(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態に係る基板処理装置について図面を参照しながら説明する。以下の説明において、基板とは、半導体ウェハ、液晶表示装置用ガラス基板、PDP(プラズマディスプレイパネル)用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等をいう。
【0012】
本実施の形態に係る基板処理装置は、基板を一枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置である。その基板処理装置においては、酸化ケイ素(SiO
2)からなるシリコン酸化膜および窒化ケイ素(Si
3N
4)からなるシリコン窒化膜が形成された基板に、処理液として高温のリン酸水溶液(H
3PO
4+H
2O)が供給され、シリコン窒化膜が選択的にエッチングされる。
【0013】
シリコンは、例えばリン酸水溶液によるシリコン窒化膜のエッチングが行われることにより、またはリン酸水溶液にシリコン微粒子を含む濃縮液が混合されることにより、液中に存在している。
【0014】
(1)基板処理装置の構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る基板処理装置の構成を示す模式図である。
図1に示すように、基板処理装置100は、主として処理部1、第1のタンク5、第2のタンク6、第3のタンク7、新液供給装置8および制御部9を含む。また、処理部1は、スピンチャック2、処理液ノズル3、加熱装置4およびカップCUを含む。処理部1では複数の基板Wが一枚ずつ順番に基板処理される。
【0015】
スピンチャック2は、スピンモータ2a、スピンベース2bおよび複数のチャックピン2cを有する。スピンモータ2aは、回転軸が鉛直方向と平行になるように設けられる。スピンベース2bは、円板形状を有し、スピンモータ2aの回転軸の上端部に水平姿勢で取り付けられる。複数のチャックピン2cは、スピンベース2bの上面上に設けられ、基板Wの周縁部を保持する。複数のチャックピン2cが基板Wを保持する状態でスピンモータ2aが動作する。それにより、基板Wが鉛直軸の周りで回転する。
【0016】
上記のように、本例では、基板Wの周縁部を保持する機械式のスピンチャック2が用いられる。これに限らず、機械式のスピンチャックに代えて、基板Wの下面を吸着保持する吸着式のスピンチャックが用いられてもよい。
【0017】
処理液ノズル3および加熱装置4は、スピンチャック2により保持される基板Wの上方の位置と基板Wの側方の待機位置との間で移動可能に設けられる。処理液ノズル3は、第1のタンク5から供給されるリン酸水溶液(処理液)をスピンチャック2により回転される基板Wに供給する。
【0018】
処理液ノズル3から基板Wにリン酸水溶液が供給される際には、加熱装置4が基板Wの上面に対向する位置に配置される。加熱装置4は、赤外線を発生するランプヒータを含み、輻射熱により基板Wおよびその基板W上に供給されるリン酸水溶液を加熱し、基板W上でのリン酸水溶液の温度降下を抑制する。これにより、基板W上のリン酸水溶液の温度は、リン酸濃度における沸点よりも高い温度(例えば、約170℃)に維持され、リン酸水溶液によるシリコン窒化膜のエッチングレートが増加する。
【0019】
一方、リン酸水溶液におけるシリコン濃度が適切な範囲内にある場合には、リン酸水溶液によるシリコン酸化膜のエッチングレートは、シリコン窒化膜のエッチングレートよりも十分に低く保たれる。その結果、上記のように、基板W上のシリコン窒化膜が選択的にエッチングされる。
【0020】
スピンチャック2を取り囲むようにカップCUが設けられている。カップCUは、スピンチャック2への基板Wの搬入時およびスピンチャック2からの基板Wの搬出時に下降し、基板Wへのリン酸水溶液の供給時に上昇する。
【0021】
回転する基板Wへのリン酸水溶液の供給時に、カップCUの上端部は基板Wよりも上方に位置する。それにより、基板Wから振り切られるリン酸水溶液がカップCUにより受け止められる。カップCUにより受け止められるリン酸水溶液は、後述するように第2のタンク6または第3のタンク7に送られる。
【0022】
第1のタンク5は、循環槽5aおよび貯留槽5bを含む。循環槽5aおよび貯留槽5bは隣接するように配置され、一方の槽(例えば循環槽5a)で溢れる液体が他方の槽(例えば貯留槽5b)に流れ込むように構成される。循環槽5aには、リン酸濃度計S1が設けられる。リン酸濃度計S1はリン酸水溶液のリン酸濃度を出力する。貯留槽5bには、リン酸水溶液の液面高さを出力する液面センサS3が設けられる。貯留槽5bには、DIW(脱イオン水:Deionized Water)供給系91、および窒素(N
2)ガス供給系92が接続されている。
【0023】
第1のタンク5の貯留槽5bと処理部1の処理液ノズル3とをつなぐように第1の供給配管10が設けられる。第1の供給配管10には、貯留槽5bから処理液ノズル3に向かって、ポンプ15、ヒータ14、フィルタ13、バルブ12およびヒータ11がこの順で介挿されている。
【0024】
フィルタ13とバルブ12との間の第1の供給配管10の部分と循環槽5aとをつなぐように循環配管16が設けられる。循環配管16には、バルブ17が介挿されている。
【0025】
第2および第3のタンク6,7の各々は、第1のタンク5と同様に、循環槽6a,7aおよび貯留槽6b,7bを有する。循環槽6a,7aの各々には、リン酸濃度計S1が設けられる。貯留槽6b,7bの各々には、液面センサS3が設けられるとともにDIW供給系91および窒素ガス供給系92が接続されている。
【0026】
第1のタンク5の貯留槽5bと、第2および第3のタンク6、7の貯留槽6a、7bとをつなぐように処理液補充系20が設けられる。処理液補充系20は第2および第3のタンク6、7に貯留された処理液を第1のタンク5に交互に補充するための供給系であり、処理液補充系20は、第2のタンク6および第3のタンク7との間で切り替えて使用される。処理液補充系20は、1本の主管20aと2本の枝管20b,20cとを有する。
【0027】
主管20aは第1タンク5の貯留槽5bに接続され、節点20dにおいて枝管20b、20cに接続される。一方の枝管20bは第2のタンク6の貯留槽6bに、他方の枝管20cは第3のタンク7の貯留槽7bにそれぞれ接続される。
【0028】
主管20aには、第1のタンク5側から節点20dに向かって、バルブ21、シリコン濃度計S21、フィルタ22、ヒータ23およびポンプ24がこの順番で介挿されている。シリコン濃度計S21は、主管20aを流通するリン酸水溶液をサンプリングして該リン酸水溶液のシリコン濃度を断続的に検出する。
【0029】
一方の枝管20bにはバルブ25が介装されている。他方の枝管20cにはバルブ26が介装されている。フィルタ22とバルブ21との間の主管20aの部分と循環槽6aとをつなぐように循環配管27が設けられている。循環配管27には、バルブ28が設けられている。
【0030】
循環配管27からは循環配管29が分岐する。循環配管29は循環槽7aに連結され、バルブ29aが介挿されている。
【0031】
処理液循環系30は、第2のタンク6および第3のタンク7の貯留槽6b、7bをそれぞれの循環槽6a、7aに還流させる機能を有し、第2のタンク6と第3のタンク7の間で切り替えて使用される。
【0032】
処理液循環系30は、主管30aと、2本の枝管30b、30cとを有する。主管30aは、2本の枝管30b、30cと節点30dにおいて接続される。一方の枝管30bは第2のタンク6の貯留槽6bと節点30dとの間に配設され、他方の枝管30cは第3のタンク7の貯留槽7bと節点30dとの間に配設される。
【0033】
一方の枝管30bにはバルブ31が介挿され、他方の枝管30cにはバルブ32が介挿される。
【0034】
主管30aには、節点30dから第2および第3のタンク6および7に向かって、ポンプ34およびヒータ33がこの順番に介挿されている。
【0035】
主管30aは、節点30eで第2のタンク6の循環槽6aに向けた循環配管35に接続され、第3のタンク7の循環槽7aに向けた循環配管36に接続されている。
【0036】
一方の循環配管35にはバルブ37が介挿されており、他方の循環配管36にはバルブ38が介挿されている。
【0037】
処理部1のカップCUと第2および第3のタンク6,7の貯留槽6b,7bとをつなぐように回収配管50が設けられている。回収配管50は、1本の主管50aおよび2本の枝管50b,50cを有する。枝管50b,50cは主管50aに接続される。回収配管50の主管50aがカップCUに接続され、2本の枝管50b,50cがそれぞれ第2および第3のタンク6,7の貯留槽6b,7bに接続される。枝管50bにバルブ51が介挿され、枝管50cにバルブ52が介挿されている。
【0038】
新液供給装置8は、混合タンク8aおよびその混合タンク8a内の液体を外部に供給する供給装置を有する。新液供給装置8には、リン酸水溶液供給系93およびシリコン(Si)濃縮液供給系94が接続されている。また、混合タンク8aには、シリコン濃度計S2が設けられている。
【0039】
新液供給装置8の混合タンク8a内では、リン酸水溶液供給系93およびシリコン濃縮液供給系94から供給されるリン酸水溶液およびシリコン濃縮液が予め定められた比率で混合される。それにより、予め定められたシリコン濃度(以下、基準シリコン濃度と呼ぶ。)を有するリン酸水溶液が新たな処理液として生成され、所定の温度に保持される。
【0040】
新液供給装置8と第2および第3のタンク6,7の貯留槽6b,7bとをつなぐように第2の供給配管40が設けられる。第2の供給配管40は、1本の主管40aおよび2本の枝管40b,40cを有する。枝管40b,40cは主管40aに接続される。第2の供給配管40の主管40aが新液供給装置8に接続され、2本の枝管40b,40cがそれぞれ第2および第3のタンク6,7の貯留槽6b,7bに接続される。枝管40bにバルブ41が介挿され、枝管40cにバルブ42が介挿されている。新液供給装置8で混合された新たな処理液は新液供給装置8から第1タンク5に供給されてもよい。
【0041】
制御部9は、CPU(中央演算処理装置)およびメモリ、またはマイクロコンピュータ等からなる。制御部9のメモリにはシステムプログラムが記憶される。制御部9は、基板処理装置100の各構成要素の動作を制御する。
【0042】
例えば、制御部9は、各液面センサS3から出力される液面高さに基づいて各バルブ12,17,21,26,31,36,41,42,51,52の開閉状態を切り替える。また、制御部9は、各リン酸濃度計S1から出力されるリン酸濃度に基づいてDIW供給系91および窒素ガス供給系92を制御する。
【0043】
(2)基板処理装置の動作
処理部1により複数の基板Wが処理される際の基板処理装置100の一連の動作を説明する。
図2は、
図1の第1、第2および第3のタンク5,6,7にそれぞれ関連する動作内容を示すタイムチャートである。
図3〜
図8は、各時点における基板処理装置100の動作を示す模式図である。
【0044】
第1、第2および第3のタンク5,6,7においては、貯留槽5b,6b,7bに第1基準高さL1および第2基準高さL2が設定されている。第1基準高さL1は貯留槽5b,6b,7bの底部近傍に設定され、第2基準高さL2は第1基準高さL1よりも高く貯留槽5b,6b,7bの上端部近傍に設定される。
【0045】
第1基準高さL1は、例えば各貯留槽5b,6b,7bにより貯留可能な最大容量の1/5程度の液体が各貯留槽5b,6b,7bに貯留される場合の液面高さに設定される。また、第2基準高さL2は、例えば各貯留槽5b,6b,7bの最大容量の4/5程度の液体が各貯留槽5b,6b,7bに貯留される場合の液面高さに設定される。
【0046】
初期状態においては、予め定められたリン酸濃度(以下、基準リン酸濃度と呼ぶ。)を有するとともに基準シリコン濃度を有するリン酸水溶液が、第1、第2、および第3のタンク5,6、7に貯留されている。第1、第2および第3のタンク5,6、7においては、リン酸水溶液の液面高さは第2基準高さL2に維持されている。なお、
図3に図示する時点では、第3のタンク7にはリン酸水溶液が第1基準高さL1まで貯留されている。
【0047】
さらに初期状態では、ヒータ14、23および33が通電されると共に、バルブ17、25、28、32、および38が開かれている。これにより、第1のタンク5においては、
図3に太い矢印A1で示すように、貯留槽5b内のリン酸水溶液がポンプ15により吸引され、ヒータ14を通してフィルタ13に送られる。ヒータ14は、第1の供給配管10を通るリン酸水溶液を所定温度(例えば150℃)に加熱する。フィルタ13は、リン酸水溶液をろ過することにより不要な析出物等を除去する。
図3に太い矢印A3で示すように、ヒータ14およびフィルタ13を通過したリン酸水溶液は、循環配管16を通して第1のタンク5の循環槽5aに戻される。第1のタンク5内では、循環槽5aから溢れるリン酸水溶液が貯留槽5bに流れ込む。このように、貯留槽5b内のリン酸水溶液が、加熱およびろ過されつつ第1の供給配管10の一部分、循環配管16および循環槽5aを通って貯留槽5b内に戻される。それにより、貯留槽5b内のリン酸水溶液の温度および清浄度がほぼ一定に保たれる。
【0048】
上記のように、貯留槽5bに貯留されたリン酸水溶液の一部を加熱およびろ過しつつ再び貯留槽5bに戻すことにより、貯留槽内のリン酸水溶液の温度および清浄度を一定に保つ動作を循環温調と呼ぶ。
【0049】
同様に、第2のタンク6においても循環温調が行われている。すなわち、
図3に太い矢印A5で示すように、貯留槽5b内のリン酸水溶液がポンプ24によって吸引された後、ヒータ23およびフィルタ22を通過して循環槽5aに循環されている。
【0050】
第3のタンク7においては、
図3に太い矢印A6で示すように、貯留槽6b内のリン酸水溶液はポンプ34によって吸引され、ヒータ33を通過して所定温度に加熱された後、循環槽6aに戻されている。
【0051】
時刻t1においては、処理部1のスピンチャック2に1枚目の基板Wが搬入される。また、スピンチャック2により基板Wが保持され、回転される。制御部9は、
図1のバルブ12を開く。これにより、
図4に太い矢印A2で示すように、ポンプ15によって貯留槽5b内から吸引されたリン酸水溶液がヒータ11、14を通過して基板処理に適した温度(例えば170℃)にまで加熱されつつ処理液ノズル3に送られる。それにより、基準リン酸濃度および基準シリコン濃度を有するリン酸水溶液が、処理液ノズル3から基板Wに供給される。
【0052】
制御部9はさらに
図1のバルブ52を開く。これにより、
図4に太い矢印A4で示すように、処理部1のカップCUにより回収される使用済みのリン酸水溶液が、主管50aおよび枝管50cを通して第3のタンク7の貯留槽7bに送られる。主管50aを通して回収される使用済みのリン酸水溶液の温度は処理液ノズル3から供給されるリン酸水溶液の温度(例えば約170℃)よりもかなり低い温度(例えば120℃)になっている。このように、基板Wから回収され低温になった使用済みのリン酸水溶液を貯留槽7bに送る動作を液回収と呼ぶ。
【0053】
時刻t1においては、
図1の処理液補充系20のバルブ25,28が開かれている。これにより、
図4に太い矢印A5で示すように、第2のタンク6においても第1のタンク5と同様の循環温調が行われている。
【0054】
また、処理液循環系30のバルブ32、38が開かれている。これにより、
図4に太い矢印A6で示すように、第3のタンク7の貯留槽7bに貯留されたリン酸水溶液が処理液循環系30の一部、すなわち枝管30c、主管30a、ポンプ34、ヒータ33および循環配管36を通って循環槽7aに還流する。処理液循環系30のヒータ33は、処理液補充系20に介挿されたヒータ23よりも高出力を有するヒータであり、基板処理に適した温度よりもかなり低温になった使用済みのリン酸水溶液を急速に昇温させる能力を有している。このように、貯留槽7bに貯留されたリン酸水溶液の一部を加熱しつつ循環槽7aに戻すことにより、第3のタンク7内のリン酸水溶液の温度を急速に昇温させる動作を循環加熱と呼ぶ。
【0055】
ここで、第3のタンク7において液回収および循環加熱が行われる際に、貯留槽7bに貯留されるリン酸水溶液のリン酸濃度は基準リン酸濃度とは異なる。そこで、
図1の制御部9は、第3のタンク7のリン酸濃度計S1の出力に基づいて、貯留槽7b内のリン酸濃度が基準リン酸濃度に近づくようにDIW供給系91および窒素ガス供給系92を制御する。
【0056】
例えば、制御部9は、リン酸濃度計S1からの出力が基準リン酸濃度よりも高い場合に、貯留槽7bにDIWが供給されるようにDIW供給系91を制御する。それにより、貯留槽7b内のリン酸濃度が低下し、基準リン酸濃度に調整される。
【0057】
また、制御部9は、リン酸濃度計S1からの出力が基準リン酸濃度よりも低い場合に、窒素ガスが貯留槽7bに供給されるように窒素ガス供給系92を制御する。この場合、貯留槽7b内のリン酸水溶液の蒸発が促進される。それにより、貯留槽7b内のリン酸濃度が上昇し、基準リン酸濃度に調整される。
【0058】
上記のように、貯留槽7b内のリン酸水溶液のリン酸濃度を基準リン酸濃度に調整する動作をリン酸濃度調整と呼ぶ。
【0059】
図2に示すように、時刻t1から時刻t2にかけては第1のタンク5において処理液ノズル3へのリン酸水溶液の供給および循環温調が行われている。第2のタンク6においては循環温調が行われている。第3のタンク7においては、液回収と、循環加熱およびリン酸濃度調整とが行われている。それにより、時刻t1から時刻t2にかけては、
図4に白抜きの矢印で示すように、貯留槽5b内の液面高さは第2基準高さL2から下降し、貯留槽6b内の液面高さは第2基準高さL2で維持され、貯留槽7b内の液面高さは第1基準高さL1から上昇する。また、第3のタンク7内のリン酸水溶液の液温はヒータ33によって急速に昇温する。
【0060】
第1のタンク5から処理液ノズル3へのリン酸水溶液の供給は、処理部1での基板Wの処理が終了されるまでの間継続される。
【0061】
また、第1のタンク5における循環温調は少なくとも基板Wの処理が終了するまでの間継続される。第2のタンク6および第3のタンク7においては、循環温調および循環加熱が少なくとも基板Wの処理が終了されるまでの間交互に実行される。
【0062】
図1の制御部9は、第1のタンク5の貯留槽5b内の液面高さが第2基準高さL2よりも下降したことが液面センサS3によって検出されると、
図1のバルブ21を開く(時刻t2)。
【0063】
これにより第2のタンク6から第1のタンク5へのリン酸水溶液の供給が開始される。
図5に太い矢印A7で示すように、第2のタンク6の貯留槽6bから枝管20bを通ってフィルタ22を通過したリン酸水溶液の一部が、主管20aを通して第1のタンク5の貯留槽5bに送られる。こうして、基準リン酸濃度および基準シリコン濃度を有するリン酸水溶液が、第2のタンク6から第1のタンク5に供給される。これにより、貯留槽5b内の液面高さは第2基準高さL2に向かって上昇し、貯留槽6b内の液面高さは第2基準高さL2から下降する(
図5の白抜き矢印参照)。
【0064】
第1のタンク5の貯留槽5b内の液面高さが第2基準高さL2に達したことが液面センサS3によって検出されると、
図1の制御部9は、
図1のバルブ21を閉止して、第2のタンク6から第1のタンク5へのリン酸水溶液の供給を停止する(時刻t3)。
【0065】
時刻t2から時刻t3にかけて第2のタンク6から第1のタンク5にリン酸水溶液が供給されるが、これと並行して第3のタンク7では液回収とリン酸濃度調整が行われる。これにより、第3のタンク7の貯留槽7b内の液面高さが第1基準高さL1から上昇する。
【0066】
時刻t3に第2のタンク6から第1のタンク5へのリン酸水溶液の供給が停止されると、使用済みのリン酸水溶液の回収先が第3のタンク7から第2のタンク6へと切り替えられる。すなわち、制御部9は、
図1のバルブ52を閉止し、バルブ51を開放する。これにより、処理部1のカップCUが回収した使用済みのリン酸水溶液が第2のタンク6の貯留槽6bに送られる(
図6の太い矢印A8参照)。
【0067】
また、この切り替えに合わせて、第2および第3タンク6、7でのリン酸水溶液の循環経路の切り替えも行われる。すなわち、制御部9は、
図1の処理液循環系30のバルブ32、38を閉止し、バルブ31、37を開放する。これにより第2のタンク6のリン酸水溶液の循環経路が処理液補充系20から処理液循環系30に切り替えられる。また、制御部9は、
図1の処理液補充系20のバルブ25、28を閉止し、バルブ26、29aを開放する。これにより、第3のタンク7のリン酸水溶液の循環経路が処理液循環系30から処理液補充系20に切り替えられる。
【0068】
第2のタンク6のリン酸水溶液の循環経路がヒータ33を経由する処理液循環系30に切り替えられることにより、第2のタンク6に回収されたリン酸水溶液をヒータ33によって急速に昇温できるようになる。
【0069】
ここで、枚葉式の基板処理装置においては、リンス処理等により一部の処理液が廃棄される。そのため、基板Wの処理に用いられる処理液を全て回収することはできない。したがって、貯留槽5b内の液面高さが第2基準高さL2に維持された状態で貯留槽6b内の液面高さが第2基準高さL2から第1基準高さL1まで下降しても、貯留槽7b内の液面高さは第1基準高さL1から第2基準高さL2まで上昇しない。
【0070】
そこで、
図1の制御部9は、貯留槽7b内の液面高さが第2基準高さL2まで上昇するように、
図1のバルブ42および新液供給装置8を制御する。
【0071】
例えば、制御部9は、
図1のバルブ42を開く。それにより、
図6に太い矢印A9で示すように、リン酸水溶液の新液が新液供給装置8から第3のタンク7に供給される。その結果、貯留槽7b内の液面高さが第2基準高さL2まで上昇する。このような新液供給装置8から貯留槽6bまたは貯留槽7bへの新液の供給を新液補充という。
【0072】
第3のタンク7の貯留槽7bにリン酸水溶液の新液が第2基準高さL2まで貯留したことが液面センサS3によって検出されると、制御部9は新液供給装置8から第3のタンク7へのリン酸水溶液の供給を停止して第3のタンク7への新液補充を終了する(時刻t4)。
【0073】
なお、
図2および
図6に示すように、時刻t3から時刻t4にかけて、第1のタンク5から処理部1へのリン酸水溶液の供給が継続するため、貯留槽5b内の貯留槽5b内の液面高さは第2基準高さL2から下降する。また、第2のタンク6では液回収が継続されるため、貯留槽6b内の液面高さは第1基準高さL1から上昇する。
【0074】
時刻t4に達すると、制御部9はバルブ21を開放し、第3のタンク7から第1のタンク5に向けて基準リン酸濃度および基準シリコン濃度を有するリン酸水溶液の供給を開始する。これにより、
図7に示すように、第1のタンク5の貯留槽5b内の液面高さは第2基準高さL2に向かって上昇する。
【0075】
制御部9は、第1のタンク5の液面高さが第2基準高さL2に等しくなったことが検出されると第3のタンク7から第1のタンク5へのリン酸水溶液の供給を停止する(時刻t5)。第2のタンク6では液回収によって貯留槽6b内の液面高さが上昇する。
【0076】
時刻t5に第3のタンク5から第1のタンク5へのリン酸水溶液の供給が停止されると、使用済みのリン酸水溶液の回収先が第2のタンク6から第3のタンク7へと切り替えられる。すなわち、制御部9は、
図1のバルブ51を閉止し、バルブ52を開放する。これにより、処理部1のカップCUが回収した使用済みのリン酸水溶液が第3のタンク7の貯留槽7bに送られる(
図8の太い矢印A4参照)。
【0077】
また、この切り替えに合わせて、第2および第3タンク6、7のリン酸水溶液の循環経路の切り替えも行われる。すなわち、制御部9は、
図1の処理液補充系20のバルブ26、29aを閉止し、バルブ25、28を開放する。これにより第2のタンク6のリン酸水溶液の循環経路が処理液循環系30から処理液補充系20に切り替えられる。
【0078】
また、制御部9は、
図1の第3の処理液循環系30のバルブ31、37を閉止し、バルブ32、38を開放する。これにより、第3のタンク7のリン酸水溶液の循環経路が処理液補充系20から処理液循環系30に切り替えられる。
【0079】
第3のタンク7のリン酸水溶液の循環経路がヒータ33を経由する処理液循環系30に切り替えられることにより、第3のタンク7に回収されたリン酸水溶液をヒータ33によって急速に昇温できるようになる。第3のタンク7では液回収と並行してリン酸濃度調整も行われる。
【0080】
また、時刻t5からは、第2のタンク6への新液補充が開始される。すなわち、制御部9は、
図1のバルブ41を開くとともに新液供給装置8を制御する。これにより、
図8に太い矢印A11で示すように、シリコン濃度が調整されたリン酸水溶液の新液が新液供給装置8から第2のタンク6に供給され、貯留槽6b内のリン酸水溶液のシリコン濃度が基準シリコン濃度で維持される。
【0081】
第2のタンク6の貯留槽6bに基準リン酸濃度および基準シリコン濃度を有するリン酸水溶液が第2基準高さL2まで貯留したことが液面センサS3によって検出されると、制御部9は新液供給装置8から第2のタンク6へのリン酸水溶液の供給を停止して第2のタンク6に対する新液補充を終了する(時刻t6)。
【0082】
なお、
図2および
図8に示すように、時刻t5から時刻t6にかけて、第1のタンク5から処理部1へのリン酸水溶液の供給が継続するため、貯留槽5b内の液面高さは第2基準高さL2から下降する。また、第3のタンク7では液回収が継続されるため、貯留槽7b内の液面高さは第1基準高さL1から上昇する。第3のタンク7では液回収と回収した使用済みリン酸水溶液のヒータ33による急速な昇温が行われる。また、これと並行して、第3のタンク7ではリン酸濃度調整が行われる。
【0083】
図2に示すように、時刻t6からは第2のタンク6から第1のタンク5に向けてリン酸水溶液の供給が行われる。それにより、第2のタンク6の貯留槽6b内の液面高さは第2基準高さL2から下降し、第1のタンク5の貯留槽5b内の液面高さは第2基準高さL2に向けて上昇する。第2タンク6から第1タンク5へのリン酸水溶液の供給は第1のタンク5の液面高さがL2に達するまで行われる(時刻t7)。
【0084】
時刻t7以降では、処理部1での基板Wの処理が停止されるまで、時刻t3から時刻t5までの動作と時刻t5から時刻t7までの動作とが繰り返される。それにより、第1のタンク5においては、基準リン酸濃度および基準シリコン濃度を有するリン酸水溶液が常に保持される。
【0085】
なお、第1のタンク5においては、リン酸水溶液の一部の水分が蒸発する可能性がある。この場合、貯留槽5bに貯留されるリン酸水溶液のリン酸濃度が変化する。そこで、制御部9は、第1のタンク5のリン酸濃度計S1の出力に基づいて、第1のタンク5においてリン酸濃度調整を行ってもよい。
【0086】
さらに、装置の異常等により第1のタンク5にリン酸水溶液が供給されない場合には、貯留槽5b内の液面高さが第1基準高さL1よりも低くなる可能性がある。そこで、制御部9は、第1のタンク5の液面センサS3の出力が第1基準高さL1よりも低くなった場合に異常信号を出力してもよい。
【0087】
(3)効果
本発明の一実施の形態に係る基板処理装置100では処理部1で使用されたリン酸水溶液を回収して再利用している。基板処理装置100は使用済みのリン酸水溶を回収するためのタンクを2個(第2、第3のタンク6、7)有しており、これら2個のタンク6、7を切り替えて使用済みのリン酸水溶液を回収している。前記した通り、使用済みのリン酸水溶液(処理液)は基板処理に適した温度よりもかなり低温になるため回収中のタンクからは第1タンク5に向けてリン酸水溶液(処理液)を補充することができない。しかし、この基板処理装置100では使用済みのリン酸水溶液を回収していない側のタンク6または7から第1のタンク5に向けてリン酸水溶液を補充することができる。したがって、使用済みのリン酸水溶液の回収と並行して第1のタンク5にリン酸水溶液を補充することができる。
【0088】
使用済みのリン酸水溶液は基板処理に適した温度よりもかなり低温になるため、リン酸水溶液を回収している側のタンクのリン酸水溶液は高出力のヒータで加熱する必要がある。このため、リン酸水溶液を回収している側のタンクのリン酸水溶液を加熱するヒータ(処理液循環系30のヒータ33)は高出力を備えている。
【0089】
これに対して、リン酸水溶液を回収していない側のタンクのリン酸水溶液を循環させる系、すなわち、処理液補充系20は、既に高温になったリン酸水溶液を単に保温程度に温調すればよいだけであるので、この経路に介挿されるヒータ23の出力は比較的小さいものでよい。例えば、ヒータ23の出力はヒータ33の出力よりも小出力でよい。
【0090】
仮に、2個のタンク6、7それぞれにヒータ33のような高出力のヒータを装備するとコストアップになるが、この基板処理装置100では、回収中のリン酸水溶液を加熱循環する処理液循環系30を2個のタンク6、7間で切り替えて使用するようにしているため、2個のタンク6、7それぞれにこのような高出力のタンクを装備する必要がない。このため、コストダウンになる。
【0091】
なお、温度低下したリン酸水溶液を昇温させる際には高流量循環させる必要がある。一方で、既に昇温されたリン酸水溶液を循環させる際には比較的低流量循環でよい。したがって、処理液循環系30に介挿されたポンプ34は、処理液補充系20に介挿されたポンプ24よりも高流量ポンプである。