特許第6499478号(P6499478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6499478蒸気発生器及び原子力プラント、並びに蒸気発生器の耐震補強方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6499478
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】蒸気発生器及び原子力プラント、並びに蒸気発生器の耐震補強方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/20 20060101AFI20190401BHJP
   F28F 9/013 20060101ALI20190401BHJP
   F28D 7/16 20060101ALI20190401BHJP
   F22B 1/16 20060101ALI20190401BHJP
   G21D 1/00 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   F22B37/20 D
   F28F9/013 B
   F28D7/16 D
   F22B1/16 C
   G21D1/00 SGDP
【請求項の数】24
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2015-43057(P2015-43057)
(22)【出願日】2015年3月5日
(65)【公開番号】特開2016-161266(P2016-161266A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】門出 匡胤
(72)【発明者】
【氏名】梅原 隆一
(72)【発明者】
【氏名】廣田 和生
(72)【発明者】
【氏名】峯野 朋乃
【審査官】 佐々木 訓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−108662(JP,A)
【文献】 特開平07−151487(JP,A)
【文献】 特開2014−006165(JP,A)
【文献】 米国特許第05072786(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 1/00 − 37/78
F28D 1/00 − 13/00
F28F 9/00 − 9/26
G21D 1/00 − 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱管内を流れる流体との熱交換によって蒸気を生成するための蒸気発生器であって、
前記流体の入口側に位置する第1直管部と、前記流体の出口側に位置する第2直管部と、前記第1直管部と前記第2直管部との間に位置する曲り部と、をそれぞれ有する複数の伝熱管と、
前記複数の伝熱管の前記第1直管部及び前記第2直管部が挿通される複数の貫通孔が形成された管支持板と、
前記曲り部を含む平面に直交する面外方向への前記複数の伝熱管の動きを規制するための支持部材と、を備え、
曲率半径が異なる複数の前記曲り部が前記平面に平行な面内方向に沿って並び、且つ、曲率半径が同一の複数の前記曲り部が前記面外方向に並ぶように、前記複数の伝熱管の前記第1直管部及び前記第2直管部の通過する前記複数の貫通孔が前記管支持板の上面視において規則配列に従って配列されており、
前記規則配列は、前記面内方向に沿った少なくとも一列において前記伝熱管が存在しない配列欠陥部を含み、
前記支持部材は、前記配列欠陥部に設けられており、
前記支持部材は、前記管支持板に固定され、複数の前記曲り部の間において前記面内方向に沿って設けられた少なくとも一枚の仕切り板を含み、
前記複数の伝熱管の前記曲り部によって前記管支持板の上方に形成される半球形状のUベンド部の外形に沿って設けられた保持部材と、
前記面外方向において隣接する前記伝熱管の前記曲り部の間において設けられ、前記保持部材から前記Uベンド部の前記半球形状の径方向における内側に向かって延在する複数の振止め部材と、をさらに備え、
前記仕切り板は、前記複数の振止め部材によって両側から挟まれており、
前記仕切り板は、前記Uベンド部の前記外形に沿った円弧状の縁部を有し、
前記縁部は、前記保持部材に固定される
ことを特徴とする蒸気発生器。
【請求項2】
前記蒸気発生器の内壁に支持され、且つ、前記Uベンド部を囲む円環支持部をさらに備え、
前記円環支持部に設けた凹部に前記仕切り板の縁部が遊嵌されていることを特徴とする請求項に記載の蒸気発生器。
【請求項3】
前記仕切り板には、少なくとも一つの開口が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の蒸気発生器。
【請求項4】
前記開口は、開口径が最小となるオリフィス部を有することを特徴とする請求項に記載の蒸気発生器。
【請求項5】
前記少なくとも一枚の仕切り板は、前記面外方向に並ぶように前記面内方向に沿って設けられた複数の仕切り板を含むことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の蒸気発生器。
【請求項6】
伝熱管内を流れる流体との熱交換によって蒸気を生成するための蒸気発生器であって、
前記流体の入口側に位置する第1直管部と、前記流体の出口側に位置する第2直管部と、前記第1直管部と前記第2直管部との間に位置する曲り部と、をそれぞれ有する複数の伝熱管と、
前記複数の伝熱管の前記第1直管部及び前記第2直管部が挿通される複数の貫通孔が形成された管支持板と、
前記曲り部を含む平面に直交する面外方向への前記複数の伝熱管の動きを規制するための支持部材と、を備え、
曲率半径が異なる複数の前記曲り部が前記平面に平行な面内方向に沿って並び、且つ、曲率半径が同一の複数の前記曲り部が前記面外方向に並ぶように、前記複数の伝熱管の前記第1直管部及び前記第2直管部の通過する前記複数の貫通孔が前記管支持板の上面視において規則配列に従って配列されており、
前記規則配列は、前記面内方向に沿った少なくとも一列において前記伝熱管が存在しない配列欠陥部を含み、
前記支持部材は、前記配列欠陥部に設けられており、
前記支持部材は、前記面内方向に沿って設けられ、且つ、前記曲り部よりも剛性が高い少なくとも一本の湾曲支持棒を含むことを特徴とする蒸気発生器。
【請求項7】
前記湾曲支持棒は、前記伝熱管と同一の直径を有し、且つ、中実であることを特徴とする請求項に記載の蒸気発生器。
【請求項8】
前記伝熱管よりも管厚又は管径が大きい少なくとも一本の高剛性伝熱管をさらに備え、
前記湾曲支持棒は、前記高剛性伝熱管の曲り部であることを特徴とする請求項に記載の蒸気発生器。
【請求項9】
複数の前記湾曲支持棒が、互いに連結されたことを特徴とする請求項6乃至8の何れか一項に記載の蒸気発生器。
【請求項10】
前記複数の伝熱管の前記曲り部が、前記管支持板の上方において半球形状のUベンド部を形成しており、
前記面外方向において隣接する前記伝熱管の前記曲り部の間において設けられ、前記Uベンド部の前記半球形状の径方向に沿って延在する複数の振止め部材と、をさらに備え、
前記湾曲支持棒は、
前記平面に平行な面内に設けられる中空湾曲管部と、
少なくとも、前記面外方向から視たときに前記振止め部材と交差する前記中空湾曲管部の補強領域において、前記中空湾曲管部の内部に設けられる充填部材と、
を含むことを特徴とする請求項6、8、又は9に記載の蒸気発生器。
【請求項11】
複数の前記湾曲支持棒と複数の前記振止め部材とが、前記面外方向において交互に配列され、
前記面外方向に並んだ前記中空湾曲管部の前記補強領域、該補強領域内の前記充填部材、および、前記振止め部材によって、前記Uベンド部を前記面外方向に貫通する荷重伝達経路が形成されていることを特徴とする請求項10に記載の蒸気発生器。
【請求項12】
前記蒸気発生器の内壁に支持され、且つ、前記Uベンド部を囲む円環支持部をさらに備え、
前記荷重伝達経路の両端において前記湾曲支持棒又は前記振止め部材が、前記円環支持部に設けた凹部に遊嵌されていることを特徴とする請求項11に記載の蒸気発生器。
【請求項13】
前記充填部材は、前記中空湾曲管部の前記補強領域及び該補強領域の両側に位置する一対の前記振止め部材を含む前記中空湾曲管部の管長方向に沿った断面内に設けられた複数のセクションによって構成されることを特徴とする請求項10乃至12の何れか一項に記載の蒸気発生器。
【請求項14】
前記湾曲支持棒は、一部の前記伝熱管の内部に前記充填部材を設置することで形成されたことを特徴とする請求項10乃至13の何れか一項に記載の蒸気発生器。
【請求項15】
伝熱管内を流れる流体との熱交換によって蒸気を生成するための蒸気発生器であって、
前記流体の入口側に位置する第1直管部と、前記流体の出口側に位置する第2直管部と、前記第1直管部と前記第2直管部との間に位置する曲り部と、をそれぞれ有する複数の伝熱管と、
前記複数の伝熱管の前記第1直管部及び前記第2直管部が挿通される複数の貫通孔が形成された管支持板と、
前記曲り部を含む平面に直交する面外方向への前記複数の伝熱管の動きを規制するための支持部材と、を備え、
曲率半径が異なる複数の前記曲り部が前記平面に平行な面内方向に沿って並び、且つ、曲率半径が同一の複数の前記曲り部が前記面外方向に並ぶように、前記複数の伝熱管の前記第1直管部及び前記第2直管部の通過する前記複数の貫通孔が前記管支持板の上面視において規則配列に従って配列されており、
前記規則配列は、前記面外方向に沿った少なくとも一列において前記伝熱管が存在しない配列欠陥部を含み、
前記支持部材は、前記配列欠陥部に設けられており、
前記支持部材は、前記面外方向に沿って水平方向に延在し、前記蒸気発生器の内壁に両端が支持される少なくとも一本の水平支持棒を含むことを特徴とする蒸気発生器。
【請求項16】
伝熱管内を流れる流体との熱交換によって蒸気を生成するための蒸気発生器であって、
前記流体の入口側に位置する第1直管部と、前記流体の出口側に位置する第2直管部と、前記第1直管部と前記第2直管部との間に位置する曲り部と、をそれぞれ有する複数の伝熱管と、
前記複数の伝熱管の前記第1直管部及び前記第2直管部が挿通される複数の貫通孔が形成された管支持板と、
前記曲り部を含む平面に直交する面外方向への前記複数の伝熱管の動きを規制するための支持部材と、を備え、
曲率半径が異なる複数の前記曲り部が前記平面に平行な面内方向に沿って並び、且つ、曲率半径が同一の複数の前記曲り部が前記面外方向に並ぶように、前記複数の伝熱管の前記第1直管部及び前記第2直管部の通過する前記複数の貫通孔が前記管支持板の上面視において規則配列に従って配列されており、
前記規則配列は、前記面内方向又は前記面外方向に沿った少なくとも一列において前記伝熱管が存在しない配列欠陥部を含み、
前記支持部材は、前記配列欠陥部に設けられており、
前記支持部材は、前記面外方向または前記面内方向に沿って水平方向に延在し、前記蒸気発生器の内壁に両端が支持される少なくとも一本の水平支持棒を含み、
前記蒸気発生器の内壁に支持され、且つ、前記複数の伝熱管の前記曲り部によって前記管支持板の上方に形成される半球形状のUベンド部を囲む円環支持部をさらに備え、
前記少なくとも一本の水平支持棒の前記両端は、前記円環支持部によって支持されていることを特徴とする蒸気発生器。
【請求項17】
一次冷却材を加熱するように構成された原子炉容器と、
二次冷却材の蒸気によって駆動されるように構成された蒸気タービンと、
前記一次冷却材との熱交換によって前記二次冷却材の前記蒸気を発生させるように構成された請求項1乃至16の何れか一項に記載の蒸気発生器と、
を備えることを特徴とする原子力プラント。
【請求項18】
流体の入口側に位置する第1直管部と、前記流体の出口側に位置する第2直管部と、前記第1直管部と前記第2直管部との間に位置する曲り部と、をそれぞれ有する複数の伝熱管と、前記複数の伝熱管の前記第1直管部及び前記第2直管部が挿通される複数の貫通孔が形成された管支持板と、を有し、前記伝熱管内を流れる前記流体との熱交換によって蒸気を生成するための蒸気発生器の耐震補強方法であって、
前記曲り部を含む平面に直交する面外方向への前記複数の伝熱管の動きを規制するための支持部材を前記蒸気発生器に設置する設置ステップを備え、
前記蒸気発生器では、曲率半径が異なる複数の前記曲り部が前記平面に平行な面内方向に沿って並び、且つ、曲率半径が同一の複数の前記曲り部が前記面外方向に並ぶように、前記複数の伝熱管の前記第1直管部及び前記第2直管部の通過する前記複数の貫通孔が前記管支持板の上面視において規則配列に従って配列されており、
前記設置ステップでは、
前記規則配列のうち前記面内方向に沿った少なくとも一列において、前記伝熱管に替えて、前記面内方向に沿って設けられ、且つ、前記曲り部よりも剛性が高い少なくとも一本の湾曲支持棒を前記支持部材として設置する
ことを特徴とする蒸気発生器の耐震補強方法。
【請求項19】
前記設置ステップでは、前記複数の伝熱管のうち一部である補強対象伝熱管の内部に充填部材を設けることで前記湾曲支持棒を形成することを特徴とする請求項18に記載の蒸気発生器の耐震補強方法。
【請求項20】
前記複数の伝熱管の前記曲り部が、前記管支持板の上方において半球形状のUベンド部を形成しており、
前記蒸気発生器は、前記面外方向において隣接する前記伝熱管の前記曲り部の間において設けられ、前記Uベンド部の前記半球形状の径方向に沿って延在する複数の振止め部材をさらに有し、
前記設置ステップでは、
前記面外方向から視たときに前記振止め部材と交差する前記補強対象伝熱管の補強領域において、前記補強対象伝熱管の内部に前記充填部材を設ける
ことを特徴とする請求項19に記載の蒸気発生器の耐震補強方法。
【請求項21】
複数の前記湾曲支持棒と複数の前記振止め部材とが、前記面外方向において交互に配列されており、
前記設置ステップでは、前記面外方向に並んだ前記補強対象伝熱管の前記補強領域、該補強領域内の前記充填部材、および、前記振止め部材によって、前記Uベンド部を前記面外方向に貫通する荷重伝達経路を形成することを特徴とする請求項20に記載の蒸気発生器の耐震補強方法。
【請求項22】
流体の入口側に位置する第1直管部と、前記流体の出口側に位置する第2直管部と、前記第1直管部と前記第2直管部との間に位置する曲り部と、をそれぞれ有する複数の伝熱管と、前記複数の伝熱管の前記第1直管部及び前記第2直管部が挿通される複数の貫通孔が形成された管支持板と、を有し、前記伝熱管内を流れる前記流体との熱交換によって蒸気を生成するための蒸気発生器の耐震補強方法であって、
前記曲り部を含む平面に直交する面外方向への前記複数の伝熱管の動きを規制するための支持部材を前記蒸気発生器に設置する設置ステップを備え、
前記蒸気発生器では、曲率半径が異なる複数の前記曲り部が前記平面に平行な面内方向に沿って並び、且つ、曲率半径が同一の複数の前記曲り部が前記面外方向に並ぶように、前記複数の伝熱管の前記第1直管部及び前記第2直管部の通過する前記複数の貫通孔が前記管支持板の上面視において規則配列に従って配列されており、
前記複数の伝熱管の前記曲り部が、前記管支持板の上方において半球形状のUベンド部を形成しており、
前記蒸気発生器は、
前記複数の伝熱管の前記曲り部によって前記管支持板の上方に形成される半球形状のUベンド部の外形に沿って設けられた保持部材と、
前記面外方向において隣接する前記伝熱管の前記曲り部の間において設けられ、前記保持部材から前記Uベンド部の前記半球形状の径方向における内側に向かって延在する複数の振止め部材と、
を有し、
前記設置ステップでは、
前記規則配列のうち前記面内方向に沿った少なくとも一列において、前記伝熱管に替えて、複数の前記曲り部の間において前記面内方向に沿って延在する前記支持部材としての仕切り板を前記管支持板に固定するとともに、
前記複数の振止め部材によって前記仕切り板を両側から挟んだ状態で、前記Uベンド部の前記外形に沿った円弧状の前記仕切り板の縁部を前記保持部材に固定する
ことを特徴とする蒸気発生器の耐震補強方法。
【請求項23】
流体の入口側に位置する第1直管部と、前記流体の出口側に位置する第2直管部と、前記第1直管部と前記第2直管部との間に位置する曲り部と、をそれぞれ有する複数の伝熱管と、前記複数の伝熱管の前記第1直管部及び前記第2直管部が挿通される複数の貫通孔が形成された管支持板と、を有し、前記伝熱管内を流れる前記流体との熱交換によって蒸気を生成するための蒸気発生器の耐震補強方法であって、
前記曲り部を含む平面に直交する面外方向への前記複数の伝熱管の動きを規制するための支持部材を前記蒸気発生器に設置する設置ステップを備え、
前記蒸気発生器では、曲率半径が異なる複数の前記曲り部が前記平面に平行な面内方向に沿って並び、且つ、曲率半径が同一の複数の前記曲り部が前記面外方向に並ぶように、前記複数の伝熱管の前記第1直管部及び前記第2直管部の通過する前記複数の貫通孔が前記管支持板の上面視において規則配列に従って配列されており、
前記設置ステップでは、
前記規則配列のうち前記面外方向に沿った少なくとも一列において、前記伝熱管に替えて、前記面外方向に沿って水平方向に延在し、前記蒸気発生器の内壁に両端が支持される少なくとも一本の水平支持棒を前記支持部材として設置する
ことを特徴とする蒸気発生器の耐震補強方法。
【請求項24】
流体の入口側に位置する第1直管部と、前記流体の出口側に位置する第2直管部と、前記第1直管部と前記第2直管部との間に位置する曲り部と、をそれぞれ有する複数の伝熱管と、前記複数の伝熱管の前記第1直管部及び前記第2直管部が挿通される複数の貫通孔が形成された管支持板と、を有し、前記伝熱管内を流れる前記流体との熱交換によって蒸気を生成するための蒸気発生器の耐震補強方法であって、
前記曲り部を含む平面に直交する面外方向への前記複数の伝熱管の動きを規制するための支持部材を前記蒸気発生器に設置する設置ステップを備え、
前記蒸気発生器では、曲率半径が異なる複数の前記曲り部が前記平面に平行な面内方向に沿って並び、且つ、曲率半径が同一の複数の前記曲り部が前記面外方向に並ぶように、前記複数の伝熱管の前記第1直管部及び前記第2直管部の通過する前記複数の貫通孔が前記管支持板の上面視において規則配列に従って配列されており、
前記蒸気発生器は、前記蒸気発生器の内壁に支持され、且つ、前記複数の伝熱管の前記曲り部によって前記管支持板の上方に形成される半球形状のUベンド部を囲む円環支持部をさらに有し、
前記設置ステップでは、
前記規則配列のうち前記面外方向又は前記面内方向に沿った少なくとも一列において、前記伝熱管に替えて、前記面外方向又は前記面内方向に沿って水平方向に延在する前記支持部材としての少なくとも一本の水平支持棒を配置し、
前記円環支持部によって前記水平支持棒の両端を支持させる
ことを特徴とする蒸気発生器の耐震補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、伝熱管内を流れる流体との熱交換によって蒸気を生成するための蒸気発生器、及び該蒸気発生器を備える原子力プラント、並びに蒸気発生器の耐震補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、蒸気発生器の伝熱管構造として、鉛直方向に配列された複数の直管部が、U字形状の曲り部によって互いに連結された構造が知られている。複数の曲り部の集合体は、通常、Uベンド部と称される。
Uベンド部における耐震構造として、例えば特許文献1には、Uベンド部において複数の伝熱管を保持する部材を支持部材によって固定する構造が開示されている。また、特許文献2には、支持部材を介してUベンド部の伝熱管を蒸気発生器の容器(胴部)に固定する構造が開示されている。
【0003】
さらに、特許文献3には、Uベンド部の耐震性及び流動振動に対する耐性を向上させることができるUベンド部の支持構造が開示されている。ここで、流体励起振動は、Uベンド部の伝熱管の周囲を流れる二次冷却水や、Uベンド部の伝熱管内を流れる一次冷却水によって発生する振動である。具体的には、この蒸気発生器は、Uベンド部と管群外筒との間においてUベンド部を取り囲むように設けられる第1の支持部材と、第1の支持部材と管群外筒との間に設けられる第2の支持部材と、第2の支持部材を支持する第3の支持部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6772832号明細書
【特許文献2】米国特許第5692557号明細書
【特許文献3】特開2013−011380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、蒸気発生器の耐震性向上の要求が高まっていることから、蒸気発生器の耐震裕度をより一層向上させることが求められている。一方、蒸気発生器の高効率化を目的として、蒸気発生器の大型化及び伝熱管の小径化が進んでおり、蒸気発生器の重量が増加する傾向にある。そのため、地震等の振動に対して伝熱管の揺れが大きくなる懸念がある。蒸気発生器の重量軽減のために伝熱管の薄肉化が図られているが、伝熱管の揺れの観点からは、薄肉化により伝熱管の剛性が低下して伝熱管の揺れを促進する可能性がある。
そのため、高効率化に対応した蒸気発生器に対しても高い耐震性能を実現できる構造が望まれている。
【0006】
この点、特許文献3に記載の蒸気発生器では第1の支持部材、第2の支持部材及び第3の支持部材によって耐震性能が向上しているが、近年の蒸気発生器の耐震性能に対する要求の高まりから、さらなる耐震性能の向上が可能な蒸気発生器の開発が期待されている。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、伝熱管の曲り部における耐震性を向上し得る蒸気発生器及び原子力プラント、並びに蒸気発生器の耐震補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る蒸気発生器は、
伝熱管内を流れる流体との熱交換によって蒸気を生成するための蒸気発生器であって、
前記流体の入口側に位置する第1直管部と、前記流体の出口側に位置する第2直管部と、前記第1直管部と前記第2直管部との間に位置する曲り部と、をそれぞれ有する複数の伝熱管と、
前記複数の伝熱管の前記第1直管部及び前記第2直管部が挿通される複数の貫通孔が形成された管支持板と、
前記曲り部を含む平面に直交する面外方向への前記複数の伝熱管の動きを規制するための支持部材と、を備え、
曲率半径が異なる複数の前記曲り部が前記平面に平行な面内方向に沿って並び、且つ、曲率半径が同一の複数の前記曲り部が前記面外方向に並ぶように、前記複数の伝熱管の前記第1直管部及び前記第2直管部の通過する前記複数の貫通孔が前記管支持板の上面視において規則配列に従って配列されており、
前記規則配列は、前記面内方向又は前記面外方向に沿った少なくとも一列において前記伝熱管が存在しない配列欠陥部を含み、
前記支持部材は、前記配列欠陥部の周囲に存在する複数の伝熱管の前記曲り部によって囲まれる空間の少なくとも一部に設けられていることを特徴とする。
【0009】
上記(1)の構成によれば、第1直管部及び第2直管部が通過する複数の貫通孔は管支持板の上面視において規則配列に従って配列されており、前記規則配列は、面内方向又は面外方向に沿った少なくとも一列において伝熱管が存在しない配列欠陥部を含む。すなわち、第1直管部及び第2直管部が挿通される貫通孔によって規定される規則配列のうち少なくとも一列が欠けており(配列欠陥部)、かかる配列欠陥部には第1直管部及び第2直管部が通過する貫通孔が存在しない。そして、配列欠陥部の周囲に存在する複数の伝熱管の曲り部によって囲まれる空間の少なくとも一部には、面外方向への伝熱管の動きを規制するための支持部材が設けられる。
これにより、面外方向への伝熱管の揺れが発生したとき、配列欠陥部の周囲の伝熱管の曲り部が支持部材に当接し、それ以上の変位が阻止される。また、他の伝熱管の曲り部についても、配列欠陥部の周囲の伝熱管の曲り部の変位が阻止される結果、面外方向への動きが規制される。よって、伝熱管群の曲り部における揺れを抑制でき、蒸気発生器の耐震性を向上させることができる。
また、配列欠陥部は少なくとも一本の伝熱管に相当する隙間を形成するため、この配列欠陥部に設けられる支持部材に十分な肉厚又は径を持たせることができる。このため、支持部材に対して十分な剛性を付与することができる。
さらに、既存の蒸気発生器に対する追加工事によって上記構成を適用する場合、複数の伝熱管の規則配列から少なくとも一列の伝熱管を排除して配列欠陥部を設ければよく、基本的な規則配列を大幅に変更することなく、上記構成を既存の設計に対して容易に導入することができる。但し、既存の伝熱管を利用して支持部材を構成する場合には、配列欠陥部に対応する位置に配置された伝熱管を取り除くことなく、この伝熱管を支持部材に改造してもよい。
【0010】
なお、支持部材は、伝熱管が格納される胴部に対して剛に支持されていてもよい。例えば、支持部材は、後述の振止め部材を介さずに胴部に直接的に支持されていてもよい。
この場合、支持部材と胴部との間の荷重伝達経路から剛性の低い部位(例えば振止め部材又は振止め部材と保持部材との間の接合部)を排除して、支持部材によるUベンド部の耐震性能の優れた向上効果を享受できる。
これに対し、仮に支持部材と胴部との間に剛性の低い部位(例えば振止め部材又は振止め部材と保持部材との間の接合部)が含まれている場合、支持部材自体の剛性を向上させても、伝熱管から支持部材が受けた荷重を胴部に伝達する過程で低剛性の部位が損傷してしまう可能性がある。
【0011】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記支持部材は、前記管支持板に固定され、複数の前記曲り部の間において前記面内方向に沿って設けられた少なくとも一枚の仕切り板を含む。
上記(2)の構成によれば、支持部材は、面内方向に沿って設けられた少なくとも一枚の仕切り板を含んでいる。これにより、面外方向への伝熱管の揺れが発生したとき、曲り部は仕切り板に当接してその動きが規制される。このとき、仕切り板は多数の伝熱管に当接するので、少ない設置枚数で曲り部集合体の大部分における揺れを抑制することができる。また、仕切り板によって、複数の曲り部が面外方向において分割されるので、一の仕切り板が支持すべき伝熱管の移動質量を小さくすることができる。
さらに、支持部材は管支持板に固定されているので、支持部材を胴部に対して剛に支持することができる。したがって、支持部材が、伝熱管の揺れに起因した曲り部の荷重を受けたときに、伝熱管から支持部材が受けた荷重を胴部に伝達する過程で低剛性の部位が損傷してしまうことを防止できる。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
前記複数の伝熱管の前記曲り部によって前記管支持板の上方に形成される半球形状のUベンド部の外形に沿って設けられた保持部材と、
前記面外方向において隣接する前記伝熱管の前記曲り部の間において設けられ、前記保持部材から前記Uベンド部の前記半球形状の径方向における内側に向かって延在する複数の振止め部材と、をさらに備え、
前記仕切り板は、前記複数の振止め部材によって両側から挟まれている。
上記(3)の構成では、面外方向において隣接する曲り部の間に設けられ、保持部材からUベンド部の半球形状の径方向における内側に向かって延在する複数の振止め部材を備えている。この振止め部材によって、主として曲り部の流体励起振動を抑制することができる。なお、前記流体励起振動とは、蒸気発生器の運転時において、伝熱管の周囲を流れる流体(例えば蒸気等の二次冷却水)や伝熱管内を流れる流体によって発生する曲り部の振動である。また、仕切り板が、複数の振止め部材によって両側から挟まれているので、複数の伝熱管の曲り部からの荷重を、振止め部材を介して仕切り板で受けることができる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記仕切り板は、前記Uベンド部の前記外形に沿った円弧状の縁部を有し、
前記縁部は、前記保持部材に固定される。
上記(4)の構成によれば、仕切り板の縁部が保持部材によって固定され、仕切り板の基部側が管支持板によって固定されるので、離間した2か所で仕切り板が固定されることとなり、仕切り板をより一層強固に固定することができる。
【0014】
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)又は(4)の構成において、
前記蒸気発生器の内壁に支持され、且つ、前記Uベンド部を囲む円環支持部をさらに備え、
前記円環支持部に設けた凹部に前記仕切り板の縁部が遊嵌されている。
上記(5)の構成によれば、蒸気発生器の内壁(例えば胴部の内壁)に支持された円環支持部の凹部に仕切り板の縁部を遊嵌したので、伝熱管の揺れ発生時において仕切り板及び円環支持部を介して蒸気発生器の内壁側に荷重を伝達することができ、伝熱管の揺れに起因した曲り部の荷重支持能力を向上させることができる。また、円環支持部に対して仕切り部が遊嵌されているので、内壁又は円環支持部と支持部材との熱伸び差に起因した熱応力を逃がすことができる。
【0015】
(6)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(5)の構成において、
前記仕切り板には、少なくとも一つの開口が設けられている。
上記(6)によれば、流体(例えば蒸気等の二次冷却水)が、仕切り板の開口を通って面外方向に沿って流れるため、仕切り板によってUベンド部における熱流動が阻害されることを抑制できる。
【0016】
(7)一実施形態では、上記(6)の構成において、
前記開口は、開口径が最小となるオリフィス部を有する。
上記(7)の構成によれば、仕切り板が面外方向に変位しようとしたとき、開口のオリフィス部を通過する流体(例えば蒸気等の二次冷却水)による抵抗力によって、仕切り板の変位を抑制することができる。
【0017】
(8)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(7)の何れかの構成において、
前記少なくとも一枚の仕切り板は、前記面外方向に並ぶように前記面内方向に沿って設けられた複数の仕切り板を含む。
上記(8)の構成によれば、複数の仕切り板によって、複数の曲り部の集合体(Uベンド部)が面外方向において3以上に分割されるため、一の仕切り板が受け持つ伝熱管の移動質量をより小さくすることができる。
【0018】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかの構成において、
前記支持部材は、前記面内方向に沿って設けられ、且つ、前記曲り部よりも剛性が高い少なくとも一本の湾曲支持棒を含む。
上記(9)の構成によれば、面外方向への伝熱管の揺れが発生したとき、曲り部は、該曲り部よりも剛性が高い湾曲支持棒に当接してその動きが規制される。また、湾曲支持棒は、曲り部を含む平面に対しての投影面積が比較的小さいため、湾曲支持棒が面外方向に沿った熱流動に与える影響を低減できる。さらに、上記構成においては、配列欠陥部を形成するために規則配列から排除する伝熱管本数は少なくてすむため、配列欠陥部による伝熱効率の低下を抑制することができる。
【0019】
(10)一実施形態では、上記(9)の構成において、
前記湾曲支持棒は、前記伝熱管と同一の直径を有し、且つ、中実である。
上記(10)の構成によれば、湾曲支持棒の支持に際して、伝熱管と同一の支持構造を利用することができる。例えば、伝熱管が貫通するように構成された管支持板によって該伝熱管を支持する場合、伝熱管と同様に湾曲支持棒も管支持板を貫通させることによって支持することができる。
【0020】
(11)他の実施形態では、上記(9)の構成において、
前記伝熱管よりも管厚又は管径が大きい少なくとも一本の高剛性伝熱管をさらに備え、
前記湾曲支持棒は、前記高剛性伝熱管の曲り部である。
上記(11)の構成によれば、伝熱管の揺れに起因した曲り部の荷重を高剛性伝熱管によって支持することができ、且つ、高剛性伝熱管内に流体(例えば一次冷却水)を流すことによって、配列欠陥部による伝熱効率の低下をより一層抑制することができる。
【0021】
(12)幾つかの実施形態では、上記(9)乃至(11)の何れかの構成において、
複数の前記湾曲支持棒が、互いに連結されている。
上記(12)の構成によれば、複数の前記湾曲支持棒が互いに連結されているので、湾曲支持棒の剛性を高くすることができる。すなわち、伝熱管の揺れに起因した曲り部の荷重支持能力を向上することができる。
【0022】
(13)幾つかの実施形態では、上記(9)、(11)又は(12)の何れかの構成において、
前記複数の伝熱管の前記曲り部が、前記管支持板の上方において半球形状のUベンド部を形成しており、
前記面外方向において隣接する前記伝熱管の前記曲り部の間において設けられ、前記Uベンド部の前記半球形状の径方向に沿って延在する複数の振止め部材と、をさらに備え、
前記湾曲支持棒は、
前記平面に平行な面内に設けられる中空湾曲管部と、
少なくとも、前記面外方向から視たときに前記振止め部材と交差する前記中空湾曲管部の補強領域において、前記中空湾曲管部の内部に設けられる充填部材と、
を含む。
【0023】
上記(13)の構成においては、曲り部における流体励起振動を抑制することを目的として、面外方向において隣接する伝熱管の曲り部の間に振止め部材を設けている。このような構成を備える場合、Uベンド部に振動(例えば地震等)が発生したときに、面外方向への伝熱管の揺れに起因した荷重が、振止め部材を介して、面外方向において隣接する伝熱管の曲り部間で伝達される。振止め部材と交差する領域に中空の伝熱管のみが配置される場合、振止め部材を介して伝達される荷重によって伝熱管がつぶれてUベンド部全体の振動を抑えることができなくなる可能性がある。
そこで、上記(13)の構成では、曲り部よりも剛性が高い湾曲支持棒を支持部材として備えており、この湾曲支持棒が、曲り部を含む平面に平行な面内に設けられる中空湾曲管部と、振止め部材と交差する補強領域において中空湾曲管部の内部に設けられる充填部材と、を含む。すなわち、振止め部材と交差する中空湾曲管部の補強領域においては、中空湾曲管部の内部に充填部材が詰められているので、中空の伝熱管よりも剛性が高くなる。伝熱管の面外方向への揺れに起因した荷重は、剛性の高い中空湾曲管部の補強領域に主として作用するため、中空湾曲管部がつぶれることなく荷重を受けることができる。よって、Uベンド部の耐震性を向上させることができる。
また、中空湾曲管部として伝熱管を用いてもよい。すなわち、伝熱管の内部に充填部材を設けて支持部材(湾曲支持棒)としてもよい。これにより、既存の蒸気発生器に対して容易に上記(13)の構成を実現するための耐震施工を行うことができる。
【0024】
(14)一実施形態では、上記(13)の構成において、
複数の前記湾曲支持棒と複数の前記振止め部材とが、前記面外方向において交互に配列され、
前記面外方向に並んだ前記中空湾曲管部の前記補強領域、該補強領域内の前記充填部材、および、前記振止め部材によって、前記Uベンド部を前記面外方向に貫通する荷重伝達経路が形成されている。
上記(14)の構成によれば、荷重伝達経路が、中空湾曲管部の補強領域、該補強領域内の充填部材、および、振止め部材によって、荷重伝達経路が形成されているので、荷重伝達経路上では荷重伝達方向における剛性を高くすることができる。よって、Uベンド部の耐震性を効果的に向上させることができる。
【0025】
(15)一実施形態では、上記(14)の構成において、
前記蒸気発生器の内壁に支持され、且つ、前記Uベンド部を囲む円環支持部をさらに備え、
前記荷重伝達経路の両端において前記湾曲支持棒又は前記振止め部材が、前記円環支持部に設けた凹部に遊嵌されている。
上記(15)の構成によれば、蒸気発生器の内壁に支持された円環支持部の凹部に、湾曲支持棒又は振止め部材が遊嵌されているので、円環支持部と湾曲支持棒又は振止め部材との熱伸び差に起因した応力を逃がしながら、荷重伝達経路からの荷重を内壁で受けることができる。
【0026】
(16)幾つかの実施形態では、上記(13)乃至(15)の構成において、
前記充填部材は、前記中空湾曲管部の前記補強領域及び該補強領域の両側に位置する一対の前記振止め部材を含む、前記中空湾曲管部の管長方向に沿った断面内に設けられた複数のセクションによって構成される。
上記(16)の構成によれば、複数のセクションからなる分割構造によって充填部材を形成するようにしたので、面外方向に沿った荷重伝達経路上において、充填部材の各セクションと中空湾曲管部の内壁面との間に隙間が形成されてしまうことを防止できる。これにより、中空湾曲管部のつぶれを防止し、Uベンド部全体の振動を効果的に抑制できる。
【0027】
(17)幾つかの実施形態では、上記(13)乃至(16)の構成において、
前記湾曲支持棒は、一部の前記伝熱管の内部に前記充填部材を設置することで形成されている。
上記(17)の構成によれば、既存の蒸気発生器に対して容易に上記(13)乃至(16)の構成を実現するための耐震施工を行うことができる。
【0028】
(18)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(17)の何れかの構成において、
前記支持部材は、前記面外方向または前記面内方向に沿って水平方向に延在し、前記蒸気発生器の内壁に両端が支持される少なくとも一本の水平支持棒を含む。
上記(18)の構成によれば、面外方向への伝熱管の揺れが発生したとき、曲り部は、水平支持棒に当接してその動きが規制される。また、水平支持棒は、面内方向における投影面積が比較的小さいため、水平支持棒が面外方向に沿った熱流動に与える影響を低減できる。
【0029】
(19)一実施形態では、上記(18)の構成において、
前記蒸気発生器の内壁に支持され、且つ、前記複数の伝熱管の前記曲り部によって前記管支持板の上方に形成される半球形状のUベンド部を囲む円環支持部をさらに備え、
前記少なくとも一本の水平支持棒の前記両端は、前記円環支持部によって支持されている。
上記(19)の構成によれば、蒸気発生器の内壁(例えば胴部の内壁)に剛に支持された円環支持部に水平支持棒の両端を支持させるようにしたので、伝熱管の揺れに起因した曲り部の荷重支持能力を向上させることができる。
【0030】
(20)本発明の少なくとも一実施形態に係る原子力プラントは、
一次冷却材を加熱するように構成された原子炉容器と、
二次冷却材の蒸気によって駆動されるように構成された蒸気タービンと、
前記一次冷却材との熱交換によって前記二次冷却材の前記蒸気を発生させるように構成された上記(1)乃至(19)の何れか一に記載の蒸気発生器と、
を備えることを特徴とする。
【0031】
上記(20)の構成によれば、上述の理由により、伝熱管の曲り部における揺れを抑制でき、蒸気発生器の耐震性能を向上させることが可能であるため、信頼性の高い原子力プラントを提供できる。
【0032】
(21)本発明の少なくとも一実施形態に係る蒸気発生器の耐震補強方法は、
流体の入口側に位置する第1直管部と、前記流体の出口側に位置する第2直管部と、前記第1直管部と前記第2直管部との間に位置する曲り部と、をそれぞれ有する複数の伝熱管と、前記複数の伝熱管の前記第1直管部及び前記第2直管部が挿通される複数の貫通孔が形成された管支持板と、を有し、前記伝熱管内を流れる前記流体との熱交換によって蒸気を生成するための蒸気発生器の耐震補強方法であって、
前記曲り部を含む平面に直交する面外方向への前記複数の伝熱管の動きを規制するための支持部材を前記蒸気発生器に設置する設置ステップを備え、
前記蒸気発生器では、曲率半径が異なる複数の前記曲り部が前記平面に平行な面内方向に沿って並び、且つ、曲率半径が同一の複数の前記曲り部が前記面外方向に並ぶように、前記複数の伝熱管の前記第1直管部及び前記第2直管部の通過する前記複数の貫通孔が前記管支持板の上面視において規則配列に従って配列されており、
前記設置ステップでは、前記規則配列のうち前記面内方向又は前記面外方向に沿った少なくとも一列において、前記伝熱管に替えて前記支持部材を設置することを特徴とする。
【0033】
上記(21)の方法によれば、面外方向への伝熱管の揺れが発生したとき、曲り部は支持部材に当接し、それ以上の変位が阻止されるので、曲り部の変位を小さくとどめることができる。よって、伝熱管の曲り部における揺れを抑制でき、蒸気発生器の耐震性を向上することができる。
また、複数の伝熱管の規則配列のうち面内方向又は面外方向に沿った少なくとも一列において、伝熱管に替えて支持部材を設置するようにしたので、既存の蒸気発生器に対して上記(21)の方法に従って容易に耐震施工を行うことができる。
【0034】
(22)幾つかの実施形態では、上記(21)の方法において、
前記設置ステップでは、前記面内方向に沿って設けられ、且つ、前記曲り部よりも剛性が高い少なくとも一本の湾曲支持棒を前記支持部材として設置する。
上記(22)の方法によれば、面外方向への伝熱管の揺れが発生したとき、曲り部は、該曲り部よりも剛性が高い湾曲支持棒に当接してその動きが規制されるため、曲り部の揺れを抑制できる。また、湾曲支持棒は、面内方向における投影面積が比較的小さいため、湾曲支持棒が面外方向に沿った熱流動に与える影響を低減できる。
【0035】
(23)一実施形態では、上記(22)の方法において、
前記設置ステップでは、前記複数の伝熱管のうち一部である補強対象伝熱管の内部に充填部材を設けることで前記湾曲支持棒を形成する。
上記(23)の方法によれば、既存の蒸気発生器に支持部材を設置する際に伝熱管の一部を除去する必要がないため、既存の蒸気発生器に対して耐震施工を容易に行うことができる。
【0036】
(24)一実施形態では、上記(23)の方法において、
前記複数の伝熱管の前記曲り部が、前記管支持板の上方において半球形状のUベンド部を形成しており、
前記蒸気発生器は、前記面外方向において隣接する前記伝熱管の前記曲り部の間において設けられ、前記Uベンド部の前記半球形状の径方向に沿って延在する複数の振止め部材と、をさらに有し、
前記設置ステップでは、
前記面外方向から視たときに前記振止め部材と交差する前記補強対象伝熱管の補強領域において、前記補強対象伝熱管の内部に前記充填部材を設ける。
上記(24)の方法によれば、振止め部材と交差する補強対象伝熱管の補強領域においては、補強対象伝熱管の内部に充填部材が詰められているので、中空の伝熱管よりも剛性が高くなる。面外方向の振動成分に起因した荷重は、剛性の高い補強対象伝熱管の補強領域に主として作用するため、補強対象伝熱管がつぶれることなく荷重を受けることができる。よって、Uベンド部の耐震性を向上させることができる。
【0037】
(25)一実施形態では、上記(24)の方法において、
複数の前記湾曲支持棒と複数の前記振止め部材とが、前記面外方向において交互に配列されており、
前記設置ステップでは、前記面外方向に並んだ前記補強対象伝熱管の前記補強領域、該補強領域内の前記充填部材、および、前記振止め部材によって、前記Uベンド部を前記面外方向に貫通する荷重伝達経路を形成する。
上記(25)の方法によれば、補強対象伝熱管の補強領域、該補強領域内の充填部材、および、振止め部材によって、荷重伝達経路が形成されているので、面外方向におけるUベンド部の剛性を高くすることができる。よって、Uベンド部の耐震性を効果的に向上させることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、地震等により伝熱管の面外方向への揺れが発生したとき、伝熱管の曲り部は支持部材に当接し、それ以上の変位が阻止されるので、曲り部の変位を小さくとどめることができる。よって、伝熱管の曲り部における揺れを抑制でき、蒸気発生器の耐震性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】一実施形態に係る蒸気発生器の断面図である。
図2】一実施形態に係る流体励起振動抑制構造を備えたUベンド部の斜視図である。
図3】一実施形態に係る流体励起振動抑制構造を備えたUベンド部の変形例を示す斜視図である。
図4図3に示すUベンド部の一部を拡大した図である。
図5A】一実施形態に係る管支持板の平面図である。
図5B】一実施形態に係る耐震構造を備えたUベンド部を示す断面図(A−A断面)である。
図6A】一実施形態の変形例に係る管支持板の平面図である。
図6B】一実施形態の変形例に係る耐震構造を備えたUベンド部を示す断面図(B−B断面)である。
図7】振止め部材による仕切り板の支持構造の一例を示す図である。
図8】第2保持部材(ブリッジ)による仕切り板の支持構造の一例を示す図である。
図9】円環支持部による仕切り板の支持構造の一例を示す図である。
図10A】仕切り板の一構成例を示す部分断面図である。
図10B】仕切り板の他の構成例を示す部分断面図である。
図11A】他の実施形態に係る管支持板の平面図である。
図11B】他の実施形態に係る耐震構造を備えたUベンド部を示す断面図(C−C断面)である。
図12A】さらに他の実施形態に係る管支持板の平面図である。
図12B】さらに他の実施形態に係る耐震構造を備えたUベンド部を示す断面図(D−D断面)である。
図13】湾曲支持棒の一構成例を示す部分側面図である。
図14】湾曲支持棒の他の構成例を示す部分側面図である。
図15A】他の実施形態の変形例に係る耐震構造を備えたUベンド部を示す断面図である。
図15B図15Aに示すUベンド部の断面図(E−E断面)である。
図16】一実施形態に係る蒸気発生器の耐震補強方法を説明するための図である。
図17A】充填部材の構成例を示す断面図である。
図17B図17AのF−F断面図である。
図18】ワイヤ端部の構成例を示す側面図である。
図19】充填部材の他の構成例を示す側面図である。
図20】充填部材のさらに他の構成例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
本実施形態では、最初に蒸気発生器の全体構成を説明した後、蒸気発生器の耐震構造について説明する。
【0041】
図1は、一実施形態に係る蒸気発生器1の概略構成図である。
幾つかの実施形態において、蒸気発生器1は、胴部2の内部に配設された複数の伝熱管3と、複数の伝熱管3が挿通される管支持板7と、を備えており、複数の伝熱管3内を流れる流体との熱交換によって蒸気を生成するように構成される。
複数の伝熱管3は、それぞれ、流体の入口側に位置する第1直管部4と、流体の出口側に位置する第2直管部5と、第1直管部4と第2直管部5との間に位置する曲がり部6と、を有している。
管支持板7には、第1直管部4及び第2直管部5が挿通される複数の貫通孔71(図5A図6A図11A、及び図12A参照)が形成されている。
【0042】
図1では、一実施形態として、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)を備えた原子力プラントに用いられる蒸気発生器1を例示している。加圧水型原子炉とは、原子炉冷却材および中性子減速材として軽水(一次冷却材)を使用するものであり、一次冷却材(一次冷却水)を炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水として蒸気発生器1に送る。蒸気発生器1では、高温高圧の一次冷却水の熱を二次冷却材(二次冷却水)に伝え、二次冷却水を水蒸気とする。この水蒸気は、蒸気タービンに送られて、該蒸気タービンを駆動する。蒸気タービンの出力軸には発電機の入力軸が連結されており、蒸気タービンによって発電機が駆動され、発電が行われる。
【0043】
ここで、図1に示す蒸気発生器1の具体的な構成例について説明する。
蒸気発生器1の胴部2は、上下方向に延在し、かつ、密閉された中空円筒形状であって、上半部に対して下半部の方が小径の構造物である。胴部2には、下端部側に水室8が配置され、上端部側に蒸気排出口15が配置されている。
胴部2の下半部内から上半部内にかけて、胴部2の内壁面と所定間隔をもって配置された円筒形状の管群外筒(内壁)9が設けられている。この管群外筒9は、その下端部が、胴部2の下半部内の下方に配置された管板10まで延在している。管群外筒9内には、複数の伝熱管3が配置されている。すなわち、管群外筒9の外周側に設けられた胴部2内に、管群外筒9及び複数の伝熱管3が格納されている。
【0044】
各伝熱管3は、上述したように、入口8c(入室8b)側に位置する第1直管部4と、出口8e(出室8d)側に位置する第2直管部5と、第1直管部4と第2直管部5との間に位置する曲がり部6と、を有している。図示される例では、第1直管部4及び第2直管部5は鉛直方向に延在しており、第1直管部4の上端に曲がり部6の一端が接続され、第2直管部5の上端に曲がり部6の他端が接続されている。すなわち、第1直管部4及び第2直管部5よりも上方に曲がり部6が位置している。また、第1直管部4及び第2直管部5の各下端部は、管板10に支持されており、第1直管部4及び第2直管部5の各中間部は、複数の管支持板7に支持されている。管支持板7には、上述したように複数の貫通孔71(図5A図6A図11A、及び図12A参照)が形成されており、この貫通孔71内に第1直管部4及び第2直管部5が主として非接触状態で貫通している。
複数の伝熱管3の曲がり部6が集合した部分は、Uベンド部20と称される。Uベンド部20は、半球形状をなしており、管支持板7の上方に形成されている。
なお、Uベンド部20の具体的な構成については後述する。
【0045】
胴部2の下端部に設けられた水室8は、隔壁8aによって内部空間が入室8bと出室8dに区画されている。入室8bには、胴部2の外部に通じる入口(入口ノズル)8cが形成されており、該入室8bに各伝熱管3の一端部が連通している。出室8dには、胴部の外部に通じる出口(出口ノズル)8eが形成されており、該出室8dに各伝熱管3の他端部が連通している。入口8cには、加圧水型原子炉から一次冷却水が送られる冷却水配管が連結されている。出口8eには、熱交換された後の一次冷却水を加圧水型原子炉に送る冷却水配管が連結されている。
【0046】
胴部2の上半部には、給水Wを蒸気Sと熱水とに分離する気水分離器11、及び、分離された蒸気Sの湿分を除去して乾き蒸気に近い状態とする湿分分離器12が設けられている。気水分離器11と複数の伝熱管3との間には、外部から胴部2内に二次冷却水を給水する給水管13が挿入されている。
胴部2の上端部には、蒸気排出口15が形成されている。また、胴部2の下半部内には、給水管13から胴部2内に給水された二次冷却水を、胴部2と管群外筒9との間を流下させて管板10で折り返させ、伝熱管3に沿って上昇させる給水路14が設けられている。なお、蒸気排出口15には、タービンに蒸気を送る冷却水配管が連結され、給水管13には、二次冷却水を供給するための冷却水配管が連結される。この二次冷却水は、タービンで使用された蒸気を復水器で冷却して復水させたものである。
【0047】
上記した構成を有する蒸気発生器1の作用に関して、加圧水型原子炉で加熱された一次冷却水は、蒸気発生器1の入口8cから入室8bに導入された後、入室8bから複数の伝熱管3内に導入され、各伝熱管3内を通って循環して出室8dに至り、出室8dから出口8eを介して蒸気発生器1の外部へ排出される。一方、復水器で冷却された二次冷却水は、給水管13に送られ、胴部2内の給水路14を通って複数の伝熱管3に沿って上昇する。このとき、胴部2内においては、高圧高温の一次冷却水と二次冷却水との間で熱交換が行われる。そして、冷却された一次冷却水は出室8dから加圧水型原子炉に戻される。一方、高圧高温の一次冷却水と熱交換した二次冷却水は、胴部2内を上昇し、気水分離器11で蒸気と熱水とに分離される。そして、分離された蒸気は、湿分分離器12で湿分を除去されてからタービンに送られる。
【0048】
一実施形態において、蒸気発生器1は、図2乃至図4に示すように、流体励起振動に対する耐性を向上させるための流体励起振動抑制構造をさらに備えていてもよい。図2は、一実施形態に係る流体励起振動抑制構造を備えたUベンド部20の斜視図である。図3は、一実施形態に係る流体励起振動抑制構造を備えたUベンド部20の変形例を示す斜視図である。図4は、図3に示すUベンド部20の一部を拡大した図である。
流体励起振動とは、Uベンド部20の伝熱管3(曲り部6)の周囲を流れる二次冷却水や、Uベンド部20の伝熱管3(曲り部6)内部を流れる一次冷却水によって発生する振動である。流体励起振動による伝熱管3の振動が大きくなると、伝熱管3同士が接触し、伝熱管3を摩耗させる可能性がある。以下の流体励起振動抑制構造は、流体励起振動を抑制する目的で用いられる。
【0049】
図2及び図3を参照して、まずUベンド部20の具体的な構成例について説明する。
Uベンド部20において、伝熱管3の曲り部6は、外側(上側)に向かうに従って曲り部6の曲率半径が大きなものが順次配列されており、このように配列されたものを、曲り部6を含む平面に直交する方向(面外方向)に重ねながら曲り部6の曲率半径を変化させることで、複数の伝熱管3の上端部を半球形状に形成している。これによって、曲り部6が集合配列されてなる全体として半球状をなすUベンド部20が構成されている。なお、図1に示す蒸気排出口15に最も近い部分がUベンド部20の頂部になる。
【0050】
一実施形態において、蒸気発生器1は、上述した流体励起振動抑制構造として、第1保持部材21と、振止め部材22と、を備える。
【0051】
第1保持部材21は、Uベンド部20の外形に沿って設けられる。
振止め部材22は、曲り部6を含む平面に直交する面外方向において、隣接する伝熱管3の曲り部6の間に設けられる。この振止め部材22は、第1保持部材21からUベンド部20の半球形状の径方向における内側に向かって延在している。すなわち、振止め金具は、後述する規則配列70(図5A図6A図11A、及び図12A参照)に対応して配置される伝熱管3同士の間に設けられる。
【0052】
具体的には、振止め部材22は、面外方向に重ねられた曲り部6の列の間に挿入されており、これにより面外方向に隣り合う曲り部6を接続している。例えば、振止め部材22は、矩形断面の棒状部材をV字形状に形成した部材である。振止め部材22は、重ねられた各曲り部6の列における同径の部位に屈曲部が配置され、且つ、曲り部6の曲率半径が最も大きい曲り部6の円弧部の外側に端部が突出されている。すなわち、振止め部材22の端部22aは、図2に示すように、最も外側の伝熱管3の曲り部6によって構成されるUベンド部20の半球面20aから突出している。これにより、振止め部材22の端部22aは、Uベンド部20の外径をなす円弧に沿って、曲り部6を含む平面に沿う水平方向(面内方向)に一列に並んで配置されている。また、このように一列に並んだ複数の端部22aが、面外方向に伝熱管3の分だけ間隔をあけて複数配置されている。
【0053】
また、振止め部材22は、大きいV字形状のものの内側に小さいV字形状のものが配置されて対をなしていてもよい。図2に示す例では、振止め部材22の対が、伝熱管3の曲り部6に3つ配置されている。さらに、振止め部材22は、重ねられた伝熱管3の列の間に挿入されている部分が、振動を抑制するのに好ましい材料(例えばSUS405)で形成されていてもよい。
【0054】
振止め部材22の端部22aには、図2及び図4に示すように第1保持部材21が溶接されて、複数の振止め部材22の端部22aを連結している。第1保持部材21は、Uベンド部20の外周、すなわち、Uベンド部20の半球状の外周(半球面20a)に沿って取り付けられた円弧状の棒状部材である。第1保持部材21は、複数の伝熱管3が重ねられる方向と直交する方向に延在している。
複数の第1保持部材21は、第2保持部材(ブリッジ)24によって連結されていてもよい。
第2保持部材24は、Uベンド部20の外周、すなわち、Uベンド部20の半球状の外周(半球面20a)に沿って配置された、円弧形状かつ板状の部材である。第2保持部材24は、Uベンド部20において伝熱管3の曲り部6が延在する方向に沿って延在している。図4においては1本の第2保持部材24が示されているが、第2保持部材24は、複数の曲り部6が重ねられる方向と平行な方向に向かって複数配置されている。
なお、第1保持部材21及び第2保持部材24によって連結された複数の振止め部材22は、後述する振動規制構造によってその振動が規制されるようになっている。
【0055】
一実施形態の変形例では、図3及び図4に示すように、蒸気発生器1は、地震等の振動の発生時において流体励起振動抑制構造の振動を抑制するための耐震構造をさらに備えていてもよい。
図3及び図4に示すように、蒸気発生器1は、耐震構造として、円環支持部31(31A,31B)と、アーム状支持部32(32A,32B)と、外筒支持部33(33A,33B)と、を備えている。
【0056】
円環支持部31は、環状に形成されており、Uベンド部20を囲むように曲り部6の上方に設けられている。この円環支持部31は、平面視(上面視)においてUベンド部20と同心円状となるように配置されていてもよい。また、円環支持部31は、アーム状支持部32によって、Uベンド部20の外周を取り囲む管群外筒(内壁)9に支持されている。円環支持部31は、Uベンド部20及び管群外筒9に対して、それぞれ所定の間隔を有している。
アーム状支持部32は、管群外筒9と円環支持部31との間に取り付けられ、該円環支持部31を管群外筒9に支持させるようになっている。例えば、棒状に形成されたアーム状支持部32は、円環支持部31の径方向外側に複数設けられる。これらの複数のアーム状支持部32が、円環支持部31から管群外筒9に向けて放射状に延在している。
具体的な構成例として、円環支持部31は、管支持板7側の下方円環支持部31Aと、Uベンド部20の頂部側の上方円環支持部31Bと、を含む。下方円環支持部31Aは、上方円環支持部31Bよりも径が大きい。アーム状支持部32は、下方円環支持部31Aと管群外筒9とを連結するための複数の下方アーム状支持部32Aと、上方円環支持部31Bと管群外筒9とを連結するための複数の上方アーム状支持部32Bと、を含む。なお、円環支持部31の設置数はこれに限定されるものではない。
【0057】
外筒支持部33は、胴部2と管群外筒9との間に設けられ、管群外筒9を胴部2に支持させるようになっている。外筒支持部33は、胴部2と管群外筒9との間に、周方向において複数設けられていてもよい。上記構成によって、円環支持部31は、アーム状支持部32及び管群外筒9を介して、胴部2に支持される。
【0058】
一実施形態では、円環支持部31とアーム状支持部32との連結部、アーム状支持部32と管群外筒9との連結部、並びに、管群外筒9及び胴部2と外筒支持部33との連結部は、溶接又はボルト等の接合手段によって剛に連結されている。したがって、円環支持部31は、胴部2に対して剛に支持される。
【0059】
上記構成によれば、地震等により、断面が円形状の胴部2の径方向と平行な方向(水平方向)にUベンド部20が振動すると、円環支持部31と、アーム状支持部32及び外筒支持部33とを介して、Uベンド部20の振動を胴部2で受けることができるので、Uベンド部20の耐震性が確保される。なお、円環支持部31はUベンド部20の伝熱管3を拘束しないので、蒸気発生器1が運用されているときには、円環支持部31とUベンド部20との間を通過する二次冷却水による曲り部6の振動摩耗等を抑制することができる。そのため、円環支持部31を有する上記耐震構造によれば、伝熱管3の流体励起振動に対する耐性に与える影響を低減し、伝熱管3の流体励起振動を抑制することができる。
【0060】
ここで、複数の振止め部材22の振動を規制するための振動規制構造について説明する。
上述したように、複数の振止め部材22は複数の曲り部6の間に配置されており、複数の振止め部材22の端部22aが第1保持部材21によって連結されている。さらに、複数の第1保持部材21が、第2保持部材24によって連結されている。
一実施形態において、蒸気発生器1は、振止め部材22の振動を規制するための規制部材25をさらに備えている。規制部材25は、円環支持部31に取り付けられており、所定の間隙を有した状態で第2保持部材24を挟み込んで、面外方向における第2保持部材24の動きを規制するように構成されている。より具体的には、円環支持部31の規制部材25は凹部25aを有しており、この凹部25aに、第2保持部材24が所定の間隙を有して挟み込まれる。例えば、規制部材25は、円環支持部31に対して溶接等の接合手段によって剛に接合される。規制部材25と第2保持部材24との間隔は、円環支持部31とUベンド部20の複数の伝熱管3との間隔よりも小さくてもよい。
【0061】
本実施形態に係る蒸気発生器1は、伝熱管3の曲り部6における耐震性を向上し得る耐震構造として、さらに以下の構成を備えている。
【0062】
図5A及び図5B図6A及び図6B図10A及び図10B、並びに図11A乃至図11Cに示すように、蒸気発生器1は、Uベンド部20において、面外方向への複数の伝熱管3(曲り部6)の動きを規制するための支持部材40(40A,40B),50,60をさらに備えている。なお、図5Aは、一実施形態に係る管支持板7の平面図であり、図5Bは、一実施形態に係る耐震構造を備えたUベンド部20を示す断面図(A−A断面)である。図6Aは、一実施形態の変形例に係る管支持板7の平面図であり、図6Bは、一実施形態の変形例に係る耐震構造を備えたUベンド部20を示す断面図(B−B断面)である。図10Aは、他の実施形態に係る管支持板7の平面図であり、図10Bは、他の実施形態に係る耐震構造を備えたUベンド部20を示す断面図(C−C断面)である。図11Aは、さらに他の実施形態に係る管支持板7の平面図であり、図11Bは、さらに他の実施形態に係る耐震構造を備えたUベンド部20を示す断面図(D−D断面)である。
【0063】
以下、支持部材40,50,60の具体的な構成について説明する。
図5A図6A図10A及び図11Aに示すように、管支持板7には、複数の伝熱管3の第1直管部4及び第2直管部5の通過する複数の貫通孔71が形成されている。複数の貫通孔71は、曲率半径が異なる複数の曲り部6が面内方向に沿って並び、且つ、曲率半径が同一の複数の曲り部6が面外方向に並ぶように、管支持板7の上面視において規則配列70に従って配列されている。すなわち、規則配列70に従って配列された曲り部6は、図1に示すように、曲率半径の異なる複数の曲り部6a,6a,6a,…が面内方向に沿って並び、且つ、曲率半径の同一な複数の曲り部6a,6b,6c,…が面外方向に沿って並ぶように配列される。
【0064】
図5A図6A図10A及び図11Aに戻り、上記規則配列70は、面内方向又は面外方向に沿った少なくとも一列において伝熱管3が存在しない配列欠陥部72を含む。
そして、面外方向への複数の伝熱管3(曲り部6)の動きを規制するための支持部材40,50,60は、配列欠陥部72の周囲に存在する複数の伝熱管3の曲り部6によって囲まれる空間の少なくとも一部に設けられている。
【0065】
上記構成によれば、第1直管部4及び第2直管部5が通過する複数の貫通孔71は管支持板7の上面視において規則配列70に従って配列されており、この規則配列70は、面内方向又は面外方向に沿った少なくとも一列において伝熱管3が存在しない配列欠陥部72を含む。すなわち、第1直管部4及び第2直管部5が挿通される貫通孔71によって規定される規則配列70のうち少なくとも一列が欠けており(配列欠陥部72)、かかる配列欠陥部72には第1直管部4及び第2直管部5が通過する貫通孔71が存在しない。そして、配列欠陥部72の周囲に存在する複数の伝熱管3の曲り部6によって囲まれる空間の少なくとも一部には、面外方向への伝熱管3の動きを規制するための支持部材40,50,60が設けられる。
【0066】
これにより、面外方向への伝熱管3の揺れが発生したとき、配列欠陥部72の周囲の伝熱管3の曲り部6が支持部材40,50,60に当接し、それ以上の変位が阻止される。また、他の伝熱管3の曲り部6についても、配列欠陥部72の周囲の伝熱管3の曲り部6の変位が阻止される結果、面外方向への動きが規制される。よって、Uベンド部20の曲り部6における揺れを抑制でき、蒸気発生器1の耐震性を向上させることができる。
また、配列欠陥部72は少なくとも一本の伝熱管3に相当する隙間を形成するため、この配列欠陥部72に設けられる支持部材40,50,60に十分な肉厚又は径を持たせることができる。このため、支持部材40,50,60に対して十分な剛性を付与することができる。
【0067】
さらに、既存の蒸気発生器1に対する追加工事によって上記構成を適用する場合、複数の伝熱管3の規則配列70から少なくとも一列の伝熱管3を排除して配列欠陥部72を設ければよく、基本的な規則配列70を大幅に変更することなく、上記構成を既存の設計に対して容易に導入することができる。但し、図12A及び図12Bに示すように既存の伝熱管3を利用して支持部材60を構成する場合には、配列欠陥部72に対応する位置に配置された伝熱管3を取り除くことなく、この伝熱管3を支持部材60に改造してもよい。
【0068】
支持部材40,50,60は、伝熱管3が格納される胴部2に対して剛に支持されていてもよい。例えば、支持部材40,50,60は、振止め部材22を介さずに胴部2に直接的に支持される。ここで、胴部2に直接的に支持とは、図3に示したように外筒支持部33を介して胴部2に連結された管群外筒9に取り付けられる場合や、管群外筒9及び外筒支持部33を介して胴部2に連結された管支持板7に取り付けられる場合のように、振止め部材22以外の他の部材を介して、支持部材40,50,60が胴部2に剛に連結される場合を含む。
これにより、支持部材40,50,60と胴部2との間の荷重伝達経路から剛性の低い部位(例えば振止め部材22又は振止め部材22と第1保持部材21との間の接合部)を排除して、支持部材40,50,60によるUベンド部20の耐震性能の優れた向上効果を享受できる。
【0069】
次に、上述した耐震構造を備える蒸気発生器1の各実施形態について詳細に説明する。
【0070】
図5A図5B及び図6A図6Bに示すように、一実施形態において、支持部材40は、管支持板7に固定され、複数の曲り部6の間において面内方向に沿って設けられた少なくとも一枚の仕切り板を含む。この場合、図5Aに示すように、配列欠陥部72は、面外方向において直線状に形成される。そして、直線状の配列欠陥部72の周囲に存在する複数の伝熱管3の曲り部6によって囲まれる空間の少なくとも一部を占めるように、仕切り板40が配設される。仕切り板40は、管支持板7に対してボルト締結又は溶接等によって剛に固定される。仕切り板40は、管支持板7よりも上方にのみ設けられていてもよいし、管支持板7の上方のみならず、下方まで延在してもよい。また、仕切り板40の下方部位は、半球形状のUベンド部20の外径に対応して半円板形状に形成され、仕切り板40の下方部位は、第1直管部4及び第2直管部5の集合体の外径に対応して矩形板形状に形成されてもよい。さらに、仕切り板40の縁部は、伝熱管3よりも外方に位置してもよい。但し、仕切り板40の形状はこれに限定されるものではなく、例えば方形状等の他の形状であってもよい。
【0071】
図5A及び図5Bに示すように、一実施形態では、面内方向における管支持板7の中心を通るように面外方向に沿って直線状に1本の配列欠陥部72が形成されている。そして、管支持板7の配列欠陥部72に対応した位置に、1枚の仕切り板40が設けられている。すなわち、仕切り板40は、配列欠陥部72によって形成された空間において、面内方向に沿うように管支持板7に立設される。
この構成によれば、面外方向への伝熱管3の揺れが発生したとき、曲り部6は仕切り板40に当接してその動きが規制される。このとき、仕切り板40は多数の伝熱管3の曲り部6に当接するので、少ない設置枚数でベンド部20の大部分における揺れを抑制することができる。また、仕切り板40によって、複数の曲り部6が面外方向において分割される(この場合は2つ)ので、一の仕切り板40が支持すべき伝熱管の移動質量を小さくすることができる。
さらに、仕切り板40は管支持板7に固定されているので、仕切り板40を胴部2に対して剛に支持することができる。したがって、仕切り板40が、伝熱管3の揺れに起因した曲り部6の荷重を受けたときに、伝熱管3から仕切り板40が受けた荷重を胴部2に伝達する過程で低剛性の部位が損傷してしまうことを防止できる。
【0072】
図6A及び図6Bに示すように、一実施形態に変形例においては、少なくとも一枚の仕切り板40は、面外方向に並ぶように面内方向に沿って設けられた複数の仕切り板40A,40Bを含む。これらの図に示す例では、2本の配列欠陥部72A,72Bが面外方向において異なる2か所を通り、且つ、それぞれが面内方向に沿って直線状に延在するように形成されている。そして、配列欠陥部72A,72Bによって形成された空間において、管支持板7の配列欠陥部72A,72Bに対応した位置に、2枚の仕切り板40A,40Bが設けられている。すなわち、2枚の仕切り板40A,40Bは、互いに平行に、面内方向に沿うように管支持板7にそれぞれ立設される。
この構成によれば、複数の仕切り板40A,40Bによって、複数の曲り部6の集合体(Uベンド部20)が面外方向において3以上に分割されるため、一の仕切り板40(40A,40B)が受け持つ伝熱管3の移動質量をより小さくすることができる。
【0073】
図7乃至図9に、仕切り板40(40A,40B)の縁部40a側を支持するための各構成例を示す。なお、仕切り板40の縁部40aとは、管支持板7から遠い側(Uベンド部20の頂部側)の端縁領域である。
【0074】
図7は、振止め部材22による仕切り板40の支持構造の一例を示す図である。
図7に示す例では、仕切り板40は、複数の振止め部材22によって両側から挟まれている。なお、振止め部材22は、上述した図2及び図3に示されるものと同一である。複数の曲り部6は面内方向に沿って延在しており、一方、振止め部材22は、複数の曲り部6の間に配置され、曲り部6と同様に面内方向に沿って延在している。
仕切り板40は、振止め部材22を通る平面または曲り部6を通る平面に平行に設けられる。仕切り板40の面内方向における両側に配置された一対の振止め部材22によって、仕切り板40の縁部側(径方向外方側)が支持される。このとき、仕切り板40と振止め部材22とは、固定されていなくてもよいし、溶接等によって固定されていてもよい。
この構成によれば、仕切り板40は、複数の振止め部材22によって両側から挟まれているので、複数の伝熱管3の曲り部6からの荷重を、振止め部材22を介して仕切り板40で受けることができる。
【0075】
図8は、保持部材(第2保持部材24)による仕切り板40(40A,40B)の支持構造の一例を示す図である。
図8に示す例では、仕切り板40は、Uベンド部20の外形に沿った円弧状の縁部40aを有しており、この縁部40aは、第2保持部材(ブリッジ)24に固定される。仕切り板40の縁部40aと第2保持部材24とは、溶接等により固定されてもよい。上述したように、第2保持部材24は、面外方向において半球形状のUベンド部20の外形に沿って形成されている。すなわち、仕切り板40の延在方向と第2保持部材24の延在方向とは概ね一致している。そのため、仕切り板40の縁部40aと第2保持部材24との接合面積を十分に確保することができる。
この構成によれば、仕切り板40の縁部40aが第2保持部材24によって固定され、仕切り板40の基部側が管支持板7によって固定されるので、離間した2か所で仕切り板40が固定されることとなり、仕切り板40をより一層強固に固定することができる。
【0076】
図9は、円環支持部31による仕切り板40(40A,40B)の支持構造の一例を示す図である。
図9に示す例では、円環支持部31の規制部材25に設けられた凹部25aに、仕切り板40の縁部40aが遊嵌された構成となっている。具体的には、円環支持部31の規制部材25は凹部25aを有しており、この凹部25aに、仕切り板40の縁部40aが所定の間隙を有して挟み込まれる。規制部材25と仕切り板40の縁部40aとの間隔は、円環支持部31とUベンド部20の複数の伝熱管3との間隔よりも小さくてもよい。
この構成によれば、蒸気発生器1の内壁(例えば胴部2又は管群外筒9の内壁)に支持された円環支持部31の規制部材25の凹部25aに仕切り板40の縁部40aを遊嵌したので、伝熱管3の揺れ発生時において仕切り板40及び円環支持部31を介して蒸気発生器1の内壁側に荷重を伝達することができる。これにより、伝熱管3の揺れに起因した曲り部6の荷重支持能力を向上させることができる。また、円環支持部31に対して仕切り板40が遊嵌されているので、蒸気発生器1の内壁又は円環支持部31と支持部材(仕切り板)40との熱伸び差に起因した熱応力を逃がすことができる。
【0077】
上記構成に加えて、仕切り板40(40A,40B)は、図10A又は図10Bに示す構成をさらに備えていてもよい。
図10Aは、仕切り板40(40A,40B)の一構成例を示す部分断面図である。
同図に示すように、仕切り板40には、少なくとも一つの開口40bが設けられている。この開口40bにより形成される空間は、仕切り板40の厚さ方向において同一形状の柱状をなしていてもよい。例えば、開口40bにより形成される空間が円柱形状である場合、仕切り板40の厚さ方向に開口40bの径は同一である。また、一枚の仕切り板40に対して複数の開口40bが設けられていてもよい。
この構成によれば、二次冷却水(蒸気を含む)が、仕切り板40の開口40bを通って面外方向に沿って流れるため、仕切り板40BによってUベンド部20における熱流動が阻害されることを抑制できる。
【0078】
図10Bは、仕切り板40(40A,40B)の他の構成例を示す部分断面図である。
同図に示すように、仕切り板40には、少なくとも一つの開口40bが設けられている。この開口40bは、開口径が最小となるオリフィス部40cを有する。図示される構成例では、オリフィス部40cは、仕切り板40の厚さ方向の中央部に位置している。そして、オリフィス部40cから仕切り板40の各面に向けて開口40bの壁面がテーパ状に形成されており、開口40bは、仕切り板40の厚さ方向において中央部からかく面に向けて拡径している。他の構成例では、オリフィス部40cは、仕切り板40のいずれかの面内に位置してもよい。
この構成によれば、仕切り板40が面外方向に変位しようとしたとき、開口40bのオリフィス部40cを通過する二次冷却水(蒸気を含む)による抵抗力によって、仕切り板40の変位を抑制することができる。
【0079】
他の実施形態においては、図11A及び図11Bに示すように、支持部材50は、面外方向または面内方向に沿って水平方向に延在し、蒸気発生器1の内壁(例えば胴部2又は管群外筒9の内壁)に両端が支持される少なくとも一本の水平支持棒50A,50Bを含む。この場合、図11Aに示すように、Uベンド部20の内部に少なくとも直線状の空間が形成されるような伝熱管3の配列となるように、配列欠陥部72が形成される。水平支持棒50は、蒸気発生器1の内壁に対してボルト締結又は溶接等によって剛に固定されてもよい。あるいは、蒸気発生器1の内壁と水平支持棒50との熱伸び差を許容可能なように、水平支持棒50が蒸気発生器1の内壁に支持されてもよい。例えば、水平支持棒50の延在方向において、水平支持棒50が蒸気発生器1の内壁に対して僅かに移動可能に支持される。
この構成によれば、面外方向への伝熱管3の揺れが発生したとき、曲り部6は、水平支持棒50に当接してその動きが規制される。また、水平支持棒50は、面内方向における投影面積が比較的小さいため、水平支持棒50が面外方向に沿った熱流動に与える影響を低減できる。
【0080】
水平支持棒50の両端は、円環支持部31(31A,31B)によって支持されていてもよい。なお、円環支持部(31A,31B)は、図3及び図4に示したものと同一である。
図示される例では、配列欠陥部72A,72Bによって形成された空間において、2本の水平支持棒50A,50Bが互いに平行となるように、面外方向に沿って配置されている。但し、水平支持棒50の設置数は、2本に限定されるものではなく、1本であってもよいし3本以上であってもよい。また、水平支持棒50の面内方向に沿って延在するように配置されてもよい。
上記構成によれば、蒸気発生器1の内壁(例えば胴部2又は管群外筒9の内壁)に剛に支持された円環支持部31に水平支持棒50の両端を支持させるようにしたので、伝熱管3の揺れに起因した曲り部6の荷重支持能力を向上させることができる。
【0081】
さらに他の実施形態においては、図12A乃至図12Cに示すように、支持部材60は、面内方向に沿って設けられ、且つ、曲り部6よりも剛性が高い少なくとも一本の湾曲支持棒60A,60Bを含む。規則配列70は、離散的に位置する配列欠陥部72を含んでおり、この配列欠陥部72によって形成される空間の少なくとも一部に湾曲支持棒60(60A,60B)が設けられている。図示される例では、面内方向及び面外方向に異なる位置に複数の湾曲支持棒60A,60Bが設けられている。
【0082】
この構成によれば、面外方向への伝熱管3の揺れが発生したとき、曲り部6は、該曲り部6よりも剛性が高い湾曲支持棒60に当接してその動きが規制される。また、湾曲支持棒60は、曲り部6を含む平面への投影面積が比較的小さいため、湾曲支持棒60が面外方向に沿った熱流動に与える影響を低減できる。さらに、上記構成においては、配列欠陥部72を形成するために規則配列70から排除する伝熱管3の本数は少なくてすむため、配列欠陥部72による伝熱効率の低下を抑制することができる。
【0083】
湾曲支持棒60は、伝熱管3と同一の直径を有し、且つ、中実であってもよい。
これにより、湾曲支持棒60の支持に際して、伝熱管3と同一の支持構造を利用することができる。例えば、伝熱管3が貫通するように構成された管支持板7によって該伝熱管3を支持する場合、伝熱管3と同様に湾曲支持棒60も管支持板7を貫通させることによって支持することができる。
【0084】
図13は、湾曲支持棒60の一構成例を示す部分側面図である。
図13に示すように、複数の湾曲支持棒60は、互いに連結されていてもよい。すなわち、複数の湾曲支持棒60(図示される例では3本)が互いに隣接して配置され、これらの湾曲支持棒60が連結部材62によって互いに連結されている。この場合、複数の湾曲支持棒60は、面外方向に配列されていてもよいし、面内方向に配列されていてもよい。
この構成によれば、複数の湾曲支持棒60が互いに連結されているので、湾曲支持棒60の剛性を高くすることができる。すなわち、伝熱管3の揺れに起因した曲り部6の荷重支持能力を向上することができる。
【0085】
図14は、湾曲支持棒60の他の構成例を示す部分側面図である。
図14に示すように、湾曲支持棒60は、伝熱管3よりも管厚又は管径が大きい少なくとも一本の高剛性伝熱管の曲り部であってもよい。図示される例では、高剛性伝熱管の曲り部によって構成される湾曲支持棒60は伝熱管3よりも管径が大きく、ボルト63によって管支持板7に取り付けられている。
この構成によれば、伝熱管3の揺れに起因した曲り部6の荷重を高剛性伝熱管の曲り部(湾曲支持棒60)によって支持することができ、且つ、高剛性伝熱管内に一次冷却水を流すことによって、配列欠陥部72による伝熱効率の低下をより一層抑制することができる。
【0086】
ここで、図15A及び図15Bを参照して、上述の図12A及び図12Bに示した他の実施形態の変形例について説明する。なお、図15Aは、他の実施形態の変形例に係る耐震構造を備えたUベンド部を示す断面図である。図15Bは、図15Aに示すUベンド部の断面図(E−E断面)である。
【0087】
図15A及び図15Bに示すように、湾曲支持棒60は、曲り部6を含む平面に平行な面内(面内方向)に設けられる中空湾曲管部65と、少なくとも、面外方向から視たときに振止め部材22と交差する中空湾曲管部65の充填部材66において、中空湾曲管部65の内部に設けられる充填部材66と、を含む。
上記構成においては、曲り部6における流体励起振動を抑制することを目的として、面外方向において隣接する伝熱管3の曲り部6の間に振止め部材22を設けている。このような構成を備える場合、Uベンド部20に振動(例えば地震等)が発生したときに、面外方向への伝熱管3の揺れに起因した荷重が、振止め部材22を介して、面外方向において隣接する伝熱管3の曲り部6間で伝達される。振止め部材22と交差する領域に中空の伝熱管3のみが配置される場合、振止め部材22を介して伝達される荷重によって伝熱管3がつぶれてUベンド部20全体の振動を抑えることができなくなる可能性がある。
【0088】
そこで、上記構成では、曲り部6よりも剛性が高い湾曲支持棒60を支持部材として備えており、この湾曲支持棒60が、曲り部6を含む平面に平行な面内に設けられる中空湾曲管部65と、振止め部材22と交差する充填部材66において中空湾曲管部65の内部に設けられる充填部材66と、を含む。すなわち、振止め部材22と交差する中空湾曲管部65の充填部材66においては、中空湾曲管部65の内部に充填部材66が詰められているので、中空の伝熱管3よりも剛性が高くなる。伝熱管3の面外方向への揺れに起因した荷重は、剛性の高い中空湾曲管部65の充填部材66に主として作用するため、中空湾曲管部65がつぶれることなく荷重を受けることができる。よって、Uベンド部20の耐震性を向上させることができる。
【0089】
図15Bに示される例では、高さ方向に異なる2箇所に下方円環支持部31A及び上方円環支持部31Bが設けられており、伝熱管3の曲り部6の入口側と出口側にそれぞれV字状の振止め部材22が配置されている。この構成においては、1本の中空湾曲管部65が振止め部材22と交差する充填部材66は4箇所となる。この4箇所の充填部材66において、中空湾曲管部65の内部に充填部材66が設けられる。
また、中空湾曲管部65として伝熱管3を用いてもよい。すなわち、伝熱管3の内部に充填部材66を設けて支持部材(湾曲支持棒60)としてもよい。これにより、既存の蒸気発生器1に対して容易に耐震施工を行うことができる。
【0090】
図15Aに示されるように、複数の湾曲支持棒60と複数の振止め部材22とが、面外方向において交互に配列されている場合、面外方向に並んだ中空湾曲管部65の充填部材66、該充填部材66内の充填部材66、および、振止め部材22によって、Uベンド部20を面外方向に貫通する荷重伝達経路が形成されていてもよい。図示される例では、複数の中空湾曲管部65内に設けられた複数の充填部材66が、面外方向において円環支持部31と同一高さに直線状に配列されている。そのため、荷重伝達経路は、円環支持部31、交互に配列された充填部材66及び振止め部材22、円環支持部31の順に直線状に形成される。
この構成によれば、荷重伝達経路が、中空湾曲管部の補強領域、該補強領域内の充填部材66、および、振止め部材22によって、荷重伝達経路が形成されているので、荷重伝達経路上では荷重伝達方向における剛性を高くすることができる。よって、Uベンド部20の耐震性を効果的に向上させることができる。
【0091】
図15A及び図15Bに示されるように、荷重伝達経路の両端において湾曲支持棒60又は振止め部材22が、円環支持部31の規制部材25の凹部25a(図9参照)に遊嵌されていてもよい。
この構成によれば、蒸気発生器1の内壁に支持された円環支持部31の凹部25aに、湾曲支持棒60又は振止め部材22が遊嵌されているので、円環支持部31と湾曲支持棒60又は振止め部材22との熱伸び差に起因した応力を逃がしながら、荷重伝達経路からの荷重を蒸気発生器1の内壁で受けることができる。
【0092】
図16は、一実施形態に係る蒸気発生器の耐震補強方法を説明するための図である。図17Aは、充填部材の構成例を示す断面図であり、図17Bは、図17AのF−F断面図である。
充填部材66は、中空湾曲管部65の管長方向に沿った断面内に設けられた複数のセクションによって構成されてもよい。この断面は、図17Aに示すように、中空湾曲管部65の補強領域及び該補強領域の両側に位置する一対の振止め部材22を含む断面である。図16図17A及び図17Bに示す例では、複数の充填部材66のそれぞれは、面外方向に並んだ2つのセクション66A,66Bを含む。なお、図16においては、各充填部材66は、紙面の奥行方向に2つのセクション66A,66Bが重なるように配置されているため、紙面手前側のセクション66Aを実線で示し、紙面奥側のセクション66Bを点線で示している。
この構成によれば、複数のセクション66A,66Bからなる分割構造によって充填部材66を形成するようにしたので、面外方向に沿った荷重伝達経路上において、充填部材66の各セクション66A,66Bと中空湾曲管部65の内壁面との間に隙間が形成されてしまうことを防止できる。これにより、中空湾曲管部65のつぶれを防止し、Uベンド部20全体の振動を効果的に抑制できる。
【0093】
また、湾曲支持棒60は、一部の伝熱管3の内部に充填部材66を設置することで形成されていてもよい。
この構成によれば、既存の蒸気発生器1に対して容易に耐震施工を行うことができる。
【0094】
ここで、図16図17A及び図17Bを参照して、一実施形態に係る蒸気発生器1の耐震補強方法について以下に説明する。
一実施形態では、蒸気発生器1の耐震補強方法は、面外方向への複数の伝熱管3の動きを規制するための支持部材60を蒸気発生器1に設置する設置ステップを備える。
なお、蒸気発生器1では、曲率半径が異なる複数の曲り部6が平面に平行な面内方向に沿って並び、且つ、曲率半径が同一の複数の曲り部6が面外方向に並ぶように、複数の伝熱管3の第1直管部4及び第2直管部5の通過する複数の貫通孔71が管支持板7の上面視において規則配列70(図5A図6A図10A及び図11A参照)に従って配列されている。そして、設置ステップでは、規則配列70のうち面内方向又は面外方向に沿った少なくとも一列において、伝熱管3に替えて支持部材60を設置する。
【0095】
上記方法によれば、面外方向への伝熱管3の揺れが発生したとき、曲り部6は支持部材60に当接し、それ以上の変位が阻止されるので、曲り部6の変位を小さくとどめることができる。よって、伝熱管3の曲り部6における揺れを抑制でき、蒸気発生器1の耐震性を向上することができる。
また、複数の伝熱管3の規則配列70のうち面内方向又は面外方向に沿った少なくとも一列において、伝熱管3に替えて支持部材60を設置するようにしたので、既存の蒸気発生器1に対して容易に耐震施工を行うことができる。
【0096】
また、設置ステップでは、面内方向に沿って設けられ、且つ、曲り部6よりも剛性が高い少なくとも一本の湾曲支持棒60を支持部材として設置してもよい。
面外方向への伝熱管3の揺れが発生したとき、曲り部6は、該曲り部6よりも剛性が高い湾曲支持棒60に当接してその動きが規制されるため、曲り部6の揺れを抑制できる。また、湾曲支持棒60は、曲り部6を含む面への投影面積が比較的小さいため、湾曲支持棒60が面外方向に沿った熱流動に与える影響を低減できる。
さらに、設置ステップでは、複数の伝熱管3のうち一部である補強対象伝熱管60’の内部に充填部材66を設けることで湾曲支持棒60を形成するようにしてもよい。
これによれば、既存の蒸気発生器1に支持部材60を設置する際に伝熱管3の一部を除去する必要がないため、既存の蒸気発生器1に対して耐震施工を容易に行うことができる。
【0097】
他の実施形態において、蒸気発生器1が、上述した図2及び図3に示す振止め部材22を備える場合、設置ステップでは、面外方向から視たときに振止め部材22と交差する補強対象伝熱管60’の補強領域68において、補強対象伝熱管60’の内部に充填部材66(66−1,66−2,66−3,66−4)を設ける。なお、充填部材66−1,66−2,66−3,66−4は、それぞれ、図17A及び図17Bに示した充填部材66と同一の構成であってもよい。
この方法によれば、振止め部材22と交差する補強対象伝熱管60’の補強領域68’においては、補強対象伝熱管60’の内部に充填部材66(66−1,66−2,66−3,66−4)が詰められているので、中空の伝熱管3よりも剛性が高くなる。面外方向の振動成分に起因した荷重は、剛性の高い補強対象伝熱管60’の補強領域68’に主として作用するため、補強対象伝熱管60’がつぶれることなく荷重を受けることができる。よって、Uベンド部20の耐震性を向上させることができる。
【0098】
複数の湾曲支持棒60と複数の振止め部材とが、面外方向において交互に配列されており、
設置ステップでは、面外方向に並んだ補強対象伝熱管60’の補強領域68’、該補強領域68’内の充填部材66(66−1,66−2,66−3,66−4)、および、振止め部材22によって、Uベンド部20を面外方向に貫通する荷重伝達経路を形成する。
この方法によれば、補強対象伝熱管60’の補強領域68’、該補強領域68’内の充填部材66(66−1,66−2,66−3,66−4)、および、振止め部材22によって、荷重伝達経路が形成されているので、面外方向におけるUベンド部20の剛性を高くすることができる。よって、Uベンド部20の耐震性を効果的に向上させることができる。
【0099】
例えば、充填部材66(66−1,66−2,66−3,66−4)はワイヤ80A,80Bによって補強対象伝熱管60’内の所定位置に設置されてもよい。
具体的には、図16図17A及び図17Bに示すように、充填部材66(66−1,66−2,66−3,66−4)は補強領域68’ごとに設置される。各充填部材66(66−1,66−2,66−3,66−4)は、第1セクション66A(66A,66A,66A,66A)と、第2セクション66B(66B,66B,66B,66B)と、を含む。第1セクション66A及び第2セクション66Bは、管長方向に対して傾斜したテーパ面を有しており、互いのテーパ面が当接した状態で配置される。第1セクション66Aのテーパ面と第2セクション66Bのテーパ面とは、管長方向に対して同一の傾斜角を有している。第1セクション66A及び第2セクション66Bのテーパ面とは反対側の面は、補強対象伝熱管60’の管壁に沿うように形成されている。そのため、第1セクション66Aと第2セクション66Bの管長方向における相対的な位置が変化することで、第1セクション66A及び第2セクション66Bの一体的な幅(管径方向の幅)は変化する。なお、テーパ面は、平面であってもよいし、管長方向に凹凸を有した面とし、第1セクション66A及び第2セクション66Bの管長方向における位置が維持されるようにしてもよい。
【0100】
各第1セクション66A(66A,66A,66A,66A)は、ワイヤ80Aによって互いに離間した状態で連結されている。同様に、各第2セクション66B(66B,66B,66B,66B)は、ワイヤ80Bによって互いに離間した状態で連結されている。ワイヤ80Aの端部には、断面L字型の第1部材82が取り付けられている。一方、ワイヤ80Bの端部には、第1部材82によって底面が押されて、一方向において該第1部材82とともに一体的に動くように構成された第2部材84が取り付けられている。
【0101】
上記構成において充填部材66(66−1,66−2,66−3,66−4)を設置するとき、まず、第1セクション66Aが取り付けられたワイヤ80Aと、第2セクション66Bが取り付けられたワイヤ80Bと、を補強対象伝熱管60’内に挿入する。そして、第2部材84を第1部材82に載せた状態で、第1部材82の底面からプッシャ(不図示)によってワイヤ80A及びワイヤ80Bを補強対象伝熱管60’内に押し込む。そして、充填部材66(66−1,66−2,66−3,66−4)を所定の補強領域68’まで移動させる。なお、各充填部材66が所定の補強領域68’に位置した状態において、第1部材82から最も遠い第1セクション66A1から延出するワイヤ80Aが補強対象伝熱管60’から突出するように、ワイヤ80Aの長さを予め調節しておく。
【0102】
各充填部材66が所定の補強領域68’に位置したら、補強対象伝熱管60’から突出したワイヤ82Aを引っ張り、第1セクション66Aのみを僅かに移動させる。これにより、第1セクション66A及び第2セクション66Bの一体的な幅(管径方向の幅)が広がり、第1セクション66A及び第2セクション66Bが補強対象伝熱管60’の管壁に押し付けられる。そのため、荷重伝達経路において補強対象伝熱管60’内部に隙間なく充填部材66が詰められる。その後、補強対象伝熱管60’の端部をプラグ88によって封止してもよい。
【0103】
また、少なくとも一つの充填部材66(66−1,66−2,66−3,66−4)の位置を検出するための位置センサ87を取り付けてもよい。この位置センサ87からの検出信号に基づいてワイヤ82A及び82Bを移動させることによって、各充填部材66を所定の補強領域68’に適切に設置することができる。図示される例では、位置センサ87は、充填部材66の近傍のワイヤ80A,80Bに取り付けられている。また、図示される例では、全ての充填部材66−1,66−2,66−3,66−4に対して位置センサ87を取り付けているが、充填部材66−1,66−2,66−3,66−4間の距離を予め取得しておけば、位置センサ87は一つであってもよい。さらに、位置センサ87は、充填部材66を設置した後に取り外せるようにしてもよい。
【0104】
なお、上述の説明では、充填部材66が2つのセクション66A,66Bによって構成される例を示したが、設置時に取扱いやすくするために、充填部材66は1つのセクションによって構成されてもよい。また、充填部材66を設置した後、補強対象伝熱管60’の端部をプラグ88によって封止せず、補強対象伝熱管60’の内部に水を流すようにしてもよい。
【0105】
図19は、充填部材66の他の構成例を示す側面図である。
同図に示す例において、充填部材66は、本体部90と、本体部90内に挿入される挿入部95と、を含む。
本体部90は、小径側が円錐台形状に形成され、大径側が円柱形状に形成されており、大径側の面に設けられた略円錐台形状の凹部91と、凹部91に連通する雌ねじ部92と、を有している。また、本体部90の大径側の外周には、管長方向に沿って延在するスリット93が設けられている。スリット93は、本体部90の周方向に複数設けられていてもよい。
挿入部95は、本体部90の凹部91に対応した形状の外周面を有する円錐台部96と、本体部90の雌ねじ部92に対応して形成された雄ねじ部97と、を有している。
【0106】
上記構成においては、補強対象伝熱管60’内に充填部材66を挿入し、補強領域68’まで移動させた後、トルク伝達ワイヤ99によって挿入部95を周方向に回転させて、挿入部95の雄ねじ部97を本体部90の雌ねじ部92にねじ込む。このとき、挿入部95の円錐台部96が本体部90の凹部91に押し込まれ、スリット93が開いて本体部90が拡径する。これにより、本体部90の外周面が補強対象伝熱管60’の管壁に押し付けられ、荷重伝達経路において補強対象伝熱管60’内部に隙間なく充填部材66が詰められる。
なお、別の構成例として、本体部90と挿入部95とを、線膨張係数の異なる材料で形成し、温度変化によって本体部90の外周面が補強対象伝熱管60’の管壁に押し付けられるようにしてもよい。
【0107】
図20は、充填部材66のさらに他の構成例を示す側面図である。
同図に示す例において、充填部材66は、第1台座部101と、第1歯車部102と、第2台座部103と、第2歯車部104と、第3歯車部105と、を含む。
第1台座部101は、補強対象伝熱管60’の一側の内壁面に当接するように形成されており、第2台座部103は、第1台座部101が当接する内壁面に対向する他側の内壁面に当接するように形成されている。
第1歯車部102、第2歯車部104、及び第3歯車部105は、傘歯車によって構成される。第1歯車部102は、第1台座部101に回転可能に支持されている。第2歯車部104は、第2台座部103に回転可能に支持されている。第3歯車部105は、トルク伝達ワイヤ106に着脱自在に取り付けられ、第1歯車部102及び第2歯車部104に歯合するように設けられている。
【0108】
上記構成においては、補強対象伝熱管60’内に充填部材66を挿入し、補強領域68’まで移動させた後、トルク伝達ワイヤ106によって第3歯車部105を補強対象伝熱管60’の周方向に回転させる。これに伴って、第3歯車部105に歯合した第1歯車部102及び第2歯車部104が、図中矢印方向に回転する。なお、第1歯車部102及び第2歯車部104の回転によって第1台座部101及び第2台座部103が供回りしないように周り止め構造をさらに備えていてもよい。例えば、第1台座部101及び第2台座部103は逆回転となるため、第1台座部101及び第2台座部103の相対的な回転を阻止する構成であってもよいし、第1台座部101及び第2台座部103の補強対象伝熱管60’に接する面を摩擦面としてもよい。
【0109】
以上説明したように、上述の実施形態によれば、地震等により伝熱管3の面外方向への揺れが発生したとき、伝熱管3の曲り部6は支持部材40,50,60に当接し、それ以上の変位が阻止されるので、曲り部6の変位を小さくとどめることができる。よって、伝熱管の曲り部における揺れを抑制でき、蒸気発生器1の耐震性を向上することができる。
【0110】
また、上述の実施形態を、原子力プラントに適用することによって、以下の利点が得られる。ここで、一実施形態に係る原子力プラントは、一次冷却材を加熱するように構成された原子炉容器(例えば加圧水型原子炉)と、二次冷却材の蒸気によって駆動されるように構成された蒸気タービンと、上記実施形態に記載される蒸気発生器1と、を備える。
上記原子力プラントによれば、伝熱管3の曲り部6における揺れを抑制でき、蒸気発生器1の耐震性能を向上させることが可能であるため、信頼性の高い原子力プラントを提供できる。
【0111】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0112】
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0113】
1 蒸気発生器
2 胴部
3 伝熱管
4 第1直管部
5 第2直管部
6 曲り部
7 管支持板
20 Uベンド部
21 第1保持部材
22 振止め部材
24 第2保持部材(ブリッジ)
25 規制部材
25a 凹部
31(31A,31B) 円環支持部
32(32A,32B) アーム状支持部
33 外筒支持部
40(40A,40B) 支持部材(仕切り板)
50(50A,50B) 支持部材(水平支持棒)
60(60A,60B), 支持部材(湾曲支持棒)
60’ 支持部材(補強対象伝熱管)
66(66−1,66−2,66−3,66−4) 充填部材
66A(66A,66A,66A,66A) 第1セクション
66B(66B,66B,66B,66B) 第2セクション
68,68’ 補強領域
70 規則配列
71 貫通孔
72(72A,72B) 配列欠陥部
80A,80B ワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17A
図17B
図18
図19
図20