイルス科のウイルス;コクサッキーウイルス、A型肝炎ウイルス、ポリオウイルス、及びライノウイルスのようなピコルナウイルス科のウイルス;急性呼吸器症候群ウイルスのようなコロナウイルス科のウイルス;C型肝炎ウイルス、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス及びウエストナイルウイルスのようなフラビウイルス科のウイルス、風疹ウイルスのようなトガウイルス科のウイルス;E型肝炎ウイルスのようなヘペスウイルス科のウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のようなレトロウイルス科のウイルス;インフルエンザウイルスのようなオルトミクソウイルス科のウイルス;グアナリトウイルス、ジュニアウイルス、ラッサウイルス、マッポウイルス、及びサビアウイルスのようなアレナウイルス科のウイルス;クリミア・コンゴ出血熱ウイルスのようなブンヤウイルス科のウイルス;エボラウイルス及びマールブルグウイルスのようなフィロウイルス科のウイルス;麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヘンドラウイルス、及びニパウイルスのようなパラミクソウイルス科のウイルス;狂犬病ウイルスのようなラブドウイルス科のウイルス;D型肝炎ウイルスのような未割り当てウイルス;ならびにロビウイルス、オルビウイルス、コルチウイルス、及びバンナウイルスのようなレオウイルス科のウイルス由来の感染を含む。
【0087】
細菌感染症の非限定的な例としては、炭疽菌、バチルスセレウス、百日咳菌、ボレリア・ブルグドルフェリ、ブルセラ・アボタス、ブルセラ・カニス、ブルセラ・メリテンシス、ブルセラ・スイスカンピロバクター・ジェジュニクラミジア・ニューモニエ、クラミジア・トラコマチス、クラミドフィラ・シッタタシ、ボツリヌス菌、クロストリジウム・ディフィシレ、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)クロストリジウム・テタニ、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム、エシェリヒア・コリ、フランシスセルラ・トラレンシス、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、ヘリコバクター・ピロリ、レジオネラ・ニューモフィラ、レプトスピラ・インタログ、リステリアモノサイトゲネス、マイコバクテリウム・レプラエ(Mycobacterium leprae)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、マイコバクテリウム・ウルセランス、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)、ナイセリア・ゴノレエ(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、リケッチア・リケッツィ、サルモネラ・チフィ、サルモネラ・ティフィムリウム、赤痢菌、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・サプロフィチカス(Staphylococcus saprophyticus)、ストレプトコッカス・アガラクティエ、肺炎連鎖球菌、ストレプトコッカス・ピオゲネス、トレポネーマ・パリダム、ビブリオコレラ(Vibrio cholerae)、エルシニア・ペスティス、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)、エルシニア偽結核症、及び上記生物の属に由来する他の種に加えて、上述した細菌による感染を含む。
【0088】
真菌感染の非限定的な例には、アスペルギルス症の原因となるアスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)のようなアスペルギルス属の真菌;ブラストミセス症を引き起こすブラストミセス・デルマチチディス(Blastomyces dermatitidis)のようなブラストミセス属(Blastomyces)属の真菌;カンジダ症を引き起こすカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)のようなキャンディダ属(Candida属)の真菌;コクシジオイデス菌症(谷熱)を引き起こすコクシジオイデス(Coccidioides)属の真菌;クリプトコッカス症を引き起こす(Cryptococcus neoformans)及びクリプトコッカス・ガッティ(Cryptococcus gattii)のようなクリプトコッカス(Cryptococcus)属の真菌;線虫を引き起こす皮膚糸状菌;フザリウム種、アスペルギルス種、カンジダ種のような真菌性角膜炎を引き起こす真菌;ヒストプラスマ症を引き起こすヒストプラスマ・カプスラツム(Histoplasma capsulatum)のようなヒストプラスマ(Histoplasma)属の真菌;ムコール症を引き起こすムコール属の真菌;サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のようなサッカロマイセス(Saccharomyces)属の真菌;ニューモシスチス肺炎を引き起こすニューモシスチス・ジロベイ(Pneumocystis jirovecii)のようなニューモシスティス(Pneumocystis)属の真菌;ならびにスポロトリコーシスを引き起こすスポロトリックス・シェンキィのようなスポロトリックス属の真菌での感染を含む。
【0089】
本発明はまた、本明細書に記載の化合物で自己免疫炎症性疾患を治療する方法を提供する。自己免疫炎症性疾患の非限定的な例としては、とりわけ炎症性腸疾患(IBD)、全身性狼瘡、関節リウマチ、1型糖尿病、乾癬、及び多発性硬化症が挙げられる。
【0090】
本発明はまた、本明細書に記載の化合物で慢性炎症性疾患を治療する方法を提供する。慢性炎症性疾患の非限定的な例には、とりわけメタボリックシンドローム、肥満、前糖尿病、心血管疾患、及び2型糖尿病が含まれる。
【0091】
本発明はまた、1型糖尿病、2型糖尿病、及び他のタイプの糖尿病を含む、本明細書に記載の化合物で糖尿病を治療する方法を提供する。用語「糖尿病(diabetes)」または「糖尿病(diabetes mellitus)」は、対象が高血糖(すなわち、高血糖(hyperglycemia))を有する代謝障害を包含するために使用される。高血糖状態は、膵臓が十分なインスリンを産生しないまたは細胞が産生されるインスリンに応答しないなどの様々な病因を有する。糖尿病のいくつかの認識されたサブタイプがある。1型糖尿病は、身体がインスリンをまったく産生しない、または身体が十分なインスリンを産生しないということで特徴づけられる。2型糖尿病は概して、細胞がインスリンを適切に使用できない状態であるインスリン抵抗性に起因する。2型糖尿病は時にはインスリン欠乏を併発する。妊娠中の糖尿病は、糖尿病の診断を受けていない妊婦が高血糖を発症したときに起こる。あまり一般的でない糖尿病は、先天性糖尿病(インスリン分泌に関連する遺伝的欠陥による)、嚢胞性線維症関連糖尿病、高用量のグルココルチコイドによって誘導されるステロイド糖尿病、及び(若者の成熟発症糖尿病を含む)一遺伝子的糖尿病のいくつかの形態を含む。一遺伝子的糖尿病は、単一の常染色体優性遺伝子における突然変異(高血糖症をもたらすより複雑な多遺伝子病因と対照的に)に起因する糖尿病のいくつかの遺伝型を包含する。
【0092】
上記の方法を考慮すると、本発明は、対象の細胞を処置する場合など、細胞を接触させる場合に使用するためのLANCL2結合性化合物療法を提供することは明らかである。上記の議論は、概して医薬品または医療設定とみなされ得るものにおける使用のための組成物の一部としての本発明の化合物の使用に焦点を当てている。
【0093】
IBD、胃腸管炎症及び記載された他の状態の治療のために本発明に記載の化合物は、上記により詳細に記載したように、医薬品、栄養組成物、機能性食品組成物、または食事補助剤として製剤化することができる。
【0094】
本明細書に記載されている要素及び方法ステップは、明示的に記載されていなくても、任意の組み合わせで使用することができる。
【0095】
本明細書で使用される方法ステップの全ての組み合わせは、他に特定されない限り、参照された組み合わせがなされる文脈によって反対と明らかに示唆されない限り、任意の順序で実行され得る。
【0096】
本明細書で使用するように、単数形「a」、「an」及び「the」は、その内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0097】
本明細書で使用される数値範囲は、具体的に開示されているか否かにかかわらず、その範囲内に含まれる全ての数及びサブセットの数値を含むことが意図されている。さらに、これらの数値範囲は、その範囲内の任意の数または数字のサブセットに向けられた特許請求の範囲のためのサポートを提供するものと解釈されるべきである。例えば、1〜10の開示は、2〜8、3〜7、5〜6、1〜9、3.6〜4.6、3.5〜9.9などの範囲を支持すると解釈されるべきである。
【0098】
本明細書で引用した全ての特許、特許公報、及びピアレビューされた刊行物(すなわち、「参考文献」)は、それぞれの個々の参考文献が具体的かつ個別に参照により組み入れられるように示されているのと同じ程度に、参照により明示的に組み込まれる。本開示と組み込まれた参考文献との間に矛盾がある場合、本開示は制御する。
【0099】
本発明は、本明細書に示され及び説明された部分の特定の構造及び配置に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に含まれるそのような変更形態を包含すると理解される。
【0100】
分子モデリングの例
実施例1:LANCL2リガンド結合の分子モデリング
前書き
アブシジン酸(ABA)及びNSC61610などの確立されたLANCL2アゴニストは、IBDから糖尿病及びインフルエンザまでの広範な疾患モデルにおいて抗炎症活性を発揮する。新たな治療標的としてのLANCL2の価値は、慢性代謝、免疫介在性、及び感染性疾患の治療ための新しいクラスの経口活性薬物の発見及び開発の努力に値する。本実施例で論じたように、追加のLANCL2アゴニストは、計算モデリング及び実験的検証を反復的に組み合わせた合理的薬物設計によって開発された。本実施例は、溶解度を増大させ、LANCL2への結合を増加させ、コストを低減し、及びLANCL2タンパク質そのものを理解するための合理的薬物設計及び医薬化学的努力を増加させるアプローチを示す。
【0101】
方法
LANCL2の構造LANCL2の結晶構造は存在しない。したがって、LANCL2の構造及び機能を理解するために、LANCL1の結晶構造を鋳型として用いて、ヒトLANCL2の相同性モデリングを行った。モデルの品質を評価し、改善をエネルギー最小化手順によって行った。相同性モデリングは、構造が実験的に解決されたタンパク質ファミリーの他のメンバーからの相同タンパク質を同定することによって、タンパク質の3D構造を予測する[52]。タンパク質が35%を超える配列同一性を有する場合、それらは相同である可能性が高い。LANCL1は、LANCL2と54%の配列同一性を共有する[15]。
【0102】
化合物生成及びリガンド構造。LANCL2アゴニストの構造が生成された(
図1A及び1B)。これらのアゴニストのSMILESは、NIHのオンラインSMILES Translator and Converter[53]を用いて作製した。同時に、個々の構造.pdbファイルが生成され、ダウンロードされた。AutoDock Toolsは、pdbファイルを仮想スクリーニングに必要な.pdbqtに変換するために使用していた。
【0103】
バーチャルスクリーニング。生成された派生ファイルのドッキングは、AutoDockツールを使用して実行された。グリッドボックス中心とx、y、及びz次元とを含む探索空間が定義された。タンパク質のターゲット全体にドッキングを施し、タンパク質の表面全体を覆うグリッドを付けた。格子は、格子点が0.608Å離れた規則的な直方体(77.8Å×77.8Å×77.8Å)であった。このグリッドはタンパク質の中心に位置していた。これらの寸法及び間隔は、グリッドがLANCL2の全表面を覆うことを可能にした。遺伝的アルゴリズムは、確率的大域的最適化に用いられた。100個の結合コンフォメーションが、各複合体のAutoDock Toolsによって生成された。得られた各誘導体の100個のポーズは、2.0ÅのRMSDクラスター公差でクラスター化された。
【0104】
バーチャルスクリーニング結果の分析。AutoDock Vinaを使用して各化合物をLANCL2に適合させる最善の方法の探求は、ドッキングの記録を含むログファイルをドッキングすることをもたらした、すべての化合物についての各予測された結合モードの結合エネルギーを含む。結合エネルギーは、総分子間エネルギー、総内部エネルギー及びねじり自由エネルギーから非結合系のエネルギーを差し引いた合計を表す。化合物は最も負のエネルギー値でランク付けされた。第1のクラスターにおける最も低い結合エネルギーポーズは、最も好ましいドッキングポーズと考えられた。結合自由エネルギーが低いほど、より安定なタンパク質リガンド系及びタンパク質とリガンドとの間のより高い親和性を示す。例示的な化合物は、ヒト疾患のマウスモデルを用いたインビトロ試験及び前臨床試験によってさらに検証される。
【0105】
結果
NSC61610ドッキング要約。最低エネルギー位置のエネルギーを有するNSC61610の上位5つのクラスターのヒストグラムを
図2に示す。NSC61610は、「中央裂け目」の親和性が非常に高い。上位2つのクラスターは、合計実行の7%を表し、それぞれがこの部位に向いている。2オングストロームの公差のために、他のクラスターがこの部位に向いている可能性がある。次の2つのクラスターは、青色のランダムコイルの近くの「アロステリック部位」に向かう。
【0106】
ABAドッキング要約。最低エネルギー位置のエネルギーを有するABAの上位5つのクラスターのヒストグラムを
図3に示す。ABAは中程度の親和性を有するが、薄緑色ヘリックス及び薄緑色ランダムコイルの間の「アロステリック」部位に対して非常に高い特異性を有する。実行の29%がこのトップクラスターに向けられている。第2のクラスターもこの部位に向けられている。2オングストロームの公差のために、他のクラスターがこの部位に向いている可能性がある。第4のクラスターは「中央の裂け目」にあるように見える。これはABAの真の治療部位の問題を開けたままにする。
【0107】
BT−11ドッキング要約。最低エネルギー位置のエネルギーを有するBT−11の上位5つのクラスターのヒストグラムを
図4に示す。BT−11の上位2つのクラスターは「中央割れ目」に向いているが、実行の2%しか表していない。しかしながら、2オングストロームの公差のために、他のクラスターがこの部位に向いている可能性がある。BT−11は、NSC61610より僅かに低いがABAよりも高いこの部位についての親和性を有する。BT−11は、治療有効性を示している(下記の実施例参照)。
【0108】
BT−6ドッキング要約。最低エネルギー位置のエネルギーを有するBT−6の上位5つのクラスターのヒストグラムを
図5に示す。BT−6は、ドッキングされたどの化合物よりも親和性が高い。上位2つ、おそらく3つのクラスターは、「中央の裂け目」に向いている。2オングストロームの公差のために、他のクラスターがこの部位に向いている可能性がある。クラスター4は、青色ランダムコイルに沿って「アロステリック」部位に向けられる。
【0109】
BT−15ドッキング要約。最低エネルギー位置のエネルギーを有するBT−15の上位6つのクラスターのヒストグラムを
図5に示す。BT−15は、NSC61610またはBT−11のいずれかの結合親和性を有さない。「中央の裂け目」に向かっているように見えるが、この効果はNSC61610またはBT−11ほど顕著ではないようである。
【0110】
BT−ABA−5aドッキング要約。最低エネルギー位置のエネルギーを有するBT−ABA−5aの上位7つのクラスターのヒストグラムを
図5に示す。BT−ABA−5aの最も高い親和性は、以前に調査されたいずれのドッキングでは見られなかった場所にある。しかしながら、クラスター2及び3は32%の大部分の実行を表す。クラスター2は、右後部のアロステリック部位に向かう。クラスター3は、ABAの「アロステリック」部位に向かう。クラスター4はまた、この部位2向かう。2オングストロームの公差のために、他のクラスターがこの部位に向いている可能性がある。
【0111】
考察
ABA及びNSC61610の両方は、LANCL2依存性の免疫調節、抗炎症ならびに抗糖尿病効果を発揮するが、計算上の予測はそれらがLANCL2の異なる部位で結合することを示唆する。予想通り、合理的に設計されたリガンドは、主にABA及びNSC61610の一次結合部位に向けられる。BT−ABA化合物は、サイズがより小さく、−COOH官能基を有し、それらが親水性の表面ポケットに向かう直感的な意味を持つ。BT化合物ははるかに疎水性であり、それゆえ、アルファヘリックスに囲まれたより疎水性の中央の裂け目に導く直感的な意味を持つ。
【0112】
結合親和性は、SPRデータと適度な相関を有する(
図1A及び1B;以下の実施例を参照のこと)。SPRデータ(K
D値を有する)は、NSC61610(2.3&6.3)、BT−11(6.3&7.7)、BT−15(11.4&21.4)、BT−6(18.2)の結合強度の順序を示唆する。データのモデリング(最も低いBEを有する)は、BT−6(−10.47)、NSC61610(−10.27)、BT−11(−9.39)、BT−15(−8.87)の拘束力の順序を示唆する。BT−6の最低から第1番目への反転の他に、SPRデータ及びモデリングデータは、結合強度の同じ順序を示唆する。合理的な薬物設計と組み合わせた分子モデリングデータは、強力な抗糖尿病及び抗炎症特性を利用するためにLANCL2経路を標的及び活性化する類似体のさらなる開発を可能にするLANCL2タンパク質のより良い理解をもたらす可能性がある。
【0113】
医薬品化学実施例
実施例2:BT−11及び塩
スキーム2−1に示されるように、DMF(100mL)中6−(1H−ベンズイミダゾール−2−イル)ピリジン−2−カルボン酸(12g)の溶液を0℃に冷却し、その後、EDC・HCl(1.5当量)、HOBt(1.5当量)、及びDIPEA(1.2当量、推定密度の体積での取り込み)を連続して添加した。混合物を0℃で10分間撹拌した。ピペラジン(0.5当量)を添加し、反応混合物を室温になるまで徐々に加温させ、16時間撹拌した。反応が完了した後(TLCにより監視、溶出剤:DCM中10%MeOH)、反応混合物を氷冷水(約300mL)に注ぎ、沈殿した固体を濾過し、氷冷水で洗浄し、乾燥させて、淡茶色の固体としてBT−11(10g、75%)を得た。
1H NMR(400MHz,DMSO−d
6),δ13.0(s,1H),12.8(s,1H),8.38(dd,2H),8.13(dt,2H),7.73(dd,2H),7.67(d,2H),7.57(dd,2H),7.25(m,4H),3.90(bs,2H),3.80(bdd,2H),3.65(bdd,2H),3.56(bs,2H)。LCMS−ES 529.44[M+H]
+、265.46[(M+2H)/2]
++。
【0114】
スキーム2−2に示されるように、最小量のMeOH(5mL)中BT−11(1.0当量)の懸濁液を0℃に冷却し、4Mのメタノール性HCl(過剰、15mL/1g)を15〜20分間にわたって滴加した。混合物を室温になるまで3時間にわたって徐々に加温させた。反応が完了した後(TLCによる監視、溶出剤:CH
2Cl
2中10%MeOH)、揮発物を減圧下で蒸発させた。粗物質をCH
2Cl
2中10%MeOHで洗浄し、凍結乾燥させて、灰色がかった白色の固体(850mg、75%)を得た。
1H NMR(400MHz,DMSO−d
6),δ8.58(dd,2H),8.29(dt,2H),7.83(m,6H),7.44(bd,4H),3.91(bs,2H),3.81(bm,2H),3.64(bm,2H),3.55(bs,2H)。LCMS−ES 529.56[M+H]
+。
実施例3:BT−12
【0115】
スキーム3−1に示されるように、CH
2Cl
2中10%DMF中6−(ベンゾオキサゾール−2−イル)ピリジン−2−カルボン酸の溶液(4.05g)を、EDC・HCl(1.5当量)、HOBt(1.5当量)、及びDIPEA(1.2当量、推定密度の体積での取り込み)、及び0.5当量のピペラジン(0℃)で処理した。混合物を室温になるまで16時間にわたって加温させた。薄茶色の固体が生じ、これを焼結ガラス漏斗で濾過し、水で洗浄し、凍結乾燥させて、薄茶色の固体(3.2g)を得た。
1H NMR(300MHz,CDCl
3),δ8.45(dd,2H),8.05(m,2H),7.9(d,2H),7.8(dd,2H),7.6(dd,2H),7.4(m,2H),7.35(m,2H),4.0(bm,8H)。
実施例4:BT−14及び塩
【0116】
スキーム4−1に示されるように、DMF(10mL)中6−(ベンゾオキサゾール−2−イル)ピリジン−2−カルボン酸(500mg)の溶液を、EDC・HCl(1.5当量)、HOBt(1.5当量)、DIPEA(3当量)、及びピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチル(1.1当量)(0℃)で処理した。混合物を室温になるまで16時間にわたって加温させた。溶媒を蒸発させた後、残渣をEtOAcで抽出し、水で洗浄した。有機層を真空下で蒸発させ、粗残渣をペンタンで洗浄して、薄茶色の固体(120mg、48%)を得た。
1H NMR(400MHz,DMSO−d
6),δ8.4(d,1H),8.2(t,1H),7.9(t,2H),7.8(d,1H),7.5(dt,2H),3.7(bm,2H),3.5(bm,4H),3.4(bm,2H),1.4(s,9H)。LCMS−ES 409.49[M+H]
+、431.37[M+Na]
+、447.36[M+K]
+。
【0117】
スキーム4−2に示されるように、スキーム4−1から結果として生じた化合物(200mg)を、メタノール性HCl(6mL)(0℃)で処理した。混合物を室温になるまで3時間にわたって加温させた。溶媒を蒸発させ、ペンタン及びエーテルで洗浄して、薄茶色の固体(160mg、定量)を得た。
1H NMR(300MHz,DMSO−d
6),δ9.30(bs,2H),8.45(d,1H),8.25(t,1H),7.9(m,3H),7.5(quin,2H),3.7(bm,2H),3.5(bm,2H),3.3(bm,4H),1.4(s,9H)。LCMS−ES 309.26[M+H]
+。
【0118】
スキーム4−3に示されるように、スキーム4−2から結果として生じた塩(25mg)を飽和NaHCO
3水溶液で中和し、その後、凍結乾燥機内で乾燥させて、20mg/96%のBT−14を得た。収率は、90%であった。
1H NMR(300MHz,DMSO−d
6),δ8.4(d,1H),8.2(t,1H),7.90(t,2H),7.75(d,1H),7.5(quin,2H),3.95(bm,2H),3.8(bm,2H),3.3(bm,2H),3.2(bm,2H);309.37 LCMS−ES[M+H]
+。
実施例5:BT−15
【0119】
スキーム5−1に示されるように、DMF(5mL)中6−(1H−ベンズイミダゾール−2−イル)ピリジン−2−カルボン酸(50mg)を、EDC・HCl(1.5当量)、HOBt(1.5当量)、DIPEA(3当量)、及び0.9当量のBT−14 HCl塩(0℃)で処理した。混合物を室温になるまで16時間にわたって加温させた。焼結漏斗で濾過し、その後、水で洗浄し、凍結乾燥させて水分を除去して、20mgのBT−15を得た。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d
6),δ12.93(d,1H),8.44(dd,1H),8.36(t,1H)8.25(t,1H),8.17(m,2H),7.87(m,3H),7.72(m,2H),7.54(m,2H),7.31(m,3H),3.90(s,2H),3.82(bm,2H),3.67(bm,2H),3.58(bm,2H)。LCMS−ES 530.48[M+H]
+、265.94[(M+2H)/2]
++。
【0120】
BT−15は、LANCL2結合を示した(
図1A)。そのLANCL2への予測結合親和性は、−9.9であり、SPRにより確認された親和性は、21.4のKd値を有した。
実施例6:BT−13塩
【0121】
スキーム6−1に示されるように、DMF(10mL)中6−(1H−ベンズイミダゾール−2−イル)ピリジン−2−カルボン酸(500mg)を、EDC・HCl(1.5当量)、HOBt(1.5当量)、DIPEA(3当量)、及びピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチル(1.1当量)(0℃)で処理した。混合物を室温になるまで16時間にわたって加温させた。反応混合物を氷冷水に注いだ後、沈殿物を濾過し、乾燥させて、淡茶色の固体(600mg、70%)を得た。TLC(100%酢酸エチル)。HNMR及びLCMS準拠。(収率70%)。
1H NMR(300MHz,DMSO−d
6),δ12.90(s,1H),8.4(d,1H),8.15(t,1H),7.65(td、3H),7.25(quin,2H),3.7(bm,2H),3.5(bm,2H),3.3(bm,4H),1.4(s,9H)。LCMS−ES 408.35[M+H]
+。
【0122】
スキーム6−2に示されるように、スキーム6−1から結果として生じた化合物(600mg)を、メタノール性HCl(6mL)(0℃)で3時間処理した。混合物を室温になるまで3時間にわたって徐々に加温させた。過剰メタノール性HClを蒸発させて、薄茶色の固体としてBT−13 HCl(500mg)を得た。
実施例7:BT−4及び塩
【0123】
スキーム7−1に示されるように、DMF(6mL)中3−(1H−ベンズイミダゾール−2−イル)安息香酸(100mg)を、EDC・HCl(1.5当量)、HOBt(1.5当量)、DIPEA(1当量)、及び0.5当量のピペラジン(0℃)で処理した。混合物を室温になるまで16時間にわたって加温させた。TLC(10%メタノール:DCM)は、非極性スポットの形成及び出発物質の不在を示す。後処理し、エーテルで洗浄した後、30mg/95%のBT−4を単離した。
1H NMR(400MHz,DMSO−d
6),δ13.0(s,2H),8.3(bm,4H),7.75(bm,4H),7.60(bm,4H),7.2(bm,4H),3.65(bm,8H)。LCMS−ES 527.36[M+H]
+、264.50[(M+2H)/2]
++。
【0124】
7−2に示されるようにスキーム、30mg/95%のBT−4を、ジオキサン中4MのHClで3時間処理した。溶媒を蒸発させ、エーテルで洗浄して、10mg/97%のBT−4 HCl塩を得た。
1H NMR(400MHz,DMSO−d
6),δ8.45(bm,4H),7.80(bm,8H),7.50(bm,4H),3.65(bm,8H)。LCMS−ES 527.44[M+H]
+、264.50[(M+2H)/2]
++。
実施例8:BT−6及び塩
【0125】
スキーム8−1に示されるように、DMF(6mL)中3−(1H−ベンズイミダゾール−2−イル)安息香酸(100mg)を、EDC・HCl(1.5当量)、HOBt(1.5当量)、DIPEA(1当量)、及びベンゼン−1,4−ジアミン(0.5当量)(0℃)で処理した。混合物を室温になるまで16時間にわたって加温させた。TLC(10%メタノール:DCM)は、非極性スポットの形成及び出発物質の不在を示す。後処理し、エーテルで洗浄した後、薄茶色の固体(60mg)を単離した。
1H NMR(300MHz,DMSO−d
6),δ13.1(s,2H),10.45(s,2H),8.75(s,2H),8.40(d,2H),8.05(d,2H),7.85(s,4H),7.70(t,4H),7.55(d,2H)7.25(quin,4H)。LCMS−ES 549.0[M+H]
+ 275.1[(M+2H)/2]
++。
【0126】
スキーム8−2に示されるように、60mg/98%のBT−6を、ジオキサン中4MのHClで3時間処理した。溶媒を蒸発させ、エーテルで洗浄した後に、50mg/96%のBT−6 HCl塩を得た。
1H NMR(300MHz,DMSO−d
6),δ10.60(s,2H),9.00(s,2H),8.55(d,2H),8.30(d,2H),7.90(s,4H),7.85m,6H),7.50(m,4H)。LCMS−ES 549.3[M+H]
+ 275.3[(M+2H)/2]
++。
実施例9:BT−16及び塩
【0127】
スキーム9−1に示されるように、DMF(10mL)中6−(1H−ベンズイミダゾール−2−イル)ピリジン−2−カルボン酸(100mg)を、EDC・HCl(1.5当量)、HOBt(1.5当量)、DIPEA(3当量)、及びベンゼン−1,4−ジアミン(0.5当量)(0℃)で処理した。混合物を室温になるまで16時間にわたって加温させた。反応混合物を氷冷水に注いだ後、沈殿物を濾過し、乾燥させて、淡茶色の固体(60mg)を得た。
【0128】
スキーム9−2に示されるように、化合物BT−16(50mg)を、ジオキサン(3mL)中HCl(0℃)で処理した。混合物を室温になるまで4にわたって加温させた。過剰ジオキサンHClを蒸発させて、30mgの茶色の固体(30mg)を得た。
1H NMR(300MHz,DMSO−d
6),δ11.00(s,2H),8.6(bm,2H),8.35(bm,4H),8.05(s,4H),7.85(bm,4H),7.40(bm,4H)。LCMS−ES 551.84[M+H]
+。
実施例10:BT−3及び塩
【0129】
スキーム10−1に示されるように、DMF(10mL)中3−(2−ベンゾオキサゾリル)安息香酸(50mg)を、EDC・HCl(1.25当量)、HOBt(1.25当量)、DIPEA(1当量)、及びピペラジン(1当量)(0℃)で処理した。混合物を室温になるまで16時間にわたって加温させた。反応混合物を氷冷水で希釈した後、結果として生じた固体を廃棄し、濾過し、その後、乾燥させて、30mgのBT−3を得た。
1H NMR(300MHz,DMSO−d
6),δ8.2(bm,4H),7.8(bm,4H),7.7(bm,4H),7.45(bm,4H),3.6(bm,8H)。LCMS−ES 529.32[M+H]
+。
【0130】
スキーム10−2に示されるように、BT−3(30mg)を、メタノール性HCl(5mL)(0℃)中で処理した。混合物を室温になるまで4時間にわたって加温させた。過剰メタノール性HClを真空で蒸発させた後、茶色の固体(15mg)が生じた。
実施例11:BT−5及び塩
【0131】
スキーム11−1に示されるように、DMF(10mL)中3−(2−ベンゾオキサゾリル)安息香酸(50mg)を、EDC・HCl(1.25当量)、HOBt(1.25当量)、DIPEA(1当量)、及びベンゼン−1,4−ジアミン(0.5当量)(0℃)で処理した。混合物を室温になるまで16時間にわたって加温させた。反応混合物を氷冷水で希釈し、固体を廃棄し、濾過し、その後、乾燥させて、薄茶色の固体(30mg)を得た。
1H NMR(300MHz,TFA),δ9.2(bs,2H),8.8(bm,2H),8.6(bm,2H),7.9(bm,14H)。
【0132】
スキーム11−2に示されるように、35mgのBT−5を、HClジオキサン(5mL)(0℃)中で処理した。混合物を室温になるまで4時間にわたって加温させた。過剰ジオキサンを真空で蒸発させた後、薄茶色の固体(15mg)が生じた。
1H NMR(300MHz,TFA),δ9.3(bs,2H),8.8(bm,2H),8.6(bm,2H),7.9(bm,14H)。
実施例12:BT−17及び塩
【0133】
スキーム12−1に示されるように、DMF(10mL)中6−(ベンゾオキサゾール−2−イル)ピリジン−2−カルボン酸(100mg)を、EDC・HCl(1.5当量)、HOBt(1.5当量)、DIPEA(1.2当量)、及びベンゼン−1,4−ジアミン(0.5当量)(0℃)で処理した。混合物を室温になるまで16時間にわたって加温させた。反応混合物を氷冷水で希釈し、固体を廃棄し、濾過し、その後、乾燥させて、薄茶色の固体(70mg)を得た。
1H NMR(400MHz,TFA),δ8.85(dd,4H),8.55(t,2H),8.1(bm,4H),7.95(m,4H),7.85(s,4H)。LCMS−ES 553.28[M+H]
+。
【0134】
スキーム12−2に示されるように、BT−17(60mg)を、ジオキサンHCl(10mL)(0℃)中で室温になるまで4時間にわたって処理した。凍結乾燥機を使用して溶媒を蒸発させた後、薄茶色の固体(45mg)が生じた。
1H NMR(400MHz,TFA),δ8.90(bm,4H),8.6(bm,2H),8.0(bm,10H)。
実施例13:BT−ABA−25
【0135】
BT−ABA−25の構造をスキーム13−1に示す。BT−ABA−25は、LANCL2のリガンドである(
図1B)。そのLANCL2への予測結合親和性は、−7.5であり、SPRにより確認された親和性は、1.77e−04のKd値を有した。
実施例14:BT−ABA−5a
【0136】
スキーム14−1に示されるように、Et3N(2mL)中8−ビニル−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−8−オール(200mg、1当量)及び5−ブロモフラン−2−カルボン酸メチル(1.5当量)の溶液をアルゴンで10分間脱気した。その後、Pd(OAc)2(0.025当量)、DPPF(0.05当量)を添加し、再度10分間脱気した。結果として生じた反応混合物を100℃で16時間加熱した。薄茶色の固体(130mg)をカラムクロマトグラフィー(EtOAx/ヘキサン3:7)により単離した。
1H NMR(400MHz,DMSO−d
6),δ7.30(d 1H),6.60(d 1H),6.45(dd,2H),4.75(s,1H),3.85(s,4H),3.80(s,3H),1.85(m,2H),1.65(m,2H),1.50(m,4H),LCMS−ES 291.34[M+H]
+。
【0137】
スキーム14−2に示されるように、LiOH(3当量)を、THFH
2O:MeOH(2:1:0.5mL)中スキーム14−1から結果として生じた化合物(化合物4)(100mg)の溶液に添加し、混合物を室温で16時間撹拌した。その後、混合物を減圧下で濃縮し、粗物を最小量の水中に溶解し、2N HClでpH4になるまで酸性化した。化合物をEtOAcで抽出し、濃縮して、薄茶色の固体(54mg)を得て、これをさらに精製することなく次の反応(スキーム14−3)で使用した。
1H NMR(400MHz,DMSO−d
6),δ7.50(d 1H),6.60(d 1H),6.45(dd,2H),4.75(s,1H),3.85(s,4H),3.80(s,3H),1.85(m,2H),1.65(m,2H),1.50(m,4H)。LCMS−ES 277.26[M+H]
+。
【0138】
スキーム14−3に示されるように、0.1mLの3N HClを、0℃のTHF中化合物5(50mg)に撹拌しながら添加した。混合物を室温になるまで6時間にわたって加温させた。TLCは、SMの不在及び非極性スポットを示す。混合物を減圧下で濃縮し、水で希釈、EtOAcで抽出し、再濃縮して、茶色の固体(20mg)を得た。
1H NMR(400MHz,DMSO−d
6),δ13.00(bs 1H),7.20(d 1H),6.95(d 1H),6.60(d 1H),6.45(d,1H),6.10(t,1H),3.05(m,2H),2.65(t,2H),2.5,(2H)。LCMS−ES 233.21[M+H]
+ LCMS−ES 231.27[M−H]
- 463.15[2M−H]
-。
実施例15:BT−ABA−6
【0139】
スキーム15−1に示されるように、Et
3N(8mL)中8−ビニル−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−8−オール(500mg、1当量)、3−ヨード安息香酸エチル(0.8当量)、及びPPh
3(0.02当量)の溶液をアルゴンで10分間脱気した。その後、Pd(OAc)
2(0.02当量)を添加し、再度10分間脱気した。結果として生じた反応混合物を95℃で16時間加熱した。後処理後、淡茶色の固体(500mg)をカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン3:7)により単離した。
1H NMR(400MHz,DMSO−d
6),δ7.95(s 1H),7.80(d 1H),7.71(d 1H),7.47(t 1H),6.65(d 1H),6.49(d,1H),4.65(bs 1H),4.32(q、2H),3.68(s,4H),1.99−1.68(m,4H),1.55−1.50(m,4H),1.33(t 3H)。LCMS−ES 315.38[M−17]
+。
【0140】
スキーム15−2に示されるように、THF/H
2O/EtOH(4:2:1、17.5mL)中化合物4(500mg)の溶液を0℃に冷却し、LiOH(2.5当量)を添加し、混合物を撹拌しながら16時間にわたって室温に上昇させた。混合物を減圧下で濃縮し、粗物を最小量の水中に溶解し、1N HClでpH3〜4になるまで酸性化した。精製カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン1:1)により、淡黄色の固体(220mg)を得た。
1H NMR(400MHz,DMSO−d
6),δ13.00(bs 1H),7.95(s 1H),7.78(d 1H),7.67(d 1H),7.44(t 1H),6.64(d 1H),6.48(d,1H),4.65(s 1H),3.86(s,4H),1.87−1.61(m,4H),1.55−1.50(m,4H)。LCMS−ES 287.34[M−17]
+。
【0141】
スキーム15−3に示されるように、2N HCl(1.5mL)を、0℃のTHF中100mgの化合物5(100mg)の混合物に撹拌しながら添加した。混合物を室温になるまで6時間にわたって加温させた。その後、溶液を減圧下で濃縮し、水で希釈、EtOAcで抽出し、再濃縮して、淡黄色の固体(20mg)を得た。
1H NMR(400MHz,DMSO−d
6),δ13.00(bs 1H),8.00(s,1H),7.80(d 1H),7.65(d 1H),7.45(t 1H),6.75(d 1H),6.45(d,1H),6.10(t,1H),5.15(s 1H),2.65(m,2H),2.15(m,2H),1.90(m,4H),LCMS−ES 259.37[M−H]
- 519.48[2M−H]
-。
実施例16:BT−ABA−13
【0142】
スキーム16−1に示されるように、ジヒドロピラン(1.3当量)及びTsOH(0.1当量)を、0℃のCH
2Cl
2(50mL)中化合物2(2.5g、1当量)の溶液に撹拌しながら添加した。結果として生じた溶液室温になるまで14時間にわたって徐々に加温させた。淡黄色の液体をカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン1:9)により単離した。この化合物をさらに精製することなく次のステップで使用した。
【0143】
スキーム16−2に示されるように、化合物3(2.5g、1.0当量)、4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン(1.2当量)、及びビス(シクロペンタジエニル)塩化水素化ジルコニウム(0.15当量)をEt
3Nに添加した。結果として生じた反応混合物を60〜70℃で16時間加熱した。反応混合物をヘキサンで希釈した。沈殿物を短いシリカゲルパッドで濾去し、ヘキサンで洗浄した。ヘキサン溶液を濃縮して、無色の油性液体(1.3g)を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl3),δ6.60(d 1H),5.60(d 1H),6.35(d,1H),4.75(s,1H),3.85(s,3H),2.80(m,2H),2.35(m,2H),2.05(m,4H)。
【0144】
スキーム16−3に示されるように、9:1のDME/H
2O混合物(8mL)中化合物4(550mg、1.1当量)、6−ブロモピコリン酸メチル(1.0当量)、K
2CO
3(2.0当量)の溶液をアルゴンで10分間脱気した。その後、Pd[(P(Ph)
3]
4(0.04当量)を添加した。結果として生じた反応混合物を100℃で16時間加熱した。反応溶液を濃縮し、その後、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン1:3)にかけて、淡黄色の固体(230mg)を得た。LCMS−ES 404.39[M+H]
+、302.26[M−101]
+。
【0145】
スキーム16−5に示されるように、TsOH(0.1当量)を、1:1のアセトン/H
2O(6mL)中化合物5(230mg、1.0当量)の溶液に添加した。結果として生じた反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、その後、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン7:3)にかけて、淡黄色の液体(110mg)を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl3),δ8.00(d 1H),7.80(t,1H),7.50(d,1H),6.90(m 2H),4.00(s,3H),2.80(m,2H),2.35(m,2H),2.10(m,4H),LCMS−ES 276.38[M+H]
+。
【0146】
スキーム16−6に示されるように、LiOH(2.5当量)を、0℃の3:1のTHF/H
2O(3mL)中化合物6(75mg)の溶液に撹拌しながら添加した。混合物を室温になるまで6時間にわたって加温させた。反応混合物をクエン酸で酸性化し、THFとEtOAcの混合物で抽出した。有機溶液を濃縮して、灰色がかった白色の固体(10mg)を得た。
1H NMR(300MHz,DMSO−d
6),δ13.05(bs,1H),7.90(m,2H),7.65(d,1H),7.05(d,1H),6.80(d,1H),5.20(s,1H),2.65(m,2H),2.20(bd 2H),2.10−1.90(m,4H),LCMS−ES 262.27[M+H]
+。
実施例17:BT−ABA−16
【0147】
スキーム17−1に示されるように、9:1のDME/H
2O混合物(8mL)中化合物4(437mg、1.2当量)、2−ブロモイソニコチン酸メチル(1.0当量)、K
2CO
3(2.0当量)の溶液をアルゴンで10分間脱気した。その後、Pd[(P(Ph)
3]
4(0.04当量)を添加した。結果として生じた反応混合物を90℃で12時間加熱した。反応溶液を濃縮し、その後、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン1:3)にかけて、淡黄色の液体(300mg)を得た。
1H NMR(300MHz,CDCl
3),δ8.70(d,1H),7.85(s,1H),7.65(d,1H),6.85(d,1H),6.65(d,1H),4.70(m,1H),3.95(m,4H),2.20−1.40(m,16H),LCMS−ES 404.54[M+H]
+、302.53[M−101]
+。
【0148】
スキーム17−2に示されるように、TsOH(0.1当量)を、1:1のアセトン/H
2O(6mL)中5(300mg、1.0当量)の溶液に添加した。結果として生じた反応混合物を室温で48時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、その後、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン7:3)にかけて、灰色がかった白色の固体(160mg)を得た。
1H NMR(300MHz,DMSO−d6),δ8.70(d,1H),7.85(s,1H),7.65(d,1H),7.05(d,1H),6.85(d,1H),5.20(s,1H),3.90(s,3H),2.65(td、2H),2.15(bd,2H),2.00(m,2H),1.85(m,2H),LCMS−ES 276.22[M+H]
+。
【0149】
スキーム17−3に示されるように、LiOH(2.5当量)を、0℃の3:1のTHF/H
2O(3mL)中化合物6(100mg)の溶液に撹拌しながら添加した。混合物を室温になるまで16時間にわたって加温させた。反応混合物をクエン酸で酸性化し、THFとEtOAcの混合物で抽出した。減圧下で濃縮して、灰色がかった白色の固体(20mg)を得た。
1H NMR(300MHz,DMSO−d6),δ13.60(bs,1H),8.70(d,1H),7.85(s,1H),7.60(d,1H),7.00(d,1H),6.85(d,1H),5.20(s,1H),2.65(m,2H),2.20−1.80(m,6H),LCMS−ES 262.28[M+H]
+。
実施例18:BT−ABA−14
【0150】
スキーム18−1に示されるように、9:1のDME/H
2O混合物(8mL)中化合物4(300mg、1.2当量)、4−ブロモピコリン酸メチル(1.0当量)、K
2CO
3(2.0当量)の溶液をアルゴンで10分間脱気した。その後、Pd[(P(Ph)
3]
4(0.04当量)を添加した。結果として生じた反応混合物を90℃で12時間加熱した。反応溶液を濃縮し、その後、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン1:3)にかけて、淡黄色の液体(200mg)を得た。
1H NMR(300MHz,CDCl
3),δ8.50(d,1H),8.20(bs,1H),7.45(d,1H),6.70(d,1H),6.50(d,1H),4.60(m,1H),3.95(m,4H),2.20−1.40(m,16H),LCMS−ES 390.35[M+H]
+。
【0151】
スキーム18−2に示されるように、TsOH(0.1当量)を、1:1のアセトン/H
2O(6mL)中5(200mg、1.0当量)の溶液に添加した。結果として生じた反応混合物を室温で48時間撹拌した。反応混合物をクエン酸で酸性化し、THFとEtOAcの混合物で抽出した。溶液を濃縮して、灰色がかった白色の固体(18mg)を得た。
1H NMR(300MHz,DMSO−d
6),δ8.60(d,1H),8.05(s,1H),7.60(d,1H),6.90(d,1H),6.70(d,1H),5.20(bs,1H),2.65(m,2H),2.15(bd,2H),2.05−1.80(m,4H),LCMS−ES 262.27[M+H]
+。
受容体結合実施例
実施例19:LANCL2結合実施例
【0152】
LANCL2に結合する化合物の選択を導くため、計算モデル化研究及び生化学的検証を組み合わせた。表面プラズモン共鳴(SPR)技術の最新の反復は、標識を持たないタンパク質と小分子(>25Da)との間の即時の分子相互作用を決定するためのインビトロ、ハイスループットの定量的な手段を提供する。BIACORE(商標)T200(GE Healthcare、Piscataway、NJ)技術は、GMP/GLPコンプライアンスのさらなる利益、及び24時間未満の期間内のスクリーンまたは詳細な滴定のいずれかの自律的な大規模データ取得をさらに提供する。関心の分子相互作用を、BIACORE(商標)T200 SPR技術によって定期的に検証する。
【0153】
方法
LANCL2−化合物の相互作用の分子モデル化によるハイスループットスクリーニング。Auto−Doc Vina[14]は、LANCL2−植物化合物の結合を確認するためのハイスループットの並列計算が可能な最先端のソフトウェア一式である。このソフトウェア一式は、まず(i)結合した複合体に関連する自由エネルギーの力を、その後(ii)標的とリガンドとの間の複合体形成に利用可能な立体配座空間を計算する。これらの方法は確率論的な性質であり、したがって全パラメータ空間を徹底的に検索し、予測に信頼を提供するために反復した独立のスクリーンを必要とする。現在LANCL2のモデルは、LANCL1の相同性モデル化を通じて利用可能である[15]。AutoDock及びAutoGridに関するグラフィカルフロントエンドであるAutoDockToolsを使用して、グリッドボックス中心及びx、y、z次元を含む検索空間を定義した[16]。AutoDock Vinaは、各化合物について5つの結合配座を生成した。グリッドがタンパク質の表面全体を覆う状態で、ドッキングをタンパク質標的全体に適用する。全表面に関する全化合物に関して、各予測される結合モードの結合エネルギーからなるドッキングログファイルを生成した。
【0154】
LANCL2−小分子の相互作用の反応速度決定。BIACORE(商標)T200を使用して、小分子 BT−11、BT−ABA−5a、BT−6、及びBT−15(被検物質)のLANCL2(リガンド)への結合に関して、反応速度論的パラメータを決定した。データを用量依存的(5〜8滴定点)様式にて三連で生成し、分析して、結合モデル(ラングミュア、立体配座シフト等)、即時の会合及び解離定数、ならびに平衡解離定数を決定した。SPR技により、特異的なLANCL2−植物化学物質相互作用の検証、及び結合の機構及び速度に関する信頼性の高い洞察の獲得が可能となった。アミンカップリングによってLANCL2を共有結合させることにより、カルボキシメチルデキストラン(CM5)センサーチップ上で実験を実施した。センサーチップのフローセル1及び2を、0.1MのN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)及び0.5Mの1−エチル−3−(−3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド硫酸塩(EDC)の1:1混合物で、10μL/分にて720秒間活性化した。LANCL2(0.41mg/mL)のストックを、pH5.0の10mMの酢酸ナトリウム中で8.2μg/mL(1:50希釈)に希釈し、活性化フローセル2表面上に10μL/分の流速で1000秒間注入した。フローセル2(11000RU)上でLANCL2を捕捉した後、フローセル1及び2の表面を1Mのエタノールアミンを10μL/分で720秒間注入することによって不活性化した。ランニング緩衝液は、0.05%のT−20及び0.15MのNaClを含有する25mMのMOPS、pH6.5であった。反応速度研究を、異なる濃度のBT−11(25μM、12.5μM、6.25μM、3.13μM、1.56μM、及び0.76μM)、BT−ABA−5a(40μM、20μM、10μM、5μM、2.5μM、及び1.25μM)、及びBT−15/BT−6(20μM、10μM、5μM、2.5μM、1.25μM、0.625μM、及び0.313μM)を三連で注入することによって実施した。各試料を、60秒間(接触時間)注入した後、100μL/分の流速で60秒間の解離時間にかけた。次の注入の前に、180秒間の安定化時間を使用した。BIACORE(商標)T200 Evaluation Software(バージョン1)を用いてデータを分析し、1:1結合モデルを使用して親和性結合定数(KD)を決定した。
【0155】
結果
BT−11及びBT−15の両方とも、LANCL2に強く結合する。LANCL2タンパク質へのBT−11及びBT−15の結合を確認するため、BIACORE(商標)T−200機器内でSPR分析を実施した。分子相互作用を検出するために利用される光学技術であるSPRを使用して、LANCL2とそのリガンド(すなわち、BT−11とBT−15)との間の結合親和性を測定した。精製された組み換えLANCL2タンパク質をBIACORE(商標)センサーチップ上に固定し、機器のマイクロ流体システムを使用して小分子をタンパク質表面上に注入した。タンパク質への小結合に対応するチップ表面上の総質量の変化を測定した。一連の小分子濃度を注入することによって、LANCL2に結合するBT−11及びLANCL2に結合するBT−15の定常状態結合親和性を算出し得た。結合センサーグラムは、非常に高速のオン速度及び非常に高速のオフ速度を伴う典型的な小分子タンパク質相互作用を示した(
図8、パネルA及びC)。これらの高速の相互作用は、機器の技術的能力を超えている。したがって、信頼性のある会合速度定数(k
a)及び解離速度定数(k
d)は決定されなかった。平衡解離定数(K
D)は、例えば、リガンドが特定のタンパク質にどの程度しっかりと結合するか等、リガンドとタンパク質との間の親和性を説明するために一般的に使用される。リガンド−タンパク質の親和性は、水素結合、静電相互作用、疎水性力、及びファンデルワールス力等の2つの分子間の非共有的な分子間相互作用の影響を受ける。化合物濃度に対する平衡結合レベルをプロットすることによって、各相互作用に関する定常状態親和性(K
D)を測定し得た(
図8、パネルB及びD)。両小分子は、LANCL2に関して類似の結合親和性を示した(BT−11:7.7uM、BT−15 11.4uM)。
【0156】
BT−ABA−5a及びBT−6は、LANCL2に強く結合する。上に説明される結果と同様に、BT−6及びBT−ABA−5aのLANCL2への結合を確認するために、SPR分析をBIACORE(商標)T−200機器内で実施した。この場合も、精製された組み換えLANCL2タンパク質をBIACORE(商標)センサーチップ上に固定し、機器のマイクロ流体システムを使用してタンパク質表面上に小分子を注入した。タンパク質への小結合に対応するチップ表面上の総質量の変化を測定した。結合センサーグラム(
図9A及び9B)をより詳細に見ると、我々の結果は、オン速度で非常に高速であり、オフ速度でも非常に高速であるBT−11/BT−15と比較して、BT−6及びBT−ABA−5aが非常に高速に結合するが、オフ速度ほどには高速ではないことを示している。BT−ABA−5aの占有時間は最も低速のオフ速度を示し、これはBT−ABA−5aがLANCL2の結合ポケット内に最も長く滞留することを意味することに留意されたい。このより長い結合は、より有効な抗炎症性及び抗糖尿病性及び他の治療応答を引き起こすことによって、LANCL2経路の活性化に潜在的に影響を与え得る。
【0157】
他の化合物はSPRを介して試験されており、その結果は
図1A及び1Bに分かりやすく示される。
【0158】
実験研究実施例
実施例20:IBDの急性モデルにおけるBT−11の使用
導入
炎症性腸疾患(IBD)は、胃腸管の慢性再発性疾患であり、米国内で140万人を超える人々を悩ませている。IBDは、潰瘍性大腸炎及びクローン病の2つの異なる所見を含む。現在のIBDの療法は、やや成功しており、疾患の長期管理に関して顕著な有害な副作用を有する[17]。クローン病はこの疾患の慢性期を表すのに対し、急性潰瘍性大腸炎(UC)は、結腸組織に影響を及ぼす早期の病理として現れる。UCは、結腸を通じて連続的ではあるが可変的範囲に近位に延在する直腸の粘膜炎症を特徴とする胃腸管の慢性の特発性炎症性障害である。この障害は、変動する重症度のぶり返し及び寛解の経過を特徴とする。患者の大多数は、軽度から中等度の重症度の左側または遠位の疾患を示す。大部分は、維持医学療法により長期の寛解に留まる。しかしながら、自然史研究は、10〜40%が疾患の経過中のある時点で結腸切除を受けることを示唆している。
【0159】
ステロイド不応性の重度のUCの医学的治療は近年、シクロスポリン及びインフリキシマブの両方の救済剤としての利用可能性に伴い多少拡大しているが、外科手術は依然として、唯一の「治癒的な」選択肢である。本発明は、LANCL2と呼ばれる新規の受容体を標的とすることによるUCの治療のための新規の製剤を提供する。我々のトップリード化合物であるBT−11は、経口投与され、全身に分布され、腸免疫細胞内でLANCL2を標的とすることによってUCにおける免疫修飾効果を発揮する。マウスにおける急性UCの我々の前臨床効能研究は、BT−11による投与が、腸粘膜内の白血球浸潤を著しく減少させ、粘膜肥厚及び上皮侵食を減少させることによって、いかに疾患活性指数を低減し、腸炎症を改善するかを示した。遺伝子発現分析は、BT−11の経口投与が、マウスにおける急性DSS誘発性潰瘍性大腸炎のモデルにおいてIL−10及びLANCL2の発現を上方調節し、TNFα mRNAの発現を下方調節することを確認した。
【0160】
方法
マウスC57BL/6をJackson Laboratoryから購入し、換気ラック内に特定の病原体のない条件下で収容した。LANCL2−/−マウスを、University of California DavisにてKOMPリポジトリから購入した。全てのマウスは、動物施設内に維持した。全ての実験プロトコルは、機関の動物実験委員会によって承認され、国立衛生研究所実験動物福祉部門及び公衆衛生局規範のガイドラインに合致するか、またはそれを上回っていた。
【0161】
DSS誘発性大腸炎。大腸炎を、飲料水に添加した5%(重量/体積)デキストラン硫酸ナトリウム(DSS;分子量42kDa;ICN Biochemicals、Aurora、OH)の投与によってC57BL/6Jマウスにおいて誘発した。結腸炎症を、DSS処置の7日後に評定した。DSS研究における群は、i.非DSS、ビヒクル処置マウス、ii.非DSS、BT−11(80mg/Kg)処置マウス、iii.DSS処置、ビヒクル処置マウス、及びiv.DSS処置、BT−11(80mg/Kg)処置マウスから構成された。各群、12匹のマウスが含まれた。
【0162】
病理組織。マウスにおけるIBD研究からの結腸切片を、10%緩衝中性ホルマリン中に固定し、その後パラフィンに包埋し、次に切開し(5μm)、組織学的検査のためにH&E染料で染色した。結腸を、(1)白血球浸潤、(2)粘膜肥厚、及び(3)上皮細胞侵食の程度を含む複合組織学的スコアで等級付けした。切片を、前述の分類の各々について0〜4のスコアで等級付けし、データを正規化された複合スコアとして分析した。
【0163】
定量的即時PCR。総RNAを、RNEASY PLUS MINI KIT(Qiagen、Valencia、CA)を使用して、製造者の指示に従ってマウス結腸から単離した。総RNA(1μg)を使用し、ISCRIPT(商標)cDNA合成キット(Bio−Rad、Hercules、CA)を使用してcDNAテンプレートを生成した。総反応体積は20μLであり、反応を、MJ MINI(商標)サーマルサイクラー(Bio−Rad)内で以下の通り培養した:25℃で5分間、52℃で30分間、85℃で5分間、及び4℃で保持。PCRを、Taq DNAポリメラーゼ(Life Technologies、Carlsbad、CA)を使用してcDNA上で実施した。各遺伝子アンプリコンを、MINELUTE PCR精製キット(Qiagen)を用いて精製し、DNA質量ラダー(Promega、Madison、WI)を使用してアガロースゲル上で、及びナノドロップを用いての両方で定量化した。これらの精製アンプリコンを使用して、即時PCR条件を最適化し、即時PCRアッセイにおいて標準曲線を生成した。Oligo 6ソフトウェアを使用して、プライマーを設計した。プライマー濃度及び焼鈍温度を、ICYCLER IQ(商標)システム(Bio−Rad)に対して、システムの勾配プロトコルを使用して各プライマーセットについて最適化した。最適化中また試料DNAの即時PCR中、各プライマーセットに関してPCR効率を92〜105%に、相関係数を0.98超に維持した。関心の遺伝子のcDNA濃度を、ICYCLER IQ(商標)System及びIQ(商標)SYBR(登録商標)Green Supermix(Bio−Rad)を使用して即時qPCRによって検査した。標準曲線を、各遺伝子について、5pgのcDNAから開始する精製アンプリコンの10倍希釈を使用して生成し、その後、未知の試料中の標的cDNAの開始量を算出するために使用した。SYBR(登録商標)グリーンIは、一般的な二本鎖DNA挿入色素であり、したがって、関心のアンプリコンに加えて非特異的生成物及びプライマー/ダイマーを検出し得る。即時PCR中に合成された生成物の数を決定するために、各生成物に対して融解曲線分析を実施した。即時PCRを使用して、同じ96ウェルプレート上のcDNAの各未知試料の核酸の開始量を測定した。
【0164】
統計分析。パラメトリックデータを、ANOVAに続いてシェッフェの多重比較法を使用して分析した。ノンパラメトリックデータを、マンホイットニーのU検定に続いてダンの多重比較検定を使用して分析した。SASの一般的な線形モデル手順、リリース6.0.3(SAS Institute)を使用して、ANOVAを実施した。統計的有意性を、P≦0.05にて評定した。
結果
【0165】
BT−11は、大腸炎のDSSモデルにおける疾患及び組織病理を改善する。この研究の目的は、BT−11の投与が、LANCL2を活性化し、IBDの文脈において抗炎症特性を発揮するか否かを調査することであった。IBDの急性モデルにおける我々の例示的化合物BT−11の効能を評定するために、C57BL/6Jマウスを7日間のチャレンジにて5%DSSで処置した。チャレンジ期間を通して、BT−11による処置は、疾患活性のスコアを有意に改善した(
図10、パネルA)。さらに、脾臓(
図10、パネルB)、MLN(
図10、パネルC)、及び結腸(
図10、パネルD)における巨視的病変も、チャレンジ後7日目にBT−11を使用することによって、LANCL2経路の活性化後に有意に減少された。
【0166】
BT−11は、急性炎症性大腸炎を有するマウスにおける結腸病理組織を用量応答様式で改善する。次に、病理組織学的結腸炎症性病変に対するBT−11の効果を検査した。疾患活性及び肉眼的病変の観察に従って、病理組織学的分析により、BT−11による処置は、白血球浸潤(
図11、パネルG)、上皮侵食(
図11、パネルH)、及び粘膜肥厚(
図11、パネルI)の評定に基づいて、腸粘膜における炎症を有意に5倍減少させたことが確認された。代表的な結腸の顕微鏡写真は、マウスにおけるDSS誘発性大腸炎中のBT−11による処置が、上皮細胞の統合性の改善、腸構造の破壊の低減、及びいくつかの免疫サブセットの浸潤によって、腸粘膜の状態をいかに著しく改善するかを示す(
図11、パネルA〜F)。BT−11を用いて用量応答研究を実施し、大腸炎を有するマウスにおいて、BT−11の用量が10〜80mg/Kgに増加するのに伴い結腸炎症の3つの特質(白血球浸潤、粘膜肥厚、及び上皮侵食)がいかに減少されたかを興味深く観察した(
図12、パネルA〜C)。
【0167】
BT−11による経口処置は、TNFαの発現を低減し、LANCL2及びIL−10を上方調節する。免疫系の修飾に対するBT−11の効果をより詳しく調査するために、IL−10、LANCL2、及びTNFαの遺伝子発現を評定した。結果は、BT−11による処置が、いかに腫瘍ネクロプシス因子アルファ(TNFα)の発現を下方調節するか(
図13、パネルA)、ならびにインターロイキン10(IL−10)(
図13、パネルB)及びLANCL2受容体(
図13、パネルC)のレベルを上方調節するかを、したがって、抗炎症効果を促進し、TNFαによって引き起こされる炎症応答を下方調節する正のフィードバックループを作り出すかを示す。用量応答研究を実施することによって、我々のリガンドBT−11及びそれに続くLANCL2経路の活性化は、フローサイトメトリーよって評定されたその発現がBT−11による用量応答動態に従うため、結腸IL−10の生成を直接増加させると仮定し得た(
図14、パネルB)。結腸TNFα発現細胞の低減は、40及び80mg/KgのBT−11の両方において有意に異なるが、10または20mg/Kg等のより低い用量においてはそうではないことが観察された(
図14、パネルA)。また、MLNにおけるFOXP3発現がいかに用量依存性であるかも観察された(
図14、パネルC)。
【0168】
急性大腸炎中のBT−11の効果は、LANCL2に依存する。BT−11による投与の有益な効果が、マウスにおける急性大腸炎中にいかに発揮されるかを実証するために、野生型及びLANCL2ノックアウト(LANCL2−/−)マウスにおいてかかる効果を比較する研究を実施した。我々の結果は、LANCL2の損失はマウスの急性DSS誘発性大腸炎からの回復を妨げたため、BT−11がその抗炎症性利益を発揮するためにLANCL2が必要であることを実証している(
図15、パネルA)。同様に、野生型及びLANCL2−/−の同腹仔を比較した際に、LANCL2の損失は、結腸(
図15、パネルB)、MLN(
図15、パネルC)、及び脾臓(
図15、パネルD)における巨視的スコアの減少を無効にした。さらに、ビヒクルまたはBT−11のいずれかで処置されたLANCL2−/−マウスにおける病理組織学的分析を評定し、LANCL2の損失が、BT−11の効果をいかに完全に無効にするかが観察されたため、結腸粘膜内の病変形成におけるBT−11の効果もLANCL2依存性である(
図16)。
【0169】
BT−11による処置後の細胞応答をさらに特徴付けるために、さらにLANCL2ノックアウト研究を実施して、炎症促進性タンパク質の減少及び抗炎症性因子の増加が除去されたかを判定した。LANCL2遺伝子の損失はBT−11の効果を無効にするため、本フローサイトメトリーの結果は、炎症促進性因子MCP1の低減が、結腸(
図17、パネルA)及びMLN(
図17、パネルB)の両方においてLANCL2依存性であることを実証している。また、結腸内のTNFαの分泌は、LANCL2依存性であり(
図17、パネルC)、顆粒球のMHC−II+CD11c+集団の上方調節(
図17、パネルD)も同様であることも見出された。これらの結果に従って、BT−11処置後のIL−10分泌の上方調節は、結腸(
図17、パネルE)及び脾臓(
図17、パネルF)の両方にて、LANCL2ノックアウトマウスにおいて完全に無効にされることが見出され、ここでも、我々の関心の対象に伴う我々のトップリード化合物の依存性を示している。
【0170】
考察
LANCL2は、炎症性及び免疫媒介性疾患のための新規の治療標的として浮上している[18]。我々のインビボの結果は、LANCL2リガンドBT−11を用いた経口処置が、炎症を抑制することによってIBDのマウスモデルにおいて腸の免疫病理を和らげることを初めて実証している。LANCL2は近年、ABA結合及びシグナル伝達に関連するその機能[19]、ならびにPPARγ活性化の代替的な膜系機構の近年の発見[8]のため、潜在的な治療標的として注目を集めている。さらに我々は、LANCL2が、脳及び精巣に加えて胸腺、脾臓、結腸、及びパイエル板等の他の組織においても発現されることを示した一連のマウス組織におけるLANCL2発現を決定し、これは、LANCL2と免疫応答との間の可能な関係性を示し、治療標的としてのLANCL2のより広範な可能性を示唆している。
【0171】
我々は以前、ABAがPPARγをインビトロで転写活性化し、他のPPARγアゴニストと同様に全身性の炎症を抑制することを報告している。ABA及びNSC61610はどちらもLANCL2を標的とするため、NSC61610もまた、PPARγ活性化を介して作用し得る。実験結果は、NSC61610処置が、生マクロファージにおいてPPARγを活性化し、それによって、LANCL2とPPARγとの間の潜在的なシグナル伝達関係の証拠を提供し、NSC61610がLANCL2−PPARγ軸をインビトロで標的とし得ることを示していることを示す。PPARγのNSC61610媒介性活性化におけるLANCL2の重要性を調査するために、siRNAを使用した生マクロファージにおけるLANCL2のノックダウンが、PPARγレポーター活性に対するNSC61610の効果を損なうまたは無効にするか否かを判定した。我々の所見は、LANCL2のノックダウンがPPARγ活性に対するNSC61610の効果を著しく弱めることを示している[12]。本実施例では、我々は、BT−11の投与が、疾患活性指数のスコアならびに脾臓、MLN、及び結腸の巨視的スコアを減少させる(
図10)だけでなく、病理組織学的病変を著しく低減する(
図11)ことによって、抗炎症特性をいかに発揮するかを実証している。我々は、これらの2つの特定の効果がLANCL2にいかに依存するかを実証した(
図15及び
図16)。我々はまた、BT−11が、TNFaのレベルを低減し、LANCL2及びIL−10の両方を上方調節することも実証した(
図13)。我々はまた、LANCL2−/−マウスにおいてこれらの傾向が観察されなかったため、これらの効果はLANCL2依存性であることも実証した(
図17)。これらの結果は、LANCL2は炎症性疾患のための新規の治療標的であり、BT−11は、それを標的とする化合物であることを確認する。
【0172】
実施例21:クローン病の慢性モデルにおけるBT−11の使用
導入
上述の通り、炎症性腸疾患(IBD)は、潰瘍性大腸炎及びクローン病のその2つの所見を有し、胃腸管の広範囲にわたる炎症及び免疫細胞浸潤を特徴とする免疫媒介性疾患である。IBDの病因は多因性であり、遺伝子的素因、環境因子、及び腸内微生物叢間の相互作用を伴う。
【0173】
本実施例は、IBDの慢性所見であるクローン病に着目することとする。潰瘍性大腸炎における炎症は、表面粘膜及び粘膜下層に関与するが結腸に限定される連続的なパターンを特徴とするのに対し、クローン病では、この炎症は貫壁性及び非連続的であり、最も影響を受ける回腸以外に腸の任意の領域が影響を受け得る。クローン病の病原体は、複雑であり、遺伝子的及び環境的な因子、ならびに膜免疫系の長期の活性化によってもたらされる腸粘膜への免疫媒介性損傷によって影響を受ける。
【0174】
例えば、コルチコステロイドプレドニゾンまたは抗腫瘍壊死因子−α抗体REMICADE(登録商標)(Janssen Biotech、Inc.、Horsham、PA)(インフリキシマブ)等の免疫及び炎症応答を下方修飾するように標的とされる治療は、疾患の重症度及び再発の低減に効果を発揮している。しかしながら、これらの治療はまた、クッシング様外観、体重増加、及び全身性免疫抑制等の種々の有害な副作用に関連し、したがってIBDの長期的管理のためのより安全な代替物の開発の必要が強調される[20]。
【0175】
本発明は、LANCL2と呼ばれる新規の受容体を標的とすることによるクローン病の治療のための新規の製剤を提供する。例示的化合物であるBT−11は、経口投与され、全身に分布され、腸免疫細胞内でLANCL2を標的とすることによって、UCのみでなくクローン病においても免疫修飾効果を発揮する。マウスにおけるクローン病の慢性モデルにおける我々の前臨床効能研究は、BT−11による投与が、腸粘膜内の白血球浸潤を著しく減少させ、粘膜肥厚及び上皮侵食を減少させることによって、いかに疾患活性指数を低減し、腸炎症を改善するかを示した。遺伝子発現分析は、BT−11の経口投与が、マウスにおけるIBDの慢性モデルにおいてLANCL2の発現を上方調節し、TNFα mRNAの発現を下方調節することを認した。さらに、BT−11の投与は、炎症促進性マクロファージ及び結腸固有層への樹枝状細胞浸潤を低減し、FOXP3発現CD4+T細胞を上方調節し、結腸内のエフェクターTh1細胞の数を下方調節した。我々はまた、これらの効果がLANCL2依存性であることを確認するためにノックアウト研究を実施した。最後に、誘導部位において、BT−11は、Th17細胞の生成を下方調節すること、及びFOXP3発現の上方調節を介して調節CD4+T細胞区画を上方調節することが可能である。
【0176】
方法
マウス。C57BL/6及びIL−10ノックアウトマウスをJackson Laboratoryから購入し、換気ラック内に特定の病原体のない条件下で収容した。LANCL2−/−マウスを、University of California DavisにてKOMPリポジトリから購入した。全てのマウスは、動物施設内に維持した。全ての実験プロトコルは、機関の動物実験委員会によって承認され、国立衛生研究所実験動物福祉部門及び公衆衛生局規範のガイドラインに合致するか、またはそれを上回っていた。
【0177】
CD4+T細胞の富化及び選別。C57BL/6J(野生型)マウスから得た脾細胞を、I−Mag細胞分離システム(BD Pharmingen)を使用して磁気陰性選別によってCD4+T細胞中で富化した。細胞をビオチン化Abの混合物と共に培養した後、ストレプトアビジン粒子と共に2回目の培養を行い、磁石に曝露して不要な細胞を除去した。CD4+富化細胞懸濁液の純度は、93〜96%であった。CD4富化細胞は、養子移入に使用するか、またはFACSによってさらに精製した。FACS選別のために、細胞をCD45RB、CD4、及びCD25で標識し、FACSARIA(商標)細胞選別機(BD Biosciences、San Jose、CA)内でCD4+CD45RB高CD25−細胞(すなわち、エフェクターT細胞)に分離した。FACSで選別したCD4+サブセットの純度は、98%以上であった。
【0178】
養子移入。6週齢のSCID及びRAG2−/−マウスに、C57BL/6J(野生型)またはLANCL2−/−マウス由来の4×10
5CD4+CD45RB高CD25−を腹腔内(i.p.)投与した。マウスの体重を毎週測定し、疾患の兆候を14週間毎日記録した。消耗性疾患の重度の兆候を発症したマウスを屠殺した。そうでない場合は、移入の90日後にマウスを屠殺した。養子移入研究のための群は、以下の通りであった:i.非移入ビヒクル処置、ii.非移入BT−11(80mg/Kg)処理、iii.移入ビヒクル処置、iv.移入BT−11(80mg/Kg)処置。各群、12匹のマウスを使用した。
【0179】
病理組織。マウスにおけるIBD研究からの結腸切片を、10%緩衝中性ホルマリン中に固定し、その後パラフィンに包埋し、次に切開し(5μm)、組織学的検査のためにH&E染料で染色した。結腸を、(1)白血球浸潤、(2)粘膜肥厚、及び(3)上皮細胞侵食の程度を含む複合組織学的スコアで等級付けした。切片を、前述の分類の各々について0〜4のスコアで等級付けし、データを正規化された複合スコアとして分析した。
【0180】
細胞単離。脾臓及び腸間膜リンパ節(MLN)を切除し、2枚の滅菌顕微鏡スライドの凍らせた端を使用して1×PBS/5%FBS中で粉砕した。単一細胞懸濁液を300×gで10分間遠心分離し、1×PBSで1回洗浄した。洗浄ステップの前に、浸透圧溶解によって赤血球を除去した。全ての細胞ペレットをFACS緩衝液(5%FBS及び0.09%アジ化ナトリウムを補充した1×PBS)中に再懸濁し、フローサイトメトリー分析に供した。同時に、結腸を切除し、固有層白血球(LPL)を単離した。組織片をCMF(1×HBSS/10%FBS/25mM Hepes)中で洗浄し、組織を、CMF/5mMのEDTAと共に37℃で15分間、撹拌しながら2回培養した。1×PBSで洗浄した後、組織を、300U/mLのVIII型コラゲナーゼ及び50U/mLのDNAse I(どちらもSigma−Aldrich)を補充したCMF中で37℃にて1.5時間、撹拌しながらさらに消化した。上清を濾過した後、細胞を1×PBS中で1回洗浄し、ペレットをFACS緩衝液中で再懸濁し、フローサイトメトリー分析に供した。
【0181】
フローサイトメトリーによる免疫表現型検査及びサイトカイン分析。免疫細胞サブセットの蛍光染色のために、4〜6×10
5個の細胞を、蛍光色素共役一次マウス特異的抗体:抗CD3 PE−Cy5クローン145−2C11(eBioscience、San Diego、CA)、抗CD4 PE−Cy7クローン GK1.5(eBioscience)、抗CD4 APCクローンRM4−5、及び抗CD25ビオチンクローン7D4(BD Biosciences)と共に20分間培養した。細胞をFACS緩衝液(5%FBS及び0.09%アジ化ナトリウムを補充した1×PBS)で洗浄した。転写因子及びサイトカインの細胞内染色のために、細胞を固定し、市販のキットを使用して製造者の指示に従って透過処理した(eBioscience)。手短に述べると、細胞を固定子、20分間透過処理し、Fc受容体をマウス抗CD16/CD32 FcBlock(BD Biosciences)で遮断し、細胞を、抗マウス、FOXP3 FITCクローンFJK−16s、抗マウスRORガンマ(t)PE、クローンB2B及び抗マウスIL17−A APC、クローンeBio17B7(eBioscience)に対して蛍光色素共役抗体で染色した。全ての試料を、FACS Ariaフローサイトメータ(BD Biosciences)上での取得まで、4℃の暗所で固定して保管した。生細胞ゲート(FSC−A、SSC−A)を全試料に適用した後、単一細胞ゲーティング(FSC−H、FSC−W)を行い、その後、特定のマーカーの発現について細胞を分析した。データ分析を、FACS DIVA(商標)(BD Biosciences)及びFlow Jo(Tree Star Inc.)を用いて分析した。
【0182】
定量的即時PCR。総RNAを、RNEASY PLUS MINI KIT(Qiagen)を使用して、製造者の指示に従ってマウス結腸から単離した。総RNA(1μg)を使用し、ISCRIPT(商標)cDNA合成キット(Bio−Rad)を使用してcDNAテンプレートを生成した。総反応体積は20μLであり、反応を、MJ MINI(商標)サーマルサイクラー(Bio−Rad)内で以下の通り培養した:25℃で5分間、52℃で30分間、85℃で5分間、及び4℃で保持。PCRを、Taq DNAポリメラーゼ(Invitrogen)を使用してcDNA上で実施した。各遺伝子アンプリコンを、MINELUTE PCR精製キット(Qiagen)を用いて精製し、DNA質量ラダー(Promega)を使用してアガロースゲル上で、及びナノドロップを用いての両方で定量化した。これらの精製アンプリコンを使用して、即時PCR条件を最適化し、即時PCRアッセイにおいて標準曲線を生成した。Oligo 6ソフトウェアを使用して、プライマーを設計した。プライマー濃度及び焼鈍温度を、ICYCLER IQ(商標)システム(Bio−Rad)に対して、システムの勾配プロトコルを使用して各プライマーセットについて最適化した。最適化中また試料DNAの即時PCR中、各プライマーセットに関してPCR効率を92〜105%に、相関係数を0.98超に維持した。関心の遺伝子のcDNA濃度を、ICYCLER IQ(商標)System及びIQ(商標)SYBR(登録商標)Green Supermix(Bio−Rad)を使用して即時qPCRによって検査した。標準曲線を、各遺伝子について、5pgのcDNAから開始する精製アンプリコンの10倍希釈を使用して生成し、その後、未知の試料中の標的cDNAの開始量を算出するために使用した。SYBR(登録商標)グリーンIは、一般的な二本鎖DNA挿入色素であり、したがって、関心のアンプリコンに加えて非特異的生成物及びプライマー/ダイマーを検出し得る。即時PCR中に合成された生成物の数を決定するために、各生成物に対して融解曲線分析を実施した。即時PCRを使用して、同じ96ウェルプレート上のcDNAの各未知試料の核酸の開始量を測定した。
【0183】
統計分析。パラメトリックデータを、ANOVAに続いてシェッフェの多重比較法を使用して分析した。ノンパラメトリックデータを、マンホイットニーのU検定に続いてダンの多重比較検定を使用して分析した。SASの一般的な線形モデル手順、リリース6.0.3(SAS Institute)を使用して、ANOVAを実施した。統計的有意性を、P≦0.05にて評定した。
【0184】
結果
BT−11は、IBDの慢性IL−10−/−モデルにおける疾患活性を改善する。クローン病の慢性化を研究する多数の動物研究は、IL−10が多数の炎症促進性サイトカインの分泌を抑制することが知られているため、インターロイキン−10欠損マウス(IL−10−/−)マウスモデルを用いている[21]。大腸炎の急性モデルのみではなく、慢性モデルにおいてもBT−11の効能を評定するために、大腸炎研究のIL−10ヌルマウスモデルを設定し、増加する用量のBT−11(20、40、及び80mg/Kg)でマウスを処置した。BT−11による処置は、処置マウスにおいて、ビヒクル処置された同腹仔と比較して疾患活性指数スコアを有意に減少させた(
図18)。さらに、最高用量のBT−11(80mg/Kg)で処置されたマウスは、20または40mg/KgのBT−11化合物のいずれかで処置されたマウスと比較して13週目から実験の終了まで有意にスコアを低減した。
【0185】
BT−11は、IBDのIL10−/−慢性モデルにおいて脾臓、MLN、及び結腸における巨視的病変を低減した。最初に臨床効能を判定するために、BT−11による処置後に巨視的組織病変を評定し、その後のLANCL2経路の活性化を評定した。研究の開始後19週目に、安楽死及び組織採取の直後に脾臓(
図19、パネルA)、MLN(
図19、パネルB)、及び結腸(
図19、パネルC)を巨視的にスコア化した。20mg/Kgの低い濃度でのBT−11による処置は、これらの組織において巨視的スコアを大いに及び有意に低減し、その有力な効能を実証している。
【0186】
BT−11は、IBDのIL−10−/−慢性モデルにおける病理組織学的病変及び炎症を改善する。腸粘膜における病理組織学的病変及び一般病理を評定するために、結腸切片をH&Eで染色し、顕微鏡下で観察した。我々の結果は、白血球浸潤(
図20、パネルA)、上皮侵食(
図20、パネルB)、及び粘膜肥厚(
図20、パネルC)の低減に基づいて、BT−11による処置が炎症をいかに有意に低減したかを示している。また、粘膜の肥厚に相関した腸粘膜における浸潤の量について用量依存性機構も観察した。
【0187】
BT−11による処置は、有力な抗炎症応答を誘発し、結腸固有層、脾臓、及びMLNにおける炎症促進性サブセットを減少させる。免疫細胞サブセットに対するBT−11の効果を判定するために、結腸、脾臓、及びMLNから単離した細胞を表現型的に特徴付けた。我々の分析は、BT−11が、結腸固有層における炎症促進性F4/80+マクロファージ(
図21、パネルA)、MHC−II+CD11c+樹枝状細胞(
図21、パネルB)、及びエフェクターTh1細胞(
図21、パネルD)のパーセンテージを有意に減少させたことを示した。さらに、BT−11は、結腸LPにおけるFOXP3発現CD4+T細胞の上方調節を介して抗炎症特性を発揮した(
図21、パネルC)。
【0188】
FOXP3発現CD4+T細胞の上方調節はまた、MLN(
図22、パネルB)及び脾臓(
図22、パネルC)の両方においても見られ、BT−11がいかに全身性効果も有するかを示し、実証している。炎症促進性Th1細胞の下方調節もまた、脾臓において用量応答様式で観察された(
図22、パネルD)。最後に、RORγtのその発現を特徴とするエフェクターTh17細胞は、MLNにおいて下方調節された(
図22、パネルA)。
【0189】
さらに、遺伝子発現分析は、BT−11による処置がLANCL2の結腸発現を上方調節し(
図23、パネルA)、TNFαの発現を下方調節する(
図23、パネルB)ことを確認した。これらの発現効果は、投与されるBT−11の量に関して用量依存性であった。
【0190】
BT−11は、IBDの大腸炎モデルのCD4+T細胞誘導における疾患活性の改善を実証した。IBDの別の慢性モデルにおけるBT−11の効能をさらに検証するために、野生型及びLANCL2−/−マウス由来のナイーブCD4+T細胞をRAG2−/−レシピエントに養子移入した。RAG2−/−マウスを、実験設計に基づいてビヒクルまたはBT−11のいずれかで処置した。我々のトップリード化合物BT−11による処置は、処置マウスにおける疾患活性指数スコアを野生型同腹仔と比較したときに有意に低減した(
図24)。BT−11の効果はLANCL2の損失によって完全に無効にされたため、これらの結果はLANCL2依存性であることが見出された(
図25)。
【0191】
興味深いことに、BT−11処置マウスにおける体重損失は、ビヒクル処置マウスと比較したときに、7週目から実験の終了まで有意に改善された(
図26)。
【0192】
BT−11は、IBDの養子移入慢性モデルにおいて脾臓、MLN、及び結腸における巨視的病変を低減した。慢性大腸炎の第2のモデルにおける臨床効能を確認するために、野生型またはLANCL2−/−細胞で養子移入され、ビヒクルまたはBT−11のいずれかで処置されたマウスにおいて、BT−11による処置後に巨視的組織病変を評定し、その後のLANCL2経路の活性化を評定した。研究の開始後11週目に、安楽死及び組織採取の直後に脾臓(
図27、パネルA)、MLN(
図27、パネルB)、及び結腸(
図27、パネルC)、及び回腸(
図27、パネルD)を巨視的にスコア化した。80mg/Kgの濃度でのBT−11による処置は、4つの組織において巨視的スコアを大いに及び有意に低減し、その有力な効能を実証している。これらの観察はLANCL2依存性であり、またLANCL2の損失はBT−11の効果を完全に無効にしたことが見出された(
図28)。
【0193】
BT−11はまた、慢性大腸炎の養子移入モデルにおける病理組織学的病変及び炎症も改善する。IL−10−/−誘発性大腸炎実験と同様に、IBDの第2のマウスモデルによる腸粘膜における病理組織学的病変及び一般病理を確認するために、結腸切片をH&Eで染色し、顕微鏡下で観察した。我々の結果は、結腸及び回腸(
図29、パネルA及びB)ならびに粘膜肥厚(
図29、パネルE及びF)の両方における白血球浸潤の低減に基づいて、BT−11による処置が、炎症をいかに有意に低減したかを確認する。回腸は、上皮侵食における影響がより少ない(
図29、パネルD)が、結腸におけるその侵食は、我々のトップリード化合物BT−11で処置されたマウスにおいては有意により低いことが見出された(
図29、パネルC)ことに留意されたい。LANCL2に対するBT−11の依存性を確認するために、養子移入研究を実施し、LANCL2−/−ドナーに由来するCD4+T細胞を移入した。我々の結果は、白血球浸潤、上皮侵食、及び粘膜肥厚の減少が、LANCL2−/−を移入されたレシピエントにおいていかに大いに無効にされるかを示している(
図30)。
【0194】
BT−11は、マウスにおいて一貫して大きな抗炎症応答を誘発し、炎症促進性メディエーターを下方調節する。BT−11対ビヒクルで処置されたマウスにおける免疫細胞プロフィールを特徴付けるために、結腸、脾臓、及び腸間膜リンパ節から単離された細胞においてフローサイトメトリー分析を実施した。我々は、IBDの第2の慢性マウスモデルにおいて、11週間の期間BT−11で処置されたレシピエントマウスは、有意により低いレベルの浸潤F4/80+CD11b+炎症促進性マクロファージ(
図31、パネルA)と、結腸内の総CD45+白血球について行われた分析に基づいてIFNγレベルの減少(
図31、パネルB)とを有することを確認した。さらに、BT−11による処置は一貫して、炎症の局所部位、この場合では結腸粘膜においてFOXP3(
図31、パネルC)及び有力な抗炎症性サイトカインIL−10(
図31、パネルD)の発現を促進することによって、調節CD4+T細胞を上方調節した。
【0195】
結腸固有層細胞において観察されたプロフィールと同様に、脾臓及びMLN等の誘導部位においてこれらの集団を特徴付けた。免疫表現型検査の結果は、BT−11による処置が脾臓及びMLN等の誘導部位においてもFOXP3及びIL−10のレベルをいかに増加させるかを示す(
図32、パネルA、B、D、及びE)。BT−11の処置は、MLN及び脾臓の両方にてCD45+集団においてIFNγの発現を減少させたことに留意されたい(
図32、パネルC及びF)。
【0196】
LANCL2を標的とするBT−11の効果は、PPARγ非依存性である。我々の実験結果に基づき、LANCL2の活性化は、炎症を全身レベルで調節するIL−10系の抗炎症応答を最終的に調節する多量の経路を活性化する。LANCL2の1つの活性化される下流経路は、PPARγ経路である。この核因子及び転写因子の二次的活性化に関する潜在的毒性の懸念の克服を助けるために、RAG2−/−マウスにPPARγ−/−ドナー由来のCD4+T細胞も移入した。次に、これらのマウスをビヒクルまたは80mg/KgのBT−11のいずれかで処置した。我々の結果は、疾患活性及び病理組織に対するLANCL2の活性化を介したBT−11の有益な効果は、PPARγ非依存性様式で発生することを明確に実証している(
図33、パネルA〜D)。これらの結果は、LANCL2の活性化はまた、LANCL2活性化の抗炎症効果を修飾する他の経路も調節することを実証している。
【0197】
考察
炎症性腸疾患(IBD)の現在の療法は、やや成功しており、疾患の長期管理に関して顕著な有害な副作用を有する[17]。植物化合物アブシジン酸(ABA)は、大腸炎のマウスモデルにおいて有力な抗炎症効果を発揮する[22、23]。ランチオニンシンテターゼ成分C様タンパク質2(LANCL2)は、ABAの結合及びシグナル伝達の標的である[15、19、24]。したがって、LANCL2は、炎症に対する有望な新規の治療標的として浮上している[18]。化合物61610、ビス(ベンズイミダゾイル)テレフタルアニリド(BTT)は、数百万個の化学物質のライブラリの中で最も高い親和性でLANCL2に結合するとして同定された。それに加え、61610は、腸炎症のマウスモデルにおいて有力な抗炎症効果を発揮した[25]。20の61610由来BTTの主題ライブラリを作成し、BT−11を最高の例示的化合物として同定した。BT−11は、LANCL2に結合し、経口で活性であり、大腸炎の3つのマウスモデルにおける実証された抗炎症性効能及び際立った安全性プロフィールを有する。
【0198】
米国クローン病大腸炎財団によると、IBDは、北米で100万人、全世界で400万人を超える人々を悩ませている。この広域に及ぶ衰弱性の病気は、減少された生活の質及び著しい医療関連費用をもたらす[26]。IBDの単一のエピソードを治療するための平均医療費は、患者1名あたり55,000ドルを超え[27]、総支出額は米国内で年間150億ドルを超える。それに加え、間接的な支出として、再発性膵炎[28]または膿瘍、腸閉塞、貧血、血栓症、肛門周囲病変、関節炎、ブドウ膜炎、虹彩炎、もしくは皮膚病変等の他のIBD合併症[29]を治療するための費用が挙げられる。IBDは、患者に多大な負担をもたらし、彼らを社会的に孤立させ、家族関係に影響を及ぼし、専門職に就く機会を制限することが多い[17]。この点に関して、IBDを有する患者はより高い非就労率を有し、この高い比率は長期間持続する[30]。それに加え、腸炎症(潰瘍性大腸炎(UC)及びクローン病(CD))は、特に若年時(30歳未満)において、結腸癌の発症の危険性を増加させる[31]。Global Industry Analystsによる新たな報告によると、IBD治療薬の世界市場は、2015年までに43億ドルに達すると予想される。
【0199】
現在のIBDの治療は改善されているが[17、32]、それらは疾患の慢性的な管理についてはあまり成功しておらず、病原体または悪性腫瘍に対する防御免疫応答を高めるための免疫系の能力低下を含む著しい副作用をもたらす。患者のための治療選択肢としては、炎症の症状への対処が挙げられる。今日市場で使用されている薬理学的治療の大多数は、アミノサリシクレート(aminosalicyclate)、コルチコステロイド、免疫修飾剤、抗生物質、生物製剤(抗腫瘍壊死因子−アルファ抗体)を含む。アミノサリシクレート(aminosalicyclate)は、非常に有効であり、一般的に耐容性が高い。しかしながら、再発またはより中等度の疾患を有する患者は、症状を制御するための短期間の短期用量のコルチコステリオド(corticosteriod)を含む、より積極的な治療を必要とする場合がある。この種類の即効性の療法は、長期間耐え得ない。状態を維持するために、免疫修飾剤もまたCD及びUCにおいて一般的に使用されるが、これらは、作用の開始が遅い(完全な効果のためには3〜6カ月)。これらの薬物は、膵炎、糖尿病、瘢痕肝、及び肺炎症にわたる潜在的に著しい有害な副作用を有する。他の療法による管理に失敗した中等度〜重度の症例について、患者は、6〜8週毎に制御された環境内で静脈内に供与される抗TNF−αを受けることになる。この非常に高価な療法は、有効ではあるが、投与に熟練した人材及び臨床環境が必要であるため利用が困難である。さらに、クッシング症候群、躁病、不眠症、高血圧、高血中グルコース、骨粗鬆症、悪性腫瘍、感染、及び阻血性長骨壊死等の著しい副作用が存在する。
【0200】
例示的化合物BT−11は、非常に安全な毒性プロフィールを示している。IBDの慢性モデルにおける我々の効能データは、BT−11による処置が、慢性IBD2つのモデルにおける疾患活性スコア(
図18及び24)ならびに体重損失(
図26)をいかに改善するかを示している。我々のデータは、これらの効果がいかにLANCL2依存性であるかを実証している(
図25)。我々の効能データはまた、BT−11によるLANCL2経路の活性化が、IL−10産生及びFOXP3発現CD4+T細胞(
図21、22、31、及び32)、ならびに炎症性マクロファージ、樹枝状細胞、及びIFNγ等の炎症促進性因子の有意な減少(
図22、23、31、及び32)を主に特徴とする抗炎症応答をいかに促進するかを実証している。さらに、遺伝子発現分析は、BT−11による処置が結腸におけるTNFαレベルをいかに低減するかを示すことによって、これらの細胞に基づく所見を確認する(
図23)。全てのこれらの所見は総じて、慢性IBDの2つのモデルにおける白血球浸潤、上皮侵食、及び粘膜肥厚(
図20、29、及び30)の観点から、結腸粘膜における劇的なLANCL2依存性の改善に関与する。我々はまた、LANCL2への結合後のBT−11の効果はPPARγ非依存性であることも実証した(
図33)。これらの結果は、LANCL2の活性化は、PPARγ非依存性機構を介して炎症を調節する多量の下流活性化因子を活性化することを確認する。これらの結果は総じて、LANCL2が炎症性疾患のための新規の治療標的であり、BT−11が新たな薬物として有用であるという事実を強く支持する。
【0201】
実施例22:1型糖尿病(T1D)を治療するためのBT−11の使用
導入
真性糖尿病(DM)は、単に糖尿病としても知られており、長期間にわたり高い血糖レベルが存在する一群の代謝性疾患である。糖尿病の2つの種類は、1型及び2型と呼ばれる。これらの状態に関する以前の名称は、インスリン依存性及び非インスリン依存性糖尿病、または若年発症及び成人発症糖尿病であった。T1Dでは、身体はインスリンを産生しない。T2Dに関して、T1Dは、T2Dと比べて一般的ではない。実際、糖尿病の全症例のおよそ10%が1型である。T1Dは、300万人の米国人を悩ませている。毎年、米国内で15,000人を超える小児及び15,000を超える成人がT1Dと診断されている。14歳未満の小児におけるT1Dの発生率は、全世界で年間3%増加すると概算される。T1D患者は、生存のためにインスリン注射を必要とするが、それらは疾患を治癒しないか、またはその深刻な副作用を予防しない。
現在の抗糖尿病性薬物は、インスリン感受性の改善においては有効であるが、それらの慢性投与は、心血管合併症、肝毒性、体重増加、体液鬱滞、及び膀胱腫瘍等の著しい副作用を有する。ランチオニンシンテターゼ成分C様2(LANCL2)経路は、副作用を伴わずに抗糖尿病性作用を発揮する[18]。BT−11は、LANCL2に結合し、経口で活性であり、マウスにおける実証された抗糖尿病性効能及び際立った安全性プロフィールを有する。
方法
【0202】
マウス。NODマウスをJackson Laboratoryから購入し、換気ラック内に特定の病原体のない条件下で収容した。マウスは、動物施設内に維持した。全ての実験プロトコルは、機関の動物実験委員会によって承認され、国立衛生研究所実験動物福祉部門及び公衆衛生局規範のガイドラインに合致するか、またはそれを上回っていた。
【0203】
体重及びグルコース耐性の評定。全てのマウスは、研究の開始前に正常血糖(250mg/dl未満の空腹時血中グルコースレベル)であり、類似の体重(20±1.5g)を有すると判定された。マウスの体重を毎週測定し、疾患の臨床兆候を盲検法により検査した。標準的な12時間の絶食の後、ACCU−CHEK(登録商標)グルコメータ(Indianapolis、IN)を使用してグルコースを測定した。尾側部静脈を介して血液を採取し、末梢血採取管上に定置した。
【0204】
病理組織。マウスにおけるNOD研究からの膵臓切片を、10%緩衝中性ホルマリン中に固定し、その後パラフィンに包埋し、次に切開し(5μm)、組織学的検査のためにH&E染料で染色した。切片を、リンパ球浸潤、細胞傷害、及び組織侵食に応じて0〜4のスコアで等級付けし、データを正規化された複合スコアとして分析した。
【0205】
統計分析。パラメトリックデータを、ANOVAに続いてシェッフェの多重比較法を使用して分析した。ノンパラメトリックデータを、マンホイットニーのU検定に続いてダンの多重比較検定を使用して分析した。SASの一般的な線形モデル手順、リリース6.0.3(SAS Institute)を使用して、ANOVAを実施した。統計的有意性を、P≦0.05にて評定した。
【0206】
結果
BT−11は、1型糖尿病のマウスモデルにおいて空腹時血中グルコースレベルを低下させ、インスリンを増加させる。
【0207】
T1Dのマウスモデルにおける血糖レベルの修飾におけるBT−11の効果を判定するために、空腹時血中グルコース試験を実験開始後0、1、3、4、5、10、及び11週目に実施した。我々の結果は、我々の化合物BT−11で処置されたマウスが、12時間の絶食の期間後により低い血中グルコースレベルをいかに有するかを示している(
図34、パネルA)。同時に、インスリンレベルが5週目に評定され、我々の結果は、BT−11で処置されたマウスが有意に増加されたレベルの血漿中インスリンをいかに有するかを示している(
図34、パネルB)。
【0208】
BT−11は、マウスNODモデルにおける臨床病理組織学的膵臓病変及び炎症を改善する。T1Dのマウスモデルにおける病理組織学的病変を評定するために、膵臓を採取し、10%ホルマリンで固定した。次に、膵臓切片をH&Eで染色し、顕微鏡下で観察した。我々の結果は、BT−11による処置が、ビヒクル処置マウスと比較したときにマウスにおける膵臓内の臨床病理組織学的病変をいかに有意に低減するかを示している(
図35)。
【0209】
考察
300万人を超える米国人を悩ませている疾患である1型糖尿病(T1D)のための、有効でより安全な経口薬物の必要が存在する。ABA治療は、抗糖尿病性効果を発揮する[2]。ランチオニンシンテターゼ成分C様タンパク質2(LANCL2)は、ABAの結合及びシグナル伝達の標的である[15、19、24]。したがって、LANCL2は、炎症に対する有望な新規の治療標的として浮上している[18]。ABAは、糖尿病[2、33]及び炎症性腸疾患(IBD)等の免疫媒介性疾患[22、23]の改善において有効である。化合物61610、ビス(ベンズイミダゾイル)テレフタルアニリド(BTT)は、数百万個の化学物質のライブラリの中で最も高い親和性でLANCL2に結合する。それに加え、61610は、腸炎症のマウスモデルにおいて有力な免疫修飾効果を発揮した[25]。BT−11は、NODマウスにおいて抗糖尿病性効果を発揮する(
図34及び35)。さらに、ABAはヒト膵臓ベータ細胞におけるインスリン分泌を増加させ[34]、1型糖尿病(T1D)の治療としてのABAの潜在的用途を示唆している。
【0210】
免疫細胞内で、ABAは、ミリストイル化後に細胞膜に会合するGタンパク質共役受容体であるLANCL2によって認識される[19、35]。LANCL2に結合するABAは、cAMPを増加させ、PKAを通じたシグナル伝達を開始し、マクロファージ及びT細胞における免疫応答を修飾する[8]。LANCL1の結晶構造をテンプレートとして使用することによって、LANCL2の3次元構造を構築するために相同性モデル化を実施した。分子ドッキングを使用して、まずコンピュータによって、次にインビトロでABAがLANCL2に結合することを実証した。この計算による予測を、SPR結果及びヒトLANCL2による結合アッセイによって検証した[35]。新たなLANCL2リガンドを見出すために、相同性モデル化を通して得られたLANCL2の構造を使用して、LANCL2に基づく仮想スクリーニングを実施した。NCI Diversity Set IIからの化合物、ChemBridge、及びZINC天然物データベースを、Auto Dockを用いてLANCL2モデルにドッキングし、算出された親和性によってランク付けした。ABAはLANCL2に対して高い親和性を有するが、61610等の他のジエン含有天然化合物もまた同一領域内に結合すると予測され、またLANCL2結合薬として追及され得る[12]。BT−11はまた、LANCL2に対する実証された強い結合、及びT1DのNODマウスモデルにおける治療効能を有する(
図34)。このデータは、LANCL2経路及び他の本発明の化合物が、T1Dのための免疫修飾薬として有用であるであるといういくつかの確証を提供している。免疫応答を修飾し、自己免疫疾患を和らげる手段としてのLANCL2経路の役割を支持するさらなる証拠としては、炎症性腸疾患(IBD)のマウスモデルにおけるABA[22、23]、61610[12、18]、及びBT−11のLANCL2結合及び保護効果が挙げられる。
【0211】
T1Dの発生は、全世界で概算年間3%の速度で増加している[36〜38]。膵島の移植の成功はT1Dを治療し得るものの、十分な膵島の不足、移植された膵島の進行中の免疫媒介性破壊、及び免疫抑制薬の副作用は、このアプローチの広範な使用を大きく制限している[39]。したがって、膵臓β細胞の機能及び免疫修飾を促進する能力を安全に組み合わせた療法は、T1Dを治療するための基礎的戦略である。我々のデータは、BT−11によるLANCL2の活性化が、血中グルコースレベルを改善するだけでなく、グルコースチャレンジ後のその正規化も改善することを実証している(
図34)。さらに、T1dの発症中のBT−11による処置は、膵臓における病理組織を改善する(
図35)。実に、ABAは予防的及び治療的に炎症を抑制し、グルコース耐性を改善する[2、3]。したがって、LANCL2の天然の活性化は、IBDにおけるその治療的効果[12、18、22、23]によって例証されるような免疫修飾、ならびに抑制された炎症及び強化されたインスリン感受性によるグルコースホメオスタシスの調節[2、3]の両方をもたらす。この背景ならびに
図34及び35に提示されるデータに基づいて、T1Dのための治療標的としてのLANCL2の役割の調査は重要である。
【0212】
実施例23:2型糖尿病(T2D)を治療するためのBT−11の使用
導入
真性糖尿病(DM)は、身体がインスリンを十分に産生し得ないか、またはインスリンを有効に使用し得ないときに起こる慢性の状態であり、環境因子に結び付けられる遺伝子的素因によって誘発される。1型糖尿病を有する人々と異なり、2型糖尿病患者は、インスリンを産生することができる。しかしながら、かかる患者の膵臓は十分なインスリンを作らないか、または身体はインスリンを十分に使用することができない。この現象は、インスリン抵抗性と呼ばれる。そうあるべき十分なインスリンがないか、またはインスリンが使用されていない場合、グルコースは処理及び使用され得ない。その結果、グルコースが、細胞内に入り代謝される代わりに血流内に蓄積されると、全身の他の細胞は適切に機能し得ない。実に、高血糖及び糖尿病は、心血管疾患(CVD)、腎症、神経障害、足部潰瘍、及び網膜症のため罹患率及び死亡率の重要な原因である。
【0213】
約2,830万人の米国人が、2型糖尿病(T2D)を有しており、中高年の40.1%超が、グルコース耐性異常、全身性炎症、及びインスリン抵抗性を特徴とする状態である前糖尿病を有している。世界保健機関は、T2D患者の数が2030年までに3億6,600万人に増加すると推定している。
【0214】
上述の通り、現在の抗糖尿病性薬物は、インスリン感受性の改善においては有効であるが、それらの慢性投与は、心血管合併症、肝毒性、体重増加、体液鬱滞、及び膀胱腫瘍等の著しい副作用を有する。ランチオニンシンテターゼ成分C様2(LANCL2)経路は、副作用を伴わずに抗糖尿病性作用を発揮する[18]。BT−11は、LANCL2に結合し、経口で活性であり、マウスにおける実証された抗糖尿病性効能及び際立った安全性プロフィールを有する。
【0215】
方法
マウス及び食事処置。C57BL/6及びdb/dbマウスをJackson Laboratoryから購入し、換気ラック内に特定の病原体のない条件下で収容した。食事誘発性肥満糖尿病モデル(DIO)におけるマウスに、高脂肪食(40Kcal%脂肪)を与えた。マウスは、動物施設内に維持した。全ての実験プロトコルは、機関の動物実験委員会によって承認され、国立衛生研究所実験動物福祉部門及び公衆衛生局規範のガイドラインに合致するか、またはそれを上回っていた。
【0216】
体重及びグルコース耐性の評定。全てのマウスは、研究の開始前に正常血糖(250mg/dl未満の空腹時血中グルコースレベル)であり、類似の体重(体重±1.5g)を有すると判定された。マウスの体重を毎週測定し、疾患の臨床兆候を盲検法により検査した。標準的な12時間の絶食の後、グルコースを異なる日に判定した。手短に述べると、尾側部静脈を介して血液を採取し、末梢血採取管上に定置した。次に、D−グルコースの腹腔内注射(2g/kg体重)によってグルコース耐性試験マウスに投与し、血液試料を、注射前(時間0)(午前6時に開始する12時間の絶食後のベースラインFBGレベルに対応)、ならびにグルコース注射後15、60、及び90分間(db/dbモデル)または15、30、60、90、120、180、220、及び265分間(DIOモデル)に採取した。次に、腹部(精巣上体)白色脂肪組織(WAT)、皮下WAT、及び肝臓を切除し、重量を測定した。次に、腹部(精巣上体)WATを消化し、断片化した。
【0217】
白色脂肪組織の消化。腹部WATを切除し、重量を測定し、10mg未満の小片に刻み、消化媒体(II型コラゲナーゼ(0.2%、Sigma−Aldrich)を含有する、2.5%のHEPES(Mediatech)及び10%のウシ胎仔血清を補充した1XHBSS(Mediatech、Herndon、VA))内に定置した。試料を37℃の培養器内で30分間培養し、100μmナイロンセル濾過器を通して濾過して未消化粒子を除去し、4℃、1000×gで10分間遠心分離した。間質血管細胞(SVC)からなるペレットを1×HBSSで洗浄し、4℃、1000×gで10分間遠心分離した。上清を廃棄し、2mLの赤血球溶解緩衝液中でSVCを2分間培養することによって赤血球を溶解させた後、9mLの1×PBSで反応を停止した。次に、細胞を4℃、1000×gで10分間再び回転させ、1mLの1×PBS中に懸濁し、Coulter Counter(Beckman Coulter、Fullerton、CA)を用いて計数した。
【0218】
間質血管細胞の免疫表現型検査。免疫表現型検査のために、SVCを96ウェルプレート(Costar)に2×105細胞/ウェルで播種した。非特異的結合を阻害するために初めに20分間FcBlock(20μg/mL;BD Biosciences−Pharmingen)と共に培養した後、細胞を、5%血清及び0.09%アジ化ナトリウム(FACS緩衝液)を含有するPBS中で洗浄し、特異性一次抗マウス抗体で染色した。フローサイトメータを用いてフロー結果を計算し、FACS DIVA(商標)(BD Biosciences)及びFlowJo(TreeStar)を用いてデータ分析を実施した。
【0219】
即時定量的PCR。総RNAを、製造者の指示に従って、RNEASY Lipid Mini Kit(Qiagen)を使用して脂肪組織から、及びRNEASY Mini Kit(Qiagen)を使用して細胞から単離した。総RNAを使用し、QSCRIPT(商標)cDNA合成キット(Quanta Biosciences、Gaithersburg、MD)を使用して相補的DNA(cDNA)テンプレートを生成した。総反応体積は20μLであり、反応を、MJ MINI(商標)サーマルサイクラー(Bio−Rad)内で以下の通り培養した:25℃で5分間、52°で30分間、85℃で5分間、及び4℃で保持。各遺伝子アンプリコンを、MINELUTE PCR 精製キット(Qiagen)を用いて精製し、DNA質量ラダー(Promega)を使用することによってアガロースゲル上で定量化した。これらの精製アンプリコンを使用して、即時PCRアッセイにおいて即時PCR条件を最適化した。プライマー濃度及び焼鈍温度を、CFXシステム(Bio−Rad)に対して、システムの勾配プロトコルを使用して各プライマーセットについて最適化した。最適化中または試料DNAの即時PCR中、各プライマーセットに関してPCR効率を92〜105%に、相関係数を0.98超に維持した。データは、ΔΔCt定量化法を使用して示される。
【0220】
結果
BT−11は、T2DのマウスDIOモデルにおける空腹時血中グルコースレベルを低減した。T2Dのモデルにおける例示的化合物BT−11の効能を評定するために、C57BL/6マウスに高脂肪食を与えた(DIOモデル)。経口BT−11投与は、BT−11処置マウスにおいて、ビヒクル処置された同腹仔と比較して高脂肪食給餌の12週目において血中グルコースレベルを有意に減少させた(
図36、パネルA)。さらに、12時間の絶食及びIPによる2g/Kg体重のグルコースチャレンジの後、BT−11で処置されたマウスは、未処置マウスよりも有意に速く血中グルコースレベルを正常化することができた(
図36、パネルB)。
【0221】
BT−11処置は、白色脂肪組織における炎症促進性マクロファージ浸潤及び炎症促進性顆粒球を減少させた。白色脂肪組織に浸潤する細胞を特徴付けるために、腹部WATを、方法の章に記載される通りに採取し、消化した。WATにおける異なる炎症促進性集団を評価するフローサイトメトリー分析を実施した。我々の結果は、BT−11による処置が、F4/80+CD11b+炎症促進性マクロファージのレベル(
図37、パネルA)及び高レベルのLy6cを有する炎症促進性顆粒球(GR1+Ly6c高)の数(
図37、パネルB)をいかに有意に低減したかを示している。
【0222】
BT−11は、T2Dのマウスdb/dbモデルにおける空腹時血中グルコースレベルを低減した。糖尿病の2つのマウスモデルにおける経口BT−11処置の治療効能を評価するために、レプチン受容体内の突然変異により自発的なT2Dを発症するdb/dbマウスも使用した。Db/dbマウスに、80mg/Kgの日用量のBT−11を強制経口給餌によって投与した。空腹時血中グルコース濃度を測定することによって、グルコースホメオスタシスにおけるBT−11の効果を判定した。BT−11による処置は、ビヒクル処置された同腹仔と比較して早くも1週目に血中グルコースレベルを有意に減少させ、時間とともに3週目にはその差を際立たせている(
図38、パネルA)。動物がいかにグルコースホメオスタシスを開始するかを経口BT−11処置が修飾するか否かを判定するために、実験動物に腹腔内グルコースチャレンジを与え、血漿グルコースの反応速度をグルコース注射後0〜265分間評価した。血液試料は、注射前に採取した(時間0)(12時間の絶食後のベースラインFBGレベルに対応)。我々の結果は、BT−11による経口処置が、IPグルコースチャレンジ前にグルコースのレベルをいかに有意に減少させるかを示している(時間0、
図38、パネルB)。db/dbモデルにおけるグルコースチャレンジ後、我々の結果は、我々のトップリード化合物BT−11で処置されたマウスにおけるグルコースレベルが、いかにビヒクル処置マウスよりも素早く正常なレベルに向かって降下するかを示している(
図38、パネルB)。
【0223】
BT−11は、TNFα及びMCP−1のmRNAレベルを低減し、LANCL2を上方調節した。BT−11の抗炎症性効力をさらに確認するために、方法の章に示される通りにWAT上の遺伝子発現を評定した。我々の結果は、未処置マウスと比較して、BT−11で処置されたマウスが、LANCL2のより高い発現レベルならびに炎症促進性因子TNFα及びMCP−1の有意に低いmRNAレベルをいかに有するかを示している(
図39)。
【0224】
考察
米国における肥満及び2型糖尿病(T2D)の割合は上昇し続けており、ますます多くの人々が経口抗糖尿病性薬に依存するようになってきている。約2,830万人(人口の8.3%)の米国人がT2Dを有しており、中高年の40.1%超が、グルコース耐性異常及びインスリン抵抗性を特徴とする状態である前糖尿病を有している[40]。米国内でのT2Dに起因する直接及び間接的な費用は、1,320億ドルを超える[40]。この高まる問題にもかかわらず、薬剤製造者は安全かつ有効な薬物を開発できていない。最も人気があり有効な経口抗糖尿病性薬の1つは、チアゾリジンジオン(TZD)クラスのインスリン増感薬である。TZDはインスリン感受性を強化するが、体重増加、鬱血性心不全、膀胱癌、肝毒性、及び体液鬱滞を含む、その利用可能性を制限している著しく有害な副作用を有する[41、42]。例えば、TZDを使用している患者のおよそ10〜15%は、浮腫のために治療を中断せざるを得ず、過剰体液鬱滞による細胞外容積の増加もまた、既存の鬱血性心不全を有する個人に主要な問題を提示する。2000年には、トログリタゾン(REZULIN(登録商標))が、その開始から3年後に深刻な肝臓損傷及び死亡の報告によって市場から除去された[43]。他のTZDに関する安全上の懸念から、義務的なブラックボックスラベル及びその後の使用制限がもたらされた。
【0225】
LANCL2は、同定されるLanC様タンパク質ファミリーの第2のメンバーであった。第1のメンバーLANCL1は、ヒト赤血球膜から単離された[44]。その後、LANCL2が同定され、免疫細胞、膵臓、肺、及び腸[1、44]を含む全身にわたり発現された[1、18]。ランチオニンシンテターゼC様2(LANCL2)経路は、T2Dのための新規の治療標的として浮上している[18]。大規模な前臨床試験は、糖尿病及び慢性炎症性疾患におけるアブシジン酸(ABA)等のLANCL2リガンドに関する治療的可能性の十分な証拠を提供した[2、3、22、23、45]。化合物61610、ビス(ベンズイミダゾイル)テレフタルアニリド(BTT)は、数百万個の化学物質のライブラリの中で最も高い親和性でLANCL2に結合する。
【0226】
T2Dのための現在の薬物が、副作用を伴わない血糖管理である患者の第一の必要性を満たし得ないという事実をふまえると、BT−11は、非常に魅力的な潜在的代用品を代表する。我々の結果は、T2Dの異なるマウスモデルにおけるBT−11の投与が、絶食期間後の血中グルコースレベルをいかに有意に低下させるかを示している(
図36及び38)。さらに、この化合物の投与はまた、グルコースチャレンジ後にグルコースレベルを正常にするのを助ける(
図36及び38)。BT−11の抗炎症特性はまた、我々の免疫表現型検査の結果にも反映されている。実に、BT−11の投与は、腹部のWATにおける炎症促進性マクロファージ及び炎症促進性顆粒球のより少ない浸潤をもたらした(
図37)。これらの結果は、BT−11で処置されたマウスにおいて有意に低減することが見出された2つの非常に重要な炎症促進性因子TNFα及びMCP−1の遺伝子発現データによって支持された(
図39)。
【0227】
実施例24:インフルエンザ感染中のBT−11の使用
導入
肺炎を引き起こす呼吸器病原体は、先進国における感染性疾患関連死の主要原因である。有効なワクチン及び抗ウイルス剤の不在は、抗ウイルス耐性の出現に関する高まる懸念とともに、宿主を標的とする免疫療法アプローチの開発の必要性を強調している。呼吸器感染に関連する肺病原体及び臨床疾患は、ウイルスの細胞変性効果と宿主免疫応答の組み合わせから生じることが多い。この点に関して、先天的免疫応答の修飾に関する療法が、インフルエンザの治療に考慮される[46]。
【0228】
インフルエンザは依然として、全世界で主要な公衆衛生問題である。季節性インフルエンザは、しばしば体の自由を奪い、数日の活動制限を要する上気道の作用に関連する。米国内だけで、毎年のインフルエンザの流行は3,000万人の外来患者訪問及び300,000人の入院をもたらすと概算されている。特定の集団(例えば、幼児、高齢者、及び素因となる医学的状態を有する人々)は、ウイルス性肺炎の発症の危険性がより高い。専門家は、米国内で季節性インフルエンザにより毎年25,000〜35,000人が死亡していると概算しており、世界的な財政負担は数千億ドルであると算出されている[47]。流行性インフルエンザの周期は、30〜50年毎に生じ、その予測不能な表現及び既存の免疫力の欠失のために複雑さが加わり、高い死亡率に関連している[48]。インフルエンザは、著しい罹患率及び死亡率に関連するが、有効で安全な薬物治療が不足している。
【0229】
ランチオニンシンテターゼ成分C様タンパク質2(LANCL2)が、ABAの結合及びシグナル伝達の標的であることを示唆するデータ[15、19、24]。したがって、LANCL2は、免疫修飾のための有望な新規の治療標的として浮上している。分子モデル化及び表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して、BTIは、高い親和性でLANCL2に結合する化合物BT−11、ビス(ベンズイミダゾイル)テレフタルアニリド(BTT)を同定した。また、BT−11は、肺において有力な前消散(pro−resolutive)効果を発揮し、インフルエンザのマウスモデルにおける死亡率及び罹患率を減少させた。
【0230】
方法
マウスC57BL/6マウスをJackson Laboratoryから購入し、換気ラック内に特定の病原体のない条件下で収容した。全ての実験プロトコルは、機関の動物実験委員会によって承認され、国立衛生研究所実験動物福祉部門及び公衆衛生局規範のガイドラインに合致するか、またはそれを上回っていた。
【0231】
インフルエンザウイルスによるマウスの鼻内感染。吸入器ステーションを使用してマウスに2〜5%イソフルオランで麻酔をかけ、50μLのウイルス希釈物10
3 TCID50で鼻孔を通じて投与した(各25μL)。次に、マウスをケージに入れ、麻酔からの回復を待った。
【0232】
強制経口胃管給餌によるBT−11の経口投与。BT−11を、制経口胃管給餌によって、市販の先端がボール上の安全強制給餌針(18〜24ゲージ、動物の体重による)を使用してマウスに投与した。この手順は、苦痛を伴わなかった。マウスを、80mg/Kgの用量のBT−11で実験期間中24時間毎に処置した。
【0233】
マウスの監視及び疾患活性及び体重測定。マウスを、感染後1日1回(または疾患スコア2に等しい重度の臨床疾患兆候を発症した場合は4時間毎に)監視し、体重損失(すなわち初期体重の25%の段階的損失)、脱水症、運動機能の喪失、痛みのある箇所の防御/保護、毛皮の逆立ち(立毛)によって測定するときに顕著な病気の兆候を発症した場合は、予定の終点より前に安楽死させた。実験期間中、マウスの体重を1日1回測定した。
【0234】
結果
BT−11の経口投与は、インフルエンザウイルスを有するマウスにおける臨床スコア及び罹患率を低減した。
【0235】
BT−11の治療効能を評価するために、マウスにおけるインフルエンザ感染のマウスモデルを使用した。手短に述べると、マウスを、5%イソフルオランでの麻酔後に鼻内感染させた。マウスを、BT−11の経口懸濁液で80または40mg/Kgにて毎日処置した。マウスの体重を測定し、実験期間中スコア化した(16日目)。結果は、BT−11の投与が、3日目から実験全体を通して活性臨床スコアをいかに有意に低減したかを示している(
図40、パネルA)。さらに、身体的外観の臨床スコアは、40及び80mg/KgのBT−11による処置を受けたマウスにおいてどちらも有意に低減した(
図40、パネルB)。
【0236】
疾患罹患率における処置の効果を評価するために、体重損失のパーセンテージを算出し、各実験群内で15%超損失したマウスの数をさらに評価した。感染後6日目から、80mg/KgのBT−11による処置は、ビヒクル群と比較してより低い罹患率をもたらした。差は、10日目から12日目に際立った(
図40、パネルC)。
考察
【0237】
インフルエンザの蔓延及び疾患を制御するための伝統的アプローチは、ワクチン接種及び抗ウイルス治療を通じてウイルス側に重点が置かれている。ワクチンは、その前のシーズンの流行株に基づいて毎年製剤化される必要がある。しかしながら、新たなワクチンを製造し、認可し、効能を試験するためには、それが季節性インフルエンザのためのものであれ流行性インフルエンザのためのものであれ、約4〜6カ月を要する[49]。抗ウイルス剤の主な欠点は、耐性株の非常に頻繁な出現及び選択である。ウイルスに重点を置いた治療に加えて、悪化した宿主応答の制御に基づいた療法の開発は、抗菌及び予防的戦略を補うために採用される可能性が非常に高い。宿主を標的とした治療薬は、異なるリアソータント間での交差防御を提供するという利点を有し、したがって季節を通して有効であり、製造及び貯蔵することができ、ウイルス曝露後に疾患を治療するために使用することができる[46、50、51]。
【0238】
インフルエンザのための新規の治療標的としてのLANCL2の同定は、宿主を標的とした治療薬の新たな道を開く。我々は、BT−11によるLANCL2の活性化が、活性及び臨床スコアを改善するだけでなく、インフルエンザウイルスによって引き起こされる罹患率を減少させ、インフルエンザ感染からの回復を加速することを実証した(
図33)。これらの結果は、LANCL2がインフルエンザのための新規の治療標的であり、BT−11が潜在的な新たな宿主を標的とした薬物であることを強く支持している。
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