(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記半透過コーティングは、スペクトル選択性誘電体多層、ダイヤモンドライクカーボンコーティング、誘電体層、及び、誘電体/金属多層のうちの少なくとも1つを有する
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電気光学アセンブリ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本例示の実施形態は、電気光学アセンブリに関する方法ステップ及び装置部品の組み合わせの中に存在する。より具体的には、電気光学アセンブリを有するヘッドアップディスプレイシステムに関する。したがって、装置構成要素および方法ステップは、該当する場合、詳細によって開示を不明瞭にしないように、本発明の実施形態を理解することに関するそれらの特定の詳細のみを示す図面において、従来の符号によって表されている。前記詳細は、本明細書の説明の恩恵を有する当業者に容易に明らかになる。さらに、説明および図面における同類の数字は、同類の要素を表す。
【0019】
本明細書における記述の目的のために、用語「上部の」、「下部の」、「右の」、「左の」、「後方の」、「前方の」、「垂直の」、「水平の」、およびそれについての派生語は、
図1において関連付けられた発明に関するものとする。別様に述べられない限り、用語「前方の」は、電気光学ヘッドアップディスプレイアセンブリを見ることを意図される者により近い要素の表面を指すものであり、用語「後方の」は電気光学ヘッドアップディスプレイアセンブリを見ることを意図された者から離れた要素の表面を指すものである。しかしながら、それとは逆に明確に特定されたもの以外は、発明はさまざまな代わりの配向をとってもよい、と理解されるべきである。添付図面に図示され、かつ以下の明細書に記述された特定のデバイスおよびプロセスは、添付された特許請求の範囲において定義された発明概念の単なる例示的な実施形態であることも理解されるべきである。したがって、本明細書に開示された実施形態に関する特定の寸法および他の物理的特性は、特許請求の範囲が明示的に別段に述べない限り、限定するものと見なされるべきではない。
【0020】
用語「including(含む)」、「comprises(備える)」、「comprising(備える)」、または任意の他の変形は、要素のリストを備えるプロセス、方法、物品、または装置が、それらの要素のみを含むのではなく、このようなプロセス、方法、物品、または装置に明示的に列挙されもせず、固有でもない他の要素を含んでもよいように、非排他的包括にわたるように意図される。「comprises a...」によって始められる要素は、さらなる制約を受けずに、その要素を備えるプロセス、方法、物品、または装置において、追加の同一要素の存在を妨げない。
【0021】
図1〜
図3に関して、参照番号10は、概して電気光学アセンブリを指定する。電気光学アセンブリ10は、車両18のヘッドアップディスプレイシステム14において利用され得る。電気光学アセンブリ10は、第1の部分的に反射性で部分的に透過性のガラス基材22、及び、第2の部分的に反射性で部分的に透過性のガラス基材26を有することができる。第1の基材22は、第1の表面22A及び第2の表面22Bを有することができる。第2の基材26は、第3の表面26A及び第4の表面26Bを有することができる。第1及び第2の基材22、26は、平行に間隔を空けた関係で位置付けられ、当該第1及び第2の基材22、26の実質的に周囲周りにシール30を有することができる。第1の基材22及び第2の基材26は、キャビティ34を画定する。電気光学媒体38は、第1及び第2の基材22、26の間のキャビティ34内にある。少なくとも1つの実施例において、電気光学アセンブリ10は、変化しない反射率及び変化する透過率を有するように構成される。電気光学アセンブリ10の「透き通った状態」は、最大透過率の条件を示す。電気光学媒体38の活性化は、電気光学アセンブリ10の透過率を「暗色化した状態」にまで下げることができる。「ローエンド(low end)」透過率は、電気光学アセンブリ10によって実現可能な最小透過率を示す。
【0022】
説明として及び限定的ではなく、電気光学アセンブリ10は、車両18のヘッドアップディスプレイ(HUD)システム14に含まれ得る。このような実施例において、電気光学要素10は、プロジェクタ46によって投影された一次像を反射するコンバイナスクリーンとして機能できる。電気光学アセンブリ10は、制御回路からの入力に基づいて制御され光透過率量を変更させ得る。例えば、昼光条件で、電気光学アセンブリ10は、暗色化されることで、コントラスト比を改善または増加させ、プロジェクタ46から電気光学アセンブリ10に投影される情報の可視性を改善させることができる。コントラスト比は、プロジェクタ46からの一次反射像と電気光学アセンブリ10(例えば、透き通った状態または暗色化した状態のいずれか)を通って透過される光との比を表し得る。
【0023】
ヘッドアップディスプレイシステム14は、自動車及び航空宇宙用途など、様々な用途で使用可能であり、運転者または操縦者へ情報を提示する一方で同時に前方の視覚を可能にする。いくつかの実施例において、ヘッドアップディスプレイシステム14は、フロントガラス54の後方の車両に、計器パネル58から突出して提供され得(
図1)、一方で他の実施例において、電気光学アセンブリ10は、フロントガラス54に直接位置付けられ得る(
図2)。電気光学アセンブリ10は、いずれの大きさ、形状、曲げ半径、角度、または位置にもなることができる。電気光学アセンブリ10は、警告、注意、または車両診断などの、多くの車両に関する機能または運転者支援システムを表示するために使用され得る。図示される実施例において、車両18の速度が、電気光学アセンブリ10に表示されている。
【0024】
ヘッドアップディスプレイシステム14に関して、電気光学アセンブリ10上に投影される像は、いかなる条件においても十分な明るさで見えるべきである。このことは車両18外の照明が明るいとき、特に困難となる。プロジェクタ46からの光と光学アセンブリ10背後の照明との間のコントラストは、明るい晴れた日は低くなり得る。より明るく、より強力な照明光源(例えば、プロジェクタ46)がコントラストを改善する一方で、ディスプレイ輝度を増加させることは、最も経済的な解決策となることはあり得ず、非常に明るい昼光条件で適正なコントラストを提供するに足りる明るさのディスプレイは、他の条件では明るすぎるであろう。明るさの変動に対応する制御が使用可能ではあるが、特定の背景は、移動する車両において変更するし、運転者の目の位置にある程度依存する。1つの実施例に従い、電気光学アセンブリ10は、透過率を低下させ、及び/または、コントラスト比を増加させるように構成され得る。
【0025】
用途によっては、透き通った状態における、より高いもしくはより低い透過率、最適なコントラスト比のための異なる反射率値、及び/または、透過率レベルのより広いダイナミックレンジが必要となり得る。初期反射率及び透過性の範囲は、ヘッドアップディスプレイシステム14に採用されるプロジェクタ46の容量(能力)、及び、フロントガラス54に関する光透過率レベルと共にプロジェクタ46の光出力容量、によってさらに複雑になる。フロントガラス54は、ヘッドアップディスプレイシステム14からの像のコントラスト比及び可視性に直接の影響力を有するだろう。フロントガラス54の透過率レベルに影響するいくつかの要因がある。最小光透過率は、車両18が売却された場所の規定に基づくが、より高い透過率レベルは、車両18がどのように装備されまたは売り込まれたかに基づき提示され得る。この要因の範囲は、異なる車両及び環境条件に適用され得る解決策の必要性を生じさせる。
【0026】
ヘッドアップディスプレイシステム14を利用するとき考慮されるべき別の特徴は、第1及び第2の基材22、26の、第1から第4の表面22A〜26Bからの二次反射である。第1から第4の表面22A〜26Bからの反射は、(例えば、電気光学アセンブリ10の部品の幾何的特性のため)一次反射像と完全には整列しない二次反射からの二重像効果を与え得る。第1から第4の表面22A〜26Bからの二次反射から形成され得る二重像は、プロジェクタ46によって投影され電気光学アセンブリ10によって反射される一次像に、ぼけまたは不明瞭さを引き起こし得る。
【0027】
1つの実施例に従い、電気光学アセンブリ10は、両方が約1250mmの球面半径で屈曲する、2つの約1.6mmのガラス基材(例えば、第1及び第2の基材22、26)を使用して組み立てられ得る。第1及び第2の基材22、26に関する他の厚さも可能である。他の実施例において、第1及び第2の基材22、26は、屈曲して「自由外形」形状を有することができる。所望する形状は、最終的な一次反射像が、電気光学アセンブリ10の前方及び車両18の前方に「現れる」形状である。この特性を実現するために必要な精密な表面輪郭は、プロジェクタ46の特性、プロジェクタ46及び運転者のロケーション、同様に他の2つのロケーションに関する電気光学アセンブリ10のロケーション、の関数(相互作用)による。車両18の前方に投影された像を有することで、運転者はその焦点距離を変更する必要がなく、所望される情報を得ることが可能となる。車両18内に設置された従来型のヘッドアップディスプレイでは、運転者の目は、しばしば、より短い視聴距離に焦点を定め直さなくてはならず、したがって道路を見る時間が減少する。さらに、その後、運転者の目は、道路前方に焦点を定め直さなくてはならず、さらに道路及び前方状況を見る時間が減少する。電気光学アセンブリ10の形状はまた、投影される像の基本特徴(すなわち、直線は直線のまま、像のアスペクト比は維持される、等)を維持するように選択されるべきである。
【0028】
図3を参照すると、第1の基材22は、第1の表面22A及び第2の表面22Bを含む。第2の表面22Bは、約12ohms/sqのシート抵抗を有するインジウムスズ酸化物で被膜され得る。第1の表面22Aは、凹んでいてよく、クロム(Cr)で被膜され得る。被膜される第1の基材22は、約37.8%の透過率及び約25.4%の反射率を有することができる。第2の基材26は第3及び第4の表面26A、26Bを画定する。第3の表面26Aは、約12ohms/sqのシート抵抗を有するインジウムスズ酸化物で被膜され得る。
【0029】
第1の表面22Aから、電気光学アセンブリ10は、約25%の透き通った状態の反射率及び約24%の透過率を有することができる。電気光学アセンブリ10は、約10.5%のローエンド(low end)またはロー状態の透過率、及び約15%の第1表面22Aからのローエンド(low end)反射率を有することができる。代替的に、他の実施例において、電気光学アセンブリ10のハイエンドまたはハイ状態の透過率は、45%より大きい、またはさらに60%よりも大きくなり得る。電気光学アセンブリ10の特徴はまた、暗色化した状態で、ローエンド(low end)透過率が7.5%未満、またはさらに5%未満、になるように変更され得る。いくつかの実施例において、2.5%以下に透過率レベルを下げることが、所望され得る。ハイエンド透過率の増加は、以下に記載されるように、低吸光性を有するコーティング及び材料の使用によって獲得され得る。より低いローエンド透過率は、高吸光性を有する材料の含有を通して獲得され得る。広いダイナミックレンジが所望される場合、低吸光性材料が、電気光学材料とセル間隔(例えば、第1と第2基材22、26との間の間隔)を組み合わせて使用され、活性化された状態でより高い吸光性を実現する。当業者は、特定の装置特性を実現するために選択され得る、コーティング及び電気光学材料、セル間隔ならびにコーティング導電レベルの多くの組み合わせが存在することを認識するであろう。
【0030】
第1及び第2の基材22、26並びに電気光学媒体38に電流を提供するために、電気要素が、第1及び第2の基材22、26(例えば、第2及び第3の表面22B、26A)の対向側に提供され、それらの間に電位を生成することができる。1つの実施例において、Jクリップが、各電気要素と電気的に係合され、要素ワイヤが、当該Jクリップから一次回路基材に延在する。電気光学アセンブリ10を通して最大の表面積を提供するために、接触子が、装置の一側面に沿って配置される。この実施例では、バックプレートとトッププレートとがオフセットしてバスクリップのような接触を許容する。導電性インクまたはエポキシの使用を含む、他の接触子設計も可能である。
【0031】
様々な実施例に従い、電気光学媒体38は、エレクトロクロミック媒体であり得る。エレクトロクロミック実施例において、電気光学媒体38は、少なくとも1つの溶媒、少なくとも1つのアノード材料、及び少なくとも1つのカソード材料を含み得る。典型的に、アノード及びカソード材料の両方は、電気活性であり、それらのうち少なくとも1つは、エレクトロクロミックである。その通常の意味にかかわらず、用語「電気活性」は、本明細書では、特定の電位差に曝されたときにその酸化状態が変化する材料を意味する。さらに、「エレクトロクロミック」という用語は、その通常の意味にかかわらず、特定の電位差に曝されたときに1つまたは複数の波長でその消光係数に変化を示す材料を意味する。本明細書に記載のエレクトロクロミック成分は、電流が当該材料に加えられると色または不透明度が第1相から第2相に変化するように、色または不透明度が電流によって影響を受ける材料を含む。エレクトロクロミック成分は、単層、単相成分、多層成分、または多相成分であり得、「Electrochromic Layer And Devices Comprising Same」と題する米国特許第5,928,572号、「Electrochromic Compounds」と題する米国特許第5,998,617号、「Electrochromic Medium Capable Of Producing A Preselected Color」と題する米国特許第6,020,987号、「Electrochromic Compounds」と題する米国特許第6,037,471号、「Electrochromic Media For Producing A Pre−selected Color」と題する米国特許第6,141,137号、「Electrochromic System」と題する米国特許第6,241,916号、「Near Infrared−Absorbing Electrochromic Compounds And Devices Comprising Same,」と題する米国特許第6,193,912号、「Coupled Electrochromic Compounds With Photostable Dication Oxidation States」と題する米国特許第6,249,369号、そして「Electrochromic Media With Concentration Enhanced Stability, Process For The Preparation Thereof and Use In Electrochromic Devices」と題する米国特許第6,137,620号、「Electrochromic Device」と題する米国特許出願公開第2002/0015214A1号、そして「Electrochromic Polymeric Solid Films, Manufacturing Electrochromic Devices Using Such Solid Films, And Processes For Making Such Solid Films And Devices」と題する国際出願特許PCT/US98/05570号、「Electrochromic Polymer System」と題する国際出願特許PCT/EP98/03862号、および「Electrochromic Polymeric Solid Films, Manufacturing Electrochromic Devices Using Such Solid Films, And Processes For Making Such Solid Films And Devices」と題する国際出願特許PCT/US98/05570号、に記載され、それらのすべては、当該参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ガラス要素12はまた、部分的に反射し、部分的に透過性の特性を有する任意の他の要素であってもよい。ガラス要素12に電流を供給するために、要素の両側に電気要素が設けられ、要素間に電位を生成する。
【0032】
様々な実施例に従い、電気光学アセンブリ10の周囲帯は、材料を追加または取り除き、シール30及び接触子材料の視認性(view)を遮蔽または不透明にすることによって、修正され得る。第1の実施例において、第1及び第4の表面22A、26Bの周囲の外部が、エッチングされ、艶消し周囲を有する基材を提供することができる。艶消し周囲の実施例において、周囲帯は、第1及び第4表面22A、26Bの両方にCO
2レーザーを使用してダメージを与えることによって形成され、約4mm幅の艶消し帯を形成する。加えてまたは代替的に、第1及び第4の表面22A、26Bの縁部は、研削及び/または研磨され得る。さらに、分光フィルタ材料(例えば、クロムもしくは金属リング)または光散乱材料が、第1及び/または第2基材22、26(例えば第1から第4の表面22A〜26Bのいずれか)の周囲へ加えられ得て、シール30を隠すことに役立つ。分光フィルタは、シール30の表示を遮蔽することができ、またシール30にUV保護を提供することもできる。分光フィルタの別の実施例において、酸窒化クロム、または別の暗色コーティングが、電気光学アセンブリ10の周囲に成膜され、分光フィルタとして作用する暗色リングを与えることができる。分光フィルタ材料は、選択的なレーザーアブレーションなどによって、選択的に成膜されるか、または表面全体上に成膜された後に選択的に取り除かれて、周囲帯を与えられ得る。加えてまたは代替的に、シール30は、概して、透き通り、無色となり得、あるいは、光を散乱させるように構成され得る。このような実施例においては、艶消し帯は、シール30のわずかに内側に延在できる。上記に記載されたシール30を隠す技術は、それのみでも、または他に開示されたシール30の隠蔽技術のいずれと組み合わされても、使用され得る、ということが理解されるであろう。
【0033】
図示された実施例において、第1及び第2の基材22、26はそれぞれ、丸型(丸められた)縁部62及び丸型ではない接触縁部66を含む。非丸型接触縁部66は、接触のし易さのため所望され得、装置が当該縁部によって支持される場合、当該接触縁部66に沿って第1及び第2の基材22、26を曲げる必要はない。電気光学アセンブリ10の露出する縁部はいずれも、概して丸型となり得る。丸型縁部62の曲率半径は、約2.5mmより大きくなり得る。
【0034】
再度
図3を参照すると、電気光学アセンブリ10は、半透過コーティング70、反射防止コーティング80、及び耐擦傷性コーティング90を含むことができる。図示された実施例において、半透過コーティング70は、第1の表面22Aに近接して位置付けられるが、加えてまたは代替的に、本明細書に提供される教示から逸脱することなく、第2の表面22B上に位置付けられ得る。図示された実施例において、反射防止コーティング80は、第1、第3、及び第4の表面22A、26A、26B上にあるが、反射防止コーティング80は、加えてまたは代替的に、本明細書に提供される教示から逸脱することなく、第2の表面22B上に位置付けられ得ることが理解されるであろう。いくつかの実施例において、反射防止コーティング80は、第1及び第2の表面22A、22Bのうちの少なくとも1つ上に位置付けられ、及び、半透過コーティング70が位置付けられる表面に対向する第1及び第2表面22A、22B上のどちらかに位置付けられ得る。ある実施例において、第1及び第3の表面22A、26A上の反射防止コーティングは、エレクトロクロミック媒体38の暗色化を可能にする電極(例えば、反射防止電極)として機能する。ある実施例において、半透過コーティング70が第2の表面22B上に配置されるとき、二つの目的を果たし、また電極としても作用することが理解されるであろう。図示された実施例において、耐擦傷性コーティング90は第1及び第4の表面22A、26Bに近接して位置付けられる。別の層として記載されているが、半透過コーティング70、反射防止コーティング80、及び/または耐擦傷性コーティング90は、以下に詳述されるように、他のコーティングとして機能する特性を共有することができる、ということが理解されるであろう。
【0035】
第1の実施例において、半透過コーティング70は、Crまたは別の金属などの薄い金属層(例えば、金属系コーティング70)であり得る。半透過コーティング70として単一の金属コーティング層を使用する潜在的なマイナス面は、金属の厚さから派生する反射率と透過率との間の定義された関係があることである。例えば、反射率及び透過率の組み合わせが、
図4A及び
図4Bに示されている。前述の図面から、単一の金属層は、概して反射率及び透過率を個別に制御することができない。半透過コーティング70の別の実施例において、インジウムスズ酸化物(ITO)または誘電性材料などの、金属より吸光性が低い材料を含む低吸光性層は、基材(例えば、第1の基材22)と金属コーティング層との間に配置される。
図5は、Cr層の厚さの異なる値について、Cr単層及びITO/Crの二層(例えば、半透過コーティング70)を有する電気光学アセンブリ10に関する、反射率に応じた実現可能な透過率値を図示している。この層は、厚さ及び屈折率に応じて反射率及び反射色を調整することを可能にすることによって、半透過コーティング70に関する実現可能な反射率及び透過率値の範囲を増大させる。反射強度を最大にするために、厚さは、以下の式によって与えられる建設的干渉の条件を満たすように選択される。
ここで、dは、層の厚さであり、mは、干渉次数であり、nは、層の屈折率であり、λは、光の波長である。
図5の二層の場合、ITO(例えば、低吸光性層)の厚さは、約70nmであり、これはm=0及びλ〜575nmに対応する。低吸光性層の屈折率は、約1.3よりも大きくなり得る。この場合、ITOについての成膜条件は、ITOの屈折率を、550nmで、典型的な1.8から約2.07まで増やすように選択された。そのため、通常の入射角で、フレネル方程式に従い、反射率を増加させる。
n
1及びn
2は、2つの媒体の最適なインターフェースのための屈折率に対応する。反射色はまた、低吸光性層の厚さを増減することによって、わずかに調整され得る。金属層は、以下に提供される金属リストから選択され得、及び、低吸光性層の材料は、本実施例についての屈折率特性に合う、以下に提供される誘電性材料のリストから選択され得る。
【0036】
誘電体/金属の二層を有する半透過コーティング70の実施例が、単層の金属層に比べ、反射率及び透過率についてより高い実現可能な値の範囲を提供するとしても、特定の反射率及び透過率レベルを達成するために、材料の屈折率及び吸光性を調整することは、依然困難であり得る。そのため、特により低い透過率値が求められるとき、反射率及び透過率の値においてより柔軟となり得る半透過コーティング70を有することが利点となり得る。したがって、別の半透過コーティング70の実施例において、そのような特徴は、金属/誘電体/金属構造体(MDM)などの多層コーティングで獲得され得る。概して、MDMコーティングのM層は、クロム、モリブデン、ニッケル、インコネル、インジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、レニウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、ステンレス鋼、タンタル、チタニウム、銅、金、白金、いずれかの他の白金族金属、ジルコニウム、バナジウムAlSi合金、及び、それらの合金及び/または組み合わせ、のうちの1つ以上を含む。前述の金属のうちいずれも、半透過コーティング70の単層または二層実施例に利用され得ることが理解されるであろう。いくつかの実施例において、金属及び誘電性材料の組み合わせは、半透過コーティング70が、耐久性または電極特性のため、第1の表面22A上または第2の表面22B上のいずれに構成されるか、に依存し得る。誘電性材料は、以下の、ITO、SnO
2、SiN、MgF
2、SiO
2、TiO
2、F:SnO
2、NbO
X、TaOx、インジウム酸化亜鉛、アルミニウム酸化亜鉛、酸化亜鉛、導電性TiO
2、CeOx、ZnS、酸化クロム、ZrOx、WO
3、酸化ニッケル、IrO
2、NiOx、CrOx、NbOx、及びZrOx、または、約1.37〜約4の屈折率を有する他の材料、のうちの1つ以上から選択され得る。前述の誘電体のいずれも、半透過コーティング70の二層実施例に利用され得ることが理解されるであろう。
図6は、ITOの厚さが74.7nmであるCr/ITO/Cr構造体を有する、多層半透過型構造体(例えば、半透過コーティング70)に関する反射率及び透過率値を図示する。各点は、第1及び第2のCr層の厚さの組み合わせに関する、特定の反射率/透過率(R/T)の値を示す。これら2つのパラメーターが、特定の反射率に関して透過率値のある範囲にわたることを確認することが可能であり、この範囲内で反射率及び透過率を別々に制御することが可能である。中央の低吸光性層の厚さ及び評価数が変化すると、金属層間の関係も変わるであろう。金属の選択もまた、
図6に示される関係を変移させるであろう。ある実施形態において、2つの異なる金属が、頂部及び底部のM層用に選択され得て、D層は、さらにサブ層に細分化され得て、異なる屈折率の材料を含むことができる。追加のD層及び/またはM層が、本明細書に提供される教義から逸脱することなく、加えられ得る。耐久性や接着性を改善し、あるいは、色及び/または反射率及び透過率範囲もしくは構造安定性を変更するべく、追加の層が加えられ得る。
【0037】
金属内で見出され、異なるR/T値を提供する代替材料が、半透過コーティング70として使用され得る。TiO
2またはダイヤモンドライクカーボン(DLC)などの材料と共に、透明導電酸化物(TCO)及び誘電体層が、他の選択肢であり、これらの実施例が、
図7及び
図8ならびに表1に示される。
【0040】
表1の実施例は、ガラス基材(例えば、第1の基材22の第1の表面22a)上の様々な半透過反射体コーティング(例えば、半透過コーティング70)について、重み付けした目(eye−weighted)の反射率Yr、透過率Yt、及び吸光性を実証する。反射率は、基材の被膜された側から測定された反射率であると理解される。反射する表面(例えば、第1の表面22A)からの反射率は、約15%よりも大きく、約20%よりも大きくなり得、約25%よりも大きくなり得、約30%よりも大きくなり得、約35%よりも大きくなり得、約40%よりも大きくなり得、約45%よりも大きくなり得る。例えば、波長550nmで約2.07の屈折率を有する、コールドITOなどの、単層TCOを有する半透過コーティング70は、光学式厚さ1/4波長で約23%の反射率を有し、一方、波長550nmで約2.34の屈折率を有するTiO
2を有する半透過コーティング70は、光学式厚さ1/4波長で約31.2%の反射率を有するであろう。材料及び/または屈折率は、正味反射率が適切なレベルにあるように選択され得る。ほとんどの材料において、吸光性は、金属と比較すると、これらの材料では比較的低くなるであろう。
図8は、単層ITO及びITO/TiO
2二層半透過コーティング70を有する電気光学要素10による、ITOの厚さに応じる反射率及び透過率のモデル値を図示する。計算に使用されるTiO
2及びITO屈折率は、2.32及び2.11であり、TiO
2層の厚さは、34.5nmで一定を保たれていた。これらの層は元々備わる高い屈折率、または建設的干渉効果のため、高い反射率を可能とする。
図8は、ダイヤモンドライクカーボンの単層を有する電気光学要素38による反射率及び透過率のモデル値を図示する。
【0041】
高コントラストの別の実施例において、半透過コーティング70は、プロジェクタ46からの特定の波長を反射することが可能な、スペクトル選択性誘電体多層に基づく。
図9は、そのような半透過コーティング70に関する反射率による分光を有するグラフを示す。この実施例において、反射率は、455、550、及び630nm近くの波長に関して約90%〜約100%である。他の反射率レベルも可能であり、本開示の範囲内であれば、反射率帯は、HUDディスプレイ出力と互換性を持たせる必要がある場合、異なる波長で中心とされ得る。いくつかの実施例において、スペクトル選択性誘電体多層に関する反射率帯での反射率は、約35%より大きく、約55%より大きく、または約75%より大きくなる。本実施例の半透過コーティング70は、高いH及び低いLの屈折率(評価数)の屈折率層の多重スタックの配列、例えばHにはNb
2O
5及びTiO
2、LにはSiO
2またはMgF
2など、として製造されることができる。
【0042】
像を反射するとき、電気光学アセンブリ10の演色が正しいことが重要である。プロジェクタ46からの異なる色の出力強度は、半透過コーティング70の反射率におけるいずれの変化も補正するように調節され得る。いくつかの実施例において、半透過コーティング70は、可視スペクトルにわたり比較的一定の反射率を有するであろう。電気光学アセンブリ10の反射及び透過される演色は、第1から第4の表面22A〜26Bの各々またはいくつかのコーティングの、厚さ、層配列、材料の適切な選択を変更することによって、制御され得る。演色は、多くの方法で定量化され得る。電気光学アセンブリ10の演色評価数、またはCRIは、約85よりも大きく、約90よりも大きく、または約95よりも大きくなり得る。代替的に、
のユニットにおいて、a
*及びb
*はCIELAB表色系の色パラメーターであり、電気光学アセンブリ10の色は、約20未満、約10未満、または約5未満の値を有することができる。これらのいずれの測定基準も、反射される像の色が正しく、またはプロジェクタ46の色とほぼ一致する表面を、記載するであろう。他の実施例において、半透過コーティング70は、プロジェクタ46の出力を高めるかまたは補正して、所望される色を達成するように調整され得る。
【0043】
他の実施例に従い、半透過コーティング70は、2015年8月14日に出願された、米国仮特許出願第62/205,376号、名称「ELECTRO−OPTICASSEMBLY」で開示された任意の半透過コーティング及び層を含むことができ、その開示された全体が、本明細書により、参考として組み込まれる。
【0044】
ヘッドアップディスプレイシステム14の一次反射率が、電気光学アセンブリ10の第1の表面22Aか第2の表面22Bのいずれかに配置された半透過コーティング70から来るため、ぼけた像(例えば、二重写り)を引き起こし得る他の表面(例えば、半透過コーティング70がない第1から第4の表面22A〜26B)からの二次反射を最小限にすることが、概して重要である。したがって、反射防止コーティング80の使用が、有用となり得る。反射防止コーティング80の例としては、透明導電酸化物があり得る。本明細書に記載される実施例に関して、第2及び第3の表面22B、26Aは、透明電極を含むことができる。ITO、F:SnO
2、ドープZnO、IZO、または他の層などの、透明導電酸化物(TCO)が、エレクトロクロミックシステムなどの、電気光学装置で一般に使用される。上記のように、これらの材料の反射率は、干渉効果によってコーティングの厚さの関数である。最小反射率は、導電酸化物コーティング(例えば、反射防止コーティング80)の厚さを調整することによって獲得され得る。最小反射率は、光学式厚さ1/2波長である。ヘッドアップディスプレイシステム14のプロジェクタ46の波長によっては、1/2波長条件に関する波長は、正味最低反射率値を得るように調節され得る。例えば、ITOコーティングの反射率は、約145nmの厚さの反射防止コーティング80の層を有する第2及び第3の表面22B、26Aから、0.5%と同等の低さ、または未満、であり得る。
【0045】
上記のように、ITOの1/2波長の厚さは、約12ohms/sqのシート抵抗をもたらす。いくつかの実施例において、これは、電気光学アセンブリ10が速く均一な暗色化を得るための十分に低いシート抵抗とは言えない。そのため、より厚いコーティング層(例えば、反射防止コーティング80)が、より低いシート抵抗値の実現のために使用され得る。反射防止層80に関する最小反射率値を維持するために、TCOまたはITOは、1/2波長の厚さの倍数となる必要がある。例えば、反射防止コーティング80の厚さは、全波長、3倍の1/2波長、等となり得る。反射防止コーティング80の厚さが、より高い倍数の1/2波長コーティングに移動すると、反射率は依然として局所最小値ではあるが、1/2波長反射率よりは高い。1.45の屈折率及び1.85のITO屈折率を有する電気光学媒体38では、第2及び第3の表面22B、26Aの反射率低下は、約0.5%である。1/2波長の厚さを2倍した反射防止コーティング80については、反射率は、約1.25%であり、1/2波長の厚さを3倍したコーティングについては、反射率は、約1.7%である。上記のように、反射率は、ITOの屈折率が低下すると下がり、これは、より導電性にすることによって獲得され得る。代替的に、またはITO屈折率との組み合わせにおいて、反射率はまた、電気光学媒体38、もしくは基材(例えば、第1及び/または第2の基材22、26)媒体、もしくは電気光学媒体38及び基材媒体、の屈折率を増加することによって、低下され得る。第2の表面22B及び第3の表面26A上の反射防止コーティング80の、TCOまたはITO実施例の屈折率は、約2.0未満、約1.92未満、または約1.88未満であり得る。電気光学媒体38の屈折率は、約1.2より大きく、約1.4より大きく、または約1.5より大きくなり得る。基材媒体の屈折率は、約1.4より大きく、約1.6より大きく、または約1.8より大きくなり得る。第2及び第3の表面22B、26Aの反射率低下は、約2%未満となり得る。
【0046】
第1から第4の表面22A〜26Bなどの、半透過コーティング70を有していない表面の反射率低下を調整することは、二重写りを最小とするために重要であり、半透過コーティング70が第1または第2の表面22A、22B上のいずれにあるかに依存する。第1及び/または第2の基材22、26(約1.5のガラスまたはプラスチック)の屈折率、ならびに入射媒体(1.0の空気)の屈折率のため、第1及び第4の表面22A、26Bは、約4%の高い反射率を有し、不都合な二重写りを生成する高い尤度(可能性)を有する。第1及び第4の表面22A、26Bと同様に第2及び第3の表面22B、26Aにおいても受容可能な反射率低下は、当該表面と観察者(例えば、運転者)との間に存在する材料とそれらの特性との関数である。受容可能な絶対反射率レベルは、表面と観察者との間に吸光材料が存在する時に、より高くなり得る。そのため、全体の吸光性は、観察者と当該表面との間の部品において変更され、第1、第2、第3、及び第4の表面22A、22B、26A、26Bからの絶対反射率制限値は、当該表面と観察者との間でより少ない光が減衰されるとき、例えばより高いダイナミックレンジが所望される、及び/または第1の表面22Aの低反射率が設計目標であるとき、より低くなり得る。正確な許容可能な反射率閾値は、ヘッドアップディスプレイシステム14の詳細に依存するであろう。第2、第3、及び第4の表面22B、26A、26Bの反射率低下は、約2%未満であり得る。
【0047】
別の実施例において、反射防止コーティング80は、S/H/Lスタックなどの誘電体反射防止コーティングであり得る。Sは第1または第2の基材22、26であり、H/Lは高いまたは低い屈折率を有する交互の材料の複数の層のスタックであり得る。代替的に、反射防止コーティング80は、ナノ構造を獲得した漸変コーティング、テクスチャ付き表面、または他のタイプの漸変コーティングとなり得る。このような実施例において、反射防止コーティング80は、表面から反射される所望の色と共に所望の反射率レベルを提供するように調整されることができる。しかしながら、これら実施例の反射防止コーティング80は、壊れやすい可能性がある。運転者によって認められる光の反射率を下げ、より耐久性のある特徴を有するべく、反射防止コーティングの改善が必要とされる。
【0048】
別の実施例において、反射防止コーティング80は、第1の表面22Aから電気光学アセンブリ10を見るときの多重反射の強度を最小にするために、第4の表面26Bに加えられ得る。第4の表面26Bの反射率は、1%未満となり得る。ヘッドアップディスプレイシステム14は、第4の表面26Bの反射率が約0.5%未満のとき、最適に動作できる。例えば、反射防止コーティング80は、スタックの配列がSHLHLであり、4層の交互の高及び低屈折率材料を有する、誘電体反射防止スタックを含むことができる。Sが基材、Hが高屈折率材料、Lが低屈折率材料を表す。第1の層から第4の表面26Bまでの層の厚さは、約0.0617、0.0796、0.4758、及び0.2279FWOTである。高い屈折率の誘電性材料例は、Nb
2O
5、Ta
2O
5、TiO
2であり、低い屈折率の誘電性材料例は、SiO
2及びMgF
2である。金属含有反射防止コーティング80の例は、Cr、Co、Ir、Mo、Pt、Ta、Zr、W、Re、またはVaなどの金属材料の単層であり、典型的な厚さは0.1〜5nmである。また、第2及び第3の表面22B、26Aからの反射率を最小化することも重要である。これらの表面の反射率は、第1及び第2の基材22、26、当該基材22、26上のコーティングスタック、及び当該コーティングスタックと接触する電気光学媒体38の関数(相互作用)である。当該反射率はまた、コーティングの厚さの関数(相互作用)でもあり得る。溶液相エレクトロクロミック装置の場合、コーティングにより近く一致する屈折率を有する液体を使用して、反射率を下げる。ITOを電気光学アセンブリ10に関する電極として使用し、ITOの屈折率を約1.8と仮定するとき、各コーティング/液体インターフェースの表面に直交する反射率は、上記で提供されたフレネル方程式によって与えられる。液体が約1.2の屈折率を有する場合、各コーティング/液体インターフェースの反射率低下は、約4%となり得る。液体が約1.4の屈折率を有する場合、各コーティング/液体表面の反射率低下は、約1.6%となり得る。いくつかの多重反射の強度は、電気光学アセンブリ10を暗色化することによって下げられ得る。これはまた前方の可視性を下げることになるが、電気光学アセンブリ10を暗色化することで、コントラストを改善し二重写りを縮小するため、何倍もの重要な利点がある。さらに考慮すべきことは、第1の表面22Aのコーティングの透過率である。低い透過率は、前方の可視性を下げるが、第2、第3、及び第4の表面22B、26A、26Bの二重写りも縮小する。
【0049】
他の反射防止用途とは違い、解決されるべき問題は、第4の表面26Bから見られる反射率ではなく、反対方向からの(例えば、第1の表面22Aからの)反射率であることが重要である。すなわち、第4の表面26Bから見られる反射率は、実際何らの反射率制限も有しない。この独特の必要条件一式は、薄い金属層に基づいて設計された新規の反射防止コーティングにより解決され得る。したがって、別の実施例において、反射防止コーティング80は、1つ以上の薄い金属コーティング層を含むことができる。薄い金属コーティングの反射率は、見られる方向によって変化することが分かっている。例えば、Crコーティングがガラス基材(または類似の屈折率を有する材料)に適用されるとき、コーティング側からの反射率は、定常的に増加するであろう。これは、金属コーティングに関して通常予期される作用である。逆に、ガラスを通して見るとき、反射率は別の作用を有するだろう。金属コーティング層が厚さを増加させるにつれて、反射率は、まず下がり、金属層に関して予期されるように反射率が定常的に増加し始めるまで、下限値まで行く。この効果は、非常に薄いコーティング層に関して起こる。可視範囲の波長に応じる反射率の例が、被膜されていない状態のガラス/空気インターフェース、四層HL反射防止コーティングを有するガラス/空気インターフェース、及び反射防止コーティング80の薄いCr実施例を有するガラス/空気インターフェースに関して、
図11において示されている。ここで、観察者の視点から見るとき、反射防止コーティング80の薄い金属層の実施例が、ガラスから劇的な量の反射率を下げることが、認められる。金属ARコーティングの実施例は、Cr、Co、Ir、Mo、Pt、Ta、Zr、W、Re、またはVa、またはこれらの要素を含有する合金などの金属材料の、単層、または多層となるであろう。金属層の最終的な厚さは約0.1nm〜約5nmとなるべきである。
【0050】
基材(例えば、第1及び/または第2の基材22、26)を通して見るとき、重み付けした目の反射率(Yr)と、数種の金属(例えば、反射防止コーティング80)についての厚さとの関係が、
図10に示される。この実施例において、反射率は、被膜されていない表面及び反射防止が被膜された表面を含む基材に関して表される。そのため、報告された反射率値は、相対的に高く、被膜された表面からの正味反射率は、報告された値から約4.2%引くことによって獲得され得る。
図10から、金属は0.5〜4.0nmの厚さで、反射率が最小となる特性を示すことが認められる。表2は、被膜されていないガラス側から見る、反射防止コーティング80の金属例を有するガラス基材の、通常入射光の重み付けした目の総合反射率を、例証的に示す。被膜されてないガラス基材からの反射率もまた、参照のために表2で示される。
【0051】
表3の実施例は、異なる半透過コーティング70、TCOコーティング、及び反射防止コーティング80を有する様々な電気光学要素の、重み付けした目の反射率Yr、透過率Yt、及び吸光性を実証し、反射率は、通常通り第1の表面22Aに向かって測定される。実施例は、約25%の同様の反射率を保持する一方で実現可能な広い範囲の透過率値、ならびに3より低い絶対反射a
*及びb
*値及び3未満のC
*値を有する中間反射色、を示す。
【0053】
表2に示されるように、反射防止コーティング80の薄い金属例のうちのいくつかは、それらの最適な反射防止状態のために、ゼロより大きな反射率値を有することができる。このことは、広い波長範囲にわたり反射防止をすることが困難であり得るため、反射防止コーティング80にとって珍しいことではない。上記の薄い金属の反射防止コーティング80は、基材(例えば、第1の基材22)と金属コーティング層との間に位置付けられた、薄い誘電体層の追加によって、さらに改善され得る。下記の表4は、薄い膜モデルを使用する、反射防止コーティング80のクロム金属コーティングの実施例に関して実現可能な値を示す。反射率は、実質的に誘電体層の追加に伴い下げられる。当該誘電体層の所望される厚さ及び屈折率は、使用される金属及び用途の必要条件に伴い変化するであろう。誘電体層の屈折率は、約2.4未満または約2.0未満であり得る。誘電体層の厚さは、約50nm未満または約35nm未満であり得る。
【0055】
反射防止コーティング80の金属スタックまたは誘電体金属スタックの実施例の反射率は、金属層の屈折率の修正によって、さらに下げられ得る。これは、金属に、窒素、酸素、その両方または他の要素などの、少量のドーパントまたは添加物を追加することによって、達成され得る。例えば、クロム層が、5%の酸素及び5%の窒素をスパッタされると、反射率は、それぞれ、4.24%及び4.25%となった。他のレベルのガスも、金属の光学特性を変更するために、スパッタ雰囲気中で使用され得る。ドーパントガス源のパーセンテージは、必要に応じて、反射率を最適化するために、実験的に変更され得る。上記で記載された屈折率の関係は、所望された反射防止特性のための材料の最適化を案内するために使用され得る。
【0056】
第1及び第4の表面22A、26B上で露出されたコーティング(例えば、半透過コーティング70及び反射防止コーティング80)は、自動車内装でよくある、環境汚染物質、または汚れの堆積を受け得る。コーティングは、そのため、最適な像を可能にするための定期的なクリーニングを受けるであろう。コーティングに耐久性がない場合、それらは、洗浄溶材または方法によって傷を付けられ、または損傷され得る。そのため、これらの材料の耐久性を上げる、または耐擦傷性コーティング90が追加されることが、有用となり得る。ある実施例において、半透過コーティング70は、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)材料によって形成され得る。DLC材料は、反射性であり、少々吸光し、及び高い耐久性(例えば、傷が付きにくい)がある。この材料を含む、半透過コーティング70の実施例は、自動車環境において、安定するであろう。
図7は、厚さ及び第4の表面26B上の反射防止コーティングに応じる、第1の表面22A上の単層DLCに関する反射率及び透過率の関係を示す。さらに、DLC材料は、耐擦傷性コーティング90において利用され得る。例えば、さらなる耐久性が、上記に記載された薄い金属か他のタイプの反射防止コーティング80に所望される場合、頂部のDLC層が、耐擦傷性コーティング90として、スタックに加えられ得る。DLCは典型的に、比較的高い屈折率を有するため、他の層が、反射率と耐久性との間で所望されたバランスを実現するために、最適化または調節を必要とされ得る。
【0057】
ヘッドアップディスプレイシステム14に関する電気光学アセンブリ10の可変透過率の機能のうちの1つは、車両18外部の環境を見るために、異なる透過率レベルでアセンブリ10を通して見ることが可能なことである。1つの実施例において、透明及び/または暗色化した状態における電気光学アセンブリ10を通り抜ける光の色が、アセンブリ10を通り抜けない光と一致することが重要となり得る。言い換えると、透過された光の演色評価数は、本明細書で述べられた反射したCRIと同様に、比較的高くなるべきである。透過された光の演色評価数は、約75より大きく、より望ましくは約85より大きく、さらにより望ましくは90より大きく、及び最も望ましくは約95より大きくなるべきである。これらの値は、電気光学アセンブリ10の高い透過率状態、低い透過率状態、及び/または中間の透過率状態に関連し得る。材料内に存在する何れかの吸光性を伴うコーティング(例えば、半透過コーティング70、反射防止コーティング80、及び/または耐擦傷性コーティング90)の反射及び透過色は、最終的なCRI値において役割を果たすであろう。同様に、透明または暗色化した状態の電気光学媒体38の吸光性は、CRI計算の要因となるであろう。いくつかの実施形態において、コーティング及び電気光学媒体38の特徴は、正味色が適切なCRIを有するように、調整または調節され得る。例えば、1つ以上のコーティングが青色の吸光性を有する場合、電気光学媒体38は、電気光学アセンブリ10を通る正味透過率が与えられた用途のCRI必要条件に見合うように、黄色の吸光部品を含むことができる。
【0058】
記述された発明および他の構成要素の構築は、いなかる特定の材料にも限定されないことが、当業者によって理解されるだろう。本明細書に開示された発明の他の例示的な実施形態は、本明細書に別段の記載がある場合を除き、広範な材料から形成され得る。
【0059】
本開示用に、用語「coupled(結合された)」(couple,coupling,coupledなどその形式のすべてにおいて)は、直接的であれ間接的であれ、互いに2つの構成要素(電気的または機械的)が接合することを概して意味する。このような接合は、本質的に静止状態かまたは本質的に可動状態であってもよい。このような接合は、2つの構成要素(電気的または機械的)、ならびに、互いとまたは2つの構成要素と1つの単体として一体成形される付加的中間部材で、達成されてもよい。このような接合は、本質的に永続的であってよいか、または、別段の記載がない限り、本質的に取外し可能つまり遊離可能であってもよい。
【0060】
例示的な実施形態において示されるような本発明の要素の構築および配置は、単に説明的であることに注意することも重要である。本発明の少数の実施形態だけが、本開示において詳細に記述されているが、本開示を検討する当業者は、列挙された主題の新規の教示および利点から逸脱することなく、多くの修正が可能(例えば、さまざまな要素のサイズ、寸法、構造、形および比率、パラメータ値、取り付け方法、材料の使用、色、向きなど)であることを容易に認識するだろう。例えば、一体成形として示される要素は、複数の部品が一体成形されてもよいように示される複数の部品または要素から構成されてもよく、インタフェースの操作が逆にまたは他の態様に変化されてもよく、システムの構造および/または部材またはコネクタまたは他の要素の長さまたは幅が変化されてもよく、要素間に提供された調整位置の性質または個数が変化されてもよい。システムの要素および/またはアセンブリは、任意の広範な色、質感、および組合せにおいて、十分な強度または耐久性を提供する、任意の広範な材料から構成されてもよい。その結果、すべてのこのような修正は、本発明の範囲内に含まれるように意図される。他の代用、修正、変化、および省略は、本発明の精神から逸脱することなく、所望の他の例示的な実施形態のデザイン、操作条件および配置において、なされ得る。
【0061】
いずれの説明されたプロセスまたは説明されたプロセス内のステップも、その他の開示されたプロセスまたはステップと組み合わされ、本デバイスの範囲内で構造を形成し得ることが理解されるであろう。本明細書に開示された例示的な構造およびプロセスは、説明のためのものであり、制限として解釈してはならない。
【0062】
変化及び修正が、本開示の概要から逸脱することなく、前述の構造体及び方法において作られることができることが理解され、さらにこのような概要は、その文言によって請求項に別段の記載がない限り、以下の請求項によって含められるよう意図されていることが理解される。