(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6499338
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】連結ピン受け具
(51)【国際特許分類】
B66C 23/70 20060101AFI20190401BHJP
B66C 23/26 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
B66C23/70 Z
B66C23/26 C
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-28261(P2018-28261)
(22)【出願日】2018年2月20日
【審査請求日】2018年12月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】301072306
【氏名又は名称】株式会社遠藤工業
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 誠
【審査官】
今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】
実開平05−049271(JP,U)
【文献】
実開昭59−080390(JP,U)
【文献】
実開平6−018380(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00 − 23/94
B25B 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部材に設けられた連結用貫通穴に挿入されて各部材を連結した連結ピンを抜く際に、使用される連結ピン受け具であって、
収納部と取付部とを有し、
前記収納部は、前記連結ピンを収納可能に設けられた収納空間と、前記収納空間に連通し、前記連結ピンを通過可能に設けられた開口と、前記収納空間の前記開口とは反対側に設けられたストッパ壁と、前記開口の縁部から前記ストッパ壁まで伸びて、前記収納空間を全周囲うよう設けられた周壁とを有し、
前記取付部は、各部材を連結した前記連結ピンに前記開口を向けた状態で、前記収納部を各部材に取付可能に設けられていることを
特徴とする連結ピン受け具。
【請求項2】
前記連結ピンは、各連結用貫通穴から抜くとき、各連結用貫通穴の一方の側に位置する一方の端部から、各連結用貫通穴の他方の側に位置する他方の端部に向かって抜くよう構成されており、
前記開口は、前記収納空間に前記連結ピンを収納する際に、前記他方の端部から前記連結ピンを通過可能に設けられ、
前記取付部は、各連結用貫通穴の他方の側で、各部材を連結した前記連結ピンの前記他方の端部を前記開口の縁部で囲うと共に、前記ストッパ壁が前記一方の端部とは反対側に配置されるよう、前記収納部を各部材に取付可能であることを
特徴とする請求項1記載の連結ピン受け具。
【請求項3】
各部材は、複数のブーム材を着脱してブームの長さを変更可能なクレーンの各ブーム材であり、
前記連結ピンは、各ブーム材を連結可能であることを
特徴とする請求項1または2記載の連結ピン受け具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結ピン受け具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のブーム材を着脱してブームの長さを変更可能なクレーンでは、各ブーム材の端部に設けられた連結用貫通穴の位置を合わせ、その各連結用貫通穴に連結ピンを挿入することにより、各ブーム材を連結するようになっている。また、各連結用貫通穴に挿入された連結ピンを抜くことにより、各ブーム材を分解するようになっている(例えば、特許文献1または2参照)。
【0003】
連結された各ブーム材の連結ピンを抜く際、クレーンの取扱説明書では、シノなどにより連結ピンをたたき抜くよう記載されている。しかし、実際の現場では、クレーンの足場やブームの接地位置が水平でないことが多く、ブーム材にねじれが生じて連結ピンに負荷がかかるため、シノによる打撃では容易に抜くことができない場合が多い。そこで、ハンマーや大型ハンマー、掛矢などで強くたたくことにより、連結ピンを抜くことが行われてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−193852号公報
【特許文献2】特開2004−18251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ハンマーや大型ハンマー、掛矢などで、各連結用貫通穴の一方の側に突出した連結ピンの端部を強くたたくと、各連結用貫通穴から抜けた連結ピンが、各連結用貫通穴の他方の側に勢いよく飛び出すため、人や物に当たって非常に危険であるという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、連結ピンを抜く際の連結ピンの飛び出しを防ぐことができ、安全性を確保することができる連結ピン受け具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る連結ピン受け具は、複数の部材に設けられた連結用貫通穴に挿入され
て各部材を連結した連結ピンを抜く際に
、使用される連結ピン受け具であって、収納部と取付部とを有し、前記収納部は、前記連結ピンを収納可能に設けられた収納空間と、前記収納空間に連通し、前記連結ピンを通過可能に設けられた開口と、前記収納空間の前記開口とは反対側に設けられたストッパ壁と
、前記開口の縁部から前記ストッパ壁まで伸びて、前記収納空間を全周囲うよう設けられた周壁とを有し、前記取付部は、各部材を連結した前記連結ピンに前記開口を向けた状態で、前記収納部を各部材に取付可能に設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る連結ピン受け具は、複数の部材を連結した連結ピンを抜く際に、以下のようにして使用される。すなわち、まず、取付部により、各部材を連結した連結ピンに開口を向けた状態で、収納部を各部材に取り付ける。次に、各部材の収納部を取り付けた側とは反対側に突出した連結ピンの一方の端部を、他方の端部側(収納部側)に向かって、ハンマーや大型ハンマー、掛矢などでたたく。これにより、連結ピンが各連結用貫通穴から抜け、収納部側に向かって飛び出して、収納部の開口から収納空間に入り、収納空間の開口とは反対側に設けられたストッパ壁に当たって止まる。その後、収納部を各部材から取り外すことにより、各連結用貫通穴から抜けた連結ピンを、収納空間の内部に収納した状態で回収することができる。このように、本発明に係る連結ピン受け具は、連結ピンを抜く際の連結ピンの飛び出しを防ぐことができ、安全性を確保することができる。
【0009】
本発明に係る連結ピン受け具で、前記連結ピンは、各連結用貫通穴から抜くとき、各連結用貫通穴の一方の側に位置する一方の端部から、各連結用貫通穴の他方の側に位置する他方の端部に向かって抜くよう構成されており、前記開口は、前記収納空間に前記連結ピンを収納する際に、前記他方の端部から前記連結ピンを通過可能に設けられ、前記取付部は、各連結用貫通穴の他方の側で、各部材を連結した前記連結ピンの前記他方の端部を前記開口の縁部で囲うと共に、前記ストッパ壁が前記一方の端部とは反対側に配置されるよう、前記収納部を各部材に取付可能であることが好ましい。この場合、取付部で収納部を各部材に取り付ける際、各部材を連結した連結ピンの他方の端部を開口の縁部で囲うことにより、連結ピンを抜くときに確実に収納空間に収納することができ、安全性をさらに高めることができる。
【0010】
本発明に係る連結ピン受け具
は、周壁により、収納空間に飛び込んだ連結ピンが、収納空間の側方から外部に飛び出すのを防ぐことができる。周壁は、連結ピンが収納空間の側方に抜けるのを防止可能であればよく、収納空間の内部と外部とに連通した穴やスリット等を有していてもよい。
【0011】
本発明に係る連結ピン受け具で、各部材は、複数のブーム材を着脱してブームの長さを変更可能なクレーンの各ブーム材であり、前記連結ピンは、各ブーム材を連結可能であってもよい。この場合、クレーンの各ブーム材を連結する連結ピンを抜く際に使用することができる。また、本発明に係る連結ピン受け具は、クレーンの各ブーム材を連結する連結ピンに限らず、いかなる連結ピンに対して使用されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、連結ピンを抜く際の連結ピンの飛び出しを防ぐことができ、安全性を確保することができる連結ピン受け具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態の連結ピン受け具を示す(a)斜視図、(b)側面図である。
【
図2】(a)クレーンの複数のブーム材を連結ピンで連結した状態を示す底面図、(b)本発明の実施の形態の連結ピン受け具の、(a)の連結ピンを抜く際の使用状態を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1および
図2は、本発明の実施の形態の連結ピン受け具を示している。
図1に示すように、連結ピン受け具10は、収納部11と取付部12と把持部13とを有している。
【0015】
収納部11は、鋼管を利用して形成されている。収納部11は、一端に開口21を有し、他端がストッパ壁22で塞がれ、側方が周壁23で囲まれた円筒形状を成しており、内側に収納空間24を有している。開口21は、縁部が円形状を成しており、収納空間24に連通している。ストッパ壁22は、収納空間24の開口21とは反対側に設けられている。周壁23は、開口21の縁部からストッパ壁22まで伸びて、収納空間24を囲うよう設けられている。また、収納部11は、開口21の縁部に沿って中心角が180℃以下の範囲で、開口21の縁部からストッパ壁22に向かって所定の奥行きで形成された切欠部25を有している。
【0016】
取付部12は、矩形状の鋼板の両端部26a,26bを、中央部27に対して同じ側に垂直に折り曲げて形成されている。取付部12は、一方の端部26aの外側面が、収納部11の開口21の縁部の端面に固定されている。取付部12は、一方の端部26aの開口21の位置に、収納空間24に連通し、開口21と同じ大きさの貫通孔28aを有している。また、取付部12は、一方の端部26aに、貫通孔28aから端縁まで、貫通孔の直径よりやや狭い幅で切り取って形成された間隙部29aを有している。間隙部29aは、切欠部25の幅と同じ幅を有している。取付部12は、他方の端部26bの、一方の端部26aの貫通孔28aと間隙部29aとに対向する位置に、それらと同じ大きさの貫通孔28bと間隙部29bとを有している。
【0017】
把持部13は、細長い丸鋼をコの字形に折り曲げて形成されている。把持部13は、一端が取付部12の中央部27の外側面に固定され、他端が収納部11の周壁23の外側面のストッパ壁22寄りの位置に固定されている。把持部13は、収納空間24に対して、間隙部29a,29bとは反対側に設けられている。
【0018】
図2(a)に示すように、連結ピン受け具10は、複数の部材1a、1bに設けられた連結用貫通穴2a,2bに挿入されて、各部材1a、1bを連結した連結ピン3を抜く際に使用されるよう構成されている。連結ピン3は、各連結用貫通穴2a,2bから抜くとき、各連結用貫通穴2a,2bの一方の側に位置する一方の端部3aから、各連結用貫通穴2a,2bの他方の側に位置する他方の端部3bに向かって抜くよう構成されている。なお、
図2(a)に示す一例では、各部材1a、1bは、複数のブーム材を着脱してブームの長さを変更可能なクレーンの各ブーム材であり、連結ピン3は、各ブーム材を連結するものである。また、連結ピン3は、他方の端部3bにフランジが設けられているが、両端部3a,3bがテーパー状に加工されたものであってもよい。連結ピン3は、各部材1a、1bを連結後、連結用貫通穴2a,2bから抜けないように、例えば、一方の端部3aまたは両端部3a,3bにスプリングピンを取り付けて固定される。
【0019】
図1に示すように、収納部11の収納空間24は、連結ピン3を収納可能になっている。開口21は、収納空間24に連結ピン3を収納する際に、他方の端部3bから連結ピン3を通過可能になっている。
図2(b)に示すように、取付部12は、一方の端部26aを連結ピン3の他方の端部3bの側にし、他方の端部26bを連結ピン3の一方の端部3aの側にして、各端部26a,26bの間に、連結ピン3で連結された各部材1a、1bの連結位置を挿入可能になっている。また、取付部12は、各連結用貫通穴2a,2bの他方の側、すなわち連結ピン3の他方の端部3bの側に、各部材1a、1bを連結した連結ピン3に開口21を向けた状態で、連結ピン3の他方の端部3bを開口21の縁部で囲うと共に、ストッパ壁22が一方の端部3aとは反対側に配置されるよう、収納部11を各部材1a、1bに取付可能になっている。
【0020】
連結ピン受け具10は、各部材1a、1bに取り付ける際、取付部12の一方の端部26aの側で、間隙部29aおよび切欠部25を通して、貫通孔28aおよび開口21に、連結ピン3の他方の端部3bを挿入可能になっており、取付部12の他方の端部26bの側では、間隙部29bを通して貫通孔28bに、連結ピン3の一方の端部3aを挿入可能になっている。
【0021】
連結ピン受け具10は、複数の部材1a、1bを連結した連結ピン3を抜く際に、以下のようにして使用される。すなわち、
図2(b)に示すように、まず、取付部12により、各部材1a、1bを連結した連結ピン3に開口21を向けた状態で、収納部11を各部材1a、1bに取り付ける。次に、各部材1a、1bの収納部11を取り付けた側とは反対側に突出した連結ピン3の一方の端部3aを、他方の端部3b側(収納部11の側)に向かって、ハンマーや大型ハンマー、掛矢などでたたく(
図2(b)中の実線の矢印参照)。
【0022】
これにより、連結ピン3が各連結用貫通穴2a,2bから抜け、収納部11の側に向かって飛び出して、収納部11の開口21から収納空間24に入り(
図2(b)中の破線の矢印参照)、収納空間24の開口21とは反対側に設けられたストッパ壁22に当たって止まる。また、このとき、周壁23により、収納空間24に飛び込んだ連結ピン3が、収納空間24の側方から外部に飛び出すのを防ぐことができる。その後、収納部11を各部材1a、1bから取り外すことにより、各連結用貫通穴2a,2bから抜けた連結ピン3を、収納空間24の内部に収納した状態で回収することができる。このように、連結ピン受け具10は、連結ピン3を抜く際の連結ピン3の飛び出しを防ぐことができ、安全性を確保することができる。
【0023】
また、連結ピン受け具10は、取付部12で収納部11を各部材1a、1bに取り付ける際、各部材1a、1bを連結した連結ピン3の他方の端部3bを開口21の縁部で囲うことにより、連結ピン3を抜くときに確実に収納空間24に収納することができ、安全性をさらに高めることができる。また、連結ピン受け具10は、把持部13により、持ち運びや各部材1a、1bへの設置、各部材1a、1bからの取り外しを容易に行うことができる。
【0024】
連結ピン受け具10は、
図2(b)に示すクレーンの各ブーム材を連結する連結ピン3に限らず、いかなる連結ピンに対しても使用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1a,1b 部材
2a,2b 連結用貫通穴
3 連結ピン
3a 一方の端部
3b 他方の端部
10 連結ピン受け具
11 収納部
21 開口
22 ストッパ壁
23 周壁
24 収納空間
25 切欠部
12 取付部
26a 一方の端部
26b 他方の端部
27 中央部
28a,28b 貫通孔
29a,29b 間隙部
13 把持部
【要約】 (修正有)
【課題】連結ピンを抜く際の連結ピンの飛び出しを防ぐことができ、安全性を確保することができる連結ピン受け具を提供する。
【解決手段】収納部11が、複数の部材を連結する連結ピンを収納可能に設けられた収納空間24と、収納空間24に連通し、連結ピンを通過可能に設けられた開口21と、収納空間24の開口21とは反対側に設けられたストッパ壁22とを有している。取付部12が、複数の部材を連結した連結ピンに開口21を向けた状態で、収納部11を各部材に取付可能に設けられている。
【選択図】
図1