特許第6499429号(P6499429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6499429-農業用被覆シート及びその製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6499429
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】農業用被覆シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/559 20120101AFI20190401BHJP
【FI】
   D04H1/559
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-243666(P2014-243666)
(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公開番号】特開2016-108671(P2016-108671A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201881
【氏名又は名称】倉敷繊維加工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JXTGエネルギー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100145920
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 聡
(72)【発明者】
【氏名】智羽 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】内海 誠
(72)【発明者】
【氏名】粂原 偉男
(72)【発明者】
【氏名】三嶋 朋彦
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−207359(JP,A)
【文献】 特開2002−307635(JP,A)
【文献】 特開平08−246320(JP,A)
【文献】 特開2001−336054(JP,A)
【文献】 特開2011−157661(JP,A)
【文献】 特開2008−214766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00−18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン製の網状不織布(A)と、繊度が1.7〜3.3dtexの熱接着性短繊維(a)10〜70重量%と繊度が1.7〜3.3dtexの吸湿性を有する短繊維(b)30〜90重量%からなる短繊維不織布(B)と、ポリエチレン製の網状不織布(A)が積層されてなるA/B/Aの3層構造の不織布からなる農業用被覆シートであって、
網状不織布(A)層の目付が10〜25g/mで、短繊維不織布(B)層の目付が5〜30g/mであり、かつA/B/Aの3層が熱接着により一体化されてなることを特徴とする農業用被覆シート。
【請求項2】
請求項1に記載の農業用被覆シートの製造方法であって、
次の工程(I)及び(II)を含み、該工程(I)、(II)が連続して実施されることを特徴とする農業用被覆シートの製造方法。
工程(I):熱接着性短繊維(a)と吸湿性を有する短繊維(b)を混綿し、カード紡出機によって、ウェブ紡出を行い、短繊維不織布(B)をシート化する工程。
工程(II):ポリエチレン製の網状不織布(A)と、工程(I)で得られた短繊維不織布(B)と、ポリエチレン製の網状不織布(A)とを、A/B/Aの3層に積層して、熱プレスによる加熱圧着にて、強固に一体化する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用被覆シート及びその製造方法に関し、より詳しくは、ポリエチレン製の網状不織布層と細繊度の短繊維不織布層とポリエチレン製の網状不織布層の3層構造の農業用被覆シートであって、良好な寸法安定性、保温効果、防虫効果および除湿性を有し、べたがけ資材や、トンネル被覆、内張りカーテンなどに好適に用いられる農業用被覆資材である農業用被覆シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作物の保温、防霜、防虫などの目的で農業用被覆資材が用いられている。そして、この被覆資材として、スパンボンド不織布などの長繊維不織布、割繊維不織布、寒冷紗およびネット類(例えば、防風ネットなど)が有効であることが知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
上記特許文献1には、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)製の割繊維ウェブシート2枚が、あるいはポリビニルアルコール(PVA)製の割繊維ウェブシートとEVOH製の割繊維ウェブシートとが、接着剤層を介して、縦、横に直交積層されてなる2層積層構造の割繊維不織布からなり、ハンドリング性及び耐湿性に良好な農業用被覆材が開示されている。
しかしながら、上記農業用被覆材は、2層積層ウェブをPVA樹脂系の接着剤で積層することにより、除湿性と寸法安定性は向上しているが、割繊維ウェブシートの繊度が太いため、防虫効果が期待できず、保温性についても、考慮されていない。
また、特許文献2には、オレフィン系樹脂とエステル系樹脂の2成分系芯鞘中空複合断面の太繊度糸条により構成された長繊維不織布であって、軽量性、機械的性能、通気性、透光性、品位および単位目付あたりの剛性に優れたべたがけ用不織布が開示されている。
しかしながら、上記べたがけ用不織布は、割繊維不織布に比べて、基布強度が弱く、また、太繊度で構成されている製品のため、防虫効果、寸法安定性、除湿性及び保温性については、考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−138524号公報
【特許文献2】特開平11−131351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、良好な寸法安定性、保温効果、防虫効果および除湿性を有し、べたがけ資材や、トンネル被覆、内張りカーテンなどに好適に用いられる農業用被覆資材である農業用被覆シート及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、前記の課題を解決する手段として、引張強度に優れ、吸湿しても寸法変化が少ない網状不織布(A)と、除湿、防虫及び保温効果が期待できる細繊度の短繊維不織布(B)とを、組み合わせたA/B/Aの3層構造からなる農業用被覆シートにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、ポリエチレン製の網状不織布(A)と、繊度が1.7〜3.3dtexの熱接着性短繊維(a)10〜70重量%と繊度が1.7〜3.3dtexの吸湿性を有する短繊維(b)30〜90重量%からなる短繊維不織布(B)と、ポリエチレン製の網状不織布(A)が積層されてなるA/B/Aの3層構造の不織布からなる農業用被覆シートであって、
網状不織布(A)層の目付が10〜25g/mで、短繊維不織布(B)層の目付が5〜30g/mであり、かつA/B/Aの3層が熱接着により一体化されてなることを特徴とする農業用被覆シートが提供される。
【0008】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明に係る農業用被覆シートの製造方法であって、
次の工程(I)及び(II)を含み、該工程(I)、(II)が連続して実施されることを特徴とする農業用被覆シートの製造方法が提供される。
工程(I):熱接着性短繊維(a)と吸湿性を有する短繊維(b)を混綿し、カード紡出機によって、ウェブ紡出を行い、短繊維不織布(B)をシート化する工程。
工程(II):ポリエチレン製の網状不織布(A)と、工程(I)で得られた短繊維不織布(B)と、ポリエチレン製の網状不織布(A)とを、A/B/Aの3層に積層して、熱プレスによる加熱圧着にて、強固に一体化する工程。
【発明の効果】
【0009】
本発明の農業用被覆シートは、除吸湿、防虫及び保温効果を有する細繊度の短繊維不織布(B)と、引張強度に優れ、湿潤環境下でも寸法変化が少ない直交繊維型の網状不織布(A)とを、組み合わせたものであるため、防虫性、寸法安定性、除湿性および保温性に優れている。また、短繊維不織布(B)が低目付であることから、通気性、透光性にも優れ、トンネル被覆やべたがけに用いることもでき、内張りカーテンとして使用した場合でも、含まれる吸湿性を有する短繊維(b)の効果により、水滴のぼた落ちも生じにくい。
さらに、本発明の農業用被覆シートの製造方法によれば、その製造工程(I)、(II)は、連続のため、生産性は高く、多様なニーズに対応が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の農業用被覆シートの製造方法の製造工程(I)、(II)を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の農業用被覆シートは、ポリエチレン製の網状不織布(A)と、繊度が1.7〜3.3dtexの熱接着性短繊維(a)10〜70重量%と繊度が1.7〜3.3dtexの吸湿性を有する短繊維(b)30〜90重量%からなる短繊維不織布(B)と、ポリエチレン製の網状不織布(A)が積層されてなるA/B/Aの3層構造の不織布からなる。
一方、農業用被覆シートが網状不織布(A)と短繊維不織布(B)の2層構造の場合、短繊維不織布(B)が表層となるため、短繊維不織布(B)の繊維が毛羽たち、脱落したときに、野菜や果物に付着して、商品価値を落とすおそれがある。また、農業用被覆シートが短繊維不織布(B)と網状不織布(A)と短繊維不織布(B)のB/A/Bの3層構造の場合も、短繊維不織布(B)が表層となるため、短繊維不織布(B)の繊維が毛羽たち、脱落したときに、野菜や果物に付着して、商品価値を落とすおそれがある。
以下、項目ごとに詳細に説明する。
【0012】
1.短繊維不織布(B)
本発明の農業用被覆シートの中間層に用いられる短繊維不織布(B)は、繊度が1.7〜3.3dtexの熱接着性短繊維(a)10〜70重量%と、繊度が1.7〜3.3dtの吸湿性を有する短繊維(b)30〜90重量%からなる。
短繊維不織布(B)は、通気性(保温性)や除湿性(吸湿性)の点から、目付が好ましくは5〜30g/mであり、より好ましくは10〜30g/mである。
【0013】
(1)熱接着性短繊維(a)
本発明に用いられる熱接着性短繊維(a)は、2成分の複合繊維であって、該2成分の融点が好ましくは30℃以上離れたものを用い、繊度1.7〜3.3dtexの熱接着性ポリオレフィン短繊維が好ましい。
また、熱接着性ポリオレフィン短繊維とは、2成分の複合繊維であって、1成分がポリプロピレン、もう1成分が共重合ポリエチレンの複合繊維であることが好ましい。さらに、その構造については、芯鞘構造でも、サイドバイサイド構造でもよい。
【0014】
また、短繊維不織布(B)における熱接着性短繊維(a)の混率割合は、短繊維不織布(B)全重量基準で、10〜70重量%であり、好ましくは20〜50重量%である。混率割合が10重量%未満では、網状不織布(A)との接着強度が低下するおそれがあり、一方、70重量%を超えると、吸湿性を損なうおそれがある。
【0015】
(2)吸湿性を有する短繊維(b)
本発明に用いられる吸湿性を有する短繊維(b)は、繊度1.7〜3.3dtexが好ましく、除湿性を確保するために、使用している。
また、短繊維不織布(B)における吸湿性を有する短繊維(b)の混率割合は、短繊維不織布(B)全重量基準で、30〜90重量%であり、好ましくは50〜80重量%である。混率割合が30重量%未満では、吸湿性が悪くなり、一方、90重量%を超えると、網状不織布(A)との接着強度の低下を引きおこすおそれがある。
吸湿性を有する短繊維(b)としては、ポリビニルアルコール系短繊維やレーヨン短繊維等の公知の吸湿性を有する短繊維が用いられる。
【0016】
2.ポリエチレン製の網状不織布(A)
本発明の農業用被覆シートの表層(表面層または外層)に用いられるポリエチレン製の網状不織布(A)は、熱可塑性樹脂フィルムから形成した一軸配向体を、その配向軸が交差するように経緯積層または織成して得られる網状基材により、形成される。すなわち、スプリットウエブ、スリットウエブおよび一軸配向テープからなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂の一軸配向体を、配向軸が交差するように経緯積層しまたは構成してなる補強効果に優れた不織布または織布が利用される。この熱可塑性樹脂フィルムからなる一軸配向体は、偏平であるため、本発明の農業用被覆シートに利用した場合、補強材(補強体)機能としての薄形化および平面性を図ることができる。
上記スプリットウエブは、単層でもよいが、好ましくは多層インフレーション法、多層Tダイ法等の押出成形により製造した少なくとも2層以上の多層フィルムを、縦方向(長さ方向)または横方向(幅方向)に延伸して、延伸方向に断続的に多数の割れ目を入れた一軸配向された網状のフィルムである。
また、上記スリットウエブは、上記単層あるいは多層フィルムに、縦または横方向に多数のスリット(切れ目)を入れた後に、スリット方向に延伸した一軸配向された網状のフィルムである。
さらに、上記一軸配向テープは、上記単層あるいは多層フィルムを、裁断前および/または裁断後に、縦または横方向に一軸延伸したものである。
上記一軸配向体からなる網状基材層として、より具体的には、例えば、スプリットウエブを経緯積層し熱圧着した不織布、スリットウエブを経緯積層し熱圧着した不織布、スプリットウエブとスリットウエブを経緯積層し熱圧着した不織布、スプリットウエブまたはスリットウエブと一軸配向テープとを配向軸が交差するように経緯積層した不織布、あるいは一軸配向テープを織成した織布等が挙げられる。
一軸配向体からなる不織布としては、上記のようにスプリットウエブ、スリットウエブおよび一軸配向テープからなる群から選ばれる少なくとも1種の一軸配向体を配向軸が交差するように経緯積層したものが好ましいが、用途によっては、配向をランダムまたは同一方向にして積層してもよい。さらに、これらの不織布または織布を、複合積層して用いることもできる。
直交繊維型不織布のため、縦横の強度の差が小さく、素材自体吸湿も少ない。また、短繊維不織布よりも、引張強度が高いので、補強体の役目をなし、農業被覆シートの寸法安定性を向上させる。また、HALSなどの耐侯剤を練り込むことで、耐候性も付与できる。また、熱接着性もあり、多層構造化にも、対応できる。
【0017】
網状不織布(A)として、公知の市販のものは、例えば、JX日鉱日石エネルギー(株)製の割繊維不織布である「ワリフ(登録商標)」(スプリットウェブとスプリットウェブの交差積層不織布)、「CLAF(登録商標)」(スプリットウェブとスリットウェブの交差積層不織布)などが挙げられる。
これら以外の網状不織布として、例えば、一軸配向多層テープを平行に並べたものを、2組積層した網状基材の不織布などが挙げられ、また、一軸配向多層テープを織成した網状基材である一軸配向多層テープ織成網状基材や、ポリエチレンからなるネット状物を用いることもできる。ネット状物としては、積水フィルム(株)製のソフネット、ソフクロス(いずれも商品名)、クラボウ社製のクレネット(商品名)、コンウェッド社製のコンウェッドネット(商品名)などが挙げられる。
また、網状不織布(A)としては、同一網状不織布同志で、更に積層して用いることも可能であり、また、異種の網状基材を積層しても、本発明に係る網状不織布(A)として、使用することもできる。
さらに、本発明に係る網状不織布(A)の素材がポリエチレンのため、加熱圧着で、網状不織布(A)と短繊維不織布(B)と網状不織布(A)のA/B/Aの3層複合構造が可能になる。
網状不織布(A)は、機械的強度や通気性(保温性)、製造コストの点から、目付が好ましくは10〜25g/m、より好ましくは15〜20g/mである。
【0018】
3.農業用被覆シートの製造方法
本発明の農業用被覆シートの製造方法は、図1に示すように、次の工程(I)〜(II)を経て、工程(I)、(II)が連続して、製造されることが好ましい。
工程(I):熱接着性短繊維(a)と吸湿性を有する短繊維(b)を混綿し、カード紡出機によって、ウェブ紡出を行い、短繊維不織布(B)をシート化する工程、すなわち、シート化した短繊維不織布(B)を製造する工程。
工程(II):ポリエチレン製の網状不織布(A)と、工程(I)で得られた短繊維不織布(B)と、ポリエチレン製の網状不織布(A)とを、A/B/Aの3層に積層して、熱プレスによる加熱圧着にて、強固に一体化する工程。
なお、生産性の面から、熱プレス機は、カレンダータイプが好ましい。
【0019】
4.農業用被覆シートの性能
本発明の農業用被覆シートは、次の性能に、優れている。
(1)防虫性:
ポリエチレン製の網状不織布(A)単体では、繊度が600〜3600dtexと太く、害虫も通過しやすいが、網状不織布(A)と繊度が1.7〜3.3dtの短繊維不織布(B)との組み合わせにより、繊維間の目合いも小さくなり、害虫も、通過しにくくなる。
(2)寸法安定性:
短繊維不織布(B)だけでは、引張強度が低く、寸法安定性が不足するが、引張強度の高い直交繊維型不織布である網状不織布(A)と、短繊維不織布(B)を複合することで、高い寸法安定性を得ることができる。
(3)除湿性:
農作物の結露のぼた落ちによる腐食を防止するために、吸湿性の高い繊維との複合が必要になる。すなわち、親水性の低いポリエチレン製の網状不織布(A)だけではなく、網状不織布(A)と、親水性の高い短繊維(b)と熱接着性短繊維(a)を混綿した短繊維不織布(B)とを、複合することにより、湿度を吸湿し、除湿性を得ることができる。
(4)保温性:
農作物の発育を向上させるために、通気度を低くし、保温性を高める必要がある。ポリエチレン製の網状不織布(A)だけでは、通気度が高く、保温性が得られにくいため、細繊度の短繊維不織布(B)と網状不織布(A)とを複合することにより、通気度を低くして、保温性を得ることができる。
【実施例】
【0020】
本発明の農業用被覆シートとその製造方法について、以下の実施例/比較例により、具体的に説明する。
なお、不織布の各物性値と性能などは、以下の測定方法により、評価した。
(1)目付:
試料の3ヶ所から30cm×30cmの試験片をカットし、その重量を測定し、平方メートル当たりの重さに換算した。
(2)通気度:
フラジ―ル型通気度試験機を用い、JIS L1096−1979の「一般織物試験方法」に準拠し、通気度を計測した。
(3)保温性:
実施例及び比較例サンプルを、支柱を用いて地面に対してトンネル状にかぶせ、地中10〜20mmの深さに温度計を設置し、無被覆と比較して、温度差が+5℃以上になるものを良(○)、それ以下を不良(×)とした。
(4)除湿性(吸湿性):
実施例及び比較例サンプルを、支柱を用いて地面に対してトンネル状にかぶせ、一夜後の水滴などの滴下量を測定し、3cc以下のものを良(○)、それ以上を不良(×)とした。
(5)防虫性:
実施例及び比較例サンプルを、支柱を用いて地面に対してトンネル状にかぶせ、害虫の侵入が観察できなかったものを良(○)、みられたものを不良(×)とした。
(6)寸法安定性:
実施例及び比較例サンプルを、支柱を用いて地面に対してトンネル状にかぶせ、加工しやすいものを良(○)、それ以外を不良(×)とした。
【0021】
[実施例1]
構成材料として、熱接着性オレフィン短繊維(a)(繊度:2.2dtex、カット長:51mm、芯鞘融点:135℃)を30重量%、ポリビニルアルコール短繊維(b)(繊度:1.7dtex、カット長:38mm)を70重量%配合ブレンドし、カード紡出機を用いて、カーディングを行い、目付10.0g/mの繊維ウェブを得た。
ポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]と上記繊維ウェブ(B)とポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]を、3層(A/B/A)に積層させ、プレス加工を行い、目付46.0g/m、通気度270cc/cm/secの不織布シートを形成した。
その結果を表1に示すが、農業用被覆シートとして十分な、除湿性、防虫性、保温性及び寸法安定性を備えていることが判明した。
【0022】
[実施例2]
構成材料として、熱接着性オレフィン短繊維(a)(繊度:2.2dtex、カット長:51mm、芯鞘融点:135℃)を30重量%、レーヨン短繊維(b)(繊度:2.2dtex、カット長:51mm)を70重量%配合ブレンドし、カード紡出機を用いて、カーディングを行い、目付9.0g/mの繊維ウェブを得た。
ポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]と上記繊維ウェブ(B)とポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]を、3層(A/B/A)に積層させ、プレス加工を行い、目付45.0g/m、通気度280cc/cm/secの不織布シートを形成した。
その結果を表1に示すが、農業用被覆シートとして十分な、除湿性、防虫性、保温性及び寸法安定性を備えていることが判明した。
【0023】
[実施例3]
構成材料として熱接着性オレフィン短繊維(a)(繊度:2.2dtex、カット長:51mm、芯鞘融点:135℃)を30重量%、ポリビニルアルコール短繊維(b)(繊度:1.7dtex、カット長:38mm)を70重量%配合ブレンドし、カード紡出機を用いて、カーディングを行い、目付30.0g/mの繊維ウェブを得た。
ポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]と上記繊維ウェブ(B)とポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]を、3層(A/B/A)に積層させ、プレス加工を行い、目付66.0g/m、通気度200cc/cm/secの不織布シートを形成した。
その結果を表1に示すが、農業用被覆シートとして十分な、除湿性、防虫性、保温性及び寸法安定性を備えていることが判明した。
【0024】
[実施例4]
構成材料として、熱接着性オレフィン短繊維(a)(繊度:2.2dtex、カット長:51mm、芯鞘融点:135℃)を30重量%、ポリビニルアルコール短繊維(b)(繊度:1.7dtex、カット長:38mm)を70重量%配合ブレンドし、カード紡出機を用いて、カーディングを行い、目付6.0g/mの繊維ウェブを得た。
ポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]と上記繊維ウェブ(B)とポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]を、3層(A/B/A)に積層させ、プレス加工を行い、目付42.0g/m、通気度500cc/cm/secの不織布シートを形成した。
その結果を表1に示すが、農業用被覆シートとして十分な、除湿性、防虫性、保温性及び寸法安定性を備えていることが判明した。
【0025】
[実施例5]
構成材料として、熱接着性オレフィン短繊維(a)(繊度:2.2dtex、カット長:51mm、芯鞘融点:135℃)を10重量%、ポリビニルアルコール短繊維(b)(繊度:1.7dtex、カット長:38mm)を90重量%配合ブレンドし、カード紡出機を用いて、カーディングを行い、目付10.0g/mの繊維ウェブを得た。
ポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]と上記繊維ウェブ(B)とポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]を、3層(A/B/A)に積層させ、プレス加工を行い、目付46.0g/m、通気度270cc/cm/secの不織布シートを形成した。
その結果を表1に示すが、農業用被覆シートとして十分な、除湿性、防虫性、保温性及び寸法安定性を備えていることが判明した。
【0026】
[実施例6]
構成材料として、熱接着性オレフィン短繊維(a)(繊度:2.2dtex、カット長:51mm、芯鞘融点:135℃)を70重量%、ポリビニルアルコール短繊維(b)(繊度:1.7dtex、カット長:38mm)を30重量%配合ブレンドし、カード紡出機を用いて、カーディングを行い、目付10.0g/mの繊維ウェブを得た。
ポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]と上記繊維ウェブ(B)とポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製、品番:3S(T)]を、3層(A/B/A)に積層させ、プレス加工を行い、目付46.0g/m、通気度270cc/cm/secの不織布シートを形成した。
その結果を表1に示すが、農業用被覆シートとして十分な、除湿性、防虫性、保温性及び寸法安定性を備えていることが判明した。
【0027】
[比較例1]
構成材料として、ポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]を2枚積層させ、プレス加工を行い、目付36.0g/m、通気度630cc/cm/secの不織布シートを形成した。
評価結果を表2に示す。寸法安定性は、良好であるが、短繊維不織布(B)を欠くため、除湿性、保温性、防虫性は、前記実施例1〜6のいずれより劣るものであった。
【0028】
[比較例2]
構成材料として、熱接着性オレフィン短繊維(a)(繊度:2.2dtex、カット長:51mm、芯鞘融点:135℃)を30重量%、ポリビニルアルコール短繊維(b)(繊度:1.7dtex、カット長:38mm)を70重量%配合ブレンドし、カード紡出機を用いて、カーディングを行い、目付9.0g/mの繊維ウェブを得た。
ポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]と上記繊維ウェブ(B)を積層させ、プレス加工を行い、目付27.0g/m、通気度300cc/cm/secの不織布シートを形成した。
評価結果を表2に示す。寸法安定性は、現行品[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]より良好だが、この構成のシートは、網状不織布(A)を片面しか使用しないため、短繊維不織布(B)面が使用時に毛羽を生じ、農作物に繊維くずが付着するおそれのあるものであった。
【0029】
[比較例3]
構成材料として、熱接着性オレフィン短繊維(a)(繊度:2.2dtex、カット長:51mm、芯鞘融点:135℃)を100重量%でカード紡出機を用いて、カーディングを行い、目付10.0g/mの繊維ウェブを得た。
ポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]と上記繊維ウェブとポリエチレン製の網状不織布(A)[仕様:JX日鉱日石エネルギー(株)製ワリフ(登録商標)、品番:3S(T)]を、3層に積層させ、プレス加工を行い、目付46.0g/m、通気量270cc/cm/secの不織布シートを形成した。
評価結果を表2に示す。寸法安定性、保温性、防虫性はみられたが、吸湿性繊維であるポリビニルアルコール繊維を含まない短繊維不織布(B)なので、除湿性が、前記実施例1〜6のいずれより劣るものであった。
【0030】
[比較例4]
農業用資材として、べたがけシートなどに使用されている繊度2.2dtのポリエステルスパンボンド不織布(目付:30.0g/m)を用いた。
評価結果を表2に示す。保温性、防虫性はみられたが、縦横の強度の差が大きいため、寸法安定性が悪く、また、ポリエステル素材100%であるため、除湿性が前記実施例1〜6のいずれより劣るものであった。
【0031】
[比較例5]
農業用資材として、べたがけシートなどに使用されている織り糸にポリビニルアルコール繊維を用いた平織物である寒冷紗(目付:40.0g/m)を用いた。
評価結果を表2に示す。寸法安定性、除湿性は、みられたが、目合いが大きくて通気度が高すぎるために、保温性、防虫性は、本発明の実施例1〜6より劣るものであった。
【0032】
[比較例6]
構成材料として熱接着性オレフィン短繊維(a)(繊度:2.2dtex、カット長:51mm、芯鞘融点:135℃)を50重量%、ポリビニルアルコール短繊維(b)(繊度:1.7dtex、カット長:38mm)を50重量%配合ブレンドし、カード紡出機を用いて、カーディングを行い、目付20.0g/mの繊維ウェブを得た。さらに、プレス加工を行い、通気度180cc/cm/secの不織布シートを形成した。
評価結果を表2に示す。しかしながら、このシートは、元来補強体でもある網状不織布(A)を使用しないため、基布強度が弱く、実地作業性がなかった。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
上記の表1、2の評価結果に示されるように、短繊維不織布(B)を網状不織布(A)2層によって挟み込み、複合した本発明の農業被覆シート(実施例1〜6)は、除湿性、防虫性、保温性に優れ、吸湿しても寸法変化が少なく、他資材に比べて、優れた性能バランスを有している。また、通気性、透光性にも優れ、トンネル被覆やべたがけ資材に用いることもでき、内張りカーテンとして使用した場合でも、水滴のぼた落ちも生じ難く、産業資材として、広範囲に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の農業用被覆シートは、農業用被覆資材として、十分な除湿性、防虫性、保温性及び寸法安定性を備えている。また、本発明の農業用被覆シートは、網状不織布を使用しているため、引張強度に優れ、はさみなどで切断加工しても、カット面の目ずれもなく、伸び縮みもみられない。さらに、網状不織布と、吸湿、防虫及び保温効果が期待できる短繊維不織布と、網状不織布との3層構造のため、べたがけ以外にも、トンネル被覆、内張りカーテンなど広い用途範囲で使用でき、産業上の利用可能性が高い。
図1