特許第6499472号(P6499472)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6499472
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20190401BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   H01L21/306 R
   H01L21/304 643A
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-34347(P2015-34347)
(22)【出願日】2015年2月24日
(65)【公開番号】特開2016-157811(P2016-157811A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2017年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100137062
【弁理士】
【氏名又は名称】五郎丸 正巳
(72)【発明者】
【氏名】宗徳 皓太
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弘明
【審査官】 宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−207272(JP,A)
【文献】 特開2010−123884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平な姿勢で保持する基板保持手段と、
前記基板の上面の全域を覆う薬液の液膜を形成すべく、当該上面に薬液を供給する薬液供給手段と、
前記基板の上面に対向する対向面を有する対向部材であって、前記基板の上面に形成された前記薬液の前記液膜に前記対向面が接液しながら、前記薬液の前記液膜または前記基板保持手段によって保持される対向部材とを含み、
前記対向部材が、前記エッチング液よりも比重が小さい材料を用いて形成されている対向板であり、
前記対向板が、前記薬液の前記液膜に前記対向面が接液しながら、前記薬液の前記液膜の上面に保持される、基板処理装置。
【請求項2】
基板を水平な姿勢で保持する基板保持手段と、
前記基板の上面の全域を覆う薬液の液膜を形成すべく、当該上面に薬液を供給する薬液供給手段と、
前記基板の上面に対向する対向面を有する対向板であって、前記基板の上面に形成された前記薬液の前記液膜に前記対向面が接液しながら、前記薬液の前記液膜または前記基板保持手段によって保持される対向板と、
吸引口を有する下面を有し、前記対向板を上方側から支持するための支持部材と、
前記吸引口の内部を吸引する吸引手段と、
前記支持部材を昇降する支持部材昇降手段とを含み、
前記対向板が、前記薬液の前記液膜に前記対向面が接液しながら、前記薬液の前記液膜の上面に保持される、基板処理装置。
【請求項3】
前記対向板は、低剛性材料を用いて形成されている、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
基板を基板保持手段により水平な姿勢で保持する基板保持工程と、
前記基板の上面に、前記基板の上面の全域を覆う薬液の液膜を形成する液膜形成工程と、
前記薬液の前記液膜の形成後、下面に対向面が形成された対向部材を前記薬液の前記液膜または前記基板保持手段に保持させて、前記薬液の前記液膜に前記対向面を接液させる接液工程とを含む、基板処理方法。
【請求項5】
前記接液工程は、前記薬液の前記液膜に前記対向部材を保持させることにより、前記薬液の前記液膜に前記対向面を接液させる工程を含む、請求項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記液膜形成工程に並行して、前記基板を鉛直軸線回りに回転させる回転工程と、
前記接液工程に並行して、前記基板を静止状態のまま維持する静止工程とを含む、請求項またはに記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液を用いて基板の上面を処理する基板処理装置および基板処理方法に関する。処理対象となる基板の例には、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置が用いられる。枚葉式の基板処理装置は、たとえば、基板を水平に保持して回転させるスピンチャックと、基板保持機構に保持された基板の上面に薬液を供給するノズルとを備えている。
1枚の処理に必要な薬液の消費量の低減を図るために、たとえば下記特許文献1に示すように、スピンチャックによる基板の回転速度を零または低速に維持することにより、基板の上面に薬液の液膜を保持し、この薬液の液膜により基板の表面を薬液処理する薬液パドル処理が知られている。薬液パドル処理において、基板上に薬液の液膜が形成された後には、基板への処理液の供給を停止することも可能であるから、薬液の消費量を最低限に抑制でき、これにより、処理コストの低減を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−214157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の薬液パドル処理においては、基板の上面の全域を覆う薬液を所定の処理期間(薬液を用いた処理を完遂するために必要な期間)に亘って基板に保持し続けることにより、基板の上面が処理される。
しかしながら、薬液の液膜の上面が周囲の雰囲気と接触しているため、薬液の液膜が周囲の雰囲気の影響を受け易い。周囲の雰囲気の影響(蒸発・零れ)により基板の上面から薬液の一部が逸失する(消失・流出)おそれがある。薬液の液膜に含まれる薬液の液量が少なくなると、薬液の液膜によって基板の上面全域を覆うことが困難になる。
【0005】
また、薬液の種類によっては、薬液の液膜を用いた処理の進行に伴って基板の上面が疎水性を呈するようになることがあり、この場合、基板の上面において薬液が濡れ難くなる。その結果、薬液の液膜に割れが生じ、基板の上面に薬液の液膜を保持し続けることが困難になる。
つまり、薬液パドル処理においては、基板の上面の全域を覆う薬液の液膜を安定して保持し続けることが難しかった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、薬液の液膜を基板の上面に安定して保持させ続けることができ、これにより、薬液の省液を図りながら基板の上面を処理できる、基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するための請求項1に記載の発明は、基板を水平な姿勢で保持する基板保持手段と、前記基板の上面の全域を覆う薬液の液膜を形成すべく、当該上面に薬液を供給する薬液供給手段と、前記基板の上面に対向する対向面を有する対向部材であって、前記基板の上面に形成された前記薬液の前記液膜に前記対向面が接液しながら、前記薬液の前記液膜または前記基板保持手段によって保持される対向部材とを含み、前記対向部材が、前記エッチング液よりも比重が小さい材料を用いて形成されている対向板であり、前記対向板が、前記薬液の前記液膜に前記対向面が接液しながら、前記薬液の前記液膜の上面に保持される、基板処理装置を提供する。
【0008】
この構成によれば、基板の上面の全域を覆う薬液の液膜に対向板の対向面が接液しながら、対向板が当該薬液の液膜または基板保持手段によって保持される。
この状態では、薬液の液膜の上方が対向板によって覆われている。そのため、薬液の液膜が周囲の雰囲気から遮断される。これにより、薬液の液膜が周囲の雰囲気から影響を受けることを回避できる。
【0009】
また、薬液の液膜に対向板の対向面が接液する。換言すると、薬液の液膜が対向面に接触している。そのため、対向面と薬液の液膜の上面との間に表面張力が作用し、薬液が膜状を保持し易い。そのため、基板の上面の性質によらずに、基板の上面に、薬液の液膜を保持できる。
薬液の液膜の上面に対向板が保持される。液の液膜の上面に配置されているから、対向板と基板の上面との間に含まれる薬液の量を低減させて、基板の上面に保持される薬液の液膜の厚みを薄くすることが可能である。これにより、薬液の消費量の低減をより一層図ることができる。
対向板は、エッチング液よりも比重が小さい材料を用いて形成されていてもよい。この場合、対向板がエッチング液の液膜上に浮く。これにより、エッチング液の上方に対向板を配置し続けることができ、エッチング液の液膜の上面に対向板を良好に保持させることができる。
以上により、薬液の液膜を基板の上面に安定して保持させ続けることができ、ゆえに、薬液の省液を図りながら基板の上面を処理できる。
【0010】
前記の目的を達成するための請求項2に記載の発明は、基板を水平な姿勢で保持する基板保持手段と、前記基板の上面の全域を覆う薬液の液膜を形成すべく、当該上面に薬液を供給する薬液供給手段と、前記基板の上面に対向する対向面を有する対向板であって、前記基板の上面に形成された前記薬液の前記液膜に前記対向面が接液しながら、前記薬液の前記液膜または前記基板保持手段によって保持される対向板と、吸引口を有する下面を有し、前記対向板を上方側から支持するための支持部材と、前記吸引口の内部を吸引する吸引手段と、前記支持部材を昇降する支持部材昇降手段とを含み、前記対向板が、前記薬液の前記液膜に前記対向面が接液しながら、前記薬液の前記液膜の上面に保持される、基板処理装置を提供する
この構成によれば、基板の上面の全域を覆う薬液の液膜に対向板の対向面が接液しながら、対向板が当該薬液の液膜または基板保持手段によって保持される。
この状態では、薬液の液膜の上方が対向板によって覆われている。そのため、薬液の液膜が周囲の雰囲気から遮断される。これにより、薬液の液膜が周囲の雰囲気から影響を受けることを回避できる。
また、薬液の液膜に対向板の対向面が接液する。換言すると、薬液の液膜が対向面に接触している。そのため、対向面と薬液の液膜の上面との間に表面張力が作用し、薬液が膜状を保持し易い。そのため、基板の上面の性質によらずに、基板の上面に、薬液の液膜を保持できる。
薬液の液膜の上面に対向板が保持される。液の液膜の上面に配置されているから、対向板と基板の上面との間に含まれる薬液の量を低減させて、基板の上面に保持される薬液の液膜の厚みを薄くすることが可能である。これにより、薬液の消費量の低減をより一層図ることができる。
以上により、薬液の液膜を基板の上面に安定して保持させ続けることができ、ゆえに、薬液の省液を図りながら基板の上面を処理できる。
また、吸引口の内部の吸引により、支持部材の下面に対向板を吸着支持できる。そして、薬液の液膜の上方で吸引口の内部の吸引を解除することにより、対向板が薬液の液膜上に配置させられる。さらに、支持部材を下降させ、支持部材の下面を対向板に接近させた状態で、吸引口の内部を吸引することにより、対向板が支持部材に支持される。これにより、薬液の液膜に対する対向板(対向面)の接液および、薬液の液膜からの対向板(対向面)の退避の双方を、円滑に実現できる。
【0011】
請求項3に記載のように、前記対向板は、低剛性材料を用いて形成されていてもよい。
対向が高い剛性を有していると、対向が基板に当たった場合に、基板や当該対向が破損するおそれがある。しかしながら、請求項3では、対向板が低剛性材料を用いて形成されているので、仮に対向が基板に当っても基板が破損するおそれがない
【0013】
前記の目的を達成するための請求項に記載の発明は、基板を基板保持手段により水平な姿勢で保持する基板保持工程と、前記基板の上面に、前記基板の上面の全域を覆う薬液の液膜を形成する液膜形成工程と、前記薬液の前記液膜の形成後、下面に対向面が形成された対向部材を前記薬液の前記液膜または前記基板保持手段に保持させて、前記薬液の前記液膜に前記対向面を接液させる接液工程とを含む、基板処理方法である。
【0014】
この方法によれば、基板の上面に、当該上面の全域を覆う薬液の液膜が形成された後、対向部材が当該薬液の液膜または基板保持手段によって保持される。この状態において、薬液の液膜に対向部材の対向面が接液される。
薬液の液膜の上方が対向部材によって覆われているので、薬液の液膜が周囲の雰囲気から遮断される。これにより、薬液の液膜が周囲の雰囲気から影響を受けることを回避できる。
【0015】
また、薬液の液膜の上面に対向面が接液する。換言すると、薬液の液膜が対向面に接触している。そのため、対向面と薬液の液膜の上面との間に表面張力が作用し、薬液が膜状を保持し易い。そのため、基板の上面の性質によらずに、基板の上面に、当該全域を覆う薬液の液膜を保持できる。
以上により、薬液の液膜を基板の上面に安定して保持させ続けることができ、ゆえに、薬液の省液を図りながら基板の上面を処理できる。
【0016】
請求項に記載の発明は、前記接液工程は、前記薬液の前記液膜に前記対向部材を保持させることにより、前記薬液の前記液膜に前記対向面を接液させる工程を含む、請求項に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、薬液の液膜の上面に対向部材が保持される。薬液の液膜の上面に対向部材が配置されているから、対向部材と基板の上面との間に含まれる薬液の量を低減させて、基板の上面に保持される薬液の液膜の厚みを薄くすることが可能である。これにより、薬液の消費量の低減をより一層図ることが可能である
【0017】
請求項に記載の発明は、前記液膜形成工程に並行して、前記基板を鉛直軸線回りに回転させる回転工程と、前記接液工程に並行して、前記基板を静止状態のまま維持する静止工程とを含む、請求項またはに記載の基板処理方法である。
この方法によれば、基板を鉛直軸線回りに回転させながら薬液を供給することにより、基板の上面に供給された薬液を、基板の上面に拡げることができる。これにより、基板の上面の全域を覆う薬液の液膜を比較的容易に形成できる。
【0018】
また、対向部材が薬液の液膜に接液した状態では、基板を静止状態のまま維持する。この状態では、薬液の液膜に基板の回転による遠心力が作用しないから、基板の上面から薬液の流出がない。そのため、少量の薬液で薬液の液膜を形成でき、これにより、薬液の消費量の低減をより一層図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置を水平方向に見た図である。
図2】前記基板処理装置によって行われるエッチング処理例について説明するためのフローチャートである。
図3A-3B】前記エッチング処理例を説明するための図解的な図である。
図3C-3D】図3Bに続く工程を説明するための図解的な図である。
図3E-3F】図3Dに続く工程を説明するための図解的な図である。
図3G-3H】図3Fに続く工程を説明するための図解的な図である。
図3I】前記エッチング処理例の変形例を説明するための図解的な図である。
図4A-4B】本発明の他の実施形態に係る基板処理装置によって行われるエッチング処理例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1を水平方向に見た図である。
基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを、処理液や処理ガスによって一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、基板Wに処理液(エッチング液およびリンス液)を用いて処理する処理ユニット2と、基板処理装置1に備えられた装置の動作やバルブの開閉を制御する制御装置3とを含む。
【0021】
各処理ユニット2は、枚葉式のユニットである。各処理ユニット2は、内部空間を有する箱形のチャンバ4と、チャンバ4内で一枚の基板Wを水平な姿勢で保持して、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック(基板保持手段)5と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面に、エッチング液を供給するためのエッチング液供給ユニット(薬液供給手段)6と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面に、リンス液を供給するためのリンス液供給ユニット7と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面に対向して配置される対向板(対向部材)8と、対向板8を上方から支持する支持板(支持部材)9と、スピンチャック5の周囲を取り囲む筒状のカップ10とを含む。
【0022】
チャンバ4は、スピンチャック5やノズルを収容する箱状の隔壁11と、隔壁11の上部から隔壁11内に清浄空気(フィルタによってろ過された空気)を送る送風ユニットとしてのFFU(ファン・フィルタ・ユニット)12と、隔壁11の下部からチャンバ4内の気体を排出する排気ダクト13とを含む。FFU12は、隔壁11の上方に配置されており、隔壁11の天井に取り付けられている。FFU12は、隔壁11の天井からチャンバ4内に下向きに清浄空気を送る。排気ダクト13は、カップ10の底部に接続されており、基板処理装置1が設置される工場に設けられた排気処理設備に向けてチャンバ4内の気体を導出する。したがって、チャンバ4内を下方に流れるダウンフロー(下降流)が、FFU12および排気ダクト13によって形成される。基板Wの処理は、チャンバ4内にダウンフローが形成されている状態で行われる。
【0023】
スピンチャック5として、基板Wを水平方向に挟んで基板Wを水平に保持する挟持式のチャックが採用されている。具体的には、スピンチャック5は、スピンモータ(基板回転手段)13と、このスピンモータ14の駆動軸と一体化されたスピン軸15と、スピン軸15の上端に略水平に取り付けられた円板状のスピンベース16とを含む。
スピンベース16の上面には、その周縁部に複数個(3個以上。たとえば6個)の挟持部材17が配置されている。複数個の挟持部材17は、スピンベース16の上面周縁部において、基板Wの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けて配置されている。
【0024】
また、スピンチャック5としては、挟持式のものに限らず、たとえば、基板Wの裏面を真空吸着することにより、基板Wを水平な姿勢で保持し、さらにその状態で鉛直な回転軸線まわりに回転することにより、スピンチャック5に保持された基板Wを回転させる真空吸着式のもの(バキュームチャック)が採用されてもよい。
エッチング液供給ユニット6は、エッチング液を吐出するエッチング液ノズル18と、エッチング液ノズル18に接続されたエッチング液配管19と、エッチング液配管19に介装されたエッチング液バルブ20と、エッチング液ノズル18が先端部に取り付けられた第1のノズルアーム21と、第1のノズルアーム21を揺動させることにより、エッチング液ノズル18を移動させる第1のノズル移動ユニット22とを含む。エッチング液ノズル18に供給されるエッチング液として、HF(ふっ酸)、SC1(アンモニア過酸化水素水混合液:ammonia−hydrogen peroxide mixture)、SC2(塩酸過酸化水素水:hydrochloric acid/hydrogen peroxide mixture)、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)などを例示できる。
【0025】
エッチング液バルブ20が開かれると、エッチング液配管19からエッチング液ノズル18に供給されたエッチング液が、エッチング液ノズル18から下方に吐出させられる。エッチング液バルブ20が閉じられると、エッチング液ノズル18からのエッチング液の吐出が停止させられる。第1のノズル移動ユニット22は、エッチング液ノズル18から吐出されたエッチング液が基板Wの上面に供給される処理位置と、エッチング液ノズル18が平面視でスピンチャック5の側方に退避した退避位置との間でエッチング液ノズル18を移動させる。
【0026】
リンス液供給ユニット7は、リンス液を吐出するリンス液ノズル23と、リンス液ノズル23に接続されたリンス液配管24と、リンス液配管24に介装されたリンス液バルブ25と、リンス液ノズル23が先端部に取り付けられた第2のノズルアーム26と、第2のノズルアーム26を揺動させることにより、リンス液ノズル23を移動させる第2のノズル移動ユニット27とを含む。
【0027】
リンス液バルブ25が開かれると、リンス液配管24からリンス液ノズル23に供給された水が、リンス液ノズル23から下方に吐出させられる。リンス液バルブ25が閉じられると、リンス液ノズル23からの水の吐出が停止させられる。第2のノズル移動ユニット27は、リンス液ノズル23から吐出された水が基板Wの上面に供給される処理位置と、リンス液ノズル23が平面視でスピンチャック5の側方に退避した退避位置との間でリンス液ノズル23を移動させる。
【0028】
リンス液ノズル23に供給されるリンス液は、たとえば、純水(脱イオン水:Deionzied Water)である。リンス液は、純水に限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水および希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
エッチング液ノズル18およびリンス液ノズル23の双方を、スキャンノズルであるとして説明しているが、エッチング液ノズル18およびリンス液ノズル23の少なくとも1つを、吐出口を静止した状態で処理液(エッチング液または水)を吐出する固定ノズルとして設けることもできる。
【0029】
対向板8は、基板Wとほぼ同じ径またはそれ未満の径を有する円板状をなしている。対向板8の下面には、基板Wの上面に対向する円形の対向面8aが形成されている。対向板8の上面および対向面8aは、それぞれ互いに平行な平坦面を有している。支持部材9の下面30に対向板8が吸着支持された状態で、対向面8aは水平姿勢をなす。
対向板8の材質として、耐洗紙(水に強い紙)を例示できる。この場合、対向板8は、軽量(エッチング液や水と比べて比重が小さい)であるだけでなく、低剛性を有している。より具体的には、対向板8の重さは35g以下である。
【0030】
支持部材9は、中空に形成された円板状の部材である。支持部材9は円形で平坦な下面30と、支持部材9の下面30に形成された複数の吸引口(たとえば、等間隔に配置された多数の吸引口)31と、支持部材9の内部に設けられた流通空間32とを含む。支持部材9には、中空に形成されたホルダ29が上方から固定されている。ホルダ29の内部には、上配管33が上下に延びて挿通している。支持部材9は、スピンチャック5の上方位置において、下面30が水平に沿い、かつその中心軸線A2が基板Wの回転軸線A1と一致した状態でホルダ29に保持されている。上配管33には、吸引配管(吸引手段)34の一端および気体供給配管35の一端がそれぞれ接続されている。
【0031】
ホルダ29には、支持部材昇降ユニット(支持部材昇降手段)36が結合されている。支持部材昇降ユニット36の駆動により、支持部材9の下面30が、スピンチャック5に保持された基板Wの上面に近接する近接位置と、スピンチャック5の上方に大きく退避した退避位置との間で昇降させられる。
吸引配管34には吸引バルブ37が介装されており、吸引配管34の他端は、吸引装置(図示しない)に接続されている。吸引装置は常時作動状態とされている。
【0032】
気体供給配管35には気体供給バルブ38が介装されており、気体供給配管35の他端には、エア供給源等の気体供給源からの気体が供給されるようになっている。
したがって、気体供給バルブ38が閉じられた状態で吸引バルブ37が開かれることにより、吸引配管34の内部、上配管33の内部および流通空間32の内部が強制的に排気されて、各吸引口31の周囲の雰囲気が当該吸引口31に吸引される。支持部材9の下面30が対向板8の上面に接近した状態で吸引バルブ37が開かれることにより、各吸引口31の内部が減圧され、対向板8が、支持部材9の下面30に吸着支持される。
【0033】
一方、吸引バルブ37が閉じられた状態で、気体供給バルブ38が開かれると、上配管33の内部および流通空間32に気体が供給され、各吸引口31の内部が元の圧力に復元する。支持部材9の下面30に吸着支持されている状態で、気体供給バルブ38が開かれることにより、対向板8が、支持部材9の下面30から離脱し、エッチング液の液膜(薬液の液膜)45上に対向板8が配置させられる。そして、支持部材9を下降させ、支持部材9の下面を対向板8に接近させた状態で、吸引口31の内部を吸引することにより、対向板8が支持部材9に支持される。これにより、基板Wの上面に形成されたエッチング液の液膜45(図3C参照)に対する対向面8aの接液、およびエッチング液の液膜45からの対向板8の退避の双方を、円滑に実現できる。
【0034】
カップ10は、スピンチャック5に保持されている基板Wよりも外方(回転軸線A1から離れる方向)に配置されている。カップ10は、それぞれ昇降可能に設けられた1つまたは複数個(図1ではたとえば4つ)の円筒状のガード39を含む。各ガード39は、円筒状であり、スピンチャック5を取り囲んでいる。各ガード39は、回転軸線A1に向かって斜め上方に延びる円筒状の傾斜部40と、傾斜部40の下端から下方に延びる円筒状の案内部41とを含む。
【0035】
カップ10の上端部には、支持部材9に支持されている対向板8の対向面8aを洗浄するための洗浄液ノズル42が設けられている。洗浄液ノズル42は、最も外側のガード39の傾斜部40に、吐出口を斜め上方に向けて設けられている。洗浄液ノズル42から吐出された洗浄液は、対向板8の対向面8aに着液し、これにより対向板8の対向面8aが洗浄される。洗浄液ノズル42には、洗浄液配管43が接続されている。洗浄液配管43には、当該洗浄液配管43を開閉するための洗浄液バルブ44が介装されている。洗浄液配管43から洗浄液ノズル42に供給される洗浄液として、たとえば水(DIW等)を例示できる。
【0036】
カップ10は、スピンベース16を取り囲んでいる。スピンチャック5が基板Wを回転させている状態で、処理液(エッチング液やリンス液など)が基板Wに供給されると、基板Wに供給された処理液が基板Wの周囲に振り切られる。処理液が基板Wに供給されるとき、上向きに開いたカップ10の上端部10aは、スピンベース16よりも上方に配置させられる。したがって、基板Wの周囲に排出された処理液は、カップ10によって受け止められる。そして、カップ10に受け止められた処理液は、図示しない回収装置または廃液装置に送られる。
【0037】
図2は、基板処理装置1によって行われるエッチング処理例について説明するためのフローチャートである。図3A〜3Hは、エッチング処理例を説明するための図解的な図である。
以下では、たとえば直径300mmの基板Wの表面(パターン形成面)に対し、エッチング処理が施される例について説明する。主として図1および図2を参照しながらエッチング処理例について説明する。図3A〜3Hについては適宜参照する。
【0038】
基板処理装置1の運転中には、吸引装置(図示しない)は常時稼働状態にある。基板処理装置1の運転開始時には、制御装置3が基板処理装置1を駆動することにより、またはオペレータの手作業により、支持部材9の下面30に対向板8が吸着支持される。
基板処理装置1によって基板Wが処理されるときには、チャンバ4内に基板Wが搬入される(ステップS1)。具体的には、制御装置3は、図3Aに示すように、エッチング液ノズル18(図1参照)、リンス液ノズル23(図1参照)、対向板8、支持部材9等のチャンバ4内の構成がスピンチャック5の上方から退避している状態で、搬送ロボット(図示しない)に基板Wをチャンバ4内に搬入させる。そして、制御装置3は、基板Wの表面(パターン形成面)が上に向けられた状態で、搬送ロボットに基板Wをスピンチャック5上に載置させる。その後、制御装置3は、基板Wがスピンチャック5に保持されている状態でスピンモータ14を回転させる。これにより、基板Wの回転が開始される(ステップS2)。制御装置3は、スピンチャック5上に基板Wが載置された後、搬送ロボットをチャンバ4内から退避させる。
【0039】
基板Wが所定の液盛り回転速度(たとえば、10〜150rpm)に達すると、次いで、基板Wの上面に対するエッチング液の吐出が開始される。具体的には、制御装置3は、第1のノズル移動ユニット22を制御して、図3Bに示すように、エッチング液ノズル18を退避位置から基板Wの上方に移動させる。エッチング液ノズル18が基板Wの上面中央部に配置された後、制御装置3は、エッチング液バルブ20を開いて、図3Bに示すように、回転状態の基板Wの上面中央部に向けてエッチング液ノズル18からエッチング液を吐出させる(ステップS3)。このときのエッチング液の吐出流量は、たとえば2(リットル/分)に設定されている。エッチング液ノズル18からのエッチング液は、基板Wの上面中央部に着液し、後続のエッチング液によって押されて基板W上を外方に広がっていく。基板Wが液盛り速度で回転しているから、エッチング液に作用する遠心力は小さい。そのため、基板Wに供給されたエッチング液は、基板Wの周囲に飛散せずに基板W上に溜まる。基板Wに対してエッチング液の供給し続けることにより、基板Wの上面の全域が、エッチング液の液膜によって覆われる。
【0040】
また、エッチング液の吐出開始からエッチング液吐出期間が経過すると、制御装置3は、エッチング液バルブ20を閉じて、エッチング液ノズル18からのエッチング液の吐出を停止させる(ステップS4)。その後、制御装置3は、第1のノズル移動ユニット22を制御して、図3Cに示すように、エッチング液ノズル18をスピンチャック5の上方から退避させる。
【0041】
また、エッチング液の吐出開始から、前記のエッチング液吐出期間が経過すると、制御装置3は、図3Cに示すように、スピンモータ14を制御して基板Wの回転を停止させる(ステップS5)。基板Wの回転停止により、基板Wの周縁部からのエッチング液の流出がより一層抑制され、基板Wの上面に、その全域を覆うパドル状のエッチング液の液膜45が保持される。
【0042】
この明細書において、「パドル状」とは、基板Wの上面に存在する液(エッチング液)に零または小さな遠心力しか作用せず、その結果、基板Wの上面に液が表面張力および重力により滞留して液膜を形成する状態をいう。この状態においては、基板Wの上面の液膜に作用する遠心力が、基板Wの上面と液膜との間で作用する表面張力および重力の和よりも小さいかあるいは拮抗する。そして、この実施形態では、基板Wの回転が停止させられるので、基板Wの上面に存在するエッチング液に遠心力が作用しない。そのため、基板Wの上面に、エッチング液の液膜45が安定して保持される。
【0043】
また、エッチング液ノズル18がスピンチャック5の上方から退避させられた後、制御装置3は、支持部材昇降ユニット36を制御して、図3Dに示すように、支持部材9を退避位置から近接位置まで下降させる。支持部材9の近接位置は、スピンチャック5の上方において、支持部材9に支持されている対向板8の対向面8aが、エッチング液の液膜45に接液可能な位置である。支持部材9が近接位置に位置する状態において、支持部材9に支持されている対向板8の対向面8aと、スピンチャックに保持されている基板Wの上面との間隔は、たとえば1mmである。支持部材9が近接位置に配置させられることにより、対向板8の対向面8aがエッチング液の液膜45に接液する(ステップS6)。
【0044】
この状態で、制御装置3は、吸引バルブ37を閉じて各吸引口31からの吸引を停止すると共に、図3Dに示すように、気体供給バルブ38を開いて上配管33に気体を供給する。これにより、支持部材9による対向板8の吸着が解除される。これにより、対向板8がパドル状のエッチング液の液膜45上に浮く。そのため、対向板8がエッチング液の液膜45の上面に配置される。そして、対向板8は、エッチング液の液膜45の表面張力により、液膜45の上面に保持される。つまり、対向板8の吸着解除後、気体供給バルブ38が閉じられる。エッチング液の液膜45への対向板8の受け渡しが完了した後、制御装置3は、支持部材昇降ユニット36を制御して、図3Eに示すように支持部材9を退避位置まで上昇させる。
【0045】
その後、そのままの静止状態が所定の期間に亘って維持される。これにより、基板Wの上面の全域に、パドル状のエッチング液の液膜45を用いたエッチングが行われる(ステップS7)。
エッチング液の吐出停止から予め定める時間が経過すると、制御装置3は、支持部材昇降ユニット36を制御して、図3Fに示すように、支持部材9を退避位置から近接位置まで下降させる。この状態で、支持部材9の下面30は、対向板8の上面に近接または接触している。そして、制御装置3は、吸引バルブ37を開いて各吸引口31からの吸引を開始する。これにより、対向板8が支持部材9の下面30に吸着支持される。支持部材9への対向板8の受け渡しが完了した後、制御装置3は、支持部材昇降ユニット36を制御して、支持部材9を退避位置まで上昇させる。これにより、対向板8(対向面8a)が基板Wの上面から退避する(ステップS8)。
【0046】
対向板8の退避後、制御装置3は、スピンモータ14を制御して、基板Wの回転を再開させ(ステップS9)、その回転速度を液処理速度(たとえば約300rpm)まで上昇させ、この液処理速度に維持する。これにより、基板Wの上面のエッチング液は、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの上面周縁部から飛散し、その結果、基板Wの上面においてエッチング液の液膜45は消失する。
【0047】
次いで、リンス液を基板Wに供給するリンス処理(ステップS10)が行われる。具体的には、制御装置3は、第2のノズル移動ユニット27を制御して、図3Gに示すように、リンス液ノズル23を退避位置から基板Wの中央部の上方に移動させる。その後、制御装置3は、リンス液バルブ25を開いて、回転状態の基板Wの上面の中央部に向けてリンス液ノズル23からリンス液を吐出させる。リンス液により、基板Wの上面に付着しているエッチング液が洗い流される。基板Wの上面に供給されたリンス液は、基板Wの上面周縁部から基板Wの側方に向けて飛散し、カップ10に受け止められた後、排液処理される。
【0048】
また、リンス処理(S10)に並行して、対向板8の対向面8aが洗浄液を用いて洗浄される(S10:対向面洗浄)。具体的には、制御装置3は洗浄液バルブ44を開いて、図3Hに示すように、支持部材9に支持されている対向板8の対向面8aに洗浄液を供給する。この実施形態では、洗浄液として水(たとえばDIW)が用いられる。これにより、対向板8の対向面8aを洗浄できる。対向板8に供給された洗浄液が落液し、基板Wの上面に供給される。洗浄液は、リンス液と共に、基板Wの上面周縁部から基板Wの側方に向けて飛散し、カップ10に受け止められた後、排液処理される。
【0049】
リンス液の吐出開始から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、リンス液バルブ25を閉じてリンス液の吐出を停止する。これにより、リンス処理(S10)が終了する。その後、制御装置3は、第2のノズル移動ユニット27を制御して、図3Hに示すように、リンス液ノズル23をスピンチャック5の上方から退避させる。
また、洗浄液の吐出開始から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、洗浄液バルブ44を閉じて洗浄液の吐出を停止する。これにより、対向面洗浄(S10)が終了する。
【0050】
リンス処理(S10)および対向面洗浄(S10)の終了後、次いで、制御装置3は、スピンモータ14を制御して、基板Wの回転速度を振り切り乾燥速度(たとえば数千rpm)まで加速する。これにより、基板Wの上面に付着しているリンス液が振り切られて基板Wが乾燥される(S8:乾燥工程)。
乾燥工程(S8)が予め定める期間に亘って行われると、制御装置3は、スピンモータ14を制御して、スピンチャック5の回転(基板Wの回転)を停止させる(ステップS9)。
【0051】
これにより、一枚の基板Wに対するエッチング処理が終了し、制御装置3は、基板Wを搬入したときと同様に、処理済みの基板Wを搬送ロボットによってチャンバ4内から搬出させる(ステップS10)。
以上によりこの実施形態によれば、基板Wの上面の全域を覆うエッチング液の液膜45に対向板8の対向面8aが接液しながら、対向板8が当該エッチング液の液膜45の上面によって保持される(対向板8が液膜45上に浮く)。この状態では、エッチング液の液膜45の上方が対向板8によって覆われている。そのため、エッチング液の液膜45が周囲の雰囲気から遮断される。これにより、エッチング液の液膜45が周囲の雰囲気から影響を受けることを回避できる。具体的には、周囲の雰囲気によるエッチング液の蒸発や、周囲の気流による、液膜45からのエッチング液の流出を防止または抑制できる。
【0052】
ところで、エッチング液としてふっ酸を用いる場合には、ふっ酸処理の進行に伴って基板Wの上面が疎水性を呈するようになることがあり、この場合、基板Wの上面において、その後に供給されるふっ酸が濡れ難くなり、その結果、ふっ酸の液膜に割れが生じ、基板Wの上面にふっ酸の液膜を保持し続けることが困難になることも考えられる。
しかしながら、この実施形態では、エッチング液(ふっ酸)の液膜45の上面に対向面8aが接液している(エッチング液(ふっ酸)の液膜45が対向面8aに接触している)から、対向面8aとエッチング液(ふっ酸)の液膜45の上面との間に表面張力が作用し、エッチング液(ふっ酸)が膜状を保持し易い。そのため、エッチング液としてふっ酸を用いる場合であっても、基板Wの上面にエッチング液の液膜45を保持できる。
【0053】
これにより、エッチング液の液膜45を基板Wの上面に安定して保持させ続けることができ、ゆえに、エッチング液の省液を図りながら基板Wの上面を処理できる。
ところで、エッチング液の消費量の低減を図るべく、エッチング液の液膜45の薄膜化、すなわち、対向板8と基板Wの上面との間隔はできるだけ微小であることが望ましい。しかしながら、仮に、アーム等を支持装置で、対向部材を、基板Wの上面との間隔が微小になるように支持すると、支持装置の組み立て精度や、支持装置を構成する各部品の加工精度の誤差があるから、対向部材と基板Wの上面との間の間隔を微小に設定すると、対向部材が基板Wの上面に当るおそれがある。そして、対向部材が高い剛性を有している場合には、対向部材が基板Wに当ると基板Wや当該対向部材が破損するから、対向部材と基板Wの上面との間の間隔を微小に設けることはできない(当該間隔には限界値がある)。そのため、エッチング液の省液を十分に図ることができなかった。
【0054】
これに対し、この実施形態では、エッチング液の液膜45の上面に対向板8が保持される(エッチング液の液膜45上に浮いている)。エッチング液の液膜45によって対向板8が保持されているから、仮に対向板8が基板Wの上面に当っても、その際の衝撃は小さい。しかも、対向板8が低剛性材料を用いて形成され、かつ軽量であるので、その衝撃はより一層小さい。したがって、対向板8の対向面8aと基板Wの上面との間の間隔を微小に設けることができる。これにより、基板Wの上面に保持されるエッチング液の液膜45の厚みを薄くでき、ゆえに、エッチング液の消費量の低減をより一層図ることができる。
【0055】
また、図3Iは、エッチング処理例の変形例を説明するための図解的な図である。
エッチング処理例の変形例では、図2に二点鎖線で示すように、エッチング(S7)の終了後、制御装置3は、第2のノズル移動ユニット27を制御して、リンス液ノズル23を基板Wの中央部の上方に配置すると共に、リンス液バルブ25を開いて、基板W上面のエッチング液の液膜45に保持されている対向板8の上面に向けてリンス液ノズル23からリンス液を吐出させる。これにより、対向板8の上面に洗浄液を供給でき、これにより、対向板8の上面を洗浄できる。その後、制御装置3は、支持部材昇降ユニット36を制御して、図3Fに示すように、支持部材9を退避位置から近接位置まで下降させると共に、吸引バルブ37を開いて各吸引口31からの吸引を開始する。これにより、対向板8が支持部材9の下面30に吸着支持される。その後、制御装置3は、支持部材昇降ユニット36を制御して、支持部材9を退避位置まで上昇させる。これにより、対向板8(対向面30)が基板Wの上面から退避する(ステップS8)。
【0056】
図4Aおよび図4Bは、本発明の他の実施形態に係る基板処理装置201によって行われるエッチング処理例を示す図である。
図4Aおよび図4Bの実施形態において、図1図3Iの実施形態に示された各部に対応する部分には、図1図3Iの場合と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。
基板処理装置201が、図1図3Iの実施形態に係る基板処理装置1と相違する点は、エッチング処理(図2のS7)において、対向板(対向部材)202が、エッチング液の液膜45に対向面202aが接液しながら、スピンチャック5に含まれる複数個の挟持部材17に保持される点にある。各挟持部材17の上端部17aは、挟持部材17によって支持される基板Wの上面よりも、微小量だけ高く設けられている。
【0057】
対向部材として、対向板8に代えて対向板202が採用される。対向板202は、複数の挟持部材17が配置される円周上と同等の径あるいはそれ以上の径を有する円板状をなしている。対向板202は、耐洗紙製ではなく、たとえば樹脂製である。対向板202は、高い剛性を有しており、対向板202の比重は、エッチング液よりも大きい。
対向板202の下面には、基板Wの上面に対向する円形の対向面202aが形成されている。対向板202の対向面202aは、平坦面を有している。
【0058】
対向板202は、支持アーム203によって支持されている。支持アーム203には、対向板202を昇降させるためのアーム昇降ユニット204が結合されている。アーム昇降ユニット204の駆動により、対向板202の対向面202aが、スピンチャック5に保持された基板Wの上面に近接する近接位置と、スピンチャック5の上方に大きく退避した退避位置との間で昇降させられる。
【0059】
対向板202の上面には、筒状のホルダ205が固定されている。ホルダ205の上端部には、径方向外方に向けて張り出すフランジ部206が設けられている。支持アーム203の先端部には、支持環207が設けられている。支持環207の内径は、ホルダ205の外形よりも大きく、かつフランジ部206の外径よりも小さく設けられている。ホルダ205が支持環207を上下に挿通している。
【0060】
図4Aおよび図4Bの実施形態に係る基板処理装置201では、図2のフローチャートに示す流れと同様の流れで、エッチング処理が実行される。図4Aには、エッチング液吐出開始(S3)時の状態を示し、図4Bには、対向面接液(S6)時の状態を示す。
対向板202が退避位置に配置されている状態では、対向板202に自重が作用し、対向板202に下向きの力が作用する。これにより、図4Aに示すように、フランジ部206の下面の周縁部が、支持環207の上端面に係合している。
【0061】
エッチング液ノズル18からのエッチング液の吐出開始からエッチング液吐出期間が経過すると、エッチング液の吐出が停止され、エッチング液ノズル18がスピンチャック5の上方から退避させられると共に、基板Wの回転が停止させられる(S4,S5)。これにより、図4Aに示すように、基板Wの上面に、その全域を覆うパドル状のエッチング液の液膜45が保持される。
【0062】
エッチング液ノズル18がスピンチャック5の上方から退避させられた後、制御装置3は、アーム昇降ユニット204を制御して、図4Bに示すように、支持アーム203を下降させて、対向板202を退避位置から下降させる。支持アーム203を下降させ続けると、やがて、対向面202aの周端部が各挟持部材17の上面と当接し、複数の挟持部材17の上端部17aに基板Wの周縁部が載置される。その状態からさらに支持アーム203を下降させることにより、対向板202が支持アーム203から離脱し、複数個の挟持部材17によって保持されるようになる。
【0063】
各挟持部材17の上端部17aは、挟持部材17によって支持される基板Wの上面よりも高いが、その差は微小量である。そのため、対向板202が複数の挟持部材17と係合する係合位置で、対向面202aと基板Wの上面とは微小間隔を介して隔てられている。そのため、基板Wの上面にエッチング液の液膜45が形成されている状態では、当該エッチング液の液膜45の上面に、対向板202の対向面202aが接液する。これにより、係合位置に位置する対向板202の対向面202aと、基板Wの上面との間がエッチング液により液密にされる。その後、そのままの静止状態が所定の期間に亘って維持される。これにより、基板Wの上面の全域に、パドル状のエッチング液の液膜45を用いたエッチングが行われる。
【0064】
以上により、図4Aおよび図4Bの実施形態によれば、基板Wの上面の全域を覆うエッチング液の液膜45に対向板8の対向面8aが接液しながら、対向板8が複数の挟持部材17の上端部17aによって保持される。この状態では、エッチング液の液膜45の上方が対向板8によって覆われている。そのため、エッチング液の液膜45が周囲の雰囲気から遮断される。これにより、エッチング液の液膜45が周囲の雰囲気から影響を受けることを回避できる。具体的には、周囲の雰囲気によるエッチング液の蒸発や、周囲の気流による、液膜45からのエッチング液の流出を防止または抑制できる。
【0065】
ところで、エッチング液としてふっ酸を用いる場合には、ふっ酸処理の進行に伴って基板Wの上面が疎水性を呈するようになることがあり、この場合、基板Wの上面において、その後に供給されるふっ酸が濡れ難くなり、その結果、ふっ酸の液膜に割れが生じ、基板Wの上面にふっ酸の液膜を保持し続けることが困難になることも考えられる。
しかしながら、この実施形態では、エッチング液(ふっ酸)の液膜45の上面に対向面8aが接液している(エッチング液(ふっ酸)の液膜45が対向面8aに接触している)から、対向面8aとエッチング液(ふっ酸)の液膜45の上面との間に表面張力が作用し、エッチング液(ふっ酸)が膜状を保持し易い。そのため、エッチング液としてふっ酸を用いる場合であっても、基板Wの上面にエッチング液の液膜45を保持できる。
【0066】
これにより、エッチング液の液膜45を基板Wの上面に安定して保持させ続けることができ、ゆえに、エッチング液の省液を図りながら基板Wの上面を処理できる。
以上、この発明の2つの実施形態について説明したが、本発明はさらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、図1図3Iの実施形態において、対向板8の材質を、耐洗紙以外の紙材とすることもできる。この場合にも、対向板を、低剛性かつ軽量(エッチング液や水と比べて比重が小さい)とすることができる。
【0067】
また、対向板8の材質を、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂材料とすることもできる。この場合、対向板を、軽量(エッチング液や水と比べて比重が小さい)とすることができる。
また、図1図3Iの実施形態において、支持部材9は、中心軸線A2まわりに回転可能に設けられてもよい。とくに、図3Gに示す対向面洗浄時において、対向面8aへの洗浄液の供給に並行して、支持部材9を回転させて対向板8を中心軸線A2まわりに回転させることにより、対向面8aの全域に(広範囲に亘って)洗浄液を供給できる。これにより、対向面8aの全域を良好に洗浄できる。
【0068】
また、図1図3Iの実施形態のエッチング処理において、エッチング処理毎に対向面洗浄(図2のS10)を行うのではなく、所定の複数枚のエッチング処理を空けて、対向面洗浄を行うようにしてもよい。
また、図1図3Iの実施形態のエッチング処理において、対向面洗浄(図2のS10)を、リンス処理(図2のS10)に並行して行うとしたが、リンス処理とは別に行ってもよい。
【0069】
また、各実施形態のエッチング処理では、基板Wを停止させた状態でエッチング(図2のS7参照)を行うものとして説明したが、エッチング(S7)において基板Wの回転を完全に停止させずに、低速(たとえば10rpm程度)で回転させるようにしてもよい。このときの速度は、回転に伴って発生する遠心力の大きさが、基板Wの上面とエッチング液の液膜45との間で作用する表面張力および重力の和よりも小さいかあるいは拮抗する程度の低速である。この場合、基板Wの上面にエッチング液が表面張力および重力により滞留して、エッチング液の液膜45を形成する。
【0070】
また、前述の各実施形態では、基板処理装置1,201がエッチング処理を行い、パドル状のエッチング液の液膜45を用いて基板の上面を処理する場合について説明したが、本発明は、エッチング処理以外の他の薬液処理(たとえば洗浄処理)にも適用できる。
また、前述の各実施形態では、基板処理装置1,201が円板状の基板Wを処理する装置である場合について説明したが、基板処理装置1,201が、液晶表示装置用ガラス基板などの多角形の基板を処理する装置であってもよい。
【0071】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能で
ある。
【符号の説明】
【0072】
1 基板処理装置
5 スピンチャック(基板保持手段)
6 エッチング液供給ユニット(薬液供給手段)
8 対向板(対向部材)
8a 対向面
9 支持部材
30 下面
31 吸引口
34 吸引配管(吸引手段)
36 支持部材昇降ユニット(支持部材昇降手段)
45 エッチング液の液膜(薬液の液膜)
201 基板処理装置
202 対向板(対向部材)
W 基板
図1
図2
図3A-3B】
図3C-3D】
図3E-3F】
図3G-3H】
図3I
図4A-4B】