【0016】
2.ポリエチレン製の網状不織布(A)
本発明の農業用被覆シートの表層(表面層または外層)に用いられるポリエチレン製の網状不織布(A)は、熱可塑性樹脂フィルムから形成した一軸配向体を、その配向軸が交差するように経緯積層または織成して得られる網状基材により、形成される。すなわち、スプリットウエブ、スリットウエブおよび一軸配向テープからなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂の一軸配向体を、配向軸が交差するように経緯積層しまたは構成してなる補強効果に優れた不織布または織布が利用される。この熱可塑性樹脂フィルムからなる一軸配向体は、偏平であるため、本発明の農業用被覆シートに利用した場合、補強材(補強体)機能としての薄形化および平面性を図ることができる。
上記スプリットウエブは、単層でもよいが、好ましくは多層インフレーション法、多層Tダイ法等の押出成形により製造した少なくとも2層以上の多層フィルムを、縦方向(長さ方向)または横方向(幅方向)に延伸して、延伸方向に断続的に多数の割れ目を入れた一軸配向された網状のフィルムである。
また、上記スリットウエブは、上記単層あるいは多層フィルムに、縦または横方向に多数のスリット(切れ目)を入れた後に、スリット方向に延伸した一軸配向された網状のフィルムである。
さらに、上記一軸配向テープは、上記単層あるいは多層フィルムを、裁断前および/または裁断後に、縦または横方向に一軸延伸したものである。
上記一軸配向体からなる網状基材層として、より具体的には、例えば、スプリットウエブを経緯積層し熱圧着した不織布、スリットウエブを経緯積層し熱圧着した不織布、スプリットウエブとスリットウエブを経緯積層し熱圧着した不織布、スプリットウエブまたはスリットウエブと一軸配向テープとを配向軸が交差するように経緯積層した不織布、あるいは一軸配向テープを織成した織布等が挙げられる。
一軸配向体からなる不織布としては、上記のようにスプリットウエブ、スリットウエブおよび一軸配向テープからなる群から選ばれる少なくとも1種の一軸配向体を配向軸が交差するように経緯積層したものが好ましいが、用途によっては、配向をランダムまたは同一方向にして積層してもよい。さらに、これらの不織布または織布を、複合積層して用いることもできる。
直交繊維型不織布のため、縦横の強度の差が小さく、素材自体吸湿も少ない。また、短繊維不織布よりも、引張強度が高いので、補強体の役目をなし、農業被覆シートの寸法安定性を向上させる。また、HALSなどの耐侯剤を練り込むことで、耐候性も付与できる。また、熱接着性もあり、多層構造化にも、対応できる。
【実施例】
【0020】
本発明の農業用被覆シートとその製造方法について、以下の実施例/比較例により、具体的に説明する。
なお、不織布の各物性値と性能などは、以下の測定方法により、評価した。
(1)目付:
試料の3ヶ所から30cm×30cmの試験片をカットし、その重量を測定し、平方メートル当たりの重さに換算した。
(2)通気度:
フラジ―ル型通気度試験機を用い、JIS L1096−1979の「一般織物試験方法」に準拠し、通気度を計測した。
(3)保温性:
実施例及び比較例サンプルを、支柱を用いて地面に対してトンネル状にかぶせ、地中10〜20mmの深さに温度計を設置し、無被覆と比較して、温度差が+5℃以上になるものを良(○)、それ以下を不良(×)とした。
(4)除湿性(吸湿性):
実施例及び比較例サンプルを、支柱を用いて地面に対してトンネル状にかぶせ、一夜後の水滴などの滴下量を測定し、3cc以下のものを良(○)、それ以上を不良(×)とした。
(5)防虫性:
実施例及び比較例サンプルを、支柱を用いて地面に対してトンネル状にかぶせ、害虫の侵入が観察できなかったものを良(○)、みられたものを不良(×)とした。
(6)寸法安定性:
実施例及び比較例サンプルを、支柱を用いて地面に対してトンネル状にかぶせ、加工しやすいものを良(○)、それ以外を不良(×)とした。
【0021】
[実施例1]
構成材料として、熱接着性オレフィン短繊維(a)(繊度:2.2dtex、カット長:51mm、芯鞘融点:135℃)を30重量%、ポリビニルアルコール短繊維(b)(繊度:1.7dtex、カット長:38mm)を70重量%配合ブレンドし、カード紡出機を用いて、カーディングを行い、目付10.0g/m
2の繊維ウェブを得た。
ポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]と上記繊維ウェブ(B)とポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]を、3層(A/B/A)に積層させ、プレス加工を行い、目付46.0g/m
2、通気度270cc/cm
2/secの不織布シートを形成した。
その結果を表1に示すが、農業用被覆シートとして十分な、除湿性、防虫性、保温性及び寸法安定性を備えていることが判明した。
【0022】
[実施例2]
構成材料として、熱接着性オレフィン短繊維(a)(繊度:2.2dtex、カット長:51mm、芯鞘融点:135℃)を30重量%、レーヨン短繊維(b)(繊度:2.2dtex、カット長:51mm)を70重量%配合ブレンドし、カード紡出機を用いて、カーディングを行い、目付9.0g/m
2の繊維ウェブを得た。
ポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]と上記繊維ウェブ(B)とポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]を、3層(A/B/A)に積層させ、プレス加工を行い、目付45.0g/m
2、通気度280cc/cm
2/secの不織布シートを形成した。
その結果を表1に示すが、農業用被覆シートとして十分な、除湿性、防虫性、保温性及び寸法安定性を備えていることが判明した。
【0023】
[実施例3]
構成材料として熱接着性オレフィン短繊維(a)(繊度:2.2dtex、カット長:51mm、芯鞘融点:135℃)を30重量%、ポリビニルアルコール短繊維(b)(繊度:1.7dtex、カット長:38mm)を70重量%配合ブレンドし、カード紡出機を用いて、カーディングを行い、目付30.0g/m
2の繊維ウェブを得た。
ポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]と上記繊維ウェブ(B)とポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]を、3層(A/B/A)に積層させ、プレス加工を行い、目付66.0g/m
2、通気度200cc/cm
2/secの不織布シートを形成した。
その結果を表1に示すが、農業用被覆シートとして十分な、除湿性、防虫性、保温性及び寸法安定性を備えていることが判明した。
【0024】
[実施例4]
構成材料として、熱接着性オレフィン短繊維(a)(繊度:2.2dtex、カット長:51mm、芯鞘融点:135℃)を30重量%、ポリビニルアルコール短繊維(b)(繊度:1.7dtex、カット長:38mm)を70重量%配合ブレンドし、カード紡出機を用いて、カーディングを行い、目付6.0g/m
2の繊維ウェブを得た。
ポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]と上記繊維ウェブ(B)とポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]を、3層(A/B/A)に積層させ、プレス加工を行い、目付42.0g/m
2、通気度500cc/cm
2/secの不織布シートを形成した。
その結果を表1に示すが、農業用被覆シートとして十分な、除湿性、防虫性、保温性及び寸法安定性を備えていることが判明した。
【0025】
[実施例5]
構成材料として、熱接着性オレフィン短繊維(a)(繊度:2.2dtex、カット長:51mm、芯鞘融点:135℃)を10重量%、ポリビニルアルコール短繊維(b)(繊度:1.7dtex、カット長:38mm)を90重量%配合ブレンドし、カード紡出機を用いて、カーディングを行い、目付10.0g/m
2の繊維ウェブを得た。
ポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]と上記繊維ウェブ(B)とポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]を、3層(A/B/A)に積層させ、プレス加工を行い、目付46.0g/m
2、通気度270cc/cm
2/secの不織布シートを形成した。
その結果を表1に示すが、農業用被覆シートとして十分な、除湿性、防虫性、保温性及び寸法安定性を備えていることが判明した。
【0026】
[実施例6]
構成材料として、熱接着性オレフィン短繊維(a)(繊度:2.2dtex、カット長:51mm、芯鞘融点:135℃)を70重量%、ポリビニルアルコール短繊維(b)(繊度:1.7dtex、カット長:38mm)を30重量%配合ブレンドし、カード紡出機を用いて、カーディングを行い、目付10.0g/m
2の繊維ウェブを得た。
ポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]と上記繊維ウェブ(B)とポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製、品番:3S(T)]を、3層(A/B/A)に積層させ、プレス加工を行い、目付46.0g/m
2、通気度270cc/cm
2/secの不織布シートを形成した。
その結果を表1に示すが、農業用被覆シートとして十分な、除湿性、防虫性、保温性及び寸法安定性を備えていることが判明した。
【0027】
[比較例1]
構成材料として、ポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]を2枚積層させ、プレス加工を行い、目付36.0g/m
2、通気度630cc/cm
2/secの不織布シートを形成した。
評価結果を表2に示す。寸法安定性は、良好であるが、短繊維不織布(B)を欠くため、除湿性、保温性、防虫性は、前記実施例1〜6のいずれより劣るものであった。
【0028】
[比較例2]
構成材料として、熱接着性オレフィン短繊維(a)(繊度:2.2dtex、カット長:51mm、芯鞘融点:135℃)を30重量%、ポリビニルアルコール短繊維(b)(繊度:1.7dtex、カット長:38mm)を70重量%配合ブレンドし、カード紡出機を用いて、カーディングを行い、目付9.0g/m
2の繊維ウェブを得た。
ポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]と上記繊維ウェブ(B)を積層させ、プレス加工を行い、目付27.0g/m
2、通気度300cc/cm
2/secの不織布シートを形成した。
評価結果を表2に示す。寸法安定性は、現行品[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]より良好だが、この構成のシートは、網状不織布(A)を片面しか使用しないため、短繊維不織布(B)面が使用時に毛羽を生じ、農作物に繊維くずが付着するおそれのあるものであった。
【0029】
[比較例3]
構成材料として、熱接着性オレフィン短繊維(a)(繊度:2.2dtex、カット長:51mm、芯鞘融点:135℃)を100重量%でカード紡出機を用いて、カーディングを行い、目付10.0g/m
2の繊維ウェブを得た。
ポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]と上記繊維ウェブとポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]を、3層に積層させ、プレス加工を行い、目付46.0g/m
2、通気量270cc/cm
2/secの不織布シートを形成した。
評価結果を表2に示す。寸法安定性、保温性、防虫性はみられたが、吸湿性繊維であるポリビニルアルコール繊維を含まない短繊維不織布(B)なので、除湿性が、前記実施例1〜6のいずれより劣るものであった。
【0030】
[比較例4]
農業用資材として、べたがけシートなどに使用されている繊度2.2dtのポリエステルスパンボンド不織布(目付:30.0g/m
2)を用いた。
評価結果を表2に示す。保温性、防虫性はみられたが、縦横の強度の差が大きいため、寸法安定性が悪く、また、ポリエステル素材100%であるため、除湿性が前記実施例1〜6のいずれより劣るものであった。
【0031】
[比較例5]
農業用資材として、べたがけシートなどに使用されている織り糸にポリビニルアルコール繊維を用いた平織物である寒冷紗(目付:40.0g/m
2)を用いた。
評価結果を表2に示す。寸法安定性、除湿性は、みられたが、目合いが大きくて通気度が高すぎるために、保温性、防虫性は、本発明の実施例1〜6より劣るものであった。
【0032】
[比較例6]
構成材料として熱接着性オレフィン短繊維(a)(繊度:2.2dtex、カット長:51mm、芯鞘融点:135℃)を50重量%、ポリビニルアルコール短繊維(b)(繊度:1.7dtex、カット長:38mm)を50重量%配合ブレンドし、カード紡出機を用いて、カーディングを行い、目付20.0g/m
2の繊維ウェブを得た。さらに、プレス加工を行い、通気度180cc/cm
2/secの不織布シートを形成した。
評価結果を表2に示す。しかしながら、このシートは、元来補強体でもある網状不織布(A)を使用しないため、基布強度が弱く、実地作業性がなかった。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
上記の表1、2の評価結果に示されるように、短繊維不織布(B)を網状不織布(A)2層によって挟み込み、複合した本発明の農業被覆シート(実施例1〜6)は、除湿性、防虫性、保温性に優れ、吸湿しても寸法変化が少なく、他資材に比べて、優れた性能バランスを有している。また、通気性、透光性にも優れ、トンネル被覆やべたがけ資材に用いることもでき、内張りカーテンとして使用した場合でも、水滴のぼた落ちも生じ難く、産業資材として、広範囲に利用できる。